(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子および4-メチル-1-ペンテン系樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20220805BHJP
C08F 4/02 20060101ALI20220805BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20220805BHJP
C08F 255/08 20060101ALI20220805BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F4/02
C08F4/6592
C08F255/08
C08L23/20
(21)【出願番号】P 2020513273
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2019015395
(87)【国際公開番号】W WO2019198694
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2018076025
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018076026
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】田中 正和
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊明
(72)【発明者】
【氏名】松木 智昭
(72)【発明者】
【氏名】松浦 貞彦
(72)【発明者】
【氏名】松川 直人
(72)【発明者】
【氏名】地中 雅敏
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-208797(JP,A)
【文献】国際公開第2014/123212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/44
C08F 4/02
C08F 4/6592
C08F 255/08
C08L 23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(X-a)、(X-b)および(X-c)を満た
し、
下記要件(x1-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)10.0~95.0質量部と、下記要件(x2-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)5.0~90.0質量部(ただし、前記重合体(x1)および前記共重合体(x2)の合計量を100質量部とする)とを含有し、且つ、
前記重合体(x1)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~20dl/gの範囲にあり、DSCにより測定した融点(Tm)が210~260℃の範囲にあり、
前記共重合体(x2)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~20dl/gの範囲にあり、DSCにより測定した融点(Tm)が210℃未満の範囲にあるか、またはDSC測定において融点を示すピークが出現しない、
4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)。
(X-a)前記粒子(X)を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が30.0~99.7モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が0.3~70.0モル%である。
(X-b)検出部に赤外分光光度計を用いたクロス分別クロマトグラフ装置(CFC)で測定したときに、100~140℃の範囲に溶出成分量のピークAが少なくとも1つ存在し、かつ、100℃未満に溶出成分量のピークBが少なくとも1つ存在する。
(X-c)
13C-NMRで測定されるメソダイアッド分率(m)が
98.5~100%の範囲にある
。
(x1-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が80.0~100モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が0~20.0モル%である。
(x2-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が20.0~98.0モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が、2.0~80.0モル%であり、ただし、前記重合体(x1)におけるエチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量よりも大きい。
【請求項2】
135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~10.0dl/gの範囲にある、請求項1
に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)からなる樹脂。
【請求項4】
請求項
3に記載の樹脂を含有する樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)、請求項
3に記載の樹脂、または請求項
4に記載の樹脂組成物から成形された成形体。
【請求項6】
下記要件(x1-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)を、メタロセン触媒を用いてスラリー重合により製造する工程(1)と、
前記工程(1)で得られた重合体(x1)の存在下で、下記要件(x2-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)を、前記重合体(x1)および前記共重合体(x2)の合計量を100質量部とした場合に前記共重合体(x2)の量が5.0~90.0質量部となる範囲で、メタロセン触媒を用いてスラリー重合により製造する工程(2)と
を有する、4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
(x1-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が80.0~100モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が0~20.0モル%である。
(x2-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が20.0~98.0モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が、2.0~80.0モル%であり、ただし、前記重合体(x1)におけるエチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量よりも大きい。
【請求項7】
前記重合体(x1)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~20dl/gの範囲にあり、DSCにより測定した融点(Tm)が210~260℃の範囲にあり、
前記共重合体(x2)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~20dl/gの範囲にあり、DSCにより測定した融点(Tm)が210℃未満の範囲にあるか、またはDSC測定において融点を示すピークが出現しない、
請求項
6に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
【請求項8】
前記工程(1)および前記工程(2)における重合温度がそれぞれ独立に0~100℃の範囲にある、請求項
6または
7に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
【請求項9】
前記メタロセン触媒が、メタロセン化合物(A)を含み、体積統計値でのD50が1~500μmの範囲にある粒子状触媒である、請求項
6~
8のいずれか一項に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
【請求項10】
前記メタロセン触媒が、メタロセン化合物(A)と担体(B)とを含み、担体(B)が、アルミニウム原子を20質量%以上含み、体積統計値でのD50が1~500μmの範囲にある粒子状担体である、請求項
6~
9のいずれか一項に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子および4-メチル-1-ペンテン系樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4-メチル-1-ペンテンを主たる構成モノマーとする4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体は、耐熱性、離型性および耐薬品性に優れているので、各種用途に広く使用されている。例えば、前記共重合体からなるフィルムは良好な離型性などの特長を活かして、FPC離型フィルム、複合材料成形用離型フィルムなどに使用され、あるいは耐薬品性、耐水性および透明性などの特長を活かして、実験器具およびゴムホース製造用マンドレルなどに使用されている。
【0003】
一方で、従来の4-メチル-1-ペンテン系重合体を含有する樹脂組成物からなる成形体は、高融点でありながら、より剛性が低く柔軟であることが求められる場合がある。例えば、合成皮革製造時の転写離型シートの用途では、硬化温度に耐えるための高融点と、深いエンボス導入時にクラックが生じないための柔軟性との両方が必要とされる場合があった。特許文献1、2には、高い立体規則性と高い融解熱量を有し、耐熱性に優れた4-メチル-1-ペンテン系重合体が開示されている。
【0004】
また、4-メチル-1-ペンテン共重合体は、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法などの重合方法により製造することができる。溶液重合の場合は重合後に重合溶液から4-メチル-1-ペンテン共重合体を回収するためには反応溶媒を加熱分離する必要があるが、スラリー重合の場合はスラリーから固体を固液分離するだけで4-メチル-1-ペンテン共重合体を回収することができるので、スラリー重合法はコスト的に有利な製造方法である。
【0005】
特許文献3~5には、チーグラー触媒を用いて、4-メチル-1-ペンテンと他のα-オレフィンとを2段階で共重合する方法が開示されている。特許文献6には、チーグラー触媒を用いて、4-メチル-1-ペンテンと他のα-オレフィンとを、その比率を変化させつつ共重合する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献1には、特定のメタロセン触媒を用いて得られる、立体規則性が高く、高い融解熱量を有する4-メチル-1-ペンテン系重合体が開示され、特許文献2には、同様のメタロセン触媒を用いて得られる、立体規則性が高く、なおかつ分子量分布の広い4-メチル-1-ペンテン系重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2014/050817号
【文献】国際公開第2017/150265号
【文献】特開昭63-63707号公報
【文献】特開平05-271341号公報
【文献】特開平06-184240号公報
【文献】特開2006-291020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したとおり、上記特許文献1~2に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体および成形体は、高い立体規則性と高い融解熱量を有し、耐熱性に優れるという特徴を備えている。本発明者らは、この高い立体規則性と優れた耐熱性を大きく損なわずに、剛性の低い、すなわち柔軟性に優れる成形体を得ることのできる4-メチル-1-ペンテン系重合体について検討した。
【0009】
すなわち本発明の第1の課題は、4-メチル-1-ペンテン系重合体において、高い立体規則性と優れた耐熱性等の特性を損なうことなく、その剛性を低下させる、すなわち柔軟性を向上させることである。
【0010】
また、本発明者らの検討によれば、4-メチル-1-ペンテン系樹脂をスラリー重合により製造する方法において、例えば4-メチル-1-ペンテン以外のコモノマーから導かれる構成単位の含有量が高い場合、重合体の溶媒可溶部量が大きくなり、得られるスラリーの固液分離性が良好ではない。
【0011】
すなわち本発明の第2の課題は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂をスラリー重合により製造する方法において、得られるスラリーの固液分離性が良好な状態において、含有する共重合体成分のコモノマー共重合比率の範囲をより広く選択しうる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記第1の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の組成を有し、かつ特定の特性を有する4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子により上記課題を解決できることを見出し、第1の本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明者らは上記第2の課題を解決すべく検討を行った。その結果、以下に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法により上記課題を解決できることを見出し、第2の本発明を完成するに至った。
【0014】
第1、第2の本発明は、例えば以下の[1]~[16]に関する。
【0015】
[1]下記要件(X-a)、(X-b)および(X-c)を満たす、4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)。
【0016】
(X-a)前記粒子(X)を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が30.0~99.7モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が0.3~70.0モル%である。
【0017】
(X-b)検出部に赤外分光光度計を用いたクロス分別クロマトグラフ装置(CFC)で測定したときに、100~140℃の範囲に溶出成分量のピークAが少なくとも1つ存在し、かつ、100℃未満に溶出成分量のピークBが少なくとも1つ存在する。
【0018】
(X-c)13C-NMRで測定されるメソダイアッド分率(m)が95.0~100%の範囲にある。
【0019】
[2]下記要件(x1-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)10.0~95.0質量部と、下記要件(x2-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)5.0~90.0質量部(ただし、前記重合体(x1)および前記共重合体(x2)の合計量を100質量部とする)とを含有する、前記[1]に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)。
【0020】
(x1-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が80.0~100モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が0~20.0モル%である。
【0021】
(x2-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が20.0~98.0モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が、2.0~80.0モル%であり、ただし、前記重合体(x1)におけるエチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量よりも大きい。
【0022】
[3]前記重合体(x1)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~20dl/gの範囲にあり、DSCにより測定した融点(Tm)が210~260℃の範囲にあり、前記共重合体(x2)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~20dl/gの範囲にあり、DSCにより測定した融点(Tm)が220℃未満の範囲にあるか、またはDSC測定において融点を示すピークが出現しない、前記[2]に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)。
【0023】
[4]135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~10.0dl/gの範囲にある、前記[1]~[3]のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)。
【0024】
[5]前記要件(X-c)において、メソダイアッド分率(m)が98.0~100%の範囲にある、前記[1]~[4]のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)。
【0025】
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)からなる樹脂。
【0026】
[7]前記[6]に記載の樹脂を含有する樹脂組成物。
【0027】
[8]前記[1]~[5]のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)、前記[6]に記載の樹脂、または前記[7]に記載の樹脂組成物から成形された成形体。
【0028】
[9]下記要件(x1-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)を、メタロセン触媒を用いてスラリー重合により製造する工程(1)と、前記工程(1)で得られた重合体(x1)の存在下で、下記要件(x2-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)を、前記重合体(x1)および前記共重合体(x2)の合計量を100質量部とした場合に前記共重合体(x2)の量が5.0~90.0質量部となる範囲で、メタロセン触媒を用いてスラリー重合により製造する工程(2)とを有する、4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
【0029】
(x1-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が80.0~100モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が0~20.0モル%である。
【0030】
(x2-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が20.0~98.0モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が、2.0~80.0モル%であり、ただし、前記重合体(x1)におけるエチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量よりも大きい。
【0031】
[10]前記重合体(x1)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~20dl/gの範囲にあり、DSCにより測定した融点(Tm)が210~260℃の範囲にあり、前記共重合体(x2)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~20dl/gの範囲にあり、DSCにより測定した融点(Tm)が220℃未満の範囲にあるか、またはDSC測定において融点を示すピークが出現しない、前記[9]に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
【0032】
[11]前記工程(1)および前記工程(2)における重合温度がそれぞれ独立に0~100℃の範囲にある、前記[9]または[10]に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
【0033】
[12]前記メタロセン触媒が、メタロセン化合物(A)を含み、体積統計値でのD50が1~500μmの範囲にある粒子状触媒である、前記[9]~[11]のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
【0034】
[13]前記メタロセン触媒が、メタロセン化合物(A)と担体(B)とを含み、担体(B)が、アルミニウム原子を20質量%以上含み、体積統計値でのD50が1~500μmの範囲にある粒子状担体である、前記[9]~[12]のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法。
【0035】
[14]前記[9]~[13]のいずれかに記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法によって得られた4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)。
【0036】
[15]前記[14]に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)を含有する樹脂組成物。
【0037】
[16]前記[14]に記載の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)または前記[7]に記載の樹脂組成物から成形された成形体。
【発明の効果】
【0038】
第1の本発明によれば、高い立体規則性と優れた耐熱性を保持したまま、剛性が低い成形体を得ることのできる4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子、樹脂、樹脂組成物および成形体を提供することができる。
【0039】
第2の本発明によれば、4-メチル-1-ペンテン系樹脂をスラリー重合により製造する方法において、得られるスラリーの固液分離性が良好である、4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)の製造方法を提供することができる。とくに、4-メチル-1-ペンテン以外のコモノマーから導かれる構成単位の含有量が高い共重合体成分を含み、従来の製造方法ではスラリー重合が困難であった領域の4-メチル-1-ペンテン系樹脂をも製造しうる、4-メチル-1-ペンテン系樹脂の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、実施例および比較例で得られた重合体について、融点(℃)に対して引張弾性率(MPa)をプロットした図である。
【
図2】実施例1Aにおける透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【
図3】実施例2Aにおける透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【
図4】実施例3Aにおける透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【
図5】比較例8Aにおける透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0042】
本明細書において、「重合体」という語は単独重合体および共重合体を包含する意味で用いる。したがって、例えば、後述する4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)は、4-メチル-1-ペンテン単独重合体であってもよく、4-メチル-1-ペンテン共重合体であってもよい。同様に「重合」という語は単独重合および共重合を包含する意味で用いる。
【0043】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)]
第1の本発明(以下「本発明1」ともいう)の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)(単に「粒子(X)」ともいう)は、以下に説明する要件(X-a)、(X-b)および(X-c)を満たす。
【0044】
<要件(X-a)>
(X-a)前記粒子(X)を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が30.0~99.7モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量が0.3~70.0モル%である。
【0045】
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは40.0~99.5モル%、より好ましくは50.0~99.0モル%、さらに好ましくは、70.0~97.0モル%、75.0~96.0モル%、または80.0~95.0モル%である。また、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは0.5~60.0モル%、より好ましくは1.0~50.0モル%、さらに好ましくは、3.0~30.0モル%、4.0~25.0モル%、または5.0~20.0モル%である。
【0046】
前記オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。前記オレフィンは、粒子(X)の用途や必要物性に応じて適宜選択することができる。例えば、前記オレフィンとしては、適度な弾性率と、優れた柔軟性、可とう性および延伸加工性とを付与するという観点からは、炭素数8~18のα-オレフィンが好ましく、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセンおよび1-オクタデセンから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。オレフィンの炭素数が上記範囲にあると、樹脂または樹脂組成物の延伸加工性がより良好になり、その結果、成形時にロールや金型からの離型の際にクラックや端部の割れによる外観不良が生じにくくなる傾向にある。
【0047】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位および前記オレフィンから導かれる構成単位以外の構成単位(以下「その他の構成単位」ともいう)を有してもよい。その他の構成単位の含有量は、例えば0~10.0モル%である。
【0048】
その他の構成単位を導くモノマーとしては、例えば、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィンが挙げられる。環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィンおよびハロゲン化オレフィンとしては、例えば、特開2013-169685号公報の段落[0035]~[0041]に記載の化合物を用いることができる。
【0049】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体がその他の構成単位を有する場合、その他の構成単位は、1種のみ含まれていてもよく、また、2種以上含まれていてもよい。
【0050】
<要件(X-b)>
(X-b)検出部に赤外分光光度計を用いたクロス分別クロマトグラフ装置(CFC)で測定したときに、100~140℃の範囲に溶出成分量のピークAが少なくとも1つ存在し、かつ、100℃未満、好ましくは0℃以上100℃未満の範囲に溶出成分量のピークBが少なくとも1つ存在する。ピークAは、単峰であっても複数峰であってもよい。また、ピークBは、単峰であっても複数峰であってもよい。
【0051】
上記範囲に溶出成分量のピークAおよびBがそれぞれ存在する重合体粒子を用いることにより、高い耐熱性を保持したまま剛性の低い(柔軟性の高い)成形体が得られる点で優れる。
【0052】
例えば、後述する粒子(X)の製造方法において、ピークAは工程(1)で製造した重合体(x1)に由来し、ピークBは工程(2)で製造した共重合体(x2)に由来する。
【0053】
また、前記CFC測定において、0℃以下で溶出する成分の累積質量百分率が、好ましくは2.0質量%未満であり、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0054】
0℃以下で溶出する成分の累積質量百分率が少ないことは、重合体粒子(X)に含まれる低分子量の重合体の量が少ないことを示す。前記累積質量百分率が上記範囲内にあることで、当該重合体を含む樹脂組成物から得られる成形体から汚染成分となる低分子量成分の流出を抑えることが可能となるので、成形時におけるダイスなどの成形機の汚染の抑制や、得られる成形体の変色の抑制や、成形体表面の汚染や内容物汚染の抑制を有効に行うことができる。また、離型フィルムや保護フィルムとして用いた場合、フィルムから基材への移行物を低減することが期待される。本発明において、前記累積質量百分率は、後述するメタロセン触媒の種類によって調整することができる。
【0055】
<要件(X-c)>
(X-c)13C-NMRで測定されるメソダイアッド分率(m)が95.0~100%の範囲にある。メソダイアッド分率(m)は、好ましくは96.0~100%、より好ましくは97.0~100%、さらに好ましくは98.0~100%、特に好ましくは98.5~100%の範囲にある。上限値は100%であることが好ましいが、99.9%であることもできる。この範囲にあると、粒子(X)およびそれから得られる樹脂または樹脂組成物の成形時の目ヤニによるフィッシュアイや外観不良が生じにくい。これは、融点分布が狭くなることで組成分布の均一性が向上することによると推察する。
【0056】
<他の要件>
前記粒子(X)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.5~10.0dl/g、より好ましくは0.5~5.0dl/g、さらに好ましくは1.0~5.0dl/gの範囲にある。
【0057】
前記粒子(X)の極限粘度[η]は、例えば、後述する重合体(x1)および共重合体(x2)それぞれの[η]の値、および含有量比によって調整されうる。
【0058】
前記粒子(X)の粒径(D50)は、通常は10~2000μm、好ましくは30~1000μm、より好ましくは50~500μm、さらに好ましくは70~300μmの範囲にある。前記粒子(X)の粒径(D50)は、一実施態様において、好ましくは30~1800μm、より好ましくは50~1500μm、さらに好ましくは70~1200μmの範囲にある。
【0059】
前記粒径(D50)は、具体的には、ベックマンコールター社製レーザー回折散乱装置(LS13320)を用いて測定した値であり、サンプルの分散媒としてはデカンを使用することができる。
【0060】
前記粒子(X)の嵩密度は、通常は0.1~1.0g/cm3、好ましくは0.2~0.8g/cm3、より好ましくは0.3~0.5g/cm3の範囲にある。
【0061】
なお、本発明1の粒子(X)とは、重合体の製造を重合反応槽内で行って得られた重合体粒子の形状を保持した状態をいい、通常、後述するスラリー重合にて得られた重合体粒子である。更に詳述すると、重合体粒子の形状を保持できないほどの高温で処理されたことのない重合体粒子のことをいう。つまり例えば260℃以上の温度、好ましくは250℃以上の温度、より好ましくは240℃以上、さらに好ましくは200℃以上、特に好ましくは150℃以上、とりわけ好ましくは100℃超の温度で処理されたことのない重合体粒子を意味する。すなわち、例えば、重合体粒子を溶融混練して得た樹脂ペレットについては本発明1の粒子(X)には該当しない。また、重合反応終了後に溶媒等を乾燥させる等の目的で、重合体粒子の形状を保持した状態にて、例えば上記温度未満で加温することはあっても構わない。
【0062】
以上の要件の測定条件の詳細は、実施例欄に記載する。
【0063】
<4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)に含まれる重合体成分>
前記粒子(X)は、下記要件(x1-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)10.0~95.0質量部と、下記要件(x2-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)5.0~90.0質量部とを含有することが好ましい。ただし、重合体(x1)および共重合体(x2)の合計量を100質量部とする。粒子(X)は、通常、重合体(x1)と共重合体(x2)とを同一粒子中に含有する。
【0064】
重合体(x1)の量は、好ましくは20.0~90.0質量部、より好ましくは30.0~85.0質量部である。共重合体(x2)の量は、好ましくは10.0~80.0質量部、より好ましくは15.0~70.0質量部とする。ただし、重合体(x1)および共重合体(x2)の合計量を100質量部とする。
【0065】
<4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)>
4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)(単に「重合体(x1)」ともいう)は、下記要件(x1-a)を満たす。
【0066】
(x1-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が80.0~100モル%であり、好ましくは85.0~100モル%、より好ましくは90.0~100モル%、さらに好ましくは95.0~100モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィン(以下「コモノマー1」ともいう)から導かれる構成単位の含有量が0~20.0モル%であり、好ましくは0~15.0モル%、より好ましくは0~10.0モル%、さらに好ましくは0~5.0モル%である。
【0067】
なお、前記構成単位の含有量は、全繰返し構成単位量を100モル%とする。
【0068】
コモノマー1としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。コモノマー1は、粒子(X)または後述する第2の本発明の製造方法で得られる樹脂(X)の用途や必要物性に応じて適宜選択することができる。例えば、コモノマー1としては、適度な弾性率と、優れた柔軟性、可とう性および延伸加工性とを付与するという観点からは、炭素数8~18のα-オレフィンが好ましく、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセンおよび1-オクタデセンから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。コモノマー1の炭素数が上記範囲にあると、樹脂または樹脂組成物の延伸加工性がより良好になり、その結果、成形時にロールや金型からの離型の際にクラックや端部の割れによる外観不良が生じにくくなる傾向にある。
【0069】
重合体(x1)がコモノマー1から導かれる構成単位を有する場合、当該構成単位は、1種のみ含まれていてもよく、また、2種以上含まれていてもよい。
【0070】
重合体(x1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンおよびコモノマー1以外の、その他のモノマー1から導かれる構成単位(以下「その他の構成単位1」ともいう)を有してもよい。その他の構成単位1の含有量は、例えば0~10.0モル%である。
【0071】
その他のモノマー1としては、例えば、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィンが挙げられる。環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィンおよびハロゲン化オレフィンとしては、例えば、特開2013-169685号公報の段落[0035]~[0041]に記載の化合物を用いることができる。
【0072】
重合体(x1)がその他の構成単位1を有する場合、その他の構成単位1は、1種のみ含まれていてもよく、また、2種以上含まれていてもよい。
【0073】
4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)は、さらに以下に説明する物性([η]、融点)から選ばれる少なくとも1つの物性の要件を満たすことが好ましい。
【0074】
重合体(x1)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.5~20dl/g、より好ましくは0.5~5.0dl/gの範囲にある。
【0075】
重合体(x1)は、示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が、好ましくは210~260℃、より好ましくは220~260℃、さらに好ましくは225~260℃の範囲にある。重合体(x1)の融点が前記範囲にあると、得られる粒子(X)は耐熱性に優れる。また、後述する第2の本発明においてスラリー重合を実施する場合、重合体(x1)の融点が前記範囲にあると、スラリー性状に優れ、固液分離性に優れ、得られる樹脂(X)の耐熱性に優れる傾向にある。
【0076】
以上の構成、物性等の測定方法の詳細は、実施例欄に記載する。なお、後述する第2の本発明においてスラリー重合を実施する場合、以上の構成、物性等は、スラリーを濾別して得られた重合体粒子についてのものである。
【0077】
<4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)>
4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)(単に「共重合体(x2)」ともいう)は、下記要件(x2-a)を満たす。
【0078】
(x2-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量が20.0~98.0モル%であり、好ましくは25.0~95.0モル%、より好ましくは30.0~95.0モル%、さらに好ましくは30.0~92.0モル%、特に好ましくは30.0~90.0モル%であり、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィン(以下「コモノマー2」ともいう)から導かれる構成単位の含有量が2.0~80.0モル%であり、好ましくは5.0~75.0モル%、より好ましくは5.0~70.0モル%、さらに好ましくは8.0~70.0モル%、特に好ましくは10.0~70.0モル%である。ただし、共重合体(x2)におけるコモノマー2から導かれる構成単位の含有量(モル%)は、重合体(x1)におけるコモノマー1から導かれる構成単位の含有量(モル%)よりも大きい。
【0079】
なお、前記構成単位の含有量は、全繰返し構成単位量を100モル%とする。
【0080】
コモノマー2としては、例えば、要件(x1-a)においてコモノマー1として例示したオレフィンが挙げられる。コモノマー2は、粒子(X)または後述する第2の本発明の製造方法で得られる樹脂(X)の用途や必要物性に応じて適宜選択することができる。例えば、コモノマー2としては、適度な弾性率と、優れた柔軟性、可とう性および延伸加工性とを付与するという観点からは、炭素数8~18のα-オレフィンが好ましく、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセンおよび1-オクタデセンから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。コモノマー2の炭素数が上記範囲にあると、樹脂または樹脂組成物の延伸加工性がより良好になり、その結果、成形時にロールや金型からの離型の際にクラックや端部の割れによる外観不良が生じにくくなる傾向にある。
【0081】
共重合体(x2)において、コモノマー2から導かれる構成単位は、1種のみ含まれていてもよく、また、2種以上含まれていてもよい。また、重合体(x1)がコモノマー1から導かれる構成単位を有する場合、重合体(x1)のコモノマー1および共重合体(x2)のコモノマー2は同一でも異なってもよい。
【0082】
共重合体(x2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンおよびコモノマー2以外の、その他のモノマー2から導かれる構成単位(以下「その他の構成単位2」ともいう)を有してもよい。その他の構成単位2の含有量は、例えば0~10.0モル%である。
【0083】
その他のモノマー2としては、例えば、重合体(x1)においてその他のモノマー1として例示した化合物が挙げられる。共重合体(x2)がその他の構成単位2を有する場合、その他の構成単位2は、1種のみ含まれていてもよく、また、2種以上含まれていてもよい。
【0084】
4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)は、さらに以下に説明する物性([η]、融点)から選ばれる少なくとも1つの物性の要件を満たすことが好ましい。
【0085】
共重合体(x2)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.5~20dl/g、より好ましくは1.0~7.0dl/gの範囲にある。
【0086】
共重合体(x2)は、示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が、好ましくは220℃未満の範囲にあるか、またはDSC測定において融点を示すピークが出現しない。より好ましくは融点(Tm)が210℃未満の範囲にあるか、またはDSC測定において融点を示すピークが出現しない。さらに好ましくは、融点(Tm)が120~200℃の範囲にあるか、またはDSC測定において融点を示すピークが出現しない。特に好ましくは、融点(Tm)が130~180℃の範囲にあるか、またはDSC測定において融点を示すピークが出現しない。このような態様であると、コモノマーから導かれる構成単位の含有量の高い、4-メチル-1-ペンテン系重合体が得られる点で好ましい。
【0087】
以上の構成、物性等の測定方法の詳細は、実施例欄に記載する。なお、下記第2の本発明においてスラリー重合を実施する場合、以上の構成、物性等は、スラリーを濾別して得られた重合体粒子についてのものである。共重合体(x2)の構成単位の含有量、[η]およびTmは、重合体(x1)および粒子(X)(または下記第2の本発明の製造方法で得られる樹脂(X))の測定結果、ならびに重合体(x1)と共重合体(x2)との質量比から、算出することが可能である。
【0088】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体樹脂(X)の製造方法]
第2の本発明(以下「本発明2」ともいう)の4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)(単に「樹脂(X)」ともいう)の製造方法は、要件(x1-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)を、メタロセン触媒を用いてスラリー重合により製造する工程(1)と、前記工程(1)で得られた重合体(x1)の存在下で、要件(x2-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)を、前記重合体(x1)および前記共重合体(x2)の合計量を100質量部とした場合に前記共重合体(x2)の量が5.0~90.0質量部となる範囲で、メタロセン触媒を用いてスラリー重合により製造する工程(2)とを有する。
【0089】
第1の本発明の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)は、例えば、前記重合体(x1)を、好ましくはメタロセン触媒を用いてスラリー重合により製造する工程(1)と、前記工程(1)で得られた重合体(x1)の存在下で、前記共重合体(x2)を、前記重合体(x1)および前記共重合体(x2)の合計量を100質量部とした場合に前記共重合体(x2)の量が5.0~90.0質量部となる範囲で、好ましくはメタロセン触媒を用いてスラリー重合により製造する工程(2)とを有する製造方法により、製造することができる。
【0090】
すなわち前記製造方法は、重合条件の異なる工程(1)と工程(2)とを有するが、工程(1)および(2)の二段式重合でもよく、工程(1)および(2)に加えて他の工程をさらに含む三段式以上の重合であってもよい。
【0091】
<工程(1)>
工程(1)では、前記要件(x1-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)をスラリー重合により製造する。工程(1)では、通常はメタロセン触媒を用いて重合を行う。
【0092】
前記重合体(x1)については、要件(x1-a)および好適態様やモノマー種を含めて、<4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)>欄に詳細に記載した。
【0093】
工程(1)において、コモノマー1を用いる場合、4-メチル-1-ペンテンおよびコモノマー1の供給量比は、それぞれから導かれる構成単位の含有量が上記範囲にあるように設定され、コモノマー1の反応性によっても異なるが、例えば、供給量比4-メチル-1-ペンテン/コモノマー1(モル比)が100/0~80/20、好ましくは100/0~90/10、より好ましくは100/0~95/5、さらに好ましくは100/0~97/3、特に好ましくは100/0~98/2の範囲であって、スラリー重合可能な範囲である。
【0094】
工程(1)では、重合体(x1)を含むスラリーが得られる。スラリー濃度、すなわち重合体(x1)粒子濃度は、通常は0.015~45質量%、好ましくは0.03~35質量%である。スラリー濃度は、例えば実施例欄記載の方法で濾過し、算出することができる。
【0095】
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られた重合体(x1)の存在下で、前記要件(x2-a)を満たす4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)をスラリー重合により製造する。工程(2)では、通常はメタロセン触媒を用いて重合を行う。
【0096】
前記共重合体(x2)については、要件(x2-a)および好適態様やモノマー種を含めて、<4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)>欄に詳細に記載した。
【0097】
工程(2)において、4-メチル-1-ペンテンおよびコモノマー2の供給量比は、それぞれから導かれる構成単位の含有量が上記範囲にあるように設定され、コモノマー2の反応性によっても異なるが、例えば、供給量比4-メチル-1-ペンテン/コモノマー2(モル比)が0/100~98/2、好ましくは20/80~98/2、より好ましくは30/70~95/5、さらに好ましくは30/70~92/8、特に好ましくは30/70~90/10の範囲である。
【0098】
工程(1)の重合後に4-メチル-1-ペンテン(モノマー)が残存する場合、工程(2)に4-メチル-1-ペンテン(モノマー)を供給することなく4-メチル-1-ペンテン系共重合体を得ることができる。
【0099】
工程(2)では、工程(1)で得られる重合体(x1)および工程(2)で得られる共重合体(x2)の合計量を100質量部とした場合に、共重合体(x2)の量が5.0~90.0質量部、好ましくは10.0~80.0質量部、さらに好ましくは15.0~70.0質量部となる範囲で、共重合体(x2)を製造する。このような量比でこれらの重合体を製造すると、コモノマー(コモノマー1およびコモノマー2を併せてこのように称する)から導かれる構成単位の含有量の高い、4-メチル-1-ペンテン系重合体が得られる点で好ましい。
【0100】
また、工程(1)で重合体(x1)を製造した後、工程(2)で共重合体(x2)を製造することにより、その逆の順序で行う場合に溶液重合となってしまいやすいのに比べて、前記各工程でスラリー重合が可能となる。
【0101】
工程(2)において、4-メチル-1-ペンテンおよびコモノマー2の供給量は、重合体(x1)と共重合体(x2)との量比が上記範囲にあるように選択される。
【0102】
工程(2)では、一実施態様では、重合体(x1)を含むスラリーに、4-メチル-1-ペンテンおよびコモノマー2を添加し、これらモノマーのスラリー重合を行うことができる。工程(1)で添加した4-メチル-1-ペンテンが残存する場合は、4-メチル-1-ペンテンを添加しなくともよい。
【0103】
工程(2)では、重合体(x1)および共重合体(x2)を含有する樹脂(X)または粒子(X)を含むスラリーが得られる。スラリー濃度、すなわち樹脂(X)粒子濃度または粒子(X)濃度は、通常は3~50質量%、好ましくは5~40質量%である。スラリー濃度は、例えば実施例欄記載の方法で濾過し、算出することができる。
【0104】
《重合条件》
工程(1)および(2)における重合条件を以下に記載する。
【0105】
重合溶媒として、例えば、炭化水素系媒体が挙げられ、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;またはこれらから選ばれる2種以上の混合物が挙げられる。また、4-メチル-1-ペンテン、それ以外のα-オレフィン等のオレフィン自体を重合溶媒として用いることもできる。このように本発明では、炭化水素系媒体中において、および/または重合に用いるオレフィン自体を媒体として、オレフィン重合を行うことができる。
【0106】
上記製造方法ではスラリー重合を採用するが、「スラリー重合」とは、重合により生じる重合体が、重合時に用いた上記媒体に実質的に溶解することなく、例えば微粒子として上記媒体に分散した形で存在することを特徴とする重合をいう。
【0107】
工程(1)および(2)において、オレフィンの重合温度は、通常は0~100℃、好ましくは20~70℃であり;重合圧力は、通常は常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。工程(1)および(2)のこれらの条件は同一でも異なってもよい。
【0108】
特に水素は、オレフィン重合で用いることのできる触媒の重合活性を向上させる効果や、重合体の分子量を増加または低下させる効果が得られることがあり、好ましい添加物であるといえる。系内に水素を添加する場合、その量はオレフィン1モルあたり0.00001~100NL程度が適当である。系内の水素濃度は、水素の供給量を調整する以外にも、水素を生成または消費する反応を系内で行う方法や、膜を利用して水素を分離する方法、水素を含む一部のガスを系外に放出することによっても調整することができる。
【0109】
得られる重合体の分子量は、工程(1)、工程(2)それぞれについて、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、メタロセン触媒を構成することのできる後述の担体(B)の違いや重合溶媒中の4-メチル-1-ペンテン濃度の調整により調節することもできる。
【0110】
工程(1)および(2)において、一実施態様では、得られるスラリーにおける重合体の溶媒可溶部(SP)量を、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下に調節する。SP量が上記範囲にあると固液分離性に優れる。工程(1)におけるコモノマー1、あるいは工程(2)におけるコモノマー2の供給量比が大きくなるほどSP量が増大する傾向となるが、適切なメタロセン触媒を用いることでSP量は上記範囲に調整されうる。例えば後述する好ましいメタロセン化合物(一般式[A1]、さらに好ましくは一般式[A2])を含むメタロセン触媒を用いることで、溶媒可溶部(SP)の発生が抑制され、SP量を上述の好ましい範囲に調整しやすい。
【0111】
《メタロセン触媒》
工程(1)および(2)において、重合体(x1)および共重合体(x2)は、それぞれメタロセン触媒を用いて製造することが好ましい。チーグラー触媒を用いる場合に比べて、メタロセン触媒を用いることで、得られる重合体の溶媒可溶部量が減りスラリー性状が向上し、例えばコモノマーから導かれる構成単位の含有量が多い場合にもスラリー性状が良好となる。したがって、スラリーから目的とする溶媒不溶性の粒子を効率良く分離回収することができる。
【0112】
メタロセン触媒は、メタロセン化合物(A)を含む。
【0113】
メタロセン触媒は、担体(B)をさらに含むことができる。
【0114】
メタロセン触媒は、好ましくは、体積統計値でのD50が1~500μmの範囲にある粒子状触媒であり、D50はより好ましくは2~200μm、さらに好ましくは5~50μmの範囲にある。体積統計値でのD50は、例えば、Microtrac社製のMT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めることができる。メタロセン触媒のD50は、通常、後述する担体(B)のD50と同等、すなわち、担体(B)のD50の通常は0.90~1.10倍の範囲、好ましくは0.95~1.05倍の範囲、より好ましくは1.0~1.03倍の範囲にある。
【0115】
〈メタロセン化合物(A)〉
メタロセン化合物(A)としては、例えば、国際公開第2005/121192号、国際公開第2014/050817号、国際公開第2014/123212号、国際公開第2017/150265号等で開示の化合物が例示される。国際公開第2014/050817号、国際公開第2017/150265号等で開示の架橋メタロセン化合物が好適に挙げられるが、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0116】
メタロセン化合物(A)は、一般式[A1]で表される化合物が好ましい。
【0117】
【化1】
式[A1]中、R
1は炭化水素基、ケイ素含有基またはハロゲン含有炭化水素基であり、R
2~R
10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。Mは周期表第4族遷移金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、jは1~4の整数である。
【0118】
特に好ましいメタロセン化合物(A)として、工程(1)および工程(2)を通じて重合活性の低下が少なく、高立体規則性重合が可能であり、コモノマーの共重合性能に優れ、かつ高分子量の共重合体が得られる錯体化合物が好適に用いられる。高立体規則性重合が可能であることにより、スラリー重合中での溶出ポリマー成分が抑制され、かつ、重合体(x1)の融点を高い範囲に調整することができ、得られる樹脂の耐熱性を高く調節することができる。また、コモノマー共重合性能に優れることは、重合体(x1)および共重合体(x2)の共重合組成を自在に変えることを可能とし、樹脂用途に応じた柔軟性を適切に設定することができる。また、高分子量の共重合体が得られることは、すなわち共重合体(x2)の分子量を高く調整することを可能とし、得られる樹脂の強度や靭性を高いものにすることができるために好ましい。
【0119】
このような観点から、一般式[A1]で表される化合物の中でも、国際公開第2014-050817号などに記載の、一般式[A2]で表される化合物が特に好ましい。
【0120】
【化2】
式[A2]中、R
1bは炭化水素基、ケイ素含有基またはハロゲン含有炭化水素基であり、R
2b~R
12bは水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。Mは周期表第4族遷移金属であり、nは1~3の整数であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、jは1~4の整数である。
【0121】
(R
1
からR
10
、R
1b
からR
12b
)
R1からR10およびR1bからR12bにおける炭化水素基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基、飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10である。
【0122】
直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基等の直鎖状アルキル基;アリル基等の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0123】
分岐状炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-ジプロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
【0124】
環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基等の多環式基が挙げられる。
【0125】
環状不飽和炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等のアリール基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;5-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エニル基等の多環の不飽和脂環式基が挙げられる。
【0126】
飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基としては、例えば、ベンジル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基が有する1または2以上の水素原子をアリール基に置換してなる基が挙げられる。
【0127】
R1からR10およびR1bからR12bにおけるケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の式-SiR3(式中、複数あるRはそれぞれ独立に炭素数1~15のアルキル基またはフェニル基である。)で表される基が挙げられる。
【0128】
R1からR10およびR1bからR12bにおけるハロゲン含有炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の、上記炭化水素基が有する1または2以上の水素原子をハロゲン原子に置換してなる基が挙げられる。
【0129】
R2からR10およびR2bからR12bにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0130】
R2からR10およびR2bからR12bまでの置換基のうち、2つの置換基(例:R2bとR3b、R3bとR4b、R5bとR6b、R6bとR7b、R8bとR9b、R9bとR10b、R10bとR11b、R11bとR12b)が互いに結合して環を形成していてもよく、前記環形成は、分子中に2箇所以上存在してもよい。
【0131】
本発明において、2つの置換基が互いに結合して形成された環(スピロ環、付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環、ベンゼン環、水素化ベンゼン環、シクロペンテン環が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン環、ベンゼン環および水素化ベンゼン環である。また、このような環構造は、環上にアルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。
【0132】
R1bは、立体規則性の観点から、炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~20の炭化水素基であることがより好ましく、アリール基ではないことがさらに好ましく、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基または環状飽和炭化水素基であることがとりわけ好ましく、遊離原子価を有する炭素(シクロペンタジエニル環に結合する炭素)が3級炭素である置換基であることが特に好ましい。
【0133】
R1bとしては、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、tert-アミル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アダマンチル基が例示でき、より好ましくはtert-ブチル基、tert-ペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アダマンチル基等の遊離原子価を有する炭素が3級炭素である置換基であり、特に好ましくはtert-ブチル基、1-アダマンチル基である。
【0134】
一般式[A2]において、フルオレン環部分は公知のフルオレン誘導体から得られる構造であれば特に制限されないが、R4bおよびR5bは、立体規則性、分子量の観点から、好ましくは水素原子である。
【0135】
R2b、R3b、R6bおよびR7bは、好ましくは水素原子または炭化水素基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1~20の炭化水素基である。また、R2bとR3bが互いに結合して環を形成し、かつR6bとR7bが互いに結合して環を形成していてもよい。このような置換フルオレニル基としては、例えば、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基、1,1,3,3,6,6,8,8-オクタメチル-2,3,6,7,8,10-ヘキサヒドロ-1H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基、1',1',3',6',8',8'-ヘキサメチル-1'H,8'H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基が挙げられ、特に好ましくは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基である。
【0136】
R8bは水素原子であることが好ましい。
【0137】
R9bは炭化水素基であることがより好ましく、R9bは直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基等の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であることがさらに好ましく、R9bは炭素数2以上のアルキル基であることがとりわけ好ましい。また、合成上の観点からは、R10bおよびR11bは水素原子であることも好ましい。
【0138】
あるいは、n=1である場合、R9bおよびR10bが互いに結合して環を形成していることがより好ましく、当該環がシクロヘキサン環等の6員環であることが特に好ましい。この場合、R11bは水素原子であることが好ましい。
【0139】
R12bは、炭化水素基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
【0140】
(M、Q、nおよびjについて)
Mは周期表第4族遷移金属であり、例えばTi、ZrまたはHfであり、好ましくはZrまたはHfであり、特に好ましくはZrである。
【0141】
Qはハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示す。
【0142】
Qでのハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0143】
Qにおける炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基が好ましい。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1,1,2,2-テトラメチルプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,1,3-トリメチルブチル基、ネオペンチル基が例示され;炭素数3~10のシクロアルキル基としては、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシル基、1-メチル-1-シクロヘキシル基が例示される。炭化水素基の炭素数は、5以下であることがより好ましい。
【0144】
炭素数10以下の中性の共役または非共役ジエンとしては、s-シス-またはs-トランス-η4-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-3-メチル-1,3-ペンタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジベンジル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-2,4-ヘキサジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,3-ペンタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ジトリル-1,3-ブタジエン、s-シス-またはs-トランス-η4-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,3-ブタジエンが例示される。
【0145】
アニオン配位子としては、メトキシ、tert-ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ等のアリールオキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基が例示される。
【0146】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類が例示される。
【0147】
Qの好ましい態様は、ハロゲン原子または炭素数1~5のアルキル基である。
【0148】
nは1~3の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。nが上記値であることにより、生成する重合体を効率的に得る観点から好ましい。
【0149】
jは1~4の整数であり、好ましくは2である。
【0150】
以上、一般式[A1]または[A2]で表される化合物の構成、すなわちR1~R10、R1b~R12b、M、n、Qおよびjについて、好ましい態様を説明した。本発明では、それぞれの好適態様の任意の組合せも好ましい態様である。このような架橋メタロセン化合物は、上記物性を有する重合体を得るために好適に使用することができる。
【0151】
一般式[A2]で表される化合物としては、(8-オクタメチルフルオレン-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドまたは(8-(2,3,6,7-テトラメチルフルオレン)-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドが特に好ましい。ここで、上記オクタメチルフルオレンとは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレンのことである。
【0152】
〈担体(B)〉
担体(B)は、好ましくは粒子状であり、その表面および内部にメタロセン化合物(A)を固定化させることで、前記メタロセン触媒が形成される。このような形態の触媒は一般にメタロセン担持触媒と呼ばれる。
【0153】
担体(B)は、有機アルミニウム化合物(B-1)、有機ホウ素化合物(B-2)、もしくは無機化合物(B-3)、またはこれらから選ばれる2種以上の複合体を主成分とする。
【0154】
有機アルミニウム化合物(B-1)としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、トリシクロアルキルアルミニウムや、アルミノキサンに代表される有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。また、有機アルミニウム化合物(B-1)としては、例えば、ホウ素原子を含む有機アルミニウムオキシ化合物や、国際公開第2005/066191号、国際公開第2007/131010号に例示されているようなハロゲンを含むアルミノキサン、国際公開第2003/082879号に例示されているようなイオン性アルミノキサンを挙げることもできる。
【0155】
有機ホウ素化合物(B-2)としては、例えば、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0156】
無機化合物(B-3)としては、例えば、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物、またはイオン交換性層状化合物が挙げられる。
【0157】
多孔質酸化物としては、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の酸化物、またはこれらを含む複合物もしくは混合物が挙げられる。例えば、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3、SiO2-TiO2-MgOなどを例示することができる。
【0158】
無機ハロゲン化物としては、例えば、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2が挙げられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0159】
粘土は、通常は粘土鉱物を主成分として構成される。イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有されるイオンが交換可能である。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物としては、粘土、粘土鉱物、または六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物を例示することができる。
【0160】
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、何れも使用できる。化学処理としては、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
【0161】
本発明に用いる担体(B)として、高活性かつ溶媒可溶部量をさらに抑制する観点から、アルミニウム原子を含有する担体が好ましい。担体(B)中のアルミニウム原子の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは20~60質量%、さらに好ましくは30~50質量%、特に好ましくは35~47質量%である。
【0162】
また、担体(B)の体積統計値でのD50は、好ましくは1~500μm、より好ましくは2~200μm、さらに好ましくは5~50μmである。体積統計値でのD50は、例えば、Microtrac社製のMT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
【0163】
このような担体(B)としては、固体状アルミノキサンが好適に用いられ、例えば、国際公開第2010/055652号、国際公開第2013/146337号、あるいは、国際公開第2014-123212号で開示される固体状アルミノキサンが特に好適に用いられる。
【0164】
「固体状」とは、固体状アルミノキサンが用いられる反応環境下において、当該アルミノキサンが実質的に固体状態を維持することを意味する。より具体的には、例えばオレフィン重合触媒を構成する各成分を接触させてオレフィン重合固体触媒成分を調製する際、反応に用いられるヘキサンやトルエン等の不活性炭化水素媒体中、特定の温度・圧力環境下において前記アルミノキサンが固体状態であることを表す。
【0165】
固体状アルミノキサンは、好ましくは式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を有するアルミノキサンを含有し、より好ましくは式(1)で表される構成単位を有するアルミノキサンを含有し、さらに好ましくは式(1)で表される構成単位のみからなるポリメチルアルミノキサンを含有する。
【0166】
【0167】
式(2)中、R1は炭素数2~20の炭化水素基、好ましくは炭素数2~15の炭化水素基、より好ましくは炭素数2~10の炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、エチル、プロピル、n-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、2-エチルヘキシル等のアルキル基;シクロヘキシル、シクロオクチル等のシクロアルキル基;フェニル、トリル等のアリール基が挙げられる。
【0168】
固体状アルミノキサンの構造は必ずしも明らかにされておらず、通常は、式(1)および/または式(2)で表される構成単位が2~50程度繰り返されている構成を有すると推定されるが、当該構成に限定されない。また、その構成単位の結合態様は、例えば、線状、環状またはクラスター状と種々であり、アルミノキサンは、通常、これらのうちの1種からなるか、または、これらの混合物であると推定される。また、アルミノキサンは、式(1)または式(2)で表される構成単位のみからなってもよい。
【0169】
固体状アルミノキサンとしては、固体状ポリメチルアルミノキサンが好ましく、式(1)で表される構成単位のみからなる固体状ポリメチルアルミノキサンがより好ましい。
【0170】
固体状アルミノキサンは、通常は粒子状であり、体積統計値でのD50が好ましくは1~500μm、より好ましくは2~200μm、さらに好ましくは5~50μmである。体積統計値でのD50は、例えば、Microtrac社製のMT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
【0171】
固体状アルミノキサンは、比表面積が好ましくは100~1000m2/g、より好ましくは300~800m2/gである。比表面積は、BET吸着等温式を用い、固体表面におけるガスの吸着および脱着現象を利用して求めることができる。
【0172】
固体状アルミノキサンは、触媒担体として機能する。このため、固体状アルミノキサンの他に、触媒担体として、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、塩化マグネシウム等の固体状無機担体、またはポリスチレンビーズ等の固体状有機担体を用いなくともよい。
【0173】
固体状アルミノキサンは、例えば、国際公開第2010/055652号および国際公開第2014/123212号に記載された方法により調製することができる。
【0174】
〈有機化合物成分(C)〉
メタロセン触媒は、さらに必要に応じて、有機化合物成分(C)を含有することもできる。有機化合物成分(C)は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。有機化合物成分(C)としては、前述の有機アルミニウム化合物(B-1)を用いうる。その他に例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、アミド、ポリエーテルおよびスルホン酸塩が挙げられる。
【0175】
〈各成分の使用法および添加順序〉
オレフィン重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。以下では、メタロセン化合物(A)、担体(B)および有機化合物成分(C)を、それぞれ「成分(A)~(C)」ともいう。
(i)成分(A)と成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(ii)成分(A)を成分(B)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0176】
上記(i)~(ii)の各方法においては、任意の段階でさらに成分(C)が添加されてもよい。また、各触媒成分の少なくとも2つは予め接触されていてもよい。
【0177】
また、成分(B)に成分(A)が担持された固体触媒成分においては、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン等のオレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
【0178】
本発明では、メタロセン化合物(A)と担体(B)と任意に他の成分とからメタロセン触媒を調製し、この触媒の存在下で4-メチル-1-ペンテンを含むオレフィンを重合することが好ましく、すなわち工程(1)および(2)を行うことが好ましい。「メタロセン触媒の存在下で4-メチル-1-ペンテンを含むオレフィンを重合する」は、上記各方法のように、任意の方法でメタロセン触媒を構成する各成分を重合器に添加してオレフィンを重合する態様を包含する。
【0179】
工程(1)および(2)において、メタロセン触媒を用いてオレフィンの重合を行うに際して、メタロセン触媒を構成しうる各成分の使用量は以下のとおりである。また、メタロセン触媒において、各成分の含有量を以下のとおりに調節することができる。
【0180】
成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常は10-10~10-2モル、好ましくは10-8~10-3モルとなるような量で用いられる。成分(B-1)は、成分(B-1)中のアルミニウム原子と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔Al/M〕が通常は10~10000、好ましくは30~2000、特に好ましくは150~500となるような量で用いることができる。成分(B-2)は、成分(B-2)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-2)/M〕が通常は10~10000、好ましくは30~2000、さらに好ましくは150~500となるような量で用いることができる。成分(B-3)は、成分(B-3)と成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が通常は10~10000、好ましくは30~2000、さらに好ましくは150~500となるような量で用いることができる。
【0181】
成分(C)を用いる場合は、成分(B)が成分(B-1)の場合には、成分(B-1)中のアルミニウム原子と成分(C)のモル比〔Al/(C)〕が通常は0.002~500、好ましくは0.01~60となるような量で、成分(B)が成分(B-2)の場合には、成分(B-2)と成分(C)のモル比〔(B-2)/(C)〕が通常は0.002~500、好ましくは0.01~60となるような量で、成分(B)が成分(B-3)の場合は、成分(B-3)と成分(C)のモル比〔(B-3)/(C)〕が通常は0.002~500、好ましくは0.01~60となるような量で用いることができる。
【0182】
<固液分離工程>
工程(2)で得られた、重合体(x1)および共重合体(x2)を含有する樹脂(X)または粒子(X)を含むスラリーを、固液分離する、例えば濾過することにより、樹脂(X)または粒子(X)を分離回収することができる。この固液分離工程により、樹脂(X)または粒子(X)を効率的に回収することができる。
【0183】
<後処理工程>
上記製造方法で得られた4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)または4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)、例えば上記固液分離工程で得られた樹脂(X)粒子または粒子(X)に対しては、上記方法で製造した後に、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行ってよい。
【0184】
[4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)]
本発明2の製造方法で得られる4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)を説明する。
【0185】
樹脂(X)は、4-メチル-1-ペンテン重合体(x1)を通常は10.0~95.0質量部、好ましくは20.0~90.0質量部、より好ましくは30.0~85.0質量部含有し、4-メチル-1-ペンテン共重合体(x2)を通常は5.0~90.0質量部、好ましくは10.0~80.0質量部、より好ましくは15.0~70.0質量部含有する。ただし、重合体(x1)および共重合体(x2)の合計量を100質量部とする。
【0186】
樹脂(X)において、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは30.0~99.7モル%、より好ましくは40.0~99.5モル%、さらに好ましくは50.0~99.0モル%、特に好ましくは、70.0~97.0モル%、75.0~96.0モル%、または80.0~95.0モル%である。
【0187】
樹脂(X)において、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは0.3~70.0モル%、より好ましくは0.5~60.0モル%、さらに好ましくは1.0~50.0モル%、特に好ましくは、3.0~30.0モル%、4.0~25.0モル%、または5.0~20.0モル%である。
【0188】
樹脂(X)は、本発明の効果を損なわない範囲で、前述したその他の構成単位1および2(その他の構成単位)を有してもよい。前記その他の構成単位の含有量は、例えば0~10.0モル%である。
【0189】
樹脂(X)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.5~10.0dl/g、より好ましくは0.5~5.0dl/g、さらに好ましくは1.0~5.0dl/gの範囲にある。
【0190】
樹脂(X)の極限粘度[η]は、重合体(x1)および共重合体(x2)それぞれの[η]の値、および含有量比によって調整されうる。
【0191】
樹脂(X)の13C-NMRで測定されるメソダイアッド分率(m)は、好ましくは95.0~100%、より好ましくは96.0~100%、さらに好ましくは97.0~100%、特に好ましくは98.0~100%、最も好ましくは98.5~100%の範囲にある。上限値は100%であることが好ましいが、99.9%であることもできる。前記mは適切なメタロセン触媒を用いることで上記範囲に調整されうる。例えば前述の好ましいメタロセン化合物(一般式[A1]、さらに好ましくは一般式[A2])を含むメタロセン触媒を用いることで、前記mを上記範囲に調整しやすい。前記mが上記範囲にあることで、スラリーの固液分離性が良好になりやすく好ましい。
【0192】
本発明2の製造方法で得られる樹脂(X)は、例えば粒子である。樹脂(X)は、例えば本発明1の粒子(X)である。樹脂(X)からなる粒子の粒径(D50)は、通常は10~2000μm、好ましくは30~1000μm、より好ましくは50~500μm、さらに好ましくは70~300μmの範囲にある。樹脂(X)からなる粒子の粒径(D50)は、一実施態様において、好ましくは30~1800μm、より好ましくは50~1500μm、さらに好ましくは70~1200μmの範囲にある。
【0193】
前記粒径(D50)は、具体的には、ベックマンコールター社製レーザー回折散乱装置(LS13320)を用いて測定した値であり、サンプルの分散媒としてはデカンを使用することができる。また、樹脂(X)からなる粒子の粒径(D50)は、通常、メタロセン触媒の粒径(D50)よりも大きくなる。
【0194】
また、樹脂(X)からなる粒子の嵩密度は、通常は0.1~1.0g/cm3、好ましくは0.2~0.8g/cm3、より好ましくは0.3~0.5g/cm3の範囲にある。
【0195】
本発明の製造方法で得られる樹脂(X)は、ペレット化してもよい。ペレット化の方法としては、例えば、以下の方法(1)および(2)が挙げられる。
(1)樹脂(X)および所望により添加される他の成分を、押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
(2)樹脂(X)および所望により添加される他の成分を適当な良溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去、しかる後に押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
【0196】
本発明2の製造方法で得られる樹脂(X)は、一実施態様において、4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)からなり、例えば、前記粒子(X)を溶融混練することにより得られた樹脂でもよい。
【0197】
[4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)を含有する樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)を含有する。
【0198】
本発明の樹脂組成物は、樹脂(X)に該当しないその他の成分、例えば、樹脂(X)以外の樹脂や、各種添加剤を含有することができる。
【0199】
樹脂(X)以外の樹脂としては、例えば、樹脂(X)以外の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ビニル芳香族系樹脂等の熱可塑性樹脂、また、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の具体例は後述する。
【0200】
各種添加剤としては、例えば、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、無機または有機の充填剤、有機系または無機系の発泡剤、架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、難燃剤が挙げられる。
【0201】
本発明の樹脂組成物において、樹脂(X)の含有量は、通常は30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。
【0202】
本発明の樹脂組成物は、例えば、2種以上の樹脂(X)を混合する、あるいは樹脂(X)とその他の成分とを混合することによって得られ、混合方法としては特に限定されず、例えば、二軸押出機でコンパウンドする方法や、ドライブレンド等によって混合する方法が挙げられる。
【0203】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)からなる樹脂]
本発明の樹脂は、4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)からなり、例えば、前記粒子(X)を溶融混練することにより得られる。溶融混練温度は、通常は180~350℃、好ましくは200~320℃、より好ましくは250~300℃の範囲である。形状は限定されないが、通常はペレット状であると扱いやすさにおいて好ましい。この際、必要に応じて後述する各種添加剤を配合してもよい。
【0204】
ペレット化の方法としては、例えば、以下の方法(1)および(2)が挙げられる。
(1)粒子(X)および所望により添加される他の成分を、押出機、ニーダー等を用いて溶融混練して、所定の大きさにカットする方法。
(2)粒子(X)および所望により添加される他の成分を適当な良溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去、しかる後に押出機、ニーダー等を用いて溶融混練して、所定の大きさにカットする方法。
【0205】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)からなる樹脂の特徴]
本発明の樹脂は、高い立体規則性を有し、優れた耐熱性と比較的低い剛性すなわち柔軟性とを両立できるという特徴を有する。これは、本発明の重合体粒子(X)からもたらされる特徴であり、CFC測定による100~140℃の範囲に溶出成分量のピークを有する成分(通常、重合体(x1))により、高い耐熱性という特性が得られ、かつ、100℃未満に溶出成分量のピークを有する成分(通常、共重合体(x2))により、柔軟性の特性が得られている。
【0206】
また、本発明の樹脂は、一実施態様において、優れた耐汚染性を実現できる。CFC測定による、0℃以下で溶出する成分の累積質量百分率が2.0質量%未満であることにより、耐汚染性の特徴が得られている。
【0207】
一方で、重合体(x1)と共重合体(x2)とをそれぞれ個別に重合した重合体の混合物である樹脂、例えば個別の重合体を溶融混練して得た樹脂に比べて、本発明の樹脂は、ヘイズが低い、すなわち、透明性に優れる特徴がある。これは、本発明の樹脂は、粒子の一つ一つに重合体(x1)と共重合体(x2)とを含む粒子(X)から得られるために、重合体(x1)と共重合体(x2)との相分離構造のサイズが均一になっているためと考えられる。相分離構造は、例えば透過型電子顕微鏡や、X線散乱法あるいは光散乱法などにより確認することができる。なお相分離構造が小さい、あるいは、重合体(x1)と共重合体(x2)の相容性が高い場合、これらの方法では相分離構造を観察できない場合もありうる。相分離構造は特に限定されるものではないが、重合体(x1)と共重合体(x2)の体積比率に依存することが推測され、共連続構造あるいは海島構造が取りやすいものと考えられるが、場合によってはラメラ構造(層状構造)、シリンダー等の構造も取りうると推測される。
【0208】
一実施態様において、本発明1の粒子(X)からなる樹脂、または当該樹脂を含有する樹脂組成物から成形された成形体は、引張弾性率が以下の式1を満たすことが好ましく、式2を満たすことがより好ましい。
【0209】
式1: 引張弾性率(MPa)<Tm(℃)×49.6-10400
式2: 引張弾性率(MPa)<Tm(℃)×49.6-10800
ここで、引張弾性率はASTM D638に準拠して測定した値であり、融点(Tm)は示差走査熱量計(DSC)により測定した値であり、通常は粒子(X)の融点に相当し、詳細は実施例欄に記載する。成形体の成形条件は実施例欄<成形方法>に記載する。
【0210】
前記成形体が式1を満たす場合、前記成形体は耐熱性が高くかつ柔軟性に優れると判断できる。式1の関係は、
図1において実線で表される。前記成形体が式2を満たす場合、前記成形体は耐熱性および柔軟性のバランスにさらに優れると判断できる。式2の関係は、
図1において破線で表される。すなわち、本発明1の粒子(X)からなる樹脂、およびその樹脂組成物を用いることにより、耐熱性および柔軟性に優れた成形体を得ることができる。
【0211】
本発明1の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)または4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)からなる樹脂や、本発明2の製造方法で得られる4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は、その一部が極性モノマーによりグラフト変性されていてもよい。
【0212】
極性モノマーとしては、例えば、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸またはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、ビニル基含有有機ケイ素化合物、カルボジイミド化合物が挙げられる。極性モノマーとしては、不飽和カルボン酸またはその誘導体、およびビニル基含有有機ケイ素化合物が特に好ましい。
【0213】
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、カルボン酸基を1つ以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1つ以上有する不飽和化合物が挙げられる。不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基が挙げられる。これらの化合物は従来公知のものが使用でき、特に限定されない。具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸〔商標〕(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等の不飽和カルボン酸;またはその誘導体である、酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられる。前記誘導体の具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ナジック酸ジメチル(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸ジメチル)、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、グリシジルマレエートが挙げられる。これらの不飽和カルボン酸およびその誘導体は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸〔商標〕またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。
【0214】
ビニル基含有有機ケイ素化合物としては、従来公知のものが使用でき、特に制限されない。例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらの中では、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、立体障害が小さくグラフト変性効率の高いビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0215】
極性モノマーは、1種類単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合せて使用することもできる。
【0216】
極性モノマーは、粒子(X)、粒子(X)からなる樹脂または樹脂(X)を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体100質量部に対して、通常は1~100質量部、好ましくは5~80質量部の量で使用される。
【0217】
このグラフト重合は、通常はラジカル開始剤の存在下に行なわれる。
【0218】
ラジカル開始剤としては、有機過酸化物あるいはアゾ化合物などを用いることができる。具体的には、従来公知のものを使用することができ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシフタレート等のパーオキシエステル類;ジシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0219】
ラジカル開始剤は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体および極性モノマーとそのまま混合して使用することもできるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。この有機溶媒としては、ラジカル開始剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく用いることができる。
【0220】
また極性モノマーをグラフト重合させる際には、還元性物質を用いてもよい。還元性物質を用いると、極性モノマーのグラフト量を向上させることができる。
【0221】
グラフト変性は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体を有機溶媒に溶解し、次いで極性モノマーおよびラジカル開始剤などを溶液に加え、60~260℃、好ましくは80~200℃の温度で、0.5~15時間、好ましくは1~10時間反応させることによりできる。
【0222】
また、本発明1の粒子(X)または粒子(X)からなる樹脂、あるいは本発明2の製造方法で得られる樹脂(X)を固体状態のまま、極性モノマーおよびラジカル開始剤などを無溶媒あるいは溶液の形態で加え、60~260℃、好ましくは80~200℃の温度で、0.5~15時間、好ましくは1~10時間反応させることもできる。
【0223】
また押出機などを用いて、無溶媒で、4-メチル-1-ペンテン系重合体と極性モノマーとを反応させて製造することもできる。この反応は、通常は重合体の融点以上、具体的には120~300℃の温度で、通常は0.5~10分間行なわれることが好ましい。
【0224】
前記方法により得られた前記4-メチル-1-ペンテン系重合体の変性量(極性モノマーのグラフト量)は、グラフト変性後の前記4-メチル-1-ペンテン系重合体100質量%に対して、通常は0.1~50質量%、好ましくは0.2~30質量%、さらに好ましくは0.2~10質量%である。
【0225】
本発明において、4-メチル-1-ペンテン系重合体に、グラフト変性された重合体が含まれると、他の樹脂との接着性、相溶性に優れ、また成形体表面の濡れ性が改良されうる。またグラフト変性された重合体は、架橋することによって、架橋電線、架橋パイプにも好適に利用することができる。
【0226】
また、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体をハロゲン化して得られるハロゲン変性重合体をマクロ開始剤として、ラジカル重合性単量体を原子移動ラジカル重合することにより、ポリオレフィンセグメントと極性ポリマーセグメントとが化学結合したブロック・グラフト共重合体を得ることもできる。なお、マクロ開始剤とは、原子移動ラジカル重合の開始能を有する重合体であり、分子鎖中に原子移動ラジカル重合の開始点となりうる部位を有する重合体を表す。
【0227】
ハロゲン変性重合体は、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体とハロゲン化剤とを反応させることにより製造される。ハロゲン化剤としては、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体をハロゲン化してハロゲン変性重合体を製造できるものであれば特に制限はないが、具体的には、塩素、臭素、ヨウ素、三塩化リン、三臭化リン、三ヨウ化リン、五塩化リン、五臭化リン、五ヨウ化リン、塩化チオニル、塩化スルフリル、臭化チオニル、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ブロモカプロラクタム、N-ブロモフタルイミド、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、N-クロログルタルイミド、N-ブロモグルタルイミド、N,N'-ジブロモイソシアヌル酸、N-ブロモアセトアミド、N-ブロモカルバミド酸エステル、ジオキサンジブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド、ピロリドンヒドロトリブロミド、次亜塩素酸t-ブチル、次亜臭素酸t-ブチル、塩化銅(II)、臭化銅(II)、塩化鉄(III)、塩化オキサリル、IBrなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは塩素、臭素、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ブロモカプロラクタム、N-ブロモフタルイミド、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、N-クロログルタルイミド、N-ブロモグルタルイミド、N,N'-ジブロモイソシアヌル酸であり、より好ましくは臭素、N-ブロモスクシンイミド、N-ブロモカプロラクタム、N-ブロモフタルイミド、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、N-ブロモグルタルイミド、N,N'-ジブロモイソシアヌル酸などのN-Br結合を有する化合物である。
【0228】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体とハロゲン化剤との反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが挙げられる。また、前記反応には、必要に応じて溶媒を使用することができる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソール等のエーテル系溶媒が挙げられる。
【0229】
ハロゲン化剤との反応においては、反応を促進するために必要に応じてラジカル開始剤を添加することもできる。ラジカル開始剤としては、例えば上記ラジカル開始剤が挙げられる。
【0230】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体とハロゲン化剤とを反応させる方法については、従来公知の種々の方法が採用できる。例えば、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体を溶媒に懸濁させ、あるいは溶解させて、通常は-80℃~250℃の温度、好ましくは室温以上溶媒の沸点以下の温度で、ハロゲン化剤と必要に応じてラジカル開始剤などを添加混合して反応させる方法、あるいは前記4-メチル-1-ペンテン系重合体をその融点以上、例えば、180~300℃の温度で溶融混練下にハロゲン化剤と必要に応じてラジカル開始剤とを接触させる方法が挙げられる。
【0231】
極性ポリマーセグメントとは、ラジカル重合性単量体から選ばれる1種以上のモノマーの単独重合体または共重合体である。ラジカル重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらの有機化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0232】
原子移動ラジカル重合は、従来公知の方法で行うことができ、重合方法は特に限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状・懸濁重合などを適用することができる。反応温度はラジカル重合反応が進行する温度であれば何れでも構わず、所望する重合体の重合度、使用するラジカル開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、-100℃~250℃である。
【0233】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)からなる樹脂を含有する樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)からなる樹脂を含有する。
【0234】
本発明の樹脂組成物は、粒子(X)からなる樹脂に該当しないその他の成分、例えば、粒子(X)からなる樹脂以外の樹脂や、各種添加剤を含有することができる。
【0235】
前記樹脂以外の樹脂としては、例えば、粒子(X)からなる樹脂以外の熱可塑性ポリオレフィン系樹脂、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン-1共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・プロピレン・オクテン-1共重合体、エチレン・ブテン-1・ヘキセン-1共重合体、エチレン・ブテン-1・オクテン-1共重合体、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T/66共重合体、ポリアミド6T/6I共重合体、ポリアミド9T、ポリアミド10T等の熱可塑性ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリスチレン等の熱可塑性ビニル芳香族系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどの熱可塑性樹脂、また、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0236】
各種添加剤としては、例えば、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、無機または有機の充填剤、有機系または無機系の発泡剤、架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、難燃剤等が挙げられる。
【0237】
本発明の樹脂組成物において、粒子(X)からなる樹脂の含有量は、通常は30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。
【0238】
本発明の樹脂組成物は、本発明1の粒子(X)からなる樹脂を含有するが、上述したようにその他の成分をさらに含有してもよく、その場合は例えば、前記樹脂とその他の成分とを混合することによって得られ、混合方法としては特に限定されず、例えば、二軸押出機でコンパウンドする方法や、ドライブレンド等によって混合する方法が挙げられる。
【0239】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明1の4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)、粒子(X)からなる前記樹脂、または前記樹脂を含有する前記樹脂組成物を成形することにより得られる。また、本発明の成形体は、本発明2の製造方法で得られる4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)、または樹脂(X)を含有する前記樹脂組成物を成形することにより得られる。
【0240】
(1)成形方法
成形方法としては、公知の各種の成形方法が適用でき、例えば、射出成形、押出成形、射出延伸ブロー成形、ブロー成形、キャス卜成形、カレンダー成形、プレス成形、スタンピング成形、インフレーション成形、ロール成形等の各種成形方法が挙げられる。これらの成形方法により、目的とする成形体、例えば単層または積層のフィルム、シート、膜(メンブレン)、テープ、中空成形体、射出成形体、繊維、発泡体等に加工することができる。
【0241】
(2)形状
成形体の形状には特に制約はない。例えば、チューブ状、フィルム状、シート状、膜(メンブレン)状、テープ状、板状、棒状、繊維状、不織布状が挙げられる。
【0242】
なお、以下の説明において、フィルムとは平面状成形体の総称であり、シート、テープなども含む概念とする。
【0243】
(3)用途
本発明の成形体は、高耐熱・高靭性・軽量・耐水性・低誘電率・折り曲げ低白化性などに優れることから、食品容器、医療容器、生活雑貨、電気・電子材料、自動車部品等の幅広い分野で用途に制約なく用いられうる。
【0244】
食品・医療・生活用品分野では、例えば、
業務用ラップフィルム、家庭用ラップフィルム、加工魚包材、野菜包材、果物包材、発酵食品包材、菓子包装材、酸素吸収剤包材、レトルト食品用包材、鮮度保持フィルム、球根包材、種子包材、野菜・キノコ栽培用フィルムなどの食品包材;レトルト食品容器、耐熱真空成形容器、惣菜容器、惣菜用蓋材、ベーキングカートン、食器、調味料容器、台所用品、レトルト容器、冷凍保存容器、レトルトパウチ、電子レンジ耐熱容器、冷凍食品容器、冷菓カップ、カップ、哺乳瓶、飲料ボトルなどの食品容器;
輸血セット、医療用ボトル、医療用容器、医療用チューブ、輸液チューブ、コネクタやパッキン、医療用中空瓶、医療バッグ、輸液バッグ、血液保存バック、輸液ボトル、薬品容器、洗剤容器、柔軟剤用容器、漂白剤用容器、バイアル、プラスチックシリンジ、プレフィルドシリンジ、医薬包材、細胞培養バック、細胞培養容器、細胞検査フィルム、医療用ガスケット、医療用キャップ、薬栓、ガスケット、煮沸処理や高圧蒸気滅菌等の高温処理される用途のパッキング材などの医療用器具;ビーカー、シャーレ、フラスコ、アニマルケージ、保存容器などの理化学実験器具;PCRプレート、PCRチューブ、PCRプレート用ホイルシール、バッファ容器、マーカ容器などの各種医療用検査キット;コンタクトレンズ、メガネレンズなどのレンズ用途;作業・実験用保護メガネまたはゴーグル、サングラスなどの眼鏡用途;ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイおよびそれらの車載用途;商品ディスプレー、家庭用鑑賞用水槽、大型商業用水槽などの観賞用容器;その他、靴底、自動車部品、筆記具、スポーツ用品、ラミネート樹脂、アスファルトブレンド樹脂、電子線架橋用材料、シャンプー用容器、リンス用容器、化粧品容器、香水容器、卜ナー容器、粉末容器、接着剤用容器、ガソリンタンク用容器、灯油用容器、耐熱容器などが挙げられる。
【0245】
電子材料分野では、透明かつ柔軟な性能を生かした、電子ペーパーなどの電子ディスプレイ、有機EL表示装置、LED(発光ダイオード)照明装置、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーなどの電子装置用の透明フレキシブルフィルム;半導体用層間絶縁膜、バッファーコート、フレキシブルプリント配線回路用基板、液晶配向膜など、様々な電子デバイスや光導波路用の膜;液晶表示装置、有機EL表示装置、有機TFTなどのフレキシブル基板;離形性、耐熱性や低誘電特性を生かした電子材料用フィルム、例えば、フレキシブルプリント基板用離型フィルム、ACM基板用離型フィルム、リジット基板用離型フィルム、リジットフレキシブル基板用離型フィルム、先端複合材料用離型フィルム、炭素繊維複合材硬化用離型フィルム、ガラス繊維複合材硬化用離型フィルム、アラミド繊維複合材硬化用離型フィルム、ナノ複合材硬化用離型フィルム、フィラー充填材硬化用離型フィルム、半導体封止用離型フィルム、偏光板用離型フィルム、拡散シート用離型フィルム、プリズムシート用離型フィルム、反射シート用離型フィルム、離型フィルム用クッションフィルム、燃料電池用離型フィルム、各種ゴムシート用離型フィルム、ウレタン硬化用離型フィルム、エポキシ硬化用離型フィルムなどの離型フィルム、太陽電池セル封止シート、太陽電池セルバックシート、太陽電池用プラスチックフィルム、バッテリーセパレーター、リチウムイオン電池用セパレーター、燃料電池用電解質膜、粘着・接着材セパレーター、導光板、光ディスク、ダイシングテープ・バックグラインドテープ・ダイボンディングフィルム、二層FCCL、フィルムコンデンサー用フィルムなどの半導体用工程フィルムの基材・粘着材・セパレーター、粘着フィルム、応力緩和フィルム、ペリクル用フィルム、偏光板用フィルム、偏光板用保護フィルム、液晶パネル用保護フィルム、光学部品用保護フィルム、レンズ用保護フィルム、電気部品・電化製品用保護フィルム、携帯電話用保護フィルム、パソコン用保護フィルム、タッチパネル用保護フィルム、窓ガラス保護フィルム、焼付塗装用フィルム、マスキングフィルム、コンデンサー用フィルム、キャパシターフィルム、タブリードフィルム、燃料電池用キャパシターフィルム、反射フィルム、拡散フィルム、積層体(ガラスを含む)、耐放射線フィルム、耐γ線フィルム、多孔フィルムなどの保護フィルム、放熱フィルム・シート、電子部品封止体製造用型枠、LEDモールド、高周波回路用積層板、高周波ケーブル用被覆材、光導波路基板、ガラス繊維複合体、炭素繊維複合体、ガラス中間膜、合わせガラス用フィルム、建材用ウインドウフィルム、アーケードドーム、体育館窓ガラス代替、LCD基板用フィルム、防弾材、防弾ガラス用フィルム、遮熱シート、遮熱フィルム、合皮用離型紙、先端複合材料用離型紙、炭素繊維複合材硬化用離型紙、ガラス繊維複合材硬化用離型紙、アラミド繊維複合材硬化用離型紙、ナノ複合材硬化用離型紙、フィラー充填材硬化用離型紙などの離型紙、耐熱耐水印画紙、包装用フィルム、離型フィルム、通気性フィルム、反射フィルム、合成紙、ディスプレイ用フィルム、ディスプレイ導電フィルム、ディスプレイバリアフィルムなどが挙げられる。
【0246】
その他の用途としては、例えば、ゴムホース製造用マンドレル、シース、ゴムホース製造用シース、ホース、チューブ、合皮用離型紙、産業用チューブ、冷却水配管、温水配管、電線被覆材、ミリ波信号ケーブル被覆材、高周波信号ケーブル被覆材、エコ電線被覆材、車載用ケーブル被覆材、信号ケーブル被覆材、高圧電線用碍子、配線ダクト、化粧品・香水スプレー用チューブ、パイプ、ワイヤーハーネス、自動車・自動二輪・鉄道車両・航空機・船舶等の内外装材、耐磨耗自動車内外装材、インストルメントパネル表皮、ドアトリム表皮、リアーパッケージトリム表皮、天井表皮、リアピラー表皮、シートバックガーニッシュ、コンソールボックス、アームレスト、エアバックケースリッド、シフトノブ、アシストグリップ、サイドステップマット、メーターカバー、バッテリーキャップ、ヒューズ、自動水洗センサ部品、イグニッション、コイルボビン、ブッシング、バンパー、カーヒーターファン、ラジエータグリル、ホイールキャップ、EV用電源コネクタ、車載用ディスプレイ偏光板、ルーバー、ひじ掛け、レール絶縁版、二輪車防風、リクライニングカバー、トランク内シート、シートベルトバックル、インナー・アウターモール、バンパーモール、サイドモール、ルーフモール、ベルトモールなどのモール材、エアスポイラー、ドアシール、ボディシールなどの自動車用シール材、グラスランチャンネル、泥よけ、キッキングプレート、ステップマット、ナンバープレートハウジング、自動車用ホース部材、エアダクトホース、エアダクトカバー、エアインテークパイプ、エアダムスカート、タイミングベルトカバーシール、ボンネットクッション、ドアクッション、カップホルダー、サイドブレーキグリップ、シフトノブカバー、シート調整ツマミ、ワイヤーハーネスグロメット、サスペンションカバーブーツ、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、ルーフガイド、トランクリッドシール、モールデッドクォーターウインドガスケット、コーナーモールデイング、グラスエンキャプシュレーション、フードシール、グラスランチャンネル、セカンダリーシール、バンパー部品、ボディパネル、サイドシールド、ドア表皮、ウェザーストリップ材、ホース、ステアリングホイール、ワイヤーハーネスカバー、シートアジャスターカバーなどの自動車内外装材、制振タイヤ、静動タイヤ、カーレースタイヤ、ラジコンタイヤなどの特殊タイヤ、パッキン、自動車ダストカバー、ランプシール、自動車用ブーツ材、ラックアンドピニオンブーツ、タイミングベルト、ワイヤーハーネス、グロメット、エンブレム、エアフィルタパッキン、自動車用コネクタ、イグニッションコイル、スイッチ、ランプリフレクタ、リレー、電気制御ユニットケース、センサーハウジング、ヘッドランプ、メーター板、インシュレータ、ベアリングリテーナ、スラストワッシャー、ランプリフレクタ、ドアハンドル、グレージング、パノラマルーフ、ソレノイバルブ、ECUケース、ユニット接続用コネクタ、オルタネータ、HEV用端子台、電磁弁、コイル封止部品、家具・履物・衣料・袋物・建材等の表皮材、建築用シール材、防水シート、建材シート、配管継ぎ手、化粧台、浴室天井、インペラ、建材ガスケット、建材用ウインドウフィルム、鉄芯保護部材、地盤改良用シート、止水材、目地材、ガスケット、ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠等、床材、天井材、壁紙、健康用品(例:滑り止めマット・シート、転倒防止フィルム・マット・シート)、健康器具部材、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具(例:ヘルメット、ガード)、スポーツ用品(例:スポーツ用グリップ、プロテクター)、スポーツ用防具、ラケット、マウスガード、ボール、ゴルフボール、運搬用具(例:運搬用衝撃吸収グリップ、衝撃吸収シート)、制振パレット、衝撃吸収ダンパー、インシュレーター、履物用衝撃吸収材、衝撃吸収発泡体、衝撃吸収フィルム・シートなどの衝撃吸収材、グリップ材(筆記具、工具、運動用具、乗り物のハンドル、日用品、電気器具、家具等)、カメラボディおよび部品、OA機器部品、複写機構造部品、プリンタ構造部品、航空機用部材、機内食トレー、ファクシミリ構造部品、ポンプ部品、電動工具部品、乾燥洗濯機部品、ヒーターポンプ噴出口・取り出し口、IH炊飯器、炊飯器中フタ、レンジローラーステイリング、掃除機ファンガイド、電子ジャー用ポンプ・フィルターケース、生ごみ処理機部品・処理槽・加熱乾燥部品、ミルク用メーター、フィルターボウル、エスカレータ部品、超音波モーターハウジング、アブソリュートエンコーダー、小型ポンプハウジング、テレビ部材、ヘアドライヤハウジング、照明カバー、雑貨、コーヒードリッパー、加湿器部品、アイロン部品、水道器具部品、水筒、櫛、万年筆、筆箱、鉛筆削り、スポーツレジャー用品、スキーゴーグル、空手・剣道防具、サーフィン用フィン、楽器、養魚槽、サンダル、雪かきスコップ、釣竿ケース、玩具、靴底、靴底ソール、靴のミッドソール・インナーソール、ソール、サンダル、椅子表皮、鞄、ランドセル、ジャンバー・コートなどのウェア、帯、棒、リボン、手帳カバー、ブックカバー、キーホルダー、ペンケース、財布、箸、レンゲ、電子レンジ調理なべ、名刺入れ、定期入れ、吸盤、歯ブラシ、床材、体操用マット、電動工具部材、農機具部材、放熱材、透明基板、防音材、吸音材、クッション材、電線ケーブル、形状記憶材料、コネクタ、スイッチ、プラグ、家電部品(モータ部品、ハウジング等)、工業用シール材、工業用ミシンテーブル、ナンバープレートハウジング、ペットボトルキャップライナーなどのキャップライナー、プロテクトフィルム粘着層、ホットメルト粘着材などの粘着材、文房具、オフィス用品、OAプリンタ脚、FAX脚、ミシン脚、モータ支持マット、オーディオ防振材などの精密機器・OA機器支持部材、OA用耐熱パッキン、CD/DVD/ブルーレイ等光学メディア、光学測定用セル、衣装ケース、クリアーケース、クリアーファイル、クリアーシート、デスクマット、繊維としての用途として、例えば、モノフィラメント、マルチフィラメント、カットファイバー、中空糸、不織布、伸縮性不織布、繊維、防水布、通気性の織物や布、紙おむつ、生理用品、衛生用品、フィルター、バグフィルター、集塵用フィルター、エアクリーナー、中空糸フィルター、浄水フィルター、慮布、慮紙、ガス分離膜、人工肝臓(ケース、中空糸)、濾過機逆浸透膜、人工心肺、注射器シリンジ、三方活栓、輸液セット、外科医用器具、流量計、歯科用器具、コンタクトレンズ殺菌用器具、吸入マスク、分析用セル、搾乳機、火災報知器、消火器、ヘルメット、バーンインソケットなどが挙げられる。
【0247】
また、コーティング材、コーティングによって得られるフィルム、シート、離型材、撥水材、絶縁膜、接着材、粘着材、コート紙、透明シーラント、シーラント、ホットメルト型粘接着剤、溶剤型粘接着剤、フィルム状粘接着剤、布テープ、クラフトテープ、弾性接着剤などにも好適に使用される。
【0248】
また、4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子(X)、前記樹脂および前記樹脂組成物や、4-メチル-1-ペンテン系樹脂(X)およびそれを含有する樹脂組成物は、粉砕処理により微粉末に加工することもできる。得られた微粉末は、例えば、インキ組成物や塗料組成物の添加剤として、冶金用粉末組成物の添加剤として、セラミック焼結用粉末組成物の添加剤として、粘着剤の添加剤として、ゴムの添加剤として、トナーの離型剤として、金型離型剤として用いられうる。さらには、得られた微粉末は、軸上、歯車、カム、電気部品、カメラ部品、自動車部品、家庭用品向けの部品への樹脂添加剤として、ワックス、グリース、エンジンオイル、ファインセラミックス、メッキなどの樹脂添加剤としても用いられうる。
【実施例】
【0249】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0250】
〔各種物性の測定法〕
<触媒担体、触媒の粒径(D50)>
体積統計値でのD50は、Microtrac社製のMT3300EX IIを利用し、レーザー回折・散乱法により求めた。
【0251】
<元素分析(担体中のAl含量)>
株式会社島津製作所製ICP(誘導結合プラズマ)発光分析法装置:ICPS-8100型を用いて測定を行った。アルミニウム、ジルコニウムの定量、定性分析には、試料を硫酸および硝酸にて湿式分解後、定容(必要に応じてろ過および希釈含む)したものを検液とした。
【0252】
<重合体の溶媒可溶部(SP)量>
工程(2)で得られた重合体スラリーを濾過することで、固体状物質(白色固体)と濾液とに分離した。次いで、濾液から蒸発法により溶媒を除去することで、濾液中に溶解している重合体を得た。そして以下の式に基づき、濾液中の重合体量を算出した。
【0253】
濾液中の重合体量(質量%)=W2/(W1+W2)×100
W1:濾別された固体状物質(白色固体)の質量(g)
W2:スラリーの濾液中に溶解している重合体の質量(g)
<嵩密度(BD)>
工程(2)で得られた重合体スラリーを濾過することで、固体状物質(白色固体)と濾液とに分離した。得られた粒子状固体の嵩密度を、JIS K-6721に準拠し、内容積100mLの容器中の試料質量により求めた。
【0254】
<スラリー(重合液)性状>
得られた重合液について、濾過工程での固液分離性が良好なスラリーであった場合を「良好」、スラリーではあったがお粥状で濾過工程での固液分離性が不良であった場合を「不良」、スラリーとはならず溶液であった場合を「溶液」と記載した。
【0255】
〔重合体物性等の測定法〕
<工程(1)、工程(2)で生成した重合体の質量割合>
工程(1)の重合終了時に、重合体スラリーを抜き出してスラリー濃度を測定し、工程(1)で生成した重合体の量を算出した。この量とともに、最終的に得られた重合体の量から、それぞれの工程で生成した重合体の質量割合を求めた。濾過時の温度:室温(25℃)、濾過方法:桐山ろ紙(目開き1μm)を用いてヘキサンで洗浄しながら濾過を行い、前記スラリー濃度を算出した。以下の例において濾過はこの条件で行った。なお、前記溶媒可溶部は、重合体の割合の算出や以下の物性の測定(参考例2Aを除く)には含めない。
【0256】
<4-メチル-1-ペンテン共重合体中のコモノマー含量>
コモノマーから導かれる構成単位の含有量(コモノマー含量)は、以下の装置および条件により、13C-NMRスペクトルより算出した。
【0257】
ブルカー・バイオスピン製AVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置を用いて、溶媒はo-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1 v/v)混合溶媒、試料濃度は55mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は5.0μ秒(45°パルス)、繰返し時聞は5.5秒、積算回数は64回、ベンゼン-d6の128ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。主鎖メチンシグナルの積分値を用い、下記式によってコモノマー含量を算出した。
【0258】
コモノマー含量(%)=[P/(P+M)]×100
ここでPはコモノマー主鎖メチンシグナルの全ピーク面積を示し、
Mは4-メチル-1-ペンテン主鎖メチンシグナルの全ピーク面積を示す。
【0259】
なお、工程(1)で生成した重合体中のコモノマー含量は、工程(1)の重合終了時に抜き出した重合体スラリーから得た重合体を用いて求め、工程(2)で生成した重合体中のコモノマー含量は、工程(1)で得られた重合体中のコモノマー含量、最終重合体(工程(1)+工程(2))中のコモノマー含量、およびそれぞれの工程で生成した重合体の割合を用いて求めた。具体的には、工程(1)、(2)で生成した重合体、最終重合体中のコモノマー含量をそれぞれm1、m2およびmfとし、工程(1)、(2)で生成した重合体の割合をそれぞれw1およびw2とすると、m2=(mf-w1・m1)/w2である。
【0260】
<メソダイアッド分率>
4-メチル-1-ペンテン重合体のメソダイアッドアイソタクティシティー(メソダイアッド分率)(m)は、ポリマー鎖中の任意の2個の頭尾結合した4-メチル-1-ペンテン単位連鎖を平面ジグザグ構造で表現した時、そのイソブチル分岐の方向が同一である割合と定義し、13C-NMRスペクトルから下記式により求めた。
【0261】
メソダイアッドアイソタクティシティー(m)(%)=[m/(m+r)]×100
[式中、m、rは下記式で表される頭-尾で結合している4-メチル-1-ペンテン単位の主鎖メチレンに由来する吸収強度を示す。]
【0262】
【化4】
13C-NMRスペクトルは、ブルカー・バイオスピン製AVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置を用いて、溶媒はo-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d
6
(4/1 v/v)混合溶媒、試料濃度は60mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核は
13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は5.0μ秒(45°パルス)、繰返し時間は5.5秒、ベンゼン-d
6
の128ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
【0263】
ピーク領域は、41.5~43.3ppmの領域をピークプロファイルの極小点で区切り、高磁場側を第1領域、低磁場側を第2領域に分類した。
【0264】
第1領域では、(m)で示される4-メチル-1-ペンテン単位2連鎖中の主鎖メチレンが共鳴するが、4-メチル-1-ペンテン単独重合体とみなした積算値を「m」とした。第2領域では、(r)で示される4-メチル-1-ペンテン単位2連鎖中の主鎖メチレンが共鳴し、その積算値を「r」とした。なお、0.01%未満を検出限界以下とした。
【0265】
<極限粘度[η]>
離合社製自動動粘度測定装置VMR-053PCおよび改良ウベローデ型毛細管粘度計を用い、デカリン、135℃での比粘度ηspを求め、下記式より極限粘度([η])を算出した。
【0266】
[η]=ηsp/{c(1+K・ηsp)}
(c:溶液濃度[g/dl]、K:定数)
なお、工程(1)で生成した重合体の極限粘度[η]は、工程(1)の重合終了時に抜き出した重合体スラリーから得た重合体を用いて求め、工程(2)で生成した重合体の極限粘度[η]は、工程(1)で得られた重合体の極限粘度[η]、最終重合体(工程(1)+工程(2))の極限粘度[η]、およびそれぞれの工程で生成した重合体の割合を用いて求めた。具体的には、工程(1)、(2)で生成した重合体、最終重合体の[η]をそれぞれ[η]1、[η]2および[η]fとし、工程(1)、(2)で生成した重合体の割合をそれぞれw1およびw2とすると、[η]2=([η]f-w1・[η]1)/w2である。
【0267】
<融点(Tm)、融解熱量(ΔH)>
エスアイアイナノテクノロジ一社製EXSTAR DSC6220を用い、窒素雰囲気下(30ml/min)、約4mgの試料を30℃から280℃まで昇温した。280℃で5分間保持した後、10℃/minで-50℃まで冷却した。-50℃で5分間保持した後、10℃/minで280℃まで昇温させた。2回目の昇温時に観測された結晶溶融ピークの頂点を融点(Tm)とした。また、融解に伴う融解熱量をΔHとした。各段階で生成した重合体についてピークが複数検出された場合は、温度が最大のものを融点(Tm)とした。工程(2)で生成した重合体の融点(Tm)は、工程(1)で生成した重合体と最終重合体とを分析することにより求めた。
【0268】
<CFC測定>
CFC測定は以下の条件で行った。
装 置: CFC2 型クロス分別クロマトグラフ(Polymer Char)
検出器(内蔵): IR4 型赤外分光光度計(Polymer Char)
検出波長: 3.42μm(2,920cm-1);固定
試料濃度: 試料: 30mg/30mL(o-ジクロロベンゼン(ODCB)で希釈)
注入量: 0.5mL
温度条件: 40℃/minで145℃まで昇温して30分間保持。1℃/minで0℃まで冷却して60分間保持した後に、下記溶出区分ごとの溶出量を評価した。区分間の温度変化は40℃/minとした。
溶出区分: 0, 5, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 50, 70, 90, 95, 100, 102, 104, 106℃で、また108℃から135℃までは1℃刻みで、140,145℃での溶出量を評価。
GPC カラム: Shodex HT-806M×3本(昭和電工)
GPC カラム温度: 145℃
GPC カラム較正: 単分散ポリスチレン(東ソー)
分子量較正法: 標品較正法(ポリスチレン換算)
移動相: o-ジクロロベンゼン(ODCB)、BHT 添加
流量: 1.0mL/min
[合成例1]
〔遷移金属錯体(メタロセン化合物(A))の合成〕
国際公開第2014/050817号の合成例4に従い、(8-オクタメチルフルオレン-12'-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド(メタロセン化合物(a1))を合成した。
【0269】
〔固体触媒成分(メタロセン触媒)の調製〕
担体(B)として、粒子状でありD50が8μm、アルミニウム原子含有量が42質量%である固体状ポリメチルアルミノキサン(東ソーファインケム社製)を用いた。30℃下、充分に窒素置換した、攪拌機を付けた100mL三つ口フラスコ中に、窒素気流下で精製デカン29.9mLと、前記固体状ポリメチルアルミノキサンのヘキサン/デカン溶液7.26mL(アルミニウム原子換算で14.3mmol)とを装入し、懸濁液とした。その懸濁液に、先に合成したメタロセン化合物(a1)50mg(ジルコニウム原子換算で0.0586mmol)を4.59mmol/Lのトルエン溶液として12.8mLを撹拌しながら加えた。1.5時間後攪拌を止め、デカンによるデカンテーション洗浄を行い(洗浄効率98%)、スラリー液50mLとした(Zr担持率96%)。得られた固体触媒成分(メタロセン触媒)は粒子状であり、そのD50は8μmであった。
【0270】
〔予備重合触媒成分の調製〕
上記のとおり調製したスラリー液に、窒素気流下、ジイソブチルアルミニウムハイドライドのデカン溶液(アルミニウム原子換算で1mol/L)を4.0mL、さらに3-メチル-1-ペンテン15mL(10.0g)を装入した。1.5時間後攪拌を止め、デカンによるデカンテーション洗浄を行い(洗浄効率95%)、デカンスラリー100mLとした(Zr回収率93%、ジルコニウム原子換算で0.548mmol/L)。
【0271】
[合成例2]
合成例1の〔固体触媒成分(メタロセン触媒)の調製〕における担体(B)として、粒子状でありD50が32μm、アルミニウム原子含有量が44質量%である固体状ポリアルミノキサン(国際公開第2014/123212号に記載の方法を用いて合成)を用いた以外は合成例1と同様にして固体触媒成分(メタロセン触媒)を得た。得られた固体触媒成分(メタロセン触媒)は粒子状であり、D50は32μmであった。また、合成例1と同様にして予備重合触媒成分を調製し、デカンスラリー100mLとした(Zr回収率82%、ジルコニウム原子換算で0.482mmol/L)。
【0272】
[実施例1A]粒子(X1-1)
室温(25℃)、窒素気流下で、内容積1Lの攪拌機を付けたSUS製重合器に、精製デカンを425mL、トリエチルアルミニウム溶液(アルミニウム原子換算で1.0mmol/mL)を0.4mL(アルミニウム原子換算で0.4mmol)装入した。次いで、先に調製した合成例1の予備重合触媒成分のデカンスラリーをジルコニウム原子換算で0.0014mmol加え、40℃まで昇温した。40℃到達後、水素を30NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン(4MP-1)106mLを30分かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。この装入開始時点を重合開始とし、45℃で3時間保持した(工程(1))。3時間経過後、45℃にて系内を脱圧し、残存水素を系外に排出するため、窒素(0.6MPa)による加圧・脱圧を3回行った。その後、45℃、窒素気流下で、水素を30NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン79.4mLと1-デセン7.4mLとの混合溶液を30分かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。この装入開始時点を重合開始とし、45℃で3時間保持した(工程(2))。重合開始から3時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液(スラリー)を濾過して固体状物質を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥し、粒子(X1-1)105.4gを得た。各種結果を表1Aおよび2Aに示す。
【0273】
[実施例2A~8A]
重合条件を表1Aに記載のように変更したこと以外は実施例1Aと同様の操作を行い、重合体粒子を得た。各種結果を表1Aおよび2Aに示す。
【0274】
[比較例1A]
表1Aに記載の触媒量、4MP-1フィード量、水素量、1-デセンフィード量、重合時間にて工程(1)の操作のみの重合を行った。各種結果を表1Aおよび2Aに示す。
【0275】
[比較例2A~6A]
国際公開第2006/054613号の比較例9に記載の重合方法に準じて、4-メチル-1-ペンテン、その他のα-オレフィン(1-デセン、または1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの混合物)、水素の割合を変更することによって、4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子を得た。すなわち、これらの4-メチル-1-ペンテン系重合体粒子は、いずれも、無水塩化マグネシウム、2-エチルヘキシルアルコール、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパンおよび四塩化チタンを反応させて得られる固体状チタン触媒を重合用触媒として用いて単段重合で得られたことになる。各種結果を表1Aおよび2Aに示す。
【0276】
[比較例7A]
触媒成分を国際公開第2009/008409号の[調製例1]および[調製例2]に記載の固体状チタン触媒成分(Ti原子換算で0.042mmol)に変更し、表1Aに記載の条件にて重合操作を行い、重合体粒子を得た。各種結果を表1Aおよび2Aに示す。
【0277】
表2A中、「工程(1)」は工程(1)で生成した重合体、「工程(2)」は工程(2)で生成した重合体、「トータル」は最終重合体(実施例の場合は粒子(X)に該当する)を指す。
【0278】
<参考例1A>
表1Aに記載の触媒量、4MP-1フィード量、水素量、重合時間にて工程(1)の操作のみの重合を行い、重合体粒子を得た。各種結果を表1Aおよび2Aに示す。
【0279】
<参考例2A>
表1Aに記載の触媒量、4MP-1フィード量、水素量、1-デセンフィード量、重合時間にて工程(2)の操作のみの重合を行った。重合体は溶媒に溶解していたため、減圧乾燥機を用い、120℃で8時間乾燥して重合体を得た。各種結果を表1Aおよび2Aに示す。
【0280】
[比較例8A]
参考例1Aで得た重合体粒子と、参考例2Aで得た重合体を、質量比42対58の割合になるように配合し、下記方法で造粒して得た樹脂組成物を評価した。各種結果を表1Aおよび2Aに示す。
【0281】
〔樹脂物性の測定法〕
樹脂物性を下記方法で評価した。結果を表3Aに示す。
【0282】
<成形方法>
実施例1A~8Aの重合体粒子、比較例1A~7Aの重合体粒子、または比較例8Aの評価用の重合体(参考例1Aで得た重合体粒子と、参考例2Aで得た重合体を、質量比42対58の割合になるように配合)100質量部に対して、二次抗酸化剤としてトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.1質量部、耐熱安定剤としてn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.1質量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT-30(スクリュー径30mmφ、L/D 46)を用い、設定温度260℃、樹脂押出量60g/minおよび回転数200rpmの条件で造粒して樹脂組成物を得た。
【0283】
2枚の鉄板の間に、8cm四方にくり抜いた1mm厚の鉄板を配置し、くり抜いた箇所に上記樹脂組成物を5.2g仕込んだ。神藤金属工業所製の圧縮成形機(型締50ton)を270℃に昇温し、上記鉄板を挿入した。7分間静置して樹脂組成物を融解させた後に10MPaの圧力で鉄板を圧縮し3分間保持した後に取り出して、23℃に設定した上記圧縮機に鉄板を挿入して10MPaの圧力で3分間かけて冷却した。くり抜き箇所から1mm厚の成形体を取り出して評価用のプレス板とした。
【0284】
<引張弾性率>
引張特性である弾性率は、ASTM D638に準拠して、上述の1mm厚プレス板から撃ち抜いた試験片を用い、インストロン社製の万能引張試験機3380を用いて、チャック間65mm、引張速度50mm/minで引張試験を行い評価した。
【0285】
<高耐熱性かつ低剛性(柔軟)の指標>
高耐熱性かつ低剛性(柔軟)の指標として、融点ピークの少なくとも1つが220℃以上にあり、引張弾性率(MPa)が、Tm(℃)×49.6-10400 よりも小さい場合を○、さらに、引張弾性率(MPa)が、Tm(℃)×49.6-10800 よりも小さい場合を◎とした。
【0286】
<相分離構造の観察>
実施例1A~3A、比較例8Aについて、上記プレス板の断面を横から見る方向(サイドビュー)でスライスし、日本電子株式会社製 透過型電子顕微鏡JEM-2100Plusを用いて相分離構造を観察した。観察倍率1万倍における像を
図2~5に示す。
【0287】
<ヘイズ>
日本電色工業株式会社製のヘーズメーターNDH4000を用い、JIS-K-7136に準拠して上記プレス板の空気中でのヘイズ値(全ヘイズ)を評価した。
【0288】
<外観・欠点>
<成形方法>記載の方法で造粒した樹脂組成物を、株式会社田中鉄工所社製単軸シート成形機を用い、シリンダ温度270℃、ダイス温度270℃、ロール温度80℃および引取速度5m/minの条件で溶融キャスト成形して厚さ50μmのフィルムを得た。連続的に1000m製膜した際に、リップに堆積した目ヤニがフィルム上に滴下してフィルム外観の悪化・欠点が発生する頻度を調査した。1000mのフィルムに対し、上記目ヤニによる汚染の欠点が5個以下の場合を〇、6個以上の場合を×とした。なお、1水準終わるごとに成形機のリップを清掃して比較を行った。
【0289】
また、上記〇の水準に関して、1000m製膜の間に冷却ロール表面からの離型の際にクラックや端部の割れによる外観不良が全く生じなかったものを、特に良好な状態と判断し◎とした。
【0290】
<実施例と比較例の対比>
実施例1A~8Aはメソダイアッド分率が高いことから立体規則性が高く、融点(Tm)が高いことから耐熱性に優れ、融点(Tm)と引張弾性率の関係から、耐熱性と柔軟性とのバランスに優れることがわかる。実施例2Aおよび実施例3Aについては耐熱性と柔軟性とのバランスにとりわけ優れている。
【0291】
比較例1A~6Aは、要件(X-b)を満たさず、耐熱性と柔軟性とのバランスは実施例に比べると十分でないことがわかる。
【0292】
比較例7Aは、立体規則性が不十分であり要件(X-c)を満たさない。
【0293】
比較例8Aは、重合体(x1)、共重合体(x2)に相当する重合体をそれぞれ個別に製造した後に溶融ブレンドで製造した例であり、本発明の重合体粒子には該当しない。立体規則性、耐熱性、耐熱性と柔軟性のバランスに優れるものの、透明性が劣っていることがわかる。その透過型電子顕微鏡(TEM)像から、実施例1A~3Aに比べて相分離構造の均一性が低いことがわかる。
【0294】
【0295】
【0296】
【表3A】
[実施例1B]樹脂(X1-1)
室温(25℃)、窒素気流下で、内容積1Lの攪拌機を付けたSUS製重合器に、精製デカンを425mL、トリエチルアルミニウム溶液(アルミニウム原子換算で1.0mmol/mL)を0.4mL(アルミニウム原子換算で0.4mmol)装入した。次いで、先に調製した合成例1の予備重合触媒成分のデカンスラリーをジルコニウム原子換算で0.0014mmol加え、40℃まで昇温した。40℃到達後、水素を30NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン(4MP-1)106mLを30分かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。この装入開始時点を重合開始とし、45℃で3時間保持した(工程(1))。3時間経過後、45℃にて系内を脱圧
し、残存水素を系外に排出するため、窒素(0.6MPa)による加圧・脱圧を3回行った。その後、45℃、窒素気流下で、水素を30NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン79.4mLと1-デセン7.4mLとの混合溶液を30分かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。この装入開始時点を重合開始とし、45℃で3時間保持した(工程(2))。重合開始から3時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液(スラリー)を濾過して固体状物質を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥し、樹脂(X1-1)105.4gを得た。また、濾液は120℃で減圧乾燥して溶媒可溶部(SP)を得た。各種結果を表2B~3Bに示す。
【0297】
[実施例2B~19B]
重合条件を表1Bに記載のように変更したこと以外は実施例1Bと同様の操作を行い、重合体を得た。各種結果を表2B~3Bに示す。表中、L168は、炭素数16の直鎖α-オレフィンと、炭素数18の直鎖α-オレフィンとの混合物(混合モル比:炭素数16のα-オレフィン:炭素数18のα-オレフィン=60:40)を意味する。
【0298】
[実施例20B~24B]
合成例2で得た予備重合触媒成分を用い、また、重合条件を表1Bに記載のように変更したこと以外は実施例1Bと同様の操作を行い、重合体を得た。各種結果を表2B~3Bに示す。
【0299】
[比較例1B]
工程(1)の4MP-1フィード量、1-デセンフィード量、および工程(2)の1-デセンフィード量を表1Bに記載のように変更したこと以外は実施例1Bと同様の操作を行ったが、工程(1)において生成した重合体が溶媒に溶解したためスラリー重合できず、重合体の回収ができなかった。
【0300】
[比較例2B、3B]
触媒成分を国際公開第2009/008409号の[調製例1]および[調製例2]に記載の固体状チタン触媒成分(Ti原子換算で0.042mmol)に変更し、表1Bに記載の条件にて重合操作を行い、重合体を得た。各種結果を表2B~3Bに示す。スラリー性状は比較例2Bについては良好であったが、比較例3Bについては不良(お粥状)であった。
【0301】
<実施例と比較例の対比>
実施例1B~24Bは、いずれも重合液性状が良好、すなわちスラリーの固液分離性が良好であった。トータルでのコモノマー含量、あるいは工程(2)の重合体におけるコモノマー含量が広い範囲で重合が可能であることを示している。
【0302】
比較例1Bは、工程(2)よりも工程(1)においてコモノマーを多く共重合させた例であるが、スラリー重合ができていない。
【0303】
比較例2Bおよび3Bは、いわゆるチーグラー触媒を用いた場合の例であるが、コモノマーフィード量の多い領域になると重合液性状が不良になることを示している。また、比較例2Bは重合液性状は良好ではあるが、同程度のコモノマーフィード量の実施例と比較して、溶媒可溶部量が多くなっている。
【0304】
【0305】
【0306】