(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】細胞培養液からマイクロキャリアを分離するための容器
(51)【国際特許分類】
C12M 3/06 20060101AFI20220805BHJP
B01D 29/07 20060101ALI20220805BHJP
B01D 29/50 20060101ALI20220805BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C12M3/06
B01D29/06 510A
B01D29/24 E
C12M3/00 A
(21)【出願番号】P 2019522369
(86)(22)【出願日】2017-10-23
(86)【国際出願番号】 US2017057856
(87)【国際公開番号】W WO2018085070
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2019-05-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-04
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モリッシー,マーティン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】上條 肇
【審判官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0081995(US,A1)
【文献】米国特許第6712993(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00 - 3/10
B01D 23/00 - 35/04
B01D 35/08 - 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロキャリアをプロセス流体から分離するための容器であって、
第1区画と、
第1区画
内に配置され、プレナムを構成し、第2区画への流路を提供する入口ポート
を備えるマニホールドと、
第1区画から出る流路を提供する出口ポートと、
第1区画の内部に配置され、
前記マニホールドに固定され、前記入口ポートと流体連結された第2区画であって
、個別のマイクロキャリア収容領域を
複数備える第2区画と、
を備え、
各マイクロキャリア収容領域が、前記マイクロキャリアを保持しながらプロセス流体を
第2区画から第1区画へと通過させるものであり、十分な多孔度を有する多孔質メッシュを備える
ものである、容器。
【請求項2】
各マイクロキャリア収容領域
がメッシュバッグを備える、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
各マイクロキャリア収容領域が多孔質プリーツバッグを備える、請求項1に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示は参照により本明細書に組み込まれる、2016年11月2日に出願された米国仮特許出願第62/416,309号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
マイクロキャリアは、通例、接着細胞又は足場依存性細胞の培養に使用され、接着細胞又は足場依存性細胞(anchorage-dependent cells)の培養に製薬業界で広く使用されている。マイクロキャリアは、特定の生物製剤若しくはワクチンの製造に使用される接着細胞を培養するために、又はある種の細胞(例えば幹細胞)を培養するために使用され得て、幹細胞自体が目的の産物(product)である。
【0003】
マイクロキャリアは通例、マイクロキャリア上への細胞の付着を可能にする又容易にするハーバ表面(harbor surface)特性又は化学作用を有する。バイオリアクタは、マイクロキャリアを含む接着細胞の培養に使用される。細胞がある密度に達するか又は細胞培養プロセスが完了すると、細胞培養液自体(例えば分泌された治療用タンパク質、例えばモノクローナル抗体)又は細胞が付着しているマイクロキャリア(例えば幹細胞の場合)のどちらかをさらに処理するために、細胞培養液をマイクロキャリアから分離する必要がある。さらに、マイクロキャリアが滅菌後に再使用され得るように、マイクロキャリアを細胞培養液から分離することが望ましいことが多い。
【0004】
一般に、例えばマイクロキャリアから細胞を放出させるための、マイクロキャリアのトリプシン、EDTA又は同様の薬剤による処理による、マイクロキャリアから細胞を除去するための複数の方法が記載されている。細胞培養液からマイクロキャリアを分離するための複数のプロセスも記載されている。例えば、大量のバルク処理のための在来の分離方法は、例えば積層表面の傾斜沈降台上又は浅い容器内にマイクロキャリアを沈降させることであった。細胞が沈降したら、デカンテーションにより上清の大部分を回収することが可能であり、沈降ステップを反復することにより、産物の回収率を高めることができる。しかしながら、そのようなプロセスに必要な時間は、効率的な回収のためには長すぎることがあり、産物が劣化するおそれがある。
【0005】
または、細胞培養液からマイクロキャリアを分離するためのフィルタについて記載されている。例えば、従来のシステムの1つは、使い捨て収容バッグに組み入れられた濾過ふるいを含み、これによりマイクロキャリアを含有する溶液は、収容バッグ壁を横断する装備品を通じて収容バッグに供給する回路を介して、収容バッグに移送される。可撓性収容バッグの壁を横切ってマイクロキャリア懸濁液を移送する入口装備品は、平面状メッシュシートによって2個のチャンバに分割され、それにより、入口装備品によって供給を受ける第1チャンバにはマイクロキャリアが蓄積し、第2チャンバにはマイクロキャリアを含まない溶液が収容される。
【0006】
別の従来のシステムは、マイクロキャリアを液体培地から分離するためのフィルタアセンブリを含み、フィルタアセンブリは、
流体の保持に適した無菌区画周囲の折り畳み式容器と、
入口ポートであって、流体が入口ポートを通じて区画に流入する、入口ポートと、
出口ポートであって、流体が出口ポートを通じて区画から流出する、出口ポートと、
区画内に配置されたフィルタであって、区画を入口ポートと流体連結されている入口チャンバと、出口ポートと流体連結されている出口チャンバとに分割し、マイクロキャリアの通過を防止しながら、培地をフィルタを通じて通過させる、フィルタと、
を含む。
【0007】
脱離した細胞を含む培養液からのマイクロキャリアの分離は、硬質容器であって、硬質容器にわたって延在する水平ふるいを有する硬質容器に溶液を通過させることによって達成され得る。ふるいは、培養液を通過させるが、マイクロキャリアの通過を防止する、硬質メッシュである。しかしながら、マイクロキャリアがふるい上に蓄積するにつれて、マイクロキャリアはふるいを目詰まりさせて、流体によるふるいの通過を防止する。ふるいが目詰まりされると、プロセスはふるいの目詰まりが解消するまで停止する。さらに、プロセスが完了すれば、硬質容器及び関連ふるいを再使用可能にするには、これらを洗浄及び殺菌する必要がある。これらのプロセスステップは、費用と時間がかかる場合がある。
【0008】
足場依存性細胞は、培養基上に「広がる」傾向又は要求があるため、細胞数に対して比較的広い表面積を占有する。これにより足場依存性細胞産物の産生(production)方法は非常に複雑になる。例えば、75cm2の培養表面によって、2、3マイクログラムの総湿潤細胞重量であり、任意の有用な医薬品のものよりはるかに少ない、本質的に無視できる1×105-6個の細胞を生じ得る。このため、平面状表面付着の制限を克服しようとする長年の試みにもかかわらず、産生のために足場依存性細胞を平面状表面上で増殖することはきわめて非実用的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、当分野で必要とされているのは、上記の問題のうちの1つ以上を軽減することができる方法及び/又はシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載の実施形態は、細胞培養液からマイクロキャリアを分離するための容器に関する。本明細書に記載の容器は、当分野に記載のシステムと比較して、マイクロキャリアを含有する細胞培養液のより高い効率での濾過を提供する。例えば上述したものなどの、先行技術の濾過システムの場合、バッグにマイクロキャリアが充填されると、濾過容器(例えばバッグ又はパウチ)と接触するマイクロキャリアの表面積のパーセンテージがますます低くなり、これにより濾過プロセスが減速又は妨害され、全体の濾過効率が低下する。本明細書に記載する容器は、大きな表面積を有し、結果として濾過効率が向上する。
【0011】
いくつかの実施形態において、マイクロキャリアを細胞培養液から分離するための容器が提供され、この容器は、
第1区画であって、滅菌折り畳み式バッグと、第1区画中への流路を提供する入口ポートと、第1区画から出る流路を提供する出口ポートと、を含み得る、第1区画と、
完全包囲された第2区画であって、第1区画の入口ポートと流体連結されており、且つ境界壁を含み、境界壁が、部分的に又は完全に多孔質であり、境界壁は、第2区画を通じて第1区画の出口ポートの中へ細胞培養液を通過させて、第1区画で細胞培養液が回収されることを可能にしながら、マイクロキャリアを第2区画の内部に保持するのに十分な多孔度を有する、第2区画と、
を備える。
【0012】
ある実施形態において、完全包囲された第2区画は、複数の独立した又は個別のマイクロキャリア収容領域を画定する複数の境界壁を有する。1つの独立した又は個別の領域内のマイクロキャリアが別の独立領域内のマイクロキャリアと直接相互作用せず、接触していないという点で、これらの領域は独立している又は個別である。いくつかの実施形態において、各マイクロキャリア収容領域はパウチである。
【0013】
ある実施形態において、複数の完全包囲された区画があり、各区画は、第1区画の入口ポートと流体により連結されており、且つ境界壁を含み、境界壁が、部分的に又は完全に多孔質であり、境界壁は、第2区画を通じて第1区画の出口ポートの中へ細胞培養液を通過させて、第1区画で細胞培養液が回収されることを可能にしながら、マイクロキャリアを第2区画の内部に保持するのに十分な多孔度を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、細胞培養液からマイクロキャリアを分離する方法であって、
(a)マイクロキャリアを含む細胞培養液を提供するステップと、
(b)第1区画と、第1区画の内部に配置された完全包囲された第2区画とを含む容器を提供するステップであって、第1区画が、滅菌折り畳み式バッグと、第1区画への流路を提供する入口ポートと、第1区画から出る流路を提供する出口ポートと、を含み、第2区画が、第1区画の入口ポートと流体連結されており、且つ境界壁を含み、境界壁が、部分的又は完全に多孔質であり、第2区画を通じて出口ポート中へ流体を通過させながら、マイクロキャリアを第2区画の内部に保持する多孔度を有し、境界壁は、独立した又は個別のマイクロキャリア収容領域を画定する、容器を提供するステップと、
(c)完全包囲された第2区画にマイクロキャリアが流入して、マイクロキャリアが第2区画の内部で捕捉及び蓄積され、残存する細胞培養液が第1容器の出口ポートを通じて第2区画から流出するように、第1区画の入口ポートを通じてマイクロキャリアを含む細胞培養液を流すステップと、を含み、
これによりマイクロキャリアを細胞培養液から分離する、方法が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態において、第2区画は、複数の独立した又は個別のマイクロキャリア収容領域を備え、各マイクロキャリア収容領域は、マイクロキャリアを含有する細胞培養液がマイクロキャリア収容領域に進入するための流路を提供する頂部と、側壁及びマイクロキャリアをマイクロキャリア収容領域に保持しながら、細胞培養液を通過させるため十分に多孔性である底部と、を備えている。
【0016】
いくつかの実施形態において、第2区画の複数のマイクロキャリア収容領域はプレナムに連結されて、マニホールドを形成する。プレナムは、例えばポリスルホン、アクリル又はポリカーボネートポリマーなどの硬質材料からなり得る。または、プレナムは、例えばビニル又はポリ塩化ビニルポリマーなどの可撓性材料からなり得る。いくつかの実施形態において、プレナムは、マイクロキャリアを含有する細胞培養液を複数のマイクロキャリア収容領域それぞれに分配する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ある実施形態による、マイクロキャリアを分離するための容器の概略図である。
【
図2】別の実施形態による、マイクロキャリアを分離するための容器の概略図である。
【
図3】ある実施形態による、マイクロキャリアを分離するための容器の概略図である。
【
図4】別の実施形態による、マイクロキャリアを分離するための容器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示されている構成要素、プロセス及び装置は、添付の図面を参照することによって、より完全に理解することができる。図面は、簡便さ及び本開示を示しやすくすることに基づく単なる概略図であり、したがって、装置又はその構成要素の相対的な大きさ及び寸法を示したり、並びに/又は例示的な実施形態の範囲を規定若しくは限定したりすることを意図するものではない。
【0019】
明確にするために、以下の記載で特定の用語を使用するが、これらの用語は、図面で説明するために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことを意図し、本開示の範囲を規定したり、又は限定したりすることを意図するものではない。図面及び以下の記載において、同様の数字による表示は、同様の機能を有する要素を示すことを理解されたい。
【0020】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別途明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0021】
本明細書で使用する場合、様々な装置及び部品は他の構成要素を「備えている」と記載され得る。「備える」、「含む」、「有している」、「有する」、「することができる」、「含有する」という用語及びその変形は、本明細書で使用する場合、追加の構成要素の可能性を排除しないオープンエンドな移行句、用語又は単語を意図するものである。
【0022】
多くの遺伝子組み換え動物細胞を含む足場依存性細胞は、静電/疎水性相互作用、自己付着マトリックスの生成又はポリアミノ酸(例えばポリリジン)若しくはコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン及び他の「RGD」ペプチドを含む様々な「足場(scaffolding)」タンパク質のコーティングへの付着を含むプロセスによって、表面に付着する。これらは自然環境において細胞を固定する細胞付着基質を模倣し、足場依存性は、付着プロセス自体が遺伝及び合成過程、特に所望の産物の産生を制御するシグナルを細胞に提供するため、必須要件である。
【0023】
バッチ法
バッチ方式のマイクロキャリア細胞培養は、細胞の健全性に役立つように、細胞被覆マイクロキャリア及び栄養培地の組合せを容器内に供給することを単に含む。所望の産物を最大限に産生するために、気体、緩衝液、同化炭素源及び成長因子が供給及び最適化される。産物の最適濃度に達すると、懸濁液は何らかの方法でマイクロキャリアから分離され、次いで下流の処理を受ける。
【0024】
流加培養(fed-batch)方式は、産物が操作の終了時にのみ除去されるという点でバッチ方式と似ているが、産物の回収率を改善する目的で、プロセス中に栄養素が複数の間隔で追加されるという点で異なる。
【0025】
灌流(連続流)方式
灌流方式では、新たな栄養培地の連続流がマイクロビーズの懸濁液を通過する。マイクロキャリアは培地の密度よりわずかに高密度となるように選択されるため、通例、培養容器を非常に低速で灌流している。このため、マイクロキャリアの重量は、さもなければマイクロキャリアを培養容器から追い出す流れベクトル(移動する培地の「揚力」係数)を相殺する。所望の産物が栄養培地に排出される場合、産物は流出流から回収される。化学的又は酵素的手段(通例トリプシン又は「EDTA」(エチレンジアミン四酢酸))によって細胞がマイクロキャリアから除去された後に、産物がマイクロキャリアビーズに付着した細胞となお会合されているか、又は細胞中に含有されている場合、さらなる処理を行う前に、マイクロキャリアから細胞を分離するがこと必要である。
【0026】
このため、連続方式又は灌流方式では、培養期間を通して産物が収穫される。バッチ及び流加培養方式では、産物はプロセス操作の終了時にのみ除去される。
【0027】
マイクロキャリアベース培養物の処理
メッシュ濾材の寸法がマイクロキャリアの濃度に対して大きいことを考慮すると、これらの現行の方法のどちらによっても、マイクロキャリアが良好に捕捉される。しかしながら、マイクロキャリア捕捉チャンバがマイクロキャリアで充填され始めると、メッシュの一部が目詰まりするため、濾過効率が低下し、流体流の処理が必然的に低下するはずである。このため、培地からマイクロキャリアビーズ又は細胞を分離するための、及び収穫時にマイクロキャリアビーズ又は細胞を回収するための、より高速でより効率的な手段を提供する装置及び方法に対する要求がなお持続している。栄養素が系に連続的に添加され、産物が培養期間を通して収穫される細胞培養の連続方式又は灌流方式で使用するための、このような装置及び方法の必要性は、特に明白である。
【0028】
これまでに既知の捕捉装置内の濾材の消耗を克服するために、捕捉材の利用可能な表面積を増大させることが必要である。本明細書に開示される実施形態は、収容バッグでの配備時に装置全体の容積を増大させることなく、濾材の表面積を実質的に増大させる。
【0029】
本明細書に開示される実施形態は、マイクロキャリア懸濁媒体の濾液がマイクロキャリア自体から効率的に分離されるように、細胞培養液又は処理溶液からマイクロキャリア又は他の凝集体を特に効果的な方法で濾過する、装置及び方法を提供する。装置の設計により、当分野で既知の装置から予想されるフィルタの目詰まり及び流れの妨害が大幅に低減され、同時に、任意の種類の滅菌使い捨て又は再使用可能な滅菌バイオリアクタに同様の装置が適用されることにより、予想されるすべての利点が提供される。より具体的には、本明細書に開示される実施形態は、細胞マイクロキャリア用の改良使い捨て濾過装置に関し、並びにマイクロキャリア細胞培養物から細胞及び細胞産物を回収するためのプロセス回路へのフィルタユニットの組み込みに関する。一般に、使い捨て濾過装置及び濾液回収装置は、任意のサイズの非多孔質使い捨てバッグを備えることができる。一実施形態は「ピロー」バッグと呼ばれ、互いに対向して配置され、周縁に沿って共に封着又は接着された2枚以上のポリマー又は積層ポリマーのシートを備える。または、使い捨て3次元使い捨てバッグ、即ち可撓性単一又は積層非多孔質ポリマー材料の3、4、5又はそれ以上の壁を有するように製造されたバッグがある。
【0030】
ある実施形態の目的は、濾過効率を高めることである。ある実施形態において、多孔質濾過区画の表面積は、区画の壁の数を増やすことによって増大され、複数の独立した又は個別のマイクロキャリア収容領域が生成される。マイクロキャリア領域に蓄積するマイクロキャリア層(bed of microcarriers)の有効密度は、使用されたマイクロキャリアの実際の数を減少させることなく低下される。したがって、同数のマイクロキャリアについて、より大きいマイクロキャリア表面積が試料又は細胞培養液に暴露される。
【0031】
いくつかの実施形態において、マニホールド又はプレナムを使用して、プロセス流体を1又は複数の第2区画に誘導することができる。
【0032】
ある実施形態において、装置の第1区画はバッグであり得る。バッグは、無菌ポート、配管連結部及び配管回路の設備などの様々な装備品を収容し得る。一実施形態において、バッグは非多孔質であり、可撓性ポリエチレン材料又はフィルムを備え、それに取り付けられた装備品を有し得る。本明細書で使用する場合、「装備品」という用語は、それを取り付けるために非多孔質バッグフィルムに溶着、例えば熱溶着される別個の物体を示す。したがって、装備品は、非多孔質バッグの壁を構成するポリマー材料と同一又は類似であり得るポリマー材料を含むことが多い。装備品は、多くの場合、非多孔質バッグの壁よりも高密度の材料であることが多く、機能を実現するためにバッグに追加され得る。装備品の非限定的な例は、ポートを形成する装備品である。ある実施形態において、細胞培地又は他の流体を非多孔質バッグの内部から抜き取るために、以下に記載されるようなポートが非多孔質バッグの壁に追加される。そのようなバッグは、金属製のタンク又はビンに含有される間に使用されて、大きな流体負荷から応力を軽減し得る。
【0033】
ある実施形態において、第2区画は第1区画内に含有され、第1区画は第2区画フィルタから濾液を収集する。第2区画(フィルタ)は、例えば接着剤又はヒートシールなどによって、区画の上端に沿って第1区画の壁に封着され得る。第2区画は、複数の独立した又は個別のマイクロキャリア収容領域を含む。
【0034】
ここで
図1を参照すると、外部流体及びビーズ供給源(図示せず)から外部供給管に連結する、且つ複数の独立した又は個別のマイクロキャリア収容領域10、10’(部分的に示す)と流体連通された容器及びプレナム3中への経路を提供する、装備品1が示されている。図示された実施形態において、2つのそのようなマイクロキャリア収容領域10、10’があり、そのそれぞれがメッシュ濾過バッグである。マイクロキャリア収容領域10、10’はそれぞれ、その内部容積に互いに独立して複数のマイクロキャリアを収容するように構成される。区画10内の複数のマイクロキャリアは、区画10’内の複数のマイクロキャリアとは独立して別個となっている。いくつかの実施形態において、各マイクロキャリア収容領域10、10’内の複数のマイクロキャリアが捕捉されて集積し、マイクロキャリア層を形成する。各マイクロキャリア収容領域10、10’は、同一(例えば、同一の体積及び構成)であり得るが、同一である必要はない。
【0035】
図2は、第1容器2が第2容器5を包囲しており、第2容器5がプレナムチャンバ3と複数の独立した又は個別のマイクロキャリア収容領域10、10’、10’’及び10’’’を備える実施形態を示す。ある実施形態において、各領域10、10’、10’’及び10’’’は、多孔質メッシュフィルタバッグである。ビーズ含有流体は、装備品1を通じてプレナム3中へ通過して、プレナム3において、懸濁流体がメッシュを通じて第1容器2中に通過するときに、ビーズを捕捉するメッシュバッグまで分布する。この実施形態において、入口ポート1は容器2の側壁に位置する。メッシュバッグは、マイクロキャリアをメッシュバッグ内に保持しながらプロセス流体を通過させるのに十分な多孔度を有する。マイクロキャリア収容領域に好適な多孔度は、50~100μmメッシュを含む。
【0036】
図3は、第2容器のプレナム3へのアクセスを与える装備品1が装置の頂部に位置することを除いて、
図2と同様の実施形態を示す。装備品1は、これが例えばフック又は溝付き支持体と係合する場合、装置を支持することができる。
【0037】
図4は、第2容器が複数の個別の濾過パウチ100を備える実施形態を示す。各濾過パウチは、マニホールドに取り付けられ得て、非多孔質ポリエチレンバッグなどの第1容器への入口と流体連通している。取り付けは機械式であり得るか、又は第2容器(若しくはその関連部分)とマニホールドの両方が同じ材料(例えばPE)からなる場合、これらをヒートシールすることができる。
【0038】
ある実施形態において、各パウチ100は、流体を通過させながら複数のマイクロキャリアを含有するように構成された、メッシュパウチ又は他の多孔質材料である。
【0039】
いくつかの実施形態において、第2容器にはマイクロキャリアが事前装填され得て、装置が使用されて、接着細胞をマイクロキャリアから洗い流すように、又はプロセス液中の細胞をマイクロキャリアに付着させるように、マイクロキャリアをプロセス液で洗浄し得る。
【0040】
想定されるマイクロキャリア収容領域は、以下の例で表すことができる。寸法が10×10×10の立方体が10×10×5の側壁面を有するのは、上壁を除いて、10×10単位の5枚の壁=500平方単位があるためである。これをマイクロキャリア収容領域として10×1単位のパウチで置き換えると、側壁面と底面の合計は、10×10(それぞれ大型側壁2枚×1単位)及び10×1×3(各パウチにつき短い側壁2枚及び底壁1枚)又は2300平方単位の濾過面積となり、ほぼ同じ空間で460%の増大である。
【0041】
使用中、ある実施形態において、記載したフィルタ装置はポートに取り付けられる。ポートは次に配管によって、細胞培養容器から懸濁液を排出するポンプ又は重力流回路に取り付けられる。その流れは、濾過メッシュなどのマイクロキャリア収容領域に向けられる。マイクロキャリア収容領域へのアクセスは、ポートへの直接取り付けによるか、又はさもなければ第1容器にアクセスするポートから延長管を介してのどちらかである(
図2)。マイクロキャリア溶液は、プレナムとして機能する第2区画の頂部中へ通過し、マイクロキャリア溶液は、メッシュフィルタ布又は多孔質シートのパウチ、バッグ又はプリーツ付きバッグなどのマイクロキャリア収容領域に分配される(
図3)。マイクロキャリア収容領域の側壁によって与えられた追加の表面積によって、マイクロキャリア収容領域を1つのみ有する標準フィルタユニットと比較して、濾過表面積が
線形的に増大するため、装置も先行技術のフィルタよりも
線形的により効率的となる。
【0042】
好適なマイクロキャリアとしては、GEから入手可能なCYTODEXマイクロキャリア、Pallから入手可能なSOLOHILLマイクロキャリア及びCorningから入手可能なCELLBINDマイクロキャリアが挙げられる。
【0043】
例
濾過装置は、プラスチック又はポリエチレンバッグなどの第1容器と、プレナム及び5個のメッシュフィルタバッグからなる第2容器とを有し、各フィルタバッグは、個々のバッグにつき260cm2の総面積に対して2cm×10cm×10cmのフィルタメッシュ布寸法を有する。CHO細胞培養液中のCytodex 3マイクロキャリアビーズ(直径141~211ミクロン)100リットルが、80ミクロンのメッシュサイズを有する記載したビーズ濾過装置中に圧送される。膨潤したCytodex 3ビーズの体積は、500ml/ビーズ懸濁液100リットルの最終充填ビーズ体積に対して、圧送ビーズ溶液1リットルにつき50ミリリットル(ml)である。ビーズフィルタの第2容器は、容器のプレナムに取り付けられた5個のメッシュバッグを有する。ビーズ含有流体100リットルの処理時に、5個のバッグが500mlのビーズを捕捉する。バッグを正確に均等に充填する必要はないが、バッグは正確に均等に充填する傾向がある。あるバッグが他のバッグよりも実質的にさらに充填されている場合、さらに充填されたバッグはわずかにより大きい圧力降下を有し、進入してくる液体は、より充填されていない/圧力降下がより大きいバッグに偏る。この時点で、これにより蓄積されたビーズの上にまだ閉塞されていない濾材600cm2が残存している。これは同じ外形寸法、即ち10cm×10cm×10cmの唯一のバッグからなる、先行技術の第2容器に匹敵し、第2容器では捕捉されたビーズによって被覆されていない、閉塞されていない濾材の量はわずか200cm2である。200cm2は、この例における請求項1の発明によって提供される濾過面積の1/3の濾過面積である。したがって、利用可能な濾材の半分の排出での、請求された発明の閉塞されていない流速は、この例における先行技術の装置の流速の3倍となる。