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特許7118021電極体、二次電池及び二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】電極体、二次電池及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220805BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220805BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20220805BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20220805BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20220805BHJP
   H01M 50/538 20210101ALN20220805BHJP
   H01M 50/54 20210101ALN20220805BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/04 W
H01M4/13
H01M50/553
H01M10/0585
H01M10/0587
H01M50/538
H01M50/54
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019040334
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020057587
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2018187108
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】坂井 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】九澤 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】増田 明紀
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073644(JP,A)
【文献】特開2011-009118(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136714(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M 4/13- 4/1399
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、負極シートと、前記正極シート及び前記負極シートを絶縁するセパレータが積層された電極体であって、
前記電極体の正極集電端部では、
前記正極シート少なくとも一部が、積層方向に略垂直な幅方向において前記負極シートの端部よりも内側に位置する第1の座屈位置で積層方向内側に座屈され、
前記第1の座屈位置で座屈された第1の正極シートの積層方向内側において前記第1の正極シートと隣り合う第1のセパレータと、前記第1のセパレータに隣接する前記負極シートが、前記第1の座屈位置で積層方向内側に座屈されており、
前記電極体の負極集電端部では、
前記負極シート少なくとも一部が、前記幅方向において前記正極シートの端部よりも内側に位置する第2の座屈位置で積層方向内側に座屈され
前記第2の座屈位置で座屈された第2の負極シートの積層方向内側において前記第2の負極シートと隣り合う第2のセパレータと、前記第2のセパレータに隣接する前記正極シートが、前記第2の座屈位置で積層方向内側に座屈されていることを特徴とする、電極体。
【請求項2】
前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の両面に形成された正極合剤層とを含み、
前記正極集電端部では、前記正極合剤層の端部が、前記幅方向において前記負極シートの端部よりも内側に配置されており、
前記第1の座屈位置は、前記正極合剤層の端部と、前記負極シートの端部との間にあり、
前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の両面に形成された負極合剤層とを含み、
前記負極集電端部では、前記負極合剤層の端部が、前記幅方向において前記正極シートの端部よりも内側に配置されており、
前記第2の座屈位置は、前記負極合剤層の端部と、前記正極シートの端部との間にある、請求項1に記載の電極体。
【請求項3】
前記正極合剤層の端部及び前記負極合剤層の端部が先細り形状をしている場合、
前記第1の座屈位置は、前記正極合剤層の先細り開始位置と、前記負極シートの端部との間にあり、
前記第2の座屈位置は、前記負極合剤層の先細り開始位置と、前記正極シートの端部との間にある、請求項2に記載の電極体。
【請求項4】
前記正極集電端部における前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータの座屈角度は、前記正極合剤層の先細り形状が為す角度と同程度であり、
前記負極集電端部における前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータの座屈角度は、前記負極合剤層の先細り形状が為す角度と同程度である、請求項3に記載の電極体。
【請求項5】
前記正極合剤層の端部及び前記負極合剤層の端部が略垂直面を有する場合、
前記第1の座屈位置は、前記正極合剤層の略垂直面と、前記負極シートの端部との間にあり、
前記第2の座屈位置は、前記負極合剤層の略垂直面と、前記正極シートの端部との間にある、請求項2に記載の電極体。
【請求項6】
前記電極体は、捲回型電極体または積層型電極体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電極体。
【請求項7】
前記正極集電端部と接触する接触面を有し、前記接触面を介して前記正極集電端部に応力を加えることにより、前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータ座屈させる正極端子と、
前記負極集電端部と接触する接触面を有し、前記接触面を介して前記負極集電端部に応力を加えることにより、前記負極シート、前記正極シート及び前記セパレータ座屈させる負極端子と
を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極体。
【請求項8】
前記正極端子の接触面の幅方向内側端部及び前記負極端子の接触面の幅方向内側端部が、湾曲していることを特徴とする、請求項7に記載の電極体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電極体を備えた二次電池。
【請求項10】
正極シートと、負極シートと、前記正極シート及び前記負極シートを絶縁するセパレータが積層された電極体を備える二次電池の製造方法であって、
前記電極体の正極集電端部において、前記正極シート少なくとも一部である第1の正極シートと、前記第1の正極シートと隣り合う第1のセパレータと、前記第1のセパレータに隣接する前記負極シートを、積層方向に略垂直な幅方向において前記負極シートの端部よりも内側に位置する第1の座屈位置で積層方向内側に座屈させる第1の座屈工程と、
前記電極体の負極集電端部において、前記負極シート少なくとも一部である第2の負極シートと前記第2の負極シートと隣り合う第2のセパレータと、前記第2のセパレータに隣接する前記正極シートを、前記幅方向において前記正極シートの端部よりも内側に位置する第2の座屈位置で積層方向内側に座屈させる第2の座屈工程と
を含む、二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記第1の座屈工程において、上側押圧部材及び下側押圧部材の押圧面を介して前記正極集電端部に応力を加えることにより、前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータ座屈させ、
前記第2の座屈工程において、上側押圧部材及び下側押圧部材の押圧面を介して前記負極集電端部に応力を加えることにより、前記負極シート、前記正極シート及び前記セパレータ座屈させることを特徴とする、請求項10に記載の二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記上側押圧部材の押圧面の前記電極体側の端部及び前記下側押圧部材の押圧面の前記電極体側の端部が、湾曲していることを特徴とする、請求項11に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電極体、二次電池及び二次電池の製造方法に関し、特に、正極シート、負極シート及びセパレータが積層された電極体、当該電極体を備えた二次電池並びに当該二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等では、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の角型二次電池が採用されている。このような角型二次電池は、捲回型電極体や積層型電極体等の電極体を備えている。電極体の幅方向の端部では、集電体の活物質未塗工部が、幅方向に延在して集電板と接合される。その際、電極体端部は束ねた状態で集電板と接合されるため、図3に示すように、電極体の積層方向の外側では、延在した集電体の活物質未塗工部が、隣接する電極シートの端部位置で積層方向内側に座屈し、セパレータが当該電極シートの端部と接触してセパレータに圧力が加わる。その結果、セパレータが破損し、短絡が発生するという問題があった。
【0003】
この点に関し、特許文献1が開示する電極組立体では、集電板の近傍で集電体を座屈させることにより、集電体が、隣接する対極の電極板と接触するのを回避し、短絡が発生することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-82499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する電極組立体では、集電体が、隣接する対極の電極板と接触するのを回避するために、集電板の近傍で集電体を座屈させる構成を採用するため(特許文献1の図3)、一定の大きさの折り曲げ領域を電極体の集電端部に確保しなければならない。このため、正極合剤層の領域及び負極合剤層の領域を幅方向外側に拡張することができず、電極体の蓄電容量を増大させることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、正極シート、負極シート及びセパレータが積層された電極体においてセパレータの破損に起因する短絡を発生させることなく、また、電池性能を低下させることなく、電極体の蓄電容量を増大させることが可能な電極体、二次電池及び二次電池の製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る電極体は、正極シートと、負極シートと、前記正極シート及び前記負極シートを絶縁するセパレータが積層された電極体であり、前記電極体の正極集電端部では、前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータの少なくとも一部が、積層方向に略垂直な幅方向において前記負極シートの端部よりも内側に位置する第1の座屈位置で積層方向内側に座屈され、前記電極体の負極集電端部では、前記負極シート、前記正極シート及び前記セパレータの少なくとも一部が、前記幅方向において前記正極シートの端部よりも内側に位置する第2の座屈位置で積層方向内側に座屈されている。
【0008】
また、前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の両面に形成された正極合剤層とを含み、前記電極体の正極集電端部では、前記正極合剤層の端部が、前記幅方向において前記負極シートの端部よりも内側に配置され、前記第1の座屈位置は、前記正極合剤層の端部と、前記負極シートの端部との間にあることが好ましい。さらに、前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の両面に形成された負極合剤層とを含み、前記電極体の負極集電端部では、前記負極合剤層の端部が、前記幅方向において前記正極シートの端部よりも内側に配置され、前記第2の座屈位置は、前記負極合剤層の端部と、前記正極シートの端部との間にあることが好ましい。
【0009】
さらに、前記正極合剤層の端部及び前記負極合剤層の端部が先細り形状をしている場合、前記第1の座屈位置は、前記正極合剤層の先細り開始位置と、前記負極シートの端部との間にあり、前記第2の座屈位置は、前記負極合剤層の先細り開始位置と、前記正極シートの端部との間にあることが好ましい。この場合、前記正極集電端部における前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータの座屈角度は、前記正極合剤層の先細り形状が為す角度と同程度であり、前記負極集電端部における前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータの座屈角度は、前記負極合剤層の先細り形状が為す角度と同程度であることが好ましい。
【0010】
さらに、前記正極合剤層の端部及び前記負極合剤層の端部が略垂直面を有する場合、前記第1の座屈位置は、前記正極合剤層の略垂直面と、前記負極シートの端部との間にあり、前記第2の座屈位置は、前記負極合剤層の略垂直面と、前記正極シートの端部との間にあることが好ましい。
【0011】
さらに、前記電極体は、捲回型電極体または積層型電極体とすることができる。
【0012】
さらに、本発明の一実施形態に係る電極体は、前記正極集電端部と接触する接触面を有し、前記接触面を介して前記正極集電端部に応力を加えることにより、前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータの少なくとも一部を座屈させる正極端子と、前記負極集電端部と接触する接触面を有し、前記接触面を介して前記負極集電端部に応力を加えることにより、前記負極シート、前記正極シート及び前記セパレータの少なくとも一部を座屈させる負極端子とを備えることができる。前記正極端子の接触面の幅方向内側端部及び前記負極端子の接触面の幅方向内側端部は、湾曲していることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の一実施形態に係る二次電池は、前記電極体を備える。
【0014】
さらに、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、正極シートと、負極シートと、前記正極シート及び前記負極シートを絶縁するセパレータが積層された電極体を備える二次電池の製造方法であり、前記電極体の正極集電端部における前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータの少なくとも一部を、積層方向に略垂直な幅方向において前記負極シートの端部よりも内側に位置する第1の座屈位置で積層方向内側に座屈させる第1の座屈工程と、前記電極体の負極集電端部における前記負極シート、前記正極シート及び前記セパレータの少なくとも一部を、前記幅方向において前記正極シートの端部よりも内側に位置する第2の座屈位置で積層方向内側に座屈させる第2の座屈工程とを含む。
【0015】
さらに、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、前記第1の座屈工程において、上側押圧部材及び下側押圧部材の押圧面を介して前記正極集電端部に応力を加えることにより、前記正極シート、前記負極シート及び前記セパレータの少なくとも一部を座屈させ、前記第2の座屈工程において、上側押圧部材及び下側押圧部材の押圧面を介して前記負極集電端部に応力を加えることにより、前記負極シート、前記正極シート及び前記セパレータの少なくとも一部を座屈させることができる。前記上側押圧部材の押圧面の前記電極体側の端部及び前記下側押圧部材の押圧面の前記電極体側の端部は、湾曲していることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、正極シート、負極シート及びセパレータが積層された電極体においてセパレータの破損に起因する短絡を発生させることなく、また、電池性能を低下させることなく、電極体の蓄電容量を増大させることが可能な電極体、二次電池及び二次電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池であるバッテリーモジュールを示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電極体の積層方向外側の正極集電端部を示す水平断面図である。
図3】従来の電極体の集電端部における座屈の様子を示す図である。
図4】従来の電極体の集電端部における座屈の様子を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る電極体の集電端部を座屈させるための上側押圧部材及び下側押圧部材の一例を示す図である。
図6図5に示す上側押圧部材及び下側押圧部材を用いて電極体の集電端部を座屈させた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の一実施形態に係る角型二次電池であるバッテリーモジュール10を示す概略図である。バッテリーモジュール10は、バッテリーセルである捲回型電極体または積層型電極体等の電極体を収容している。これらの電極体は、正極を構成する電極シート(以下、「正極シート」とする。)と、負極を構成する電極シート(以下、「負極シート」とする。)を備えている。正極シート及び負極シートに蓄電された電気は、それぞれ正極集電端部及び負極集電端部で集電され、正極端子11及び負極端子12から出力される。
【0019】
以下の説明では、バッテリーモジュール10内の正極シート及び負極シートが積層された方向を積層方向とし、積層方向に略垂直な方向を幅方向とする。なお、本実施形態では、正極端子11及び負極端子12は、バッテリーモジュール10の上面に配置されるが、バッテリーモジュール10の幅方向の側面に正極端子11及び負極端子12を配置してもよい。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る電極体の積層方向外側の正極集電端部を示す水平断面図であり、押圧される前の電極体20と、積層方向の両側から押圧された後の電極体30を示している。なお、図2は、積層方向において電極体20,30の正極集電端部の一方の外側のみを示しているが、電極体20,30の正極集電端部の他方の外側も同様に座屈される。
【0021】
電極体20は、正極シート200,201,202と、負極シート210,211,212と、セパレータ220~226とを備えており、これらの正極シート、負極シート及びセパレータが積層されている。積層方向において最外側でないセパレータ221~226は、正極シート200,201,202と、負極シート210,211,212との間に配置され、これらの正極シート及び負極シートを絶縁する。ここで、捲回型電極体は、例えば、1枚の正極シートと、1枚の負極シートと、2枚のセパレータを積層して捲回することによって形成される。一方、積層型電極体は、複数の正極シートと、複数の負極シートと、複数のセパレータを積層することによって形成される。
【0022】
正極シート200,201,202は、それぞれ正極集電体200a,201a,202aと、これらの正極集電体の両面に形成された正極合剤層200b,201b,202bとを含む。正極集電体200a,201a,202aは、幅方向外側に延在し、正極集電板(図示せず)と接合される。正極合剤層200b,201b,202bは、正極活物質(コバルト酸リチウム等)や導電剤、バインダを含む正極合剤スラリーで構成され、正極合剤スラリーを正極集電体(アルミニウム等)に塗布し、乾燥焼入れすることによって形成される。本図に示すように、正極集電端部では、先細り形状の正極合剤層200b,201b,202bの端部が、幅方向において負極シート210,211,212の端部よりも内側に配置される。
【0023】
負極シート210,211,212は、それぞれ負極集電体210a,211a,212aと、これらの負極集電体の両面に形成された負極合剤層210b,211b,212bとを含む。負極集電体210a,211a,212aは、幅方向外側に延在し、負極集電板と接合される(図示せず)。負極合剤層210b,211b,212bは、負極活物質(グラファイト等)や導電剤、バインダを含む負極合剤スラリーで構成され、負極合剤スラリーを負極集電体(銅等)に塗布し、乾燥焼入れすることによって形成される。正極集電端部と同様に、負極集電端部では、先細り形状の負極合剤層210b,211b,212bの端部が、幅方向において正極シート200,201,202の端部よりも内側に配置される(図示せず)。
【0024】
本発明の二次電池の製造方法では、電極体20の正極集電端部及び負極集電端部に積層方向両側から圧力を加える。より詳細には、電極体20の正極集電端部では、本図に示すように、正極合剤層200b,201b,202bの先細り開始位置と、負極シート210,211,212の端部位置との間の第1の座屈位置で電極体20が座屈されるように、電極体20を押圧する。ここで、正極合剤層200b,201b,202bの先細り開始位置は、正極合剤層200b,201b,202bとセパレータ221~226が接触する位置のうち幅方向最外側の位置である。
【0025】
電極体20を積層方向外側から押圧すると、電極体20の正極集電端部は、電極体30のような形状に変化する。電極体30の正極集電端部では、正極集電体200a,201a,202aと、負極シート211,212と、セパレータ222,223,224,225,226が、第1の座屈位置で積層方向内側に座屈する。
【0026】
同様に、電極体20の負極集電端部では、負極合剤層210b,211b,212bの先細り開始位置と、正極シート200,201,202の端部位置との間の第2の座屈位置で電極体20が座屈されるように、電極体20を押圧する。ここで、負極合剤層210b,211b,212bの先細り開始位置は、負極合剤層210b,211b,212bとセパレータ221~226が接触する位置のうち幅方向最外側の位置である。電極体20を積層方向外側から押圧すると、電極体20の負極集電端部では、負極集電体210a,211a,212aと、正極シート200,201,202と、セパレータ222,223,224,225,226が、第2の座屈位置で積層方向内側に座屈する。
【0027】
なお、本図では、負極シート210及びセパレータ220,221には、説明の便宜上、積層方向内側に座屈していないが、本発明の二次電池の製造方法によって電極体に加わる押圧力の大きさに依存して、負極シート210及びセパレータ220,221が積層方向内側に座屈する。また、積層方向外側の正極シート、負極シート及びセパレータは、積層方向内側の正極シート、負極シート及びセパレータに比べ、座屈の程度が大きくなる。さらに、中心部の正極シート、負極シート及びセパレータは座屈しない。すなわち、本発明の二次電池の製造方法により、正極シート、負極シート及びセパレータの少なくとも一部が積層方向内側に座屈する。
【0028】
図5は、電極体30の集電端部を座屈させるための上側押圧部材40及び下側押圧部材50を示す図である。図6は、上側押圧部材40及び下側押圧部材50を用いて、電極体30の集電端部を座屈させた様子を示す図である。
【0029】
上側押圧部材40は、ホーンに固定され、電極体30の正極集電端部及び負極集電端部を上側から押圧する部材である。上側押圧部材40は、押圧面である底面を介して電極体30の集電端部に応力を加えることにより、電極体30の集電端部の正極シート、負極シート及びセパレータを座屈させる。上側押圧部材40の押圧面の電極体側の端部41は、図5に示すように湾曲している。また、上側押圧部材40には、電極体30の集電端部に取付けられた集電端子との干渉を回避するため、開口42を設けることができる。
【0030】
下側押圧部材50は、アンビルに固定され、電極体30の正極集電端部及び負極集電端部を下側から押圧する部材である。下側押圧部材50は、押圧面である上面を介して電極体30の集電端部に応力を加えることにより、電極体30の集電端部の正極シート、負極シート及びセパレータを座屈させる。下側押圧部材50の押圧面の電極体側の端部51は、図5に示すように湾曲している。
【0031】
上側押圧部材40は、ホーンが下側に移動することにより、上側押圧部材40が下側押圧部材50に向かって移動し、図6に示すように、上側押圧部材40の押圧面及び下側押圧部材50の押圧面を介して電極体30の集電端部に応力が加わるため、電極体30の集電端部に対して応力を分散的に加えることができる。このため、集電端部に含まれるセパレータの一部に対して応力が集中的に加わることがないため、セパレータの破損を防ぐことができ、これに起因する短絡の発生を防止することができる。また、上側押圧部材40及び下側押圧部材50の押圧面の電極体側の端部41,51が湾曲していることにより、これらの端部と接する電極体30の集電端部を滑らかに座屈させることができ、当該集電端部に含まれるセパレータの破損を確実に防止することができる。
【0032】
上述した実施形態では、正極集電端部において負極シートの端部よりも幅方向内側の第1の座屈位置で正極集電体、負極シート及びセパレータが座屈され、負極集電端部において正極シートの端部よりも幅方向内側の第2の座屈位置で負極集電体、正極シート及びセパレータが座屈される。このため、図3に示すような正極の集電体を負極シートの端部位置で屈曲させる構成、または、負極の集電体を正極シートの端部位置で屈曲させる構成に比べて、正極集電体及び負極集電体が、それぞれ隣接するセパレータに加える応力を低下させることができ、セパレータの破損に起因する短絡を防止することができる。また、図4に示すような電極体の集電端部においてセパレータの端部よりも幅方向外側で集電体を座屈させる構成と異なり、セパレータの端部よりも幅方向外側に座屈領域を設ける必要がない。このため、正極集電端部における正極合剤層の領域を拡張できると共に、負極集電端部における負極合剤層の領域を拡張することができ、電極体の蓄電容量を増大させることができる。
【0033】
さらに、上述した実施形態では、正極集電体及び負極シートを、正極合剤層が存在しない第1の座屈位置で座屈させると共に、負極集電体及び正極シートを、負極合剤層が存在しない第2の座屈位置で座屈させるが、本発明を創作する過程において、このような座屈位置で正極シート及び負極シートの双方を座屈させても、電池性能への悪影響が無いことが新たに判明した。すなわち、本発明は、上述した第1及び第2の座屈位置で電極シートを座屈させることにより、電池性能の低下を防ぐことができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、図2に示す実施形態では、正極合剤層の先細り開始位置よりも幅方向外側の位置と、負極合剤層の先細り開始位置よりも幅方向外側の位置で電極シート及びセパレータを座屈させるが、他の実施形態では、正極合剤層の先細り開始位置及び負極合剤層の先細り開始位置で電極シート及びセパレータを座屈させてもよい。これは、これらの合剤層の先細り部分は電池性能への寄与度が小さいため、当該先細り部分に隣接する電極シートを座屈させても、電池性能に悪影響を及ぼさないことによる。この場合、正極集電端部における電極シート及びセパレータの座屈角度を、正極合剤層の先細り形状が為す角度と同程度とし、負極集電端部における電極シート及びセパレータの座屈角度を、負極合剤層の先細り形状が為す角度と同程度とすることが好ましい。これにより、正極合剤層及び負極合剤層同士が圧迫されることがなく、電池性能への悪影響を確実に防ぐことができる。
【0035】
また、上述した実施形態では、正極合剤層の端部及び負極合剤層の端部が先細り形状をしているが、他の実施形態では、正極合剤層の端部及び負極合剤層の端部が略垂直面を有してもよい。この場合、第1の座屈位置は、正極合剤層の端部の略垂直面と、負極シートの端部との間にあり、第2の座屈位置は、負極合剤層の端部の略垂直面と、正極シートの端部との間にある。
【0036】
さらに、上述した実施形態では、正極集電端部における第1の座屈位置の幅方向内側の限界位置は、正極合剤層200b,201b,202bの先細り開始位置としているが、他の実施形態では、電池性能に悪影響を及ぼさない限りにおいて、正極合剤層200b,201b,202bの先細り開始位置よりも幅方向内側の位置を、第1の座屈位置の幅方向内側の限界位置としてもよい。同様に、負極集電端部では、負極合剤層210b,211b,212bの先細り開始位置よりも幅方向内側の位置を、第2の座屈位置の幅方向内側の限界位置としてもよい。
【0037】
さらに、他の実施形態では、上側押圧部材40の下部形状及び下側押圧部材50の上部形状と同様の形状を有する正極端子及び負極端子を電極体30の集電端部に取付けることができる。正極端子は、電極体30の正極集電端部と接触する接触面を有しており、当該接触面を介して正極集電端部に応力を加えることにより、正極シート、負極シート及びセパレータの少なくとも一部を座屈させることができる。負極端子は、電極体30の負極集電端部と接触する接触面を有しており、当該接触面を介して負極集電端部に応力を加えることにより、負極シート、正極シート及びセパレータの少なくとも一部を座屈させることができる。正極端子の接触面の幅方向内側端部及び負極端子の接触面の幅方向内側端部は、上側押圧部材40及び下側押圧部材50の押圧面の電極体側の端部41,51と同様に湾曲していることが好ましい。
【符号の説明】
【0038】
10 バッテリーモジュール
11 正極端子
12 負極端子
20 電極体
30 電極体
200~202 正極シート
200a~202a 正極集電体
200b~202b 正極合剤層
210~212 負極シート
210a~212a 負極集電体
210b~212b 負極合剤層
220~226 セパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6