(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】メタン製造方法及びメタン製造設備
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20220805BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
(21)【出願番号】P 2018195586
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 良平
(72)【発明者】
【氏名】菅野 周一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 鑑三
(72)【発明者】
【氏名】大畑 博資
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531973(JP,A)
【文献】特開昭58-006303(JP,A)
【文献】特開2002-011326(JP,A)
【文献】特開2015-051901(JP,A)
【文献】特開2016-187796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/12
C07C 9/04
C01B 32/50
F22B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2を吸収材に吸収させる、または、CO2を吸着材に吸着させるCO2吸収吸着工程と、前記吸収材または前記吸着材から、熱エネルギーを使用してCO2を分離させるCO2分離工程と、を有するCO2分離回収工程と、前記CO2分離回収工程にて分離回収したCO2とH2とから触媒反応を使用してメタンを製造するメタン化反応工程と、からなり、
前記触媒反応により生じる反応熱を使用して、冷却水から蒸気を生成し、生成した前記蒸気を、CO2を分離させる前記熱エネルギーとして使用すると共に、使用された前記蒸気を凝縮し、前記冷却水に使用
し、前記蒸気と前記冷却水とがその状態を変化させ、循環し、
前記CO2分離回収工程では、分離されたCO2の一部を循環させ、前記反応熱により生成された前記蒸気を使用して、循環するCO2を加熱し、加熱された前記CO2が、前記吸収材または前記吸着材からCO2を分離するための前記熱エネルギーとして使用されることを特徴とするメタン製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のメタン製造方法であって、
前記反応熱により生成された前記蒸気の温度を監視し、前記蒸気の温度が上昇するときには、蒸気生成量を増やすことを特徴とするメタン製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のメタン製造方法であって、
前記反応熱により生成された前記蒸気の温度を監視し、前記蒸気の温度が低下するときには、蒸気生成量を減らすことを特徴とするメタン製造方法。
【請求項4】
CO2を吸収する吸収材またはCO2を吸着する吸着材を内包するCO2吸収吸着装置と、前記CO2吸収吸着装置の吸収材または吸着材から、熱エネルギーを使用してCO2を分離させるCO2分離装置と、を有するCO2分離回収装置と、前記CO2分離回収装置にて分離回収したCO2とH2とから触媒反応を使用してメタンを製造する触媒充填層を内包するメタン化反応装置と、を備え、
前記触媒反応により生じる反応熱を使用して、前記触媒充填層を冷却する冷却水から生成
される蒸気
を、前記触媒充填層を冷却する冷却水に凝縮する加熱器を有
し、
前記CO2分離回収装置は、前記CO2吸収吸着装置にて分離されたCO2の一部が循環し、
前記加熱器は、前記反応熱により生成された前記蒸気を使用して、循環するCO2に前記熱エネルギーを供給し、CO2を分離させる熱エネルギーとして使用することを特徴とするメタン製造設備。
【請求項5】
請求項
4に記載のメタン製造設備であって、
前記反応熱により生成された前記蒸気の温度を監視する温度計と、前記蒸気の温度が上昇するときには、蒸気生成量を増やすため冷却水の流量を調整する流量調整弁と、を有することを特徴とするメタン製造設備。
【請求項6】
請求項
4に記載のメタン製造設備であって、
前記反応熱により生成された前記蒸気の温度を監視する温度計と、前記蒸気の温度が低下するときには、蒸気生成量を減らすため冷却水の流量を調整する流量調整弁と、を有することを特徴とするメタン製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン製造方法及びメタン製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、各種産業分野からの二酸化炭素(CO2)の排出量を削減するために、CO2を回収する技術が開発されている。また、回収されたCO2を使用するために、CO2をより有価性の高い二次エネルギーに変換する技術が開発されている。代表的な二次エネルギーとしては、メタン(CH4)が挙げられる。メタンは、回収したCO2と水素(H2)とを反応物質として、式(1)に示す反応により、得ることができる。
[数1]
CO2+4H2→CH4+2H2O・・・式(1)
式(1)の反応物質であるH2を製造する方法として、近年、風力発電や太陽光発電に代表される再生可能エネルギーにより得られた電気を使用して、式(2)に示す反応により、H2を製造する方法が注目されている。
[数2]
2H2O→2H2+O2・・・式(2)
特に、再生可能エネルギーの導入が急激に増加している欧州では、国によっては電力が供給過多となり、余剰電力が発生しており、その余剰電力を使用して、H2を製造している。製造されたH2と各種産業分野から回収されたCO2とを使用して、式(1)に示す反応により、メタンを製造している。
【0003】
排出量の削減が望まれているCO2とH2とから貯蔵性に優れるメタンを製造するプロセスは、地球温暖化の抑制やエネルギー貯蔵の観点において有用であるが、そのプロセスを成立させるためには、さらなるシステム効率の向上が必要となる。
【0004】
式(1)に示す反応は発熱反応であり、その反応熱は253kJ/molとなる。この発熱反応により、反応が進行するにつれて反応場の温度は上昇し、反応が進行しにくくなる。その為、一般的には、反応場である触媒充填層を冷却しながら反応を進行させる。
【0005】
しかし、発熱反応により生じる反応熱は膨大であるため、触媒充填層を冷却した際に生じる排熱は廃棄されている。こうした触媒充填層を冷却した際に生じる排熱を使用せずに、系外に廃棄すると、システム効率が低下する。従って、システム効率を向上させるためには、こうした触媒充填層を冷却した際に生じる排熱を効果的に使用する必要がある。
【0006】
本技術分野の背景技術として、特表2016-531973号公報(特許文献1)がある。この公報には、メタネーションプラントでの二酸化炭素のメタンへの変換で廃熱として生じる熱エネルギーを物質/熱エネルギー流に取り出し、物質/熱エネルギー流を、電力プラントの蒸気発生装置の燃焼チャンバーにバーナ側で流れる媒体に、電力プラントの水/蒸気回路に、メタネーションプラントの上流の、二酸化炭素廃棄ガス処理ユニット、または、二酸化炭素廃棄ガスプロセスユニットに、または接続された工業プラントのプロセスステップに供給することが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、炭素を含む燃料を燃焼させ、水/蒸気回路を有する電力プラントの煙道ガスから生じる二酸化炭素のメタンへの変換を含むメタネーションプラントで行われるメタネーション方法が記載されている。しかし、特許文献1には、触媒充填層を冷却した際に生じる排熱を、吸着材や吸収材からCO2を分離させるための熱エネルギーとして使用することについては、考慮されていない。
【0009】
そこで、本発明は、触媒充填層を冷却した際に生じる排熱を、吸着材や吸収材からCO2を分離させるための熱エネルギーとして使用することにより、こうした触媒充填層を冷却した際に生じる排熱を効果的に使用し、メタン製造におけるシステム効率を向上させるメタン製造方法及びメタン製造設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のメタン製造方法は、CO2を吸収材に吸収させる、または、CO2を吸着材に吸着させるCO2吸収吸着工程と、吸収材または吸着材から、熱エネルギーを使用してCO2を分離させるCO2分離工程と、を有するCO2分離回収工程と、CO2分離回収工程にて分離回収したCO2とH2とから触媒反応を使用してメタンを製造するメタン化反応工程と、からなる。そして、触媒反応により生じる反応熱を使用して、冷却水から蒸気を生成し、この生成した蒸気を、CO2を分離させるための熱エネルギーとして使用すると共に、使用された蒸気を凝縮し、冷却水に使用し、蒸気と冷却水とがその状態を変化させ、循環し、CO2分離回収工程では、分離されたCO2の一部を循環させ、反応熱により生成された蒸気を使用して、循環するCO2を加熱し、加熱された前記CO2が、吸収材または吸着材からCO2を分離するための前記熱エネルギーとして使用されることを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明のメタン製造設備は、CO2を吸収する吸収材またはCO2を吸着する吸着材を内包するCO2吸収吸着装置と、CO2吸収吸着装置の吸収材または吸着材から、熱エネルギーを使用してCO2を分離させるCO2分離装置と、を有するCO2分離回収装置と、CO2分離回収装置にて分離回収したCO2とH2とから触媒反応を使用してメタンを製造する触媒充填層を内包するメタン化反応装置と、を備える。そして、触媒反応により生じる反応熱を使用して、触媒充填層を冷却する冷却水から生成される蒸気を、触媒充填層を冷却する冷却水に凝縮する加熱器を有し、CO2分離回収装置は、CO2吸収吸着装置にて分離されたCO2の一部を循環し、加熱器は、反応熱により生成された蒸気を使用して、循環するCO2に熱エネルギーを供給し、CO2を分離させる熱エネルギーとして使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メタン製造におけるシステム効率を向上させるメタン製造方法及びメタン製造設備を提供することができる。
【0013】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施例のプロセスフローを説明する説明図である。
【
図2】実施例1のシステム構成を説明する説明図である。
【
図3】実施例2のシステム構成を説明する説明図である。
【
図4】実施例3のシステム構成における負荷変動に対応するシステム構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、同一の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合は、その説明を省略する場合がある。また、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例のプロセスフローを説明する説明図である。なお、
図1に示すプロセスフローは、以下の実施例に共通するものである。
【0017】
各種産業分野の産業プラントや発電所などから排出された排ガス(CO2混合ガス)(全部または一部)は、CO2分離回収工程(設備)へ供給される。CO2分離回収工程へ供給される排ガスは、流量が調整され、適量が供給される。
【0018】
このCO2分離回収工程では、排ガス中のCO2のみが吸収液または吸着材に吸収または吸着され、さらに、吸収液または吸着材が加熱されることにより(吸収液または吸着材に熱エネルギーが供給されることにより)、CO2が吸収液または吸着材から分離(脱離)し、高純度なCO2が回収される。
【0019】
回収されたCO2とH2とが混合され、メタン化反応工程(設備)に供給される。なお、H2は、再生可能エネルギー等により得られた電気を使用して水の電気分解によって生成されたものや脱水素反応から得られたものでも良く、H2の供給元は限定されない。
【0020】
メタン化反応工程では、式(1)に示す反応により、CH4(メタン)およびH2O(水)が製造される。式(1)では、CO2が1モルに対して、反応量論上、H2が4モルで反応するため、CO2:H2=1:4で供給すれば良いが、H2を反応量論比以上に供給することにより、反応が促進されると考えられるため、H2の供給量はH2/CO2≧4とすることが望ましい。
【0021】
本実施例に記載するメタン化反応工程では、メタン化触媒を使用した触媒方式を用い、式(1)に示す反応により、メタンを製造する。
【0022】
式(1)に示す反応は、その反応熱が253kJ/molとなる発熱反応である。つまり、反応場である触媒充填層は発熱する。一般的には、反応を促進するため、発熱する反応場である触媒充填層を、反応開始温度(触媒活性温度)の250~300℃に冷却しながら反応を進行させる。
【0023】
本実施例では、触媒充填層により生じる反応熱を効果的に使用する。つまり、触媒充填層を冷却した際に生じる排熱(反応排熱)を、系外に廃棄することなく、系内にて使用することにより、システム効率を向上させる。
【0024】
また、本実施例では、製造されたメタンから熱回収する方法ではなく、メタン化反応工程から熱回収する方法であるため、システム効率を向上させることができる。製造された250~300℃のメタンガスから熱回収する方法では温度レベルが低く、CO2の分離に使用する熱エネルギーを賄うだけの蒸気を生成することが困難であるためである。一方、メタン化反応工程(触媒充填層)では、本来600~800℃程度まで温度が上昇するところを250~300℃に冷却する。このため、温度レベルが高く、高温の蒸気(CO2の分離に使用する熱エネルギーを賄うだけの蒸気)を生成することができる。したがって、本実施例では、製造されたメタンガスから熱回収するのではなく、メタン化反応工程(触媒充填層)から熱回収することにより、蒸気を生成する。そして、この蒸気を、CO2の分離に使用する熱エネルギーとすることにより、効果的に反応排熱を使用することができる。
【0025】
本実施例では、メタン化反応工程にて生成する蒸気を使用して、CO2の分離に使用する(CO2の分離に必要な)熱エネルギーを賄うことができる。
【0026】
そこで、本実施例では、触媒充填層を冷却した際に生じる排熱(反応排熱)を使用して(蒸気生成熱として回収して)、熱水から蒸気を生成する。そして、この蒸気の凝縮潜熱をCO2分離回収工程(具体的にはCO2分離工程)の熱エネルギーに使用する。その後、CO2分離回収工程(具体的にはCO2分離工程)における熱交換により凝縮された蒸気は、熱水となり、メタン化反応工程へ冷却媒体(冷却水)として供給される。その後、メタン化反応工程において反応排熱により熱水は、蒸気となり、CO2分離回収工程(具体的にはCO2分離工程)へ供給される。
【0027】
つまり、本実施例に記載するメタン製造方法は、排ガスからCO2を分離回収するものであり、CO2吸収吸着工程とメタン化反応工程とからなるものである。
【0028】
CO2分離回収工程は、CO2を吸収材に吸収させる、または、CO2を吸着材に吸着させるCO2吸収吸着工程(後述するCO2吸着装置10やCO2吸収装置1における工程)と、吸収材または吸着材から、熱エネルギーを使用して、CO2を分離させるCO2分離工程(後述するCO2吸着装置10や再生塔3における工程)と、を有する。
【0029】
メタン化反応工程は、CO2分離回収工程で分離回収したCO2とH2とから触媒反応を使用してメタンを製造する工程(後述するメタン化反応器8における工程)である。
【0030】
そして、触媒反応により生じる反応熱(触媒充填層により生じる反応熱)を使用して、冷却水(熱水である冷却媒体(冷却水))から蒸気を生成(冷却水を蒸気化)し、生成した蒸気を、CO2を分離させる熱エネルギーとして使用(後述するCO2加熱器12やリボイラー4における工程)すると共に、使用された蒸気を凝縮(後述するCO2加熱器12やリボイラー4における工程)し、冷却水に使用(後述するメタン化反応器8における工程)する。
【0031】
このように、本実施例では、CO2分離回収工程とメタン化反応工程との間で、蒸気と熱水とがその状態を変化させて循環される。
【0032】
具体的には、例えば、CO2分離回収工程において50t/d(50トン/日)のCO2を分離回収し、メタン化反応工程において反応温度280℃でメタンを製造する場合、式(1)に示す反応は、その反応熱が253kJ/molであるため、触媒充填層の温度を反応温度280℃に冷却(保持)する際に生じる交換熱量で生成可能な蒸気量は、108.3t/d(4.4MPaA(atmosphere)、255℃(蒸気温度))となる。
【0033】
一方、50t/dのCO2を分離回収するために、CO2分離回収工程(具体的にはCO2分離工程)で使用する蒸気量は、96.3t/d(4.4MPaA、255℃、CO2回収エネルギー:3.5GJ/t-CO2(1tのCO2を回収するために必要なエネルギー)(後述するCO2加熱器12やリボイラー4にて使用される熱エネルギー))となる。
【0034】
このように、メタン化反応工程で生成可能な蒸気量が、CO2分離回収工程(具体的にはCO2分離工程)で必要な蒸気量を上回るため、CO2分離回収工程とメタン化反応工程との間にて、蒸気と熱水とを循環させることにより、システム(本実施例におけるメタン製造方法やメタン製造設備)が成立することが分かる。
【0035】
本実施例によれば、メタン化反応工程における反応排熱を効果的に使用することにより、システム効率を向上させることができる。
【0036】
図2は、実施例1のシステム構成を説明する説明図である。
【0037】
本実施例に記載するメタン製造設備は、CO2吸着材を使用したCO2化学吸着方式のCO2分離回収装置とメタン化反応装置とを有する。なお、CO2は、化学吸着方式、物理吸着方式、化学吸収方式、または物理吸収方式のいずれかの方式により、分離回収されるが、本実施例では、化学吸着方式を使用して説明する。
【0038】
CO2分離回収装置は、CO2吸着装置10、CO2循環送風機11、CO2加熱器12、CO2補助加熱器13から構成され、メタン化反応装置は、加熱器7、メタン化反応器8、触媒充填層16、循環ポンプ9から構成される。
【0039】
各種産業分野の産業プラントや発電所などの排ガス供給元0から排出された排ガス(CO2有)101(全部または一部)が、固体吸着材が充填されたCO2吸着装置10に供給され、排ガス(CO2有)101が固体吸着材と接触することにより、排ガス(CO2有)101中のCO2が、固体吸着材に吸着される。CO2が吸着された排ガス(CO2無)102は系外へ排出される。
【0040】
そして、固体吸着材に吸着されたCO2は、CO2吸着装置10、CO2循環送風機11、CO2加熱器12、CO2補助加熱器13、CO2吸着装置10を循環するCO2により、固体吸着材から分離される。なお、CO2循環送風機11が一定に稼働することにより、一定量のCO2が循環する。循環するCO2は、CO2加熱器12およびCO2補助加熱器13により高温(160℃程度)に加熱され、CO2吸着装置10に供給される。
【0041】
本実施例では、固体吸着材からCO2を分離するために、高温(160℃程度)の循環するCO2を使用するが、蒸気などを使用して、間接的に固体吸着材を加熱することにより、固体吸着材からCO2を分離しても良く、この方法に限定されるものではない。
【0042】
なお、CO2分離回収装置の起動時は、CO2吸着装置10に接続された空間に、予めCO2を充填し、初期のCO2の分離回収に使用することが望ましい。
【0043】
また、排ガス(CO2無)102におけるCO2濃度を検出し、検出されたCO2濃度が所定の値になった場合に、CO2の吸着工程からCO2の分離回収工程へ切り替える。
【0044】
そして、分離されたCO2(105)とH2(106)とが混合され、加熱器7にて反応開始温度(触媒活性温度)250~300℃まで加熱される。加熱されたCO2(105)とH2(106)とは、メタン化触媒が充填された触媒充填層16を内包するメタン化反応器8に供給される。なお、H2(106)は、再生可能エネルギー等により得られた電気を使用して水の電気分解によって生成されたものや脱水素反応から得られたものでも良く、H2(106)の供給元は限定されない。そして、メタン化反応器8にて、式(1)に示す反応により、メタン107が製造される。
【0045】
なお、H2(106)と混合されるCO2(105)は、CO2循環送風機11が稼働することにより、循環する一定量のCO2以外の余剰CO2である。
【0046】
本実施例では、メタン化反応器8に内包される触媒充填層16により生じる反応熱を使用して蒸気108を生成する。つまり、触媒充填層16を冷却した際に生じる排熱(反応排熱)を使用して蒸気108を生成する。そして、この蒸気108の凝縮潜熱をCO2加熱器12の熱エネルギーに使用する。つまり、CO2加熱器12にて循環するCO2を加熱するための熱エネルギー(CO2吸着装置10にて固体吸着材からCO2を分離するための熱エネルギー)に、この熱エネルギーを使用する。
【0047】
なお、触媒充填層16を冷却した際に生じる排熱(反応排熱)を使用して、蒸気を生成する反応器の構造は、例えば、ボイラのような構造である。触媒充填層16の内側にメタン化触媒を充填し、触媒充填層16の外側に冷却媒体(冷却水)を供給することにより、触媒充填層16により生じる反応熱を使用して、蒸気を発生させる。
【0048】
また、CO2加熱器12にて冷却(熱交換)された蒸気108は熱水109となり、循環ポンプ9により、再度、メタン化反応器8に内包される触媒充填層16の外側に冷却媒体(冷却水)として供給される。一方、CO2加熱器12にて循環するCO2は、蒸気108により、加熱(熱交換)される。
【0049】
本実施例では、CO2分離回収工程において、固体吸着材を使用した化学吸着方式を使用している。例えば、CO2分離回収に必要とされる熱エネルギーの温度域は130~160℃である。この為、メタン化反応器8に内包される触媒充填層16の外側に供給する冷却媒体(冷却水)の流量を調節することにより、生成する蒸気108の温度を170~200℃に設定することができる。これにより、CO2の分離に使用する熱エネルギーを供給することができる。なお、本実施例に記載する温度域は一例である。
【0050】
つまり、本実施例に記載するメタン製造設備は、CO2を吸着する吸着材を内包するCO2吸収装置(CO2吸収吸着装置)10を有する。CO2吸収装置(CO2吸収吸着装置)10は、吸着材から熱エネルギーを使用してCO2を分離させるCO2分離装置の機能も有する。本実施例においては、CO2吸収装置(CO2吸収吸着装置)10が、CO2分離装置の機能も有するCO2分離回収装置となる。
【0051】
そして、CO2吸収装置10にて分離回収されたCO2とH2とから触媒反応を使用してメタンを製造する触媒充填層16を内包するメタン化反応器(装置)8と、を備える。
【0052】
この触媒反応により生じる反応熱を使用して、触媒充填層16を冷却する熱水(冷却水)109から生成する蒸気108を、CO2を分離させる熱エネルギーとして使用すると共に、蒸気108を、触媒充填層16を冷却する熱水(冷却水)109に凝縮するCO2加熱器12を有することを特徴とする。
【0053】
さらに、本実施例に記載するメタン製造設備は、CO2吸着装置10にて分離されたCO2の一部を循環させ、反応熱により生成された蒸気108を使用して、循環するCO2に熱エネルギーを供給するために加熱するCO2加熱器12を有する。
【0054】
そして、本実施例に記載するメタン製造方法は、特に、CO2分離回収工程において、分離されたCO2の一部を循環させる。反応熱により生成された蒸気108を使用して、循環するCO2を加熱する。加熱されたCO2は、吸着材からCO2を分離するための熱エネルギーとして使用される。
【0055】
このように、本実施例に記載するメタン製造設備は、メタン化反応工程における反応排熱を効果的に使用することにより、固体吸着材からCO2を分離回収するための熱エネルギーをCO2加熱器12に供給することができる。そして、CO2加熱器12にて必要とされる熱量(一部または全部)を賄うことができ、システムのエネルギー効率を向上させることができる。
【実施例2】
【0056】
図3は、実施例2のシステム構成を説明する説明図である。
【0057】
本実施例に記載するメタン製造設備は、CO2吸収材を使用したCO2化学吸収方式のCO2分離回収装置とメタン化反応装置とを有する。
【0058】
CO2分離回収装置は、CO2吸収塔1、熱交換器2、再生塔3、リボイラー4、冷却器5、コンデンサー6から構成され、メタン化反応装置は、加熱器7、メタン化反応器8、触媒充填層16、循環ポンプ9から構成される。
【0059】
各種産業分野の産業プラントや発電所などの排ガス供給元0から排出された排ガス(CO2有)101(全部または一部)が、液体吸収材が充填されたCO2吸収塔1に供給され、排ガス(CO2有)101が液体吸収材と接触することにより、排ガス(CO2有)101中のCO2が、液体吸収材に吸収される。CO2が吸収された排ガス(CO2無)102は系外へCO2吸収塔1の上部から排出される。
【0060】
なお、本実施例で使用する液体吸収材は、アミン系のCO2吸収液(以下、単に吸収液と称して記載する)であり、排ガス(CO2有)101中のCO2が、この吸収液に吸収される。
【0061】
この吸収液は、CO2吸収塔1、熱交換器2、再生塔3、熱交換器2、冷却器5、CO2吸収塔1を循環する。
【0062】
CO2吸収塔1にてCO2を吸収した吸収液(リッチ液103)は、熱交換器2にて沸点付近まで昇温(加熱)され、再生塔3の上部から供給される。そして、熱エネルギーが供給され、再生塔3にてCO2が分離される。再生塔3にてCO2が分離された吸収液(リーン液104)は、熱交換器2にて冷却され、更に冷却器5にて冷却され、CO2吸収塔1の上部から供給される。つまり、熱交換器2にてリッチ液103とリーン液104とが熱交換することになる。
【0063】
また、再生塔3にてCO2が分離されたリーン液104の一部は、リボイラー(蒸気化器)4に供給される。リボイラー4では、供給されたリーン液104を加熱し、蒸気化する。リボイラー4にて蒸気化されたリーン液104(110~130℃の蒸気)は、再生塔3の底部から供給され、再生塔3にてリッチ液103からCO2を分離するための熱エネルギーとして使用される。
【0064】
なお、残りのリーン液104は、熱交換器2および冷却器5にて冷却された後、再度、CO2吸収塔1の上部から供給される。
【0065】
再生塔3にて分離されたCO2(105)は、コンデンサー(凝縮器)6にて、冷却され、気液分離される。その後、液分離されたCO2(105)とH2(106)とが混合され、加熱器7にて反応開始温度(触媒活性温度)250~300℃まで加熱される。加熱されたCO2(105)およびH2(106)は、メタン化触媒が充填された触媒充填層16を内包するメタン化反応器8に供給される。気分離されたCO2(105)は再生塔3に供給される。なお、H2(106)は、再生可能エネルギー等により得られた電気を使用して水の電気分解によって生成されたものや脱水素反応から得られたものでも良く、H2(106)の供給元は限定されない。そして、液分離されたCO2(105)とH2(106)とにより、メタン化反応器8にて、式(1)に示す反応により、メタン107が製造される。
【0066】
本実施例では、メタン化反応器8に内包される触媒充填層16により生じる反応熱を使用して蒸気108を生成する。つまり、触媒充填層16を冷却した際に生じる排熱(反応排熱)を使用して蒸気108を生成する。そして、この蒸気108の凝縮潜熱をリボイラー4の熱エネルギーに使用する。つまり、リボイラー4にて供給されたリーン液104を蒸気化するための熱エネルギー(再生塔3にてリッチ液103からCO2を分離するための熱エネルギー)に、この熱エネルギーを使用する。
【0067】
なお、触媒充填層16を冷却した際に生じる排熱(反応排熱)を使用して、蒸気を生成する反応器の構造は、例えば、ボイラのような構造である。触媒充填層16の内側にメタン化触媒を充填し、触媒充填層16の外側に冷却媒体(冷却水)を供給することにより、触媒充填層16により生じる反応熱を使用して、蒸気を発生させる。
【0068】
また、リボーラー4にて冷却(熱交換)された蒸気108は熱水109となり、循環ポンプ9により、再度、メタン化反応器8に内包される触媒充填層16の外側に冷却媒体(冷却水)として供給される。
【0069】
このとき、アミン系のCO2吸収液を使用した化学吸収方式では、リボイラー4にて蒸気化された吸収液の温度は、一般的に110~130℃である。この為、より効果的に反応排熱を使用するためには、反応排熱によって生成される蒸気108の温度を、150℃程度とすることが好ましい。なお、本実施例に記載する温度域は一例である。
【0070】
つまり、本実施例に記載するメタン製造設備は、CO2分離回収装置とメタン化反応装置とを有する。CO2分離回収装置は、CO2を吸収する吸収材を内包するCO2吸収塔(CO2吸収吸着装置)1と、CO2吸収塔1の吸収材から、熱エネルギーを使用してCO2を分離させる再生塔(CO2分離装置)3と、を有する。また、メタン化反応装置は、再生塔3にて分離回収されたCO2とH2とから触媒反応を使用してメタンを製造する触媒充填層16を内包するメタン化反応器8である。
【0071】
そして、触媒反応により生じる反応熱を使用して、触媒充填層16を冷却する熱水(冷却水)109から生成する蒸気108を、CO2を分離させる熱エネルギーとして使用すると共に、蒸気108を、触媒充填層16を冷却する熱水(冷却水)109に凝縮するリボイラー(加熱器)4を有する。
【0072】
このように、本実施例に記載するメタン製造設備は、反応排熱を効果的に使用することにより、アミン系のCO2吸収液からCO2を分離回収するための熱エネルギーを、リボイラー4に供給することができる。そして、リボイラー4にて必要とされる熱量(一部または全部)を賄うことができ、システムのエネルギー効率を向上させることができる。
【実施例3】
【0073】
図4は、実施例3のシステム構成における負荷変動に対応するシステム構成を説明する説明図である。
【0074】
本実施例では、実施例2に記載するシステム構成において、排ガス供給元(各種産業分野の産業プラントや発電所など)(0)の運転負荷が変動した場合ついて説明する。
【0075】
本実施例では、実施例2と同様に、熱水または蒸気を、CO2分離回収装置とメタン化反応装置との間で循環させている。
【0076】
排ガスの供給元(0)の運転負荷が変動した際には、排ガス(CO2有)101の排出量が変化し、回収されるCO2量も変化する。これに伴い、反応場である触媒充填層16にて生成されるメタン107が所有する総熱量も変化する。つまり、触媒充填層16により生じる反応熱の熱量が変化し、触媒充填層16を冷却した際に生じる排熱(反応排熱)の熱量も変化する。
【0077】
例えば、反応排熱の熱量が変化した場合、メタン化反応器8に内包される触媒充填層16を冷却するための冷却媒体(冷却水)としての熱水109を、反応排熱の熱量が変化する前と同じ流量を、触媒充填層16に供給すると、生成される蒸気108は、目的の温度範囲に入らず、CO2分離回収装置(具体的にはCO2分離装置:再生塔3)が効果的に機能しない場合が想定される。
【0078】
そこで、本実施例では、運転負荷が変動した場合であっても、CO2分離回収装置(具体的にはCO2分離装置:再生塔3)に供給される蒸気108の温度(熱エネルギー)が、変動しないように制御する。
【0079】
運転負荷が低下(変動)し、排ガス(CO2有)101の排出量(CO2の処理量)が減少した場合、生成されるメタン107の生成量も減少する。つまり、反応熱が減少するため、熱水109の流量を一定とすると、生成される蒸気108の温度が低下する。
【0080】
温度が低下した蒸気108が、リボイラー4に供給されると、再生塔3にてCO2が十分に分離されず、CO2が目標の回収量より低下し、さらに反応熱が減少し、生成される蒸気108の温度も低下する。
【0081】
運転負荷が上昇(変動)し、排ガス(CO2有)101の排出量(CO2の処理量)が増加した場合、生成されるメタン107の生成量も増加する。つまり、反応熱が増加するため、熱水109の流量を一定とすると、生成される蒸気108の温度が上昇する。
【0082】
蒸気108の温度が上昇した場合には、使用できる蒸発線熱が小さくなるため、効率が低下する。
【0083】
このように、運転負荷が変動した場合であっても、反応排熱から生成される蒸気108の温度の変化を抑制する。
【0084】
本実施例では、蒸気108をリボイラー4に供給するライン(蒸気配管)に温度計14を設置する。温度計14にて蒸気108の温度を監視する。そして、蒸気108の温度の状態に応じて、流量調整弁15a、または、流量調整弁15bにて熱水109の流量を調整する。
【0085】
温度計14の温度はCO2処理量に大きく依存する。CO2の処理量が増加した場合には、温度計14の温度が上昇することが予想される。このため、温度計14の温度が一定となるように、流量調整弁15aを開き、循環する熱水109の流量を増加させる。一方、CO2の処理量が減少した場合には、温度計14の温度が低下することが予想される。このため、温度計14の温度が一定となるように、流量調整弁15bを開き、循環する熱水109の流量を減少させる。
【0086】
また、例えば、流量調整弁15aは熱水供給タンク(図示なし)に接続され、流量調整弁15bは熱水排出タンク(図示なし)に接続される。
【0087】
つまり、本実施例に記載するメタン製造設備は、反応熱により生成された蒸気108の温度を監視する温度計14を有し、蒸気108の温度が上昇するときには、蒸気生成量を増やすため熱水(冷却水)109の流量を調整し、蒸気108の温度が低下するときには、蒸気生成量を減らすため熱水(冷却水)109の流量を調整する流量調整弁を有する。
【0088】
また、本実施例に記載するメタン製造方法は、反応熱により生成された蒸気108の温度を監視し、蒸気108の温度が上昇するときには、蒸気生成量を増やし、または、蒸気108の温度が低下するときには、蒸気生成量を減らす。
【0089】
このように、本実施例では、排ガスの供給元(0)の運転負荷が変動した場合、つまり、CO2の処理量が変動した場合であっても、反応排熱から生成される蒸気108の温度の変化を抑制し、一定範囲の温度の蒸気108を生成し、リボイラー4に供給することができる。
【0090】
なお、本実施例では、温度計14、流量調整弁15a、流量調整弁15bを、実施例2に記載するメタン製造設備について使用したが、実施例1に記載するメタン製造設備について使用してもよい。
【0091】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0092】
0:排ガス供給元、1:CO2吸収塔、2:熱交換器、3:再生塔、4:リボイラー、5:冷却器、6:コンデンサー、7:加熱器、8:メタン化反応器、9:循環ポンプ、10:CO2吸着装置、11:CO2循環送風機、12:CO2加熱器、13:補助加熱器、14:温度計、15a:流量調整弁、15b:流量調整弁、16:触媒充填層、101:排ガス(CO2有)、102:排ガス(CO2無)、103:リッチ液、104:リーン液、105:CO2、106:H2、107:メタン、108:蒸気、109:熱水