(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】連結具
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20220805BHJP
E21D 11/08 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
E21D11/04 A
E21D11/08
(21)【出願番号】P 2019077745
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 資
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅由
(72)【発明者】
【氏名】新井 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】紀伊 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】大塚 弘己
(72)【発明者】
【氏名】尾上 聡
(72)【発明者】
【氏名】三浦 拓巳
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-89179(JP,A)
【文献】特開平9-60488(JP,A)
【文献】特開2003-184493(JP,A)
【文献】特開2015-140540(JP,A)
【文献】特開2003-307098(JP,A)
【文献】特開2001-254712(JP,A)
【文献】特開2003-247397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル周方向に隣り合うセグメントどうしを連結する連結具であって、
一方のセグメントに突出して設けられる雄継手と、
他方のセグメントに設けられ、前記雄継手をトンネル軸方向にスライド可能に収容する収容部を有する雌継手と、を備え、
前記雄継手は、前記トンネル軸方向に向かって断面が小さくなるように形成されたテーパ部を有し、
前記雌継手は、
前記収容部の内側面に形成され前記雄継手のスライドによって前記テーパ部と嵌合する嵌合部と、
前記テーパ部と前記嵌合部とが嵌合した状態で前記雄継手と係合し前記雄継手のスライドを規制する規制部と、を有する連結具。
【請求項2】
前記雌継手は、
前記収容部に連通して形成され前記規制部を収容する第1穴部と、
前記規制部を前記第1穴部から前記収容部に向けて付勢する付勢部材と、を更に備え、
前記規制部は、前記雄継手のスライドによって前記テーパ部と前記嵌合部とが嵌合した際に前記付勢部材の付勢力により前記第1穴部から前記収容部に突出して前記雄継手と係合する
請求項1に記載の連結具。
【請求項3】
前記収容部にスライド可能に収容され、前記雄継手のスライド前において、前記付勢部材の付勢力に抗して前記規制部を前記第1穴部内に保持する保持部材を更に備え、
前記保持部材による前記規制部の保持は、前記雄継手のスライドに伴って前記保持部材がスライドすることによって解除される
請求項2に記載の連結具。
【請求項4】
前記雌継手は、前記収容部に連通すると共に前記第1穴部と対向して形成され前記規制部の先端側を収容可能な第2穴部を更に備え、
前記規制部は、前記雄継手と係合した状態では、前記雄継手を跨いで前記第1穴部と前記第2穴部との間に渡って配置される
請求項2又は3に記載の連結具。
【請求項5】
前記雄継手は、前記テーパ部が突出して設けられる本体部を更に備え、
前記規制部は、前記テーパ部と前記嵌合部とが嵌合した状態で前記本体部と係合する
請求項1から4のいずれか1項に記載の連結具。
【請求項6】
前記規制部は、前記本体部におけるスライド方向背面と係合する
請求項5に記載の連結具。
【請求項7】
前記雄継手は、前記テーパ部が突出して設けられる本体部を更に備え、
前記本体部は、前記一方のセグメントから前記トンネル周方向に突出しており、
前記規制部は、前記テーパ部と前記嵌合部とが嵌合した状態で前記本体部の突出方向に沿って前記本体部と係合する
請求項1又は2に記載の連結具。
【請求項8】
前記本体部には溝が形成され、
前記規制部は、前記溝に進入することにより前記本体部と係合する
請求項7に記載の連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル周方向に隣り合うセグメントどうしを連結する連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道、共同溝、道路及び鉄道等の管路として用いられるシールドトンネルは、いわゆるシールド工法により構築される。シールド工法では、シールド掘進機で地山を掘削し、複数のセグメントリングをトンネル軸方向に連結することで筒状の覆工体を構築する。セグメントリングは、シールド掘進機の後方で複数の円弧状のセグメントを環状に連結することによって組立てられる。連結されたセグメントどうしの間にガタつきがあるとセグメントリングを所望の形状で組立てることができない。このような理由から、トンネル周方向に隣り合うセグメントどうしをガタつきなく連結する連結構造が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示される連結構造は、嵌合孔を有する雌型連結具と、嵌合孔内へ嵌合できる雄型連結具と、を備えている。雌型連結具の嵌合孔は、トンネル軸方向へ絞まる截頭円錐形状に形成されており、雄型連結具は、雌型連結具の嵌合孔内へトンネル軸方向から挿入して嵌合できるように截頭円錐形状に形成されている。雄型連結具を雌型連結具の嵌合孔内へ押し込むことにより、雄型連結具は雌型連結具の嵌合孔の内壁面を押圧し、ガタつくことなく嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シールド工法では、セグメントどうしを連結した後に地山の内周面とセグメントの外周面との間に裏込め材を充填する。そのため、セグメントは、裏込め材の圧力をトンネル軸方向に受ける。また、セグメントは、地山における湧水の圧力をトンネル軸方向に受けることがある。特許文献1に開示される連結構造では、雌型連結具の嵌合孔と雄型連結具とが截頭円錐形状に形成されているため、セグメントが裏込め材及び湧水の圧力等の外力をトンネル軸方向に受けたときに雄型連結具が雌型連結具の嵌合孔から抜け、嵌合が解除されるおそれがある。
【0006】
本発明は、セグメントが外力をトンネル軸方向に受けた場合においてもトンネル周方向に隣り合うセグメントどうしをガタつきなく連結することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トンネル周方向に隣り合うセグメントどうしを連結する連結具であって、一方のセグメントに突出して設けられる雄継手と、他方のセグメントに設けられ、雄継手をトンネル軸方向にスライド可能に収容する収容部を有する雌継手と、を備え、雄継手は、トンネル軸方向に向かって断面が小さくなるように形成されたテーパ部を有し、雌継手は、収容部の内側面に形成され雄継手のスライドによってテーパ部と嵌合する嵌合部と、テーパ部と嵌合部とが嵌合した状態で雄継手と係合し雄継手のスライドを規制する規制部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セグメントが外力をトンネル軸方向に受けた場合においてもトンネル周方向に隣り合うセグメントどうしをガタつきなく連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る連結具を用いてセグメントどうしを連結することによって組立てられるセグメントリングの斜視図である。
【
図2】(a)は
図1に示す連結具の一部断面図であり、連結前の状態を示し、(b)は
図2(a)に示すIIB-IIB線に沿う断面図であり、(c)は
図2(a)に示すIIC-IIC線に沿う断面図である。
【
図3】(a)は
図2に示す連結具を用いてセグメントどうしを連結する手順を説明するための図であり、連結具の雄継手をセグメントの穴部に挿入した状態を示し、(b)は
図3(a)に示すIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
【
図4】(a)は
図2に示す連結具を用いてセグメントどうしを連結する手順を説明するための図であり、連結具の雄継手を雌継手の収容部に挿入した状態を示し、(b)は
図4(a)に示すIVB-IVB線に沿う断面図である。
【
図5】(a)は
図2に示す連結具を用いてセグメントどうしを連結した状態を示す図であり、(b)は
図5(a)に示すVB-VB線に沿う断面図である。
【
図6】(a)は雄継手を設けた一方のセグメントを先にトンネルに設置し雌継手を設けた他方のセグメントを一方のセグメントに連結する手順を説明するための図であり、(b)は
図6(a)に示すVIB-VB線に沿う断面図である。
【
図7】(a)は本発明の第2実施形態に係る連結具の一部断面図であり、連結前の状態を示し、(b)は
図7(a)に示すVIIB-VIIB線に沿う断面図であり、(c)は
図2(a)に示すVIIC-VIIC線に沿う断面図である。
【
図8】(a)は
図7に示す連結具を用いてセグメントどうしを連結する手順を説明するための図であり、連結具の雄継手を雌継手の収容部に挿入した状態を示し、(b)は
図8(a)に示すVIIIB-VIIIB線に沿う断面図である。
【
図9】(a)は
図7に示す連結具を用いてセグメントどうしを連結した状態を示す図であり、(b)は
図9(a)に示すIX-IX線に沿う断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る連結具をB型セグメントとK型セグメントの連結に適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る連結具について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図4を参照して、第1実施形態に係る連結具100について説明する。
【0012】
上下水道、共同溝、道路及び鉄道等の管路として用いられるシールドトンネルは、いわゆるシールド工法により構築される。シールド工法では、不図示のシールド掘進機で地山を掘削し、
図1に示すセグメントリング1をトンネル軸方向に複数並べて連結することで筒状の覆工体を構築する。セグメントリング1は、シールド掘進機の後部で複数の円弧状のセグメント2を環状に連結することによって組立てられる。
【0013】
セグメント2は、例えば、主にコンクリートを用いて形成されるRCセグメントである。セグメント2は、主に鋼材を用いて形成される鋼製セグメントであってもよいし、主にコンクリートと鋼材とを用いて形成される合成セグメントであってもよい。
【0014】
連結されたセグメント2どうしの間にガタつきがあると、セグメントリング1を所望の形状で組立てることができない。このような理由から、トンネル周方向に隣り合うセグメント2どうしをガタつきなく連結することが求められている。本実施形態に係る連結具100は、トンネル周方向に隣り合うセグメント2どうしの連結に用いられる。
【0015】
なお、
図1に示すセグメントリング1は、3つのA型セグメント2Aと、3つのA型セグメント2Aのうちの両端のA型セグメント2Aにそれぞれ連結される2つのB型セグメント2Bと、2つのB型セグメント2Bの間に配置されて連結されるK型セグメント2Kと、を用いて形成されている。連結具100は、A型セグメント2Aどうしの連結、A型セグメント2AとB型セグメント2Bとの連結、B型セグメント2BとK型セグメント2Kとの連結のいずれにも用いることができる。
【0016】
ここでは、A型セグメント2Aどうしの連結、及びA型セグメント2AとB型セグメント2Bとの連結に連結具100を用いる場合について、
図2から
図6を参照して説明する。
【0017】
図2(b)、
図2(c)、
図3(b)、
図4(b)、
図5(b)及び
図6(b)において、紙面上側がセグメント2の内周側(セグメントリング1の内側)であり、紙面下側がセグメント2の外周側(セグメントリング1の外側)である。紙面下側がセグメント2の内周側であり紙面上側がセグメント2の外周側であってもよい。
【0018】
以下において、
図2に示すように、トンネル周方向に隣り合うセグメント2の一方を「セグメント2a」と称し他方を「セグメント2b」と称する。セグメント2a,2bには、トンネル周方向に互いに対向する対向面2c,2dがそれぞれ形成されており、セグメント2bには、対向面2dに略矩形状に開口する穴部2eが形成されている。
【0019】
連結具100は、セグメント2aに突出して設けられる雄継手10と、セグメント2bに設けられる雌継手20と、を備えている。雌継手20は、雄継手10をトンネル軸方向にスライド可能に収容する収容部20aを有しており、雄継手10を雌継手20の収容部20aに収容することによってセグメント2aとセグメント2bとが連結される。
【0020】
雄継手10は、セグメント2aに埋設されるアンカーブロック11と、アンカーブロック11から延在する板状の本体部12と、本体部12の表面12a及び裏面12bに突出するように設けられるテーパ部13,14と、を備えている。アンカーブロック11には、本体部12とは反対側に延びるアンカー筋15が固定されている。アンカーブロック11及びアンカー筋15は、本体部12がセグメント2aの対向面2cからトンネル周方向に突出するようにセグメント2aに埋設されている。
【0021】
本体部12の断面は略矩形である。本体部12の表面12a及び裏面12bは、トンネル軸方向と略平行であり、本体部12の側面12c,12dは、トンネル軸方向と略直交する。
【0022】
テーパ部13は、トンネル軸方向(セグメント2aとセグメント2bとを連結する際に雄継手10をスライドさせる方向)に向かって断面が小さくなるように形成されている。具体的には、テーパ部13の上面13aは、トンネル軸方向と略平行であり、テーパ部13の両側面13b,13cは、トンネル軸方向に対して傾斜している。テーパ部13の側面13b,13cどうしの間の幅は、本体部12の側面12dから側面12cに向かうにつれ狭くなっている。
【0023】
テーパ部14は、テーパ部13と同様に、トンネル軸方向(セグメント2aとセグメント2bとを連結する際に雄継手10をスライドさせる方向)に向かって断面が小さくなるように形成されている。
【0024】
雌継手20は、収容部20aを形成するハウジング22と、ハウジング22と一体に形成されるアンカーブロック21と、を備えている。アンカーブロック21にはハウジング22とは反対側に延びるアンカー筋25が固定されている。アンカーブロック21及びアンカー筋25は、ハウジング22がセグメント2bの穴部2eに位置するようにセグメント2bに埋設されている。
【0025】
穴部2eには、ハウジング22の収容部20aとトンネル軸方向に連続し穴部2eの外側から雄継手10が挿入可能な挿入空間2fが形成されている。
【0026】
雌継手20のハウジング22は、トンネル軸方向に挿入空間2fに臨む側面22aと、側面22aの縁からセグメント2bの対向面2dに沿って延びる側面22bと、を有している。雌継手20の収容部20aは、ハウジング22の側面22aと側面22bとに渡って略矩形状に開口しており、挿入空間2fと連通している。
【0027】
収容部20aには、ハウジング22における側面22aの開口縁からトンネル軸方向に延び互いに対向する内側面22c,22dが形成されている。内側面22c,22dの間には、雄継手10における本体部12が挿入可能な程度の間隔が設けられている。
【0028】
収容部20aの内側面22cには、雄継手10のテーパ部13,14と嵌合する凹状の嵌合部23a,24aと、嵌合部23a,24aからハウジング22の側面22aまでトンネル軸方向に延びる案内溝23b,24bと、が形成されている。雄継手10のテーパ部13,14は、案内溝23b,24bに挿入可能であり、案内溝23b,24bは、テーパ部13,14を嵌合部23a,24aに案内する。
【0029】
このように、雄継手10の本体部12が収容部20aの内側面22c,22dの間に挿入可能であると共に、テーパ部13,14がトンネル軸方向に延びる案内溝23b,24bに挿入可能である。そのため、雄継手10をセグメント2bの挿入空間2fに挿入しハウジング22に向けてスライドさせることにより、雄継手10を収容部20aに収容することができる。
【0030】
嵌合部23aは、雄継手10のテーパ部13と同様に、トンネル軸方向(セグメント2aとセグメント2bとを連結する際に雄継手10をスライドさせる方向)に向かって断面が小さくなるように形成されている。具体的には、嵌合部23aの底面はトンネル軸方向と略平行であり、嵌合部23aの両側面は、トンネル軸方向に対して傾斜している。嵌合部23aの側面どうしの間隔は、セグメント2aとセグメント2bとを連結する際に雄継手10をスライドさせる方向に向かうにつれ狭くなっている。
【0031】
嵌合部23aのテーパ角度は、雄継手10におけるテーパ部13のテーパ角度よりも小さい。そのため、嵌合部23aは、トンネル軸方向への雄継手10のスライドによってテーパ部13と嵌合する。なお、嵌合部23aのテーパ角度は、トンネル軸方向に対する嵌合部23aの側面の角度であり、テーパ部13のテーパ角度は、トンネル軸方向に対するテーパ部13の側面13b,13cの角度である。
【0032】
嵌合部24aは、嵌合部23aと同様に、トンネル軸方向(セグメント2aとセグメント2bとを連結する際に雄継手10をスライドさせる方向)に向かって断面が小さくなるように形成されている。嵌合部24aのテーパ角度は、雄継手10におけるテーパ部14のテーパ角度よりも小さい。そのため、嵌合部24aは、トンネル軸方向への雄継手10のスライドによってテーパ部14と嵌合する。
【0033】
雌継手20は、雄継手10のスライドを規制可能な規制ピン(規制部)26と、規制ピン26を収容可能な第1穴部20bと、規制ピン26を付勢するコイルばね(付勢部材)28と、を備えている。
【0034】
第1穴部20bは、ハウジング22の外側面に固定されたケース27に形成されている。ハウジング22には案内溝23bの底面に開口する貫通孔22eが形成されており、第1穴部20bは、貫通孔22eを通じて収容部20aに連通している。規制ピン26は、第1穴部20bから収容部20aに突出することにより雄継手10のスライドを規制し、収容部20aから第1穴部20bに没入することにより雄継手10のスライドを許容する。
【0035】
コイルばね28は、圧縮された状態で第1穴部20bに収容されており、規制ピン26を第1穴部20bから収容部20aに向けて付勢する。規制ピン26は、コイルばね28の付勢力により第1穴部20bから収容部20aに突出する。
【0036】
収容部20aにはコイルばね28の付勢力に抗して規制ピン26を第1穴部20bに保持可能な保持部材30がスライド可能に収容されている。保持部材30は、雄継手10が雌継手20の収容部20aに挿入される前では、規制ピン26が突出する方向に規制ピン26と対向して配置されており、コイルばね28の付勢力に抗して規制ピン26を第1穴部20bに保持する。保持部材30による規制ピン26の保持は、保持部材30のスライドによって解除される。
【0037】
保持部材30には、窪み31が形成されている。雄継手10が雌継手20の収容部20aに挿入される前では、規制ピン26の先端は窪み31に進入している。規制ピン26の先端は丸く形成されており、窪み31は擂り鉢状に形成されている。そのため、保持部材30がトンネル軸方向に力を受けた際には、規制ピン26は、第1穴部20bに没入する方向の力を窪み31の内側面から受ける。したがって、保持部材30に所定値以上の力をトンネル軸方向に加えることにより、規制ピン26を窪み31から第1穴部20bに没入させて保持部材30をスライドさせることができる。
【0038】
雌継手20は、規制ピン26の先端側を収容可能な第2穴部20cを備えている。第2穴部20cは、ハウジング22の外側面に固定されたキャップ29に形成されている。ハウジング22には案内溝24bの底面に開口する貫通孔22fが形成されており、第2穴部20cは、貫通孔22fを通じて収容部20aに連通していると共に第1穴部20bと対向している。
【0039】
次に、連結具100を用いてセグメント2a,2bを連結する手順について説明する。ここでは、セグメント2bを先にトンネル内に設置し、その後にセグメント2aをセグメント2bに連結する場合について、
図3から
図5を参照して説明する。この場合、
図3に示すように、雄継手10は、テーパ部13,14の断面が切羽側から坑口側に向かうにつれ小さくなるようにセグメント2aに設けられる。同様に、雌継手20は、嵌合部23a,24aの断面が切羽側から坑口側に向かうにつれ小さくなるようにセグメント2bに設けられる。
【0040】
まず、セグメント2bをトンネル内に設置する。このとき、
図3に示すように、規制ピン26は、保持部材30によってコイルばね28の付勢力に抗して第1穴部20bに保持されている。
【0041】
次に、雄継手10の本体部12をセグメント2bの挿入空間2fに挿入する。次に、セグメント2aを坑口側(白抜き矢印方向)にスライドさせ、雄継手10をスライドさせる。これにより、
図4に示すように、雄継手10の本体部12が雌継手20の収容部20aに挿入されると共にテーパ部13,14が案内溝23b,24bに挿入される。
【0042】
このとき、雄継手10のスライドに伴って保持部材30は坑口側に押されてスライドする。そのため、保持部材30による規制ピン26の保持が解除される。保持部材30が雄継手10に押されてスライドするため、保持部材30による規制ピン26の保持が解除されると同時に、雄継手10が規制ピン26と対向する。そのため、規制ピン26は、第1穴部20bに没入した状態で保持され、雄継手10のスライドを許容する。
【0043】
次に、セグメント2aを坑口側(白抜き矢印の方向)に更にスライドさせ、雄継手10をスライドさせる。これにより、
図5に示すように、雄継手10のテーパ部13,14が嵌合部23a,24aに押し込まれ、嵌合部23a,24aと嵌合する。この状態では、雄継手10のテーパ部13,14は、嵌合部23a,24aの側面を押圧する。したがって、雄継手10と雌継手20との間のガタつきを軽減することができ、セグメント2a,2bをガタつきなく連結することができる。
【0044】
雄継手10のテーパ部13,14が嵌合部23a,24aと嵌合するときには、雄継手10による規制ピン26の保持が解除される。そのため、規制ピン26は、コイルばね28の付勢力により収容部20aに突出して第2穴部20cに進入し、雄継手10を跨いで第1穴部20bと第2穴部20cとの間に渡って配置される。その結果、規制ピン26は、雄継手10における本体部12の側面12dと係合し、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとの嵌合を解除する方向への雄継手10のスライドを規制する。
【0045】
このように、規制ピン26は、雄継手10のテーパ部13,14と雌継手20の嵌合部23a,24aとが嵌合した状態で雄継手10と係合し雄継手10のスライドを規制する。したがって、セグメント2a,2bが外力をトンネル軸方向に受けた場合においても、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとの嵌合を維持することができ、セグメント2a,2bどうしをガタつきなく連結することができる。
【0046】
以上により、セグメント2a,2bの連結が完了する。
【0047】
規制ピン26は、コイルばね28によって付勢されている。そのため、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとが嵌合すると共に規制ピン26の保持が解除されると、規制ピン26は、コイルばね28の付勢力により第1穴部20bから収容部20aに突出して雄継手10と係合する。したがって、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとの嵌合をより容易に維持することができる。
【0048】
規制ピン26は、雄継手10のテーパ部13,14と雌継手20の嵌合部23a,24aとが嵌合した状態では、雄継手10の本体部12と係合する。そのため、セグメント2a,2bが外力をトンネル軸方向に受けた場合においても、本体部12のスライドを規制することができる。したがって、本体部12に突出して設けられるテーパ部13,14と嵌合部23a,24aとの嵌合を維持することができる。
【0049】
規制ピン26は、雄継手10における本体部12の側面12dと係合する。そのため、本体部12に規制ピン26が挿通する孔を形成する場合と比較して、本体部12の強度の低下を防止することができる。なお、本体部12の側面12dを「スライド方向背面」とも称する。
【0050】
規制ピン26は、雄継手10の本体部12を跨いで第1穴部20bと第2穴部20cとに渡って配置された状態では、第1穴部20bと第2穴部20cの2箇所で支持される。したがって、雄継手10のスライドをより確実に規制することができる。
【0051】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0052】
連結具100では、雄継手10のテーパ部13,14と雌継手20の嵌合部23a,24aとが嵌合した状態で、規制ピン26は、雄継手10と係合し雄継手10のスライドを規制する。したがって、セグメント2a,2bが外力をトンネル軸方向に受けた場合においても、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとの嵌合を維持することができ、トンネル周方向に隣り合うセグメント2a,2bどうしをガタつきなく連結することができる。
【0053】
規制ピン26は、雄継手10のスライドによってテーパ部13,14と嵌合部23a,24aとが嵌合する際にコイルばね28の付勢力により第1穴部20bから収容部20aに突出して雄継手10と係合する。そのため、雄継手10のスライドは、テーパ部13,14が嵌合部23a,24aに嵌合するときに規制ピン26によって規制される。したがって、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとの嵌合をより容易に維持することができる。
【0054】
保持部材30による規制ピン26の保持は、雄継手10のスライドに伴って保持部材30がスライドすることによって解除される。そのため、雄継手10を収容部20aに挿入する前から雄継手10をスライドさせてテーパ部13,14を嵌合部23a,24aに嵌合するまでの間に渡って規制ピン26をコイルばね28の付勢力に抗して第1穴部20bに保持することができる。したがって、テーパ部13,14を嵌合部23a,24aに嵌合する際に、雄継手10を容易にスライドさせることができる。
【0055】
規制ピン26は、雄継手10と係合した状態では、雄継手10を跨いで第1穴部20bと第2穴部20cとの間に渡って配置される。そのため、第1穴部20bと第2穴部20cの両方が規制ピン26を支持する。したがって、雄継手10のスライドをより確実に規制することができる。
【0056】
規制ピン26は、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとが嵌合した状態で雄継手10の本体部12と係合する。そのため、セグメント2a,2bが外力をトンネル軸方向に受けた場合においても、本体部12のスライドを規制することができる。したがって、本体部12に突出して設けられるテーパ部13,14と嵌合部23a,24aとの嵌合を維持することができる。
【0057】
規制ピン26は、雄継手10における本体部12の側面12dと係合する。そのため、本体部12に規制ピン26が挿通する孔を形成する場合と比較して、本体部12の強度の低下を防止することができる。
【0058】
上記の説明では、セグメント2bを先にトンネル内に設置し、その後にセグメント2aをセグメント2bに連結する場合について説明したが、セグメント2aを先にトンネル内に設置しその後にセグメント2bをセグメント2aに連結してもよい。この場合には、
図6に示すように、雄継手10は、セグメント2aがトンネル内に設置された際にテーパ部13,14の断面が坑口側から切羽側に向かうにつれ小さくなるようにセグメント2aに設けられる。同様に、雌継手20は、セグメント2bがトンネル内に設置された際に嵌合部23a,24aの断面が坑口側から切羽側に向かうにつれ小さくなるようにセグメント2bに設けられる。テーパ部13,14を嵌合部23a,24aに嵌合する際には、セグメント2bを坑口側(白抜き矢印の方向)にスライドさせればよい。
【0059】
連結具100では、第1穴部20b及び第2穴部20cは、案内溝23b,24bの底面に開口しているが、収容部20aの内側面22c,22dに開口していてもよい。
【0060】
<第2実施形態>
次に、
図7から
図9を参照して本発明の第2実施形態に係る連結具200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
図7(b)、
図7(c)、
図8(b)及び
図9(b)において、紙面上側がセグメント2の内周側(セグメントリング1の内側)であり、紙面下側がセグメント2の外周側(セグメントリング1の外側)である。紙面下側がセグメント2の内周側であり紙面上側がセグメント2の外周側であってもよい。
【0062】
図7に示すように、連結具200の雌継手220は、雄継手210のスライドを規制可能な規制バー(規制部)226と、規制バー226を収容可能な第1穴部220bと、規制バー226を付勢する板ばね(付勢部材)228と、を備えている。規制バー226は、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとが嵌合した状態で雄継手210における本体部212の突出方向に沿うように設けられる。つまり、規制バー226は、本体部212の突出方向に沿って本体部212と係合する。
【0063】
第1穴部220bは、収容部20aの内側面22dに開口するようにハウジング222に形成されており、収容部20aに連通している。規制バー226は、第1穴部220bから収容部20aに突出することにより雄継手210のスライドを規制し、収容部20aから第1穴部220bに没入することにより雄継手210のスライドを許容する。
【0064】
板ばね228は、第1穴部220bに収容されており、規制バー226を第1穴部220bから収容部20aに向けて付勢する。規制バー226は、板ばね228の付勢力により第1穴部220bから収容部20aに突出する。
【0065】
第1穴部220bは、ハウジング222の側面22bまで形成されている。そのため、規制バー226及び板ばね228をハウジング222の側面22bから第1穴部220bに挿入することができ、雌継手220を容易に組立てることができる。
【0066】
規制バー226の先端には、トンネル軸方向に対して傾斜する傾斜面226aが形成されている。そのため、
図8に示すように、雄継手210がテーパ部13,14を嵌合部23a,24aに嵌合させる方向にスライドするときには、規制バー226の傾斜面226aが雄継手210によって押され、規制バー226は板ばね228の付勢力に抗して第1穴部220bに没入する。これにより、雄継手210のスライドが許容される。
【0067】
雄継手210における本体部212の裏面212bには、規制バー226が進入可能な溝216が形成されている。
図9に示すように、雄継手210のテーパ部13,14と雌継手220の嵌合部23a,24aとが嵌合したときには、溝216は、規制バー226と対向する位置に移動する。そのため、規制バー226は、板ばね228の付勢力により第1穴部20bから収容部20aに突出し、溝216に進入する。これにより、規制バー226は、雄継手210の本体部212における溝216と係合し、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとの嵌合を解除する方向への雄継手210のスライドを規制する。
【0068】
このように、規制バー226は、雄継手210のテーパ部13,14と雌継手220の嵌合部23a,24aとが嵌合した状態で雄継手210の溝216と係合し雄継手210のスライドを規制する。したがって、セグメント2a,2bが外力をトンネル軸方向に受けた場合においても、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとの嵌合を維持することができ、セグメント2a,2bどうしをガタつきなく連結することができる。
【0069】
規制バー226は、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとが嵌合した状態で雄継手210の本体部212に沿って本体部212と係合するため、本体部212と規制バー226との係合範囲を拡大することができる。したがって、より確実に雄継手210のスライドを規制することができる。
【0070】
規制バー226は、溝216に進入することにより本体部212と係合するため、本体部212に規制ピン26が挿通する孔を形成する場合と比較して、本体部212の強度の低下を防止することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0072】
第1実施形態で説明した構成と第2実施形態で説明した構成を組み合わせることも可能である。例えば、雌継手は、規制ピン26と規制バー226との両方を備えていてもよい。また、第2実施形態に係る連結具200は、第1実施形態における保持部材30を備えていてもよいし、雌継手220に規制バー226の先端側を収容可能な第2穴部を形成し規制バー226を雄継手210と係合した状態で雄継手210を跨いで第1穴部226bと第2穴部との間に渡って配置してもよい。第2実施形態に係る連結具200の規制バー226を、溝216に代えて雄継手210の本体部212におけるスライド方向背面と係合させてもよい。
【0073】
上記の実施形態では、雄継手10,210は、テーパ部13,14を備えているが、本発明は、テーパ部13,14の一方だけを備える形態であってもよい。また、雄継手10,210の本体部12,212は、断面が矩形に形成されていなくてもよい。
【0074】
上記の実施形態では、
図1に示すA型セグメント2Aどうしの連結、及びA型セグメント2AとB型セグメント2Bとの連結に連結具100を用いる場合について説明した。B型セグメント2BにK型セグメント2Kを連結する際には、K型セグメント2Kをトンネル周方向にスライドすることはできない。そのため、B型セグメント2BとK型セグメント2Kとの連結に連結具100を用いる場合には、
図10に示すように、セグメント2a,2bの対向面2c,2dをトンネル軸方向に対して傾斜して形成する。これにより、トンネル周方向にセグメント2aをスライドさせることなくトンネル軸方向への雄継手10のスライドだけでテーパ部13,14を嵌合部23a,24aに嵌合することができ、B型セグメント2BとK型セグメント2Kとの連結に連結具100を用いることができる。B型セグメント2BとK型セグメント2Kとの連結に連結具200を用いる場合も同様である。
【0075】
上記の実施形態では、雌継手20,220が規制ピン26、規制バー226を備えているが、雄継手10,210が規制ピン26、規制バー226を備えていてもよい。この場合には、雌継手20,220に、テーパ部13,14と嵌合部23a,24aとが嵌合した状態で規制ピン26、規制バー226と係合する穴、溝又は段部を形成すればよい。この穴、溝又は段部が、雄継手10,210のスライドを規制する規制部として機能する。
【0076】
上記の実施形態では、テーパ部13,14が雄継手10,210の本体部12,212に凸状に形成され嵌合部23a,24aが雌継手20,220の内側面22c,22dに凹状に形成されているが、テーパ部13,14が雄継手10,210の本体部12,212に凹状に形成され嵌合部23a,24aが雌継手20,220の内側面22c,22dに凸状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
100,200・・・連結具
2,2a,2b・・・セグメント
10,210・・・雄継手
12,212・・・本体部
13・・・テーパ部
14・・・テーパ部
20,220・・・雌継手
20a・・・収容部
20b,220b・・・第1穴部
20c・・・第2穴部
23a・・・嵌合部
24a・・・嵌合部
26・・・規制ピン(規制部)
28・・・コイルばね(付勢部材)
30・・・保持部材
216・・・溝
226・・・規制バー(規制部)
228・・・板ばね(付勢部材)