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特許7118062リサウイルス抗原を有するチンパンジーアデノウイルス構築物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】リサウイルス抗原を有するチンパンジーアデノウイルス構築物
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20220805BHJP
   C12N 15/47 20060101ALI20220805BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20220805BHJP
   A61K 39/205 20060101ALI20220805BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20220805BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220805BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/47
C12N15/861 Z
A61K39/205
A61K35/761
A61K48/00
A61P31/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019530426
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 IB2017057759
(87)【国際公開番号】W WO2018104919
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】62/432,033
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/465,378
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アメンドラ,ヴァージニア
(72)【発明者】
【氏名】コロカ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッテリ,アレッサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ウィゼル,ベンジャミン
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-523233(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189425(WO,A1)
【文献】特表2011-504751(JP,A)
【文献】Virology,2014年,Vol.450-451, pp.243-249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00-7/08
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
b)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及び
c)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む、組換えアデノウイルスであって、
前記アデノウイルスはリサウイルス抗原をコードする核酸配列を含み、前記核酸配列は宿主細胞において前記リサウイルス抗原の発現を指令する1以上の配列に機能的に連結しており、且つ、前記リサウイルス抗原をコードする核酸配列が、狂犬病ウイルス糖タンパク質(G)に由来する抗原をコードする、
前記組換えアデノウイルス。
【請求項2】
前記組換えアデノウイルスのゲノムが、以下:
a)アデノウイルス5'逆方向末端反復;
b)アデノウイルスEIA領域、又はE1A_280R及びE1A_243R領域から選択されるその断片;
c)アデノウイルスEIB若しくはIX領域、又はE1B_19K、E1B_55K若しくはIX領域から成る群より選択されるその断片;
d)アデノウイルスE2b領域;又はE2B_pTP、E2B_ポリメラーゼ及びE2B_IVa2領域から成る群より選択されるその断片;
e)アデノウイルスL1領域、又はL1_13.6kタンパク質、L1_52k及びL1_IIIaタンパク質から成る群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
f)アデノウイルスL2領域、又はL2_ペントンタンパク質、L2_pVII、L2_V及びL2_pXタンパク質から成る群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
g)アデノウイルスL3領域、又はL3_pVIタンパク質、L3_ヘキソンタンパク質及びL3_プロテアーゼから成る群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
h)アデノウイルスE2A領域;
i)アデノウイルスL4領域、又はL4_100kタンパク質、L4_33kタンパク質及びタンパク質L4_VIIIから成る群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
j)アデノウイルスE3領域、又はE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8及びE3 ORF9から成る群より選択されるその断片;
k)アデノウイルスL5領域、又はL5_ファイバーファイバータンパク質をコードするその断片;
l)アデノウイルスE4領域、又はE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1から成る群より選択されるその断片;
m)アデノウイルス3'-末端;及び/又は
n)アデノウイルスVAI又はVAII RNA領域
の少なくとも1つを含む、請求項1記載の組換えアデノウイルス。
【請求項3】
前記リサウイルス抗原をコードする核酸配列が、モコラウイルス、ドゥベンヘイグウイルス、ヨーロッパコウモリリサウイルス、ヨーロッパコウモリリサウイルス2又はオーストラリアコウモリリサウイルス由来の免疫原をコードする、請求項1又は2記載の組換えアデノウイルス。
【請求項4】
a)前記リサウイルス抗原をコードする核酸配列が、配列番号38に対して少なくとも98.6%同一である;及び/又は
b)前記アデノウイルスが、配列番号3のペントン、配列番号5のヘキソン又は配列番号1のファイバーを含み、且つ前記リサウイルス抗原が、配列番号37に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、
請求項1~3のいずれか1項記載の組換えアデノウイルス。
【請求項5】
複製欠損アデノウイルスである、請求項1~4のいずれか1項記載の組換えアデノウイルス。
【請求項6】
前記アデノウイルスが、
a)E1、E3及び/又はE4遺伝子の機能的不活性化;及び/又は
b)Ad5E4orf6遺伝子置換、
を含む、請求項5記載の組換えアデノウイルス。
【請求項7】
前記アデノウイルスが哺乳動物細胞に感染することができる、請求項1~6のいずれか1項記載の組換えアデノウイルス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の組換えアデノウイルスと薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物。
【請求項9】
アジュバントを含む、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
対象において免疫応答を誘導する方法において使用するための請求項1~7のいずれか1項記載の組換えアデノウイルス又は請求項8又は9記載の組成物であって、前記方法が、前記アデノウイルス又は組成物を対象に投与することを含む、前記組換えアデノウイルス又は組成物。
【請求項11】
前記対象がリサウイルスに感染している、請求項10記載の使用のための組換えアデノウイルス又は組成物。
【請求項12】
前記対象がヒトである、請求項10又は11記載の使用のための組換えアデノウイルス又は組成物。
【請求項13】
前記アデノウイルス3'-末端が、アデノウイルス3'逆方向末端反復である、請求項2記載の組換えアデノウイルス。
【請求項14】
前記アデノウイルスVAI又はVAII RNA領域が、ChAd155以外のアデノウイルス由来のアデノウイルスVAI又はVAII RNA領域である、請求項2記載の組換えアデノウイルス。
【請求項15】
E1、E3及び/又はE4遺伝子の前記機能的不活性化が欠失である、請求項6記載の組換えアデノウイルス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる配列表を含む。2017年12月6日に作成された当該ASCIIコピーはVU66242WO_SL.txtと命名され、サイズは394,117バイトである。
【0002】
発明の分野
本発明は、疾患を寛解し、ウイルス感染を治療及び予防する分野におけるものである。特に、本発明はリサウイルス抗原をコードするチンパンジーアデノウイルスベクターに関する。本発明は、リサウイルス病を寛解し、狂犬病感染を治療及び予防するためのリサウイルス抗原の使用を含む。
【背景技術】
【0003】
リサウイルス(Lyssavirus)は、ラブドウイルス(Rhabdoviridae)科のエンベロープを有する一本鎖RNAウイルスである。リサウイルス属のメンバーは狂犬病を引き起こし、全ての既知のヒトウイルス性病原体の中で最も高い致死率を有する。狂犬病は感染した哺乳動物の唾液を介して伝染する。向神経性ウイルスとして、それはその宿主の神経系に入り、ほぼ常に致死的である脳脊髄炎を引き起こす。現在、世界中で年間約6万人が狂犬病によって死亡しており、アジア及びアフリカの発展途上国ではイヌ咬傷によって、並びに北米では野生生物及びコウモリによって主に引き起こされる。
【0004】
狂犬病は狂暴化または麻痺の形態で現れる。潜伏期間は約5日から数年の間で変わるが、典型的には約20から90日の間である。臨床的症状は、ほとんどの場合、倦怠感、食欲不振、疲労、頭痛及び発熱の前駆症状の訴えから始まり、その後に曝露部位の痛み又異常感覚が続く。不安、興奮又は過敏性がこの期間中に顕著になり得て、その後に多動、見当識障害、痙攣、恐水症、唾液分泌過多、並びに最終的には、麻痺、昏睡及び死亡に至る。
【0005】
アデノウイルスは、様々な標的組織において高効率の遺伝子導入を達成するその能力、及び大きな導入遺伝子収容能力のため、遺伝子導入の用途に広く使用されている。通常、アデノウイルスE1遺伝子は欠失され、選択されたプロモーター、目的の遺伝子のcDNA配列及びポリAシグナルからなる導入遺伝子カセットに置換され、結果として複製欠損組換えウイルスを生じる。
【0006】
組換えアデノウイルスは、遺伝子治療において、またワクチンとして有用である。非ヒトサルアデノウイルスに基づくウイルスベクターは、遺伝子ワクチンの開発のためのヒト由来ベクターの使用の代替手段となる。非ヒトサルから単離された特定のアデノウイルスは、ヒト由来の細胞におけるそれらの効率的な増殖によって証明されるように、ヒトから単離されたアデノウイルスと近縁である。
【0007】
ワクチン抗原を効果的に送達することができるベクターに対する需要がある。具体的には、狂犬病は依然として世界的に重要なウイルス性人畜共通感染症である。予防法は現在利用可能であるが、曝露の前と後の両方で多数回の投与が必要とされ、服薬率は低く、医学的恩恵を減少させる。単純化された投与スケジュール、向上した安全性、及び増強された製造プロファイルを有する改善された狂犬病ワクチンが必要とされている。アデノウイルス製造は、不活性化狂犬病ウイルスに基づく既存のヒト狂犬病ワクチンよりも安全で安価である。したがって、狂犬病ワクチンにおける使用のためのアデノウイルスベクターを開発するという満たされていないニーズがある。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、対象においてリサウイルス病及び狂犬病ウイルス感染に対する免疫応答を誘導するための免疫原性組成物の成分として有用な構築物、治療におけるその使用のための方法、並びにその製造のための方法を提供する。
【0009】
以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、及び
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド
からなる群より選択されるポリペプチドをコードし、リサウイルス抗原をコードする核酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0010】
また、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、その機能的誘導体が配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、ポリヌクレオチド、及び
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる群より選択されるポリヌクレオチドを含み、リサウイルス抗原をコードする核酸配列を含む組換えポリヌクレオチドもまた提供される。
【0011】
また、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、その機能的誘導体が配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、ポリヌクレオチド、及び
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含み、リサウイルス抗原をコードする核酸配列を含む組換えベクターもまた提供される。
【0012】
また、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、その機能的誘導体が配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、ポリヌクレオチド、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(e)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、及び
(f)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド
からなる群より選択される少なくとも1種のポリヌクレオチド又はポリペプチドを含む組換えアデノウイルスであって、該組換えアデノウイルスはリサウイルス抗原をコードする核酸配列を含み、且つ該核酸配列は宿主細胞において前記リサウイルス抗原の発現を指令する1種以上の配列に機能的に連結しているものである、該組換えアデノウイルスもまた提供される。
【0013】
本発明は、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、その機能的誘導体が配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、ポリヌクレオチド、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(e)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、及び
(f)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド
からなる群より選択される1つのポリヌクレオチド又はポリペプチドを含む組換えアデノウイルスであって、該アデノウイルスはリサウイルス抗原をコードする核酸配列を含み、該核酸配列は宿主細胞において前記リサウイルス抗原の発現を指令する1種以上の配列に機能的に連結しているものである、前記組換えアデノウイルスを提供する。
【0014】
また、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、その機能的誘導体が配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、ポリヌクレオチド、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(e)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
(f)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(g)上記の(a)、(b)又は(c)に記載されるようなポリヌクレオチドを含むベクター、及び
(h)上記の(a)、(b)又は(c)に記載されるようなポリヌクレオチドを含む組換えアデノウイルス
の少なくとも1種、及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物であって、該組成物はリサウイルス抗原又はリサウイルス抗原ポリペプチド配列をコードする核酸配列を含み、且つ、場合により、前記核酸配列は宿主細胞において前記リサウイルス抗原の発現を指令する1種以上の配列に機能的に連結しているものである、前記組成物もまた提供される。
【0015】
また、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、その機能的誘導体が配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、ポリヌクレオチド、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(e)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
(f)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(g)上記の(a)、(b)又は(c)に記載されるようなポリヌクレオチドを含むベクター、及び
(h)上記の(a)、(b)又は(c)に記載されるようなポリヌクレオチドを含む組換えアデノウイルス
の少なくとも1種を含む細胞であって、該細胞はリサウイルス抗原をコードする核酸配列を含むアデノウイルスを含み、且つ該核酸配列は宿主細胞において前記リサウイルス抗原の発現を指令する1種以上の配列に機能的に連結しているものである、前記細胞もまた提供される。
【0016】
また、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、及び
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド
からなる群より選択される単離されたアデノウイルスポリペプチドであって、リサウイルス抗原ポリペプチド配列をさらに含むものもまた提供される。
【0017】
また、配列番号6の配列を含み、且つリサウイルス抗原をさらに含む、単離されたポリヌクレオチド、ベクター、組換えアデノウイルス、組成物又は細胞もまた提供される。
【0018】
組換えアデノウイルス及び組成物は、特にリサウイルス病、例えば狂犬病感染症に対する免疫応答の刺激のための、医薬として使用することができる。
【0019】
典型的には、本発明の方法の目的は、防御的免疫応答を誘導すること、すなわち関連病原体に対して対象を免疫化又はワクチン接種することである。したがって、本発明は、狂犬病ウイルスによる感染などの、リサウイルス病による感染に起因する疾患の予防、治療又は寛解のために適用することができる。
【0020】
いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、対象に投与したときに液性及び/又は細胞性免疫応答、すなわち天然に存在するリサウイルスポリペプチドを特異的に認識する免疫応答を誘導する免疫原性組成物である。例えば、免疫原性組成物は、特に組成物がリサウイルス抗原をコードする配列を含む核酸を含む実施形態では、ウイルス感染後に未処置の対象と比較して記憶T細胞集団及び/又はB細胞集団を誘導し得る。
【0021】
本発明は、リサウイルス病によって引き起こされる疾患に対する曝露前予防及び曝露後予防の両方の目的のために提供され得る。いくつかの実施形態では、対象は過去に狂犬病ワクチンを接種されている。本発明のアプローチは、例えば、狂犬病ワクチン接種の少なくとも1年後、狂犬病ワクチン接種の少なくとも2年後、狂犬病ワクチン接種の少なくとも5年後、又は狂犬病ワクチン接種の少なくとも10年後、対象に対して利用することができる。
【0022】
リサウイルス抗原は抗原配列、すなわち少なくとも1つのB又はT細胞エピトープを含むリサウイルスタンパク質由来の配列である。好適には、リサウイルス抗原は少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。本発明の一実施形態では、アデノウイルスは、リサウイルス抗原をコードする核酸配列を含む。本発明の特定の実施形態では、アデノウイルスは、配列番号37に由来するポリペプチドをコードする核酸を含む。本発明の別の特定の実施形態では、アデノウイルスは配列番号38に由来する核酸を含む。
【0023】
本発明の別の実施形態では、アデノウイルスは、配列番号39、配列番号41、配列番号43、又は配列番号45に由来するポリペプチドをコードする核酸を含んでもよい。本発明のさらなる特定の実施形態では、アデノウイルスは、配列番号40、配列番号42、配列番号44、又は配列番号46に由来する核酸を含んでもよい。
【0024】
誘発された免疫応答は、中和抗体を産生する抗原特異的B細胞応答であり得る。誘発された免疫応答は抗原特異的T細胞応答であり得、これは全身性及び/又は局所的応答であり得る。抗原特異的T細胞応答は、CD4+ T細胞応答、例えば複数のサイトカイン、例えばIFNガンマ、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFアルファ)及び/又はIL2を発現するCD4+ T細胞が関与する応答を含み得る。或いは、又は加えて、抗原特異的T細胞応答は、CD8+ T細胞応答、例えば複数のサイトカイン、例えばIFNガンマ、TNFアルファ及び/又はIL2を発現するCD8+ T細胞が関与する応答を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】主要な抗原エピトープを示す狂犬病糖タンパク質の図を示す。図1は、出現する順に、配列番号94、64及び78を開示する。
図2A】示されたサルアデノウイルス由来のファイバータンパク質配列のアラインメントを示す。ChAd3(配列番号27)、PanAd3(配列番号28)、ChAd17(配列番号29)、ChAd19(配列番号30)、ChAd24(配列番号31)、ChAd155(配列番号1)、ChAd11(配列番号32)、ChAd20(配列番号33)、ChAd31(配列番号34)、PanAd1(配列番号35)、PanAd2(配列番号36)を示す。
図2B図2Aの続きである。
図2C図2Bの続きである。
図3】特定のChAd155 BAC及びプラスミドベクターの作製のための流れ図を示す。
図4】C種 BACシャトル #1365の図を示す。
図5】pArsChAd155 Ad5E4orf6-2 (#1490)の図を示す。
図6】pChAd155/RSVの図を示す。
図7】BAC ChAd155/RSVの図を示す。
図8】E4 Ad5E4orf6/TetO hCMV RG WPRE (#1509)の図を示す。
図9】HIV Gag導入遺伝子を発現しているChAd3及びChAd155ベクターの生産性を示す。
図10】RSV導入遺伝子を発現しているChAd155及びPanAd3ベクターの発現レベル(ウェスタンブロット)を示す。
図11】HIV Gag導入遺伝子を発現しているChAd3及びChAd155ベクターの免疫原性(IFN-ガンマ ELISpot)を示す。
図12】RSV導入遺伝子を発現しているPanAd3及びChAd155ベクターの免疫原性(IFN-ガンマ ELISpot)を示す。
図13】マウスにおいて狂犬病Gタンパク質導入遺伝子を発現しているChAd155ベクターの免疫原性((A)抗体中和及び(B)IFN-ガンマ ELISpot)を示す。
図14】狂犬病Gタンパク質導入遺伝子を発現しているChAd155ベクターによって誘導される免疫応答の安定性を示す。
図15】市販のワクチンと比較した、狂犬病Gタンパク質導入遺伝子を発現しているChAd155ベクターの能力を示す。
図16】マウスにおいて狂犬病Gタンパク質導入遺伝子を発現しているChAd155ベクターの陽転率及び防御率を示す。
図17】マウスにおいて狂犬病Gタンパク質導入遺伝子を発現しているChAd155ベクターの陽転率及び防御率を示す。
図18】非ヒト霊長類における狂犬病Gタンパク質導入遺伝子を発現しているChAd155ベクターに対する中和抗体応答を示す。
図19】非ヒト霊長類における狂犬病Gタンパク質導入遺伝子を発現しているChAd155ベクターに対するT細胞応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
配列の説明
配列番号1 - ChAd155ファイバーのポリペプチド配列
配列番号2 - ChAd155ファイバーをコードするポリヌクレオチド配列
配列番号3 - ChAd155ペントンのポリペプチド配列
配列番号4 - ChAd155ペントンをコードするポリヌクレオチド配列
配列番号5 - ChAd155ヘキソンのポリペプチド配列
配列番号6 - ChAd155ヘキソンをコードするポリヌクレオチド配列
配列番号7 - ChAd155#1434をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号8 - ChAd155#1390をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号9 - ChAd155#1375をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号10 - 野生型ChAd155をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号11 - ChAd155/RSVをコードするポリヌクレオチド配列
配列番号12 - CASIプロモーターをコードするポリヌクレオチド配列
配列番号13 - Ad5orf6プライマー1ポリヌクレオチド配列
配列番号14 - Ad5orf6プライマー2ポリヌクレオチド配列
配列番号15 - BAC/CHAd155 ΔE1_TetO hCMV RpsL-Kanaプライマー1ポリヌクレオチド配列
配列番号16 - BAC/CHAd155 ΔE1_TetO hCMV RpsL-Kana (#1375)プライマー2ポリヌクレオチド配列
配列番号17 - 1021-FW E4 Del Step1プライマーポリヌクレオチド配列
配列番号18 - 1022-RW E4 Del Step1プライマーポリヌクレオチド配列
配列番号19 - 1025-FW E4 Del Step2プライマーポリヌクレオチド配列
配列番号20 - 1026-RW E4 Del Step2プライマーポリヌクレオチド配列
配列番号21 - 91-SubMonte FW プライマーポリヌクレオチド配列
配列番号22 - 90-BghPolyA RW プライマーポリヌクレオチド配列
配列番号23 - CMVfor プライマーポリヌクレオチド配列
配列番号24 - CMVrev プライマーポリヌクレオチド配列
配列番号25 - CMVFAM-TAMRA qPCR プローブポリヌクレオチド配列
配列番号26 - ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節因子(WPRE)ポリヌクレオチド配列
配列番号27 - ChAd3のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号28 - PanAd3のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号29 - ChAd17のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号30 - ChAd19のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号31 - ChAd24のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号32 - ChAd11のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号33 - ChAd20のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号34 - ChAd31のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号35 - PanAd1のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号36 - PanAd2のファイバータンパク質のアミノ酸配列
配列番号37 - RGメドイド(medoid)抗原のアミノ酸配列
配列番号38 - RGメドイド抗原のヌクレオチド配列
配列番号39 - RG AA098のアミノ酸配列
配列番号40 - RG AA098の核酸配列
配列番号41 - RG AA0093のアミノ酸配列
配列番号42 - RG AA0093の核酸配列
配列番号43 - RG AA0094のアミノ酸配列
配列番号44 - RG AA0094の核酸配列
配列番号45 - RG AA0095のアミノ酸配列
配列番号46 - RG AA0095の核酸配列
配列番号47 - AdC68rab.gp - ERA株のアミノ酸配列
配列番号48 - AdC68rab.gp - ERA株のヌクレオチド配列
配列番号49 - ポリヒスチジン
配列番号50~63 - 狂犬病Gタンパク質部位IIb抗原エピトープ
配列番号64~77 - 狂犬病Gタンパク質部位I抗原エピトープ
配列番号78~91 - 狂犬病Gタンパク質部位III抗原エピトープ
配列番号92 - pvjTetOhCMV_WPRE_BghPolyAフォワードプライマー
配列番号93 - pvjTetOhCMV_WPRE_BghPolyAリバースプライマー
【0027】
発明の詳細な説明
アデノウイルスベクター
アデノウイルスは、その証明された安全性、様々な標的組織における非常に効率的な遺伝子導入を達成する能力、及び大きな導入遺伝子収容能力のために遺伝子導入用途に広く使用されてきた。本発明において使用するアデノウイルスベクターは、一連の哺乳動物宿主に由来し得る。様々な哺乳動物種に感染する、100を超える異なる血清型のアデノウイルスが単離されている。これらのアデノウイルス血清型は、配列相同性によって、及び赤血球を凝集させるその能力に基づいて、6つの亜属(A~F;BはB1とB2に細分される)に分類されている。
【0028】
一実施形態では、本発明のアデノウイルスベクターは、単にサルアデノウイルスとも呼ばれる非ヒトサルアデノウイルスに由来する。チンパンジー、ボノボ、アカゲザル及びゴリラなどの非ヒトサルから多数のアデノウイルスが単離されており、これらのアデノウイルス由来のベクターはこれらのベクターによってコードされる導入遺伝子に対して強い免疫応答を誘導する(Colloca et al. (2012) Sci. Transl. Med. 4:1-9;Roy et al. (2004) Virol.324: 361-372;Roy et al. (2010) J. of Gene Med. 13:17-25)。非ヒトサルアデノウイルスに基づくベクターの特定の利点には、標的集団におけるこれらのアデノウイルスに対する交差中和抗体の相対的欠如が含まれ、したがってそれらの使用はヒトアデノウイルスに対する既存の免疫を克服する。例えば、特定のチンパンジーアデノウイルスと既存の中和抗体応答との交差反応は、特定の候補ヒトアデノウイルスベクターの場合の35%と比較して、標的集団の2%に存在するのみである。
【0029】
具体的には、アデノウイルスベクターは、非ヒトアデノウイルス、例えばサルアデノウイルス、及び特にチンパンジーアデノウイルス、例えばChAd3、ChAd63、ChAd83、ChAd155、Pan 5、Pan 6、Pan 7(C7とも呼ばれる)又はPan 9に由来してもよく、非ヒトアデノウイルスのファイバー、ペントン又はヘキソンをコードするヌクレオチドを、全体的又は部分的に含み得る。そのような株の例は、WO03/000283、WO2010/086189及びGB1510357.5に記載されており、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、10801 University Boulevard、Manassas、Virginia 20110-2209及び他の供給源からも入手可能である。或いは、アデノウイルスベクターは、PanAd1、PanAd2又はPanAd3などの、ボノボから単離された非ヒトサルアデノウイルスに由来してもよい。本明細書に記載のそのようなベクターの例は、例えばWO2005/071093及びWO2010/086189に見出すことができる。アデノウイルスベクターはまた、WO2013/52799、WO2013/52811及びWO2013/52832に記載されているようにゴリラから単離されたアデノウイルスに由来し得る。
【0030】
アデノウイルスベクターの構造
アデノウイルスは、3つの主要なタンパク質、ヘキソン(II)、ペントンベース(III)及びノブのあるファイバー(IV)を多数の他の微量タンパク質、VI、VIII、IX、IlIa及びIVa2とともに含む正20面体カプシドによる特徴的な形態を有する。ヘキソンは、カプシドの構造成分の大多数を占め、カプシドは240個の三量体ヘキソンカプソメア及び12個のペントンベースで構成される。ヘキソンは、3つの保存されたダブルバレル(double barrel)を有し、一方、その上端は3つのタワー(tower)を有し、それぞれのタワーはカプシドの大部分を形成するそれぞれのサブユニットからのループを含む。ヘキソンの基部はアデノウイルス血清型の間で高度に保存されているが、一方、表面のループは可変である。ペントンは、ファイバーが付着する五量体のベースを形成するもう1つのアデノウイルスカプシドタンパク質である。三量体のファイバータンパク質は、カプシドの12個の頂点のそれぞれでペントンベースから突出しており、ノブのある棒状の構造である。ファイバータンパク質の主な役割は、ノブ領域と細胞受容体との相互作用を介して細胞表面にウイルスカプシドを係留することであり、ファイバーの柔軟なシャフト並びにノブ領域のバリエーションは異なる血清型に特徴的である。
【0031】
アデノウイルスゲノムは、よく特性解析されている。直鎖状の二本鎖DNAは、高塩基性のタンパク質VII及び小ペプチドpX(muとも呼ばれる)と結合している。別のタンパク質、Vは、このDNA-タンパク質複合体とともにパッケージングされ、タンパク質VIを介してカプシドとの構造的結合を提供する。特定のオープンリーディングフレームに関して、アデノウイルスゲノムの全体構造には全般的保存性があり、例えばそれぞれのウイルスのE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4及びL5遺伝子の位置は同様に配置されている。アデノウイルスゲノムのそれぞれの末端は、逆方向末端反復(ITR)として知られる配列を含み、これはウイルス複製に必要である。アデノウイルスゲノムの5'末端は、パッケージング及び複製に必要な5'シスエレメント、すなわち5'ITR配列(複製起点として機能する)及び天然5'パッケージングエンハンサードメイン(直鎖状アデノウイルスゲノムをパッケージングするのに必要な配列及びE1プロモーターのためのエンハンサーエレメントを含む)を含む。アデノウイルスゲノムの3'末端はパッケージング及びカプシド形成に必要な3'シスエレメント(ITRを含む)を含む。ウイルスはまた、ウイルスにコードされたプロテアーゼを包含し、これは感染性ビリオンを生じるために必要ないくつかの構造タンパク質をプロセシングするために必要である。
【0032】
アデノウイルスゲノムの構造は、宿主細胞の形質導入後にウイルス遺伝子が発現する順序に基づいて表される。より詳細には、ウイルス遺伝子は、転写がDNA複製の開始前に起こるか、又は開始後に起こるかによって、初期(E)又は後期(L)遺伝子と呼ばれる。形質導入の初期には、アデノウイルスのE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4遺伝子が発現して、宿主細胞にウイルス複製の準備をさせる。感染の後期には、ウイルス粒子の構造成分をコードする後期遺伝子L1~L5の発現が活性化される。
【0033】
アデノウイルスカプシドタンパク質とそれをコードするポリヌクレオチド
上記に概説されたように、アデノウイルスカプシドは、3つの主要なタンパク質、ヘキソン、ペントン及びファイバーを含む。ヘキソンは、カプシドの構造成分の大多数を占め、カプシドは240個の三量体ヘキソンカプソメア及び12個のペントンベースで構成される。ヘキソンは、3つの保存されたダブルバレル(double barrel)を有し、一方、その上端は3つのタワー(tower)を有し、それぞれのタワーはカプシドの大部分を形成するそれぞれのサブユニットからのループを含む。ヘキソンの基部はアデノウイルス血清型の間で高度に保存されているが、一方、表面のループは可変である。
【0034】
ペントンは、ファイバーが付着する五量体のベースを形成するもう1つのアデノウイルスカプシドタンパク質である。三量体のファイバータンパク質は、カプシドの12個の頂点のそれぞれでペントンベースから突出しており、ノブのある棒状の構造である。他のほとんどの正20面体ウイルスのそれと比較したアデノウイルスカプシドの表面の顕著な違いは、長く細いファイバータンパク質の存在である。ファイバータンパク質の主な役割は、その細胞受容体との相互作用を介して細胞表面にウイルスカプシドを係留することである。
【0035】
多くのアデノウイルス血清型のファイバータンパク質は、共通の構造、すなわち、N-末端のテール(tail)、反復配列で作られた中央のシャフト(shaft)、及びC-末端の球状のノブドメイン(又は「ヘッド(head)」)を共有している。中央のシャフトドメインは、様々な数のベータリピートからなる。ベータリピートは結び付いて、非常に固く安定した3本の撚り合わさったらせん状のストランド(strand)の伸長構造を形成する。シャフトは、N-末端のテールを球状のノブ構造とつなぎ、ノブ構造は標的細胞受容体との相互作用に関与する。アデノウイルスノブドメインの球状の性質は、側面及び先端方向に受容体を結合するための広い表面を与える。この構造の効果は、受容体結合部位をウイルスカプシドから遠く突出させることであり、その結果、比較的平坦なカプシド表面によって与えられる立体障害からウイルスを解放している。
【0036】
多くのアデノウイルス血清型のファイバーは同じ全体構造を有するが、それらは、それらの機能並びに構造に影響を与える様々なアミノ酸配列を有する。例えば、ファイバーノブの表面上の多くの露出した領域は、容易に適応できる受容体結合部位を与える。ファイバーノブの球状の形は、受容体がノブの側面又はファイバーノブの上端に結合することを可能にする。これらの結合部位は通常、ヒトアデノウイルス間での保存性に乏しいベータストランドにつながっている表面に露出したループにある。これらのループ上の露出した側鎖は、その三次構造及び四次構造を保ちながら、ノブに様々な表面特性を与える。例えば、ノブ表面での静電ポテンシャル及び電荷分布は、アデノウイルス「Ad」8、Ad 19、及びAd 37でのpI約9からサブグループBアデノウイルスでのpI約5まで、ファイバーのノブ配列における幅広い等電点によって変化し得る。構造的に複雑なウイルスリガンドとして、ファイバータンパク質は、ウイルスカプシドから多くの方向及び距離(シャフト)で様々な結合表面(ノブ)の提示を可能にする。
【0037】
いくつかの血清型の間で最も明らかな変異の1つは、ファイバーの長さである。研究によって、ファイバーのシャフトの長さは、ノブ及びウイルスのその標的受容体との相互作用に強い影響を及ぼすことが示された。更に、血清型の間でファイバータンパク質はまた、それらの折れ曲がる能力の点でも異なり得る。シャフトのベータリピートは非常に安定で不変の構造を形成するが、電子顕微鏡(EM)観察は、ファイバー中に異なるヒンジ(hinge)を示した。いくつかのアデノウイルス血清型ファイバーからのタンパク質配列の解析は、N-末端のテールから3番目のベータリピートでシャフトの反復配列中での中断を示し、これは、EMによって見られるような、シャフト中のヒンジの1つと強い相関がある。ファイバー中のヒンジはノブがウイルスカプシドに対して様々な方向をとることを可能にし、これは、ノブ上の受容体結合部位の的確な提示を必要としている受容体連結への立体障害を回避し得る。例えば、サブグループD Adの硬いファイバーは、それら自体が曲がることはできないため、ウイルス付着のために柔軟な受容体又は前に配置される部分(one prepositioned)を必要とする。
【0038】
異なるAd血清型に特異的な細胞受容体の同定及びそれらがどのように組織親和性に寄与するかの知見は、ファイバーの偽型化技術(pseudotyping technology)の使用によって達成されている。いくつかのサブグループのAdは、一次受容体としてコクサッキーウイルス(Coxsackievirus)及びアデノウイルス受容体(「CAR」)を使用するが、多くのAdは別の一次受容体を使用しており、in vitro及びin vivoにおいて大きく異なる親和性をもたらしていることが明らかになってきている。これらの血清型のファイバーは、ファイバーのノブ内の正味電荷の違いとともに、ファイバーシャフトの剛性、ファイバーシャフトの長さ、並びにCAR結合部位及び/又は推定HSPG結合モチーフの欠如などの、一次構造並びに三次構造における明らかな違いを示す。別のファイバーシャフト及びノブによるAd 5粒子の偽型化は、その結果、重要な細胞結合ドメインを除去する機会を与え、加えて、Ad 5によって達成されるそれと比較して、規定の細胞型へのより効率的(且つ、より細胞選択的な可能性のある)導入遺伝子送達を可能にし得る。使用されるファイバーがヒト又は実験モデルにおいて、より低い血清陽性率を有するAdに由来する場合、ファイバーを偽型化したAd粒子の中和もまた減少させることができ、これは、ベクターの投与の成功に都合のよい状況である。更に、ヘキソン又はペントン単独ではなく、完全長のファイバー並びに単離されたファイバーのノブ領域は、樹状細胞の成熟を誘導することができ、強力なCD8+ T細胞応答の誘導と関連する。総合すると、アデノウイルスファイバーは、少なくともアデノウイルスベクターの受容体結合及び免疫原性において重要な役割を果たす。
【0039】
「低い血清陽性率」とは、ヒトアデノウイルス5(Ad5)と比較して低い既存の中和抗体レベルを有することを意味し得る。同様に、又は、その代わりに、「低い血清陽性率」とは、約20%より低い血清陽性率、約15%より低い血清陽性率、約10%より低い血清陽性率、約5%より低い血清陽性率、約4%より低い血清陽性率、約3%より低い血清陽性率、約2%より低い血清陽性率、約1%より低い血清陽性率又は検出不可能な血清陽性率を意味し得る。血清陽性率は、Aste-Amezagaら、Hum. Gene Ther. (2004) 15(3):293-304に記載されるような方法を用いて、臨床的に意義のある中和力価(50%中和力価>200と定義される)を有する個体のパーセンテージとして測定され得る。
【0040】
図1に示されるアラインメントは、グループCサルアデノウイルスのファイバータンパク質間の違いを図示している。顕著な特徴は、これらのアデノウイルスのファイバー配列が、ChAd155のように長いファイバーを持つもの、又はChAd3のように短いファイバーを持つものに大別され得ることである。この長さの違いは、長いファイバーに対して短いファイバーの約321の位置での36アミノ酸の欠失による。加えて、短いファイバーと長いファイバーサブグループとの間で異なり、更に各サブグループ内で一致している、多数のアミノ酸置換がある。これらの違いの正確な機能はまだ解明されていないが、ファイバーの機能及び免疫原性を考えると、それらは重要である可能性が高い。ウイルス親和性の決定要因の1つはファイバーシャフトの長さであることが示されている。より短いシャフトを有するAd5ベクターは、CAR受容体に対するより低い結合効率及びより低い感染性を有することが実証されている。この機能障害は、細胞受容体への効率の低い付着をもたらす、より短いファイバーの剛性の増加の結果であると推測されている。これらの研究は、前述のより短いシャフトを有するファイバーを持つChAd3及びPanAd3と比較して、より長くより柔軟なファイバーを持つChAd155の改善された特性を説明し得る。
【0041】
本発明の1つの態様では、チンパンジーアデノウイルスChAd155の単離されたファイバー、ペントン及びヘキソンカプシドポリペプチド、並びにチンパンジーアデノウイルスChAd155のファイバー、ペントン及びヘキソンカプシドポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。「単離された」ポリヌクレオチドとは、その本来の環境から取り出されたものである。例えば、天然のポリヌクレオチドは、それが天然の系において共存する物質の一部又はすべてから分離された場合、単離されている。ポリヌクレオチドは、例えば、それが天然の環境の一部ではないベクターにクローニングされた場合、又はそれがcDNA中に含まれる場合、単離されていると考えられる。
【0042】
3つのすべてのカプシドタンパク質は、低い血清陽性率に寄与することが期待され、従って、既存の中和抗体に対するアデノウイルスの親和性を抑制するため、例えば、低い血清陽性率を有する組換えアデノウイルスを製造するために、互いに独立して、又は組み合わせて使用され得る。このような組換えアデノウイルスは、少なくともChAd155由来のファイバータンパク質を有する、異なる血清型由来のカプシドタンパク質を有するキメラアデノウイルスであり得る。
【0043】
導入遺伝子
アデノウイルスベクターは、所望のRNA又はタンパク質配列、例えば異種配列配列をインビボ発現のために送達するために使用され得る。ベクターは、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、プラスミド、又はウイルスを含む任意の遺伝因子を含み得る。このようなベクターは、本明細書に開示されるようなChAd155のDNA及び発現カセットを含む。「発現カセット」(又は「ミニ遺伝子」)とは、選択された異種遺伝子(「導入遺伝子」)並びに宿主細胞において遺伝子産物の翻訳、転写及び/又は発現を行うために必要な他の調節因子の組合せを意味する。
【0044】
通常、「異種の」とは、比較されている存在物の他の部分と遺伝子型で識別可能な存在物に由来することを意味する。異種核酸配列とは、天然に存在するアデノウイルスベクターの核酸配列から単離されない、それに由来しない、又はそれに基づかない任意の核酸配列を指す。「天然に存在する」とは、天然に見出される、合成によって作られていない、又は改変されていない配列を意味する。配列は、適切には起源遺伝子の正常な機能を破壊しないように、ある起源から単離されるが、(例えば、欠失、置換(突然変異)、挿入、又は他の変更によって)改変されている場合、起源に「由来」する。
【0045】
通常、アデノウイルスベクターは、発現カセットが、選択されたアデノウイルス遺伝子本来の領域に他のアデノウイルス配列を含む核酸分子中に位置するように設計される。発現カセットは、既存遺伝子領域内に挿入されて、必要であれば、その領域の機能を破壊し得る。或いは、発現カセットは、部分的に又は完全に欠失しているアデノウイルス遺伝子の部位に挿入され得る。例えば、発現カセットは、E1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4からなる群より選択されるゲノム領域の少なくとも1種の遺伝子の機能を失わせる変異、挿入又は欠失の部位に位置し得る。「機能を失わせる」という用語は、遺伝子領域がもはや機能的な遺伝子発現の産物を産生できないように、十分な量の遺伝子領域が除去される、又は他の方法で破壊されることを意味する。必要であれば、遺伝子領域全体が除去され得る(そして適切には発現カセットで置換される)。適切には、アデノウイルスのE1遺伝子は欠失しており、選択されたプロモーター、目的の遺伝子のcDNA配列、及びポリAシグナルからなる発現カセットに置換され、結果として複製欠損組換えウイルスを生じる。
【0046】
アデノウイルスベクターにコードされる導入遺伝子は、生物学及び医学において有用な産物、例えば、1つ以上の治療用又は免疫原性のタンパク質若しくはタンパク質(複数)、RNA又は酵素をコードする配列である。望ましいRNA分子は、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、RNAアプタマー及びアンチセンスRNAを含む。有用なRNA配列の一例は、処理された動物において標的核酸配列の発現を消去する配列である。
【0047】
導入遺伝子は、その導入遺伝子と隣接しているベクター配列に対して異種の、目的のタンパク質をコードする核酸配列である。核酸コード配列は、導入遺伝子の宿主細胞内での転写、翻訳、及び/又は発現を可能にするように、調節成分と機能的に連結している。
【0048】
導入遺伝子は、疾患の治療、回復若しくは予防のために、免疫応答の誘導のために、及び/又は予防ワクチンの目的のために使用されるポリペプチド又はタンパク質をコードしてもよい。本明細書で用いられる場合、免疫応答の誘導とは、「抗原」又は「免疫原」としても知られるタンパク質の、そのタンパク質に対してT細胞性の、及び/又は液性の免疫応答を誘導する能力をいう。
【0049】
ヒト又は非ヒト動物に他の病原体に対する免疫を与えるために有用な、本発明のベクターによって発現される免疫原は、例えば、ヒト及び非ヒト脊椎動物に感染する細菌、菌類、寄生性微生物又は多細胞性寄生生物を含む、又は癌細胞若しくは腫瘍細胞に由来する。例えば、免疫原は、様々なウイルスの科より選択され得る。一実施形態では、免疫原は、リサウイルス、例えばモコラウイルス(Mokola virus)、ドゥベンヘイグウイルス(Duvenhage virus)、ヨーロッパコウモリリサウイルス、ヨーロッパコウモリリサウイルス2、及びオーストラリアコウモリリサウイルスに由来する。一実施形態では、リサウイルス免疫原は、狂犬病ウイルスに由来し、例えば、CVS11株、CVS-N2C株、Evelyn Rokitniki Abelseth(ERA)株、Flury株、Pitman Moore株又はWistar株に由来する。そのような抗原は、狂犬病ウイルス糖タンパク質(G)、RNAポリメラーゼ(L)、マトリックスタンパク質(M)、ヌクレオタンパク質(N)及びリンタンパク質(P)に由来してもよく、例えば狂犬病ウイルス糖タンパク質(G)、RNAポリメラーゼ(L)、マトリックスタンパク質(M)、ヌクレオタンパク質(N)及びリンタンパク質(P)が挙げられ、又はそれらの断片が挙げられる(適切には、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、又は少なくとも600アミノ酸の断片)。
【0050】
一実施形態では、本発明のベクターによって発現される免疫原は、モコラウイルス、ドゥベンヘイグウイルス、ヨーロッパコウモリリサウイルス、ヨーロッパコウモリリサウイルス2、及びオーストラリアコウモリリサウイルスの糖タンパク質の全体又は断片、適切には少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、又は少なくとも500アミノ酸の断片を含む。一実施形態では、本発明のベクターによって発現される免疫原は、狂犬病ウイルス由来の、例えばCVS11株、CVS-N2C株、Evelyn Rokitniki Abelseth(ERA)株、Flury株、Pitman Moore株又はWistar株由来の糖タンパク質の全体又は断片、適切には少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、又は少なくとも500アミノ酸の断片を含む。一実施形態では、本発明のベクターによって発現される免疫原は、配列番号37の全体又は断片、適切には少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、又は少なくとも500アミノ酸の断片を含む。
【0051】
一実施形態では、本発明のベクターによって発現される免疫原は、表1に示されている抗原エピトープの1つ以上を含む。一実施形態では、本発明のベクターによって発現される免疫原は、狂犬病ウイルス株RABV、ABLV、ARAV、BBLV、DUVV、EBLV-1、EBLV-2、IRKV、KHUV、LBV、MOKV、SHIV、WCBV又はIKOVの部位I、部位IIa、部位IIb、部位III、部位IV及び/又は部位aに対応するエピトープを含む。特定の実施形態では、本発明のベクターは配列番号37に見出される部位I、部位IIa、部位IIb、部位III、部位IV及び/又は部位aに対応するエピトープを含む。
【0052】
一実施形態では、ワクチン構築物の交叉防御範囲は、抗原のメドイド配列を含めることによって増大させることができる。「メドイド(medoid)」とは、他のリサウイルス配列に対して最小限の非類似性を有するリサウイルス配列を意味する。特定の実施形態では、本発明のベクターはG糖たんぱく質のメドイド配列を含む。特定の実施形態では、本発明の非ヒト霊長類ベクターは、G糖タンパク質のメドイド配列を含む。特定の実施形態では、本発明のChAd155ベクターは、G糖タンパク質のメドイド配列を含む。特定の実施形態では、メドイド配列は、NCBIデータベースにおいて注釈された全てのGタンパク質配列の中でアミノ酸同一性の平均のパーセントが最も高い天然ウイルス株に由来する。特定の実施形態では、G糖タンパク質のメドイド配列はNCBI株AGN94271である。
【0053】
或いは、又は加えて、導入遺伝子配列は、リポーター配列を含んでもよく、それは発現時に検出可能なシグナルを生じる。このようなリポーター配列は、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリフォスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えばCD2、CD4、CD8、インフルエンザ血球凝集素タンパク質を含む膜結合タンパク質、及びそれに対する高親和性抗体が存在する、又は従来の方法によって産生され得る、当技術分野においてよく知られている他のタンパク質、及び特に血球凝集素若しくはMyc由来の抗原タグドメインに適切に融合された膜結合タンパク質を含む融合タンパク質、をコードするDNA配列を含むが、それらに限定されない。これらのコード配列は、それらの発現を行わせる調節因子と連結している場合、従来の方法によって検出可能なシグナルをもたらし、それらの方法は、酵素アッセイ、放射線アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイ又は他の分光アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、並びに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫測定(RIA)及び免疫組織化学などの免疫アッセイを含む。
【0054】
導入遺伝子に加えて、発現カセットはまた、アデノウイルスベクターでトランスフェクトされた細胞での、その転写、翻訳及び/又は発現を可能にするように、導入遺伝子に機能的に連結している従来の制御因子をも含む。本明細書において用いられる場合、「機能的に連結している」配列は、目的の遺伝子と隣接している発現制御配列、及びトランスで又は距離を置いて目的の遺伝子を制御するように作用する発現制御配列の両方を含む。
【0055】
発現制御配列は、適切な転写開始配列、終止配列、プロモーター及びエンハンサー配列;効果的なRNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシングシグナル及びウサギベータ-グロビンpolyAを含むポリアデニル化(poly A)シグナルなど;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を向上させる配列(例えば、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を向上させる配列;並びに必要であれば、コードされる産物の分泌を促進する配列を含む。他の配列の中でも特に、キメライントロン(chimeric intron)が使用され得る。
【0056】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼの結合を可能にし、遺伝子の転写を指示するヌクレオチド配列である。通常、プロモーターは、遺伝子の転写開始部位に近接した遺伝子の5'非コード領域に位置する。転写開始において機能するプロモーター内の配列因子はしばしば、コンセンサスヌクレオチド配列によって特徴付けられる。プロモーターの例は、細菌、酵母、植物、ウイルス、及び哺乳動物(ヒトを含む)由来のプロモーターを含むがそれらに限定されない。内部プロモーター、天然のプロモーター、構成的プロモーター、誘導性プロモーター及び/又は組織特異的プロモーターを含む非常に多くの発現制御配列が当技術分野において知られており、利用され得る。
【0057】
構成的プロモーターの例は、TBGプロモーター、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター(任意選択でエンハンサーを含む)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択でCMVエンハンサーを含む、例えば、Boshartら、Cell, 41:521-530 (1985)参照)、CASIプロモーター(WO2012/115980)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1aプロモーター(Invitrogen)を含むが、それらに限定されない。
【0058】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外から供給される化合物、温度などの環境要因、又は例えば、急性期、細胞の特定の分化状態、若しくは複製している細胞のみにおいてなどの特定の生理状態の存在によって調節され得る。誘導性プロモーター及び誘導系は、Invitrogen、Clontech及びAriadを含むがそれらに限定されない様々な商業的供給源から入手可能である。多くの他の系が記載されており、当業者によって容易に選択され得る。例えば、誘導性プロモーターは、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター及びデキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーターを含む。他の誘導系は、T7ポリメラーゼプロモーター系;エクジソン昆虫プロモーター、テトラサイクリン抑制系、及びテトラサイクリン誘導系を含む。他の系は、FK506二量体、カストラジオール(castradiol)を用いるVP16又はp65、ジフェノールムリスレロン(diphenol murislerone)、RU486誘導系並びにラパマイシン誘導系を含む。いくつかの誘導性プロモーターの有効性は時間とともに増大する。このような場合、複数のリプレッサーをタンデムに挿入すること(例えば、IRESによってTetRに連結されたTetR)によって、このような系の有効性を向上させ得る。
【0059】
別の実施形態では、導入遺伝子の天然のプロモーターが使用され得る。導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣することが望ましい場合、天然のプロモーターが好まれ得る。天然のプロモーターは、導入遺伝子の発現が、時間的に若しくは発達上、又は組織特異的に、又は特定の転写刺激に応答して調節されなければならない時に使用され得る。更なる実施形態では、エンハンサー因子、ポリアデニル化部位又はコザックコンセンサス配列などの他の天然の発現制御因子もまた、天然の発現を模倣するために使用され得る。
【0060】
導入遺伝子は、組織特異的プロモーターに機能的に連結され得る。例えば、骨格筋での発現が望ましい場合、筋肉で活性のあるプロモーターが用いられるべきである。これらは、骨格β-アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼをコードする遺伝子由来のプロモーター、並びに天然に存在するプロモーターより高い活性を有する合成筋肉プロモーターを含む。組織特異的なプロモーターの例は、数ある中でも、肝臓(B型肝炎ウイルスコアプロモーター、α-フェトプロテイン、骨オステオカルシン;骨シアロタンパク質、リンパ球、免疫グロブリン重鎖;T細胞受容体鎖)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子、及びニューロン特異的vgf遺伝子などのニューロンで知られている。
【0061】
いくつかの実施形態では、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節因子(WPRE)(Zuffreyら(1999) J Virol; 73(4):2886-9)が導入遺伝子に機能的に連結され得る。
【0062】
導入遺伝子は、例えば、ワクチンとして、免疫応答の誘導のため、及び/又は予防ワクチンの目的のために使用され得る。本明細書において用いられる場合、免疫応答の誘導とは、タンパク質に対するT細胞及び/又は液性免疫応答を誘導するタンパク質の能力を指す。
【0063】
アデノウイルスベクターの構築
アデノウイルスベクターは、異種遺伝子を発現するように、及び/又は不必要なアデノウイルス配列を欠失させるか若しくは不活性化するように野生型アデノウイルスを改変することによって作製される。アデノウイルスベクターはまた改変された複製能力を有し得る。例えば、ベクターは、野生型ウイルスと比較して、非補完細胞ではそれが複製する能力が低下するように、複製欠損であるか又は限定された複製を有するものであってもよい。これは、ウイルスを突然変異させることによって、例えば、複製に関与する遺伝子を欠失させることによって、例えばE1A、E1B、E3又はE4遺伝子を欠失させることによって、もたらされ得る。
【0064】
本発明によるアデノウイルスベクターは機能的E1欠失を含んでもよい。したがって、本発明によるアデノウイルスベクターは、アデノウイルスE1A及び/又はE1Bを発現する能力がないために複製欠損であってもよい。組換えアデノウイルスはまた、他の遺伝子に機能的な欠失、例えばE3又はE4遺伝子に欠失を有してもよい。アデノウイルス遅延性初期遺伝子(delayed early gene)E3は、組換えウイルスの一部を形成するアデノウイルス配列から除去されてもよい。E3の機能は組換えアデノウイルス粒子の産生には必要ではない。したがって、本発明において有用な組換えアデノウイルスをパッケージングするためにこの遺伝子産物の機能を置き換える必要はない。1つの特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは機能的に欠失したE1及びE3遺伝子を有する。そのようなベクターの構築はRoy et al, Human Gene Therapy 15:519-530, 2004に記載されている。
【0065】
E4遺伝子の機能的欠失を有する組換えアデノウイルスも構築することができる。特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、Colloca et al. (2012) Sci. Transl. Med. 4:1-9; Roy et al. (2004) Virol.324: 361-372に記載されているように機能的に欠失したE1及びE4遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、E4 ORF6機能を保持することが望ましい場合がある。一実施形態では、E4 ORF6領域は、ヒトアデノウイルス5(Ad5)などに由来する異種のE4 ORF6によって置き換えられてもよい。したがって、1つの特定の実施形態において、アデノウイルスベクターはE1に機能的な欠失を有しており、Ad5由来のE4 ORF6領域を有してもよい。本発明によるアデノウイルスベクターはまた、遅延性初期遺伝子(delayed early gene)E2aにおいて機能的欠失を含み得る。欠失はまた、アデノウイルスゲノムの後期遺伝子L1からL5のいずれかにおいてなされ得る。同様に、中間遺伝子(intermediate gene)IX及びIVaにおける欠失も有用であり得る。
【0066】
他の欠失は、他のアデノウイルス構造遺伝子又は非構造遺伝子に作られ得る。上記の欠失は個別に使用されてもよく、例えば、本発明において使用されるアデノウイルス配列は、E1のみの欠失を含んでもよい。或いは、それらの生物学的活性を破壊するのに有効な遺伝子全体又はその一部の欠失は、任意の組合せで使用され得る。例えば、1つの例示的なベクターでは、アデノウイルス配列は、E3の欠失の有無などに関わらず、E1遺伝子及びE4遺伝子の欠失、又はE1、E2a及びE3遺伝子の欠失、又はE1及びE3遺伝子の欠失(例えば、E1a及びE1bにおける機能的欠失、少なくともE3の一部の欠失)、又はE1、E2a及びE4遺伝子の欠失を有し得る。このような欠失は、これらの遺伝子の部分的な、又は完全な欠失であり得て、望ましい結果を達成するために、温度感受性変異のような他の変異と組み合わせて使用され得る。
【0067】
これらのベクターは、当業者にとって既知の技術を用いて作製される。このような技術は、文献に記載されるものなどの従来のcDNAのクローニング技術、アデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応、及び所望のヌクレオチド配列を提供する任意の適切な方法を含む。特に好適な方法として、Colloca et al. (2012) Sci. Transl. Med. 4:1-9、Roy et al. (2004) Virol.324: 361-372、Roy et al. (2010) J. of Gene Med. 13:17-25及びWO2010/085984において提供されるものなどの標準的な相同組換え法、又はWarming et al. Nuc. Acids Res. (2005) 33:e36に記載されるようなリコンビニアリング(recombineering)法が挙げられる。
【0068】
アデノウイルスベクターの作製
アデノウイルスベクターは、ウイルスが複製することができる任意の適切な細胞株で作製することができる。特に、ウイルスベクターが欠いており、その複製欠損性質をもたらす因子(例えばE1など)を提供する補完細胞株を使用することができる。限定はしないが、そのような細胞株は、数ある中でも、HeLa (ATCCアクセッション番号CCL 2)、A549(ATCC寄託番号CCL 185)、HEK 293、KB(CCL 17)、Detroit(例えば、Detroit 510、CCL 72)及びWI-38(CCL 75)細胞であり得る。これらの細胞株はすべて、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209, USAから入手可能である。他の適切な親細胞株、例えばPGK-E1網膜芽細胞腫、例えばCentre for Applied Microbiology and Research (CAMR, UK)のEuropean Collection of Animal Cell Cultures (ECACC)にてECACC no. 96022940で寄託されている細胞によって代表されるようなPER.C6(商標)細胞、又はHer 96細胞(Crucell)は、他の供給源から入手することができる。
【0069】
多くの状況において、ウイルスの複製及び感染性に必須な1種以上の欠けている遺伝子、例えばヒトE1など、を発現している細胞株は、チンパンジーアデノウイルスベクターをトランス補完(transcomplement)するために使用され得る。本発明のチンパンジーアデノウイルス配列と現在入手可能なパッケージング細胞に見られるヒトアデノウイルス配列との間の多様性のため、現在のヒトE1含有細胞の使用は、複製及び産生過程の際に複製能を有するアデノウイルスの生成を妨げるので、これは特に有益である。
【0070】
或いは、必要であれば、選択された親細胞株での発現のためのプロモーターの転写制御下で、少なくともChAd155由来のE1遺伝子を発現するパッケージング細胞又は細胞株を作製するために、本明細書において提供される配列を利用し得る。この目的のために、誘導性プロモーター又は構成的プロモーターが使用され得る。このようなプロモーターの例は、本明細書の他の部分に詳細に記載されている。親細胞は、任意の所望のChAd155遺伝子を発現する新規細胞株の作製のために選択される。限定はされないが、このような親細胞株は、数ある中でも、HeLa [ATCCアクセッション番号CCL 2]、A549 [ATCC寄託番号CCL 185]、HEK 293、KB [CCL 17]、Detroit [例えば、Detroit 510, CCL 72]及びWI-38 [CCL 75]細胞であり得る。これらの細胞株はすべて、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209, USAから入手可能である。
【0071】
このようなE1発現細胞株は、組換えアデノウイルスE1欠失ベクターの作製に有用である。加えて、又は別法として、1種以上のアデノウイルス遺伝子産物、例えば、E1A、E1B、E2A、E3及び/若しくはE4を発現する細胞株は、組換えウイルスベクターの作製に使用されるものと基本的に同じ方法を用いて構築され得る。このような細胞株は、それらの産物をコードする必須遺伝子に欠失のあるアデノウイルスベクターをトランス補完する(transcomplement)ために、又はヘルパー依存性ウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)のパッケージングに必要なヘルパー機能を提供するために利用され得る。宿主細胞の調製は、選択されたDNA配列の組み立て(assembly)などの技術を含む。
【0072】
一実施形態では、必須アデノウイルス遺伝子産物は、アデノウイルスベクター及び/又はヘルパーウイルスによってトランスで(in trans)供給される。このような例では、適切な宿主細胞は、原核細胞(例えば、細菌細胞)、並びに昆虫細胞、酵母細胞、及び哺乳動物細胞を含む真核細胞を含む、任意の生物有機体から選択され得る。
【0073】
宿主細胞は、A549、WEHI、3T3、1011/2、HEK 293細胞又はPer.C6(後の2つは機能的なアデノウイルスE1を発現する)、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2、並びにヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、及びハムスターなどの哺乳動物由来の初代線維芽細胞、肝細胞及び筋芽細胞を含むが、それらに限定されない任意の哺乳動物種の細胞から選択され得る。
【0074】
特に適切な補完細胞株はProcell92細胞株である。Procell92細胞株は、アデノウイルスE1遺伝子を発現するHEK 293細胞を基にして、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーターの制御下にあるTetリプレッサー、及びG418-耐性遺伝子でトランスフェクトされている(VitelliらPLOS One (2013) 8(e55435):1-9)。Procell92.Sは、懸濁条件での増殖に適しており、毒性タンパク質を発現するアデノウイルスベクターの産生に有用である(www.okairos.com/e/inners.php?m=00084, 最終アクセス2015年4月13日)。
【0075】
アデノウイルスの送達方法と用量
アデノウイルスベクターは免疫原性組成物中でも投与され得る。本明細書に記載する免疫原性組成物は、哺乳動物、適切にはヒトに送達された後、ベクターによって送達された導入遺伝子産物に対して免疫応答、例えば液性(例えば、抗体)応答及び/又は細胞性(例えば、細胞傷害性T細胞)応答を誘導できる1種以上の組換えベクターを含有している組成物である。組換えアデノウイルスは、(適切には任意のその遺伝子の欠失の中に)所望の免疫原をコードする遺伝子を含み、その結果ワクチンに使用され得る。組換えアデノウイルスは、免疫応答の誘導に不可欠で病原体の蔓延を制限することができる抗原が同定されており、cDNAが入手可能である任意の病原体に対する、予防ワクチン又は治療ワクチンとして使用され得る。
【0076】
このようなワクチン又は他の免疫原性組成物は、適切な送達ベヒクル中に製剤化され得る。もしあれば追加免疫の必要性を決定するために、選択された遺伝子の免疫のレベルが測定され得る。血清中の抗体力価の評価の後に、任意選択の追加免疫付与が必要とされ得る。
【0077】
任意選択で、本発明のワクチン又は免疫原性組成物は、例えば、アジュバント、安定剤、pH調整剤、保存剤などを含む他の成分を含有するように製剤化されてもよい。適切なアジュバントの例は、下記の「アジュバント」で提供される。このようなアジュバントは、抗原をコードするDNAワクチンのみによるプライミングで生じる免疫応答と比較して、抗原特異的免疫応答を向上させるために、抗原をコードするプライミングDNAワクチンとともに投与され得る。或いは、このようなアジュバントは、本発明のベクターが関与する投与計画において投与される、ポリペプチド抗原とともに投与され得る。
【0078】
アデノウイルスベクターは、製薬上又は生理学的に許容され得る担体、例えば、生理食塩水、等張塩類溶液若しくは当業者にとって明白な他の製剤などに懸濁又は溶解することによって、投与のために調製され得る。適切な担体は当業者にとって明らかであり、主に投与経路によって決まる。本明細書に記載される組成物は、生分解性の生体適合性ポリマーを用いた徐放性製剤で、又はミセル、ゲル及びリポソームを用いた現地送達(on-site delivery)によって、哺乳動物に投与され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスは、筋肉内注入、静脈内注入、腹腔内注入、皮下注入、皮膚上投与、皮内投与、経皮投与、膣内投与、鼻腔投与、直腸投与又は経口投与によって、対象に投与される。
【0080】
治療計画が、それぞれ異なる組成物に製剤化される1種以上のアデノウイルスベクター及び更なる成分の同時投与を含む場合、それらは好ましくは同一部位またはほぼ同じ部位に共に配置されて投与される。例えば、成分は、同じ側若しくは同じ四肢(「同側性」投与)又は反対側若しくは反対の四肢(「対側性」投与)に(例えば、筋肉内、経皮、皮内、皮下より選択される投与経路を介して)投与され得る。
【0081】
ウイルスベクターの投与量は、主に、治療されている病状、治療されている病状の重症度、並びに患者の年齢、体重及び健康状態などの要因によって決まり、従って患者によって異なり得る。例えば、治療上有効な成人のウイルスベクターの投与量は、通常、1×105~1×1015個のウイルス粒子、例えば1×108~1×1012個(例えば、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、2.5×1010、5×1010、1×1011、5×1011又は1×1012個の粒子)を含む。或いは、ウイルスベクターは、一般的には1×105~1×1010プラーク形成単位(PFU)、例えば1×105 PFU、5×105 PFU、1×106 PFU、5×106 PFU、1×107 PFU、5×107 PFU、1×108 PFU、5×108 PFU、1×109 PFU、5×109 PFU、又は1×1010 PFU等の用量で投与され得る。投与量は、対象の大きさ及び投与経路に応じて変わる。例えば、筋肉内注入に対する適切なヒトの投与量(約80 kgの対象に対して)は、単一箇所に約1×105~約5×1012粒子/mLの範囲である。任意選択で、複数箇所の投与が用いられ得る。別の例では、適切なヒト又は動物用の投与量は、経口製剤で約1×107~約1×1015個の粒子の範囲であり得る。
【0082】
アデノウイルスベクターは、例えば、標準曲線として、ヒトCMV(hCMV)プロモーターを含む発現カセットを有するベクターゲノムを含有しているプラスミドDNAの段階希釈を用いて、CMVプロモーター領域上に設計されたプライマー及びプローブを用いた、定量的PCR分析(Q-PCR)によって定量化され得る。試験サンプル中のコピー数は、平行線分析法(parallel line analysis method)によって決定される。ベクター粒子定量化の別法は、分析的HPLC又はA260 nmに基づく分光光度法を含む。
【0083】
免疫学的に有効な核酸の量は、適切には1 ng~100 mgであり得る。例えば、適切な量は1μg~100 mgであり得る。「免疫学的に有効な量」とは、対象へのその量の投与が対象においてリサウイルスに対する測定可能な免疫応答を誘導するのに有効であることを意味する。
【0084】
特定の核酸(例えば、ベクター)の適切な量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0085】
核酸成分の例示的な有効量は、1 ng~100 μgの間、例えば1 ng~1μgの間(例えば、100 ng~1μg)又は1μg~100μgの間、例えば10 ng、50 ng、100 ng、150 ng、200 ng、250 ng、500 ng、750 ng、又は1μg等であり得る。核酸の有効量はまた、1μg~500μg、例えば1μg~200μgの間、例えば10~100μgの間、例えば1μg、2μg、5μg、10μg、20μg、50μg、75μg、100μg、150μg、又は200μgを含み得る。或いは、核酸の例示的な有効量は、100μg~1 mgの間、例えば100 μg~500 μg、例えば、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg又は1 mgであり得る。
【0086】
通常、ヒト用量は0.1ml~2 mlの体積、例えば0.5ml、2 mlである。従って、本明細書に記載される組成物は、例えば個別又は複合の免疫原性成分あたり0.1、0.25、0.5、1.0、1.5又は2.0 mlのヒト用量の体積に製剤化され得る。
【0087】
当業者は、投与経路及び組換えベクターが用いられる治療用途又はワクチン用途に応じて、これらの用量を調整し得る。導入遺伝子の、又はアジュバントのための発現レベル、循環抗体のレベルは、用量投与の頻度を決定するために測定され得る。
【0088】
1回以上のプライム及び/又はブーストステップが用いられる場合、このステップは、毎時、毎日、毎週若しくは毎月、又は毎年投与される単回投与を含み得る。一例として、哺乳動物は、担体中に約10μg~約50μgのプラスミドを含有する1回又は2回の投与を受け得る。送達量又は送達部位は、哺乳動物の種類及び状態に基づいて望ましく選択される。
【0089】
選択された導入遺伝子によってコードされるタンパク質の治療レベル、又はそれに対する免疫応答のレベルは、もしあるとすれば、追加免疫の必要性を決定するために測定され得る。CD8+ T細胞応答の評価、又は任意選択で、血清中の抗体力価の評価に続いて、任意選択の追加免疫付与が要求され得る。任意選択で、アデノウイルスベクターは、単回投与で、又は様々な併用投与計画、例えば、他の活性成分を含む投与計画若しくは治療過程との併用で、又はプライム・ブースト投与計画で、送達され得る。
【0090】
ポリペプチド配列を含む組換えアデノウイルス又は組成物
適切には、本発明のポリヌクレオチドは組換え体である。組換え体とは、ポリヌクレオチドが、クローニング、制限酵素切断(restriction)若しくはライゲーションステップ、又は自然界において見出されるポリヌクレオチドとは異なるポリヌクレオチドをもたらす他の方法の少なくとも1つの生成物であることを意味する。組換えアデノウイルスは、組換えポリヌクレオチドを含むアデノウイルスである。組換えベクターは、組換えポリヌクレオチドを含むベクターである。「組換えウイルス」は、元の組換えウイルスの子孫を含む。「組換えベクター」は、元の組換えベクターの複製物を含む。「組換えポリヌクレオチド」は、元の組換えポリヌクレオチドの複製物を含む。
【0091】
ポリペプチドの「機能的誘導体」とは、適切には、ポリペプチドの改変型を指し、例えば、ポリペプチドの1以上のアミノ酸が、欠失、挿入、改変及び/又は置換され得る。未改変のアデノウイルスカプシドタンパク質の誘導体は、例えば以下の場合:
(a) そのカプシド内に誘導体カプシドタンパク質を含むアデノウイルスが、未改変のカプシドタンパク質を含むアデノウイルスと比較して、実質的に同じ若しくはより低い血清陽性率を保持する場合、及び/又は
(b) そのカプシド内に誘導体カプシドタンパク質を含むアデノウイルスが、未改変のカプシドタンパク質を含むアデノウイルスと比較して、実質的に同じ若しくはより高い宿主細胞感染性を保持する場合、及び/又は
(c) そのカプシド内に誘導体カプシドタンパク質を含むアデノウイルスが、未改変のカプシドタンパク質を含むアデノウイルスと比較して、実質的に同じ若しくはより高い免疫原性を保持する場合、及び/又は
(d) そのカプシド内に誘導体カプシドタンパク質を含むアデノウイルスが、未改変のカプシドタンパク質を含むアデノウイルスと比較して、実質的に同じ若しくはより高いレベルの導入遺伝子生産性を保持する場合、
機能的であると考えられる。
【0092】
適切には、本発明の組換えアデノウイルス又は組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。適切には、本発明の組換えアデノウイルス又は組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であるポリペプチドを含み、ここで機能的誘導体は、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する。適切には、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一、例えば少なくとも85.0%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも91.0%同一、例えば少なくとも93.0%同一、例えば少なくとも95.0%同一、例えば少なくとも97.0%同一、例えば少なくとも98.0%同一、例えば少なくとも99.0%同一、例えば少なくとも99.2%同一、例えば少なくとも99.4%同一、例えば少なくとも99.5%同一、例えば少なくとも99.6%同一、例えば少なくとも99.8%同一、例えば99.9%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号1と比較して130以下、より適切には120以下、より適切には110以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0093】
適切には、本発明の組換えアデノウイルス、又は組成物は、以下:
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(b)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50.0%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
及び/又は
(a)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(b)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
をさらに含む。
【0094】
適切には、配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも60.0%、例えば少なくとも70.0%、例えば少なくとも80.0%、例えば少なくとも85.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも91.0%同一、例えば少なくとも93.0%同一、例えば少なくとも95.0%同一、例えば少なくとも97.0%同一、例えば少なくとも98.0%同一、例えば少なくとも99.0%、例えば少なくとも99.2%、例えば少なくとも99.4%、例えば少なくとも99.5%同一、例えば少なくとも99.6%、例えば少なくとも99.7%同一、例えば少なくとも99.8%同一、例えば少なくとも99.9%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号3と比較して300以下、より適切には250以下、より適切には200以下、より適切には150以下、より適切には125以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0095】
適切には、配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも60.0%、例えば少なくとも70.0%、例えば少なくとも80.0%、例えば少なくとも85.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも91.0%同一、例えば少なくとも93.0%同一、例えば少なくとも95.0%同一、例えば少なくとも97.0%同一、例えば少なくとも98.0%同一、例えば少なくとも99.0%、例えば少なくとも99.2%、例えば少なくとも99.4%、例えば少なくとも99.5%同一、例えば少なくとも99.6%、例えば少なくとも99.7%同一、例えば少なくとも99.8%同一、例えば少なくとも99.9%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号5と比較して500以下、より適切には400以下、より適切には450以下、より適切には300以下、より適切には250以下、より適切には200以下、より適切には150以下、より適切には125以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0096】
適切には、本発明の組換えアデノウイルス、又は組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0097】
適切には、本発明の組換えアデノウイルス、又は組成物は、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
及び/又は
(a)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(b)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも60%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
をさらに含む。
【0098】
適切には、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも60.0%同一、例えば少なくとも70.0%同一、例えば少なくとも80.0%同一、例えば少なくとも85.0%同一、例えば少なくとも87.0%同一、例えば少なくとも89.0%同一、例えば少なくとも91.0%同一、例えば少なくとも93.0%同一、例えば少なくとも95.0%同一、例えば少なくとも97.0%同一、例えば少なくとも98.0%同一、例えば少なくとも99.0%同一、例えば少なくとも99.2%、例えば少なくとも99.4%、例えば少なくとも99.5%同一、例えば少なくとも99.6%、例えば少なくとも99.8%同一、例えば少なくとも99.9%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号1と比較して130以下、より適切には120以下、より適切には110以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0099】
適切には、配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも60.0%、例えば少なくとも70.0%、例えば少なくとも80.0%、例えば少なくとも85.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも95.0%、例えば少なくとも97.0%、例えば少なくとも99.0%、例えば少なくとも99.0%、例えば少なくとも99.2%、例えば少なくとも99.4%、例えば少なくとも99.5%同一、例えば少なくとも99.6%、例えば少なくとも99.8%同一、例えば少なくとも99.9%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号5と比較して500以下、より適切には400以下、より適切には450以下、より適切には300以下、より適切には250以下、より適切には200以下、より適切には150以下、より適切には125以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0100】
適切には、本発明の組換えアデノウイルス、又は組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。適切には、そのポリヌクレオチドは、配列番号2の配列を有する。
【0101】
或いは、本発明の組換えアデノウイルス、又は組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドを含み、その機能的誘導体は配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する。適切には、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一、例えば少なくとも85.0%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも91.0%同一、例えば少なくとも93.0%同一、例えば少なくとも95.0%同一、例えば少なくとも97.0%同一、例えば少なくとも98.0%同一、例えば少なくとも99.0%同一、例えば少なくとも99%同一、例えば少なくとも99.4%同一、例えば少なくとも99.6%同一、又は例えば少なくとも99.8%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号1と比較して130以下、より適切には120以下、より適切には110以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0102】
適切には、本発明の組換えアデノウイルス、又は組成物は、以下:
(a)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(b)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50.0%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
及び/又は
(a)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(b)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0103】
適切には、配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも60.0%、例えば少なくとも70.0%、例えば少なくとも80.0%、例えば少なくとも85.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも91.0%同一、例えば少なくとも93.0%同一、例えば少なくとも95.0%同一、例えば少なくとも97.0%同一、例えば少なくとも98.0%同一、例えば少なくとも99.0%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも99.4%、例えば少なくとも99.6%、例えば少なくとも99.8%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号3と比較して300以下、より適切には250以下、より適切には200以下、より適切には150以下、より適切には125以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0104】
適切には、配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも60.0%、例えば少なくとも70.0%、例えば少なくとも80.0%、例えば少なくとも85.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも95.0%、例えば少なくとも97.0%、例えば少なくとも98.0%、例えば少なくとも99.0%、例えば少なくとも99.2%、例えば少なくとも99.4%、例えば少なくとも99.5%同一、例えば少なくとも99.6%、例えば99.7%同一、例えば少なくとも99.8%同一、例えば99.9%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号5と比較して500以下、より適切には400以下、より適切には450以下、より適切には300以下、より適切には250以下、より適切には200以下、より適切には150以下、より適切には125以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0105】
適切には、本発明の組換えアデノウイルス、又は組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。適切には、そのポリヌクレオチドは、配列番号4の配列を有する。
【0106】
適切には、本発明の組換えアデノウイルス、又は組成物は、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
及び/又は
(a)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(b)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する機能的誘導体、
をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0107】
適切には、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも60.0%同一、例えば少なくとも70.0%同一、例えば少なくとも80.0%同一、例えば少なくとも85.0%同一、例えば少なくとも87.0%同一、例えば少なくとも89.0%同一、例えば少なくとも91.0%同一、例えば少なくとも93.0%同一、例えば少なくとも95.0%同一、例えば少なくとも97.0%同一、例えば少なくとも98.0%同一、例えば少なくとも99.0%、例えば少なくとも99.2%、例えば少なくとも99.4%、例えば少なくとも99.5%同一、例えば少なくとも99.6%、例えば99.7%同一、例えば少なくとも99.8%同一、例えば99.9%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号1と比較して130以下、より適切には120以下、より適切には110以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0108】
適切には、配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体は、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも60.0%、例えば少なくとも70.0%、例えば少なくとも80.0%、例えば少なくとも85.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも95.0%、例えば少なくとも97.0%、例えば少なくとも98.0%、例えば少なくとも99.0%、例えば少なくとも99.2%、例えば少なくとも99.4%、例えば少なくとも99.5%同一、例えば少なくとも99.6%、例えば99.7%同一、例えば少なくとも99.8%同一、例えば99.9%同一のアミノ酸配列を有する。或いは、その機能的誘導体は、配列番号5と比較して500以下、より適切には400以下、より適切には450以下、より適切には300以下、より適切には250以下、より適切には200以下、より適切には150以下、より適切には125以下、より適切には100以下、より適切には90以下、より適切には80以下、より適切には70以下、より適切には60以下、より適切には50以下、より適切には40以下、より適切には30以下、より適切には20以下、より適切には10以下、より適切には5以下、より適切には4以下、より適切には3以下、より適切には2以下、及びより適切には1以下の付加、欠失及び/又は置換を有する。
【0109】
ChAd155骨格
本出願は、野生型、未改変のChAd155(配列番号10)及び改変されたChAd155の骨格構築物を含む、チンパンジーアデノウイルスChAd155の単離されたポリヌクレオチド配列を記載する。これらの改変された骨格構築物は、ChAd155#1434(配列番号7)、ChAd155#1390(配列番号8)及びChAd155#1375(配列番号9)を含む。ChAd155骨格は、導入遺伝子の送達のための複製能を有する又は複製能を有さない組換えアデノウイルスの構築に使用され得る。
【0110】
「構築物」という用語は本明細書に記載のポリペプチド配列をコードする核酸を指し、DNA又は天然に存在しない核酸単量体を含み得る。
【0111】
「複製能を有する」アデノウイルスという用語は、細胞中に含まれるいかなる組換えヘルパータンパク質もなしに、宿主細胞中で複製できるアデノウイルスを指す。適切には、「複製能を有する」アデノウイルスは、以下の完全な又は機能的な必須の初期遺伝子:E1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4を含む。特定の動物から分離された野生型のアデノウイルスは、その動物において複製能を有する。
【0112】
「複製能を有さない」あるいは「複製欠損の」アデノウイルスという用語は、少なくとも機能的欠失(又は「機能喪失」変異)、すなわちそれを完全に除去することなく遺伝子の機能を損なう欠失又は突然変異、例えば人為的な終止コドンの導入、活性部位若しくは相互作用ドメインの欠失若しくは変異、遺伝子の調節配列等の変異若しくは欠失、又は、ウイルス複製に必須な遺伝子産物をコードする遺伝子、例えばE1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4より選択される1種以上のアデノウイルス遺伝子(例えばE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8、E3 ORF9、E4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及び/若しくはE4 ORF1)などの完全除去、を含むように操作されているために、複製する能力がないアデノウイルスを指す。特に適切には、E1並びに任意選択でE3及び/又はE4が欠失している。欠失している場合、上記の欠失遺伝子領域は、別の配列に対する%同一性を決定する際、適切にはアラインメントでは考慮されない。
【0113】
本発明の配列は、治療薬として、並びに様々なベクター系、組換えアデノウイルス及び宿主細胞の構築に有用である。適切には、「ベクター」という用語は、野生型配列と比較して実質的に改変されている(例えば、遺伝子若しくは機能性領域が欠失及び/若しくは不活性化されている)、並びに/或いは、異種配列、すなわち、異なる起源から得られた核酸(「インサート」とも呼ばれる)を組み込み、細胞(例えば宿主細胞)に導入された際、挿入されたポリヌクレオチド配列を複製及び/又は発現する核酸を指す。例えば、インサートは本明細書に記載されるChAd155配列の全部又は一部であり得る。加えて、あるいは別法としては、ChAd155ベクターは、ウイルス遺伝子、例えばE1又は本明細書に記載される他のウイルス遺伝子若しくは機能性領域などの1以上の欠失又は不活性化を含むChAd155アデノウイルスであり得る。このようなChAd155は、異種配列を含んでも、含まなくてもよいが、しばしば「骨格」と呼ばれ、そのままで、又はベクターの更なる改変の開始点として使用され得る。
【0114】
ChAd155野生型配列(配列番号10)の注釈は、以下に示される。
【0115】
【0116】
配列同一性
配列に関する同一性は、最大パーセント配列同一性を達成するように配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後に、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しないで、参照アミノ酸配列と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして、本明細書において定義される。
【0117】
配列同一性は、2つのポリペプチドのアミノ酸の位置の類似性を比較するために一般的に使用されている標準的な方法によって決定することができる。BLAST又はFASTAのようなコンピュータープログラムを使用して、2つのポリペプチドをそれらの各々のアミノ酸の一致が最適化するように(一方又は両方の配列の全長にわたって、或いは一方又は両方の配列の所定部分にわたって)整列させる。これらのプログラムは、初期設定のオープニングペナルティ及び初期設定のギャップペナルティを提供し、PAM250(標準のスコアリングマトリックス)などのスコアリングマトリックスをそのコンピュータープログラムと組み合わせて使用することができる。例えば、次いで、一致の合計数を100倍し、次いで一致した領域内のより長い配列の長さと、2つの配列を整列させるためにより短い配列に導入されたギャップの数との合計で除算したものとして、パーセント同一性を計算することができる。
【0118】
本開示がUniProt又はGenbankアクセッションコードへの参照によって配列を参照する場合、参照される配列は本出願の出願日現在のバージョンである。
【0119】
単一のアミノ酸又は低いパーセンテージのアミノ酸を改変、付加又は欠失させるタンパク質への個々の置換、欠失又は付加は、当該改変がアミノ酸の機能的に類似したアミノ酸との置換、又は免疫原性機能に実質的に影響を及ぼさない残基の置換/欠失/付加である場合に「免疫原性誘導体」であることを当業者は認識するものである。
【0120】
機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は当技術分野において周知である。一般に、そのような保存的置換は、以下に特定されるアミノ酸グループの1つとなるが、ある状況では、抗原の免疫原性に実質的に影響を及ぼすことなく他の置換が可能であり得る。以下の8つのグループは、各々、通常互いが保存的置換となるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)。
【0121】
適切には、そのような置換はエピトープの領域の中で起こらず、したがって、抗原の免疫原性特性に著しい影響を与えない。
【0122】
免疫原性誘導体は、参照配列と比較して追加のアミノ酸が挿入されているものも含み得る。適切には、そのような挿入はエピトープの領域の中では起こらず、それ故抗原の免疫原性特性に著しい影響を与えない。挿入の一例は、問題の抗原の発現及び/又は精製を補助するためのヒスチジン残基の短い領域(例えば2~6残基)(配列番号49)を含む。
【0123】
免疫原性誘導体は、参照配列と比較してアミノ酸が欠失しているものを含む。適切には、そのような欠失はエピトープの領域に起こらず、したがって抗原の免疫原性特性に著しい影響を与えない。
【0124】
特定の免疫原性誘導体は、置換、欠失及び付加(又はその任意の組合せ)を含み得ることを、当業者は認識する。
【0125】
リサウイルス抗原及びワクチン
ラブドウイルス(Rhabdoviridae)科の属であるリサウイルスは、一本鎖アンチセンスRNAゲノムを有するエンベロープウイルスである。このRNAは、ヌクレオタンパク質(N)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及びウイルスRNAポリメラーゼ(L)の順に5つの構造タンパク質をコードする。Pタンパク質は、リボヌクレオタンパク質の構造成分であり、ウイルス粒子の形成およびウイルスRNA合成において役割を果たす。Gタンパク質はウイルス病原性と防御免疫において重要であると考えられており、それは防御中和抗体の主要な標的である。リサウイルスは中枢神経系を通って広がる向神経性ウイルスで、脳と脊髄の重度の炎症を引き起こす。
【0126】
リサウイルス属は7つの遺伝子型を含み、そのうち次の6つはヒト狂犬病の症例と関連付けられている:狂犬病ウイルス(RABV、遺伝子型1)、モコラウイルス(遺伝子型3)、ドゥベンヘイグウイルス(遺伝子型4)、ヨーロッパコウモリリサウイルス(遺伝子型5)、ヨーロッパコウモリリサウイルス2(遺伝子型6)、及びオーストラリアコウモリリサウイルス(遺伝子型7)(Jackson (2016) Curr Infec Dis Rep 18:38)。症状が発症すると、狂犬病はほぼ100パーセント致死的である。
【0127】
狂犬病Gタンパク質上に存在する抗原エピトープは、狂犬病ウイルスの複数の株において同定されている。それらは、部位I、部位IIa、部位IIb、部位III、部位IV及び部位aとして分類され、表1に列挙されている。この表は、配列番号50~63として「部位IIb」配列を、配列番号64~77として「部位I」を、配列番号78~91として「部位III」を、出現順にそれぞれ開示する。
【0128】
表1.狂犬病Gタンパク質抗原エピトープ
【表1】
【0129】
配列番号37に対応する狂犬病Gタンパク質上に存在する抗原エピトープを図1に示す。抗原部位Iは、コンフォメーショナルエピトープ及び直鎖状エピトープの両方を有し、アミノ酸残基226~231に位置する。抗原部位IIは、残基34~42(IIb)及び198~200(IIa)の不連続コンフォメーショナルエピトープである。抗原部位IIIは、残基330~338の連続コンフォメーショナルエピトープである。抗原部位IVは残基263~264に位置する。抗原部位aは残基342~343に位置する。
【0130】
狂犬病ワクチンは現在主に曝露後予防に使用されており、狂犬病ワクチン投与の低いパーセンテージのみが曝露前予防に使用されている。介入スケジュールは、ウイルスが侵入する創傷の重症度及び種類に基づいて世界保健機関によって規定されており、抗狂犬病免疫グロブリンによる追加の治療を含み得る。曝露前予防は、典型的には、曝露リスクに応じてタイミングを調整した追加免疫を用いた2~3回の筋肉内投与のための2~3回の訪問を含む。曝露後予防は、典型的には、4~5回の筋肉内投与のための3~5回の訪問、又は4回の皮内投与のための4回の訪問を含む。一部の発展途上国では、感染した動物の脳内で狂犬病ウイルスを増殖させ、ウイルスを不活化し、腹壁内に皮下で14~21回、毎日注射することによって未だ免疫化が行われている。
【0131】
現在、いくつかの狂犬病ワクチンが曝露前及び曝露後予防の両方でヒトでの使用に利用可能である。IMOVAX(Sanofi Pasteur)は、Wistar Instituteから得られた株PM-1503-3Mから調製された凍結乾燥狂犬病ウイルスとして提供されている。それは感染したヒト二倍体細胞から採取され、次いで不活性化される。曝露前及び曝露後予防は両方とも、0、7及び21又は28日目に筋肉内に投与される3回の投与からなる。VERORAB(Sanofi Pasteur)は、Wistar Instituteから得られた株PM/WI 38 1503-3Mから調製される凍結乾燥狂犬病ウイルスとして提供される。それはVero細胞から回収され、次いで不活化される。曝露前予防は、0、7及び21又は28日目に筋肉内投与される3回投与からなる。曝露後予防は、0、3、7、14及び28日目に筋肉内投与される5回投与からなる。VAXIRAB/LYSSAVAC(Zydus Cadila/Novavax)は、狂犬病ウイルスのPitman Moore株から調製された凍結乾燥狂犬病ウイルスとして提供される。それはアヒル胚細胞において産生され、次いで不活性化される。曝露前予防は、0、7及び21又は28日目に筋肉内投与される3回投与からなる。曝露後予防は、0、3、7、14及び28日目に筋肉内投与される5回投与からなる。曝露後予防も皮内投与することができ、0、3、7及び28日目に2つの部位の各々に注射することができる。RABIPUR/RABAVERT(GSK)は、Flury LEP(低卵継代)株から調製される凍結乾燥狂犬病ウイルスとして提供される。それはニワトリ線維芽細胞の初代培養物中で増殖され、次いで不活性化される。曝露前予防は、0、7及び21又は28日目に筋肉内投与される3回投与からなる。曝露後予防は、0、3、7、14及び28日目に筋肉内投与される5回投与からなる。
【0132】
アデノベクター化狂犬病ワクチンについての支持的な前臨床の証拠が文献に報告されている。複製欠損となるように改変され、狂犬病のEvelyn Rokitniki Abelseth(ERA)株の完全長糖タンパク質(G)を発現するように改変された、AdC68又はChAd68とも呼ばれる、アデノウイルス組換えウイルスベクターSAdV24は、狂犬病曝露前に与えられた場合、カニクイザルにおいてある程度の免疫原性を示したが、狂犬病曝露後では十分な防御を提供しなかった(Xiang et al. (2014) Virol.450-451:243-249)。筋肉内投与された、狂犬病のEvelyn Rokitniki Abelseth(ERA)株の全長糖タンパク質(G)を発現する同様の複製欠損ChAd68ベクターは、狂犬病曝露に対してある程度の防御を誘導した(Zhou et al. (2006) Mol. Ther. 14:662-672;図16に部分的に再現されている)。
【0133】
アジュバント
「アジュバント」は、本明細書において用いられる場合、免疫原への免疫応答を向上させる組成物を指す。アジュバントを含む本発明による組成物は、例えばヒト対象に対して、ワクチンとして使用することができる。アジュバントは、抗原単独の投与と比較して、抗原/免疫原に対する免疫応答の質及び/又は強度を加速、延長及び/又は増強し、したがって、任意の所与のワクチンに必要な抗原/免疫原の量、及び/又は目的の抗原/免疫原に対する適切な免疫応答を生じさせるために必要な注射の頻度を減少させる。
【0134】
本発明の組成物の文脈において使用され得るアジュバントの例には、無機アジュバント(例えば、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウムなどの無機金属塩)、水酸化アルミニウムのゲル状沈殿物(ミョウバン);AlPO4;アルハイドロゲル;グラム陰性菌の外膜由来の細菌性産物、特にモノホスホリルリピドA(MPLA)、リポ多糖類(LPS)、ムラミルジペプチド及びそれらの誘導体;フロイントの不完全アジュバント;リポソーム、特に中性リポソーム、組成物及び場合によりサイトカインを含有するリポソーム;AS01B、AS01E、AS02;非イオン性ブロックコポリマー;ISCOMATRIXアジュバント;CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特にホスホロチオエート(PTO)骨格(CpG PTO ODN)又はホスホジエステル(PO)骨格(CpG PO ODN)を有するCpG ODN;合成リポペプチド誘導体、特にPam3Cys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP 70;dsRNA及びその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオン性ペプチド、特にポリ-L-アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM-CSF、インターロイキン-(IL-)2、IL-6、IL-7、IL-18、I型及びII型インターフェロン、特にインターフェロン-ガンマ(IFN-ガンマ)、TNF-アルファ;25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);及び合成オリゴペプチド、特にMHCII提示ペプチドが含まれる。ポリオキシエチレン(POE)及びポリオキシプロピレン(POP)を含有する非イオン性ブロックポリマー、例えばPOE-POP-POEブロックコポリマーは、アジュバントとして使用され得る。
【0135】
さらなるアジュバントの例は、無機アジュバント(例えばリン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム等の無機金属塩)、有機アジュバント(例えばQS21等のサポニン、又はスクアレン)、オイルベースのアジュバント(例えばフロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント)、サイトカイン(例えばIL-1β、IL-2、IL-7、IL-12、IL-18、GM-CFS、及びINF-γ)粒子状アジュバント(例えば免疫刺激複合体(ISCOMS)、リポソーム、生分解性マイクロスフェア、ビロソーム、細菌性アジュバント(例えば3-de-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)等のモノホスホリルリピドA、又はムラミルペプチド)、合成アジュバント(例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、特に3-de-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)及びムラミルペプチド類似体、又は合成リピドA、及び合成ポリヌクレオチドアジュバント、例えば、ポリアルギニン又はポリリジンを含む。
【0136】
サポニン、例えば、南米の樹木シャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から得られるサポニンQuil A、及びその画分もまた適切なアジュバントである。Quil Aの精製画分、例えば、スクアレン、QS21、QS17及びQS7、Quil-Aの非溶血性画分は、免疫刺激剤としても知られている。QS21及びポリソルベート又はシクロデキストリンの組合せもまた
適切である。
【0137】
アジュバントの別の例は、DNA中に存在する非メチル化シトシン-グアノシンジヌクレオチドモチーフを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチド(「CpG」)である。CpGは、全身経路と粘膜経路との両方で投与される際のアジュバントとして知られている。CpGは、ワクチン中に製剤化される際、遊離抗原とともに自由溶液中で投与されてもよく、抗原に共有結合的にコンジュゲートされてもよく、又は水酸化アルミニウムなどの担体とともに製剤化されてもよい。
【0138】
特定の受容体の活性化は、免疫応答を刺激し得る。そのような受容体は当業者に知られており、例えば、サイトカイン受容体、特にI型サイトカイン受容体、II型サイトカイン受容体、TNF受容体;転写因子として作用するビタミンD受容体;並びにToll様受容体1(TLR1)、TLR-2、TLR-3、TLR4、TLR5、TLR-6、TLR7、及びTLR9が挙げられる。このような受容体に対するアゴニストは、アジュバント活性を有する、すなわち免疫刺激性である。他の適切なアジュバントとしては、アルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)又はAGPの薬学的に許容される塩が挙げられる。いくつかのAGPはTLR4アゴニストであり、いくつかはTLR4アンタゴニストである。本発明の組成物のアジュバントは、1つ以上のToll様受容体アゴニストであり得る。より好ましい実施形態では、アジュバントはToll様受容体4アゴニストである。特に好ましい実施形態では、アジュバントはToll様受容体9アゴニストである。
【0139】
上述のようなアジュバントは、リポソーム、水中油型エマルション、及び/又は金属塩(水酸化アルミニウムのようなアルミニウム塩を含む)などの担体とともに製剤化され得る。例えば、3D-MPLは、水酸化アルミニウム又は水中油型エマルションとともに製剤化されてもよく;QS21は、コレステロール含有リポソーム、水中油型エマルション又はミョウバンとともに製剤化されてもよく;CpGは、ミョウバン又は他の陽イオン性担体とともに製剤化されてもよい。
【0140】
アジュバントの組合せ、詳細にはモノホスホリルリピドA及びサポニン誘導体の組合せ、より詳細にはQS21及び3D-MPLの組合せ、又はQS21がコレステロール含有リポソーム(DQ)中でクエンチされている(quenched)組成物が、本発明において使用され得る。或いは、QS21などのサポニンを加えたCpGの組合せは、水中油型エマルション中にQS21、3D-MPL及びトコフェロールを含む強力なアジュバント製剤と同様に、本発明における使用に適したアジュバントである。サポニンアジュバントは、リポソーム中に製剤化され、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと組み合わされ得る。このように、適切なアジュバント系は、例えば、アルミニウム塩とともにモノホスホリルリピドA、好ましくは3D-MPLの組合せを含む。更なる例示アジュバントは、QS21及び/又はMPL及び/又はCpGを含有する。QS21は、コレステロール含有リポソーム中でクエンチされ得る。
【0141】
ワクチン接種のために使用される発現系に含まれる抗原への不変鎖の融合は、アデノウイルスによって投与された場合、前記抗原に対する免疫応答を増加させる。従って、本発明の1つの実施形態では、免疫原性導入遺伝子は、組換えChAd155ウイルスベクターにおいて不変鎖と共発現され得る。
【0142】
別の実施形態では、本発明は、対象にChAd155カプシドを送達することによって、免疫調節応答を誘導するための、或いは別の活性物質に対する細胞傷害性T細胞応答を向上させる又はアジュバント化するためのChAd155のカプシドの使用を提供する(任意選択で、インタクトな若しくは組換えウイルス粒子又は空のカプシドが使用される)。ChAd155カプシドは単独で、又は活性物質との併用投与計画において、それに対する免疫応答を向上させるために送達され得る。有利には、宿主にアデノウイルスを感染させることなく、望ましい効果が達成され得る。
【0143】
全般
他に説明されない場合、本明細書において用いられるすべての技術用語及び科学用語は、この開示が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。単数の用語である「a」、「an」、及び「the」は、そうではないことが文脈に明確に示されていない限りは、複数の指示対象を含む。同様に、「又は(若しくは、或いは)」という語は、そうではないことが文脈に明確に示されていない限りは、「及び(並びに)」を含むことが意図される。「複数」という用語は2以上を指す。さらに、物質の濃度又はレベルに関して与えられる数値限定、例えば溶液成分の濃度又はその比率、並びに反応条件、例えば温度、圧力及びサイクル持続時間に関して与えられる数値限定は、概数であることが意図される。本明細書で用いられる「約」という用語はその量±10%を意味することが意図される。
【0144】
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、前記機能的誘導体が配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、前記ポリヌクレオチド、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(e)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体、及び
(f)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド
からなる群より選択される少なくとも1種のポリヌクレオチド又はポリペプチドを含む組換えアデノウイルスであって、前記アデノウイルスはリサウイルス抗原をコードする核酸配列を含むものであり、前記核酸配列は宿主細胞において前記リサウイルス抗原の発現を指令する1以上の配列に機能的に連結している、前記組換えアデノウイルス。
(2)(1)に記載の組換えアデノウイルス、及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
(3)以下:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、(1)又は(2)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(4)前記ポリヌクレオチドが配列番号2の配列を有する、(3)記載のアデノウイルス又は組成物。
(5)以下:
(b)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体をコードするポリヌクレオチドであって、前記機能的誘導体が配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、前記ポリヌクレオチド
を含む、(1)又は(2)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(6)前記機能的誘導体が、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも89.0%同一の、例えば少なくとも99.0%同一の、例えば少なくとも99.6%同一のアミノ酸配列を有する、(5)記載のアデノウイルス又は組成物。
(7)以下:
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50.0%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体、
又は
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体
をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、(3)~(6)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(8)以下:
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド;又は
(ii)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50.0%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体、
及び
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;又は
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体
をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、(1)~(3)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(9)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの前記機能的誘導体が、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも70.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する、(7)又は(8)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(10)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの前記機能的誘導体が、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも70.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する、(7)~(9)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(11)以下:
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、(1)又は(2)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(12)前記ポリヌクレオチドが配列番号4のポリヌクレオチド配列を有する、(11)記載のアデノウイルス又は組成物。
(13)以下:
(i)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体、
又は
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体
をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、(11)又は(12)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(14)以下:
(i)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体、
及び
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体
をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、(11)又は(12)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(15)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの前記機能的誘導体が、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも70.0%同一の、例えば少なくとも99.0%同一の、例えば少なくとも99.4%同一のアミノ酸配列を有する、(13)又は(14)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(16)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの前記機能的誘導体が、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも70.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する、(13)~(15)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(17)以下:
(d)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含む、(1)又は(2)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(18)以下:
(e)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であるポリペプチドであって、前記機能的誘導体が配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する、前記ポリペプチド
を含む、(1)又は(2)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(19)前記機能的誘導体が、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも89.0%同一の、例えば少なくとも99.0%同一の、例えば少なくとも99.6%同一のアミノ酸配列を有する、(18)記載のアデノウイルス又は組成物。
(20)以下:
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50.0%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体、
又は
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体
をさらに含む、(17)~(19)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(21)以下:
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド;又は
(ii)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50.0%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体、
及び
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;又は
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体
をさらに含む、(17)~(19)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(22)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドの前記機能的誘導体が、配列番号3のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも70.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する、(20)又は(21)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(23)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの前記機能的誘導体が、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも70.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する、(20)~(22)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(24)以下:
(f)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含む、(1)又は(2)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(25)以下:
(i)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体、
又は
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;若しくは
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体
をさらに含む、(24)記載のアデノウイルス又は組成物。
(26)以下:
(i)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド;又は
(ii)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体、
及び
(i)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド;又は
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの機能的誘導体であって、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも50%同一のアミノ酸配列を有する前記機能的誘導体
をさらに含む、(24)記載のアデノウイルス又は組成物。
(27)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの前記機能的誘導体が、配列番号1のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも70.0%同一の、例えば少なくとも99.0%同一の、例えば少なくとも99.4%同一のアミノ酸配列を有する、(25)又は(26)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(28)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドの前記機能的誘導体が、配列番号5のアミノ酸配列に対してその全長にわたって少なくとも70.0%、例えば少なくとも90.0%、例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する、(25)~(27)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(29)前記ポリヌクレオチドが、以下:
・アデノウイルス5'-末端、好ましくはアデノウイルス5'逆方向末端反復;
・アデノウイルスEIA領域、又はE1A_280R及びE1A_243R領域から選択されるその断片;
・アデノウイルスEIB若しくはIX領域、又はE1B_19K、E1B_55K若しくはIX領域からなる群より選択されるその断片;
・アデノウイルスE2b領域;又はE2B_pTP、E2B_ポリメラーゼ及びE2B_IVa2領域からなる群より選択されるその断片;
・アデノウイルスL1領域、又はL1_13.6kタンパク質、L1_52k及びL1_IIIaタンパク質からなる群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルスL2領域、又はL2_ペントンタンパク質、L2_pVII、L2_V及びL2_pXタンパク質からなる群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルスL3領域、又はL3_pVIタンパク質、L3_ヘキソンタンパク質及びL3_プロテアーゼからなる群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルスE2A領域;
・アデノウイルスL4領域、又はL4_100kタンパク質、L4_33kタンパク質及びタンパク質L4_VIIIからなる群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルスE3領域、又はE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8及びE3 ORF9からなる群より選択されるその断片;
・アデノウイルスL5領域、又はL5_ファイバータンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルスE4領域、又はE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1からなる群より選択されるその断片;
・アデノウイルス3'-末端、好ましくはアデノウイルス3'逆方向末端反復;及び/又は
・アデノウイルスVAI又はVAII RNA領域、好ましくはChAd155以外のアデノウイルス由来の、より好ましくはAd5由来のアデノウイルスVAI又はVAII RNA領域
の少なくとも1種を含む、(1)~(28)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(30)前記ポリヌクレオチドが、以下:
・アデノウイルス5'-末端、好ましくはアデノウイルス5'逆方向末端反復;
・アデノウイルスL1領域、又はL1_13.6kタンパク質、L1_52k及びL1_IIIaタンパク質からなる群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルスL2領域、又はL2_ペントンタンパク質、L2_pVII、L2_V及びL2_pXタンパク質からなる群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルスL3領域、又はL3_pVIタンパク質、L3_ヘキソンタンパク質及びL3_プロテアーゼからなる群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルスL4領域、又はL4_100kタンパク質、L4_33kタンパク質及びタンパク質L4_VIIIからなる群より選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルスL5領域、又はL5_ファイバータンパク質をコードするその断片;
・アデノウイルス3'-末端、好ましくはアデノウイルス3'逆方向末端反復
の少なくとも1種を含む、(29)記載のアデノウイルス又は組成物。
(31)前記ポリヌクレオチドがアデノウイルスVAI又はVAII RNA領域を含む、(1)~(28)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(32)VAI又はVAII RNA領域がChAd155以外のアデノウイルスに由来する、(31)記載のアデノウイルス又は組成物。
(33)VAI又はVAII RNA領域がAd5に由来する、(32)記載のアデノウイルス又は組成物。
(34)リサウイルス抗原をコードする核酸配列が、配列番号38に対してその全長にわたって少なくとも98.6%同一である、例えば少なくとも99%同一である、例えば少なくとも99.5%同一である、(1)~(28)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(35)リサウイルス抗原をコードする核酸配列が、配列番号38に対してその全長にわたって同一である、(34)記載のアデノウイルス又は組成物。
(36)前記ポリヌクレオチドが、E1A、E1B、E2A、E2B、E3及びE4からなる群より選択されるゲノム領域の少なくとも1種の遺伝子を非機能性にする変異又は欠失を含む、(1)~(35)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(37)前記ポリヌクレオチドが、E1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4からなる群より選択されるゲノム領域の少なくとも1種の遺伝子を欠く、(36)記載のアデノウイルス又は組成物。
(38)ゲノム領域がE1A及び/又はE1Bである、(36)又は(37)のいずれかに記載のアデノウイルス又は組成物。
(39)組換えアデノウイルスが複製能を有さない、(1)~(38)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(40)前記核酸配列がモコラウイルス、ドゥベンヘイグウイルス、ヨーロッパコウモリリサウイルス、ヨーロッパコウモリリサウイルス2、又はオーストラリアコウモリリサウイルス由来の免疫原をコードする、(1)~(39)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(41)前記核酸配列がCVS11株、CVS-N2C株、Evelyn Rokitniki Abelseth(ERA)株、Flury株、Pitman Moore株及びWistar株からなる群より選択される狂犬病ウイルス由来の免疫原をコードする、(40)記載のアデノウイルス又は組成物。
(42)前記核酸配列が狂犬病ウイルス糖タンパク質(G)、RNAポリメラーゼ(L)、マトリックスタンパク質(M)、ヌクレオタンパク質(N)又はリンタンパク質(P)に由来する抗原をコードする、(1)~(41)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(43)前記核酸配列が、狂犬病ウイルス糖タンパク質(G)、RNAポリメラーゼ(L)、マトリックスタンパク質(M)、ヌクレオタンパク質(N)及びリンタンパク質(P)を含む、又はその断片、例えば少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、若しくは少なくとも600アミノ酸の断片を含むポリペプチドをコードする、(1)~(42)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(44)前記核酸配列がモコラウイルス、ドゥベンヘイグウイルス、ヨーロッパコウモリリサウイルス、ヨーロッパコウモリリサウイルス2、又はオーストラリアコウモリリサウイルス由来の糖タンパク質の全部又は断片、好適には少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、若しくは少なくとも500アミノ酸の断片を含むポリペプチドをコードする、(1)~(42)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(45)前記核酸配列がCVS11株、CVS-N2C株、Evelyn Rokitniki Abelseth(ERA)株、Flury株、Pitman Moore株及びWistar株からなる群より選択される狂犬病ウイルス由来の糖タンパク質の全部又は断片、好適には少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、若しくは少なくとも500アミノ酸の断片を含むポリペプチドをコードする、(1)~(42)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(46)前記核酸配列が1種よりも多い狂犬病ウイルスに由来する糖タンパク質の全部又は断片、好適には少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、若しくは少なくとも500アミノ酸の断片を含むポリペプチドをコードする、(1)~(42)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(47)前記核酸配列がCVS11株、CVS-N2C株、Evelyn Rokitniki Abelseth(ERA)株、Flury株、Pitman Moore株及びWistar株からなる群より選択される1種よりも多い狂犬病ウイルス由来の糖タンパク質の全部又は断片、好適には少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、若しくは少なくとも500アミノ酸の断片を含むポリペプチドをコードする、(1)~(44)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(48)前記核酸配列が配列番号37の全部又は断片、好適には少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、若しくは少なくとも500アミノ酸の断片を含むポリペプチドをコードする、(1)~(42)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(49)前記核酸配列が配列番号37のポリペプチドをコードする、(48)記載のアデノウイルス又は組成物。
(50)前記核酸配列が、部位I、部位IIa、部位IIb、部位III、部位IV及び部位aの少なくとも1つを含むリサウイルス抗原をコードする、(1)~(49)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(51)前記核酸配列が、配列番号37に対応する部位I、部位IIa、部位IIb、部位III、部位IV及び部位aの少なくとも1つを含むリサウイルス抗原をコードする、(50)記載のアデノウイルス又は組成物。
(52)対象がリサウイルスに感染している、(51)記載のアデノウイルス又は組成物。
(53)リサウイルスがRABV、ABLV、ARAV、BBLV、DUVV、EBLV-1、EBLV-2、IRKV、KHUV、LBV、MOKV、SHIV、WCBV及びIKOVの1種以上から選択される狂犬病ウイルスの株である、(52)記載のアデノウイルス又は組成物。
(54)前記核酸配列が、部位I、部位IIa、部位IIb、部位III、部位IV及び部位aの少なくとも1つを含む免疫原性断片(例えば、1以上のT細胞エピトープを含むもの)である配列を含むリサウイルス抗原をコードする、(1)~(53)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(55)リサウイルス抗原が少なくとも20アミノ酸残基の免疫原性断片である配列を含む、(54)記載のアデノウイルス又は組成物。
(56)宿主細胞中において前記生成物の発現を指令する1以上の配列が、転写開始配列、転写終結配列、プロモーター配列及びエンハンサー配列からなる群の1種以上から選択される配列を含む、(1)~(55)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(57)宿主細胞において前記生成物の発現を指令する1以上の配列がプロモーター配列を含む、(56)記載のアデノウイルス又は組成物。
(58)前記プロモーター配列が、内部プロモーター、天然のプロモーター、RSV LTRプロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、PGKプロモーター、EF1aプロモーター及びCASIプロモーターからなる群より選択される、(57)記載のアデノウイルス又は組成物。
(59)アデノウイルスが、ヒト対象中で10%未満の血清陽性率を有し、好ましくはヒト対象中で血清陽性率を有さないものである、(1)~(58)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(60)アデノウイルスが哺乳動物細胞に感染することができる、(1)~(59)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(61)アジュバントを含む、(2)~(60)のいずれか1記載の組成物。
(62)医薬としての使用のための、(1)~(61)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物。
(63)免疫応答の刺激における使用のための、(62)記載のアデノウイルス又は組成物。
(64)ワクチンとしての使用のための、(63)記載のアデノウイルス又は組成物。
(65)リサウイルスによって引き起こされる疾患の予防、治療又は寛解における使用のための、(63)記載のアデノウイルス又は組成物。
(66)リサウイルス感染によって引き起こされる疾患の予防のための医薬の製造における、(1)~(61)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物の使用。
(67)リサウイルス感染によって引き起こされる疾患の予防のためのヒトにおける使用のための医薬の製造における、(1)~(61)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物の使用。
(68)(1)~(61)のいずれか1記載のアデノウイルス又は組成物を対象に投与することを含む、対象において免疫応答を誘導する方法。
(69)対象がリサウイルスに感染している、(68)記載の方法。
(70)対象がヒトである、(68)又は(69)に記載の方法。
(71)リサウイルスがRABV、ABLV、ARAV、BBLV、DUVV、EBLV-1、EBLV-2、IRKV、KHUV、LBV、MOKV、SHIV、WCBV及びIKOVの1種以上から選択される狂犬病ウイルスの株である、(70)記載の方法。
(72)配列番号3のペントン、配列番号5のヘキソン、又は配列番号1のファイバーを含み、且つリサウイルス関連抗原をコードする導入遺伝子をも含む、非ヒトサルアデノウイルス。
(73)ChAd155由来のペントン(配列番号3)、ヘキソン(配列番号5)及びファイバー(配列番号1)タンパク質を含み、且つリサウイルス関連抗原をコードする導入遺伝子をも含む、(72)記載の非ヒトサルアデノウイルス。
(74)コードされる抗原が配列番号37に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、(72)又は(73)に記載の非ヒトサルアデノウイルス。
(75)導入遺伝子が配列番号38を含む、又は配列番号38からなる、(73)~(74)のいずれか1記載の非ヒトサルアデノウイルス。
(76)複製欠損アデノウイルスである、(70)~(75)のいずれか1記載の非ヒトサルアデノウイルス。
(77)アデノウイルスがE1遺伝子の機能的不活性化(例えば欠失)を含む、(75)記載の非ヒトサルアデノウイルス。
(78)アデノウイルスがE4遺伝子の機能的不活性化(例えば欠失)を含む、(75)又は(77)に記載の非ヒトサルアデノウイルス。
(79)アデノウイルスがE3遺伝子の機能的不活性化(例えば欠失)を含む、(72)~(78)のいずれか1記載の非ヒトサルアデノウイルス。
(80)アデノウイルスがAd5E4orf6遺伝子置換を含む、(72)~(79)のいずれか1記載の非ヒトサルアデノウイルス。
本発明は、以下の非限定的な実施例及び図への参照によって更に記載される。
【実施例
【0145】
[実施例1]
ChAd155の分離
野生型のチンパンジーアデノウイルス155型(ChAd155)は、アデノウイルスの分離及び解析技術を記載する目的で参照により本明細書に組み入れられるCollocaら(2012) Sci. Transl. Med. 4:1-9及びWO 2010086189に記載されるような標準的な手法を用いて、ニューイベリア研究センターの施設(ニューイベリア研究センター;ラファイエットのルイジアナ大学)で飼育される健康な若いチンパンジーから分離された。
【0146】
[実施例2]
ChAd155-RGベクター構築
その後、ChAd155ウイルスゲノムを、プラスミド又はBACベクターにクローニングし、続いて図3に示されるように改変した:
a)ウイルスゲノムのE1領域(bp 449~bp 3529)の欠失;
b)ウイルスゲノムのE4領域(bp 34731~bp 37449)の欠失;
c)ヒトAd5由来のE4orf6の挿入;及び
d) hCMV-RG-WPRE発現カセットの挿入。
【0147】
2.1:E1領域の欠失:BAC/ChAd155 ΔE1_TetO hCMV RpsL-Kana#1375の構築
ChAd155ウイルスDNA 及びサブグループC BAC シャトル(#1365)で同時形質転換したE. coli株BJ5183エレクトロポレーションコンピテント細胞(Stratageneカタログ番号 2000154)における相同組換えによって、ChAd155ウイルスゲノムをBACベクターにクローニングした。図4の模式図に示されるように、サブグループCシャトルは、pBeloBAC11(GenBank U51113, NEB)に由来したBACベクターであり、C種に属するチンパンジーアデノウイルスのクローニングに特化しており、従って、pIX遺伝子、及びC種 ChAdウイルスの左右の末端(左右のITRを含む)に由来するDNA断片を含有する。
【0148】
C種 BAC シャトルはまた、左末端とpIX遺伝子との間に挿入されたRpsL-Kanaカセットを含有する。加えて、ISceI制限酵素認識部位と隣接したAmp-LacZ-SacB選択カセットが、pIX遺伝子とウイルスゲノムの右末端との間に存在する。詳細には、BACシャトルは、以下の特性:左ITR: bp 27~139、hCMV(tetO) RpsL-Kanaカセット: bp 493~3396、pIX遺伝子: bp 3508~3972、ISceI制限酵素認識部位: bp 3990及び7481、Amp-LacZ-SacB選択カセット: bp 4000~7471、右ITR: bp 7805~7917を有した。
【0149】
BJ5183細胞を、精製したChAd155ウイルスDNA及びISceI制限酵素で消化した後ゲル精製したサブグループC BACシャトルベクターで、エレクトロポレーションによって同時形質転換した。pIX遺伝子及び右ITR配列(C種BACシャトルの線状化されたDNAの末端に存在する)とChAd155ウイルスDNA中に存在する相同配列との間で起こる相同組換えは、BACシャトルベクター内へのChAd155ウイルスゲノムDNAの挿入を引き起こす。同時に、ウイルスのE1領域は欠失し、RpsL-Kanaカセットによって置換されて、BAC/ChAd155 ΔE1/ TetO hCMV RpsL-Kana#1375を生じる。
【0150】
2.2:E.coli BJ5183での相同組換えによるプラスミド構築
2.2.1:E4領域の欠失-pChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV RpsL-Kana(#1434)の構築
ベクターの増殖を改善するために、クローニング及びE.coliでの相同組換えのいくつかのステップを含む方法を用いて、天然E4領域をAd5 E4orf6コード配列と置換することによって、ヌクレオチド34731~37449(ChAd155野生型配列)に及ぶE4領域の欠失をベクター骨格に導入した。E4コード領域は完全に欠失しているが、一方E4の天然のプロモーター及びポリアデニル化シグナルは保存された。この目的のために、下記に詳述されるようなE.coli BJ5183での相同組換えによるChAd155の天然 E4領域の置換によって、Ad5orf6の挿入を可能にするようにシャトルベクターを構築した。
【0151】
pARS C種 Ad5E4orf6-1の構築
鋳型としてAd5 DNAを用い、オリゴヌクレオチド5’-ATACGGACTAGTGGAGAAGTACTCGCCTACATG-3’(配列番号13)及び5’-ATACGGAAGATCTAAGACTTCAGGAAATATGACTAC-3’ (配列番号14)を用いるPCRによって、Ad5orf6を含むDNA断片を得た。PCR断片をBglII及びSpeIで消化し、BglII及びSpeIで消化したC種 RLD-EGFPシャトルにクローニングして、プラスミドpARS C種 Ad5orf6-1を作製した。シャトルに関する詳細は、Collocaら、Sci. Transl. Med. (2012) 4:115ra2に見出すことができる。
【0152】
pARS C種 Ad5E4orf6-2の構築
E4領域を欠失させるために、鋳型としてプラスミドBAC/ChAd155 ΔE1_TetO hCMV RpsL-Kana(#1375)を用い、以下のオリゴヌクレオチド:5’-ATTCAGTGTACAGGCGCGCCAAAGCATGACGCTGTTGATTTGATTC-3’(配列番号15)及び5’-ACTAGGACTAGTTATAAGCTAGAATGGGGCTTTGC-3’ (配列番号16)を用いるPCRによって、ChAd155野生型配列(配列番号10)のbp 34586~bp 34730に及ぶ177 bp DNA断片を増幅した。PCR断片をBsrGI及びSpeIで消化し、BsrGI及びSpeIで消化したpARS サブグループC Ad5orf6-1にクローニングして、プラスミドpARS C種 Ad5orf6-2(#1490)を作製した。このシャトルプラスミドの模式図は、図5に示される。詳細には、シャトルプラスミドは、以下の特性:左ITR:bp 1~113、C種の最初の460bp:bp 1~460、ChAd155 wt(配列番号10のbp 34587~bp 34724):bp 516~650、Ad5 orf6:bp 680及び1561、C種の最後の393 bp:bp 1567~1969、右ITR:bp 1857~1969を有した。
【0153】
pChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV RpsL-Kana(#1434)の構築
得られたプラスミドpARSサブグループC Ad5orf6-2はその後、ChAd155骨格中のE4領域をAd5orf6で置換するために用いられた。この目的のために、プラスミドBAC/ChAd155 ΔE1_TetO hCMV RpsL-Kana(#1375)をPacI/PmeIで消化し、消化したプラスミドpARS サブグループC Ad5orf6-2 BsrGI/AscIとともにBJ5183細胞に同時形質転換し、pChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV RpsL-Kana(#1434)プレアデノプラスミドを得た。
【0154】
2.2.2:hCMV-RG発現カセットの挿入‐pChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV-RG#1481の構築
hCMVプロモーターとBGH polyA配列との間に存在する相同性を利用することによるE.coli内での相同組換えによって、hCMV-RGカセットを、線状化したプレアデノアクセプターベクター中にクローニングした。図6に示されるプラスミドpvjTetOhCMV_RG_bghpolyAをSpeI、SphI及びAsiSIで切断し、tetO、RG及びBGHpolyA配列とともにhCMVプロモーターを含む2.58 Kbの断片を切り出した。得られた2.58 Kbの断片を、相同組換えによって、HCMV及びBGHpAの制御下でRpsL-Kana選択カセットを有するpChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV RpsL-Kana(#1434)アクセプターベクター中にクローニングした。そのアクセプタープレアデノプラスミドを制限エンドヌクレアーゼSnaBIで線状化した。その結果生じた構築物がpChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV-RGベクター(#1481)であった(図7)。
【0155】
2.2.3:hCMV-RG-WPRE発現カセットの挿入‐pChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV-RG-WPRE#1509の構築
pChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV-RGベクター(#1481)の塩基2840~2939の間及び塩基3180~3279の間に存在する相同性を利用することにより、E.coliでの相同組換えによって、WPRE配列をプレアデノアクセプターベクター中にクローニングした。WPRE、BGHpolyA、並びに#1481 pAdenoベクターの塩基2840~2939及び3180~3279に対応する組換えアームを含む1031 bp DNA断片をPCRによって増幅した。鋳型としてプラスミドpvjTetOhCMV_WPRE_BghPolyA (#1478)を使用し、以下のオリゴヌクレオチドFW 5'-ggaaggtcagcgtgaccagccagtccggcaaagtgatttcctcctgggagagctataaaagcggcggagagaccaggctgtgatgagcggccgcgatctgtaatcaacctctggattaca-3'(配列番号92)及びRW 5'-ATGGCTCCGGCGGTCTCTGCAACACAAATAAAGAGACCCTAAGACCCCCAACTTATATATTTTCATGACCACCCCAGGCCACGCCCACTCACCCACCTCACCATAGAGCCCACCGCATCC-3'(配列番号93)を用いてPCRを行った。結果として得られた1.03 Kb断片を、hCMVプロモーター及びBGHpA制御下のRG導入遺伝子(配列番号38)を有するpChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV-RGベクター(#1481)アクセプターベクターに相同組換えによってクローニングした。アクセプタープレアデノプラスミドを制限エンドヌクレアーゼAsiSIで消化した。結果として得られた構築物が、図8に示される、pChAd155 ΔE1, E4_Ad5E4orf6/TetO hCMV-RG-WPREbベクター(#1509)であった。
【0156】
[実施例3]
ChAd155-RGベクターの産生
ChAd155の生産性を、Procell 92細胞株においてChAd3及びPanAd3と比較して評価した。
【0157】
3.1:HIV Gag導入遺伝子を含むベクターの作製
HIV Gagタンパク質を発現するベクターは、上述のように(ChAd155/GAG)又は以前にChAd3/GAGについて記載されたように(Collocaら、Sci. Transl. Med. (2012) 4:115ra2)調製された。ChAd3/GAG及びChAd155/GAGを、Procell 92中でレスキューし、第三継代(P3)まで増幅し;P3溶解液を用いて、2つのT75フラスコの単層で培養されたProcell 92にそれぞれのベクターを感染させた。両方の感染実験において、100 vp/細胞の感染多重度(MOI)を用いた。十分な細胞変性効果が明らかな時に(感染の72時間後)、感染細胞を回収し、プールして;3サイクルの凍結/融解(-70℃/37℃)によって感染細胞からウイルスを放出させ、その後、溶解液を遠心分離によって清澄化した。CMVプロモーター領域に相補的なプライマー及びプローブを用いた定量PCR(QPCR)分析によって、清澄化溶解液を定量化した。そのオリゴヌクレオチド配列は、以下:CMVfor 5’-CATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCA-3’(配列番号23)、CMVrev 5’-GACTTGGAAATCCCCGTGAGT-3’ (配列番号24)、CMVFAM-TAMRAプローブ 5’-ACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTT-3’ (配列番号25)(QPCRはABI Prism 7900 Sequence detector - Applied Biosystemで行われた)である。清澄化溶解液において測定されて得られた体積力価(vp/ml)及び細胞あたりのウイルス粒子(vp/cell)で表される細胞比生産性は、下記の表2に示される。
【0158】
表2.P3溶解液からのベクター生産性
【表2】
【0159】
HIV Gag導入遺伝子を発現しているChAd155ベクターのより高い生産性を確認するために、接種原として精製されたウイルスを使用することによって、第二の実験を行った。この目的のために、Procell 92細胞をT25フラスコに播種し、細胞のコンフルエンスが約80%である時に、MOI=100 vp/細胞を用いて、ChAd3/GAG及びChAd155/GAGを感染させた。十分な細胞変性効果が明らかな時点で、感染細胞を回収し;凍結/融解によって感染細胞からウイルスを放出させ、遠心分離によって清澄化した。以下のプライマー及びプローブ: CMVfor 5’-CATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCA-3’(配列番号23)、CMV rev GACTTGGAAATCCCCGTGAGT(配列番号24)、CMVプロモーター領域に相補的なCMV FAM-TAMRAプローブ5’-ACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTT-3’(配列番号25)(サンプルはABI Prism 7900 Sequence detector- Applied Biosystemsで分析された)を用いた定量PCR分析によって、清澄化溶解液を定量化した。清澄化溶解液において測定して得られた体積力価(vp/ml)及び細胞あたりのウイルス粒子(vp/細胞)で表される細胞比生産性は、表3に提供される。
【0160】
表3.精製ウイルスからのベクター生産性
【表3】
【0161】
3.2:RSV導入遺伝子を含むベクターの産生
懸濁培養されたProcell 92.S細胞中でのRSVワクチンベクターの生産性を評価するために、別の一連の実験を行った。実験は、5×105 細胞/mlの細胞密度のProcell 92.Sに感染させることによって、同時にPanAd3/RSV(WO2012/089833に記載される)とChAd155/RSVとを比較した。感染3日後に感染細胞を回収し;3サイクルの凍結/融解によって感染細胞からウイルスを放出させ、溶解液を遠心分離によって清澄化した。その後、上記に報告されたような定量PCR分析によって、清澄化溶解液を定量化した。結果として得られた、清澄化溶液で測定された体積力価(vp/ml)、及び細胞あたりのウイルス粒子(vp/細胞)で表される細胞比生産性は、下記の表4に示される。
【0162】
表4.精製ウイルスからのベクター生産性
【表4】
【0163】
[実施例4]
導入遺伝子発現レベル
4.1:HIV Gag導入遺伝子の発現レベル
HeLa細胞に、HIV Gag導入遺伝子を含有するChAd3及びChAd155ベクターを感染させることによる並列実験において、発現レベルを比較した。HeLa細胞を24ウェルプレートに播種して、二連でMOI=250 vp/細胞を用いてChAd3/GAG及びChAd155/GAG精製ウイルスを感染させた。感染48時間後、HeLa感染細胞の上清を回収し、分泌HIV Gagタンパク質の産生を、市販のELISAキット(HIV-1 p24 ELISA Kit, PerkinElmer Life Science)の使用によって定量化した。メーカーの使用説明書に従い、HIV-1 p24抗原標準曲線を用いて、定量化を行った。Gagタンパク質のpg/mlで表された結果は、図9に図示される。
【0164】
4.2:RSV F導入遺伝子の発現レベル
HeLa細胞に、RSV F導入遺伝子を含む上述のPanAd3及びChAd155ベクターを感染させることによる並列実験において、発現レベルを比較した。この目的のために、HeLa細胞を6ウェルプレートに播種して、二連でMOI=500 vp/細胞を用いてPanAd3/RSV及びChAd155/RSV精製ウイルスを感染させた。感染48時間後、上清を回収し、分泌RSV Fタンパク質の産生を、ELISAによって定量化した。市販のマウス抗RSV Fモノクローナル抗体でコートされたマイクロプレートウェルに、5つの異なる希釈の上清を移した。二次抗RSV Fウサギ抗血清、続いてビオチンコンジュゲート抗ウサギIgGを用い、その後、ストレプトアビジン-APコンジュゲート(BD Pharmingen cat. 554065)を添加することによって、捕捉された抗原を示した。RSV Fタンパク質(Sino Biological cat. 11049-V08B)標準曲線を用いて、定量化を行った。RSV Fタンパク質のμg/mlで表される、得られた結果は、表5に示される。
【0165】
表5.RSV F導入遺伝子の発現レベル
【表5】
【0166】
PanAd3 RSVベクターと比較してChAd155 RSVベクターによってもたらされる、より高レベルの導入遺伝子発現を確認するために、ウェスタンブロット解析も行われた。HeLa細胞を6ウェルプレートに播種し、MOI=250及び500 vp/細胞を用いてPanAd3/RSV並びにChAd155/RSV精製ウイルスを感染させた。HeLa感染細胞の上清を回収し、分泌RSV Fタンパク質の産生を、非還元SDSゲル電気泳動によって分析し、続いてウェスタンブロット解析を行った。等量の上清を非還元SDSゲルに乗せ;電気泳動分離後、ニトロセルロース膜にタンパク質を転写し、抗RSV Fマウスモノクローナル抗体(antibodies-online.com(最終アクセス2015年4月13日)で入手可能なclone RSV-F-3 catalog no: ABIN308230)を用いてプローブとした。一次抗体とともにインキュベートした後、膜を洗浄し、その後、抗マウスHRPコンジュゲート二次抗体とともにインキュベートした。最後に、標準的な技術を用いた電気化学発光(ECL)(ECL検出試薬Pierceカタログ番号W3252282)によって、アッセイを現像した。ウェスタンブロットの結果は、図10に示される。矢印で示された約170 kDのバンドは、Fタンパク質に対するモノクローナル抗体mAb 13によって示され、それは三量体Fタンパク質の予想分子量に相当する。ChAd155 RSVベクターは、250と500vp/細胞の両方のMOIでPanAd3RSVより濃いバンドを生じたことがわかる。
【0167】
[実施例5]
マウス免疫付与実験による免疫学的有効性の評価
5.1:HIV Gag導入遺伝子を含むベクターの免疫原性
BALB/cマウス(群あたり5匹)において、ChAd3/GAGベクターと並行してChAd155/GAGベクターの免疫原性を評価した。筋肉内に106個のウイルス粒子を注射することによって、実験を行った。免疫付与の3週間後に、BALB/cマウスにおいてマッピングされたGAG CD8+ T細胞エピトープを用いて、ex vivo IFN-ガンマ 酵素結合免疫スポット(ELISpot)によって、T細胞応答を測定した。その結果は、図11に示され、100万個の脾臓細胞あたりのIFN-ガンマスポット形成細胞(SFC)として表される。それぞれの点は、1匹のマウスでの応答を示し、線はそれぞれの用量群の平均に対応する。5匹中4匹のマウスが両方のベクターに応じてCD8免疫優勢ペプチドに対して陽性の反応を示した。
【0168】
5.2 RSV導入遺伝子を含むベクターの免疫原性
BALB/cマウスにおいて、PanAd3/RSV及びChAd155/RSVベクターの免疫学的有効性を評価した。両方のベクターを、108、107及び3×106 vpの用量で筋肉内に注射した。ワクチン接種の3週間後、免疫されたマウスの脾臓細胞を分離し、抗原としてBALB/cマウスにおいてマッピングされた免疫優勢ペプチドF及びMエピトープを用いて、IFN-ガンマ-ELISpotによって分析した。免疫応答のレベルは、投与量の減少に従って(予想される通り)低下したが、免疫応答は、PanAd3/RSVワクチンで免疫されたマウスの同等の群と比較して、ChAd155/RSVベクターで免疫されたマウスの群において明らかに高かった(図12)。記号は個々のマウスのデータを示し、IFN-ガンマスポット形成細胞(SFC)/100万個の脾臓細胞で表され、3つの免疫優勢エピトープ(F51-66、F85-93及びM2-1282-290)に対する応答の和として計算され、バックグラウンドで補正されている。水平な線は、各用量群のIFN-ガンマSFC/100万個の脾臓細胞の平均数を表す。
【0169】
総合すると、上記に報告された結果は、ChAd155がChAd3及びPanAd3ベクターと比較して改善されたアデノウイルスベクターであることを実証した。ChAd155は、より生産性が高く、従って、製造過程を容易にし、in vitroとin vivoの両方でより高レベルの導入遺伝子の発現を可能にし、動物モデルで発現される抗原に対して、より強力なT細胞応答をもたらすことが示された。
【0170】
[実施例6]
ChAd155-RGは免疫原性であり、狂犬病曝露に対して防御性のものである
6.1:ChAd155-AGベクターの免疫原性
ChAd155-RGベクターの免疫学的有効性をCD1マウスにおいて評価し、結果を図13に示す。実験は109 vpを筋肉内に注射することにより行った。各点は1匹のマウスの反応を表す。図13は、狂犬病ウイルスGタンパク質抗原をコードする複製欠損アデノウイルスベクターの単回投与が強力な免疫応答を誘導したことを実証する。ベクターは防御レベルの中和抗体を誘導し(図13A)、狂犬病特異的循環T細胞を誘導した(図13B)。
【0171】
蛍光抗体ウイルス中和アッセイ(FAVN)は、Clique F.ら、J. Immunol. Methods(1998)212:79-87に記載されているように行った。図13Aは、複製欠陥ChAd155-RGの単回投与後2週間以内に機能的中和抗体が血清中に検出されたことを実証する。中和抗体は、投与後2週目までに、世界保健機関のガイドライン(点線)に記載されている、防御閾値レベルの0.5 IU/mlを十分に超える量で検出され、4週目に減少の徴候は示されなかった。図13Bは、10-9 pfu/mlのChAd155-RGを注射したCD1マウスの脾臓において狂犬病特異的T細胞が検出されたことを実証する。狂犬病Gタンパク質配列にまたがる重複ペプチドに対して上記のように実施したインターフェロン-ガンマELISpotアッセイは、狂犬病特異的T細胞の存在を実証した。
【0172】
単回ワクチン接種後21週まで抗体動態を追跡した。力価は8週でピークに達し、次いで低下したが、図14に示すように、セロコンバージョン閾値(点線)を十分に超えたままであった。
【0173】
次いで、ChAd155-RGの免疫学的有効性を、単回投与計画において市販の狂犬病ワクチンと比較し、その結果を図15に示す。左側のパネルは、ChAd155-RGのヒト用量の推定1/500(5×108ウイルス粒子)又は獣医用狂犬病ワクチンNOBIVACのイヌ用量の1/10のいずれかでBalb/cマウスを免疫した結果を示す。右側のパネルは、ChAd155-RGの推定ヒト用量の1/1000(108ウイルス粒子)又はRABIPURのヒト用量の1/10のいずれかでCD1マウスを免疫した結果を示す。ウイルス中和抗体力価を、IU/ML表記で上記のように測定し、力価を単回投与ワクチン接種の2月後に示した。市販のワクチンが大過剰であるにも関わらず、ChAd155-RGベクターによって誘導された免疫は、市販の獣医用及びヒト用狂犬病ワクチンの両方よりも優れていることが証明された。
【0174】
6.2:ChAd155-AGベクターの狂犬病曝露に対する防御能力
図16は、ChAd155-RGの単回投与が狂犬病曝露に対して防御することを実証する。4~6週齢の非近交系ICRマウスに、表6に示す用量でChAd155-RG、ChAd155対照ベクター又はRABIPURを腓腹筋に注射した。第1群~第6群の各々は10匹のマウスからなるものであった。表6に示す用量で、RABIPURを0、7及び21日目に3回の投与で、又はChAd155若しくはChAd155-RGを1回の投与でマウスに与えた。
【0175】
表6.ChAd155-RGの単回投与は狂犬病曝露に対して防御する
【表6】
【0176】
次いで、マウスにコウモリ狂犬病ウイルス変異体のヒト単離物を曝露し、90日間追跡した。曝露ウイルスは、狂犬病コウモリへの曝露に付随したヒトの致死例から単離されたストリートRABV変異体Ps P4であった。曝露用量は、未感作の未ワクチン接種動物における過去の実験において計算されたところでは、100%致死性であった。この試験では、同じ用量は60%致死性であった。血清学的検査は、Smithら(1973)Bull.世界保健機関.48:535-541によって記載されているように実施された、狂犬病のための迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)によって実施し、狂犬病特異的中和抗体を検出した。また、LIGHT DIAGNOSTICS狂犬病ポリクローナルDFA試薬(Milliporeカタログ番号5199)を用いて直接免疫蛍光法を行い、脳組織中のウイルス抗原を検出した。
【0177】
図16は、各々の個別のマウスについての狂犬病特異的中和抗体のレベルを示す。狂犬病抗原を含まない陰性対照ベクターを与えられた第1群のマウスは、セロコンバージョンを示さず、群の60%が生存した。第3群~第6群のマウスには、ChAd155-RGのウイルス粒子量を減少させて与えられた。108個又は107個のウイルス粒子を与えられた場合、すべてのマウスがセロコンバージョンを示して生存した。106個のウイルス粒子を注射したマウスは90%のセロコンバージョン率を示し、90%が生存した。105個のウイルス粒子を注射したマウスは、20%のセロコンバージョン率を示し、60%が生存した。これは、ChAd155-RGの単回筋肉内ワクチン接種が広い用量範囲にわたって0.5 IU/mlの閾値を超える中和抗体力価を誘発し、致死的な狂犬病曝露に対する防御を与えたことを実証する。したがって、図16及び表6は、組換えChAd155-RGの単回投与が、狂犬病に対する防御において、従来の、現在使用されている不活化ウイルスワクチンと少なくとも同程度有効であり得ることを実証する。
【0178】
[実施例7]
ChAd155-RGは狂犬病曝露に対する防御においてAdC68rab.gpよりも強力である
ChAd155-RGベクターが狂犬病ウイルス曝露に対して防御する能力を、文献に報告されている、AdC68 rab.gpベクターの能力と比較した。表7に示すように、Balb/cマウスをChAd155-RGの単回投与で筋肉内に免疫した。曝露前のウイルス中和抗体レベルは用量依存的であり、図17Aに示されている。次いで、これらのマウスを、実施例6に記載のように、コウモリ狂犬病ウイルス変異体のヒト単離物に曝露した。表7に示されているように、対照ChAd155ベクターを与えられたマウスの60%が生存した。108又は107 vpのChAd155-RGで免疫したBalb/cマウスは100%の生存率を示し、106 vpのChAd155-RGで免疫したマウスは90%の生存率を示し、106 vpのChAd155-RGで免疫したマウスは60%の生存率を示し、中和抗体力価はほとんどセロコンバージョン閾値まで低下した。
【0179】
次にこれらの結果は、Zhou (2006) Mol. Ther. 14:662 at 670によって公表された結果と相関していた(図17B)。Zhouらは、ICRマウスをアデノウイルス組換えウイルスベクターAdC68rab.gpで筋肉内に免疫し、次いでCVS-N2C狂犬病ウイルスを鼻腔内に曝露したことを報告した。対照動物はワクチン接種を受けておらず、死亡率は100%であった。5×105 pfuのAdC68rab.gpで免疫したマウスの45%がセロコンバージョンを示し、77%の生存率を示し(17B左側のパネル)、一方、5×104 pfuのChAd155-RGで免疫したマウス(17B右側のパネル)は90%のセロコンバージョン率を示し、60%の生存率を示した。
【0180】
本発明者らの本研究及びZhouらによって報告された研究では、50倍小さい用量を使用した場合(104 pfuのChAd155-RGと比較して5×105 pfuのAdC68rab.gp)、同様の血清学的データ及び防御有効性データが得られた。したがって、ChAd155-RGはAdC68rab.gpよりも約50倍強力である。
【0181】
表7.ChAd155-RG及びAdC68rab.gpの能力
【表7】
【0182】
[実施例8]
ChAd155-RGは非ヒト霊長類に対して長期的な免疫原性を提供する
非ヒト霊長類におけるChAd155-RGの免疫原性の動態、幅および持続性を評価するために、5頭のカニクイザル(Macaca fascicularis)の3群を以下のように処理した。第1群はChAd155-RGの5×1010ウイルス粒子でIMにて免疫し、続いて48週にChAd155-RGの5×1010ウイルス粒子をIMにて追加投与した。第2群はChAd155-RGの5×1010ウイルス粒子でIMにて免疫し、続いて24週にRABIPURワクチン接種を追加投与し、48週にChAd155-RG 5×1010ウイルス粒子をIMで追加投与した。第3群は筋肉内投与したヒト投与量の半分のRABIPURを与えられ、7及び21日目に同じものを追加投与した。血清試料を間隔をおいて回収し、全血を末梢血単核球(PBMC)分析のために回収した。
【0183】
ChAd155-RGの単回投与により誘発された48週までの免疫原性を、RABIPURの全経過と比較した。24週目のRABIPUR又は48週目のChAd155のいずれかによる追加免疫を導入して、2つのワクチンの適合性及び中長期の免疫応答を増強する能力を評価した。
【0184】
ChAd155-RGを用いた単回免疫により誘導された中和抗体力価を、全3回投与コースのRABIPURにより誘導されたものと比較した。図18は、組み換えChAd155-RGで免疫されたサル(第1群及び第2群)と、固定細胞培養ウイルスワクチンRABIPURで免疫されたサル(第3群)の、FAVNアッセイによって測定された中和抗体応答の、ワクチン接種後6月までの比較を示す。1010ウイルス粒子ChAd155-RGの単回投与は、RABIPURの3回投与と同じ免疫応答を誘導した。
【0185】
これらの結果は、ChAd155-RGの単回投与が、少なくとも48週にわたって安定であり、RABIPURの3回投与と同等な、セロコンバージョン閾値を十分に上回る中和抗体力価を誘発することができたことを示す。ChAd155-RGによって誘導されたセロコンバージョンは迅速であった。ChAd155-RGで免疫された全ての動物は、免疫の2週間後に閾値を超え、その時点においてRABIPURで免疫された動物は既に2回目の投与を受けていた。
【0186】
24週目に第2群の動物をRABIPURで追加免疫すること(図18-四角)は、ウイルス中和抗体を0日目にChAd155-RGを投与した後に到達するピークレベルよりも十分に高く上昇させるのに非常に効果的であった。これは、RABIPURウイルス溶解物抗原が、ChAd155-RG核酸にコードされる抗原によって誘導される免疫を完全に増強することができることを示す。
【0187】
第1群(図18-三角)と第2群(図18-逆三角)の動物をChAd155-RGで追加免疫することもまた非常に効果的であった。ChAB155-RGで免疫した動物は、それらがRABIPURで中間追加免疫を与えられたか否かに関わらず、48週目にChAd155-RG追加免疫に対して強い免疫応答を示した。これは、ChAd155-RG核酸がコードする抗原が有効に再投与され得ることを示す。それはまた、ChAd155-RG核酸がコードする抗原が、RABIPURウイルス溶解物抗原の投与後に免疫応答を増強するのに有効であることも示す。結論として、図18は、狂犬病G抗原をコードするサルアデノウイルスChAd155とウイルス溶解物抗原を含む従来の狂犬病ワクチンとの適合性を実証する。
【0188】
[実施例9]
ChAd155-RGは非ヒト霊長類において細胞性免疫応答を誘導する
実施例8に示された体液性抗体応答に加えて、ChAd155-RGは強い細胞性免疫応答を誘導した。図19は、ChAd155-RGの単回投与が、IFNガンマ-ELIspotアッセイによって検出されるように、ワクチン接種された動物の末梢血中の狂犬病糖タンパク質特異的IFNガンマ分泌T細胞のレベルの維持を誘導したことを示す。対照的に、RABIPURをワクチン接種した動物では、細胞性免疫応答は検出限界未満であった。
【0189】
実施例8に記載のように、ChAd155-RGで免疫し、48週目にChAd155-RGで追加免疫した第1群の動物は、追加免疫がIFNガンマレベルを再増幅したことを実証した。ChAd155-RGで免疫し、まず24週にてRABIPURで、次いで48週にてChAd155-RGで追加免疫した第2群の動物は、RABIPUR追加免疫に応答してIFNガンマレベルの増加を示さなかったが、ChAd155-RG追加免疫に強い応答を示した。これは、ChAd155-RG追加免疫が成熟動物において記憶T細胞を増やすことができることを実証する。追跡調査の全過程にわたってインターロイキン4応答は検出されなかった。
【0190】
[実施例10]
ヒトにおける安全性のための用量漸増試験
ヒトにおけるChAd155-RGの安全性を評価するために、第I相試験が開始される。対象は、狂犬病ワクチン接種、狂犬病動物への曝露、又はアデノウイルスベースの治験用ワクチンを与えられたことがこれまでにない、正常で健康な成人男女である。試験規模は、試験の主要評価項目である安全性の結果を決定するのに十分大きいものとなる。95%信頼区間を含む標準的な統計分析が行われる。
【0191】
対象は、ChAd155-RGの1回以上の筋肉内注射を受け、RABIPURが対照薬として使用される。低用量のChAd155-RGワクチンが投与され、データの検討および承認の後に用量が増加される。対象は、発熱、頭痛、悪心、嘔吐、倦怠感及び筋肉痛;並びに注射部位の痛み、圧痛、硬結、発赤又は腫れを含むがこれらに限定されない全身的及び局所的有害事象について投与後に追跡される。血液パラメータが検査され、予期しない追加症状があれば記録される。
【0192】
この試験では、ワクチン関連の免疫応答を評価することによって免疫原性を追加して評価することができる。結果の尺度には、血清中和抗体のレベル、循環B細胞分泌抗体の定量化、及びリサウイルス抗原に対するT細胞応答の定量化が含まれ得るが、これらに限定されない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
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