IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケミ フードテック ピーティーイー. エルティーディー.の特許一覧

<>
  • 特許-血糖低減組成物 図1
  • 特許-血糖低減組成物 図2
  • 特許-血糖低減組成物 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】血糖低減組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20220805BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20220805BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20220805BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20220805BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/125
A23L33/21
A23L33/17
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2018541158
(86)(22)【出願日】2017-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 SG2017000003
(87)【国際公開番号】W WO2017142477
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】1602626.2
(32)【優先日】2016-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518274674
【氏名又は名称】アルケミ フードテック ピーティーイー. エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】ALCHEMY FOODTECH PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】ゴー ジ ミン ヴァリーン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-068620(JP,A)
【文献】特表2015-514411(JP,A)
【文献】特開2004-024109(JP,A)
【文献】特表2014-529596(JP,A)
【文献】特許第5710057(JP,B2)
【文献】特開2016-002000(JP,A)
【文献】特開2007-049952(JP,A)
【文献】特開2002-306094(JP,A)
【文献】特開2012-213394(JP,A)
【文献】特開平04-063563(JP,A)
【文献】特開平04-063561(JP,A)
【文献】特表2014-521741(JP,A)
【文献】特表2014-505728(JP,A)
【文献】DIABETES CARE, 2006年,Vol.29,p.976-981
【文献】日本食生活学会誌, 2015年,第26巻, 第1号,p.3-6
【文献】Starch/Starke, 2013年,Vol.65,p.535-542
【文献】CEREAL CHEMISTRY, 2003年,Vol.80, No.5,p.564-566
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 31/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食料品の血糖指数を低下させるための組成物の形態にある先端食品素材であって、前記先端食品素材が、不溶性耐性デンプン、可溶性繊維、及び少なくとも1種の炭水化物酵素阻害剤を含むか又はそれらからなり、前記炭水化物酵素阻害剤が、炭水化物消化に関与する酵素の活性を低減させるか又は妨げるものであり、
前記不溶性耐性デンプンが前記組成物の40~80重量%の範囲から選択される量で存在し、前記可溶性繊維が、前記組成物の10~20重量%の範囲から選択される量で存在かつ前記少なくとも1種の炭水化物酵素阻害剤が、前記組成物の0.5~2.5重量%の範囲から選択される量で存在する、前記先端食品素材。
【請求項2】
不溶性耐性デンプンが、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%及び80%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する、請求項1に記載の先端食品素材。
【請求項3】
不溶性耐性デンプンが、人工的に製造されるか又は天然源に由来する、請求項1又は2に記載の先端食品素材。
【請求項4】
不溶性耐性デンプンが、穀物、種子、マメ科作物、トウモロコシ、コメ、オート麦、大麦、堅果、オオバコ、タピオカ、ジャガイモ、豆、果実及びプランテーンを含む群から選択される天然源に由来する、請求項3に記載の先端食品素材。
【請求項5】
不溶性耐性デンプンが、RS1、RS2、RS3及びRS4を含む群から選択されるサブタイプである、請求項1~4のいずれかに記載の先端食品素材。
【請求項6】
不溶性耐性デンプンが、サブタイプRS2又はRS3である、請求項5に記載の先端食品素材。
【請求項7】
可溶性繊維が、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%及び20%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する、請求項に記載の先端食品素材。
【請求項8】
可溶性繊維が、チコリーの根、穀物、種子、トウモロコシ、コメ、オート麦、大麦、堅果、オオバコ、タピオカ、豆及び果実を含む群から選択される天然源に由来する、請求項1~7のいずれかに記載の先端食品素材。
【請求項9】
炭水化物酵素阻害剤がデンプン酵素阻害剤である、請求項1~8のいずれかに記載の先端食品素材。
【請求項10】
デンプン酵素阻害剤が、アミラーゼ阻害剤、スクラーゼ阻害剤、マルターゼ阻害剤、及びグルコシダーゼ阻害剤を含む群から選択される、請求項9に記載の先端食品素材。
【請求項11】
酵素阻害剤が、1又は%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する、請求項に記載の先端食品素材。
【請求項12】
組成物が、前記組成物の0.1~10重量%の範囲から選択される量で存在するタンパク質をさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の先端食品素材。
【請求項13】
タンパク質が、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%及び10%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する、請求項12に記載の先端食品素材。
【請求項14】
タンパク質が、大豆、小麦、エンドウ、コメ、及びホエイを含むか又はそれらからなる群から選択される天然源に由来する、請求項12又は13に記載の先端食品素材。
【請求項15】
組成物が、前記組成物の0.1~10重量%の範囲から選択される量で存在する少なくとも1種のハイドロコロイドをさらに含む、請求項1~14のいずれかに記載の先端食品素材。
【請求項16】
ハイドロコロイドが、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%及び10%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する、請求項15に記載の先端食品素材。
【請求項17】
ハイドロコロイドが、キサンタンガム、ローカストビーンガム、寒天、アルギネート、カラギーナン、及びグアーガムを含む群から選択される、請求項15又は16に記載の先端食品素材。
【請求項18】
不溶性耐性デンプンが70重量%の量で存在し、可溶性繊維が15重量%の量で存在し、酵素阻害剤が0.5%の量で存在し、タンパク質が2重量%の量で存在し、ハイドロコロイドが0.5重量%の量で存在する、請求項15又は16に記載の先端食品素材。
【請求項19】
不溶性耐性デンプンが50重量%の量で存在し、可溶性繊維が10重量%の量で存在し、酵素阻害剤が1%の量で存在し、タンパク質が2重量%の量で存在し、ハイドロコロイドが0.5重量%の量で存在する、請求項15又は16に記載の先端食品素材。
【請求項20】
水が残りの構成成分を供給する、請求項18又は19に記載の先端食品素材。
【請求項21】
組成物が、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、脂質微量栄養素、及び補酵素を含むか又はそれらからなる群から選択される少なくとも1種の強化剤をさらに含む、請求項1~20のいずれかに記載の先端食品素材。
【請求項22】
組成物が少なくとも1種の安定剤をさらに含む、請求項1~20のいずれかに記載の先端食品素材。
【請求項23】
組成物が粉末の形態で提供される、請求項1~20のいずれかに記載の先端食品素材。
【請求項24】
穀粒、ヌードル、リボン、レイヤー、チャンク、シェル、フレーク、スレッド及び顆粒を含む群から選択される食品粒子に形成される、請求項1~23のいずれかに記載の先端食品素材。
【請求項25】
請求項1~24のいずれかに記載の先端食品素材と、少なくとも1種の食料品とを含む複合材であって、前記食料品が血糖指数を有し、前記血糖指数が前記先端食品素材の添加によって低下する、前記複合材。
【請求項26】
有効量の先端食品素材が、食料品及び/又は複合材の血糖指数を消費者にとって有益である範囲内に持っていくように、前記複合材に添加される、請求項25に記載の複合材。
【請求項27】
食料品の血糖指数を低下させるための、請求項1~24のいずれかに記載の先端食品素材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料品の血糖指数を低下させるための組成物の形態にある先端食品素材及び前記組成物と前記食料品とを含む複合材に関し、特に、限定されないが、前記食料品が、前記素材の添加によって好都合にも低下する血糖指数を有する。
【背景技術】
【0002】
高血糖症を招くいくつかの病態がある;最も周知であるものが糖尿病である。糖尿病は、本質的に、膵臓が十分なインスリンを産生しないことによるか、又は、身体の細胞が産生されたインスリンに適切に応答しないことによるかいずれかである。糖尿病は、タイプ1又はタイプ2のものであり得る:
・ タイプ1糖尿病は、自己免疫疾患であり、これは、対象が十分なレベルのインスリンを産生することができないことを意味する膵臓β細胞の破壊を招く;
・ タイプ2糖尿病は、より複雑な状態であり、いくつかの関連する病気に起因し得るが、インスリンの代謝作用に対する耐性を一般に伴う。例えば、タイプ2糖尿病は、年齢、肥満及び座っていることの多い生活様式に関連付けられ、これらの全てがインスリン耐性を招く。
【0003】
血流中に十分なインスリンがないと、炭水化物に富む食事の後、血流中のグルコースは細胞に出入ができない。血糖レベルは上昇し、これは高血糖として知られている。糖尿病のあらゆる形態によって長期合併症に関するリスクが上昇する。こういった合併症は、何年か(10~20年)後には通常には発症するが、その時以前に診断を受けていなかった場合の人において、最初の症状であり得る。治療しなければ、高血糖は、心血管疾患、神経障害、糖尿病性腎症、失明を招く可能性のある糖尿病網膜症、及び切断を招く可能性のある深刻な四肢感染症等の長期合併症を引き起こす恐れがある。
【0004】
世界的に、上記症例の90%までもの原因となるタイプ2糖尿病に罹患している3億8700万人の糖尿病患者がいる。糖尿病は人の死亡リスクを少なくとも倍にし、2035年までには糖尿病に罹患している人々の数は5億9200万人に増えると予測されている。
【0005】
糖尿病は慢性疾患であり、これに対して、非常に特定の状況を除いて公知の治癒はない。タイプ2糖尿病の臨床上の治療目標は、血糖レベルを低下させて糖尿病関連合併症を未然に防ぐことに主として焦点を合わせており、インスリンの投与があってもなくても管理可能である。
【0006】
糖尿病患者の血糖レベルを維持するため糖尿病患者への推奨の1つとして、特定の食事計画に従うことであるが、何が最適な糖尿病食に相当するのかということについて、多くの意見の相違が存在する。炭水化物は、血糖レベルを最も深刻に上げる主要栄養素であることから、最大の議論は、食物は一体どのくらい低炭水化物であることが必要であるのかということに関するものである。なぜなら、炭水化物摂取量の低下は血糖レベルの低減をもたらすが、炭水化物は、ほとんどの現代食における主エネルギー源と従来から考えられており、低炭水化物食は、脂肪及び飽和脂肪由来の増大した量のカロリーを含む可能性が高いからである。最も合意されている推奨とは、食物は、糖及び精製炭水化物は低くありながら、食物繊維が、特に可溶性繊維が比較的高いことである。同様に、糖尿病に罹患している人々には、高い血糖指数(GI,glycemic index)を有する炭水化物の摂取を低減すること、したがって低GI食に従うことを奨励し得る。
【0007】
低GI食とは、循環血糖レベルの最小変化を基準として食品を選択しているものである。血糖指数(GI)及び糖負荷(GL,glycemic load)とは、炭水化物含有食品を消費後の血糖レベルに対する影響の尺度である。低血糖応答を伴う食品をベースとした食物が、糖尿病管理、血中脂質(コレステロール)の改善、及び心疾患のリスク低減に関連付けられてきた。
【0008】
残念なことに、多くの食事が、コメ、ヌードル及び白パン等の、精製炭水化物を含んでいるので低GI食は容易には達成されない。例えば、コメは、世界人口の半分超の主食であり - 35億人超の人々が、彼らの1日のカロリーの20%超に対してコメに依存している。2009年には、地球全体のヒト一人当たりのエネルギーの19%を及び一人当たりのタンパク質の13%を、コメが供給した。アジアは世界のコメ消費の90%を占め、そこでの総コメ需要は増え続けている。アジアが豊かになるにつれて、単純炭水化物が高い精製コメ及びコメ製品の消費は高まる。先進アジア諸都市(アジアにおいて最も糖尿病患者がみられる)における、より全粒穀物並びに未精製コメ及びコメ製品をという推進にもかかわらず、精製コメ及び精製コメ製品に対する嗜好により、糖尿病患者にとって彼らの食物をコントロールすることが難しい課題となり、高血糖が引き起こされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、本明細書において、その食味、食感、外観、調理方法及び保存寿命に悪影響を与えることがない、食料品の、特に精製炭水化物のものの血糖指数を低下させるための組成物の形態にある新規な先端食品素材を開示する。実際、本明細書に開示されている素材は、前記素材を添加すると通常では高GIである食品を低GI食品とする程度に、血糖指数を低減させることが見出されていた複数の成分の正しいバランス及び量を含むことが、驚くべきことに見出された。したがって、素材は、食品のGIレベルを低減させるための当該食品への素材の添加において、また低GI食料品の調製及び製造において、並びに体重減少又は糖尿病の管理における低GI食の一部として、有用性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、不溶性耐性デンプン、可溶性繊維、及び少なくとも1種の炭水化物酵素阻害剤を含むか又はそれらからなる、食料品の血糖指数を低下させるための組成物の形態にある先端食品素材であって、前記不溶性耐性デンプンが組成物の40~80重量%の範囲から選択される量で存在する、先端食品素材が提供される。
【0011】
血糖指数という用語は、当業者に周知であるものであり、人の血糖レベルに対する食品の影響を示す、消費後の特定のタイプの食品に対応付けられた数値を指す。血糖指数は、食品の分量及び実際に消費される、食品中の炭水化物の量に関連して通常適用されている。関連した尺度、糖負荷(GL)は、問題となっている食品の血糖指数を実際の一回分量の炭水化物含量で乗じることによって、これを要因として含む。
【0012】
食品の血糖指数とは、12時間の絶食及びある特定量の入手可能な炭水化物(通常50g)を含む食品の摂取後の2時間血糖応答曲線下増分面積(AUC,area under the two-hour blood glucose response curve)として定義される。被験食品のAUCは、標準品のAUC(グルコース又は白パンのいずれか、2つの異なる定義を与える)で除算し、100を掛けたものである。平均GI値は、10人のヒト対象で収集したデータから計算する。標準品と被験食品の両方に、同量の入手可能な炭水化物が含有されていなければならない。結果は、試験された各食品の相対ランキングを与える。値100は、純粋なグルコースの当量である標準を表す。GI値は、グルコースに対する絶対スケール上のパーセンテージとして解釈することができ、一般に次のように解釈される:
i) 低GI=55%以下;
ii) 中GI=56~69%;
iii) 高GI=70%以上。
【0013】
当業者に公知であるように、低GI食品は、グルコースをよりゆっくりと着実に放出し、より適切な食後(食事後)の血糖読取をもたらす。高GI食品は、血糖レベルのより急速な増加を引き起こす。
【0014】
本明細書において耐性デンプンへの言及は、胃又は小腸で消化吸収されず大腸へと通過する任意のデンプン又はデンプン製品を指し、これは細菌により消化されて、ブチレート等の短鎖脂肪酸を形成する。研究が示すところによれば、耐性デンプンは、食事後の血糖レベルを低下させるのに有効であるとともに、第2の食事効果に寄与する。また一部の研究が示すところによれば、耐性デンプンがインスリン感受性を上昇させる。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態では、前記耐性デンプンが、それらの間にある0.1%毎の整数を含めて、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%及び80%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する。
【0016】
本明細書において不溶性耐性デンプンへの言及は、水において又は水溶液において本質的に不完全に可溶性(すなわち不溶性又は本質的に不溶性)である、先のデンプンを指す。
【0017】
本明細書で開示されているように、本発明による組成物は、室温で、また調理後に水/水性不溶性を有する不溶性耐性デンプンを含むことを特徴とする。これによって、パン、小型の丸いパン、ヌードル、パスタ及び押出成形機を使用して様々な形状に押出成形されている製品(例えば、コメ状様穀粒等の)向け等の、これらに限定されないが、生地形成を必要とする固形食品への組成物の形成が有利には可能となる。
【0018】
当業者であれば理解されるように、不溶性耐性デンプンは、食品中に天然に存在するが、単離又は製造されたタイプの不溶性耐性デンプンを添加することによって食品に添加することもできる。本発明の好ましい一実施形態では、前記不溶性耐性デンプンが、天然源に由来するか又は人工的に製造される。より好ましくは、前記不溶性耐性デンプンが、穀物、種子、マメ科作物、トウモロコシ、コメ、オート麦、大麦、堅果、オオバコ、タピオカ、ジャガイモ、豆、果実及びプランテーン等を含む群から選択される天然源に由来する。
【0019】
当業者にさらに公知であるように、不溶性耐性デンプンは4つのタイプに通常分類される:
i) RS1 - 種子又はマメ科作物及び未加工の全粒穀物において見られるような物理的に到達不能な又は難消化性の不溶性耐性デンプン;
ii) RS2 - 高アミローストウモロコシデンプンの場合と同様に、デンプンの高次構造のために酵素に到達不能な不溶性耐性デンプン;
iii) RS3 - パスタ等、デンプン含有食品が調理され、冷却されるときに形成される不溶性耐性デンプンであり、これは劣化によって生じ、水中で加熱され、溶解され、次いで冷却された後に、まとめて処理された可溶性デンプンが溶けにくくなる;又は
iv) RS4 - 消化に抵抗するように化学的に改変された不溶性デンプン。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態では、前記不溶性耐性デンプンが、RS1、RS2、RS3及びRS4を含む群から選択されるサブタイプである。さらにより好ましくは、前記不溶性耐性デンプンが、サブタイプRS2若しくはRS3であり、又は好ましさは劣るが、RS4である。
【0021】
本明細書において可溶性繊維への言及は、体内で消化性であるとともに水と接触して粘性ゲル又は非粘性を通常には形成する任意の形態の繊維を指す。この形態では、このようなゲルは、ある特定の食品成分を捕捉し、それらを吸収で利用し難くすることができると考えられる。本発明の好ましい一実施形態では、前記可溶性繊維が、組成物の1~20重量%の範囲から選択される量で存在する。
【0022】
さらにより好ましくは、前記可溶性繊維が、それらの間にある0.1%毎の整数を含めて、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%及び20%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する。
【0023】
当業者に公知であるように、可溶性繊維は多くの天然食品源に見出すことができる。したがって、なお一層更に好ましい一実施形態では、前記可溶性繊維が、チコリーの根、穀物、種子、トウモロコシ、コメ、オート麦、大麦、堅果、オオバコ、タピオカ、豆及び果実等を含む群から選択される天然源に由来する。
【0024】
GI吸収を遅くするその栄養学的機能に加えて可溶性繊維を添加する目的は、水を保持する組成物の能力を上昇させることである。この特徴によって、生地を形成し、したがって所望の食品粒子に成型及び成形することができる組成物が提供される。
【0025】
本明細書において炭水化物酵素阻害剤への言及は、アミラーゼ阻害剤、スクロース阻害剤、マルターゼ阻害剤、及びグルコシダーゼ阻害剤等を含む群から選択されるデンプン酵素阻害剤等の、それらに限定されないが、炭水化物消化に関与する酵素の活性を低減させる又は妨げる任意の作用剤を指す。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態では、前記酵素阻害剤が、組成物の0.1~10重量%の範囲から選択される量で存在する。より好ましくは、前記酵素阻害剤が、それらの間にある0.1%毎の整数を含めて、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%及び10%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する。
【0027】
本発明のなお一層更に好ましい一実施形態では、前記組成物が、組成物の0.1~10重量%の範囲から選択される量で存在するタンパク質をさらに含む。さらにより好ましくは、前記タンパク質が、それらの間にある0.1%毎の整数を含めて、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%及び10%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する。
【0028】
当業者であれば理解されるように、前記タンパク質が、大豆、小麦、エンドウ、コメ、及びホエイ等を含むか又はそれらからなる群から選択される天然源等の、それらに限定されないが、多数の起源に由来することができる。
【0029】
なお一層更に好ましい一実施形態では、前記組成物が、組成物の0.1~10重量%の範囲から選択される量で存在する少なくとも1種のハイドロコロイドをさらに含む。より好ましくは、前記ハイドロコロイドが、それらの間にある0.1%毎の整数を含めて、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%及び10%を含むか又はそれらからなる群から選択される量で存在する。
【0030】
本明細書においてハイドロコロイドへの言及は、水の存在中でゲルを形成する物質を指す。理論に拘束されることを望むものではないが、ハイドロコロイドの存在によって食品の粘度が上昇し、その結果食品の消化速度が遅延すると考えられる。ハイドロコロイドは当業者に周知であり、これには、限定されないが、キサンタンガム、ローカストビーンガム、寒天、アルギネート、カラギーナン、及びグアーガムが含まれる。
【0031】
本発明の更に好ましい一実施形態では、先端食品素材が、前記不溶性耐性デンプンが約50重量%の量で存在し、前記可溶性繊維が約10重量%の量で存在し、前記酵素阻害剤が約1重量%の量で存在し、前記タンパク質が約2重量%の量で存在し、前記ハイドロコロイドが約0.5重量%の量で存在する、組成物を理想的には含む。さらにより理想的には、前記先端食品素材は残りの構成成分を供給するために水をさらに含む。[VG1][LS2]
【0032】
本発明の代替の更に好ましい一実施形態では、先端食品素材が、前記不溶性耐性デンプンが約70重量%の量で存在し、前記可溶性繊維が約15重量%の量で存在し、前記酵素阻害剤が約0.5重量%の量で存在し、前記タンパク質が約2重量%の量で存在し、前記ハイドロコロイドが約0.5重量%の量で存在する、組成物を理想的には含む。さらにより理想的には、前記先端食品素材は残りの構成成分を供給するために水をさらに含む。
【0033】
本発明のなお一層更に好ましい一実施形態では、前記組成物が、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、脂質微量栄養素、及び補酵素等を含むか又はそれからなる群から選択される少なくとも1種の強化剤をさらに含む。当業者であれば理解されるように、食品の強化又は富栄養化とは、微量栄養素(必須微量元素及びビタミン)を食品に添加してその栄養価を改善するプロセスである。強化剤のこういった例としては、それらに限定されないが、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、脂質微量栄養素、及び補酵素が挙げられる。しかし、任意の数の微量栄養素を組成物に添加することができ、これらについては当業者に周知である。
【0034】
本発明のよりなお一層更に好ましい一実施形態では、前記組成物が少なくとも1種の安定剤をさらに含む。
【0035】
本明細書において安定剤への言及は、通常食料品への、任意の添加剤を指し、これはその構造を保存する助けとなる。このような添加剤は食品調理の分野では通常使用されているものであり、当業者に公知である。
【0036】
なお一層更に好ましい一実施形態では、前記組成物が粉末の形態で提供される。
【0037】
なお一層更に好ましくは、前記先端食品素材が、穀粒、ヌードル、リボン、レイヤー、チャンク、シェル、フレーク、スレッド及び顆粒を含む群から選択される食品粒子に形成される。
【0038】
なお一層更に好ましい一実施形態では、前記先端食品素材が、少なくとも1種のその他の食料品を有する複合材として提供され、前記食料品が、前記先端食品素材の添加によって低下する血糖指数を有する。より好ましくは、特定の有効量が、前記食料品及び/又は前記複合材の前記血糖指数を消費者にとって有益である範囲内に持っていくように、そのような量で前記先端食品素材が前記複合材に添加される。
【0039】
本明細書で開示されているように、組成物の成分は、消化を遅延させ、血糖急上昇を回避するために、食品の血糖指数を低下させることが見出されていたようなものである。これに関して、好ましくは、前記GIは、レベル55以下に低下し、その結果、低GI食品として当業者によって一般に承認されているものを示す。したがって、前記複合材中の前記素材の有効量とは、例えば55以下の、選択されたレベルにGIを低下させる量である。
【0040】
開示されている素材が、食料品の血糖指数を効果的に低減させ、繊維含量を有利には上昇させるが、それが適用されているか又はそれが製造源とする食料品の食味又は食感を重要なことには損なわないように、開示されている素材は、複数の成分の正しいバランス及び量を含むことが見出された。
【0041】
本明細書の記述及び特許請求の範囲全体にわたって、「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」という単語、並びにこれらの単語の変化形態、例えば、「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprises)」とは、「限定されないが、~を含む(including but not limited to)」を意味し、そして他の部分、添加剤、成分、整数又はステップを排除するものではない。本明細書の記述及び特許請求の範囲全体にわたって、文脈上別段必要とされない限り、単数は複数を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、文脈上別段必要とされない限り、本明細書は、複数並びに単数を企図するものと理解されるべきである。
【0042】
本明細書に引用される、あらゆる特許又は特許出願を含み、参考文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。任意の参考文献が従来技術を構成することを承認するものではない。さらに、従来技術のいずれかが、当技術分野における通常の一般的知識の一部を構成することを承認するものではない。
【0043】
本発明の各態様の好ましい特徴は、いずれかの他の態様に関連して記載した通りであり得る。
【0044】
本発明の他の特徴は、以下の例により明らかになるであろう。一般に、本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲及び図面を含む)に開示された特徴の新規な任意のもの又は新規な任意の組合せまで及ぶ。したがって、本発明の特定の態様、実施形態又は例に関連して記載された特徴、整数、特性、化合物又は化学部分は、矛盾のない限り、本明細書に記載の他の任意の態様、実施形態又は例に適用可能であると理解される。
【0045】
さらに、他に記載がない限り、本明細書に開示された任意の特徴は、同一又は類似の目的にかなう代替の特徴で置き換えてもよい。
【0046】
ここで、本発明を以下の図面及び実施例を参照して、ほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】100%デンプン、すなわちイヌリンで置換された、10%小麦粉のパン「生地」を含む組成物を示す図である。しかし、この混合物を使用して、生地を形成することはできなかった。
図2】コメ形状に押出成形された、不溶性耐性デンプン(70重量%)、可溶性繊維(15重量%)、酵素阻害剤(0.5重量%)、タンパク質(2重量%)及びハイドロコロイド(0.5重量%)を含む組成物を示す図である。水中での調理に続いて、食品素材は調理後その穀物粒形状を保持し、水中に完全には溶解しない。
図3】種々の量の耐性デンプン及び可溶性繊維を含む組成物の成型性を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明者らは、穀物、種子、マメ科作物、トウモロコシ、コメ、オート麦、大麦、堅果、オオバコ、タピオカ、ジャガイモ、豆、果実及びプランテーンを含む群から選択される天然源に由来する、不溶性耐性デンプン(RS,resistant starch)、特にRS2及びRS3が、約40~80%である組成物を有する食品素材を開発した。
【0049】
食品素材は可溶性繊維を含有する。可溶性繊維の分量を確立する基礎に、茶色の選択肢及び白色の選択肢又は天然低GI選択肢及びその精製された高GIの選択肢を比較することにより着手したが、可溶性繊維は組成物の約1~20重量%の量で存在し、理想的には、繊維は、チコリーの根、穀物、種子、トウモロコシ、コメ、オート麦、大麦、堅果、オオバコ、タピオカ、豆及び果実等の天然源から供給する。GIを遅くし繊維含量を上昇させるその栄養学的機能に加えて、可溶性繊維を添加する目的はまた、それが生地を形成することを可能とする水を保持する複合材の能力を上昇させることである;不溶性耐性デンプンのみを使用する場合と同様に、素材は全く水結合特性を有さず、食品粒子をこしらえることができる生地を形成することはできない(図1)。
【0050】
食品素材はまた、デンプン酵素阻害剤、理想的には、アミラーゼ阻害剤、スクロース阻害剤、マルターゼ阻害剤、又はグルコシダーゼ阻害剤等の、炭水化物酵素阻害剤を含有し、最もよい結果を得るためには酵素阻害剤は、組成物の約0.1~10重量%の量で存在する。
【0051】
成型可能な非付着性生地を実現するために、多数の試行錯誤実験及びいくつかのセレンディピティーを介して、本組成物は得られた。有利なことに、本発明者らの食品素材は、食料品の血糖指数を低下させるのに有用である。
【0052】
非付着性生地として、本発明者らは組成物をコメ様穀粒に押出成形し、こういった押出成形穀粒を通常のジャスミンライスに添加し、そうすることにおいて、添加された本発明者らの食品素材の量につれて、コメ/穀粒のGIが徐々に低減した(インビトロでの方法によって測定した)(図2)。
タイジャスミンライスのGI - 109(高GI)
タイジャスミンライス+4.5%押出成形穀粒のGI - 60(中GI)
タイジャスミンライス+6.0%押出成形穀粒のGI - 55(低GI)
【0053】
食品材料の性質をさらに高めるために、本発明者らは、ハイドロコロイド及びタンパク質を添加した - これらは乳化、結合を補助し食品製品を安定化させる。腸において、ハイドロコロイドは粘性ゲルを形成し、食後の消化を妨げる。タンパク質は、炭水化物ではないので、それ自体、血糖指数に影響を及ぼさないが、一緒に食べたときに炭水化物の消化速度を遅くする。したがって、ハイドロコロイド及びタンパク質はまた、血糖指数を低下させる助けとなる。
【0054】
本発明者らの食品製品では、本発明者らは、組成物の約0.1~10重量%の量で存在し、理想的には、大豆、小麦、エンドウ、コメ、及びホエイ等の天然源に由来する、タンパク質を使用する。
【0055】
本発明者らの製品で使用されるハイドロコロイドは、組成物の約0.1~10重量%の量で存在し、理想的には、キサンタンガム、ローカストビーンガム、寒天、アルギネート、カラギーナン、及びグアーガムに由来する。
【0056】
本発明者らの食品製品の一実施形態は、約70重量%の量の不溶性耐性デンプン、約15重量%の量の可溶性繊維、約0.5重量%の量の酵素阻害剤、約2重量%の量のタンパク質及び約0.5重量%の量のハイドロコロイドを含む。
【0057】
本発明者らの食品製品の別の実施形態は、約50重量%の量の不溶性耐性デンプン、約10重量%の量の可溶性繊維、約1重量%の量の酵素阻害剤、約2重量%の量のタンパク質及び約0.5重量%の量のハイドロコロイドを含む。
【0058】
本発明者らは残りの構成成分を供給するために典型的には水を使用する。
【0059】
本発明者らはまた、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、脂質微量栄養素、及び補酵素等の少なくとも1種の強化剤等の、サプリメントを製品に添加してもよい。
【0060】
少なくとも1種の安定剤を添加することも有利であろう。
【0061】
食品製品は、従来の技法を使用してユーザーの要望に従ってこしらえることができ、粉末形態が好ましいが、穀粒、ヌードル、リボン、レイヤー、チャンク、シェル、フレーク、スレッド及び顆粒も好ましい。
【0062】
選択された量の本発明者らの食品製品を、高GI食品のGIを低下させるために、調理前でも、調理中でも、調理後でも、高GI食品に添加してもよいが、使用する本発明者らの食品製品の量は、組合せ製品向けの所望のGIに従って決定され、公知の技法を使用して計算される。
図1
図2
図3