(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 25/304 20060101AFI20220805BHJP
B41J 2/32 20060101ALI20220805BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
B41J25/304 H
B41J2/32 C
B41J2/325 A
(21)【出願番号】P 2019534127
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2017084503
(87)【国際公開番号】W WO2018115495
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-18
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】502153385
【氏名又は名称】ヴィデオジェット テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】マクネストリー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレイ ガレス
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-157244(JP,A)
【文献】特開平06-171179(JP,A)
【文献】特開平11-320855(JP,A)
【文献】特開平07-276729(JP,A)
【文献】特開2011-056803(JP,A)
【文献】特開平07-329368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0231894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 25/304
B41J 2/32
B41J 2/325
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタであって、
前記プリンタに隣接して設けられた被印刷物上に選択的にマークを生成させるように構成された印刷ヘッドであって、該印刷ヘッドが印刷面から離間して配置された第1の構成と、印刷動作中に前記印刷ヘッドが前記被印刷物を前記印刷面に対して押圧するように構成される第2の構成とを有する印刷ヘッドと、
前記第1の構成と前記第2の構成との間で前記印刷面に向かい及び該印刷面から離れる前記印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成され、永久磁石と電磁石とを含む印刷ヘッド駆動組立体と、
を備え、
前記電磁石が第1の状態にある時に、前記永久磁石と前記電磁石との間に吸引磁力が発生し、前記電磁石が第2の状態にある時に、前記永久磁石と前記電磁石との間に反発磁力が発生し、前記吸引磁力及び前記反発磁力の各々が、前記印刷ヘッドを前記印刷面から離れるように付勢する段階及び前記印刷面に向かって付勢する段階のうちの一方を行うように構成され、
前記印刷ヘッド駆動組立体は、前記印刷ヘッドが、前記第1及び第2の構成の各々にある時に、前記電磁石が前記第1の状態にある時の前記印刷ヘッド駆動組立体によって当該構成に保持され、前記永久磁石と前記電磁石との間に発生する前記吸引磁力によって前記第1及び第2の構成のうちの一方に保持されるように構成される、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記印刷ヘッド駆動組立体は、弾性付勢部材を更に備え、前記印刷ヘッドは、前記弾性付勢部材が発生させる力によって前記第1及び第2の構成のうちの他方に保持される、ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1の状態において、前記電磁石は消磁状態にあり、前記永久磁石は、該永久磁石と前記電磁石との間に吸引力を発生させるように構成される、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第2の状態において、前記電磁石は第1の方向に励磁され、前記永久磁石と前記電磁石との間に反発力が発生するようになる、ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項5】
第3の状態において、前記電磁石は第2の方向に励磁され、前記永久磁石と前記電磁石との間に第2の吸引力が発生するようになる、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項6】
前記印刷ヘッド駆動組立体は、印刷動作中に前記印刷ヘッドを前記印刷面に対して印刷力によって押圧するように構成され、
前記印刷力は、前記弾性付勢部材によって少なくとも部分的に発生する、ことを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記印刷ヘッドは、前記永久磁石によって少なくとも部分的に発生させる磁力によって前記印刷面から離れる方向に付勢される、ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項8】
前記第1及び第2の構成は、安定した構成である、ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項9】
前記印刷ヘッドは、前記第1の構成にある時に、前記電磁石が発生させる磁力によって前記第2の構成に向かって移動する、ことを特徴とする請求項1から請求項8のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項10】
前記印刷ヘッドは、前記第2の構成にある時に、前記電磁石が発生させる力によって前記第1の構成に向かって移動する、ことを特徴とする請求項1から請求項9のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項11】
前記印刷力は、前記弾性付勢部材が発生させる第1の力成分と、前記電磁石が発生させる第2の力成分とを含む、ことを特徴とする請求項6に記載のプリンタ。
【請求項12】
印刷ヘッド位置信号を発生させるように構成された印刷ヘッド位置センサを更に備え、前記印刷ヘッド位置信号に基づいて前記電磁石が制御される、請求項1から請求項11のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項13】
前記電磁石は、前記印刷ヘッドと前記印刷面との衝撃力を制御するように制御される、ことを特徴とする請求項1から請求項12のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項14】
前記印刷ヘッド駆動組立体を制御するように配列されたコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記電磁石の属性を監視するように配列され、そして前記監視された属性に基づいて前記電磁石に対する制御信号を発生させるように配列される、ことを特徴とする請求項1から請求項13のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項15】
前記コントローラは、
前記印刷ヘッド駆動組立体の第1の移動の際に前記電磁石の前記属性を監視し、
前記監視される属性に基づいて前記印刷ヘッド駆動組立体の第2の移動における前記電磁石に対する制御信号を発生させる、
ように配列される、ことを特徴とする請求項14に記載のプリンタ。
【請求項16】
前記印刷ヘッド駆動組立体を制御するように配列されたコントローラを更に備え、前記コントローラは、前記印刷ヘッド位置信号を受け取り、前記印刷ヘッド位置信号に基づいて前記印刷ヘッド駆動組立体に対する制御信号を発生させるように構成される、ことを特徴とする請求項12に記載のプリンタ。
【請求項17】
前記コントローラは、ターゲット印刷ヘッド位置を受け取り、該ターゲット印刷ヘッド位置に基づいて前記印刷ヘッド駆動組立体に対する制御信号を発生させるように更に配列される、ことを特徴とする請求項16に記載のプリンタ。
【請求項18】
前記印刷ヘッド駆動組立体を制御するように配列されたコントローラを更に備え、前記コントローラは、前記印刷ヘッド駆動組立体によって発生されるターゲット力出力を示すデータを発生させるように配列される、ことを特徴とする請求項1から請求項13の何れかに記載のプリンタ。
【請求項19】
前記コントローラは、前記ターゲット力出力と前記印刷ヘッドの位置に基づいてターゲット電磁石電流を示すデータを発生させるように配列される、ことを特徴とする請求項18に記載のプリンタ。
【請求項20】
前記印刷ヘッド駆動組立体を制御するように配列されたコントローラを更に備え、前記コントローラは、電磁石電流と印刷ヘッド位置及び印刷ヘッド駆動組立体力出力との間の関係を示す基準データに基づいて、ターゲット電磁石電流を示すデータを発生させるように配列される、ことを特徴とする請求項1から請求項13の何れかに記載のプリンタ。
【請求項21】
前記電磁石内を流れる実電流を示す出力を発生させるように構成された電流センサを更に備え、
前記コントローラは、前記ターゲット電磁石電流を示すデータ及び前記実電流を示す出力に基づいて印刷ヘッド駆動組立体制御信号を発生させるように配列される、ことを特徴とする請求項19又は請求項20に記載のプリンタ。
【請求項22】
前記プリンタは熱転写プリンタであり、前記印刷ヘッドは、前記被印刷物上に前記マークを生成するためにインク担持リボンから該被印刷物上にインクを転写するように選択的に励磁されるように構成される、ことを特徴とする請求項1から請求項21のうちの何れかに記載のプリンタ。
【請求項23】
プリンタ用コントローラであって、
前記プリンタが、
前記プリンタに隣接して設けられた被印刷物上に選択的にマークを生成させるように構成された印刷ヘッドであって、該印刷ヘッドが印刷面から離間して配置された第1の構成と、印刷動作中に前記印刷ヘッドが前記被印刷物を前記印刷面に対して押圧するように構成される第2の構成とを有する印刷ヘッドと、
前記第1の構成と前記第2の構成との間で前記印刷面に向かい及び該印刷面から離れる前記印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成され、永久磁石と電磁石とを含む印刷ヘッド駆動組立体と、
を備え、
前記電磁石が第1の状態にある時に、前記永久磁石と前記電磁石との間に吸引磁力が発生し、前記電磁石が第2の状態にある時に、前記永久磁石と前記電磁石との間に反発磁力が発生し、前記吸引磁力及び前記反発磁力の各々が、前記印刷ヘッドを前記印刷面から離れるように付勢する段階及び前記印刷面に向かって付勢する段階のうちの一方を行うように構成され、
前記印刷ヘッド駆動組立体は、前記印刷ヘッドが、前記第1及び第2の構成の各々にある時に、前記電磁石が前記第1の状態にある時の前記印刷ヘッド駆動組立体によって当該構成に保持され、前記永久磁石と前記電磁石との間に発生する前記吸引磁力によって前記第1及び第2の構成のうちの一方に保持されるように構成され、
前記コントローラは、前記印刷ヘッド駆動組立体に、前記印刷面に向かい及び該印刷面から離れる前記印刷ヘッドの移動を引き起こさせ、更に前記印刷ヘッドを前記第1及び第2の構成の各々に保持させるように、前記電磁石の励磁状態を制御するように構成される、ことを特徴とするコントローラ。
【請求項24】
プリンタの印刷ヘッド駆動組立体を制御する方法であって、
前記プリンタが、
前記プリンタに隣接して設けられた被印刷物上に選択的にマークを生成させるように構成された印刷ヘッドであって、該印刷ヘッドが印刷面から離間して配置された第1の構成と、印刷動作中に前記印刷ヘッドが前記被印刷物を前記印刷面に対して押圧するように構成される第2の構成とを有する印刷ヘッドと、
前記第1の構成と前記第2の構成との間で前記印刷面に向かい及び該印刷面から離れる前記印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成され、永久磁石と電磁石とを含む前記印刷ヘッド駆動組立体と、
を備え、更に、
前記電磁石が第1の状態にある時に、前記永久磁石と前記電磁石との間に吸引磁力が発生し、前記電磁石が第2の状態にある時に、前記永久磁石と前記電磁石との間に反発磁力が発生し、前記吸引磁力及び前記反発磁力の各々が、前記印刷ヘッドを前記印刷面から離れるように付勢する段階及び前記印刷面に向かって付勢する段階のうちの一方を行うように構成され、
前記印刷ヘッドが、前記第1及び第2の構成の各々にある時に、前記電磁石が前記第1の状態にある時の前記印刷ヘッド駆動組立体によって当該構成に保持され、前記永久磁石と前記電磁石との間に発生する前記吸引磁力によって前記第1及び第2の構成のうちの一方に保持されるように構成され、
前記方法が、
前記印刷面に向かい及び該印刷面から離れる前記印刷ヘッドの移動を前記印刷ヘッド駆動組立体に引き起こさせるように前記電磁石の励磁状態を制御する段階と、
前記印刷ヘッドを前記第1及び第2の構成の各々に保持するように前記電磁石の前記励磁状態を制御する段階と、
印刷動作中に前記印刷ヘッドが前記被印刷物を前記印刷面に対して押圧するように前記電磁石の前記励磁状態を制御する段階と、
を含む方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法を実施するように配列されたコンピュータ読み取り可能命令を備えるコンピュータプログラムを保持するコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項26】
プリンタ用の印刷ヘッドであって、
前記印刷ヘッドの第1の面に付随し、各々が、前記印刷ヘッドに隣接して設けられた被印刷物上にマークを生成するように選択的に励磁されるように構成された複数の印刷要素と、
前記印刷ヘッドの位置を示す信号を発生させるように配列され、前記第1の面のほぼ反対側にある前記印刷ヘッドの第2の面に付随する印刷ヘッド位置センサと、
を備え
、
前記印刷ヘッド位置センサは、基準場所から信号を受け取るように配列されたレシーバと、前記基準場所に向かって信号を放出するように配列されたエミッタを備え、
前記レシーバは、前記基準場所によって反射された反射信号を受け取るように配列され、前記反射信号が前記エミッタによって放出された前記信号に基づく、ことを特徴とする、印刷ヘッド。
【請求項27】
前記印刷ヘッド位置センサは、印刷面に向かい及び該印刷面から離れる前記印刷ヘッドの移動中に前記印刷ヘッドの一部分と
前記基準場所との間の離隔距離を示す信号を発生させるように構成される、ことを特徴とする請求項26に記載の印刷ヘッド。
【請求項28】
プリンタ用の印刷ヘッドであって、前記プリンタが、印刷面に向かい及び該印刷面から離れる前記印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成され且つ電磁石を含む印刷ヘッド駆動組立体を備え、前記印刷ヘッド及び前記印刷ヘッド駆動組立体が、前記印刷面に対して実質的に平行な方向に移動するように配列され、
前記印刷ヘッドが、
前記印刷ヘッドの第1の面に付随し、各々が、前記印刷ヘッドに隣接して設けられた被印刷物上にマークを生成するように選択的に励磁されるように構成された複数の印刷要素と、
印刷ヘッド駆動組立体制御信号を前記印刷ヘッド駆動組立体に供給するように構成された印刷ヘッド駆動組立体制御接続部と、
を備える、印刷ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタに関する。より具体的には、限定ではないが、本発明は、印刷を行う対象の印刷面に向かう及び印刷面から離れる印刷ヘッドの移動が永久磁石と電磁石との間の相互作用によって少なくとも部分的に引き起こされるサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写プリンタは、インク担持リボンを用いている。印刷動作において、リボン上に担持されたインクは、印刷すべき被印刷物へと転写される。インクの転写を行うために、印刷ヘッドがリボンと接触状態にされ、リボンは、被印刷物と接触状態にされる。印刷ヘッドは、リボンとの接触状態にある間に加熱される時にインクをリボンから被印刷物上に転写する印刷要素を含む。インクは、リボンの加熱された印刷要素に隣接する領域から転写されることになる。画像を被印刷物上に印刷することは、画像のうちでインクを転写することを必要とする領域に相応する印刷要素を加熱することと、インクを転写することを必要としない領域に相応する印刷要素を加熱しないこととを選択的に行うことよってできる。
【0003】
ダイレクトサーマルプリンタはまた、熱感知被印刷物上にマークを発生させるために熱印刷ヘッドを用いる。印刷ヘッドは、被印刷物との直接接触状態にされる。被印刷物との接触状態にある間に印刷ヘッドの印刷要素が加熱されると、被印刷物のうちで加熱された印刷要素に隣接する領域上にマークが形成される。
【0004】
一部の従来技術のプリンタでは、印刷面に向かう又は該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動は、印刷面、何れかの被印刷物、及び印刷ヘッドと印刷面との間に置かれたリボン(存在する場合には)との接触状態へと印刷ヘッドを押圧する空気シリンダによって空気圧を用いて行われる。かかる配列は有効であるが、幾つかの欠点を伴う。詳細には、通常は印刷ヘッドによって印加される圧力を変動させることは容易に実施可能というわけではなく、このプリンタの使用には、利用可能な圧縮空気供給源を必要とする。或いは、印刷ヘッドは、印刷面に向かって又は印刷面から離れるようにモータによって移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの実施形態の目的は、上記で記載されたか否かに関わらず、従来技術のサーマルプリンタの欠点のうちの少なくとも幾つかを回避又は軽減する新しいサーマルプリンタを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によると、プリンタであって、該プリンタに隣接して設けられた被印刷物上にマークを選択的に生成させるように構成され、印刷動作中に印刷面に対して被印刷物を押圧するように構成された印刷ヘッドを備えるプリンタが提供される。プリンタは、印刷面に向かい及び該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成されて、永久磁石と電磁石とを含む印刷ヘッド駆動組立体を更に備える。電磁石が第1の状態にある時に、永久磁石と電磁石との間に吸引磁力が発生する。電磁石が第2の状態にある時に、永久磁石と電磁石との間に反発磁力が発生する。これら吸引磁力及び反発磁力の各々が、印刷ヘッドを印刷面から離れるように付勢する段階及び印刷面に向かって付勢する段階のうちの一方を行うように構成される。
【0008】
電磁石及び永久磁石の使用は、様々な大きさの吸引力又は反発力を発生させるようにこれら2つの磁気構成要素の磁気相互作用を制御することを可能にする。例えば、永久磁石の磁場によって電磁石の一部分を磁化することを可能にすることができ、これにより、電磁石が消磁状態にある時であってもこれらの間に吸引磁力が生じる。更に、吸引磁力の強度を高めるために、永久磁石の磁場を電磁石が発生させる磁場によって補強することができる。或いは、永久磁石の磁場に電磁石が発生させる磁場が対抗し、更に打ち勝つ場合には、反発磁力を引き起こすことができる。より一般的には、印刷ヘッド組立体の構成要素に対して作用する力を制御するように、例えば、印刷動作の際及び合間に印刷ヘッドの移動を引き起こすように様々な磁気構成要素の間の磁気相互作用が制御される。更に、この構成における永久磁石の使用は、電磁石を常時励磁しなくても幾つかの力を発生させることを可能にし、これによりかかる電磁石が発生させる熱が低減する。
【0009】
吸引磁力は、印刷ヘッドを印刷面から離れるように付勢するように構成することができる。反発磁力は、印刷ヘッドを印刷面に向かって付勢するように構成することができる。
【0010】
プリンタは、印刷ヘッド駆動組立体を制御するように配列されたコントローラを備えることができる。コントローラは、電磁石を制御するように配列することができる。コントローラは、電磁石の励磁状態を制御するように配列することができる。
【0011】
第1の状態において、電磁石は消磁状態にあるものとすることができる。第1の状態において、永久磁石は、永久磁石と電磁石との間に吸引力を発生させるように構成することができる。第1の状態は、励磁状態の一例である。
【0012】
すなわち、第1の状態では、電磁石をオフにされるように構成することができる。特に、第1の状態では、電磁石は、磁場を発生させないように構成することができる。しかしながら電磁石は、永久磁石が生成する磁場によってなおも磁化することができ、その結果、永久磁石と電磁石との間に吸引力が発生する。これにより、非通電状態であっても吸引力を発生させることが可能になる。
【0013】
第2の状態において、電磁石は、第1の方向に励磁され、永久磁石と電磁石との間に反発力が発生するようにすることができる。すなわち、第2の状態では、電磁石を、永久磁石と電磁石との間に反発力を発生させるように構成することができる。第2の状態は、励磁状態の一例である。
【0014】
例えば、電磁石は、永久磁石によって形成される相応する磁極に反発するように作用する磁極を発生させるように励磁することができる。永久磁石によって形成される相応する磁極は、発生する磁極に隣接するものとすることができる。
【0015】
第3の状態において、電磁石は、第2の方向に励磁され、永久磁石と電磁石との間に第2の吸引力が発生するようにすることができる。第2の方向は、第1の方向と反対とすることができる。
【0016】
例えば、電磁石は、永久磁石によって形成される反対の磁極を引きつけるように作用する磁極を発生させるように構成することができる。第2の吸引力は、分離状態にある永久磁石が発生させる吸引力よりも大きい大きさを有することができる。
【0017】
電磁石は、軟磁性要素とコイルとを備えることができる。永久磁石は、ネオジム(例えばグレードN42)又はサマリウム-コバルト等の硬磁性材料を備えることができる。
【0018】
電磁石は、第1の方向と、該第1の方向と反対の第2の方向とに磁場を発生させるように励磁することができる。電磁石は、コイルの内部に電流を流すことによって励磁することができる。コイルは、該コイルが発生させる磁場が軟磁性要素に結合され、軟磁性要素の表面に磁極が形成されるように軟磁性要素に動作可能に付随させることができ、極の極性は、発生する磁場の方向に依存する。
【0019】
コイルは、その内部に電流を流した時に、上記軟磁性要素内に磁場が発生するように、この軟磁性材料の少なくとも一部分の周囲に巻き付けることができる。磁場の方向は、コイルの内部を流れる電流の方向に依存するものとすることができる。
【0020】
軟磁性要素は、強磁性要素とすることができる。
【0021】
印刷ヘッド駆動組立体は、印刷動作中に印刷ヘッドを印刷面に対して押圧するように構成することができる。印刷ヘッド駆動組立体は、印刷力によって印刷動作中に印刷ヘッドを印刷面に対して押圧するように構成することができる。
【0022】
印刷動作中に、被印刷物は、プリンタに隣接する事前に決定された経路に沿って給送することができる。印刷ヘッドは、印刷動作中に被印刷物を印刷面に対して押圧するようにすることができる。
【0023】
印刷力は、事前に決定された印刷力とすることができる。事前に決定された印刷力は、プリンタ及び/又は被印刷物の属性に依存して変動させることができる。
【0024】
印刷ヘッド駆動組立体は、弾性付勢部材を備えることができる。印刷力は、この弾性付勢部材が少なくとも部分的に発生させることができる。
【0025】
弾性付勢部材は、例えばコイルばね等のばねとすることができる。ばね力は、弾性付勢部材が実質的に単独で発生させることができる
【0026】
印刷力は、少なくとも部分的に磁力によって発生させることができる。
【0027】
印刷ヘッドは、磁力によって印刷面から離れる方向に付勢することができる。
【0028】
印刷ヘッドは、少なくとも部分的に永久磁石が発生させる磁力によって印刷面から離れる方向に付勢することができる。
【0029】
印刷ヘッドは、印刷ヘッドが印刷面から離間して配置された第1の構成と、印刷面に向かって伸長された第2の構成とを有する。第2の構成において、印刷ヘッドは、印刷面に対して押圧することができる。第2の構成において、印刷ヘッドは、被印刷物を印刷面に対して押圧するように構成することができる。
【0030】
印刷面に対して押圧されるとは、印刷ヘッドが印刷面と直接接触状態にあることを意味することを意図するものではなく、又はこのことが実際に必要とされるわけではない。むしろ、これは、印刷ヘッドが印刷面に向かって付勢され、印刷面による抵抗を受けることを意味する。しかしながら、印刷ヘッドが印刷面に対して押圧される時には、印刷ヘッドと印刷面との間に何れかの材料(例えば被印刷物及び/又はインク担持リボン)が存在する可能性がある。更に、幾つかの構成(例えば、印刷面、被印刷物、及びリボンのうちの1つ又は2つ以上が存在しない場合)では、印刷ヘッドが第2の構成にある時に、印刷ヘッドはいかなる外部構成要素による抵抗も受けない可能性があることは理解されるであろう。従って、第2の構成は、印刷面が存在する場合には、印刷ヘッドが印刷面と接触状態になる伸長構成であると考えることができる。
【0031】
第1の構成は、非印刷構成と呼ぶことができ、この構成では印刷ヘッドは、印刷面から離間して配置された位置に維持される。第2の構成(印刷ヘッドが被印刷物を印刷面に対して押圧するように構成される)は、印刷構成と呼ぶことができる。
【0032】
印刷ヘッド駆動組立体は、第1の構成と第2の構成との間で印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成することができる。印刷ヘッド駆動組立体は、印刷ヘッドが、第1及び第2の構成の各々にある時に、電磁石が第1の状態にある時の印刷ヘッド駆動組立体によって当該構成に保持され、永久磁石と電磁石との間に発生する上記吸引磁力によって第1及び第2の構成のうちの一方に保持されるように構成することができる。
【0033】
印刷ヘッド駆動組立体は、弾性付勢部材を更に備えることができる。印刷ヘッドは、弾性付勢部材が発生させる力によって第1及び第2の構成のうちの他方に保持することができる。
【0034】
印刷ヘッド駆動組立体は、第2の永久磁石を更に備えることができ、印刷ヘッドは、第2の永久磁石と電磁石との間に発生する吸引磁力によって第1及び第2の構成のうちの他方に保持される。例えば、弾性付勢部材の代わりに第2の永久磁石を用いて、印刷ヘッドを第1及び第2の構成のうちの他方に保持することができる。
【0035】
第1の状態では、電磁石は消磁状態、又は十分に低いレベルに励磁されている状態とすることができ、印刷ヘッドが第1及び第2の状態のうちのどちらにある場合であっても印刷ヘッド駆動組立体によって印刷ヘッドに対して作用される全体の力によって印刷ヘッドが保持される。
【0036】
印刷ヘッドは、永久磁石によって第1の構成に向かって付勢することができる。
【0037】
永久磁石の作用によって発生する付勢する力の大きさは、印刷ヘッドの位置に依存するものとすることができる。永久磁石の作用によって発生する付勢する力の大きさは、印刷ヘッドと第1の構成との間の距離との反比例関係に従うものとすることができる。従って、印刷ヘッドが第1の構成に近い程、印刷ヘッドを第1の構成に向かって付勢するために永久磁石の作用によって発生する付勢する力が強くなる。
【0038】
印刷ヘッドは、弾性付勢部材によって第2の構成に向かって付勢することができる。
【0039】
弾性付勢部材が発生させる付勢する力の大きさは、印刷ヘッドの位置に依存するものとすることができる。弾性付勢部材が発生させる付勢する力の大きさは、印刷ヘッドと第1の構成との間の距離に部分的に反比例することができる。従って、印刷ヘッドが第2の構成に近い程(及び印刷ヘッドが第1の構成から遠い程)、印刷ヘッドを第2の構成に向かって付勢するために弾性付勢部材が発生させる付勢する力は強くなる。
【0040】
第1及び第2の構成は安定した構成とすることができる。
【0041】
すなわち、印刷ヘッドは、第1又は第2の構成のどちらにある時にも、外部駆動力が作用しない限り、プリンタの電源がオフになった場合でもそれぞれの構成に留まることになる。
【0042】
印刷ヘッドが第2の構成にある時に、弾性付勢部材が発生させる付勢する力は、永久磁石が発生させる付勢する力よりも大きいものとすることができる。印刷ヘッドが第1の構成にある時に、永久磁石が発生させる付勢する力は、弾性付勢部材が発生させる付勢する力よりも大きいものとすることができる。
【0043】
言い換えれば、印刷ヘッドは、第1の構成及び第2の構成という2つの安定構成を有することができる。2つの安定構成のどちらにある場合であっても、印刷ヘッドは、それを2つの構成のうちの他方に向かって付勢する力に打ち勝つ力によって当該構成に向かって付勢される。従って、印刷ヘッドを2つの安定構成のうちの一方から離れるように移動させるためには更なる力が必要とされる可能性がある。しかしながら、印刷ヘッドがそれぞれの安定構成から十分遠くまで移動する(例えば更なる力の影響下で)と、対向する付勢する力が支配的となり、その結果、印刷ヘッドは2つの安定構成のうちの他方に移動してそこに留まる。第1の構成と第2の構成との間の何れかの平衡点において、各方向の付勢する力は相殺されるが、この平衡点のどちらの側においても一方又は他方の付勢する力が印刷ヘッドを第1及び第2の構成のうちのそれぞれの方へと引張ることが支配的となることから、この構成は不安定構成である。
【0044】
従って、第1又は第2の構成のどちらにおいても、電磁石のコイルの内部を流れる電流が存在しない場合には、弾性付勢部材は、印刷ヘッドを第2の構成に向かって付勢するように構成することができ、永久磁石は、印刷ヘッドを第1の構成に向かって付勢するように構成することができることは理解されるであろう。しかしながら、第1及び第2の構成のどちらにおいても、弾性付勢部材が発生させる力と永久磁石が発生させる力との間の差である合力が発生する。第1の構成では、合力は負とすることができ、印刷ヘッドを印刷面から離れるように引張るように作用することができる。第2の構成では、合力は正とすることができ、印刷ヘッドを印刷面に向かって押送するように作用することができる。第2の構成における合力を、印刷力と呼ぶことができる。
【0045】
印刷ヘッドは、第1の構成にある時に、電磁石が発生させる磁力によって第2の構成に向かって移動させることができる。すなわち、印刷ヘッドは、電磁石が励磁された時に発生する力によって第1の構成から第2の構成に向かって移動させることができる。
【0046】
電磁石は、電圧が印加された時に励磁することができる。印加電圧は、複数のパルスを含むことができる。印加電圧は、当該技術分野で公知であるようにパルス幅変調することができる。印加電圧は、コイル内に電流を流すことができる。電磁石が励磁された時に発生する力の大きさは、電磁石のコイルの内部を流れる電流の大きさに依存するものとすることができる。
【0047】
印加電流の大きさは、第1の構成において弾性付勢部材が生成する力との組み合わせで、電磁石の軟磁性材料への永久磁石の吸引力によって発生する付勢する力よりも大きく、且つそれと実質的に反対方向にある力を発生させるのに十分なものとすることができる。
【0048】
電流印加に起因して電磁石が発生させる力は、印刷ヘッドを第1の構成から、弾性付勢部材が発生させる付勢する力が永久磁石が発生させる付勢する力よりも大きくなる程十分に遠くまで移動させることができ、これにより印刷ヘッドは第2の構成に向かって移動され、対抗力による作用を受けるまで又は受けない限り第2の構成に留められる。
【0049】
印刷ヘッドは、第2の構成にある時に、電磁石が発生させる力によって第1の構成に向かって移動させることができる。
【0050】
印加電流の大きさは、第2の構成において永久磁石が生成する力との組み合わせで、弾性付勢部材が発生させる付勢する力よりも大きく、且つそれと実質的に反対方向にある力を発生させるのに十分なものとすることができる。
【0051】
電流印加に起因して電磁石が発生させる力は、印刷ヘッドを第2の構成から、永久磁石が発生させる付勢する力が弾性付勢部材が発生させる付勢する力よりも大きくなる程十分に遠くまで移動させることができ、これにより印刷ヘッドは第1の構成に向かって移動され、対抗力による作用を受けるまで、又は受けない限り第1の構成に留められる。
【0052】
印刷力は、弾性付勢部材が発生させる第1の力成分と、電磁石が発生させる第2の力成分とを含むことができる。
【0053】
例えば、印刷力は、電磁石の適切な制御によって加減することができ、幾つかの異なる入力に基づいて印刷力に調節を加えることが可能になる。
【0054】
第1の力成分は、固定成分を含むことができる。第2の力成分は、可変成分を含むことができる。
【0055】
電磁石に供給される電流の適切な制御によって、事前に決定された大きさを有する第2の力成分を発生させるように電磁石が発生させる磁場を制御することができる。このようにして、印刷ヘッドによって印刷面に対して事前に決定された印刷力が作用されるように全体の印刷力を変動させることができる。
【0056】
印刷力は、最適な印刷品質を得るように変動させることができる。例えば、印刷力は、印刷品質を示すデータを供給するフィードバック(例えば光学フィードバック)に基づいて変動させることができる。代替的又は追加的に、印刷力は、リボンの特性(例えばリボンの種類、リボン幅)又は被印刷物の特性(例えば被印刷物材料)のうちの1つ又は2つ以上に基づいて変動させることができる。例えば、コントローラは、印刷ヘッドに抗するリボンの摩擦を示す情報を処理し、それに即して印刷ヘッド駆動組立体が発生させるべき力を決定するように配列することができる。
【0057】
代替的又は追加的に、様々なプリンタ構成にも関わらず事前に決定された印刷力を発生させるように電磁石に供給される電流を制御することができる。例えば、電磁石に供給される電流は、様々な印刷面位置を補償するように変動させることができる。
【0058】
第2の力成分の大きさは、電磁石に供給される電流の大きさに基づいて変動させることができる。
【0059】
第2の力成分の方向は、電磁石に供給される電流の方向に基づいて変動させることができる。
【0060】
印刷力は、弾性付勢部材が発生させる第1の成分と反対の方向に作用する、永久磁石が発生させる第3の成分を含むことができる。
【0061】
電磁石は、印刷ヘッドの位置に基づいて制御することができる。電磁石に供給される電流の大きさは、印刷ヘッドの位置に基づいて制御することができる。電磁石に供給される電流の大きさは、印刷ヘッドの速度に基づいて制御することができる。
【0062】
電磁石は、印刷ヘッド位置データに基づいて制御することができる。電磁石を制御するための印刷ヘッド位置データの使用は、印刷ヘッド駆動組立体を閉ループ方式で制御することを可能にする。このようにして、印刷ヘッドが被制御方式及び予測可能方式で移動することを確実にするように、更に過剰力(例えばシステム構成要素の間の衝撃に起因する)が低減されるように電磁石を制御することができる。
【0063】
上記印刷ヘッド位置データは、印刷ヘッドの位置を示すデータを含むことができる。
【0064】
プリンタは、印刷ヘッド位置信号を発生させるように構成された印刷ヘッド位置センサを更に備えることができる。電磁石は、この印刷ヘッド位置信号に基づいて制御することができる。
【0065】
センサは、光学センサとすることができる。センサは、エミッタとレシーバとを備えることができる。
【0066】
上記印刷ヘッド位置データは、印刷ヘッド位置信号を含むことができる。この印刷ヘッド位置データは、印刷ヘッド位置信号から導出することができる。この印刷ヘッド位置データは、印刷面と相対的な印刷ヘッドの位置を示すデータを含むことができる。
【0067】
印刷ヘッド位置センサは、印刷面に向かい及び該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動中に、印刷ヘッドの一部分と、印刷面から実質的に固定された離隔距離にて設けられたプリンタ基準場所との間の離隔距離を示す信号を発生させるように構成することができる。プリンタ基準場所をターゲットと呼ぶことができる。
【0068】
電磁石は、印刷ヘッドの位置に基づいて事前に決定された力を発生させるように制御することができる。電磁石に供給される電流の大きさは、印刷ヘッドの位置に基づいて事前に決定された力を発生させるように制御することができる。すなわち、印刷ヘッドの位置に依存して特定の力(すなわち、特定の方向及び/又は大きさを有する力)が印刷ヘッド駆動装置によって印刷ヘッドに対して作用されるように電磁石を制御することができる。
【0069】
電磁石は、印刷ヘッドと印刷面との衝撃力を制御するように制御することができる。電磁石に供給される電流の大きさは、印刷ヘッドと印刷面との衝撃力を制御するように制御することができる。
【0070】
電磁石は、印刷ヘッドと印刷面との衝撃力を低減するように制御することができる。電磁石に供給される電流の大きさは、印刷ヘッドと印刷面との衝撃力を低減するように制御することができる。例えば、第1の期間にわたって、印刷ヘッドに印刷面に向かう移動を開始させる電流を、電磁石に第1の方向に印加することができる。しかしながら、プリンタが印刷面と接触する前(しかしながら、電流が除去されると印刷ヘッドが第1の構成に戻ることになる点を印刷ヘッドが通過した後)に、電流を電磁石に第1の方向と反対の第2の方向に印加することができる。第2の方向の電流は、印刷面と接触する時に、速度、従って、衝撃が低減されるように印刷ヘッドを減速させることができる。衝撃のかかる低減は、印刷ヘッド及び印刷ヘッド駆動組立体の構成要素への損傷を防止又は低減することができる。
【0071】
電磁石は、印刷ヘッドと印刷ヘッド駆動組立体の他の構成要素との衝撃力を低減するように制御することができる。電磁石に供給される電流の大きさは、印刷ヘッドと印刷ヘッド駆動組立体の他の構成要素との衝撃力を低減するように制御することができる。例えば、電磁石に供給される電流は、永久磁石と軟磁性要素との間の衝撃力を制御するように制御することができる。
【0072】
印刷ヘッドの属性を、電磁石の属性に基づいて決定することができる。
【0073】
印刷ヘッドの属性は、印刷ヘッドの場所とすることができる。この場合、プリンタの他の構成要素と相対的な印刷ヘッドの位置を、この電磁石属性に基づいて決定することができる。印刷ヘッド駆動組立体の様々な構成要素の間、又はより一般的にはプリンタの構成要素及び/又は工業用装置の構成要素の間の接触は、この電磁石属性に関連付けられ、これに基づいて決定することができる。例えば、印刷ヘッドと印刷面との接触を、この電磁石属性に基づいて決定することができる。同様に、(例えば、印刷ヘッドが印刷面から後退された時の)永久磁石と軟磁性要素との間の接触(例えば1つ又は2つ以上の中間構成要素を介した間接接触であっても)を、この電磁石属性に基づいて決定することができる。
【0074】
印刷ヘッドの属性は、印刷ヘッドの移動とすることができる。印刷ヘッドの属性は、印刷ヘッドのそばを通る被印刷物の経路に対して実質的に垂直な方向の印刷ヘッドの移動とすることができる。この場合、プリンタの他の構成要素と相対的な印刷ヘッドの何れかの移動を、この電磁石属性に基づいて決定することができる。例えば、印刷ヘッドの予想外の移動(例えば、印刷ヘッドとプリンタの構成要素及び/又はプリンタが関連する工業用装置の構成要素との間の接触に起因する)を、この電磁石属性に基づいて識別することができる。
【0075】
印刷ヘッドの属性は、第1の構成と第2の構成との間、及びその逆の間の印刷ヘッドの移動中に決定することができる。印刷ヘッドの属性は、印刷ヘッドのそばを通る被印刷物の経路に対して平行な方向、及び/又は印刷ヘッドのそばを通る被印刷物の経路に対して垂直な方向の印刷ヘッドの移動中に決定することができる。或いは印刷ヘッドの属性は、印刷ヘッドのそばを通る被印刷物の経路に対して平行な方向、及び印刷ヘッドのそばを通る被印刷物の経路に対して垂直な方向のうちの少なくとも一方に印刷ヘッドが定置状態にあることが予測される間に決定することができる。例えば、印刷ヘッドが、そのそばを通る被印刷物の経路に対して垂直な方向に定置状態にあることが予測される場合(例えば、印刷ヘッドが、そのそばを通る被印刷物の経路に対して平行な方向に移動している印刷ストロークの際)には、印刷ヘッドのそばを通る被印刷物の経路に対して垂直な方向の印刷ヘッドの何れかの移動を、上記電磁石属性に基づいて決定することができる。
【0076】
コントローラは、電磁石の属性を監視するように配列することができる。監視される属性は、印刷ヘッドの位置を示す成分を含むことができる。監視される属性は、印刷ヘッドの移動を示す成分を含むことができる。監視される属性は、印刷ヘッドの速度を示す成分を含むことができる。これらの成分は、電磁石の監視される属性の変動を含む可能性がある。この変動は、永久磁石の磁場と電磁石の磁場との間の相互作用によって発生する可能性がある。例えば、変動は、電磁石の巻線内に誘導される逆起電力(逆EMF)によって引き起こされる可能性がある。
【0077】
電磁石の属性は、電磁石の巻線内を流れる電流とすることができる。この成分は、電磁石の巻線内を流れる電流の変動を含む可能性がある。電流変動は、永久磁石の磁場と電磁石の磁場との間の相互作用によって発生する可能性がある。電流変動は、電磁石の巻線内を流れる電流の大きさの一時的な減少又は増加である可能性がある。
【0078】
電磁石の属性は、電磁石の巻線の両端の電圧とすることができる。この成分は、電磁石の巻線の両端の電圧の変動を含む可能性がある。電圧変動は、永久磁石の磁場と電磁石の磁場との間の相互作用によって発生する可能性がある。電圧変動は、電磁石の巻線の両端の電圧の大きさの一時的な増加又は減少である可能性がある。例えば、電磁石の巻線内に電流が流れないことが予測される場合には、巻線内に誘導された何れかの逆EMFが、巻線の端子の両端に電圧を発生させる可能性があり、この電圧は即座に検出される。
【0079】
コントローラは、上記監視される属性に基づいて電磁石に対する制御信号を発生させるように配列することができる。
【0080】
コントローラは、印刷ヘッド駆動組立体の第1の移動の際に上記電磁石属性を監視するように配列することができる。コントローラは、印刷ヘッド駆動組立体の第2の移動の際にこの監視される属性に基づいて電磁石に対する制御信号を発生させるように配列することができる。
【0081】
このようにして、コントローラは、印刷ヘッド駆動組立体を制御する際の精度を反復的に監視し、システム性能を徐々に改善するように制御信号を加減することができる。
【0082】
コントローラは、印刷ヘッド駆動組立体の複数の第1の移動の際に上記電磁石属性を監視し、この監視される属性に基づいて印刷ヘッド駆動組立体の第2の移動における電磁石に対する制御信号を発生させるように配列することができる。
【0083】
印刷ヘッド駆動組立体の第1の移動において、コントローラは、公称大きさを有する制御信号を発生させることができる。コントローラは、上記監視される属性に基づいて印刷ヘッド駆動組立体の第2の移動に対する制御信号の大きさを加減するように構成することができる。例えば、印刷ヘッドが、電磁石への制御信号の印加に関連して事前に決定された時間で移動していることが観測された場合には、制御信号の大きさを増大させることによって、この制御信号の印加後に印刷ヘッドをより高速に移動させることを可能にすることができる。
【0084】
コントローラは、印刷ヘッド駆動組立体の上記第2の移動に対する制御信号の大きさを上記監視される属性と基準属性とに基づいて修正するように構成することができる。例えば、印刷ヘッドを、電磁石への制御信号の印加に関連して事前に決定された時間で移動させることが望ましい場合には、移動が発生した時間を基準(すなわち所望の)時間と比較することによって、制御信号の大きさを加減することによって後続の移動における性能を改善することができる。
【0085】
コントローラは、電磁石を制御するように配列することができる。電磁石を制御する段階は、電磁石の励磁状態を制御する段階を含むことができる。電磁石の励磁状態を制御する段階は、事前に決定された電流を電磁石の巻線の内部に流す段階を含むことができる。事前に決定された電流を電磁石の巻線の内部に流す段階は、事前に決定された大きさ及び/又は方向を有する電流を流す段階を含むことができる。コントローラは、電磁石の内部を流れる電流を制御するように配列することができる。
【0086】
コントローラは、上記印刷ヘッド位置信号に基づいて印刷ヘッド速度を示すデータを発生させるように配列することができる。このコントローラは、この印刷ヘッド速度を示すデータに基づいて電磁石を制御するように配列することができる。
【0087】
コントローラは、上記印刷ヘッド位置センサが発生させた信号を受け取り、この信号に基づいて上記印刷ヘッド位置データを発生させるように構成することができる。コントローラは、この印刷ヘッド位置センサが発生させた信号を受け取り、この信号に基づいて上記印刷ヘッド駆動組立体に対する制御信号を発生させるように構成することができる。
【0088】
コントローラは、上記印刷ヘッド位置センサが発生させた上記信号に基づいて上記印刷ヘッド駆動組立体に対する制御信号を調節するように配列することができる。
【0089】
コントローラは、ターゲット印刷ヘッド位置を受け取り、このターゲット印刷ヘッド位置に基づいて上記印刷ヘッド駆動組立体に対する制御信号を発生させるように更に配列することができる。
【0090】
コントローラは、ターゲット印刷ヘッド速度に基づいて上記印刷ヘッド駆動組立体に対する制御信号を発生させるように更に配列することができる。
【0091】
コントローラは、印刷ヘッドターゲット信号と印刷ヘッド位置信号とに基づいて印刷ヘッド駆動組立体に対する制御信号を発生させるように配列することができる。この印刷ヘッドターゲット信号は、印刷ヘッドターゲット位置信号又は印刷ヘッドターゲット速度信号を含むことができる。
【0092】
上記印刷ヘッド駆動組立体に対する上記制御信号は、印刷ヘッド駆動組立体にターゲット力出力を発生させるように配列することができる。
【0093】
コントローラは、印刷ヘッド駆動組立体が発生させるべきターゲット力出力を示すデータを発生させるように配列することができる。このターゲット力出力は、上記印刷ヘッドターゲット信号と印刷ヘッド位置データとに基づいて決定することができる。
【0094】
コントローラは、上記ターゲット力出力に基づいてターゲット電磁石電流を示すデータを発生させるように配列することができる。
【0095】
コントローラは、上記印刷ヘッド位置データに基づいて上記ターゲット電磁石電流を示すデータを発生させるように更に配列することができる。
【0096】
コントローラは、電磁石電流と印刷ヘッド位置及び印刷ヘッド駆動組立体力出力との間の関係を示す基準データに基づいて、ターゲット電磁石電流を示すデータを発生させるように配列することができる。
【0097】
プリンタは、上記電磁石内を流れる実電流を示す出力を発生させるように構成された電流センサを更に備えることができる。
【0098】
コントローラは、上記ターゲット電磁石電流を示すデータ及び実電磁石電流を示すデータに基づいて印刷ヘッド駆動組立体制御信号を発生させるように配列することができる。この実電磁石電流を示すデータは、電流センサの上記出力から導出されたデータを含むことができる。
【0099】
印刷ヘッドは、印刷ヘッド駆動組立体制御信号を上記印刷ヘッド駆動組立体に供給するように構成された印刷ヘッド駆動組立体制御接続部を備えることができる。
【0100】
印刷ヘッド駆動組立体制御接続部は、コントローラから印刷ヘッド駆動組立体制御信号を受け取るように構成することができる。この印刷ヘッド駆動組立体制御信号は、印刷ヘッド上に設けられた接続部を介してコントローラから印刷ヘッド駆動組立体に供給することができる。
【0101】
コントローラは、プリンタのハウジングに対して固定された場所に設けることができる。印刷ヘッド及び印刷ヘッド駆動組立体は、印刷面に対して平行な方向に移動するように配列することができる。印刷ヘッド駆動組立体に印刷ヘッドを介して制御信号を供給することによって、プリンタの内部の接続部の複雑さを低減することができる。例えば、印刷ヘッドに対する制御信号(例えば画像データ)は、可撓性リボンケーブルを介して印刷ヘッドに渡すことができる。同じリボンケーブルに沿って印刷ヘッド駆動組立体に対する制御信号を渡たすことによって、固定場所(プリンタハウジングに対する)と移可動場所との間の別個の接続部の個数を低減することができる。
【0102】
印刷ヘッド駆動組立体は、印刷動作の開始前に印刷ヘッドを第1の構成から第2の構成へと移動させ、この印刷動作の後に印刷ヘッドを第2の構成から第1の構成へと移動させるように配列することができる。
【0103】
印刷動作は、被印刷物上にマークを生成する段階を含むことができる。
【0104】
複数の印刷動作を高速に連続して実施することができ(例えば、画像の相応する複数の行を印刷するために)、印刷ヘッド駆動組立体は、複数の印刷動作のうちの最初のものの開始前に印刷ヘッドを第1の構成から第2の構成へと移動させ、これら複数の印刷動作のうちの最後のものの後に印刷ヘッドを第2の構成から第1の構成へと移動させるように配列される。
【0105】
印刷ヘッド及び印刷ヘッド駆動組立体は各々、印刷面に対して実質的に平行な方向に移動するように配列することができる。印刷面に対して平行な方向のかかる移動は、印刷ストロークをいわゆる断続印刷において完了することを可能にする。
【0106】
印刷ヘッド駆動組立体は、印刷ヘッドのそばを通る被印刷物の経路に対して実質的に垂直な方向の印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成することができる。従って、印刷ヘッドは、印刷ヘッドのそばを通る被印刷物の経路に対して平行と垂直との両方の方向に移動すれるように配列することができる。
【0107】
被印刷物は、印刷ヘッドに隣接する被印刷物経路に沿って印刷方向に順送されるように構成することができる。印刷ヘッド及び印刷ヘッド駆動組立体は各々、印刷方向に対して実質的に平行な方向に移動するように配列することができる。
【0108】
印刷ヘッドは、印刷面に対して実質的に平行な方向に延びる線形アレイで配列された複数の個別励磁可能な印刷要素を備えることができる。線形アレイは、印刷方向に対して実質的に垂直な方向に延びることができる。
【0109】
印刷ヘッド駆動組立体は、第1の構成要素と第2の構成要素とを備えることができる。印刷ヘッド駆動組立体の第1の構成要素と第2の構成要素とは、互いに向かって及び互いに離れるように移動し、これにより印刷ヘッドを印刷面に向かって及び該印刷面から離れるように移動させる。印刷ヘッド駆動組立体のこれら第1の構成要素と第2の構成要素との間に弾性付勢部材を設けることができる。印刷ヘッド駆動組立体の第1の構成要素は、上記電磁石を備えることができる。印刷ヘッド駆動組立体の第2の構成要素は、上記永久磁石を備えることができる。弾性付勢部材は、印刷ヘッド駆動組立体のこれら第1の構成要素と第2の構成要素とを離隔するように付勢するように構成することができる。弾性付勢部材は、印刷ヘッド駆動組立体の第1の構成要素と第2の構成要素との互いに向かう移動に抵抗するように構成することができる。
【0110】
プリンタは、印刷ヘッドと印刷ヘッド駆動組立体とを含む印刷ヘッド組立体を備えることができる。印刷ヘッド組立体は、印刷面に対して実質的に平行な方向に移動するように構成することができる。
【0111】
印刷ヘッド組立体は、印刷ヘッド駆動組立体の第1の構成要素を支持するように構成された第1の支持部材と、印刷ヘッド駆動組立体の第2の構成要素及び印刷ヘッドを支持するように構成された第2の支持部材とを更に備えることができる。
【0112】
第1及び第2の支持部材は、旋回軸の回りに回転するように構成することができる。旋回軸は共通の旋回軸とすることができる。
【0113】
印刷ヘッド位置センサは、印刷ヘッド駆動組立体の上記第1の構成要素と上記第2の構成要素との間の離隔距離を示す信号を発生させるように構成することができる。この第1の構成要素は、印刷ヘッドの上記部分を備えることができる。上記第2の構成要素は、上記プリンタ基準場所を備えることができる。
【0114】
プリンタは、印刷ヘッドキャリッジを更に備えることができる。印刷ヘッド及び印刷ヘッド駆動組立体は、印刷ヘッドキャリッジ上に装着することができる。印刷ヘッドキャリッジは、印刷面に対して実質的に平行な方向に移動するように配列することができる。
【0115】
プリンタはサーマルプリンタとすることができる。印刷ヘッドは、被印刷物上にマークを生成する熱を発生させるために選択的に励磁されるように構成することができる。
【0116】
プリンタは熱転写プリンタとすることができる。印刷ヘッドは、被印刷物上にマークを生成するためにインク担持リボンから被印刷物上にインクを転写するように選択的に励磁されるように構成することができる。リボンは、印刷ヘッドに隣接するリボン経路に沿って印刷方向に順送されるように構成することができる。
【0117】
熱転写プリンタは、各々がリボンのスプールを支持するように構成された第1及び第2のスプール支持体と、第1のスプール支持体から第2のスプール支持体へのリボンの移動を引き起こすように構成されたリボン駆動体とを更に備えることができる。印刷ヘッドは、上記被印刷物上にマークを生じさせるためにリボンから被印刷物上にインクを選択的に転写するように構成することができ、印刷リボンと被印刷物とを共に印刷面に対して押圧する。
【0118】
印刷ヘッドは、マークを感熱被印刷物上に生成するように構成することができる。
【0119】
本発明の第2の態様によると、プリンタに対するコントローラが提供される。プリンタは、プリンタに隣接して設けられた被印刷物上に選択的にマークを生成させるように構成された印刷ヘッドであって、該印刷ヘッドが印刷面から離間して配置された第1の構成と、印刷動作中に被印刷物を印刷面に対して押圧するように構成される第2の構成とを有する印刷ヘッドを備える。
【0120】
サーマルプリンタは、第1の構成と第2の構成との間で印刷面に向かい及び該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成されて、永久磁石と電磁石とを含む印刷ヘッド駆動組立体を更に備える。
【0121】
電磁石が第1の状態にある時に、永久磁石と電磁石との間に吸引磁力が発生し、電磁石が第2の状態にある時に、永久磁石と電磁石との間に反発磁力が発生し、これら吸引磁力及び反発磁力の各々が、印刷ヘッドを印刷面から離れるように付勢する段階及び印刷面に向かって付勢する段階のうちの一方を行うように構成される。
【0122】
印刷ヘッド駆動組立体は、印刷ヘッドが、第1及び第2の構成の各々にある時に、電磁石が第1の状態にある時の印刷ヘッド駆動組立体によって当該構成に保持され、永久磁石と電磁石との間に発生する上記吸引磁力によって第1及び第2の構成のうちの一方に保持されるように構成される。
【0123】
コントローラは、印刷ヘッド駆動組立体に、印刷面に向かい及び該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動を引き起こさせ、更に印刷ヘッドを第1及び第2の構成の各々に保持させるように電磁石の励磁状態を制御するように構成される。
【0124】
コントローラは、印刷ヘッドに被印刷物上にマークを生成する熱を発生させるように印刷ヘッドの励磁を制御するよう更に構成することができる。
【0125】
本発明の第3の態様によると、本発明の第2の態様によるコントローラを備える制御回路が提供される。
【0126】
本発明の第4の態様によると、本発明の第1の態様によるプリンタの動作方法が提供される。
【0127】
本発明の第5の態様によると、プリンタの印刷ヘッド駆動組立体を制御する方法が提供される。プリンタは、プリンタに隣接して設けられた被印刷物上に選択的にマークを生成するように構成される。印刷ヘッドは、印刷ヘッドが印刷面から離間して配置された第1の構成と、印刷動作中に被印刷物を印刷面に対して押圧するように構成される第2の構成とを有する。上記印刷ヘッド駆動組立体は、第1の構成と第2の構成との間で印刷面に向かい及び該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成される。印刷ヘッド駆動組立体は、永久磁石と電磁石とを備える。
【0128】
印刷ヘッド駆動組立体は、電磁石が第1の状態にある時に、永久磁石と電磁石との間に吸引磁力が発生し、電磁石が第2の状態にある時に、永久磁石と電磁石との間に反発磁力が発生するように構成される。これら吸引磁力及び反発磁力の各々が、印刷ヘッドを印刷面から離れるように付勢する段階及び印刷面に向かって付勢する段階のうちの一方を行うように構成される。印刷ヘッドは、第1及び第2の構成の各々にある時に、電磁石が第1の状態にある時の印刷ヘッド駆動組立体によって当該構成に保持される。印刷ヘッドは、永久磁石と電磁石との間に発生する上記吸引磁力によって第1及び第2の構成のうちの一方に保持される。
【0129】
本方法は、印刷面に向かい及び該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動を印刷ヘッド駆動組立体に引き起こさせるように電磁石の励磁状態を制御する段階を含む。更に本方法は、印刷ヘッドを第1及び第2の構成の各々に保持するように電磁石のこの励磁状態を制御する段階を含む。更に本方法は、印刷動作中に印刷ヘッドが被印刷物を印刷面に対して押圧するように電磁石のこの励磁状態を制御する段階を含む。
【0130】
本方法は、印刷面に向かう印刷ヘッドの移動を印刷ヘッド駆動組立体に引き起こさせるための電磁石に対する第1の制御信号を発生させる段階と、印刷面から離れる印刷ヘッドの移動を印刷ヘッド駆動組立体に引き起こさせるための電磁石に対する第2の制御信号を発生させる段階とを含むことができる。
【0131】
第1の制御信号は、電流を電磁石の巻線内に第1の方向に流すことができる。第1の制御信号は、印刷ヘッド駆動組立体に第1の力出力を発生させることができる。第2の制御信号は、電流を電磁石の巻線内に第1の方向と反対の第2の方向に流すことができる。第2の制御信号は、印刷ヘッド駆動組立体に第2の力出力を発生させることができる。第1及び/又は第2の力出力の大きさは、電流の大きさ及び/又は電流の方向、並びに/或いは印刷ヘッドの位置に依存するものとすることができる。
【0132】
本方法は、印刷動作の開始前に第1の制御信号を発生させる段階を含むことができる。
【0133】
本方法は、印刷動作の完了後に第2の制御信号を発生させる段階を含むことができる。
【0134】
本方法は、印刷動作中に印刷ヘッドによって印刷面に対して作用される力を印刷ヘッド駆動組立体に制御させるための第3の制御信号を発生させる段階を含むことができる。
【0135】
第3の制御信号は、印刷ヘッドを印刷面に対して事前に決定された印刷力で押圧することができる。
【0136】
本方法は、印刷ヘッド位置センサが発生させた信号を受け取り、受け取ったこの出力に基づいて電磁石の上記励磁状態を制御する段階を含むことができる。
【0137】
本方法は、ターゲット印刷ヘッド位置を受け取り、このターゲット印刷ヘッド位置に基づいて上記印刷ヘッド駆動組立体に対する制御信号を発生させる段階を含むことができる。
【0138】
本方法は、印刷ヘッド駆動組立体が発生させるべきターゲット力出力を示すデータを発生させる段階を含むことができる。
【0139】
本方法は、上記ターゲット力出力に基づいてターゲット電磁石電流を示すデータを発生させる段階を含むことができる。
【0140】
上記ターゲット電磁石電流を示すデータは、印刷ヘッド位置データに更に基づくものとすることができる。
【0141】
本方法は、電磁石電流と印刷ヘッド位置及び印刷ヘッド駆動組立体力出力との間の関係を示す基準データに基づいて、ターゲット電磁石電流を示すデータを発生させる段階を含むことができる。
【0142】
このようにして、印刷ヘッド駆動組立体の特性を算入することができる。特に、発生させる印刷ヘッド駆動組立体力出力は、電流構成(例えば、ばね圧縮及び電磁石からの永久磁石の離隔距離)に依存する特定の電磁石電流に対して変動することになることは理解されるであろう。かかる変動は非常に非線形のものである可能性がある。
【0143】
本方法は、電磁石内を流れる実電磁石電流を示すデータを受け取り、受け取ったこのデータに基づいて電磁石の上記励磁状態を制御する段階を含むことができる。
【0144】
本方法は、上記ターゲット電磁石電流を示すデータと上記実電磁石電流を示す信号とに基づいて印刷ヘッド駆動組立体制御信号を発生させる段階を含むことができる。
【0145】
上記実電磁石電流を示すデータは、電流センサの出力から導出されたデータを含むことができる。
【0146】
当然ながら、本発明の第1及び第2の態様の状況で説明した特徴を、本発明の第3の態様と組み合わせることができ、その逆もまた同様であることは理解されるであろう。
【0147】
本発明の第6の態様によると、プリンタを動作させる方法が提供される。本方法は、本発明の第5の態様の方法に従って、印刷ヘッド駆動組立体を制御する段階を含む。更に本方法は、印刷動作中にプリンタに隣接して設けられた被印刷物上にマークを生成するように印刷ヘッドを選択的に励磁する段階を含む。
【0148】
本方法は、印刷面に向かう印刷ヘッドの移動を印刷ヘッド駆動組立体に引き起こさせ、印刷ヘッドを印刷面に対して押圧するための電磁石に対する第1の制御信号を発生させる段階を含むことができる。更に本方法は、印刷ヘッドが印刷面に対して押圧されている間に、被印刷物上にマークを生成する熱を発生させるように印刷ヘッドを選択的に励磁する段階を含むことができる。更に本方法は、印刷面から離れる印刷ヘッドの移動を印刷ヘッド駆動組立体に引き起こさせるための電磁石に対する第2の制御信号を発生させる段階を含むことができる。
【0149】
更に本方法は、印刷ヘッドが印刷面に対して押圧されている間に、印刷ストロークを実施するために印刷ヘッドを印刷面に対して平行な方向に移動させるための制御信号を発生させる段階を含むことができる。更に本方法は、この印刷ストローク中に、被印刷物上にマークを生成する熱を発生させるために印刷ヘッドを選択的に励磁する段階を含むことができる。
【0150】
印刷ヘッドは、上記印刷ストローク中に複数回励磁することができる。印刷ヘッドは、この印刷ストローク中に複数回励磁することができ、これにより被印刷物上の複数のそれぞれの被印刷物場所に複数のそれぞれのマークが生成される。
【0151】
本発明の第7の態様によると、サーマルプリンタ用の印刷ヘッドであって、印刷ヘッドの第1の面に付随し、各々が、印刷ヘッドに隣接して設けられた被印刷物上にマークを生成するように選択的に励磁されるように構成された複数の印刷要素と、印刷ヘッドの位置を示す信号を発生させるように配列され、この第1の面のほぼ反対側にある印刷ヘッドの第2の面に付随する印刷ヘッド位置センサとを備える印刷ヘッドが提供される。
【0152】
この種の印刷ヘッド位置センサを設けることによって、印刷ヘッド位置を正確に制御することが可能になる。
【0153】
印刷ヘッド位置センサは、印刷面に向かい及び該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動中に印刷ヘッドの一部分と基準場所との間の離隔距離を示す信号を発生させるように構成することができる。
【0154】
上記基準場所は、印刷面から実質的に固定された離隔距離にて設けることができる。印刷面は、印刷動作中に印刷ヘッドを押圧する面を含むことができる。
【0155】
基準場所は、印刷ヘッド組立体の構成要素によって設けることができる。印刷ヘッドの一部分と基準場所との間の離隔距離を示す信号は、印刷面と相対的な印刷ヘッドの位置を示すことができる。
【0156】
印刷ヘッド位置センサは、基準場所から信号を受け取るように配列されたレシーバを備えることができる。基準場所を、ターゲットと呼ぶことができる。
【0157】
印刷ヘッド位置センサは、上記基準場所に向かって信号を放出するように配列されたエミッタを備えることができる。
【0158】
エミッタは、例えば赤外放射線等の放射線を放出するように配列することができる。
【0159】
レシーバは、基準場所によって反射された反射信号を受け取るように配列され、該反射信号がエミッタによって放出された信号に基づくことができる。
【0160】
レシーバは、例えば赤外放射線等の放射線を検出するように配列することができる。レシーバとエミッタとは、補完的な放出能力と検出能力とを有するように選択することができる。
【0161】
印刷ヘッドは、レシーバが感受した信号に基づいて出力を発生させるように配列された回路を更に備えることができる。
【0162】
上記の回路は増幅器を備えることができる。印刷ヘッドにおいてセンサ信号を処理することによって、プリンタに渡すべき信号がレシーバが発生させるものよりも大きいものであることが可能になり、これによりノイズに対する耐性が高まる。
【0163】
出力は、レシーバが感受した信号の振幅に基づくものとすることができる。
【0164】
印刷要素は、被印刷物上にマークを生成するためにインク担持リボンから被印刷物へのインクの転写を引き起こすためにインクを加熱する加熱要素とすることができる。或いは、印刷要素は、感熱被印刷物上にマークを生成するための熱を発生させる加熱要素とすることができる。
【0165】
印刷要素は、その線形アレイで配列することができる。使用時には、印刷要素の線形アレイは、印刷ヘッドのそばを通るリボン及び/又は被印刷物の移動方向に対して垂直な方向に構成することができる。
【0166】
本発明の第8の態様によると、プリンタ用の印刷ヘッドが提供される。プリンタは、印刷面に向かい及び該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動を引き起こすように構成されて、電磁石と印刷ヘッドとを含む印刷ヘッド駆動組立体を備える。印刷ヘッドは、その第1の面に付随し、各々が、印刷ヘッドに隣接して設けられた被印刷物上にマークを生成するように選択的に励磁されるように構成された複数の印刷要素を備える。印刷ヘッドは、印刷ヘッド駆動組立体制御信号を上記印刷ヘッド駆動組立体に供給するように構成された印刷ヘッド駆動組立体制御接続部を更に備える。
【0167】
本発明の第9の態様によると、本発明の第7及び第8の態様の片方又は両方による印刷ヘッドを備えるプリンタが提供される。プリンタはサーマルプリンタとすることができる。プリンタは熱転写プリンタとすることができる。熱転写プリンタは、インク担持リボンの第1及び第2のスプールをそれぞれ受容する第1及び第2のスプール支持体を備えることができる。熱転写プリンタは、これら第1のスプールと第2のスプールとの間で第1の方向のリボン移送を引き起こすように配列されたリボン駆動体を備えることができる。
【0168】
プリンタは、印刷ヘッドからの出力を受け取り、受け取った出力に基づいてプリンタの動作を制御するように配列されたコントローラを更に備えることができる。
【0169】
受け取った出力に基づいてプリンタの動作を制御する段階は、印刷ヘッドの位置を示す信号に基づいて印刷ヘッドの位置を制御するための制御信号を発生させる段階を含むことができる。
【0170】
当然ながら、本発明の上記の態様のうちの何れかのものの状況で説明した特徴を、本発明の他の態様と組み合わせることができることは理解されるであろう。例えば、第1の態様のプリンタの状況で説明したコントローラの動作を、第2の態様のコントローラによって実施することができる。同様に、第4、第5、及び第6の態様の方法の特徴を、第2の態様のコントローラ又は第1の態様のプリンタによって実施することができる。
【0171】
更に、本発明の第4、第5、及び第6の態様のうちの何れか1つによる方法を実施するように配列されたコントローラが提供される。更に、上記で説明した方法は、何れかの好適な形態で実装することができる。従って、本発明はまた、上記で説明した方式でプリンタを制御するようにプリンタのプロセッサによって実行することができるコンピュータプログラムを提供する。かかるコンピュータプログラムは、無形の非一時的コンピュータ読み取り可能媒体等のコンピュータ読み取り可能媒体上に記憶することができる。
【0172】
これより本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら例として説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【
図4】待機構成にある
図1のプリンタの一部の正面図である。
【
図5a】第1の構成にある
図1のプリンタの一部の更に詳細な部分切り欠き正面図である。
【
図5b】第2の構成にある
図1のプリンタの一部の更に詳細な部分切り欠き正面図である。
【
図6a】第1の構成にある
図1のプリンタの印刷ヘッド駆動組立体の概略断面図である。
【
図6b】第2の構成にある
図1のプリンタの印刷ヘッド駆動組立体の概略断面図である。
【
図7】
図5a及び
図5bの印刷ヘッド駆動組立体の構成要素が発生させた力を示すグラフである。
【
図8a】第1の構成にあり、第1の励磁状態にある
図6aの印刷ヘッド組立体の概略断面図である。
【
図8b】第1の構成にあり、第2の励磁状態にある
図6aの印刷ヘッド組立体の概略断面図である。
【
図9】
図8a及び
図8bそれぞれに示す励磁状態にある
図6a及び
図6bの印刷ヘッド組立体の構成要素が発生させた力を示すグラフである。
【
図10】
図6a及び
図6bの印刷ヘッド駆動組立体の構成要素が発生させた印刷力及び電流の波形を示すグラフである。
【
図11】
図10の印刷力及び電流の波形をより詳細に示すグラフである。
【
図12】代替的な印刷力及び電流の波形を示すグラフである。
【
図13】
図6a及び
図6bの印刷ヘッド駆動組立体の構成要素が発生させた代替的な印刷力及び電流の波形を示すグラフである。
【
図14】
図13の印刷力及び電流の波形をより詳細に示すグラフである。
【
図15】本発明の印刷ヘッド駆動組立体に対する制御アルゴリズムを示すフロー線図である。
【
図16】本発明の代替的実施形態による印刷ヘッド組立体の概略断面図である。
【
図17a】本発明の1つの実施形態による印刷ヘッドの下面の概略図である。
【
図17b】本発明の1つの実施形態による印刷ヘッドの上面の概略図である。
【
図19】
図18の回路の出力を処理するために設けられた回路の概略図である。
【
図20】
図19の回路が発生させた例示的な信号波形の概略図である。
【
図21】印刷ヘッド駆動組立体制御構成を概略的に示す図である。
【
図22】印刷ヘッド駆動組立体の特性に関する基準データのグラフである。
【
図23】本発明の1つの実施形態によるプリンタ制御構成を概略的に示す図である。
【
図24】
図1のプリンタの印刷ヘッドに対して作用する力を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0174】
図1を参照すると、インク担持リボン2がリボン供給スプール3上で供給され、印刷ヘッド4を通過して、リボン巻取スプール5によって巻き取られる熱転写プリンタ1が例示されている。リボン供給スプール3はステッピングモータ6によって駆動され、それに対してリボン巻取スプールはステッピングモータ7によって駆動される。例示している実施形態では、リボン供給スプール3は、そのステッピングモータ6の出力シャフト6a上に装着され、それに対してリボン巻取スプール5は、そのステッピングモータ7の出力シャフト7a上に装着される。ステッピングモータ6、7は、ステッピングモータ6がリボンを繰り出すようにリボン供給スプール3を回転させ、それに対してステッピングモータ7がリボンを巻き取るようにリボン巻取スプール5を回転させるプッシュ-プルモードで動作するように配列することができる。かかる配列では、モータの制御によってリボン内の張力を決定することができる。熱転写プリンタのスプールの間でテープを移送するためのかかる配列は、本発明者らの先行米国特許US第7,150,572号に説明されており、その内容は引用によって本明細書に組み込まれている。
【0175】
他の実施形態では、リボンは、リボン供給スプール3から印刷ヘッド4のそばを通過させてリボン巻取スプール5へと他の手法で給送することができる。例えば、リボン巻取スプール5のみをモータによって駆動することができ、それに対してリボン供給スプール3は、リボンの動きに対する抵抗力を与え、リボン内に張力を引き起こす。すなわち、幾つかの実施形態ではリボン供給スプール3を駆動するモータ6を必要としないことができる。リボン移動に対する抵抗力は、供給スプールの滑りクラッチ配列によって与えることができる。幾つかの実施形態では、リボン供給スプール3及びリボン巻取スプール5を駆動するモータは、ステッピングモータ以外のモータとすることができる。例えば、リボン供給スプール3及びリボン巻取スプール5を駆動するモータは直流(DC)モータとすることができる。一般的に、リボン供給スプール3及び/又はリボン巻取スプール5を駆動するモータは、トルク制御モータ(例えばDCモータ)又は位置制御モータ(例えばステッピングモータ又はDCサーボモータ)とすることができる。
【0176】
リボン供給スプール3によって繰り出されたリボンは、ガイドローラー8を通過し、その後、印刷ヘッド4及び更なるガイドローラー9を通過し、続いてリボン巻取スプール5によって巻き取られる。
【0177】
印刷ヘッド4は、印刷を行うためにリボン2及び被印刷物10を印刷面11に対して押圧する。印刷ヘッドは、例えば、リボン2からインクピクセルを取り出してそれを被印刷物10上に付着させるように各々が配列された複数の印刷要素を備える熱転写プリンタヘッドとすることができる。印刷面11は、好適には印刷ローラー(例えば連続印刷モードの場合)又はプラテン(例えば連続印刷モード又は断続印刷モードの場合)とすることができる。
【0178】
矢印Aで示しているように、印刷ヘッド4は、そのそばを通るリボン2及び被印刷物10の進行方向に対して略平行な方向に移動可能である。更に、矢印Bで示しているように、印刷ヘッド4は、被印刷物10との接触状態に出入りするようにリボン2を移動させる(印刷ヘッドを通過する時に)ために、被印刷物10に向かう及び被印刷物から離れるように移動可能である。
【0179】
次に
図2及び
図3を参照しながら、プリンタ1をより詳細に説明する。印刷ヘッド4は、旋回軸14の回りの回転に向けて印刷ヘッドキャリッジ13に旋回可能に装着され、これにより印刷面11(
図1及び
図2にのみ示している)に向かって又は印刷面から離れるように印刷ヘッド4を移動させることが可能になる。旋回軸14は、
図2の平面に対して実質的に直角な方向に延びるシャフトであり、旋回軸の回りの構成要素の旋回移動は、
図2の平面内の移動である。
【0180】
印刷ヘッドキャリッジ13は、固定された直線軌道15に沿ってプリンタ1の底板16と相対的に変位可能である。更に、リボン2がローラー9と印刷ヘッド4との間を通過する時にリボン2を誘導するガイドローラー12が印刷ヘッドキャリッジ13に装着され、印刷動作中に印刷ヘッド4の周囲の適切なリボン角度を確実にする。
【0181】
使用時には、リボンをリボンカセット(図示していない)上に装着することができる。リボンカセットがプリンタ1の内部に設置される時に、ガイドローラー8、9(
図2に示している)は、それぞれの支持ピン8a、9a(
図3に示している)によって支持される。
【0182】
リボン移動の方向の印刷ヘッドキャリッジ13の位置(従って、この方向の印刷ヘッド4の位置)は、モータ17(
図3に示している)によって制御される。モータ17は、底板16の背後に置かれ、モータ17の出力シャフト17a上に装着された滑車輪18を駆動する。更に滑車輪18は、更なる滑車輪20の周囲に延びる印刷ヘッド駆動ベルト19を駆動する。印刷ヘッドキャリッジ13は、印刷ヘッド駆動ベルト19に固着される。この場合時計回り方向の滑車輪18の回転(
図2に見られるように)が、印刷ヘッドキャリッジ13、従って、印刷ヘッド4を左に駆動し、それに対して反時計回り方向の滑車輪18の回転が、印刷ヘッド4を右に駆動する。
【0183】
ベルト19は、可撓性連結機構の形態にあると考えることができる。しかしながら、可撓性連結機構という用語は、ベルトが弾性的に動作することを意味するものではない。すなわち、ベルト19は、印刷ヘッド4のそばを通るリボン2及び被印刷物10の進行方向に対して略平行な方向(すなわち、滑車18と20との間に延びる方向)に比較的非弾性的である。当然ながら、ベルト19は、それが滑車18、20の周囲を移動することを可能にするために、印刷ヘッド4のそばを通るリボン2及び被印刷物10の進行方向に対して垂直な方向に屈曲することになることは理解されるであろう。しかしながら一般的に、この比較的な非弾性によって、モータ17によって引き起こされた滑車輪18の何れかの回転が、印刷ヘッドキャリッジ13、従って印刷ヘッド4に伝達されてその移動を引き起こすことが確実になることは理解されるであろう。ベルト19は、例えば、鉄筋を有するポリウレタンタイミングベルトとすることができる。例えば、ベルト19は、米国ニュージャージーのBRECOflex CO.,L.L.C.によって製造されたAT3 GEN III Synchroflex Timing Beltとすることができる。
【0184】
図2に示すように、印刷ヘッド4は、支持アーム21の第1の側に装着され、支持アーム21は、旋回軸14の回りに旋回するように配列される。旋回軸14に関する印刷ヘッド4の移動の弧が、旋回軸14と相対的な印刷ヘッド4の場所によって決定され、更にこの場所は、支持アーム21の長さによって決定される。
【0185】
印刷面11に向かう及び印刷面から離れる印刷ヘッド4の移動、並びにリボン2、被印刷物10、及び印刷面11に対する印刷ヘッド4の押圧は、下記でより詳細に説明する印刷ヘッド駆動組立体22によって制御される。
【0186】
例えば、スプール3、5の間のリボン移動(例えばモータ6、7による)、印刷面11に向かう及び印刷面から離れる印刷ヘッドの移動(例えば印刷ヘッド駆動組立体22による)、及び印刷面11に対して平行な方向の印刷ヘッド4の移動(例えばモータ17による)等のプリンタ1の様々な動作は、コントローラ50によって制御される。
【0187】
印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素が、印刷ヘッドキャリッジ13の旋回軸14の回りに旋回するように配列された印刷ヘッド駆動組立体アーム30上に装着される。従って、印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素は、旋回軸14との明確に定義された関係に従って、移動する。印刷ヘッド駆動組立体22の第2の構成要素が、支持アーム21上に装着される。印刷ヘッド駆動組立体22の第1及び第2の構成要素は、印刷ヘッド駆動組立体22の作用によって印刷ヘッド4を印刷面11に向かう又は印刷面から離れるように移動させるために、互いに引きつけ合う又は跳ね返し合うように構成することができる。印刷ヘッド駆動組立体22の第1及び第2の構成要素の各々が回りに旋回するように配列された共通の旋回軸14を所与として、印刷ヘッド駆動組立体22の2つの構成要素の互いに対する引きつけ又は跳ね返しは、旋回軸14の回りの弧内のこれらの構成要素のうちの少なくとも一方の移動を引き起こすことになることは理解されるであろう。
【0188】
印刷ヘッド4、印刷ヘッド支持アーム21、印刷ヘッド駆動組立体22、及び印刷ヘッド駆動組立体アーム30を、まとめて印刷ヘッド組立体51と呼ぶことができる。
【0189】
印刷ヘッド駆動組立体アーム30上には軸受31が装着される。使用時には、軸受31は、プリンタ1の底板16に固着された支承面32を支持する。印刷ヘッド駆動組立体アーム30と印刷ヘッドキャリッジ13との間にばね33が設けられ、印刷ヘッド駆動組立体アーム30を旋回軸14の回りに時計回り方向に回転する(
図2に見られるように)ように付勢するように配列される。支承面32の第1の部分34は、直線軌道15に対して実質的に平行な方向に延び、これにより直線軌道15に沿う印刷ヘッドキャリッジ13の前後の移動(
図1に矢印Aで示している)中に、軸受31は、支承面32の第1の部分34を支持し、印刷ヘッド駆動組立体アーム30(及びそこに添着された印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素)が印刷面11に向かう又は印刷面から離れるように移動しないように旋回軸14に対する印刷ヘッド駆動組立体アーム30の角度位置が維持されるようにする。
【0190】
しかしながら、直線軌道15に沿う印刷ヘッドキャリッジ13の前後の移動中に、印刷ヘッド駆動組立体の何れかの延長又は収縮が、印刷面11に向かう方向又は印刷面から離れる方向それぞれに印刷ヘッド4(印刷ヘッド駆動組立体22の第2の構成要素に固着された)を移動させることになることは理解されるであろう。
【0191】
支承面32は、印刷面11から斜方に離れる、支承面32の左手端部に配置された第2の部分35を更に備える。従って、印刷ヘッドキャリッジ13を左に移動させる(
図2に見られるように)時に、軸受31は支承面32に対して荷重を加えるようにされ(ばね33の付勢作用の下で)、支承面32を辿って印刷面11から斜方に離される。かかる移動は、印刷ヘッド駆動組立体アーム30が旋回軸14の回りに時計回り方向に回転し(
図2に見られるように)、これにより印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素を印刷面11から離れるように移動させることを可能にする。印刷ヘッド駆動組立体22の何れか所与の構成に関して、かかる移動は、印刷ヘッド4を印刷面11から離れるように移動させることにもなることは理解されるであろう。従って、印刷ヘッドキャリッジ13を左に移動させる(
図2に見られるように)時に、印刷ヘッド組立体51の全ての構成要素が共に左に移動することになる。更に、軸受31が支承面32を辿って印刷面11から斜方に離れると、印刷ヘッド組立体51の構成要素の全てが共に旋回軸14の回りに時計回り方向に回転し(
図2に見られるように)、これにより印刷ヘッド組立体51を印刷面11から離れるように移動させる。
【0192】
次に
図4を参照すると、印刷ヘッド組立体51は、軸受31が支承面32の第2の部分35と係合された構成で示されている。この構成を待機構成と呼ぶことができる。印刷ヘッド駆動組立体アーム30が旋回軸14の回りに回転されて示され、印刷ヘッド駆動組立体22(従って、印刷ヘッド2)が印刷面11から離れて持ち上げられるようになる。この位置は、通常の印刷動作中には用いられない。しかしながら保守操作中又は例えばプリンタリボンが交換される時に、リボン経路への容易なアクセスを可能にするためにこの構成を用いることができる。特に、プリンタリボンは通常は印刷ヘッド4によって誘導されるものの、印刷ヘッド組立体51(従って、同様に印刷ヘッド駆動組立体アーム30、印刷ヘッド駆動組立体22、支持アーム21、及び印刷ヘッド4)が待機構成(
図4に示している)にある時には、印刷ヘッド4は、ガイドローラー8と9(
図1及び
図2に示している)との間に延びるリボンと干渉せず、リボンを容易に取り外して交換することが可能になる。
【0193】
図5a及び
図5bにより詳細に示すように、印刷ヘッド駆動組立体22は、コイル24と強磁性要素25とを備える電磁石23を備える。強磁性要素は、軟質磁気材料(例えば鉄又は軟鋼等の鉄系金属)から好適に形成される。コイル24は、環状ボビン(図示していない)の周囲に巻き付けられた絶縁線(例えば銅線)を備え、強磁性要素25内の相応するサイズの環状凹部内に挿入される。環状凹部は、コイル24を囲む強磁性要素25の外側部分25aと、コイル24によって囲まれた強磁性要素25の内側部分25bとの間に定義される。
【0194】
外側部分25a及び内側部分25bは、共通軸A1の回りに略回転対称であり、これらの両方が軸A1に沿って同じ延び幅で延びる。ほぼ下向き(
図5a及び
図5bに示している向き)に面した内側部分25bの面は、外側部分25aの外面に対して平行であるが、外面から僅かにオフセットされて延びる。より詳細には、内側部分25bの面は、外側部分25aが内側部分25bよりも軸A1に沿って遠方に延びるように外側部分25aの外面から後退している。下記でより詳細に説明するように、内側部分25bの下面上には保持平面36が、その下面(
図5a及び
図5bに示している向きにある)が外側部分25aの外面との共通平面の直近で延びるように設けられる。
【0195】
強磁性要素25の軟磁性は、強めるべきコイル24に電流が通される時に、強磁性要素25の低磁気抵抗材料内を優先的に流れる磁場を発生させることを可能にする。電磁石23は印刷ヘッド駆動組立体アーム30に取り付けられ、更に印刷ヘッド駆動組立体アーム30は、帯同移動に向けて印刷ヘッドキャリッジ13に取り付けられる(旋回軸14を介して)。電磁石23は、印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素を定義する。
【0196】
印刷ヘッド駆動組立体22は、ターゲット26を更に備える。ターゲットは、軟磁性材料(例えば鉄又は軟鋼等の鉄系金属)から形成され、概ねカップ形のものである。ターゲット26は、平坦中心部分26bから離れるように延びるリム部分26aを備える。平坦中心部分26bは概ね円盤形のものであり、リム部分26aは、この円盤の周囲を巡って円盤から第1の方向に延びる。
図5a及び
図5bに例示しているように、リム部分26a及び中心部分26bは、軸A2に関して概ね回転対称である。
【0197】
ターゲット26は、第1の側(印刷ヘッド4が装着された)と反対の支持アーム21の第2の側で支持アーム21上に固定装着される。リム部分26aは、支持アーム21から離れる方向に円盤部分26bから延び、強磁性要素25に向かって延びる。リム部分26aの内部には円筒形凹部が定義される。
【0198】
印刷ヘッド駆動組立体22は、永久磁石27を更に備える。永久磁石27は円盤形のものであり、リム部分26aの内部に形成された円筒形凹部の内部で平坦中心部分26bに装着される。永久磁石27は、外側リム部分26aの内部で概ね同心状に平坦中心部分26b上に装着される(従って、軸A2に中心が定められる)。ターゲット26の外側リム部分26aは永久磁石27を囲む。リム部分26aは、永久磁石27の厚みにほぼ等しい量だけ中心部分26bから延びる。従って、支持アーム21から最も遠い永久磁石27の面は、リム部分26aの外面との共通平面内に延びる、又は共通平面の直近で延びる。
【0199】
外側リム部分26aは、永久磁石27の外径よりも大きい内径を有する。従って、これらの間に環状凹部が形成される。
【0200】
永久磁石27の外径は、強磁性要素25の内側部分25bの直径に実質的に等しい。同様に、強磁性要素25の外側部分25aの内径及び外径は、ターゲット26のリム部分26aの相応する内径及び外径と同様の寸法のものである。従って、ターゲット26の内部に形成された環状凹部(すなわち、永久磁石27とリム部分26aとの間の)と、強磁性要素25(外側部分25aと内側部分25bとの間の)とは同様の半径方向延び幅を有する。
【0201】
印刷ヘッド駆動組立体22の第2の構成要素は、ターゲット26及び永久磁石27から形成される。
【0202】
ある実施形態では、強磁性要素25は、例えば、30mmの外径を有し、軸A1に沿って20mmの長さを有することができる。コイル24は、およそ330ターンの0.5mm径の電線を備えることができる。
【0203】
永久磁石27は、外部磁場が存在しない場合に磁化を概ね保持する材料(すなわち硬磁性材料)から形成される。適切な硬磁性材料は、例えばネオジムグレードN42とすることができる。代替的な硬磁性材料は、例えばサマリウム-コバルトとすることができる。硬磁性材料は、永久磁石に高い磁気強度を与えるように選択することができる。
【0204】
ある実施形態では、永久磁石27は、14mmの外径と、2mmの内径を有する内部凹部と、4mmの厚み(軸A2に対して平行な方向の)とを有することができる。ターゲット26は、30mmの外径と、7mmの厚み(軸A2に対して平行な方向の)とを有することができる。
【0205】
しかしながら、代替的な材料及び寸法を必要に応じて用いることができることは理解されるであろう。上記で説明したように、印刷ヘッド駆動組立体22の2つの構成要素は、各構成要素が共通平面内(すなわち
図5a及び
図5bの平面内)における旋回軸14の回りの回転に向けて印刷ヘッド駆動組立体アーム30及び支持アーム21のそれぞれのものの上に装着されるように配列される。
【0206】
印刷ヘッド4が印刷面11から離間して配置された位置にある時、すなわち第1の構成(
図5aに示している)において、印刷ヘッド駆動組立体22の第1及び第2の構成要素が有する構成要素は、軸A1と軸A2とが共直線であるようにほぼ同心状に配列される。その一方で、印刷ヘッド4が、印刷面11に向かって延ばされる構成(すなわち
図5bに示している第2の構成)にある時に、印刷ヘッド駆動組立体22の第2の構成要素は、軸A1と軸A2とが互いに対して傾くように第1の構成要素に対して回転される。しかしながら、アーム21、30の長さ(例えば75mmの領域内にあるものとすることができる)、及び第2の構成における第1の構成要素と第2の構成要素との間の比較的小さい離隔距離(例えば5mmの領域内にあるものとすることができる)は、軸A1と軸A2とが正確には共直線ではない場合であっても、印刷ヘッド駆動組立体の第1の構成要素と第2の構成要素とが依然として互いにほぼ整列されるのが確実にされることは理解されるであろう。
【0207】
当然ながら、他の配列も可能であることは理解されるであろう。例えば、第1の構成要素の装着位置と第2の構成要素の装着位置とを逆にすることができる(すなわち、第1の構成要素が支持アーム21上に装着される等である)。
【0208】
印刷ヘッド駆動組立体22は、ばね28を更に備える。ばね28はコイルばね28であり、永久磁石27とリム部分26aとの間に形成された環状凹部の内部に受容される。更にばね28は、第1の構成において軸A1及びA2と整列されて同心である。ばね28は、印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素と第2の構成要素とを互いに離れるように(下記でより詳細に説明するように)ように付勢する圧縮ばねである。ばねは、例えば、米国ニューヨーク州ブルックリンのLee Springsによって製造された部品番号LC055K01Sを有するばねとすることができる。ある実施形態では、ばねは、19mm前後の自由(すなわち非圧縮)長さを有することができる。しかしながら使用時には、かかるばねは、印刷ヘッド駆動組立体22の組み立ての前におよそ11mmだけ予備圧縮することができる。すなわち、通常動作の際に最も伸びた状態で、ばね28は、その弛緩状態からなおも11mm前後だけ圧縮された状態にあるものとすることができる。
【0209】
ばね28は、印刷ヘッド駆動組立体22の第1及び第2の構成要素の各々の一部分に対して荷重を加えるように配列することができる。例えば、幾つかの実施形態では、ばね29の第1の端部を、コイルボビン(図示していない)内に設けられた特徴部の中に受容することができる。ばね29の第2の端部は、永久磁石27の周囲に設けられた環状スペーサ(図示していない)内に設けられた特徴部の中に受容することができる。
【0210】
印刷ヘッド駆動組立体は、制限ねじ37を更に備える。制限ねじ37は、永久磁石27の内部にある中心凹部を通過し、ターゲット26に、その内部に設けられた孔との螺合によって固着される。制限ねじ37は、軸A2と概ね同心である。しかしながら、制限ねじ37は、ターゲット26及び永久磁石27の上面を越えて延びる。特に、制限ねじは、強磁性要素25の内側部分25bの内部に設けられた凹部の中に延び込む。制限ねじ37は、ねじ軸37bよりも大きいねじ頭37aを備える。ねじ頭37aは、内側部分25bの内部にある凹部の内部に受容されるが、使用時には凹部の壁と接触しない。制限ねじ37のねじ軸37bは、保持板36の内部に設けられたスロット36aを通過する。スロット37aは、
図5aに示している向きに図の平面から飛び出す方向にねじ軸37bの直径よりも大きいがねじ頭37aの直径よりも小さい幅を有する。従って、保持板36は、制限ねじ37のねじ頭37aがスロット36aを通過するのを防止し、これにより支持アーム21が旋回軸14の回りに印刷ヘッド駆動組立体アーム30と相対的に事前に決定された角度量よりも大きく回転するのを防止するように構成される。
【0211】
従って、制限ねじ37と保持板36とは協働して、印刷面11が所定の場所にない時にプリンタの本体から離れる印刷ヘッド4の延び過ぎを防止する。
【0212】
保持板36は、例えば、強磁性要素25と同様の軟磁性材料(例えば軟鋼)から形成することができ、従って、強磁性要素25と同じ方式で磁場を誘導するように機能することができる。従って、保持板36は、強磁性要素25の一部と考えることができる。
【0213】
印刷ヘッド駆動組立体22は、
図5bに最も明確に示している緩衝器29を更に備える。緩衝器29は、対峙する永久磁石27の面と強磁性要素25(又はより具体的には保持板36)の内側部分25bの面との間に設けられた薄いゴム円盤である。緩衝器29は、永久磁石27と強磁性要素25との間の直接接触を防止し、従って、これらの間の最小離隔距離を維持する。
【0214】
磁力の大きさと引きつけられる磁性体の間の離隔距離との間の公知の関係(すなわち、力の大きさが離隔距離の二乗にほぼ反比例すること)を所与として、緩衝器29を含めることによって、永久磁石27と強磁性要素25との間の過度の吸引力が防止されることは理解されるであろう。すなわち、緩衝器29の不在時に永久磁石27と強磁性要素25とが直接接触することが許されたならば、これらの間の吸引力は、使用時にそれに打ち勝つことができない程大きいものである可能性がある。当然ながら、過度の力が発生するのを防止するために、例えば、支持アーム21の幾分かの部分と印刷ヘッドキャリッジ13との間の相対移動を防止する何れか他の形態の機械的止め具又は同様のもの等の代替的な技法及び配列を用いることができる。従って、緩衝器29は、印刷ヘッド駆動組立体22の必須構成要素ではない。
【0215】
図5aに例示している配列では、すなわち、印刷ヘッド4が印刷面11から離間して配置された位置(すなわち第1の構成又は第1の位置)にある場合には、永久磁石27とターゲット26と強磁性要素25が磁気回路を形成する。この磁気回路を、永久磁石27、ターゲット26、及び強磁性要素25の内部の磁場M1の経路を概略的に示す
図6aに更に例示している。特に、磁力線は、強磁性要素25の内側部分25bの下面に形成されたS極から強磁性要素25の内側部分25bを通って流れ、その後、強磁性要素25の外側部分25aに移る。続いて磁場M1は、強磁性要素25の外側部分25aの下面(N極を形成する)とターゲット26のリム部分26aの上面(S極を形成する)との間にある第1の空隙g1を通過する。更に磁場M1は、ターゲット26のリム部分26aを下へと通過し、ターゲット26の中心部分26bを経て永久磁石27の下面に至る。最終的に、磁場M1は、永久磁石27を通過し、更に永久磁石27の上面(N極)と強磁性要素25の内側部分25bの下面(S極)との間にある第2の間隙g2を通過する。間隙g2は緩衝器29が実質的に占有することができることは理解されるであろう。すなわち、間隙g2を空隙としないことができる。しかしながら、緩衝器29は、空気のものと同様の導磁率を有する材料から形成することができる。
【0216】
両方共に強磁性材料から形成された強磁性要素25及びターゲット26を設けることによって、比較的高い導磁率(又は低い磁気抵抗)の経路が与えられる。これにより、本説明の磁気回路が完成すること、及び所望の効果を引き起こすように磁力が集中すること(すなわち、印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素と第2の構成要素との間に磁力を発生させること)が確実になる。更に、かかる力は、ターゲット26、特にリム部分26a、及び強磁性要素25の外側部分25aを設けなくても存在することになるが、これらの要素は、磁場M1に対して低い磁気抵抗(すなわち高い導磁率)の帰還経路を与え、強磁性要素25と永久磁石27との間の磁気相互作用を強める、すなわち、帰還経路が設けられない配列と比較して動作に必要とされる同じ力を得るのに低い総磁場強度しか必要とされない。完全な磁気回路の形成は、所与の強度の磁力のより効率的な使用を可能にする。
【0217】
更に、磁気経路M1の明確に定義された性質は、上記で説明した構成(すなわち、
図5a及び
図6aに例示している、印刷ヘッド4が印刷面11から離間して配置された位置にあり、永久磁石27が強磁性要素25に近い第1の構成)と、
図5b及び
図6bに例示している、印刷ヘッド4が印刷面11に近い(すなわち、永久磁石27が強磁性要素25から離間している)第2の構成(又は第2の位置)との間でとり得る対比を強める。
【0218】
第2の構成では、永久磁石27と強磁性要素25との間にそれ程明確には定義されない低い磁気抵抗の磁気回路しか形成されず、従って、これらの間の吸引力は、第1の構成に対して減弱される。特に、第2の構成では、拡大した第1及び第2の空隙g1’、g2’が、永久磁石27と強磁性要素25との間の磁気相互作用の著しい弱化に寄与する。磁気経路M1’が示されているが、間隙g1’及びg2’は、全体経路M1’のうちのかなりの分量を占める(特に、経路M1’のうちで間隙g1及びg2によって形成された小さい分量と比較して)ことは理解されるであろう。
【0219】
図6a及び
図6bに示している構成の両方において、電磁石23は消磁状態にあることに注意されたい。
【0220】
図5a、
図5bに示している構成の各々において、軸受31は、支承面32の第1の部分34(第2の部分35ではなく)と係合されており、従って、印刷ヘッド4は待機構成にはないことに更に注意されたい。
図4に示すように、印刷ヘッドを待機構成へと移動させるようにキャリッジ13が移動する時に、印刷ヘッドは、通常は(必ずしもそうとは限らないが)第1の構成にある(すなわち、永久磁石27は強磁性要素25に近い)ことは理解されるであろう。
【0221】
次にプリンタ1の動作の詳細をより詳細に説明することにする。熱転写プリンタを用いることができる一般的に2つのモードが存在し、これらのモードは、時として「連続」モード及び「断続」モードと呼ばれる。両方の動作モードにおいて、装置は、規則的に繰り返される一連の印刷サイクルを実施し、各サイクルは、インクが被印刷物10に転写される印刷過程と、プリンタが次のサイクルの印刷過程に向けて準備される更なる非印刷過程とを含む。
【0222】
連続印刷では、印刷過程中に、印刷ヘッド4はリボン2との接触状態にされ、リボン2の他方の側は、画像が上部に印刷されることになる被印刷物10と接触状態にある。印刷ヘッド4は、このプロセスの間に定置状態に保持され、この「定置状態」という用語は、連続印刷の状況において、印刷ヘッド4がリボン2との接触状態に出入りするように移動することになるが、リボン経路に沿ってリボン2が順送される方向にリボン経路と相対的に移動することにはならないことを示すために用いるものである。被印刷物10とリボン2との両方が、必ずしもそうとは限らないが一般的には同じ速度で印刷ヘッド4のそばを通るように給送される。
【0223】
断続印刷では、被印刷物10は、各サイクルの印刷過程中に、被印刷物10及び必ずしもそうとは限らないが一般的にはリボン2が定置状態にあるような段階方式で印刷ヘッド4のそばを通るように順送される。被印刷物10、リボン2と印刷ヘッド4との間の相対移動は、印刷ヘッド4を被印刷物10及びリボン2と相対的に変位させることによって果たされる。連続するサイクルの印刷過程の合間に、被印刷物10は、印刷すべき次の領域を印刷ヘッド4の下に差し出すように順送され、リボン2は、リボンの未使用区分が印刷ヘッド4と被印刷物10との間に置かれるように順送される。リボン2の正確な給送を用いて、印刷ヘッド4が印刷動作を実施するために順送される時に未使用のリボンが常に被印刷物10と印刷ヘッド4との間に置かれることが確実にされる。
【0224】
プリンタ1は、主に断続モード印刷を実施するように構成される。すなわち、印刷は、被印刷物10がプリンタ1、特に印刷ヘッド4に対して実効的に定置状態にある間に被印刷物10に対して行われる。この場合各印刷動作は、印刷ヘッド4及びリボン2の様々な移動の協調制御を必要とする。しかしながら、プリンタ1は、連続モード印刷に向けて用いることもできることは理解されるであろう。
【0225】
印刷過程中に、印刷ヘッド4は、リボン2との接触状態にされ、リボン2が事前に決定された印刷力によって被印刷物10及び印刷面11に対して押圧される。各環境セット(例えば、リボンの種類、印刷ヘッドの種類、被印刷物の種類、印刷速度、接触区域のサイズ等)に対して最適な印刷力が異なる可能性があり、印刷ヘッド力を制御することが印刷品質に対して重要な効果を有することは理解されるであろう。事前に決定された印刷力は、例えば32mmの幅を有するコーナーエッジ印刷ヘッド4では1.2重量キログラム(kgf)前後の力とすることができる。印刷力は、印刷ヘッド4と印刷面11との間の角度(印刷ヘッド角度)に依存する可能性もあることを更に理解されよう。例えば、印刷ヘッド角度が26度である場合に1.2kgf前後の印刷力を用いることができるが、異なる配列(異なる印刷ヘッド角度を有する)では変更される可能性がある。
【0226】
印刷ヘッド4と印刷面11(更に中間にあるリボン2及び被印刷物10)との間に事前に決定された印刷力が確立された後に、印刷ヘッド4は、画像を印刷するために印刷面11に対して平行な方向に移動され続ける。印刷ヘッド4のそばを通るリボン経路の方向に対して平行な方向の印刷ヘッドのかかる移動を印刷ストロークと呼ぶことができる。印刷ヘッド4がリボン2及び被印刷物10にわたって移動するにつれて、様々なインク領域が様々な位置において被印刷物10に転写されるようにするために様々な印刷要素が励磁され、画像を形成することが可能になる。画像の全体にわたって一貫した印刷品質を維持するためには印刷ヘッド4と印刷面11との間の印刷力を維持することが必要であることは理解されるであろう。
【0227】
印刷ヘッド4が印刷対象の画像の全長を進み切る(すなわち印刷ストロークを完了する)と、移動が停止され、印刷過程は完了する。続く非印刷過程中に、印刷ヘッド4はリボン2、被印刷物10、及び印刷面11との接触から引き戻され、その後、更なる画像を印刷するために印刷過程中の先の移動と反対の印刷面11に対して平行な方向に移動する。この非印刷過程中に、次の画像の開始前にリボン2の新しい未印刷領域が被印刷物10に隣接するように、リボン2は、印刷済みの画像の長さに相応する線形量だけ順送される。この非印刷過程中に被印刷物10を順送することもできる(この被印刷物移動の詳細については本明細書では詳細に解説しないが)。
【0228】
印刷ヘッド4の印刷面11(及び被印刷物10)に向かう及び印刷面から離れる移動の制御は、印刷ヘッド駆動組立体22、より具体的には電磁石23の適切な制御によって行われる。一般論として、印刷ヘッド4は、ばね28によって印刷面11に向かって付勢され、強磁性要素25に向かう永久磁石27の吸引力によって印刷面から離れるように付勢される。しかしながら下記でより詳細に説明するように、電磁石23は、印刷ヘッド4が印刷面11から離間して配置された第1の構成から、印刷ヘッド4が印刷面11との接触状態にある第2の構成へと印刷ヘッド4を移動させるように強磁性材料25内及びその周囲の磁力を制御することを可能にする。
【0229】
より具体的には、ばね28の配列は、印刷ヘッド4を印刷面11に向かって付勢する力を与える。フックの法則によると、ばね28によって作用される力は、ばね28の圧縮及び伸長に関連して実質的に線形に変動することは理解されるであろう。上記でより詳細に説明したように、ばねは、第1の端部において強磁性要素25に当接し、第2の端部において、支持アーム21及び印刷ヘッド4に固定されたターゲット26に当接するように配列される。従って、強磁性要素25に向かう印刷ヘッド4の移動中に、ばね28は圧縮され、ばね28によって印刷ヘッド4に対して(印刷面11に向かって)作用される力が増加する。
【0230】
その一方で、強磁性要素25から離れる印刷ヘッド4の移動は、ばね28を伸張させる(従って、弛緩させる)こと、及びばね28によって印刷ヘッド4に対して(印刷面に向かって)作用される力が減少することを可能にする。ばね28によって印刷ヘッド4に対して作用される力の変動は、強磁性要素25と永久磁石27との間の離隔距離の変化に関連して実質的に線形に変動する。
【0231】
ばね力の線形変動にはオフセットが課されることは理解されるであろう。すなわち、ばね力がゼロになる離隔距離は、印刷ヘッド駆動組立体22の動作範囲を超える。これは、ばね28の予備圧縮の結果である。従って、全ての動作離隔距離において、印刷ヘッド4を印刷面11に向かって付勢するばね28によって作用される非ゼロばね力が存在する。従って、印刷ヘッド4に対して作用する何れか他の力の不在時には(更にばね28の力と比較して重力の効果を無視することができると仮定して)、ばね28は、印刷ヘッド4を印刷面11に接触させることになる。ばね28によって作用された力の大きさを、強磁性要素25と永久磁石27との間の離隔距離(印刷ヘッド4の位置にも相応する)の関数として
図7に示し、線Sで示している。
【0232】
図7に記載のグラフでは、正の力は、印刷ヘッド4を印刷面11に向かう方向に付勢する力に相応し、その逆も同様に成り立つ。
【0233】
上記で説明したように、幾つかの実施形態では、ばねは、19mmの自由長を有することができ、印刷ヘッド駆動組立体22の組み立ての前におよそ11mmだけ予備圧縮することができる。従って、印刷ヘッドが第2の構成にある時には、ばねは、8mm前後の長さを有するように圧縮することができる。それに対して、印刷ヘッドが第1の構成にある時には、ばねは、5mm前後の長さを有するように圧縮することができる。ばねが発生させる力は、ばねの圧縮に伴って実質的に線形に変動する。
【0234】
図7に見ることができるように、強磁性要素25と永久磁石27との間の離隔距離が1mm前後である時には、ばねが発生させる力は40N前後である。ばね力は、5mm前後の離隔距離における29N前後まで徐々に減少する。
【0235】
印刷ヘッド4に対して作用するばね力に加えて、更に永久磁石27が、印刷ヘッド4に対して作用する力を発生させるように配列される。特に、永久磁石27は、強磁性要素25に対して吸引力を作用する。永久磁石27の吸引力は、上記で説明したばね力と反対の方向に作用し、従って、これらの力はグラフ上に負の数値として示される。
【0236】
公知であるように、永久磁石によって強磁性材料に対して作用される吸引力の大きさは、磁石と強磁性材料との間の離隔距離の二乗にほぼ反比例する。従って、永久磁石27(印刷ヘッド4に固着された)と強磁性要素25との間の力の大きさは、永久磁石27が強磁性要素25に接近し、これらの間の離隔距離が低減するにつれて増加する。従って、永久磁石27によって作用される力は、離隔距離が最小である時に最も強く、その逆も同様に成り立つ。しかしながら、ばね力(上記で説明した)が離隔距離と共に線形に変動するのに対して、磁力は、離隔距離との反比例関係に従って、変動する。印刷ヘッド4の位置の関数としての永久磁石27によって作用される力の大きさを
図7に示し、線Mで示している。
【0237】
例えば、上記で説明した実施形態では、強磁性要素25と永久磁石27との間の離隔距離が1mm前後である時に、永久磁石が発生させる力はマイナス40N前後である。永久磁石が発生させる力の大きさは、5mm前後の離隔距離におけるマイナス5N前後まで徐々に減少する。しかしながら、ばね力の変化とは異なり、磁力は、この範囲内では線形に変動せず、離隔距離との事前に決定された反比例関係に従って、変動する。磁場強度と離隔距離との間の関係は、材料及び幾何学構成に関する多くの因子に依存することになり、逆二乗関係に厳密には相応しない可能性があることは理解されるであろう。磁場をモデル化するために有限要素解析等の技法を用いることができる。或いは、ある一定の間隙及び距離において磁場が発生させる力の測定を行うことを可能にするために物理的なプロトタイプを用いることができる。続いて制御された全体の力を与えるために、かかるモデル又は測定を用いて設計パラメータを必要に応じて加減することができる。何れかの更なる力の不在時には、ばね28の力は、印刷ヘッド4を印刷面11に向かって付勢するように作用し、永久磁石27の力は、印刷ヘッド4を印刷面11から離すように付勢するように作用することは理解されるであろう。これらの力の各々が印刷ヘッド4に対して作用し、印刷ヘッド4の位置に基づいて異なる方式(すなわち、線形対逆二乗関係)で変動することを所与として、印刷ヘッド4の各位置において、位置に依存する合力が存在することになる。かかる合力を
図7に示し、線Rで示している。線Rで示している力は、各々が上記で説明したように変動する力MとSとの代数和であることは理解されるであろう。
【0238】
上記のことから、強磁性要素25と永久磁石27との間の離隔距離が1mm前後である時には合力は0N前後である。合力は、3mm前後の離隔距離における+22N前後、4mm前後の離隔距離における+25N前後、更に5mm前後の離隔距離における+25N前後へと徐々に増加する。
図7に例示している力は、プリンタの他の構成要素が発生させる反力、及びプリンタが動作する環境、又はシステムの他の属性を全体として算入していない、力発生構成要素(すなわちばね28及び磁石27)の各々が発生させる静的な力であることは理解されるであろう。従って、例示している力は、印刷動作中に印刷面11に対して作用される可能性がある力よりも幾分高い。例えば、リボン張力は、印刷力を低減させる可能性がある。同様に、旋回軸14の幾何学構成、及び印刷ヘッド4とリボン2との間の摩擦も、印刷力を変動させる可能性がある(下記で
図13を参照しながらより詳細に説明するように)。
【0239】
有益には、
図7に記載のグラフ上に線Rで示している、距離に伴う印刷合力の変動は、およそ3mmの離隔距離と5mmの離隔距離との間に実質的に平坦な部分を有する。このことは、印刷面11の位置の有用範囲に相応する、永久磁石27と強磁性要素25との間の離隔距離の範囲にわたって実質的に一定の印刷力を得ることができることを意味する。このことは、プリンタが大きい印刷設定範囲にわたって安定して印刷を行うことを可能にし、印刷面11とプリンタとの間の距離において適度の変動量(2mm)が許されることから重要である。
【0240】
図7からわかるように、永久磁石27と強磁性要素25との間の小さい(すなわち1mmよりも小さい)離隔距離(すなわち、
図5a及び
図6aに例示している第1の構成)では、永久磁石27が発生させる力(その最大値にある)は、反対方向に作用するばね28が発生させる力に打ち勝つのに十分である。このように、離隔距離がある一定の値よりも小さい時には、合力Rは、印刷ヘッド4を印刷面11から離れるように付勢する方向に作用し、離隔距離が更に低減する。
【0241】
それに対して、永久磁石27と強磁性要素25との間の大きい離隔距離(
図5b及び
図6bに例示しているような)では、永久磁石27が発生させる力(その最小値にある)は、反対方向に作用するばね28が発生させる力によって打ち負かされる。このように、離隔距離がある一定の値よりも大きい時には、合力Rは、印刷ヘッド4を印刷面11に向かって付勢する方向に作用し、離隔距離が更に増大する。
【0242】
従って、第1の構成(すなわち、後退位置とも呼ぶ、印刷面11から離間している時)又は第2の構成(すなわち、伸長位置とも呼ぶ、印刷面11と接触状態にある又はそれに近い時)のどちらかにおいて印刷ヘッド4に対して作用する合力は、印刷ヘッド4が当該構成に向かって更に付勢され、平衡位置(すなわち、2つの対向する力が互いに相殺する位置)から離れるように付勢されるようなものであることは理解されるであろう。この平衡位置を、
図7に記載のグラフ内で点Eによって示しており、永久磁石27と強磁性要素25との間の1mm前後の離隔距離に相応する。
図7では、可能な第1及び第2の構成の距離を網掛けで示している。
【0243】
かかる力の釣り合いの結果、印刷ヘッド4は、後退位置又は伸長位置にくると、更なる力によって当該位置から離れるように移動するようにされない限り当該位置に安定した状態に留まる。従って、印刷ヘッド4に対して、第1の構成(
図5aに示している後退位置)及び第2の構成(
図5bに示している伸長位置)という2つの安定した構成が存在する。
【0244】
動作時には、かかる更なる力を、電磁石23の動作によって与えることができる。すなわち、電磁石23は、永久磁石27が発生させる力を補強する又は対抗することができるように配列される。コイル24が磁場を第1の方向に発生させるように励磁されると、この磁場によって永久磁石27は電磁石23に更に引きつけられる。しかしながら、コイル24が磁場を第2の方向に発生させるように励磁されると、この磁場によって永久磁石27は電磁石23にそれ程引きつけられない、又は電磁石23から跳ね返される場合さえもある。このようにして、印刷ヘッド駆動組立体22は、印刷ヘッド4に対する力を調整することができる。次に、電磁石23が発生させるこれらの力と永久磁石27及びばね28が発生させる力との相互作用をより詳細に説明することにする。
【0245】
図8bは、第1の構成にあり、電磁石23のコイル24が、永久磁石27が発生させる力を補強するように励磁された印刷ヘッド駆動組立体22を示している。磁気回路は、実質的に
図6aに例示しているものである。しかしながら、互いに補強し合う永久磁石27と電磁石23との両方からの寄与を有する、
図6aに記載のものよりも強い磁場M1″が確立される。このように、永久磁石27が発生させる磁場と電磁石23が発生させる磁場とが互いに補強し合い、その結果、ターゲット26(及びターゲットに取り付けられた印刷ヘッド(図示していない))に対して方向Dに作用する吸引力が印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素と第2の構成要素との間に生み出される。
【0246】
それに対して、同様に第1の構成にある印刷ヘッド駆動組立体22を示している
図8aは、永久磁石27が発生させる力に対抗するように励磁された電磁石23のコイル24を示している。磁気回路は、
図6a及び
図8aに例示しているものに対して変更されている。特に、電磁石23の内部に第1の磁場M2が確立され、永久磁石27及びターゲット26内に第2の対向する磁場が確立されている。明らかなように、間隙g2のどちら側にも対向するN極が生み出され、間隙g1のどちら側にも対向するS極が生み出されている。このように、永久磁石27が発生させる磁場と電磁石23が発生させる磁場は互いに対向し合い、その結果、ターゲット26(及びターゲット26に取り付けられた印刷ヘッド(図示していない))に対して方向Cに作用する反発力が印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素と第2の構成要素との間に生み出される。
【0247】
電磁石23が発生させる磁場の強度は、コイル24を通って流れる電流にほぼ線形に関係付けられる。従って、コイル24を通って流れる電流の大きさを事前に決定された関係に従って、制御することによって磁場強度の大きさ、従って、磁力強度を正確に制御することができる。更に、発生させる磁場の方向も、コイル24を通って流れる電流の方向に相応し、方向制御を果たすことが可能になる。形状記憶要素と併用される多くの電磁石は、吸引磁力しか与えないことは理解されるであろう。すなわち、どちらかの方向の磁場が、吸引力が発生するように強磁性要素の一時的な磁化を引き起こす。しかしながら、永久磁石の使用が吸引力と反発力との両方を発生させることを可能にし、印刷ヘッド4にはるかに優れた力制御を施すことが可能になる。
【0248】
上記の合力(
図7に記載の線Rで例示している)の説明から理解されようが、電磁石23が発生させる吸引力又は反発力が、平衡点を越える場所へと印刷ヘッド4を移動させる(第1及び第2の構成のどちらが開始点であったかに関係なくそこから開始して)のに十分である場合には、電磁石23に印加されている電流が取り除かれた時に、印刷ヘッド4は、当該開始点から第1及び第2の構成のうちの他方のものへと移動することになる。従って、印刷ヘッド4を一方の構成から他方の構成へと移動させるために電磁石23に必要とされることは、印刷ヘッド4が平衡点Eを通り過ぎるのに十分な強度の力を発生させること、及び十分な時間幅だけである。その後、電磁石23が消磁された場合であっても、印刷ヘッド4が第1又は第2の構成に達するまで、ばね28又は永久磁石27が発生させる力が印刷ヘッド4を移動させ続ける。
【0249】
線Rが、
図7に示している合力を示す
図9に注目すると、線RPが、コイル24が正の向きの3アンペア(+3A)の電流で励磁された時にばね28と永久磁石27と電磁石23との組み合わせが発生させた合力を示している。線RPは線Rがずれたものであり、このずれは、電磁石23が方向C(
図5から
図8に示している)に発生させる更なる力の結果であることがわかる。上記のことから、印刷ヘッド4の位置がどのようなものであっても、プラス3アンペアの電流がコイル24内に流された場合には、合力は方向Cにあることになり、これにより印刷ヘッド4は印刷面11に向かって付勢されることになることは理解されるであろう。
【0250】
図9で見ることができるように、プラス3アンペアの電流がコイル24内に流され、強磁性要素25と永久磁石27との間の離隔距離が1mm前後である時には、合力は+27N前後である。3mm前後の離隔距離において+35N前後の正の励磁(RP)ピークを有する合力は、その後、5mm前後の離隔距離における+32N前後の力まで若干低下する。
【0251】
それに対して、線RNは、コイル24が負の向きの3アンペア(-3A)の電流で励磁された時にばね28と永久磁石27と電磁石23との組み合わせが発生させる合力を示している。線RENは、線Rがずれたものであり、このずれは、電磁石23が方向D(
図5から
図8に示している)に発生させる更なる力の結果であることがわかる。
【0252】
上記のことから、マイナス3アンペアの電流がコイル24内に流され、強磁性要素25と永久磁石27との間の離隔距離が1mm前後である時に、合力RNは-27N前後である。負の励磁(RN)を有する合力は、2mm前後の離隔距離における0N前後まで降下し、その後、5mm前後の離隔距離における+18N前後まで上昇する。
【0253】
上記のことから、
図9に例示している力から、離隔距離範囲が2ミリメートル前後を下回るように維持されることを前提として、印刷ヘッド4の位置がどのようなものであっても、マイナス3アンペアの電流がコイル24内に流された場合に、合力は方向Dにあることになり、印刷ヘッド4を印刷面11から離れるように付勢する(すなわち、印刷ヘッドをその第1の構成に後退させ戻す)のに十分となることは理解されるであろう。印刷ヘッド4を2mmよりも大きい離隔距離から後退させるためには、3アンペアよりも高い負の電流が必要とされることになることを理解されよう(
図9に記載のグラフには示していないが)。例えば、印刷ヘッド4を4mm前後の離隔距離から後退させるために、-6A前後の電流を用いることができる。
【0254】
関与する力及び必要とされる電流レベルは、特定の構成(例えば、離隔距離、ばね定数、電磁石の巻線内のターン数、磁気回路内の各構成要素の磁気特性等)に依存することになり、それに即して変更することができることを更に理解されよう。
【0255】
このようにして、更に離隔距離が標準の動作範囲内(例えば2mmと4mmとの間)に維持されることを前提として、印刷ヘッド4を、第1の構成と第2の構成との間で必要に応じて移動させることができる。
【0256】
特定の配列、及びばね強度と磁力と電流レベルとの組み合わせに対して正しい動作を確実にするように標準の動作範囲を制御することができることは理解されるであろう。従って、この具体例では許容可能動作範囲は2mm前後(すなわち2mmの離隔距離と4mmの離隔距離との間)であるが、この範囲は、特定の用途に関する要求に応じて拡大(又は縮小)することができる。同様に、平衡点(この場合には1mm前後の離隔距離)を、適切な設計選択による要求に応じて変動させることができる。
【0257】
更に、永久磁石27及びばね28が発生させる力は常に印加される(且つ印刷ヘッド4の位置に基づいて変動する)が、電磁石23が発生させる力は、印刷ヘッド4の制御を果たすために短い期間の間しか必要とされない。従って、移動が必要とされる時に電磁石23のコイル24に短い電流パルスを供給することしか必要とされず、電磁石23が動作時に冷温に留まることが可能になる。
図10から
図12を参照しながら下記でより詳細に説明するように、インクが被印刷物に転写される印刷過程と、次のサイクルの印刷過程に向けて装置が準備される更なる非印刷過程とを各々が含む印刷サイクルの時間幅(例えば15ミリ秒)と比較した場合に短い時間幅にわたって電流パルスを電磁石23のコイル24に供給することしか必要とされない可能性がある。
【0258】
すなわち、電磁石(例えばソレノイド)を用いて機械システム内に移動を引き起こす場合には、かかる電磁石が長い期間にわたって励磁状態に留まり、その結果、コイル内にかなりの熱が発生するのが一般的である。かかる熱は、当該システムの連続する確実な動作にとって有害である可能性があり、従って、不益である。しかしながら、上記で説明した配列は、磁力とばね力との間の相互作用を利用して、作動に向けて電磁石が短い磁力パルスを発生させることしか必要とされないような双安定方式で印刷ヘッドを付勢する。これにより、印刷ヘッドが2つの安定構成のうちの一方にある時に電磁石を連続的に励磁する必要がないことにおいて印刷ヘッド駆動組立体が「低温」で動作することが可能になる。
【0259】
更に、ばね28の適切な選択によって確実で予測可能な印刷力を発生させることができる。すなわち、印刷ヘッド4が後退位置から伸長位置へと移動するようにされると(上記で説明したように短い電流パルスを電磁石23のコイル24に印加することによって)、ばね28は、印刷ヘッド4及び強磁性要素25の相対位置に依存する力によって印刷ヘッド4を印刷面11に向かって付勢し、従って、それに対して押圧することになる。すなわち、ばね力は、ばね28の伸長又は圧縮のみに依存し、その一方で永久磁石27(強磁性要素25に対して比較的小さい吸引力を作用することになる)が発生させる何れかの対向力も予測可能である。従って、プリンタ1は、コイル24に電流を印加することが必要とされることなく、ばね28が発生させる一定の印刷力によって印刷動作を実施するように動作させることができる。
【0260】
かかる印刷動作は、印刷ヘッドキャリッジ13がプリンタ本体に対して定置状態に保持されている間に実施する(すなわち連続印刷)、又は印刷ヘッドキャリッジ13をプリンタ本体に対して移動させる間に実施する(すなわち断続印刷)ことができる。
【0261】
続いて印刷動作が完了した時(すなわち、画像が印刷された後)に、印刷ヘッド4は、ばね28の力に打ち勝つのに十分な吸引力を電磁石23と永久磁石27との間に発生させる電流パルスのコイル24への印加によって後退される。これにより印刷ヘッド4は、第2の構成(すなわち伸長位置)から第1の構成(すなわち後退位置)へと移動する。
【0262】
図10は、上記で説明した印刷ヘッドの移動を引き起こすために電磁石23に印加される電流の使用を示す例示的な電流及び力の波形を示している。水平軸は時間を示し、示している最大範囲は200msの時間幅をカバーする。垂直軸は、線F及びIそれぞれで示す力又は電流のどちらかを示す電圧を示している。特に、線Fは、印刷ヘッド4によって印刷面11に印加された力を表している。線Iは、電磁石23に印加された電流を表している。例示しているデータは試験印刷動作中に取得したものであり、力データは、印刷面の代わりを務めるように配列された荷重計によって取得したものである。
【0263】
図10に示している例では、時間t0において電流はゼロであり、印刷ヘッドは第1の構成にあり、従って、印刷力も実効的にゼロである(幾分かのノイズを見ることができるものの)。t1において、コイル24に正の方向の電流が印加され、電流Iは、その直後に増加を示し、ピークレベルまで徐々に上昇する。コイル24の誘導性が、電流が上昇することができる速度を制限することは理解されるであろう。コイル24に電流が印加されて間もない時間t2において、印刷力Fがゼロから上昇する。印刷力Fは最初にオーバーシュートし、続いて1.2kgf前後の力にほぼ相応するレベルに向かって徐々に安定化する。t2のすぐ後の時間t3において、電流パルスは停止され、コイル24内の電流レベルIはゼロに戻る。この正電流は、15ミリ秒前後の総時間幅(すなわちt1とt3との間)にわたって印加される。時間t1においてコイル24に電流が印加されると、印刷ヘッド4を第2の構成へと付勢する反発磁力が電磁石23と永久磁石27との間に発生することは理解されるであろう。この場合、この力が、永久磁石27によって引き起こされた強磁性要素25の磁化に逆行するのに十分になると、印刷ヘッド4は第2の構成に向かって移動するようにされる。印刷ヘッド4が印刷面11(及びこの場合には荷重計)と接触すると、印刷力Fが上昇し、印刷面11に対して垂直な印刷ヘッド4の移動が終わる。
【0264】
続いてある期間にわたって、印刷力Fは1.2kgfで実質的に安定状態に留まり、その一方で電流Iはゼロに留まる。この期間は、印刷動作が実施される時である。断続印刷では、この期間中に印刷ストロークを実施するために印刷ヘッドキャリッジ13が直線軌道15に沿って移動され、これにより印刷ヘッド4は印刷面11に沿って移動する。
【0265】
印刷力Fは、時間t4まで1.2kgf前後で持続し、t4においてコイル24に負電流パルスが印加される。電流の大きさはピークレベルまで徐々に再上昇する。この電流が増加すると、印刷ヘッド4を伸長位置から離れるように(すなわち後退位置に向かって)付勢する吸引力が電磁石23と永久磁石27との間に発生する。この力がばね28の力に打ち勝つのに十分になると、印刷ヘッド4は、後退位置に向かって移動するようにされる。かかる移動は、永久磁石27が緩衝器29と接触するまで続き、その後、印刷面11に対して垂直な方向の印刷ヘッド4の移動は終わる。印刷ヘッド4が印刷面11(又はこの場合にはフォースプレート)との接触を失うと、測定中の印刷力Fは急激に低下する。こうして、t4における電流の開始後間もない時間t5において、印刷力は急激に衰える。示している例では、力は、110ms前後の総時間幅にわたって印加され、この時間幅のうちの90ms前後は、1.2kgf前後の望ましい印刷力に相応する。
【0266】
続いて負電流は、時間t6において取り除かれ、その後、電流Iはゼロに戻り、印刷力Fはゼロに留まる。負電流は、15ms前後の総時間幅(すなわち時間t4とt6との間)にわたって印加される。
【0267】
負の方向の電流の印加(時間t4における)の前に、印刷力内の幾分かの振動が見られることに注意されたい。この振動は、印刷ストロークが完了し、印刷ヘッド4が印刷面11に沿って移動し終わることにおける結果である。
【0268】
時間t1及びt4の後の正と負との両方の方向の電流の上昇と、t1’及びt4’それぞれで示している電流の落ち込みを見ることができることに更に注意されたい。これらの落ち込みは、印刷ヘッド4が印刷面と接触する点(t1’)及び永久磁石27が緩衝器29と接触する点(t4’)に相応する。各場合に、機械的衝撃と、印刷ヘッド駆動組立体22が受ける力の変化とが、コイル24内へと電流を駆動する回路が受ける電気インピーダンスの変化を引き起こす。この効果は、モータ動作において見ることができる逆起電力(逆EMF)と性質が同様であると考えることができる。
【0269】
特に、逆EMFは、磁場と相対的に移動する導電体(すなわちコイル24)内に(又は同様に磁場が導電体と相対的に移動する時に)誘導される電圧を意味するものとすることができる。誘導電圧は、永久磁石27の位置の変化率に相応する磁束の変化率に比例するものとすることができる。永久磁石27の移動がコイル24の両端に発生させる電圧は、コイル24に印加される駆動電圧に対抗するようにコイル24の両端に出現する。永久磁石が突然減速される時(例えば、印刷ヘッド4が印刷面11と接触する時)に、逆EMFの突然の変化があることは理解されるであろう。コイル24を励磁するために用いられる駆動電子機器の性質に依存して、この逆EMF変化は、例えば、コイル24によって引き込まれる電流の落ち込み又はコイル24の両端の電圧の増加のどちらか、或いはこれらの両方として検出可能とすることができる。
【0270】
図11は、t1’落ち込みの前後の電流及び力の波形をより詳細に示している。水平軸は時間を示し、示している最大範囲は100msの時間幅をカバーする。垂直軸は、前と同様に線F及びIそれぞれで示す力又は電流のどちらかを示す電圧を示している。落ち込みが、時間t2において印刷力が急激に増加する点に概ね相応することがわかる。
【0271】
かかる顕著な電流特性は、印刷ヘッド駆動組立体22の動作を改善するために用いることができる。例えば、上記で言及した落ち込みt1’を用いて、印刷ヘッド4が印刷面11と接触する時点を識別することができ、これにより当該移動を引き起こしている電流パルスを停止することが可能になる。かかるフィードバックは、荷重計(又はその他のセンサ)が印刷面11上に設けられていない場合の特定の使用のものとすることができる。
【0272】
同様に、上記で言及した落ち込みt4’を用いて、永久磁石27が緩衝器29と接触する時点を識別することができ、これにより当該移動を引き起こしている電流パルスを停止することが可能になる。時間t2前後における力の上昇が、時間t1における電流の印加後およそ8msで発生する。続いて電流は、時間t2前後における力の上昇後6ms前後で急激に低下し始める。印刷力が最初に時間t2において上昇し始めた後に20ms前後で安定化することがわかる。
【0273】
幾つかの実施形態では、コイル24の内部を流れる電流は、動作における予想外の事態又は誤動作に関する有用な情報を提供することができる。例えば、動作中の印刷ヘッド4の予想外の何れかの移動(例えば外部の物体との衝突に起因する)は逆EMF信号を発生させる可能性があり、この逆EMF信号は、コイル24が励磁されたか否かに関係なくコイル24の内部を流れる電流の適切な監視によって検出することができる。
【0274】
より一般的には、コイル24の内部を流れる実際の電流が、システムの構成及び動作に関する有用な情報を提供することができ、これらの情報に基づいて後続の制御を実施することができることは理解されるであろう。
【0275】
後続の制御の1つのかかる形態では、第1の印刷ヘッド移動中に特徴的な逆EMF信号が見られる時間を用いて、第2の後続の印刷ヘッド移動の際に向けて制御信号を加減することができる。
【0276】
より詳細には、上記で詳細に説明したように、印刷ヘッドの印刷面に向かい及び該印刷面から離れる移動は、永久磁石27が発生させる力と電磁石23が発生させる力とばね28が発生させる力との組み合わせによって引き起こされることは理解されるであろう。特に、一方の安定位置から他方の安定位置への移動は、電磁石内を流れる電流によって引き起こされ、力の不均衡を発生させ、更に印刷ヘッド位置を変化させる。
【0277】
しかしながら、これらの力は、電磁石の端子の両端への電圧の印加直後に発生するわけではないことも理解されよう。言い換えれば、電磁石(事前に決定されたインダクタンスを有する)内を流れる電流は、印加電圧、インダクタンス、及び抵抗の大きさに依存して上昇することになることが公知である。特に、抵抗がインダクタと直列で配置された回路内では、インダクタ内を流れる、電圧印加からの時間の関数としての電流を次式のように計算することができる(時間ゼロにおいて電流が流れないと仮定する)。
【数1】
式中、I(t)は、インダクタ内を流れる時間の関数としての電流であり、Vは印加電圧であり、Rは抵抗器の抵抗であり、tは時間であり、Lはインダクタのインダクタンスである。
【0278】
従って、電磁石が発生させる力が電磁石内を流れる電流に比例して変動すると仮定すると、電磁石が励磁された時に、発生する力は、時間定数L/Rを有する指数関数関係に従って、上昇することになる。当然ながら、誘導コイルを駆動するためにPWM駆動信号が用いられる場合には、電流特性を、印加波形並びに印加電圧のデューティサイクルの関数とすることができることは理解されるであろう。
【0279】
この力の上昇中に、力は最初に素早く上昇し、続いて最大電流/力に近づくにつれてより緩慢に上昇することになる。この上昇中の何れかの点において、電磁石が発生させる力は、永久磁石又はばねの対向する力に打ち勝つのに十分に大きくなり、印刷ヘッドがどちらの安定位置にあるかに関係なくそこから印刷ヘッドを移動させる。この力レベルを、動作力と呼ぶことができる。
【0280】
外部擾乱に対する不感度を与えるために、動作力が、上記で説明した電流/力曲線の比較的平坦な領域の際に得られるように印刷ヘッド駆動組立体を構成することを望ましいこととすることができる。従って、電圧の初期印加の後に動作力が得られる正確な時間が、1つの動作から次の動作へと変動する可能性があることは理解されるであろう。しかしながら一般論として、同様の印刷動作中に電圧印加後のほぼ同じ時間に最小動作力が得られることになる。
【0281】
上記で説明した電流上昇に加えて、印刷ヘッド駆動組立体の動作中に見られる実際の電流は、印刷ヘッド駆動組立体の作動中に引き起こされる逆EMF信号によって加減されることになる。
【0282】
図13は、印刷動作中の実測電流を示している。
図13に示している例では、電磁石電流を電流線40で示し、それに対して実測印刷力を力線41で示している。印刷動作の詳細は、
図10を参照しながら上記で説明したものと概ね同様であり、従って、ここで詳細に説明することはしない。しかしながら、
図13に示している電流信号は、
図10に記載のものと反対の方向を有することに注意されたい。
図13では印刷ヘッド後退パルス42を見ることができ、
図14を参照しながらより詳細に解説する。
【0283】
特に、
図14は、パルス42からの力及び電流の波形40、41をより詳細に示している。時間t20において見ることができるように、電流がゼロから増加し始める。電流が、誘導電磁石コイル内で所望の電流レベルを得るために用いられるパルス幅変調(PWM)切り替えの痕跡を示していることを見ることができる。PWM切り替えは、10kHz前後の周波数で実施される。しかしながら、電流増加の全般的な形状を見ることができる(高周波切り替え波形を無視すると)。
【0284】
電流増加の開始後およそ2msの時間t21において、印刷力は減少し始めることが見られよう。電磁石が磁力を発生させ始めるや否や、これにより、合力が印刷ヘッドを印刷面に向かってなおも押送している場合であっても印刷ヘッドによって印刷面に対して印加される力が低減し始めることになることを理解することができよう。従って、時間t21から時間t22へと印刷力はほぼゼロになるまで徐々に減少する。この時間(すなわちt22)において、印刷ヘッドは、印刷面との接触を失い始める。
【0285】
時間t22前後において、電流波形40の大きさは増大し終わり、縮小し始める。このことは、電磁石23が発生させる磁場内における印刷ヘッド4(及び関連の印刷ヘッド駆動組立体構成要素)の移動によって発生する逆EMFの結果であると理解することができよう。
【0286】
更に、時間t22の後およそ1.5msである時間t23において、電流波形40の勾配は突然の逆転を示し、これにより電流波形40の大きさは縮小し終わり、再度増大し始める。この時間(すなわちt23)は、移動可能印刷ヘッド駆動組立体構成要素(すなわち、永久磁石27、ターゲット26)が緩衝器29と接触して移動を突然停止する点に相応することは理解されるであろう。
【0287】
時間t23の後に、電流は、時間t24まで短い時間にわたって上昇し続け、この点において電磁石電流は突然停止される。時間t23の直後に、移動可能印刷ヘッド駆動組立体構成要素は、緩衝器29との接触から跳ね返ることができ、分離状態で電磁石の電流が観測される場合に見られることになるものからのなおも更なる電流波形偏倚を引き起こすことは理解されるであろう。
【0288】
従って、監視電流波形の上記の解説から、印刷ヘッド駆動組立体の作動中に波形が特長(逆EMF起生信号及び誘導電流によって引き起こされる)を示すことを理解することができよう。更に、下記でより詳細に解説するように、後続の印刷動作中に印刷移動に影響を与えるように印加電圧の大きさ及びタイミングを加減することによって印刷ヘッド駆動組立体の制御を微調整することができる。
【0289】
例えば、印刷ヘッド駆動パルスの時間幅を選択することができる(印刷ヘッドを「内進」又は「外進」のどちらに移動させるかに関わらず)ことは理解されるであろう。かかる選択は、印刷ヘッド移動が発生する所望の時間と、力が作動レベルまで上昇するのに要する時間とに基づいて行われる。当然ながら、印刷ヘッドが予測よりも遅く移動し始める場合であっても、電流パルスが取り除かれる前に印刷ヘッドが所期の移動をなおも完了することになるように、幾分かの偶然性を含めることもできる。
【0290】
すなわち、電磁石の既知の電気的応答特性を所与として、印刷ヘッド駆動パルスは、印刷ヘッドが移動し始めることになる所期の時間の前に印加される。更に、印加パルスの振幅は、必要な力を適切な時間に供給するように選択される。例えば、
図13及び
図14に示している例では、印刷ヘッドは、電流パルスの開始後およそ12msの電流特性の比較的平坦な部分の際に移動し始める。
【0291】
しかしながら、電磁石に印加される電圧を増加することによって、上記の限界力が確立される速度を高めることが可能になり、従って、電圧が印加された後のより短い時間において印刷ヘッド移動が発生するようにされることは理解されるであろう。それとは逆に、電磁石に印加される電圧を低減することによって、この限界力が確立される速度を低めることが可能になり、従って、電圧が印加された後のより長い時間において印刷ヘッド移動が発生するようにされることは理解されるであろう。
【0292】
印刷動作中には、電流を監視することができる。かかる監視中に、印刷ヘッド移動に付随する特長が識別され、印刷ヘッドが、事前に決定された時間において移動し始めたか、その前に移動し始めたか、又はその後に移動し始めたかを決定することができる。
【0293】
この場合、後続の動作において、印刷移動を事前に決定された時間に(又はその近くで)発生させようと試みるために、電磁石に印加される電流を加減する(すなわち増加又は減少させる)ことができる。このようにして、プリンタ動作を加減し、所期の作動性能をより容易に得ることができるように、印刷ヘッド移動に付随する特長の検出を用いてフィードバックを供給することができる。
【0294】
このプロセスは正確ではない可能性があることは理解されるであろう。すなわち、移動時間が、電磁石内を流れる電流のみに基づくのではなく、幾つもの外部ノイズ源(例えば、振動、プリンタと印刷面との間の場合によって可変の距離、温度変動、機械的摩耗等)が更に存在する。従って、移動を始めるべき単一の事前に決定された時間ではなく、幾つかの実施形態では、許容可能移動時間範囲(例えば下限及び上限)をとり得る。
【0295】
同様に、移動が始まる正確な点(すなわち時間t22)は、ノイズを伴う信号トレース及び電流レベルの微妙な変化を考えると、検出するのが困難な可能性がある。しかしながら、例えば、特定のプリンタ配列に関する実証研究から時間t22の後の固定時間において発生することを把握することができる時間t23における電流勾配の突然の変化等の他の特徴点を用いることもできることは理解されるであろう。
【0296】
しかしながら、特定の時点及びそれに関連の電流特性が特定の印刷ヘッド移動に帰することが不可欠なわけではないことは理解されるであろう。一般論として、電流特性、許容印刷挙動に相応する当該特性に対するタイミング範囲、及びかかる許容挙動を生じる駆動電流範囲を実証的に識別することができることは理解されるであろう。
【0297】
一般論として、駆動電流が過度に低い場合には、印刷ヘッド移動が過度に遅い可能性があり、その結果、不十分にしか調整されていない印刷が生じることは理解されるであろう。それとは逆に、駆動電流が過度に高い場合には、印刷移動は過度に早い可能性があり、印刷ヘッドは、安定位置の間でより素早く移動する可能性があり、機械的摩耗及び損傷のリスクが生じる。
【0298】
当然ながら、上記で説明した実施形態は、移動が発生する前に駆動電流波形が実質的に平坦になることを可能にするが、他の配列が可能であることは理解されるであろう。
【0299】
例えば、より高速な動作が必要とされる場合には、より高い電流レベルを用いることができ、その結果、電流レベルが急勾配で上昇している期間中に電流レベルが発生する。かかる実施形態では、印刷ヘッド移動に付随する検出可能な逆EMF特性が、上記で説明したものから変動する可能性がある。しかしながら、印刷ヘッド移動に特有の幾つかの特徴は、なおも識別可能である可能性がある。
【0300】
当然ながら、電磁石に供給される電流のレベルは、多くのパラメータの中でもとりわけ電源要件と、電磁石の幾何学構成と、動作速度と、信頼性と、保守性能との間の妥協を伴う工学設計の選択肢であることは理解されるであろう。
【0301】
従って、プリンタの初期化後の1回目の印刷動作中に、事前に決定された電力レベルを選択することができ、この事前に決定された電力レベルは、日常的な動作の際に必要とされる可能性が高い何れかの電力レベルを超えるように選択される。続いて1回目の動作中に、移動信号のタイミングが監視され、それに従って、2回目の動作中に印加される電力レベルが加減されることになる。選択された電力レベルは、最終的に安定レベルに定着することができる。この定着が発生する速度は、各段階において印加される変化の大きさに依存する可能性がある。しかしながら、安定動作が10回前後の印刷動作の後に確立されるのを好適とすることができる。当然ながら、「安定」動作中に、必要に応じて印加電力レベルに微調節を加えることができる。このようにして、フィードバックを用いて動作時の電力レベルが絶えず調節される。
【0302】
更に、特定の動作パラメータ又は構成をプリンタの連続動作中に変更することができることは理解されるであろう。例えば、プリンタがプル-ドラッグ構成(すなわち、供給スプールに抵抗力が印加されている間にリボンが単一の駆動手段によってテープ経路を通して引っ張られる)で動作する場合には、供給スプールに印加される抵抗力を、リボンのリールの始端(供給スプールの半径が大きいところ)とスプールの終端(供給スプールの半径が比較的小さいところ)との間で変動させることができる。かかる配列では、単一のリール又はリボンの使用中にリボン張力が例えば2~3倍だけ高まることが可能である。
【0303】
当然ながら、印刷ヘッドが外進(すなわち印刷面に向かって)駆動される時に、リボン内の何れかの張力に打ち勝つことが必要とされる(電磁石及びばねが永久磁石の力に打ち勝つことが必要とされるのに加えて)ことになることは理解されるであろう。従って、かかるプリンタの動作中には、印刷ヘッド移動を実施するのに必要とされる力が、連続動作中に徐々に変化する可能性がある。
【0304】
プリンタ動作の1つのかかる例では、電磁石に印加される電流レベルに、任意単位を有する大きさを示す値が与えられる。全長のリボンリール(例えば250m)を有するプリンタが動作に向けて初期化されると仮定すると、1回目の印刷動作中に、印刷ヘッド外進移動を引き起こすために2500(任意単位)の電流レベルを印加することができ、その結果、印刷ヘッドが、必要以上に素早く(上記で説明した強制的に)移動することを予測することができる。最初の数回の印刷動作中に、印刷ヘッド移動を事前に決定された時間間隔以内に発生させるように電流レベルが加減されることになることは理解されるであろう。かかる動作の際には、10回の印刷動作の後に、電流レベルに関連する安定値が800(任意単位)前後であると予測することができる。800(すなわち最大値のおよそ3分の1)の電流レベルは、リールがほぼ全長である時の動作における低い「正常」値を表すことができる。
【0305】
実際の電流レベルが多くの設計因子に依存することになることを理解されようが、幾つかの実施形態では、2500という印刷ヘッド外進電流値IPH_OUTはおよそ5アンペアの実電流値に相応し、それに対して800という印刷ヘッド外進電流値IPH_OUTはおよそ1.6アンペアの実電流値に相応する。
【0306】
当然ながら、プリンタは、全長リボンリールなしに開始及び停止することができる。従って、リボンリールがおよそ半分用いられた時にプリンタが初期化される印刷動作中の1回目の印刷動作中に、2500という印刷ヘッド外進電流値IPH_OUTを印加することができる。続いて、最初の数回の印刷動作中に、印刷ヘッド移動を事前に決定された時間間隔以内に発生させるように電流レベルが加減されることになる。かかる動作中の10回の印刷動作の後に、印刷ヘッド外進電流値IPH_OUTが1300前後(この場合、半分のリボンリールがある)であると予測することができる。
【0307】
同様に、リボンリールがほぼ完全に用いられた時にプリンタが初期化される印刷動作中の1回目の印刷動作中に、2500という印刷ヘッド外進電流値IPH_OUTをなおも印加することができる。続いて、最初の数回の印刷動作中に、印刷ヘッド移動を事前に決定された時間間隔以内に発生させるように電流レベルが加減されることになる。かかる動作中の10回の印刷動作の後に、印刷ヘッド外進電流値IPH_OUTが1800前後(この場合、リール上にはリボンはほぼ残っていない)であると予測することができる。このように、初期化の直後にはデフォルトの高い電流レベルが用いられるが、このパラメータは、特定のプリンタ構成に適切な電流レベルへと素早く調節される。
【0308】
移動において印刷ヘッドに必要とされる電流レベルに対してリボン張力レベルが効果を有する可能性があるが、この効果は、印刷ヘッド外進移動に関連して上記で説明した効果よりも著しく小さい大きさのものである可能性が高いことは理解されるであろう。
【0309】
様々な他の動作変量も、印刷ヘッド移動に必要とされる電流レベルに対して効果を有する可能性がある。1つのかかる動作変量は、各印刷動作の際、前、及び後に印刷ヘッド4が移動する距離に相応するプラテン間隙である。公称プラテン間隙は2mmとして指定することができるが、1.5mm及び2.5mmそれぞれの最小値及び最大値を用いることができる。従って、使用時には、プリンタを、1.5mmと2.5mmとの間のプラテン間隙を有するように構成することができる。当然ながら、印刷ヘッド4は、外に(すなわち、印刷面11との接触状態に)駆動される時に、平衡点に達するまでしか駆動する必要がなく、その後、ばね力が永久磁石の力に勝り、もはや電磁石が印刷ヘッド移動に寄与する必要はない。しかしながら印刷ヘッド後退の際には、正確なプラテン間隙が、必要とされる力に影響を与える可能性がある。すなわち、
図9を参照しながら上記で説明した力レベルに注目すると、合力特性(RN)は比較的平坦であるが、印刷ヘッドを予測動作範囲にわたって後退させるのに必要とされる力の幾分かの偏倚がなおも存在する。
【0310】
この場合、1.5mmの間隙の場合の動作中に印刷ヘッドを後退させるのに必要とされる安定電流レベルは、1100前後の印刷ヘッド内進電流値IPH-INに相応する可能性があり、それに対して2.5mmの間隙の場合の動作中に観測される安定電流レベルは、1900前後の印刷ヘッド内進電流値IPH-INに相応する可能性がある。すなわち、大きいプラテン間隙では、高い電流レベルが必要とされる可能性がある。
【0311】
このように、初期化の直後には印刷ヘッド内進移動と印刷ヘッド外進移動との両方に対してデフォルトの高い単一電流レベル(例えば2500)が用いられるが、このレベルは、動作中に特定のプリンタ構成に適切な電流レベルへと素早く調節される。
【0312】
実際には、初期化直後のデフォルトの高電流レベルの使用と、被監視フィードバック信号に基づく後続の精密化とによって、リボン状態及びプラテン距離、並びにその他の動作変量(これらのパラメータのうちの幾つか又は全てがプリンタコントローラ50にとって既知でなくてもよい)に関係なく正しい動作を素早く確立することが可能になることは理解されるであろう。
【0313】
更に、印刷ヘッドを外進に移動させるのに必要とされる電流レベルは、1つのパラメータセット(例えば、リール上に残っているリボンの量)に依存する可能性があり、それに対して印刷ヘッドを内進に移動させるのに必要とされる電流レベルは、異なる(場合によっては重複する)パラメータセット(例えばプラテン距離)に依存する可能性がある。このように、ほとんどの動作環境において、印刷ヘッド内進(後退)に必要とされる電流レベルは印刷ヘッド外進(伸長)に必要とされるものと異なる可能性が高い。両方の値が、異なるデフォルト値、異なる許容タイミング期間、連続動作中の異なる傾向を有する可能性があり、従って、異なる最適化ルーチンを用いる可能性がある。
【0314】
図14に示している波形の上記の解説から、印刷ヘッド4が時間t22とt23との間に移動し、この移動又は「飛行時間」がおよそ2msの時間幅を有することは理解されるであろう。この一次移動は時間t23において突然停止される(幾分かの跳ね返りが続く可能性があるが)が、移動の開始はより緩やかであることも理解されよう。実際には、印刷ヘッドが移動を開始する正確な瞬間を正確に決定するのは困難な可能性がある(ほとんどの動作構成では存在することにはならない荷重計の補助がある場合であっても)。従って、一次移動が終わった後(例えばt23の後の期間中)にも続く電流波形に対する印刷ヘッド移動の効果を考えると、電流波形に対する逆EMFの効果を適正に理解する又は波形特長を識別するためには完全な印刷動作に対する電流波形を過印加することが必要とされる可能性があることは理解されるであろう。
【0315】
従って、同じ印刷動作中に検出される特性に基づく印刷ヘッド移動の何れかの形態の制御を実施するのが困難な可能性がある。例えば、上記では、衝突の前に電磁石23に逆電流を供給するのを望ましいこととすることができると説明したが、移動が終了するまでこの移動を検出する(すなわち、衝突点t23を検出することによって)ことが困難なだけではなく、コイルの誘導性を考えると、材料効果を有するのに十分に素早く有意な逆電流を流すことも困難であろう。
【0316】
しかしながら上記で説明した技法を用いることによって、タイミング及び実測ピーク力に基づく望ましい動作特性を有するように1回又は2回以上の印刷動作にわたって被監視パラメータに基づいて電流レベルを調節することができる。例えば、電流レベルは、動作中に被監視タイミングに基づいて調節することができ、特定の種類のプリンタに対する較正過程の際に調整パラメータ(例えば、被監視タイミング、デフォルト電流レベル等に基づいてどのように電流レベル調節を行うか)を決定することができる。
【0317】
しかしながら、印刷ヘッド移動を引き起こすのに不十分な電力(又は時間幅)しか有さないパルスを供給することで起こり得る結果は、印刷動作にとって極めて有害な可能性があり、すなわち、印刷ヘッドが期待される「内進」移動又は「外進」移動を完了し損ねる可能性があり、場合によっては低品質印刷、欠落印刷、及び/又はプリンタ構成要素の損傷を招くことを考えると、電流レベルは、慎重に低減しなければならないことに注意されたい。
【0318】
それとは逆に、過度に大きい電力を有するパルスを供給することで起こり得る結果は、印刷ヘッドが最適速度よりも高速に移動し、プリンタ構成要素の間の衝突が最適範囲を超えることを考えると、電流レベルは、ほとんど注意を要さずに高めることができる。ある程度の摩耗及び断裂の増加を予測することはできるが、短い時間尺度の範囲内で損傷が発生することになる可能性は低い(最大安全閾値を超えない限り)。しかしながら、過度の駆動電流レベルが長期にわたって維持された場合には、機械的損傷(すなわち加速した摩耗)が発生する可能性があることは理解されるであろう。
【0319】
図15は、上記で一般論として説明した制御技法を実施するためにプリンタコントローラ50によって実施される処理の例を示すフロー線図を提示している。段階S1において、プリンタが初期化される(例えば電源投入された後に)。次に処理は段階S2に進み、ここで印刷ヘッド外進パルスI
PH_OUT及び印刷ヘッド内進パルスI
PH-INに対する電流値(電流の大きさを示す)が2500(任意単位)のデフォルト値に設定される。
【0320】
続いて処理は段階S3に進み(印刷命令が受け取られたと仮定して)、ここでコントローラ50は、印刷ヘッド4を印刷ヘッド駆動組立体22によって印刷面11に向かって外進駆動する。この移動中に、電磁石23の内部を流れる電流が監視される。電流は、電磁石23と直列に配置された低値抵抗器の両端に起こる電圧を監視すること等による何れか好適な手法で監視することができる。
【0321】
更に処理は段階S4へと進み、ここで監視電流に基づいて印刷ヘッド外進移動時間T
OUTが決定される。かかる決定は、例えば
図14を参照しながら上記で説明したように電流波形の内部の特性の識別に基づくものとすることができる(印刷ヘッド内進移動ではなく印刷ヘッド外進移動に対するプロセスを加減するために必要な変更が加えられる)。
【0322】
当然ながら、波形形状は、印刷ヘッド外進動作及び印刷ヘッド内進動作の各々に対して異なる可能性がある。しかしながら、各連続する「内進」動作又は「外進」動作に関して、波形が実質的に同様の形態を有することが予測され、特徴点を識別することが可能になる。かかる識別は、例えば、高速カメラによって印刷ヘッド移動の画像を取り込みながら動作を実施することによって実証的に実施することができ、特定の電流波形特性と物理的移動との間の相応性を確立することが可能になる。
【0323】
例えば、印刷ヘッドが移動し始める瞬間を何れかの手法で表す時点を、監視電流に基づいて決定することができる。その後、印刷ヘッド外進移動時間TOUTを、電流パルスの印加後に印刷ヘッドが移動し始めた時間として決定することができる。当然ながら、必要に応じて異なる基準点を選択することができる。
【0324】
印刷ヘッド外進移動時間TOUTが決定されると、処理は段階S5に進み、ここで印刷ヘッド外進移動時間が、最小許容閾値TOUT-MINと比較される。印刷ヘッド外進移動時間TOUTが最小許容閾値TOUT-MINを上回っている場合には、処理は段階S6に進み、ここで印刷ヘッド外進移動時間TOUTは最大許容閾値TOUT-MAXと比較される。印刷ヘッド外進移動時間TOUTが最大許容閾値TOUT-MAXを下回っている(且つ最小許容閾値TOUT-MINを上回ってもいる)場合には、印刷ヘッド外進移動時間TOUTは許容範囲内にあると見なされ、処理は段階S7に進む。
【0325】
段階S5において、印刷ヘッド外進移動時間TOUTが最小許容閾値TOUT-MINを下回っている場合には、処理は段階S8に進み、ここで記憶済みの印刷ヘッド外進電流値IPH_OUTが低減される(後続の印刷動作において印刷ヘッドをより低速で移動させるように)。続いて処理は段階S7に進む。
【0326】
段階S6において、印刷ヘッド外進移動時間が最大許容閾値TOUT-MAXを上回っている場合には、処理は段階S9に進み、ここで印刷ヘッド外進電流値IPH_OUTが増加される(後続の印刷動作において印刷ヘッドをより高速で移動させるように)。続いて処理は段階S7に進む。
【0327】
上記のように、段階S5及びS6の処理は、印刷ヘッド外進移動時間TOUTと基準範囲(TOUT-MINからTOUT-MAXまで)との間で比較を行うことを可能にする。印刷ヘッド外進移動時間が基準範囲の外にある場合には、段階S8又はS9のうちの一方において印刷ヘッド外進電流値IPH_OUTに適切な調節が加えられる。
【0328】
しかしながら、この処理は、あらゆる好適な手法で実施することができることは理解されるであろう。例えば、印刷ヘッド外進移動時間TOUTを単一の基準値と比較することができ、調節は、この基準値からの差(正又は負)に基づいて加えられる。同様に、ヘッド外進パルス値に加えられる調節もあらゆる好適な手法で実施することができる。例えば、何れかの調節のサイズを、印刷ヘッド外進移動時間TOUTと基準範囲(又は値)との間の差に何れか手法で基づくものとすることができる。或いは、段階S8又はS9のうちの一方の処理が実施される度に固定された調節を加える(例えば±100)を加えることができる。なおも更に、調節は、1回よりも多くの回数の印刷動作に関するデータに基づく(例えば、平均誤差値又は累積誤差値に基づく)ものとすることができる、且つ/又は加えられた過去の調節を算入することができる。幾つかの実施形態では、PID制御の形態を実装することができる。
【0329】
段階S7において(現在の印刷動作が完了した後に)、コントローラ50は、印刷ヘッド駆動組立体22によって印刷ヘッド4を印刷面11から離れるように内進駆動する。この移動の際に、電磁石23の内部を流れる電流が再度監視される。
【0330】
次に処理は段階10に進み、ここで監視電流に基づいて印刷ヘッド内進移動内進時間T
INが決定される。かかる決定は、例えば
図14を参照しながら上記で説明したように電流波形の内部の特性の識別に基づくものとすることができる。例えば、印刷ヘッド内進移動時間T
INは、時間t20における電流パルスの印加後に印刷ヘッドが移動し始めた時間(すなわち時間t21)として決定することができる。
【0331】
印刷ヘッド内進移動時間TINが決定されると、処理は段階S11に進み、ここで印刷ヘッド内進移動時間TINが最小許容閾値TIN-MINと比較される。印刷ヘッド内進移動時間TINが最小許容閾値TIN-MINを上回っている場合には、処理は段階S12に進み、ここで印刷ヘッド内進移動時間TINが最大許容閾値TIN-MAXと比較される。印刷ヘッド内進移動時間TINが最大許容閾値TIN-MAXを下回っている(且つ最小許容閾値TIN-MINを上回ってもいる)場合には、印刷ヘッド内進移動時間TINは許容範囲内にあると見なされ、処理は段階S3に戻り、ここで新しい印刷動作を始めることができる(適切な時間に)。
【0332】
段階S11に戻ると、印刷ヘッド内進移動時間TINが最小許容閾値TIN-MINを下回っている場合には、処理は段階S13に進み、ここで印刷ヘッド内進電流値IPH-INが低減される(後続の印刷動作において印刷ヘッドをより低速で移動させるように)。その後、処理は段階S3に戻り、ここで新しい印刷動作を始めることができる。
【0333】
段階S14において、印刷ヘッド内進移動時間TINが最大許容閾値TIN-MAXを上回っている場合には、処理は段階S9に進み、ここで印刷ヘッド内進電流値IPH-INが増加される(後続の印刷動作において印刷ヘッドをより高速で移動させるように)。その後、処理は段階S3に戻り、ここで新しい印刷動作を始めることができる。
【0334】
上記のことから、2回目(又は更に後続)の印刷動作では、印刷ヘッドの内進電流値及び外進電流値IPH-IN、IPH-OUTは加減され、望ましいタイミング特性を得るように印刷性能を使用中に調節することが可能になる。
【0335】
当然ながら、上記で説明した例は例示目的で提示したものであり、限定的であることを意図したものではないことは理解されるであろう。実際には、上記で説明したプリンタに対する多くの代替的配列及び修正物が可能である。
【0336】
例えば、ターゲット26と強磁性要素との間にコイルばねが設けられると説明したが、この機能を与えるためにあらゆる形態の付勢要素を用いることができる。かかる付勢要素は、あらゆる適切な形態(例えば異なる場所に装着された板ばね又は引張ばね)をとることができる。更に、全く異なる機構によって付勢する力を与えることができる。例えば、印刷ヘッド支持アーム21に付随し、永久磁石27及び強磁性要素25によって与えられる力と反対の方向に作用する力を与える別個の磁気要素を設けることができる。
【0337】
なおも更に、上記で説明した実施形態にはばねが含まれるが、幾つかの実施形態では付勢要素を完全に省くことができる。かかる実施形態では、印刷ヘッドは、永久磁石の動作によって印刷面から離れるように引きつけることができ(上記で説明したように)、必要時には適切な方向に励磁された電磁石の作用によって印刷面に向かって付勢することができる。従って、印刷ヘッド内進/外進移動及び位置制御を、いかなる機械的付勢要素も必要とせずに遂行することができる。かかる配列では、印刷ヘッドによって印刷面上に作用される力の大きさは、電磁石が発生させる磁場の強度(電磁石の巻線に印加される電流に関係付けられる)によって制御される。
【0338】
しかしながら、かかる配列において印刷ヘッドが伸長位置に留まるためには、電磁石が励磁状態に留まることが必要とされることになることは理解されるであろう。この配列は、印刷が発生することが予測される時間比率が比較的小さく、従って、電流が巻線の内部を流れることが必要とされる(この間に熱が発生する)時間比率も比較的小さい特定の用途を有することができる。
【0339】
或いは、幾つかの実施形態では、印刷ヘッド駆動組立体は、電磁石を印刷面に向かって付勢するように構成された第2の永久磁石を備えることができる。すなわち、印刷ヘッドを印刷面に向かって付勢する上で、ばねによって生み出される力を拠り所とする代わりに第2の磁石を用いることができる。印刷ヘッド駆動組立体は、上記で説明したように2つの安定した構成を有することができる。印刷面に向かう又は該印刷面から離れる印刷ヘッドの移動は、2つの永久磁石及び電磁石が発生させる力の組み合わせによって引き起こすことができる。特に、一方の安定構成から他方の安定構成への移動は、力の不均衡を発生させて印刷ヘッド位置を変化させる、電磁石内を流れる電流によって引き起こすことができる。安定構成の各々にある時に、印刷ヘッドは、電磁石が消磁された(又は低レベルで励磁されている)場合であっても電磁石と永久磁石のうちの一方との間に発生する吸引磁力によって当該構成に保持されることになる。
【0340】
当然ながら、かかる配列では、必要に応じて更なる力成分又は順応性を与えるために、ばね(又はその他の機械的付勢部材)を含めることもできる。例えば、印刷面位置の変動に対する不感度を与えるため、及び/又は適切な印刷力を与えるために印刷ヘッドを印刷ヘッド駆動組立体の構成要素にばねによって結合することができる。
【0341】
上記では、電磁石が印刷ヘッド駆動組立体アーム30に装着されるように説明したが、永久磁石を印刷ヘッド駆動組立体アーム30に装着し、電磁石を印刷ヘッド支持アーム21に装着して設けることができる。構成要素位置のかかる逆転は、上記で説明した印刷ヘッド移動の動作に影響を与えることにはならない。すなわち、上記で説明した印刷ヘッド駆動組立体22は、必要に応じて互いに引きつけ合う又は跳ね返し合うようにさせることができる2つの構成要素を有する。これら2つの構成要素の各々は、印刷ヘッドキャリッジ13又は支持アーム21のうちのどちらか一方の上に装着することができる(他方の構成要素は印刷ヘッドキャリッジ13及び支持アーム21のうちの他方の上に装着される)。
【0342】
更に、上記で説明した実施形態は、印刷ヘッドキャリッジ13と、それに旋回可能に装着された支持アーム21とを用いるが、必要に応じてその他の適切な機械的配列を用いることができる。例えば、印刷ヘッド4は、印刷面11に向かって及びそこから離れるように線形スライドに沿って移動するように装着することができる。必要なことは、印刷ヘッド駆動組立体22の制御下で印刷ヘッドが印刷面に向かって及び該印刷面から離れるように移動することができるように印刷ヘッドを支持することだけである。同様に、待機構成を可能にする(かかる構成が設けられるとすれば)ための代替的構造を設けて印刷ヘッド駆動組立体アーム30及び支承面32を完全に省くことができる。
【0343】
幾つかの実施形態では、更に代替的な配列を設けることができる。例えば、上記では単一のコイル24を説明したが、電磁石23の強磁性要素25の内部に制御可能な磁場を発生させることを可能にするように配列された複数のコイルを設けることができる。更に、電源への接続を逆転させること又は電源の極性を反転させることによって異なる方向の電流で励磁される単一のコイルではなくセンタータップコイルを設けて、センタータップを負の電源端子に接続し、コイルの一方又は他方の端部を単一の正の電源端子に接続することによって可逆的な磁場を発生させることを可能にすることができる。
【0344】
当然ながら、適切な場合には電磁石の異なる幾何学構成及び配列を用いることができることは理解されるであろう。例えば、単一の電磁石の代わりに、複数の電磁石を用いることができる。幾つかの実施形態では、必要に応じて変更可能な吸引力又は反発力を与える上で、複数の電磁石が配列される。例えば、複数の電磁石の各々を用いて異なる力成分を与えることができ、この場合、各時間に印刷ヘッドに対して作用する全体的な力は、様々な力成分の和である。1つのかかる実施形態では、吸引力と反発力との両方を与えるために、上記で説明したように単一(主)電磁石が配列される。しかしながら、反発力のみを与えるための1つ又は2つ以上の補助的な電磁石を含めることができる。かかる配列は、印刷ヘッドに印加される力を複数のアクチュエータによって与え、特定の用途に向けて必要に応じて変動させることを可能にする。
【0345】
印刷面に向かって又は印刷面から離れるように印刷ヘッド4を駆動するための電流パルスの使用に加えて(更に幾つかの事例では印刷力を発生させるためのばねが省かれる場合に)、電磁石23のコイル24に供給される電流を用いて印刷力を微調節することもできる。例えば、印刷ヘッド4が伸長位置にあり、ばね28が、印刷面11に対して作用すべき印刷力を引き起こしている時に、電磁石23のコイル24に電流を印加することができる。上記で説明したように、かかる電流は、電磁石23に磁場を発生させ、更に永久磁石27及びターゲット26に対して作用すべき相応する力を発生させることになる。この電流の大きさ及び方向を調節することによって、この力の大きさ及び方向を調節することができる。
【0346】
例えば、印刷ヘッド4が伸長位置にある時にコイル24に小さい正の電流を印加することによって、印刷動作中に印刷面11に対して作用される力を少量だけ増加させることができる。それとは逆に、印刷ヘッド4が伸長位置にある時にコイル24に小さい負の電流を印加することによって、印刷面11に対して作用される力を少量だけ減少させることができる。印加される電流と発生する力との間の比例定数はシステムの詳細に依存することになるが、この関係は実質的に線形である。
【0347】
コントローラ50は、所望の印刷力についての情報を処理し、この情報を用いてコイル24内に流すべき必要な電流を決定することができる。
【0348】
図12は、1つの例に関する力及び電流波形を示している。水平軸は時間を示し、示している最大範囲は200msの時間幅をカバーする。垂直軸は、前と同様に線F及びIそれぞれで表す力又は電流のどちらかを表す電圧を示している。
図10及び
図11の場合と同様に、この図でも線Fは印刷ヘッド4によって印刷面11に印加される力を表し、線Iは電磁石23に印加される電流を表している。この例では、およそ1アンペアの電流が0.4kgf前後の更なる力を発生させることが把握されている。
【0349】
図12に示している例では、時間t10において電流はゼロであり、印刷力も実効的にゼロである。時間t11において、正の方向の電流がコイル24に印加され、電流Iは、その直後に増加を示している。t11のすぐ後の時間t12において、印刷力Fが上昇しているのを見ることができる。t12のすぐ後の時間t13において、電流レベルは非ゼロ一定値(この場合には1A前後)まで低減される。その後、印刷力は、1.6kgf前後の印刷力にほぼ相応するレベルに向かって徐々に安定化する。
【0350】
続いてある期間にわたって、印刷力Fは、1.6kgfで実質的に安定状態に留まり、それと同時に電流は1アンペアに留まる。この期間は、
図10に例示している構成と比較して高い印刷力で印刷動作が実施される時である。
【0351】
印刷力Fは、負の電流パルスがコイル24に印加される時間t14まで1.6kgf前後で持続する。t14における電流の開始後間もない時間t15において、印刷力は急激に衰える。続いて時間t16において負電流が取り除かれ、その後、電流はゼロに戻り、印刷力はゼロに留まる。
【0352】
当然ながら、印刷動作中により大きい電流がコイル内に流される場合には、印刷力は更に増加することになる。それとは逆に、印刷動作中に負電流が印加される場合には、印刷力は減少することになる。
【0353】
同様の方式で、印刷面位置の変動がある場合であっても事前に決定された印刷力を与えするように印刷動作中にコイル24内に流される電流を加減することができる。例えば、離隔距離が3mmの時に印刷ヘッドが印刷面と接触する第1の構成と、離隔距離が5mmの時に印刷ヘッドが印刷面と接触する第2の構成とを比較した時に、印刷動作中にコイル24の内部に同じ電流が流される場合には、確立される印刷力においてある程度の差がある可能性がある。この差は、異なる離隔距離において発生する力の変動の結果である。離隔距離範囲にわたって力特性は比較的平坦である(例えば
図9に例示しているように)が、この特性は完全に平坦であるわけではないことに注意されたい。
【0354】
従って、様々な印刷面構成を補償するようにコイル24の内部に流される電流を加減することができる。より一般的には、様々なプリンタ構成の代わりに事前に決定された印刷力を発生させるようにコイル24の内部に流される電流を加減することができる。
【0355】
更に、印刷力を変動させるための変動電流の使用に加えて、印刷ヘッド4の移動を制御するために巻線に印加される電流を用いることができる。特に、
図10及び
図12に例示している実測印刷力Fからわかるように、印刷ヘッド4は、印刷面11と接触すると跳ね返る傾向を有し、印刷力Fは最初に所望の印刷力をオーバーシュートし、続いて振動し、その後、所望の力へと徐々に定着する。しかしながら、この不安定期間中には印刷動作を実施することができない可能性がある。
【0356】
幾つかの実施形態では、かかる力の不安定性は、能動的制動を用いて低減することができる。例えば、コイル24に印加される電流波形の形状を、印刷ヘッド4の移動を制動するように成形することができる。例えば、印刷ヘッド4の移動が始まった後に主電流パルスに反対方向の電流を印加することによって、印刷ヘッド4が印刷面11と接触する前に(印刷ヘッドの後退中には、永久磁石が緩衝器29と接触する前に)印刷ヘッド4を減速することができる。かかる制動は、安定した印刷力をより素早く発生させ、高い動作速度を与えるシステムを実現することができる。更に、印刷ヘッド駆動組立体22の様々な構成要素(例えばばね28)が受ける機械的衝撃を低減することによって、これらの構成要素における摩耗及び疲労を低減して信頼性及び稼働寿命を高めることができる。
【0357】
より一般的には、印刷ヘッド移動を制御するために、コイル24に印加される電流を様々な手法で変更することができる。例えば、印刷ヘッドに対して作用すべき所望の力を得て所望の機械的効果を得るために、電流パルスの時間幅、印加電流の大きさ、及び各電流パルスの形状を全て変動させることができる(単独又は組み合わせで)。
【0358】
幾つかの実施形態では、印刷ヘッド4の位置を表す信号を発生させるセンサを設けることができる。かかるセンサ出力は、電磁石23の励磁を制御するために用いることができる。例えば、上記で言及した検出逆EMFパルスを用いる代わりに(又はそれに加えて)、印刷ヘッド4の位置を表す信号を用いて、コイル24に印加される電流パルスの時間幅、大きさ、及び/又は方向を制御することができる。かかるセンサは、例えば、旋回軸14の回りのアーム21の回転(この回転は、印刷ヘッド4の位置との事前に決定された関係を有する)を表す信号を発生させるように配列されたロータリーエンコーダとすることができる。
【0359】
或いはセンサは、例えば印刷ヘッド4の位置を直接的又は間接的に検出する何れかの形態のリニア位置センサ、又は印刷ヘッド駆動組立体22の第1の構成要素と第2の構成要素との間の離隔距離を検出するセンサ(例えば近接センサ)とすることができる。かかるセンサデータは、制動を施す又は事前に決定された印刷力が発生することを確実にするようにコイル24に印加される電流を制御するために用いることができる。特に、センサデータは、印刷ヘッド4の位置を制御するように配列された制御アルゴリズム(例えばPID制御アルゴリズム)への入力として用いることができる。これによりコントローラ50は、印刷ヘッド4の位置を表す情報を処理し、この情報を用いてコイル24に供給される必要な電流及び/又は印刷ヘッド駆動組立体22が発生させるべき力を決定することができる。
【0360】
次にかかる位置センサの例を、
図16を参照しながら説明することにする。
図16は、上記で説明した印刷ヘッド組立体51と概ね同様の代替的印刷ヘッド組立体60を示している。上記で説明したものに相応する代替的印刷ヘッド組立体60の構成要素を、同じ数字を用いて標記している。第1の実施形態に関連して上記で説明した特徴及び利点は、第2の実施形態に概ね当てはめることができる。
【0361】
上記で説明した構成要素に加えて、印刷ヘッド4の上面上にセンサ61が設けられる。より具体的には、センサ61は、使用時に印刷面11に背向する印刷ヘッド4の面の上に設けられる。印刷ヘッド組立体60は、センサ61に対面するように配列されたターゲット62を更に備える。ターゲット62は、例えば、印刷ヘッド組立体アーム30の一部から装着することができる。ターゲット62は、例えば較正動作中にターゲット62及びセンサ61の相対位置を調節することを可能にするように印刷組立体アーム30に調節可能に取り付けることができる。使用時には、センサ61は、それとターゲット62との間の距離に基づいて変動する信号を発生させるように構成される。
【0362】
上記で説明したように、使用中に印刷ヘッド4は、印刷ヘッド駆動組立体22の作用によって印刷面11に向かって及びそこから離れるように移動するようにされる。かかる移動中に、印刷ヘッド4は、印刷ヘッド支持アーム21によって支持されて印刷ヘッド駆動組立体アーム30から離れるように移動するように旋回軸14の回りに回転する。しかしながら、印刷ヘッド4のかかる移動中に、印刷ヘッド組立体アーム30と、それに取り付けられたターゲット62とは、印刷面11と相対的に移動しない。
【0363】
従って、印刷ヘッド4に取り付けられたセンサ61は、印刷ヘッド組立体アーム30に取り付けられたターゲット62に対して移動することになる。従って、既知の初期状態を所与として、センサ61とターゲット62との間の距離は、印刷面11と相対的な印刷ヘッド4の位置と公知の関係を有し、印刷ヘッド位置に関する有用な情報を提供することができる。特に、センサ61とターゲット62との間の距離は、印刷ヘッド4と印刷面11との間の距離との反比例関係に従って、変動することになる。
【0364】
図17a及び
図17bは、印刷ヘッド4の下面及び上面(
図16に示している向きにある時の)を略示している。センサ61は、エミッタ63とレシーバ64とを備える。エミッタ63は、例えば、赤外域内の電磁放射線を放出するLED等の放射線源である。レシーバ64は、例えばフォトトランジスタによって形成される。レシーバ64は、エミッタ63によって放出された放射線を感受するのに適する。
【0365】
ある実施形態では、センサ61は、例えば米国アリゾナ州フェニックスのFairchild/ON Semiconductorによって製造されているQRE1113GR Surface Mount Sensorによって形成される。かかるセンサは、小さい形状因子のSMDパッケージ内に収容することができ、5mm前後の検出範囲を有することができる。センサ61を近接センサと呼ぶことができる。特に、センサ61は、ターゲット62の近接度を感知する。
【0366】
当然ながら、必要に応じて代替的感知配列を用いることができることは理解されるであろう。例えば、上記で説明したフォトトランジスタの代わりにフォトダイオードを用いることができる。より一般的には、エミッタとレシーバとの適切な組み合わせが選択されることを前提として更なる代替的なエミッタ及びレシーバを用いることができることは理解されるであろう。例えば、エミッタ63の代わりに、広角光源、レーザー光源、又はその他のLED光源(例えば可視光を用いる)を用いることもできる。更に、幾つかの代替形態では、超音波のエミッタ及びレシーバ、又はその他の形態のエミッタ及びレシーバを用いることができる。
【0367】
更に、上記で説明した実施形態ではエミッタ63及びレシーバ64は印刷ヘッド4上に装着された統合センサ61内に設けられるが、代替的実施形態では、エミッタとレシーバとは、各々が印刷ヘッド4上の異なる場所に装着された別個のデバイスとすることができる。なおも更に、必要に応じて様々な個数の統合センサ又は様々な個数の離散したエミッタ及びレシーバを用いることができる。
【0368】
更に幾つかの実施形態では、センサは受動的なものとすることができる。すなわち、エミッタを完全に省くことができる。かかる実施形態では、センサは、ターゲットから何れかの特性を感知するように構成される。例えば、ターゲットには、センサがエミッタを必要とせずに感知することができる磁気区域を設けることができる。或いはセンサは、静電容量センサ又は誘導センサとすることができ、ターゲットには、感知することができる特性を有する領域が設けられる。或いはセンサ及びターゲットは、上記で説明したものと反対の(又は別途異なる)位置に設けることができる。
【0369】
より一般的には、センサ61は、印刷ヘッドの位置を表す信号を発生させるように配列され、あらゆる適切な形態、個数、又は配列のセンサを用いることができることは理解されるであろう。
【0370】
上記で簡単に説明した特定の実施形態を再度参照すると、印刷ヘッド4の下面として示している(すなわち、印刷面にある視座から見上げた)
図17aに最も明確に示すように、印刷ヘッド4は、セラミック被印刷物66上に装着されて印刷ヘッド4の第1の縁部に沿って1次元線形アレイで設けられた複数の抵抗加熱要素65を備える。印刷要素65は、印刷要件に基づいて(例えば画像データに基づいて)選択的に励磁される。印刷ヘッド回路板68上に装着された印刷ヘッドコントローラ67の内部で、印刷要素65に供給される印刷制御信号を発生させることができる。印刷ヘッド回路板68上にはセンサインターフェース回路69が更に設けられる。印刷ヘッド回路板68は、同様に印刷ヘッド4の一部を形成するヒートシンク70に取り付けられる。印刷ヘッドコントローラ67は、コネクタ72を介して回路板67に接続する可撓性リボンケーブル71を介してコントローラ50と通信する。
【0371】
上述したように、
図17aに見られる印刷ヘッド4の面は、
図1に示している概ね下向きの方向に向き、印刷要素65が設けられた面である。この面を、印刷ヘッド4の動作面と呼ぶことができる。すなわち、
図17aに示している印刷ヘッド4の動作面は、正常動作においてリボン2に概ね対面する。
【0372】
しかしながら上述したように、センサ61は、印刷ヘッド4の動作面上に設置される代わりに、印刷ヘッドの反対の(上方の)面の上に設けられる(従って、
図17aには破線で示している)。印刷ヘッド4の上面を
図17bに示している。印刷ヘッド4の上面を、非印刷面と呼ぶことができる。目視可能な印刷ヘッド4の構成要素は、ヒートシンク70、センサ61、それが上部に装着された印刷ヘッド回路板67、及びコネクタ72である。エミッタ63及びレシーバ64を印刷ヘッド4の上面上で互いに隣接するように示しており、これらの両方が統合センサ61の一部として設けられる。
【0373】
従って、センサ61は、印刷動作中に印刷面11に背向し、例えば、印刷ヘッド組立体60の構成要素、特に印刷ヘッド駆動組立体アーム30及びターゲット62等のプリンタの内部構成要素に向くように配列された印刷ヘッド4の面上に装着されることは理解されるであろう。その結果、センサ61は、印刷動作中にリボン2に背向するように配列されるように装着される。
【0374】
一般的に言えば、センサ61は、印刷ヘッドの非印刷面に動作可能に付随すると考えられるように印刷ヘッドに装着することができることは理解されるであろう。例えば幾つかの実施形態では、センサは、印刷ヘッドの非印刷面の下に設けるが、印刷ヘッドの非印刷面を越えて感知するように配列することができる。例えば、光学センサを、非印刷面になおも付随しながら透明又は半透明の材料によって非印刷面から分離することができる。同様に磁気センサを、磁場が貫通可能であり、ターゲットを感知することを可能にする材料によって非印刷面から分離することができる。或いはセンサ61の本体を、印刷ヘッドの動作面(すなわち
図17aに示している下面)上に設置するが、印刷ヘッド回路板67内に設けられた1つ又は2つ以上の孔を通して「感知」するように配列することができる。
【0375】
印刷ヘッド4の移動中に、印刷面と相対的な印刷ヘッド4の位置が変動することになることは理解されるであろう。センサ61は、下記でより詳細に説明するようにかかる移動過程中に印刷ヘッド4の移動をコントローラ50が制御することを可能にする出力を発生させるように構成される。
【0376】
図18は、センサインターフェース回路69をより詳細に示している。センサインターフェース回路69は、エミッタ63を駆動してレシーバ64から信号を受け取るように配列される。センサインターフェース回路69は、受け取った信号を増幅し、リボンケーブル71を介してプリンタコントローラ50に供給することができる出力信号を発生させるように更に配列される。センサインターフェース回路69は、エミッタドライバ回路73とレシーバ回路74とを備えると考えることができる。これらの回路73、74の両方を単一の回路図内に示しているが、当然ながら、これらの回路が、エミッタ63によって放出され、レシーバ64によって感受され、更に独立して加減することができる光によって動作可能に結合された実効的に別個の回路であることは理解されるであろう。
【0377】
エミッタドライバ回路73は、+5Vの電圧源に接続された正の電源レール75と、接地電圧(0V)に接続された接地レール76と、電界効果トランジスタQ1と、抵抗器R0と、抵抗器R1とを備える。エミッタ63のアノードは、抵抗器R0を介して電源レール75に接続され、カソードは、トランジスタQ1を介して接地レール76に切り替え可能に接続される。抵抗器R1は、トランジスタQ1のゲートと接地レール76との間に接続される。トランジスタQ1のゲートに入力ノード77が設けられる。入力ノード77は、使用時にリボンケーブル71を介してプリンタコントローラ50が供給するPWM信号によって駆動される。
【0378】
抵抗器R0は68Ωの抵抗値を有する。抵抗器R0は、エミッタ63のカソードがトランジスタQ1によって接地レール76に接続されている時にエミッタ63を通って流れる電流を制御するように設けられる。本説明の実施形態では、エミッタ63の両端のおよそ1Vの電圧降下を仮定すると、およそ4Vの電圧降下が起こることになる。この構成(すなわち、68Ωの抵抗値を有する抵抗器R0の両端に4Vの電圧が起こる)は、エミッタ63を通しておよそ59mAの駆動電流を流すことになる。
【0379】
抵抗器R1は10kΩの抵抗値を有する。抵抗器R1は、印刷ヘッドがリボンケーブルに接続されていない(例えば輸送中)又は3状態(すなわち、「1」及び「0」に加えて高インピーダンス状態)のものとすることができるスイッチングソースから駆動される場合に、トランジスタQ1のゲートが浮遊状態になることが許されず、従って、ESD損傷を受け難くなるように設けられる。
【0380】
トランジスタQ1はnチャネルFETであり、例えばオランダ、ネイメーヘンのNexperiaによって製造されているNX7002AKデバイスによって形成することができる。このトランジスタは、高(例えば5V)レベルと低(例えば0V)レベルとの間で切り替わるPWM信号によって駆動することができる。PWM信号はトランジスタQ1のオン及びオフを切り替え、更にこのトランジスタがオンにされた時にエミッタ63内に電流を流し、このトランジスタがオフにされた時にエミッタ63内に電流を流さない。
【0381】
PWMデューティサイクルは、矩形波プロファイルと2kHz変調周波数とによる例えば50%前後のものとすることができる。当然ながら、他のエミッタ駆動方式を常用することができる。例えばある実施形態では、抵抗器R0が散逸させる電力を制限するためにエミッタを低いデューティサイクル(例えば30%)で駆動することができる。同様に変調周波数を調節することもできる。
【0382】
エミッタ63は、「オン」状態で駆動される時に59mA前後の駆動電流を有する。上記で説明したエミッタデバイス(すなわちQRE1113)は、50mAの最大連続ダイオード電流を有する(25℃の周囲温度において)。従って、選択された駆動電流(例えば59mA)がこの最大許容可能連続レベルを上回っている間には、このデバイスは連続的に駆動されない。当然ながら、異なる駆動レベルを選択することができること(及び抵抗器R0に対して適切値の抵抗器を選ぶことができること)を理解されるであろう。
【0383】
変調周波数は、高速なセンサ応答を与えるように選択されるが、レシーバ及びそれに関連する回路が応答することができないように過度に高くはない(レシーバ回路に関連して下記でより詳細に説明するように)。変調周波数は、複数の因子に基づいて選択することができることは理解されるであろう。例えば、この周波数は、より頻繁なセンサ読み取り値を取得することを可能にするように高めることができる。
【0384】
レシーバ回路74も、正の電源レール75と接地レール76とを利用する。しかしながら、必要に応じて別個の電源配列を設けることができることは理解されるであろう。
【0385】
レシーバ回路74は、レシーバ64と、そのコントローラと正の電源レール75との間に接続された抵抗器R2とを更に備える。レシーバ64と抵抗器R2との間にはノード78が形成される。レシーバ64のエミッタは、接地レール76に直接接続される。抵抗器R2は100Ωの抵抗値を有する。このように抵抗器R2とレシーバ14とは直列に接続され、フォトダイオードの内部で発生する何れかの光電流が抵抗器R2を通って流れ、抵抗器R2の両端に電圧降下を起こす。
【0386】
レシーバ回路74は、演算増幅器(オペアンプ)OP1を更に備える。オペアンプOP1は、例えば、米国アリゾナ州フェニックスのON Semiconductorによって製造されているNCS20061デバイス等の、低電力の単一電源用途に向けて最適化された低ノイズのレールツーレール入力/出力を有するCMOS演算増幅器によって形成することができる。例えば、オペアンプOP1は、好適にはNCS20061SN2デバイスとすることができる。
【0387】
ノード78は、オペアンプOP1の非反転入力に接続される。オペアンプOP1は、レシーバ64内に流れ込む電流を増幅する電流増幅器を形成するように配列される。オペアンプOP1に加えて、電流増幅器は、コンデンサC1と、抵抗器R3、R4、及びR5と、トランジスタQ2とを備える。電流増幅器は、
図19を参照しながら下記でより詳細に説明するように増幅器の他の構成要素から離して設けられた更なる抵抗器(R6)を含むと考えることもできる。
【0388】
コンデンサC1は、オペアンプOP1の出力とオペアンプOP1の反転入力との間に接続される。コンデンサC1は、270pFの容量値を有し、オペアンプOP1を安定化するために設けられる。
【0389】
オペアンプOP1の出力は、抵抗器R5を経由してトランジスタQ2のベース端子に更に接続される。トランジスタQ2は、コレクタ電流とエミッタ電流とが実質的に等しい高ゲインPNPトランジスタである。このトランジスタは、例えば、オランダ、エイントホーフェンのNXP Semiconductorsによって製造されているBC856B汎用トランジスタによって形成することができる。トランジスタQ2の高ゲインを考えると、ベースには抵抗器R5を経由して小さい電流しか流れ込まないことになる。抵抗器R5は100Ωの抵抗値を有する。抵抗器R5の抵抗は、レシーバ電流レベルに突然の変化があった場合にオペアンプOP1から出る何れかの過渡電流を制限するように好適に選択される。従って、この値は増幅器回路の作動にとって重大なものではなく、回路は、抵抗器R5の広範囲の抵抗値にわたって作動することになることは理解されるであろう。
【0390】
トランジスタQ2のコレクタ端子は、出力ノード79に結合され、更にこのノードは、後続の処理(下記でより詳細に説明する)に向けてリボンケーブル71を介してプリンタコントローラ50の入力に結合される。
【0391】
トランジスタQ2のエミッタ端子は、抵抗器R4を経由して正の電源レール75に結合される。トランジスタQ2のエミッタ端子と抵抗器R4との間にノード80が形成される。ノード80は、抵抗器R3を経由してオペアンプOP1の反転入力に接続される。抵抗器R3は100Ωの抵抗値を有する。抵抗器R3の抵抗は、バイアス電流に起因する何れかの電圧オフセットを打ち消すためにオペアンプOP1の両方の入力に実質的に等しい入力インピーダンスを与えるように選択される。上記で説明した配列では、オペアンプOP1の非反転入力は抵抗器R2とレシーバ64とに接続され、従って、この入力には小さい電流(例えば数マイクロアンペア)しか流れないことになる。この小さい電流レベル、特に、選択された演算増幅器の低いバイアス電流を考えると、インピーダンス整合は重要ではない。
【0392】
抵抗器R4は4.3Ωの抵抗値を有する。抵抗器R4の抵抗は、抵抗器R2の抵抗との組み合わせで増幅回路の電流ゲインを設定するように選択される。特に、抵抗器R2の抵抗と抵抗器R4の抵抗との比が電流ゲインを決定する。この場合、R4に対する4.3Ωの抵抗は、R2に対する100Ωの抵抗と結合されて23前後の電流ゲインを与える。
【0393】
更に、抵抗器R4は、レシーバ64の動作範囲にわたって、抵抗器R4の両端の電圧降下が、電圧源レベル(例えば5V)によって決定される範囲内に維持されるように選択される。これにより、増幅器の出力が飽和しないことが確実になる。抵抗器R4の抵抗は、印刷ヘッドコントローラ50における検出に向けて好適な出力電流レベルが発生するように十分に小さい。
【0394】
例えば、20mAの電流出力レベルが期待される場合には、このレベルが抵抗器R4の両端の86mVの電圧降下に相応し、後続の処理段への入力において4.8V前後の電圧降下が起こることを可能にする(トランジスタQ2内の0.1V前後のコレクタ-エミッタ電圧を仮定して)ことは理解されるであろう。
【0395】
オペアンプOP1には、正のレール75及び接地レール76それぞれからの正及び負の電源接続部が設けられる。これらの電源端子の間には電源分離を施すため(すなわち、電源ノイズを低減するため)にコンデンサ(例えば0.1μF、図示していない)を設けることができる。
【0396】
オペアンプOP1は、ノード80(抵抗器R3を経由して反転入力に接続された)における電圧がノード78における電圧を超えた場合にオペアンプOP1の出力が低く駆動されることになるように構成される。オペアンプOP1の出力を低く駆動することによって、トランジスタQ2(PNPトランジスタである)がオンになる。更にこれにより、抵抗器R4を通って電流が流れ、抵抗器R4の両端に電圧降下が起こることになる。従って、ノード80の電圧がノード78のものと同じになるまでノード80における電圧が降下することになる。抵抗器R4を通して流される電流は、光電流に基づいて変動するが、大きさが光電流よりもかなり大きい(すなわち、光電流は増幅される)。
【0397】
このようにして、レシーバ回路は光電流を増幅するように配列され、レシーバ信号をリボンケーブル71を介してプリンタコントローラ50に供給することが可能になる。かかる増幅は、ノイズ耐性を大幅に改善する。
【0398】
プリンタコントローラ50による後続の処理に向けてデジタル信号に変換される前に、増幅済みの電流信号は、コントローラ50が装着された主PCB(図示していない)上に設けられた増幅器90によって更に処理することができる。増幅器90の例を
図19に示している。増幅器90は、第2の演算増幅器(オペアンプ)OP2を備える。オペアンプOP2は、例えば、米国アリゾナ州フェニックスのON Semiconductorによって製造されているNCS20062DMR2Gデバイス等のレールツーレール入力/出力を有するCMOS演算増幅器によって形成することができる。
【0399】
増幅済み電流信号(ノード79に存在し、リボンケーブル71に沿って供給される)は、オペアンプOP2の非反転入力に供給される。非反転入力は、抵抗器R6を経由して局所接地91にも接続される。抵抗器R6は130Ωの値を有し、増幅済み電流信号をオペアンプOP2による増幅に向けて電圧レベルに変換することを可能にする。
【0400】
増幅器90は、オペアンプOP2の出力とオペアンプOP2の反転入力との間に設けられた抵抗器R7を更に備える。増幅器90は、オペアンプOP2の反転入力と局所接地91との間に設けられた抵抗器R8を更に備える。当該技術分野において公知であるように、増幅器90のゲインは、抵抗器R7の値と抵抗器R8の値との和と抵抗器R8の値との比によって決定される。
【0401】
好ましい実施形態では、抵抗器R7及びR8は各々、電位差計DPによって形成することができる。デジタル電位差計DPは、オペアンプOP2の出力とオペアンプOP2の反転入力との間に設定可能な抵抗を与え、オペアンプOP2の反転入力と局所接地91との間に更なる設定可能抵抗を与えるように接続される。このようにして、デジタル電位差計DPは、増幅器90に可変ゲイン特性を持たせるように構成される。デジタル電位差計DPは、例えば、米国アリゾナ州チャンドラーのMicrochip Technology Inc.によって製造されている部品MCP4013T-103E/CH等のデバイスによって形成することができる。ある実施形態では、デジタル電位差計DP(従って、抵抗R7及びR8の値)は、コントローラ50が発生させるゲイン制御信号によって制御することができる。増幅器90のゲインは、センサ性能において予測される変動又はその他の因子を算入するように較正プロセス中に調節することができる。
【0402】
例えば、ある実施形態では、印刷ヘッドの試験中に、ターゲットをセンサからの1つ又は2つ以上の事前に決定された距離(例えば、印刷面からの0mm及び4mmの公称印刷ヘッド離隔距離に相応する距離)に設けてセンサ読み取り値を取得し、事前に決定された信号出力レベルを与えるように増幅器ゲインを調節することができる。かかる較正は、単一のセンサ読み取り値を用いて後続の全てのセンサ出力値を正規化することを可能にする。当然ながら、適切であれば代替的な較正技法を用いることができる。例えば、単一のセンサ読み取り値を取得し、又は様々なターゲット距離で複数のセンサ読み取り値を取得し、較正曲線を描くことができる。
【0403】
幾つかの実施形態では、センサは、上記で説明したものよりも頻繁に再較正することができる。例えば、センサは、全ての印刷ストロークの前(例えば、印刷ヘッドが印刷面から後退される期間中)に再較正することができる。様々なセンサ回路構成要素(特にエミッタ及び受光器)の特性が、温度の関数として大幅に変動する可能性があることは理解されるであろう。従って、かかる変動を補償するように増幅器ゲインを定期的に加減することによって、より確実な動作を可能にすることができる。
【0404】
幾つかの実施形態では、センサゲインは、参照テーブルを参照することによって調節することができる。例えば、印刷ヘッド温度読み取り値を用いて適切なゲイン値(又はゲイン制御信号値)を記憶する参照テーブルを対応付けることができる。
【0405】
或いは、ゲインは、既知の構成にある増幅器90から事前に決定された出力信号を供給するように調節することができる。例えば、ゲインは、印刷ヘッドが後退位置にある時に3.2Vの出力信号を供給するように各印刷ストロークの合間に調節することができる。
【0406】
ゲインの頻繁な調節は、センサ61(又はターゲット62)上に存在する汚れが正しい動作を妨害することになる可能性を低減することもできる。幾つかの実施形態では、ユーザに有用な情報を提供するように較正ルーチンを構成することができる。例えば、ターゲット出力信号レベルに達するのに正常範囲を超えるゲイン値が必要とされた場合に、この較正ルーチンを用いてユーザにセンサ及び/又はターゲットを洗浄する必要があるという警告を発することができる。
【0407】
オペアンプOP2の出力は、アナログからデジタルへのコンバータADC1に接続される。オペアンプOP2の出力の電圧レベルがプリンタコントローラ50によってサンプリングされる。ADC1によってコントローラ50に供給される電圧をサンプリングすることによって、レシーバ電流の基準値を取得することができる。
【0408】
上述したように、エミッタ63は、一般的にPWM信号によって駆動される。
図20は、1回のPWMサイクル中にコントローラ50においてレシーバ64から(増幅器90を経由して)受け取られた信号の例示的波形を示している。時間t30前後において、信号が「オフ」レベル(LED
OFF)から「オン」レベル(LED
ON)へと急激に上昇し、信号は「オン」パルスの際に安定化することがわかる。このパルスは、エミッタ63がオンに駆動されていることに相応する。続いて時間t31において、電流は、LED
ONレベルからLED
OFFレベルへと低下する(この場合にもPWM信号の制御下で)。時間t32において電流は再度上昇する。このようにして、コントローラ50においてレシーバ64から受け取られる信号は、エミッタ電流がオン及びオフへとパルス振動し、これにより更にエミッタ63によって放出される放射線がオン及びオフへとパルス振動するのに従って、「オン」及び「オフ」へとパルス振動する。
【0409】
図20からわかるように、時間t30における信号上昇は瞬時のものではない。特に、信号は最初に急激に上昇し、その後、レベルLED
ONに向かって徐々に安定化する。続いて、信号がレベルLED
ONからレベルLED
OFFへと低下する時間t31において、低下は急激に始まり、その後、減少速度は減速し、信号レベルは最終的にレベルLED
OFFに向かって安定化する。上昇時間(すなわち、LED
OFFからLED
ONまで上昇するのに要する時間)は、低下時間(すなわち、LED
ONからLED
OFFまで低下するのに要する時間)よりも短い。
【0410】
信号レベルLEDONは、レシーバ64において感受された放射線の強度を表すことは理解されるであろう。感受される放射線は、エミッタ63から発してターゲット62によって反射され、続いてレシーバ64上に入射する放射線を含む。更に、感受される放射線は、レシーバ64上に入射する環境放射線を含む可能性もある。環境放射線レベルは、様々なプリンタ構成の間で変動することになることは理解されるであろう。
【0411】
信号レベルLEDOFFは、レシーバ64において感受された放射線の強度を示し、「オフ」状態を表す。すなわち、信号レベルLEDOFFは、レシーバ64上に入射する環境放射線のみに相応し、エミッタ63から発したいかなる反射放射線(ターゲット62を経由した)も含まない。
【0412】
レシーバ電流レベルの正確な基準値(従って、入射放射線の強度の指標)を決定するために、電流レベルが実質的に安定する各サイクルの終端に向かって電流レベルをサンプリングしなければならない。更に、ノイズ耐性を高めるために、信号レベルを複数回サンプリングして平均をとることができる。
【0413】
ある実施形態では、信号レベルは、それがLEDONにおいて実質的に安定している期間中の各「オン」パルスの間に8回サンプリングされる。「オフ」パルスの間には、信号レベルは、それがLEDOFFにおいて実質的に安定している時に4回サンプリングされる。「オフ」パルスの間の少ないサンプル数は、上記で説明したレシーバ回路の長めの低下時間(従って、信号レベルが安定している短めの期間)を算入したものである。当然ながら、特定の回路構成に向けて必要に応じて異なるサンプリング方式を採用することができる。
【0414】
このようにADC1は、電流波形の比較的平坦で安定している部分の範囲内で信号レベルをサンプリングするようにされ、「オン」状態及び「オフ」状態の各々の間の電流レベルの正確な表現を得ることが可能になる。このプロセスを各PWMサイクル中に繰り返すことができる。
【0415】
このようにしてコントローラ50は、レシーバ64の内部を流れる光電流を表す信号レベル測定値を取得することができる。LEDonを表す信号値からLEDoffを表す信号値を減算することによって、エミッタ63によって放出された放射線の反射の結果としてレシーバ64において感受された光電流を表す値LEDdiff(この値は環境放射線の効果を排除したものである)を取得することができる。
【0416】
値LEDdiffは、センサ61へのターゲット62の近接度に基づいて変動し、従って、印刷ヘッド位置データであると考えることができる。続いてセンサ61からのターゲット62の距離を識別し、この距離から、印刷面と相対的な印刷ヘッドの位置を算出するように値LEDdiffを処理することができる(下記でより詳細に説明するように)。
【0417】
この例で用いられる2kHzのPWM周波数は、LEDdiff値を取得する際に用いる周波数でもある(ADCサンプリング速度はPWM周波数に基づいて決定される)。サンプリング周波数は、印刷ヘッド位置データを取得して更新することができる速度、従って、このデータに基づいて印刷を制御する上での遅延を決定することにもなることは理解されるであろう。
【0418】
2kHzのPWM周波数の使用を上記で説明した。この周波数の使用は、特定の配列に適するものとすることができる。しかしながら、
図20に示している波形から理解することができるように、上昇時間が、「オン」期間又は「オフ」期間中に電流が安定値に到達しないようなものである場合には、それに即してパルス繰り返し率を低減する必要がある可能性がある。レシーバ64を形成するフォトトランジスタの特性(バイアス条件を含む)によって応答時間がある程度制御される。
【0419】
当然ながら、上記で説明した回路は、考えられる1つの実装を提示したものであることは理解されるであろう。しかしながら当業者は、特定の用途に向けて、又は代替的センサ配列に対応するために、必要に応じて代替的なエミッタドライバ及びレシーバ回路を用いることができることを即座に理解されよう。
【0420】
更に幾つかの実施形態では、例えば、無視することができる環境放射線しか存在しない場合に、エミッタをパルス作動させる代わりに一定に駆動することができる。かかる配列では、ADCをあらゆる好適な周波数でサンプリングすることができる。更に、ADCをコントローラ50とは別個のデバイス又はコントローラ50の一部として設けることができる。上記で説明した回路は、単一のセンサ(すなわち単一のエミッタ及び単一のレシーバ)に対して駆動及び増幅を施すが、必要に応じて複数の回路又はセンサを設けることができることも理解されよう。
【0421】
上記で説明したように、センサ61は、印刷面と相対的な印刷ヘッドの位置を表す信号を発生させるように構成される。しかしながら信号振幅は、印刷ヘッド位置に正比例しては変動しない可能性があることは理解されるであろう。エミッタ63が幅広ビームで放射線を放出する場合には、エミッタ63によって放出された放射線のうちでターゲット62上に入射する部分が、センサ61とターゲット62との間の離隔距離との逆二乗関係(すなわち1/r2)に従って、変動すると予測することができる。更に、放射線が進む距離は、センサ61とターゲット62との間の離隔距離の2倍である。
【0422】
従って、コントローラ50によって取得される平均センサ読み取り値は、次式の関係に従って、線形化することができる。
【数2】
式中のr
realは線形化された読み取り値であり、
Q
sensorは原センサ読み取り値である。
【0423】
このようにして、特定のセンサ配列の幾何特性を算入することができる。当然ながら、特定の配列に対して必要に応じて代替的な調節を加えることができる。或いは、センサ読み取り値を見かけ強度又は適切な位置基準値へと変換するために参照テーブルを用いることができる。
【0424】
このようにして得られた線形化センサ読み取り値は、印刷ヘッド位置を表すデータと考えることができ、従って、印刷ヘッド位置データと呼ぶことができる。当然ながら、レシーバ電流信号、増幅器90によって生成される出力信号、又は平均出力信号(或いはこれらの信号のうちの1つ又は2つ以上から導出される他のデータ項目)を印刷ヘッド位置データと考える且つ/又は呼ぶことができることは理解されるであろう。
【0425】
幾つかの実施形態では、見かけ印刷ヘッド位置データは、速度値にも変換される。かかるデータを印刷ヘッド速度データと呼ぶことができ、印刷ヘッドの位置及び/又は速度を制御するために用いることができる。しかしながら、印刷ヘッド速度データを印刷ヘッド位置データと考えることができ、その逆もまた同様であることは理解されるであろう。
【0426】
上記で簡単に説明したように、コントローラ50は、印刷ヘッド4の位置を表す情報を処理し、この情報を用いてコイル24に供給される必要な電流及び/又は印刷ヘッド駆動組立体22が発生させるべき力を決定することができる。
図21は、考えられる1つのかかる印刷ヘッド駆動組立体制御構成を例示している。
図21に示している制御ブロックは、単一の構成要素によって実施する必要はないことは理解されるであろう。実際には、上記で説明したように、制御機能のうちの幾つかは専用ハードウェアによって実施され、それに対してその他のものはコントローラ50が実施することができる。或いはコントローラ50は、印刷ヘッド自体の上に設置されたデバイスによって実施されるもの以外の、
図21を参照しながら説明した全ての制御機能を包含すると考えることができる。
【0427】
印刷ヘッド駆動組立体コントローラ100は、3つの基本制御ブロックを備える。これらは、電磁石電流制御ブロック110、印刷ヘッド位置データブロック120、及び位置及び速度の制御ブロック130である。
【0428】
印刷ヘッド位置データブロック120は、光学センサブロック121を備える。ある実施形態では、光学センサブロック121は、上記で詳細に説明したセンサインターフェース回路69(エミッタドライバ回路73とレシーバ回路74とを含む)を備える。光学センサブロック121の出力は、本説明の実施形態では上記で詳細に説明した増幅器回路90を備える増幅器ブロック122に供給される。増幅済みの出力信号は、増幅器ブロック122から、本説明の実施形態ではADC1を備えるADCブロック123に供給される。ADCブロック123の出力は、ノイズ及び環境放射線の効果を最小限に抑えるために平均化ブロック124によってサンプリングされて平均化される(上記で説明したように)。増幅器ブロック122の可変ゲインを制御するために、平均化ブロック124からゲイン制御信号GCを供給することができる。光学センサブロック121の内部にあるエミッタドライバ回路73によってエミッタ63に印加されるPWM信号を制御するために、平均化ブロック124からPWM制御信号「PWM」を供給することができる。
【0429】
上記で詳細に説明したように、平均化されたADC出力信号(平均化ブロック124が発生させた)は線形化ブロック125に渡され、ここで信号が式1に従って、調節される。線形化された出力は較正ブロック126に渡され、ここで適切な信号レベルを与えるために何れかのスケール調整が実施される(例えば較正データに基づいて)。
【0430】
較正ブロック126からの出力は、実位置データ出力Pactualとして位置及び速度の制御ブロック130に供給される。更に較正ブロック126からの出力は、位置から速度へのコンバータブロック127にも供給され、このブロックは、出力として実速度データ出力Vactualを供給し、この出力も位置及び速度の制御ブロック130に供給される。
【0431】
次に位置及び速度の制御ブロック130の動作をより詳細に説明することにする。印刷ヘッド4は、ある時にはターゲット位置に基づいて制御することができ、その他の時にはターゲット速度に基づいて制御される。例えば、印刷動作の後に印刷ヘッド4を印刷面11から後退させるために、位置制御を用いることができる。それに対して、最終ターゲット位置を正確に把握することができない場合、例えば、印刷ヘッド4を印刷面11(位置が変動する可能性がある)に向かって外進駆動する時には、速度制御を用いることができる。このように、ある実施形態では、位置及び速度の制御ブロック130は、各々を適切な時にのみ供給して用いることができるターゲット印刷ヘッド位置入力Ptargetとターゲット印刷ヘッド速度入力Vtargetとを受け取ることができる。
【0432】
速度加算器131が、ターゲット印刷ヘッド速度入力Vtargetと実速度データ出力Vactualとを受け取ってターゲット印刷ヘッド速度入力Vtargetから実速度データ出力Vactualを減算し、速度誤差信号Verrorを発生させる。この速度誤差信号Verrorは、例示している実施形態では比例ゲインブロック133(比例ゲインKp-velocityを適用する)と微分ゲインブロック134(微分ゲインKd-velocityを適用する)とを備える速度PID制御ブロック132に渡される。これら2つの加減された誤差信号は、速度ゲイン加算器ブロック135において組み合わせられ、その後、制御モード選択器136に渡される。
【0433】
それと並行して、位置加算器137が、ターゲット印刷ヘッド位置入力Ptargetと実位置データ出力Pactualとを受け取ってターゲット印刷ヘッド位置入力Ptargetから実位置データ出力Pactualを減算し、位置誤差信号Perrorを発生させる。この位置誤差信号Perrorは、例示している実施形態では比例ゲインブロック139(比例ゲインKp-positionを適用する)と、積分ゲインブロック140(積分ゲインKi-positionを適用する)と、微分ゲインブロック141(微分ゲインKd-positionを適用する)とを備える位置PID制御ブロック138に渡される。これら3つの加減された位置誤差信号は、位置ゲイン加算器ブロック142において組み合わせられ、その後、制御モード選択器136に渡される。
【0434】
上述したように、印刷ヘッド駆動組立体は、位置又は速度に基づいて制御することができる。制御モード選択器136は、更なる処理に向けて位置信号又は速度信号のどちらかを制御モード入力(図示していない)に依存して選択する。
【0435】
位置制御は、既知のターゲット位置(例えば印刷面から後退した)へと駆動する時に印刷ヘッド位置を制御するために用いることができる。比例ゲイン項、積分ゲイン項、及び微分ゲイン項は、印刷ヘッドを印刷面から被制御方式で後退させるように構成することができる。例えば、印刷ヘッドを後退位置に向かって移動させ、かなりの力で印刷ヘッド駆動組立体22の構成要素を衝突させるのではなく「軟」着陸的に移動完了するのを試みるように制御アルゴリズムを調整することができる。
【0436】
積分ゲインは、その項の使用によって印刷ヘッドが最適な力よりも大きい力で後退する場合であっても印刷ヘッドが後退位置に戻ることを確実にするようなフェールセーフ機構を形成するために用いることができる。幾つかの実施形態では、全体的PID制御アルゴリズムへの積分項の寄与を監視することができる。例えば、積分項の大幅な使用は、制御アルゴリズムにおいて、例えば汚れた又は劣化したセンサ63等の何れかの系統誤差を表すと考えることができる。幾つかの実施形態では、積分項の過度の使用は、例えば、予定された休止時間中にセンサを洗浄するというユーザへの通知及びセンサの再較正のうちの一方又は両方等の適切な補正措置をトリガーするために用いることができる。幾つかの実施形態では、積分項の過度の使用は、他のゲイン値又は制御パラメータの調節又は自己調整をトリガーするために用いることができる。
【0437】
当然ながら、上記で説明したPID制御ブロックの各々は、P項、I項、及びD項のうちの1つ又は2つ以上を省くことができることは理解されるであろう。施される制御の性質は、例えばセンサ及びコントローラの応答性等の他のシステム構成要素の特定の特性に依存する可能性がある。
【0438】
上述したように、速度制御は、正確なターゲット位置が把握されていない時、例えば、印刷面11の位置が把握されていない場合に印刷面11に向かって印刷ヘッド4を外進駆動する時に印刷ヘッド位置を制御するために用いることができる。比例ゲイン項及び微分ゲイン項は、印刷ヘッドを印刷面に向かって被制御方式で移動させるように構成することができる。例えば、印刷ヘッドを印刷面に向かって著しいオーバーシュート又は遅延を伴わずにターゲット速度で移動させるのを試みるように制御アルゴリズムを調整することができる。印刷面11の位置が確定される(例えば最大印刷ヘッド位置を監視することによって)と、後続のヘッド外進動作に向けて位置制御を用いることができる。
【0439】
選択された位置信号又は速度信号は、伝達関数ブロック143に渡される。更に伝達関数ブロック143は、較正ブロック126から現在印刷ヘッド位置を表す入力も受け取る。PID制御ブロック132、138が発生させる位置又は速度の制御信号は、印刷ヘッド4を望ましい手法で移動させるために印刷ヘッド制御組立体22が印刷ヘッド4に印加することが必要とされる力を表す信号を含む。この信号は、ターゲット力信号Ftargetと考えることができる。しかしながら上記で詳細に説明したように、印刷ヘッド制御組立体22の位置-力特性は非常に非線形的なものである。すなわち、
図9を参照しながら上記で詳細に説明したように、電磁石23内の特定の電流レベルへの印刷ヘッド駆動組立体22の機械的応答は印刷ヘッド4の位置に依存する。
【0440】
例えば、印刷ヘッド4が印刷面に近い位置にある時には、ばね28が発生させる力が、永久磁石27によって与えられる磁力に打ち勝つことになり、従って、電磁石23のコイル24内を流れるいかなる電流の不在時にも、印刷ヘッドは印刷面11に向かって更に加力されることになる。それに対して、印刷ヘッド4が印刷面11から離間して配置された位置にある時には、磁石27が発生させる力が、ばね28によって与えられる力に打ち勝つことになり、従って、(この場合にも電磁石23のコイル24内を流れるいかなる電流の不在時にも)、印刷ヘッド4は、印刷面11から更に遠く離れるように加力されることになる。
【0441】
従って、所望の移動を引き起こすために電磁石23に対する適切な制御信号を発生させるために、現在印刷ヘッド位置における印刷ヘッド駆動組立体22の位置-力特性が算入される。従って、伝達関数ブロック143は、ターゲット力信号Ftargetと実印刷ヘッド位置信号Pactualとに基づいてターゲット電流信号Itargetを発生させるように構成される。
【0442】
伝達関数ブロック143は、ターゲット電流信号Itargetをあらゆる好適な手法で発生させることができる。例えば、ある実施形態では、伝達関数ブロック143は、位置と力との複数の組み合わせに対する適切な電流レベルを記憶する参照テーブルを参照することができる(必要に応じて中間データ点を与えるために内挿が用いられる)。記憶される特性は、様々な電流レベルを電磁石23に印加する、特定の印刷ヘッド駆動組立体22の実証解析によって得ることができる。
【0443】
図22は、複数の異なる印刷ヘッド位置(x軸)において印刷ヘッド駆動組立体22が作用すべき複数の事前に決定された力レベルを引き起こすために必要とされる電流(y軸)の測定値を取得することによって得られた基準特性セットを示している。調査した位置範囲は、印刷ヘッドに対する典型的な運動範囲(0~4mm)であり、それに対して力(kgfを単位とする印刷ヘッドの力)は-3.5kgfから3.5kgfまでであった。
【0444】
正の力が示されている場合には、印刷ヘッドは印刷面11に向かって付勢されることになる。それに対して負の力が示されている時には、印刷ヘッドは印刷面11から離れるように付勢されることになる。正の電流が電磁石内に流される場合には、発生する力が更に負になり、その逆もまた同様である。当然ながら、必要に応じて電流及び力の方向を逆転させることができる。
【0445】
例示している特性は、「伝達関数」の形態をとると考えることができる。例えば、所与の印刷ヘッド位置に対して、式i=mf+cの力を発生させるのに必要とされる望ましい力fと電流iとの関係を表す表現を導出することができ、この場合、係数m及びcは参照テーブル内に記憶されている。
【0446】
特定の力-電流-位置特性は、特定の実装に依存することになり、例えば、必要に応じて実証研究又は理論的モデル化によって取得することができることは理解されるであろう。更に、力-電流-位置特性の効果は、上記で説明したもの以外の手法で制御システムに適用することができる。しかしながら一般論として、印刷ヘッド駆動組立体に対する適切な制御信号を発生させるために、印刷ヘッド位置データ(印刷ヘッド速度データを含むことができる)を所望の移動信号と共に用いることができることは理解されるであろう。
【0447】
上述したように、伝達関数ブロック143の出力はターゲット電流信号Itargetである。この信号は、電磁石電流制御ブロック110に入力として供給される。電磁石電流制御ブロック110は、ターゲット電流加算器111と、例示している実施形態では比例ゲインブロック113(比例ゲインKp-currentを適用する)及び微分ゲインブロック114(微分ゲインKd-currentを適用する)を備えるPID電流制御ブロック112とを備える。
【0448】
2つのゲインブロック113、114の出力は、電流ゲイン加算器ブロック115内で組み合わせられ、その後、PWM制御ブロック116に渡される。PWM制御ブロック116は、コイル24の内部を流れる電流の大きさ及び方向を制御するためのPWM信号及び電流方向信号を発生させる。PWM信号及び方向信号は、所望の大きさの電流を所望の方向に流すために電磁石23のコイル24の端子を適切な電源(図示していない)と接続するように配列された切替デバイス(図示していない)を備える従来型のHブリッジドライバ117に渡される。電磁石23のコイル24内を流れる実電流が電流センサ118によって監視され、電流センサ118は、実コイル電流を示す信号を発生させる。
【0449】
電流センサ118は、例えば、Hブリッジドライバ及び電源と直列に配置された低値抵抗器(図示していない)と、電流がこの抵抗器を通って流れる時に抵抗器の両端に起こる電圧を監視するように配列された電圧モニタ(図示していない)とを備えることができる。
【0450】
この電圧信号はADC119によってデジタル化され、その後ターゲット電流加算器111に実電流信号Iactualとして渡される。ターゲット電流加算器111は、ターゲット電流信号Itargetとデジタル化された実電流信号Iactualとを受け取ってターゲット電流信号Itargetから実電流信号Iactualを減算し、電流誤差信号Ierrorを発生させる。電流誤差信号Ierrorは、電流PID制御ブロック112に渡されて上記で説明したように更に処理される。
【0451】
この種の閉ループ電流コントローラの使用は、電磁石内に誘導される逆EMF信号の影響を軽減することを可能にする。印刷ヘッド組立体60の様々な構成要素の間の相対移動、特に電磁石23によって生み出された磁場を通る永久磁石27及びターゲット26の移動は、電磁石内に逆EMF信号を誘導することは理解されるであろう。逆EMF信号は、コイル24を通って流れる電流を低減する効果を有する可能性があり、更にこの効果は、電磁石23が発生させる力の大きさを低減させることになる。しかしながらこの効果を補償するために、電流フィードバック信号は、電流制御ブロック110が逆EMF信号に打ち勝つように電圧信号を強めることを可能にする(例えば、PWM制御ブロック116にPWM制御信号を調節させることによって)。
【0452】
より一般的には、この形態の閉ループ電流制御は、印刷面11に向かう及びそこから離れる印刷ヘッド移動の際に制御可能な力を生み出し、それとともに印刷動作中にも制御可能な力を生み出す(例えば印刷力を強める又は弱めることによって)ように電磁石の力を正確に制御することも可能にする。
【0453】
更に、閉ループ電流制御の使用は、所望の電磁石駆動電流(従って、発生させる力)の変更を高速且つ正確な方式で果たすことも可能にする。電磁石23のコイル24の内部を流れる電流の変化速度はコイルのインダクタンスによって制限されることは理解されるであろう。しかしながら実コイル電流を綿密に監視することによって、電流の変化速度を最適化するように駆動信号を調節することができる。
【0454】
しかしながら印刷ヘッド駆動組立体の閉ループ制御(電流フィードバック、位置フィードバック、又はこれらの両方を用いた)は必須ではないことは理解されるであろう。特に、上記で説明した印刷ヘッド駆動組立体は、上記で説明したフィードバック形態のうちの片方又は両方を用いずに動作させることができる。
【0455】
当然ながら、コントローラ110、120、及び130の幾つかのブロックをハードウェア構成要素として実装することができ(例えば、電流センサ118、ADC119)、その他の構成要素をプロセッサ(例えばCPU又はFPGA)上で実行されるソフトウェアルーチンとして実装することができることは理解されるであろう。これらの構成要素は、まとまってコントローラ50の一部を形成することができる。
【0456】
次に幾つかの実施形態における様々なシステム構成要素の間の通信を
図23を参照しながらより詳細に説明することにする。例えば、
図23に略示しているように、コントローラ50は、印刷ヘッド組立体60の様々な構成要素に可撓性リボンケーブル71を介して接続される。印刷ヘッド回路板68上に設けられた構成要素、特に印刷ヘッドコントローラ67が、コネクタ72を介して回路板68に接続する可撓性リボンケーブル71を介してコントローラ50と通信することを上記で説明した。一般的にリボンケーブル71は、印刷ヘッド4によって印刷すべき画像に関する信号を伝送することができる。更に、
図17a及び
図17bを参照しながら上記で詳細に説明したように、コントローラ50は、印刷ヘッド回路板68上に設けられたセンサ61(及びセンサインターフェース回路69)から可撓性リボンケーブル71を介して信号を受け取る。
【0457】
しかしながら幾つかの実施形態では、リボンケーブル71は、印刷ヘッド駆動組立体22、特にコイル24に対する制御信号を伝送することもできる。コイル24と印刷ヘッド回路板68との間に、コイル24の端子に接続された可撓性電線を設けることができ、印刷ヘッド回路板68上でこれらの電線と可撓性リボンケーブル71を介してコントローラ50の構成要素に至るように設けられた電線との間が接続される。
【0458】
上記で説明したように、コントローラ50は、スプール3、5の間でリボン2を順送するようにモータ6、7を制御し、更にモータ17に印刷ヘッドキャリッジ13を印刷面11に対して平行な方向に移動させるようにも動作可能である。
【0459】
コントローラ50(図示していないプリンタハウジングの内部で固定位置にある)と印刷ヘッド4及び印刷ヘッド駆動組立体22の各々との間に別個の接続部を設ける代わりに、印刷ヘッド組立体60への単一の接続部を設け、設けられる更なる(可撓性)接続部を印刷ヘッド組立体60の内部構成要素とする(すなわち、印刷ヘッド4と印刷ヘッド駆動組立体22との間の)のを有益とすることができることが認められた。従って、この更なる接続を行うことを可能にするために、印刷ヘッド4に印刷ヘッド駆動組立体コネクタを設けることができる。
【0460】
プリンタの様々な動作が、電磁石23のコイル24内に電流を流すことによって引き起こされることを上記で説明した。かかる電流は、電磁石を励磁状態にすると考えることができる。従って、ある特定の大きさ及び方向の電流をコイル24内に流した時に、電磁石は第1の励磁状態にあると考えることができる。同様に、異なる特定の大きさ及び/又は方向の電流をコイル24内に流した時に、電磁石は第2の励磁状態にあると考えることができる。従って、一般論として、何れか特定の時間において、電磁石23を幾つかの異なる励磁状態のうちの1つに入れることができる。コイル24の内部を流れる電流の不在を、ある励磁状態と考えることができることに注意されたい。
【0461】
印刷ヘッド4を第1の構成から第2の構成へと移動させるためにコイル24にプラス3アンペアの電流を印加することを、電磁石23が第1の励磁状態にある例と考えることができる。同様に、印刷ヘッド4を第2の構成から第1の構成へと移動させるためにコイル24にマイナス3アンペアの電流を印加することを、電磁石23が第2の励磁状態にある例と考えることができる。更に、第2の構成にある間に印刷ヘッド4を高い圧力で印刷面11に対して押圧するためにコイル24にプラス1アンペアの電流を印加することを、電磁石23が第3の励磁状態にある例と考えることができる。なおも更に、印刷ヘッド4を第1及び第2の構成のどちらかに留めるためにコイル24に電流を印加しないことを、電磁石23が第4の励磁状態にある例と考えることができる。数多くのとり得る励磁状態が存在し、電磁石をこれらの励磁状態のうちの様々なものの間で切り替えることによって印刷ヘッド4の制御を果たすことができることは理解されるであろう。
【0462】
上記で例えば+3アンペアの電流をコイル24内に流すと説明した場合には、この電流をあらゆる好適な手法であらゆる適切な電源によって供給することができることは理解されるであろう。更に、コイル24の誘導性を考えると、電流の変化は瞬時に発生することにはならない。幾つかの実施形態では、所望の電流をコイル24の内部に流すためにパルス幅変調電圧源を用いることができる。例えば、固定電圧(例えば24V)をコイル24にパルス振動方式で印加することができ、コイルの内部を流れる平均電流が所望の電流に実質的に等しいことを確実にするためにパルスデューティサイクル(例えば、パルスが固定周波数で印加される場合の各パルスの時間幅)が変動される。電流をコイルに印加すると説明する場合には、電流をコイルの内部に流すことを意味すると理解されよう。このことをどのようにして果たすかは、電源の性質に依存することになる。更に、所望の電流を得る(所望の励磁状態を得るために)ように電源を制御するために電流感知及びフィードバックを用いることができる。電源は、コントローラ50の制御下で動作させることができる。
【0463】
上記では、特定の実施形態において1.2kgf前後の印刷力を用いることができると説明したが、最適な印刷力は様々な実施形態において異なる可能性があり、印刷力を制御する印刷力を制御する段階が、印刷品質に対して著しい効果を有することができることは理解されるであろう。また、印刷ヘッド4とリボン2との間の摩擦が、発生させる印刷力に影響を与える可能性があることも理解されよう。特に、ばね28が発生させる事前に決定された力に対して、幾何学構成と材料属性とに基づいて印刷ヘッド4と印刷面11との間に様々な力が発生する可能性がある。
【0464】
図24は、印刷ヘッド4が印刷面11と相互作用する時に印刷ヘッド4に対して作用する力のうちの幾つかを例示している。印刷ヘッド駆動組立体22が印刷ヘッド4に対して力F
mを発生させる(この力は、例えば、ばね28及び/又は電磁石23が発生させることができる)。この力は、矢印F
mで示し、支持アーム21に対して垂直であり、ターゲット26の中心に沿って延びる軸A2と一致する線に沿って作用する。
【0465】
印刷ヘッド4が印刷面11に対して印刷力を作用すると、印刷面11が、対向する等しい印刷反力F
pを発生させる。
図24にはこの反力のみを示している。印刷力F
pは、印刷ヘッド4と印刷面11との間の接触点において印刷面11の面に対して直角である。
【0466】
印刷ヘッド4と印刷面11との間、及びリボン2と被印刷物10との間の接触の動的性質を考えると、更に摩擦力F
fが発生する。すなわち、断続印刷中に、印刷ヘッド4がリボン2に対して(又は連続印刷ではその逆にリボン2が印刷ヘッド4に対して)矢印Gで示している方向に移動する。摩擦力F
fは、印刷移動方向と反対の方向に作用し、印刷力F
pに比例し、比例定数は、印刷ヘッドと、それが接して移動する面との間の摩擦係数μに等しい。すなわち、摩擦力は、以下の式2に示しているように印刷力に関係付けられる。
【数3】
更に、旋回軸14の回りに印刷ヘッド4に対して作用する力にモーメント平衡を適用することによって、旋回軸14から半径rで反時計回り方向に作用する印刷ヘッド駆動組立体の力F
mの作用が、旋回軸14の回りに印刷ヘッドに対して時計回り方向に作用する力の和によって相殺されなければならないことを理解することができよう。これらの力は、旋回軸14から距離xで作用する印刷力F
p、及び旋回軸14から距離yで作用する摩擦力F
fである。これらの力は、式3に従って、等式化することができる。
【数4】
式2を用いてF
fを置き換えると、次式が得られる。
【数5】
この式は、次式のように書き換えることができる。
【数6】
F
pについて書き換えると次式が得られる。
【数7】
【0467】
上記のようにして、印刷ヘッド駆動組立体22が発生させる力Fmと印刷力Fpとの間の関係を決定することができ、適切な構成要素を選択し、電磁石を駆動するのに用いる適切な電流を決定する時にシステム幾何学構成及び摩擦を算入することが可能になる。コントローラ50は、印刷ヘッド4が押圧するリボン2の摩擦を示す情報を更に処理し、この情報を用いて印刷ヘッド駆動組立体22が発生すべき必要な力を決定することができる。当然ながら、リボンが存在しない場合には(例えばサーマルプリンタでは)、印刷ヘッドと被印刷物(リボンではなく)との間の摩擦を算入することができる。
【0468】
前述の説明の一部では、N極とS極とを有する磁場に言及した。当然ながら、説明する磁場は、各N極がS極によって置き換えられ、その逆もまた同様であるように別様に配列することができることは理解されるであろう。同様に、正電流及び負電流に言及する場合には、電流を、説明するものとは異なる方向に流すことができることは理解されるであろう。
【0469】
前述の説明の一部では、印刷力に言及した。印刷ヘッドが押圧する面が一定の面積を有する場合には、力と、この力の結果として発生する圧力とが正比例し、従って、圧力を、印加力に基づいて実際に定義することができることは理解されるであろう。しかしながら印加圧は、印刷ヘッド4が圧力を印加する印刷面11の幅(すなわち、
図2の作図面の中に延び込む寸法)に依存することになる。印刷面11が狭い程、印刷ヘッド駆動組立体22が発生させる所与の力に対する圧力は大きく、従って、印刷面11の圧縮の度合いも大きい。プリンタは、印刷ヘッド4に対する幾つかの装着位置と、印刷ヘッド4又は印刷面11の幅を変動させる能力とを提供することができる。従って、コントローラ50は、印刷ヘッド4が押圧する印刷面11の幅を示す情報を更に処理し、この幅情報を用いて印刷ヘッド駆動組立体22が発生させるべき必要な力を決定することができる。
【0470】
前述の説明ではコントローラ50を説明した。当然ながら、コントローラ50による機能を単一のコントローラ(例えば
図23に示している)又は別個のコントローラによって実施することができることは理解されるであろう。コントローラは、それ自体を単一のコントローラデバイス又は複数のコントローラデバイスによって形成することができることを更に理解されよう。各コントローラデバイスは、それが接続されたメモリ内に記憶された命令を読み出して実行する、ASIC、FPGA、又はマイクロコントローラを含むあらゆる適切な形態をとることができる。
【0471】
上記では、本発明の実施形態を総じて熱転写印刷に関して説明したが、幾つかの実施形態では、本明細書で説明する技法を、例えば感熱印刷等の他の形態の印刷に適用することができることは理解されるであろう。かかる実施形態では、インク担持リボンは必要とされず、印刷ヘッドは、感熱式被印刷物(例えば感熱紙)と直接接触状態にある時に被印刷物上にマークを作成するように励磁される。当然ながらかかる実施形態では、かかる変更に対応するために本明細書で説明する実施形態の動作に必要に応じて調節を加えることができることは理解されるであろう。
【0472】
本発明の様々な実施形態を上記で説明したが、これらの実施形態に、本発明の創意及び範囲から逸脱することなく修正を加えることができることは理解されるであろう。更に、適切な場合には、本明細書で説明した様々な実施形態及び代替形態を他の代替形態及び実施形態との組み合わせで用いることができることは理解されるであろう。
【符号の説明】
【0473】
9a 支持ピン
13 印刷ヘッドキャリッジ
14 旋回軸
15 直線軌道
18 滑車輪
19 印刷ヘッド駆動ベルト
21 支持アーム
22 印刷ヘッド駆動組立体
30 印刷ヘッド駆動組立体アーム
31 軸受
32 支承面
33 ばね
34 支承面の第1の部分
35 支承面の第2の部分
A1 軸