(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】超音波送受信器
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20220805BHJP
G01S 7/521 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
G01S7/521 A
(21)【出願番号】P 2019199753
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000229081
【氏名又は名称】日本セラミック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津野田 修平
(72)【発明者】
【氏名】田渕 量也
(72)【発明者】
【氏名】深田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】坂口 誠
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-169392(JP,A)
【文献】特開2004-264221(JP,A)
【文献】特表2018-512743(JP,A)
【文献】特開2005-072771(JP,A)
【文献】国際公開第2007/102460(WO,A1)
【文献】特開2007-036301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
G01S 7/521
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と筒状部を有する有底筒状ケースと、前記有底筒状ケースの内底面に接合された圧電素子と、を備える超音波センサにおいて、前記内底面において超音波の送信もしくは受信時に前記内底面の
内底面の中央部となる箇所を含む形で
発泡シリコーン又は発泡ウレタンが前記内底面に密着しており、前記有底筒状ケース内部の開口側において、前記内底面
と
有底筒状ケースの筒状部が接続する箇所を含むように前記
発泡シリコーン又は発泡ウレタ
ンの密度より高い密度をもつ
シリコーン又はウレタンが密着していることを特徴とする超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を有底筒状ケースに貼り合わせた空中用の超音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波センサを用いた距離計ユニットを車両に取り付けて、車両に物体が接近した際に運転者に衝突の危険を知らせる安全装置が広く使用されている。
特に、車両を後退させる際に後方の物体を距離計ユニットで検出し、運転手に物体の接近を知らせる安全装置がよく利用されている。(例えば特許文献1)
【0003】
具体的には、物体の接近を運転手にブザーで知らせる安全装置や車両の前方に障害物があると車両が発進しないようブレーキが動作させるブレーキ連動式の安全装置が発明されている。
【0004】
ここで使用される超音波センサを用いた距離計ユニットでは、主に防滴型の超音波センサが使用されている。
防滴型の超音波センサは、例えば特許文献2で紹介されている(文献中では防滴型の超音波センサを防滴型超音波送受波器とよんでいる)。
防滴型の超音波センサは有底筒状ケースの底面に、両面に電極が施された圧電素子が接着されており、圧電素子の各電極に電気的に接続された端子は外部に取り出されており、圧電素子の上部にはスポンジ状もしくはフェルト状の吸音材をかぶせてから、シリコーンゴムなどの弾性を有する充填剤で密閉した構造である。
有底筒状ケースの開口側の背面がシリコーンゴムなどの充填剤で完全に覆われることで内部に液体が浸入しない構造になっている。前述の構造のため、超音波センサ内部にて圧電素子の各電極同士が短絡することがないため、液体がかかるような屋外でも使用できる。
また、防滴型の超音波センサは圧電素子が金属のケースで覆われるために、比較的強度が高い構造の超音波センサである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-112297
【文献】特開2010-154059
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の超音波センサは、有底筒状ケースの内底面に接合された圧電素子の上側に、予め成形されたスポンジを配置し、その上の有底筒状ケースの開口側に封止材を配置する構造が、一般的である。
この構造では成形されたスポンジを機械で位置精度よく挿入することが難しく、手作業でコストのかかる工程となっていた。
また、従来の構造では、振動面である有底筒状ケースの内底面の大部分において、成形されたスポンジが接触している状態であり、内底面の制振効果に限界があり、近距離検知に有利な残響時間の短縮が困難であった。
また、内底面とスポンジが接触している場合、内底面とスポンジの間に半田ボールなどの異物が噛み込んだ際に、異物が動いてノイズを生じ、誤作動をするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
底部と筒状部を有する有底筒状ケースの内底面の超音波の送受信時に内底面の中央部となる箇所において、 成形されたスポンジの代わりに、塗布による充填が可能な振動を妨げ
にくい発泡シリコーンや発泡ウレタンを配置し、 前記内底面と有底筒状ケースの筒状部
が接続する箇所において、前記発泡シリコーン又は発泡ウレタンの密度より高く制振効果をもつシリコーン又はウレタンが密着していることにより、 残響時間を短くしつつ、超音波の信号強度低下の抑制を可能とした。
また、前記発泡シリコーン又は発泡ウレタンと前記シリコーン又はウレタンとが、有底筒状ケースの内底面と接着しているために、前記発泡シリコーン又は発泡ウレタンと前記シ
リコーン又はウレタンにより半田ボールなどの異物が拘束されるため、異物の動きによるノイズ電圧を抑制することが可能となる。
前記発泡シリコーン又は発泡ウレタンは、塗布位置の制御が可能な塗布機を用いることで位置精度の安定した充填が可能となり、より品質が安定し、製造コストを抑えつつ上記の特徴を持つ超音波センサも提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を実施した形態の超音波センサの断面図
【
図3】従来型と発明型における超音波センサの残響時間、反射感度、音圧の比較図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
(発明型の超音波センサの構造)
図1は発明型の超音波センサの構造図である。発明型の超音波センサの構成は、 アルミ合金からなる有底筒状ケース2の内底面に、PZT系セラミックと折り返し電極とを構成に含む圧電素子1が接着されており、圧電素子1の表面や周囲を覆うように
発泡シリコー
ン又は発泡ウレタン3aが塗布され、有底筒状ケース2内部の
発泡シリコーン又は発泡ウ
レタン3aが塗布されていない空間に
発泡シリコーン又は発泡ウレタン3aより密度の高い
シリコーン又はウレタン5を充填することにより封止を行っており、リード線4が圧電素子1の各電極とピン端子6の各端子とが半田付けにより電気的に接続されている。
前記
発泡シリコーン又は発泡ウレタンや前記
シリコーン又はウレタンは、塗布や充填後に常温や高温環境に置くことで硬化させている。
また、一般的に有底筒状ケース2の内底面にて
内底面の中央部となる箇所に圧電素子1が接着する場合に、超音波センサのS/N比が向上するため、圧電素子1の表面や周囲を覆うように
発泡シリコーン又は発泡ウレタン3aの塗布を行っているが、
発泡シリコーン又は発
泡ウレタン3aの塗布範囲を圧電素子1の表面や周囲に制限するわけでなく、超音波の送信もしくは受信時に有底筒状ケース2の
内底面の中央部となる箇所を含む形で
発泡シリコ
ーン又は発泡ウレタン3aが配置されていればよい。
【0010】
(従来型の超音波センサの構造)
図2は従来型の超音波センサの構造図の一例である。従来型の超音波センサの構成は、アルミ合金からなる有底筒状ケース2の内底面に、PZT系セラミックと折り返し電極とを構成に含む圧電素子1が接着されており、圧電素子1の上に成形されたスポンジ3bが配置され、リード線4が圧電素子上1の各電極とピン端子6の各端子とが半田付けにより電気的に接続されており、有底筒状ケース2内部の開口側を非多孔質の
シリコーン又はウレタン5を充填することにより封止されている。
【0011】
図3は
図1の発明型の超音波センサと
図2の従来型の超音波センサにおける残響時間、反射感度、音圧を示したグラフである。残響時間について、発明型では、従来型の約半分になっている。一方で反射感度と音圧は、制振効果の低い従来型の方が発明型より高い値を示している。
発明型は反射感度と音圧に関しては従来型と比較して低い値になっているが、(車載用超音波センサとして利用実績のある1mV以上であり)超音波センサとして十分な特性を持っている。残響が短いことは近距離の物体を検出できることを意味しており、発明型の方は近距離検知に有利な超音波センサといえる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、車両向けのバックセンサやコーナーセンサ、自動駐車システムのみならず、超音波センサが利用されている様々な分野に適用できる。
【符号の説明】
【0013】
1 圧電素子
2 有底筒状ケース
3a 発泡シリコーン又は発泡ウレタン
3b 成形されたスポンジ
4 リード線
5 シリコーン又はウレタン
6 ピン端子