(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】素子モジュール
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20220805BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20220805BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
H05K7/20 Q
H01L23/46 Z
F28D15/02 M
(21)【出願番号】P 2021531934
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2019047562
(87)【国際公開番号】W WO2021111575
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】古谷 峻千
(72)【発明者】
【氏名】加々美 明
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-022293(JP,A)
【文献】特開2000-269393(JP,A)
【文献】特開2018-129489(JP,A)
【文献】特開2011-018847(JP,A)
【文献】特開2016-213945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/473
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の両側に設けられた第1素子配置部及び第2素子配置部を有するとともに、前記第1素子配置部と前記第2素子配置部との間の内部に冷媒を貯留する冷媒貯留部を有する冷却器と、
前記第1素子配置部及び前記第2素子配置部の各々に配置され、トランジスタを含む複数の素子と、
前記第1素子配置部及び前記第2素子配置部の各々での前記複数の素子間で前記冷却器を貫通することによって前記第1素子配置部及び前記第2素子配置部を通じさせる空間部に配置されるとともに、前記第1素子配置部の前記素子と前記第2素子配置部の前記素子とに接続される導電部材と、
前記第1素子配置部及び前記第2素子配置部の各々対向側とは反対側に配置され、前記複数の素子が接続される複数の導体板と、
各前記トランジスタのゲートに接続される複数のゲート線と、
を備え、
前記空間部は前記冷媒貯留部での前記冷媒の流動方向に沿って長いスリット状に形成されており、
前記第1素子配置部及び前記第2素子配置部の各々は、前記空間部を挟んで前記冷媒の流動方向と直交する方向の両側に2つの部位に区分けされており、これにより前記冷媒貯留部を2つ有し、
各前記トランジスタは、区分けされた前記第1素子配置部及び前記第2素子配置部の各々の部位に、前記冷媒の流動方向に沿って一
列に配置されており、
前記複数のゲート線は、各前記導体板での電流経路と交差している
素子モジュール。
【請求項2】
前記冷却器は、2つの前記複数の冷媒貯留部の端部で内部を通じさせる連結部を備える
請求項1に記載の素子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定方向で向かい合う2つの発熱体の間に配置された冷却器がある。例えば1対の半導体素子が所定方向の両側の表面に取り付けられた冷却器は、内部の冷媒によって両側の表面の各半導体素子を冷却する。
しかしながら、冷却器の両側の表面に配置された複数の半導体素子を電気的に接続する場合に接続経路が長くなると、電気的特性が低下する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、冷却器に配置された複数の素子の接続に起因する電気的特性の劣化を抑制することができる素子モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の素子モジュールは、冷却器と、複数の素子と、導電部材と、複数の導体板と、複数のゲート線と、を備える。冷却器は、所定方向の両側に設けられた第1素子配置部及び第2素子配置部を有するとともに、前記第1素子配置部と前記第2素子配置部との間の内部に冷媒を貯留する冷媒貯留部を有する。複数の素子は、第1素子配置部及び第2素子配置部の各々に配置され、トランジスタを含む。導電部材は、冷却器の空間部に配置される。空間部は、第1素子配置部及び第2素子配置部の各々での複数の素子間で冷却器を貫通する。空間部は、第1素子配置部及び第2素子配置部を通じさせる。導電部材は、第1素子配置部の素子と第2素子配置部の素子とに接続される。複数の導体板は、第1素子配置部及び第2素子配置部の各々対向側とは反対側に配置され、複数の素子が接続される。複数のゲート線は、トランジスタのゲートに接続される。空間部は、冷媒貯留部での冷媒の流動方向に沿って長いスリット状に形成されている。第1素子配置部及び第2素子配置部の各々は、空間部を挟んで冷媒の流動方向と直交する方向の両側に2つの部位に区分けされている。これにより、冷媒貯留部を2つ有する。各トランジスタは、区分けされた第1素子配置部及び第2素子配置部の各々の部位に、冷媒の流動方向に沿って一列に配置されている。複数のゲート線は、各導体板での電流経路と交差している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の素子モジュールの導体板を省略した斜視図。
【
図2】実施形態の素子モジュールの冷却器を省略した斜視図。
【
図3】実施形態の素子モジュールの導体板を省略してX軸方向から見た図。
【
図4】実施形態の素子モジュールの導体板を省略してY軸方向から見た図。
【
図5】実施形態の素子モジュールの導体板と導電部材とを示す斜視図。
【
図6】実施形態の素子モジュールの冷却器を省略してY軸方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の素子モジュールを、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の素子モジュール10の導体板13を省略した斜視図である。
図2は、実施形態の素子モジュール10の冷却器11を省略した斜視図である。
図3は、実施形態の素子モジュール10の導体板13を省略してX軸方向から見た図である。
図4は、実施形態の素子モジュール10の導体板13を省略してY軸方向から見た図である。
図5は、実施形態の素子モジュール10の導体板13と導電部材14とを示す斜視図である。
図6は、実施形態の素子モジュール10の冷却器11を省略してY軸方向から見た図である。
図7は、実施形態の素子モジュール10の回路図である。
【0009】
以下において、3次元空間で互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向は、各軸に平行な方向である。例えば、素子モジュール10の前後方向は、X軸方向と平行である。素子モジュール10の左右方向は、Y軸方向と平行である。素子モジュール10の上下方向は、Z軸方向と平行である。
【0010】
実施形態の素子モジュール10は、例えばモータ駆動装置に搭載される電力変換部等を構成するパワーモジュールである。
図1、
図2、
図3、
図4、
図5及び
図6に示すように、実施形態の素子モジュール10は、冷却器11と、冷却器11に設けられる複数の半導体素子12、複数の導体板13、複数の導電部材14、及び複数の絶縁部材15と、を備える。
【0011】
冷却器11は、例えば冷媒による気化冷却を行う沸騰冷却器である。冷却器11は、液体の冷媒を貯留する冷媒槽21と、冷媒槽21に接続された凝縮器22と、を備える。
冷媒槽21の外形は、例えば矩形箱型である。冷媒槽21には、厚さ方向(つまりY軸方向)の両側の表面21A,21Bに、1対の第1素子配置部23及び第2素子配置部24が形成されている。
【0012】
第1素子配置部23及び第2素子配置部24の各々は、冷媒槽21の中央部を厚さ方向に貫通する貫通孔25によって2つの部位に区分されている。各2つの部位は、第1素子配置部23の第1部位23a及び第2部位23bと、第2素子配置部24の第1部位24a及び第2部位24bと、である。
各部位23a,23b,24a,24bには、後述する複数の半導体素子12による同一構成の素子群31が配置されている。例えば、第1部位23a及び第2部位23b並びに第1部位24a及び第2部位24bには、4並列の素子群31が配置されている。4並列の素子群31は、例えばコモンコンバータ等として作動する。
【0013】
貫通孔25の外形は、例えば冷媒槽21で上下方向(Z軸方向)に延びるスリット状である。冷媒槽21は、貫通孔25によって区分される第1冷媒貯留部26及び第2冷媒貯留部27を備える。第1冷媒貯留部26には、厚さ方向の両側の表面に、第1素子配置部23の第1部位23a及び第2素子配置部24の第1部位24aが形成されている。第2冷媒貯留部27には、厚さ方向の両側の表面に、第1素子配置部23の第2部位23b及び第2素子配置部24の第2部位24bが形成されている。
【0014】
冷媒槽21は、上下方向の下部で第1冷媒貯留部26及び第2冷媒貯留部27の互いの内部を通じさせる連結部28を備える。
冷媒槽21の冷媒は、第1素子配置部23及び第2素子配置部24を介して複数の半導体素子12から受ける熱によって沸騰し、各半導体素子12を気化冷却する。冷媒槽21で沸騰した冷媒の蒸気は、上下方向の上方に流動して凝縮器22に流入する。冷媒槽21での冷媒の蒸気の流動方向Fは上下方向の下方から上方に向かう方向である。
【0015】
凝縮器22は、冷媒槽21の上下方向の上部に配置されている。例えば、凝縮器22は、放熱フィン(図示略)等を備える。凝縮器22は、冷却風によって冷却される。冷媒槽21から凝縮器22に流入した冷媒の蒸気は、放熱によって凝縮する。凝縮器22で凝縮した冷媒(凝縮液)は上下方向の下方に流動して冷媒槽21に流入する。
【0016】
複数の半導体素子12は、例えばトランジスタ及びダイオード等である。素子群31を構成する複数の半導体素子12は、例えば4つのトランジスタと6つのダイオードとである。4つのトランジスタは、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2、第3トランジスタQ3及び第4トランジスタQ4である。6つのダイオードは、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3、第4ダイオードD4、正極側ダイオードDP及び負極側ダイオードDNである。
【0017】
例えば、各部位23a,23b,24a,24bの素子群31では、上下方向の上方から下方かに向かって、第1トランジスタQ1及び第1ダイオードD1と、第2トランジスタQ2及び第2ダイオードD2と、正極ダイオードDP及び負極ダイオードDNと、第3トランジスタQ3及び第3ダイオードD3と、第4トランジスタQ4及び第4ダイオードD4とが順次に配置されている。
【0018】
図7に示すように、各トランジスタQ1,Q2,Q3,Q4は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子である。各トランジスタQ1,Q2,Q3,Q4は、コレクタ-エミッタ間でエミッタからコレクタに向けて順方向となる各ダイオードD1,D2,D3,D4と接続されている。
【0019】
第1トランジスタQ1のコレクタは、正極端子32に接続されている。第1トランジスタQ1のエミッタは、第2トランジスタQ2のコレクタに接続されている。第1トランジスタQ1のエミッタと第2トランジスタQ2のコレクタとの接続点は、正極ダイオードDPのカソードに接続されている。
【0020】
第2トランジスタQ2のエミッタと第3トランジスタQ3のコレクタとは、入出力端子33に接続されている。第3トランジスタQ3のエミッタは、第4トランジスタQ4のコレクタに接続されている。第3トランジスタQ3のエミッタと第4トランジスタQ4のコレクタとの接続点は、負極ダイオードDNのアノードに接続されている。第4トランジスタQ4のエミッタは、負極端子34に接続されている。正極ダイオードDPのアノードと負極ダイオードDNのカソードとは、基準端子35に接続されている。
【0021】
図2及び
図6に示すように、複数の導体板13は、例えば、第1素子配置部23側及び第2素子配置部24側の各々に設けられる正極導体板13P、入出力導体板13S、負極導体板13N及び基準導体板13Eである。各導体板13P,13S,13N,13Eは、第1素子配置部23側及び第2素子配置部24側の各々でX-Z平面と平行に配置されている。各導体板13P,13S,13N,13Eは、複数の素子群31に対して左右方向(Y軸方向)の外方に配置されている。
【0022】
各導体板13P,13S,13N,13Eの外部機器(図示略)との接続端子は、上下方向の上方又は下方に設けられている。各導体板13P,13S,13N,13Eでの電流経路は、上下方向と平行である。各導体板13P,13S,13N,13Eに接続される外部機器は、例えば外部電源及び外部モータ等である。例えば、外部モータに接続される入出力導体板13Sの接続端子13Saは上下方向の上方に設けられている。
【0023】
図7に示すように、正極導体板13Pは、各素子群31の正極端子32と外部直流電源(図示略)の正極Pに接続されている。入出力導体板13Sは、各素子群31の交流(AC)Iの入出力用の入出力端子33と外部モータ(図示略)とに接続されている。負極導体板13Nは、各素子群31の負極端子34と外部直流電源(図示略)の負極Nに接続されている。基準導体板13Eは、各素子群31の基準端子35と外部直流電源(図示略)の基準電位点とに接続されている。基準電位点は、例えばゼロVの電位点である。
【0024】
図2及び
図5に示すように、複数の導電部材14の各々の外形は、例えば棒状である。複数の導電部材14は、貫通孔25に配置されている。複数の導電部材14は、第1素子配置部23の2つの素子群31と第2素子配置部24の2つの素子群31とで互いに同一の接続点、端子及び半導体素子12等を等電位に接続する。同一の端子は、例えば、正極端子32、入出力端子33、負極端子34及び基準端子35等である。
【0025】
複数の絶縁部材15は、例えば2つの絶縁シートである。2つの絶縁部材15は、貫通孔25に配置されている。2つの絶縁部材15は、貫通孔25内で前後方向(X軸方向)の両側から複数の導電部材14を挟み込んでいる。第1の絶縁部材15は、第1素子配置部23及び第2素子配置部24の各第1部位23a,24aの素子群31と複数の導電部材14との間に配置されている。第2の絶縁部材15は、第1素子配置部23及び第2素子配置部24の各第2部位23b,24bの素子群31と複数の導電部材14との間に配置されている。なお、絶縁部材15は、貫通孔25と導電部材14との隙間が十分空いており、絶縁状態にある場合には設けなくてもよい。
【0026】
図6に示すように、素子モジュール10は、各トランジスタQ1,Q2,Q3,Q4のゲートに接続される複数のゲート線41を備える。複数のゲート線41は、少なくとも素子モジュール10の周辺で各導体板13P,13S,13N,13Eでの電流経路と直交し、前後方向と平行に配置されている。
【0027】
以上説明した実施形態によれば、冷媒槽21の貫通孔25に配置される複数の導電部材14を備えることにより、第1素子配置部23の複数の素子群31と第2素子配置部24の複数の素子群31との接続に起因する電気的特性の劣化を抑制することができる。例えば、貫通孔25に配置される複数の導電部材14を持たない場合に比べて、冷媒槽21の両側の表面21A,21Bに配置された複数の素子群31を接続する際に冷媒槽21の迂回等によって電流経路が長くなることを抑止することができる。
【0028】
複数の導電部材14は、各第1部位23a,24aの素子群31と各第2部位23b,24bの素子群31との間の貫通孔25に配置されることにより、第1冷媒貯留部26及び第2冷媒貯留部27の各内部での冷媒の流動が妨げられることを抑制することができる。貫通孔25の外形は、冷媒槽21での冷媒の蒸気の流動方向F(つまり上下方向)に延びるスリット状であることによって、冷媒の流れの阻害を抑制することができる。
1つの貫通孔25に配置される複数の導電部材14を持つことによって、例えば複数の貫通孔の各々に配置される導電部材14を持つ場合等に比べて、各導電部材14の発熱による導電部材14及び周辺部の温度上昇を抑制することができる。
【0029】
冷媒槽21は、上下方向の下部で第1冷媒貯留部26及び第2冷媒貯留部27の互いの内部を通じさせる連結部28を持つことにより、冷媒槽21の内部で冷媒の分布が不均一になることを抑制することができる。
各導体板13P,13S,13N,13Eでの電流経路と直交する複数のゲート線41を持つことにより、磁界の影響を低減し、電流のアンバランスを低減することができる。
【0030】
以下、変形例について説明する。
上述した実施形態において、冷却器11は沸騰冷却器に限定されず、他の冷却器でもよい。他の冷却器は、例えば内部を流れる低温の冷媒によって冷却するコールドプレート等である。
上述した実施形態において、冷媒槽21の貫通孔25は1つに限定されず、冷媒槽21に複数の貫通孔25が形成されてもよい。
【0031】
上述した実施形態において、冷媒槽21の両側の表面21A,21Bに配置される複数の素子群31は4並列に限定されず、例えば4並列よりも多数等の他の並列数でもよい。
上述した実施形態において、素子群31は、4つのトランジスタと6つのダイオードを備えるとした。しかしながらこれに限定されず、適宜の個数及び種類の半導体素子12を備えてもよい。
【0032】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、冷媒槽21の貫通孔25に配置される複数の導電部材14を持つことにより、第1素子配置部23の複数の素子群31と第2素子配置部24の複数の素子群31との接続に起因する電気的特性の劣化を抑制することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
10…素子モジュール、11…冷却器、12…半導体素子、13…導体板、14…導電部材、15…絶縁部材、21…冷媒槽、22…凝縮器、23…第1素子配置部、24…第2素子配置部、25…貫通孔、26…第1冷媒貯留部、27…第2冷媒貯留部、28…連結部、31…素子群