(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】医療装置のための薬剤放出被膜およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
A61L 29/16 20060101AFI20220805BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20220805BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20220805BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20220805BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220805BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20220805BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20220805BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20220805BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220805BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20220805BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220805BHJP
A61L 29/06 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
A61L29/16 ZNA
A61M25/10 500
A61M25/10 510
A61L29/12
A61L29/08
A61P37/06
A61K31/436
A61K31/706
A61K31/337
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/12
A61L29/06
(21)【出願番号】P 2019527453
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2017083614
(87)【国際公開番号】W WO2018114992
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-21
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512238276
【氏名又は名称】バイオトロニック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベッツ、ロナルド イー
(72)【発明者】
【氏名】グエン、ジョン ダン
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-528889(JP,A)
【文献】特表2012-528660(JP,A)
【文献】特表2010-540159(JP,A)
【文献】特許第5113667(JP,B2)
【文献】特許第4892471(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤溶出装置であって、
水溶性物質層を含む
プライマー層と、
第一部分および第二部分を有する
薬剤層とを有し、
前記第一部分は大環状トリエン免疫抑制化合物を有し、前記第二部分は少なくとも1つのポリマーフリー賦形剤を有し、前記ポリマーフリー賦形剤は、脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、脂肪酸、または非イオン性表面活性剤である、
装置。
【請求項2】
請求項1記載の医療装置において、前記装置は薬剤溶出バルーンカテーテルである装置。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか一項記載の装置において、前記水溶性物質は、65~70kDの分子量を有する球状血清蛋白質である装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載の装置において、前記水溶性物質は、配列番号1と少なくとも90%同一である血清タンパク質を有するものである装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載の装置において、前記水溶性物質はヒト血清アルブミンである装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項記載の装置において、前記複数部分層は、単一製剤によって構成され、前記装置の表面にある前記
プライマー層上に形成されている、装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の装置において、前記大環状トリエン免疫抑制化合物は以下の構造:
【化1】
(RはC(O)-(CH
2)
n-X;nは1または2;Xは3~8の炭素原子を有する環状炭化水素で、任意に1つ以上の不飽和結合を含む)を有するものである装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、C(O)-(CH
2)
n-Xは以下の構造の1つを有するものである装置。
【化2】
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか一項記載の装置において、前記大環状トリエン免疫抑制は、ラパマイシン、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムス、またはテムシロリムスである装置。
【請求項10】
請求項1~
6のいずれか一項記載の装置において、前記
薬剤層は、タクロリムス、パクリタキセル、ドセタキセル、それらの類似体、またはそれらの混合物のうちの1つを有するものである装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項記載の装置において、前記ポリマーフリー賦形剤は少なくとも12の炭素原子を含む、直鎖状脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒド、脂肪酸、または非イオン性の表面活性剤である装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項記載の装置において、前
記ポリマーフリー賦形剤は、少なくとも1つの飽和または不飽和脂肪アルコールおよび/または少なくとも1つの飽和または不飽和脂肪アルデヒドである装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、前記
ポリマーフリー賦形剤は、ヘンエイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、リグノセリルアルコール、セリルアルコール、1-ヘプタコサノール、モンタニルアルコール、1-ノナコサノール、ミリシルアルコール、ラクセリルアルコール、ゲジルアルコール、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、およびセロチン酸から成る群から選択されるものである装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項記載の薬剤溶出装置の製造方法であって、
(a)膨張したら半径方向に拡張可能な医療装置を提供することと、
(b)10%から30%の水溶性賦形剤の水溶液を提供することと、
(c)(b)の溶液内で装置を浸漬被膜することと、
(d)前記浸漬被膜した装置を乾燥することと、
(e)大環状トリエン免疫抑制化合物および少なくとも1つの飽和脂肪アルコールのポリマーフリー賦形剤を含む溶液を(d)の装置に適用することと、
(f)(e)の装置を乾燥させることと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項記載の医療装置において、
前記ポリマーフリー賦形剤は、非イオン性の直鎖状脂肪アルコールを含み、前記水溶性物質は球状血清蛋白質であり
、前記大環状トリエン免疫抑制化合物は、親油性の大環状トリエン免疫抑制化合物であり、
前記薬剤層が最外層として形成され、前記装置が配置された後、割れ目を形成できるものである、医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、薬剤放出挿入可能装置並びにその作製および使用方法の分野に関する。特に、本技術は、被膜したバルーンから個々の体内の罹患組織領域に直接薬剤を徐放することに関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化症とは動脈壁における慢性の炎症反応を意味し、時間の経過に伴い動脈血管および動脈壁に悲惨な影響を及ぼすものであり、集積細胞として致命的プラークを形成するものである。冠動脈疾患(CAD)は米国では何百万人もの男女に影響を与える広くはびこっている病気であり、アテローム性動脈硬化症と関連付けられることが多い。CADを患う多くの患者において、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)は広範に使用される治療方法であり、一般的にバルーンまたは他の類似のインプラントを含む機械的手段により、血管壁を拡張または拡大する操作を有している。PTCAの使用は過去40年間可能な選択の一つであるが、頻繁に生じる合併症、例えば血管解離、再狭窄、反跳、血栓症などの故に、多くの血管形成術の使用が限定されている。
【0003】
治癒過程中、血管形成および機械的インプラント傷害による炎症が、機械的インプラント内における平滑筋の増殖および再成長を引き起こし、流路を部分的に閉塞し、その結果、血管形成/移植術の有益な効果を半減したり排除したりしてしまうことになる。新たに挿入された機械的インプラントの形成に生体適合性の素材が使用されたとしても、斯かるインプラント表面の血栓症的性質の故に、該インプラントの内部に血餅が形成される場合もある。再狭窄は更に重篤な病的症状および致命傷に関係しており、再度の血管形成や冠動脈バイパス手術などの更なる介入を必要とする場合が多い。
【0004】
機械的インプラントは、歴史的に見て以下の2つの形態のいずれかを採用する。膨張収縮可能なバルーンカテーテルおよび半径方向に拡張可能な金属ステントである。両装置とも、血管形成術後に血管の開放および拡大を維持する目的で開発されたものである。しかし、両インプラントとも初期合併症の歴史を有しており、初期のデザインとは異なる絶え間ない革新がもたらされている。バルーン血管形成術の使用は、狭まった冠動脈および血管内の再開通を通して冠動脈血行再建術に革命をもたらしたが、斯かる方法は、内膜下解離、突然の血管閉鎖、および再狭窄に関連していた(非特許文献1)。移植ステントの到来は、解離、解決済み弾性反跳、および後期負の血管再構築に関連するほとんど全ての問題を解決した。しかし、血管壁での炎症の増大が頻繁に見られ、潜在的に致命的なステント内再狭窄の原因となる内膜過形成のリスクが増大した(非特許文献2)。
【0005】
最終的に、薬剤溶出ステントが、標的部位における再狭窄および細胞増殖に関連するリスクを減少させる方法として、露出金属ステントに取って代った。残念なことに、斯かる革新技術でさえ合併症(例えば、局所炎症に起因する後期ステント血栓症であって、斯かる血栓症の発生を解決するため長期の抗血小板治療を必要とするリスクの増大)をもたらした(非特許文献3)。
【0006】
特定の薬剤溶出ステントにおける斯かる限界の結果、他の機械的インプラント、例えば薬剤溶出バルーンなど、特定の非ステントベースの送達プラットホームの開発が再評価されるようになった。斯かる種類の主要研究の1つ(PEPCADII)はステント内再狭窄を有する131人に関する研究であるが、その研究では、患者は無作為に2つの治療群に分けられ、1つの群はパクリタキセル被膜のバルーンによって治療され、もう1つの群はパクリタキセル溶出ステントによって治療された。PEPCADII研究により、薬剤溶出バルーンで治療された患者は、薬剤溶出ステント群と比較し、再狭窄事象で6倍の減少、重篤な冠動脈事象において5倍の減少を経験した(非特許文献4)。
【0007】
PEPCADIIなどの研究は、薬剤溶出ステントの使用と比較した薬剤溶出バルーンの価値に関する適切な証拠を提供することとなったが、血管が小さかったり、病巣が石灰化/分岐していたりなどして、ステントの破断が危惧されることによりステントが使用できない場合には特にそうである。
【0008】
バルーンカテーテルの最新技術を詳細に説明する出版物が数多く存在する。
【0009】
(特許文献1)は、水不溶性の治療薬を送達するのに適した油ベースの被膜を有する医療装置(例えば、ステントおよびバルーン)を記載している。
【0010】
(特許文献2)は、血管手術(例えば血管形成術)によって引き起こされる内膜平滑筋細胞の増殖および移動による再狭窄を治療するための、大環状トリエン免疫抑制化合物エベロリムスについて記載している。
【0011】
(特許文献3)は、無機酸化物またはセラミック酸化物(酸化チタンなど)を更に含む治療薬を送達するための、移植可能な医療装置を記載している。
【0012】
(特許文献4)は、バルーンカテーテルへ適用される被膜の厚さを調整することによる、被膜表示薬剤移行制御法の使用を記載している。この被膜はバルーンカテーテルまたは任意にステントへ適用されるが、血管への送達後バルーンまたはステントに残る被膜は30%未満である。
【0013】
(特許文献5)は、治療薬、賦形剤、および可塑剤を含む被膜を有する薬剤送達バルーンであって、被膜の少なくとも30%がバルーン膨張後1~2分以内にバルーン表面から移動するものであるバルーンを教示している。
【0014】
(特許文献6)は、ステントの配置後に再狭窄を阻止または削減するため、タキソールの被膜を有する血管内ステントの使用を教示している。この文献は、血管の平滑筋細胞へ治療薬を直接送達および/または標的送達するための方法も記載しており、この方法は、平滑筋細胞の収縮を阻止することにより血管内腔の膨張および固定を引き起こし、その結果、生物学的ステントを構成するものである。
【0015】
(特許文献7)は、薬剤の徐放用のポリマー被膜を有するステントを開示しており、薬剤の放出の速度を制御するため、ポリマー被膜、第一および第二ポリマー素材、並びにPLA-PEOおよびPLA-PCLコポリマーが使用される。
【0016】
(特許文献8)は、体の部位へ治療薬を送達するための、拡張可能なバルーンを有するカテーテル装置を記載している。拡張可能バルーンは、種々の構造に折り畳みが可能であり、目的の治療薬とは別に、あるいは目的の治療薬と混ぜて、造影剤または炭水化物で被膜してもよい。
【0017】
(特許文献9)は、薬剤放出医療装置用に、合成生体適合性のターポリマー、コポリマー、およびホモポリマー組成物を記載している。開示されているポリマーは、医療装置から薬剤成分が放出されるのを可能にしている。
【0018】
(特許文献10)は、特にバルーンの拡張時に割れたりしない、油または脂質以外の添加物を有する治療薬で被膜されたバルーンカテーテル装置を記載している。この技術は、バルーンの拡張時に割れが生じるのを回避するように特に設計されている。1つの実施形態では、割れを避けるため、添加層に薬剤と一緒に乳剤としてアルブミンが含まれている。
【0019】
既存の薬剤溶出バルーン技術における現在の最新技術は、いくつかの潜在的な特長を有している。例えば、バルーンから血管壁への一定の薬剤移行、薬剤の急速な放出(薬剤溶出ステントと比較して短期間に高濃度の放出)、(薬剤を血管壁に局所送達する場合に)抗血小板治療への依存の欠如、慢性炎症および後期血栓症のリスクの全体的な低下などである。分岐した血管または小さい血管の場合、ステントがなければ、動脈の元々の構造はそのまま保たれるので、異常な流動パターンの可能性は減少する。
【0020】
バルーン表面から血管壁への薬剤移行のメカニズムについて文献は種々のアイデアを記載している。提案されている理論は、バルーン拡張時における薬剤の分割または溶解から、バルーン表面の被膜に直接接触することによる血管壁内への薬剤の浸透まで様々である。薬剤がバルーンから移行する正確なメカニズムの如何に拘わらず、最新技術は、バルーン拡張中に特定の薬剤濃度を急速に送達する必要性を一貫して主張する。
【0021】
シロリムスまたはシロリムス誘導体を利用する薬剤溶出バルーンが存在するが、臨床前試験はこれらが有効性に比較的乏しいことを示している。これは使用された特定の被膜の欠陥の所為かもしれないし、あるいはバルーンが標的部位で拡張した際に、(予定の薬剤濃度の故に、あるいは標的組織において薬剤が急速に代謝される故に)薬剤が望ましい治療エンドポイントを提供できなかったからかもしれない。
【0022】
現在の薬剤溶出バルーンには、その限界を示す課題がいくつか知られている。主な関心は、バルーン血管形成術後の血管で観察される急激な反跳であり、被膜なしのバルーンの研究で示された後期負の再構築を薬剤溶出バルーンが解決できるか否かも不明である。更に、特定の手術に要求される望ましい放出プロフィルを達成するには、現在の薬剤被膜は複雑であることを最近の調査が示しており、挿入中の薬剤の維持と、バルーン膨張後の標的部位における薬剤の放出との間でバランスを取るのが難しい。
【0023】
マツムラおよびマエダが最初に報告した血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果(非特許文献5)は驚嘆に値するものである。通常の組織や器官とは対照的に、癌組織は全身系の血管から特定の大きさの循環分子を取り込むことが可能である。斯かる分子は、一旦取り込まれると、組織/血漿濃度勾配に反して組織内に滞留および蓄積される傾向にある。これは腫瘍脈管構造のユニークな異常性の故と考えられる。斯かる異常性には、血管過多、および内皮細胞間に大きい空隙を生じる欠陥性血管構造が含まれる。斯かる原因並びに血管シールド平滑筋層の欠如により、血管内液からの溶解分子は腫瘍血管から流出し、腫瘍組織内に蓄積する傾向にある。次に、腫瘍間質内のリンパ排出の減少の故に、斯かる分子は腫瘍床に保留される。腫瘍間保留は、ブラジキニン、血管内皮成長因子(VEGF)、酸化窒素、プロスタグランジン、および他の透過性促進因子など、種々の血管透過性メディエータによって更に促進される(非特許文献6)。最適なEPRに関しては、蛋白質および合成ポリマーは約40kDaを超える分子量を必要としており、それより小さい分子は腫瘍組織から外に自由に拡散されると言うことが一般的に受け入れられている(非特許文献7)。EPRは種々の臨床前ヒト腫瘍動物モデルで証明されており、最近では全身的に投与されたカンプトテシンのポリマーコンジュゲートを用いたヒト臨床試験でも証明されている(非特許文献8)。腫瘍および隣接した非腫瘍性の組織生検が患者から入手された。腫瘍に隣接した投与前および投与後の組織サンプルは、いずれもコンジュゲート薬剤の証拠を示さなかった。投与前の腫瘍サンプルは類似の結果を示したが、投与後の腫瘍サンプルは活性な薬剤を含むことが判明した。
【0024】
重要な点であるが、EPR効果はアテローム性動脈硬化症の組織にも適用されると言う新しい証拠が存在する。微小流体インヴィトロモデルを確認するため、Langerはアテローム性動脈硬化症のインビボウサギモデルにおいてナノ粒子の移送を研究した(非特許文献9)。アテローム性動脈硬化症の病巣を誘発させるため、ニュージーランド白ウサギを高コレステロール食で飼育した。1つの検査コホートはガドリニウム標識のナノ粒子の静脈注射を受けた。第二のコホートはCy7標識アルブミンの静脈注射を受け、3および4の対照コホートは通常のダイエットで構成され、各健康なウサギにそれぞれ試験成分が投与された。撮像結果は、ナノ粒子およびアルブミンの移送が、主にコレステロール誘発アテローム性動脈硬化症群の大動脈血管で生じていることを示していた。斯かる群では、多くの浸透性新血管がアテローム性プラークにまで達することが示された。Cy7標識アルブミンは血管透過性のトレーサとして機能することが示唆された。総合すると、斯かる結果は、機能性EPR効果を有する固形癌腫瘍並びにアテローム性動脈硬化症組織の両方に共通の欠陥細胞/組織構造を強く示唆している。EPRは、抗腫瘍標的化では重要であると認識されているが、アテローム性動脈硬化症治療においては、診断または標的薬剤送達手段としてはほとんど利用されていない。本発明の薬剤放出の簡便化に加え、EPR効果はアルブミン結合薬剤の送達およびアテローム性動脈硬化症組織内の該薬剤の集積を可能とする。アルブミンは、パクリタキセルナノ粒子を含む種々の薬剤の結合に有効であることが証明されている(非特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】米国特許公開第20040224003号
【文献】PCT国際公開第WO 97/35575号
【文献】米国特許公開第20070264303号
【文献】米国特許公開第20100285085号
【文献】米国特許公開第20140046254号
【文献】米国特許第6,171,609号
【文献】米国特許第6,258,121号
【文献】米国特許第8,114,049号
【文献】米国特許第8,066,404号
【文献】米国特許第8,414,525号
【非特許文献】
【0026】
【文献】Gruentzig, A., Am Heart J 103:779-783 (1982)
【文献】Serruys et al., N Engl J Med 331:489-495 (1994)
【文献】Camenzind et al., Circulation 1115:1440-1455 (2007)
【文献】Unverdorben et al., Circulation 119:2986-2994 (2009)
【文献】(Matsumura Y., Cancer Research 46:6387-6392 (1986)
【文献】Maeda et al., J. Control. Release 65:271-284 (2000)
【文献】Maeda et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 65:71-79 (2012)
【文献】Clark, A. J., PNAS 113 14:3850-3854 (2016)
【文献】Kim et al., PNAS 111 3:1078-1083 (2014)
【文献】Krantz, F., J. Control. Release 132:171-183 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
最新技術においては、標的組織に薬剤を安全かつ効果的に送達するための薬剤溶出バルーン技術の提供が求められており、その場合、その薬物動態および投与プロフィルは、治療対象個人の特定の事情に基づいてカスタマイズされてもよい。加えて、標的部位で移植可能な薬剤溶出バルーンも必要とされており、その場合、薬剤はカテーテル挿入中バルーン表面に残り、バルーンが膨張し標的部位に配置された場合にのみ放出され、ある期間、治療的に有効な濃度で標的部位に留まるものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、水溶性で好ましくは原材料の層と、複数部分の薬剤層とを含む主要薬剤溶出層を有する薬剤溶出装置、好ましくはバルーンカテーテルを提供するものであるが、該複数部分の薬剤層は第一部分および第二部分を含み、第一部分は大環状トリエン免疫抑制化合物を有し、第二部分は少なくとも1つのポリマーフリー賦形剤、好ましくは非イオン性表面活性剤を有する。ポリマーフリー賦形剤は脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、脂肪酸、またはそれらの混合物であってよい。1つの実施形態においては、ポリマーフリー賦形剤は、本明細書定義の脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒドから選択されるが、好ましくは脂肪アルコールから選択される。更に、ポリマーフリー賦形剤は、飽和であっても、不飽和であっても、直鎖状であっても、分岐状であってもよいが、飽和かつ直鎖状であるのが好ましい。任意に、薬剤溶出装置、例えばバルーンカテーテルは、主要薬剤溶出層および薬剤層で構成されており、該薬剤層は大環状トリエン免疫抑制化合物を有する。任意に、薬剤溶出層は、薬剤層を適用する前に乾燥させる。好ましくは、水溶性物質薬剤溶出層は球状血清蛋白質であり、大環状トリエン免疫抑制化合物は親油性である。同様の態様において、水溶性物質層は、約50~200kDの分子量を有するポリマーまたは蛋白質で構成される。1つの実施形態では、水溶性物質は、65~70kDの分子量を有するポリマーまたは蛋白質で構成される。更なる実施形態では、水溶性物質は、約160kDの分子量を有するグロブリンおよび/またはフィブリノーゲンなどの血液蛋白質から選択される。
【0029】
1つの態様において、本発明は、バルーンカテーテルなどの薬剤溶出装置の製造方法を教示するものであり、該方法は、(a)膨張したら半径方向に拡張可能な装置、好ましくはバルーンカテーテルを提供することと、(b)好ましくは約10%から約30%の水溶性物質または水溶液内の賦形剤から成る、水溶液物質または賦形剤の水溶液を提供することと、(c)(b)の溶液内で装置を被膜すること、好ましくは浸漬被膜を行うことと、(d)被膜した装置を乾燥することと、(e)大環状トリエン免疫抑制化合物および少なくとも1つのポリマーフリー賦形剤を含む溶液を(d)の装置に適用することと、(f)(e)の装置を乾燥させることとを有する。
【0030】
1つの特定の態様において、本発明は、薬剤溶出バルーンカテーテルの製造方法を教示するものであり、該方法は、(a)膨張したら半径方向に拡張可能なバルーンカテーテルを提供することと、(b)好ましくは水溶液中に約10%から約30%の水溶性物質を含む、水溶液物質の水溶液を提供することと、(c)(b)の溶液内でバルーンカテーテルを浸漬被膜することと、(d)浸漬被膜したバルーンカテーテルを乾燥することと、(e)大環状トリエン免疫抑制化合物および少なくとも1つの飽和脂肪アルコールポリマーフリー賦形剤を含む溶液を(d)のバルーンカテーテルに適用することと、(f)(e)のバルーンカテーテルを乾燥させることとを有する。
【0031】
別の態様において、本発明は、バルーンを有するカテーテル(バルーンカテーテル)を含む医療装置を提供するものであり、該バルーンカテーテルは、水溶性物質を含む主要被膜層と、脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒド脂質賦形剤および薬剤を含む第二の層(好ましくは最外層)とを有しており、水溶液物質は球状の血清蛋白質であり、脂肪アルコールまたはアルデヒド脂質賦形剤は非イオン性直鎖状炭化水素であり、薬剤は親油性の大環状トリエン免疫抑制化合物であり、更に、最外層の被膜層は、バルーンカテーテルの配置後割れ目を形成できるものである。
【0032】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載され好ましくは化学式CxHyOを有する、非ポリマー性の飽和または不飽和脂肪アルコール、または飽和または不飽和脂肪アルデヒドの使用に関する。その場合、バルーンカテーテルの被膜素材として、xは少なくとも12、最大で34であり、yは少なくとも22、最大で70である。更に、本発明は、少なくとも2つの部分を有する複数部分薬剤溶液の使用に関しており、本明細書に記載され好ましくは化学式CxHyOを有する、非ポリマー性の飽和または不飽和脂肪アルコール、または飽和または不飽和脂肪アルデヒドを有しており(あるいは該物質で構成されており)、その場合、xは少なくとも12、最大で34であり、yは少なくとも22、最大で70であり、第二部分は、バルーンカテーテルの被膜材料として本明細書に定義される薬剤、好ましくは親油性の大環状トリエン免疫抑制化合物を有している(あるいは該物質で構成されている)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本明細書に含まれる開示主題は、添付の図面を参照することにより最も良く理解されるものである。
【0034】
【
図1】
図1は、バルーン拡張後、最外層の脂質薬剤被膜層内のミクロ割れを示す光学顕微鏡写真である。(A)は1000倍の解像度、(B)は2000倍の解像度である。
【
図2】
図2は、各々ナイロンバルーンを含み、親油性の青色色素で被膜された2つのカテーテルを示す。(A)カテーテルAであり、本発明の薬剤実施形態を模倣した、親油性青色色素で被膜されたナイロンバルーンを有する。(B)カテーテルBであり、最初にヒトの血清アルブミンで被膜され、次にカテーテルAと同量の親油性青色色素で被膜されたナイロンバルーンを有する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(定義)
本明細書で使用される場合、バルーンカテーテルに関して用いられる「被覆される」または「被覆されている」と言う用語は、バルーン表面に適用される、またはバルーン表面と一体化された化合物または物質を意味する。この中には、薬剤、治療用化合物、並びにバルーン表面から標的への薬剤の送達を促進するためバルーン表面に適用される任意の他の物質が含まれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「溶出」と言う用語は、薬剤または治療用物質を被覆層から外へ移送することを意味し、本明細書のバルーンカテーテルの表面に適用されるように製剤化された被覆層から分泌される薬剤または治療用物質の合計量として決定される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」と言う用語は、活性物質と一緒に製剤化される天然または合成の物質を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「脂質」と言う用語は、水には主に不溶で非極性の有機溶媒には溶解する有機化合物のグループの任意のものであり、脂肪、油、ロウ、ステロール、およびトリグリセライドがそれに含まれ、触ると油っこい性質のものである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「標的」または「標的組織」と言う用語は、本発明の装置の治療エンドポイントを意味する。斯かる組織には、限定されないが、血管、内部脈管領域、個人の器官と脈管構造との間のインターフェース領域が含まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、大環状トリエン免疫抑制化合物と言う用語には、ラパマイシン(シロリムス)、エベロリムス、ゾタロリムス、バイオリムス、ノボリムス、マイオリムス、テムシロリムス、および本開示に記載されるラパマイシン誘導体が含まれる。1つの実施形態では、大環状トリエン免疫抑制化合物は、ラパマイシン(シロリムス)、エベロリムス、ゾタロリムス、およびバイオリムスを含む(またはそれらから成る)群から選択される。複数部分層は、タクロリムス、パクリタキセル、ドセタキセル、それらの類似体、またはそれらの混合物を薬剤として含んでもよい。
【0041】
本発明は、標的部位に挿入および配置されるバルーンの外部表面に適用されるように製剤化されたユニークな複数層被覆を有するバルーンカテーテル、およびそれを製造および使用するための方法を提供する。本発明の実施形態は、標的組織または目的部位に適用される目的で個人の体内に挿入されるように設計されている。斯かる発明の装置の適用には、例えば、限定されないが、脈管構造システムの疾患または症状を治療するための使用だけでなく、本明細書記載の治療目的使用によって恩恵を受ける特定の標的(すなわち、内部器官、特定の組織タイプ、内部領域)も含まれる。更に、本明細書で示唆されている被覆を適用し得る装置は、バルーンカテーテルに限定されるものではなく、迅速かつ効果的な薬剤放出から恩恵を受ける他の装置もその中に含まれる。
【0042】
本発明は、水溶性物質を含むプライマー層と複数部分薬剤層とによって製剤化された、被覆を有する薬剤溶出バルーンカテーテルを提供するものであり、該複数部分薬剤層は、更に、大環状トリエン免疫抑制化合物と、少なくとも1つの脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒドポリマーフリー賦形剤とを有する。
【0043】
複数層被覆のプライマー層は水溶性物質で構成され、バルーンカテーテルの表面に第一被覆層が形成されるのが好ましい。斯かるプライマー層は浸漬被覆によって適用されるのが好ましく、その場合、バルーンカテーテルは水溶性物質を含む溶液内に置かれることにより、該水溶性物質がバルーンカテーテルの表面に適用される。被覆方法には、他の適切な方法、例えば、糸、針、カニューラ、スポンジ、布による溶液の噴霧または適用なども使用可能である。プライマー層の適用後、バルーンカテーテルは溶液または適用装置から除去され、例えば周囲温度すなわち室温で24時間未満乾燥される。
【0044】
プライマー層の容積を構成する水溶性物質は、約50~200kDの分子量を有するポリマーまたは蛋白質である。1つの実施形態では、水溶性物質は、好ましくは約50~200kDの分子量を有する、水溶性ヒト血清タンパク質または水溶性血液蛋白質から選択される。1つの実施形態では、約65~70kDの分子量を有するポリマーまたは蛋白質であり、約65~70kDの分子量を有する球状血清タンパク質であるのが好ましい。更なる実施形態では、水溶性物質は、約160kDまでの分子量を有する、グロブリンおよび/またはフィブリノーゲンなどの血液蛋白質から選択されるのが好ましい。水溶性物質は、ヒトフィブリノーゲンまたは免疫グロブリンであるのが更に好ましい。最も好ましいのは、以下の配列に少なくとも90%同一のヒト血清タンパク質である。
【0045】
【0046】
本発明の最も好ましい実施形態では、水溶性賦形剤はヒト血清アルブミンである。
【0047】
プライマー層が乾燥すると、複数部分薬剤層が、バルーンカテーテル表面および乾燥したプライマー層の上に適用される。複数部分薬剤層は、少なくとも2つの部分、すなわち薬剤を含む第一部分、本明細書定義のポリマーフリー賦形剤を含む第二部分を有するように製剤化されている。好ましい実施形態では、複数部分薬剤層は単一製剤として製剤化されている。本発明の1つの態様では、複数部分薬剤層の第一部分の薬剤は大環状トリエン免疫抑制化合物である。薬剤は、以下の構造を有する大環状トリエン免疫抑制化合物であるのが更に好ましい。
【0048】
【0049】
ここで、RはC(O)-(CH2)n-X、nは1または2、Xは3~8の炭素原子を有する環状炭化水素で、任意に1つ以上の不飽和結合を含む。最も好ましい実施形態では、C(O)-(CH2)n-Xは以下の構造の1つを有する。
【0050】
【0051】
複数部分薬剤層の第二部分の賦形剤は、リポ脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒド、脂肪酸、またはそれらの混合物から成る群から選択される、非ポリマー非イオン性の直鎖状炭化水素または界面活性剤である。賦形剤は、ラウリルアルコール、ウンデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、パルミトレイルアルコール、パルミチルアルコール、イソセチルアルコール、ヘプタデカノールアルコール、ラノリンアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、12-ヒドロキシステアリルアルコール、ヘンエイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、1-トリコサノールアルコール、リグノセリルアルコール、1-ペンタコサノールアルコール、セリルアルコール、1-ヘプタコサノール、モンタニルアルコール、1-ノンアコサノール、ミリシルアルコール、1-ヘントリアコンタノール、ラクセリルアルコール、1-トリトリアコンタノール、ゲジルアルコール、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸など、並びにそれらの各アルデヒドから成る群から選ばれるのが好ましい。
【0052】
脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、または非イオン性界面活性剤は直鎖状であり、少なくとも12の炭素原子を含んでいるのが好ましい。被膜は化学式CxHyOを有しているのが好ましく、その場合、xは少なくとも12でyは少なくとも22、好ましくはxは少なくとも16でyは少なくとも28である。更に好ましくは、被膜は化学式CxHyOを有しており、その場合、xは少なくとも12、最大で34、yは少なくとも22、最大で70である。更なる実施形態において、被膜は化学式CxHyOを有しており、その場合、xは少なくとも16でyは少なくとも28であり、該化合物は非ポリマーの、直鎖状、分岐状または環状飽和または不飽和脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒドである。更に好ましくは、被膜は化学式CxHyOを有しており、その場合、xは少なくとも18、最大で24、yは少なくとも32、最大で50であり、該化合物は非ポリマーの、直鎖状、分岐状、または環状飽和または不飽和脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒドであり、好ましくは直鎖状の飽和脂肪アルコールである。
【0053】
1つの実施形態において、複数部分薬剤層の製剤は、本明細書定義の薬剤を少なくとも80重量%と、本明細書定義の少なくとも1つのポリマーフリー賦形剤を少なくとも15重量%含んでいる。本発明の好ましい実施形態では、複数部分薬剤層の製剤は、本明細書定義の薬剤を60~95重量%と、本明細書定義の少なくとも1つのポリマーフリー賦形剤を5~40重量%含んでいる。製剤は、適量の可溶化剤(例えば、適切な有機溶媒)および特に適切な製剤適用(例えば、噴霧被膜)を促進するための非極性有機溶媒を更に有していてもよい。同様に、薬剤溶出装置当たり、特にバルーンカテーテル当たりに適用される本明細書定義の薬剤の量は、インプラントの大きさにもよるが、5μg~25mgであり、好ましくは約1mg~約10mgである。ポリマーフリー賦形剤の量は1μg~16.7mgであり、好ましくは約2μg~約2.9mgである。最も好ましい実施形態では、バルーンカテーテルの単位長当たりの本明細書定義の薬剤の薬物負荷は、約0.5μg/mm2~10μg/mm2であり、好ましくは約1μg/mm2~3μg/mm2である。
【0054】
好ましい実施形態では、第一部分および第二部分を含む複数部分薬剤層は、プライマー層を乾燥した後バルーンの表面に適用される。好ましい実施形態では、複数部分薬剤層は、プライマー層の上に噴霧被覆により適用される。1つの態様では、複数部分薬剤層は、周囲温度すなわち室温よりも高い温度、好ましくは30~50℃、最も好ましくは40℃で真空乾燥される。
【0055】
(製剤例)
本発明の大環状トリエン免疫抑制化合物は2つ以上の実施形態を有しており、以下の表1の種のうち少なくとも1つを有するものとして記載されてもよい。
【0056】
【0057】
CRC-015は属全体を意味する用語であり、表1記載の以下の種、すなわちCRC-015a、CRC-015b、CRC-015c、CRC-015d、CRC-015e、CRC-015f、およびCRC-015gの各々を意味する。
【0058】
(I.薬剤放出層を有するバルーン表面の製剤および被膜)
(薬物放出層製剤第1)
水溶性の血清タンパク質20%を含む水溶液を調製する。バルーンカテーテルをその溶液に浸漬し、ある期間そのまま放置する。表面に結合した放出薬はプライマー層として知られるが、周囲温度で24時間未満乾燥させる。
【0059】
プライマー層の血清タンパク質は、水溶性であり、(その後被覆される薬剤層のための)バルーン放出物質、並びに組織標的物質の二重目的を実行する。後者は、バルーンが目的の標的部位に配置されると生じ、薬剤は、拡散動力学効果、並びにプライマー層に使用される血清蛋白質関連の特定のEPR代謝機能を通して放出される。
【0060】
(II.複数部分薬剤層を有するバルーン表面の製剤および被膜)
複数部分薬剤層は、薬剤を含む第一部分と脂質賦形剤を含む第二部分との二つの部分を有するように製剤される。複数部分薬剤層の第一部分の薬剤は、大環状トリエン免疫抑制化合物である。複数部分薬剤層の第二部分の賦形剤は、ポリマーフリーの飽和または不飽和脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒドである。
【0061】
薬剤層製剤の特定の例(製剤番号番号1~20)
【0062】
1.6.25mgの1-ヘキサデカノール(CAS36653-82-4、アルドリッチ社)を10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ヘキサデカノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0063】
2.6.25mgの1-オクタデカノール(CAS112-92-5、アルドリッチ社)を10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-オクタデカノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0064】
3.6.25mgの1-ヘキサデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのクロロホルムを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ヘキサデカノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0065】
4.6.25mgの1-ヘキサデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのt-ブチルメチルエーテルを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ヘキサデカノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0066】
5.4.6.25mgの1-ヘキサデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLの1-クロロブタンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ヘキサデカノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0067】
6.6.25mgの1-ドコサノール(CAS30303-65-2、アルドリッチ社)を10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのクロロホルムまたは5mLのt-ブチルエーテルを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ドコサノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0068】
7.6.25mgの1-ドコサノール(CAS57402-36-5、マトリックスサイエンティフィック社)を10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのクロロホルムを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ドコサノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0069】
8.6.25mgの1-テトラデカノール(CAS112-72-1、アルドリッチ社)を10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-テトラデカノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0070】
9.6.25mgの1-エイコサノール(CAS57402-36-5、TCI社)を10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのクロロホルムを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-エイコサノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0071】
10.6.25mgの1-ヘキサデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ヘキサデカノールと表示した。6.25mgのエベロリムスを3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0072】
11.6.25mgの1-ヘキサデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ヘキサデカノールと表示した。6.25mgのシロリムスを3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0073】
12.6.25mgの1-ヘキサデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ヘキサデカノールと表示した。6.25mgのバイオリムスを3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0074】
13.6.25mgの1-ドコサノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ドコサノールと表示した。6.25mgのシロリムスを3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0075】
14.6.25mgの1-テトラデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-テトラデカノールと表示した。6.25mgのゾタロリムスを3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0076】
15.6.25mgの1-ヘキサデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-ヘキサデカノールと表示した。6.25mgのパクリタキセルを3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0077】
16.12.50mgの1-オクタデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのアセトンを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを2.5mg/mLSTOCK1-オクタデカノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0078】
17.12.50mgのペンタデカノールを10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのクロロホルムを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを2.5mg/mLSTOCKペンタデカノールと表示した。6.25mgのCRC-015を3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0079】
18.6.25mgの1-トリアコンタノール(CAS593-50-0、アルドリッチ社)を10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのクロロホルムを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK1-トリアコンタノールと表示した。6.25mgのドセタキセルを3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0080】
19.6.25mgの12-ヒドロキシステアリルアルコール(CAS2726-73-0、アルドリッチ社)を10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのt-ブチルメチルエーテルを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCK12-ヒドロキシステアリルアルコールと表示した。6.25mgのシロリムスを3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0081】
20.6.25mgのオレイルアルコール(CAS143-28-2、アルドリッチ社)を10mLのガラスバイアルに量り取り、5mLのクロロホルムを添加した。バイアルをPTFEパッキンで蓋をした。固形物が溶解するまで該溶液をボルテックスした。これを1.25mg/mLSTOCKオレイルアルコールと表示した。6.25mgのパクリタキセルを3mLのガラスバイアルに量り取り、1mLのSTOCK液を添加した。バイアルに蓋をし、固形物が溶解するまで溶液をボルテックスした。この製剤は装置の被覆に使用可能である。
【0082】
本明細書でCRC015として知られる特定の大環状トリエン免疫抑制化合物は、ポリマーフリー賦形剤と共に、噴霧被膜により、既に適用済みのプライマー層を有するバルーンカテーテルの表面に直接適用することにより製剤した。飽和脂肪アルコールを容易に可溶化させるため、並びに噴霧被膜の前にCRC015との製剤を調整するため、可溶化剤を使用した。
【0083】
プライマー層の上に噴霧被膜された複数部分薬剤層を有するバルーンカテーテルを、真空中40℃で乾燥させた。
【0084】
(III.インビボ組織取り込み評価における、CRC-015被膜バルーンの薬剤送達および移送メカニズム)
前臨床試験中、CRC015がインビボでプライマー層の血清蛋白質(配列番号1)に高濃度で結合することが判明した。プライマー層の血清蛋白質は高い水溶性を示す一方、CRC015が高い親油性を示すことも分かった。従って、装置送達中におけるプライマー層への有害な影響に対するCRC015の保護的性質に関する試験が行われた。
【0085】
バルーンカテーテルは、標的組織に達すると該組織に配置され、あるいはそこで膨張し、バルーン表面が標的組織に物理的に接触するようになる。バルーンが配置された後、複数部分薬剤層が割れ、血漿内の水分子がプライマー層と相互作用し、プライマー層はバルーン表面から解離し、結合した薬剤が標的組織から直接運ばれ、長時間に亘って治療速度で溶出を続ける。
【0086】
本発明を用いたインビボ薬剤の取り込みおよび保持は、高コレステロール血症ニュージーランド白ウサギ雌を用いて証明される。アテローム性動脈硬化症の病巣を誘発させるため、ウサギに1%コレステロールプラス6%落花生油の飼料を与えた(BioServe社、Fleming, NJ、製品番号F4366)。ウサギの高コレステロール血症誘発における斯かるタイプの飼料の有効性並びにヒトの発症原因との比較におけるこのモデルの有効性は十分証明済みである(Schwartz et al., J. Am. Coll. Cardiol. 44(7):1373-1385 (2004))。PTCAバルーンカテーテル(直径3.0mm、長さ22.9mm)は1~3atmで膨張させ、ヒト血清アルブミン(シグマ社、A9731)を含む薬剤溶出製剤番号1で浸漬被膜し、周囲温度で24時間乾燥させた。次に、アルブミン被膜バルーンを薬剤層製剤番号6で噴霧被膜し、次にプリーツ加工し、折り畳み、50℃で5分間加熱した。次に、薬剤量5.75μg/mm2を達成するため、折り畳まれたバルーンを更に製剤番号6で噴霧被膜した。薬剤被膜バルーンは、使用前に、40℃で72時間真空乾燥した。ウサギの内皮露出を頸動脈の外科切開により行い、大動脈弓の周りに4F止血シースを配置した。ガイドワイヤを大腿動脈に配置し、3.0x10mmバルーンカテーテルを腸骨動脈遠位端に配置し膨張させた。カテーテルを大動脈腸骨動脈分岐部位に向けて近位方向に引っ張り、次に収縮させた。この技術を更に2回繰り返した。これと同じ技術を反対側の腸骨動脈に関しても行った。次に、通常の飼料を回復ウサギに42日間与えた。この期間の終わりに、調製した薬剤被膜バルーンを処置済みの腸骨動脈の各々に配置し、呼び圧力まで60秒間膨張させ、それから除去した。血管を8日後に採取し、アセトニトリルを用いてバルーン処置部位の組織を抽出した後、LCMSにより薬剤を測定した。結果を以下の表2に示す。
【0087】
【0088】
8日後の組織レベルの濃度は有意であり、本発明の有用性を証明している。
【0089】
更に、上述のインビボ取り込み評価(試験番号1)に基づいて、更なる比較試験を行った。特に、試験番号1に基づき、通常のニュージーランド白ウサギを用い、薬剤量を2.79μg/mm2に減らして、別の試験を行った(試験番号2)。加えて、通常のニュージーランド白ウサギを用い、薬剤層製剤番号1を2.89μg/mm2の量により、試験番号1と類似の試験を最終試験として行った(試験番号3)。比較試験の結果を以下の表3に示す。
【0090】
【0091】
表3に示されるように、本発明の装置による標的組織への薬剤の取り込みは、現在の最新技術の装置と比べ、約8倍増大している。
【0092】
(シロリムス(ラパマイシン)のアルブミン結合)
シロリムスアルブミン結合は以前に報告されている(ラパミューン製品挿入)。CRC015がアルブミンに結合し、シロリムスの結合特性にCRC015が匹敵するか否かを調べるため、生理食塩水中の1.4mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を含む1.485mLの試料に、アセトニトリルに溶解させた15uLのCRC-015またはシロリムスを加え、薬剤の最終濃度を10nMとした。薬剤を添加したBSA溶液を反転により混合し、周囲温度で30分間平衡化させ、薬剤をアルブミン蛋白質へ結合させた。次に、826mgの硫酸アンモニウムを各試料に添加し、その塩が完全に溶解し沈殿物が生じるまで優しく反転して混合した。次に試料を20秒間ボルテックスし、それから7200xgで6.5分間遠心分離した。各試料につき、内標準物質を含む0.750mLのメタノールおよび0.250mLのアセトニトリルを上澄み液および分離した沈殿物の両方に添加した。LCMSにより試料の薬剤容量を調べた。上澄み液の量が結合していない薬剤の量であり、沈殿した量が結合した量を示す。回復実証試験を、BSAなしで、生理食塩水プラス薬剤の溶液を用いて行った。
【0093】
CRC-015またはシロリムスの非結合%および結合%の要約を以下の表4に示す。報告されている値は、4日間のうち各々の日における各試験の平均値である。
【0094】
【0095】
CRC-015は更に高いアルブミンへの結合力を有することが判明した。高いシロリムスアルブミン結合は、以前参照された結果通りである。
【0096】
(被膜技術の比較)
本発明の被膜方法並びにそれに関連する特殊な化合物は、薬剤被膜医療装置すなわちカテーテルにおいて、現在の最新技術とは明確に区別されるものである。現在の最新技術と比較し、この新しいアプローチの主な技術的特長は、カテーテルの配置中、治療用物質がバルーン表面に保持されるのと同時に、標的部位にも該治療用物質が放出されると言う点にある。
【0097】
図2は、カテーテルおよび薬剤被膜バルーンに関する、本発明と現在の最新技術との間の違いを例示したものである。カテーテルAは親油性の青色色素で被膜されたナイロンバルーンであり、CRC-015化合物を模倣するように設計されている(
図2A)。カテーテルBはカテーテルAに使用されているのと類似しているが、最初にヒト血清アルブミンから成る放出層で被膜され、次にカテーテルAに使用されたのと同量の青色色素で被膜されている(
図2B)。両バルーン共、静的0.9%NaCl溶液に懸濁しながら拡張させたものである。カテーテルBは30分後に溶液から除去したが、カテーテルAは24時間浸漬させた。
図2Bに示されるように、疎水性物質の迅速な放出の面で、カテーテルB放出層が極めて有効であることが判明した。
【0098】
本明細書に例示的に記載された発明は、本発明に特に開示されていない任意の要素(複数も可)または制限(複数も可)なしに適切に実施できるものである。従って、「有する」、「例えば」、「含む」などの用語は、限定的ではなく広範囲に解釈されるべきものである。加えて、本発明で使用されている用語および表現は限定的でなく説明目的のためのものであり、従って、斯かる用語および表現は、将来示される/記載される任意の同等物またはその任意の一部を除外するように使用されるべきものではない。請求されている本発明の範囲内において種々の改変が可能である。従って、本発明は好ましい実施形態および任意の特徴によって特に記載されていたとしても、当業者は本明細書記載の発明の改変および修正を行うことができるものであり、斯かる改変および修正も本明細書開示の発明の範囲内に含まれるものと考慮されるべきである。本発明は、本明細書において広範かつ一般的に記載されている。一般的な開示の範囲に収まる狭い種群および亜種群の各々も、本発明の部分を形成するものである。その中には、属から任意の主題を除去した但し書き付き限定または消極的限定を有する各発明の一般的記載も、削除された題材が特にその中に存在するか否かに拘わらず、含まれるものである。
【0099】
加えて、発明の特徴または態様はマーカッシュ群を基準に記載されているが、発明はマーカッシュ群の個々のメンバーまたはサブグループのメンバーによっても記述されていることを当業者は認識するであろう。上述の記述は例示的なものであり制限的なものではないことも理解されるべきである。多くの実施形態が、上述の説明を検討することにより当業者には明白となるであろう。従って、本発明の範囲は、上述の説明を参考にして決定されるべきではなく、添付の請求項並びに斯かる請求項と同等物の内容の全範囲を参考にして決定されるべきである。特許出版物を含む全ての参考文献の開示は、参照として本明細書に援用されるものである。
【0100】
上述の教示に鑑みて、上記された実施例および実施形態の種々の変形および改変が可能であることは、当業者には明らかであろう。開示されている実施例および実施形態は、本明細書開示の一部または全部の特徴を含んでいるかもしれない。従って、斯かる全ての改変および代替実施形態が本発明の真の範囲内に含まれるものである。
【配列表】