(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】移動する鋼ストリップの液体利用レーザーテクスチャリング方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/352 20140101AFI20220805BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220805BHJP
B23K 26/146 20140101ALI20220805BHJP
【FI】
B23K26/352
B23K26/00 N
B23K26/146
(21)【出願番号】P 2019515942
(86)(22)【出願日】2017-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2017066558
(87)【国際公開番号】W WO2018054569
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-07-03
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505008419
【氏名又は名称】タタ、スティール、ネダーランド、テクノロジー、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL NEDERLAND TECHNOLOGY BV
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィット、トーマス、アラン、マッテウス
(72)【発明者】
【氏名】ハシブ、ムスタファ
(72)【発明者】
【氏名】ロブ、ハフメイエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘラルドゥス、リシャルドゥス、ベルナルドゥス、エンゲリーナ、レーメル
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-125788(JP,A)
【文献】特開2003-33890(JP,A)
【文献】特開平6-142971(JP,A)
【文献】特開平9-19788(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099219(WO,A1)
【文献】特開昭62-212087(JP,A)
【文献】特開2005-163174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する鋼ストリップ(3)のテクスチャリング方法であって、
テクスチャーが、移動する鋼ストリップ(3)の表面に向けられた単一のレーザービーム又は複数のレーザービームを用いることによるアブレーションによって、移動する鋼ストリップ(3)の表面に適用され、
液体(2)が、移動する鋼ストリップ(3)に対する単一のレーザービーム又は複数のレーザービームの作業領域を含む、移動する鋼ストリップ(3)の表面領域にわたって、移動する鋼ストリップ(3)上に供給され、
液体(2)が、移動する鋼ストリップ(3)の移動方向に供給される、方法。
【請求項2】
供給された液体(2)が、所定の厚さの液膜を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給された液体(2)の厚さが、移動する鋼ストリップ(3)と、移動する鋼ストリップ(3)の表面に対してある距離をおいて設けられたガイド手段(4)との間で、液体(2)を誘導することによって制御される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ガイド手段(4)と、移動する鋼ストリップ(3)の表面との間の距離が制御される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
液膜の厚さが、0.1~10mmの範囲内である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
移動する鋼ストリップ(3)のライン速度が、0.5m/s~15m/s(15m/sを含む)の範囲、より好ましくは1m/s~5m/sの範囲である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
単一のレーザービーム又は複数のレーザービームが、
・パルス幅が、1fs~100msの範囲であり、
・各レーザービームの電磁放射が、200nm~11μmの間の波長を有し、かつ
・各レーザービームのエネルギー密度が、1nJ/cm
2~100J/cm
2の範囲内、好ましくは0.1J/cm
2~10J/cm
2の範囲内である、パルスレーザービームである、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
移動する鋼ストリップ(3)の表面に向けられた単一のレーザービーム又は複数のレーザービーム、移動する鋼ストリップ(3)にテクスチャーを適用するための単一のレーザービーム又は複数のレーザービームを制御するための制御手段、及び、移動する鋼ストリップ(3)の、テクスチャーが適用される表面に、液体(2)を供給するための液体供給手段を備えてなる、移動する鋼ストリップ(3)の表面にアブレーションによりテクスチャーを適用するための装置であって、液体(2)が、移動する鋼ストリップ(3)の移動方向に供給される、装置。
【請求項9】
液体供給手段が、移動する鋼ストリップ(3)の、テクスチャーが適用される表面領域の幅を横切って液体(2)を供給するための1つ以上のノズル(1,11)を備えてなる、請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
ガイド手段(4)が、移動する鋼ストリップ(3)の経路に平行に、かつ、液体供給手段の下流に設けられ、移動する鋼ストリップ(3)の表面上に液体(2)が誘導される、請求項
8又は
9に記載の装置。
【請求項11】
ガイド手段(4)と、移動する鋼ストリップ(3)の経路との間の距離が、1~5mmの範囲内である、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
ガイド手段(4)が、透明プレートを備えてなる、請求項
10又は
11に記載の装置。
【請求項13】
透明プレートが、上流側に上向きの端を有する、請求項
12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する鋼ストリップのレーザーテクスチャリング方法及び移動する鋼ストリップにレーザーテクスチャリングを行うための装置(arrangement)に関する。
【背景技術】
【0002】
(被覆された)鋼ストリップの仕上げにおいて、鋼ストリップは、レベリング及び/又は調質圧延に供される。レベリングでは、ストリップの形状及び形態が制御され、調質圧延では、ストリップの長さを延ばすこと及び鋼中の粒子を圧延方向に配向させることにより鋼ストリップの機械的性質が改善される。ストリップの表面品質も外観、表面の質感及び表面の機能(機能性)に関する限りにおいて改善される。調質圧延工程では、これに限定されるものではないが、鋼ストリップの外観、塗料のより良好な接着性、トライボロジー特性、及び改良された成形特性などの特定の機能を得るために、加工ロール(work roll)からストリップの表面にテクスチャーが転写されてもよい。鋼ストリップのテクスチャリングは、エンドユーザー、例えば自動車産業のエンドユーザーの要求に応じて行われる。
【0003】
鋼ストリップにテクスチャーを適用するために、鋼ストリップと接触する少なくとも1つの調質加工ロールには、ロール表面に一定の質感が与えられ、鋼ストリップの表面に調質ミルを通過する際に、その模様が転写される。テクスチャー転写ロール上のテクスチャーは、磨耗及び/又は汚染するため、必要なテクスチャーは、頻繁に更新するか又は再び適用しなければならない。テクスチャー転写ロール表面のテクスチャリングのために様々な技術が利用可能であるが、より耐久性のある適用されたテクスチャーを用いたとしても、それらが全て一定であるが限定された待機時間を有するという主要な欠点がある。これは、広い製品範囲にわたって高強度鋼の用途が広がるにつれて、さらに大きな欠点となってきた。
【0004】
別の欠点は、異なるテクスチャーを適用するためには、テクスチャー転写ロールを交換しなければならず、その結果、時間がかかり、それ故に製造ロスが生じることである。さらに異なる位置、ロール幅の範囲内、ロール円周の長さの範囲外のいずれか、あるいは鋼ストリップの上部又は下部で、ストリップに異なるテクスチャーが必要とされる場合、これは従来のシングルスタンド圧延機では達成することができない。
【0005】
代替として、テクスチャーはレーザーテクスチャリングによって適用することができ、テクスチャーは、鋼ストリップが加工ラインに沿って移動している間に鋼ストリップに適用されることが好ましい。レーザーテクスチャリングでは、テクスチャーを押し付ける代わりに、鋼ストリップからの材料のアブレーションによって鋼ストリップにテクスチャーが適用される。鋼ストリップからの材料のアブレーションでは、ストリップを汚染なく(clean)保ち、そしてそれによって、鋼ストリップの表面にアブレーションされた材料が存在することによる適用されるテクスチャーにおける障害を防止するために、ストリップからアブレーションされた材料を除去する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高速で移動する鋼ストリップの表面のレーザーテクスチャリング方法を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、移動する鋼ストリップの表面のレーザーテクスチャリング方法であって、テクスチャリング屑が表面から除去される方法を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、汚染のないテクスチャーが行われた表面を提供する、移動する鋼ストリップの表面のレーザーテクスチャリング方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、ハイスループットレーザーテクスチャリングに適合した、移動する鋼ストリップの表面のレーザーテクスチャリング方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、容易にかつ低コストで適用することができる、移動する鋼ストリップの表面のレーザーテクスチャリング方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、産業用途に適している、移動する鋼ストリップの表面のレーザーテクスチャリング方法を適用するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様によれば、本発明の1つ以上の目的は、移動する鋼ストリップのテクスチャリング方法であって、テクスチャーが、移動する鋼ストリップの表面に向けられた単一のレーザービーム又は複数のレーザービームを用いることによるアブレーションによって、移動する鋼ストリップの表面に適用され、液体が、移動する鋼ストリップに対する単一のレーザービーム又は複数のレーザービームの作業領域を含む、移動する鋼ストリップの表面領域にわたって、移動する鋼ストリップ上に供給される方法を提供することによって実現される。
【0013】
1つ又は複数のレーザービームの「作業領域(working area)」とは、1つ又は複数のレーザービームの制御を用いることにより、1つ又は複数のレーザービームが制御されて作動する、移動する鋼ストリップ上の領域を意味する。
【0014】
移動する鋼にテクスチャーパターンを適用することができるようにするために1つ又は複数のレーザービームが使用され、これらはストリップ鋼の表面を変化させるパルスレーザービーム又は連続波レーザービームのいずれかであってもよい。パルスレーザー源が使用される場合、ストリップの残留部分又はコーティングが、熱的影響を受けることなく又は少なくとも著しく熱的影響を受けることなく、マイクロメートル範囲内で明確なテクスチャーを得るためには、ナノ、ピコ又はフェムト秒レジームのパルス幅を使用することが好ましい。
【0015】
用語「鋼ストリップ」は、「鋼ストリップ」に加えて、「被覆鋼ストリップ」を意味するものとする。
【0016】
ストリップ表面には、非接触法を用いて、この場合には、電磁放射、より具体的にはレーザーによる非接触法を用いて、テクスチャリングが行われる。レーザーテクスチャリングの代わりに、具体的には、電子ビーム又はイオンビームを用いた、他のエネルギービームをテクスチャリングに使用することもできる。電子ビーム又はイオンビームを用いたテクスチャリングでは、テクスチャーを適用するために真空が必要とされ、これは本発明による方法と比較して追加の手段を必要とする。
【0017】
移動する鋼ストリップ上にテクスチャーパターンを適用するには、単一のレーザービームで十分であるが、互いに平行して異なるテクスチャーパターン又は幅広い鋼ストリップにテクスチャーパターンを提供しなければならない場合、単一より多くのレーザービームが利用可能であることが有利である。そのために、レーザービームは、単一のレーザービーム又は複数のレーザービームを有する各グループに分割され、これらのグループは別々に制御される。幅広いストリップにテクスチャーパターンを提供するか、又は、移動する鋼ストリップ上に異なるテクスチャーパターンを互いに隣接して適用しなければならない場合、複数のレーザービームを用いることでレーザービームを制御することが可能になり、及び/又は、より容易になる。
【0018】
移動する鋼ストリップ上に、1つ又は複数のレーザービームの少なくとも作業領域にわたって、液体を提供することによって、移動する鋼ストリップからテクスチャリングによりアブレーションされた材料は、液体中に懸濁するようになる。その利点は、アブレーションされた材料がテクスチャリングされた地点からほぼ直接的に除去され、アブレーションされた残留物が、テクスチャリングされた地点の近くで鋼ストリップに付着することなく、汚染のないテクスチャリング表面がもたらされることである。さらに、アブレーションされた材料の除去に基づいて、移動する鋼ストリップの表面上に最初に液体を適用しないことで可能であったよりも、速くテクスチャーを適用することできることが見出された。
【0019】
テクスチャリングを施すべき鋼ストリップの表面全体にわたって同一条件を持たせるために、移動する鋼ストリップの幅にわたって、少なくともテクスチャーが適用される鋼ストリップの表面積の幅に等しい幅にわたって液体が提供される。
【0020】
アブレーション速度は、移動する鋼ストリップ上に液体が塗布される厚さに依存することが見出された。十分な効果を得るために、液体の層の厚さは0.1mmより小さくない。作業可能な最大厚さは10mm程度である。そのため、この方法は、液体が所定の厚さの液膜を形成することを提供する。さらに、アブレーション速度は、1~5mmの範囲内の液膜の厚さにわたって一定であるか、又は一定と同然であることが見出された。これは、これらの厚さの変動が4mm未満である限り、異なる鋼ストリップの厚さの変動について液膜の厚さを調整する必要がないというさらなる利点を提供する。これは厚さの異なる広い範囲の鋼ストリップを対象にする。
【0021】
本発明による方法のさらなる態様によれば、供給される液体の厚さは、移動する鋼ストリップと、移動する鋼ストリップの表面に対して距離をおいて設けられたガイド手段との間に液体を誘導することによって制御される。これらのガイド手段は、1つ又は複数のレーザービームの作業領域にわたって延在する平坦な表面領域を有し、かつ、使用されるレーザー光に対して透明な材料で作られている。硬化ガラス又は透明プラスチック材料が好適なガイド手段である。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、ガイド手段と移動する鋼ストリップの表面との間の距離は制御されていることが提供される。
【0023】
液膜の厚さを制御することにより、ガイド手段は、液膜の表面に形成される一切の波紋を防止する。波紋を有する液膜の厚さが1~5mmの範囲内であったとしても、液膜の表面に対する入射角が変化することで屈折率が変化することを理由にレーザービームのずれが生じるためこれは重要である。
【0024】
本発明の別の実施態様によれば、液体は噴霧によって供給され、層の厚さは移動する鋼ストリップの速度に応じて噴霧量を制御することによって制御される。前述の実施態様において、移動する鋼ストリップと、液体のガイド手段との間の空間を満たすために少なくとも十分な量の液体を供給することが必要であるが、この実施態様では、過剰な液体を供給しないことが重要である。
【0025】
そのためには、移動する鋼ストリップのテクスチャリングが必要な領域を均一にカバーするのに十分な数のノズルを用いて移動する鋼ストリップに液体を噴霧する。必要ならば、移動する鋼ストリップ上に液体を2つ以上の積み重ねた層で供給することがさらに提供される。下流方向に2つ以上の一連のノズルを用いて液膜を塗布することによって、目的に十分である厚さを得るために多数の薄い液膜層が積層される。1つ以上の薄層で噴霧することによって、液体は移動する鋼ストリップの表面領域にわたって均一に分配され、1つ又は複数のレーザービームの作業領域にわたって十分に一定である厚さがもたらされる。
【0026】
噴霧によって適用される液膜の厚さは、移動する鋼ストリップと、先の実施態様のガイド手段との間に好ましく適用される1~5mmの液膜の厚さよりも小さい。液膜の実用的な厚さ範囲は、0.1mmの臨界的な最小の厚さ及び先の実施態様で使用された範囲の開始厚さの範囲内であることが見出された。噴霧液膜の好ましい厚さ範囲は、0.5~1mm程度であることが見出された。
【0027】
本発明のさらに別の実施態様によれば、移動する鋼ストリップは液体を含有する容器に誘導されて通され、ここで、単一のレーザービーム又は複数のレーザービームの集束光学系が移動する鋼ストリップの表面の所定の距離で液体に浸される。この実施態様で使用される容器は、例えば、移動する鋼ストリップ用の出入り口スロットを有する密閉容器であって、スロットは、液体又は過剰な液体が容器から失われるのを防止するように設計されている。代わりの方法は、上面が開放された容器を使用することであり、ここで鋼ストリップは誘導ロールによって容器に誘導されて通される。
【0028】
液体を入れた容器を使用する利点は、1つ又は複数のレーザービームの集束光学系が液体中に浸されることであり、それによってさもなければ上記のような中間透明プレートなどの使用で生じる屈折が回避されることである。
【0029】
本発明による方法は、高スループットライン速度に適合している。本発明による方法では、移動する鋼ストリップのライン速度は0.5m/s~15m/s(15m/sを含む)の範囲、好ましくは1~5m/sの範囲である。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、単一のレーザービーム又は複数のレーザービームは、
・パルス幅が1fs~100msの範囲であり、
・各レーザービームの電磁放射が、200nm~11μmの間の波長を有し、かつ
・各レーザービームのエネルギー密度が1nJ/cm2~100J/cm2の範囲内、好ましくは0.1J/cm2~10J/cm2の範囲内である、
パルスレーザービームであることが提供される。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、移動する鋼ストリップの表面に向けられた単一のレーザービーム又は複数のレーザービーム、移動する鋼ストリップにテクスチャーを適用するための単一のレーザービーム又は複数のレーザービームを制御するための制御手段、及び移動する鋼ストリップの、テクスチャーが適用される表面に液体を供給するための液体供給手段を備える、移動する鋼ストリップの表面にアブレーションによりテクスチャーを適用するための装置が提供される。
【0032】
この装置では、液体供給手段は、移動する鋼ストリップのテクスチャーが適用される表面領域の幅を横切って液体を供給するための1つ以上のノズルを備える。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、移動する鋼ストリップの表面上に液体を誘導するために、移動する鋼ストリップの経路に平行に、かつ、液体供給手段の下流にガイド手段が設けられる。
【0034】
ノズルの数又はノズルの供給速度はさらに、必要な液膜の厚さ及び移動する鋼ストリップのライン速度によって決定される。液体はガイド手段によって囲い込まれていないので、液体はガイド手段の少なくともその下流側を通過し、ガイド手段と移動する鋼ストリップとの間に必要とされる液体の量を超えて連続的に供給されなければならない。
【0035】
液体が鋼ストリップとガイド手段との間に容易に誘導されるように、液体は移動する鋼ストリップの移動方向にノズルを通して供給されるのが好ましい。この目的のために、ガイド手段は上流側に上方を向いた端を有し、それを用いることによってより小さな容積を定義するガイド手段と移動する鋼ストリップとの間の空間内で鋼ストリップが移動することにより、より大きな厚さの当初の液体層が強制的に押される。上方を向いた端は、ガイド手段と移動する鋼ストリップとの間に液体を十分な量で均一に分配するという利点を有する。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、移動する鋼ストリップの表面に向けられた単一のレーザービーム又は複数のレーザービーム、移動する鋼ストリップにテクスチャーを適用するための単一のレーザービーム又は複数のレーザービームを制御するための制御手段、液体を含有する容器を備える、移動する鋼ストリップの表面にアブレーションによりテクスチャーを適用するための装置であって、単一のレーザービーム又は複数のレーザービームの集束光学系が、移動する鋼ストリップの経路に対して所定の距離で液体に浸される、装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図面に示された例を用いて本発明をさらに説明する。
【
図1】
図1は、アブレーション速度に対する液膜の厚さを示す図である。
【
図2】
図2は、移動する鋼ストリップ上に液体を供給するための供給ノズル、レーザー装置及び鋼ストリップ上に液体を誘導するためのガイド手段を有する装置を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は移動する鋼ストリップ上に液膜を噴霧するための噴霧ノズル、レーザー装置及び洗浄ノズルを有する装置を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、鋼ストリップがそれを通って移動する、液体で充填された容器及び容器中に突き出ているレーザー装置を有する装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1において、液体層又は液膜の厚さの関数としてのアブレーション速度の図が示されている。最適な材料除去を確保するために、液膜は臨界値t
臨界より大きくかつt2より小さい厚さを有していなければならない。実際には、値t1及びt2は0.5mm~10mmの間である。好ましくは、液膜の厚さは、1mm~5mm(5mmを含む)のより限定された範囲内で維持され、それによって1つ又は複数のレーザービームに対してはるかに安定した焦点領域が作り出される。
【0039】
図2、3及び4の概略図では、ストリップは左から右へ処理される。
【0040】
図2は、移動する鋼ストリップ3上に液体2を供給する1つ以上の供給ノズル1を備えた構造(set-up)を概略的に示し、ここでストリップ3とガイド手段4との間の所定の厚さの液膜内に、供給する液体2を誘導し、かつ/又は強制するためのガイド手段4が提供される。ガイド手段の真上には、移動する鋼ストリップ3にテクスチャリングを適用するための1つ以上のレーザービームを提供するレーザー装置5が搭載されている。
【0041】
ガイド手段は、入射するレーザー光に対して低い~無視できる程度の屈折を有する透明材料の平坦部分6を備える。透明材料には、内部欠陥がない高品質であることが好ましいガラス又は硬化ガラスを使用することができる。ガラス自体もまた、水/ガラス界面での乱流を軽減するためにテクスチャリングが行われていてもよい。ガラス表面の接触面は、接触面への液体の接着によって導入される乱流を防止するために、疎水性であってもよい。必要ならば、レーザー、エッチング、リソグラフィ、選択的蒸着、又は界面活性剤による化学修飾による表面テクスチャリングを含む多種多様な方法でガラス表面を疎水性にすることができる。
【0042】
ガイド手段の平坦な部分と移動する鋼ストリップの表面との間の距離は数十ミリメートル以内、好ましくは1~5ミリメートルの間である。
【0043】
ガイド手段と移動する鋼ストリップとの間の距離を調整し、ガイド手段を移動する鋼ストリップより上方で所定の距離範囲内に維持するための制御手段(図示せず)が設けられている。所定の距離は、例えばジャッキ、モーター、又はプーリーシステムによって制御することができる。
【0044】
ガイド手段と移動する鋼ストリップ(これも図示せず)との間の距離を測定するためにさらなる手段が設けられ、それはガイド手段の距離制御に使用される。そのような手段は例えば超音波距離測定に基づくことができるが、当然、距離の測定に使用できる代替案は多く存在する。
【0045】
ガイド手段は、ガイド手段の平坦部6に接続された上向きの端7を備えている。端7の下降する傾斜が、ガイド手段の平坦部6の下に供給された液体を誘導し、ノズル又は複数のノズル1から平坦部6の下方のレーザー装置5の作業領域への液体の円錐的な流れを確保する。
【0046】
液膜が鋼ストリップ表面に何らかの影響を与えるのを防止することが重要である。多くの場合、鋼ストリップ、例えば亜鉛めっき鋼ストリップが何らかの形で影響を受けることなく水を使用することができる。必要ならば、脱塩水(demi-water)又は他の液体、あるいは添加剤を含む液体、例えばアルコール、アンモニア(5%まで)などを含む水又は脱塩水を用いることができる。重要な要件は、液体又は添加剤を含む液体が入射するレーザー光の屈折に無視できる程度の影響しか及ぼさないことである。
【0047】
鋼ストリップ3を下方向に誘導する鋼ストリップには支持ロール8が設けられている。この構成により、使用された液体をガイド手段4の下流に容易に回収することができる。洗浄液を用いて鋼ストリップからテクスチャリング屑を除去するために洗浄ノズル10が設けられている。使用された液体及びテクスチャリング屑を回収するために回収容器9が設けられている。
【0048】
また垂直位置を含めた垂直位置までの角度で
図2に示されるような構成を使用することもできる。
【0049】
代替として、上記のガイド手段は、移動する鋼ストリップに対して通路を画定するナイフ装置によって置き換えることができ、通路の幅は、ナイフ装置の下流の液膜の厚さにおける重要な要素である。そのようなナイフ装置では、透明なプレートなどは必要ないが、液膜の厚さは、
図2による実施態様でも制御することができず、液体の表面上の波紋及び/又は波を防止することができない。またそのようなナイフ装置は、垂直位置までの垂直位置を含めた角度で使用することもできる。
【0050】
図3で示される構成では、噴霧ノズル11を使用して移動する鋼ストリップ3上に液膜を噴霧する。液膜の厚さは、鋼ストリップのライン速度と組み合わせて、噴霧システムの圧力及び噴霧ノズルもしくは複数の噴霧ノズル11のサイズによって制御される。形成された層の厚さは、サブミリメートルの範囲内、好ましくはt
臨界からt1の範囲内(
図1参照)であり、これは約0.1~0.5mmの範囲内である。
【0051】
図3において、多数の連続した噴霧ノズルが示され、ここで示された噴霧ノズル11の各々は実際には鋼ストリップの幅又は幅の一部にわたって分割される一連の噴霧ノズルであってもよい。連続した噴霧ノズル11を用いることで、噴霧された液体の多数の薄層が積み重ねられて、約0.1~0.5mmの範囲内の厚さが得られる。この実施態様では、鋼ストリップと限られた厚さを有する液膜との間の接着力は、ほぼ一定の厚さの液膜を提供するのに不可欠な要素である。
【0052】
この厚さ範囲内での液膜では、より厚い液膜の場合ほどに切断速度は一定ではないが、それでも特定の範囲内にあり(
図1参照)、これは、多くの用途にとって十分となるであろう鋼ストリップのテクスチャリングをもたらすだろう。
【0053】
適用された液膜は、レーザー装置5の作業領域内で少なくとも部分的に蒸発及び/又は減少する。レーザー装置5の作業領域の下流には、熱風装置12が搭載され、この熱風装置12によって、移動する鋼ストリップに熱風が吹き付けられる。熱風を用いて液膜の残留部分を乾燥させ、1つ又は複数のレーザービームによるアブレーションから生じる塵埃は鋼ストリップの仕上げ表面から吹き飛ばされる。
【0054】
水膜下でのレーザー加工中、ストリップ材料の除去には、空洞と共に泡の形成が伴う。空洞気泡は時間t
xで崩壊し、その間にレーザー加工は同じ場所では望ましくない。さらに、気泡は窓部、平坦部6に付着し得、レーザービームに悪影響を及ぼし得る。プロセスによって発生した気泡がレーザー-材料相互作用領域から効率的に回避すること、及び窓部6に付着しないことを確保するために、
図2及び
図4に示すような設定を任意の角度で支持ロールの軸の周りに回転させることができる。好ましくは、選択された角度は、
図2及び
図3に示されるように、設定において任意の角度で支持ロールの軸を中心にして反時計回りである。
【0055】
図4に示す実施態様では、容器13は液体で満たされて提供され、容器は移動する鋼ストリップ3が容器内の液体2を通過するための水密入口スロット及び出口スロットが設けられている。レーザービーム集束光学系14は、容器13内の液体2に浸されている。集束光学系14と鋼ストリップ表面との間の距離は、レーザービームの焦点距離を決定する。レーザービーム光学系14と鋼ストリップ3は同一の媒体内にあるので、液体表面の波状の性質は鋼ストリップのテクスチャリングに何の役割も果たさない。
【0056】
集束光学系14を液体に浸したこの実施態様は、テクスチャリングプロセスを、それぞれ
図2及び
図3による実施態様のような2媒体加工システムから単一媒体加工システムへ低減させ、したがって液体層の表面変動の制御の必要性が排除される。
【0057】
容器はさらに、容器13内の液体2を交換及び/又は補給するための入口及び出口を備え、これは連続的又は断続的に行うことができる。加熱装置及び/又は冷却装置を備える温度制御手段は、液体を所定の温度範囲内に維持するために設けられている。
【0058】
移動する鋼ストリップ3のための水密入口スロット及び出口スロットを有する容器13の代わりに、少なくとも部分的に開いた上面を有する容器を使用することができる。そのような構成では、鋼ストリップを容器内の液体を通して容器の外へ誘導しそして再び処理ラインの全方向へ戻すために多数の誘導ロールが必要とされる。
【0059】
液体はすべての設定において重要な要素である。液体は、添加剤を含む溶媒を含み得、0.01~1000mPa.sの範囲、好ましくは5~500mPa.sの範囲、より好ましくは50~250mPa.sの範囲、さらにより好ましくは75~125mPa.sの範囲における所望の動的粘度をもたらし、かつ5~50℃の温度範囲内で使用される波長(200nm~11pm)のレーザー光のビーム経路において無視できる屈折率への寄与を有する。