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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】重合阻害剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/40 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
C08F2/40
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019548996
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2018021478
(87)【国際公開番号】W WO2018165382
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】62/469,227
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マセレ ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】フロレンシオ ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】コロラド ラモン ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ニールソン アンドリュー アール
(72)【発明者】
【氏名】トン デイヴィッド ユウドン
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-001501(JP,A)
【文献】特開2013-121927(JP,A)
【文献】特開2007-137782(JP,A)
【文献】特開平11-171906(JP,A)
【文献】特開2014-214190(JP,A)
【文献】特表2018-511592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0272586(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
約30重量%~50重量%の1つ以上のニトロキシル化合物と、
約20重量%~30重量%の水と、
約25重量%~35重量%のジエチレングリコールモノブチルエーテルと、
約1重量%~10重量%の炭化水素溶媒であって、ビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸ジメチル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、2-(2-ヒドロキシ-プロポキシ)-プロパン-1-オール、2-(2-ヒドロキシ-1-メチル-エトキシ)-プロパン-1-オール、2-エチルヘキサン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、および1-アセトキシ-2-ブトキシエタンのうちの1つ以上を含む、炭化水素溶媒と、
を含み、前記1つ以上のニトロキシル化合物が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、1-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-ヒドロキシ-4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンから選択される、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、約35重量%~50重量%の前記1つ以上のニトロキシル化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、約40重量%~50重量%の前記1つ以上のニトロキシル化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つ以上のニトロキシル化合物が、本質的に4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシルからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、容器に密閉されている、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記容器が、前記組成物と接触する金属表面を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記金属が、ステンレス鋼である、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が安定であり、-20℃~60℃でポンピング可能または注入可能である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が安定であり、-10℃~60℃でポンピング可能または注入可能である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が安定であり、約10日~5年の期間にわたってポンピング可能または注入可能である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が安定であり、-20℃~60℃の温度範囲および約10日~5年の時間範囲にわたってポンピング可能または注入可能であり、さらに前記温度範囲が、前記時間範囲にわたって前記温度範囲内で変化する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
a)約20重量%~50重量%の1つ以上のニトロキシル化合物、約20重量%~30重量%の水、約25重量%~35重量%のジエチレングリコールモノブチルエーテル、および約1重量%~10重量%の炭化水素溶媒を含む組成物を形成することであって、前記炭化水素溶媒が、ビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸ジメチル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、2-(2-ヒドロキシ-プロポキシ)-プロパン-1-オール、2-(2-ヒドロキシ-1-メチル-エトキシ)-プロパン-1-オール、2-エチルヘキサン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、および1-アセトキシ-2-ブトキシエタンのうちの1つ以上を含む、形成することと、
b)約10日~5年の期間にわたって、前記組成物が保存期間中に少なくとも1回0℃~-20℃の温度に達する条件下で、密閉容器に前記組成物を保存することと、
c)ポンピングまたは注入により、前記容器から前記組成物を取り出すことと、
d)前記組成物を工業用プロセス流に適用することと、
を含み、前記1つ以上のニトロキシル化合物が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、1-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-ヒドロキシ-4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンから選択される、方法。
【請求項13】
前記取り出すこと、前記適用すること、またはそれらの両方が、0℃~-20℃の温度で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記組成物を輸送することをさらに含む、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記容器が、金属表面を含み、前記組成物を保存することが、前記組成物を前記金属表面と接触させることを含む、請求項1214のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
プロセス流における重合を阻害するための請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、-20℃~60℃で変化する温度で保存された場合に安定である重合阻害剤の濃縮溶液を対象とする。
【背景技術】
【0002】
一部の化学物質の生成および処理中に、例えば熱を伝達して反応を停止することによって、様々な化学反応を制御するために水が使用される。そのような水が、反応性、反応する、または反応した化学物質と直接接触する場合、それは一般にプロセス水と呼ばれる。石油化学製品と接触するプロセス水としては、多くの場合、スチレン、インデン、およびイソプレンなどの種々の重合性不飽和化合物が挙げられる。プロセス水に分散したこれらの化学種の重合は、汚れと呼ばれる、接触した機器表面上にオリゴマーおよびポリマーの最終的な堆積をもたらす。汚れは、処理システムのエネルギー効率を低下させ、処理プラントのスループットを低下させ、プロセスシステムにおいて製品品質の問題を引き起こす。
【0003】
スチレン、イソプレン、アクリレート、アクリルアミドなどの重合性不飽和化合物の生成および処理、例えば蒸留などによる形成、分離、または精製などもまた、生成物流に望ましくない重合を引き起こす。そのようなプロセス流での少量の反応でさえ、機器の表面の汚れを引き起こすだけでなく、目的の化学種の収量が低下する。
【0004】
化学産業では、化学処理流内の不飽和化学種の望ましくないまたはタイミングの悪い重合に対処するために、様々なアプローチが使用されている。1つの従来のアプローチでは、潜在的な汚染物質を水相に分散させておくために、分散剤(例えば、界面活性剤またはヒドロトロープ)が用いられる。別の従来のアプローチは、重合阻害剤を使用してその場で重合反応を停止させることである。1つの効果的な重合阻害剤は、式Iで表される(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシルである:
【化1】
【0005】
(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシルおよび関連する構造(総称して「ニトロキシル化合物」)は、水性および非水性の反応性化学系での重合反応を停止させるのに効果的である。処理流における重合の効果的な阻害のための標準的な「用量」は、例えば、処理流の重量に基づいて1ppm~500ppmの1つ以上のニトロキシル化合物であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2015/337056号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ニトロキシル化合物は、通常運転の実験室条件下では固体である。化学処理プラントのオペレータは、濃縮溶液またはその分散液をプロセス流に適用して目標用量の化学物質を生成することにより、そのような固体化学物質をプロセス流に有利に添加する。この目的に適した濃縮物は、最終使用の容易さ、ならびに最小量の材料の効率的な輸送および保存の両方を提供する。しかしながら、周囲の屋外の気象条件は、石油化学処理プラントなどの産業プラントに関連するプロセス流に適用するための濃縮物を配合する者にとって特別な課題を提示する。そのような濃縮物は、-10℃または-20℃という低い温度にさらされた場合でも、注入可能またはポンピング可能なままでなければならず、実質的に均質でなければならない。濃縮物は、オペレータがポンプなどの計量方法を使用して、濃縮物を直接プロセス流に容易に適用できるように、注入可能またはポンピング可能でなければならない。濃縮物は、いかなる特別な工程もなく、実質的に一貫した組成物をプロセス流にさらに送達しなければならない。したがって、沈殿などの相分離によって引き起こされる不均質性は、濃縮物を役に立たなくするか、あるいは混合もしくは加温、またはそれらの両方などの、均質性を再確立するための追加の工程を使用する必要性が生じる。
【0008】
そのような現場での使用の要件を満たすニトロキシル化合物の濃縮溶液または分散液を作製することは、困難である。例えば、30重量%以上、例えば最大40重量%の4-ヒドロキシ-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(「HTMPO」)を含む溶液は、水または水混和性溶媒とブレンドした水への単純な添加により、1気圧および25℃の標準実験室条件下で容易に形成される。しかしながら、これらの混合物は、25℃であっても、時間の経過とともに沈殿および/またはゲル化する傾向がある。そのような組成物の多くはまた、0℃以下の温度で輸送および/または保存された場合に凍結する。5重量%~15重量%などのより希薄な溶液または分散液ニトロキシル化合物は、沈殿またはゲル化は少ないが、やはり0℃以下の温度では凍結する。
業界では、現場での実際の輸送、保存、およびプロセス流への適用中に存在し得る様々な条件下で、注入可能またはポンピング可能で、実質的に均質な少なくとも20重量%の固体を有するニトロキシル化合物の濃縮溶液または分散液を提供することが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、ニトロキシル化合物を含む組成物、および組成物の使用方法が開示される。組成物は、約20重量%~50重量%のニトロキシル化合物を含み、約-20℃~60℃の温度で少なくとも10日間かつ最大約5年間、注入可能またはポンピング可能であり、実質的に均質である。組成物は、選択された用量を提供するために、いかなる特別な混合またはブレンド工程もなく、従来の機器を使用して、オペレータによって工業用プロセス流に適用される。組成物は、工業用プロセス流と適合性があるため、濃縮物をプロセス流に添加する以外にいかなる措置も講じることなく、均質な状態で溶解または分散する。
【0010】
組成物は、約20重量%~50重量%のニトロキシル化合物または2つ以上のニトロキシル化合物のブレンド、約20重量%~30重量%の水、約25重量%~35重量%のジエチレングリコールモノブチルエーテル(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、化学式:C(OCHCHOH)、および約1重量%~10重量%の炭化水素溶媒を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。炭化水素溶媒は、以下のビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸ジメチル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、2-(2-ヒドロキシ-プロポキシ)-プロパン-1-オール、2-(2-ヒドロキシ-1-メチル-エトキシ)-プロパン-1-オール、2-エチルヘキサン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、および1-アセトキシ-2-ブトキシエタンのうちの1つ以上を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、ニトロキシル化合物は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(「HTMPO」)である。組成物は、約-20℃~60℃の温度で、少なくとも約10日~5年の期間にわたって実質的に均質である。組成物は、約-20℃~60℃の温度で、少なくとも約10日~5年の期間にわたって注入可能、ポンピング可能、またはそれらの両方である。
【0011】
本明細書には、組成物を使用する方法も開示され、この方法は、a)約20重量%~50重量%のニトロキシル化合物またはその2つ以上のブレンド、約20重量%~30重量%の水、約25重量%~35重量%のジエチレングリコールモノブチルエーテル、ならびに以下のビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸ジメチル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、2-(2-ヒドロキシ-プロポキシ)-プロパン-1-オール、2-(2-ヒドロキシ-1-メチル-エトキシ)-プロパン-1-オール、2-エチルヘキサン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、および1-アセトキシ-2-ブトキシエタンを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる約1重量%~10重量%の炭化水素溶媒を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる組成物を形成することと、b)組成物が保存期間中に少なくとも1回0℃~-20℃の温度に達する条件下で、約10日~5年の期間にわたって、密閉容器に組成物を保存することと、c)ポンピングまたは注入により、容器から組成物を取り出すことと、d)組成物を工業用プロセス流に適用することと、を含むか、または本質的にそれらからなる。
【0012】
いくつかの実施形態では、取り出すこと、適用すること、またはそれらの両方は、0℃~-20℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を輸送することをさらに含み、いくつかのそのような実施形態では、輸送は、0℃~-20℃の温度で輸送することを含む。いくつかの実施形態では、保存に使用される容器は、金属を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、さらに、組成物と接触する表面の少なくとも一部が金属を含む。いくつかのそのような実施形態では、金属は、アルミニウム、鉄、またはクロムのうちの1つ以上を含み、いくつかのそのような実施形態では、金属は、10.5重量%を超えるクロムを有する合金を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0013】
本発明のさらなる利点および新規な特徴は、以下の説明に部分的に記載され、部分的には以下を検討することにより当業者に明らかになるか、または本発明の実施上の慣習的な実験によって学ばれ得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、好ましい実施形態への言及を提供するが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細において変更を行ってもよいことを認識するであろう。様々な実施形態への言及は、本明細書に添付の特許請求の範囲を限定するものではない。さらに、本明細書に記載されたいかなる例も、限定を意図するものではなく、添付の特許請求の範囲の多くの可能な実施形態のうちのいくつかを単に述べるものである。
【0015】
定義
【0016】
本明細書で使用される場合、「プロセス流」という用語は、1つ以上の不飽和重合性化合物を含む化学処理流(例えば、反応器、添加ポート、凝縮器、加熱ユニット、混合ユニット、もしくは他のユニット、または関連する配管および化学合成、精製、分離、混合、添加などを目的としたその他の導管内に配置されるか、またはそれらと接触する化学物質)を意味する。不飽和重合性化合物としては、α,β-不飽和ラジカル重合性化合物およびそれらの混合物が挙げられる。不飽和重合性化合物の一般的に用いられるが非限定的な例としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、スチレン、およびイソプレンが挙げられる。プロセス流は、1つ以上の不飽和重合性化合物からなるか、本質的にそれからなるか、または1ppm程度の少量の1つ以上の不飽和重合性化合物を含み得る。プロセス流は、水性または実質的に非水性であり、連続、半連続、またはバッチタイプの処理流内に存在する。
【0017】
本明細書で使用される場合、本発明の組成物を指す用語「ポンピング可能」、「注入可能」、「流れ」、または同様の用語は、半径1インチおよび高さ2インチの寸法を有する円筒容器内の実質的に水平な表面上に垂直に静止した10mLの組成物が、実質的に水平な位置に傾けられると約10秒以内に観察可能に流れることを意味する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物を指す「ポンピング可能」、「注入可能」、「流れ」、または同様の用語は、10s-1で約5cP~1000cPのブルックフィールド粘度を有する組成物を意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「濃縮物」という用語は、少なくともニトロキシル化合物と液体とを含む組み合わせを意味し、ニトロキシル化合物は、15重量%以上で存在し、組み合わせは、ニトロキシル化合物の溶液または分散液である。
【0019】
本明細書で使用される場合、「容器」という用語または同様の用語は、組成物を保持または収容する器を意味し、器は、実質的に密閉されている。実施形態では、容器は、ボトル、缶、ジャー、ドラム、カーボイなどであり、または輸送用コンテナ、トラック用ベッドなどである。組成物は、輸送、保存、またはそれらの両方の目的で容器に入れられる。容器内での保存は、その中の組成物の一部をプロセス水に送達するための容器の使用をさらに企図する。
【0020】
本明細書で使用される場合、本発明の組成物を指す「安定」または「均質」という用語は、組成物がゲル形成または相分離の視覚的証拠を実質的に含まないことを意味する。
【0021】
「現場での輸送および/もしくは保存の条件」、「周囲の気象条件」、ならびに本発明の組成物の現場輸送、保存、または使用を示す同様の語句は、a)-20℃~60℃の温度範囲、b)約10日~5年の時間範囲、またはc)約10日~5年の時間範囲にわたる-20℃~60℃の温度範囲を意味し、さらに温度は、その期間にわたってその範囲内で可変である。
【0022】
本明細書で使用される場合、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流速、圧力、および同様の値、ならびにその範囲を修飾する「約」という用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物または使用配合物を作製するために使用される典型的な測定および取り扱い手順により;これらの手順における偶発的な誤りにより;方法を実行するために使用される出発物質もしくは成分の製造、供給源、または純度の違いにより、および同様の近似考慮事項により生じ得る数値量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度または混合物を有する配合物の劣化により異なる量、および特定の初期濃度または混合物を有する配合物を混合または処理することによって異なる量を包含する。「約」という用語によって修飾されている場合、本明細書に添付の特許請求の範囲は、これらの量と同等のものを含む。さらに、「約」が値の任意の範囲を説明するために使用される場合、文脈によって特に限定されない限り、例えば「約1~5」という記述は、「1~5」および「約1~約5」および「1~約5」および「約1~5」を意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、その用語が米国特許法で解釈されるように「から本質的になる」を意味し、その用語が米国特許法で解釈されるように「からなる」を含む。例えば、特定の化合物または材料を「実質的に含まない」溶液は、その化合物もしくは材料を含まなくてもよいか、または意図しない汚染、副反応、もしくは不完全な精製などによって存在する少量のその化合物もしくは材料を有してもよい。「少量」は、微量、測定不可能な量、価値もしくは特性を妨げない量、または文脈で提供されるようないくつかの他の量であり得る。提供された成分のリストを「実質的にのみ」有する組成物は、それらの成分のみからなるか、または存在する微量のいくつかの他の成分を有するか、または組成物の特性に物質的に影響を及ぼさない1つ以上の添加成分を有し得る。さらに、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の成分のタイプもしくは量、特性、測定可能な量、方法、値、または範囲を修飾する「実質的に」とは、意図する組成物、特性、量、方法、値、または範囲を無効にする様式で、列挙された組成物、特性、量、方法、値、または範囲に全体的に影響を及ぼさない変動を指す。「実質的に」という用語によって修飾されている場合、本明細書に添付の特許請求の範囲は、この定義による等価物を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、任意の列挙された値の範囲は、範囲内のすべての値を想定し、列挙された範囲内の実数値である終点を有する任意の部分範囲を列挙する特許請求の範囲を支持するものとして解釈されるべきである。仮説上の例示的な例として、本明細書における1~5の範囲の開示は、次の範囲:1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、2~4、2~3、3~5、3~4、および4~5のうちのいずれかに対する特許請求の範囲を支持するとみなすものとする。
【0025】
組成物
【0026】
本明細書では、1つ以上のニトロキシル化合物、水、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、および1つ以上の炭化水素溶媒を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる組成物が開示される。実施形態では、組成物は、約20重量%~50重量%のニトロキシル化合物またはそのブレンド、例えば約25重量%~50重量%、または約30重量%~50重量%、または約35重量%~50重量%、または約40重量%~50重量%、または約20重量%~45重量%、または約20重量%~40重量%、または約20重量%~35重量%、または約20重量%~30重量%、または約25重量%~45重量%、または約25重量%~40重量%、または約30重量%~45重量%、または約30重量%~40重量%、または約35重量%~45重量%のニトロキシル化合物またはその2つ以上のブレンドを含む。
【0027】
実施形態では、ニトロキシル化合物は、水溶性または水分散性であり、N-O・またはN-OH部分を含む。ニトロキシル化合物の例示的であるが非限定的な例としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル(TEMPO)、1-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TEMPOH)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル(HTMPO)、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル(OTEMPO)、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(HTMPOH)、および1-ヒドロキシ-4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(OTEMPOH)が挙げられる。2つ以上のニトロキシル化合物のブレンドも同様に有用であり、組成物中のそれらの相対比率は、特に限定されない。
【0028】
実施形態では、組成物は、約20重量%~30重量%の水、例えば約22重量%~30重量%、または約24重量%~30重量%、または約26重量%~30重量%、または約20重量%~28重量%、または約20重量%~26重量%、または約22重量%~28重量%、または約24重量%~26重量%の水を含む。実施形態では、組成物は、約25重量%~35重量%のジエチレングリコールモノブチルエーテル、またはC(OCHCHOH、例えば約26重量%~35重量%、または約27重量%~35重量%、または約28重量%~35重量%、または約29重量%~35重量%、または約30重量%~35重量%、または約31重量%~35重量%、または約32重量%~35重量%、または約33重量%~35重量%、または約34重量%~35重量%、または約25重量%~34重量%、または約25重量%~33重量%、または約25重量%~32重量%、または約25重量%~31重量%、または約25重量%~30重量%、または約25重量%~29重量%、または約25重量%~28重量%、または約25重量%~27重量%、または約25重量%~26重量%のジエチレングリコールモノブチルエーテルを含む。
【0029】
組成物は、約1重量%~10重量%の炭化水素溶媒、例えば約2重量%~10重量%、または約3重量%~10重量%、または約4重量%~10重量%、または約5重量%~10重量%、または約6重量%~10重量%、または約7重量%~10重量%、または約8重量%~10重量%、または約9重量%~10重量%、または約1重量%~9重量%、または約1重量%~8重量%、または約1重量%~7重量%、または約1重量%~6重量%、または約1重量%~5重量%、または約1~4重量%、または約1重量%~3重量%、または約1重量%~2重量%の炭化水素溶媒を含む。炭化水素溶媒は、以下のビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸ジメチル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、2-(2-ヒドロキシ-プロポキシ)-プロパン-1-オール、2-(2-ヒドロキシ-1-メチル-エトキシ)-プロパン-1-オール、2-エチルヘキサン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、1-アセトキシ-2-ブトキシエタン、または任意の割合のそれらの2つ以上、のうちの1つ以上を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。
【0030】
組成物は、注入可能またはポンピング可能であり、単純な混合によって形成される場合、実質的に均質である。実施形態では、組成物は、組成物を形成してプロセス流に適用する間、容器に保存される。いくつかの実施形態では、容器は、組成物と接触する金属表面を含む。組成物は、周囲の気象条件で少なくとも10日かつ最大5年間、容器に保存するのが有利であり、「周囲の気象条件」は、例えば、組成物を保持する容器を加熱もしくは冷却することにより、または容器を収納する保存施設を加熱もしくは冷却することにより、組成物の温度を調整するいかなる努力なしに保存が行われることを示す。実施形態では、周囲の気象条件は、保存期間の少なくとも一部、保存期間全体を含むそれまでの間、約0℃~-20℃、または約0℃~-10℃の組成物温度をもたらし得る。周囲の気象条件での保存期間中、および保存期間の終わりに、組成物は、注入可能またはポンピング可能であり、実質的に均質でもある。
【0031】
組成物は、ポンピング可能または注入可能のままであり、約-20℃~60℃、例えば約-19℃~60℃、または約-18℃~60℃、または約-17℃~60℃、または約-16℃~60℃、または約-15℃~60℃、または約-14℃~60℃、または約-13℃~60℃、または約-12℃~60℃、または約-11℃~60℃、または約-10℃~60℃、または約-9℃~60℃、または約-8℃~60℃、約-7℃~60℃、または約-6℃~60℃、または約-5℃~60℃の温度で、少なくとも10日間~最大約5年間、例えば、約30日間~5年間、または約180日間~5年間、または約1年間~5年間、または約2年間~5年間、または約10日間~4年間、または約10日間~3年間、または約10日間~2年間、または約10日間~1年間、または約10日間~180日間安定である。組成物は、この期間にわたって安定であり、温度は、この期間にわたって上記の範囲内で変化する。
【0032】
組成物を密閉する容器は、現場のその場、指定された屋内もしくは屋外の保存領域、または別の便利な取り決めで配置され得る。いくつかの実施形態では、組成物を収容するために使用される容器は、輸送にも使用され、そのような実施形態では、保存期間には、輸送期間が含まれる。いくつかの実施形態では、保存期間中に、容器が開封され、濃縮物のアリコートが取り出され、その後、容器は再び閉じられ、追加の期間保存される。他の実施形態では、保存期間中に容器が開封され、濃縮物の一部または実質的にすべてが取り出され、異なる容器に入れられる。例えば、第1の容器が組成物の輸送に使用され、第2の容器が、現場での組成物の保存に使用される。「保存期間」という用語は、一般に、組成物の少なくとも一部が容器に残っている時間の全体を指す。言い換えると、「保存期間」は、組成物が形成された時点から、それがプロセス流に適用される時点まで続く。
【0033】
容器に用いられる材料は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、容器は、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、またはポリエステルなどの合成ポリマー材料を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、容器は、ガラス(ホウケイ酸ガラスなど)を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、容器は、金属を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、組成物と接触する容器表面の少なくとも一部は、金属を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、金属は、アルミニウム、鉄、またはクロムのうちの1つ以上を含み、いくつかのそのような実施形態では、金属は、10.5重量%を超えるクロムを有する合金を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、容器は、ステンレス鋼を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0034】
組成物はまた、最大約60℃で安定であり、この温度で密閉容器に保存されたときに実質的な圧力を上昇させない。組成物に用いられる溶媒系は、現場の周囲の気象条件での圧力の上昇を避けるために十分に低い全体蒸気圧を有する。さらに、組成物は、少なくとも60℃の温度まで、ポンピング可能、注入可能、および安定/均質のままである。
【0035】
方法
【0036】
本明細書には、組成物を使用する方法も開示される。実施形態では、本方法は、a)約20重量%~50重量%のニトロキシル化合物またはその2つ以上のブレンド、約20重量%~30重量%の水、約25重量%~35重量%のジエチレングリコールモノブチルエーテル、ならびに以下のビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸ジメチル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、2-(2-ヒドロキシ-プロポキシ)-プロパン-1-オール、2-(2-ヒドロキシ-1-メチル-エトキシ)-プロパン-1-オール、2-エチルヘキサン-1-オール、プロパン-1,2-ジオール、および1-アセトキシ-2-ブトキシエタンのうちの1つ以上を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる約1重量%~10重量%の炭化水素溶媒を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる組成物を形成することと、b)組成物が保存期間中に少なくとも1回0℃~-20℃の温度に達する条件下で、約10日~5年の期間にわたって、密閉容器に組成物を保存することと、c)ポンピングまたは注入により、容器から組成物を取り出すことと、d)組成物を工業用プロセス流に適用して、処理済みプロセス流を形成することと、を含むか、または本質的にそれらからなる。
【0037】
実施形態では、容器は、組成物と接触する金属表面を含み、いくつかのそのような実施形態では、金属表面は、ステンレス鋼を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。実施形態では、組成物が保存期間中に少なくとも1回0℃~-20℃の温度に達する条件としては、周囲の気象条件が挙げられる。実施形態では、組成物が保存期間中に少なくとも1回0℃~-20℃の温度に達する条件としては、温度が、約10日~5年の保存期間にわたって約-20℃~60℃、または約-10℃~60℃で変化する条件が挙げられる。
【0038】
組成物は、容器から取り出され、従来の機器を使用し、任意の特別な混合またはブレンド工程なしに、プロセス流に選択された用量を提供するために、オペレータによって工業用プロセス流に適用される。選択された用量は、ニトロキシル化合物の従来の用量をプロセス流に提供して、処理済みプロセス流を形成する。実施形態では、用量は、重量基準で約1ppm~1000ppmのニトロキシル化合物、例えば、重量基準で約10ppm~1000ppm、または約100ppm~1000ppm、または約200ppm~1000ppm、または約300ppm~1000ppm、または約400ppm~1000ppm、または約500ppm~1000ppm、または約1ppm~900ppm、または約1ppm~800ppm、または約1ppm~700ppm、または約1ppm~600ppm、または約1ppm~500ppm、または約1ppm~400ppm、または約1ppm~300ppm、または約1ppmから200ppm、または約1ppm~100ppm、または約10ppm~500ppm、または約10ppm~400ppm、または約10ppm~300ppm、または約10ppm~200ppm、または約10ppm~100ppm、または約50ppm~500ppm、または約50ppm~400ppm、または約50ppm~300ppm、または約50ppm~200ppm、または約50ppm~100ppmのニトロキシル化合物を含む処理済みプロセス流を提供するように選択される。
【0039】
組成物は、当業者に周知の従来の技術および機器を用いてプロセス流に適用される。したがって、組成物は、処理済みプロセス流を形成するために容易に使用される。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば計量ポンプなどを使用してポンピングされる。他の実施形態では、組成物は、例えば重力を使用して組成物をプロセス流に計量する供給機に注がれる。いくつかの実施形態では、プロセス流は、動的システムの一部であり、プロセス流への組成物の適用は、連続的である。他の実施形態では、プロセス流への組成物の適用は、バッチ式である。
【0040】
プロセス流は、任意の1つ以上の実施形態では、約1ppm~1,000,000ppmの1つ以上の不飽和重合性種を含む。プロセス流は、1つ以上の重合性不飽和化合物を含む任意の工業用プロセス流である。いくつかの実施形態では、プロセス流は、1つ以上の重合性不飽和化合物を含むプロセス水である。石油化学プロセス水では、例えば、1つ以上の重合性不飽和化合物が、多くの場合存在し、その中に分散され、そのようなプロセス水で一般的に見られる化学種としては、スチレン、インデン、およびイソプレンが挙げられる。いくつかの実施形態では、プロセス水は、1つ以上の産業廃棄物および/または追加の処理化学物質をさらに含む。追加の処理化学物質としては、腐食を防止または遅延させ、殺生物活性を与え、さもなければ不溶性物質の分散状態を維持し、または水相から別の物質を隔離するために、工業用プロセス水に添加される従来の化学物質が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの他の実施形態では、プロセス流は、例えばスチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、イソプレン、α-オレフィンなどの1つ以上の重合性不飽和化合物の生成流または処理流であり、その合成、分離、または精製などのその処理を対象とする。
【0041】
組成物は、1つ以上のプロセス流と適合性があり、したがって、それに適用されると均質な状態で溶解または分散する。実施形態では、オペレータは、いかなる特別な工程もとる必要がなく、組成物は、プロセス流への濃縮物に単純に適用され得る。実施形態では、プロセス流は、0℃~100℃の温度で存在し、組成物は、この範囲にわたる任意の温度でそこに適用される。
【0042】
現在開示されている方法論は、従来のニトロキシル化合物濃縮物が現場での輸送および/または保存中に安定した状態を保てなかったことが観察されたことに応じて開発された。水または様々な比率の水および水混和性溶媒を含むニトロキシル化合物の従来の濃縮物は、時間の経過ならびに/または現場での輸送および保存中の温度の変化により観察される不安定性に悩まされている。本発明者らは、現場での輸送および保存中に、これらの濃縮物が、ポンピングもしくは注入できないゲルを形成する場合があり、またはニトロキシル化合物が、濃縮物から沈殿する場合があり、あるいはそれらの両方を観察した。予期せぬことに、本組成物は、前述の問題を解決し、それにより、最大50重量%のニトロキシル化合物を含有する安定した組成物の現場での輸送および保存を可能にする。組成物は、現場での輸送および保存中に安定したままである。
【0043】
さらに、本発明者らは、従来のニトロキシル化合物濃縮物の不安定性が、濃縮物が金属表面、例えばステンレス鋼表面に接触する容器に保存することにより悪化する場合があることを観察した。以前は明確ではなかったこの問題は、本組成物および方法により解決される。
【0044】
さらに、理論に制限されることなく、ニトロキシル化合物濃縮物中に存在または形成される種結晶が、あらゆるタイプの容器で、観察可能な沈殿物を核形成するようにさらに作用し得ると考えられる。従来のニトロキシル化合物濃縮物とは異なり、本組成物は、ニトロキシル化合物の種結晶の存在下で安定している。なおさらに、本発明者らは、種結晶を含む濃縮物が、金属表面と接触させて保存した場合に安定であり、そのような条件下でいかなる追加の観察可能な沈殿物も形成しないことを見出した。
【0045】
以下の実施例は、本発明の実験的実施形態を示すことを意図している。実施形態は、本明細書に添付の特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書に説明される実験的実施形態に従うことなく、さらに特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な改変および変更がなされ得ることが認識されるであろう。
【0046】
実験
【0047】
冷却試験手順
【0048】
30mLの試験管に、0.5gのHTEMPO結晶および約1gのスチールメッシュを充填した。次いで、試験する10mLの配合物を試験管に添加した。管に蓋をして、冷浴に入れ、そこで試料を約-10℃に冷却し、この温度で約16時間維持した。16時間後、試料を-10℃に維持しながら、凍結、ゲル化、および沈殿の証拠を観察および評価し、以下の評価尺度に従って格付けした:0=完全にゲル化または凍結、1=著しいゲル化または沈殿、2=中程度のゲル化または沈殿、3=少量のゲル化または沈殿、4=観察可能なゲル化または沈殿なし。4の試験格付けは、「合格」を示す。
【0049】
本明細書に列挙されるすべての量は、特に明記しない限り、重量部または重量パーセントに関する。
【0050】
実施例1~7
【0051】
40部の4-ヒドロキシ-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(HTMPO)、25部の水、および30部のジエチレングリコールモノブチルエーテル(別名2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)の混合物が形成された後、7つのアリコートに分割した。表1の化合物を、95部の混合物とともに5部で添加して、示される各実施例を形成した。これらの実施例は、冷却試験手順に従って試験され、結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
比較例1~7
【0054】
表2に示す混合物は、上記の冷却試験手順に従って形成および試験し、得られた格付けも表2に示す。結果は、一部の三成分溶媒の組み合わせが、35重量%のHTMPOで冷却試験に合格する一方で、それ以外の場合、HTMPO濃度が40重量%に増加したときに同一の組成物が、合格しないことを示している。
【0055】
【表2】
【0056】
本明細書に例示的に開示される発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素が存在しない場合に、適切に実施され得る。さらに、本明細書に記載される本発明の各実施形態は、単独で、または本明細書に記載される任意の他の実施形態、ならびにそれらの改変物、等価物および代替物と組み合わせるかのいずれかで使用されることが意図される。様々な実施形態では、本発明は、本明細書に記載され、特許請求の範囲に従って請求された要素を適切に含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。本明細書に例示され説明される例示的な実施形態および用途に従うことなく、かつ特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な改変および変更がなされ得ることが認識されるであろう。