(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】発火検知方法及び発火検知装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20220805BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
G08B17/00 C
(21)【出願番号】P 2020541961
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2020090006
(87)【国際公開番号】W WO2021226872
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2020-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512251345
【氏名又は名称】オーレーザー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517413742
【氏名又は名称】馬鞍山市明珠電子科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【氏名又は名称】若林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】繆 逸峰
(72)【発明者】
【氏名】小川 俊之
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/142966(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0106880(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0116691(KR,A)
【文献】特開2017-1046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー加工中にレーザー発振器のレーザー出力信号を取得するレーザー出力信号取得工程と、
被加工物Wに対するレーザー照射により生ずる炎を検知することにより得られる炎検出信号Qを取得する炎検知工程と、
前記レーザー出力信号と前記炎検出信号Qを比較し、前記レーザー出力信号によりレーザーを出力しているときに、単一レーザー出力信号の持続期間、および当該レーザー出力信号の持続期間に検知した炎検出信号Qの合計検出数により、装置が発火して燃焼している異常の状態であるかどうかを判断し、前記レーザー出力信号によりレーザーを出力していないときに、累積検知期間に検知した炎検出信号Qの合計検出数により、装置が発火して燃焼している異常の状態であるかどうかを判断する発火燃焼判断工程と、を備える発火検知方法。
【請求項2】
前記発火燃焼判断工程においては、
レーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1に前記炎検知信号Qによる炎の検知があった場合には、装置が発火して燃焼している異常の可能性があると判断し、カウンタを利用してその状況での炎検出信号Qを累積し、
前記レーザー無出力期間T1の累積時間が累積検知期間TMに達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達していない場合、装置が発火しておらず正常な状態であると判断し、タイマーとカウンタをリセットして累積検知期間TMを単位として炎検出信号Qを検知し続け、
レーザー無出力期間T1の累積時間が累積検知期間TMに達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達した場合、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断する請求項1に記載の発火検知方法。
【請求項3】
前記発火燃焼判断工程においては、
レーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1になってから検知除外期間TE経過後の有効検知期間TAに、前記炎検出信号Qによる炎の検知があった場合に、装置が発火して燃焼している異常の可能性があると判断し、カウンタを利用してその状況での炎検出信号Qを累積し、
前記有効検知期間TAの累積時間が累積検知期間TMに達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達していない場合、装置が発火しておらず正常な状態であると判断し、タイマーとカウンタをリセットして累積検知期間TMを単位として炎検出信号Qを検知し続け、
前記有効検知期間TAの累積時間が累積検知期間TMに達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達した場合、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断する請求項2に記載の発火検知方法。
【請求項4】
前記発火燃焼判断工程においては、レーザー出力信号によりレーザーを出力しているときに、単一レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2より短く、かつ炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、装置が発火しておらず正常な状態であると判断し、レーザー出力信号全期間におけるすべての炎検出信号Qを累積しない請求項1~請求項3のいずれかに記載の発火検知方法。
【請求項5】
単一レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、素材判定期間T2に炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、被加工物Wは火花を発生しやすい可能性があると判断し、カウンタを利用して炎検出信号Qを累積し、
当該レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達した場合、当該被加工物Wは火花の発生しやすい素材と判断し、当該レーザー出力信号全期間における炎検知工程を行わず、
当該レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達していない場合は、当該被加工物Wは火花の発生しにくい素材と判断し、素材判定期間T2の終了時点を開始時点として当該単一レーザー出力信号に対する発火検知工程を開始する請求項4に記載の発火検知方法。
【請求項6】
素材判定期間T2の終了時点を開始時点として、当該単一レーザー出力信号に対し、発火検知を行い、
当該レーザー出力信号によりレーザー出力が継続する時に、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、装置が発火して燃焼している異常の状態である可能性があると判断し、カウンタを利用してその状況での炎検出信号Qを累積し、
前記単一レーザー出力信号によりレーザー出力の出力期間が所定期間T3に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達していない場合、装置は発火しておらず正常な状態であると判断し、タイマーとカウンタをリセットして所定期間T3を単位としてレーザー出力信号に対する発火検知を続け、
前記レーザー出力信号によりレーザー出力が継続し、持続期間が所定期間T3に達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達した場合、装置が発火燃焼している異常の状態であると判断する炎検知工程を備える請求項5に記載の発火検知方法。
【請求項7】
所定期間T3内にレーザー出力パワーの変更がった場合、カウンタおよびタイマーをリセットしてレーザー出力パワーが変化した時を開始時点として発火燃焼判断工程をし直す請求項6に記載の発火検知方法。
【請求項8】
レーザー加工機がレーザー加工状態から待機状態または停止状態に変わる時、運転状態が変化した時点を開始時点としてレーザー加工後の発火検知を行い、
検知開始してから、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、装置は発火して燃焼している可能性があると判断し、カウンタを利用してその状況での炎検出信号Qを累積し、
検知時間が加工後検知期間T4に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C4に達していない場合、被加工物Wは発火していないと判断して発火検知を終了し、
検知時間が加工後検知期間T4に達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C4に達した場合、装置は発火して燃焼している異常の状態であると判断する請求項1~請求項3のいずれかに記載の発火検知方法。
【請求項9】
レーザー加工時に前記レーザー発振器のレーザー出力信号を取得するレーザー出力信号取得部と、
被加工物へのレーザー照射により発生する炎を検知する炎検知部と、
前記炎検知部により炎を検出し、炎検出信号Qを取得する炎検出信号取得部と、
前記レーザー出力信号と前記炎検出信号Qを比較し、前記レーザー出力信号によりレーザーを出力しているときに、単一レーザー出力信号の持続期間、および当該レーザー出力信号の出力期間中に検知した炎検出信号Qの合計検出数により、装置が発火して燃焼している異常の状態であるかどうかを判断し、前記レーザー出力信号によりレーザーを出力していないとき、累積検知期間に検知した炎検出信号Qの合計検出数により、装置が発火して燃焼している異常の状態であるかどうかを判断する燃焼判断部と、を備える請求項1~請求項8のいずれかに記載の発火検知方法を使用する発火検知装置。
【請求項10】
前記炎検知部を収納する筐体前部に吸気口、筐体背面に排気口が形成され、前記吸気口と前記排気口に紫外線を遮光する遮光壁が設けられ、
遮光壁により、外部の紫外光があらゆる角度から照射してもレーザー加工機内の加工空間に到達できず、且つ
前記吸気口と前記排気口の位置が被加工物Wの表面より高く、被加工物Wから発生する煙や粉塵が気流により素早く排気され、且つ
装置本体に入る気流が装置本体の内側に沿って流れるように吸気口に入る気流の向く方向を設定し、レーザー加工機内に環状の気流を形成し、被加工物Wから発生する煙や粉塵を炎検知部から遠ざかる方向へ導く請求項9に記載の発火検知装置。
【請求項11】
前記炎検知部は紫外線光電管センサーとセンサー駆動基板とを備え、
前記炎検知部は密閉性のある密閉性の密閉金属箱とガラス製のフロント窓とにより密閉構造とされた筐体に収納されており、
前記フロント窓は180nm~260nm波長の紫外線を透過する石英ガラスで構成される請求項10に記載の発火検知装置。
【請求項12】
センサー駆動基板にはDC/DCコンバーターが設けられ、DC/DCコンバーターの出力電圧は、昇圧トランスを介して
前記紫外線光電管センサーのアノードとカソードに印加し、
センサー駆動基板には、ゲートタイマーとカウンタを含む信号処理回路が設けられ、
前記紫外線光電
管センサーの出力側はゲートタイマーとカウンタの入力側に接続され、ゲートタイマーの出力側はカウンタの入力側に接続され、カウンタの出力側には出力回路が設けられ、出力回路はカウンタからの出力されるパルス信号を必要な時間幅に増幅し炎検出信号Qとして出力する請求項
11に記載の発火検知装置。
【請求項13】
警告部と表示部とを備え、前記燃焼判断部が発火して燃焼している異常の状態であると判断した場合、警告部または表示部の少なくとも一つで警報する請求項10~請求項12のいずれかに記載の発火検知装置。
【請求項14】
前記炎検知部を収納する筐体には、装置本体と上蓋とを備え、
上蓋は可視光を透過し、180nm~260nm波長の紫外線を遮断する樹脂板により構成され、且つ
上蓋が開いている時、燃焼判断部は発火検知を行わない請求項10~請求項12のいずれかに記載の発火検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発火検知方法および発火検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CO2レーザーは非金属に吸収されやすい。紙、木材、アクリル、ゴム、革などの素材にはほぼ100%吸収されるため、エネルギー効率が良く、少ないレーザーエネルギーで厚い被加工物をカットすることができる。例えば、40WのCO2レーザーは、一度のレーザー切断加工で最大10mm厚のアクリル樹脂板を切断することができる。
【0003】
このため、CO2レーザー加工機は、様々な分野で使用され、金属加工のみならず非金属加工の分野で使用される場合も多い。金属加工の用途では、被加工物が金属のため、火災が起きることがほとんどないが、非金属加工用途では、特に、被加工物を所定の形状に切断する切断モード(ベクターモード)では、レーザーのエネルギーが素材の一箇所に止まる時間が長いと同時に、非金属素材は通常可燃性の物性を持っているため、被加工物の発火による火災が起きる可能性がある。
【0004】
汎用レーザー加工機における被加工物の発火検知出及び火災防止について研究調査した。例えば、中国特許番号CN201822174251.8には、炎検知器を備えたレーザー切断装置が記載されている。この出願では非金属材料被加工物へのリアルタイム監視を実現するために、レーザー切断装置の作業台に炎検知器を設置している。炎が発生したら作業者に警告および通知する目的を実現する。しかしこの出願における設計の重点は、レーザー切断装置内部部品の簡単な取り付けや、取り外しに置いたため、発火検知の感度と正確性については研究していない。同様に、中国公開番号CN2513710Yには、レーザー切断彫刻機の火災警報装置の発明が記載されているが、この出願においてもレーザー切断彫刻機の内部に火花検出器、警告装置、および警報制御システムを設置し、加工中に発生する熱をブロワで排気して火炎の発生を防ぎ、炎の検知があった場合に作業者に警告し、火災防止および警報の効果を発揮する。また、この特許から、2002年以前に、レーザー加工機に発火検知機能を実装する方法があったことがわかる。
【0005】
中国特許番号CN201510311657.4では、消防安全機構を備えたレーザー切断彫刻機を紹介している。この出願では加工機内部に消防安全機構を設置してあり、当該機構は火災源感知部、消火部、および制御部を備えている。その中で、制御部は、炎感知部および消火部に電気的に接続され、炎感知部によって送信された信号を受信および処理し、加工機内に発火があるかどうかを判断し、消火部の動作を制御する。被加工物が発火した時に消火部を作動させて消火することができる。炎感知部は、煙センサー、特定の波長の光センサー、炎センサーまたは特定のガスセンサーなどが使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許第201822174251.8号公報
【文献】中国公開公報第2513710Y号公報
【文献】中国特許第201510311657.4号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3では迅速的に消火する目的が達成できると記載しているが、その主な構成を調べると、消火部が加工機の近くに設置されている特徴がわかる。しかし、発火の初期段階でどのように迅速かつ正確に発火を検知する方法については記述がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、各種非金属の被加工物Wのレーザー加工に対し、レーザー加工機のレーザー加工過程において、被加工物Wの発火を可能な限り早期に検知して火災の発生を抑える発火検知方法および発火検知装置を提供することができる。その上、本発明は機械装置の大きさ、加工速度、レーザー出力パワー、レーザー発振器の種類などの違いによる発火検知設定方法の変更が必要ないため、良い汎用性を持っている。
【0009】
以上の目的を実現するために、本発明が提供する技術方法は下記のとおりである。
本発明はレーザー加工中にレーザー発振器のレーザー出力信号を取得するレーザー出力信号取得工程と、被加工物Wに対するレーザー照射により生ずる炎を検知することにより得られる炎検出信号Qを取得する炎検出工程と前記レーザー出力信号と前記炎検出信号Qを比較し、前記レーザー出力信号によりレーザーを出力しているときに、単一レーザー出力信号の持続期間と、単一レーザー出力信号持続期間の炎検出信号Qの合計検出数により、装置が発火して燃焼している異常の状態にあるかどうかを判断し、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないときに、累積検知期間TM中の炎検出信号Qの合計検出数により、装置が発火して燃焼している異常の状態であるかどうかを判断する発火燃焼判断工程と、を備える発火検知方法に関するものである。
また、本発明は、レーザー加工時に前記レーザー発振器のレーザー出力信号を取得するレーザー出力信号取得部と、前記被加工物Wに対するレーザー照射により生ずる炎を検知する炎検知部と、前記炎検知部による炎を検知することにより得られる炎検出信号Qを取得する炎検出信号取得部と、前記レーザー出力信号によりレーザーを出力しているときに、単一レーザー出力信号の持続期間と、単一レーザー出力信号の持続期間に検知した炎検出信号Qの合計検出数により、装置が発火して燃焼している異常の状態にあるかどうかを判断し、前記レーザー出力信号によりレーザーを出力していないときに、累積検知期間TM中に検知した炎検出信号Qの合計検出数により、装置が発火して燃焼している異常の状態であるかどうかを判断する燃焼判断部と、を備える発火検知装置に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって提供される技術方法を使用すれば、既存の技術と比較し、下記のような効果が得られる。
【0011】
(1)本発明の発火検知方法は、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないときと、単一レーザー信号によりレーザーを出力しているときに検出した炎検出信号Qを利用し、この2種類の特徴を重要な根拠として累積し、発火燃焼の最終判断基準とする。装置の大きさ、加工速度、レーザー出力パワー、レーザーの種類などの違いにより検知方法が変わることはなく、汎用性に優れている。
【0012】
(2)本発明の発火検知方法は、ラスターモード(彫刻モード)において、少なくとも複数の改行時に炎検出信号Qを連続して取得しない限り警報しないと設定している。これで数秒以内に発火を正しく判断すると同時にノイズ信号を合理的にキャンセルすることができ、誤判定を根本的に回避することができる。ベクターモード(切断モード)においては、各種加工状態も監視する。即ち、単一レーザー信号の出力時とレーザー無出力時に炎を検知し、レーザー出力する時と出力しない時の両方に対して素材の発火を検知することができ、かつ数秒以内に正確な判断を行うことができる。上記の方法により、レーザー加工機のレーザー加工において、被加工物Wの発火を可能な限り早期に検知して火災の発生を抑えることができる。その上、検知除外期間を設定することで、さらに残留火花によるノイズ信号をキャンセルし、検知精度を高めることができる。
【0013】
(3)本発明の発火検知方法は素材判定期間T2を設定し、単一レーザー出力信号が出力状態になってから、最初の素材判定期間T2に炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、被加工物Wは火花が発生しやすい可能性があると判断する。この方法により、シリコンやアルミナなど火花の発生しやすい素材が含まれる被加工物Wに対してレーザー加工を行うとき、素材判定期間T2を利用して火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定を回避することができる。
【0014】
(4)本発明の発火検知方法は所定期間T3を設定し、単一レーザー出力信号によりレーザー出力の出力期間が所定期間T3に達したまたは達していないとき、炎検出信号Qの合計検出数は累計所定量C3に達したかどうかによって、発火して燃焼している異常の状態であるかどうかを判断する。この方法により、1本のレーザー切断信号(切断線分)が長くても、例えばレーザー照射開始から照射終了まで10分以上かかる場合でも、レーザー照射が終了するまで待つ必要がなく、レーザー加工中にレーザー出力信号によりレーザー出力している期間に火災の原因となる炎の検出ができ、発火検知のタイミングを逃さず検知期間を確保することができる。
【0015】
(5)本発明の発火検知方法は、レーザー加工機が待機状態または停止状態に入るときに発火するような、作業者に見落とされやすい問題に対し、加工後の検知期間T4を設定し、検知時間が加工後の検知期間T4に達したまたは達していないとき、炎検出信号Qの合計検出数は累計所定量C4達したかどうかによって、発火して燃焼している異常の状態であるかどうかを判断する。この方法により、レーザー加工が終了した瞬間に被加工物Wが発火した場合、炎が検出されないリスクを効果的に回避することができる。
【0016】
(6)本発明の発火検知方法は、作業者が所定期間T3にレーザー出力パワーの設定を変更した場合、カウンタとタイマーをリセットし、レーザー出力パワーが変化した時点を開始時点として発火燃焼判断工程をはじめからやり直す。この方法により、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力しているとき、作業者がレーザー出力パワーを変更することにより火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定を回避することができる。
【0017】
(7)本発明の発火検知方法は、レーザー加工機使用中の様々な発火状況を十分に考慮している。ラスターモード(彫刻モード)とベクターモード(切断モード)での加工方式およびレーザー出力信号が異なっても、発火燃焼(火災)を引き起こす炎を正確に検出できる。この方法により、火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定を回避することができ、さらに消火システムが発火燃焼でないときに誤作動することを回避できる。最終的には、レーザー加工機の無人状態での運転が実現できる。
【0018】
(8)本発明の発火検知装置は、吸気口および前記の排気口には、外部の紫外線が装置本体の外部のあらゆる角度から装置に照射しても直接レーザー加工機の炎検知部に到達できないための、紫外線を遮光する紫外線遮光壁が設けられている。また、吸気口と排気口の位置が加工対象物の表面より高く、被加工物Wから発生した煙粉や粉塵が気流により素早く排気される。同時に、装置本体に入る気流が装置本体の内側に沿って流れるように吸気口に入る気流の向く方向を設定し、レーザー加工機の内部に環状の気流を形成し、被加工物Wから発生する煙や粉塵を炎検知部から遠ざかる方向へ導くことにより、煙が炎センサーの検出感度に影響せず、炎検知部が炎による紫外線を正しく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による発火検知装置が設けられたレーザー加工機を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による発火検知装置を有するレーザー加工機を備えたレーザー加工装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による発火検知装置が設けられたレーザー加工機を示す側方概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による発火検知装置が設けられたレーザー加工機において紫外線が装置本体の内部に入ることを阻止する構成および環状排気気流の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による発火検知装置の紫外線光電管センサーの作動原理を示す説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態による発火検知装置のセンサー駆動基板回路の作動原理を示す説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態による発火検知装置における火災検知のための各波形を示す図である。
【
図8】
図8は、ラスターモードによる加工方法の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、ベクターモードによる加工方法における加工経路を示す説明図である。
【
図10】
図10は、ベクターモードによる加工方法における加工経路を示すもう一例の説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態による発火検知装置において、単一レーザー出力信号の持続期間が比較的短い場合の発火燃焼判断方法を示す図である。
【
図12】
図12は本発明の実施形態による発火検知装置において、レーザー出力信号が長い場合の残留火花による炎検出信号Qを示す図である。
【
図13】
図13は本発明の実施形態による発火検知装置において、レーザー出力信号が短い場合の残留火花による炎検出信号Qを示す図である。
【
図14】
図14は本発明の実施形態による発火検知検出装置において、発火燃焼判断を行う有効検知期間TAを示す説明図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態による発火検知装置において、切断モード(ベクターモード)における検知除外期間TEを示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態による発火検知装置の彫刻モード(ラスターモード)における検知除外期間TEを示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態による発火検知装置において、単一レーザー出力信号が比較的長い場合の素材判定期間T2を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態による発火検知装置において、単一レーザー出力信号が比較的長い場合の発火燃焼判断方法を示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態による発火検知検出装置において、各状況における発火燃焼判断方法の場合分けを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、レーザー加工機1は、紙やアクリル等の様々な素材により構成される被加工物Wに対してレーザー加工を施すことが可能な、赤外線領域レーザーを用いたレーザー加工機1であり、レーザー加工機1に設けられた炎検知部70、燃焼判断部80(
図2参照)と共に、レーザー加工装置を構成する。
【0021】
レーザー加工機1は、装置本体10と、図示しないレーザー発振器を収納する発振器ケースとを備えている。以下の説明においては、装置本体10の奥壁12から前壁11へと向かう方向を前方向として定義し、その反対の方向を後方向と定義し、これらを前後方向と定義する。また、
図1における第2側壁16から第1側壁15へと向かう方向を左方向と定義し、その反対の方向を右方向と定義し、これらを左右方向と定義する。また、
図1における下壁14から上壁13へと向かう方向を上方向と定義し、その反対の方向を下方向と定義し、これらを上下方向と定義する。
【0022】
装置本体10は、直方体形状に構成されており、
図1に示すように、前壁11と奥壁12と上壁13と下壁14と第1側壁15と第2側壁16とを有する。奥壁12、上壁13、下壁14、第1側壁15、及び第2側壁16は、金属製の板金に塗装が施されて構成されている。なお、
図1においては、説明の便宜上、第2側壁16を透明にして図示している。
【0023】
第1側壁15と第2側壁16とは対向しており、上壁13と下壁14とは対向している。前壁11の下端、奥壁12の下端、第1側壁15の下端、及び第2側壁16の下端は、全て下壁14に接続されている。上壁13の前側寄りの部分には、前壁11の上部にわたって本体開口部101が形成されている。上壁13の後部には、一対の蝶番131を介して上蓋132(アクセスパネル)が上壁13に対して回動可能に支持されている。上蓋132は、本体開口部101と略同一形状を有しており、本体開口部101を閉塞可能である。
【0024】
前壁11の内面、奥壁12の内面、上壁13及び上蓋132の内面、下壁14の内面、第1側壁15の内面、及び第2側壁16の内面は、これらによって取り囲まれた装置本体10の内部の加工空間102を形成している。加工空間102には、レーザー加工される被加工物W(
図3参照)が配置されてレーザー加工される。奥壁12には排気口が形成されている。奥壁12における外側には、図示しないエアーホースの一端部が接続されている。エアーホースの他端部には、図示しない排気ブロワが接続されており、レーザー加工をしている最中に排気ブロワが駆動され、排気ブロワによって加工空間102の内部に空気を吸引し、加工中に発生した煙、粉塵や臭気を加工空間102の外部へ排気する。
【0025】
図4に示すように、炎検知部が収納される、レーザー加工機の筐体としての装置本体10の前部には、吸気口が形成されており、装置本体10の後部には排気口が形成されている。矢印Aで示すように、空気は、吸気口から装置本体10内の加工空間102に流入し、加工空間102を通過して、排気口から装置本体10の外部へ排気される。
図4に示すように、吸気口及び排気口は上下方向及び左右方向に平行な2枚の紫外線遮光壁としての壁部により構成されている。紫外線遮光壁としての壁部は、吸気口及び前記排気口から装置本体10内の加工空間102への、装置本体10の外部からの紫外線を遮光する。上蓋132(アクセスパネル)は、可視光を透過しながら180nm~260nmの波長の紫外線を遮光する樹脂板で構成されている。前記の特徴により、装置本体10は、空気が吸気口から装置本体10内の加工空間102に流入し、加工空間102を通過して排気口から装置本体10の外部へ排気されることを実現しながら装置本体10外部のあらゆる角度からの紫外線を遮光することができ、装置本体10外部の紫外線の検出による炎検知部70の誤動作を回避できる。
【0026】
加工時に発生する煙や粉塵の粒子はとても小さいが、紫外線を吸収する。レーザー加工機1の加工時に装置本体内部の煙や粉塵が充満すると、炎検知部70が炎検出信号Qを正常に検知することができない。
図4に示すように、本実施形態においては、レーザー加工機1の正面と裏面に吸気口および排気口が設けられている。同時に吸気口及び排気口の高さが、被加工物Wの表面よりも高くする必要がある。これはレーザー加工機1の加工中において、吸気口から排気口までの気流の流れを被加工物Wの上で機能させ、被加工物Wから発生する煙やほこりが吸気口から排気口への気流に巻き込まれてすぐに排気されるためである。
【0027】
図4に示すように、本実施形態においては、装置本体10の吸気口の紫外線遮光壁の角度をカスタマイズすることにより吸気口に入る気流の向かう方向を設定し、装置本体に入る気流が装置本体の内側に沿って流れるように導く。これで加工空間102に入る空気がレーザー加工機1の内部で環状の排気気流Aを形成し、レーザー加工機の前壁11の吸気口から装置本体10に入った気流Aが、直接的に炎検知部70および排気口へ流れることがなく、吸気口を経過し後に上に向き、上蓋132に沿って奥壁12の排気口に流れる。
図4に示すように、気流Aは前壁11から奥壁12に流れ、排気口で排気されなかった一部の気流Bは被加工物Wに向かって流れ、被加工物Wの表面に沿って前壁11に流れて再び気流Aと合流する。気流Bは、レーザー加工時に被加工物Wの表面に発生した煙やほこりを巻き込んで前壁11に流れ、吸気口付近で気流Aと合流して最終的に排気口から排気される。
【0028】
装置本体10の中に形成した循環する気流Aにより、レーザー加工時に被加工物Wの表面から発生した煙や粉塵が奥壁12から前壁11に向かい、炎検知部70から遠ざかって流れる。このような方法により、煙や粉塵が炎検知部70に向かって流れることにより炎センサーの検出感度低下を効果的に回避することができる。
【0029】
前記の方法により、被加工物Wに紫外線が含まれる炎が発生した場合、紫外線が煙や塵により吸収されることなく、炎検知部70が炎から発する紫外線を正確に検知することができ、発火検知能力を保証することができる。
【0030】
加工空間102には、案内レール30が設けられている。案内レール30は、
図1に示すように、加工空間102の左右両端にそれぞれ配置された前後方向レール31(Y軸レール)と、左右方向に延びて一対の前後方向レール31を掛け渡すように配置された左右方向レール32(X軸レール)とを有している。左右方向レール32は、左右方向に平行な位置関係を保ったまま、前後方向レール31に対して前後方向へ移動可能である。左右方向レール32には、左右方向レール32に沿って移動可能な被加工部対向部(レーザーヘッド)33が設けられている。被加工部対向部33にはレーザーを反射する反射ミラーが設けられており、図示しないレーザー発振器、レーザーポインタから照射されたレーザーを反射して、
図3に示すように、高さ調整が可能な加工テーブル部50に設置された被加工物Wへレーザーを垂直に照射させる。左右方向レール32及び被加工部対向部33は、被加工物Wの所定の位置にレーザーが照射されるように、モータ36により駆動されて移動する。
【0031】
加工空間102の内部であって、奥壁12の近傍には、それぞれ金属製の直方体形状を有する下部ケース40と、放熱部60と、図示しない発振器ケースとが、下壁14から上方向にこの順で奥壁12に沿って設けられている。
【0032】
図示しない発振器ケースには、図示しないレーザー発振器が収納されている。レーザー発振器は、例えば、CO2レーザーを照射するレーザー発振器により構成されている。レーザー発振器は、CO2レーザーに限定されず、可視光レーザー、ファイバーレーザーでもよいし、素材を加工するために素材に反応するレーザーであれば、どのようなレーザーであってもよい。図示レーザー発振器は、図示しない一対の台座によって支持されて、金属製の直方体形状の発振器ケースの内部において支持されている。
【0033】
装置本体10の内部であって、
図3の右側の部分(レーザー加工機1の後部)には、紫外線光電管センサー71やセンサー駆動基板72を備える炎検知部70が設けられている。紫外線光電管センサー71やセンサー駆動基板72により構成される炎検知部70は、密閉性の密閉金属箱701とガラス製のフロント窓702とにより密閉構造とされた筐体に1つ収納されており、後述の図示しない燃焼判断部80(メイン制御基板)は当該筐体には収納されていない。フロント窓702の大きさは、紫外線光電管センサー71の検出範囲を遮ることなく、紫外線光電管センサー71の検出角度より大きく構成される。
【0034】
密閉金属箱701は紫外線光電管センサー71やセンサー駆動基板72を固定するための部品であって、ガラス製のフロント窓702は、炎または火花に含まれる特定波長の紫外線、具体的には、180nm~260nmの波長の紫外線を透過する石英ガラスにより構成されている。フロント窓702の大きさは加工空間102の任意位置に発生する炎が紫外線光電管センサー71に届くように、適切な大きさに形成されている。
【0035】
この構成により、加工機装置本体への、素材から発生する煙、粉塵およびヤニの侵入を防ぐことが可能となる。即ち、紫外線光電管センサー71やセンサー駆動基板72は、レーザー加工中に、素材から発生する煙、粉塵およびヤニに曝されることを防ぐことが可能となり、炎検知部70の安定した検知動作や長寿命を実現することができる。
【0036】
紫外線光電管センサー71やセンサー駆動基板72により構成される炎検知部70は、高さ方向においては被加工物Wより高い位置かつレーザーヘッドより低い位置に固定され、前後方向においては被加工物Wより後方かつ奥壁12より前方位置に固定され、左右方向においては加工空間102における加工領域の中央(被加工物Wの中央位置)に固定される。
【0037】
この位置に炎検知部70が設けられていることにより、最大の炎検知視野を得ると同時に、被加工物W等に発生した炎が、例えば、前後方向レール31や、左右方向レール32等により遮られて検知できなくなることが抑えられるように構成されている。
【0038】
炎検知部70は紫外線を取得してすぐに炎検出信号Qを生成することもできるが、レーザー加工機内の部品間に発生する静電気放電はある程度起こる。この炎でない性質の放電も紫外線を放射するため、炎検出信号Qからノイズ除去処理を施すことが好ましい。
【0039】
レーザー加工機の燃焼検知システムは、炎検知部70と、燃焼判断部80と、を備え、炎検知部70と燃焼判断部80は信号ケーブルなどが使用され、電気的に接続されている。
【0040】
炎検知部70は、紫外線光電管センサー71とセンサー駆動基板72、を備え、下部ケース40内部の最上部に設置されている。
【0041】
燃焼判断部80は、金属製の密閉金属箱701に収納されたセンサー駆動基板72とは別に設けられた、装置本体10の図示しないメイン制御基板に組み込まれ、電気配線や電源などの電気部品に近いところに配置される。装置本体10のメイン制御基板は、左右方向レール32及び被加工部対向部33を駆動するモータ36を駆動する信号やレーザー発振器を駆動するレーザー出力信号も生成しているため、レーザー出力信号取得部を構成する燃焼判断部80は、レーザー出力信号をメイン制御基板から直接取得できる。
【0042】
炎検知部70は、被加工物Wに対するレーザー照射により生ずる炎に含まれる特定波長の紫外線(180nm~260nmの波長の紫外線)を検知することにより得られる紫外線光電管センサー71のセンサー放電信号をセンサー駆動基板72で取得し、センサー駆動基板72でカウンタやタイマーなどの部品で構成される電子回路により、炎でないノイズ信号(静電気放電による炎性質以外の紫外線など)を除去してから炎検出信号Q(
図7における炎検出信号Q)を発生する。
【0043】
炎検知部70で生成する炎検出信号Qは、センサー駆動基板72により燃焼判断部80に送信され、炎検出信号取得部を構成する燃焼判断部80において、炎検出信号Qの処理及び判定工程が行われる。
【0044】
本実施形態により、炎検知部70は、25ms間隔のサンプリング周期で紫外線を検知するが、一回のサンプリング周期内に紫外線を検知した後は次の周期になるまで紫外線を検知できない。そして
図7に示すように、一回のサンプリング周期内に紫外線(センサー放電信号)を3回検出すると炎検出信号を1回発生するノイズ除去回路を採用している。前記検知方法により、燃焼が発生し、紫外線を持続的に検知できる場合は最大約75msに一度炎検出信号Qを生成することができる。
【0045】
燃焼判断部80は、CPU等の制御装置により構成されており、電話、メール送信のための機器、外部機器(ブザー等)により構成される警告部81、表示部82(警告ランプ、電光掲示板等)、及び、レーザー加工機1の制御を行うための、レーザー加工機1の外部のパーソナルコンピュータPCに電気的またはワイヤレスに接続されている。
【0046】
非金属の被加工物Wはレーザー照射中に火花や発火が起きやすいため、燃焼判断部80は、レーザー出力信号と炎検出信号Qとを比較し、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないときに検出した炎検出信号Qを検知対象とし、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1(ラスターモード:各行内にレーザーを出力していない期間および改行期間、ベクターモード:線分(オブジェクト)間の移動期間)に炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、燃焼判断部80は、装置が発火して燃焼している異常の可能性があると判定し、当該状況での炎検出信号Qを累積する。前記レーザーの無出力期間T1の累積時間が累積検知期間TMに達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達していない場合、タイマーとカウンタをリセットして累積検知期間TMを単位として炎検出信号Qを検知し続ける。レーザー無出力期間T1の累積時間が累積検知期間TMに達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達した場合、発火して燃焼している異常の状態であると判断し、警告部81又は表示部82の少なくとも1つにおいて警告を行う制御をする。
【0047】
警告部81及び表示部82における警告は、例えば、警告部81としてのブザーが燃焼による火災を警報し、表示部82としての、ソフトウェアにより表示される画面に、燃焼による火災の警告を表示する。また、例えば、警告部81としての電話や、表示部82としてのメールや、外部機器を通じた警告を行う。更に、燃焼による火災信号を消火する消火システムと連動させるように構成し、消火するようにしてもよい。
【0048】
次に、炎検知部70に含まれる紫外線光電管センサー71およびセンサー駆動基板72について説明する。
【0049】
炎検知部70の紫外線光電管センサー71は、炎の中にある微弱な特定波長の紫外線を検知する。紫外線光電管センサー71は、センサー駆動基板72の電力供給により動作する。センサー駆動基板72には、DC/DCコンバーターが設けられており、DC/DCコンバーターは、例えば25ms(40Hz)間隔に1パルスの電圧を発振し、昇圧トランスを通じて紫外線光電管センサー71のアノードとカソード間に約400Vの電圧を印加する。(この電圧値は、紫外線光電センサーの動作電圧に決められ、センサーの作動仕様に応じて調整することができる。)
【0050】
紫外線光電管センサー71は、
図5に示すように、特定波長の紫外線の入射によって放電するガス入り放電管の一種である。紫外線光電管センサー71に特定波長の紫外線のみに感度を持つ光電面(カソード)とアノード間に電圧を供給しておく。紫外線光電管センサー71のカソードに紫外線が入射すると、光電子放出効果によってカソード表面から光電子(電子)が放出される。光電子は電解によってアノードに引き寄せられる。
【0051】
ここで供給電圧を高くして電解を強くすると、光電子は加速され管内のガス分子と衝突し、これを電離するまでに至る。電離によって発生した電子と正イオンのうち、電子はさらに他のガス分子と衝突・電離を繰り返しアノードに達する。一方、正イオンはカソードに向かって加速され、カソードに衝突して2次電子を発生させる。この現象を繰り返すことにより、アノード-カソード間に急激に大きな電流が流れ、放電状態となる。この現象をガス増倍と呼ぶ。紫外線光電管センサー71はガス増倍を用いて電流を増幅させてセンサーの放電信号を取り出す。
【0052】
紫外線光電管センサー71には、以下のような複数の電圧状態がある。
放電開始電圧VL:
特定波長の紫外線が入射する際に放電を起こすのに必要最低限の電圧である。この電圧に到達しないと紫外線入射しても放電が起きない。
放電維持電圧VS:
紫外線が入射して放電が始まると、放電現象が維持するのに必要最低限の電圧である。紫外線光電管センサー71両極の電圧が放電維持電圧VS以下に下がると放電が止まる。
【0053】
より具体的には、紫外線光電管センサー71に特定波長の紫外線が入射すると、センサーが放電維持電圧VSまで放電する。紫外線光電管センサー71のカソード放電経路に抵抗器とコンデンサーを配置し、センサーが放電すると抵抗器の両端に細いパルス電圧が発生し、炎検知部70はこのパルス電圧をセンサー放電信号として取得する。
【0054】
紫外線光電管センサー71の出力パルス波形は、紫外線入射によるものであっても、また、炎でないノイズ放電信号(静電気放電による炎以外の紫外線など)によるものであっても、全く同じであるため、センサー放電信号の波形では区別できない。そこで、パルスの発生頻度(パルス間隔)に着目してノイズを除去する。以下、T1、T2を次のように定義する。
T1:ゲートタイマー設定時間。(例えば、2秒。1秒、3秒、4秒、5秒、またはそれ以上に設定しても良い)
T2:炎検出信号Q持続期間。(例えば、10ms。任意長さに設定しても良い)
【0055】
センサー駆動基板72は、
図6に示す信号処理回路を備えている。信号処理回路におけるa、b、cの各点については、以下のとおりである。
a点: 紫外線光電管センサー71からのセンサー放電信号は、ゲートタイマーとカウンタとに同時に入る。カウンタではパルスを順次計数していく。
b点: ゲートタイマーは設定時間T
1(例えば、2秒)より短い間隔でパルスが入り続ければOPEN状態を維持し続けるが、T
1よりパルス間隔が開くとゲートを閉じカウンタをリセットする。
c点: 連続してパルスが入れば、カウンタは計数を積算する。設定値(例えば、3回)に達すると出力回路に炎検出信号Qのパルス信号が発生し、カウンタはリセットされる。
d点: 出力回路では、カウンタからの出力パルスを必要な時間幅T
2(例えば、10ms)に広げ、炎検出信号Qとして出力し、燃焼判断部80に送信する。
【0056】
なお、ゲートタイマー設定時間T1(例えば、2秒)とカウンタ設定値(例えば、3回)の設定はあくまでも一例である。例えば、これらの設定を、ノイズ放電信号の頻度により調整しても良い。例えば、ゲートタイマー設定時間T1を1秒、カウンタ設定値を2に設定すれば、1秒間にセンサー放電信号を2回検出することにより、炎検出信号Qを出力することになる。
【0057】
本実施形態においては、センサー駆動基板72の駆動部は定期的にサンプリングし、1回のサンプリング周期に1回の紫外線の検知を行う。サンプリング周期は25msである。紫外線光電管センサー71と接続するセンサー駆動基板72では、2秒間に3回の紫外線を検知(
図7における「カウンターレベル模式図」参照)したら10msの炎検出信号Q(
図7における「炎検出信号」参照)を一つ出力し、2秒間で3回以下の場合はタイマーをリセットする。これにより空間中に偶発的な紫外線ノイズ(静電気放電により発生する炎でない性質の紫外線)を除去する。紫外線光電管センサー71により紫外線が持続的に検知される場合、紫外線光電管センサー71はすべてのサンプリング周期において紫外線を検出する。その際は最大75ms(以下、「飽和検知量」という)に一つの炎検出信号Qを燃焼判断部80に出力する。環境ノイズの発生頻度に応じ、センサー駆動基板72におけるゲートタイマー設定時間T
1とカウンタ設定値を変更することにより、サンプリング周期が変わり、飽和検知量も変わる。
【0058】
前記の工程は、静電気放電による炎でない性質の紫外線ノイズを除去するためである。このノイズの特徴は放電の特性だけあって炎が発生しない。
【0059】
ここで、レーザー加工における加工モードとしては、ラスターモード(彫刻モード)とベクターモード(切断モード)がある。ラスターモードでは、
図5に示すように、所定の加工領域において、始点から終点に至るまで塗りつぶすように、レーザー照射を行う。
【0060】
より具体的には、当該所定の加工領域の一端から他端へと一直線状にレーザー照射を行う。次に、当該一端と他端とを結ぶ方向に直交する方向へ移動(改行)する。次に、当該所定の加工領域の他端から一端へと一直線状にレーザー照射を行う。次に、当該他端と一端とを結ぶ方向に直交する方向へ移動(改行)する。以上を繰り返し行うことにより、当該所定の加工領域において、始点から終点へ至るまで塗りつぶすように、レーザー照射を行う。ラスターモードの改行動作において、均一長さのレーザー無出力期間T1を得ることにより、発火検知行うができる。
【0061】
ベクターモードでは、
図9および
図10に示すように、始点から終点に至るまで、いわゆる一筆書きのように連続してレーザー照射を行い、レーザー照射を行った部分において被加工物Wの切断を行う。また、ベクターモードにおいて2種類の加工ルートがある。ルート1:途切れのない線分により構成される図形、一筆書きのように最初から最後まで線分がつながっている(
図9を参照)。ルート2:複数の断続的な線分により構成される図形、各図形の間にレーザーを出力しない隙間がある(
図10を参照)。
【0062】
その中、ルート1(
図9を参照)の加工図形はレーザー加工に途切れなく、レーザー出力信号はレーザーの始点から終点まで出力し続ける。ルート2は、各線分(オブジェクト)を加工した後にレーザー出力信号をオフにし、次の線分(オブジェクト)の始点に移動してからレーザー出力信号を再びオンにする必要がある。即ち、同じベクターモードでも、ルート1のレーザー出力信号は持続期間の長い信号になる可能性があり、レーザー出力信号が出力になると加工完了まで中断することがないがため、レーザー無出力期間T1は全体のレーザー加工が完了してからはじめて取得できる。そのかわりに、ルート2(
図10を参照)は、各線分(オブジェクト)を加工した後、レーザー出力信号を一旦オフにして一定距離を移動する必要があるため、各線分(オブジェクト)を加工するたびにレーザー無出力期間T1が取得できる。
【0063】
ベクターモードの加工では、ルート1タイプの図形を加工する場合、加工中にレーザー出力信号がオフにならないため、加工中にレーザー無出力期間T1が発生しない。ルート2タイプの図形を加工する場合、線分(オブジェクト)と線分(オブジェクト)間の移動時にレーザー出力信号がオフになり、炎検知するための短いレーザー無出力期間T1を取得できる。
【0064】
以下、ラスターモード、ベクターモードにおける燃焼判断部80における、本実施形態の具体的な判定の詳細について説明する。
【0065】
非金属の被加工物Wは、レーザー照射により発火・燃焼する可能性があるため、燃焼判断部80は、レーザー出力信号によりレーザー出力が停止しても炎検出信号Qを持続的に検出できる場合、発火や燃焼が起きた可能性があると判断する。これにより、燃焼判断部80は、レーザー加工中において、レーザー出力信号と炎検出信号Qを比較し、まずレーザー出力信号によりレーザーを出力しない時に検知した炎検出信号Qを検知対象とする。レーザー加工中にレーザー出力信号によりレーザーを出力しないレーザー無出力期間T1(ラスターモード:各行内にレーザーを出力していない期間および改行期間、ベクターモード:線分(オブジェクト)間の移動期間)に、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合に、燃焼判断部80は、装置が発火して燃焼している異常の可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状況での炎検出信号Qを累積する。燃焼判断部80は、レーザー無出力期間T1を累積し、複数レーザー無出力期間T1の累積時間が累積検知期間TM(例えば、1000ms)に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達していない場合、タイマーとカウンターをリセットして累積検知期間TMを単位として炎検出信号Qを検知し続ける。複数レーザー無出力期間T1の累積時間が累積検知期間TMに達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達した場合、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断し、警告部81または表示部82の少なくとも一つにおいて警告を行う制御をする。即ち、非金属の被加工物Wは、レーザー照射により発火・燃焼しやすいため、検知期間としては、まず、レーザー出力信号によりレーザーを出力していない期間を発火検知の対象とする。
図11に示すように、各レーザー無出力期間T1の長さを100msと仮定する場合、1回のレーザー無出力期間T1に炎検出信号Qを1個検出すれば、10回目のレーザー無出力期間T1が終了する前に炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量10に達し、燃焼判断部80は、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断する。
【0066】
次に、レーザー出力信号がオフになった直後、火花が被加工物Wの表面に一時的に残る場合の状況について説明する。
【0067】
レーザー出力信号がオフになった直後、レーザー照射により被加工物Wの表面に火花が一瞬(例えば、0~3ms)残り、火花に含まれる紫外線は紫外線光電管センサー71によって検知されて炎検出信号Qが発生する。前記期間に検出された炎検出信号Qを累積すると、燃焼判断部80は残った一瞬の火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定の可能性が出てくる。そのため、レーザー出力信号がオフになった直後の一定期間に発生した炎検出信号Qを無視する必要がある。ここで、レーザー出力信号がオフになってからの一定期間を検知除外期間TEと定義し、検知除外期間TEには、計時および計数を行わない。本実施形態においては、検知除外期間TEを10msとする。
【0068】
ベクターモードのレーザー出力信号は、
図12に示すように、レーザー出力信号の持続期間が比較的に長い。被加工物Wが火花の発生しやすい素材の場合、レーザー出力信号の出力が続く限り、紫外線光電管センサー71は火花に含まれる紫外線による炎検出が継続してセンサー放電信号を生成するため、レーザー出力信号が継続する間、炎検知部70は炎検出信号Qを連続して検出する。レーザー出力信号がオフになる時、火花は一瞬被加工物Wの表面に残る。例えば、
図12では、2個目の炎検出信号Qが発生してから火花が消えるまでの間に、センサー放電信号の数がちょうど3個に達したため、センサー駆動基板72は炎検出信号Qを1個発生する。このとき、レーザー出力信号は既に無出力状態であるため、3個目の炎検出信号Qを累積すると、誤判定が起きやすい。
【0069】
ラスターモードにおけるレーザー出力信号は、例えば
図13に示すように、レーザー出力信号の持続期間は、センサー駆動基板72のサンプリング周期25msより短い場合もあるため、すべてのレーザー出力信号のセンサー放電信号が検出できる保証はない。例えば、
図13のように、3個目のセンサー放電信号が発生した時、レーザー出力信号は既に無出力状態となっており、このセンサー放電信号は、被加工物Wの表面に残留する火花に起因するものである。しかし、このとき、センサー放電信号の数はちょうど3つあるため、センサー駆動基板72は炎検出信号Qを一つ生成する。このとき、レーザー出力信号は既に無出力状態であるため、3個目の炎検出信号Qを累積すると、誤判定が起きやすい。
【0070】
例えば、ラスターモード(彫刻モード)では、以下の判定方法を設ける。後述する検知除外期間TEを10ms、累積検知期間TMを1000ms、発火燃焼判断に必要な炎検出信号Qの累計所定量CMを10個と設定する。
1.
図14において(A)で示すように、1行のデータが隙間なくレーザー出力する場合、改行時のレーザー無出力期間を狙って炎検出信号Qを検知する。
2.
図14において(B)で示すように、1行のデータの中、10ms以下の隙間がある場合、後述の10msの検知除外期間が効くため、行内の隙間は累積されない。改行時のレーザー無出力期間を狙って炎検出信号を検知する。
3.
図14において(C)で示すように、1行のデータの中、10ms以上の隙間がある場合、最初10msの検知除外期間TEの炎検出信号Qを無視し、10ms経過してから発火検知開始する。具体的には、
図14の(C)に示すように、隙間が20msのときには、20msから10msの検知除外期間TEを除いた残りの10msを検知期間(以下、「有効検知期間TA)という)とする。そして、このような検知期間を累積する。
図14の(C)に示す例では、行内に累積される有効検知期間TAは55msである。
以上を纏めると、表1に示すとおりである。
【0071】
【表1】
1行のデータに隙間がない場合とある場合との検知のタイミング
【0072】
即ち、ラスターモードにおいて、改行時の期間だけでなく、各行内のレーザー出力しない隙間も検知対象とする。そして、前記有効検知期間TAの累積時間が累積検知期間TMに達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達していない場合、装置が発火しておらず正常な状態であると判断し、タイマーとカウンタをリセットして累積検知期間TMを単位として炎検出信号Qを検知し続ける。前記有効検知期間TAの累積時間が累積検知期間TMに達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達した場合、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断し、警告部81または表示部82の少なくとも一つにおいて警告を行う制御をする。
【0073】
燃焼判断部80は、
図15、
図16に示すように、レーザー加工中にレーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1になってから検知除外期間TE経過後(例えば、10ms経過後:
図15、
図16に示す「検知除外期間」において斜線で塗りつぶした部分参照)の有効検知期間TAに、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合には、装置が発火して燃焼している異常の状態である可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状況での炎検出信号Qを累積する。この中、ベクターモードにおける有効検知期間TAは、
図15で各検知除外期間TEの終了時点から次のレーザー出力信号の開始時点までの期間であり、
図15の例では、2個目の検知除外期間TEが終了した後に検出した炎検出信号Qを累積する。ラスターモードにおける有効検知期間TAは、
図16で各検知除外期間TEの終了時点から次のレーザー出力信号の開始時点までの期間である。
図16の例では、3個目の検知除外期間TEが終了した後に検出した炎検出信号Qを累積する。
【0074】
そして、燃焼判断部80は、前記有効検知期間TAにおいて、炎検出信号Qを累積する。前記有効検知期間TAの累積時間が累積検知期間TMに達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達していない場合、装置が発火しておらず正常な状態であると判断し、タイマーとカウンタをリセットして累積検知期間TMを単位として炎検出信号Qを検知し続ける。前記有効検知期間TAの累積時間が累積検知期間TMに達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達した場合、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断し、警告部81または表示部82の少なくとも一つにおいて警告を行う制御をする。
【0075】
次に、単一レーザー出力信号が所定期間よりも長い場合の発火燃焼判断方法について説明する。
【0076】
図9のようなベクターモードにおいて、改行動作がないため、定期的に安定した長さの有効検知期間TAを得ることができない。例えば、
図9のルート1においては、全体の加工において開始から終了までレーザー無出力期間T1が発生しないため、加工中に炎検出信号Qを検知するための有効検知期間TAが得られない。そのため、加工中に発火燃焼が起きても炎を検出できない。例えば、
図10のルート2においては、一つの線分(オブジェクト)の加工が完了するたびに炎検出信号Qを検知するためのレーザー無出力期間T1を取得できるが、ラスターモードでは行ごとに固定長さの改行期間が得られることと比較した場合、ベクターモードに得られるレーザー無出力期間T1の回数と期間は非常に不安定である。
【0077】
ここまで説明した検知方法では、ベクターモードにおいて、レーザー出力信号によりレーザーを出力している時に発生する炎検出信号Qは無視され、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1になってから、検知除外期間TEを経過してからはじめて発火検知開始する。この検知方法では、ベクターモードで被加工物Wが発火・燃焼した場合、発火が発生してから長時間経っても有効検知期間TAが得られず、発火して燃焼している異常の状態を迅速に検出できない可能性がある。
【0078】
以上のようなベクターモードにおける特殊状況の問題を解決するには、レーザー出力信号によりレーザーを出力していない期間を検知対象とするだけでなく、レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間にも発火・燃焼を検知するメカニズムを創造・発明する必要がある。
【0079】
しかし、ベクターモードにおいては、ラスターモードに比べて加工速度が遅く、レーザーのエネルギーが被加工物Wに長時間照射するため、被加工物Wがレーザー照射により火花を発生し、発火・燃焼しやすくなる。また、紫外線光電管センサー71は、検出した紫外線が火花によるものなのか、発火・燃焼によるものなのかを区別できないため、ここまでの計時・計数方法で火花と発生・燃焼の両方によって発生する炎検出信号Qを累積すると、火花を発火・燃焼と間違って検出する誤判定が起きやすくなる。
【0080】
火花と発火・燃焼を区別するために、以下の仮説をする。レーザー照射中において被加工物Wに火花が発生した場合、火花はすぐに消える性質を持つため、炎検出信号Qもすぐに停止する。被加工物Wに発火・燃焼が発生した場合、燃焼する炎は広がり続け、炎検出信号Qの発生が継続する。以上の特徴を利用し、レーザー出力信号によりレーザーを出力している状態で、炎検出信号Qを継続的に検出すれば、当該信号が発火・燃焼によるものであると判断する検知方法を作成できる。
【0081】
しかし、ここまでの方法と同様に複数のレーザー出力信号によりレーザーを出力している期間を累積すると、ベクターモードにおけるレーザー出力信号だけでなく、ラスターモードにおけるレーザー出力信号も累積することになる。ラスターモードにおけるレーザー出力信号の持続期間は非常に短く、被加工物Wが火花の発生しやすい素材の場合、燃焼判断部80は、ラスターモードにおける複数レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間中に検出した炎検出信号Qを累積すると、検出した炎検出信号Qが火花によるものなのか、発火・燃焼によるものなのかを区別できなくなるため、誤判定が起きやすくなる。そのため、レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間に対する発火検知を行う場合、複数レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間に対して累積すべきではない。即ち、レーザー出力信号によりレーザーを出力しているときの発火検知期間は、当該レーザー信号に限定する。前記方法により、ラスターモードにおいてレーザー出力信号によりレーザーを出力している期間に検出した炎検出信号Qの数量は、レーザー出力信号が中断すると同時にリセットされるため、ラスターモードにおける発火検知期間は、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1に限定される。
【0082】
以上のように、燃焼判断部80は、レーザー加工中における単一レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間に、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、装置が発火して燃焼している異常の状態である可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状況で生成された炎検出信号Qを累積する。前記単一レーザー出力信号によりレーザー出力の出力期間が所定期間T3(例えば、5000ms)に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3(例えば、40個)に達していない場合、タイマーとカウンタをリセットし、所定期間T3を単位として当該レーザー出力信号が終了するまで炎検出信号Qに対する発火検知を続ける。前記レーザー出力信号の持続期間は所定期間T3に達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達した場合、装置が発火燃焼している異常の状態であると判断し、警告部81または表示部82の少なくとも一つにおいて警告を行う制御をする検知方法を纏めることができる。
【0083】
本実施形態における炎検出信号Qの理論飽和検知量は秒間13個ですが、実際の検知時に秒間の飽和検知量が若干変動する。実際に検証した結果、燃焼が続いている場合は炎検出信号Qが平均1秒間に10個到達することがわかった。以下では実際の飽和検知値を1秒あたり10個と定義する。したがって、前記の検知方法で、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力している状態における発火・燃焼が発生した場合、理論的には3.07秒、実際の状況には約4秒で発火して燃焼している異常の状態を判定できる。
【0084】
この設定により、炎検出信号Qの最大検出状態(75ms間隔に1個)が続いても3.07秒経ってから発火して燃焼している異常の状態を判定するため、3.07秒より短いレーザー出力信号(ラスターモードでほとんどのレーザー出力信号)は除外され、発火検知対象とされない。
【0085】
この設定により、ベクターモードにおいて定期的に安定した長さの有効検知期間TAが得られない問題を解決することができる。ベクターモードにおいては、レーザー無出力期間T1を利用するだけでなく、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間を利用して炎検出信号Qを検知することができ、正確に発火・燃焼を判定できる。
【0086】
上述の検知方法は、ラスターモードおよびベクターモードにおける具体的な検知方法を網羅しながら、静電気ノイズの除去も視野に入れた。しかし、レーザー加工においては、被加工物Wの特性も考慮する必要がある。
【0087】
非金属加工物Wに対するレーザー加工において、例えばタイル、セラミック、ガラス、クリスタル、花崗岩、陶磁器、半導体結晶など、激しい火花の発生しやすい特殊な素材がある。前記被加工物Wはレーザーに照射される時に非常に眩しい火花が発生する。紫外線光電管センサー71は、炎検出信号Qが火花によるものなのか、発火・燃焼によるものなのかを区別できないため、通常の計時・計数方法で火花と発生・燃焼の両方によって発生する炎検出信号Qを累積すると、火花を発火・燃焼と間違って検出する誤判定が起きやすくなる。
【0088】
例えば、セラミックプレートに対してレーザー加工を行う場合。ラスターモードにおいて、レーザー出力信号によりレーザーを出力しているレーザー出力期間T1に、被加工物Wのセラミックプレートはレーザー照射により激しい火花が発生する。レーザー出力信号によりレーザーを出力しないレーザー無出力期間T1に入ると、火花はすぐに消える。以上の検知方法により、ラスターモードにおいて単一レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間は短いため(単一レーザー出力信号の持続期間は所定期間T3より短い)、レーザー出力信号によりレーザーを出力しているときの炎検出信号Qは信号終了時即座にリセットされる。それと同時に、ラスターモードにおいてレーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1は検知対象とされる。火花はレーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1になった直後にすぐに消えるため、検知除外期間TE経過後の有効検知期間TAに炎検出信号Qによる炎の検知がなく、誤判定が発生しない。したがって、ラスターモードにおいては、例えばセラミックプレートにレーザー加工を行なっても、誤報することはない。
【0089】
しかし、ベクターモードにおいては、単一レーザー出力信号の持続期間が所定期間T3に達する可能性があり、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力しているレーザー出力期間に、被加工物Wのセラミックプレートは、レーザー照射により激しい火花が発生する。そのため、ここまでの検知方法を用いた場合、燃焼判断部80は、セラミック板からの火花による炎検出信号Qを間違って発火・炎によるものと検出することになる。単一レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間に炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達すると、燃焼判断部80が火花を発火・燃焼と間違って検出する誤判定が起きやすくなる。
【0090】
上述の特殊事情に起因する誤判定問題を解決するには、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間の発火・燃焼検知方法を改善する必要がある。上述のような誤判定は、火花の発生しやすい素材をベクターモードで加工する場合に限り発生するため、ベクターモードの発火検知方法を改良する必要がある。
【0091】
ベクターモードにおいては、セラミックプレートなど火花の発生しやすい被加工物Wに単一レーザー出力信号によりレーザーを出力すると、被加工物Wには瞬間的に激しい火花が発生する。この特徴を利用し、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力する最初の所定期間に素材判定を行うことができる。本実施形態においては、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力する最初の所定期間を素材判定期間T2とする。レーザー出力信号によりレーザーを出力した直後に炎検出信号Qが検出され、素材判定期間T2(例えば、2000ms)に炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2(例えば:3)に達した場合、当該被加工物Wは火花の発生しやすい素材であると判断する。したがって、当該レーザー出力信号によりレーザーを出力する全期間にわたって検出された炎検出信号Qは、発火・燃焼判断の根拠として使用できず、当該レーザー出力信号の炎検出信号Qに対する計数と計時をやめる必要がある。
【0092】
即ち、以下の検知方法を纏めることができる。
図17に示すように、燃焼判断部80は、レーザー加工中に単一レーザー出力信号によりレーザーを出力する状態になってから、最初の素材判定期間T2において炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、被加工物Wは火花の発生しやすい素材の可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状況での炎検出信号Qを累積する。当該レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達した場合、当該被加工物Wは火花を発生しやすい素材と判断し、当該レーザー出力信号全期間における発火検知を行わない。
図18に示すように、当該レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達していない場合、当該被加工物Wは火花の発生しにくい素材と判断し、素材判定期間T2の終了時点を開始時点として、当該単一レーザー出力信号に対する発火検知を行う。
【0093】
そして、当該レーザー出力信号によりレーザー出力が継続する時に、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、燃焼判断部80は、装置が発火して燃焼している異常の状態である可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状態で発生した炎検出信号Qを累積する。当該単一レーザー出力信号によりレーザー出力の継続出力期間が所定期間T3に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達していない場合、タイマーとカウンタをリセットし、所定期間T3を単位として当該レーザー出力信号によるレーザー出力が終了するまで炎検出信号Qに対する発火検知を続ける。当該レーザー出力信号によりレーザー出力の継続出力期間が所定期間T3に達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達した場合、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断し、警告部81または表示部82の少なくとも一つにおいて警告を行う制御をする。
【0094】
単一レーザー出力信号の検知方法を異常のように改善することにより、火花の発生しやすい被加工物Wに対してレーザー加工を行うとき、火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定を回避することができる。
【0095】
同時に、この実施形態において、被加工物Wの成分が均一に分布されていると仮定し、素材判定期間T2(例えば:2000ms)内に検出された炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2(例えば、3個)に達していない場合、発火検知が始まってから素材が発生する炎による炎検出信号Qの合計検出数が所定期間T3(例えば、5000ms)に、累計所定量C3(例えば、40個)に達することはありえない。したがって、以上の検知方法は、火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定は起きないと考えられ、この検知方法は有効であることを証明できる。
【0096】
ラスターモードにおいて、改行時や行内の隙間に対する発火検知方法は、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1のみ炎検出信号Qの検知期間とするため、前記単一レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間の検知方法は、レーザー無出力期間T1の検知工程に影響しない。したがって、上述の検知方法はレーザー加工の任意加工状態においても有効であることを証明できる。
【0097】
次に、レーザー加工中において、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力しているときに、作業者がレーザー出力パワーを変更する状況について説明する。
【0098】
上述した単一レーザー出力信号の検知方法において、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力する状態になってから、当該レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達していない場合、燃焼判断部80は、当該被加工物Wは火花の発生しにくい素材と判断し、素材判定期間T2の終了時点を開始時点として、当該単一レーザー出力信号に対する発火検知を行う。そして、燃焼判断部80は、検出されたすべての炎検出信号Qを累積する。
【0099】
被加工物Wがセラミックプレートなど火花の発生しやすい素材で、作業者が最初に設定したレーザー出力パワーが非常に弱い場合について、素材判定期間T2に検出した炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達していない場合、燃焼判断部80は、当該被加工物Wが火花の発生しにくい素材と判定し、素材判定期間T2の終了時点から当該レーザー出力信号に対して発火検知を行う。しかし、この後に作業者がレーザー出力パワーを上げることにより被加工物Wの表面に眩しい火花が発生すると、当該レーザー出力信号によりレーザーを出力している時に検出した炎検出信号Qが累積され、燃焼判断部80は火花を発火・燃焼と間違って検出する誤判定が起きやすくなる。
【0100】
前記単一レーザー出力信号によりレーザーを出力している時に、作業者がレーザー出力パワーを変更することによる問題に対し、タイマーとカウンタをリセットし、もう一度素材判定期間T2の開始時点から素材を判定する方法で解決することができる。
【0101】
例えば、作業者が所定期間T3にレーザー出力パワーを変更すると、カウンタとタイマーをリセットし、レーザー出力パワーが変化した時を開始時点として素材判定期間T2から再検知する。当該レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達した場合、当該被加工物Wは火花を発生しやすい素材と判断し、当該レーザー出力信号全期間における発火検知を行わない。当該レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達していない場合、当該被加工物Wは火花の発生しにくい素材と判断し、素材判定期間T2の終了時点を開始時点として、当該単一レーザー出力信号に対する発火検知を行う。
【0102】
そして、当該レーザー出力信号によりレーザー出力が継続する時に、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、燃焼判断部80は、装置が発火して燃焼している異常の状態である可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状態で発生した炎検出信号Qを累積する。当該単一レーザー出力信号によりレーザー出力の継続出力期間が所定期間T3に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達していない場合、タイマーとカウンタをリセットし、所定期間T3を単位として当該レーザー出力信号が終了するまで炎検出信号Qに対する発火検知を続ける。当該レーザー出力信号によりレーザー出力の継続出力期間が所定期間T3に達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達した場合に、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断し、警告部81または表示部82の少なくとも一つにおいて警告を行う制御をする。
【0103】
以上の方法により、単一レーザー出力信号によりレーザーを出力しているときに、作業者がレーザー出力パワーを変更することにより火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定を回避することができる。
【0104】
以上の内容はベクターモードに巡る問題の分析だった。ラスターモードに対して分析する場合、レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間に炎検出信号Qによる炎の検知があったと仮定し、素材判定期間T2に検出された炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達すると、当該レーザー出力信号によりレーザーを出力する全期間にわたって検出された炎検出信号Qが累積されない。また、作業者が所定期間T3に入った後にレーザー出力パワーを変更すると、燃焼判断部80はカウンタとタイマーをリセットし、レーザー出力パワーが変化した時を開始時点として、素材判定期間T2から被加工物Wに火花が発生しやすいかどうかを判断する。以上の仮定により、ベクターモードとラスターモードのどちらにおいても、火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定が発生しないことがわかる。したがってこの検知方法は有効であることがわかる。
【0105】
次に、レーザー加工終了後の発火検知について説明する。
レーザー加工機1は、作業者がレーザー加工を開始すると同時に発火検知を開始し、レーザー加工が終了すると同時に発火検知を終了する。レーザー加工中に被加工物Wが発火したとすると、ラスターモードとベクターモードのどちらにおいても、レーザー出力信号によりレーザーを出力する時または出力していない時に、発火・燃焼を検知する特定の検知方法がある。しかし、レーザー加工の最後の一瞬に被加工物Wが発火・燃焼した場合、加工終了時に発火検知を終了すると、燃焼判断部80は発火・燃焼を検出できなくなる。そのため、レーザー加工が終了してからしばらくの間に対する発火検知を行う必要がある。
【0106】
レーザー加工機がレーザー加工状態から待機状態または停止状態に変わる時、運転状態が変化した時点を開始時点としてレーザー加工後の発火検知を行う。検知開始してから、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、燃焼判断部80は、装置が発火して燃焼している可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状況での炎検出信号Qを累積する。検知時間が加工後検知期間T4(例えば、40000ms)に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C4(例えば、50個)に達していない場合、被加工物Wは発火していないと判断して発火検知を終了する。検知時間が加工後検知期間T4に達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C4に達した場合、装置は発火して燃焼している異常の状態であると判断し、警告部81または表示部82の少なくとも一つにおいて警告を行う制御をする。
【0107】
以上の検知方法を利用すれば、レーザー加工終了後に被加工物Wが発火・燃焼した場合、実際の飽和検知量(10個/秒)により、約5秒で発火して燃焼している異常の状態であると判断できる。レーザー加工終了後に、被加工物Wが火花のみ発生した場合、火花はすぐに消え、検知時間が加工後検知期間T4に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数は累計所定量C4に達しない。以上の仮定により、上述の検知方法は有効であることがわかる。
【0108】
次に、レーザー加工機1の上蓋132(アクセスパネル)の開・閉状態について説明する。
図4から、レーザー加工機1は、上蓋132(アクセスパネル)が閉じている状態で、外部からの紫外線をすべて遮光できることがわかる。そのため、上蓋132(アクセスパネル)が閉じた状態で、レーザー加工機の発火検知は外部環境に影響されることがない。
【0109】
しかし、作業者がレーザー加工機1の上蓋132(アクセスパネル)を開けて操作する時に、加工機外部からの紫外線は直接レーザー加工機内の炎検知部70に届く。例えば、紫外線の発生しやすいものはタバコ、太陽光、ライターの炎などがある。
【0110】
従って、レーザー加工機1の上蓋132(アクセスパネル)が開いている状態において、燃焼判断部80は、発火検知を行わない。
【0111】
上述の実施形態によれば、以下のような効果を発揮することができる。
本実施形態においては、燃焼判断部80は、レーザー出力信号と炎検出信号Qとを比較し、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないときに検知した炎検出信号Qを検知対象とし、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1(ラスターモード:各行内にレーザーを出力していない期間および改行期間、ベクターモード:線分(オブジェクト)間の移動期間)に炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、燃焼判断部80は、装置が発火して燃焼している異常の可能性があると判定し、当該状況での炎検出信号Qを累積する。前記レーザーの無出力期間T1の累積時間が累積検知期間TMに達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達していない場合、タイマーとカウンタをリセットして累積検知期間TMを単位として炎検出信号Qを検知し続ける。レーザー無出力期間T1の累積時間が累積検知期間TMに達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達した場合、発火して燃焼している異常の状態であると判断する。
【0112】
この構成により、ラスターモード(彫刻モード)とベクターモード(切断モード)と、レーザー加工方法及びレーザー出力信号が異なっていても、レーザーを出力しないタイミングを狙って発火燃焼(火災)を検知するための炎を正しく検知することが可能となり、火花を発火による炎として誤検知することを防止することができる。このため、発生した炎を消火するための消火システムの誤動作を、防止することができる。この結果、無人状態で運転ができるレーザー加工機1を実現することが可能となる。
【0113】
また、炎の発生からごくわずかな時間で炎の検知をすることが可能であるため、炎の発生から火災が大きくならない初期段階の短時間の内に火災が大きくならないようにする対応をすることが可能となる。この結果、レーザー加工機1における発火燃焼による故障を、最小限に抑えることができる。また、検知システムが最速で発火を検知できるため、消火した後は工場に戻して修理する必要がなく、再度使用することができる。同時に、本発火検知装置は使い捨てではなく、繰り返し発火検知に利用することができる。
【0114】
また、本実施形態においては、燃焼判断部80は、レーザー出力信号と炎検出信号Qとを比較し、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないときに検知した炎検出信号Qを検知対象とし、レーザー加工中にレーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1(ラスターモード:各行内にレーザーを出力していない期間および改行期間、ベクターモード:線分(オブジェクト)間の移動期間)になってから検知除外期間TE経過後の有効検知期間TAに、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、装置が発火して燃焼している異常の状態である可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状況での炎検出信号Qを累積する。前記有効検知期間TAの累積時間が累積検知期間TMに達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達していない場合、タイマーとカウンタをリセットして累積検知期間TMを単位として炎検出信号Qを検知し続ける。前記有効検知期間TAの累積時間が累積検知期間TMに達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量CMに達した場合、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断する。この構成により、レーザー出力信号によりレーザーを出力していないレーザー無出力期間T1に入った後、燃焼判断部80が残留火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定を回避することができる。
【0115】
また、本実施形態においては、燃焼判断部80は、レーザー加工中における単一レーザー出力信号によりレーザーを出力している期間に、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、装置が発火して燃焼している異常の状態である可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状況で生成された炎検出信号Qを累積する。前記単一レーザー出力信号によりレーザー出力の出力期間が所定期間T3に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達していない場合、タイマーとカウンタをリセットし、所定期間T3を単位として当該レーザー出力信号が終了するまで炎検出信号Qに対する発火検知を続ける。前記レーザー出力信号の持続期間は所定期間T3に達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達した場合、装置が発火燃焼している異常の状態であると判断する。この構成により、1本のレーザー切断線分(オブジェクト)が長くても、例えば、レーザー照射開始から終了まで10分以上かかる場合でも、レーザー照射が終了するまで待つ必要がなく、レーザー加工中にレーザー出力信号によりレーザー出力している期間に火災の原因となる炎の検出ができ、発火検知のタイミングを逃さず検知期間を確保することができる。
【0116】
また、本実施形態において、燃焼判断部80は、レーザー加工中に単一レーザー出力信号によりレーザーを出力する状態になってから、最初の素材判定期間T2において炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、被加工物Wは火花の発生しやすい素材の可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状況での炎検出信号Qを累積する。当該レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達した場合、当該被加工物Wは火花を発生しやすい素材と判断し、当該レーザー出力信号全期間における発火検知を行わない。当該レーザー出力信号の持続期間が素材判定期間T2に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C2に達していない場合、当該被加工物Wは火花の発生しにくい素材と判断し、素材判定期間T2の終了時点を開始時点として、当該単一レーザー出力信号に対する発火検知を行う。そして、当該レーザー出力信号によりレーザー出力が継続する時に、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、燃焼判断部80は、装置が発火して燃焼している異常の状態である可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状態で発生した炎検出信号Qを累積する。当該単一レーザー出力信号によりレーザー出力の継続出力期間が所定期間T3に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達していない場合、タイマーとカウンタをリセットし、所定期間T3を単位として当該レーザー出力信号によるレーザー出力が終了するまで炎検出信号Qに対する発火検知を続ける。当該レーザー出力信号によりレーザー出力の継続出力期間が所定期間T3に達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C3に達した場合、装置が発火して燃焼している異常の状態であると判断する。この構成により、シリコンやアルミナなど火花の発生しやすい素材が含まれる被加工物Wに対してレーザー加工を行うとき、素材判定期間T2を利用して火花を発火燃焼と間違って検出する誤判定を回避することができる。
【0117】
また、本実施形態においては、レーザー加工機がレーザー加工状態から待機状態または停止状態に変わる時、運転状態が変化した時点を開始時点としてレーザー加工後の発火検知を行う。検知開始してから、炎検出信号Qによる炎の検知があった場合、燃焼判断部80は、装置が発火して燃焼している可能性があると判断し、カウンタを利用して当該状況での炎検出信号Qを累積する。検知時間が加工後検知期間T4に達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C4に達していない場合、被加工物Wは発火していないと判断して発火検知を終了する。検知時間が加工後検知期間T4に達していないまたは達した時に、炎検出信号Qの合計検出数が累計所定量C4に達した場合、装置は発火して燃焼している異常の状態であると判断する。この構成により、レーザー加工が終了した瞬間に被加工物Wが発火した場合における発火検知できない問題を効果的に回避できる。
【0118】
また、本実施形態においては、警告部及び表示部を備え、燃焼判断部は、発火して燃焼している異常の状態であると判断したときに、警告部81又は表示部82の少なくとも1つにおいて警告をする制御を行う。この構成により、警告部81、表示部82による警告によって、被加工物Wの加工を行う作業者は、発火して燃焼している異常の状態を早期に知ることが可能となる。
【0119】
また、本実施形態においては、炎検知部70は、紫外線光電管センサー71及びセンサー駆動基板72を備え、前記炎検知部70は、密閉性の密閉金属箱701とガラス製のフロント窓702とにより密閉構造とされた筐体の内部に収納され、前記フロント窓702は、180nm~260nmの波長の紫外線を透過する石英ガラスにより構成されている。この構成により、密閉金属箱とフロント窓とにより気密な空間に炎検知部70が収納され、炎検知部70が粉塵に曝されることを防止することが可能となる。
【0120】
また、本実施形態においては、炎検知部70が収納される筐体としての装置本体10の内部の加工空間102において炎検知部70は、上下方向において、被加工物Wよりも上側、且つ、被加工物Wの所定の位置にレーザーを照射する被加工部対向部33よりも下側に配置され、前後方向において、被加工物Wよりも後側に配置され、左右方向において、被加工物Wの中央位置に配置される。この構成により、炎検知部70は最大の炎検知視野が得られ、被加工物Wが発生した炎による紫外線を、前後レール31または左右レール32等の部品に遮られて炎を検知できなくなることを防止できる。
【0121】
また、本実施形態においては、燃焼判断部としての燃焼判断部80は、レーザー発振器の発振を制御するメイン制御基板に組み込まれている。この構成により、レーザー出力信号取得部を備える燃焼判断部80は、直接メイン制御基板からレーザー出力信号を取得するため、炎検出信号Qとレーザー出力信号とを比較して判断することができる。
【0122】
また、本実施形態においては、炎検知部70が収納される筐体としての装置本体10の前部には、吸気口が形成され、前記筐体の後部には排気口が形成され、吸気口及び排気口には紫外線を遮光する紫外線遮光壁が設けられている。この構成により、装置本体10の外部の、あらゆる角度から装置本体10に向かってくる紫外線が、直接レーザー加工機内部の炎検知部70に到達できない構造とすることが可能となる。
【0123】
また、本実施形態においては、炎検知部70が収納される筐体は、箱状の本体としての装置本体10と、窓としての上蓋132とを有しており、上蓋132は、可視光を透過し、且つ、180nm~260nmの波長の紫外線を遮光する樹脂板により構成される。この構成により、装置本体10の外部から装置本体10に向かってくる紫外線が、上蓋132を通して、直接レーザー加工機1内部の炎検知部70に到達できず、且つ、レーザー加工機1で被加工物の加工を行う作業者は、被加工物Wが加工されている様子を可視光で視認することが可能となる。
【0124】
また、本実施形態においては、装置本体に入る気流が装置本体の内側に沿って流れるように吸気口に入る気流の向く方向を設定し、レーザー加工機1の内部に環状の気流を形成し、被加工物Wから発生する煙や粉塵を炎検知部から遠ざかる方向へ導くことにより、煙が炎センサーの検出感度に影響せず、炎検知部70は、炎による紫外線を正しく検知することができる。
【0125】
また、本実施形態においては、炎検知部70が収納される筐体は、箱状の本体としての装置本体10と、窓としての上蓋132とを有しており、燃焼判断部80は、上蓋132が開いているときには、正常の状態か異常の状態かの判断を行わない判断休止状態になる。この構成により、上蓋132が開いているときに、装置本体10の外部から装置本体10に向かってくる紫外線(燃えているタバコ、太陽光および加工機外部の炎など)を炎検知部70において検知し、燃焼判断部80において、発火して燃焼している異常の状態であると誤って判断してしまうことを防止することが可能となる。従って、レーザー加工機1の保守・修理時に、上蓋132が開いているときには、燃焼判断部80において、発火して燃焼している異常の状態であると誤って判断してしまうことを防止することが可能となる。
【0126】
本発明は、上述した実施形態に制限されることなく、請求の範囲に記載した範囲において、様々な形態で実施することができる。例えば、レーザー加工機1の各部の構成や、発火検知装置の各部の構成(レーザー出力信号取得部、炎検出信号取得部、燃焼判断部)等は、本実施形態におけるレーザー加工機1の各部の構成、炎検知部70の各部の構成、燃焼判断部80の各部の構成に限定されない。
【0127】
また、炎検知部70は、紫外線光電管センサー71を有していたが、この構成に限定されない。他の種類のセンサーにより炎の検知を行ってもよい。
【0128】
以上、本発明および実施形態を説明したが、説明内容に制限されることなく、説明図で説明したのは本発明の実施形態の一つに過ぎず、実際の構成はこれに制限されない。したがって、当業者である技術者がこれに啓発を受け、本発明の主旨から逸脱しない前提で、非創造的に本技術方法と同様な構造および実施形態を設計した場合は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0129】
Q・・・炎検出信号
TA・・・有効検知期間
TE・・・検知除外期間
T2・・・素材判定期間