(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】順化評価装置、順化評価方法、順化評価用のコンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
G16H 50/50 20180101AFI20220808BHJP
G06Q 10/10 20120101ALI20220808BHJP
【FI】
G16H50/50
G06Q10/10 324
(21)【出願番号】P 2018134748
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】521311078
【氏名又は名称】割石 浩幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【氏名又は名称】佐藤 武史
(73)【特許権者】
【識別番号】501200642
【氏名又は名称】田中 毅弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅弘
(72)【発明者】
【氏名】割石 浩幸
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120600(JP,A)
【文献】特開2016-211983(JP,A)
【文献】特開2013-072635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業を行う作業地域において、前記作業地域と異なる他地域から来た作業者の順化を評価するための順化評価装置であって、
前記作業地域の気候に関する基準値である作業地域基準値を取得する作業地域基準値取得手段と、
作業者の作業強度に応じた補正値を取得する補正値取得手段と、
作業者の身体の状態に応じた係数を取得する係数取得手段と、
前記他地域の気候に関する基準値である他地域基準値を取得する他地域基準値取得手段と、
前記作業地域基準値に前記補正値を加算し、加算した値に前記係数を乗算することで、作業者毎の前記作業地域基準値である作業者別作業地域基準値を算出する算出手段と、
前記作業者別作業地域基準値と、前記他地域基準値と、を並べて表示手段に表示する表示制御手段と、を備えることを特徴とする順化評価装置。
【請求項2】
前記補正値取得手段は、前記作業地域基準値から前記他地域基準値との差に応じた他地域補正値を取得し、前記他地域補正値を加算した前記補正値を取得することを特徴とする請求項1に記載の順化評価装置。
【請求項3】
前記補正値取得手段は、作業者が作業を行う作業場所の気流の有無に応じた前記補正値を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の順化評価装置。
【請求項4】
作業を行う作業地域において、他地域から来た作業者が順化したと想定される期間である順化期間を算出する順化期間算出手段を、さらに備え、
前記順化期間算出手段は、基準となる基準順化期間に、前記作業地域基準値に応じた順化期間補正値を加算することで、前記順化期間を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の順化評価装置。
【請求項5】
作業を行う作業地域において、他地域から来た作業者が順化したと想定される期間である順化期間を算出する順化期間算出手段を、さらに備え、
前記順化期間算出手段は、基準となる基準順化期間に、前記作業者別作業地域基準値に応じた順化期間補正値を加算することで、前記順化期間を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の順化評価装置。
【請求項6】
作業を行う作業地域において、前記作業地域と異なる他地域から来た作業者の順化を評価するための順化評価装置が実行する順化評価方法であって、
前記作業地域の気候に関する基準値である作業地域基準値を取得する作業地域基準値取得ステップと、
作業者の作業強度に応じた補正値を取得する補正値取得ステップと、
作業者の身体の状態に応じた係数を取得する係数取得ステップと、
前記他地域の気候に関する基準値である他地域基準値を取得する他地域基準値取得ステップと、
前記作業地域基準値に前記補正値を加算し、加算した値に前記係数を乗算することで、作業者毎の前記作業地域基準値である作業者別作業地域基準値を算出する算出ステップと、
前記作業者別作業地域基準値と、前記他地域基準値と、を並べて表示手段に表示する表示制御ステップと、を含むことを特徴とする順化評価方法。
【請求項7】
作業を行う作業地域において、前記作業地域と異なる他地域から来た作業者の順化を評価するための順化評価装置を、
前記作業地域の気候に関する基準値である作業地域基準値を取得する作業地域基準値取得手段、
作業者の作業強度に応じた補正値を取得する補正値取得手段、
作業者の身体の状態に応じた係数を取得する係数取得手段、
前記他地域の気候に関する基準値である他地域基準値を取得する他地域基準値取得手段、
前記作業地域基準値に前記補正値を加算し、加算した値に前記係数を乗算することで、作業者毎の前記作業地域基準値である作業者別作業地域基準値を算出する算出手段、
前記作業者別作業地域基準値と、前記他地域基準値と、を並べて表示手段に表示する表示制御手段、として機能させるための順化評価用のコンピュータプログラム。
【請求項8】
作業を行う作業地域において、前記作業地域と異なる他地域から来た作業者の順化を評価するための順化評価装置を、
前記作業地域の気候に関する基準値である作業地域基準値を取得する作業地域基準値取得手段、
作業者の作業強度に応じた補正値を取得する補正値取得手段、
作業者の身体の状態に応じた係数を取得する係数取得手段、
前記他地域の気候に関する基準値である他地域基準値を取得する他地域基準値取得手段、
前記作業地域基準値に前記補正値を加算し、加算した値に前記係数を乗算することで、作業者毎の前記作業地域基準値である作業者別作業地域基準値を算出する算出手段、
前記作業者別作業地域基準値と、前記他地域基準値と、を並べて表示手段に表示する表示制御手段、として機能させるための順化評価用のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱中症予防対策としての暑熱順化を評価するための順化評価装置、順化評価方法、順化評価用のコンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の熱中症予防対策用の装置としては、脈拍数の統計値を用いて暑熱順化の可否を判定し、その判定結果に基づいて熱中症の発症リスクを予測するための湿球黒球温度(Wet-Bulb Globe Temperature(単位:℃):以下、「WBGT」という)の閾値を変更し、さらにその閾値と実際のWBGTとを用いて熱中症の発症可能性を判定するように構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の熱中症予防対策用の装置は、あくまでも事後的に暑熱順化ができているか否かを判定しているだけにすぎず、暑熱順化の程度を定量的かつ事前に評価し得るものではないので、熱中症予防対策として事前に有効活用することができないという難点があった。なお、熱中症予防対策に限らず、低体温症予防対策においても同様の課題があることは容易に推察される。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、順化に要する期間を定量的かつ事前に評価することができ、熱中症あるいは低体温症の予防対策として事前に有効活用することができる順化評価装置、順化評価方法、順化評価用のコンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る順化評価装置は、
作業を行う作業地域において、前記作業地域と異なる他地域から来た作業者の順化を評価するための順化評価装置であって、
前記作業地域の気候に関する基準値である作業地域基準値を取得する作業地域基準値取得手段と、
作業者の作業強度に応じた補正値を取得する補正値取得手段と、
作業者の身体の状態に応じた係数を取得する係数取得手段と、
前記他地域の気候に関する基準値である他地域基準値を取得する他地域基準値取得手段と、
前記作業地域基準値に前記補正値を加算し、加算した値に前記係数を乗算することで、作業者毎の前記作業地域基準値である作業者別作業地域基準値を算出する算出手段と、
前記作業者別作業地域基準値と、前記他地域基準値と、を並べて表示手段に表示する表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような順化評価装置によれば、作業者の作業強度及び身体状態に応じて作業地域の気候に関する基準値としての作業者別作業地域基準値が適正に求められ、当該作業者別作業地域基準値と、作業者が所在していた他地域の気候に関する基準値である他地域基準値とが、作業者毎に並べて表示されるので、そうして表示された作業者別作業地域基準値と他地域基準値との数値差を目安として順化に要する期間を定量的かつ事前に評価することができる。
【0008】
本発明の第1側面に係る順化評価装置の好ましい実施の形態としては、
前記補正値取得手段は、前記作業地域基準値から前記他地域基準値との差に応じた他地域補正値を取得し、前記他地域補正値を加算した前記補正値を取得することを特徴とする。
【0009】
このような順化評価装置によれば、作業者の作業強度に加えて、作業地域基準値と他地域基準値との差に応じた他地域補正値も補正値として加算されるので、作業者の所在環境も加味した作業者別作業地域基準値を適正に求めることができる。
【0010】
本発明の第1側面に係る順化評価装置の他の好ましい実施の形態としては、
前記補正値取得手段は、作業者が作業を行う作業場所の気流の有無に応じた前記補正値を取得することを特徴とする。
【0011】
このような順化評価装置によれば、作業者の作業強度に加えて、作業場所の気流の有無に応じた補正値が加算されるので、気流の有無も加味した作業者別作業地域基準値を適正に求めることができる。
【0012】
本発明の第1側面に係る順化評価装置の他の好ましい実施の形態としては、
作業を行う作業地域において、他地域から来た作業者が順化したと想定される期間である順化期間を算出する順化期間算出手段を、さらに備え、
前記順化期間算出手段は、基準となる基準順化期間に、前記作業地域基準値に応じた順化期間補正値を加算することで、前記順化期間を算出することを特徴とする。
【0013】
このような順化評価装置によれば、作業者毎に作業者別作業地域基準値と他地域基準値とが並べて表示されるだけでなく、作業地域基準値に応じた基準順化期間に対する補正により適正な順化期間を算出することができるので、順化に要する最適な期間を提示することができる。
【0014】
本発明の第1側面に係る順化評価装置の他の好ましい実施の形態としては、
作業を行う作業地域において、他地域から来た作業者が順化したと想定される期間である順化期間を算出する順化期間算出手段を、さらに備え、
前記順化期間算出手段は、基準となる基準順化期間に、前記作業者別作業地域基準値に応じた順化期間補正値を加算することで、前記順化期間を算出することを特徴とする。
【0015】
このような順化評価装置によれば、作業者毎に作業者別作業地域基準値と他地域基準値とが並べて表示されるだけでなく、作業者別作業地域基準値に応じた基準順化期間に対する補正により適正な順化期間を算出することができるので、順化に要する最適な期間を提示することができる。
【0016】
本発明の第2側面に係る順化評価方法は、
作業を行う作業地域において、前記作業地域と異なる他地域から来た作業者の順化を評価するための順化評価装置が実行する順化評価方法であって、
前記作業地域の気候に関する基準値である作業地域基準値を取得する作業地域基準値取得ステップと、
作業者の作業強度に応じた補正値を取得する補正値取得ステップと、
作業者の身体の状態に応じた係数を取得する係数取得ステップと、
前記他地域の気候に関する基準値である他地域基準値を取得する他地域基準値取得ステップと、
前記作業地域基準値に前記補正値を加算し、加算した値に前記係数を乗算することで、作業者毎の前記作業地域基準値である作業者別作業地域基準値を算出する算出ステップと、
前記作業者別作業地域基準値と、前記他地域基準値と、を並べて表示手段に表示する表示制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
このような順化評価方法によれば、第1側面に係る順化評価装置と同様に、表示された作業者別作業地域基準値と他地域基準値との数値差を目安として順化に要する期間を定量的かつ事前に評価することができる。
【0018】
本発明の第3側面に係る順化評価用のコンピュータプログラムは、
作業を行う作業地域において、前記作業地域と異なる他地域から来た作業者の順化を評価するための順化評価装置を、
前記作業地域の気候に関する基準値である作業地域基準値を取得する作業地域基準値取得手段、
作業者の作業強度に応じた補正値を取得する補正値取得手段、
作業者の身体の状態に応じた係数を取得する係数取得手段、
前記他地域の気候に関する基準値である他地域基準値を取得する他地域基準値取得手段、
前記作業地域基準値に前記補正値を加算し、加算した値に前記係数を乗算することで、作業者毎の前記作業地域基準値である作業者別作業地域基準値を算出する算出手段、
前記作業者別作業地域基準値と、前記他地域基準値と、を並べて表示手段に表示する表示制御手段、として機能させる。
【0019】
このような順化評価用のコンピュータプログラムによれば、第1側面に係る順化評価装置をコンピュータにより実現することができる。
【0020】
本発明の第4側面に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、
作業を行う作業地域において、前記作業地域と異なる他地域から来た作業者の順化を評価するための順化評価装置を、
前記作業地域の気候に関する基準値である作業地域基準値を取得する作業地域基準値取得手段、
作業者の作業強度に応じた補正値を取得する補正値取得手段、
作業者の身体の状態に応じた係数を取得する係数取得手段、
前記他地域の気候に関する基準値である他地域基準値を取得する他地域基準値取得手段、
前記作業地域基準値に前記補正値を加算し、加算した値に前記係数を乗算することで、作業者毎の前記作業地域基準値である作業者別作業地域基準値を算出する算出手段、
前記作業者別作業地域基準値と、前記他地域基準値と、を並べて表示手段に表示する表示制御手段、として機能させるための順化評価用のコンピュータプログラムを記録する。
【0021】
このようなコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、コンピュータで読み取ることで、第1側面に係る順化評価装置をコンピュータにより実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、順化に要する期間を定量的かつ事前に評価することができ、熱中症あるいは低体温症の予防対策として事前に有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る順化評価装置としてのコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る順化評価装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る順化評価装置に適用される係数データを説明するための図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る順化評価装置の入力操作表示画面の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る順化評価装置の出力結果表示画面の一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る順化評価装置により実行される順化評価処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
【0025】
[順化評価装置のハードウェア構成]
まず、本発明の実施形態に係る順化評価装置として適用可能なコンピュータのハードウェア構成について
図1を参照して説明する。
図1は、順化評価装置としてのコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。本実施形態に係る順化評価装置は、一般的なコンピュータにより実現される。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1、ROM(Read Only Memory)2、RAM(Random Access Memory)3、記憶装置4、入出力インターフェース(以下、略して「IF」という)5、マウス6、キーボード7、表示装置8、印刷装置9、及び通信装置10を基本的に有して構成される。CPU1、ROM2、RAM3、記憶装置4、及びIF5は、内部バスを介して互いに接続される。マウス6、キーボード7、表示装置8、印刷装置9、及び通信装置10は、IF5を介して内部バスに接続される。
【0026】
CPU1は、コンピュータ全体の動作を実行制御するものであり、例えば後述する順化評価処理をプログラムに基づいて実行する。ROM2は、コンピュータ全体の動作を実行制御するための制御プログラムなどを記憶している。RAM3は、CPU1の実行制御に際して必要な作業領域や各種データの格納領域などを提供する。記憶装置4は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えばハードディスクドライブあるいはソリッドステートドライブといった大容量のストレージデバイスであり、例えば順化評価処理を実行するためのプログラムやデータなどをインストールやダウンロードに応じて記憶している。IF5は、マウス6、キーボード7、表示装置8、印刷装置9、並びに通信装置10とCPU1との間で各種の信号をやり取りする。
【0027】
マウス6は、いわゆるポインティングデバイスであり、表示装置8の表示画面上で選択操作などを行うために用いられる。キーボード7は、表示装置8の表示画面上で文字や数字などを直接入力するために用いられる。表示装置8は、例えば液晶ディスプレイであり、表示画面として入力操作表示画面や出力結果表示画面などに文字情報などを表示する。印刷装置9は、例えばインクジェットプリンタあるいはレーザープリンタであり、印刷操作に応じて例えば出力結果表示画面に表示された文字情報などを用紙に印刷して出力する。通信装置10は、図外のネットワーク回線を介して例えばインターネット上の外部サーバに接続され、この外部サーバとの間で各種のデータやプログラムなどのダウンロードやアップロードを行う。
【0028】
なお、本実施形態のコンピュータは、予め記憶装置4に順化評価処理を実行するためのプログラムやデータなどがインストールされており、基本的にスタンドアローンで利用可能であるが、インターネット接続が可能であることから、外部サーバから順化評価処理を実行するためのプログラムやデータなどをその都度ダウンロードすることで利用するようにしてもよい。
【0029】
[順化評価装置の機能構成]
次に、順化評価装置の機能構成について
図2を参照して説明する。
図2は、順化評価装置の機能構成を示すブロック図である。本実施形態の順化評価装置は、例えば建設現場に従事する作業者の熱中症予防対策として、いわゆる暑熱順化(以下、単に「順化」という)に要する期間を定量的に評価することができるように構成されたものである。順化評価装置は、コンピュータにより実現される機能として、入力操作手段100、作業地域WBGT基準値取得手段200、他地域WBGT基準値取得手段210、WBGT補正値取得手段220、WBGT係数取得手段230、作業者別作業地域WBGT基準値算出手段240、順化期間算出手段250、出力制御手段260、地域別WBGT基準値データ記憶手段300、WBGT補正値・係数データ記憶手段310、作業者別評価データ記憶手段320、基準順化期間データ記憶手段330、表示手段400、及び印刷手段410を有する。なお、本実施形態の順化評価装置は、作業者の熱中症予防対策として利用されるだけでなく、例えばスポーツ分野で活動する各年代の人に対する熱中症予防対策としても利用可能である。
【0030】
ここで、本実施形態において、「地域」とは、例えば、国、地方、県、市町村等により区切られる所定範囲を示すものであり、「作業地域」とは、作業が行われる地域であり、「他地域」とは、「他地域」とは、「作業地域」と異なる地域であり、例えば、作業者の出身地や、「作業地域」に来る直前にいた場所が含まれる地域である。
【0031】
入力操作手段100は、マウス6及びキーボード7により実現され、各種の情報を入力するために用いられる。
【0032】
作業地域WBGT基準値取得手段200、他地域WBGT基準値取得手段210、WBGT補正値取得手段220、WBGT係数取得手段230、作業者別作業地域WBGT基準値算出手段240、順化期間算出手段250、及び出力制御手段260は、主としてCPU1により実現され、順化評価処理を実行するためのプログラムなどに基づいて以下の処理を実行する。
【0033】
作業地域WBGT基準値取得手段200は、入力操作手段100を用いて作業地域が選択されると、地域別WBGT基準値データ記憶手段300に記憶されている地域別WBGT基準値データから該当する作業地域の気候に関するWBGT基準値(以下、「作業地域WBGT基準値」という)を取得する。
【0034】
他地域WBGT基準値取得手段210は、入力操作手段100を用いて例えば作業者の主たる出身地域(以下、「他地域」という)が選択されると、地域別WBGT基準値データ記憶手段300に記憶されている地域別WBGT基準値データから該当する他地域の気候に関するWBGT基準値(以下、「他地域WBGT基準値」という)を取得する。
【0035】
WBGT補正値取得手段220は、入力操作手段100を用いて作業地域や他地域のほか、作業者の作業強度や作業現場での気流の有無が選択されると、それに対応する作業地域WBGT基準値と他地域WBGT基準値との差、作業強度、気流の有無に応じた各々の補正値を、WBGT補正値・係数データ記憶手段310に記憶されているWBGT補正値データから取得する。
【0036】
WBGT係数取得手段230は、入力操作手段100を用いて作業者の身体状態(例えば、年齢、BMI(Body Mass Index:肥満度を示す体格指数)、血圧)が入力されると、その身体状態に対応する係数を、WBGT補正値・係数データ記憶手段310に記憶されている係数データから取得する。
【0037】
作業者別作業地域WBGT基準値算出手段240は、WBGT補正値取得手段220により取得された各補正値を作業地域WBGT基準値に加算し、加算結果として得られた値にWBGT係数取得手段230により取得された係数を乗算し、そうして加算・乗算により得られた値を作業者毎に適合・修整された作業地域WBGT基準値(以下、「作業者別作業地域WBGT基準値」という)を算出する。算出された作業者別作業地域WBGT基準値は、作業者毎のレコードデータ(以下、「作業者別評価データ」という)に含まれるものとして作業者別評価データ記憶手段320に記憶される。
【0038】
順化期間算出手段250は、基準順化期間データ記憶手段330から順化の基準となる基準順化期間データを取得し、取得した基準順化期間データに対して作業者別作業地域WBGT基準値算出手段240により算出された作業者別作業地域WBGT基準値に応じた順化期間補正値を加算することにより、作業者毎に適合・修整された順化期間(以下、「最適順化期間」という)を算出する。算出された最適順化期間は、作業者別評価データに含まれるものとして作業者別評価データ記憶手段320に記憶される。
【0039】
出力制御手段260は、作業地域WBGT基準値、作業地域WBGT基準値に補正値を加算した値(以下、「作業地域WBGT補正基準値」という)、作業者別作業地域WBGT基準値、他地域WBGT基準値、及び最適順化期間などといった作業者の順化に関する各種の情報を表示手段400の出力結果表示画面に一覧表示させる。また、出力制御手段260は、入力操作手段100を用いて印刷が要求されると、出力結果表示画面に表示された情報を印刷手段410に印刷させる。
【0040】
地域別WBGT基準値データ記憶手段300、WBGT補正値・係数データ記憶手段310、作業者別評価データ記憶手段320、及び基準順化期間データ記憶手段330は、記憶装置4により実現され、各々対応するデータを読み書き可能に記憶する。なお、地域別WBGT基準値データ記憶手段300、WBGT補正値・係数データ記憶手段310、及び基準順化期間データ記憶手段330は、例えば順化評価処理用プログラムの更改に伴い最新のデータに更新可能であるが、基本的に標準となるデータが予め記憶されている一方、作業者別評価データ記憶手段320は、作業者別作業地域WBGT基準値や最適順化期間が算出される毎にその都度データが更新あるいは保存されるようになっている。
【0041】
表示手段400は、表示装置8により実現され、順化評価処理に係る入力操作表示画面や出力結果表示画面を表示する。印刷手段410は、印刷装置9により実現され、例えば出力結果表示画面に表示された内容を印刷する。
【0042】
次に、本実施形態の順化評価装置において用いられる各種の事項について、適宜
図3を用いて説明する。
図3は、WBGT補正値・係数データ記憶手段310の係数データを説明するための図である。
【0043】
[対象地域(作業地域及び他地域)]
作業地域及び他地域として入力事項となる対象地域は、日本国内のみならず、国外も含まれる。作業地域は、作業現場が所在する地域を意味し、他地域は、主として作業者の出身地域を意味する。本実施形態においては、例えば都道府県といった広範な地域をさらに限定して都市まで選択可能に地域データとして記憶装置4に記憶されている。
【0044】
[WBGT]
WBGTは、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数(単位:℃)である。WBGTの実測値が大きくなるほど熱中症のおそれが高まる。
【0045】
[作業地域WBGT基準値]
作業地域WBGT基準値は、地域毎にWBGTを観測して得られたデータ(地域別WBGT基準値データ)を標準データとして事前に提供されたもののうち、作業地域に対応するデータとして参照されるものである。作業地域WBGT基準値は、作業地域毎に異なり、例えば国内の北部地域よりも南部地域の方が概ね高くなる傾向にある。また、作業地域WBGT基準値は、作業地域毎に4~10月の各月に対応する値が異なり、概ね8月に対応する値が最も高くなる。本実施形態において、作業地域WBGT基準値は、4~10月の各月に対応する値が出力結果表示画面に表示される。なお、地域別WBGT基準値データは、地域別WBGT基準値データ記憶手段300として機能する記憶装置4に予め記憶されている。
【0046】
[他地域WBGT基準値]
他地域WBGT基準値も、地域別WBGT基準値データから参照可能であり、地域別WBGT基準値データのうち他地域に対応するデータとして参照されるものである。他地域WBGT基準値も、他地域毎に異なり、例えば国内の北部地域よりも南部地域の方が概ね高くなる傾向にある。また、他地域WBGT基準値も、他地域毎に4~10月の各月に対応する値が異なり、概ね8月に対応する値が最も高くなる。本実施形態において、他地域WBGT基準値は、特に8月に対応する値が出力結果表示画面に表示される。なお、他地域WBGT基準値についても、4~10月の各月に対応する値を出力結果表示画面に表示させるようにしてもよい。
【0047】
[作業強度]
作業強度は、身体作業強度とも称し、作業者の作業現場において想定される作業活動の強さを代謝率レベルによって区分したものである。作業強度は、小さいものから順に「安静」、「低代謝率」、「中程度代謝率」、「高代謝率」、「超高代謝率」として区分され、入力操作表示画面で入力事項として選択可能である。
【0048】
[気流]
気流は、作業者の作業現場において想定される風の強さを示すものである。ある程度風が強いと想定される場合、気流有りとなり、それほど風が強くないと想定される場合、気流無しとなる。気流の有無は、入力操作表示画面で入力事項として選択可能である。
【0049】
[衣類]
衣類は、作業現場において着用が想定される作業衣類を示すものである。衣類は、熱中症に対する影響度が小さいものから順に、例えば、「作業服(長袖シャツとズボン)」、「布(織物)つなぎ服」、「二層の布(織物)製服」、「SMSポリプロピレン製つなぎ服」、「ポリオレフィン製つなぎ服」、「限定用途の蒸気不浸透性つなぎ服」として区分され、入力操作表示画面で入力事項として選択可能である。
【0050】
[補正値]
補正値は、作業地域WBGT基準値と他地域WBGT基準値との差、作業強度、気流の有無、衣類に応じて内部的に定められたものである。補正値は、作業地域WBGT基準値と他地域WBGT基準値との差が大きくなるほど補正値大となり、作業強度が大きくなるほど補正値大となり、気流無しの場合よりも気流有りとなる場合の方が補正値大となり、衣類の熱中症に対する影響度が大きくなるほど補正値大となる。このような補正値は、作業地域WBGT基準値に加算される。また、補正値は、入力操作表示画面に表示される。このような補正値は、WBGT補正値・係数データ記憶手段310として機能する記憶装置4に予め記憶されている。
【0051】
[作業地域WBGT補正基準値]
作業地域WBGT補正基準値は、上記補正値を作業地域WBGT基準値に加算した結果として求められるものである。作業地域WBGT補正基準値は、4~10月の各月に対応する値が出力結果表示画面に表示される。
【0052】
[係数]
係数は、作業者の年齢、身長及び体重から求められるBMI、並びに作業者の血圧に応じて上記作業地域WBGT補正基準値に乗算されるものである。例えば、
図3(A)に示すように、年代別の年齢に応じて係数が設定された係数データがWBGT補正値・係数データ記憶手段310として機能する記憶装置4に予め記憶されている。また、
図3(B)に示すように、BMI(肥満度によるA~Fのタイプ別)に応じて係数が設定された係数データがWBGT補正値・係数データ記憶手段310として機能する記憶装置4に予め記憶されている。さらに、
図3(C)に示すように、血圧(最高血圧によるA~Fのタイプ別)に応じて係数が設定された係数データがWBGT補正値・係数データ記憶手段310として機能する記憶装置4に予め記憶されている。このような係数は、入力操作表示画面に表示される。
【0053】
[作業者別作業地域WBGT基準値]
作業者別作業地域WBGT基準値は、上記作業地域WBGT補正基準値に上記係数を乗算した結果として求められるものである。作業者別作業地域WBGT基準値は、4~10月の各月に対応する値が出力結果表示画面に表示される。
【0054】
[順化]
順化(暑熱順化)とは、徐々に日数をかけて身体を暑さに順応させることである。
【0055】
[基準順化期間]
基準順化期間は、地域毎及び月別に順化に要する標準的な日数を基準順化期間データとして予め定められたものである。基準順化期間は、例えば所定の作業地域における4~10月の各月で順化に要する標準的な日数が設定されている。順化に要する標準的な日数(基準順化期間)は、具体的に以下のようにして求めることができる。例えば、事前に作業現場で作業を行う作業者を対象として、作業現場への入場日から午前中作業前、午前作業終了時、午後作業開始時、夕方作業終了時など、1日で4回以上、バイタルチェックを行うアンケートを実施し、作業者の身体状態についてチェックを行う。このチェック結果について、例えばいわゆる箱ひげ図を作成してばらつきを評価する。箱ひげ図の作成に当たっては、作業者毎に身体状態に応じて順化完了と認められる日数を推定し、その推定した日数別に計数された人数を最小値、第1四分位数、中央値、第3四分位数、最大値とに分け、その結果、第1四分位数、中央値、第3四分位数となる箱内に入った人数がサンプルした総人数の100~90%の場合、「順化」、80%以上90%未満の場合、「ほぼ順化」、70%以上80%未満の場合、「やや順化」とみなす。そして、「順化」の場合は、順化に要する標準的な日数(基準順化期間)を、例えば中央値に相当する7日に決定し、「ほぼ順化」の場合は、中央値+1=8日に決定し、「ほぼ順化」の場合は、中央値+2=9日に決定する。このようにして事前のアンケートなどによるサンプリングにより得られた基準順化期間に関するデータは、基準順化期間データ記憶手段330として機能する記憶装置4に予め記憶されている。
【0056】
[順化期間補正値]
順化期間補正値は、作業者別作業地域WBGT基準値に応じて基準順化期間を補正するためのものである。順化期間補正値は、例えば所定の作業地域における4~10月の各月に対応するものとして±3(日)が設定されている。順化期間補正値に関するデータは、基準順化期間データ記憶手段330として機能する記憶装置4に予め記憶されている。この順化期間補正値を上記基準順化期間に加算することにより、後述する最適順化期間が求められる。なお、順化期間補正値は、作業地域WBGT基準値に応じたものとして予め設定しておいてもよい。
【0057】
[最適順化期間]
最適順化期間は、主として、上記基準順化期間に上記順化期間補正値を加算した結果として求められるものである。本実施形態において、最適順化期間は、4~10月の各月に対応する値が出力結果表示画面に表示される。なお、最適順化期間は、最も長くなると想定される8月に対応する値のみを出力結果表示画面に表示させるようにしてもよい。
【0058】
次に、表示装置8に表示される入力操作表示画面及び出力結果表示画面について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、入力操作表示画面の一例を示す図である。
図5は、出力結果表示画面の一例を示す図である。
【0059】
[入力操作表示画面]
図4に示すように、入力操作表示画面には、入力事項として、作業者氏名、1.時期(月、期間)、2.作業地域、3.身体作業強度、4.衣類(作業時服装)、5.年齢、6.BMI、7.血圧、8.出身地域(国内)、9.出身地域(海外)が表示される。
【0060】
作業者氏名を入力すると、入力された情報がインデックスとして作業者別評価データに記憶される。時期(月、期間)は、所望とする開始月と終了月をプルダウンメニューから指定することができる。作業地域は、都道府県をプルダウンメニューから指定すると、対応する都市までプルダウンメニューから指定することができる。身体作業強度は、想定される「低代謝率」や「中程度代謝率」などといった代謝率レベルをプルダウンメニューから指定することができる。また、身体作業強度とともに気流の有無をプルダウンメニューから指定することができる。身体作業強度及び気流の有無が指定されると、それらに対応する補正値A,BがWBGT補正値・係数データ記憶手段310として機能する記憶装置4から呼び出されて表示される。なお、補正値A,Bは、作業地域WBGT基準値と他地域WBGT基準値との差が所定の閾値より小さい場合に補正値Aが採用される一方、その差が閾値以上となる場合に補正値Bが採用される。衣類(作業時服装)は、想定される「作業服(長袖シャツとズボン)」、「布(織物)つなぎ服」などといったものをプルダウンメニューから指定することができる。衣類が指定されると、それに対応する補正値がWBGT補正値・係数データ記憶手段310として機能する記憶装置4から呼び出されて表示される。
【0061】
年齢は、該当する数字を直接入力することができる。年齢が入力されると、それに対応する係数がWBGT補正値・係数データ記憶手段310として機能する記憶装置4から呼び出されて表示される。BMIは、身長及び体重を入力することで自動的に計算され、その計算結果に応じて肥満度タイプが表示される。BMIが決定されると、それに対応する係数がWBGT補正値・係数データ記憶手段310として機能する記憶装置4から呼び出されて表示される。血圧は、収縮期血圧(最高血圧)として該当する値を直接入力すると、その値に応じて高血圧度タイプが表示される。血圧の入力値に応じた高血圧度タイプが決定されると、それに対応する係数がWBGT補正値・係数データ記憶手段310として機能する記憶装置4から呼び出されて表示される。
【0062】
他地域としての出身地域(国内)は、都道府県をプルダウンメニューから指定すると、対応する都市までプルダウンメニューから指定することができる。また、他地域としての出身地域(海外)は、海外の地域をプルダウンメニューから指定すると、さらに該当する国をプルダウンメニューから指定することができ、さらに国を指定すると、対応する都市(首都・州都)までプルダウンメニューから指定することができる。
【0063】
[出力結果表示画面]
図5に示すように、出力結果表示画面には、入力操作表示画面の入力事項に応じた出力結果として、作業者氏名、作業地域(都道府県、都市)、作業地域WBGT基準値、作業地域WBGT補正基準値、作業者別作業地域WBGT基準値、月別作業者別作業地域WBGT基準値グラフ、出身地域、他地域WBGT基準値、最適順化期間が表示され、これらを用紙に印刷するための印刷ボタンも表示される。
【0064】
作業地域WBGT基準値、作業地域WBGT補正基準値、作業者別作業地域WBGT基準値は、指定された範囲の月別(一例として4~10月)に各値が表示される。各値は、レベルに応じて背景色が色分けされており、例えば25℃未満は背景色なし、25℃以上28℃未満は背景色黄色、28℃以上31℃未満は背景色薄い赤色、31℃以上は背景色濃い赤色で表示される。また、作業地域WBGT基準値、作業地域WBGT補正基準値、作業者別作業地域WBGT基準値、月別作業者別作業地域WBGT基準値グラフでは、最大値と平均値を分けて表示される。月別作業者別作業地域WBGT基準値グラフは、横軸を月、縦軸を温度(℃)として折れ線で表示される。なお、他地域WBGT基準値は、最大になると推定される8月の値のみが表示されるが、例えば指定された範囲の月別に各値を表示させるようにしてもよい。最適順化期間は、指定された範囲の月別(一例として4~10月)に求められた各値が表示される。
【0065】
次に、
図6を参照して、順化評価装置のCPU1により実行される順化評価処理について説明する。
図6は、順化評価処理を示すフローチャートである。
【0066】
まず、ステップS1において、CPU1は、順化評価処理を開始する操作に応じて
図4に示すような入力操作表示画面を表示装置8に表示させる。
【0067】
次に、ステップS2において、CPU1は、入力操作表示画面の各入力項目において、必須となる情報(必須情報)が入力されたか否かを判定する。必須情報としては、作業者氏名、時期(月、期間)、作業地域、身体作業強度、気流、衣類(作業時服装)、年齢、BMI、血圧、出身地域(国内)などいったものが挙げられるが、身体作業強度、気流、衣類(作業時服装)、年齢、BMI、血圧については、いずれかが未入力でも処理を進めるようにしてもよい。必須情報が入力された場合(ステップS2:YES)、CPU1は、次のステップS3に進む。いずれかの必須情報が未入力の場合(ステップS2:NO)、CPU1は、必須情報が入力されるまでステップS2の処理を繰り返し実行する。
【0068】
次に、ステップS3において、CPU1は、入力された必須情報に応じて
図5に示すような出力結果表示画面を表示装置8に表示させる。
【0069】
具体的に、CPU1は、作業地域として入力された情報に基づいて対応する作業地域WBGT基準値データを記憶装置4から読み出すとともに、入力された補正値に関する各情報(身体作業強度、気流、衣類、年齢)に対応する補正値を記憶装置4から読み出し、そうして読み出した作業地域WBGT基準値データの値に対して補正値を加算する。こうして加算結果として得られた値は、作業地域WBGT補正基準値として月別の表で表示される。
【0070】
また、CPU1は、入力された係数に関する各情報(年齢、BMI、血圧)に対応する係数を記憶装置4から読み出し、この係数を作業地域WBGT補正基準値に乗算する。こうして乗算結果として得られた値は、作業者別作業地域WBGT基準値として月別の表及びグラフで表示される。
【0071】
さらに、CPU1は、出身地域(他地域)として入力された情報に基づいて対応する他地域WBGT基準値データを記憶装置4から読み出し、他地域WBGT基準値データの8月に対応する値を表示させる。そして、CPU1は、作業者別作業地域WBGT基準値の各月の値と他地域WBGT基準値の値との差分を算出するとともに、作業地域として入力された情報に基づいて対応する基準順化期間と、上記差分に応じた順化期間補正値とを記憶装置4から読み出し、基準順化期間に対して順化期間補正値を加算することにより、最適順化期間を算出して月別の表で表示させる。
【0072】
次に、ステップS4において、CPU1は、入力された作業者氏名をインデックスとして対応する入力された情報(時期、作業地域、身体作業強度、気流、衣類、年齢、BMI、血圧、出身地域)及び出力結果として得られた情報(作業地域WBGT基準値、作業地域WBGT補正基準値、作業者別作業地域WBGT基準値、最適順化期間)を作業者別評価データとして記憶装置4に記憶させる。
【0073】
次に、ステップS5において、CPU1は、出力結果表示画面において印刷ボタンが操作されて印刷が要求されたか否かを判定する。印刷が要求された場合(ステップS5:YES)、CPU1は、次のステップS6に進む。印刷が要求されない場合(ステップS5:NO)、CPU1は、この順化評価処理を終了する。
【0074】
次に、ステップS6において、CPU1は、印刷処理を実行する。印刷処理では、出力結果表示画面に表示された内容が印刷装置9によって印刷される。
【0075】
このような順化評価処理によれば、作業者毎に、作業強度、気流、衣類、年齢、BMI、及び血圧に応じて作業者別作業地域WBGT基準値が適正に求められ、当該作業者別作業地域WBGT基準値と、作業者の出身地域に対応する他地域WBGT基準値とが、出力結果表示画面において作業者毎に並べて表示される。さらに、出力結果表示画面には、作業者別作業地域WBGT基準値に応じた基準順化期間に対する補正により作業者毎に最適順化期間が表示される。これにより、表示された作業者別作業地域WBGT基準値と他地域WBGT基準値との数値差に応じて算出された順化に要する最適な期間を定量的かつ事前に評価することができ、熱中症あるいは低体温症の予防対策として事前に有効活用することができる。
【0076】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されないことはいうまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0077】
上記実施形態では、熱中症予防対策に適したものとして説明したが、本発明は、低体温症予防対策にも対応するものとして応用することができる。例えば、極寒環境による低温ストレスの評価を行う寒さ指数なるものを予め地域別に観測して得られたデータを基準値データとして記憶しておき、このような基準値データを用いて同様の順化評価処理を行うことにより、例えば警察官、消防官、自衛官などといった極寒環境において活動する者に対して順化に要する最適な期間を定量的かつ事前に評価することができるようにしてもよい。
【0078】
上記実施形態では、地域別WBGT基準値データ、WBGT補正値・係数データ、基準順化期間データや順化評価処理用のプログラムなどが予め記憶装置4に記憶されているが、これらのデータやプログラムをインターネット上のサーバからその都度ダウンロードして順化評価処理を実行するようにしてもよい。
【0079】
上記実施形態においては、基準順化期間に対して作業者別作業地域WBGT基準値に応じた順化期間補正値を加算することで最適順化期間を算出するようにしているが、単に作業地域WBGT基準値に応じた順化期間補正値を予め設定しておき、このような順化期間補正値を基準順化期間に加算して最適順化期間を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 CPU
2 ROM
3 RAM
4 記憶装置
6 マウス
7 キーボード
8 表示装置
9 印刷装置
10 通信装置
200 作業地域WBGT基準値取得手段(作業地域基準値取得手段)
210 他地域WBGT基準値取得手段(他地域基準値取得手段)
220 WBGT補正値取得手段(補正値取得手段)
230 WBGT係数取得手段(係数取得手段)
240 作業者別作業地域WBGT基準値算出手段(算出手段)
260 出力制御手段(表示制御手段)
250 順化期間算出手段