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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】検査装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/09 20060101AFI20220805BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20220805BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
G01N29/09
G01N27/02 Z
G01N29/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020162583
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055147
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】518025803
【氏名又は名称】金友 正文
(74)【代理人】
【識別番号】100145883
【弁理士】
【氏名又は名称】新池 義明
(72)【発明者】
【氏名】金友 正文
(72)【発明者】
【氏名】村山 省己
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 春久
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-054039(JP,A)
【文献】特開2019-128193(JP,A)
【文献】特開2000-146780(JP,A)
【文献】特開2020-020763(JP,A)
【文献】米国特許第5798981(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0203599(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01L 3/00 - G01L 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を備えた超音波プローブ(1)と、
該超音波プローブと物理的に固定されている、軸部を有するばね受け部材(9)と、
該ばね受け部材の該軸部に外嵌されており、フランジ部を有する軸受(15)と、
該ばね受け部材の該軸部に挿入されており、該ばね受け部材と該軸受のフランジ部の間に介在されている圧縮ばね(7)と、
該ばね受け部材の該軸部の超音波プローブと反対方向に位置する端面と物理的に接合されている連結部材(17)と、
該軸受と物理的に接合されているケース(19,29)と、
該ケースに前記連結部材と接触可能に取り付けられている調整手段(23,57)と
を備え、
前記超音波プローブが被検体に所定の荷重を付与することを可能にする、締結状態の検査装置(100,200)
【請求項2】
前記調整手段は、ネジ部を含み、前記ばね受け部材の前記軸部の中心軸と中心軸を共通するように前記ケースに該ネジ部が挿通されてなる請求項1記載の検査装置
【請求項3】
前記所定の荷重が37ニュートンから87ニュートンである請求項1又は請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の検査装置を用いて、前記超音波プローブの先端に振幅0.001μmから1.0μm、周波数1KHzから100KHzの超音波が生じるように前記圧電素子に電圧を印加する、締結状態の検査方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の検査装置を用いて、前記超音波プローブの軸中心が被締結部材と締結部材を締結する締結手段の頭部の中心から周縁までの長さの1/2より内側に所定の荷重を付与する、締結状態の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の締結状態を検査する検査装置及び方法に関し、例えば、ネジの締結状態を検査する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機、モータなどの産業機器、自動車、電車、航空機などの輸送機、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどの家電品は複数個の部品を組み合わせて性能を発揮する。この組み合わせを行う締結には、ネジ、リベット、溶接などが採用される。例えば、ネジ締結は、ネジの回転により簡便に締結できるが、締め忘れ、締め付けトルク不足、変動衝撃荷重などによる緩みが発生するおそれがある。この緩みは重大な事故を発生させることがあるので、メーカーは締結不備対策に時間と労力を費やしている。
【0003】
締結状態を検査する方法として、視認、打音、ひずみゲージによる変形計測などが一般的であるが、他の方法として、超音波のインピーダンスと共振周波数変化を計測して検査する技術がある。この技術は、ネジの着座に着目し、ネジ頭の座面と被締結物との接触状態をインピーダンス変化として計測するため、小型のネジにも適用が可能であり、装置も安価に構成することができる(特許文献1段落[0013],[0039]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-54039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の装置では、選択するデータの選定方法、比較する場合のデータの判定法など締結ネジのインピーダンス変化と締結力の関係について何ら記載されておらず、未解決である。
そこで、本発明の目的は、被検体の締結状態を信頼性高く診断することが可能な締結状態の検査装置及び検査する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点では、本発明は、圧電素子を備えた超音波プローブ1と、該超音波プローブと物理的に固定されている、軸部を有するばね受け部材9と、該ばね受け部材の該軸部に外嵌されており、フランジ部を有する軸受15と、該ばね受け部材の該軸部に挿入されており、該ばね受け部材と該軸受のフランジ部の間に介在されている圧縮ばね(7)と、該ばね受け部材の軸部の超音波プローブと反対方向に位置する端面と物理的に接合されている連結部材17と、該軸受と物理的に接合されているケース19,29と、該ケースに前記連結部材と接触可能に取り付けられている調整手段23,57とを備え、超音波プローブが被検体に所定の荷重を付与することを可能にする、締結状態の検査装置100,200を提供する。
上記第1の観点による検査装置では、超音波プローブが被検体に対して所定の荷重で押し付けられるので、より安定した被検体からの超音波に対応するインピーダンスデータを得ることができる。これにより、被検体の締結状態をより高い精度で検査することが可能になる。
【0007】
本発明において、所定の荷重が37ニュートンから87ニュートンの間であるのが好ましい。これにより、押し付け荷重を変えても被検体内から受信した反射波(超音波)のインピーダンスピークの周波数の変化は少なく、データは安定しているので、安定した検査値が得られる。
本発明において、調整手段は、ネジ部を含み、ばね受け部材の軸部の中心軸と中心軸を共通するようにケースに該ネジ部が挿通されてなる検査装置が好ましい。このことによって、小型で簡易な検査装置とすることができる。
【0008】
第2の観点では、本発明は、上記第1の観点の検査装置を用いて、超音波プローブの先端に振幅0.001μmから1.0μm、周波数1KHzから100KHzの超音波が生じるように前記圧電素子に電圧を印加する、締結状態の検査方法を提供する。
【0009】
上記第2の観点による検査方法では、ばらつきが少ないインピーダンスデータを取得することができるので、信頼できる締結状態の検査が可能になる。
【0010】
第3の観点では、本発明は、上記第1の観点の検査装置を用いて、超音波プローブの軸中心が被締結部材と締結部材を締結する締結手段の頭部の中心から周縁までの長さの1/2より内側に所定の荷重を付与する、締結状態の検査方法を提供する
【0011】
上記第3の観点による方法では、ばらつきが少ないインピーダンスデータを取得することができるので、信頼できる締結状態の検査ができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検査装置及び方法によれば、超音波プローブが被検体に対して所定の荷重で押し付けられた状態で被検体に超音波を送信し、被検体から反射波を受信することができるので、より安定したインピーダンスデータを得ることができる。これにより、被検体の締結状態をより高い精度で検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1に係る検査装置を示す構成説明図である。
図2】実施例1に係る検査装置を被検体に押し付けた状態を示す説明図である。
図3】被検体の締結状態を検査する装置全体を示す説明図である。
図4】押し付け荷重とインピーダンスのピーク値の関係を示す図である。
図5】周波数とインピーダンス値の関係を示す図である。
図6】締結ネジとプローブの軸中心のズレとインピーダンスの関係を示す図である。
図7】実施例2に係る検査装置を示す構成説明図である。
図8】実施例3に係る検査装置の使用概念図である。
図9】実施例3に係る周波数とインピーダンスの関係を示す図である。
図10】実施例4に係る周波数とインピーダンスの関係を示す図である。
図11】実施例5に係るネジの軸力とインピーダンスの関係を示す図である。
図12】実施例6に係る締結力を変化させたときのピークと周波数を示す図である。
図13】実施例7に係る周波数とインピーダンスの関係を示す図である。
図14】実施例8に係るプローブの先端の変位と周波数関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。実施例を説明するに当たって、同一機能を奏するものは同じ符号を付し、その重複する説明を省略する。
【実施例
【0017】
-実施例1-
図1は、実施例1に係る検査装置を示す構成説明図である。
検査装置100は、その本体を覆う本体ケース(本明細書において、単に「ケース」ということがある。)19を有しており、この内部には、本体ケース19の内面に突設された支持部31にガイドホルダー27が載置されている。ガイドホルダー27の内側に各中心軸が重なるように、フランジ部を有する軸受15がガイドホルダー27にボルトで固定されている。軸受15は、その中心軸に直交する断面は二重円形状であり、その中心軸に平行な円柱形の穴を有する。ばね受け部材9はばねを受ける面と垂直な中心線方向に円柱形の軸部を有し、該軸部は軸受15の円柱形穴と嵌合し、その中心軸方向に摺動可能な構造となっている。
【0018】
コイルスプリング7は、その一端をばね受け部材9、他端を軸受15の後端部に設けられたフランジ部の間に、軸受15とばね受け部材9を包むように配置されている。
ばね受け部材9は、その後端部(円柱形の軸部端面)において六角ボルト(本明細書において、「連結部材」ということがある。)17でプレート13を固定している。さらに、ばね受け部材9は、その先端部において外筒29の後端部に互いの中心軸が重なるようにビス35で固定されている。外筒29は、中心軸に直交する断面が二重円形状面を有し、その先端部に円柱形の穴を有する固定ブロック3を備えている。同じく円柱形状の穴を有し、その中心線に直交する断面が円形の穴を有するガイド5がビス33で固定ブロック3に中心軸が一致するように固定されている。
【0019】
ガイド5の円柱形状穴の内径は、締結ネジ39の頭部のサイズより大きくする。ガイド5の円柱形状穴の内径と該締結ネジの頭部の外側の隙間は後者のサイズによって任意に設定することで該締結ネジの軸中心と超音波プローブ(本明細書において、単に「プローブ」ということがある。)1の軸中心のズレの大きさを規制することができる。
プローグ1は、その中心軸に直交する面に平行に取り付けられたフランジ21の周縁部で、プローブ1の中心軸が軸受15やガイド5の中心軸と一致するように固定ブロック3に固着されている。このように、フランジ21はプローグ1と外筒29の連結部となっている。
【0020】
プローブ1は、後端部に中心軸方向にネジ(図示せず)で固定された圧電素子11を備える。圧電素子11は電気音響変換素子を金属製の前面ブロック41と金属製の裏打ちブロック43とで挟み込んだ、いわゆるランジュバン型振動子となっている。また、プローブ1は、中心軸方向の振動振幅分布を持った半波長共振の固有振動モードを有している。フランジ21は、プローブ1の振動モードに影響を与えないように、その振動モードの節に当たる位置に設けられる。
【0021】
本体ケース19は、その後部にナット部55を備え、ナット部55に調整ネジ(本明細書において、「調整手段」ということがある。)23が螺着されている。調整ネジ23を回転させることでその先端の位置を変えることができる。調整ネジ23は、その中心軸が六角ボルト17の中心軸と一致するように本体ケース19に固着されたナット部55に螺着されているので、その先端は六角ボルト17の頭部と当接可能である。また、本体ケース19は、人手で掴み検査装置100を操作することができるように取っ手25を有している。
【0022】
プローブ1の先端を被検体に当接させた状態で検査装置100を被検体に押し付けると、プローブ1に対して固定されている外筒29とばね受け部材9及びその後端にねじ止めされているプレート13と六角ボルト17は動かないが、本体ケース19に対して固定されているガイドホルダー27、軸受15及び調整ネジ23は、ばね受け部材9の円柱形の軸部に沿って軸受15が前方向に摺動することによって、被検体の方向へ移動する。この移動は、調整ネジ23の先端が六角ボルト17の頭部に当接するまで続く。このとき、コイルスプリング7は圧縮する。
【0023】
コイルスプリング7は圧縮ばねであり、ばねが縮むと復元力が生じる。図1に示すコイルスプリング7の長さは、プレート13で取付時の長さに規制された状態であり、取付時荷重がかかっているときの長さを示している。使用時、調整ネジ23の先端が六角ボルト17の頭部に当接すると、その長さだけコイルスプリング7は縮むので、相当する復元力が生じる。調整ネジ23の先端が六角ボルト17の頭部に当接した状態では、この復元力に相当する荷重でプローブ1が被検体を押し付けていることになる。
【0024】
図2は、検査装置を被検体に押し付けた状態を示す説明図である。
検査装置100のプローブ1の先端を被検体を構成する締結ネジ39の頭部に押し付けた状態で、本体ケース19に力を加えると、本体ケース19が締結ネジ39の方向へ移動し、図2に示すように、調整ネジ23の先端が六角ボルト17の頭部に当接して止まる。
このとき、コイルスプリング7は、無負荷時のコイルばねの長さ(自由高さ)より縮んだ状態にあるので復元力が生じている。この力がプローブ1の先端が締結ネジ39の頭部を押し付ける荷重となる。事前に調整ネジ23を回転させてその先端位置を調整することにより、検査装置100が被検体に押し付ける荷重を一定の力とすることができる。
【0025】
図3は、被検体の締結状態を検査する装置全体を示す説明図である。
図3に示すように、判定器45は、検査装置100のプローブ1と信号線51及び53によって電気的に連結されている。また、判定器45は、調整ネジ23及び六角ボルト17(図2参照)と電気線47及び49によってそれぞれ電気的に連結されている。
検査装置100の本体ケース19の取っ手25を掴み、ガイド5の円筒形穴で締結ネジ39の頭部を覆いかぶせて、締結ネジ39の頭部に当てた状態で本体ケース19を押し付けると本体ケース19は一定距離前方へ進んで停止する。このとき、被検体はコイルスプリング(図2参照)による復元力Fの力で押し付けられている。
【0026】
調整ネジ23の先端が六角ボルト17の頭部に当接すると電気線47及び49が電気的に繋がる。計測は、調整ネジ23の先端と六角ボルト17の頭部の接触による電気的導通によって開始される。つまり、プローブ1から被検体を構成する締結ネジ39に超音波が発信され、被検体から反射された超音波を受信した圧電素子11からの信号情報が判定器49に備えられた表示部67に表示される。
【0027】
図4は、押し付け荷重とインピーダンスのピーク値の関係を示す図である。
予め、調整ネジ23(図1参照)の先端と六角ボルト17(図1参照)の頭部までの距離と押し付け荷重との関係を求め、次に押し付け荷重を一定にして超音波の周波数とインピーダンス値との関係を求めた。図4は、インピーダンスが最大となるときの周波数を押し付け荷重との関係で示したものである。
図4から分かるように、押し付け荷重が37ニュートン以上では、押し付け荷重を変えてもインピーダンスの最大時の周波数の変化は少なく、データは安定している。このことから、測定時の押し付け荷重は37ニュートン以上が好ましく、37ニュートン以上87ニュートン以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0028】
図5は、締結ネジの締結トルクを変えて測定したときの、周波数とインピーダンス値の関係を示す。押し付け荷重は45ニュートンとした。
図5に示すように、締結ネジの締結トルクが異なるとインピーダンスの波形が異なる。規定のトルクで締結されている場合、66.83kHzと67.24kHz付近に凹形状の下向きのピークが生じるが、規定トルクの1/2で締結されている場合、当該ピークが生じるときの周波数は小さくなり、それぞれ66.68kHzと67.10kHz付近に凹形状の下向きのピークが生じる。さらに、締結トルクがゼロの場合には、インピーダンスは周波数の増加と減少するが下向きのピークは現れない。
このことから、このように周波数を変えたときのインピーダンスの波形から締結状態を推測することができる。
【0029】
図6は、締結ネジとプローブの軸中心のズレとインピーダンスの関係を示す図である。
図6の横軸は、締結ネジ39の軸中心とプローブ1の軸中心のズレの大きさを示す。横軸の数字0は両軸中心が一致していることを示し、1/4,1/2,3/4は、プローブ1の軸中心が締結ネジ39の軸中心からそれぞれ頭部の中央から周縁までの長さ(ネジの頭部の半径)の1/4,1/2,3/4ずつ離れていることを示す。
【0030】
図6に示すように、横軸が0から1/2までのインピーダンス値はほとんど変わらないが、3/4では1/2のときのインピーダンス値より10%以上下がっている。このことは、締結ネジ39とプローブ1の軸中心のズレが大きくなると測定値の振れが大きくなることを示している。したがって、プローブ1の軸中心が締結ネジ39の頭部の中心から周縁までの長さの1/2より内側を所定の荷重で押し付けるのが好ましい。
【0031】
以上のように、検査装置100は、超音波を送信し、被検体から反射波を受信する圧電素子11を備えた超音波プローブ1と、超音波プローブ1が被検体を所定の荷重で押し付けるように、該超音波プローブに荷重を付与する圧縮ばね7と該荷重力を調整する調整手段23を含み、圧縮ばね7は、一端を該調整手段23と物理的に固定されている軸受15のフランジ部、他端を超音波プローブ1と物理的に固定されているばね受け部材9に挟まれ、軸受15とばね受け部材9を包むように配置されている携帯用の装置である。
【0032】
-実施例2-
図7は、実施例2に係る検査装置200を示す構成説明図である。
図7に示すように、検査装置200の本体ケース29にはガイドホルダー37がその内面に溶接で固定されている。検査装置100の本体ケース29が備える取っ手25及び調整ネジ23は有していない。本体ケース29の上部は、例えばロボット装置のアッタチメント57などにボルトで固定できる構造になっている。その他の構成は検査装置100と同じであるので重複する説明は省略する。
【0033】
このような構成の検査装置200は生産工程において利用することができる。例えば、ロボット装置(図示せず)に取り付けると、その制御部(図示せず)によって検査装置200、つまり、プローグ1の先端の位置と角度のみならず、プローブ1が被検体を押し付ける荷重が一定となるように制御することができる。このことによって、より安定したインピーダンスデータを得ることができるので、被検体の締結状態をより高い精度で検査することができる。
【0034】
-実施例3-
図8は、実施例3に係る検査装置の使用概念図である。
検査装置200は、アッタチメント57でロボット装置61に取り付けられている。ロボット装置37は、被締結部材65と締結部材63を締結する締結ネジ39の頭部にプローブ1の先端を所定の荷重で押し付ける。プローブ1の先端には軟質材(図示せず)が設けられている。軟質材は、弾性材料からなり、締結ネジ39の頭部とプローブ1との接触を高める。プローブ1が押し付ける荷重力とプローブ1の先端位置はロボット装置61の制御部(図示せず)で制御する。プローブ1の圧電素子11(図1参照)と判定器45は信号線51及び53によって電気的に連結されている。
【0035】
判定器45は、駆動ドライバー69,インピーダンス変換部71,表示部67及び判定部73を有している。駆動ドライバー69は、プローブ1の圧電素子11に電圧を印加する。インピーダンス変換部71は、被検体から反射された超音波を受信した圧電素子11からの信号情報をインピーダンス値に変換する。表示部67は、インピーダンス変換部71で変換されたインピーダンスを周波数との関係で表示する。判定部73は、被検体の締結状態を判定する。
【0036】
検査装置200の動作説明は、次のとおりである。
被締結部材65と締結部材63を締結する締結ネジ39の頭部にプローブ1の先端を所定の荷重で押し付ける。この荷重力は、ロボット装置37の制御部(図示せず)に設定する。プローブ1が放射する超音波の周波数と繰り返し変位は駆動ドライバーにより圧電素子11に電圧を印加することによって行われる。プローブ1から放射された超音波は被検体で反射され、その反射波を圧電素子11が受信する。該受信信号は信号線53を通ってインピーダンス変換部71に送られ、該受信信号に対応するインピーダンスに変換される。変換されたインピーダンス(本明細書において、「インピーダンスデータ」ということがある。)は、表示部67に表示される。判定部73は、締結ネジ39による被締結部材65と締結部材63の締結状態の良否を判定する。
【0037】
図9は、実施例3に係る周波数とインピーダンスの関係を示す。
図9(a)は、プローブ1を締結ネジ39の頭部に押し付けないフリーの状態でプローブ1を駆動し、表示されたインピーダンスデータを示す。一方、(b)は、プローブ1を締結ネジ39の頭部に一定の力で押し付けた状態で、プローブ1の先端から超音波を放射し、その反射波から取得したインピーダンスデータを示す。両者を比較すると、(b)では、周波数46KHz付近にインピーダンスのピークが存在するが、(a)にはない。この変化部分を締結ネジの軸力が変化するインピーダンスデータとして締結ネジの軸力の判定に使用することができる。
【0038】
-実施例4-
図10は、実施例4に係る周波数とインピーダンスの関係を示す。
図10(a)は、プローブ1を締結ネジ39の頭部に一定の力で押し付けた状態で、プローブ1の先端から超音波を放射し、その反射波の信号を変換して得られたインピーダンスデータを示す。一方、(b)は、締結ネジ39の座面が、被締結部材65に接触していない、又は、トルクが0(ゼロ)の軸力が発生しない浮き状態時に、同様にプローブ1の先端から超音波を放射し、その反射波の信号を変換して得られたインピーダンスデータを示す。両者を比較すると、(a)では、周波数44.3KHz付近にインピーダンスのピークがあるが、(b)にはない。このことから、ネジの浮きの評価は、このピークの出現の有無で検査することができる。
【0039】
-実施例5-
図11は、締結ネジの軸力(本明細書において「締結力」ということがある。)とインピーダンスの関係を示す。
締結ネジ39の軸力を予め変えて、プローブ1を締結ネジ39に一定の力で押し付けて、実施例4と同様な方法でインピーダンスデータを取得した。
締結ネジの軸力は、トルクレンチを用いて締結トルクを変えることで行った。例えば、外径8mmのネジは、定格トルク12.3Nmで締め付けた場合、9.69キロニュートンの締結力を得ることができる。締結トルクが定格トルクの半分ならば、3.85キロニュートン、1/4ならば2.0ニュートン程度の締結力をそれぞれ得ることができる。
【0040】
図11において、(1)は定格トルクの1/4の軸力、(2)は定格トルクの1/2の軸力、(3)は定格トルク軸力の場合のインピーダンスの変化部分と周波数との関係を示す。
図11に示すように、定格トルクの1/4の軸力でピーク(1)が現れ、定格トルクの半分では変化部分がピーク(2)に移動し、定格トルクのときには、ピーク(3)にインピーダンスのピークが移動する。このことは、軸力の増加に伴い、周波数の増加する方向にピークが移動することを示す。これらのピークの位置によって、締結ネジの軸力を推定することができる。
【0041】
-実施例6-
締結力とインピーダンスピークとその時の周波数の関係は、次の方法で求めることができる。
ステップ1で、締結ネジ39の頭部にプローブ1の先端を接触させない状態で、プローブ1から放射する超音波の周波数を変化させ、その反射波から得られた信号がインピーダンス変換部71で変換されたインピーダンスデータ(第2データ)を取得する。
【0042】
ステップ2で、既定の締結力で締結された締結ネジ39の頭部にプローブ1を所定の荷重で押し付た状態で、ステップ1と同じ方法でインピーダンスデータ(第1データ)を取得する。
ステップ3で、スッテプ1及び2によって得られた第2データと第1データを比較して、第1データに新たに出現したピークを見出す。
ステップ4で、ステップ3において見出したピークの周波数の周辺の周波数について、締結ネジ39の締結力を変えて、複数のインピーダンスデータを取得し、第1データと比較して新たに出現したピーク及びその周波数を得る。
【0043】
ステップ5で、ステップ4において締結力の変化に伴うピークの周波数が変化しない場合は、ステップ3において出現た別のピークについて、その周波数の周辺の周波数について締結ネジ39の締結力を変えて、複数のインピーダンスデータを取得し、第1データと比較して新たに出現したピーク及びその周波数を得る。
ステップ6で、ステップ4又は5によって得られた締結力とインピーダンスと周波数の関係をプロットし、締結力をインピーダンスと周波数で分離する。
【0044】
図12は、上記実施例の方法で得られた締結力を変化させたときのピークのインピーダンスと周波数の関係を示す。
図12に示すように、十分な締結力がある(合格品の)ときに計測されたピークのインピーダンスと周波数は低周波数側にプロットされ、締結力が足りない(不合格品の)ときに計測されたピークのインピーダンスと周波数は高周波数側にプロットされる。
このことから、被締結部材と締結部材を締結した締結ネジ39の頭部にプローブ1を所定の荷重で押し付た状態で取得したインピーダンスピークがどこに位置するかによって被検体の締結力の合否を判定することができる。
【0045】
-実施例7-
図13は、本発明の別の実施例における周波数とインピーダンスの関係を示す。
この実施例は、締結状態を2個のインピーダンスピークから判定する方法を示したものである。図13に示すように、締結ネジの「着座」で出現するピークAと締結力の大小でピークの周波数が変化するピークBの両方をその締結の判定に使用する。この方法によると、図13に示すように、ピークAが出現しているので、この締結ネジは着座していることが分かり、ピークBの周波数によって、その締結力を評価することができる。
【0046】
-実施例8-
図14は、プローブの先端の変位と周波数関係を示す。
図14は、プローブ1を圧電素子11を用いて、圧電素子駆動ドライバー69で電圧を印加し、その先端の変位量を縦軸に時間を横軸に示している。一般的に、インピーダンスデータのばらつきが少ないデータを取得するには、この振幅値を大きく取ればよいが、圧電素子ドライバー69の能力と圧電素子11の性能によって、この変位は決まる。本実施例では、ばらつきが少ないインピーダンスデータを取得するためには、0.001μmから1.0μmの繰り返し変位と1KHzから100KHzの周波数が好ましい。
【0047】
発明の詳細な説明の項においてなされた実施例は、本発明の技術内容を明らかにするものであって、上述の実施例に限定して解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【符号の説明】
【0048】
1 プローブ,超音波プローブ
3 固定ブロック
5 ガイド
7 コイルスプリング,圧縮ばね,荷重付与部
9 ばね受け部材
11 圧電素子
13 プレート
15 軸受
17 六角ボルト
19,29 本体ケース
21 フランジ
23 調整ネジ
25 取っ手
27,37 ガイドホルダー
31 支持部
33,35 ビス
39 締結ネジ
41 前面ブロック
43 裏打ちブロック
45 判定器
47,49 電気線
51,53 信号線
55 ナット部
57 アッタチメント
59 ボルト
61 ロボット装置
63 締結部材
65 被締結部材
67 表示部
69 駆動ドライバー
71 インピーダンス変換部
73 判定部
100,200 検査装置
図1
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