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特許7118085エンジン燃料効率及びエネルギー効率の改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】エンジン燃料効率及びエネルギー効率の改善方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 111/02 20060101AFI20220805BHJP
   C10M 111/04 20060101ALI20220805BHJP
   C10M 105/04 20060101ALN20220805BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20220805BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20220805BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20220805BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220805BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20220805BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20220805BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
C10M111/02
C10M111/04
C10M105/04
C10M101/02
C10M107/02
C10N20:02
C10N40:25
C10N20:00 Z
C10N30:04
C10N30:00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019552283
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2018023922
(87)【国際公開番号】W WO2018175830
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】62/475,980
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/928,996
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・ジー・バーンズ・ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】スムルティ・エイ・ダンス
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・イー・デックマン
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ピー・ハーゲマイスター
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-516108(JP,A)
【文献】特開2008-239953(JP,A)
【文献】特開2014-015525(JP,A)
【文献】特表2017-507219(JP,A)
【文献】特開昭55-005998(JP,A)
【文献】特開2008-094891(JP,A)
【文献】特開平06-336590(JP,A)
【文献】特表2000-513397(JP,A)
【文献】特開2007-031629(JP,A)
【文献】特表2009-518530(JP,A)
【文献】特表2009-518534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 127/02
C10M 101/02
C10M 107/02
C10M 129/70
C10M 159/08
C10N 20/02
C10N 40/25
C10N 20/00
C10N 30/04
C10N 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースオイル混合物を含んでなる潤滑油であって、
前記ベースオイル混合物が、主成分として、グループIIベースストック、グループIIIベースストック、グループIVベースストック及びそれらの混合物からなる群から選択される潤滑油ベースストックと、100℃において6.2cSt未満の動粘度(Kv100)を有する前記潤滑油の1~12重量%の微量成分として、少なくとも1種のコベースストックとを含んでなり、
コベースストックは、メタロセン触媒を使用してアルファ-オレフィンの二量化によって製造されるmPAOダイマーであり、
コベースストックは、C14線形アルファ-オレフィンダイマーから製造されるC28メチルパラフィンからなる群から選択され、
コベースストックは、前記潤滑油がSAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される前記潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定される前記ベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させる、潤滑油。
【請求項2】
SAE 5W-20エンジンオイル、SAE 5W-30エンジンオイル、又はSAE 10W-30エンジンオイルである、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項3】
ASTM D445によって決定される前記ベースオイル混合物の前記動粘度(Kv100)が、0.5cStよりも多く減少する、請求項に記載の潤滑油。
【請求項4】
前記コベースストック以外の微量成分を含有する潤滑油のNoack揮発性と比較して、ASTM D5800によって決定される前記潤滑油のNoack揮発性が減少する、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項5】
ASTM D5800によって決定される前記潤滑油の前記Noack揮発性が、0.5~2.5重量%減少する、請求項に記載の潤滑油。
【請求項6】
ASTM D445によって決定される2cSt~12cStの100℃における動粘度(Kv100)、ASTM D5293-15によって決定される1000cP~6200cPの-35℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、ASTM D5293-15によって決定される1000cP~6600cPの-30℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、ASTM D5293-15によって決定される1000cP~7000cPの-25℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、及びASTM D4683-13によって決定される3.5cP未満の高温高剪断(HTHS)粘度を有する、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項7】
ASTM D2270によって決定される80~300の粘度指数(VI)、及びASTM D5800によって決定される25%以下のNoack揮発性を有する、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項8】
MTM(ミニトラクションマシン)トラクション試験によって決定される場合、前記コベースストック以外の微量成分を含有する潤滑油のMTMトラクションと比較して、5%より多いMTMトラクション減少を有する、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項9】
1種以上の粘度向上剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動点降下剤、腐食抑制剤、金属不活性剤、シール適合性添加剤、抗発泡剤、抑制剤、及び抗さび添加剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項10】
前記潤滑油の全重量に基づき、前記潤滑油ベースストックが、88重量%~98重量%の量で存在し、且つ前記コベースストックが、2重量%~12重量%の量で存在する、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項11】
乗用車エンジンオイル(PVEO)又は商用車エンジンオイル(CVEO)である、請求項1に記載の潤滑油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑油によって潤滑されたエンジンにおける堆積物制御及び清浄度性能を維持又は改善しながら、燃料効率及びエネルギー効率を改善する方法に関する。また、本開示は、主成分として潤滑油ベースストック及び微量成分として少なくとも1種のコベースストックを有する潤滑油にも関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車に関する燃料効率及びエネルギー効率の必要条件は益々厳しくなっている。過去数年間の合衆国及びヨーロッパ連合の新法により、今日の車両及び潤滑油技術によって容易に達成可能ではない燃料経済性及び排出目標が設定された。
【0003】
この10年間のより厳しい二酸化炭素排出規制に向けての世界的傾向のため、自動車メーカーによってより高レベルのエンジンオイルの燃料経済性性能が必要とされるようになった。自動車メーカーによって課されている変化の1つは、SAE0W-20及びSAE0W-16などのより低粘度グレードのエンジンオイルへの遅くても着実な移行である。この傾向にもかかわらず、SAE5W-20、5W-30及び10W-30オイルは、多くの自動車製造者によって使用され、且つ市場で広く販売される、なお重要な粘度グレードである。したがって、「5W」及び10W粘度グレードエンジンオイルに関して燃料経済性を改善するための戦略は、新規エンジンオイル規格の厳格化する燃料経済性必要条件を満たすために最重要である。
【0004】
これらの益々増加する基準に対処するために、自動車の相手先ブランド製造業者は、堆積物制御の必要条件を維持しながらも、潤滑油関連の性能特有として、より良好な燃料経済性を必要としている。燃料経済性を増加させるための1つの周知の方法は、潤滑油の粘度を減少させることである。しかしながら、このアプローチは今や現行の装置能力及び規格の限界に達している。所与の粘度において、有機又は有機金属摩擦変性剤を添加することによって、潤滑油の表面摩擦抵抗が減少し、そしてより良好な燃料経済性が可能となることは周知である。しかしながら、これらの添加剤は、しばしば、堆積物形成の増加、シールズインパクト(seals impacts)などの有害作用をもたらすか、又はそれらは限定された表面部位に対する抗摩耗構成要素を打ち負かし、それによって、抗摩耗膜の形成が不可能となり、摩耗の増加が引き起こされる。
【0005】
エンジンオイルなどの現行の潤滑油では、温度、圧力及び潤滑油実用寿命の広範囲の性能条件下でのエンジン清浄度及び耐久性を提供するために、分散剤、清浄剤、抑制剤、粘度指数向上剤などの添加剤の混合物が使用される。
【0006】
高温堆積物制御及び燃料経済性などの潤滑油関連性能特徴は、様々なベンチ及びエンジン試験によって測定される極めて有利な特性値である。上記の通り、潤滑油配合物に有機摩擦変性剤を添加することは、低温での摩擦利益を与え、したがって、潤滑油燃料経済性性能が改善されることは知られている。しかしながら、高温で、増加濃度の有機摩擦変性剤を添加することは、高温性能の問題を招く可能性がある。例えば、エンジン堆積物は、高温エンジン運転におけるエンジンオイル配合物中の高濃度の摩擦変性剤の望ましくない結果である。
【0007】
エネルギー効率の改善は、ほぼ全ての自動車及び装置製造業者にとって最重要である。燃料経済性及びエネルギー効率の改善は、より低粘度の潤滑油を使用することによって、又はエンジンオイルの配合のために使用されるベースオイル混合物の100℃における動粘度を減少させることによってしばしば達成可能である非特許文献1が、しばしばそのようなより低粘度の流体のより高い揮発性が問題となる。低粘度、低揮発性ベースストックを開発する努力がなされているが、そのような流体は、おそらく、非常に高い100℃におけるベースオイル動粘度を有するSAE5W-30、SAE5W-20及びSAE10W-30オイルを生じるであろう。そのようなオイルは、非常にニュートン特徴のため、工業的燃料経済性必要条件を満たすことが困難であろう。SAE5W-30及びSAE5W-20粘度グレードは、現在合衆国で販売される潤滑油の大部分を示し、したがって、他の性能特徴を犠牲にすることなく、これらの粘度グレードの燃料経済性及びエネルギー効率が改善された低粘度、低揮発性ベースストックは重要な事業価値を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Crosthwait et al.“The Effect of High Quality Base Stocks on PCMO Fuel Economy”LW-99-126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エンジンオイル配合物における主要な課題は、燃料経済性の改善を達成しながらも、同時に高温堆積物制御を達成することである。
【0010】
潤滑油配合物技術における進歩にもかかわらず、堆積物制御を維持又は改善しながらも、燃料経済性を有効に改善するエンジンオイル潤滑油が必要とされている。
【0011】
本開示は、下記で明らかとされる多くの追加的利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、主成分として潤滑油ベースストック(base stock)及び微量成分として少なくとも1種のコベースストック(副ベースストック又は補助ベースストック:cobase stock)の混合物を有する潤滑油に関する。少なくとも1種のコベースストックは、潤滑油が、SAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター(cold cranking simulator)粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させるために十分な量で存在する。本開示は、潤滑油によって潤滑されたエンジンにおける堆積物制御及び清浄度性能を維持又は改善しながら、燃料効率及びエネルギー効率を改善する方法にも関する。
【0013】
特に、本開示は、一部において、潤滑油として配合油を使用することによって、潤滑油によって潤滑されたエンジンにおける堆積物制御及び清浄度性能を維持又は改善しながら、燃料効率及びエネルギー効率を改善する方法に関する。配合油は、ベースオイル混合物が主成分として潤滑油ベースストック及び微量成分として少なくとも1種のコベースストックを含んでなるベースオイル混合物を含んでなる。少なくとも1種のコベースストックは、潤滑油が、SAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させるために十分な量で存在する。匹敵する(相当する、同等の:comparable)ASTM D5293-15によって決定されたコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)及びASTM D4683-13によって決定された高温高剪断(HTHS)粘度を有する、コベースストック以外の微量成分を含有する潤滑油を使用して達成された燃料効率、エネルギー効率、堆積物制御及び清浄度性能と比較して、燃料効率及びエネルギー効率は改善され、そして堆積物制御及び清浄度性能は維持又は改善される。
【0014】
さらに特に、本開示は、一部において、ベースオイル混合物を含んでなる潤滑油に関する。ベースオイル混合物は、主成分として潤滑油ベースストック及び微量成分として少なくとも1種のコベースストックを含んでなる。少なくとも1種のコベースストックは、潤滑油が、SAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させるために十分な量で存在する。
【0015】
驚くべきことに、潤滑油が、SAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させるために、潤滑油の全重量に基づき約2重量%~約12重量%の量で少なくとも1種のコベースストックを含むベースオイル混合物を有する配合油を潤滑油として使用することによって、潤滑油によって潤滑されたエンジンにおいてエンジン耐久性を犠牲にすることなく(例えば、堆積物制御及び清浄度性能を維持又は改善しながら)、燃料経済性及びエネルギー効率の改善が得られることが見出された。
【0016】
また驚くべきことに、顕著な低粘度低揮発性、望ましいコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、良好な高温堆積物制御及びトラクションの利益が、本開示に従って配合された配合油を潤滑油として使用する、潤滑油によって潤滑されたエンジンにおいて達成可能であることが見出された。特に、コベースストックが、ASTM D445によって決定される100℃における4cSt未満の動粘度(Kv100)を有する二量体化され、水素化されたC14線形(直線状又は鎖状:linear)(アルファオレフィンである、少なくとも1種のコベースストックを含むベースオイル混合物を有する潤滑油は、低い動粘度(Kv100)、望ましいコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、低い揮発性、望ましい堆積物制御及びトラクションの利益を示す。コベースストックは、パルミチン酸デシル、ココナッツ油又はC18二量体であってよい。そのような特性は、潤滑油の使用寿命を延長し、そして高温に曝露される時に、有意に潤滑油の耐久性及び抵抗を改善することを補助する。本開示の潤滑油は、乗用車エンジンオイル(PVEO)製品及び商用車エンジンオイル(CVEO)製品として特に有利である。
【0017】
本開示のさらなる対象物、特性及び利点は、次の図面及び詳細な説明を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例1に従って、より高粘度のベースストックとの組合せでSAE5W-xxエンジンオイルを製造するための、従来のベースストック配合アプローチによって可能なブレンドウインドウをグラフで示す。
図2図2は、実施例1に従って、本開示のコベースストックとの組合せでSAE5W-xxエンジンオイルを製造するための、ベースストック配合アプローチによって可能なブレンドウインドウをグラフで示す。
図3図3は、本開示のコベースストック(すなわち、C28メチルパラフィン、パルミチン酸デシル、ココナッツ油及びC18二量体)の特性を示す。
図4図4は、PAO2、PAO4、グループIII-B(4cSt)、グループV=A、グループV-B及び本開示のコベースストック(すなわち、C28メチルパラフィン、パルミチン酸デシル、ココナッツ油及びC18二量体)に対するMTM(ミニトラクションマシン)トラクション試験結果の比較をグラフで示す。
図5図5は、実施例で使用されるベースストックの典型的な特性を示す。
図6図6は、実施例で使用される潤滑油配合物及び潤滑油配合物の特性を示す。
図7図7は、実施例で使用される潤滑油配合物及び潤滑油配合物の特性を示す。
図8図8は、実施例で使用される潤滑油配合物及び潤滑油配合物の特性を示す。
図9図9は、実施例で使用される追加的な潤滑油配合物及び潤滑油配合物の特性を示す。
図10図10は、実施例で使用されるさらに追加的な潤滑油配合物及び潤滑油配合物の特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書の詳細な説明及び請求項での全ての数値は、表示値が「約」又は「およそ」によって修飾され、そして当業者によって予想されるであろう実験誤差及び偏差が考慮される。「主要量」又は「主成分」という句は、本明細書及び請求項の潤滑油に含まれる成分に関連する場合、潤滑油の全重量に基づき50重量%以上、又は60重量%以上、又は70重量%以上、又は80重量%以上、又は90重量%以上を意味する。「微量」又は「微量成分」という句は、本明細書及び請求項の潤滑油に含まれる成分に関連する場合、潤滑油の全重量に基づき50重量%未満、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下、又は5重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下を意味する。「本質的に含まない」という句は、本明細書及び請求項の潤滑油に含まれる成分に関連する場合、特定の成分が潤滑油中で0重量%であることか、或いは潤滑油中の不純物型レベル(100ppm未満、又は20ppm未満、又は10ppm未満、又は1ppm未満)であることを意味する。「他の潤滑油添加剤」という句は、本明細書及び請求項で使用される場合、明細書又は請求項の特定の部分で特に記載されない他の潤滑油添加剤を意味する。例えば、他の潤滑油添加剤としては、限定されないが、抗摩耗添加剤、粘度向上剤又は変性剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、流動点降下剤、腐食抑制剤、金属不活性剤、シール適合性添加剤、抗発泡剤、抑制剤、抗さび添加剤、摩擦変性剤及びそれらの組合せが含まれ得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、潤滑油のCCSVを「制御すること」は、潤滑油が、SAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びCCSVの両方の必要条件を満たすように、CCSVを有意に増加、又は減少させないことを意味する。
【0021】
本開示に従って、燃料経済性及びエネルギー効率を改善するための新規潤滑油ブレンド戦略が提供される。特に、この潤滑油ブレンド戦略では、高品質、低粘度のグループII、グループIII及び/又はグループIVベースストックとブレンドされた純粋3.5cSt(Kv100)二量体化、水素化C14線形アルファオレフィンが使用される。この合成ワックスを少量(例えば、3~10重量%)使用することによって、CCSVなどの他の重要な低温性能領域を維持又は制御しながら、SAE5W-30、5W-20、5W-16又は10W-30エンジンオイルでブレンドされる際、ベースオイル粘度の>1cSt減少をもたらすことができる。さらに、潤滑油配合モデルを使用して、グループIIベースストックでブレンドされた従来のSAE5W-30オイル以上の実質的な燃料経済性削減が観察された。高品質グループIII及びIVベースストックの使用によって、酸化安定性、粘度指数及び堆積物制御における追加的な性能増加がもたらされる。
【0022】
また、本開示に従って、潤滑油として配合油を使用することによって、潤滑油によって潤滑されたエンジンにおける堆積物制御及び清浄度性能を維持又は改善しながら、燃料効率及びエネルギー効率を改善する方法が提供される。配合油は、ベースオイル混合物が主成分として潤滑油ベースストック及び微量成分として少なくとも1種のコベースストックを含んでなるベースオイル混合物を含んでなる。少なくとも1種のコベースストックは、潤滑油が、SAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させるために十分な量で存在する。匹敵する(相当する、同等の:comparable)ASTM D5293-15によって決定されたコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)及びASTM D4683-13によって決定された高温高剪断(HTHS)粘度を有する、コベースストック以外の微量成分を含有する潤滑油を使用して達成された燃料効率、エネルギー効率、堆積物制御及び清浄度性能と比較して、燃料効率及びエネルギー効率は改善され、そして堆積物制御及び清浄度性能は維持又は改善される。
【0023】
さらに、本開示に従って、ベースオイル混合物を含んでなる潤滑油が提供される。ベースオイル混合物は、主成分として潤滑油ベースストック及び微量成分として少なくとも1種のコベースストックを含んでなる。少なくとも1種のコベースストックは、潤滑油が、SAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させるために十分な量で存在する。少なくとも1種のコベースストックは、ASTM D445によって決定される100℃における約4cSt未満の動粘度(Kv100)を有する。少なくとも1種のコベースストックは、グループIVコベースストック、グループVコベースストック又はそれらの混合物を含んでなる。
【0024】
好ましくは、少なくとも1種のコベースストックは、C20~36ポリアルファオレフィン、C24~32ポリアルファオレフィン、C24~28ポリアルファオレフィン、又はそれらの混合物であり、且つ約1~約4の分岐点を有する。また、好ましくは、少なくとも1種のコベースストックは、C8、C10、C12、C14オレフィン又はそれらの混合物から誘導されるポリアルファオレフィンであり、且つ約1~約4の分岐点を有する。より好ましくは、少なくとも1種のコベースストックは、ASTM D445によって決定される100℃における約4cSt未満の動粘度(Kv100)を有する二量体化、水素化C14線形アルファオレフィンである。好ましくは、少なくとも1種のコベースストックは、パルミチン酸デシル、ココナッツ油及びC18二量体であってよい。
【0025】
本開示に従って、潤滑油ベースストックは、グループIIベースストック、グループIIIベースストック、グループIVベースストック、又はそれらの混合物を含んでなる。本開示の潤滑油は、好ましくは、SAE5W-16エンジンオイル、SAE5W-20エンジンオイル、SAE5W-30エンジンオイル、又はSAE10W-30エンジンオイルである。
【0026】
一実施形態において、潤滑油がASTM D5293-15によって決定される匹敵する(相当する、同等の:comparable)コールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度及びASTM D4683-13によって決定される高温高剪断(HTHS)粘度を有する場合、コベースストック以外の微量成分を含有するASTM D445によって決定される潤滑油を配合するために使用されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)と比較して、ASTM D445によって決定される潤滑油を配合するために使用されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)は減少する。
【0027】
好ましい実施形態において、ASTM D445によって決定される潤滑油を配合するために使用されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)は、約0.5cStよりも多く、好ましくは、約1cStよりも多く、より好ましくは、約2cStよりも多く、なおより好ましくは、約2.5cStよりも多く減少する。
【0028】
別の実施形態において、潤滑油がASTM D5293-15によって決定される匹敵するコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度及びASTM D4683-13によって決定される高温高剪断(HTHS)粘度を有する場合、コベースストック以外の微量成分を含有するASTM D5800によって決定される潤滑油のNoack揮発性と比較して、ASTM D5800によって決定される潤滑油のNoack揮発性は減少する。
【0029】
好ましい実施形態において、ASTM D5800によって決定される潤滑油のNoack揮発性は、約0.5~約2.5重量%減少する。
【0030】
本開示の潤滑油の粘度特性は、標準実施法に従って測定することができる。低い粘度は、現行の装置における潤滑油に対して有利となる可能性がある。ASTM D4683-13による低い高温高剪断(HTHS)粘度は、現行のエンジンにおける潤滑油の性能を示すことが可能である。
【0031】
ASTM D5293-15によって決定されるコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度試験は、指定の冷温においてエンジンを始動させるために要するエネルギーの量を評価するものであり;粘度グレードが低いほど、試験が実行される温度が低い。試験では、粘度グレードを決定するために使用されるcPでの値が割り当てられる。例えば、5W-30潤滑油を使用すると、-30℃でのそのCCSVは6600cP以下となることが可能であり、5Wグレードとなる。
【0032】
本開示の潤滑油は、ASTM D445によって決定される約2cSt~約12.5cStの100℃における動粘度(Kv100)、ASTM D5293-15によって決定される約1000cP~約6200cPの-35℃におけるコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度(0W SAEグレード)、又はASTM D5293-15によって決定される約1000cP~約6600cPの-30℃におけるコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度(5W SAEグレード)、又はASTM D5293-15によって決定される約1000cP~約7000cPの-25℃におけるコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度(10W SAEグレード)、及びASTM D4683-13によって決定される約3.5cP未満の高温高剪断(HTHS)粘度を有する。この潤滑油は、SAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たす。
【0033】
一実施形態において、本開示の潤滑油は、好ましくは、ASTM D445によって決定される約2cSt~約10cSt、より好ましくは、約2cSt~約8cSt、なおより好ましくは、約2cSt~約6cStの100℃における動粘度(Kv100)、及びASTM D4683-13によって決定される約2.5cP未満、より好ましくは、約2.25cP未満、なおより好ましくは、約2.0cP未満の高温高剪断(HTHS)粘度を有する。
【0034】
一実施形態において、本開示の潤滑油は、好ましくは、ASTM D5293-15によって決定される約1200cP~約6200cP、より好ましくは、約1400cP~約6200cP、なおより好ましくは、約1600cP~約6200cPの-35℃におけるコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度(0W SAEグレード)、ASTM D5293-15によって決定される約1200cP~約6600cP、より好ましくは、約1400cP~約6600cP、なおより好ましくは、約1600cP~約6600cPの-30℃におけるコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度(5W SAEグレード)、及びASTM D5293-15によって決定される約1200cP~約7000cP、より好ましくは、約1400cP~約7000cP、なおより好ましくは、約1600cP~約7000cPの-25℃におけるコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度(10W SAEグレード)を有する。
【0035】
本開示の例示的な潤滑油は、ASTM D2270によって決定される約80~約300、より好ましくは、約90~約200、なおより好ましくは、約100~約200の粘度指数(VI)を有する。
【0036】
本開示の潤滑油は、Noack揮発性試験ASTM D5800によって決定されるように、より低い揮発性を有する。特に、本開示の潤滑油は、1%~50%、又はより好ましくは、3%~50%、又はより好ましくは、4%~40%、又はさらにより好ましくは、5%~30%のNoackを有する。特に好ましい組成物は、5%~15%のNoackを有する。
【0037】
本開示の好ましい潤滑油は、ASTM D5800によって決定される25%以下、より好ましくは、20%以下、さらにより好ましくは、15%以下のNoack揮発性を有する。
【0038】
本開示の潤滑油は、MTM(ミニトラクションマシン)トラクション試験によって決定されるように、減少したトラクションを有する。トラクションは、参照流体との比較によって最も容易に評価され、この場合、適切な参照流体は、PAO2又はPAO4によって配合されたエンジンオイルである。したがって、本開示の潤滑油は、参照に対して5%のMTMトラクション減少、又はより好ましくは、参照に対して10%減少、又はより好ましくは、参照に対して20%減少、又はより好ましくは、参照に対して30%減少、又はより好ましくは、参照に対して40%減少を有することができる。
【0039】
本開示の合成ワックスを主要又は単独ベースストックとして使用することによって、ミニトラクションマシン(MTM)で測定されるように、トラクション係数の有意な改善が提供される。>20%のこの材料と配合される場合、SAE J300「5W」又は「0W」粘度グレードを満たすことはおそらく不可能であり、そのような流体は、SAE J300「W」粘度グレードが必要とされない、より高温での用途(例えば、レース用途、又は工業用途のためのウォームギヤー潤滑油)での有意なエネルギー効率増加をもたらすために使用することができる。
【0040】
一実施形態において、本開示の潤滑油は、MTM(ミニトラクションマシン)トラクション試験によって決定されるように、コベースストック以外の微量成分を含有する潤滑油のMTMトラクションと比較して、約5%より多いMTMトラクション減少を有する。
【0041】
本開示の潤滑油は、TEOST 33C堆積試験ASTM D6335で決定されるように、より低い堆積傾向を有する。特に、本開示の潤滑油は、30mg未満、又はより好ましくは、20mg未満、又はより好ましくは、15mg未満のTEOST 33Cを有することができる。
【0042】
一実施形態において、本開示の潤滑油は、乗用車エンジンオイル(PVEO)又は商用車エンジンオイル(CVEO)である。
【0043】
本開示は、低粘度及び低揮発性を特徴とする、エンジンオイルとして、及び他の用途において有用な潤滑油を提供する。潤滑油は、ブレンドされた時に以下の基準:を満たすオイル組成物が得られる第2のコベースストックと一緒に、(GTLを含む)グループII、グループIII及び又はグループIV(PAO)などの炭化水素ベース流体の主要部分を含む高品質ベースストックに基づくものである。オイル組成物は、KV100(オイル)のASTM D445によって決定される100℃における動粘度(「KV100」)、及びCCSV(オイル)のASTM 5293によって決定される所与の温度におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(「CCSV」)を有し;参照オイルは、それぞれ、KV100(参照)及びCCSV(参照)のKV100及びCCSVを有し、且つ次の条件(i)及び(ii)を満たす:(i)-20≦D(kv)=100×(KV100(オイル)-KV100(参照))/KV100(参照)≦40;及び(ii)1≦D(ccsv)=100×(CCSV(オイル)-CCSV(参照))/CCSV(参照)≦10000。第2のコベースストックに関するさらなる情報については、本明細書中に参照によって全体で組み込まれる2017年3月24日出願の米国仮特許出願第62/476,017号明細書(代理人審理予定表番号2017EM067)を参照のこと。
【0044】
4cStのKV100を有するPAO(PAO-4)は、第2のコベースストック成分の性能を評価するための有用な参照オイルである。本開示の限定されない例示的なコベースストックとしては、C20~36ポリアルファオレフィン、C24~32ポリアルファオレフィン、C24~28ポリアルファオレフィン、(本明細書に記載の通り、約1~約4つの分岐点を有するポリアルファオレフィン)、(パルミチン酸デシルなどの)線形(直線状又は鎖状:linear)モノエステル、(ココナッツ油などの)トリグリセリドの混合物、又はそれらの混合物が含まれる。潤滑油ベースストックは、典型的に約100~450℃の範囲の潤滑油沸点範囲において沸騰するいずれのオイルであることも可能である。本明細書及び請求項において、ベースオイル及びベースストックという用語は、互換的に使用される。
【0045】
潤滑油の粘度-温度関係は、特定の応用のために潤滑油を選択する際に考慮されなければならない重要な判定基準の1つである。粘度指数(VI)は、所与の温度範囲内のオイルの粘度の変化率を示す実験的無名数である。温度によって粘度の比較的大きい変化を示す液体は、低粘度指数を有すると記載される。例えば、低VIオイルは、高VIオイルよりも迅速に高温で希釈するであろう。通常、高VIオイルは、より高い温度においてより高い粘度を有するため、より望ましい。これは、より良好又はより厚い潤滑膜となり、且つ接触する機械要素のより良好な保護となる。
【0046】
別の態様において、オイル運転温度が減少すると、高VIオイルの粘度は低VIオイルの粘度ほど増加しないであろう。低VIオイルの過度の高い粘度が運転機器の効率を減少させるであろうため、これは有利である。したがって、高VI(HVI)オイルは、高温及び低温の両運転における性能利点を有する。VIは、ASTM D2270に従って決定される。VIは、ASTM D445を使用する40℃及び100℃において測定される動粘度と関連する。
【0047】
本開示の潤滑油は、改善された燃料効率及びエネルギー効率をもたらす。より低いHTHS粘度エンジンオイルは、一般に、より高いHTHS粘度製品に優れた燃料経済性を提供する。本開示の潤滑油に関してのこの利益は、Sequence VID Fuel Economy(ASTM D7589)エンジン試験において実証することができる。本開示の潤滑油は、堆積物制御及び清浄度性能の改善又は維持をもたらすことができる。本開示の潤滑油に関してのこの利益は、Sequence IIIGエンジン試験(ASTM D7320)において実証することができる。
【0048】
上記のプロセスによって形成される組成物を特徴づけるために利用することが可能な技術の例には、限定されないが、分析用ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴、熱重量分析(TGA)、誘導結合プラズマ質量分析、示差走査熱量測定(DSC)、揮発性及び粘度測定が含まれる。
【0049】
潤滑油ベースストック及びコベースストック
広範囲の潤滑油が当該技術分野において既知である。本開示において有用である潤滑油は、天然油及び合成油の両方である。天然及び合成油(又はそれらの混合物)を未精製、精製又は再精製の状態で使用することもできる(後者は再生利用又は再処理油としても既知である)。未精製油は、天然又は合成供給源から直接得られるものであり、且つ追加的な精製を行わずに使用される。これらには、乾留操作から直接得られる頁岩油、一次蒸留から直接得られる石油、及びエステル生成プロセスから直接得られるエステル油が含まれる。精製油は、少なくとも1つの潤滑油特性を改善するための1回以上の精製工程を受けることを除き、未精製油に関して議論された油に類似する。当業者は多くの精製プロセスに精通している。これらのプロセスには、溶媒抽出、二次蒸留、酸抽出、塩基抽出、ろ過及びパーコレーションが含まれる。得られた再精製油は、精製油に類似であるが、以前に使用されたことのある油を供給ストックとして使用する。
【0050】
グループI、II、III、IV及びVは、潤滑ベースオイルのガイドラインを作成するためにAmerican Petroleum Institute(API Publication 1509;www.API.org)によって開発及び定義された広範囲のベースオイルストックの分類である。グループIベースストックは、一般に、約80~120の粘度指数を有し、約0.03%より高い硫黄及び約90%未満の飽和を含有する。グループIIベースストックは、一般に、約80~120の粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄及び約90%以上の飽和を含有する。グループIIIストックは、一般に、約120より高い粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄及び約90%より高い飽和を含有する。グループIVは、ポリアルファオレフィン(PAO)を含む。グループVベースストックは、一般に、グループI~IVに含まれないベースストックを含む。以下の表に、これらの5つのグループのそれぞれの特性を要約する。
【0051】
【表1】
【0052】
天然油には、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、並びに鉱油が含まれる。好ましい熱酸化安定性を有する動物及び植物油を使用することができる。天然油の中で、鉱油が好ましい。鉱油は、それらの原油産地によって、例えば、それらがパラフィン系、ナフテン系又は混合パラフィン-ナフテン系であるかどうかによって大きく異なる。石炭又は頁岩から誘導される油も本開示において有用である。天然油は、それらの製造及び精製のために使用される方法によって、例えば、それらの蒸留範囲によって、及びそれらが直留であるか、又は分解されたか、水素化精製されたか、又は溶媒抽出されたかどうかによっても異なる。
【0053】
グループII及び/又はグループIII水素化処理又は水素化分解ベースストック、並びにポリアルファオレフィン、アルキル芳香族及び合成エステル、すなわち、グループIV及びグループVオイルも周知のベースストック油である。
【0054】
合成油には、炭化水素油が含まれる。炭化水素油には、重合及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー及びエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油が含まれる。ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストックは、一般に使用される合成炭化水素油である。例として、C8、C10、C12、C14又はそれらの混合物から誘導されるPAOが利用されてもよい。例えば、米国特許第4,956,122号明細書、同第4,827,064号明細書及び同第4,827,073号明細書を参照されたい。
【0055】
既知の材料であり、且つExxonMobil Chemical Company、Chevron Phillips Chemical Company、BP及び他などの供給元から商業的規模で一般に入手可能であるPAOの数平均分子量は、典型的に250~3,000の範囲であるが、PAOは約150cSt(100℃)までの粘度で製造されてもよい。PAOは、典型的に、アルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマー又はオリゴマーから構成され、これらには、限定されないが、C2~約C32アルファオレフィンが含まれ、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどのC8~約C16アルファオレフィンが好ましい。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセン及びポリ-1-ドデセン並びにそれらの混合物及び混合オレフィン誘導ポリオレフィンである。しかしながら、C12~C18の範囲のより高級なオレフィンの二量体が、十分低揮発性の低粘度ベースストックを供給するために使用されてもよい。粘度グレード及び出発オリゴマー次第で、PAOは、主に、1.5cSt~12cStの粘度範囲を有する、微量のより低級及び/又はより高級なオリゴマーによる出発オレフィンの二量体、三量体及び四量体であってもよい。特定の用途のPAO流体は、3cSt、3.4cSt及び/又は3.6cSt並びにそれらの組み合わせを含んでもよい。必要に応じて、1.5cSt~約150cSt以上の粘度範囲を有するPAO流体の混合物が使用されてもよい。他に明示されない限り、本明細書に引用される全ての粘度は100℃において測定される。
【0056】
PAO流体は、例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、又は三フッ化ホウ素と水との錯体、エタノール、プロパノール又はブタノールなどのアルコール、酢酸エステル又はプロピオン酸エチルなどのカルボン酸又はエステルを含むフリーデル-クラフツ触媒などの重合触媒の存在下でのアルファオレフィンの重合によって都合よく製造されてもよい。例えば、米国特許第4,149,178号明細書又は同第3,382,291号明細書によって開示された方法が本明細書において都合よく使用されてもよい。PAO合成についての他の説明は、米国特許第3,742,082号明細書、同第3,769,363号明細書、同第3,876,720号明細書、同第4,239,930号明細書、同第4,367,352号明細書、同第4,413,156号明細書、同第4,434,408号明細書、同第4,910,355号明細書、同第4,956,122号明細書及び同第5,068,487号明細書に見られる。C14~C18オレフィンの二量体は、米国特許第4,218,330号明細書に記載される。
【0057】
他の有用な潤滑性油ベースストックとしては、水素異性化ワックス状ストック(例えば、ガス油、スラックワックス、燃料水素化分解装置残留物などのワックス状ストック)、水素異性化フィッシャー-トロプシュワックス、気体-液体(GTL)ベースストック及びベースオイル、及びほかの異性化ワックス水素異性化ベースストック及びベースオイル、又はそれらの混合物を含んでなる異性化ワックスベースストック及びベースオイルが含まれる。フィッシャー-トロプシュワックスは、フィッシャー-トロプシュ合成の高沸点残留物であり、非常に低い硫黄含有量を有する高パラフィン系炭化水素である。そのようなベースストックの製造のために使用される水素化処理では、特別な潤滑油水素化分解(LHDC)触媒の1種などの非晶質水素化分解/水素異性化触媒、又は結晶質水素化分解/水素異性化触媒、好ましくは、ゼオライト系触媒が使用されてもよい。例えば、1つの有用な触媒は、その開示が全体として参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,075,269号明細書に記載のされるZSM-48である。水素化分解/水素異性化蒸留物及び水素化分解/水素異性化ワックスの製造方法は、例えば、米国特許第2,817,693号明細書、同第4,975,177号明細書、同第4,921,594号明細書及び同第4,897,178号明細書、並びに英国特許第1,429,494号明細書、同第1,350,257号明細書、同第1,440,230号明細書及び同第1,390,359号明細書に記載される。上記特許はそれぞれ、全体として参照によって本明細書に組み込まれる。特に好ましい方法は、参照によって本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第464546号明細書及び同第464547号明細書に記載される。フィッシャー-トロプシュワックス供給材料を使用する方法は、その開示が全体として参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,594,172号明細書及び同第4,943,672号明細書に記載される。
【0058】
気体-液体(GTL)ベースオイル、フィッシャー-トロプシュワックス誘導ベースオイル、及び他のワックス誘導水素異性化(異性化ワックス)ベースオイルは本開示において都合よく使用され得、且つ100℃において約2cSt~約50cSt、好ましくは、約2cSt~約30cSt、より好ましくは、約3cSt~約25cStの有用な動粘度、例えば、GTL4の場合、100℃において約4.0cSTの動粘度及び約141の粘度指数を有し得る。これらの気体-液体(GTL)ベースオイル、フィッシャー-トロプシュワックス誘導ベースオイル、及び他のワックス誘導水素異性化ベースオイルは、約-20℃以下の有用な流動点を有し得、及びいくつかの条件下においては、約-25℃以下の都合のよい流動点を有し得るが、有用な流動点は約-30℃~約-40℃以下である。気体-液体(GTL)ベースオイル、フィッシャー-トロプシュワックス誘導ベースオイル、及びワックス誘導水素異性化ベースオイルの有用な組成は、例えば、全体として参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,080,301号明細書、同第6,090,989号明細書及び同第6,165,949号明細書に記載される。
【0059】
ヒドロカルビル芳香族は、ベースオイル又はベースオイル成分として使用され得、且つベンゼノイド部分又はナフテノイド部分又はそれらの誘導体などの芳香族部分から誘導されるその重量の少なくとも約5%を含有するいずれかのヒドロカルビル分子であることも可能である。これらのヒドロカルビル芳香族には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルビフェニル、アルキルジフェニルオキシド、アルキルナフトール、アルキルジフェニルスルフィド、アルキル化ビスフェノールA、アルキル化チオジフェノールなどが含まれる。芳香族は、モノアルキル化、ジアルキル化、ポリアルキル化などされ得る。芳香族は、単官能化又は多官能化され得る。ヒドロカルビル基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基及び他の関連ヒドロカルビル基の混合物から構成されることも可能である。ヒドロカルビル基は、約C6~約C60の範囲であり得るが、約C8~約C20の範囲がしばしば好ましい。ヒドロカルビル基の混合物がしばしば好ましく、及びそのような置換基の3個までが存在してもよい。ヒドロカルビル基は、任意選択的に、硫黄、酸素及び/又は窒素含有置換基を含有し得る。芳香族基は、分子の少なくとも約5%が上記種類の芳香族部分から構成されることを条件として、天然(石油)供給源から誘導されることも可能である。ヒドロカルビル芳香族成分に関して、約2cSt~約50cStの100℃における粘度が好ましく、約3cSt~約20cStの粘度がより好ましい。一実施形態において、アルキル基が主に1-ヘキサデセンから構成されるアルキルナフタレンが使用される。芳香族の他のアルキレートが有利に使用されることも可能である。例えば、ナフタレン又はメチルナフタレンは、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセン又はより高級なオレフィンなどのオレフィン、同様のオレフィンの混合物などによってアルキル化し得る。アルキル化ナフタレン及び類似体は、環構造のアルファ及びベータ炭素位上のアルキル基の異性体分布を有する組成物を含んでなり得る。ナフタレン環のアルファ及びベータ位上の基の分布は、100:1~1:100、より多くは50:1~1:50の範囲であり得る。潤滑油組成物中のヒドロカルビル芳香族の有用な濃度は、用途次第で、約2~約25%、好ましくは約4%~約20%、より好ましくは約4%~約15%であり得る。
【0060】
本開示のヒドロカルビル芳香族などのアルキル化芳香族は、芳香族化合物の周知のフリーデル-クラフツアルキル化法によって製造されてもよい。Friedel-Crafts and Related Reactions,Olah,G.A.(ed.),Inter-science Publishers,New York,1963を参照されたい。例えば、ベンゼン又はナフタレンなどの芳香族化合物は、フリーデル-クラフツ触媒の存在下で、オレフィン、ハロゲン化アルキル又はアルコールによってアルキル化される。Friedel-Crafts and Related Reactions,Vol.2,part 1,chapters 14,17及び18、Olah,G.A.(ed.),Inter-science Publishers,New York,1964を参照されたい。多くの均質又は不均質固体触媒が当業者に知られている。触媒の選択は、出発材料の反応性及び製品の要求品質次第である。例えば、AlCl3、BF3又はHFなどの強酸が使用されてもよい。いくつかの場合、FeCl3又はSnCl4などのより穏やかな触媒が好ましい。より新しいアルキル化技術では、ゼオライト又は固体超酸が使用される。
【0061】
エステルは有用なベースストックを構成する。付加的な溶解作用及びシール適合性特徴は、モノアルカノールとの二塩基酸のエステル及びモノカルボン酸のポリオールエステルなどのエステルの使用によって確保され得る。前者の種類のエステルには、例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸などのジカルボン酸と、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコールなどの様々なアルコールとのエステルが含まれる。これらの種類のエステルの具体的な例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシルなどが含まれる。
【0062】
特に有用な合成エステルは、1種以上の多価アルコール、好ましくは、ヒンダードポリオール(ネオペンチルポリオール、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール及びジペンタエリトリトールなど)を、少なくとも約4個の炭素原子を含有するアルカノン酸、好ましくは、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸及びベヘン酸を含む飽和直鎖脂肪酸、若しくは相当する分枝鎖脂肪酸、若しくはオレイン酸などの不飽和脂肪酸、又はこれらの材料のいずれかの混合物などのC5~C30酸と反応させることによって得られるものである。
【0063】
適切な合成エステル成分には、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール及び/又はジペンタエリトリトールと、約5~約10個の炭素原子を含有する1種以上のモノカルボン酸とのエステルが含まれる。これらのエステルは商業的に広く入手可能であり、例えば、ExxonMobil Chemical CompanyのMobil P-41及びP-51エステルである。
【0064】
ココナツ、ヤシ、ナタネ、ダイズ、ヒマワリなどの再生可能な材料から誘導されるエステルも有用である。これらのエステルは、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、複合エステル又はそれらの混合物であってもよい。これらのエステルは商業的に広く入手可能であり、例えば、ExxonMobil Chemical CompanyのMobil P-51エステルである。
【0065】
再生可能なエステルを含有するエンジンオイル配合物は本開示に含まれる。そのような配合物に関して、エステルの再生可能な含有量は、典型的に、約70重量パーセントより多く、好ましくは約80重量パーセントより多く、及び最も好ましくは約90重量パーセントより多い。
【0066】
潤滑粘度の他の有用な流体としては、高性能の潤滑特性を提供するために、好ましくは触媒によって処理された、又は合成された非従来型又は非慣例型ベースストックが含まれる。
【0067】
非従来型又は非慣例型ベースストック/ベースオイルとしては、1種以上の気体-液体(GLT)材料から誘導されたベースストックの混合物、並びに天然ワックス若しくはワックス状供給材料、鉱油及び若しくは非鉱油ワックス状供給ストック、例えば、スラックワックス、天然ワックス、及びワックス状ストック、例えば、ガス油、ワックス状燃料水素化分解装置残留物、ワックス状ラフィネート、水素化分解生成物、熱分解生成物若しくは他の鉱物、鉱油、又は非石油誘導ワックス状材料、例えば、石炭液化から受け取られたワックス状材料若しくは頁岩油から誘導された異性化/イソ脱ロウ化ベースストック、及びそのようなベースストックの混合物の1種以上が含まれる。
【0068】
GTL材料は、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレン及びブチンなどの供給ストックとしての気体状炭素含有化合物、水素含有化合物及び/又は要素からの1種以上の合成、組み合わせ、変換、転位、及び/又は分解/脱構築プロセスによって誘導される材料である。GTLベースストック及び/又はベースオイルは、一般に、炭化水素、例えば、それら自体が供給ストックとしてより単純な気体状炭素含有化合物、水素含有化合物及び/又は他の要素から誘導されるワックス状合成炭化水素から誘導される潤滑粘度のGTL材料である。GTLベースストック及び/又はベースオイルには、潤滑油沸騰範囲で沸騰する油であって、(1)合成されたGTL材料から、例えば、蒸留などによって分離/分留され、その後、流動点が減少した/低流動点の潤滑油を製造するために、触媒脱ロウプロセス又は溶媒脱ロウプロセスの一方又は両方を含む最終ワックス処理工程を受けるもの;(2)例えば、水素脱ロウ又は水素異性化された触媒及び/又は溶媒脱ロウされた合成ワックス又はワックス状炭化水素を含んでなる合成異性化ワックス;(3)水素脱ロウ又は水素異性化された触媒及び/又は溶媒脱ロウされたフィッシャー-トロプシュ(F-T)材料(すなわち、炭化水素、ワックス状炭化水素、ワックス及び可能な類似のオキシジェネート);好ましくは、水素脱ロウ又は水素異性化され/続いて、触媒及び/又は溶媒脱ロウされたF-Tワックス状炭化水素、或いは水素脱ロウ又は水素異性化され/続いて、触媒(又は溶媒)脱ロウされたF-Tワックス、又はそれらの混合物が含まれる。
【0069】
GTL材料から誘導されるGTLベースストック及び/又はベースオイル、特に、水素脱ロウ又は水素異性化され/続いて、触媒及び/又は溶媒脱ロウされたワックス又はワックス状供給材料、好ましくは、F-T材料誘導ベースストック及び/又はベースオイルは、典型的に、約2mm2/秒~約50mm2/秒の100℃における動粘度を有することを特徴とする(ASTM D445)。それらは、典型的に、約5℃~約40℃以下の流動点を有することをさらに特徴とする(ASTM D97)。またそれらは、典型的に、約80~約140以上の粘度指数を有することを特徴とする(ASTM D2270)。
【0070】
加えて、GTLベースストック及び/又はベースオイルは、典型的に、高パラフィン(>90%飽和)であり、且つ非環式イソパラフィンと組み合わせて、単環式パラフィン及び多環式パラフィンの混合物を含有していてもよい。そのような組み合わせにおけるナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有量の比率は、使用される触媒及び温度によって変動する。さらに、GTLベースストック及び/又はベースオイルは、典型的に、非常に低い硫黄及び窒素含有量を有し、一般に、これらの元素をそれぞれ、約10ppm未満、より典型的に約5ppm未満含有する。F-T材料、特にF-Tワックスから誘導されたGTLベースストック及び/又はベースオイルの硫黄及び窒素含有量は本質的にゼロである。加えて、リン及び芳香族がないことによって、この材料は特に、低SAP製品の配合に適切である。
【0071】
GLTベースストック及び/又はベースオイル及び/又はワックス異性体ベースストック及び/又はベースオイルという用語は、製造プロセスで回収された広い粘度範囲のそのような材料の個々のフラクション、そのようなフラクションの2つ以上の混合物、並びに標的の動粘度を示すブレンドを製造するための低粘度フラクションの1つ又は2つ以上と、高粘度フラクションの1つ又は2つ以上との混合物を包括するものとして理解される。
【0072】
GLTベースストック及び/又はベースオイルが誘導されるGLT材料は、好ましくは、FT材料(すなわち、炭化水素、ワックス状炭化水素、ワックス)である。
【0073】
本開示において有用な配合された潤滑油で使用するためのベースオイルは、それらの優れた揮発性、安定性、粘性測定及び清浄度特性のため、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV及びグループV油及びそれらの混合物、好ましくは、APIグループII、グループIII、グループIV及びグループV油及びそれらの混合物、より好ましくは、グループIII~グループVベースオイルに相当する様々な油のいずれかである。配合された潤滑油製品中にブレンドするために添加剤を希釈するために使用される量などの少量のグループIストックは、許容可能であるが、最少に保持されるべきであり、すなわち、「受け取られたまま」の基準で使用される添加剤用の希釈剤/キャリア油としてのそれらの使用に関連するのみの量である。グループIIストックに関しても、グループIIストックが、そのストック、すなわち、100<VI<120の範囲の粘度指数を有するグループIIストックと関連する、より高品質の範囲にあることが好ましい。
【0074】
本発明の潤滑油のベースストック成分は、典型的に、全組成の1~99重量%(本明細書に明らかにされる全ての割合及びパーセントは、他に記載されない限り重量による)、より好ましくは、10~99重量%、又はより好ましくは、15~80%の範囲、又はより好ましくは、20~70%、又はより好ましくは、25~60%、又はより好ましくは、30~50%の範囲であろう。
【0075】
コベースストック成分
本開示の潤滑油中で有用な例示的なコベースストックとしては、例えば、グループIVコベースストック、グループVコベースストック、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0076】
本開示の潤滑油中で有用な好ましいコベースストックとしては、例えば、C20~36ポリアルファオレフィン、C24~32ポリアルファオレフィン、C24~28ポリアルファオレフィン、又はそれらの混合物であり、且つ約1~4つの分岐点を有するものが含まれる。
【0077】
本開示の潤滑油中で有用な他の好ましいコベースストックとしては、例えば、C8、C10、C12、C14オレフィン、又はそれらの混合物であり、且つ約1~4つの分岐点を有するものから誘導されるポリアルファオレフィンが含まれる。
【0078】
本開示の潤滑油中で有用なより好ましいコベースストックとしては、例えば、ASTM D445によって決定される約4cSt未満の100℃における動粘度(Kv100)を有する二量体化され、水素化されたC14線形アルファオレフィンが含まれる。
【0079】
本開示の潤滑油中で有用なコベースストックは、ASTM D445によって決定される約6.2cSt未満、又は6.0cSt未満、又は5.5cSt未満の100℃における動粘度(Kv100)、好ましくは、約1cSt~約5cSt、より好ましくは、約2cSt~約4cStの100℃における動粘度(Kv100)を有する。
【0080】
ポリアルファオレフィン(PAO)コベースストックは、本開示において使用するために好ましいコベースストックである。ポリアルファオレフィン(PAO)ベースストックが本開示において使用されてもよい。一般的なPAOは、典型的に、限定されないが、C2~約C36アルファオレフィンを含むポリアルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマー又はオリゴマーから構成され、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセンなどのC8~約C16アルファオレフィンが好ましい。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセン、ポリ-1-ドデセン、ポリ-1-テトラデセン及びそれらの混合物、並びに混合オレフィン誘導ポリオレフィンである。
【0081】
PAO流体は、例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、又は三フッ化ホウ素の水との複合体を含むフリーデル-クラフツ(Friedel-Crafts)触媒、エタノール、プロパノール又はブタノールなどのアルコール、カルボン酸又は酢酸エチル若しくはプロピオン酸エチルなどのエステルなどの重合触媒の存在下におけるアルファオレフィンの1種又は混合物の重合によって都合よく製造され得る。例えば、米国特許第4,149,178号明細書又は米国特許第3,382,291号明細書によって開示された方法は本明細書において都合よく使用され得る。PAO合成の他の記載は、米国特許第3,742,082号明細書;同第3,769,363号明細書;同第3,876,720号明細書;同第4,239,930号明細書;同第4,367,352号明細書;同第4,413,156号明細書;同第4,434,408号明細書;同第4,910,355号明細書;同第4,956,122号明細書;及び同第5,068,487号明細書に見出される。C14~C18オレフィンの二量体は、米国特許第4,218,330号明細書に記載される。本開示において有用なPAOは、ASTM D445によって決定される約1~約4cStの100℃における動粘度を有し得る。本開示の目的に関して、PAOは、好ましくは、ASTM D445によって決定される約4cSt未満の100℃における動粘度(Kv100)、好ましくは、約1cSt~約4cSt、より好ましくは、約2cSt~約4cStの100℃における動粘度(Kv100)を有する。PAOは、しばしば、100℃におけるそれらのおよその動粘度を参照することによって識別される。例えば、PAO4は、100℃においておよそ4cStの動粘度を有するPAOを参照する。
【0082】
本開示において有用なPAOは、メタロセン触媒反応によっても製造可能である。メタロセン触媒によるPAO(mPAO)は、少なくとも2種以上の異なるアルフェオレフィンから製造されるコポリマー、又はメタロセン触媒系を利用して単一アルファオレフィン供給原料から製造されるホモポリマーであることが可能である。
【0083】
本開示のPAOコベースストックを調製するために有用な例示的なポリアルファオレフィンとしては、例えば、mPAO二量体、三量体、四量体、より高等なオリゴマーなどが含まれる。
【0084】
一実施形態において、mPAO二量体は、メタロセン又は末端二重結合を有する他のシングルサイト触媒から調製されるいずれの二量体であることも可能である。二量体は、1-デセン、1-オクテン、1-ドデセン、1-ヘキセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、又はアルファオレフィンの組合せからであることが可能である。
【0085】
メタロセン誘導生成物は、メタロセンオリゴマー化触媒を使用してアルファオレフィン供給原料のオリゴマー化によって製造される。この初期オリゴマー化ステップで使用されるアルファオレフィン供給原料は、典型的に、4~24個の炭素原子、通常、6~20個、好ましくは、8~14個の炭素原子のアルファオレフィンモノマーである。例示的なアルファオレフィン供給原料としては、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセンなどが含まれる。線形アルファオレフィンと同一炭素数を有するオレフィンが好ましいが、末端二重結合から少なくとも2つ離れた炭素においてアルキル置換基を含有する分枝鎖オレフィンを使用することも可能である。
【0086】
メタロセン触媒を使用するオリゴマー化ステップは、選択されたアルファオレフィン供給原料及びメタロセン触媒に適切な条件下で実行することができる。好ましいメタロセン触媒によるアルファオレフィンオリゴマー化プロセスは、全体として参照によって本明細書に組み込まれ、かつ供給原料、メタロセン触媒、プロセス条件及び生成物の特徴決定の詳細に関して参照される国際公開第2007/011973号パンフレットに記載される。
【0087】
本開示のプロセスにおける供給原料として有用な二量体は、少なくとも1つの炭素-炭素不飽和二重結合を有する。不飽和は、通常、メタロセンプロセスの非異性化重合機構特徴の結果として、二量体を構成する2つのモノマー単位の分岐点のほぼ中央に位置する。初期のメタロセン重合ステップで単一の1-オレフィン供給原料を使用してアルファオレフィンホモポリマーを製造する場合、不飽和は中央に位置するであろうが、2つの1-オレフィンコモノマーが使用されてメタロセンコポリマーが形成される場合、二重結合の位置は、使用される2つのコモノマーの鎖長に従って中心から離れて移動し得る。いずれにしても、この二重結合は、1,2-置換内部、ビニル又はビニリデンの特徴である。末端ビニリデン基は、式RaRbC=CH2によって表されて、式がRaHC=CH2である場合、ビニルと呼ばれる。不飽和の量は、ASTM D1159又は同等の方法による臭素価測定によって、或いはプロトン又は炭素13NMRに従って、定量的に測定することができる。プロトンNMR分光分析は、オレフィン不飽和のタイプを識別して、そして定量化することもできる。
【0088】
使用可能な例示的なオレフィンとしては、例えば、α-オレフィン、内部オレフィン、非水素化ポリ-α-オレフィン、エチレンα-オレフィンコポリマー、非水素化ポリイソブチレン、末端二重結合がマクロマーを含有するオレフィンなどが含まれる。
【0089】
メタロセン触媒は、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、或いはN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート又は他の同等の非配位アニオンなどの非配位アニオンによって活性化又は促進される、単純メタロセン、置換メタロセン、又は架橋メタロセン触媒であることが可能である。mPAO及びメタロセン触媒反応を使用するmPAOの製造方法は、国際公開第2007/011832号パンフレット及び米国特許出願公開第2009/0036725号明細書に記載される。
【0090】
コポリマーmPAO組成物は、C20~C36の範囲、好ましくは、C24~C32の範囲、より好ましくは、C24~C28の範囲の少なくとも2種のアルファオレフィンから製造され、且つモノマーがポリマー中にランダムに分散される。平均炭素数が少なくとも4.1であることが好ましい。有利に、エチレン及びプロピレンは、供給原料中に存在する場合、個々に50重量%未満の量で、又は好ましくは、組み合わせて50重量%未満の量で存在する。コポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマー、又は適切な立体規則性の他のいずれかの形態であることが可能である。
【0091】
mPAOは、C20~C36の範囲の線形アルファオレフィンから選択される少なくとも2種から最高26種までの異なる線形アルファオレフィンを含んでなる混合供給原料の線形アルファオレフィン(LAO)から製造することも可能である。混合供給原料LAOは、例えば、アルミニウム触媒又はメタロセン触媒を使用するエチレン成長プロセスから得ることができる。成長オレフィンは、主として、C24~C32範囲のLAOを含んでなる。他のプロセスからのLAOも使用することができる。
【0092】
ホモポリマーmPAO組成物は、C20~C36の範囲、好ましくは、C24~C32の範囲、最も好ましくは、C24~C28の範囲のアルファオレフィンから選択される単一アルファオレフィンから製造することができる。ホモポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマー、又は適切な立体規則性の他のいずれかの形態であることが可能である。立体規則性は、選択された重合触媒及び重合反応条件によって、或いは選択された水素化条件によって慎重に調整することができる。
【0093】
アルファオレフィンは、従来のLAO製造設備から、又は製油所からのいずれの成分からも選択されることが可能である。それはホモポリマーを製造するために単独で使用可能であるか、或いはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテンなどを含む製油所若しくは化学プラントから入手可能な別のLAOと、又は専用の製造設備から製造された1-ヘキセン又は1-オクテンと一緒に使用可能である。アルファオレフィンは、(米国特許第5,382,739号明細書に報告される)フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)合成から製造されたアルファオレフィンから選択可能である。例えば、ホモポリマーを製造するためにC24~C28アルファオレフィン、より好ましくは、線形アルファオレフィンが適切である。コポリマーを製造するためにC4-及びC14-LAO、C6-及びC16-LAO、C8-、C10-、C12-LAO、又はC8-及びC14-LAO、C6-、C10-、C14-LAO、C4-及びC12-LAOなどの他の組合せが適切である。
【0094】
潤滑油成分中での使用のため、又は官能性流体として適切な液体生成物を提供するために、C3~C16のLAOから選択されるLAOの混合物、又はC8~C14のLAOから選択される単一LAOを含んでなる供給原料をオリゴマー化条件下で活性メタロセン触媒と接触させる。C8~C14範囲の少なくとも2種のアルファオレフィンから製造され、且つポリマー中にランダムに分散したモノマーを有するコポリマー組成物も包含される。「少なくとも2種のアルファオレフィン」という句は、「少なくとも2種の異なるアルファオレフィン」を意味する(そして同様に、「少なくとも3種のアルファオレフィン」は、「少なくとも3種の異なるアルファオレフィン」を意味する)ものとして理解されるであろう。
【0095】
得られる生成物は、少なくとも2種のアルファオレフィンを含んでなる本質的にランダムな液体コポリマーである。「本質的にランダム」とは、当業者が生成物をランダムコポリマーであると考えることを意味する。同様に、「液体」という用語は、周囲温度及び圧力などの温度及び圧力の通常の条件下で液体を意味するものとして当業者に理解されるであろう。
【0096】
ポリアルファオレフィンは、好ましくは、ASTM D1159によって測定される1.8以下、好ましくは、1.7以下、好ましくは、1.6以下、好ましくは、1.5以下、好ましくは、1.4以下、好ましくは、1.3以下、好ましくは、1.2以下、好ましくは、1.1以下、好ましくは、1.0以下、好ましくは、0.5以下、好ましくは、0.1以下の臭素価を有する。必要であれば、ポリアルファオレフィンは低い臭素価を達成するために水素化されることが可能である。
【0097】
本明細書に記載のいずれのmポリアルファオレフィン(mPAO)も、100,000以下、好ましくは、100~80,000、好ましくは、250~60,000、好ましくは、280~50,000、好ましくは、336~40,000g/モルのMw(重量平均分子量)を有し得る。
【0098】
本明細書に記載のいずれのmポリアルファオレフィン(mPAO)も、50,000以下、好ましくは、200~40,000、好ましくは、250~30,000、好ましくは、500~20,000g/モルのMn(数平均分子量)を有し得る。
【0099】
本明細書に記載のいずれのmポリアルファオレフィン(mPAO)も、1より大きく、且つ5未満、好ましくは、4未満、好ましくは、3未満、好ましくは、2.5未満の分子量分布(MWD-Mw/Mn)を有し得る。mPAOのMWDは常に流体粘度の関数である。或いは、本明細書に記載のいずれのポリアルファオレフィンも、流体粘度次第で、1~2.5、或いは1~3.5のMw/Mnを有し得る。
【0100】
重量平均Mw対数平均Mnの比率(=Mw/Mn)として定義される分子量分布(MWD)は、(Ferdinand Rodrigues,McGraw-Hill Book,1970による)、「Principles of Polymer Systems」の第115~144頁、第6章の「The Molecular Weight of Polymers」に記載されるように、ポリスチレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。GPC溶媒はHPLCグレードテトラヒドロフランであり、阻害されず、30℃のカラム温度、1ml/分のフローレート、1重量%の試料濃度を用い、且つカラムセットは、Phenogel 500A,Linear,10E6Aである。
【0101】
本明細書に記載のいずれのm-ポリアルファオレフィン(mPAO)も、実質的に少量部分の分子量分布のハイエンド尾部を有し得る。好ましくは、mPAOは、5.0重量%以下の45,000ダルトンより高い分子量を有するポリマーを有する。さらに、或いは代わりに、45,000ドルトンより高い分子量を有するmPAOの量は、1.5重量%以下、又は0.10重量%以下である。さらに、或いは代わりに、60,000ドルトンより高い分子量を有するmPAOの量は、0.5重量%以下、又は0.20重量%以下、又は0.1重量%以下である。45,000及び60,000の分子量の質量フラクションは、上記の通り、GPCによって決定することができる。
【0102】
本明細書に記載のいずれのmPAOも、(ASTM D97によって測定される)0℃未満、好ましくは、-10℃未満、好ましくは、-20℃未満、好ましくは、-25℃未満、好ましくは、-30℃未満、好ましくは、-35℃未満、好ましくは、-50℃未満、好ましくは、-10℃~-80℃、好ましくは、-15℃~-70℃の流動点を有し得る。
【0103】
メタロセン触媒反応を使用して製造されたmポリアルファオレフィン(mPAO)は、約1~約4cStの100℃における動粘度を有し得る。本開示の目的に関して、mPAOは、好ましくは、ASTM D445によって決定される約4cSt未満の100℃における動粘度、好ましくは、約1cSt~約4cStの100℃における動粘度、より好ましくは、約2cSt~約4cStの100℃における動粘度を有する。
【0104】
コベースストック成分は、好ましくは、潤滑油が、SAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定される潤滑油を配合するために使用されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させるために十分な量で存在する。コベースストック成分は、本開示の潤滑油中の主要ベースストックとして存在することができる。したがって、コベースストック成分は、約1~約99重量%、好ましくは、約5~約99重量%、より好ましくは、約10~約99重量%、又はより好ましくは、約40~約90重量%、又はより好ましくは、約50~約80重量%、又はより好ましくは、約60~約80重量%の量で存在することができる。
【0105】
コベースストックは、好ましくは、本開示の潤滑油の微量成分として存在する。したがって、本潤滑油のコベースストック成分は、典型的に、1~50重量%、又はより好ましくは、2~20重量%、又はより好ましくは、2~15重量%、又はより好ましくは、3~10重量%で存在するであろう。
【0106】
潤滑油添加剤
本開示において有用な配合潤滑油は、限定されないが、分散剤、清浄剤、腐食抑制剤、さび抑制剤、金属不活性化剤、抗摩耗添加剤及び/又は極圧添加剤、抗焼付剤、ワックス変性剤、粘度指数向上剤、粘度変性剤、脱水添加剤、シール適合性剤、他の摩擦変性剤、潤滑剤、抗汚染剤、発色剤、消泡剤、解乳化剤、乳化剤、高密度化剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤及び他を含む、1種以上の一般に使用される潤滑油性能添加剤を追加的に含有していてもよい。多くの一般に使用される添加剤に関しては、KlamannのLubricants and Related Products,Verlag Chemie,Deerfield Beach,FL;ISBN 0 89573 177 0を参照されたい。Noyes Data Corporation of Parkridge,NJ(1973)によって出版されたM.W.Ranney著「Lubricant Additives」も参照され、また全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,704,930号明細書も参照されたい。これらの添加剤は、5重量%~50重量%の範囲であってよい様々な量の希釈油とともに一般に送達される。
【0107】
下記の全ての添加剤は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。添加剤に関する全処理レートは、1~30%、又はより好ましくは、2~25%、又はより好ましくは、3~20%、又はより好ましくは、4~15%、又はより好ましくは、5~10%である。特に好ましい組成物は、15~20%の添加剤レベルを有する。
【0108】
本開示で有用な添加剤は、潤滑油中に可溶性である必要はない。油中に不溶性の添加剤は、本開示の潤滑油中で分散されることが可能である。
【0109】
潤滑剤組成物中で本開示と組み合わせて使用される性能添加剤の種類及び量は、例として本明細書に示される実施形態によって限定されない。
【0110】
分散剤
エンジン運転の間、油不溶性の酸化副産物が生じる。分散剤は、これらの副産物を溶液中に保持することを促進し、したがって、金属表面上でのそれらの堆積が低減する。潤滑油の配合物中で使用される分散剤は、本質的に無灰型又は灰分形成型であってよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に実質的に灰分を形成しない有機材料である。例えば、非金属含有又はホウ酸化された金属を含まない分散剤が無灰であると思われる。対照的に、上記の金属含有清浄剤は燃焼時に灰分を形成する。
【0111】
適切な分散剤は、典型的に、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を含有する。極性基は、典型的に、窒素、酸素又はリンの少なくとも1種の元素を含有する。典型的な炭化水素鎖は、50~400個の炭素原子を含有する。
【0112】
分散剤の特に有用な種類は、典型的に長鎖ヒドロカルビル置換コハク酸化合物、通常、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とポリヒドロキシ又はポリアミノ化合物との反応によって製造される(ポリ)アルキルコハク酸誘導体である。油中での溶解性を与える分子の親油性部分を構成する長鎖ヒドロカルビル基は、通常、ポリイソブチレン基である。この種類の分散剤の多くの例は、商業的に及び文献において周知である。そのような分散剤を記載する代表的な米国特許は、米国特許第3,172,892号明細書、同第3,2145,707号明細書、同第3,219,666号明細書、同第3,316,177号明細書、同第3,341,542号明細書、同第3,444,170号明細書、同第3,454,607号明細書、同第3,541,012号明細書、同第3,630,904号明細書、同第3,632,511号明細書、同第3,787,374号明細書及び同第4,234,435号明細書である。他の種類の分散剤は、米国特許第3,036,003号明細書、同第3,200,107号明細書、同第3,254,025号明細書、同第3,275,554号明細書、同第3,438,757号明細書、同第3,454,555号明細書、同第3,565,804号明細書、同第3,413,347号明細書、同第3,697,574号明細書、同第3,725,277号明細書、同第3,725,480号明細書、同第3,726,882号明細書、同第4,454,059号明細書、同第3,329,658号明細書、同第3,449,250号明細書、同第3,519,565号明細書、同第3,666,730号明細書、同第3,687,849号明細書、同第3,702,300号明細書、同第4,100,082号明細書、同第5,705,458号明細書に記載される。分散剤のさらなる記載は、例えば、この目的のために参照される欧州特許出願公開第471 071号明細書に見出され得る。
【0113】
ヒドロカルビル置換コハク酸及びヒドロカルビル置換無水コハク酸誘導体は、有用な分散剤である。特に、炭化水素置換期中に好ましくは少なくとも50個の炭素原子を有する炭化水素置換コハク酸化合物と、少なくとも1当量のアルキレンアミンとの反応によって調製されたスクシンイミド、コハク酸エステル又はコハク酸エステルアミドは特に有用である。
【0114】
スクシンイミドは、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とアミンとの縮合反応によって形成される。モル比は、ポリアミド次第で変動可能である。例えば、ヒドロカルビル置換無水コハク酸対TEPAのモル比は、約1:1~約5:1で変動可能である。代表的な例は、米国特許第,087,936号明細書、同第3,172,892号明細書、同第3,219,666号明細書、同第3,272,746号明細書、同第3,322,670号明細書及び同第3,652,616号明細書、同第3,948,800号明細書、並びにカナダ国特許第1,094,044号明細書に示される。
【0115】
コハク酸エステルは、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とアルコール又はポリオールとの縮合反応によって形成される。モル比は、使用されるアルコール又はポリオール次第で変動可能である。例えば、ヒドロカルビル置換無水コハク酸及びペンタエリスリトールの縮合物は有用な分散剤である。
【0116】
コハク酸エステルアミドは、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応によって形成される。例えば、適切なアルカノールアミンとしては、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミン及びポリエチレンポリアミンなどのポリアルケニルポリアミンが含まれる。一例は、プロポキシル化ヘキサメチレンジアミンである。代表例は、米国特許第4,426,305号明細書に示される。
【0117】
前段で使用されるヒドロカルビル置換無水コハク酸の分子量は、典型的に800~2,500以上の範囲である。上記生成物は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、オレイン酸などのカルボン酸などの種々の試薬とその後反応させ得る。上記生成物は、一般に分散剤反応生成物1モルあたり約0.1~約5モルのホウ素を有するホウ酸化分散剤を形成するために、ホウ酸、ホウ酸エステル又は高度にホウ酸化された分散剤などのホウ素化合物と、その後反応させることも可能である。
【0118】
マンニッヒ塩基分散剤は、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド及びアミンの反応から製造される。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,767,551号明細書を参照されたい。オレイン酸及びスルホン酸などのプロセス助剤及び触媒も反応混合物の一部であり得る。アルキルフェノールの分子量は、800~2,500の範囲である。代表例は、米国特許第3,697,574号明細書、同第3,703,536号明細書、同第3,704,308号明細書、同第3,751,365号明細書、同第3,756,953号明細書、同第3,798,165号明細書及び同第3,803,039号明細書に示される。
【0119】
本開示において有用な典型的な高分子量脂肪酸変性マンニッヒ縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族又はHNR基含有反応物から調製することができる。
【0120】
ヒドロカルビル置換アミン無灰分散剤添加剤は当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,275,554号明細書、同第3,438,757号明細書、同第3,565,804号明細書、同第3,755,433号明細書、同第3,822,209号明細書及び同第5,084,197号明細書を参照されたい。
【0121】
好ましい分散剤としては、モノスクシンイミド、ビススクシンイミド及び/又はモノ及びビススクシンイミドの混合物からのそれらの誘導体を含む、ホウ酸化及び非ホウ酸化スクシンイミドが含まれ、ヒドロカルビルスクシンイミドは、約500~約5000、又は約1000~約3000、又は約1000~約2000のMnを有するポリイソブチレンなどのヒドロカルビレン基、又はそのようなヒドロカルビレン基の混合物から誘導され、これはしばしば高末端ビニル基を有する。他の好ましい分散剤としては、コハク酸エステル及びアミド、アルキルフェノール-ポリアミン結合マンニッヒ付加物、それらのキャップ形成誘導体及び他の関連化合物が含まれる。
【0122】
ポリメタクリレート又はポリアクリレート誘導体は、別の種類の分散剤である。これらの分散剤は、典型的に、窒素含有モノマーと、エステル基中に5~25個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとを反応させて調製する。代表的な例は、米国特許第2、100、993号明細書及び同第6,323,164号明細書に示される。ポリメタクリレート及びポリアクリレート分散剤は、通常、多機能性粘度変性剤として使用される。より低分子量のものは、潤滑油分散剤又は燃料清浄剤として使用されることができる。
【0123】
本開示において有用な例示的な好ましい分散剤としては、ポリアルケニル置換モノ-又はジカルボン酸、無水物又はエステルから誘導されるものが含まれ、この分散剤は、少なくとも900の数平均分子量を有するポリアルケニル部分を有し、かつポリアルケニル部分(中間官能性分散剤)あたり1.3より高く1.7まで、1.3より高く1.6まで、1.3より高く1.5までの官能基(モノ-又はジカルボン酸製造部分)を有する。官能性(F)は、次式に従って決定することができる:
F=(SAP×M)/((112,200×A.I.)-(SAP×98))
式中、SAPは、けん化価(すなわち、ASTM D94に従って決定される、スクシン含有反応生成物の1グラム中の酸基の完全中和において消費されるKOHのミリグラム数)であり;Mは、直鎖オレフィンポリマーの数平均分子量であり;かつA.I.は、スクシン含有反応生成物のパーセント活性成分である(残りは、未反応オレフィンポリマー、無水コハク酸及び希釈剤である)。
【0124】
分散剤のポリアルケニル部分は、少なくとも900、適切には、少なくとも1500、好ましくは、1800~3000、例えば、2000~2800、より好ましくは、約2100~2500、最も好ましくは、約2200~約2400の数平均分子量を有し得る。分散剤の分子量は、一般に、ポリアルケニル部分の分子量に関して表される。これは、分散剤の正確な分子量の範囲が、分散剤を誘導するために使用されるポリマーの種類、官能基の数及び利用される求核基の種類を含む多数のパラメーターに依存するためである。
【0125】
ポリマー分子量Mは、種々の既知の技術によって決定可能である。1つの都合のよい方法は、分子量分布の情報もさらに提供するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)である(W.W.Yau,J.J.Kirkland及びD.D.Bly,“Modern Size Exclusion Liquid Chromatography”,John Wiley and Sons,New York,1979を参照のこと)。特により低分子量のポリマーのために、分子量を決定するための別の有用な方法は、蒸気圧浸透圧測定法(例えば、ASTM D3592)である。
【0126】
分散剤中のポリアルケニル部分は、好ましくは、重量平均値分子量(M)対数平均値分子量(M)の比率によって決定される、多分散性とも呼ばれる狭い分子量分布(MWD)を有する。2.2未満、好ましくは、2.0未満のM/Mを有するポリマーが最も望ましい。適切なポリマーは、約1.5~2.1、好ましくは、約1.6~約1.8の多分散性を有する。
【0127】
分散剤の形成において利用される適切なポリアルケンとしては、ホモポリマー、インターポリマー又はより低分子量の炭化水素が含まれる。そのようなポリマーの1系統は、エチレン及び/又は少なくとも1種の次式HC=CHR(式中、Rは、1個~26個の炭素原子を含んでなる直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、かつポリマーが炭素-炭素不飽和及び高度の末端エテニリデン不飽和を含有する)を有するC~Cアルファオレフィンのポリマーを含んでなる。好ましくは、そのようなポリマーは、エチレン、及びRが1個~18個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくは、1個~8個の炭素原子を有するアルキル、なおより好ましくは、1個~2個の炭素原子を有するアルキルである上記式の少なくとも1種のアルファオレフィンのインターポリマーを含んでなる。
【0128】
別の有用な種類のポリマーは、イソブテン及びスチレンなどのモノマーのカチオン重合によって調製されたポリマーである。この種類からの共通のポリマーとしては、35~75重量%のブテン含有量及び30~60重量%のイソブテン含有量を有するC精製所流の重合によって得られるポリイソブテンが含まれる。ポリ-n-ブテンを製造するためのモノマーの好ましい供給源は、ラフィネートIIなどの石油供給原料流である。これらの原料は、米国特許第4,952,739号明細書など、当該技術において開示されている。好ましい実施形態では、純粋なイソブチレン流又はラフィネートI流から調製されたポリイソブチレンを利用して、末端ビニリデンオレフィンを有する反応性イソブチレンポリマーを調製する。利用されてよいポリイソブテンポリマーは、一般に、1500~3000のポリマー鎖をベースとする。
【0129】
分散剤は、好ましくは、非ポリマー(例えば、モノ-又はビス-スクシンイミド)である。そのような分散剤は、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0020950号明細書に開示されるものなどの従来プロセスによって調製可能である。
【0130】
分散剤は、米国特許第3,087,936号明細書、同第3,254,025号明細書及び同第5,430,105号明細書に一般に開示されるような従来手段によってホウ酸化させることが可能である。
【0131】
そのような分散剤は、約0.01~20重量%又は0.01~10重量%、好ましくは、約0.5~8重量%、又はより好ましくは、0.5~4重量%の量で使用されてよい。或いはそのような分散剤は、約2~12重量%、好ましくは、約4~10重量%、又はより好ましくは、6~9重量%の量で使用されてよい。活性成分基準で、そのような添加剤は、約0.06~14重量%、好ましくは、約0.3~6重量%の量で使用されてよい。分散剤原子の炭化水素部分は、C60~C1000、又はC70~C300、又はC70~C200で変動可能である。これらの分散剤は、中性及び塩基性窒素の両方、並びに両方の混合物を含有し得る。分散剤は、ボレート及び/又は環式カルボネートによってエンドキャップされることが可能である。仕上げ油中の窒素含有量は、重量で約200ppm~重量で約2000ppm、好ましくは、重量で約200ppm~重量で約1200ppmで変動可能である。塩基性窒素は、重量で約100ppm~重量で約1000ppm、好ましくは、重量で約100ppm~重量で約600ppmで変動可能である。
【0132】
本明細書に記載される分散剤は、本開示の組成物に対して有利に有用であり、且つ本開示の界面活性剤のいくつか又は全ての代わりとなる。さらに、一実施形態において、1種以上の分散剤を使用する本開示の組成物の調製は、本開示の成分と、任意のベースストック及び潤滑油添加剤を、混合物中、そのような成分の融点、特に、1種以上のM-カルボキシレート(M=H、金属、2種以上の金属、それらの混合物)の融点より高い温度で組み合わせることによって達成される。
【0133】
本明細書で使用される場合、分散剤濃度は、「送達されたまま」の基準で与えられる。典型的に、活性分散剤はプロセス油によって送達される。「送達されたまま」の分散剤は、典型的に、「送達されたまま」の分散剤製品中、約20重量パーセント~約80重量パーセント、又は約40重量~約60重量パーセントの活性分散剤を含有する。
【0134】
清浄剤
本開示において有用な例示的な清浄剤としては、例えば、アルカリ金属清浄剤、アルカリ土類金属清浄剤又は1種若しくはそれ以上のアルカリ金属清浄剤及び1種若しくはそれ以上のアルカリ土類金属清浄剤の混合物が含まれる。典型的な清浄剤は、分子の長鎖疎水性部分と、分子のより小さいアニオン性又は疎油性の親水性部分とを含むアニオン性材料である。清浄剤のアニオン性部分は典型的に、有機酸、例えば、硫黄含有酸、カルボン酸(例えば、サリチル酸)、リン含有酸、フェノール又はそれらの混合物から誘導される。対イオンは典型的にアルカリ土類又はアルカリ金属である。本明細書に記載の通り、清浄剤は過塩基化されることが可能である。
【0135】
清浄剤は、好ましくは、有機又は無機酸の金属塩、フェノールの金属塩、或いはそれらの混合物である。金属は、好ましくは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属及びそれらの混合物から選択される。有機又は無機酸は、脂肪族有機又は無機酸、脂環式有機又は無機酸、芳香族有機又は無機酸及びそれらの混合物から選択される。
【0136】
金属は、好ましくは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属及びそれらの混合物から選択される。より好ましくは、金属は、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及びそれらの混合物から選択される。
【0137】
有機酸又は無機酸は、好ましくは、硫黄酸、カルボン酸、リン含有酸及びそれらの混合物から選択される。
【0138】
好ましくは、有機又は無機酸の金属塩、或いはフェノールの金属塩は、カルシウムフェナート、スルホン酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、マグネシウムフェナート、スルホン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、過塩基化清浄剤及びそれらの混合物を含んでなる。
【0139】
実質的に化学量論的量の金属を含有する塩は中性塩として記載され、かつ0~80の全アルカリ価(TBN、ASTM D2896によって測定される)を有する。多くの組成物は過塩基性であり、過剰量の金属化合物(例えば、金属水酸化物又は酸化物)と(二酸化炭素などの)酸性気体とを反応させることによって達成される金属塩基を大量に含有する。有用な清浄剤は、中性であるか、わずかに過塩基性であるか、又は高度に過塩基性であり得る。これらの清浄剤は、中性、過塩基性、高度に過塩基性のカルシウムサリチレート、スルホネート及びフェネート及び/又はマグネシウムサリチレート、スルホネート、フェネートの混合物において使用可能である。TBNの範囲は、低、中程度及び高製品まで変動可能であり、0程度の低TBNから600程度の高TBNまで含まれる。好ましくは、清浄剤によってもたらされるTBNは、1~20である。より好ましくは、1~12である。スルホネート、フェネート、サリチレート及びカルボキシレートを含むカルシウム及びマグネシウム金属ベース清浄剤の混合物と一緒に、低、中程度、高TBNの混合物を使用することができる。金属比1の清浄剤混合物を、金属比2の清浄剤及び金属比5の清浄剤との組み合わせで使用することができる。ホウ酸化清浄剤も使用することができる。
【0140】
別の有用な種類の清浄剤は、アルカリ土類フェネートである。これらの清浄剤は、アルカリ土類金属水酸化物又は酸化物(例えば、CaO、Ca(OH)、BaO、Ba(OH)、MgO、Mg(OH))をアルキルフェノール又は硫化アルキルフェノールと反応させることによって製造可能である。有用なアルキル基としては、直鎖又は分枝鎖C~C30アルキル基、好ましくは、C~C20又はそれらの混合物が含まれる。適切なフェノールの例としては、イソブチルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどが含まれる。なお、出発アルキルフェノールが、それぞれ独立して直鎖又は分岐鎖である2個以上のアルキル置換基を含有してもよく、かつこれを0.5~6重量%使用し得ることに留意するべきである。非硫化アルキルフェノールが使用される場合、硫化生成物は、当該技術分野において周知の方法によって得られてもよい。これらの方法には、アルキルフェノール及び硫化剤(硫黄元素、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄などを含む)の混合物を加熱し、次いで、硫化フェノールをアルカリ土類金属塩基と反応させることが含まれる。
【0141】
本開示によると、カルボン酸の金属塩が清浄剤として好ましい。これらのカルボン酸清浄剤は、塩基性金属化合物と少なくとも1種のカルボン酸を反応させ、及び反応生成物から水分を除去することによって調製され得る。これらの化合物は、望ましいTBNレベルを生じるように過塩基性であってもよい。サリチル酸から製造された清浄剤は、カルボン酸から誘導される清浄剤の好ましい1種である。有用なサリチレートとしては、長鎖アルキルサリチレートが含まれる。組成物の有用な系統群の1種は、次式
【化1】
(式中、Rは、1~約30個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1~4の整数であり、かつMはアルカリ土類金属である)である。好ましいR基は、少なくともC11、好ましくはC13以上のアルキル鎖である。Rは、清浄剤の機能を妨害しない置換基によって任意選択的に置換されていてもよい。Mは、好ましくは、カルシウム、マグネシウム、バリウム又はそれらの混合物である。より好ましくは、Mはカルシウムである。
【0142】
ヒドロカルビル置換サリチル酸は、コルベ反応によってフェノールから調製され得る(米国特許第3,595,791号明細書を参照されたい)。ヒドロカルビル置換サリチル酸の金属塩は、水又はアルコールなどの極性溶媒中での金属塩の複分解によって調製され得る。
【0143】
アルカリ土類金属ホスフェートが清浄剤として使用されてもよく、これは当該技術分野において既知である。
【0144】
清浄剤は、単一清浄剤、又はハイブリッド若しくは複合清浄剤として既知であるものであってよい。後者の清浄剤は、別々の材料をブレンドすることを必要とせずに、2種の清浄剤の特性を提供することができる。米国特許第6,034,039号明細書を参照されたい。
【0145】
好ましい清浄剤としては、スルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸カルシウム、カルシウムフェネート、マグネシウムフェネート及び他の関連成分(ホウ酸化清浄剤を含む)並びにそれらの混合物が含まれる。好ましい清浄剤の混合物としては、スルホン酸マグネシウム及びサリチル酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム及びスルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム及びカルシウムフェナート、カルシウムフェナート及びサリチル酸カルシウム、カルシウムフェナート及びスルホン酸カルシウム、カルシウムフェナート及びサリチル酸マグネシウム、カルシウムフェナート及びマグネシウムフェナートが含まれる。過塩基化清浄剤も好ましい。
【0146】
本開示の潤滑油中の清浄剤濃度は、潤滑油の全重量に基づき、約0.5~約6.0重量パーセント、好ましくは、約0.6~約5.0重量パーセント、より好ましくは、約0.8重量パーセント~約4.0重量パーセントの範囲であることが可能である。
【0147】
本明細書で使用される場合、清浄剤濃度は、「送達されたまま」の基準で与えられる。典型的に、活性清浄剤はプロセス油によって送達される。「送達されたまま」の清浄剤は、典型的に、「送達されたまま」の清浄製品中、約20重量パーセント~約100重量パーセント、又は約40重量~約60重量パーセントの活性清浄を含有する。
【0148】
粘度変性剤
本開示の潤滑剤組成物中に、粘度変性剤(粘度指数向上剤(VI向上剤)及び粘度向上剤としても知られている)を含むことが可能である。
【0149】
粘度変性剤は、高温及び低温運転性能を潤滑剤に提供する。これら添加剤は、高温における剪断安定性及び低温における容認できる粘度を与える。
【0150】
適切な粘度変性剤としては、高分子量炭化水素、ポリエステル、並びに粘度変性剤及び分散剤の両方として機能する粘度変性剤分散剤が含まれる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約10,000~1,500,000、より典型的に20,000~1,200,000、さらにより典型的に50,000~1,000,000である。
【0151】
適切な粘度変性剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン又はアルキル化スチレンの直鎖又は星型ポリマー及びコポリマーである。ポリイソブチレンは一般に使用される粘度変性剤である。別の適切な粘度変性剤は、ポリメタクリレート(例えば、種々の鎖長のアルキルメタクリレートのコポリマー)であり、それらの配合物のいくつかは流動点降下剤としても機能する。他の適切な粘度変性剤としては、エチレン及びプロピレンのコポリマー、スチレン及びイソプレンの水素化ブロックコポリマー、並びにポリアクリレート(例えば、種々の鎖長のアクリレートのコポリマー)が含まれる。具体例としては、50,000~200,000の分子量のスチレン-イソプレン又はスチレン-ブタジエンベースのポリマーが含まれる。
【0152】
オレフィンコポリマーは、Chevron Oronite Company LLCから商標名「PARATONE(登録商標)」(例えば、「PARATONE(登録商標)8921」及び「PARATONE(登録商標)8941」)、Afton Chemical Corporationから商標名「HiTEC(登録商標)」(例えば、「HiTEC(登録商標)5850B」)、The Lubrizol Corporationから商標名「Lubrizol(登録商標)7067C」で商業的に入手可能である。水素化ポリイソプレン星型ポリマーは、Infineum International Limitedから、例えば、商標名「SV200」及び「SV600」で商業的に入手可能である。水素化ジエン-スチレンブロックコポリマーは、Infineum International Limitedから、例えば、商標名「SV50」で商業的に入手可能である。
【0153】
ポリメタクリレート又はポリアクリレートポリマーは、Evnoik Industriesから「Viscoplex(登録商標)」の商標名(例えば、「Viscoplex 6-954」)で入手可能である線形ポリマー、又はLubrizo Corporationから「designation Asteric(商標)」の商標名(例えば、Lubrizol 87708及びLubrizol 87725)で入手可能である星型ポリマーであることが可能である。
【0154】
本開示において有用な例示的なビニル芳香族含有ポリマーは、主にビニル芳香族炭化水素モノマーから誘導され得る。本開示において有用な例示的なビニル芳香族含有コポリマーは次の一般式:
A-B
(式中、Aは、主にビニル芳香族炭化水素モノマーから誘導されるポリマーブロックであり、かつBは、主に共役ジエンモノマーから誘導されるポリマーブロックである)によって表され得る。
【0155】
本開示の一実施形態において、粘度変性剤は、配合オイル又は潤滑エンジンオイルの全重量に基づき、約10重量パーセント未満、好ましくは、約7重量パーセント未満、より好ましくは、約4重量パーセント未満の量で使用され得、そして特定の例においては、2重量パーセント未満、好ましくは、約1重量パーセント未満、より好ましくは、約0.5重量パーセント未満の量で使用され得る。粘度変性剤は、典型的に、多量の希釈油中の濃縮液として添加される。
【0156】
本明細書で使用される場合、粘度変性剤濃度は、「送達されたまま」の基準で与えられる。典型的に、活性ポリマーは希釈油によって送達される。「送達されたまま」の粘度変性剤は、典型的に、「送達されたまま」のポリマー濃縮液中、約20重量パーセント~約75重量パーセントのポリメタクリレート又はポリアクリレートポリマーのための活性ポリマー、或いは約8重量~約20重量パーセントのオレフィンコポリマー、水素化ポリイソプレン星型ポリマー又は水素化ジエン-スチレンブロックコポリマーのための活性ポリマーを含有する。
【0157】
酸化防止剤
酸化防止剤は、使用間のベース油の酸化分解を遅らせる。そのような分解は、金属表面上の沈着物、スラッジの存在又は潤滑油中の粘度増加をもたらし得る。当業者は、潤滑油組成物において有用な多種多様な酸化防止剤を知っている。例えば、Klamann in Lubricants and Related Products,前掲書及び米国特許第4,798,684号明細書及び同第5,084,197号明細書を参照のこと。
【0158】
有用な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノールが含まれる。これらのフェノール系酸化防止剤は、無灰分(金属を含まない)フェノール系合物又は特定のフェノール化合物の中性若しくは塩基性金属塩であり得る。典型的なフェノール系酸化防止剤化合物は、立体障害ヒドロキシル基を含有するヒンダードフェノールであり、かつこれらには、ヒドロキシル基が互いにo又はp位にあるジヒドロキシアリール化合物のそれらの誘導体が含まれる。典型的なフェノール系酸化防止剤としては、C+アルキル基で置換されたヒンダードフェノール、及びこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が含まれる。この種類のフェノール系材料の例は、2-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2-t-ブチル-4-オクチルフェノール;2-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2-メチル-6-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;及び2-メチル-6-t-ブチル-4-ドデシルフェノールである。他の有用なヒンダードモノフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ヒンダード2,6-ジアルキル-フェノール系プロピオン酸エステル誘導体が含まれ得る。ビス-フェノール系酸化防止剤も、本開示と組み合わせて有利に使用され得る。オルト結合フェノールの例としては、2,2-ビス(4-ヘプチル-6t-ブチル-フェノール);2,2-ビス(4-オクチル-6-t-ブチル-フェノール);及び2,2’-ビス(4-ドデシル-6-t-ブチル-フェノール)が含まれる。パラ結合ビスフェノールとしては、例えば、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)及び4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)が含まれる。
【0159】
有効量の1種以上の触媒的酸化防止剤も使用されてよい。触媒的酸化防止剤は、有効量のa)1種以上の油溶性多金属有機化合物と、有効量のb)1種以上の置換N、N’-ジアリール-o-フェニレンジアミン化合物又はc)1種以上のヒンダードフェノール化合物;或いはb)及びc)の両方の組合せを含んでなる。触媒的酸化防止剤は、全体として参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,048,833号明細書により完全に記載される。
【0160】
使用されてよい非フェノール系酸化防止剤としては芳香族アミン酸化防止剤が含まれ、これらは、そのまま、又はフェノールと組み合わせて使用されてよい。非フェノール系酸化防止剤の典型的な例としては、式R10N(式中、Rは脂肪族、芳香族又は置換芳香族基であり、Rは芳香族又は置換芳香族基であり、かつR10は、H、アルキル、アリール又はR11S(O)12であり、R11は、アルキレン、アルケニレン又はアラルキレン基であり、R12は、高級アルキル基、又はアルケニル、アリール若しくはアルカリール基であり、かつxは0、1又は2である)の芳香族モノアミンなどのアルキル化又は非アルキル化芳香族アミンが含まれる。脂肪族基Rは、1~約20個の炭素原子を含有してもよく、好ましくは約6~12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は、飽和脂肪族基である。好ましくは、R及びRは両方とも芳香族又は芳香族基であり、かつ芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R及びRは、Sなどの他の基と一緒に結合していてもよい。
【0161】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルが含まれる。一般に、脂肪族基は、約14個より多い炭素原子を含まないであろう。本組成物中で有用であるアミン酸化防止剤の一般的な種類は、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジル及びビフェニルフェニレンジアミンが含まれる。芳香族アミンの2種以上の混合物も有用である。ポリマーアミン酸化防止剤も使用可能である。本開示において有用な芳香族アミン酸化防止剤の特定の例としては、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン;t-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン;フェニル-アルファナフチルアミン;及びp-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミンが含まれる。
【0162】
硫化アルキルフェノール及びそのアルカリ又はアルカリ土類金属塩も有用な酸化防止剤である。
【0163】
好ましい酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、アリールアミンが含まれる。これらの酸化防止剤は、種類ごとに個別に、又は互いに組み合わせて使用されてよい。そのような添加剤は、約0.01~5重量パーセント、好ましくは、約0.01~1.5重量パーセント、より好ましくは、0~1.5重量パーセント未満、より好ましくは、0~1重量パーセント未満の量で使用され得る。
【0164】
流動点降下剤(PPD)
必要に応じて、従来の流動点降下剤(潤滑油流動性向上剤としても知られている)を本開示の組成物に添加してもよい。これらの流動点降下剤は、流体が流動し得るか、又は流れ出ることが可能であろう最低温度を低下させるために、本開示の潤滑組成物に添加されてよい。適切な流動点降下剤の例としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィンワックス及び芳香族化合物の縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、並びにジアルキルフマレート、脂肪酸のビニルエステル及びアリルビニルエーテルのターポリマーが含まれる。米国特許第1,815,022号明細書、同第2,015,748号明細書、同第2,191,498号明細書、同第2,387,501号明細書、同第2,655,479号明細書、同第2,666,746号明細書、同第2,721,877号明細書、同第2,721,878号明細書及び同第3,250,715号明細書には、有用な流動点降下剤及び/又はそれらの調製が記載されている。そのような添加剤は、約0.01~5重量%、好ましくは約0.01~1.5重量%の量で使用されてよい。
【0165】
抗摩耗添加剤
金属アルキルチオホスフェート、より特に、金属成分が亜鉛である金属ジアルキルジチオホスフェート又は亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)は、本開示の潤滑油の有用な成分であることが可能である。ZDDPは、第一級アルコール、第二級アルコール、又はそれらの混合物から誘導することができる。ZDDP化合物は一般に、次式
Zn[SP(S)(OR)(OR)]
(式中、R及びRは、C~C18アルキル基、好ましくは、C~C12アルキル基である)である。これらのアルキル基は、直鎖であっても、又は分枝鎖であってもよい。ZDDPで使用されるアルコールは、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、第二級ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、例えば、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、アルキル化フェノールなどであることが可能である。第二級アルコール又は第一級及び第二級アルコールの混合物が好ましくなることが可能である。アルキルアリール基も使用されてよい。
【0166】
商業的に入手可能な好ましい亜鉛ジチオホスフェートには、例えば、The Lubrizol Corporationから商標名「LZ 677A」、「LZ 1095」及び「LZ 1371」、例えば、Chevron Oroniteから商標名「OLOA 262」、並びに例えば、Afton Chemicalから商標名「HITEC 7169」で入手可能なものなどの第二級亜鉛ジチオホスフェートが含まれる。
【0167】
ZDDPは、典型的に、潤滑油の全重量に基づき、約0.3~約1.5重量パーセント、好ましくは、約0.4重量パーセント~約1.2重量パーセント、より好ましくは、約0.5重量パーセント~約1.0重量パーセント、なおより好ましくは、約0.6重量パーセント~約0.8重量パーセントの量で使用されるが、多かれ少なかれ、しばしば有利に使用されることができる。好ましくは、ZDDPは第二級ZDDPであり、かつ潤滑油の全重量の約0.6~1.0重量パーセントの量で存在し得る。
【0168】
シール適合性剤
シール適合性剤は、流体中で化学反応を、又はエラストマー中で物理変化をもたらすことによって、エラストマー性シールを膨張させることを促進する。潤滑油に適切なシール適合性剤には、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(例えば、ブチルベンジルフタレート)、及びポリブテニル無水コハク酸が含まれる。そのような添加剤は、約0.01~3重量%、好ましくは約0.01~2重量%の量で使用されてよい。
【0169】
消泡剤
消泡剤は、潤滑油組成物に都合よく添加されてもよい。これらの薬剤は、安定した気泡の形成を遅らせる。シリコーン及び有機ポリマーは典型的な消泡剤である。例えば、ケイ素油又はポリジメチルシロキサなどのポリシロキサンが消泡剤特性をもたらす。消泡剤は商業的に入手可能であり、及び解乳化剤などの他の添加剤と一緒に従来通り少量で使用されてもよい。通常、これらの組み合わされた添加剤の量は1重量%未満であり、しばしば0.1重量%未満である。
【0170】
抑制剤及び抗さび添加剤
抗さび添加剤(又は腐食抑制剤)は、水又は他の汚染物質による化学的攻撃に対して、潤滑された金属表面を保護する添加剤である。多種多様なこれらは商業的に入手可能である。
【0171】
抗さび添加剤の1種は、金属表面を優先的に湿潤し、油の膜によってそれを保護する極性化合物である。別の種類の抗さび添加剤は、油のみが金属表面に接触するように、油中水エマルジョンにそれを組み込むことによって、水を吸収する。さらに別の種類の抗さび添加剤は、非反応性表面を生じるように金属に化学的に結合する。適切な添加剤の例には、ジチオリン酸亜鉛、金属フェノレート、塩基性金属スルホネート、脂肪酸及びアミンが含まれる。そのような抑制剤及び抗さび添加剤は、約0.01~5重量パーセント、好ましくは、約0.01~1.5重量パーセントの量で使用されてよい。
【0172】
摩擦変性剤
摩擦変性剤は、そのような材料を含有するいずれかの潤滑剤又は流体によって潤滑された表面の摩擦係数を変更することができる、いずれかの材料である。摩擦減少剤、又は潤滑剤若しくは油性剤、及び潤滑された表面の摩擦係数を変性するためにベース油、配合潤滑剤組成物又は機能的な流体の能力を変更する他のそのような薬剤としても知られている摩擦変性剤は、必要に応じて、本開示のベース油又は潤滑剤組成物と一緒に効果的に使用されてもよい。摩擦係数を低下する摩擦変性剤は、本開示のベース油及び潤滑油組成物と組み合わせて特に都合がよい。
【0173】
例示的な摩擦変性剤としては、例えば、有機金属化合物若しくは材料、又はそれらの混合物が含まれてよい。本開示の潤滑エンジンオイル配合物において有用である例示的な有機金属摩擦変性剤としては、例えば、モリブデンアミン、モリブデンジアミン、モリブデンアミン、モリブデンジアミン、有機タングステネート、モリブデンジチオカルバメート、ジチオリン酸モリブデン、モリブデンアミン錯体、モリブデンカルボキシレートなど、及びそれらの混合が含まれる。同様のタングステンをベースとする化合物が好ましくなり得る。
【0174】
本開示の潤滑エンジンオイル配合物において有用な他の例示的な摩擦変性剤としては、例えば、アルコキシル化脂肪酸エステル、アルカノールアミド、ポリオール脂肪酸エステル、ホウ酸化グリセロール脂肪酸エステル、脂肪アルコールエーテル及びそれらの混合物が含まれる。
【0175】
例示的なアルキル化脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンステアレート、脂肪酸ポリグリコールエステルなどが含まれる。これらは、ポリオキシプロピレンステアレート、ポリオキシブチレンステアレート、ポリオキシエチレンイソステアレート、ポリオキシプロピレンイソステアレート、ポリオキシエチレンパルミテートなどを含むことができる。
【0176】
例示的なアルカノールアミドには、例えば、ラウリン酸ジエチルアルカノールアミド、パルミチン酸ジエチルアルカノールアミドなどが含まれる。これらは、オレイン酸ジエチルアルカノールアミド、ステアリン酸ジエチルアルカノールアミド、オレイン酸ジエチルアルカノールアミド、ポリエトキシル化ヒドロカルビルアミド、ポリプロポキシル化ヒドロカルビルアミドなどを含むことができる。
【0177】
例示的なポリオール脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセロールモノオレエート、飽和モノ-、ジ-及びトリグリセリドエステル、グリセロールモノステアレートなどが含まれる。これらは、ポリオールエステル、ヒドロキシル含有ポリオールエステルなどを含むことができる。
【0178】
例示的なホウ酸化グリセロール脂肪酸エステルには、例えば、ホウ酸化グリセロールモノオレエート、ホウ酸化飽和モノ-、ジ-及びトリグリセリドエステル、ホウ酸化グリセロールモノステアレートなどが含まれる。グリセロールポリオールに加えて、これらは、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビタンなどを含むことができる。これらのエステルは、ポリオールモノカルボキシレートエステル、ポリオールジカルボン酸エステル、場合によって、ポリオールトリカルボキシレートエステルであることができる。好ましくは、グリセロールモノオレエート、グリセロールジオレエート、グリセロールトリオレエート、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレート、並びにグリセロールトリステアレート及び相当するグリセロールモノパルミテート、グリセロールジパルミテート及びグリセロールトリパルミテート及びそれぞれのイソステアラート、リノーレエートであり得る。場合により、グリセロールエステル、並びにこれらのいずれかを含有する混合物が好ましくなる可能性がある。根本ポリオールとしてグリセロールを特に使用して、ポリオールのエトキシル化、プロポキシル化、ブトキシル化脂肪酸エステルが好ましくなる可能性がある。
【0179】
例示的な脂肪アルコールエーテルとしては、例えば、ステアリルエーテル、ミリスチルエーテルなどが含まれる。C~C50の炭素数を有するものを含むアルコールは、エトキシル化、プロポキシル化又はブトキシル化して、相当する脂肪酸アルキルエーテルを形成することができる。基本的なアルコール部分は、好ましくは、ステアリル、ミリスチル、C11~C13炭化水素、オレイル、イソステアリルなどであることができる。
【0180】
本開示の潤滑油は、摩擦変性剤の存在下又は不在下において、所望の特性、例えば、摩耗制御を示す。
【0181】
有用な摩擦変性剤の有用な濃度は、0.01重量パーセント~5重量パーセント又は約0.1重量パーセント~約2.5重量パーセント、又は約0.1重量パーセント~約1.5重量パーセント、又は約0.1重量パーセント~約1重量パーセントの範囲であり得る。モリブデン含有材料の濃度は、しばしば、Mo金属濃度に関して記載される。Moの有利な濃度は、25ppm~700ppm以上の範囲であり得、しばしば、50~200ppmが好ましい範囲である。全種類の摩擦変性剤は、単独で、又は本開示の材料との混合物で使用されてよい。しばしば、2種以上の摩擦変性剤の混合物、又は別の表面活性材料との摩擦変性剤の混合物も望ましい。
【0182】
潤滑油組成物が上記で議論された添加剤の1種以上を含有する場合、添加剤は、その意図された機能を実行するために十分な量で組成物中にブレンドされる。本開示において有用なそのような添加剤の典型的な量を以下の表1に示す。
【0183】
多くの添加剤は、特定量のベース油希釈剤と一緒に、1種以上の添加剤を一緒に含有する濃縮物として添加剤製造業者から出荷されることに留意されたい。したがって、以下の表2の重量、並びに本明細書に記載される他の量は、活性成分(すなわち、成分の非希釈剤部分)の量に関する。以下に示す重量パーセント(重量%)は、潤滑油組成物の全重量に基づく。
【0184】
【表2】
【0185】
上記添加剤は全て商業的に入手可能な材料である。これらの添加剤は独立して添加されてもよいが、通常、潤滑油石油添加剤の供給元から入手可能なパッケージ中に前もって組み合わせられている。種々の成分、割合及び特徴を有する添加剤パッケージが利用可能であり、そして適切なパッケージの選択は、最終組成物の必要な使用を考慮に入れるであろう。
【0186】
以下の表3は、エンジンオイルのSAE Wグレードを分類するためのD5293コールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)必要条件を規定する。完全な必要条件は、SAE規格J300に含まれる。SAE 0W-XX粘度グレードを除いて、全ての粘度グレードに関して、最大CCSV必要条件及び最小CCSV必要条件の両方がある。J300規格の追加の必要条件は、CCSV最大試験温度より5℃低い温度で試験されたD4684 MRV粘度であり、これは≦60,000cPでなければならず、35cP未満の降伏応力を有する。
【0187】
【表3】
【0188】
次の非限定的な実施例は、本開示を説明するために提供される。
【実施例
【0189】
図1及び2は、CCSVを引き上げるコベースストックの使用によって可能なブレンドウインドウを示すことによって、本開示の有用性を示す。従来の配合方法において、SAE 5W-xxエンジンオイルを製造するのに、-35℃において十分なCCSVを達成するために、より高粘度のベースストックの組合せが必要とされる。より高粘度のベースストック(例えば、>5cStのグループIV又はグループIIIのこの使用は、燃料経済性及びエネルギーの減少を導く、より高粘度のベースオイル粘度をもたらす。ベースオイル粘度を減少させるために、より低温の粘度は温度によってより迅速に変化するため、より低い粘度指数ベースストック(例えば、グループII)を使用することができる。この方法によって、より低いベースオイル粘度、並びにエネルギー効率及び燃料経済性の同時回復が達成されるが、他の性能の譲歩がなされる。例えば、低粘度グループIIベースストックを含有する配合物のNoack揮発性が増加し、堆積物又は清浄度の問題が導かれる可能性がある。
【0190】
図1に、SAE 5W-30エンジンオイルのブレンドウインドウを示す。これらのブレンドウインドウを作成する時、高温高せん断粘度(HTHS)、100℃における動粘度(KV100)、Noack揮発性、ベースオイル粘度(BOV)及び-35℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)は、種々のベースオイルの組合せによる広範囲の配合油に対して決定された。添加剤及び粘度調整剤濃度は一定に保持され、そしてベースオイル混合物が調整された。単一セントロイド実験計画を使用し、グループIV-4、グループII-4.5及びグループIII-C6ベースストックを含んでなるベースオイル成分による種々の配合物の上記物理的特性を決定した。図1の線は、≦15%のNoack揮発性、≦5.5cStのベースオイル粘度(すなわち、ベースオイル混合物のKV100)及び>6200cPの-35℃におけるCCSVの境界線条件に相当する。これらの境界線条件は、これらのベースストックによるSAE 5W-30配合物を定義する最も制約が多いものであった。この場合、5.5cStのBOV限度が独断的にカットオフとして選択された。
【0191】
図1は、上記で議論された影響をグラフによって示す。三角形の頭頂は、示された成分の100%を含有するベースオイル混合物に相当する。より多くのグループIV-4ベースストックが配合物中に含まれる場合、オイルは、5W-xxグレードに関するCCSVの定義を満たすことによって制限される。さらに、より重質カットのベースストック(すなわち、6cStのグループIII)が添加されると、配合物は、ベースオイル粘度の増加によって制限され始める。そして最後に、より多くのグループII-4.5が添加されると、配合物は、Noack揮発性によって制限される。
【0192】
Kv100<4cStを有するが、低温において有意に厚くなるC28メチルパラフィンコベースストックを使用することにより、低粘度、低粘度指数グループIIベースストックを使用することの制約がなくなり、低ベースオイル粘度、容認できる揮発性を有し、且つ完全合成ベースストックを含んでなる配合物が可能となる。これは図2にグラフによって示される。図2は、配合物が7.5重量%で一定のC28メチルパラフィンコベースを含有することを除き、図1と同様に作成される。また、ベースオイル混合物は、グループIV-4、グループIII-A4又はグループIII-A8に変更されている。CCSVに関する制約は、CCSVを引き上げるベースストックを使用する場合に排除され、そしてSAE 5W-30潤滑油を製造するためのブレンドウインドウにおける有意な増加がもたらされる。図2にはNoack揮発性に関する制限がなお存在するが、線の勾配が、図1のグループII-4.5ベースストックを含む場合よりも少ないことを注目することも重要である。このことは、CCSVを引き上げるベースストックを使用することにより、Noack揮発性を改善しながら、より低いベースオイル粘度を有する潤滑油を配合することが可能であることを示す。これらの改善が、使用中の潤滑油に、堆積物性能の改善及びオイル消費量の減少をもたらすと予想される。
【0193】
本開示に従って、好ましいCCSVを引き上げる分子は、(「C28MP」と呼ばれる)C28メチルパラフィン、パルミチン酸デシル、ココナッツ油又はC18二量体である。この分子は、C14アルファオレフィンの二量体化によって、メタロセンPAOプロセスを使用して合成される。この分子は室温で固体であるが、広範囲の温度で他のベースストック中に可溶性である。潤滑油配合物中3~10%で好ましく使用される場合、C28MPは約2,500,000cPの-35℃における見掛けのCCSVを与える。図3は、C28MP、パルミチン酸デシル、ココナッツ油及びC18二量体のいくつかの追加的特性を示す。
【0194】
さらに、C28MP、パルミチン酸デシル、ココナッツ油及びC18二量体は、驚くべきことに、MTMトラクションにおける有意な利益を示す。図4は、PAO2、PAO4、C28MP、グループIII-B4、グループV-A、パルミチン酸デシル、ココナッツ油、並びにC18二量体及びグループV-Bに関するMTMトラクション結果の比較を示す。C28MP、パルミチン酸デシル、ココナッツ油及びC18二量体は、広範囲の滑り率で有意に低いトラクション係数を示すことに注目されたい。そのようなMTMトラクションにおける改善は、様々な用途において有意なエネルギー効率の利益を提供することが予想される。重要なことに、そのような驚くべき、且つ顕著なトラクション利益をもたらすためには、C28MP、パルミチン酸デシル、ココナッツ油及びC18二量体の有意なフラクションの使用が必要となる可能性がある。そのようなものとして、そのような配合物の低温特性は、SAE J300粘度グレードを達成することを必要とする自動車エンジンオイルに適切とはなり得ない。しかしながら、そのような配合物は、温度>30℃における用途において非常に有用であろう。
【0195】
実施例において使用されるベースストックの典型的な特性を図5に示す。
【0196】
本開示の選択されたコベースストック及び市販のベースストックを使用して、エンジンオイルを配合した。それぞれの配合物は、図6~10に示される通り、列挙されたベースストックの重量%、列挙されたコベースストックの重量%、列挙された添加剤の重量%、及び列挙された添加剤パッケージの重量%からなった。利用された添加剤パッケージは、一般に使用される添加剤成分(例えば、粘度変性剤、抗摩耗添加剤、摩擦変性剤、分散剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤など)から構成される。
【0197】
ASTM D445によって決定される潤滑油の動粘度(Kv100)、ASTM D445によって決定される潤滑油の動粘度(Kv40)、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター(CCS-35)粘度、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター(CCS-30)粘度、ASTM D4683によって決定される高温高せん断(HTHS)粘度、ASTM D4684によって決定される潤滑油の粘度(MRV)、ASTM D2270によって決定される粘度指数(VI)、ASTM D4684-14によって決定される降伏応力、ASTM D5800によって決定されるNoack揮発性、ASTM D97-16によって決定される流動点、ASTM D5133-15によって決定されるゲル化指数、ASTM D5133-15によって決定されるゲル化温度、本開示のコベースストックによって配合されたエンジンオイルに関する結果は、図6~10に示される。
【0198】
図6は、5W-30及び10W-30エンジンオイルがどのようにC28メチルパラフィンと配合され、100℃におけるベースオイル粘度を低下させ、且つ所望の粘度グレードを維持しながら、燃料効率を改善するかを示すことによって、本開示の有用性を示す。図6中、全ての比較例及び本発明の実施例において使用される粘度変性剤は、329,000のMn、870,000のMw(光散乱によって決定)及び2.6の多分散性指数を有する水素化イソプレン星形ポリマーであった。比較例1は、ベースストックグループIII-A4及びグループIII-A8によって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。これは、4cStの流体及び8cStのカットの混合物である。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は5.66cStであり、且つ-35℃におけるCCSVは6890cPであるということである。CCSVに基づき、比較例1は5Wエンジンオイルである。比較例2において、100℃におけるベースオイル粘度を4.11cStまで低下させるために、グループIII-Aベースストック混合物を再均衡させる。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善することが予想される(Crosthwaitら)。この配合物は、4020cPの-35℃におけるD5293 CCSVを有し、且つ0W-30エンジンオイルとして分類されるであろう。
【0199】
本発明の実施例1において、D5293 CCSV(-35℃において6890cP)を維持するように再均衡されたグループIII-Aベースストック混合物に7.5%のC28メチルパラフィンコベースを添加する。得られた配合物は、4.05cStの100℃におけるベースオイル粘度及び7150cPの-35℃におけるCCSVを有する。D5293 CCSVに基づき、本発明の実施例1は5W-30エンジンオイルである。C28メチルパラフィンコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5Wの最初の粘度グレードが維持される。-40℃におけるMRV、流動点及び走査Brookfieldゲル化指数などの本発明の実施例1に関する他の低温特性は優れている。
【0200】
比較例3は、グループIII-A8ベースストック及びグループIV-4の混合物によって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は5.75cStであり、且つ-35℃におけるCCSVは6520cPであるということである。CCSVに基づき、比較例3は5W-30エンジンオイルである。比較例4において、100℃におけるベースオイル粘度を4.12cStまで低下させるために、グループIII-Aベースストック混合物を再均衡させる。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善することが予想される(Crosthwaitら)。この配合物は、3530cPの-35℃におけるD5293 CCSVを有し、且つ0W-30エンジンオイルとして分類されるであろう。本発明の実施例2において、グループIII-Aベースストック混合物及びグループIVベースオイルに8.2%のC28メチルパラフィンコベースを添加する。グループIII-Aベースオイルは、初期CCSVを維持するように再均衡された。得られた配合物は、4.05cStの100℃におけるベースオイル粘度及び7500cPの-35℃におけるD5293 CCSVを有する。CCSVに基づき、本発明の実施例2は5W-30エンジンオイルである。C28メチルパラフィンコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5Wの最初の粘度グレードが維持される。-40℃におけるMRV、流動点及び走査Brookfieldゲル化指数などの本発明の実施例2に関する他の低温特性は優れている。
【0201】
比較例5は、ベースストックグループIII-A4及びグループII6の混合物によって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は5.50cStであり、且つ-30℃におけるD5293 CCSVは7620cPであるということである。CCSVに基づき、比較例3は10W-30エンジンオイルである。比較例6において、100℃におけるベースオイル粘度を5.00cStまで低下させるために、グループIII-Aベースストック混合物を再均衡させる。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善することが予想される(Crosthwaitら)。この配合物は、4780cPの-30℃におけるD5293 CCSVを有し、且つ5W-30エンジンオイルとして分類されるであろう。本発明の実施例3において、ベースストックグループIII-A、グループIIベースオイル混合物に9.8%のC28メチルパラフィンコベースを添加する。得られた配合物は、5.00cStの100℃におけるベースオイル粘度及び6701cPの-30℃におけるD5293 CCSVを有する。CCSVに基づき、本発明の実施例3は10W-30エンジンオイルである。C28メチルパラフィンコベースの添加によって、-30℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、10W-30の最初の粘度グレードが維持される。
【0202】
図7中、全ての比較例及び本発明の実施例において使用される粘度変性剤は、149,000のMn、150,000のMw(光散乱によって決定)及び1.0の多分散性指数を有するスチレンイソプレンブロックポリマーであった。図7中、比較例7は、ベースストックグループIII-C6、グループII-4.5及びグループII-4の混合物によって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は4.93cStであり、且つ-35℃におけるD5293 CCSVは8120cPであるということである。CCSVに基づき、比較例7は5W-30エンジンオイルである。比較例8において、100℃におけるベースオイル粘度を4.45cStまで低下させるために、比較例7のベースストック混合物を再均衡させる。これによって燃料経済性利益が提供されることが予想される(Crosthwaitら)。-35℃におけるD5293 CCSVは5660cPである。粘度特性に基づき、比較例8は0W-30エンジンオイルである。したがって、べースストック再均衡の結果として、エンジンオイルの粘度グレードが変化した。本発明の実施例4において、ベースストックグループIII-C、グループII-4.5、グループIV-4ベースオイル混合物に5%のC28メチルパラフィンコベースを添加する。得られた配合物は、4.45cStの100℃におけるベースオイル粘度及び8280cPの-35℃におけるD5293 CCSVを有する。CCSVに基づき、本発明の実施例4は5W-30エンジンオイルである。C28メチルパラフィンコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例4は、流動点、-40℃におけるMRV及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。加えて、本発明の実施例4は、良好な高温堆積物制御(TEOST 33C)を維持する。
【0203】
図8中、全ての比較例及び本発明の実施例において使用される粘度変性剤は、329,000のMn、870,000のMw(光散乱によって決定)及び2.6の多分散性指数を有する水素化イソプレン星形ポリマーであった。図8中、比較例9は、ベースストックグループIII-A4及びグループIII-A8によって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は5.91cStであり、且つ-35℃におけるCCSVは8670cPであるということである。CCSVに基づき、比較例9は5W-30エンジンオイルである。比較例10において、100℃におけるベースオイル粘度を4.79cStまで低下させるために、比較例9のベースストック混合物を再均衡させる。これによって燃料経済性利益が提供されることが予想される(Crosthwaitら)。-35℃におけるD5293 CCSVは5490cPである。粘度特性に基づき、比較例10は0W-30エンジンオイルである。したがって、べースストック再均衡の結果として、エンジンオイルの粘度グレードが変化した。本発明の実施例5において、一定のCCSVを維持するように再均衡されたベースストックグループIII-A4及びグループIII-A8混合物に5%のC28メチルパラフィンコベースを添加する。得られた配合物は、4.80cStの100℃におけるベースオイル粘度及び7680cPの-35℃におけるCCSVを有する。CCSVに基づき、本発明の実施例5は5W-30エンジンオイルである。C28メチルパラフィンコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例5は、流動点、-40℃におけるMRV及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。加えて、本発明の実施例5は、良好な高温堆積物制御(TEOST 33C)及び良好なオイル老化粘度制御(CEC L105 LTPT)を維持する。
【0204】
比較例11は、グループIV-6及びグループIII-B6ベースストック混合物によって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は5.79cStであり、且つ-35℃におけるCCSVは6900cPであるということである。CCSVに基づき、比較例11は5W-30エンジンオイルである。比較例12において、100℃におけるベースオイル粘度を4.66cStまで低下させるために、比較例11のベースストック混合物を再均衡させる。これによって燃料経済性利益が提供されることが予想される(Crosthwaitら)。-35℃におけるD5293 CCSVは4270cPである。粘度特性に基づき、比較例12は0W-30エンジンオイルである。したがって、ベースストック再均衡の結果として、エンジンオイルの粘度グレードが変化した。本発明の実施例6において、一定のCCSVを維持するように再均衡されたグループIV及びグループIII-B6ベースオイル混合物に5%のC28メチルパラフィンコベースを添加する。得られた配合物は、4.7cStの100℃におけるベースオイル粘度及び6260cPの-35℃におけるCCSVを有する。CCSVに基づき、本発明の実施例6は5Wエンジンオイルである。C28メチルパラフィンコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例6は、流動点、-40℃におけるMRV及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。
【0205】
比較例13は、グループIII-A4、グループIII-A8及びグループIII-B6ベースストック混合物によって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は5.74cStであり、且つ-35℃におけるCCSVは8550cPであるということである。CCSVに基づき、比較例10は5W-30エンジンオイルである。比較例14において、100℃におけるベースオイル粘度を4.52cStまで低下させるために、比較例13のベースストック混合物を再均衡させる。これによって燃料経済性利益が提供されることが予想される(Crosthwaitら)。-35℃におけるD5293 CCSVは5080cPである。粘度特性に基づき、比較例14は0W-30エンジンオイルである。したがって、べースストック再均衡の結果として、エンジンオイルの粘度グレードが変化した。本発明の実施例7において、グループIII-A4及びグループIII-B6ベースストック混合物に5%のC28メチルパラフィンコベースを添加する。得られた配合物は、4.5cStの100℃におけるベースオイル粘度及び7520cPの-35℃におけるCCSVを有する。CCSVに基づき、本発明の実施例7は5W-30エンジンオイルである。C28メチルパラフィンコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例7は、流動点、-40℃におけるMRV及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。加えて、本発明の実施例7は、良好な高温堆積物制御(TEOST 33C)及び良好なオイル老化粘度制御(CEC L105 LTPT)を維持する。
【0206】
比較例15は、グループIII-A8及びグループIV-6ベースストック混合物によって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は5.97cStであり、且つ-35℃におけるCCSVは7110cPであるということである。CCSVに基づき、比較例11は5W-30エンジンオイルである。比較例16において、100℃におけるベースオイル粘度を4.8cStまで低下させるために、比較例14のベースストック混合物を再均衡させる。これによって燃料経済性利益が提供されることが予想される(Crosthwaitら)。-35℃におけるD5293 CCSVは4510cPである。粘度特性に基づき、比較例16は0W-30エンジンオイルである。したがって、べースストック再均衡の結果として、エンジンオイルの粘度グレードが変化した。本発明の実施例8において、CCSVを維持するように再均衡されたグループIII-A及びグループIVベースストック混合物に5%のC28メチルパラフィンコベースを添加する。得られた配合物は、4.8cStの100℃におけるベースオイル粘度及び6700cPの-35℃におけるCCSVを有する。CCSVに基づき、本発明の実施例8は5W-30エンジンオイルである。C28メチルパラフィンコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例8は、流動点、-40℃におけるMRV及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。加えて、本発明の実施例8は、良好な高温堆積物制御(TEOST 33C)、良好なオイル老化粘度制御(CEC L105 LTPT及びROBO D7528)並びに優れた酸化安定性(40℃におけるD7528 %粘度増加)を維持する。
【0207】
図9は、一定CCSVを維持しながら100℃におけるベースオイル粘度を減少させるためにパルミチン酸デシル又はココナッツ油が使用される場合の比較例及び本発明の実施例を提供する。図9中の全ての比較例及び本発明の実施例に関する粘度変性剤は、二峰性分子量分布を有する水素化イソプレン星形ポリマーであった。第1のピークは、1,050,000のMw、939,000のMn(光散乱によって決定)及び1.12の多分散性指数を有する。粘度変性剤は、282,000のMw、268,000のMn(光散乱によって決定)及び1.05の多分散性指数を有する第2のピークを有する。比較例17は、ベースストック混合物として、グループII-4、グループIII-A4、グループIV-4、及びグループV-Aによって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は4.38cStであったこと、及び-35℃におけるCCSVは7570cPであったことである。CCSVに基づき、比較例17は5W-30エンジンオイルである。本発明の実施例9において、本発明の実施例9の-35℃におけるCCSVが比較例17の―35℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループII-4及びグループIII-A4ベースストックの代わりの5%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、4.13cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7490cPの-35℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、実施例9は5W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例9は、流動点、及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。比較例18は、ベースストック混合物として、グループII-4、グループII-A6、グループIV-4、及びグループV-Aによって配合された10W-30エンジンオイルの特性を示した。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は4.96cStであったこと、及び-30℃におけるCCSVは6850cPであったことであった。CCSVに基づき、比較例18は10W-30エンジンオイルであった。本発明の実施例10において、本発明の実施例10の-30℃におけるCCSVが比較例18の―30℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループII-4及びグループII-6ベースストックの代わりの5%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、4.54cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7120cPの-30℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、実施例10は10W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-30℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、10W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例10は、流動点、及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。
【0208】
比較例19は、ベースストック混合物として、グループIII-B4、グループIII-B6、グループIV-4、及びグループV-Aによって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、100℃におけるベースオイル粘度は4.48cStであったこと、及び-35℃におけるCCSVは8130cPであったことである。CCSVに基づき、比較例19は5W-30エンジンオイルであった。本発明の実施例11において、本発明の実施例11の-35℃におけるCCSVが比較例19の―35℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループIII-B4及びグループIII-B6ベースストックの代わりの5%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、4.10cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7740cPの-35℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、実施例11は5W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例11は、流動点、及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。比較例20は、ベースストック混合物として、グループIII-B4、グループIII-B6、グループIV-4、及びグループV-Aによって配合された10W-30エンジンオイルの特性を示した。注目すべき基本特性は、5.76cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7250cPの-30℃におけるCCSVであった。CCSVに基づき、比較例20は10W-30エンジンオイルであった。本発明の実施例12において、本発明の実施例12の-30℃におけるCCSVが比較例20の―30℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループIII-B4及びグループIII-B6ベースストックの代わりの5%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、5.02cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7140cPの-30℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、実施例12は10W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-30℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、10W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例10は、流動点、及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。
【0209】
比較例21は、ベースストック混合物として、グループIII-A4、グループIII-A8、グループIV-4、及びグループV-Aによって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、5.18cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7820cPの-35℃におけるCCSVである。CCSVに基づき、比較例21は5W-30エンジンオイルであった。本発明の実施例13において、本発明の実施例13の-35℃におけるCCSVが比較例21の―35℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループIII-A4及びグループIII-A8ベースストックの代わりの5%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、4.49cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7810cPの-35℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、実施例13は5W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例13は、走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。比較例22は、ベースストック混合物として、グループIII-A4、グループIII-A8、グループIV-4、及びグループV-Aによって配合された10W-30エンジンオイルの特性を示した。注目すべき基本特性は、6.66cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7150cPの-30℃におけるCCSVであった。CCSVに基づき、比較例22は10W-30エンジンオイルであった。本発明の実施例14において、本発明の実施例14の-30℃におけるCCSVが比較例22の―30℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループIII-A4及びグループIII-A8ベースストックの代わりの5%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、5.90cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7350cPの-30℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、実施例14は10W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-30℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、10W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例10は、流動点、及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。
【0210】
比較例21は、ベースストック混合物として、グループIII-A4、グループIII-A8、グループIV-4、及びグループV-Aによって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示す。注目すべき基本特性は、5.18cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7820cPの-35℃におけるCCSVである。CCSVに基づき、比較例21は5W-30エンジンオイルである。本発明の実施例15において、本発明の実施例15の-35℃におけるCCSVが比較例21の―35℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループIII-A4及びグループIII-A8ベースストックの代わりの5%のココナッツ油を再均衡させた。得られた配合物は、4.51cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7800cPの-35℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、実施例15は5W-30エンジンオイルであった。ココナッツ油コベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例15は、流動点、及び走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持する。図10は、一定CCSVを維持しながら100℃におけるベースオイル粘度を減少させるためにパルミチン酸デシルが使用される場合の比較例及び本発明の実施例を提供する。図10中の全ての比較例及び本発明の実施例に関する粘度変性剤は、二峰性分子量分布を有する水素化イソプレン星形ポリマーであった。第1のピークは、1,050,000のMw、939,000のMn(光散乱によって決定)及び1.12の多分散性指数を有する。粘度変性剤は、282,000のMw、268,000のMn(光散乱によって決定)及び1.05の多分散性指数を有する第2のピークを有する。比較例21は、ベースストック混合物として、グループIII-A4、グループIII-A8、グループIV-4、及びグループV-Aによって配合された5W-30エンジンオイルの特性を示した。注目すべき基本特性は、5.18cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7820cPの-35℃におけるCCSVであった。CCSVに基づき、比較例21は5W-30エンジンオイルであった。本発明の実施例16において、本発明の実施例16の-35℃におけるCCSVが比較例21の―35℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループIII-A4及びグループA8ベースストックの代わりの2%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、5.07cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7950cPの-35℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、実施例16は5W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例16は、流動点、及び走査Brookfieldゲル化指数含む良好な低温特性を維持する。本発明の実施例13において、本発明の実施例13の-35℃におけるCCSVが比較例21の―35℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループIII-A4及びグループIII-A8ベースストックの代わりの5%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、4.49cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7810cPの-35℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、本発明の実施例13は5W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例13は、走査Brookfieldゲル化指数を含む良好な低温特性を維持した。本発明の実施例17において、本発明の実施例17の-35℃におけるCCSVが比較例21の―35℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループIII-A4及びグループIII-A8ベースストックの代わりの8%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、4.38cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び7910cPの-35℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、本発明の実施例17は5W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例17は、流動点を含む良好な低温特性を維持した。本発明の実施例18において、本発明の実施例17の-35℃におけるCCSVが比較例21の―35℃におけるCCSVと適合するように、グループV-A及びグループIII-A4及びグループIII-A8ベースストックの代わりの12%のパルミチン酸デシルを再均衡させた。得られた配合物は、4.22cStの100℃におけるベースオイル粘度、及び8400cPの-35℃におけるCCSVを有した。CCSVに基づき、本発明の実施例18は5W-30エンジンオイルであった。パルミチン酸デシルコベースの添加によって、-35℃におけるCCSVに有意な影響を及ぼすことなく、100℃におけるベースオイル粘度の有意な減少がもたらされ、したがって、5W-30の最初の粘度グレードが維持される。このベースオイル再均衡によって燃料経済性が改善されることが予想される(Crosthwaitら)。加えて、本発明の実施例18は、流動点を含む良好な低温特性を維持した。
【0211】
本開示の潤滑油は、燃料効率及びエネルギー効率の改善をもたらす。より低THS粘度のエンジンオイルは、一般に、より高HTHS粘度の製品よりも良好な燃料経済性をもたらす。この利益は、本開示の潤滑油のシーケンスVID燃料経済性(ASTM D7589)エンジン試験において実証可能である。本開示の潤滑油は、堆積物制御及び清浄度性能の改善又は維持をもたらす。この利益は、本開示の潤滑油のシーケンスIIIGエンジン試験(ASTM D7320)において実証される。
【0212】
図6~10にいくつかのブレンド及び特性を示す。SAE 0W-8エンジンオイルと同程度の低さの粘度を有するブレンドがモデル化されており、SAE 0W粘度規格をなお満たしながら、このC28MPを最大12重量%組み込むことができる。12重量%において、トラクション利益は明白となり得るが、配合物の揮発性が高すぎるため、他の工業規格を満たさない。
【0213】
PCT及びEP条項:
1.ベースオイル混合物を含んでなる潤滑油であって、潤滑油がSAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させるために、ベースオイル混合物が、主成分として潤滑油ベースストックと、100℃において約6.2cSt未満の動粘度(Kv100)を有する潤滑油の1~15重量%の微量成分として少なくとも1種のコベースストックとを含んでなる、潤滑油。
【0214】
2.少なくとも1種のコベースストックが、C20~36ポリアルファオレフィン、C24~32ポリアルファオレフィン、C24~28ポリアルファオレフィン、又はそれらの混合物であり、且つ約1~約4の分岐点を有する、条項1の潤滑油。
【0215】
3.少なくとも1種のコベースストックが、ASTM D445によって決定される100℃における約4cSt未満の動粘度(Kv100)を有する二量体化、水素化C14線形アルファオレフィンである、条項1及び2の潤滑油。
【0216】
4.ASTM D445によって決定される約2cSt~約12cStの100℃における動粘度(Kv100)、ASTM D5293-15によって決定される約1000cP~約6200cPの-35℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、ASTM D5293-15によって決定される約1000cP~約6600cPの-30℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、ASTM D5293-15によって決定される約1000cP~約7000cPの-25℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、及びASTM D4683-13によって決定される約3.5cP未満の高温高剪断(HTHS)粘度を有する、条項1~3の潤滑油。
【0217】
5.ASTM D2270によって決定される約80~約300の粘度指数(VI)、及びASTM D5800によって決定される25%以下のNoack揮発性を有する、条項1~4の潤滑油。
【0218】
6.ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)が、約0.5cStより多く減少する、条項1~5の潤滑油。
【0219】
7.SAE 5W-20エンジンオイル、SAE 5W-30エンジンオイル、又はSAE 10W-30エンジンオイルである、条項1~6の潤滑油。
【0220】
8.潤滑油として配合油を使用することによって、潤滑油によって潤滑されたエンジンにおける堆積物制御及び清浄度性能を維持又は改善しながら、燃料効率及びエネルギー効率を改善する方法であって、前記配合油がベースオイル混合物を含んでなり、潤滑油がSAE J300粘度グレード分類システムによって決定されるSAEエンジンオイルグレードに関する動粘度(Kv100)及びコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)の両方の必要条件を満たすように、ASTM D5293-15によって決定される潤滑油のコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)を維持又は制御しながら、ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)を減少させるために、ベースオイル混合物が、主成分として潤滑油ベースストックと、100℃において約6.2cSt未満の動粘度(Kv100)を有する潤滑油の1~15重量%の微量成分として少なくとも1種のコベースストックとを含んでなり、そして潤滑油が匹敵するASTM D5293-15によって決定されたコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)及びASTM D4683-13によって決定された高温高剪断(HTHS)粘度を有する場合、コベースストック以外の微量成分を含有する潤滑油を使用して達成された燃料効率、エネルギー効率、堆積物制御及び清浄度性能と比較して、燃料効率及びエネルギー効率が改善され、且つ堆積物制御及び清浄度性能が維持又は改善される、方法。
【0221】
9.少なくとも1種のコベースストックが、C20~36ポリアルファオレフィン、C24~32ポリアルファオレフィン、C24~28ポリアルファオレフィン、又はそれらの混合物であり、且つ約1~約4の分岐点を有する、条項8の方法。
【0222】
10.少なくとも1種のコベースストックが、ASTM D445によって決定される100℃における約4cSt未満の動粘度(Kv100)を有する二量体化、水素化C14線形アルファオレフィンである、条項8及び9の方法。
【0223】
11.潤滑油が、ASTM D445によって決定される約2cSt~約12cStの100℃における動粘度(Kv100)、ASTM D5293-15によって決定される約1000cP~約6200cPの-35℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、ASTM D5293-15によって決定される約1000cP~約6600cPの-30℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、ASTM D5293-15によって決定される約1000cP~約7000cPの-25℃におけるコールドクランキングシミュレーター粘度(CCSV)、及びASTM D4683-13によって決定される約3.5cP未満の高温高剪断(HTHS)粘度を有する、条項8~10の方法。
【0224】
12.潤滑油が、ASTM D2270によって決定される約80~約300の粘度指数(VI)、及びASTM D5800によって決定される25%以下のNoack揮発性を有する、条項8~11の方法。
【0225】
13.ASTM D445によって決定されるベースオイル混合物の動粘度(Kv100)が、約0.5cStより多く減少する、条項8~12の方法。
【0226】
14.潤滑油が、SAE 5W-20エンジンオイル、SAE 5W-30エンジンオイル、又はSAE 10W-30エンジンオイルである、条項8~13の方法。
【0227】
15.潤滑油ベースストックが、グループIIIベースストック、グループIVベースストック、又はそれらの混合物を含んでなる、条項8~14の方法。
【0228】
本明細書に引用される全ての特許及び特許出願、試験手順(ASTM法、UL法など)及び他の文献は、そのような開示が本開示と一致する限り、及びそのような組み込みが容認される全ての権限に関して、参照によって完全に組み込まれる。
【0229】
本明細書で使用される場合、SAE J300粘度グレード分類システムは、SAE Internationalによって出版された、SAE J300 2015版(2015年1月)を指す。
【0230】
数値的な下限及び数値的な上限が本明細書に記載される場合、いずれかの下限からいずれかの上限までの範囲が考慮される。本開示の例示的な実施形態が詳細に記載されているが、様々なその他の修正形態は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかであり、かつ当業者によって容易になされ得ることが理解されるであろう。したがって、添付された特許請求の範囲は、本明細書で明らかにされた実施例及び記載に限定されるように意図されず、むしろ、請求項が、本開示が関連する当業者によって、その均等物として扱われるであろう全ての特徴を含めて、本開示に存在する特許取得可能な新規性の全ての特徴を包含すると解釈される。
【0231】
本開示は、多数の実施形態及び個々の実施例を参照して上記された。上記の詳細な説明を考慮に入れて、当業者は多くの変形形態を提案するであろう。全てのそのような明白な変形形態は、添付の請求項の全ての意図された範囲内にある。
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