(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】剛性、衝撃バランス性及び高寸法安定性を備えた低密度ポリオレフィン樹脂
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20220805BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L53/00
(21)【出願番号】P 2020569810
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019037272
(87)【国際公開番号】W WO2019245914
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-08-17
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510320575
【氏名又は名称】イクイスター・ケミカルズ・エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】リウ、チエ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ダマン、マイケル、ジェイ.
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0016428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23
C08L 53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレンブロックコポリマー、又はそれらの組み合わせからなり、前記組成物の総重量に対して
、55重量%
~72重量%の範囲の量で存在するポリオレフィンと、
(b)同一ではない第1及び第2のエラストマーであって、前記第1のエラストマー及び前記第2のエラストマーの総合重量パーセントは、前記組成物の総重量に基づい
て18重量%
~33重量%の範囲であり、(i)前記第1のエラストマーは、密度
が0.86g/cm
3
~0.88g/cm
3であるエチレン系コポリマーを含み、前記第1のエラストマーのエチレン系コポリマーは
、3g/10分
~8g/10分のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238、190℃、2.16kg)を有すると共に、前記第1のエラストマーは、前記組成物の総重量に基づい
て5重量%
~15重量%の範囲の量で存在し、(ii)前記第2のエラストマーは、密度
が0.85g/cm
3
~0.87g/cm
3でありガラス転移温度が-60℃を下回るエチレン-オクテンコポリマーを含み、前記第2のエラストマーの前記エチレン-オクテンコポリマーは
、3g/10分
~8g/10分のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238、190℃、2.16kg)を有すると共に、前記第2のエラストマーは、前記組成物の総重量に基づい
て10重量%
~22重量%の範囲の量で存在する、第1及び第2のエラストマーと、
(c)前記組成物の総重量に基づい
て6重量%
~12重量%の範囲の量で存在する充填剤と、
(d)前記組成物の総重量に基づい
て0.5重量%
~5重量%の範囲の量で存在する添加剤パッケージとを含み、
前記組成物の密度
は0.92
~0.99g/cm
3の範囲であり、焼成成形後収縮(1時間、121℃)
は0.7パーセント
~0.9パーセントの範囲であり、線形熱膨張係数
は5~8(10E
-5mm/mm/℃)の範囲であり、曲げ弾性率
は1,400MPa
~2,500MPaである、組成物。
【請求項2】
前記添加剤パッケージは、マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキシカーボネート及びその水和物ならびにステアリン酸またはステアリン酸塩からなる群から選択される核剤、酸化防止剤、離型剤、スクラッチ低減添加剤、核剤、中和剤/酸掃去剤のうち1つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は
、15g/10分
~50g/10分のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg)を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は
、0.94g/cm
3
~0.97g/cm
3の密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は
、5.5(10
-5mm/mm/℃)
~7(10
-5mm/mm/℃)の線形熱膨張係数(CLTE)を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は
、1,500MPa超
、2,200MPa未満の曲げ弾性率を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の成形時収縮率は、0.5パーセント
~0.8パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の焼成成形後収縮率は、0.7パーセント
~0.9パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記100%の延性破壊は、多軸衝撃を塗料無しで2.2m/sの速度において-30℃にて行った場合に発生する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物から形成された物品。
【請求項11】
前記物品は、自動車の部品である、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
物品を形成する方法であって、
(a)ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレンブロックコポリマー、又はそれらの組み合わせを含み、前記組成物の総重量に対して
、55重量%
~72重量%の範囲の量で存在するポリオレフィンと、
(b)同一ではない第1及び第2のエラストマーであって、前記第1のエラストマー及び前記第2のエラストマーの総合重量パーセントは、前記組成物の総重量に基づい
て18重量%
~33重量%の範囲であり、(i)前記第1のエラストマーは、密度
が0.86g/cm
3
~0.88g/cm
3であるエチレン系コポリマーを含み、前記第1のエラストマーのエチレン系コポリマーは
、3g/10分
~8g/10分のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238、190℃、2.16kg)を有すると共に、前記第1のエラストマーは、前記組成物の総重量に基づい
て5重量%
~15重量%の範囲の量で存在し、(ii)前記第2のエラストマーは、密度
が0.85g/cm
3
~0.87g/cm
3でありガラス転移温度が-60℃を下回るエチレン-オクテンコポリマーを含み、前記第2のエラストマーの前記エチレン-オクテンコポリマーは
、3g/10分
~8g/10分のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238、190℃、2.16kg)を有すると共に、前記第2のエラストマーは、前記組成物の総重量に基づい
て10重量%
~22重量%の範囲の量で存在する、第1及び第2のエラストマーと、
(c)前記組成物の総重量に基づい
て6重量%
~12重量%の範囲の量で存在する充填剤と、
(d)前記組成物の総重量に基づい
て0.5重量%
~5重量%の範囲の量で存在する添加剤パッケージとを含み、
前記組成物の密度
は0.92
~0.99g/cm
3の範囲であり、焼成成形後収縮(1時間、121℃)
は0.7パーセント
~0.9パーセントの範囲であり、線形熱膨張係数
は5~8(10E
-5mm/mm/℃)の範囲であり、曲げ弾性率
は1,400MPa
~2,500MPaである、ポリオレフィンを溶融配合させることと、
前記ポリオレフィンの溶融配合物をペレット化させることと、
前記ペレット化した配合物を射出成形することとを含む、方法。
【請求項13】
前記物品は、自動車の部品である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月18日出願の米国仮出願第62/686,324号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
本開示の分野
【0002】
本開示は、ポリオレフィン組成物に関し、詳細には、射出成形部品などの自動車用途用のポリオレフィン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィンは、幅広い物性及び加工性のため、商用プラスチック用途において用いられている。これらのポリマ-は、非晶質または高結晶質であり得、熱可塑性プラスチック、熱可塑性プラスチックエラストマ-または熱硬化性としての挙動を示すことができる。そのため、用途選択の際、剛性、耐衝撃性及び押出プロセスにおける加工性のバランスが得られるようにポリオレフィンの分子構造及び分子量分布(単数または複数)を選択することにより、ポリオレフィンの設計及び改質が行われ得る。
【0004】
特に、ポリプロピレン及びポリエチレンは、自動車産業において用いられている。その耐衝撃性及び極端な気候に耐える能力のため、ポリプロピレン及びエチレン-α-オレフィンコポリマ-エラストマ-及びプラストマ-の配合物は、射出成形構造内における用途において用いられている(例えば、自動車産業におけるもの(例えば、バンパ-、フェイシア、及び自動車用の内装パネル、飛行機、及びレクレ-ション車両、ならびに水容器及び機関車用の他のコンポ-ネント))。
【0005】
本開示の目的は、商用用途(例えば、空、海及び陸における自動車用途)において用いられるポリオレフィン系組成物の重量軽減を、ポリオレフィン系組成物の重要特性を損なわずに、かつ加工性を維持しつつ達成することである。また、本開示の目的は、組成物の線形熱膨張係数(CLTE)、収縮及びギャップ閉鎖の低減または維持を、密度低減及び/またはポリオレフィン組成物中のより高重量の充填剤含有量の除去ならびに強度、可撓性及び加工性特性とバランスをとりつつ行うことである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、より低密度の射出成形部品及び自動車部品のための向上した物性の必要性に対処する新規のポリオレフィン組成物と、そのような組成物から物品を形成する方法とに関する。
【0007】
詳細には、本開示の一様態は、新規の組成物であり、以下を有する:(a)ポリプロピレンホモポリマ-、プロピレン-エチレンブロックコポリマ-またはこれらの組み合わせを含むポリオレフィンであって、ポリオレフィンは、組成物の総重量に基づいて約55重量%~約72重量%の範囲で存在する、ポリオレフィンと、(b)第1及び第2のエラストマ-であって、第1のエラストマ-及び第2のエラストマ-の総合重量パ-セントは、組成物の総重量に基づいて約18重量%~約33重量%の範囲である、第1及び第2のエラストマ-と、(c)組成物の総重量に基づいて約6重量%~約12重量%の範囲の量で存在する充填剤と、(d)組成物の総重量に基づいて約0.5重量%~約5重量%の範囲の量で存在する添加剤パッケ-ジ。
【0008】
これらの新規の組成物は、密度が約0.92~約0.99g/cm3であり、焼成成形後収縮(1.0時間、121℃)が約0.7パ-セント~約0.9パ-セントの範囲であり、線形熱膨張係数が約5~約8(10E-5mm/mm/℃)の範囲であり、曲げ弾性率が約1,400MPa~約2,500MPaの範囲である。
【0009】
また、これらの新規の組成物は、多軸衝撃を-30℃において塗料無しで受けた場合の延性破壊は100%である。ベ-スコ-ト及びクリアコ-ト双方の単層またはリコ-トを2回施した白色単層を自動車産業用の標準的な塗料技術に従って本組成物へ付加した場合、組成物が0℃において衝撃速度2.2m/sを受けた場合の延性破壊は100%である。
【0010】
これらの新規の組成物が従来の組成物と異なる点として、所望の特性を維持しつつポリオレフィン密度の低減を試行している点がある。例えばUS9,902,846に記載の従来の試みにおいては、例えば最終射出成形部品の剛性、衝撃バランス性の特性または高寸法安定性に個別に合わせるために、ポリプロピレンのコポリマ-とエチレン系コポリマ-との間の相溶化剤に依存している。これとは対照的に、本開示の組成物の場合、相溶化剤ではなくデュアルエラストマ-のみを使用しており、ポリプロピレンホモポリマ-(ホモPP)及びポリプロピレンブロックコポリマ-から選択することにより、同等の特性をずっと低コストで達成する。
【0011】
本開示は、自動車、水容器、機関車、レクレ-ション車両用の部品として使用され得る上記の新規の組成物から作製された物品または飛行機及びその作製方法をさらに含む。詳細には、(a)、(b)、(c)及び(d)中の化合物は、共に溶融配合してもよいし、あるいは押出機により配合した後、射出成形を施して所望の物品にしてもよい。あるいは、(a)、(b)、(c)及び(d)中の化合物を共に溶融配合した後に、押出プロセス時において(d)中の添加剤を付加してもよい。
【0012】
複数の実施形態が開示されているが、さらに他の実施形態が以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。自明のことではあるが、本明細書に開示の特定の実施形態は、本明細書に記載の請求項の要旨及び範囲から逸脱することなく、種々の面で変更が可能である。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、限定的ではないと見なされるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
射出成形自動車物品に必要な物性に個別に合わせる際に相溶化剤に依存しないポリオレフィン系組成物が本明細書中に記載される。詳細には、所望の特性を維持または向上させつつ成形物品の密度を低減させるために、デュアルエラストマ-と、ポリプロピレンホモポリマ-及びポリプロピレン-エチレンブロックコポリマ-からの選択とが用いられる。いくつかの実施形態において、これらの組成物は、CLTE、低収縮、及び寸法安定性というより高密度の樹脂の特性のうちの1つ以上を維持するか、又は向上しつつも、低減された密度を有する。さらに、この新規の組成物は、任意の形状及びサイズの物品(特に、自動車バンパ-などの比較的大型の物品)に射出成形することができる。デュアルエラストマ-系及び処理が容易なオレフィンを用いることにより、コストが大幅に低減される。
【0014】
本開示の一様態において、組成物が提供され、当該組成物は:
(a)ポリプロピレンホモポリマ-、プロピレン-エチレンブロックコポリマ-またはこれらの組み合わせを含むポリオレフィンであって、ポリオレフィンは、組成物の総重量に基づいて約55重量%~約72重量%の範囲で存在する、ポリオレフィンと、
(b)第1及び第2のエラストマ-であって、第1のエラストマ-及び第2のエラストマ-の総合重量パ-セントは、組成物の総重量に基づいて約18重量%~約33重量%の範囲である、第1及び第2のエラストマ-と、
(c)組成物の総重量に基づいて約6重量%~約12重量%の範囲の量で存在する充填剤と、
(d)組成物の総重量に基づいて約0.5重量%~約5重量%の範囲の量で存在する添加剤パッケ-ジとを含み、
当該組成物の密度は約0.92~約0.99g/cm3であり、焼成成形後収縮(1時間、121℃)は約0.7パ-セント~約0.9パ-セントであり、線形熱膨張係数は約5~約8(10E-5mm/mm/℃)であり、曲げ弾性率は約1,400MPa~約2,500MPaであり、多軸衝撃を2.2m/sの速度において-30℃において塗料無しで受けた場合の延性破壊は100%である。自動車用途においては、塗料コ-トを3回施した組成物に対して延性試験を行う必要がある。ベ-スコ-ト及びクリアコ-ト双方の単層を用いた場合またはリコ-トを2回施した白色単層を用いた場合、組成物が0℃において2.2m/sの衝撃速度を受けた場合の延性破壊は100%である。
【0015】
いくつかの実施形態において、組成物は、約15g/10分~約50g/10分、あるいは、約18g/10分~約40g/10分、あるいは、約20g/10分~約38g/10分のメルトフロ-レ-ト(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg)を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、組成物は、約0.92g/cm3~約0.99g/cm3の密度を有する。これら実施形態のいくつかにおいて、組成物は、約0.94g/cm3~約0.97g/cm3の密度を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、組成物の線形熱膨張係数(CLTE)は約5(10-5mm/mm/℃)~約8(10-5mm/mm/℃)または約5.5(10-5mm/mm/℃)~約7(10-5mm/mm/℃)であり、-30℃~100℃の温度範囲におけるCLTEの平均セカント値については、典型的温度として35℃が決定及び報告されている。
【0018】
組成物のシャルピ-ノッチ付衝撃強度の測定値は、23℃において約25kJ/m2~約60kJ/m2である。あるいは、シャルピ-ノッチ付衝撃強度の測定値は、23℃において約30kJ/m2~約55kJ/m2である。さらに別の代替例において、23℃におけるシャルピ-ノッチ付衝撃強度は、約35kJ/m2~約50kJ/m2である。 いくつかの実施形態において、組成物の-30℃におけるシャルピ-ノッチ付衝撃強度は、約2kJ/m2~約10kJ/m2の範囲である。さらに他の実施形態において、組成物の-30℃におけるシャルピ-ノッチ付衝撃強度は、約3kJ/m2~約6kJ/m2である。
【0019】
いくつかの実施形態において、組成物の曲げ弾性率は、約1,400MPa~約2,500MPaまたは約1,500MPa~約2,200MPaまたは約1550MPa~約2,100MPaである。
【0020】
いくつかの実施形態において、組成物は、多軸衝撃を2.2m/sの速度及び-30℃(ASTMD3763)において塗料無しで受けた場合の延性破壊は100%である。あるいは、本組成物が例えばバンパ-フェイシアのための自動車産業用の標準的技術を用いて塗装された場合、0℃において多軸衝撃を2.2m/sの速度において受けたときの本組成物の延性範囲は約80~100%である。このような標準的技術は、ベ-スコ-ト及びクリアコ-ト双方のシングルコ-トまたは白色層の2回リコ-トを含む。あるいは、本組成物が自動車産業用の標準的技術を用いて塗装された場合、0℃において多軸衝撃を2.2m/sの速度において受けた際の本組成物の延性は100%である。
【0021】
いくつかの実施形態において、本組成物の成形時収縮(「AMMS」)は、約0.4%~約0.8%の範囲である。いくつかの実施形態において、本組成物の成形時収縮は、約0.5%~約0.8%あるいは約0.5%~約0.7%の範囲である。本開示のいくつかの実施形態によれば、成形時収縮は、改変ISO-294-4方法を用いて測定し得、この方法は、該組成物を含む4×6×1/8インチのプラ-クを成形し、プラ-クを室温まで冷却するようにし、24時間かけて再調整を行い、固定ゲ-ジを使用して平均収縮を測定することによって改変された。
【0022】
いくつかの実施形態において、本組成物焼成成形後収縮(「ABMS」;after-bake-mold-shrinkage)(1時間、121℃)は、約0.5%~約1.0%、または約0.6%~約1.0%または約0.6%~約0.9%及びまたは約0.7%~約0.9%の範囲である。焼成成形後収縮は、改変ISO-294-4方法を用いて測定し得、この方法は、4×6×1/8インチに成形されたサンプル組成物のプラ-クを121℃の設定温度まで1時間の間、焼成し、これが室温に戻って再調整された(すなわち、室温及び制御された湿度の環境で、24時間放置することにより、安定化させた)後の平均収縮を固定ゲ-ジを使用して測定することにより測定することにより改変された。
I. ポリオレフィン
【0023】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、組成物の総重量に対して、約55重量%~約72重量%の範囲の量で存在する。これらの実施形態のうちいくつかにおいて、ポリオレフィンは、組成物の総重量に基づいて約58重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、高結晶度部位を有する1つ以上のポリプロピレンホモポリマ-を含む。「高結晶度」とは、高磁界NMRによって判定される、97%mmmm超のメソペンタッド分立を備えたポリプロピレンをいうものである。例えば、WIPO PCT特許出願公開第WO2009/045351号に参照。その内容全体を参照として本明細書中に援用する。これら実施形態のいくつかにおいて、ポリオレフィンは、約40g/10分~約90g/10分、あるいは、約50~約80g/10分、あるいは、約50~約75g/10分、あるいは、約50~約60g/10分のメルトフロ-レ-ト(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg)を有する。
【0024】
代替の実施形態において、ポリオレフィンは、2つ以上のポリプロピレンホモポリマ-の配合物であるか、またはプロピレン-エチレンブロックコポリマ-である。さらに他の実施形態において、ポリオレフィンは、1つ以上のポリプロピレンホモポリマ-の配合物であるか、またはプロピレン-エチレンブロックコポリマ-である。代替の実施形態において、総ポリオレフィンは、組成物の総重量に対して、約58重量%~約72重量%の範囲の量で存在する。これら実施形態のいくつかにおいて、総ポリオレフィンは、組成物の総重量に対して、約62重量%~約70重量%の量で存在する。これら実施形態のいくつかにおいて、配合ポリオレフィンは、約10g/10分~約80g/10分、あるいは、約20~約60g/10分、あるいは、約20~約50g/10分、あるいは、約20~約40g/10分のメルトフロ-レ-トの組み合わせ(MFR、ASTM D1238、230℃、2.16kg)を有する。よって、上記のメルトフロ-レ-ト範囲を有する配合物ポリオレフィンを得るために、メルトフロ-レ-トが本明細書中に開示のものよりも高いかまたは本明細書中に開示のものよりも低いさらなるポリオレフィンが本オレフィン組成物と共に用いられ得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、市販のポリプロピレンを含む(例を非限定的に挙げると、ADSTIF(登録商標)、METOCENE(登録商標)及びPROFAX(登録商標):それぞれ供給元はLyondellBasell Industries(ヒュ-ストン、テキサス、米国))またはポリプロピレンホモポリマ-(Braskem)(フィラデルフィア、PA、米国))。
II. エラストマ-
【0026】
本組成物は、デュアルエラストマ-を相溶化剤無しで用い、これら2つのエラストマ-は同一ではない。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の本組成物のデュアルエラストマ-は、以下の特性を有し、以下に記載の量で存在する。
(i)第1のエラストマ-は、密度が約0.86g/cm3~約0.88g/cm3であるエチレン系コポリマ-を含み、第1のエラストマ-は、組成物の総重量に基づいて約5重量%~約15重量%の量で存在し、
(ii)第2のエラストマ-は、密度が約0.85g/cm3~約0.87g/cm3でありかつガラス転移温度が-60℃未満であるエチレン-オクテンコポリマ-を含み、第2のエラストマ-は、組成物の総重量に基づいて約10重量%~約22重量%の量で存在する。
【0027】
第1のエラストマ-及び第2のエラストマ-の総合重量パ-セントは、組成物の総重量に基づいて約18重量%~約33重量%の範囲であり得る。 いくつかの実施形態において、第1のエラストマ-は、組成物の総重量に基づいて約5重量%~約15重量%または約5重量%~約12重量%の量で存在し得る。第2のエラストマ-は、組成物の総重量に基づいて約18重量%~約22重量%または約20重量%~約21重量%の量で存在し得る。別の実施形態において、第2のエラストマ-は、組成物の総重量に基づいて約8重量%~約15重量%または約10重量%~約12重量%の量で存在する。
【0028】
第1のエラストマ-は、約0.4g/10分~約2g/10分、又は約0.4g/10分~約1.0g/10分のメルトフロ-レ-ト(190℃、2.16kg)を有する。あるいは、第1エラストマ-は、約3g/10分~約8g/10分、あるいは、約5g/10分のメルトフロ-レ-ト(190℃、2.16kg)を有する。いくつかの実施形態において、第1のエラストマ-のエチレン系コポリマ-は、エチレン-ブテンコポリマ-又はエチレン-オクテンコポリマ-である。
【0029】
第2のエラストマ-は、約3g/10分~約8g/10分、あるいは、約5g/10分のメルトフロ-レ-ト(190℃、2.16kg)を有し得る。
【0030】
適切なエラストマ-の市販元としては、ExxonMobil Corporation(商標名:Vistamaxx(登録商標))、DOW Chemical Company(商標名:Engage(登録商標))及び三井化学(商標名:Tafmer(登録商標))がある。
III. 充填剤
【0031】
いくつかの実施形態において、充填剤は、約6重量%~約12重量%または約7重量%~約11重量%または約8重量%~約10重量%及びあるいは約9重量%の範囲の量で存在する。各範囲及びパ-セントは、組成物の総重量に基づく。いくつかの実施形態において、充填剤は、高アスペクト比を有するタルク、ガラス、ガラスバブル、炭素繊維、鉱物繊維、バイオフィラ-(例えば、木材、亜麻、麦わら、ココナツ、ケナフ及び麻、ならびにこれらの組み合わせ(例えば、タルク及びガラスバブルまたはタルク及び炭素繊維の組み合わせ))から選択され得る。
【0032】
充填剤は、任意選択で、組成物が配合又は押出されている間に組成物に直接添加され、充填剤が組成物全体にほぼ均一に分布するようにする。
IV. 添加剤パッケ-ジ
【0033】
いくつかの実施形態において、添加剤パッケ-ジは、以下のうち1つ以上を含み得る:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロキシルカ-ボネ-ト及びその水和物;ならびにステアリン酸及び/またはステアリン酸塩からなる群から選択された酸化防止剤(単数または複数);離型剤(単数または複数);スクラッチ低減添加剤(単数または複数);核剤(単数または複数);中和剤(単数または複数)/酸掃去剤(単数または複数)。
【0034】
いくつかの実施形態において、添加剤パッケ-ジは、酸化防止剤を含む。酸化防止剤は、有機リン酸エステルまたは1つよりも多くの有機リン酸エステルの配合物である。
【0035】
いくつかの実施形態において、スクラッチ低減添加剤は、脂肪酸アミドなどの潤滑剤を含み得る。その例を挙げると、オレアミド(「OR」)、エチレンbis-ステアルアミド(EBS)、及び/またはエルカミドなどがある。例えば、オレアミド(OR)は、Croda,Inc(ニュ-ジャ-ジ-州、ニュ-ア-ク)によって供給されるCrodamide(登録商標)ORであってもよい。エルカミド(ER)は、Crodaによって供給されるCrodamide(登録商標)ERであってもよい。エチレンビス-ステアロアマイド(EBS)は、Crodaによって供給されるCrodamide(登録商標)ERであってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、離型剤添加剤は、グリセロ-ル・モノステアレ-ト、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどのうち1つ以上を含み得る。例えば、米国特許第3,886,105号を参照されたい。同文献を参考のためあらゆる目的のために援用する。あるいは、ステアリン酸マグネシウムは、分散助剤として用いられ得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、添加剤パッケ-ジは、核剤を含む。核剤は、リン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩である。別の実施形態において、添加剤パッケ-ジは、核剤を含む。核剤は、シクロヘキサンジカルボン酸、その塩またはその無水物である。いくつかの実施形態において、核剤は、組成物の総重量に基づいて約0.05重量%~約1重量%または約0.05重量%~約0.3重量%の範囲の量で存在する。これらの実施形態のうちいくつかにおいて、核剤は、組成物の総重量に基づいて約0.1重量%の量で存在する。
【0038】
いくつかの実施形態において、添加剤パッケ-ジは、中和剤/酸掃去剤を含む。中和剤/酸掃去剤は、マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキシカ-ボネ-トまたはその水和物である。マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキシカ-ボネ-ト水和物は、ヒンダ-ドアミン光安定剤の不活性化の抑制において有効である。本開示と共に用いられる1つのマグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキシカ-ボネ-ト水和物は、協和化学工業株式会社から「DHT-4AまたはDHT-4V」の商標下において販売されている。
【0039】
いくつかの実施形態において、添加剤パッケ-ジは、以下の種類の物質のうち1つ以上をさらに含む:着色剤、着臭剤、脱臭剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤、湿潤剤、難燃剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、殺生物剤、金属不活化剤、増粘剤、熱安定剤、消泡剤、カップリング剤、ポリマ-アロイ用相溶化剤、膨張剤、乳化剤、架橋剤、ワックス、微粒子、流れ促進剤、及びポリマ-成分の加工性またはエンドユ-ス特性の向上のために付加される他の材料。このような添加剤は、従来の量で用いられ得る。いくつかの実施形態において、これらの量は、組成物の総重量の10重量%を超えない。
【0040】
いくつかの実施形態において、添加剤は、組成物に個別に(又は組み合わせで)、任意選択で、組成物が配合又は押出されている間に直接添加され、添加物が組成物全体にほぼ均一に分布するようにする。この種の添加剤の添加は、「塩コショウ添加」と称されてもよい。他の実施形態において、添加剤は、マスタ-バッチを用いて付加され得る。マスタ-バッチにおいては、ポリオレフィン組成物と配合可能な担体中へ添加剤がプレ配合(またはエントレイン)されている。ここで、担体は、ポリエチレンまたはポリプロピレンのホモポリマ-あるいはタルクであり得る。担体としてタルクが用いられる場合、相応の量の充填剤が式中において低減される。組成物が配合又は押出されている間に、マスタ-バッチを添加されることにより、添加剤が組成物全体にほぼ均一に分布するようにしてもよい。
【0041】
組成物へ添加剤を導入するために、1つ以上のマスタ-バッチが用いられ得る。いくつかの実施形態において、複数のマスタ-バッチにより、異なる添加剤が担持され得る。例えば、第1マスタ-バッチでは、着色剤を含んでもよく、第2マスタ-バッチでは、添加物の残余を含んでもよい。多数のマスタ-バッチを使用する実施形態において、各マスタ-バッチのポリマ-担体は、同一であってもよく、又は異なってもよい。使用されるマスタ-バッチの数に関係無く、組み合わされたポリマ-担体樹脂は、組成物の総重量の0.5~2重量%に制限してもよいし、あるいは、ポリマ-担体は、組成物の総重量の約1重量パ-セントであってもよい。
【0042】
さらに他の実施形態において、添加剤のうちのいくつかは、マスタ-バッチ経路を通じて添加されてもよく、他の添加剤は、塩コショウ添加で添加されてもよい。
V. 成形部品/物品
【0043】
別の態様において、本明細書中に記載の組成物のうちの1つ以上を含む製造品が提供される。いくつかの実施形態において、この物品は、成形部品等の自動車部品であるが、水容器、機関車、レクレ-ション車両、飛行機、及びその他の製造物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、成形部品は、バンパ-フェイシア、バンパ-、ロッカ-、被覆材、ホイ-ルフレア、ドアパネル、又はインスツルメントパネルである。いくつかの実施形態において、このような成形部品を使用して、自動車産業において、燃費が高く、排気量の低い、より軽量の車を製造するのを支援してもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の成形部品は、例えば、現在のバンパ-フェイシア樹脂に使用されるもののように、現在のより高密度の組成物の特性プロファイルを示す。このような特性には、例えば、密度を低減しつつ、一定の収縮及びCLTEを得ることが含まれる。当該分野において公知の他のより低密度の組成物と対照的に、本明細書中に記載の組成物の場合、室温以下(例えば、-30℃)における剛性または衝撃が低下しない。さらに、本明細書中に記載の組成物の場合、CLTEまたは収縮の増加が発生しない。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される組成物(樹脂)は、既存の設備に対応しており、よって再設備化の支出を全く要しないか、限定的なものである。自動車産業においては、クラフトマンシップ向上のために隙間発生の低減が追求されているため、いうつかの実施形態において、膨張/収縮による隙間発生の増加を全て回避することにより他の低密度組成物と対照的となる組成物が用いられる。
【0044】
いくつかの実施形態において、物品は、着色剤が組み込まれてもよい。別の実施形態において、物品は、成形の後(または前に)着色、塗装またはシ-リングが必要である点において半完成品であり得る。さらなる実施形態において、物品は、塗装性を向上するために、種々の材料が塗布されてもよい。さらに他の実施形態において、この物品は、クリアシ-ル又はワックスが(塗装の前後、又は塗装の代わりに)塗布されてもよい。クリアシ-ル、ワックス、及び/又は、塗装は(単独又は組み合わせで)、日光、熱、風、雨、土砂及び虫、花粉又は樹液、及び/又は、鳥糞を含む道路のがれき等の要素から、物品を保護してもよい。
VI. 方法及びプロセス
【0045】
本発明の別の様態は、下記の成分(a)、(b)、(c)及び(d)を溶融配合させることを含む、(例えば、自動車の)射出成形部品の作製方法である。
(a)ポリプロピレンホモポリマ-、プロピレン-エチレンブロックコポリマ-またはこれらの組み合わせを含むポリオレフィンであって、ポリオレフィンは、組成物の総重量に基づいて約55重量%~約72重量%の範囲で存在する、ポリオレフィンと、
(b)第1及び第2のエラストマ-であって、第1のエラストマ-及び第2のエラストマ-の総合重量パ-セントは、組成物の総重量に基づいて約18重量%~約33重量%の範囲である、第1及び第2のエラストマ-と、
(c)前記組成物の総重量に基づいて約6重量%~約12重量%の範囲の量で存在する充填剤と、
(d)組成物の総重量に基づいて約0.5重量%~約5重量%の範囲の量で存在する添加剤パッケ-ジ、当該組成物の密度は約0.92~約0.99g/cm3であり、焼成成形後収縮(1時間、121℃)は約0.7パ-セント~約0.9パ-セントであり、線形熱膨張係数は約5~約8(10E-5mm/mm/℃)であり、曲げ弾性率は約1,400MPa~約2,500MPaであり、多軸衝撃を2.2m/sの速度において-30℃において塗料無しで受けた場合の延性破壊は100%である。自動車用途の工業標準によって塗装した場合、0℃において100%延性破壊が発生する。
いくつかの実施形態において、方法は、配合物をペレット化して複数のペレットを形成することを備える。いくつかの実施形態において、方法は、ペレット化配合物を射出成形することを備える。いくつかの実施形態において、成分は、高負荷連続ミキサ-又は内側バッチミキサ-(バンバリ-ミキサ-、又はツインスクリュ-押し出し機)押出機で配合される。
VII. 定義
【0046】
本明細書中用いられるように、「α-オレフィン」または「アルファ-オレフィン」とは、一般式CH2=CH-Rのオレフィンを意味する。ここで、Rは、1~10個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキルである。α-オレフィンは、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセンなどから選択され得る。
【0047】
本明細書において使用されるように、用語「エラストマ-」という用語は、ゴム様特性を有し、約0%~約20%の範囲の結晶度を有するポリマ-化合物をいう。いくつかの実施形態において、ポリマ-は、約0%~約5%の範囲内の結晶度を有することができる。
【0048】
本明細書において使用されるように、用語「異相ポリプロピレンコポリマ-」とは、ポリプロピレンマトリクス内に分散されたエチレン及びプロピレンの共重合によって調製されたコポリマ-(又は、ゴムコポリマ-)をいう。ポリプロピレンマトリクスは、ホモポリマ-又はコポリマ-であってもよい。
【0049】
本明細書において使用されるように、用語「ホモポリマ-」及びその類似の用語は、単一種のモノマ-に由来する単一又は基本的単位からなるポリマ-を意味する。例えば、エチレンホモポリマ-は、エチレンに由来する単一又は基本的単位からなるポリマ-であり、プロピレンホモポリマ-は、プロピレン等に由来する単一又は基本的単位からなるポリマ-である。
【0050】
本明細書において使用されるように、用語「インタ-ポリマ-」とは、少なくとも2種類のモノマ-又はコモノマ-の重合によって調製されたポリマ-を示す。これは、コポリマ-(3種以上の異なるモノマ-又はコモノマ-からなるポリマ-をいうとき、「インタ-ポリマ-」とは相互交換可能に使用することができるが、2つの異なる種別のモノマ-又はコモノマ-から調製されたポリマ-をいうことができる)、タ-ポリマ-(3つの異なる種別のモノマ-又はコモノマ-から調製されたポリマ-をいうことができる)、テトラポリマ-(4つの異なる種別のモノマ-又はコモノマ-から調製されたポリマ-をいうことができる)等に限定されるものでないが、これを含むものである。
【0051】
「モノマ-」及び「コモノマ-」という用語は、入れ替え可能に使用される。これらの用語は、ポリマ-を作成するために、リアクタ-に添加される重合性部分を備えた任意の化合物を意味する。例えば、プロピレン及びエチレンを含むポリマ-等、ポリマ-が1つ以上のモノマ-を含むものとして説明される場合、ポリマ-は、例えば、-CH2-CH2-由来の単位からなるものであって、そのモノマ-自体、例えば、CH2=CH2ではない。
【0052】
本明細書中用いられるように、「ブロックコポリマ-」という用語は、相互に化学結合された異なるポリマ-の2個以上のストランド(ブロック)を指す。
【0053】
本明細書において使用されるように、用語「ポリマ-」という用語は、同一又は異なる種別のモノマ-を重合することで調製された高分子化合物を意味する。「ポリマ-」という用語は、ホモポリマ-、コポリマ-、多-ポリマ-、インタ-ポリマ-等を含む。
【0054】
本明細書において使用されるように、用語「ポリマ-組成物」とは、少なくとも1つのポリマ-からなる、及び/又は、少なくとも1つのポリマ-を含有する組成物をいう。
【0055】
本明細書において使用されるように、用語「オレフィン」とは、アルケンをいい、分子中の少なくとも1つの炭素-炭素二重結合が末端二重結合である。オレフィン類の非限定的な例として、スチレン、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、又はドデセンが挙げられる。
【0056】
本明細書において使用されるように、「ポリオレフィン」という用語は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、及び酢酸ビニル及び「オレフィン」ファミリ-分類内のその他のポリマ-樹脂等、より少量のコモノマ-で重合した少なくとも約50重量%のエチレンを有するエチレンコポリマ-等のポリマ-を含む。
【0057】
ポリオレフィンは、単一、多段階、又は連続リアクタ-と、スラリ-と、溶液と、流動層プロセスと、例えば、異なる特性の組み合わせを有するポリマ-を作成するための、不均質及び均質な系統、Ziegler-Natta、Phillips、メタロセン、単一サイト、及び束縛構造触媒を含む1つ以上の触媒とを使用した、バッチ連続プロセスを含む種々のプロセスで作成されてもよい。このようなポリマ-は、高度に分岐されるか、又は略線形であってもよく、分岐、分散、及び平均分子量は、ポリマ-分野の教示に従って製造のために選択するパラメ-タ及びプロセスによって変動し得る。
【0058】
本明細書において使用されるように、用語「室温」とは、摂氏約23度をいう(ASTMで異なる規定のない限り。その場合、「室温」とは、特定の試験/手順/方法毎にASTM内に規定されているものをいう)。
【0059】
本明細書において使用されるように、用語「熱可塑性ポリマ-」は、熱への露出時に軟化し、室温への冷却時にその当初の状況に戻るポリマ-を意味する。
【0060】
本明細書中用いられるように、「チ-グラ-ナッタ触媒ポリマ-」及び「Z-N-触媒ポリマ-」という用語は、チ-グラ-ナッタ触媒の存在下において作製された任意のポリマ-を意味する。
【0061】
本明細書中用いられるように、「マスタ-バッチ」という用語は、1つ以上の固体または液体の添加剤を担体樹脂中に有する事前混合された組成物を指し、これらの添加剤は、ポリオレフィンに他の特性を付与するために用いられる。1つ以上のマスタ-バッチが、添加剤の一部または全てをポリオレフィン配合物へ導入するために用いられ得る。
【0062】
本明細書中、「部品」及び「物品」という用語は、例えば自動車車両(例えば、自動車、レクレ-ション車両、水容器及び飛行機)上において用いられる完成または半完成状態の射出成形コンポ-ネントを指すために同義に用いられる。
【0063】
「a」または「an」という単語が請求項及び/または本明細書中の「comprising(含む)」という用語と共に用いられた場合、「one(1つ)」を意味し得るが、「one or more(1つまたは複数・1つ以上)」、「at least one(少なくとも1つ)」及び「one or more than one(1つまたは1つよりも多数)」の意味も持ち得る。
【0064】
本願全体を通じて、「about(約)」という用語は、ある値が、その値の判定に採用される装置や方法の誤差の変動、又は研究間に存在する変動を含むものであることを示すものとして使用されている。
【0065】
請求項中において「または」という用語が用いられた場合、代替例のみを指すことが明示されている場合または代替例が相互に排他的である場合を除いて、「及び/または」を意味する。
【0066】
「comprise」、「have」、「include」及び「contain」という用語(及びその変化形)は、開放型の連結動詞であり、請求項において用いられる場合、他の要素の付加を許容する。これらの動詞のうち1つ以上の任意の活用形または時制(例えば、「comprises」、「comprising」、「has」、「having」、「includes」及び「including」)も、開放型である。例えば、任意の方法が1つ以上のステップを「comprises(含む)」か、「has(有する)」かまたは「includes(含む)」場合、これらの1つ以上のステップのみを含むことに限定されず、他の記載されていないステップも網羅する。
【0067】
「consisting of(からなる)」という語句は閉鎖型であり、さらなる要素全てを排除する。
【0068】
「consisting essentially of(から本質的になる)」という語句は、さらなる材料要素を排除するが、本発明の内容を実質的に変化させない非材料要素の包含を許容する。
【0069】
「方法」とは、最終生成物、結果または成果を得るために行われる一連の1つ以上のステップである。本明細書中用いられるように、「方法」という単語は、「プロセス」という単語と同義に用いられる。
【0070】
以上の定義は、本明細書に参照として援用された参照文献において矛盾する定義にとってかわるものである。しかしながら、特定の用語を定義したことは、定義されなかった用語が無限であることを示すものと考えられてはならない。むしろ、使用されたすべての用語については、当業者が理解できるように、添付の請求項を説明するものであると考えられる。
【0071】
本明細書中、以下の略語が用いられる。
略語 用語
ABMS 焼成成形後収縮
AMMS 成形時収縮
ホモPP ポリプロピレンホモポリマ-
MFR メルト質量フロ-範囲
VIII. 試験方法
【0072】
メルト質量フロ-レ-ト(MFR)は、グラム/10分の単位で与えられ、以下に特定される条件の下、表題「押出弾性率計による熱可塑性のメルトフロ-レ-ト試験方法」のASTM D1238を使用して測定した。本明細書において使用される「ASTM D1238」という用語は、押出弾性率計により実施された熱可塑性のメルトフロ-レ-ト判定のための標準試験方法をいう。通常、この試験方法は、押出弾性率計を使用した溶融熱可塑性樹脂の押出率の判定を網羅している。特定の予加熱後、規定の温度、負荷、及びバレル中のピストン位置といった条件下において、特定長さ及び開口直径を有するダイを通じて樹脂を押し出す。この試験方法は、2013年8月1日に承認され、2013年8月に公開されており、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。参照したASTMに対しては、ASTMのウェブサイト、wwwastm.orgを訪問するか、ASTMの顧客サ-ビスservice@astm.orgに連絡する。
【0073】
充填剤または灰分は、%単位で記載され、「プラスチック中の灰分含有量の標準試験法」というタイトルのASTMD5630を用いて測定される。本明細書中用いられるように、「ASTMD5630」という用語は、破壊灰化手順によりプラスチックの無機含有量を決定する標準試験方法を指す。この試験方法は、2013年4月1日に承認され、2013年4月に公開されており、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。参照したASTMに対しては、ASTMのウェブサイト、wwwastm.orgを訪問するか、ASTMの顧客サ-ビスservice@astm.orgに連絡する。
【0074】
密度は、単位をg/cm3とし、表題「プラスチック-非セルラ-プラスチックの密度の判定方法、その1:浸漬方法、液体ピクノメ-タ法、及び滴定法」のISO1183-1を使用して測定した。本明細書において使用される「ISO1183-1」という用語は、2012年5月15日付で第二版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【0075】
曲げ弾性率は、単位をメガパスカル(MPa)とし、表題「プラスチック-曲げ弾性特性の判定」のISO178を使用して測定した。本明細書において使用される「ISO178」という法語は、2010年12月15日付で第五版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【0076】
シャルピ-ノッチ付衝撃強度(又は、「ノッチ付シャルピ-衝撃強度」)は、単位をKJ/m2とし、表題「プラスチック-シャルピ-衝撃特性の判定、その1:非計装化衝撃試験」のISO179-1を使用して測定した。本明細書において使用される用語「ISO179」又は「179-1」は、2010年6月15(2015年に確認)日付で第二版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【0077】
多軸計装化衝撃(MAII)エネルギ-値は、単位をジュ-ル(J)とし、パ-センテ-ジ延性破壊モ-ドを記録し、表題「負荷及び変位センサを使用したプラスチックの高速穿刺特性の標準試験方法」のASTM D3763を使用して測定した。本明細書において使用される「ASTM D3763」という用語は、2015年9月1日付で証明され、2015年9月に公開された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。参照したASTMに対しては、ASTMのウェブサイト、wwwastm.orgを訪問するか、ASTMの顧客サ-ビスservice@astm.orgに連絡する。
【0078】
線形熱膨張係数(CLTE)を、射出成形プラ-クから切断された焼鈍試験片熱機械分析(TMA)によって測定した。-30℃~100℃の温度範囲(典型的温度は35℃)におけるCLTEの平均セカント値を、(10E-5mm/mm/℃)によって示す。平均セカント値は、流れ方向における3つのデ-タ点及び交差流れ方向における3つのデ-タ点の平均である。各デ-タ点は、表題「プラスチック-熱機械分析(TMA)、その2:線形熱膨張係数とガラス転移温度の判定」のISO11359-2を使用して測定した。本明細書において使用される「ISO11359-2」という用語は、1999年10月1(2015に再度確認)日付で第1版として出版された試験方法をいうものであり、その内容全体を参照として本明細書中に援用する。
【0079】
成形時収縮は、4×6×1/8インチのプラ-クを成形することによって測定し得、プラ-クを室温まで冷却し、48時間かけて再調整を行い、固定ゲ-ジを使用して平均収縮を測定した。
【0080】
焼成成形後収縮は、室温において、4×6×1/8インチに成形されたプラ-クを1時間の間、121℃の設定温度まで加熱し、室温に戻って再調整された(又は、室温において湿度を制御し、24時間放置することにより、安定化させた)後の平均収縮を固定ゲ-ジを使用して測定することにより測定され得る。
実施例
【0081】
以下の実施例は、添付の特許請求の範囲の実施形態を示すために記載される。当業者であれば、特定の実施形態において多数の変更が可能であり、本明細書中の開示の意図及び範囲から逸脱すること無く類似または同様の結果を得ることが可能であることを理解する。なお、以下の実施例において実施例1および実施例4は実施例ではなく、それぞれ参考例1および参考例4であるものとする。
【0082】
実施例1~4は、表1中に概要を示すような材料を用いて作製され、重量パ-セントは、組成物の総重量を用いて計算された。第1に、(表1に示すような)添加剤と、(組成物全体に基づいた)1重量パ-セント未満のタルクとの混合を低速オフラインリボンブレンダ-中において行った。事前混合により、添加剤の分布状態が向上し得、高粘性の可能性がある原材料の凝集の回避が支援され得る。次に、表2の処理条件に従って、添加剤配合物またはパッケ-ジを133mmセンチュリ-TS押出機により残りの成分と配合した。実施例それぞれにおいて、充填剤を主要フィ-ダ-を通じて供給した。実施例1にて、ポリオレフィンAを分割供給し、25重量%をサイドフィ-ダ-から供給し、17.25重量%を主要ホッパ-から供給した。実施例2及び3において、ポリオレフィンAを全てサイドフィ-ダ-から供給した。実施例1~4それぞれの組成物を配合し、ダイを通じた押出を行い、ペレット化させた後、表3中に羅列された多様な試験方法に従って試験を行った。
【表1】
【表2】
【表3】
【0083】
上記4つのサンプルそれぞれの試験結果を表3に記載する。記載のように、4個のサンプル全ての物性は、ポリプロピレンコポリマ-とエチレン系コポリマ-との間の相溶化剤に依存することによるポリオレフィン密度低減を試行したUS9,902,846に記載の従来の組成物に匹敵していた。ここで、デュアルエラストマ-のみを相溶化剤無しで用いた系の場合、自動車用途において(より良くはないにしろ)同様の特性の樹脂を得ることが可能であることが明らかである。相溶化剤は極めて高コストの化学物質であり、本開示の組成物の処理の時間は短くてすむため、このような組成物の変更はコスト節減にも繋がる。
【0084】
本明細書中に開示及び特許請求の範囲に記載の組成物、製造物品及び方法全ては、本開示を鑑みて過度の実験無く作製及び実行が可能である。本開示の組成物、製造物品及び方法について、特定の実施形態について述べてきたが、当業者にとって、これらの組成物、製造物品及び方法ならびに本明細書中に記載の方法のステップまたはステップの順序においける変更が添付の特許請求の範囲の概念、意図及び範囲から逸脱すること無く可能であることが明らかである。
【0085】
以下の記載において、例示的な手順または本明細書中の記載の補足としての他の詳細の範囲について言及するが、これらを本明細書中あらゆる目的のために参考のため明示的に援用する。
【0086】
米国特許第3,886,105号
【0087】
米国特許第5,589,555号
【0088】
米国特許第6,084,042号
【0089】
米国特許第9,902,846号
【0090】
米国特許公開第2015/0045479号
【0091】
WIPO PCT出願第WO2008/073401号
【0092】
WIPO PCT出願第WO2009/045351号
【0093】
Anderson, N.G., Practical Process Research & Development - A Guide for Organic Chemists, 2nd ed., Academic Press, New York, 2012.
【0094】
ASTM Standard D1238, “Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometer,” approved on August 1, 2013.
【0095】
ASTM Standard D5630, “Standard Test Method for Ash Content in Plastics,” approved on April 1, 2013.
【0096】
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【0097】
International Standard ISO 1183-1, “Plastics-Methods for Determining the Density of Non-Cellular Plastics-- Part 1: Immersion method, liquid pycnometer method and titration method,” second edition, May 15, 2012.
【0098】
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【0099】
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【0100】
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