(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220805BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220805BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 512
G03F7/027
H05K3/28 D
H05K3/28 F
(21)【出願番号】P 2019237080
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】石坂 将暢
(72)【発明者】
【氏名】今井 伸治
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-133670(JP,A)
【文献】特開2018-165796(JP,A)
【文献】特開2019-178306(JP,A)
【文献】特開2016-167066(JP,A)
【文献】特開2014-081611(JP,A)
【文献】特開2012-073598(JP,A)
【文献】特表2016-511314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)微粉状酸化アルミニウムと、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有する感光性樹脂組成物
であり、
前記(C)微粉状アルミニウムのBET法により測定した比表面積が、50m
2
/g以上150m
2
/g以下であり、
さらに、着色剤を含有し、前記着色剤が、黒色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、橙色着色剤及び赤色着色剤からなる群から選択された少なくとも1つである感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記(C)微粉状酸化アルミニウムを10質量部以上含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記(C)微粉状酸化アルミニウムを15質量部以上含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)微粉状酸化アルミニウムが、ヒュームド酸化アルミニウムである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)微粉状酸化アルミニウムの平均一次粒子径が、20nm以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)微粉状酸化アルミニウムの表面の少なくとも一部が、有機シラン化合物で被覆されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
ソルダーレジスト膜の形成用である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
基板にソルダーレジスト膜を形成するためのドライフィルム用である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を有するドライフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材料、特に、導体間埋まり性と成分沈降防止性を有し、マイクロボイド発生防止性、折り曲げ性、絶縁信頼性及びはんだ耐熱性に優れた被覆材料を形成できる感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物をフィルムに塗布した塗膜を有するドライフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板、フレキシブルプリント配線板等の基板には導体(例えば、銅箔)の導体回路パターンが形成されており、該回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載し、そのはんだ付けランドを除く回路部分は、保護膜としての絶縁被膜(例えば、ソルダーレジスト膜)で被覆される。回路部分の絶縁保護膜として、感光性樹脂と光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物の光硬化膜が使用されることがある。
【0003】
また、基板上に前記絶縁保護膜を形成する方法として、ドライフィルムを使用することがある。ドライフィルムは、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製支持フィルムに感光性樹脂組成物をダイコーター等の塗工方法にて塗膜を形成し、該塗膜を乾燥処理することで、支持フィルム上にソルダーレジスト層を形成後、形成したソルダーレジスト層上にカバーフィルムを積層することで製造することができる。上記ドライフィルムのカバーフィルムを剥がしながらソルダーレジスト層と基板をはり合わせることで、基板上にソルダーレジスト層を形成する。その後、支持フィルム上から露光して該ソルダーレジスト層を光硬化処理し、さらに熱硬化処理をすることで、基板上に絶縁保護膜を形成することができる。
【0004】
支持フィルムに感光性樹脂組成物を塗工して塗膜を形成してドライフィルムを製造するにあたり、感光性樹脂組成物の塗工性を安定させるために、レオロジーコントロール剤として無機フィラーが配合される。特に、支持フィルムに感光性樹脂組成物を連続的に塗工していくには、配線板に、直接、感光性樹脂組成物を塗工する場合よりも、感光性樹脂組成物の成分の沈降を防止させる特性(成分沈降防止性)を得つつ、感光性樹脂組成物の粘度を低減させることが必要である。成分沈降防止性を十分有しない感光性樹脂組成物で塗工された保護膜は、保護膜の部位によって特性のばらつきが生じてしまう場合がある。そこで、ドライフィルムを製造するにあたり、感光性樹脂組成物の成分が沈降するのを防止しつつ、感光性樹脂組成物の粘度を低減させるレオロジーコントロール剤としてシリカが使用されている。
【0005】
レオロジーコントロール剤としてシリカが使用されている、ドライフィルムに用いられる感光性樹脂組成物として、例えば、重量平均分子量が、1500以上、5000未満のカルボキシル基含有樹脂Aと、重量平均分子量が、5000以上、150000以下のカルボキシル基含有樹脂Bと、エポキシ樹脂と、光重合開始剤と、感光性モノマーと、シリカと、を含み、前記カルボキシル基含有樹脂Aと、前記カルボキシル基含有樹脂Bとの配合比が、質量基準で、6:4~3:7であり、前記シリカの含有量が、感光性樹脂組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂100部に対し、40~300部である感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、感光性樹脂組成物の成分が沈降するのを防止しつつ、感光性樹脂組成物の粘度を低減させるレオロジーコントロール剤として、シリカの他に、ヒドロキシカルボン酸アミド、ベントナイトが使用されることがある。
【0007】
しかし、レオロジーコントロール剤としてシリカが使用される特許文献1、ヒドロキシカルボン酸アミドやベントナイトが使用される従来技術では、支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物の流動性が十分ではなく、導体と導体との間を感光性樹脂組成物で埋める特性(導体間埋まり性)に改善の余地があった。また、特許文献1や従来技術では、上記の通り、流動性が十分ではないことから、導体間に塗布された感光性樹脂組成物に微細なボイドが発生してしまうことがあるので、マイクロボイドの発生を防止する特性(マイクロボイド発生防止性)に改善の余地があった。
【0008】
また、配線板上に形成される保護膜には、はんだ耐熱性と絶縁信頼性も要求され、特に、フレキシブルプリント配線板では、さらに、折り曲げ性も要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、導体間埋まり性と成分沈降防止性を有し、マイクロボイド発生防止性、折り曲げ性、絶縁信頼性及びはんだ耐熱性に優れた光硬化物を形成できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)微粉状酸化アルミニウムと、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有する感光性樹脂組成物。
[2]前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記(C)微粉状酸化アルミニウムを10質量部以上含有する[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(C)微粉状アルミニウムのBET法により測定した比表面積が、50m2/g以上150m2/g以下である[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(C)微粉状酸化アルミニウムが、ヒュームド酸化アルミニウムである[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(C)微粉状酸化アルミニウムの平均一次粒子径が、20nm以下である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(C)微粉状酸化アルミニウムの表面の少なくとも一部が、有機シラン化合物で被覆されている[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[7]ソルダーレジスト膜の形成用である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[8]基板にソルダーレジスト膜を形成するためのドライフィルム用である[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[9][1]乃至[8]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を有するドライフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(C)微粉状酸化アルミニウムが配合されていることにより、導体間埋まり性と成分沈降防止性を有し、さらに、マイクロボイド発生防止性、折り曲げ性、絶縁信頼性及びはんだ耐熱性に優れた光硬化物を形成できる感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、前記(C)微粉状酸化アルミニウムを10質量部以上含有することにより、導体間埋まり性を得つつ、成分沈降防止性をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(C)微粉状アルミナのBET法により測定した比表面積が50m2/g以上150m2/g以下であることにより、導体間埋まり性と成分沈降防止性とマイクロボイド発生防止性をバランスよく確実に向上させることができる。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(C)微粉状酸化アルミニウムの平均一次粒子径が20nm以下であることにより、導体間埋まり性と成分沈降防止性とマイクロボイド発生防止性をバランスよく確実に向上させることができる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(C)微粉状酸化アルミニウムの表面の少なくとも一部が、有機シラン化合物で被覆されていることにより、導体間埋まり性と絶縁信頼性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)微粉状酸化アルミニウムと、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有する。
【0018】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
カルボキシル基含有感光性樹脂の化学構造は、特に限定されず、例えば、1分子中に、感光性の不飽和二重結合を1個以上、好ましくは2個以上有するカルボキシル基含有樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸及び/またはメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得、得られた該樹脂に生成した水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等の多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0019】
多官能エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であれば、化学構造は特に限定されず、いずれのエポキシ樹脂も使用することができる。多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、例えば、その上限値は、3000g/eqが好ましく、2500g/eqがより好ましく、2000g/eqが特に好ましい。一方で、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、例えば、100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。
【0020】
多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの多官能エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、チグリン酸、アンゲリカ酸などを挙げることができる。これらのうち、入手の容易性と取り扱いの容易性の点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と反応することで、樹脂に感光性の不飽和二重結合が導入されて、樹脂に感光性が付与される。
【0022】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを反応させる方法は、適宜選択可能であり、例えば、多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを不活性な希釈剤(例えば、不活性な有機溶剤)中で加熱することが挙げられる。
【0023】
多官能エポキシ樹脂のエポキシ基とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基との反応により生成した水酸基に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が反応することで、感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂に、さらに遊離のカルボキシル基が導入される。感光性の不飽和二重結合が導入された樹脂に遊離のカルボキシル基が導入されることで、感光性樹脂にアルカリ現像性が付与される。多塩基酸、多塩基酸無水物は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用することができる。多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、フタル酸誘導体(例えば、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸)、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられる。また、多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを反応させる方法は、適宜選択可能であり、例えば、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを不活性な希釈剤(例えば、不活性な有機溶剤)中で加熱することが挙げられる。
【0025】
上記した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できるが、必要に応じて、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、さらに、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物(例えば、グリシジル化合物)のエポキシ基を反応させて、樹脂の側鎖にラジカル重合性不飽和基をさらに導入することで、感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂としてもよい。
【0026】
感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂は、グリシジル化合物の付加反応によって、ラジカル重合性不飽和基が多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂骨格の側鎖に導入されるため、光重合反応性(すなわち、光硬化性)がより向上し、より優れた感光特性を発揮する。グリシジル化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリメタクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸と、アルキル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸エステル、スチレン等の不飽和基含有化合物と、の共重合により得られるラジカル重合性不飽和モノカルボン酸系樹脂が挙げられる。
【0028】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されないが、その下限値は、確実にアルカリ現像性を得る点から、30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価の上限値は、アルカリ現像液による露光部(光硬化部)の溶解を確実に防止する点から、200mgKOH/gが好ましく、光硬化物の耐湿性の低下を防止する点から、150mgKOH/gが特に好ましい。
【0029】
カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、その下限値は、光硬化物の強靭性及び指触乾燥性の点から、6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量の上限値は、アルカリ現像性の低下を確実に防止する点から、200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。カルボキシル基含有感光性樹脂の二重結合当量は、特に限定されないが、光硬化物の強靭性を得つつ、感光性を確実に得る点から、200~1500g/eqが好ましく、感光性と光硬化物の柔軟性をバランスよく向上させる点から300~1000g/eqが特に好ましい。
【0030】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、上記各出発物質を用いて上記反応にて合成してもよく、上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、「KAYARAD ZAR-2000」、「KAYARAD ZFR-1122」、「KAYARAD FLX-2089」、「KAYARAD ZCR-1569H」(以上、日本化薬株式会社)、「SP-4621」(昭和電工株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z-250」(ダイセル・サイテック株式会社)等を挙げることができる。また、これらのカルボキシル基含有感光性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(B)光重合開始剤
光重合開始剤としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、(Z) -(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ) -2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム等のオキシムエステル系光重合開始剤、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-モルホリノフェノン)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパノン-1、1-ベンジル-1-(ジメチルアミノ)プロピル-4-モルホリノフェニル-ケトン等のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が挙げられる。
【0032】
また、他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系光重合開始剤、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、エチル-4-(ジメチルアミノ) ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ) ベンゾエート、メチル-4-(ジメチルアミノ) ベンゾエート、イソアミル-4-(ジメチルアミノ) ベンゾエート、2-( ジメチルアミノ) エチルベンゾエート、2-エチルへキシル-4-(ジメチルアミノ) ベンゾエート等のベンゾエート系光重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤のうち、感光性に優れる点から、オキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上10質量部以下が好ましく、0.5質量部以上5.0質量部以下が特に好ましい。
【0034】
(C)微粉状酸化アルミニウム(微粉状Al2O3)
本発明の感光性樹脂組成物では、微粉状酸化アルミニウムは、組成物の流動性を調整するレオロジーコントロール剤としての効果を発揮する。微粉状酸化アルミニウム(微粉状酸化アルミナ)を配合することにより、導体間埋まり性と成分沈降防止性とマイクロボイド発生防止性を有し、さらに、折り曲げ性、絶縁信頼性及びはんだ耐熱性に優れた光硬化物を形成できる感光性樹脂組成物を得ることができる。微粉状酸化アルミニウムは、酸化アルミニウムの微粒子である。
【0035】
微粉状酸化アルミニウムの配合量は、特に限定されないが、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部(固形分、以下同じ。)に対して、導体間埋まり性を得つつ、成分沈降防止性を向上させる点から、10質量部が好ましく、さらにはんだ耐熱性を確実に得る点から、15質量部がより好ましく、成分沈降防止性をさらに向上させる点から、20質量部がさらに好ましく、25質量部が特に好ましい。一方で、微粉状酸化アルミニウムの配合量の上限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、折り曲げ性と塗工性を確実に得る点から、70質量部が好ましく、さらにマイクロボイド発生防止性を確実に得る点から60質量部が好ましく、50質量部がさらに好ましく、35質量部が特に好ましい。
【0036】
微粉状アルミニウムのBET法により測定した比表面積は、微粉状アルミニウムの粒子径の程度を示す指標である。すなわち、比表面積が大きい場合には粒子径が小さく、比表面積が小さい場合には粒子径が大きい傾向を示す。微粉状アルミニウムのBET法により測定した比表面積は、特に限定されないが、その下限値は、導体間埋まり性とマイクロボイド発生防止性をバランスよく確実に向上させる点から、50m2/gが好ましく、成分沈降防止性をさらに向上させる点から、60m2/gがより好ましく、70m2/gが特に好ましい。一方で、微粉状アルミニウムのBET法により測定した比表面積の上限値は、感光性樹脂組成物中の分散を均一化させる点から、150m2/gが好ましく、マイクロボイド発生防止性をさらに向上させる点から、130m2/gがより好ましく、110m2/gが特に好ましい。
【0037】
微粉状酸化アルミニウムの平均一次粒子径は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂組成物中の分散を均一化させる点から、5.0nmが好ましく、マイクロボイド発生防止性をさらに向上させる点から、7.0nmがより好ましく、10nmが特に好ましい。一方で、微粉状酸化アルミニウムの平均一次粒子径の上限値は、導体間埋まり性とマイクロボイド発生防止性をバランスよく確実に向上させる点から、20nmが好ましく、成分沈降防止性をさらに向上させる点から、17nmがより好ましく、15nmが特に好ましい。
【0038】
微粉状酸化アルミニウムの平均二次粒子径は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂組成物中の分散を均一化させる点から、70nmが好ましく、マイクロボイド発生防止性をさらに向上させる点から、100nmがより好ましく、150nmが特に好ましい。一方で、微粉状酸化アルミニウムの平均二次粒子径の上限値は、導体間埋まり性とマイクロボイド発生防止性をバランスよく確実に向上させる点から、300nmが好ましく、成分沈降防止性をさらに向上させる点から、250nmがより好ましく、220nmが特に好ましい。
【0039】
微粉状酸化アルミニウムとして、例えば、ヒュームド酸化アルミニウム(ヒュームドアルミナ)が挙げられる。ヒュームド酸化アルミニウム(ヒュームドアルミナ)とは、気化させたアルミニウム塩化物を高温の水素炎中にて気相反応させる、熱分解法で製造した乾式アルミナである。また、微粉状酸化アルミニウムは、その表面の少なくとも一部が、有機シラン化合物等の表面処理剤で被覆されることで疎水化された微粉状酸化アルミニウム、すなわち、有機シラン化合物等で表面処理された微粉状酸化アルミニウムでもよく、表面処理がされていない親水性の微粉状酸化アルミニウムでもよい。このうち、導体間埋まり性と絶縁信頼性をさらに向上させる点から、有機シラン化合物で表面処理された微粉状酸化アルミニウムが好ましい。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物では、レオロジーコントロール剤として微粉状酸化アルミニウムが配合されているので、従来のレオロジーコントロール剤である、シリカ、ヒドロキシカルボン酸アミド、ベントナイト等は配合される必要はない。
【0041】
(D)反応性希釈剤
反応性希釈剤とは、例えば、紫外線等の光が照射されることで重合反応を起こす光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を十分にして、光硬化物の耐酸性、はんだ耐熱性、耐アルカリ性等に寄与する。反応性希釈剤としては、例えば、単官能の(メタ)アクリレートモノマー、2官能以上の(メタ)アクリレートモノマー等を挙げることができる。(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等の単官能の(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、ウレタン(メタ)アクリレートが配合されることで、光硬化物に柔軟性も付与することができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されず、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上50質量部以下が好ましく、10質量部以上30質量部以下が特に好ましい。
【0043】
(E)エポキシ化合物
エポキシ化合物は、感光性樹脂組成物の光硬化物全体の架橋密度を上げて、十分な機械的強度を有する光硬化物を得ることに寄与する。エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのエポキ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されず、十分な機械的強度の光硬化物を確実に得る点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上50質量部以下が特に好ましい。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した(A)~(E)成分の他に、必要に応じて、さらに、他の成分、例えば、体質顔料、難燃剤、硬化促進剤、添加剤、着色剤、非反応性希釈剤等を、任意に配合することができる。
【0046】
体質顔料としては、例えば、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。硬化促進剤としては、例えば、メルカプトベンゾオキサザール及びその誘導体、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等が挙げられる。添加剤としては、例えば、シリコーン系、炭化水素系及びアクリル系等の消泡剤、(メタ)アクリル系ポリマー等の分散剤、チキソ性付与剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0047】
着色剤としては、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、黒色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、橙色着色剤、赤色着色剤等、所望の色彩に応じて、いずれの着色剤も使用可能である。着色剤には、例えば、白色着色剤である二酸化チタン、黒色着色剤であるカーボンブラック等の無機系着色剤や、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン及び青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系等の有機系着色剤などを挙げることができる。
【0048】
難燃剤は、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物に難燃性を付与するためのものである。難燃剤としては、例えば、リン系の難燃剤を挙げることができる。リン系の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。このうち、有機リン酸塩(有機系ホスフェート)の難燃剤が好ましい。
【0049】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の、粘度、塗工性及び乾燥性を調節するための成分である。非反応性希釈剤としては、例えば、感光性樹脂組成物の各成分に対して不活性な有機溶剤を挙げることができる。上記有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記した本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温(例えば、25℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0051】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例について説明する。ここでは、樹脂フィルム上に銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブルプリント配線板に、本発明の感光性樹脂組成物を塗工したドライフィルムを用いて、ソルダーレジスト膜を形成する方法を例にとって説明する。
【0052】
ドライフィルムは、支持フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルム)と、該支持フィルムに塗工されたソルダーレジスト層と、該ソルダーレジスト層を保護するカバーフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム)と、を有する積層構造となっている。支持フィルム上に本発明の感光性樹脂組成物を、ダイコーター法等の公知の方法で塗工して所定の膜厚を有する塗膜を形成する。形成した感光性樹脂組成物の塗膜を、必要に応じて、感光性樹脂組成物中の非反応性希釈剤を揮散させるために100~120℃程度の温度で1~10分間程度加熱する予備乾燥を行う。予備乾燥にて、感光性樹脂組成物から非反応性希釈剤を揮発させて塗膜の表面をタックフリーの状態にすることで、支持フィルム上にソルダーレジスト層を形成する。その後、形成したソルダーレジスト層上にカバーフィルムを積層することで、本発明の感光性樹脂組成物の塗膜を有するドライフィルムを作製できる。
【0053】
上記のように作製したドライフィルムについて、カバーフィルムを剥がしながらソルダーレジスト層とフレキシブルプリント配線板をはり合わせるラミネートを行うことで、フレキシブルプリント配線板上にソルダーレジスト層を形成する。なお、ソルダーレジスト層上には支持フィルムが積層されたままとなっている。その後、支持フィルム上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを載置し、ネガフィルムの上から紫外線(例えば、波長300~400nmの範囲)を照射させてソルダーレジスト層を光硬化させる。その後、支持フィルムを剥がして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することによりソルダーレジスト層が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用される希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。アルカリ現像後、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で、20~80分間、ソルダーレジスト層の熱硬化処理を行うことにより、フレキシブルプリント配線板上に、ソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1~4、比較例1~5
下記表1、2に示す各成分を下記表1、2に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温(約25℃)にて混合分散させて、実施例1~4、比較例1~5にて、それぞれ使用する感光性樹脂組成物を調製した。下記表1、2に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示す。なお、下記表1、2中の配合量の空欄部は、配合なしを意味する。
【0056】
なお、下記表1、2中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
・KAYARAD ZAR-2000:固形分(樹脂分)65質量%、日本化薬株式会社
KAYARAD ZAR-2000は、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸を反応させて、エポキシアクリレートを得、エポキシアクリレートの水酸基に多塩基酸を反応させることで調製される化学構造を有する、多塩基酸変性エポキシアクリレート樹脂である。
【0057】
(B)光重合開始剤
・OXE02:エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、ADEKA株式会社
【0058】
(C)微粉状酸化アルミニウム
・Aeroxide Alu-C:親水性のヒュームド酸化アルミニウム、BET比表面積100±15m2/g、平均一次粒子径は12nm~14nm、平均一次粒子径は170nm~190nm、日本アエロジル株式会社
・Aeroxide Alu-C 805:オルガノシランで表面処理された疎水性のヒュームド酸化アルミニウム、BET比表面積90±15m2/g、平均一次粒子径は12nm~14nm、平均一次粒子径は170nm~190nm、日本アエロジル株式会社
【0059】
(D)反応性希釈剤
・EBECRYL8405:ダイセル・サイテック株式会社
【0060】
(E)エポキシ化合物
・EPICLON 850-S:DIC社
【0061】
体質顔料
・ハイジライトH42M:昭和電工株式会社
難燃剤
・エクソリット OP-935:クラリアントジャパン社
硬化促進剤
・メラミン:日産化学工業株式会社
・DICY-7:三菱化学株式会社
添加剤
・AC-303:分散剤、共栄社化学株式会社
着色剤
・クロモフタルDDTオレンジ TR:チバ・ジャパン株式会社
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
【0062】
微粉状シリカ
・Aerosil ♯200:BET比表面積約200m2/g、親水性ヒュームドシリカ、日本アエロジル株式会社
・Aerosil R805:BET比表面積125m2/g~175m2/g、疎水性ヒュームドシリカ、日本アエロジル株式会社
レオロジーコントロール剤
・BYK-405、TIXOGEL VP:ビックケミー株式会社
【0063】
ドライフィルム作製工程
ドライフィルム作製用支持フィルム:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(フィルムの厚さ25μm)を使用した。
支持フィルムへの感光性樹脂組成物の塗工方法:バーコータ法
予備乾燥:110℃、5分(感光性樹脂組成物の予備乾燥後の塗膜の厚さ26μmのドライフィルム1、感光性樹脂組成物の予備乾燥後の塗膜の厚さ40μmのドライフィルム2を作製)
【0064】
試験サンプル作製工程
評価基板:フレキシブル基板(ドライフィルム1用の基板、ポリイミドフィルム、フィルム厚さ25μm、導体厚12.5μm、)。導体間埋まり性とマイクロボイド発生防止性の評価については、ドライフィルム2用として、導体厚35μmのラインであり、ライン幅100μm、ラインとラインの間隙が100μmのくし形の回路パターンを有する基板も使用。
評価基板の表面処理:5質量%硫酸を用いた表面処理
評価基板へのドライフィルムのラミネート条件:50℃、加圧0.5MPa、真空30s/加圧30s
露光処理(光硬化処理):投影露光装置(光源は高圧水銀灯、USHIO株式会社製)にて感光性樹脂組成物の塗膜上に紫外線(波長300~400nm)を150mJ/cm2照射して露光
現像:1質量%炭酸ナトリウム水溶液 温度30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒
熱硬化処理(ポストキュア):150℃、60分
【0065】
評価項目
(1)成分沈降防止性
調製した感光性樹脂組成物を試験管に入れ、成分の沈降の有無を目視にて観察し、以下の基準で評価し、○評価以上を合格とした。
◎:23℃、24時間後でも、成分の沈降物が認められない。
○:23℃、12時間後では成分の沈降物が認められないが、24時間後にて、若干、成分の沈降物が認められる。
△:23℃、12時間後にて、若干、成分の沈降物が認められる。
×:23℃、12時間後にて、成分の沈降物が多く認められる。
【0066】
(2)導体間埋まり性
ドライフィルムをラミネートした後の導体のパターン間の埋まり性を以下の基準で評価し、○評価以上を合格とした。
◎:導体厚35μmの間隙の底部までドライフィルム2の感光性樹脂組成物の塗膜が埋まっており、異常なし。
○:導体厚12.5μmの間隙の底部までドライフィルム1の感光性樹脂組成物の塗膜が埋まっており、異常なしだが、導体厚35μmの間隙の底部にドライフィルム2の感光性樹脂組成物の塗膜が一部埋まっておらず、若干の空壁が発生。
△:導体厚12.5μmの間隙の底部にドライフィルム1の感光性樹脂組成物の塗膜が一部埋まっておらず、若干の空壁が発生。
×:導体厚12.5μmの間隙の底部にドライフィルム1の感光性樹脂組成物の塗膜が埋まっておらず、空壁が発生。
【0067】
(3)マイクロボイド発生防止性
ポストキュア後の導体パターン間のマイクロボイド(φ5μm以下)を光学顕微鏡にて観察し、以下の基準で評価し、○評価以上を合格とした。
◎:導体厚35μmの間隙の底部におけるドライフィルム2からの感光性樹脂組成物の塗膜にマイクロボイドの発生なし。
○:導体厚12.5μmの間隙の底部におけるドライフィルム1からの感光性樹脂組成物の塗膜にはマイクロボイドの発生はないが、導体厚35μmの間隙の底部におけるドライフィルム2からの感光性樹脂組成物の塗膜にマイクロボイドが若干発生。
△:導体厚12.5μmの間隙の底部におけるドライフィルム1からの感光性樹脂組成物の塗膜にマイクロボイドが若干発生。
×:導体厚12.5μmの間隙の底部におけるドライフィルム1からの感光性樹脂組成物の塗膜にマイクロボイドが発生。
【0068】
(4)折り曲げ性
露光後の塗膜について、円筒形マンドレル法により、塗膜の折り曲げ性を目視観察及び×200の光学顕微鏡観察し、以下の基準で評価し、○評価を合格とした。
○:直径2mmの円筒形マンドレルで異常なし。
△:直径4mmの円筒形マンドレルで異常なしだが、直径2mmの円筒形マンドレルでクラック、剥離等の異常あり。
×:直径4mmの円筒形マンドレルでクラック、剥離等の異常あり。
【0069】
(5)絶縁信頼性(塗膜の厚さ方向(Z軸方向)の絶縁信頼性)
上記試験サンプル作製工程にて作製した試験サンプルについて、硬化塗膜の上に電磁波シールドフィルム(タツタ電線株式会社製SF-PC5000)を貼った上面を陽極に、上記評価基板の導体である銅を陰極に、それぞれ、接続した。次いで、60℃、湿度95%の恒温恒湿槽の中で、50V印加を行い、イオンマイグレーションテスター(IMV社製、「MIG-8600B/128」)を用いて抵抗値の連続測定を行った。50V印加時を測定開始時間とし、抵抗値が1.0E+6(1.0×106)Ω未満に低下するまでの時間を計測し、これを絶縁破壊時間とし、以下の基準に従って厚さ方向(Z軸方向)の絶縁信頼性を評価し、○評価以上を合格とした。
◎:絶縁破壊時間1500時間以上。
○:絶縁破壊時間1000時間以上1500時間未満。
△:絶縁破壊時間500時間以上1000時間未満。
×:絶縁破壊時間500時間未満。
【0070】
(6)はんだ耐熱性
試験サンプルの硬化塗膜を、JIS C-6481の試験方法に従って、260℃のはんだ槽に10秒間浸せき後、セロハンテープによるピーリング試験を1サイクルとし、これを1~3回繰り返した後の塗膜状態を目視により観察し、以下の基準に従って評価し、○評価を合格とした。
○:3サイクル繰り返し後も塗膜に変化が認められない。
△:3サイクル繰り返し後の塗膜にほんの僅か変化が認められる。
×:2サイクル繰り返し後の塗膜に変化が認められる。
【0071】
評価結果を、下記表1、2に示す。
【0072】
【0073】
【0074】
上記表1に示すように、微粉状酸化アルミニウムを配合した実施例1~4では、成分沈降防止性、導体間埋まり性、マイクロボイド発生防止性及び塗膜の厚さ方向の絶縁信頼性が○評価以上を有し、折り曲げ性及びはんだ耐熱性が○評価であった。上記から、実施例1~4では、成分沈降防止性と導体間埋まり性を有し、マイクロボイド発生防止性、折り曲げ性、塗膜の厚さ方向の絶縁信頼性及びはんだ耐熱性に優れた光硬化物を形成できた。
【0075】
また、実施例1、3と実施例2、4から、オルガノシランで表面処理された疎水性酸化アルミニウムは、オルガノシランで表面処理されていない親水性酸化アルミニウムと比較して、導体間埋まり性と塗膜の厚さ方向の絶縁信頼性がさらに向上した。また、実施例1、2と実施例3、4から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して微粉状酸化アルミニウムを約30質量部配合すると、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して微粉状酸化アルミニウムを約10質量部配合した場合と比較して、成分沈降防止性がさらに向上した。
【0076】
一方で、微粉状酸化アルミニウムに代えて、微粉状の親水性シリカを配合した比較例1の硬化膜では、導体間埋まり性とマイクロボイド発生防止性が得られず、また、十分な折り曲げ性を有さず柔軟性も得られなかった。また、微粉状酸化アルミニウムに代えて、微粉状の疎水性シリカを配合した比較例2の硬化膜では、導体間埋まり性とマイクロボイド発生防止性と折り曲げ性を十分に得ることができなかった。また、微粉状酸化アルミニウムに代えて、従来のレオロジーコントロール剤であるヒドロキシカルボン酸アミドを配合した比較例3の硬化膜では、導体間埋まり性とマイクロボイド発生防止性が十分に得られず、また、十分なはんだ耐熱性も得られなかった。また、微粉状酸化アルミニウムに代えて、従来のレオロジーコントロール剤である有機変性ベントナイトを配合した比較例4では、成分沈降防止性、導体間埋まり性、折り曲げ性、はんだ耐熱性が十分に得られず、また、絶縁信頼性も得られなかった。また、微粉状酸化アルミニウムも、微粉状シリカも、従来のレオロジーコントロール剤も配合されていない比較例5では、成分沈降防止性が得られず、また、導体間埋まり性とはんだ耐熱性が十分に得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)微粉状酸化アルミニウムと、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有することにより、成分沈降防止性と導体間埋まり性を有し、マイクロボイド発生防止性、折り曲げ性、塗膜の厚さ方向の絶縁信頼性及びはんだ耐熱性に優れた光硬化物を形成できるので、例えば、フレキシブルプリント配線板に設ける絶縁保護膜の分野、特に、感光性樹脂組成物をフィルムに塗布した塗膜を有するドライフィルムをフレキシブルプリント配線板に施与してソルダーレジスト等の絶縁保護膜をフレキシブルプリント配線板に形成する分野で利用価値が高い。