(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】ハイブリッド神経毒
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220805BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220805BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220805BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220805BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220805BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220805BHJP
C07K 14/33 20060101ALI20220805BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220805BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220805BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220805BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220805BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220805BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20220805BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K38/16
A61K47/64
A61P25/00 101
A61P25/02
A61P35/00
C07K14/33
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/31
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2019517381
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2017074665
(87)【国際公開番号】W WO2018060351
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォンフリア スビロス,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】バーギン,デーヴィッド
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-045377(JP,A)
【文献】特開2013-139454(JP,A)
【文献】特表2012-519724(JP,A)
【文献】John A. Chaddock et al.,Inhibition of Vesicular Secretion in Both Neuronal and Nonneuronal Cells by a Retargeted Endopeptidase Derivative of Clostridium botulinum Neurotoxin Type A.,Infection and Immunity,2000年,68(5),2587-2593
【文献】Foster Keith and Chaddock John,Targeted secretion inhibitors-innovative protein therapeutics.,Toxins,2010年,2,2795-2815
【文献】Margaret R. Bunow et al.,Phase behavior of ganglicoside-lecthin mixtures relation to dispersion of gangliosides in membranes.,Biophysical Journal,1979年,27,325-337
【文献】Rummel, Andreas et al.,Exchange of the HCC domain mediating double receptor recognition improves the pharmacodynamic properties of botulinum neurotoxin.,FEBS Journal,2011年,278(23),4506-4515
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00 - 19/00
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロストリジウム軽鎖(L)及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒:
ここで、
前記選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムH
CC又はH
Cドメインではなく、
前記選択的ガングリオシド結合部分は: 細菌毒素ガングリオシド結合部分; βアミロイド、α-シヌクレイン、及びα-シヌクレイン/Aβから選択されるペプチド; 上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRの断片、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、及びVEGFRの断片から選択されるタンパク質又はその断片; 抗体; 又は抗体断片であり;
当該クロストリジウム軽鎖(L)は、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基1乃至448;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基1乃至441;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基1乃至449;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基1乃至442;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基1から423;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基1乃至439;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基1乃至446; 又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基1乃至456。
【請求項2】
前記ハイブリッド神経毒は、更に転位置部分を含む、請求項1記載のハイブリッド神経毒。
【請求項3】
前記転位置部分は、クロストリジウムH
Nドメイン、配列番号10のアミノ酸残基213乃至258に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むコレラ毒素A2サブユニット(CtxA2)、及び細胞透過性ペプチドからなる群から選択され、
前記クロストリジウムH
Nドメインは、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基449乃至872;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基442乃至859;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基450乃至867;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基443乃至863;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基424乃至846;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基440乃至865;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基447乃至864; 又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基457乃至880、
請求項2に記載のハイブリッド神経毒。
【請求項4】
前記転位置部分は、クロストリジウムH
Nドメインであり、
前記ハイブリッド神経毒は、軽鎖とクロストリジウムH
Nドメインとの間に活性化部位を含み、
前記クロストリジウムH
Nドメインは、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基449乃至872;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基442乃至859;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基450乃至867;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基443乃至863;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基424乃至846;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基440乃至865;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基447乃至864; 又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基457乃至880、
請求項2又は3に記載のハイブリッド神経毒。
【請求項5】
前記ハイブリッド神経毒は、更にクロストリジウムH
CN及び/又はH
CCドメインを含み、
前記クロストリジウムH
CNドメインは、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基873乃至1094;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基860乃至1081;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基868乃至1095;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基864から1082;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基847乃至1069;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基866乃至1087;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基865乃至1089;又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基881乃至1111、
前記クロストリジウムH
CCドメインは、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基1095乃至1296;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基1082乃至1291;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基1096乃至1291;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基1083乃至1276;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基1070乃至1252;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基1088乃至1278;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基1090から1297;又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基1112乃至1315、
請求項1乃至
4の何れかに記載のハイブリッド神経毒。
【請求項6】
前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1、GM2、GM3、GM4、GD1a、GalNAc-GD1a、GT1a、GT1b、GQ1b、GD2、GD3、及びその任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のガングリオシドに結合する、請求項1乃至5の何れかに記載のハイブリッド神経毒。
【請求項7】
前記GM1はGM1a又はGM1bであり、且つ/又は、前記GM3はNeuAc GM3又はNeuGc GM3である、請求項6に記載のハイブリッド神経毒。
【請求項8】
前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1に結合し、
前記選択的ガングリオシド結合部分は、配列番号9のアミノ酸残基22乃至124 に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)、又は大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT)を含む、
請求項6又は7に記載のハイブリッド神経毒。
【請求項9】
前記選択的ガングリオシド結合部分は、配列番号9のアミノ酸残基22乃至124 に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)を含み、
前記軽鎖は、前記1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)に共有結合している、
請求項8記載のハイブリッド神経毒。
【請求項10】
前記選択的ガングリオシド結合部分は、配列番号9のアミノ酸残基22乃至124 に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)を含み、
前記ハイブリッド神経毒は、配列番号10のアミノ酸残基213乃至258に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むコレラ毒素A2サブユニット(CtxA2)を含み、
前記CtxA2は、前記クロストリジウム軽鎖に共有結合しており、
前記CtxBは、前記クロストリジウム軽鎖と非共有結合を形成する、
請求項8記載のハイブリッド神経毒。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載のハイブリッド神経毒をコードするポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項13】
請求項11記載のポリヌクレオチド又は請求項12記載のベクターを含む細胞。
【請求項14】
請求項1乃至10の何れかに記載のハイブリッド神経毒を含む医薬組成物。
【請求項15】
治療に使用するための請求項14記載の医薬組成物: ここで、前記治療は:
a. 望まれないニューロン活性に関連する四肢障害の処置であり、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1a、GM1b、GD1a、及びGalNAc-GD1aから選択された1つ以上のガングリオシドに結合する;
b. 望まれないニューロン活性に関連する頭頸部障害の処置であり、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GT1a及びGQ1bから選択される1つ以上のガングリオシドに結合する;
c. 流涎症の処置であり、前記選択的ガングリオシド結合部分は、ガングリオシド部分GM1に結合する;
d. 癌の処置であり、前記選択的ガングリオシド結合部分は、NeuAc GM3、NeuGc GM3、GM2、GM1、GD3、及びGD2から選択される1つ以上のガングリオシドに結合する;
e. ギランバレー症候群、アルツハイマー病、又は望まれないニューロン活性に関連する状態の処置であり、当該望まれないニューロン活性に関連する状態は、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、顎口腔発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、手掌ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼障害、脳性麻痺、限局性痙縮及び他の音声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、四肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害及び他の筋緊張障害並びに筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過剰、胃腸分泌過剰、分泌障害、筋痙攣による疼痛、頭痛、片頭痛、及び皮膚科学的症状からなる群から選択される; 又は
f. 審美的状態の処置である。
【請求項16】
クロストリジウム軽鎖(L)及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を含む医薬組成物:
ここで、
前記選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムH
CC又はH
Cドメインではなく、
当該医薬組成物は、
a. 望まれないニューロン活性に関連する四肢障害の処置に使用するためのものであり、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1a、GM1b、GD1a、及びGalNAc-GD1aから選択された1つ以上のガングリオシドに結合する;
b. 望まれないニューロン活性に関連する頭頸部障害の処置に使用するためのものであり、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GT1a及びGQ1bから選択される1つ以上のガングリオシドに結合する;
c. 流涎症の処置に使用するためのものであり、前記選択的ガングリオシド結合部分は、ガングリオシド部分GM1に結合する;
d. 癌の処置に使用するためのものであり、前記選択的ガングリオシド結合部分は、NeuAc GM3、NeuGc GM3、GM2、GM1、GD3、及びGD2から選択される1つ以上のガングリオシドに結合する;
e. ギランバレー症候群、アルツハイマー病、又は望まれないニューロン活性に関連する状態の処置に使用するためのものであり、当該望まれないニューロン活性に関連する状態は、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、顎口腔発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、手掌ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼障害、脳性麻痺、限局性痙縮及び他の音声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、四肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害及び他の筋緊張障害並びに筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過剰、胃腸分泌過剰、分泌障害、筋痙攣による疼痛、頭痛、片頭痛、及び皮膚科学的症状からなる群から選択される; 又は
f. 審美的状態を処置するためのものである;
ここで、
当該クロストリジウム軽鎖(L)は、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基1乃至448;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基1乃至441;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基1乃至449;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基1乃至442;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基1から423;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基1乃至439;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基1乃至446; 又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基1乃至456;
前記ハイブリッド神経毒は、更にクロストリジウムH
CN及び/又はH
CCドメインを含み、
前記クロストリジウムH
CNドメインは、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基873乃至1094;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基860乃至1081;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基868乃至1095;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基864から1082;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基847乃至1069;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基866乃至1087;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基865乃至1089;又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基881乃至1111;
前記クロストリジウムH
CCドメインは、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基1095乃至1296;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基1082乃至1291;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基1096乃至1291;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基1083乃至1276;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基1070乃至1252;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基1088乃至1278;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基1090から1297;又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基1112乃至1315。
【請求項17】
クロストリジウム軽鎖(L)及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を含む医薬組成物:
ここで、
前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1に結合し、
前記選択的ガングリオシド結合部分は、配列番号9のアミノ酸残基22乃至124 に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)、又は大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT)を含み、
当該医薬組成物は、
a. 望まれないニューロン活性に関連する四肢障害の処置に使用するためのものであり、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1a及びGM1bから選択された1つ以上のガングリオシドに結合する;
b. 流涎症の処置に使用するためのものである;
c. 癌の処置に使用するためのものである;
d. ギランバレー症候群、アルツハイマー病、又は望まれないニューロン活性に関連する状態の処置に使用するためのものであり、当該望まれないニューロン活性に関連する状態は、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、顎口腔発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、手掌ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼障害、脳性麻痺、限局性痙縮及び他の音声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、四肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害及び他の筋緊張障害並びに筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過剰、胃腸分泌過剰、分泌障害、筋痙攣による疼痛、頭痛、片頭痛、及び皮膚科学的症状からなる群から選択される; 又は
e. 審美的状態を処置するためのものである;
ここで、
当該クロストリジウム軽鎖(L)は、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基1乃至448;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基1乃至441;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基1乃至449;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基1乃至442;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基1から423;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基1乃至439;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基1乃至446; 又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基1乃至456。
【請求項18】
前記選択的ガングリオシド結合部分は、配列番号9のアミノ酸残基22乃至124 に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)を含み、
前記軽鎖は、前記1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)に共有結合している、
請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記選択的ガングリオシド結合部分は、配列番号9のアミノ酸残基22乃至124 に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)を含み、
前記ハイブリッド神経毒は、配列番号10のアミノ酸残基213乃至258に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むコレラ毒素A2サブユニット(CtxA2)を含み、
前記CtxA2は、前記クロストリジウム軽鎖に共有結合しており、
前記CtxBは、前記クロストリジウム軽鎖と非共有結合を形成する、
請求項17記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ハイブリッド神経毒は、更に転位置部分を含む、請求項16乃至19の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記転位置部分は、クロストリジウムH
Nドメイン、配列番号10のアミノ酸残基213乃至258に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むコレラ毒素A2サブユニット(CtxA2)、及び細胞透過性ペプチドからなる群から選択され、
前記クロストリジウムH
Nドメインは、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基449乃至872;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基442乃至859;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基450乃至867;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基443乃至863;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基424乃至846;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基440乃至865;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基447乃至864; 又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基457乃至880、
請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記転位置部分は、クロストリジウムH
Nドメインであり、
前記ハイブリッド神経毒は、軽鎖とクロストリジウムH
Nドメインとの間に活性化部位を含み、
前記クロストリジウムH
Nドメインは、以下に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む:
(i) 配列番号1のアミノ酸残基449乃至872;
(ii) 配列番号2のアミノ酸残基442乃至859;
(iii) 配列番号3のアミノ酸残基450乃至867;
(iv) 配列番号4のアミノ酸残基443乃至863;
(v) 配列番号5のアミノ酸残基424乃至846;
(vi) 配列番号6のアミノ酸残基440乃至865;
(vii) 配列番号7のアミノ酸残基447乃至864; 又は
(viii) 配列番号8のアミノ酸残基457乃至880、
請求項20又は21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された治療特性、特にガングリオシドに対するより選択的な結合親和性を有するハイブリッド神経毒に関する。
【背景技術】
【0002】
クロストリジウム属のバクテリアは、非常に強力且つ特異的なタンパク質毒素を産生し、これらは、送達されたニューロン及び他の細胞を害する可能性がある。このようなクロストリジウム毒素の例には、C.テタニによって産生される神経毒(TeNT)及びC.ボツリヌム血清型A乃至Gにより産生される神経毒(BoNT)、並びにC.バラティ(baratii)及びC.ブチリカム(butyricum)によって産生される神経毒が挙げられる。
【0003】
クロストリジウム神経毒には、公知の最も強力な毒素の幾つかが含まれる。一例として、ボツリヌス神経毒素は、血清型に応じて、マウスに対する半致死量(LD50)値が0.5乃至5ng/kgの範囲となる。破傷風毒素及びボツリヌス毒素は、共に、罹患ニューロンの機能、具体的には神経伝達物質の放出を阻害することにより作用する。ボツリヌス毒素が神経筋接合部で作用し、末梢神経系におけるコリン作動性伝達を阻害する一方、破傷風毒素は、中枢神経系において作用する。
【0004】
本来、クロストリジウム神経毒は、タンパク質切断事象により翻訳後に修飾されてジスルフィド結合により互いに連結した2つのポリペプチド鎖を形成する単鎖ポリペプチドとして合成される。切断は、鎖間ジスルフィド結合を提供するシステイン残基の間に位置する、活性化部位と呼ばれることが多い特定の切断部位において生じる。この二鎖形態が、毒素の活性型となる。2本の鎖は、分子量略100kDaの重鎖(H鎖)及び分子量略50kDaの軽鎖(L鎖)と呼ばれる。H鎖は、N末端側転位置成分(HNドメイン)及びC末端側標的化成分(HCドメイン)を含む。切断部位は、L鎖と転位置ドメイン成分との間に位置する。HCドメインのその標的ニューロンとの結合と、エンドソームを介した細胞内への結合毒素の内部移行とに続いて、HNドメインは、エンドソーム膜を横断してサイトゾル内へL鎖を転位置させ、L鎖は、プロテアーゼ機能を提供する(非細胞傷害性プロテアーゼとしても知られる)。
【0005】
非細胞傷害性プロテアーゼは、SNAREタンパク質として知られる細胞内輸送タンパク質(例えば、SNAP-25、VAMP、又はシンタキシン)をタンパク質切断することにより作用する(Gerald K (2002) "Cell and Molecular Biology” (4th edition) John Wiley & Sons, Inc.参照)。SNAREとは、Soluble NSF Attachment Receptorという用語に由来し、ここで、NSFは、N-エチルマレイミド感受性因子を意味する。SNAREタンパク質は、細胞内小胞融合に不可欠であり、したがって細胞からの小胞輸送による分子の分泌に不可欠である。プロテアーゼ機能は、亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性であり、SNAREタンパク質に対して高い基質特異性を示す。そのため、所望の標的細胞に送達されると、非細胞傷害性プロテアーゼは、標的細胞からの細胞分泌を阻害することができる。クロストリジウム神経毒のL鎖プロテアーゼは、SNAREタンパク質を切断する非細胞傷害性プロテアーゼである。BoNT/B、BoNT/D、BoNT/F、及びBoNT/GのL鎖プロテアーゼは、VAMPを切断し、BoNT/A及びBoNT/EのL鎖プロテアーゼは、SNAP25を切断し、そしてBoNT/CのL鎖プロテアーゼは、SNAP25及びシンタキシンを共に切断することで、神経伝達物質の放出が阻害され、結果的に神経麻痺が生じる(Rossetto, O. et al., "Botulinum neurotoxins: genetic, structural and mechanistic insights." Nature Reviews Microbiology 12.8 (2014): 535-549)。
【0006】
SNAREタンパク質の遍在的性質を鑑みて、ボツリヌス毒素等のクロストリジウム神経毒は、広範囲の治療で使用することに成功してきた。現在承認されているBoNTを含む全ての薬物/美容的調製物は、クロストリジウム株から精製された天然に存在する神経毒を含有する(DYSPORT(登録商標)、BOTOX(登録商標)、又はXEOMIN(登録商標)の場合はBoNT/A、MYOBLOC(登録商標)の場合はBoNT/B)。
【0007】
一例として、William J. Lipham, Cosmetic and Clinical Applications of Botulinum Toxin (Slack, Inc., 2004)を参照すると、ボツリヌス神経毒素(BoNT)、例えばBoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、及びBoNT/G、並びにテタヌス神経毒(TeNT)等のクロストリジウム神経毒を使用して、多数の治療的及び美容的又は審美的用途でニューロン伝達を抑制することが記載されており、例えば市販のボツリヌス毒素製品は、現在、限局性痙縮、上肢痙縮、下肢痙縮、頸部ジストニア、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、腋窩多汗症、慢性片頭痛、神経性排尿筋過活動、眉間の皺、及び重度の外眼角の皺を含む適応症の治療法として承認されている。更に、クロストリジウム神経毒療法は、以下について記述されている:神経筋障害の治療(US6,872,397参照)、子宮障害の治療(US2004/0175399参照)、潰瘍及び胃食道逆流症の治療(US2004/0086531参照)、ジストニアの治療(US6,319,505参照)、眼疾患の治療(US2004/0234532参照)、眼瞼痙攣の治療(US2004/0151740参照)、斜視の治療(US2004/0126396参照)、疼痛の治療(US6,869,610、US6,641,820、US6,464,986、及びUS6,113,915参照)、線維筋痛症の治療(US6,623,742、US2004/0062776参照)、腰痛の治療(US2004/0037852参照)、筋肉損傷の治療(US6,423,319参照)、副鼻腔炎性頭痛の治療(US6,838,434参照)、緊張性頭痛の治療(US6,776,992参照)、頭痛の治療(US6,458,365参照)、片頭痛の痛みの軽減(US5,714,469参照)、心血管疾患の治療(US6,767,544参照)、パーキンソン病等の神経障害の治療(US6,620,415、US6,306,403参照)、精神神経障害の治療(US2004/0180061、US2003/0211121参照)、内分泌障害の治療(US6,827,931参照)、甲状腺疾患の治療(US6,740,321参照)。コリン作動性汗腺障害の治療(US6,683,049参照)、糖尿病の治療(US6,337,075、US6,416,765参照)、膵臓障害の治療(US6,261,572、US6,143,306参照)、骨腫瘍等の癌の治療(US6,565,870、US6,368,605、US6,139,845、US2005/0031648)、耳の障害の治療(US6,358,926、US6,265,379参照)、胃腸筋障害及び他の平滑筋機能不全等の自律神経障害の治療(US5,437,291参照)、皮膚細胞増殖性生涯に関連する皮膚病変の治療(US5,670,484参照)、神経性炎症性疾患の管理(US6,063,768参照)、脱毛の減少及び発毛の刺激(US6,299,893参照)、下向きの口の治療(US6,358,917参照)、食欲の低減(US2004/40253274参照)、歯科治療及び手技(US2004/0115139参照)、神経筋の障害及び状態の治療(US2002/0010138参照)、様々な障害及び状態並びに関連する疼痛の治療(US2004/0013692参照)、喘息及びCOPD等の粘液分泌過多に起因する症状の治療(WO00/10598参照)、及び炎症、内分泌の状態、外分泌の状態、免疫学的状態、心血管の状態、骨の状態等の非神経性の状態の治療(WO01/21213参照)。上記の文書は全て、出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とする。
【0008】
しかしながら、天然BoNTは、神経筋接合部の空間分布又は異なる種類のニューロンを区別しないため、副作用を引き起こす可能性がある。例えば、BoNTによる上肢痙縮の治療は、口渇及び嚥下障害等の有害事象を引き起こす恐れがある(Nair, K. P., and Jonathan Marsden. "The management of spasticity in adults." Bmj 349 (2014): g4737.)。
【0009】
特定のニューロン集団に対するクロストリジウム神経毒の特異性を増加させることで、安全性を増加させ、副作用を減少させて、クロストリジウム神経毒を特定の病状に合わせることが可能となる。
【0010】
本発明は、治療特性が改善された神経毒、特に筋肉収縮(神経筋接合部)又はコリン作動性分泌を駆動する特定のニューロンに対する、より選択的な結合親和性を有する神経毒を提供する。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖(L)及び選択的ガングリオシド結合部分(GBM)を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではない。
【0012】
他の態様において、本発明は、本発明によるハイブリッド神経毒をコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0013】
他の態様において、本発明は、本発明によるヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0014】
他の態様において、本発明は、本発明によるヌクレオチド配列又はベクターを含む細胞を提供する。
【0015】
他の態様において、本発明は、本発明によるハイブリッド神経毒を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
他の態様において、本発明は、治療に使用する本発明によるハイブリッド神経毒又は医薬組成物を提供する。
【0017】
他の態様において、本発明は、審美的又は美容的状態を処置するための、本発明によるハイブリッド神経毒又は医薬組成物の非治療的使用を提供する。
【0018】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1a、GM1b、GD1a、及びGalNAc-GD1aから選択される1つ以上のガングリオシドと結合し、望まれないニューロン活性に関連する四肢障害の治療に使用される。
【0019】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GT1a及びGQ1bから選択される1つ以上のガングリオシドと結合し、望まれないニューロン活性に関連する頭頸部障害の治療に使用される。
【0020】
他の態様において、本発明は、治療上有効量の本発明によるハイブリッド神経毒又は医薬組成物を、必要とする患者に投与することを含む治療方法を提供する。
【0021】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1に結合し、流涎症(又は唾液分泌過剰若しくは流涎)の治療に使用される。
【0022】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、NeuAc GM3、NeuGc GM3、GM2、GM1、GD3、及びGD2から選択される1つ以上のガングリオシドに結合し、癌の治療に使用される。
【0023】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含む治療上有効量のハイブリッド神経毒を投与することを含む、望まれないニューロン活性に関連する四肢障害の治療方法を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1a、GM1b、GD1a、及びGalNAc-GD1aから選択される1つ以上のガングリオシドと結合し、必要とする患者に投与される。
【0024】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含む治療上有効量のハイブリッド神経毒を投与することを含む、望まれないニューロン活性に関連する頭頸部障害の治療方法を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GT1a及びGQ1bから選択される1つ以上のガングリオシドと結合し、必要とする患者に投与される。
【0025】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含む治療上有効量のハイブリッド神経毒を投与することを含む、流涎症(又は唾液分泌過剰若しくは流涎)の治療方法を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1に結合し、必要とする患者に投与される。
【0026】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含む治療上有効量のハイブリッド神経毒を投与することを含む、癌の治療方法を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、NeuAc GM3、NeuGc GM3、GM2、GM1、GD3、及びGD2から選択される1つ以上のガングリオシドに結合し、必要とする患者に投与される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、外来性(非クロストリジウム)ガングリオシド結合ドメインを操作してクロストリジウム神経毒にすることにより、神経筋接合部に対するクロストリジウム神経毒の選択性を変化させることが可能であるという本発明者らの発見に基づく。
【0028】
ボツリヌス神経毒(BoNT)は、タンパク質受容体及び細胞膜ガングリオシドを含む二重受容体結合機構を用いてニューロンを標的とする。BoNT/B、/G、及び/DCは、SytI及びSytII(シナプトタグミンの2つの主要なアイソフォーム)の内腔ドメインを認識することが示されている。3つのアイソフォームSV2A、SV2B、及びSV2Cを含むシナプス小胞糖タンパク質2(SV2)は、BoNT/A、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/Fのタンパク質受容体であることが示されている。
【0029】
ガングリオシドは、ラクトシルセラミドから誘導され、N-アセチルノイラミン酸(「NANA」又は「SA」又は「Neu5Ac」又は「NeuAc」)等のシアル酸残基を含有するオリゴグリコシルセラミドである。場合により、シアル酸成分は、N-グリコリル-ノイラミン酸(Neu5Gc)、又はアミン基がOH(3-デオキシ-D-グリセロ-D-ガラクト-ノヌロソン酸、略称「KDN」)に置き換えられたNeu5Ac類似体である。ガングリオシドは、Svennerholmが提案した命名体系により定義され、M、D、T及びQは、それぞれ、モノ、ジ、トリ、及びテトラシアロガングリオシドを示し、数字1、2、3等は、薄層クロマトグラフィーにおけるガングリオシドの移動順序を示す。例えば、モノシアロガングリオシドの移動順序は、GM3>GM2>GM1である。基本構造内での変化を示すために、例えば、GM1a、GD1b等、他の用語が追加される。内部ガラクトース単位に結合した0、1、2、及び3個のシアル酸残基を有するスフィンゴ糖脂質は、それぞれ、アシアロ-(又は0-)、a-、b-、及びc-シリーズガングリオシドと呼ばれ、内側のN-ガラクトサミン残基は、α-シリーズガングリオシドとして分類される。0-、a-、b-、及びc-シリーズのガングリオシドの生合成のための経路は、例えば、Ledeen et al., 2015に例示されるような、シアリルトランスフェラーゼとグリコシルトランスフェラーゼの連続活性を含む(Ledeen, Robert W., and Gusheng Wu. "The multi-tasked life of GM1 ganglioside, a true factotum of nature." Trends in biochemical sciences 40.7 (2015): 407-418)。シリーズのそれぞれ及び炭水化物鎖内の異なる位置では、更にシアル化が生じ、シアル酸残基(群)が内側のN-アセチルガラクトサミン残基に結合したα-シリーズガングリオシド等、複雑性及び不均一性が増加した様々な生成物をもたらす場合がある。
【0030】
ガングリオシドは、小胞形成を含む輸送系により細胞膜の外側小葉に移動される。ガングリオシドは、セラミド部分の2つの炭化水素鎖が細胞膜に埋め込まれ、オリゴ糖が細胞外表面上に位置する状態で、細胞表面上で存在及び濃縮され、そこで細胞外分子又は隣接細胞の表面に対する認識点を提供する。ガングリオシドのシアログリカン成分は、細胞表面から延び出し、分子間相互作用に関与することができる。シアログリカン成分は、細胞表面で特定の分子を認識すること及び細胞膜内のタンパク質の活性を調節することにより機能する。ガングリオシドは更に、ボツリヌス、破傷風、及びコレラに由来するもの等、ウイルス及び細菌毒素に特異的に結合する。例えば、コレラ毒素に対する特異的細胞表面受容体は、ガングリオシドGM1(又はGM1a):Neu5Acα2-3(Galβ1-3GalNAcβ1-4)Galβ1-4Glcβ1Cerである。
【0031】
BoNTは、ガングリオシド及び神経タンパク質受容体に対して、HCCドメイン内に2つの独立した結合領域を有する。BoNT/A、/B、/E、/F、及び/Gは、HCCドメイン内に「E(Q)...H(K)...SXWY...G」モチーフからなる保存されたガングリオシド結合部位を有し、BoNT/C、/D、及び/DCは、2つの独立したガングリオシド結合部位を示す(Lam, Kwok-Ho, et al. "Diverse binding modes, same goal: The receptor recognition mechanism of botulinum neurotoxin." Progress in biophysics and molecular biology 117.2 (2015): 225-231.)。殆どのBoNTは、オリゴ糖コアのGal4に付着した2,3-結合N-アセチルノイラミン酸残基(Sia5と示す)を有するガングリオシドにのみ結合するが、TeNT上の対応するガングリオシド結合ポケットは、Sia5糖残基を欠くガングリオシドであるGM1aにも結合することができる。組換えBoNT/FにH1241K変異を導入すると、GM1結合能が付与されることが示されている((Benson, Marc A., et al. "Unique ganglioside recognition strategies for clostridial neurotoxins." Journal of Biological Chemistry 286.39 (2011): 34015-34022)。BoNT/Dは、GM1a及びGD1aを結合することが分かっている(Kroken, Abby R., et al. "Novel ganglioside-mediated entry of botulinum neurotoxin serotype D into neurons." Journal of Biological Chemistry 286.30 (2011): 26828-26837)。
【0032】
ガングリオシド欠損マウスと生化学的アッセイとに由来するデータを組み合わせると、BoNT/A、E、F、及びGは、GD1a及びGT1bに存在する末端NAcGal-Gal-NAcNeu部分に対する優先性を示すが、BoNT/B、C、D、及びTeNTは、GD1b、GT1b、及びGQ1bに見られるジシアリルモチーフを必要とする。したがって、GD1a、GD1b、及びGT1b等、豊富で複雑なポリシアロガングリオシドは、中毒の第1の段階として神経細胞の表面上に全てのBoNT血清型及びTeNTを特異的に蓄積するために必須であると思われる(Rummel, Andreas. "Double receptor anchorage of botulinum neurotoxins accounts for their exquisite neurospecificity." Botulinum Neurotoxins. Springer Berlin Heidelberg, 2012. 61-90)。
【0033】
本発明者らは、特定の位置のニューロンに対するクロストリジウム神経毒の選択性を増強するために、体内のガングリオシドの特異的局在化を利用することができるという仮説を立てた。本発明者らは、特に、コレラ毒素のBサブユニットが、BoNT/AへGM1結合能を与えるように操作するために使用可能であることを明らかにした。
【0034】
第1の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではない。
【0035】
本明細書で使用される「神経毒」という用語は、ニューロンに侵入し、神経伝達物質の放出を阻害する任意のポリペプチドを意味する。このプロセスは、低又は高親和性受容体との神経毒の結合、神経毒の内部移行、神経毒のエンドペプチダーゼ部分の細胞質への転位置、及び神経毒基質の酵素的修飾を含む。より具体的には、「神経毒」という用語は、ニューロンに侵入して神経伝達物質の放出を阻害する、クロストリジウムバクテリアにより産生される任意のポリペプチド(クロストリジウム神経毒)と、組換え技術又は化学手法により産生される、このようなポリペプチドとを含む。この二鎖形態が、毒素の活性型となる。2本の鎖は、分子量略100kDaの重鎖(H鎖)及び分子量略50kDaの軽鎖(L鎖)と呼ばれる。
【0036】
異なるボツリヌス神経毒(BoNT)血清型は、特異的中和抗血清による不活性化に基づいて識別可能であり、このような血清型による分類は、アミノ酸レベルでの配列同一性百分率と相関する。所与の血清型のBoNTタンパク質は、更にアミノ酸配列同一性百分率に基づいて異なる亜型に分類される。BoNT/Aアミノ酸配列の例は、配列番号1(UniProt受入番号A5HZZ9)として提供される。BoNT/Bアミノ酸配列の例は、配列番号2(UniProt受入番号B1INP5)として提供される。BoNT/Cアミノ酸配列の例は、配列番号3(UniProt受入番号P18640)として提供される。BoNT/Dアミノ酸配列の例は、配列番号4(UniProt受入番号P19321)として提供される。BoNT/Eアミノ酸配列の例は、配列番号5(UniProt受入番号Q00496)として提供される。BoNT/Fアミノ酸配列の例は、配列番号6(UniProt受入番号Q57236)として提供される。BoNT/Gアミノ酸配列の例は、配列番号7(UniProt受入番号Q60393)として提供される。TeNT(テタヌス神経毒)アミノ酸配列の例は、配列番号8(UniProt受入番号P04958)として提供される。
【0037】
本明細書で使用される「クロストリジウム軽鎖」(又は「L」)という用語は、SNAREタンパク質を切断することにより標的細胞からの神経伝達物質の放出を妨害する能力を有する、分子量略50kDaのクロストリジウムエンドペプチダーゼドメイン(又は非細胞傷害性プロテアーゼ)を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「HNドメイン」という用語は、クロストリジウム軽鎖を標的細胞の細胞質内に転位置させる能力を有する、分子量略50kDaの神経毒重鎖の機能的に別個の領域を意味する。
【0039】
本明細書で使用される「LHNドメイン」という用語は、HCドメインを欠き、エンドペプチダーゼドメイン(「L」又は「軽鎖」)とエンドペプチダーゼの細胞質内への転位置に関与するドメイン(重鎖のHNドメイン)とからなる神経毒を意味する。LHNドメインは、LドメインとHNドメインとの間に活性化部位を含む。活性化部位がタンパク質切断されると、LドメインとHNドメインは、ジスルフィド結合により共に連結される。
【0040】
本明細書で使用される「HCドメイン」という用語は、標的細胞の表面上に位置する受容体への神経毒の結合を可能にする、分子量略50kDaの神経毒重鎖の機能的に明確な領域を意味する。HCドメインは、2つの構造的に異なるサブドメインである「HCNサブドメイン」(HCドメインのN末端側部分)及び「HCCサブドメイン」(HCドメインのC末端側部分)からなり、それぞれ略25kDaの分子量を有する。
【0041】
L、H
N、H
CN、及びH
CCドメインの例を表1に示す。
【表1】
【0042】
上述した基準配列は、目安と考えるべきであり、下位血清型により僅かな変動が生じ得る。一例として、US2007/0166332(出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とする)では、僅かに異なるクロストリジウム配列が引用されている。
【0043】
一実施形態において、クロストリジウム軽鎖は、BoNT A型、B型、C1型、D型、E型、F型、若しくはG型、又はTeNTに由来する。
【0044】
一実施形態において、クロストリジウム軽鎖ドメインは、以下から選択される配列を含む:
- 配列番号1のアミノ酸残基1乃至448、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号2のアミノ酸残基1乃至441、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号3のアミノ酸残基1乃至449、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号4のアミノ酸残基1乃至442、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号5のアミノ酸残基1から423、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号6のアミノ酸残基1乃至439、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号7のアミノ酸残基1乃至446、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、及び
- 配列番号8のアミノ酸残基1乃至456、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列。
【0045】
本発明によるクロストリジウム軽鎖は、SNAREタンパク質を切断する能力を有すると理解される。
【0046】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は、転位置部分を含む。
【0047】
本明細書で使用される「転位置部分」(又は「転位置ドメイン」)という用語は、クロストリジウム軽鎖を標的細胞の細胞質内に転位置させる能力を有する部分を意味する。
【0048】
適切な転位置部分には、クロストリジウムHNドメイン及び/又はコレラ毒素由来のサブユニットA2(CtxA2)等の細菌毒素転位置ドメイン、細胞透過性ペプチド、特にpH感受性細胞透過性ペプチドが含まれる。pH感受性細胞透過性ペプチドの例は、pH感受性マスキングペプチド、ヒスチジングルタミン酸(HE)を組み込んだHBHAc(KKAAPAKKAAAKKAPAKKAAAKK)である(Yeh et al, Mol Pharm 2016 “Selective Intracellular Delivery of Recombinant Arginine Deiminase (ADI) Using pH-Sensitive Cell Penetrating Peptides To Overcome ADI Resistance in Hypoxic Breast Cancer Cells)。
【0049】
好適な実施形態において、ハイブリッド神経毒は、クロストリジウムHNドメインである転位置部分を含む。より好適な実施形態において、ハイブリッド神経毒は、軽鎖とクロストリジウムHNドメインとの間に活性化部位を含む。
【0050】
一実施形態において、クロストリジウムHNドメインは、以下から選択される配列を含む:
- 配列番号1のアミノ酸残基449乃至872、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号2のアミノ酸残基442乃至859、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号3のアミノ酸残基450乃至867、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号4のアミノ酸残基442乃至863、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号5のアミノ酸残基423乃至846、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号6のアミノ酸残基440乃至865、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号7のアミノ酸残基447乃至864、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、及び
- 配列番号8のアミノ酸残基457乃至880、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列。
【0051】
本発明によるクロストリジウムHNドメインは、軽鎖を標的細胞の細胞質内に転位置させる能力を有すると理解される。
【0052】
一実施形態において、クロストリジウムL及びHNドメインは、同じクロストリジウム血清型に由来する。
【0053】
一実施形態において、クロストリジウムL及びHNドメインは、異なるクロストリジウム血清型に由来する。
【0054】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は標的化部分を含む。
【0055】
本明細書で使用される「標的化部分」(又は「標的化ドメイン」)という用語は、標的細胞上の受容体に結合する能力を有する部分を意味する。好ましくは、標的化部分は、標的細胞上のタンパク質受容体に結合する能力を有する。
【0056】
適切な標的化部分には、クロストリジウムHC又はHCCドメイン等の細菌毒素標的化ドメイン、ペプチド、抗体、又は抗体断片が含まれる。
【0057】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は、非クロストリジウム受容体に結合する標的化部分(Targeting Moiety、TM)を含む。TMは、クロストリジウム神経毒重鎖のHC又はHCCドメインの一部又は全部に置き換わることができる。非クロストリジウムTMを含むハイブリッド神経毒は、「再標的化神経毒」(又は「標的分泌阻害剤」、「TSI」、「TVEMP」、又は「TEM」)と呼ばれる場合がある。再標的化神経毒に適したTMの例には、全て出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とする、WO96/33273、WO98/07864、WO00/10598、WO01/21213、WO01/53336、WO02/07759、WO2005/023309、WO2006/026780、WO2006/099590、WO2006/056093、WO2006/059105、WO2006/059113、WO2007/138339、WO2007/106115、WO2007/106799、WO2009/150469、WO2009/150470、WO2010/055358、WO2010/020811、WO2010/138379、WO2010/138395、WO2010/138382、WO2011/020052、WO2011/020056、WO2011/020114、WO2011/020117、WO2011/20119、WO2012/156743、WO2012/134900、WO2012/134897、WO2012/134904、WO2012/134902、WO2012/135343、WO2012/135448、WO2012/135304、WO2012/134902、WO2014/033441、WO2014/128497、WO2014/053651、WO2015/004464において開示されている。
【0058】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は、クロストリジウムHCN及び/又はHCCドメインを含む。好ましくは、クロストリジウムHCN及び/又はHCCドメインは、BoNT A型、B型、C1型、D型、E型、F型、若しくはG型、又はTeNTに由来する。
【0059】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は、以下から選択される配列を含むクロストリジウムHCNドメインを含む:
- 配列番号1のアミノ酸残基873乃至1094、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号2のアミノ酸残基860乃至1081、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号3のアミノ酸残基868乃至1095、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号4のアミノ酸残基864から1082、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号5のアミノ酸残基847乃至1069、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号6のアミノ酸残基866乃至1087、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号7のアミノ酸残基865乃至1089、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、又は
- 配列番号8のアミノ酸残基881乃至1111、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列。
【0060】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は、以下から選択される配列を含むクロストリジウムHCCドメインを含む:
- 配列番号1のアミノ酸残基1095乃至1296、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号2のアミノ酸残基1082乃至1291、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号3のアミノ酸残基1096乃至1291、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号4のアミノ酸残基1083乃至1276、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号5のアミノ酸残基1070乃至1252、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号6のアミノ酸残基1088乃至1278、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、
- 配列番号7のアミノ酸残基1090から1297、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列、又は
- 配列番号8のアミノ酸残基1112乃至1315、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列。
【0061】
本発明によるHCCは、クロストリジウム神経毒タンパク質受容体に結合することができると理解される。
【0062】
一実施形態において、クロストリジウムHCN及び/又はHCCドメインは、軽鎖と同じクロストリジウム血清型に由来する。
【0063】
一実施形態において、クロストリジウムHCN及び/又はHCCドメインは、軽鎖とは異なるクロストリジウム血清型に由来する。
【0064】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は、クロストリジウムHCNドメイン及びクロストリジウムHCCドメインを含む。好適には、クロストリジウムHCN及びHCCドメインは、同じ血清型由来にすることができる。好適には、クロストリジウムHCN及びHCCドメインは、異なる血清型由来にすることができる。一実施形態において、クロストリジウム軽鎖、HCN及びHCCドメインは、同じ血清型に由来する。一実施形態において、クロストリジウム軽鎖及びHCNは、同じ血清型に由来し、HCCドメインは、異なる血清型に由来する。
【0065】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は、クロストリジウムHNドメイン、クロストリジウムHCNドメイン、及びクロストリジウムHCCドメインを含む。好適には、クロストリジウムHN、HCN、及びHCCドメインは、同じ血清型由来にすることができる。好適には、クロストリジウムHN、HCN、及びHCCドメインは、異なる血清型由来にすることができる。一実施形態において、クロストリジウム軽鎖、HN、HCN、及びHCCドメインは、同じ血清型に由来する。一実施形態において、クロストリジウム軽鎖、HN及びHCNドメインは、同じ血清型に由来し、HCCドメインは、異なる血清型に由来する。一実施形態において、クロストリジウム軽鎖及びHNドメインは、同じ血清型に由来し、HCN及びHCCドメインは、異なる血清型に由来する。
【0066】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒がクロストリジウムHCCドメインを含む場合、クロストリジウムHCCドメインは、ガングリオシドに結合する能力が、天然のクロストリジウムHCCドメインと比較して減少又は消失している。これは、例えば、HCCドメインのガングリオシド結合モチーフに突然変異を導入することにより達成し得る。
【0067】
2つ以上の核酸又はアミノ酸配列間の「配列同一性パーセント」は、アライメントした配列が共有する同一位置における同一のヌクレオチド/アミノ酸の数の関数である。したがって、同一性%は、アライメント内の各位置における同一のヌクレオチド/アミノ酸の数を、アライメントした配列内のヌクレオチド/アミノ酸の総数で除算したものに100を乗算して計算し得る。配列同一性%の計算は、ギャップ数と、2つ以上の配列のアライメントを最適化するために導入する必要がある各ギャップの長さとを考慮して行ってもよい。2つ以上の配列間の配列比較及び同一性パーセントの決定は、当業者によく知られている特定の数学的アルゴリズム、例えばグローバルアライメント数学アルゴリズム(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48(3), 443-453, 1972に記載のもの等)を用いて実施することができる。
【0068】
軽鎖、HN、HCN、及びHCCドメインは、モザイク神経毒由来にすることができる。この文脈で用いる「モザイク神経毒」という用語は、他の種類のクロストリジウム神経毒(例えば、異なる血清型のクロストリジウム神経毒)由来の少なくとも1つの機能ドメインを含む天然に存在するクロストリジウム神経毒であって、その少なくとも1つの機能ドメインを通常は含まないものを示す。モザイク神経毒の例は、天然に存在するBoNT/DC及びBoNT/CDである。BoNT/DCは、血清型DのL鎖及びHNドメイン、並びに血清型CのHCドメインを含み、BoNT/CDは、血清型CのL鎖及びHNドメイン、並びに血清型DのHCドメインからなる。
【0069】
軽鎖、HN、HCN及びHCCドメインは、限定ではなく以下に記載したものを含む改変神経毒及びその誘導体由来にすることができる。改変神経毒又は誘導体は、天然(未修飾)型の神経毒と比較して修飾された1つ以上のアミノ酸を含み得るか、又は天然(未修飾)型の毒素に存在しない1つ以上の挿入アミノ酸を含み得る。一例として、修飾クロストリジウム神経毒は、天然(未修飾)クロストリジウム神経毒配列と比較して、1つ以上のドメインに修飾アミノ酸配列を有し得る。このような修飾は、神経毒の機能的側面、例えば生物学的活性又は持続性を修飾し得る。
【0070】
改変神経毒は、標的細胞上の低又は高親和性神経毒受容体に結合する能力、神経毒のエンドペプチダーゼ部分(軽鎖)を細胞質内に転位置させる能力、及びSNAREタンパク質を切断する能力から選択される、神経毒の機能の少なくとも1つを保持する。好ましくは、改変神経毒は、これらの機能の少なくとも2つを保持する。より好ましくは、改変神経毒は、これら3つの機能を保持する。
【0071】
改変神経毒は、重鎖(修飾HCドメイン等)のアミノ酸配列に1つ以上の修飾を有して良く、修飾重鎖は、天然(未修飾)神経毒より高い又は低い親和性で標的神経細胞に結合する。HCドメインにおけるこうした修飾は、ガングリオシド受容体及び/又は標的神経細胞のタンパク質受容体との結合を変化させる、HCドメインのガングリオシド結合部位又はタンパク質(SV2又はシナプトタグミン)結合部位における残基の修飾を含み得る。こうした改変神経毒の例は、共に出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とするWO2006/027207及びWO2006/114308に記載されている。
【0072】
改変神経毒は、軽鎖のアミノ酸配列における1つ以上の修飾、例えば修飾LCのSNAREタンパク質特異性を変更又は修飾し得る基質結合又は触媒ドメインにおける修飾を有し得る。こうした改変神経毒の例は、共に出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とするWO2010/120766及びUS2011/0318385に記載されている。
【0073】
改変神経毒は、改変神経毒の生物学的活性及び/又は生物学的持続性を増加又は減少させる1つ以上の修飾を含み得る。例えば、改変神経毒は、ロイシン又はチロシンに基づくモチーフであって、改変神経毒の生物学的活性及び/又は生物学的持続性を増加又は減少させるモチーフを含み得る。適切なロイシンに基づくモチーフには、xDxxxLL、xExxxLL、xExxxIL、及びxExxxLM(xは任意のアミノ酸)が含まれる。適切なチロシンに基づくモチーフには、Y-x-x-Hy(Hyは疎水性アミノ酸)が含まれる。ロイシン及びチロシンに基づくモチーフを含む改変神経毒の例は、出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とするWO2002/08268に記載されている。
【0074】
本明細書で使用される「選択的ガングリオシド結合部分」という用語は、他のガングリオシドよりも高い親和性で、ある種類のガングリオシドに結合する部分を意味する。結合親和性は、ガングリオシドと結合部分との間の平衡解離定数、即ちKdを決定することにより定量化することができる(Kdが低いほど親和性が高い)。ガングリオシドに対する結合親和性を決定するための方法は、当該技術分野において周知であり、例えばKuziemko, Geoffrey M. et al. "Cholera toxin binding affinity and specificity for gangliosides determined by surface plasmon resonance." Biochemistry 35.20 (1996): 6375-6384、又はMacKenzie, C. Roger, et al. "Quantitative analysis of bacterial toxin affinity and specificity for glycolipid receptors by surface plasmon resonance." Journal of Biological Chemistry 272.9 (1997): 5533-5538に記載のように、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)を含む。特に、Kuziemko et al., 1996(前掲)は、SPRを用いることにより、コレラ毒素がガングリオシドに好適に結合する順序が、GM1>GM2>GD1A>GM3>GT1B>GD1B>アシアロ-GM1であることと、ガングリオシド配列に対するコレラ毒素の結合親和性(Kd)が、GM1に対する4.61×10-12MからアシアロGM1に対する1.88×10-10Mの範囲であることとを発見した。MacKenzie et al., 1997(前掲)は、表面プラズモン共鳴(SPR)により、リポソーム捕獲法を用いて、CtxBがGM1及びGD1bと、それぞれ7.3×10-10M及び8×10-9Mの親和性で結合することと、大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT)がGM1及びGD1bと、それぞれ5.7×10-10M及び3.0×10-9Mの親和性で結合することと、破傷風毒素CフラグメントがGD1b及びGT1bと、それぞれ1.5×10-7M及び1.7×10-7Mの親和性で結合することとを決定した。
【0075】
ガングリオシドに対する結合親和性は、競合的ELISAアッセイを用いて、例えば、Sinclair, Haydn R., et al. "Sialyloligosaccharides inhibit cholera toxin binding to the GM1 receptor." Carbohydrate research 343.15 (2008): 2589-2594に記載されるように決定することもできる。ガングリオシドに対する結合親和性を決定するための別の方法は、例えば、Nishiki, Tei-ichi, et al. "The high‐affinity binding of Clostridium botulinum type B neurotoxin to synaptotagmin II associated with gangliosides GT1b/GD1a." FEBS letters 378.3 (1996): 253-257に記載されるように、放射性標識リガンド(例えば、125I標識)の使用に基づく。ガングリオシド結合親和性を決定するための更に別の方法は、Turnbull, W. Bruce, et al. "Dissecting the cholera toxin-ganglioside GM1 interaction by isothermal titration calorimetry." Journal of the American Chemical Society 126.4 (2004): 1047-1054に記載されるような、等温滴定熱量測定の使用である。
【0076】
一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分とガングリオシドとの間のKdは、約10-9M未満、好ましくは約10-10M未満、より好ましくは約10-11M未満、より好ましくは約5×10-12M未満である。
【0077】
適切なガングリオシド結合部分(GBM)は、細菌毒素GBM(クロストリジウムHC又はHCCドメイン以外)、ペプチド、タンパク質又はタンパク質断片、抗体又は抗体断片を含む。
【0078】
一実施形態において、GBMは、ペプチドである。GBMとしての使用に適したペプチドの例には、GM1に結合するアルツハイマー型βアミロイドペプチド、GM3に結合するパーキンソン病関連タンパク質α-シヌクレイン、及びYahi and Fantini 2014に記載のα-シヌクレイン/Aβ等、GM1及びGM3に結合するキメラペプチドが含まれる(Yahi, Nouara, and Jacques Fantini. "Deciphering the glycolipid code of Alzheimer's and Parkinson's amyloid proteins allowed the creation of a universal ganglioside-binding Peptide." PloS one 9.8 (2014): e104751)。
【0079】
一実施形態において、GBMは、タンパク質又はタンパク質断片である。GBMとしての使用に適したタンパク質の例には、GM3、GM1、GM2、GM4、GD3、GD1a、及びGT1bに結合する上皮成長因子受容体(EGFR)等の成長因子受容体と、GM3、GD1a、及びGT1bに結合する血管内皮成長因子受容体(VEGFR)が含まれる(Krengel, Ute, and Paula A. Bousquet. "Molecular recognition of gangliosides and their potential for cancer immunotherapies." Frontiers in Immunology, 2014, vol 5, article 325)。
【0080】
好適な実施形態において、GBMは、細菌毒素由来であり、例えば、GBMは、コレラ毒素Bサブユニット(CtxB)及び大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT)から選択される。
【0081】
GM1(又はGM1a)は、コレラ毒素Bサブユニット(CtxB)に対する唯一の公知の受容体である。したがって、コレラ毒素のBサブユニットを操作してクロストリジウム神経毒素又はその断片にすることにより、GM1含有ニューロンに対して選択的に標的化することができる。GM1は、大腸菌の易熱性エンテロトキシンに対する受容体でもある(Zoeteweij, J. Paul, et al. "GM1 binding-deficient exotoxin is a potent noninflammatory broad spectrum intradermal immunoadjuvant." The Journal of Immunology 177.2 (2006): 1197-1207)。
【0082】
GBMが細菌毒素に由来する本発明によるハイブリッド神経毒は、ハイブリッド神経毒の局所送達に特に適していると仮定される。実際、細菌外毒素が、ヒトの皮膚において局所的に安全に使用できることも示されている(Zoeteweij, J. Paul, et al. "GM1 binding-deficient exotoxin is a potent noninflammatory broad spectrum intradermal immunoadjuvant." The Journal of Immunology 177.2 (2006): 1197-1207)。
【0083】
一実施形態において、ガングリオシドは、GM1であり、GBMは、CtxB及び大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT)から選択される。
【0084】
コレラ毒素(CT)は、グラム陰性菌Vibrio choleraeにより分泌される。CTは、毒性の誘導に関与する酵素活性を有するAドメインと、細胞移入に関与する細胞結合Bドメインとを有する、より大きなAB毒素のファミリーに属する。CTは、分泌前に自己組織化してホロ毒素を形成する6つのポリペプチド、即ち、単一のAサブユニット、及びホモ五量体BサブユニットからなるAB5サブファミリーに属する。他のAB5毒素には、易熱性エンテロトキシン、志賀毒素、志賀様毒素、及び百日咳毒素が含まれる。CTのAサブユニット及びBサブユニット(それぞれCtxA及びCtxB)は、非共有結合している。27kDaのAサブユニットは、残基192と195との間に位置するセリンプロテアーゼ切断部位を含み、Aサブユニットの2つのポリペプチド: A2鎖及びA1鎖への切断を可能にする。残基187と199の間のジスルフィド結合は、これらの鎖を共に架橋する。A1鎖は、CTの酵素活性に関与している。5つの11.5kDaのBサブユニットは、非共有結合的に集まり、細胞膜上のガングリオシドGM1と結合するホモ五量体を形成する。B5サブユニット-GM1複合体は、Aサブユニットを小胞体内へ運ぶ。レトロトランスロケーションに続いて、A1鎖は、ヘテロ三量体Gタンパク質、Gsαを修飾する活性ADPリボシルトランスフェラーゼとしてサイトゾルに入る。このGタンパク質の修飾は、アデニル酸シクラーゼの構成的活性化及びcAMPの迅速な産生につながる。腸細胞において、これは腸の塩化物分泌を誘発し、大量の水の移動とコレラの特徴である下痢を伴う(Wernick, Naomi LB, et al. "Cholera toxin: an intracellular journey into the cytosol by way of the endoplasmic reticulum." Toxins 2.3 (2010): 310-325)。
【0085】
コレラ毒素Bサブユニットのアミノ酸配列の例は、シグナルペプチド(配列番号9のアミノ酸残基1乃至21)及びBサブユニット(配列番号9のアミノ酸残基22乃至124)からなる配列番号9(UniProtKB受入番号P01556)として提供される。
【0086】
コレラ毒素Aサブユニットのアミノ酸配列の例は、シグナルペプチド(配列番号10のアミノ酸残基1乃至18)、A1ドメイン(配列番号10のアミノ酸残基19乃至212)、及びA2ドメイン(配列番号10のアミノ酸残基213乃至258)からなる配列番号10(UniProtKB受入番号P01555)として提供される。
【0087】
単量体Bサブユニットは、細胞に結合して中毒経路を完成させるのに十分であることが示されている(Jobling, Michael G., et al. "A single native ganglioside GM1-binding site is sufficient for cholera toxin to bind to cells and complete the intoxication pathway." MBio 3.6 (2012): e00401-12)。
【0088】
本発明者らは、エンドネガティブ(endonegative)なBoNT/A1(BoNT/A1(0))へのCtxBドメインの付加が、BoNT/A1の天然の受容体ではないガングリオシドであるGM1に結合する能力をBoNT/A1に与えることを示した。
【0089】
理論に拘束されることを望むものではないが、コレラ毒素は、対応するガングリオシドに対してBoNTが有するよりもより大きい結合親和性をGM1に対して有することから、CtxBサブユニットが効力の増大をもたらすと仮定される。例えば、GT1b/GD1a(二重受容体モデル)に関連する複合シナプトタグミンに対するBoNT/Bの親和性は、nMの範囲(「高親和性0.4nM、低親和性4.1nM」)であることが示されており(Nishiki et al, FEBS Letters 1996)、これはKuzimeko et al, Biochemistry 1996においてCtx-BとGM1との間で報告されたpM親和性よりも1000倍高い。
【0090】
本発明によるCtxBドメインは、好ましくは、配列番号9のアミノ酸残基22乃至124、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。本発明によるCtxBドメインは、GM1に結合することができると理解される。
【0091】
好適な実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)を含む。
【0092】
一実施形態において、軽鎖は、前記1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)に共有結合している。
【0093】
一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、1つのCtxBを含む。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、2つのCtxBを含む。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、3つのCtxBを含む。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、4つのCtxBを含む。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、5つのCtxBを含む。
【0094】
一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のC末端側に存在する1つ以上のCtxBを含む。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のN末端側に存在する1つ以上のCtxBを含む。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のC末端側に存在する1つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のN末端側に存在する1つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のC末端側に存在する2つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のN末端側に存在する2つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のC末端側に存在する3つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のN末端側に存在する3つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のC末端側に存在する4つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のN末端側に存在する4つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のC末端側に存在する5つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のN末端側に存在する5つのCtxBからなる。
【0095】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は、クロストリジウムHNドメインを含み、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNドメインのC末端側に存在する1つ以上のCtxBを含む。他の実施形態において、1つ以上のCtxBはクロストリジウムHNドメインのN末端側に存在する。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのC末端側に存在する1つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのN末端側に存在する1つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのC末端側に存在する2つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのN末端側に存在する2つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのC末端側に存在する3つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのN末端側に存在する3つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのC末端側に存在する4つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのN末端側に存在する4つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのC末端側に存在する5つのCtxBからなる。一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNのN末端側に存在する5つのCtxBからなる。
【0096】
一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)を含み、ハイブリッド神経毒素は、更にコレラ毒素A2サブユニット(CtxA2)を含む。好ましくは、CtxA2は、クロストリジウム軽鎖に共有結合している。更に好ましくは、CtxA2は、クロストリジウム軽鎖に共有結合し、CtxBは、クロストリジウム軽鎖と非共有結合を形成する。特に、コレラ毒素A2サブユニット(CtxA2)は、、標的細胞上のガングリオシドに結合してクロストリジウム軽鎖を細胞内部に組み込むことになるBサブユニット五量体(CtxB5)と非共有結合を形成するテザーとして作用すると考えられる。
【0097】
理論に拘束されることを望むものではないが、CtxBが(CtxA2サブユニットとの)非共有結合を介してハイブリッド神経毒に結合するような実施形態は、CtxBサブユニット(CtxB5)の五量体配置を可能にし、これによりGM1に対するハイブリッド神経毒の結合親和性の増加をもたらすと仮定される。
【0098】
本発明によるCtxA2ドメインは、好ましくは、配列番号10のアミノ酸残基213乃至258、又はこれに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。本発明によるCtxA2ドメインは、CtxBドメインに結合することができると理解される 好ましくは、CtxA2ドメインは、配列番号10の残基255乃至258(KDEL)を含む。
【0099】
CtxA2ドメインは、クロストリジウム軽鎖のC末端側又はN末端側に存在し得る。
【0100】
一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖に非共有結合する1つ以上のコレラ毒素Bサブユニット(CtxB)を含み、ハイブリッド神経毒は、更に、クロストリジウム軽鎖に共有結合するコレラ毒素A2サブユニット(CtxA2)及びHNドメインを含む。一実施形態において、CtxA2ドメインは、クロストリジウムHNドメインのN末端側に存在し、好ましくは活性化部位とHNドメインとの間に位置する(「中央提示」)。一実施形態において、CtxA2ドメインは、クロストリジウムHNドメインのC末端側に存在し、ハイブリッド神経毒がHCN及び/又はHCCドメインを含む場合、ガングリオシド結合部分は、HCN又はHCCドメインのC末端側又はN末端側に位置し得る。ハイブリッド神経毒は、CtxA2ドメインと、L、HN、HCN、及び/又はHCCドメインとの間にリンカーを含み得る。
【0101】
一実施形態において、クロストリジウム軽鎖は、選択的ガングリオシド結合部分に共有結合している。選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウム軽鎖のC末端側又はN末端側に存在し得る。
【0102】
一実施形態において、ハイブリッド神経毒は、クロストリジウムHNドメインを含み、クロストリジウムHNドメインは、選択的ガングリオシド結合部分に共有結合している。選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNドメインのC末端側又はN末端側に存在し得る。選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHNドメインのN末端側に存在する場合、好ましくは活性化部位とHNドメインとの間に位置する(「中央提示」)。
【0103】
選択的ガングリオシド結合部分がクロストリジウムHNドメインのC末端側に存在し、ハイブリッド神経毒が更にHCNドメイン及び/又はHCCドメインを含む場合、ガングリオシド結合部分は、HCN又はHCCドメインのC末端側又はN末端側に位置し得る。
【0104】
ハイブリッド神経毒は、ガングリオシド結合ドメインと、L、HN、HCN、及び/又はHCCドメインとの間にリンカーを含み得る。理論に拘束されることを望むものではないが、リンカーの存在は、ハイブリッド神経毒の安定性及び/又は標的ガングリオシドに対するガングリオシド結合部分の利用可能性を高めること、及び/又は発現を増強させることができると仮定される。
【0105】
適切なリンカーの例には、様々な長さのGSリンカー、例えば、GS5、GS10、GS15、GS18、及びGS20、N10、HX27、(EAAAK)3、及びA(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4Aが含まれる。他の例は、文献、例えば、出典を明記することによりその開示内容を本願明細書の一部とするChen, Xiaoying, et al. "Fusion protein linkers: property, design and functionality." Advanced drug delivery reviews 65.10 (2013): 1357-1369に提示されている。
【0106】
本発明によるハイブリッド神経毒の構造配置の例を以下に示す(GBM: ガングリオシド結合部分、TD: 転位置ドメイン、BD: タンパク質受容体結合ドメイン、L、HN、HCN、HCC: 本明細書に定めるクロストリジウムドメイン、AS: 活性化部位、左から右: C末端側からN末端側)。
・ L - GBM
・ GBM - L
・ L - AS - GBM
・ GBM - AS - L
・ L - AS - GBM - TD
・ L - AS- TD - GBM
・ GBM - TD - AS -L
・ TD - GBM - AS -L
・ GBM - L - AS - TD
・ L - AS - GBM - TD - BD
・ L - AS - BD - TD - GBM
・ GBM - TD - BD - AS -L
・ BD - TD - GBM - AS -L
・ L - AS - GBM - HN
・ L - AS - HN - GBM
・ GBM - HN - AS -L
・ HN - GBM - AS -L
・ GBM - L - AS - HN
・ L - AS - GBM - HN - HCN
・ L - AS - GBM - HN - HCN - HCC
・ L - AS - HN - GBM
・ L - AS - HN - HCN - GBM
・ L - AS - HN - HCN - HCC- GBM
・ L - AS - GBM - リンカー - HN
・ L - AS - GBM - リンカー - HN - HCN
・ L - AS - GBM - リンカー - HN - HCN - HCC
・ L - AS - HN - リンカー - GBM
・ L - AS - HN - HCN - リンカー - GBM
・ L - AS - HN - HCN - HCC - リンカー - GBM
・ GBM -L - AS -HN -HCN -HCC
・ L - AS - リンカー - GBM - HN
・ L - AS - リンカー - GBM - HN - HCN
・ L - AS - リンカー - GBM - HN - HCN - HCC
・ L - AS - リンカー - GBM - リンカー - HN
・ L - AS - リンカー - GBM - リンカー - HN - HCN
・ L - AS - リンカー - GBM - リンカー - HN - HCN - HCC
【0107】
一実施形態において、本発明のハイブリッド神経毒は、HNドメインを含み、二鎖形態であり、LドメインとHNドメインとの間にジスルフィド結合を含む。
【0108】
好ましくは、ハイブリッド神経毒の構造配置は、GBMが遊離N末端又はC末端を有するものとなる。ハイブリッド神経毒の二鎖形態への変換を可能にする活性化部位(AS)を含む実施形態において、ハイブリッド神経毒の構造配置は、好ましくは、GBMが二鎖形態への変換後に遊離N末端又はC末端を有するものとなる。
【0109】
タンパク質受容体結合ドメイン(BD)、例えばHC又はHCCを含む実施形態において、ハイブリッド神経毒の構造配置は、好ましくは、BDが遊離N末端又はC末端を有するものとなり、より好ましくは、GBM及びBDの両方が遊離N末端又はC末端を有するものとなる。ハイブリッド神経毒の二鎖形態への変換を可能にする活性化部位(AS)を含む実施形態において、ハイブリッド神経毒の構造配置は、好ましくは、BDが二鎖形態への変換後に遊離N末端又はC末端を有するものとなり、より好ましくは、GBM及びBDの両方が二鎖形態への変換後に遊離N末端又はC末端を有するものとなる。
【0110】
本発明のハイブリッド神経毒は、組換え技術を用いて生産することができる。したがって、一実施形態において、本発明によるハイブリッド神経毒は、組換えハイブリッド神経毒である。
【0111】
他の態様において、本発明は、本発明によるハイブリッド神経毒をコードするヌクレオチド配列、例えばDNA又はRNA配列を提供する。好適な実施形態において、ヌクレオチド配列は、DNA配列である。
【0112】
本発明の核酸分子は、当該技術分野において公知の任意の適切なプロセスを用いて作成し得る。したがって、核酸分子は、化学合成手法を用いて作成し得る。或いは、本発明の核酸分子は、分子生物学的手法を用いて作成し得る。
【0113】
本発明のDNA配列は、好ましくはインシリコで設計され、その後、従来のDNA合成手法により合成される。
【0114】
上述した核酸配列情報は、利用される最終的な宿主細胞(例えば、大腸菌)発現系によるコドンバイアスのために随意に修正される。
【0115】
他の態様において、本発明は、本発明によるヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。一実施形態において、核酸配列は、プロモーター及びターミネーターを含むDNAベクターの一部として調製される。好適な実施形態において、ベクターは、Tac、AraBAD、T7-Lac、又はT5-Lacから選択されるプロモーターを有する。
【0116】
ベクターは、上述した核酸配列のインビトロ及び/又はインビボ発現に適したものにし得る。ベクターは、一過性及び/又は安定的遺伝子発現用のベクターにすることができる。ベクターは、調節エレメント及び/又は選択マーカーを追加として含み得る。ベクターは、ウイルス起源、ファージ起源、又はバクテリア起源のものにし得る。例えば、発現ベクターは、pET、pJ401、pGEXベクター又はその誘導体にし得る。
【0117】
他の態様において、本発明は、本発明によるヌクレオチド配列又はベクターを含む細胞を提供する。適切な細胞型には、原核細胞、例えば大腸菌、及び真核細胞、例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞が含まれる。好ましくは、細胞は、大腸菌である。
【0118】
本発明のハイブリッド神経毒は、特に治療での使用に適している。
【0119】
ギランバレー症候群は、末梢神経系に影響を及ぼす急性炎症性疾患であり、免疫系により産生された抗体がガングリオシドに結合することにより生じる。ギランバレー症候群の臨床亜型からの知見に基づいて、ガングリオシドGM1a、GM1b、GD1a、GalNAc-GD1aは、四肢の神経筋接合部に関連しており、ガングリオシドGT1a、GQ1bは、頭頸部神経筋接合部に関連している(Van Den Berg, Bianca, et al. "Guillain-Barre syndrome: pathogenesis, diagnosis, treatment and prognosis." Nature reviews. Neurology 10.8 (2014): 469、Willison, Hugh J., and Jaap J. Plomp. "Anti‐ganglioside Antibodies and the Presynaptic Motor Nerve Terminal." Annals of the New York Academy of Sciences 1132.1 (2008): 114-123)。GM1は、耳下腺(唾液腺)に豊富に存在することも示されている(Nowroozi, Nakisa, et al. "HIGH LEVELS OF GM 1-GANGLIOSIDE AND GM 1-GANGLIOSIDE β-GALACTOSIDASE IN THE PAROTID GLAND: A New Model for Secretory Mechanisms of the Parotid Gland." Otolaryngologic Clinics of North America 32.5 (1999): 779-791)。
【0120】
前頭皮質及び側頭皮質由来の脂質ラフト中のGM1及びGM2の濃度は、アルツハイマー病(AD)患者において高くなると報告されている。GM1クラスタリングは、後根神経節ニューロン(感覚ニューロン)において実証された(Aureli, Massimo, et al. "GM1 ganglioside: past studies and future potential." Molecular neurobiology 53.3 (2016): 1824-1842)。
【0121】
ガングリオシドNeuAc GM3、NeuGc GM3、GM2、GM1、GD3、及びGD2は、ヒト腫瘍細胞において発現することが示されている(Krengel, Ute, and Paula A. Bousquet. "Molecular recognition of gangliosides and their potential for cancer immunotherapies." Frontiers in Immunology, July 2014, vol. 5, article 325)。
【0122】
一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、GM1a、GM1b、GD1a、及びGalNAc-GD1aから選択される1つ以上のガングリオシドに結合する。このような実施形態は、上肢痙縮、下肢痙縮、手掌ジストニア、四肢筋挫傷、反復性緊張外傷(RSI)、累積外傷性障害、又は職業的過度使用症候群等の四肢障害を治療するのに特に適していると考えられる。実際、理論に拘束されることを望むものではないが、四肢の神経筋接合部に見られるガングリオシドに対してハイブリッド神経毒を標的化することで、四肢神経筋接合部に対する選択性を高め、オフターゲット効果による副作用を回避することができると仮定される。
【0123】
一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、GT1a及びGQ1bから選択される1つ以上のガングリオシドに結合する。このような実施形態は、頸部ジストニア、眼瞼痙攣、片頭痛、筋筋膜痛、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼障害、痙攣性発声障害、喉頭ジストニア、顎口腔発声障害、舌ジストニア、歯ぎしり、及び嚥下障害等の頭頸部障害の治療に特に適していると考えられる。実際、理論に拘束されることを望むものではないが、頭頸部神経筋接合部に見られるガングリオシドに対してハイブリッド神経毒を標的化することで、頭頸部神経筋接合部に対する選択性を高め、オフターゲット効果による副作用を回避することができると仮定される。
【0124】
一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、GM1に結合する。この実施形態は、流涎症(唾液分泌過剰、流涎)を治療するのに特に適していると考えられる。この実施形態は、更に、アルツハイマー病又は他の神経障害を患っている患者を治療するのに適していると仮定される。
【0125】
一実施形態において、選択的ガングリオシド結合部分は、NeuAc GM3、NeuGc GM3、GM2、GM1、GD3、及びGD2から選択される1つ以上のガングリオシドに結合する。このような実施形態は、癌を治療するのに特に適していると考えられる。
【0126】
他の態様において、本発明は、本発明によるハイブリッド神経毒を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物は、ハイブリッド神経毒と共に、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、アジュバント、噴霧剤、及び/又は塩から選択された少なくとも1つの成分を含む。
【0127】
他の態様において、本発明は、治療において使用する本発明によるハイブリッド神経毒又は医薬組成物を提供する。
【0128】
本発明によるハイブリッド神経毒又は医薬組成物は、望まれないニューロン活性に関連した状態、例えば、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、顎口腔発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、手掌ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼障害、脳性麻痺、限局性痙縮及び他の音声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、四肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害及び他の筋緊張障害並びに筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過剰、胃腸分泌過剰、分泌障害、筋痙攣による疼痛、頭痛、片頭痛、及び皮膚科学的症状からなる群から選択される状態の治療に使用するのに適している。
【0129】
他の態様において、本発明は、審美的又は美容的状態を処置するための、本発明によるハイブリッド神経毒又は医薬組成物の非治療的使用を提供する。本発明のこの態様によれば、審美的又は美容的状態の処置を受ける対象は、好ましくは、本明細書に記載の病的障害又は病的状態を全く有していない。より好ましくは、前記対象は、健康な対象である(即ち、病的疾患又は病的状態を全く有していない)。
【0130】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1a、GM1b、GD1a、及びGalNAc-GD1aから選択される1つ以上のガングリオシドに結合し、望まれないニューロン活性に関連する四肢障害の治療に使用される。一実施形態において、四肢障害は、上肢痙縮、下肢痙縮、及び手掌ジストニアから選択される。好適な実施形態において、ガングリオシドは、GM1aである。
【0131】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GT1a及びGQ1bから選択される1つ以上のガングリオシドに結合し、望まれないニューロン活性に関連する頭頸部障害の治療に使用される。一実施形態において、頭頸部障害は、頸部ジストニア、眼瞼痙攣、片頭痛、筋筋膜痛、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼障害、痙攣性発声障害、喉頭ジストニア、顎口腔発声障害、舌ジストニア、歯ぎしり、及び嚥下障害から選択される。
【0132】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1に結合し、流涎症(又は唾液分泌過剰若しくは流涎)の治療に使用される。
【0133】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含むハイブリッド神経毒を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、NeuAc GM3、NeuGc GM3、GM2、GM1、GD3、及びGD2から選択される1つ以上のガングリオシドに結合し、癌の治療に使用される。
【0134】
他の態様において、本発明は、治療上有効量の本発明によるハイブリッド神経毒又は医薬組成物を、必要とする患者に投与することを含む治療方法を提供する。
【0135】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含む治療上有効量のハイブリッド神経毒を投与することを含む、望まれないニューロン活性に関連する四肢障害の治療方法を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1a、GM1b、GD1a、及びGalNAc-GD1aから選択される1つ以上のガングリオシドと結合し、必要とする患者に投与される。
【0136】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含む治療上有効量のハイブリッド神経毒を投与することを含む、望まれないニューロン活性に関連する頭頸部障害の治療方法を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GT1a及びGQ1bから選択される1つ以上のガングリオシドと結合し、必要とする患者に投与される。
【0137】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含む治療上有効量のハイブリッド神経毒を投与することを含む、流涎症(又は唾液分泌過剰若しくは流涎)の治療方法を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、GM1に結合し、必要とする患者に投与される。
【0138】
他の態様において、本発明は、クロストリジウム軽鎖及び選択的ガングリオシド結合部分を含む治療上有効量のハイブリッド神経毒を投与することを含む、癌の治療方法を提供し、選択的ガングリオシド結合部分は、クロストリジウムHCC又はHCドメインではなく、前記選択的ガングリオシド結合部分は、NeuAc GM3、NeuGc GM3、GM2、GM1、GD3、及びGD2から選択される1つ以上のガングリオシドに結合し、必要とする患者に投与される。
【0139】
本明細書に記載したハイブリッド神経毒素及び好適な実施形態に関連する他の全ての様々な特徴は、必要な変更を加えて、本発明の治療的及び美容的態様に適用されることを理解されたい。
【0140】
また、本発明による医薬組成物は、本発明の治療及び美容の目的で使用可能であることを理解されたい。
【0141】
本発明の改変ハイブリッド神経毒は、経口、非経口、持続注入、吸入、又は局所投与用に処方し得る。注射に適した組成物は、溶液、懸濁液、若しくは乳液の形態、又は使用前に適切な溶媒に溶解又は懸濁させる乾燥粉末にし得る。
【0142】
局所的に送達されるハイブリッド神経毒の場合、ハイブリッド神経毒は、クリーム(例えば、局所塗布用)として、又は皮下への注入用に処方し得る。
【0143】
局所送達手段は、エアロゾル又は他の噴霧器(例えば、ネブライザー)を含み得る。これに関して、ハイブリッド神経毒のエアロゾル処方により、肺及び/又は他の鼻及び/又は気管支又は気道の通路への送達が可能となる。
【0144】
本発明のハイブリッド神経毒は、罹患臓器の神経支配に関与する脊髄分節のレベルでの、脊柱における髄腔内又は硬膜外注射により、患者に投与し得る。
【0145】
好適な投与経路は、腹腔鏡下注射及び/又は局所注射、特に筋肉内注射によるものである。
【0146】
本発明の神経毒の投与に関する投与量範囲は、所望の治療的効果を生じるものである。必要な投与量範囲は、ハイブリッド神経毒又は組成物の正確な性質、投与経路、剤形の性質、患者の年齢、患者の状態の性質、範囲、又は重症度、存在する場合には禁忌、及び主治医の判断に応じて決まる。こうした投与レベルの変化は、最適化のための標準の経験的ルーチンを用いて調整することができる。
【0147】
流体剤形は、一般に、ハイブリッド神経毒とパイロジェンフリー無菌溶媒とを使用して調製される。改変ハイブリッド神経毒は、溶媒と、用いる濃度とに応じて、溶媒に溶解又は懸濁させることができる。溶液の調製では、ハイブリッド神経毒を溶媒に溶解することが可能であり、溶液は、必要な場合には、塩化ナトリウムを加えて等張にし、無菌操作により細菌濾過器を介して濾過し滅菌した後、適切な滅菌バイアル又はアンプルに充填して密封する。或いは、溶液の安定性が十分である場合、密封容器内の溶液をオートクレーブにより滅菌する。緩衝剤、可溶化剤、安定化剤、防腐剤又は殺菌剤、懸濁化剤又は乳化剤、及び/又は局部麻酔剤等の添加剤を、溶媒に溶解し得るという利点を有する。
【0148】
使用前に適切な溶媒に溶解又は懸濁させる乾燥粉末は、事前に滅菌した材料を、無菌区域内で無菌操作により滅菌容器に充填することで調製し得る。或いは、材料は、無菌区域内で無菌操作により適切な容器内へ溶解させてもよい。その後、製品を凍結乾燥させ、容器を無菌状態で密封する。
【0149】
筋肉内、皮下、又は皮内注射に適した非経口懸濁液は、実質的に同一の方法で調製されるが、但し、滅菌成分は、溶解させる代わりに滅菌溶媒中に懸濁させ、滅菌は、濾過により行うことはできない。成分は、無菌状態で単離してよく、或いは、単離後に、例えばガンマ線照射により滅菌してもよい。
【0150】
本発明による投与では、微小粒子カプセル化、ウイルス送達系、又は高圧エアロゾル衝突を含む様々な送達技術を利用し得る。
【0151】
本開示は、本明細書に開示した方法及び材料の例により限定されず、本明細書に記載したものと類似する又は等価の任意の方法及び材料を、本開示の実施形態の実施又は試験に用いることができる。数値範囲は、範囲を定める数を含む。特に指示の無い限り、任意の核酸配列は、5’から3’の方向で左から右に書かれており、アミノ酸配列は、それぞれアミノからカルボキシへの方向で左から右に書かれている。
【0152】
値の範囲が提示された場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値も、文脈上明らかに別の意味を示す場合を除き下限の単位の10分の1まで、具体的に開示されると理解される。記載範囲内の任意の記載値又は介在値と、記載範囲内の他の任意の記載値又は介在値との間の、より小さな範囲は、本開示に含まれる。こうしたより小さな範囲の上限及び下限は、独立して範囲内に包含又は除外してよく、より小さな範囲に上限及び下限の一方又は両方が含まれる場合又は何れも含まれない場合の各範囲も、記載範囲内で具体的に除外された任意の限界に応じて本開示に含まれる。記載範囲が限界の一方又は両方を含む場合、含まれた限界の一方又は両方を除外した範囲も、本開示に含まれる。
【0153】
本明細書及び添付特許請求の範囲での使用において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別の意味を示す場合を除き、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。したがって、例えば、「クロストリジウム神経毒素」への言及は、複数のそのような候補作用剤を含み、「クロストリジウム神経毒素」への言及は、1つ以上のクロストリジウム神経毒素及び当業者に公知のその等価物への言及を含む。
【0154】
配列情報
・ 配列番号1 - BoNT/A1 - UniProtKB 受入番号 P10845 (Clostridium botulinum)
MPFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHELIHAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPL
・ 配列番号2 - BoNT/B1 - UniProtKB 受入番号 P10844 (Clostridium botulinum)
MPVTINNFNYNDPIDNNNIIMMEPPFARGTGRYYKAFKITDRIWIIPERYTFGYKPEDFNKSSGIFNRDVCEYYDPDYLNTNDKKNIFLQTMIKLFNRIKSKPLGEKLLEMIINGIPYLGDRRVPLEEFNTNIASVTVNKLISNPGEVERKKGIFANLIIFGPGPVLNENETIDIGIQNHFASREGFGGIMQMKFCPEYVSVFNNVQENKGASIFNRRGYFSDPALILMHELIHVLHGLYGIKVDDLPIVPNEKKFFMQSTDAIQAEELYTFGGQDPSIITPSTDKSIYDKVLQNFRGIVDRLNKVLVCISDPNININIYKNKFKDKYKFVEDSEGKYSIDVESFDKLYKSLMFGFTETNIAENYKIKTRASYFSDSLPPVKIKNLLDNEIYTIEEGFNISDKDMEKEYRGQNKAINKQAYEEISKEHLAVYKIQMCKSVKAPGICIDVDNEDLFFIADKNSFSDDLSKNERIEYNTQSNYIENDFPINELILDTDLISKIELPSENTESLTDFNVDVPVYEKQPAIKKIFTDENTIFQYLYSQTFPLDIRDISLTSSFDDALLFSNKVYSFFSMDYIKTANKVVEAGLFAGWVKQIVNDFVIEANKSNTMDKIADISLIVPYIGLALNVGNETAKGNFENAFEIAGASILLEFIPELLIPVVGAFLLESYIDNKNKIIKTIDNALTKRNEKWSDMYGLIVAQWLSTVNTQFYTIKEGMYKALNYQAQALEEIIKYRYNIYSEKEKSNINIDFNDINSKLNEGINQAIDNINNFINGCSVSYLMKKMIPLAVEKLLDFDNTLKKNLLNYIDENKLYLIGSAEYEKSKVNKYLKTIMPFDLSIYTNDTILIEMFNKYNSEILNNIILNLRYKDNNLIDLSGYGAKVEVYDGVELNDKNQFKLTSSANSKIRVTQNQNIIFNSVFLDFSVSFWIRIPKYKNDGIQNYIHNEYTIINCMKNNSGWKISIRGNRIIWTLIDINGKTKSVFFEYNIREDISEYINRWFFVTITNNLNNAKIYINGKLESNTDIKDIREVIANGEIIFKLDGDIDRTQFIWMKYFSIFNTELSQSNIEERYKIQSYSEYLKDFWGNPLMYNKEYYMFNAGNKNSYIKLKKDSPVGEILTRSKYNQNSKYINYRDLYIGEKFIIRRKSNSQSINDDIVRKEDYIYLDFFNLNQEWRVYTYKYFKKEEEKLFLAPISDSDEFYNTIQIKEYDEQPTYSCQLLFKKDEESTDEIGLIGIHRFYESGIVFEEYKDYFCISKWYLKEVKRKPYNLKLGCNWQFIPKDEGWTE
・ 配列番号3 - BoNT/C1 - UniProtKB 受入番号 P18640 (Clostridium botulinum)
MPITINNFNYSDPVDNKNILYLDTHLNTLANEPEKAFRITGNIWVIPDRFSRNSNPNLNKPPRVTSPKSGYYDPNYLSTDSDKDPFLKEIIKLFKRINSREIGEELIYRLSTDIPFPGNNNTPINTFDFDVDFNSVDVKTRQGNNWVKTGSINPSVIITGPRENIIDPETSTFKLTNNTFAAQEGFGALSIISISPRFMLTYSNATNDVGEGRFSKSEFCMDPILILMHELNHAMHNLYGIAIPNDQTISSVTSNIFYSQYNVKLEYAEIYAFGGPTIDLIPKSARKYFEEKALDYYRSIAKRLNSITTANPSSFNKYIGEYKQKLIRKYRFVVESSGEVTVNRNKFVELYNELTQIFTEFNYAKIYNVQNRKIYLSNVYTPVTANILDDNVYDIQNGFNIPKSNLNVLFMGQNLSRNPALRKVNPENMLYLFTKFCHKAIDGRSLYNKTLDCRELLVKNTDLPFIGDISDVKTDIFLRKDINEETEVIYYPDNVSVDQVILSKNTSEHGQLDLLYPSIDSESEILPGENQVFYDNRTQNVDYLNSYYYLESQKLSDNVEDFTFTRSIEEALDNSAKVYTYFPTLANKVNAGVQGGLFLMWANDVVEDFTTNILRKDTLDKISDVSAIIPYIGPALNISNSVRRGNFTEAFAVTGVTILLEAFPEFTIPALGAFVIYSKVQERNEIIKTIDNCLEQRIKRWKDSYEWMMGTWLSRIITQFNNISYQMYDSLNYQAGAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNEFDRNTKAKLINLIDSHNIILVGEVDKLKAKVNNSFQNTIPFNIFSYTNNSLLKDIINEYFNNINDSKILSLQNRKNTLVDTSGYNAEVSEEGDVQLNPIFPFDFKLGSSGEDRGKVIVTQNENIVYNSMYESFSISFWIRINKWVSNLPGYTIIDSVKNNSGWSIGIISNFLVFTLKQNEDSEQSINFSYDISNNAPGYNKWFFVTVTNNMMGNMKIYINGKLIDTIKVKELTGINFSKTITFEINKIPDTGLITSDSDNINMWIRDFYIFAKELDGKDINILFNSLQYTNVVKDYWGNDLRYNKEYYMVNIDYLNRYMYANSRQIVFNTRRNNNDFNEGYKIIIKRIRGNTNDTRVRGGDILYFDMTINNKAYNLFMKNETMYADNHSTEDIYAIGLREQTKDINDNIIFQIQPMNNTYYYASQIFKSNFNGENISGICSIGTYRFRLGGDWYRHNYLVPTVKQGNYASLLESTSTHWGFVPVSE
・ 配列番号4 - BoNT/D - UniProtKB 受入番号 P19321 (Clostridium botulinum)
MTWPVKDFNYSDPVNDNDILYLRIPQNKLITTPVKAFMITQNIWVIPERFSSDTNPSLSKPPRPTSKYQSYYDPSYLSTDEQKDTFLKGIIKLFKRINERDIGKKLINYLVVGSPFMGDSSTPEDTFDFTRHTTNIAVEKFENGSWKVTNIITPSVLIFGPLPNILDYTASLTLQGQQSNPSFEGFGTLSILKVAPEFLLTFSDVTSNQSSAVLGKSIFCMDPVIALMHELTHSLHQLYGINIPSDKRIRPQVSEGFFSQDGPNVQFEELYTFGGLDVEIIPQIERSQLREKALGHYKDIAKRLNNINKTIPSSWISNIDKYKKIFSEKYNFDKDNTGNFVVNIDKFNSLYSDLTNVMSEVVYSSQYNVKNRTHYFSRHYLPVFANILDDNIYTIRDGFNLTNKGFNIENSGQNIERNPALQKLSSESVVDLFTKVCLRLTKNSRDDSTCIKVKNNRLPYVADKDSISQEIFENKIITDETNVQNYSDKFSLDESILDGQVPINPEIVDPLLPNVNMEPLNLPGEEIVFYDDITKYVDYLNSYYYLESQKLSNNVENITLTTSVEEALGYSNKIYTFLPSLAEKVNKGVQAGLFLNWANEVVEDFTTNIMKKDTLDKISDVSVIIPYIGPALNIGNSALRGNFNQAFATAGVAFLLEGFPEFTIPALGVFTFYSSIQEREKIIKTIENCLEQRVKRWKDSYQWMVSNWLSRITTQFNHINYQMYDSLSYQADAIKAKIDLEYKKYSGSDKENIKSQVENLKNSLDVKISEAMNNINKFIRECSVTYLFKNMLPKVIDELNKFDLRTKTELINLIDSHNIILVGEVDRLKAKVNESFENTMPFNIFSYTNNSLLKDIINEYFNSINDSKILSLQNKKNALVDTSGYNAEVRVGDNVQLNTIYTNDFKLSSSGDKIIVNLNNNILYSAIYENSSVSFWIKISKDLTNSHNEYTIINSIEQNSGWKLCIRNGNIEWILQDVNRKYKSLIFDYSESLSHTGYTNKWFFVTITNNIMGYMKLYINGELKQSQKIEDLDEVKLDKTIVFGIDENIDENQMLWIRDFNIFSKELSNEDINIVYEGQILRNVIKDYWGNPLKFDTEYYIINDNYIDRYIAPESNVLVLVQYPDRSKLYTGNPITIKSVSDKNPYSRILNGDNIILHMLYNSRKYMIIRDTDTIYATQGGECSQNCVYALKLQSNLGNYGIGIFSIKNIVSKNKYCSQIFSSFRENTMLLADIYKPWRFSFKNAYTPVAVTNYETKLLSTSSFWKFISRDPGWVE
・ 配列番号5 - BoNT/E - 受入番号 WP_003372387 (Clostridium botulinum)
MPKINSFNYNDPVNDRTILYIKPGGCQEFYKSFNIMKNIWIIPERNVIGTTPQDFHPPTSLKNGDSSYYDPNYLQSDEEKDRFLKIVTKIFNRINNNLSGGILLEELSKANPYLGNDNTPDNQFHIGDASAVEIKFSNGSQDILLPNVIIMGAEPDLFETNSSNISLRNNYMPSNHGFGSIAIVTFSPEYSFRFNDNSMNEFIQDPALTLMHELIHSLHGLYGAKGITTKYTITQKQNPLITNIRGTNIEEFLTFGGTDLNIITSAQSNDIYTNLLADYKKIASKLSKVQVSNPLLNPYKDVFEAKYGLDKDASGIYSVNINKFNDIFKKLYSFTEFDLATKFQVKCRQTYIGQYKYFKLSNLLNDSIYNISEGYNINNLKVNFRGQNANLNPRIITPITGRGLVKKIIRFCKNIVSVKGIRKSICIEINNGELFFVASENSYNDDNINTPKEIDDTVTSNNNYENDLDQVILNFNSESAPGLSDEKLNLTIQNDAYIPKYDSNGTSDIEQHDVNELNVFFYLDAQKVPEGENNVNLTSSIDTALLEQPKIYTFFSSEFINNVNKPVQAALFVSWIQQVLVDFTTEANQKSTVDKIADISIVVPYIGLALNIGNEAQKGNFKDALELLGAGILLEFEPELLIPTILVFTIKSFLGSSDNKNKVIKAINNALKERDEKWKEVYSFIVSNWMTKINTQFNKRKEQMYQALQNQVNAIKTIIESKYNSYTLEEKNELTNKYDIKQIENELNQKVSIAMNNIDRFLTESSISYLMKLINEVKINKLREYDENVKTYLLNYIIQHGSILGESQQELNSMVTDTLNNSIPFKLSSYTDDKILISYFNKFFKRIKSSSVLNMRYKNDKYVDTSGYDSNININGDVYKYPTNKNQFGIYNDKLSEVNISQNDYIIYDNKYKNFSISFWVRIPNYDNKIVNVNNEYTIINCMRDNNSGWKVSLNHNEIIWTLQDNAGINQKLAFNYGNANGISDYINKWIFVTITNDRLGDSKLYINGNLIDQKSILNLGNIHVSDNILFKIVNCSYTRYIGIRYFNIFDKELDETEIQTLYSNEPNTNILKDFWGNYLLYDKEYYLLNVLKPNNFIDRRKDSTLSINNIRSTILLANRLYSGIKVKIQRVNNSSTNDNLVRKNDQVYINFVASKTHLFPLYADTATTNKEKTIKISSSGNRFNQVVVMNSVGNNCTMNFKNNNGNNIGLLGFKADTVVASTWYYTHMRDHTNSNGCFWNFISEEHGWQEK
・ 配列番号6 - BoNT/F - UniProtKB 受入番号 YP_001390123 (Clostridium botulinum)
MPVVINSFNYNDPVNDDTILYMQIPYEEKSKKYYKAFEIMRNVWIIPERNTIGTDPSDFDPPASLENGSSAYYDPNYLTTDAEKDRYLKTTIKLFKRINSNPAGEVLLQEISYAKPYLGNEHTPINEFHPVTRTTSVNIKSSTNVKSSIILNLLVLGAGPDIFENSSYPVRKLMDSGGVYDPSNDGFGSINIVTFSPEYEYTFNDISGGYNSSTESFIADPAISLAHELIHALHGLYGARGVTYKETIKVKQAPLMIAEKPIRLEEFLTFGGQDLNIITSAMKEKIYNNLLANYEKIATRLSRVNSAPPEYDINEYKDYFQWKYGLDKNADGSYTVNENKFNEIYKKLYSFTEIDLANKFKVKCRNTYFIKYGFLKVPNLLDDDIYTVSEGFNIGNLAVNNRGQNIKLNPKIIDSIPDKGLVEKIVKFCKSVIPRKGTKAPPRLCIRVNNRELFFVASESSYNENDINTPKEIDDTTNLNNNYRNNLDEVILDYNSETIPQISNQTLNTLVQDDSYVPRYDSNGTSEIEEHNVVDLNVFFYLHAQKVPEGETNISLTSSIDTALSEESQVYTFFSSEFINTINKPVHAALFISWINQVIRDFTTEATQKSTFDKIADISLVVPYVGLALNIGNEVQKENFKEAFELLGAGILLEFVPELLIPTILVFTIKSFIGSSENKNKIIKAINNSLMERETKWKEIYSWIVSNWLTRINTQFNKRKEQMYQALQNQVDAIKTVIEYKYNNYTSDERNRLESEYNINNIREELNKKVSLAMENIERFITESSIFYLMKLINEAKVSKLREYDEGVKEYLLDYISEHRSILGNSVQELNDLVTSTLNNSIPFELSSYTNDKILILYFNKLYKKIKDNSILDMRYENNKFIDISGYGSNISINGDVYIYSTNRNQFGIYSSKPSEVNIAQNNDIIYNGRYQNFSISFWVRIPKYFNKVNLNNEYTIIDCIRNNNSGWKISLNYNKIIWTLQDTAGNNQKLVFNYTQMISISDYINKWIFVTITNNRLGNSRIYINGNLIDEKSISNLGDIHVSDNILFKIVGCNDTRYVGIRYFKVFDTELGKTEIETLYSDEPDPSILKDFWGNYLLYNKRYYLLNLLRTDKSITQNSNFLNINQQRGVYQKPNIFSNTRLYTGVEVIIRKNGSTDISNTDNFVRKNDLAYINVVDRDVEYRLYADISIAKPEKIIKLIRTSNSNNSLGQIIVMDSIGNNCTMNFQNNNGGNIGLLGFHSNNLVASSWYYNNIRKNTSSNGCFWSFISKEHGWQEN
・ 配列番号7 - BoNT/G - UniProtKB 受入番号 WP_039635782 (Clostridium botulinum)
MPVNIKNFNYNDPINNDDIIMMEPFNDPGPGTYYKAFRIIDRIWIVPERFTYGFQPDQFNASTGVFSKDVYEYYDPTYLKTDAEKDKFLKTMIKLFNRINSKPSGQRLLDMIVDAIPYLGNASTPPDKFAANVANVSINKKIIQPGAEDQIKGLMTNLIIFGPGPVLSDNFTDSMIMNGHSPISEGFGARMMIRFCPSCLNVFNNVQENKDTSIFSRRAYFADPALTLMHELIHVLHGLYGIKISNLPITPNTKEFFMQHSDPVQAEELYTFGGHDPSVISPSTDMNIYNKALQNFQDIANRLNIVSSAQGSGIDISLYKQIYKNKYDFVEDPNGKYSVDKDKFDKLYKALMFGFTETNLAGEYGIKTRYSYFSEYLPPIKTEKLLDNTIYTQNEGFNIASKNLKTEFNGQNKAVNKEAYEEISLEHLVIYRIAMCKPVMYKNTGKSEQCIIVNNEDLFFIANKDSFSKDLAKAETIAYNTQNNTIENNFSIDQLILDNDLSSGIDLPNENTEPFTNFDDIDIPVYIKQSALKKIFVDGDSLFEYLHAQTFPSNIENLQLTNSLNDALRNNNKVYTFFSTNLVEKANTVVGASLFVNWVKGVIDDFTSESTQKSTIDKVSDVSIIIPYIGPALNVGNETAKENFKNAFEIGGAAILMEFIPELIVPIVGFFTLESYVGNKGHIIMTISNALKKRDQKWTDMYGLIVSQWLSTVNTQFYTIKERMYNALNNQSQAIEKIIEDQYNRYSEEDKMNINIDFNDIDFKLNQSINLAINNIDDFINQCSISYLMNRMIPLAVKKLKDFDDNLKRDLLEYIDTNELYLLDEVNILKSKVNRHLKDSIPFDLSLYTKDTILIQVFNNYISNISSNAILSLSYRGGRLIDSSGYGATMNVGSDVIFNDIGNGQFKLNNSENSNITAHQSKFVVYDSMFDNFSINFWVRTPKYNNNDIQTYLQNEYTIISCIKNDSGWKVSIKGNRIIWTLIDVNAKSKSIFFEYSIKDNISDYINKWFSITITNDRLGNANIYINGSLKKSEKILNLDRINSSNDIDFKLINCTDTTKFVWIKDFNIFGRELNATEVSSLYWIQSSTNTLKDFWGNPLRYDTQYYLFNQGMQNIYIKYFSKASMGETAPRTNFNNAAINYQNLYLGLRFIIKKASNSRNINNDNIVREGDYIYLNIDNISDESYRVYVLVNSKEIQTQLFLAPINDDPTFYDVLQIKKYYEKTTYNCQILCEKDTKTFGLFGIGKFVKDYGYVWDTYDNYFCISQWYLRRISENINKLRLGCNWQFIPVDEGWTE
・ 配列番号8 - TeNT - UniProtKB 受入番号 P04958 (Clostridium tetani)
MPITINNFRYSDPVNNDTIIMMEPPYCKGLDIYYKAFKITDRIWIVPERYEFGTKPEDFNPPSSLIEGASEYYDPNYLRTDSDKDRFLQTMVKLFNRIKNNVAGEALLDKIINAIPYLGNSYSLLDKFDTNSNSVSFNLLEQDPSGATTKSAMLTNLIIFGPGPVLNKNEVRGIVLRVDNKNYFPCRDGFGSIMQMAFCPEYVPTFDNVIENITSLTIGKSKYFQDPALLLMHELIHVLHGLYGMQVSSHEIIPSKQEIYMQHTYPISAEELFTFGGQDANLISIDIKNDLYEKTLNDYKAIANKLSQVTSCNDPNIDIDSYKQIYQQKYQFDKDSNGQYIVNEDKFQILYNSIMYGFTEIELGKKFNIKTRLSYFSMNHDPVKIPNLLDDTIYNDTEGFNIESKDLKSEYKGQNMRVNTNAFRNVDGSGLVSKLIGLCKKIIPPTNIRENLYNRTASLTDLGGELCIKIKNEDLTFIAEKNSFSEEPFQDEIVSYNTKNKPLNFNYSLDKIIVDYNLQSKITLPNDRTTPVTKGIPYAPEYKSNAASTIEIHNIDDNTIYQYLYAQKSPTTLQRITMTNSVDDALINSTKIYSYFPSVISKVNQGAQGILFLQWVRDIIDDFTNESSQKTTIDKISDVSTIVPYIGPALNIVKQGYEGNFIGALETTGVVLLLEYIPEITLPVIAALSIAESSTQKEKIIKTIDNFLEKRYEKWIEVYKLVKAKWLGTVNTQFQKRSYQMYRSLEYQVDAIKKIIDYEYKIYSGPDKEQIADEINNLKNKLEEKANKAMININIFMRESSRSFLVNQMINEAKKQLLEFDTQSKNILMQYIKANSKFIGITELKKLESKINKVFSTPIPFSYSKNLDCWVDNEEDIDVILKKSTILNLDINNDIISDISGFNSSVITYPDAQLVPGINGKAIHLVNNESSEVIVHKAMDIEYNDMFNNFTVSFWLRVPKVSASHLEQYGTNEYSIISSMKKHSLSIGSGWSVSLKGNNLIWTLKDSAGEVRQITFRDLPDKFNAYLANKWVFITITNDRLSSANLYINGVLMGSAEITGLGAIREDNNITLKLDRCNNNNQYVSIDKFRIFCKALNPKEIEKLYTSYLSITFLRDFWGNPLRYDTEYYLIPVASSSKDVQLKNITDYMYLTNAPSYTNGKLNIYYRRLYNGLKFIIKRYTPNNEIDSFVKSGDFIKLYVSYNNNEHIVGYPKDGNAFNNLDRILRVGYNAPGIPLYKKMEAVKLRDLKTYSVQLKLYDDKNASLGLVGTHNGQIGNDPNRDILIASNWYFNHLKDKILGCDWYFVPTDEGWTND
・ 配列番号9 - コレラ毒素Bサブユニット (Vibrio cholera)
MIKLKFGVFFTVLLSSAYAHGTPQNITDLCAEYHNTQIYTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGAIFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMAN
・ 配列番号10 - コレラ毒素Aサブユニット (Vibrio cholera)
MVKIIFVFFIFLSSFSYANDDKLYRADSRPPDEIKQSGGLMPRGQSEYFDRGTQMNINLYDHARGTQTGFVRHDDGYVSTSISLRSAHLVGQTILSGHSTYYIYVIATAPNMFNVNDVLGAYSPHPDEQEVSALGGIPYSQIYGWYRVHFGVLDEQLHRNRGYRDRYYSNLDIAPAADGYGLAGFPPEHRAWREEPWIHHAPPGCGNAPRSSMSNTCDEKTQSLGVKFLDEYQSKVKRQIFSGYQSDIDTHNRIKDEL
・ 配列番号11 - BoNT/A1(0)-CtxBCP (人工配列)
MGSMEFVNKQFNYKDPVNGVDIAYIKIPNAGQMQPVKAFKIHNKIWVIPERDTFTNPEEGDLNPPPEAKQVPVSYYDSTYLSTDNEKDNYLKGVTKLFERIYSTDLGRMLLTSIVRGIPFWGGSTIDTELKVIDTNCINVIQPDGSYRSEELNLVIIGPSADIIQFECKSFGHEVLNLTRNGYGSTQYIRFSPDFTFGFEESLEVDTNPLLGAGKFATDPAVTLAHQLIYAGHRLYGIAINPNRVFKVNTNAYYEMSGLEVSFEELRTFGGHDAKFIDSLQENEFRLYYYNKFKDIASTLNKAKSIVGTTASLQYMKNVFKEKYLLSEDTSGKFSVDKLKFDKLYKMLTEIYTEDNFVKFFKVLNRKTYLNFDKAVFKINIVPKVNYTIYDGFNLRNTNLAANFNGQNTEINNMNFTKLKNFTGLFEFYKLLCVDGIITSKTKSDDDDKTPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMANSGGGGSGGGGSGGGGSPRGSALNLQCIKVNNWDLFFSPSEDNFTNDLNKGEEITSDTNIEAAEENISLDLIQQYYLTFNFDNEPENISIENLSSDIIGQLELMPNIERFPNGKKYELDKYTMFHYLRAQEFEHGKSRIALTNSVNEALLNPSRVYTFFSSDYVKKVNKATEAAMFLGWVEQLVYDFTDETSEVSTTDKIADITIIIPYIGPALNIGNMLYKDDFVGALIFSGAVILLEFIPEIAIPVLGTFALVSYIANKVLTVQTIDNALSKRNEKWDEVYKYIVTNWLAKVNTQIDLIRKKMKEALENQAEATKAIINYQYNQYTEEEKNNINFNIDDLSSKLNESINKAMININKFLNQCSVSYLMNSMIPYGVKRLEDFDASLKDALLKYIYDNRGTLIGQVDRLKDKVNNTLSTDIPFQLSKYVDNQRLLSTFTEYIKNIINTSILNLRYESNHLIDLSRYASKINIGSKVNFDPIDKNQIQLFNLESSKIEVILKNAIVYNSMYENFSTSFWIRIPKYFNSISLNNEYTIINCMENNSGWKVSLNYGEIIWTLQDTQEIKQRVVFKYSQMINISDYINRWIFVTITNNRLNNSKIYINGRLIDQKPISNLGNIHASNNIMFKLDGCRDTHRYIWIKYFNLFDKELNEKEIKDLYDNQSNSGILKDFWGDYLQYDKPYYMLNLYDPNKYVDVNNVGIRGYMYLKGPRGSVMTTNIYLNSSLYRGTKFIIKKYASGNKDNIVRNNDRVYINVVVKNKEYRLATNASQAGVEKILSALEIPDVGNLSQVVVMKSKNDQGITNKCKMNLQDNNGNDIGFIGFHQFNNIAKLVASNWYNRQIERSSRTLGCSWEFIPVDDGWGERPLRKSFHHHHHH
【0155】
次に、本発明を、単なる例として、以下の図及び実施例を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【
図2】HisTrap HP捕獲カラムのSDS-PAGEにより分析した画分。標的構築物は、画分E3乃至F6(250mM乃至500mMイミダゾール)に溶出する。
【
図3】陰イオン交換である第2のクロマトグラフィー工程のSDS-PAGEにより分析した画分。標的タンパク質は、画分13乃至30に(増加するNaCl濃度に亘って)溶出した。
【
図4】エンテロキナーゼによる活性化後にSDS-PAGEにより分析した画分。分析は、タンパク質がタンパク質分解活性化前に安定していないものの、一部の構築物は無傷の状態を維持していると思われることを示している。エンテロキナーゼ活性化は、軽鎖と重鎖との間で構築物を切断せず、SDS-PAGE分析から、生成物の少なくとも一部が予測された組成であること、即ち無傷の軽鎖及び重鎖と中央提示で結合したGS20及びCtxBとを有することが示唆される。
【
図5】エンテロキナーゼによる活性化後のウエスタンブロット分析。5A-モノクローナルテトラhis抗体、二次抗マウスコンジュゲートにより処理したブロット。5B-抗LcA抗体及び二次抗ウサギコンジュゲートにより処理したブロット。
【
図6】GM1競合結合アッセイにおける遊離Ctx-B、BoNT/A1(0)-CtxBCP及びBoNT/A1(0)の評価。
【実施例】
【0157】
実施例1 BoNT/A1(0)-CtxBCPの発現及び精製
【0158】
コドン最適化(大腸菌用)構築物を、CtxB一次タンパク質配列(配列番号11の残基22乃至103)に基づいて設計し、エンドネガティブBoNT/AへサブクローニングしてT5プロモーターを有するpJ401プラスミドに挿入し、エンテロキナーゼ活性化部位(EK)、GS20リンカー、及びC末端Hisタグを有する(LcA(0)-EK-CtxB-GS20-HcA-6HT)、中央提示構築物(BoNT/A1(0)-CtxBCP)を作製した。
【0159】
構築物を、グリセロール(0.4%、Sigma)、グルコサミン(0.2%、Sigma)、及び30μg/ml Kan(Sigma)を添加したmTB培地(トリプトン12g/l、酵母エキス24g/l、リン酸二カリウム9.4g/l、リン酸一カリウム2.2g/l、Melford)中で、大腸菌株BL21(DE3)へ形質転換した。個々のコロニーを取り出し、マイクロバンクビーズのバイアルに接種した。接種したビーズは、必要になるまで-80℃で保存した。一個のビーズを用いて100mlのmTB培地に37℃で接種した。600nmでの吸光度が4.6に達した時に、培養物100mlのうち10mlを2Lフラスコ内の培地1Lに添加し、培養物を37℃でOD600≧1.0まで増殖させた。温度を16℃に下げ、培養物を1時間冷却した後、IPTGを終濃度1mMになるように加えた。誘導を20時間継続した。その後、6000gでの遠心分離を20分間4℃で行い培養物を収穫した。使用済み培地をデカントし、ペレットを凍結させ、必要になるまで-80℃で保存した。
【0160】
細胞ペレットを解凍し、6ml/g溶解緩衝液(50mM Tris pH8.0、200mM NaCl)に再懸濁した。細胞は、20kpsiのシングルパスでホモジナイザにより溶解した。細胞片及び不溶性物質を、30,000gで30分間の遠心分離により清澄化した。上清を回収し、5mlのHisTrapカラム(Ni
2+を予め充填し、溶解緩衝液により平衡化)にロードした。ロード後、カラムを溶解緩衝液50mlで洗浄した後、25ml 40mM、50ml 80mM、25ml 125mM、25ml 250mM、及び25ml 500mMの漸増イミダゾール濃度の段階的勾配に亘ってタンパク質を溶出した。2.5mlの画分を全体に亘り収集し、標的キメラの位置をSDS-PAGEにより決定した(
図2)。
【0161】
標的タンパク質を含有する画分E3乃至F6(250mM乃至500mMイミダゾール)をプールし、53mlの26/10脱塩カラムを使用して脱塩した。材料は、QHP結合緩衝液(50mM Tris pH8.0)中に脱塩した。緩衝液交換材料を1つのプールとして保持し、陰イオン交換により更に処理した。
【0162】
5mlのHiTrap QHPカラムを用いて更にキメラを精製した。カラムを結合緩衝液(50mM Tris pH8.0)中で予め平衡化した後、脱塩プールをロードした。カラムを結合緩衝液25mlで洗浄した後、100ml超の0乃至350mMのNaClの直線勾配でタンパク質を溶出した。その後、カラムを、25ml超の350mM乃至1MのNaClの高塩濃度工程により洗浄した。2.5mlの画分を全体に亘り収集し、SDS-PAGEにより分析し、どの画分が標的タンパク質を含有するかを決定した(
図3)。
【0163】
標的タンパク質を含有する画分13乃至30をプールし濃縮した後、エンテロキナーゼにより18時間4℃で活性化し、AEBSFを添加して反応を停止させた。
【0164】
この最終材料をSDS-PAGEにより分析した(
図4)。
【0165】
分析は、タンパク質がタンパク質分解活性化前に安定していないものの、一部の構築物は無傷の状態を維持していると思われることを示している。エンテロキナーゼ活性化は、軽鎖と重鎖との間で構築物を切断せず、SDS-PAGE分析から、生成物の少なくとも一部が予測された組成であること、即ち無傷の軽鎖及び重鎖と中央提示で結合したGS20及びCtxBとを有することが示唆される。
【0166】
軽鎖及びhisタグの存在を確認するため、サンプルを更にウエスタンブロットにより分析した(
図5)。タンパク質を、Bio-Radトランスブロットターボトランスファーシステムを用いて、ゲルからニトロセルロースメンブレンに転写した。ブロットは、PBST 0.5%BSA中でブロックした。ブロットは、モノクローナルテトラhis抗体、二次抗マウスコンジュゲートにより処理するか、又は抗LcA及び二次抗ウサギにより処理した。スーパーシグナル基質を用いてシグナルを発生させ、Pxi 4において検出した。ウエスタンブロットは、完全長の標的と、産物に関連する断片について陽性のシグナルを示す。
【0167】
実施例2 BoNT/A1(0)-CtxBCPのGM1に対する結合
【0168】
簡単に説明すると、透明なF96 Maxisorpプレートを100ng/ml GM1で一晩コーティングし、2%BSA-PBS溶液でブロックし、遊離コレラ毒素Bサブユニット(遊離Ctx-B)、BoNT/A1(0)-CtxBCP又はBoNT/A1(0)と表示濃度でプレインキュベートした。プレートは、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた40μg/mlコレラトキシンBサブユニット(Ctx-B-HRP)と共に更にインキュベートした。洗浄後のプレート上のHRPの活性を現像液により判定し、450nmでの吸光度を反応停止後に判定した。データは、3連ウェルの平均値±標準誤差平均値である(
図6)。
【0169】
図6は、以下を示す。
・BoNT/A1(0)は、予想通り、GM1結合に対してCtx-B(Ctx-B-HRP)と競合しなかった。
・遊離Ctx-Bは、予想通り、Ctx-B-HRPと競合し、pEC
50は、0.2μg/mlとなった。
・BoNT/A1(0)-CtxBCPは、遊離Ctx-B(49μg/ml)の約100分の1のpEC
50を示すCtx-B-HRPと競合することができた。
【0170】
結論として、Ctx-Bドメインの付加は、BoNT/A1(0)に対する天然の受容体ではないガングリオシドであるGM1に結合する能力を、BoNT/A1(0)に付与する。
【符号の説明】
【0171】
[
図2]
BenchMark ladder: ベンチマークラダー
Total lysate: 全溶解物
Load: ロード
Flow through/wash: フロースルー/ウォッシュ
[
図3]
BenchMark ladder: ベンチマークラダー
Flow through: フロースルー
Wash: ウォッシュ
[
図4]
BenchMark ladder: ベンチマークラダー
Non-activated control: 非活性化対照
Final product: 最終産物
[
図5A及び5B]
Total lysate: 全溶解物
Capture load: 捕獲ロード
Non-activated control: 非活性化対照
Final product: 最終産物
[
図6]
GM1 binding assay: GM1結合アッセイ
ELISA Competition format: ELISA競合フォーマット
Absorbance: 吸光度
Basal: 基底
Competitor: 競合物
free Ctx-B: 遊離Ctx-B
Competition of 40μg/ml CtxB-HRP: 40μg/ml CtxB-HRPの競合
data is mean ± s.e.mean of triplicate wells: データは3連ウェルの平均値±平均値の標準誤差
【配列表】