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特許7118234太陽光発電設備の点検装置及び点検システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】太陽光発電設備の点検装置及び点検システム
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20220805BHJP
【FI】
H02S50/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021212581
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2021-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503320061
【氏名又は名称】株式会社エネルギア・コミュニケーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】空尾 英樹
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-146472(JP,A)
【文献】特開2018-078677(JP,A)
【文献】特開2016-052191(JP,A)
【文献】特開2019-075943(JP,A)
【文献】特開2019-053446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0190445(US,A1)
【文献】中国実用新案第207439960(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーパネルと、ジャンクションボックスと、前記ソーラーパネルと前記ジャンクションボックスとを接続するケーブルと、前記ケーブル同士を接続するコネクタと、を含む太陽光発電設備の点検装置であって、
自走式の本体部と、前記本体部に搭載された撮像部と、を有し、
前記本体部は、前記太陽光発電設備が設置される敷地内を自律走行可能であり、
前記本体部は、草刈り機能を備え、
前記撮像部は、赤外線カメラ装置、及び可視光カメラ装置を含み、
前記撮像部は、前記太陽光発電設備における前記ソーラーパネルの裏側から、前記太陽光発電設備を撮影可能である、太陽光発電設備の点検装置。
【請求項2】
前記撮像部は、ハイパースペクトルカメラ装置を含む、請求項1に記載の太陽光発電設備の点検装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の太陽光発電設備の点検装置と、
前記撮像部により撮影された画像を受信可能なサーバ装置と、を有し、
前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された赤外線画像と可視画像とを対比可能に出力する出力部を備える、太陽光発電設備の点検システム。
【請求項4】
前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された前記赤外線画像に含まれる温度情報、及び前記可視画像のうち少なくともいずれかに基づき、画像中の異常箇所の有無を判定する第1判定部を備え、
前記出力部は、前記第1判定部による異常箇所の判定結果を更に出力可能である、請求項に記載の太陽光発電設備の点検システム。
【請求項5】
前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された画像を機械学習することで画像中の異常箇所の有無を判定するためのモデルを出力する機械学習部と、
前記モデルに基づき、前記撮像部により撮影された画像中の異常箇所を判定する第2判定部と、を備え、
前記出力部は、前記第2判定部による異常箇所の判定結果を更に出力可能である、請求項に記載の太陽光発電設備の点検システム。
【請求項6】
前記太陽光発電設備の点検装置は、位置情報取得部を更に備え、
前記出力部は、前記位置情報取得部により取得された位置情報と、予め記憶された前記各ソーラーパネルの位置情報と、に基づき、前記撮像部により撮影されたソーラーパネルの位置情報を更に出力可能である、請求項のいずれかに記載の太陽光発電設備の点検システム。
【請求項7】
太陽光発電設備の点検装置と、サーバ装置と、を備える太陽光発電設備の点検システムであって、
前記太陽光発電設備は、ソーラーパネルと、ジャンクションボックスと、前記ソーラーパネルと前記ジャンクションボックスとを接続するケーブルと、前記ケーブル同士を接続するコネクタと、を含み、
前記太陽光発電設備の点検装置は、自走式の本体部と、前記本体部に搭載された撮像部と、を有し、
前記本体部は、前記太陽光発電設備が設置される敷地内を自律走行可能であり、
前記撮像部は、赤外線カメラ装置、及び可視光カメラ装置を含み、
前記撮像部は、前記太陽光発電設備における前記ソーラーパネルの裏側から、前記太陽光発電設備を撮影可能であり、
前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された画像を受信可能であり、
前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された赤外線画像と可視画像とを対比可能に出力する出力部を備える、太陽光発電設備の点検システム。
【請求項8】
前記撮像部は、ハイパースペクトルカメラ装置を含む、請求項7に記載の太陽光発電設備の点検システム。
【請求項9】
前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された前記赤外線画像に含まれる温度情報、及び前記可視画像のうち少なくともいずれかに基づき、画像中の異常箇所の有無を判定する第1判定部を備え、
前記出力部は、前記第1判定部による異常箇所の判定結果を更に出力可能である、請求項7に記載の太陽光発電設備の点検システム。
【請求項10】
前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された画像を機械学習することで画像中の異常箇所の有無を判定するためのモデルを出力する機械学習部と、
前記モデルに基づき、前記撮像部により撮影された画像中の異常箇所を判定する第2判定部と、を備え、
前記出力部は、前記第2判定部による異常箇所の判定結果を更に出力可能である、請求項7に記載の太陽光発電設備の点検システム。
【請求項11】
前記太陽光発電設備の点検装置は、位置情報取得部を更に備え、
前記出力部は、前記位置情報取得部により取得された位置情報と、予め記憶された前記各ソーラーパネルの位置情報と、に基づき、前記撮像部により撮影されたソーラーパネルの位置情報を更に出力可能である、請求項7~10のいずれかに記載の太陽光発電設備の点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電設備の点検装置及び点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再生可能エネルギーの一種として、太陽光を用いた発電システムが注目されている。太陽光発電設備で用いられるソーラーパネルは、屋外に設置されていることもあり、故障を未然に防ぐため、定期的に点検をする必要がある。大規模な太陽光発電設備であるメガソーラーには、膨大な数のソーラーパネルが設置されており、これらのソーラーパネルを効率よく点検するために、近年、飛行体を利用したソーラーパネルの点検方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-112499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、ドローン等の飛行体を用いて、メガソーラー施設等の太陽電池モジュールの異常個所(ホットスポット)を検出するものである。しかし、飛行体によりソーラーパネルの上面を撮影する場合、ソーラーパネルの上面には太陽電池モジュールを構成する部品が配置されていないため、詳細な異常箇所を特定することができないという課題がある。このため、太陽光発電設備に異常が発生した場合の緊急度や対応策を知るためには、実際に現場に赴く必要があり、手間とコストを要していた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、太陽光発電設備の詳細な異常箇所を遠隔から特定可能な太陽光発電設備の点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、太陽光発電設備の点検装置であって、自走式の本体部と、前記本体部に搭載された撮像部と、を有し、前記本体部は、自律走行が可能であり、前記撮像部は、赤外線カメラ装置、及び可視光カメラ装置を含み、前記撮像部は、前記太陽光発電設備におけるソーラーパネルの裏側から、前記太陽光発電設備を撮影可能である、太陽光発電設備の点検装置に関する。
【0007】
(1)の発明によれば、太陽光発電設備の詳細な異常箇所を遠隔から特定可能な太陽光発電設備の点検装置を提供できる。
【0008】
(2) 前記撮像部は、ハイパースペクトルカメラ装置を含む、(1)に記載の太陽光発電設備の点検装置。
【0009】
(2)の発明によれば、太陽光発電設備への錆の発生を更に検知できる。
【0010】
(3) 前記本体部は、草刈り機能を備える、(1)又は(2)に記載の太陽光発電設備の点検装置。
【0011】
(3)の発明によれば、太陽光発電設備が設置されている敷地内に草が生えている場合であっても、点検装置を移動させて点検を行うことができる。また、ソーラーパネルを草が覆うことによる出力の低下を抑制できる。
【0012】
(4) また、本発明は、(1)~(3)のいずれかに記載の太陽光発電設備の点検装置と、前記撮像部により撮影された画像を受信可能なサーバ装置と、を有し、前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された赤外線画像と可視画像とを対比可能に出力する出力部を備える、太陽光発電設備の点検システムに関する。
【0013】
(4)の発明によれば、太陽光発電設備の詳細な異常箇所を遠隔から特定可能な太陽光発電設備の点検システムを提供できる。
【0014】
(5) 前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された前記赤外線画像に含まれる温度情報、及び前記可視画像のうち少なくともいずれかに基づき、画像中の異常箇所の有無を判定する第1判定部を備え、前記出力部は、前記第1判定部による異常箇所の判定結果を更に出力可能である、(4)に記載の太陽光発電設備の点検システム。
【0015】
(5)の発明によれば、太陽光発電設備の詳細な異常箇所をより容易に特定することができる。
【0016】
(6) 前記サーバ装置は、前記撮像部により撮影された画像を機械学習することで画像中の異常箇所の有無を判定するためのモデルを出力する機械学習部と、前記モデルに基づき、前記撮像部により撮影された画像中の異常箇所を判定する第2判定部と、を備え、前記出力部は、前記第2判定部による異常箇所の判定結果を更に出力可能である、(4)に記載の太陽光発電設備の点検システム。
【0017】
(6)の発明によれば、太陽光発電設備の詳細な異常箇所をより容易に特定することができる。
【0018】
(7) 前記太陽光発電設備の点検装置は、位置情報取得部を更に備え、前記出力部は、前記位置情報取得部により取得された位置情報と、予め記憶された前記各ソーラーパネルの位置情報と、に基づき、前記撮像部により撮影されたソーラーパネルの位置情報を更に出力可能である、(4)~(6)のいずれかに記載の太陽光発電設備の点検システム。
【0019】
(7)の発明によれば、異常が発生した太陽光発電設備に対する対応を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る太陽光発電設備の点検装置の概要を示す図である。
図2】第1実施形態に係る太陽光発電設備の点検装置の構成を示す側面図である。
図3】第2実施形態に係る太陽光発電設備の点検装置の構成を示す図である。
図4】第3実施形態に係る太陽光発電設備の点検装置の構成を示す図である。
図5A】本実施形態に係る太陽光発電設備の点検装置で撮影された赤外線画像を示す図である。
図5B】本実施形態に係る太陽光発電設備の点検装置で撮影された可視画像を示す図である。
図6】第1実施形態に係る太陽光発電設備の点検システムの機能を示すブロック図である。
図7】第2実施形態に係る太陽光発電設備の点検システムの機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<太陽光発電設備の点検装置>
《第1実施形態》
本実施形態に係る太陽光発電設備の点検装置(以下、「点検装置」と記載する場合がある)1は、図1及び図2に示すように、太陽光発電設備SをソーラーパネルS1の裏側から点検する装置であり、本体部2と、本体部2に搭載される撮像部3と、を有する。点検装置1は自走式の点検装置であり、自律走行が可能である。
【0022】
点検装置1の点検対象である太陽光発電設備Sは、図2に示すように、例えば、ソーラーパネルS1と、ジャンクションボックスS2と、ケーブルS3と、ケーブルS3同士を接続するコネクタS4と、架台S5と、を有する。太陽光発電設備Sの異常発熱原因としては、ソーラーパネルS1自体が故障している場合に加え、バイパスダイオードが内蔵されたジャンクションボックスS2が故障して発熱している場合や、設計や施工ミスによるケーブルS3やコネクタS4の接続状況の不良によって発熱している場合等が挙げられる。しかし、ジャンクションボックスS2、ケーブルS3、コネクタS4は、ソーラーパネルS1の裏面側に配置されている。このため、仮にドローン等の飛行体を用いて、上方から太陽光発電設備Sを撮影した場合、ソーラーパネルS1以外の発熱状況を検出することが困難である。例えば、ジャンクションボックスS2内のバイパスダイオードに異常がある場合であっても、バイパスダイオードにより分岐されたソーラーパネルS1の異常は検知することができるが、ジャンクションボックスS2自体の異常発熱は、仮に検知できた場合であっても発熱状態の見え方が不明確であり、発熱状態によっては全く検知できない場合もあり得る。本実施形態に係る点検装置1は、撮像部3によりソーラーパネルS1の裏側から太陽光発電設備Sを撮影することで、太陽光発電設備Sの詳細な異常箇所を遠隔から特定することができる。
【0023】
(本体部)
本体部2は、図1及び図2に示すように、ソーラーパネルS1を保持する架台S5の下部に侵入可能である。本体部2は、図2に示すように、複数の駆動輪21aと、駆動輪21aを駆動するモータ(後述する駆動部21)を有する。本体部2は、後述する制御部20により駆動輪21aの回転方向、回転速度等を自律制御する。これにより、点検装置1の自律走行が可能となる。駆動輪21aの構成は特に限定されず、図2に示すような車輪(タイヤ)からなる駆動輪21aに代えて、クローラ等の無限軌道を採用してもよい。本体部2は、例えば、外周面に障害物を検知するセンサ装置を備えていてもよい。上記センサ装置は、障害物が本体部2に対して所定の距離まで近づいたときに障害物の存在を検知する。本体部2は、上記以外に、点検装置1の位置情報を取得可能なGPS装置、及び撮像部3で撮影された太陽光発電設備Sの画像又は動画を記憶する記憶装置を有していてもよい。上記記憶装置により記憶された画像又は動画は、ローカル無線通信、近距離無線通信、メモリーカード等を介して外部のコンピュータ等の機器に出力可能であってもよい。又は、上記の画像又は動画は、点検装置1が以下に述べるサーバ装置10と通信可能に連携されることで、サーバ装置10に対して出力可能であってもよい。
【0024】
(撮像部)
撮像部3は、例えば本体部2の上部に搭載されることで、ソーラーパネルS1の裏側から太陽光発電設備Sの画像又は動画を撮影可能な装置である。撮像部3は、赤外線カメラ装置31及び可視光カメラ装置32を含む。撮像部3は、上記以外に、ハイパースペクトルカメラ装置を含んでいてもよい。
【0025】
赤外線カメラ装置31は、点検対象である太陽光発電設備Sから放出される赤外線帯域のエネルギーを検出し、温度に変換して温度分布情報を示す画像(赤外光画像)を生成する。同様に、可視光カメラ装置32は、点検対象である太陽光発電設備Sの可視光画像を撮影する。
【0026】
ハイパースペクトルカメラ装置は、多波長の情報を取得するカメラ装置であり、高度に分光された画像(分光画像)を解析することで、撮影対象物の詳細な物性を把握することができる。本実施形態においては、ハイパースペクトルカメラ装置は、太陽光発電設備Sの各部材に発生した錆を検出する目的で用いられる。
【0027】
これらの赤外線カメラ装置31、可視光カメラ装置32、及びハイパースペクトルカメラのレンズは、本体部2の上方に並置され、鉛直方向上方に向いているため、同一のタイミングで略同一の視野における、太陽光発電設備Sの赤外光画像、可視光画像、分光画像を取得することができる。このため、点検装置1の使用者は、撮像部3から取得した画像を比較して、発熱している部材や錆が発生している部材(例えば、ジャンクションボックスS2)を容易に特定することができる。
【0028】
次に、本発明の他の実施形態に係る点検装置について説明する。第1実施形態と同様の構成については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0029】
《第2実施形態》
第2実施形態に係る点検装置1aは、図3に示すように、一対の草刈刃4を有する。草刈刃4は、本体部2の下面に回転可能に装着され、駆動モータ等により駆動される。草刈刃4の形状および数は特に限定されず、円盤状、バリカン状等の形状を有していてもよい。
【0030】
点検装置1aは、草刈刃4を有することで、太陽光発電設備Sが設置される敷地内に草が生えている場合であっても、草刈刃4を駆動させて移動の障害となる草を刈り取ることで、ソーラーパネルS1を保持する架台S5の下部に侵入することができる。このため、太陽光発電設備Sの下部や周囲に草が生えている場合であっても、ソーラーパネルS1の裏側の画像を撮影することができる。また、太陽光発電設備Sが設置される敷地内に生える草が陰になることで、ソーラーパネルS1への日射が遮られる場合があるが、点検装置1aにより草を刈り取ることで日射を確保できる。点検装置1aは、草刈刃4に代えて、除草剤を散布する除草剤散布装置を備えていてもよい。或いは、点検装置1aは、草刈刃4、及び除草剤散布装置をいずれも備えていてもよい。
【0031】
《第3実施形態》
第3実施形態に係る点検装置1bは、図4に示すように、移動手段として駆動輪21aに代えて多足歩行機構21bを備える。多足歩行機構21bは、特に限定されないが、例えば、4つの脚機構からなる移動体を有する。各脚機構は、例えば回動自在に取り付けられる上肢部及び下肢部を含み、各脚機構に備えられるシリンダによって伸縮駆動されることで歩行動作を行う。点検装置1bは、駆動輪21aに代えて多足歩行機構21bを備えることで、敷地内にタイヤやクローラでは走行不可能な段差、斜面、溝等がある場合や、敷地内に草が生えている場合であっても走行することができる。点検装置1bは、点検装置1及び1aと同様に自律走行が可能である。
【0032】
点検装置1bは、図4に示すように、撮像部3が先端側に装着されたアーム34を有する。アーム34は、例えば、本体部2に対して旋回自在に取り付けられる肩部と、肩部の軸回りに回動自在に取り付けられる上腕部と、上腕部の先端に回動自在に取り付けられるヘッド部と、からなる。ヘッド部の先端に撮像部3が取り付けられることで、本体部2がソーラーパネルS1の直下に移動せずとも、ソーラーパネルS1の真下から画像を撮影することが可能となる。従って、ソーラーパネルS1の下部に本体部2が入り込むスペースがない場合であっても、ソーラーパネルS1の裏側から太陽光発電設備Sを撮影することができる。
【0033】
<太陽光発電設備の点検システム>
《第1実施形態》
次に、上記で説明した点検装置を外部のサーバ装置10と連携させてなる、太陽光発電設備の点検システム100について、図6を参照して説明する。
【0034】
図6は、点検装置1c及びサーバ装置10が主に備える機能を示すブロック図である。なお、以下に記載する点検装置1c、及び1dの説明は、点検装置の各機能に対する説明であり、上述の点検装置1、1a及び1bが有する機能の説明でもある。図6に示すように、点検装置1cは、制御部20と、駆動部21と、記憶部22と、赤外線撮像部31と、可視撮像部32と、位置情報取得部5と、通信部6と、を備える。
【0035】
制御部20は、駆動部21を介し、駆動輪21aの回転方向、回転速度等を自律制御する。制御部20は、例えば、本体部2に搭載されるセンサ装置の検知結果に基づいて、障害物を回避して走行するように駆動輪21aを自律制御する。制御部20は、予め記憶された太陽光発電設備Sが設置された敷地内の地図と点検装置1の位置情報とに基づいて、所定のルートで走行するように駆動輪21aを自律制御してもよい。上記以外に、制御部20は、例えば、本体部2がソーラーパネルS1の直下に位置した際に、ソーラーパネルS1の裏側から画像の撮影を行うよう撮像部3を制御してもよい。なお、点検装置1a又は1bをサーバ装置10と連携させる場合、制御部20は、上述の多足歩行機構21b、草刈刃4、及びアーム34の動作を制御する。
【0036】
駆動部21は、駆動輪21a、及び上述の多足歩行機構21b、草刈刃4、アーム34を動作させるモータ等の装置からなる。
【0037】
記憶部22は、太陽光発電設備Sが設置された敷地内の地図や、撮像部3により撮影された画像を記憶する。記憶部22は、本体部2に搭載されるセンサ装置の検知結果に基づいて生成される地図を記憶してもよい。
【0038】
赤外線撮像部31と、可視撮像部32と、位置情報取得部5とは、それぞれ上述した赤外線カメラ装置31と、可視光カメラ装置32と、GPS装置とに、それぞれこの記載順で対応する。
【0039】
通信部6は、通信回線71等の通信手段を通じて外部と通信可能に構成される。通信回線71は有線又は無線の通信手段であり、例えばインターネット7と接続可能に構成される。即ち、点検装置1cとサーバ装置10とは、インターネット7を介して通信可能である。上記以外に、点検装置1cとサーバ装置10とは、インターネット7を介さず直接通信可能であってもよい。通信部6により、撮像部3により撮影された画像及び位置情報取得部5により取得された点検装置1cの位置情報等がサーバ装置10に送信される。また、通信部6により、サーバ装置10から送信される点検装置1cの制御情報が受信可能であってもよい。すなわち、点検システム100の使用者(以下、「使用者」と記載する場合がある)が、遠隔で点検装置1cの走行、撮像部3による撮影等を操作可能であるように点検システム100を構成してもよい。
【0040】
サーバ装置10は、図6に示すように、記憶部11と、入力部12と、出力部13と、第1判定部16と、通信部17と、を備える。サーバ装置10のハードウェア構成は、特に限定されず、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、操作部、表示装置等を有するパーソナルコンピュータ等により構成することができる。
【0041】
記憶部11は、通信部6から受信した、撮像部3により撮影された画像を記憶する。また、記憶部11は、敷地内に配置される複数の太陽光発電設備Sの位置情報を記憶していてもよい。
【0042】
入力部12は、使用者が点検装置1cを遠隔制御する際の制御情報の入力や、後述する機械学習部14に入力される学習用データの処理に用いられる。入力部12は、特に制限されず、コンピュータに通信可能に接続されるキーボード、マウス、タッチパネル等が用いられる。
【0043】
出力部13は、通信部6から受信した、撮像部3により撮影された赤外線画像と可視画像とを対比可能に出力する。出力部13は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置により構成される。図5A及び図5Bに、撮像部3により撮影された赤外線画像IAと可視画像IBの例を示す。図5Aは赤外線画像IAであり、温度情報を含む画像である。赤外線画像IAには、所定の温度帯R1~R4毎に着色された温度分布が示されている(温度:R4>R3>R2>R1)。図5Bは可視画像IBであり、太陽光発電設備Sを構成する各部品S1~S5が撮像されている。図5A及び図5Bは、略同一の視点から撮影された赤外線画像IA及び可視画像IBである。出力部13は、例えば、上記赤外線画像IA及び可視画像IBを対比可能に並べて出力(表示)できる。このため、使用者は、赤外線画像IAと可視画像IBとを見比べることで、S1~S5のいずれの部品が発熱しているかを判別することができる。上記以外に、出力部13は、例えば上記赤外線画像IA及び可視画像IBのうちいずれかを透過画像に変換し、対比可能に重複させて出力(表示)してもよい。
【0044】
図5A及び図5Bの例では、図5Aにおける最も高い温度帯R4の箇所は図5BにおけるジャンクションボックスS2の箇所に対応するため、ジャンクションボックスS2が発熱していることが判別できる。
【0045】
出力部13は、位置情報取得部5により取得された点検装置1の位置情報と太陽光発電設備Sの位置情報を照合し、撮影された画像に対応する太陽光発電設備Sを特定する位置情報(番号や位置座標など)を出力可能であってもよい。これにより、異常が発生した太陽光発電設備Sを特定し、迅速に対応を行うことができる。
【0046】
第1判定部16は、赤外線画像IAに含まれる温度情報、及び可視画像IBのうち少なくともいずれか基づき、画像中の異常箇所の有無を判定する。第1判定部16は、例えば、赤外線画像IAにおいて、予め定められた閾値を超える温度を含む所定以上の大きさを有する領域が存在する場合には、その領域を赤外線画像IA中の異常箇所である、と判定してもよい。第1判定部16は、更に、可視画像IB中の異常箇所を判定する判定部であってもよいし、上記を組み合わせてもよい。可視画像IB中の異常箇所の判定は、例えば、後述するような機械学習部を使用して出力される学習済モデル(例えば、機械学習により画像中の錆の発生箇所の有無を判定できる学習済モデル)に基づいて行うことができる。第1判定部16により特定された赤外線画像IA中の異常箇所は、出力部13により、可視画像IB中の対応する箇所に異常箇所として出力されてもよい。これにより、使用者は、可視画像IB中の異常箇所の出力結果から、太陽光発電設備Sの異常が発生している部品を容易に特定できる。
【0047】
通信部17は、通信回線72等の通信手段を通じて外部と通信可能に構成される。通信回線72は有線又は無線の通信手段であり、例えばインターネット7と接続可能に構成される。通信部17により、撮像部3により撮影された画像及び位置情報取得部5により取得された点検装置1の位置情報等がサーバ装置10に受信される。通信部17は、インターネット7を介さずに、直接通信部6と通信可能であってもよい。
【0048】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態に係る太陽光発電設備の点検システム100aの構成について、図7を参照して説明する。太陽光発電設備の点検システム100aは、点検装置1dと、サーバ装置10aとが通信可能に連携されてなる。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0049】
図7は、点検装置1d及びサーバ装置10aが主に備える機能を示すブロック図である。図7に示すように、点検装置1dは、制御部20と、駆動部21と、記憶部22と、赤外線撮像部31と、可視撮像部32と、ハイパースペクトル撮像部33と、位置情報取得部5と、通信部6と、を備える。
【0050】
点検装置1dが備えるハイパースペクトル撮像部33は、上述のハイパースペクトルカメラ装置に対応する。出力部13により出力される画像には、ハイパースペクトル撮像部33により撮影された分光画像が含まれていてもよい。これにより、異常発熱の段階には達しないものの、錆が発生している部品を特定することができ、故障が発生する前にメンテナンス等の対応を行うことが可能となる。上記分光画像は、赤外線画像及び可視画像と対比可能に出力される。
【0051】
サーバ装置10aは、図7に示すように、機械学習部14と、画像処理部15と、第2判定部16aと、を備える。
【0052】
機械学習部14は、撮像部3により撮影された赤外線画像と可視画像とを機械学習することで画像中の異常箇所の有無を判定するためのモデルを出力する。機械学習部14は、例えば、略同一視点から撮影された一組の赤外線画像(及び分光画像)、並びに可視画像から生成された正解データを使用して、画像中の異常箇所の有無を判定するためのモデルの学習を行う。機械学習部14は、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等のモデルを構築する。CNNは、入力層、中間層、及び出力層を備える。入力層には、学習対象である上記一組の画像、及び正解データが入力される。中間層は、入力層に入力された画像から特徴を検出する層である。出力層は、中間層により抽出された特徴に基づいて、画像中の異常箇所の有無の認識結果を出力する層である。CNNは、複数のレイヤー構造を有し、複数の重みパラメータを保持している。上記重みパラメータが初期値から最適値に更新されることで、学習前モデルは学習済モデルに変化する。
【0053】
画像処理部15は、機械学習部14に入力される画像データの画像処理を行う。画像処理としては、例えば、サイズ変換、色彩変換、ノイズ除去等が挙げられる。
【0054】
第2判定部16aは、機械学習部14により構築された学習済モデルを用いて、撮像部3により撮影された画像の異常箇所の有無及び場所を判定する。第2判定部16aによる判定結果は、撮像部3により撮影された画像と共に、出力部13により出力される。出力部13は、第2判定部16aによる判定結果に基づき、例えば図5BにおけるマーカMのように、異常箇所の判定結果を出力可能であってもよい。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【0056】
上記太陽光発電設備の点検システムの各実施形態の説明において、第1判定部16、及び第2判定部16aは、太陽光発電設備の点検システム100、及び100aにそれぞれ備えられるものとして説明した。上記に限定されない。上記第1判定部16、第2判定部16aは、同一の太陽光発電設備の点検システムにいずれも備えられていてもよい。
【0057】
上記第2実施形態に係る太陽光発電設備の点検システム100aは、ハイパースペクトル撮像部33を備えるものとして説明したが、ハイパースペクトル撮像部33は第1実施形態に係る太陽光発電設備の点検システム100に備えられていてもよいし、第2実施形態に係る太陽光発電設備の点検システム100aに備えられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1、1a、1b、1c、1d 太陽光発電設備の点検装置
10、10a サーバ装置
100、100a 太陽光発電設備の点検システム
2 本体部
3 撮像部
31 赤外線カメラ装置
32 可視光カメラ装置
4 草刈刃(草刈り機能)
13 出力部
14 機械学習部
16 第1判定部
16a 第2判定部
【要約】
【課題】太陽光発電設備の詳細な異常箇所を遠隔から特定可能な太陽光発電設備の点検装置を提供すること。
【解決手段】太陽光発電設備の点検装置であって、自走式の本体部と、本体部に搭載された撮像部と、を有し、本体部は、自律走行が可能であり、撮像部は、赤外線カメラ装置、及び可視光カメラ装置を含み、撮像部は、太陽光発電設備におけるソーラーパネルの裏側から、太陽光発電設備を撮影可能である、太陽光発電設備の点検装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7