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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20220805BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220805BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220805BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220805BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
H05B33/10
H05B33/02
H05B33/12 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020013715
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120926
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【弁理士】
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】梶山 力
(72)【発明者】
【氏名】藤村 洋平
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0191204(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0038590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/02
H05B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された一対の基板と、
前記一対の基板の外周部を封止する封止用接着剤層と、
前記封止用接着剤層の内側かつ前記一対の基板の間に設けられていると共に、有機EL層を含む少なくとも一つの有機EL素子と、
前記封止用接着剤層の内側かつ前記一対の基板の間において、前記有機EL層の周囲に充填された乾燥剤層と、
前記封止用接着剤層の内側かつ前記一対の基板の間において、前記有機EL層の周囲に前記有機EL層から離間して設けられていると共に、前記乾燥剤層を保持する複数の保持リブと、を備え、
前記乾燥剤層は、前記複数の保持リブのうち互いに隣り合う保持リブを連続的に接続しており、
前記乾燥剤層及び前記有機EL素子は、前記封止用接着剤層の内側かつ前記一対の基板の間において空隙を画定しており、
前記有機EL層は、前記一対の基板の対向方向から見て前記空隙と前記有機EL素子との境界領域に重なるように配置されている、発光装置。
【請求項2】
前記複数の保持リブの各々は、前記外周部から前記有機EL層に向かう方向に延在している、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの有機EL素子は、複数の前記有機EL素子を含み、
前記複数の有機EL素子は、前記対向方向と交差する第一方向に配列され、
前記複数の保持リブの各々は、前記対向方向及び前記第一方向と交差する第二方向に延在しており、
前記複数の保持リブの少なくとも一部は、前記第一方向に配列されている、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記乾燥剤層は、捕水成分を含む流体物又は当該流体物の硬化物であり、
前記複数の保持リブの各々は、水平に配置された当該保持リブの表面に前記流体物の液滴を配置した場合に、前記表面と前記液滴との接触角が90度未満となるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記乾燥剤層は、捕水成分を含む流体物又は当該流体物の硬化物であり、
前記複数の保持リブを形成する材料は、ノボラック樹脂及びポリイミド樹脂の少なくとも一つを含み、
前記流体物は、前記捕水成分と、炭化水素系樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一つとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
第一基板の第一主面に対して、有機EL層が形成される第一領域の周囲に複数の保持リブを形成する工程と、
前記有機EL層が前記複数の保持リブから離間するように前記有機EL層を前記第一領域に形成し、前記有機EL層を含む少なくとも一つの有機EL素子を前記第一主面に形成する工程と、
第二基板の第二主面の外周部に位置する第二領域に接着剤を配置する工程と、
前記第二主面に対して、前記第二領域よりも内側に位置する第三領域に捕水成分を含む流体物を配置する工程と、
前記第一主面と前記第二主面とが互いに対向するように前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせることによって前記流体物と前記複数の保持リブとを接触させた後に、前記第一及び第二基板の外周部を封止する封止用接着剤層を前記接着剤によって形成すると共に、前記封止用接着剤層の内側かつ前記第一及び第二基板の間において前記有機EL素子によって画定された空隙を形成する乾燥剤層を前記封止用接着剤層の内側かつ前記第一及び第二基板の間に前記流体物によって形成する工程と、を有する、発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記封止用接着剤層と前記乾燥剤層とを形成する工程では、前記流体物は、前記複数の保持リブに沿って濡れ拡がった後に硬化される、請求項6に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記複数の保持リブを形成する工程では、前記複数の保持リブの各々は、前記外周部から前記第一領域に向かう方向に延在するように配置される、請求項6又は7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの有機EL素子を形成する工程では、前記第一基板の厚さ方向と交差する第一方向に複数の前記有機EL素子が配列され、
前記複数の保持リブを設ける工程では、前記複数の保持リブは、前記複数の保持リブの各々が前記厚さ方向及び前記第一方向と交差する第二方向に延在するように、前記第一方向に配列される、請求項6~8のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記複数の保持リブの各々は、水平に配置された当該保持リブの表面に前記流体物の液滴を配置した場合に、前記表面と前記液滴との接触角が90度未満となるように構成される、請求項6~9のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記複数の保持リブを形成する材料は、ノボラック樹脂及びポリイミド樹脂の少なくとも一つを含み、
前記流体物は、前記捕水成分と、炭化水素系樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一つとを含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子を備えた発光装置が知られている(例えば、特許文献1)。このような発光装置では、互いに対向する一対の基板と、当該一対の基板の外周部を封止する封止用接着剤層とが備えられる。特許文献1では、封止用接着剤層の内側かつ一対の基板の間に、有機EL素子と乾燥剤層とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-296202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、有機EL素子が設けられた第一基板と対向する第二基板に、第一基板と離間して乾燥剤層が設けられている。この構成では、封止用接着剤層は乾燥剤層によって覆われていない。このため、封止用接着剤層の内側において乾燥剤層が設けられていない領域から浸入した水分が、有機EL素子の有機EL層と反応することによって有機EL素子にダークスポットが発生するおそれがある。すなわち、浸入した水分によって、有機EL素子における発光領域が縮小される。そこで、捕水成分を含む流体物を充填して、有機EL素子を囲むように乾燥剤層を形成することが考えられる。
【0005】
有機EL素子の有機EL層と乾燥剤層とが接触した場合にも、有機EL素子にダークスポットが発生する。このため、捕水成分を含む流体物を充填する場合には、保護層を設けることによって、乾燥剤層と有機EL層との接触を抑制することが考えられる。また、保護層を設けずとも、有機EL素子の電極を構成する電極層によって有機EL層を覆うことで、乾燥剤層と有機EL層との接触を抑制することも考えられる。しかし、たとえ有機EL層を上記電極層及び保護層によって覆ったとしても、乾燥剤層は当該電極層及び保護層の隙間に入り込み有機EL層に接触するおそれがある。例えば、電極層及び保護層にクラック等の欠陥部分が存在する場合には、当該欠陥部分に乾燥剤層が入り込み、有機EL層と乾燥剤層とが接触するおそれがある。このように、有機EL素子を囲むように乾燥剤層が充填された構成において、乾燥剤層と有機EL層との接触を抑制することは困難であった。
【0006】
本発明の一つの態様は、有機EL素子におけるダークスポットの発生が抑制された発光装置を提供することを目的とする。本発明の別の態様は、有機EL素子におけるダークスポットの発生が抑制された発光装置を製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様に係る発光装置は、一対の基板と、封止用接着剤層と、少なくとも一つの有機EL素子と、乾燥剤層と、複数の保持リブとを備える。一対の基板は、互いに対向して配置されている。封止用接着剤層は、一対の基板の外周部を封止している。少なくとも一つの有機EL素子は、封止用接着剤層の内側かつ一対の基板の間に設けられていると共に、有機EL層を含む。乾燥剤層は、封止用接着剤層の内側かつ一対の基板の間において、有機EL層の周囲に充填されている。複数の保持リブは、乾燥剤層を保持している。乾燥剤層は、複数の保持リブのうち互いに隣り合う保持リブを連続的に接続している。乾燥剤層及び有機EL素子は、封止用接着剤層の内側かつ一対の基板の間において空隙を画定している。有機EL層は、一対の基板の対向方向から見て空隙と有機EL素子との境界領域に重なるように配置されている。
【0008】
この発光装置では、乾燥剤層は、有機EL層の周囲に充填されていると共に、複数の保持リブのうち互いに隣り合う保持リブを連続的に接続している。この構成によれば、発光装置の外部から浸入した水分が、有機EL層に到達し難い。この発光装置では、複数の保持リブが乾燥剤層を保持しており、乾燥剤層及び有機EL素子は封止用接着剤層の内側かつ一対の基板の間において空隙を画定している。有機EL層は、上記対向方向から見て空隙と有機EL素子との境界領域に重なるように配置されている。このため、上記空隙によって、有機EL層と乾燥剤層との接触も抑制されている。したがって、上記発光装置は、簡易な構成でありながら、水分の有機EL層への到達の抑制と、乾燥剤層と有機EL層との接触の抑制との両立が図られている。この結果、有機EL素子におけるダークスポットの発生が抑制されている。
【0009】
上記一つの態様では、複数の保持リブの各々は、外周部から有機EL層に向かう方向に延在していてもよい。この場合、各保持リブの一端を有機EL層の比較的近くに配置できる。各保持リブに沿って乾燥剤層を設けることができるため、乾燥剤層と有機EL層との接触が抑制されながら、有機EL層の比較的近くまで乾燥剤層が配置され得る。乾燥剤層が有機EL層に近いほど、有機EL層に水分が到達するまでの時間が増加し得る。したがって、乾燥剤層と有機EL層との接触が抑制されていると共に、水分が有機EL層にさらに到達し難い。
【0010】
上記一つの態様では、少なくとも一つの有機EL素子は、複数の有機EL素子を含んでもよい。複数の有機EL素子は、一対の基板の対向方向と交差する第一方向に配列されていてもよい。複数の保持リブの各々は、上記対向方向及び第一方向と交差する第二方向に延在していてもよい。複数の保持リブの少なくとも一部は、第一方向に配列されていてもよい。これらの構成によれば、複数の有機EL素子を備えた構成において、各保持リブの一端を有機EL層の比較的近くに配置できる。各保持リブに沿って乾燥剤層を設けることができるため、乾燥剤層と有機EL層とを離間させつつ、各有機EL素子の有機EL層の比較的近くまで乾燥剤層を配置することができる。
【0011】
上記一つの態様では、乾燥剤層は、捕水成分を含む流体物又は当該流体物の硬化物であってもよい。複数の保持リブの各々は、水平に配置された当該保持リブの表面に上記流体物の液滴を配置した場合に、表面と液滴との接触角が90度未満となるように構成されていてもよい。これらの構成によれば、各保持リブにおいて、流体物に対して濡れ性が確保されている。各保持リブと流体物との間において比較的高い濡れ性が確保されれば、流体物が各保持リブに付着しやすい。このため、簡易な構成によって、各保持リブの配置に応じた乾燥剤層が形成される。したがって、より簡易な構成において、上記空隙によって乾燥剤層と有機EL層との接触が抑制されている。
【0012】
上記一つの態様では、乾燥剤層は、捕水成分を含む流体物又は当該流体物の硬化物であってもよい。複数の保持リブを形成する材料は、ノボラック樹脂及びポリイミド樹脂の少なくとも一つを含んでもよい。流体物は、捕水成分と、炭化水素系樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一つとを含んでもよい。これらの構成によれば、各保持リブにおいて、流体物に対して比較的高い濡れ性が確保され得る。各保持リブと流体物との間において比較的高い濡れ性が確保されれば、流体物が各保持リブに付着しやすい。したがって、より簡易な構成において、上記空隙によって乾燥剤層と有機EL層との接触が抑制されている。
【0013】
本発明の別の態様に係る発光装置の製造方法は、複数の保持リブを形成する工程と、少なくとも一つの有機EL素子を形成する工程と、接着剤を配置する工程と、流体物を配置する工程と、封止用接着剤層及び乾燥剤層を形成する工程とを有する。複数の保持リブを形成する工程では、第一基板の第一主面に対して、第一領域の周囲に複数の保持リブが形成される。第一領域は、有機EL層が形成される領域である。少なくとも一つの有機EL素子を形成する工程では、複数の保持リブから離間するように有機EL層が第一領域に形成され、上記少なくとも一つの有機EL素子が第一主面に形成される。少なくとも一つの有機EL素子は、有機EL層を含む。接着剤を配置する工程では、第二基板の第二主面の外周部に位置する第二領域に接着剤が配置される。流体物を配置する工程では、第二主面に対して、第二領域よりも内側に位置する第三領域に流体物が配置される。流体物は、捕水成分を含む。封止用接着剤層及び乾燥剤層を形成する工程では、第一主面と第二主面とが互いに対向するように第一基板と第二基板とを貼り合わせることによって、流体物と複数の保持リブとが接触される。その後、封止用接着剤層が接着剤によって形成され、乾燥剤層が流体物によって形成される。封止用接着剤層は、第一及び第二基板の外周部を封止する。乾燥剤層は、封止用接着剤層の内側かつ第一及び第二基板の間に形成される。乾燥剤層は、封止用接着剤層の内側かつ第一及び第二基板の間において有機EL素子によって画定された空隙を形成する。
【0014】
この製造方法では、第二基板の第二主面に対して捕水成分を含む流体物が配置され、第一基板と第二基板とを貼り合わせる際に流体物と複数の保持リブとが接触する。乾燥剤層は、複数の保持リブに接触した流体物によって形成される。この方法によれば、乾燥剤層は、各保持リブに沿って、第一領域に形成された有機EL層の周囲に充填され得る。したがって、発光装置の外部から浸入した水分が、有機EL層に到達し難い構成が実現され得る。上記製造方法では、複数の保持リブに沿って乾燥剤層が充填され、封止用接着剤層の内側かつ第一及び第二基板の間において有機EL素子によって画定された空隙が形成される。この場合、上記空隙によって、有機EL層と乾燥剤層との接触が抑制された構成が容易に実現され得る。したがって、この方法によって製造された発光装置では、水分の有機EL層への到達と、乾燥剤層と有機EL層との接触の抑制との両立が図られる。この結果、有機EL素子におけるダークスポットの発生が抑制されている。
【0015】
上記別の態様において、封止用接着剤層と乾燥剤層とを形成する工程では、流体物は、複数の保持リブに沿って濡れ拡がった後に硬化されてもよい。この場合、空隙によって有機EL層と乾燥剤層との接触が抑制される構成がさらに容易に実現され得る。
【0016】
上記別の態様において、複数の保持リブを形成する工程では、複数の保持リブの各々は、外周部から第一領域に向かう方向に延在するように配置されてもよい。この場合、各保持リブの一端が有機EL層の近くに配置される。各保持リブに沿って乾燥剤層を設けることができるため、乾燥剤層と有機EL層との接触が抑制されながら、有機EL層の比較的近くまで乾燥剤層が配置された構成が容易に実現され得る。
【0017】
上記別の態様において、少なくとも一つの有機EL素子を形成する工程では、第一基板の厚さ方向と交差する第一方向に複数の有機EL素子が配列されてもよい。複数の保持リブを設ける工程では、複数の保持リブは、複数の保持リブの各々が厚さ方向及び第一方向と交差する第二方向に延在するように、第一方向に配列されてもよい。これらの方法によれば、複数の有機EL素子を備える構成において、各保持リブの一端が有機EL層の近くに配置される。各保持リブに沿って乾燥剤層を設けることができるため、乾燥剤層と有機EL層との接触が抑制されながら、有機EL層の比較的近くまで乾燥剤層が配置された構成が容易に実現され得る。
【0018】
上記別の態様において、複数の保持リブの各々は、水平に配置された当該保持リブの表面に流体物の液滴を配置した場合に、当該表面と液滴との接触角が90度未満となるように構成されてもよい。この場合、各保持リブにおいて、流体物に対して濡れ性が確保されている。各保持リブと流体物との間において比較的高い濡れ性が確保されれば、流体物が各保持リブに付着しやすい。このため、簡易な構成によって、各保持リブの配置に応じた乾燥剤層が形成される。したがって、上記空隙によって乾燥剤層と有機EL層との接触が抑制された構成がより容易に実現され得る。
【0019】
上記別の態様において、複数の保持リブを形成する材料は、ノボラック樹脂及びポリイミド樹脂の少なくとも一つを含んでもよい。流体物は、捕水成分と、炭化水素系樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一つとを含んでもよい。これらの方法によれば、各保持リブにおいて、流体物して比較的高い濡れ性が確保され得る。この場合、流体物が各保持リブに付着しやすい。したがって、上記空隙によって乾燥剤層と有機EL層との接触が抑制された構成がより容易に実現され得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一つの態様は、有機EL素子におけるダークスポットの発生が抑制された発光装置を提供する。本発明の別の態様は、有機EL素子におけるダークスポットの発生が抑制された発光装置を製造できる製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る発光装置の模式平面図である。
図2】発光装置の断面図である。
図3】発光装置の部分断面図である。
図4】本実施形態の変形例に係る発光装置の断面図である。
図5】本実施形態の変形例に係る発光装置の断面図である。
図6】本実施形態の別の変形例に係る発光装置の断面図である。
図7】発光装置の製造工程を説明するための図である。
図8】発光装置の製造工程を説明するための図である。
図9】発光装置の製造工程を説明するための図である。
図10】本実施形態に係る発光装置の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有している要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0023】
本実施形態の発光装置は、アクティブ駆動方式の発光装置である。発光装置は、パッシブ駆動方式であってもよい。発光装置としては、例えば、光感応媒体を露光するために発光する光プリントヘッド、照明用に発光する照明装置、サイネージ表示又はセグメントパターンを表示する表示装置等が挙げられる。発光装置の形状は、特に限定されるものではなく、細長い直線状、曲線状、らせん状等とすることができる。本実施形態では、一例として、発光装置が平面視において矩形形状に形成されているものとして説明する。
【0024】
図1図3を参照して、本実施形態の発光装置について説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置の模式平面図である。図1に示すように、本実施形態の発光装置1は、平面視において矩形形状に形成されている。この平面視において、発光装置1の長辺1aが延在している方向(一対の短辺1b,1bの対向方向)を長辺方向D1といい、発光装置1の短辺1bが延在している方向(一対の長辺1a,1aの対向方向)を短辺方向D2という。
【0025】
図1図3に示すように、本実施形態の発光装置1は、互いに対向して配置された一対の基板2,3と、封止用接着剤層4と、少なくとも一つの有機EL素子10と、複数の保持リブ20と、乾燥剤層30と、を備える。図2及び図3は、発光装置1の断面図を示している。図2は、図3に示すII-II線における発光装置1の断面図である。図3は、図2に示すIII-III線における発光装置1の部分断面図である。例えば、基板2は第一基板に相当し、基板3は第二基板に相当する。
【0026】
基板2は、有機EL素子10等が設けられる素子基板である。基板2は、例えば、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、又は可撓性を有する基板(例えば、プラスチック基板等)である。基板2は、例えば、透光性を有している。基板2は、例えば、矩形の板状に形成されている。基板2は、水蒸気を透過しない材料により形成されていることが好ましい。ここで、水蒸気を透過しないとは、水蒸気を完全に透過しないことに限られず、水蒸気を実質的に透過しないことも含む。例えば、水蒸気透過度が10-5[g/m・day]台以下である材料が、水蒸気を透過しない材料に相当する。
【0027】
基板3は、有機EL素子10等を封止する封止基板であり、基板2に対向するように設けられている。基板2と基板3とは、互いに積層されている。以下では、基板2と基板3とが互いに積層する方向を、単に「積層方向」という。積層方向は、一対の基板2,3の対向方向に相当する。本明細書では、積層方向から見ることを、平面視という。基板3は、例えば、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、又は可撓性を有する基板(例えば、プラスチック基板等)である。基板3は、例えば、透光性を有していてもよい。基板3は、例えば、矩形の板状に形成されている。基板3は、水蒸気を透過しない材料により形成されていることが好ましい。
【0028】
封止用接着剤層4は、基板2と基板3とを直接的又は間接的に接合して、一対の基板2,3の外周部2a,3aを封止する。換言すれば、封止用接着剤層4は、基板2と基板3との間に封止空間Sを形成する。本実施形態では、積層方向における封止空間Sの高さは、例えば、10μm~30μmである。短辺方向D2における封止空間Sの幅は、例えば、4mm~10mmである。封止用接着剤層4は、一対の基板2,3の間に封止空間Sを形成するために枠状に形成されている。封止用接着剤層4は、例えば、角を丸くした矩形の枠状に形成されている。封止用接着剤層4は、例えば、接着剤によって形成される。封止用接着剤層4を形成する材料は、例えば、紫外線硬化性エポキシ樹脂を含む。
【0029】
有機EL素子10は、電流が供給されることによって光を発生する素子である。有機EL素子10は、封止用接着剤層4の内側かつ一対の基板2,3の間に設けられている。有機EL素子10は、封止空間Sにおいて基板2上に配置されている。有機EL素子10は、基板2に接していることが好ましい。有機EL素子10は、下部電極層11、有機EL層12、上部電極層13、及び保護層17を含む。有機EL素子10では、基板2側から下部電極層11、有機EL層12、及び上部電極層13がこの順に配置されている。有機EL素子10は、有機EL層12によって発光画素Aを構成する。本明細書では、1つの発光画素Aが1つの有機EL素子10において構成されるものとして説明する。発光画素Aは、例えば、不図示の画素回路の駆動に応じて発光する。
【0030】
上記画素回路は、例えば、有機EL素子10を駆動するためのスイッチング素子であり、各発光画素Aに対応して設けられている。画素回路は、有機EL素子10を駆動する電気回路の一部であり、下部電極層11に電気的に接続されている。画素回路としては、例えば、低温多結晶シリコン薄膜トランジスタ(LTPS-TFT)及びキャパシタからなる半導体回路を用いることができる。
【0031】
本実施形態では、発光装置1は、複数の有機EL素子10を備えている。複数の有機EL素子10は、基板2上に設けられている。本実施形態では、複数の有機EL素子10は、4列に配列されている。各列における複数の有機EL素子10は、一対の基板2,3の対向方向と交差する第一方向に配列されている。各列における複数の有機EL素子10は、例えば、長辺方向D1に直線状に配列されている。複数の有機EL素子10の各列は、短辺方向D2に並列に配置されている。本実施形態では、各有機EL素子10は、互いに隣り合う列の有機EL素子10が長辺方向D1において互いに対してズレるように配置されている。換言すれば、本実施形態では、互いに隣り合う列の有機EL素子10は、長辺方向D1において交互に位置し、千鳥配列によって配置されている。本実施形態では、複数の有機EL素子10は、短辺方向D2に4列に並列に配列されており、千鳥配列された2列の有機EL素子10の組が短辺方向D2に並列に配置されるように構成されている。
【0032】
本実施形態の変形例として、複数の有機EL素子10は、3列以下で配列されていてもよい。複数の有機EL素子10は、1列に配列されていてもよい。複数の有機EL素子10は、5列以上で配列されていてもよい。
【0033】
本実施形態の別の変形例として、図4に示されているように、複数の有機EL素子10は、2列に配列されていてもよい。図4は、図3と同様に、発光装置1の部分断面図である。本変形例では、互いに隣り合う2列の有機EL素子10が、長辺方向D1において交互に位置し、千鳥配列によって配置されている。換言すれば、複数の有機EL素子10は、千鳥配列された2列の有機EL素子10の一組だけが配置されるように構成されている。
【0034】
本実施形態のさらに別の変形例として、図5に示されているように、複数の有機EL素子10は、行列状に配列されていてもよい。図5は、図3及び図4と同様に、発光装置1の部分断面図である。図5に示される構成では、複数の有機EL素子10は、長辺方向D1においても短辺方向D2においても直線状に配列される。図5に示されている構成では、互いに隣り合う列の有機EL素子10が長辺方向D1において互いに揃って配置されている。図5に示される構成でも、複数の有機EL素子10は、4列に並列に配列されている。
【0035】
本実施形態では、各有機EL素子10は、例えば、互いに離間した下部電極層11を有する。複数の有機EL素子10は、例えば、互いに接続された有機EL層12を有する。複数の有機EL素子10は、例えば、互いに接続された上部電極層13を有する。複数の有機EL素子10は、例えば、互いに接続された保護層17を有する。換言すれば、複数の有機EL素子10は、有機EL層12、上部電極層13及び保護層17を共有していてもよい。各発光画素Aは、有機絶縁層15によって画定されている。
【0036】
下部電極層11は、陽極又は陰極の何れか一方として機能する導電層である。下部電極層11は、例えば、陽極として機能する透明導電層である。下部電極層11は、不図示の箇所で引き出され画素回路に接続されている。下部電極層11を形成する材料は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、アルミニウム、銀、又はアルカリ土類金属等を含む。
【0037】
有機EL層12は、発光材料を含む有機発光層を少なくとも備える。有機EL層12は、有機発光層に加えて、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、及び電子輸送層等を有してもよい。
【0038】
上部電極層13は、陽極又は陰極の何れか他方として機能する導電層である。本実施形態では、上部電極層13は、陰極として機能する導電層である。上部電極層13は、有機EL層12を覆っている。これによって、有機EL層12と乾燥剤層30との接触が抑制されている。上部電極層13は、無機材料により形成されている。上部電極層13を形成する材料は、例えば、アルミニウム若しくは銀等の金属、又は、ITO、IZO、若しくはアルカリ土類金属等を含む。
【0039】
有機絶縁層15は、有機材料により形成されている。有機絶縁層15を形成する有機材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、又はポリイミド樹脂等を用いることができる。有機絶縁層15は、下部電極層11の一部を覆って、有機EL層12と下部電極層11とが接する範囲を画定する。有機絶縁層15には、発光画素Aを画定する開口15aが形成されており、開口15aにおいて有機EL層12と下部電極層11とが接する。これによって、発光画素Aが画定される。したがって、発光画素Aの位置及び形状は、有機絶縁層15の開口15aの位置及び形状に依存する。
【0040】
保護層17は、上部電極層13を覆う無機層である。保護層17は、例えば、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、又は酸化アルミニウム層等である。保護層17は、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。
【0041】
複数の保持リブ20は、封止用接着剤層4の内側かつ一対の基板2,3の間に設けられ、乾燥剤層30を保持する。複数の保持リブ20は、例えば、捕水成分を含む流体物を充填することで乾燥剤層30を形成する場合に、当該流体物の位置をガイドする。本明細書において、「充填」とは、少なくとも、基板2,3の対向方向において基板2,3の間に隙間なく配置されることをいう。各保持リブ20は、例えば、水平に配置された当該保持リブ20の表面に上記流体物の液滴を配置した場合に、保持リブ20の表面と液滴との接触角が90度未満となるように構成されている。各保持リブ20を形成する材料は、例えば、ノボラック樹脂、及びポリイミド樹脂の少なくとも一つを含む。本実施形態では、各保持リブ20と流体物43との間における濡れ性は、上部電極層13と流体物43との間における濡れ性よりも高い。
【0042】
各保持リブ20が、上記流体物に対して比較的低い濡れ性を有し、複数の保持リブ20の配置及び形状によって上記流体物の位置をガイドしてもよい。各保持リブ20は、上記流体物の位置をガイドするものでなくとも、乾燥剤層30を保持することで乾燥剤層30を位置決めするものであればよい。
【0043】
複数の保持リブ20は、封止空間Sにおいて基板2上に配置されている。複数の保持リブ20は、有機EL層12の周囲に設けられており、有機EL層12から離間している。有機EL層12は、上述した短辺方向D2において、複数の保持リブ20の間に位置する。本実施形態では、各保持リブ20は、上部電極層13からも離間しており、有機EL素子10からも離間している。各保持リブ20は、有機EL層12から離間していれば、上部電極層13と接していてもよい。
【0044】
各保持リブ20は、平板形状を呈しており、基板2の主面に対して板面が交差するように配置されている。板面は、保持リブ20において最も広い面である。例えば、各保持リブ20は、基板2の主面に立設されている。各保持リブ20は、一対の基板2,3の外周部2a,3aから有機EL層12に向かう方向に延在している。各保持リブ20は、当該保持リブ20に最も近い封止用接着剤層4の延在方向と交差する方向に延在している。
【0045】
本実施形態では、各保持リブ20は、一対の基板2,3の対向方向及び各列の有機EL素子10が配列されている第一方向と交差する第二方向に延在している。各保持リブ20は、例えば、平板面が積層方向と平行になると共に上述した短辺方向D2に延在するように配置されている。各保持リブ20の厚さは、例えば、2μm~5μmである。各保持リブ20の平板面における幅は、例えば、0.1~0.2mmである。平板面における幅は、積層方向における各保持リブ20の高さを意味する。各保持リブ20の平板面における長辺の長さは、例えば、1mm~2mmである。各保持リブ20の平板面における長辺は、平板面において短辺方向D2に延在する辺のうち最も長い辺を意味する。本実施形態では、各保持リブ20の平板面は、逆台形状を呈しており、上辺及び下辺のうち短い方の辺が長い方の辺よりも基板2側に位置している。
【0046】
複数の保持リブ20の少なくとも一部は、各列の有機EL素子10が配列されている第一方向に配列されている。本実施形態では、複数の保持リブ20は、2列に配列されている。各列における複数の保持リブ20は、各列の有機EL素子10が配列されている第一方向に配列されている。すなわち、各列における複数の保持リブ20は、各列における有機EL素子10に沿って配列されている。各列における複数の保持リブ20は、例えば、長辺方向D1に配列されている。複数の保持リブ20の各列は、短辺方向D2に並列されている。有機EL層12は、互いに異なる列の複数の保持リブ20に挟まれて位置している。
【0047】
乾燥剤層30は、封止用接着剤層4の内側かつ一対の基板2,3の間において、有機EL層12の周囲に設けられている。乾燥剤層30は、封止空間S内に充填されている。乾燥剤層30は、捕水成分を含み、当該捕水成分によって封止空間Sを乾燥させる。乾燥剤層30は、例えば、捕水成分を含む流体物又は当該流体物の硬化物である。乾燥剤層30は、封止用接着剤層4と有機EL層12との間に位置しており、封止用接着剤層4に沿って一対の基板2,3の間に隙間なく形成されている。換言すれば、乾燥剤層30は、基板2,3の対向方向において基板2,3の間に隙間なく配置されている部分が外周部2a,3aに沿って連続的に位置するように設けられる。本実施形態では、上部電極層13と乾燥剤層30との間に、保護層17が位置する。
【0048】
乾燥剤層30は、複数の保持リブ20の周囲に設けられており、有機EL層12から離間している。乾燥剤層30は、複数の保持リブ20のうち互いに隣り合う保持リブ20を連続的に接続する。乾燥剤層30は、封止空間S内に密閉された空隙Vを形成する。空隙Vは、基板3、有機EL素子10、及び乾燥剤層30によって画定されており、封止用接着剤層4には接していない。有機EL層12は、一対の基板2,3の対向方向から見て、空隙Vと有機EL素子10との境界領域αに重なるように配置されている。乾燥剤層30に含まれる捕水成分は、例えば、CaO若しくはSrO等のアルカリ土類金属酸化物、又は有機金属錯体化合物を含む。
【0049】
本実施形態では、複数の有機EL素子10は、平面視で長尺形状の領域において長辺方向D1に配列されている。乾燥剤層30は、複数の有機EL素子10に沿って長尺状に形成されており、空隙Vは長尺状に長辺方向D1に延在している。複数の有機EL素子10の構成は、このような構成に限定されない。図6に示されるように、複数の有機EL素子10は、平面視で長辺方向D1の長さ及び短辺方向D2の長さが同等の矩形状の領域に行列状に配置されていてもよい。図6は、図3図5と同様に、発光装置1の部分断面図である。この場合、例えば、封止用接着剤層4は、平面視で長辺方向D1の長さ及び短辺方向D2の長さが同等の矩形状の封止空間Sを形成してもよい。乾燥剤層30は、上述した実施形態と同様に封止用接着剤層4に沿って形成され、平面視で長辺方向D1の長さ及び短辺方向D2の長さが同等の矩形状の空隙Vを形成してもよい。図6に示された構成においても、複数の保持リブ20は、当該保持リブ20に最も近い封止用接着剤層4の延在方向と交差する方向に延在している。図6に示された構成では、複数の保持リブ20は、長辺方向D1に延在する複数の保持リブ20と、短辺方向D2に延在する複数の保持リブ20とを含んでいる。
【0050】
次に、図7図10を参照して、発光装置1の製造方法を説明する。図7図8、及び図9は、発光装置1の製造工程を説明するための図である。図10は、発光装置1の製造方法のフローチャートである。本実施形態における発光装置1の製造方法は、下部電極層及び有機絶縁層の形成工程(工程S1)と、保持リブの形成工程(工程S2)と、有機EL層の形成工程(工程S3)と、上部電極層の形成工程(工程S4)と、接着剤の塗布工程(工程S5)と、流体物の塗布工程(工程S6)と、貼り合わせ工程(工程S7)と、硬化工程(工程S8)とを含む。以下、これらの工程に基づく、発光装置1の製造方法の一例について説明する。工程S1~工程S8が行われる順序は、下記の説明の順序に限定されない。例えば、工程S1と工程S2とが行われる順序は、逆でもよいし同時でもよい。工程S2と工程3とが行われる順序は、逆でもよい。工程S5と工程S6とが行われる順序は、逆でもよい。
【0051】
まず、予め画素回路等が形成された基板2の主面25に対して、下部電極層11及び有機絶縁層15を形成する(工程S1)。下部電極層11は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法等のPVD法(Physical Vapor Deposition:物理気相成長法)によって基板2上に成膜した透明導電膜をパターニングすることによって形成される。有機絶縁層15は、例えば、スピンコート等のウェット工法で基板2上に塗膜し、フォトリソグラフィにより任意の形状にパターニングすることによって形成される。例えば、主面25は、第一主面に相当する。
【0052】
次に、基板2の主面25に対して複数の保持リブ20を形成する(工程S2)。複数の保持リブ20は、有機EL層12が形成される領域βの周囲に形成される。領域βは、基板2の主面25に直交する方向から見て、工程S1において形成された下部電極層11及び有機絶縁層15と重なる領域である。各保持リブ20は、外周部2a,3aから領域βに向かう方向に延在するように配置される。複数の保持リブ20は、各保持リブ20が基板2の厚さ方向及び長辺方向D1と交差する短辺方向D2に延在するように、長辺方向D1に配列される。各保持リブ20を形成する材料は、例えば、ノボラック樹脂及びポリイミド樹脂の少なくとも一つを含む。例えば、領域βは、第一領域に相当する。
【0053】
次に、図7に示されるように、有機EL層12を領域βに形成する(工程S3)。有機EL層12は、複数の保持リブ20から離間するように形成される。有機EL層12は、例えば、PVD法、又はインクジェット法によって形成される。例えば、複数の保持リブ20の上にマスクを配置して、領域βに有機EL層12が蒸着されてもよい。
【0054】
次に、基板2の主面25に対して上部電極層13を形成する(工程S4)。上部電極層13は、例えば、電子ビーム蒸着法、又はPVD法によって形成される。例えば、アルミニウムが基板2の主面25に直交する方向から蒸着されてもよい。この場合、図8に示されるように、アルミニウムが有機EL層12上に蒸着されて上部電極層13が形成されると共に、アルミニウムが複数の保持リブ20上にも蒸着されて分離層41も形成される。この場合、上部電極層13と分離層41とは、電気的に分断される。
【0055】
次に、基板2の主面25に対して保護層17を形成する(工程S5)。保護層17は、例えば、PVD法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成される。
【0056】
工程S1、工程S3、及び工程S4によって、有機EL層12を含む複数の有機EL素子10が主面25に形成される。複数の有機EL素子10は、基板2の厚さ方向と交差する長辺方向D1に配列される。
【0057】
次に、基板3の主面35に対して接着剤42を配置する(工程S6)。図9に示されているように、接着剤42は、主面35の外周部3aに位置する領域R1に塗布される。接着剤42は、例えば、硬化前の紫外線硬化性エポキシ樹脂を含む。接着剤42は、主面35の縁に沿って枠状に塗布される。例えば、主面35は第二主面に相当する。例えば、領域R1は、第二領域に相当する。
【0058】
次に、主面35に対して、捕水成分を含む流体物43を配置する(工程S7)。流体物43は、領域R1よりも内側に位置する領域R2に塗布される。例えば、流体物43は、領域R2に滴下されことによって塗布される。流体物43に含まれる捕水成分は、例えば、CaO若しくはSrO等のアルカリ土類金属酸化物、又は有機金属錯体化合物を含む。流体物43は、上記捕水成分のほか、炭化水素系樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一つを含む。例えば、領域R2は、第三領域に相当する。
【0059】
次に、基板2と基板3とを貼り合わせる(工程S8)。一対の基板2,3は、主面25と主面35とが互いに対向するように貼り合わせられる。例えば、主面25と主面35とが対向するように配置した後に、図9で示されるように基板2を基板3に対して相対的に矢印50の方向に移動させる。これによって、流体物43と複数の保持リブ20とが接触する。各保持リブ20は、水平に配置された当該保持リブ20の表面に流体物43の液滴を配置した場合に、当該表面と液滴との接触角が90度未満となるように構成される。各保持リブ20と流体物43との間で比較的高い濡れ性が確保されていれば、流体物43は複数の保持リブ20との接触によって各保持リブ20に沿って濡れ拡がる。この結果、接着剤42の内側かつ一対の基板2,3の間において有機EL素子10と流体物43とによって画定された空隙Vが形成される。上部電極層13と流体物43との間における濡れ性が各保持リブ20と流体物43との間における濡れ性よりも低い場合には、流体物43は各保持リブ20に沿って移動し易い。
【0060】
次に、接着剤42を硬化させる(工程S9)。接着剤42を硬化させることで、図2に示されている様に、一対の基板2,3の外周部2a,3aを封止する封止用接着剤層4が形成される。本実施形態では、工程S8において、接着剤42に加えて、流体物43も硬化させる。すなわち、流体物43は、工程S7において複数の保持リブ20に沿って濡れ拡がった後に硬化される。本実施形態では、流体物43を硬化させることで、図2に示されているように封止空間Sを乾燥させる乾燥剤層30が形成される。本実施形態の変形例として、乾燥剤層30は、硬化されていない流体物43からなってもよい。
【0061】
流体物43と複数の保持リブ20との接触によって流体物43が各保持リブ20に沿って配置されるため、乾燥剤層30は、複数の保持リブ20のうち互いに隣り合う保持リブ20を連続的に接続するように形成される。乾燥剤層30は、封止用接着剤層4の内側かつ一対の基板2,3の間に形成される。乾燥剤層30は、封止用接着剤層4の内側かつ一対の基板2,3の間において有機EL素子10によって画定された空隙Vを形成する。有機EL層12は、一対の基板2,3の対向方向から見て、空隙Vと有機EL素子10との境界領域αに重なるように配置されている。
【0062】
以上の様に、流体物43と複数の保持リブ20とを接触させた後に、封止用接着剤層4が接着剤42によって形成され、乾燥剤層30が流体物43によって形成される。「乾燥剤層30が流体物43によって形成される」には、乾燥剤層30が流体物43の硬化物からなる場合と、乾燥剤層30が硬化されていない流体物43からなる場合を含む。
【0063】
次に、上述した実施形態における発光装置及びその製造方法の作用効果について説明する。この発光装置1では、乾燥剤層30は、有機EL層12の周囲に充填されていると共に、複数の保持リブ20のうち互いに隣り合う保持リブ20を連続的に接続している。この構成によれば、発光装置1の外部から浸入した水分が、有機EL層12に到達し難い。この発光装置1では、複数の保持リブ20が乾燥剤層30を保持しており、乾燥剤層30及び有機EL素子10は封止用接着剤層4の内側かつ一対の基板2,3の間において空隙Vを画定している。有機EL層12は、基板2,3の対向方向から見て、空隙Vと有機EL素子10との境界領域αに重なるように配置されている。このため、空隙Vによって有機EL層12と乾燥剤層30との接触も抑制されている。したがって、発光装置1は、簡易な構成でありながら、水分の有機EL層12への到達の抑制と、乾燥剤層30と有機EL層12との非接触との両立が図られている。この結果、有機EL素子10におけるダークスポットの発生が抑制されている。
【0064】
複数の保持リブ20の各々は、外周部2a,3aから有機EL層12に向かう方向に延在している。この場合、各保持リブ20の一端が有機EL層12の比較的近くに配置される。各保持リブ20に沿って乾燥剤層30を設けることができるため、乾燥剤層30と有機EL層12との接触が抑制されながら、有機EL層12の比較的近くまで乾燥剤層30が配置され得る。乾燥剤層30が有機EL層12に近いほど、有機EL層12に水分が到達するまでの時間が増加し得る。したがって、乾燥剤層30と有機EL層12との接触が抑制されていると共に、水分が有機EL層12にさらに到達し難い。
【0065】
複数の有機EL素子10は、一対の基板2,3の対向方向と交差する第一方向に配列されている。複数の保持リブ20の各々は、上記対向方向及び複数の有機EL素子10が配列されている第一方向と交差する第二方向に延在する。複数の保持リブ20の少なくとも一部は、各列の有機EL素子10が配列されている第一方向に配列されている。この場合、複数の有機EL素子10を備えた構成において、各保持リブ20の一端が有機EL層12の比較的近くに配置される。各保持リブ20に沿って乾燥剤層30を設けることができるため、乾燥剤層30と有機EL層12とを離間させつつ、各有機EL素子10の有機EL層12の比較的近くまで乾燥剤層30を配置することができる。
【0066】
乾燥剤層30は、捕水成分を含む流体物43又は流体物43の硬化物である。複数の保持リブ20の各々は、水平に配置された当該保持リブ20の表面に上記流体物43の液滴を配置した場合に、表面と液滴との接触角が90度未満となるように構成されている。この場合、各保持リブ20において、流体物43に対して濡れ性が確保されている。各保持リブ20と流体物43との間において比較的高い濡れ性が確保されれば、流体物43が各保持リブ20に付着しやすい。このため、簡易な構成によって、各保持リブ20の配置に応じた乾燥剤層30が形成される。したがって、より簡易な構成において、空隙Vによって乾燥剤層30と有機EL層12との接触が抑制される。
【0067】
複数の保持リブ20を形成する材料は、ノボラック樹脂及びポリイミド樹脂の少なくとも一つを含んでもよい。流体物43は、捕水成分と、炭化水素系樹脂及びシリコーン樹脂の少なくとも一つとを含んでもよい。これらの場合、各保持リブ20において、流体物43に対して比較的高い濡れ性が確保され得る。したがって、より簡易な構成において、空隙Vによって乾燥剤層30と有機EL層12との接触が抑制されている。
【0068】
上述した製造方法では、基板3の主面35に対して捕水成分を含む流体物43が配置され、一対の基板2,3を貼り合わせる際に流体物43と複数の保持リブ20とが接触する。乾燥剤層30は、複数の保持リブ20に接触した流体物43によって形成される。乾燥剤層30は、各保持リブ20に沿って、領域βに形成された有機EL層12の周囲に充填され得る。したがって、発光装置1の外部から浸入した水分が、有機EL層12に到達し難い構成が実現され得る。上記製造方法では、複数の保持リブ20に沿って乾燥剤層30が充填され、封止用接着剤層4の内側かつ基板2,3の間において有機EL素子10によって画定された空隙Vが形成される。この場合、空隙Vによって、有機EL層12と乾燥剤層30との接触が抑制された構成が容易に実現され得る。
【0069】
封止用接着剤層4と乾燥剤層30とを形成する工程では、流体物43は、複数の保持リブ20に沿って濡れ拡がった後に硬化される。この場合、空隙Vによって有機EL層12と乾燥剤層30との接触が抑制される構成がさらに容易に実現され得る。
【0070】
複数の保持リブ20を形成する工程では、各保持リブ20は、外周部2a,3aから領域βに向かう方向に延在するように配置される。この場合、各保持リブ20が有機EL層12に比較的近くに配置される。各保持リブ20に沿って乾燥剤層30を設けることができるため、乾燥剤層30と有機EL層12との接触が抑制されながら、有機EL層12の比較的近くまで乾燥剤層30が配置された構成が容易に実現され得る。
【0071】
有機EL素子10を形成する工程では、基板2の厚さ方向と交差する第一方向に複数の有機EL素子10が配列される。複数の保持リブ20を設ける工程では、複数の保持リブ20は、各保持リブ20が厚さ方向及び複数の有機EL素子10が配列される第一方向と交差する第二方向に延在するように、複数の有機EL素子10が配列される第一方向に配列される。この場合、複数の有機EL素子10を備える構成において、各保持リブ20が有機EL層12に比較的近くに配置される。と共に乾燥剤層30と有機EL層12とが離間した構成でありながら、有機EL層12の比較的近くまで乾燥剤層30を配置した構成が容易に実現され得る。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0073】
例えば、発光装置1が有する有機EL素子10の数は、一つであってもよい。換言すれば、発光装置1における発光画素Aの数は、一つであってもよい。
【0074】
各保持リブ20の板面は、逆台形状に限定されず、例えば、長方形であってもよい。各保持リブ20は、短辺方向D2に延在するものに限定されない。各保持リブ20は、平板形状でなくてもよい。
【0075】
本実施形態及び変形例では、有機EL素子10が保護層17を含む構成について説明した。しかし、有機EL素子10は、保護層17を含んでいなくてもよい。換言すれば、上部電極層13は、保護層17によって覆われていなくてもよい。この場合、乾燥剤層30及び空隙Vは、上部電極層13に接する。この場合、上部電極層13が電極としての機能と保護層としての機能とを兼ね備えてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…発光装置、2,3…基板、2a,3a…外周部、4…封止用接着剤層、10…有機EL素子、12…有機EL層、20…保持リブ、30…乾燥剤層、42…接着剤、43…流体物、V…空隙、α…境界領域、β,R1,R2…領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10