(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
A47G9/10 V
A47G9/10 B
(21)【出願番号】P 2018045459
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】505329808
【氏名又は名称】有限会社エルーチーリビング
(73)【特許権者】
【識別番号】520113413
【氏名又は名称】安徽華興羽絨制品有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】傅賓榮
(72)【発明者】
【氏名】洪 宇
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3211873(JP,U)
【文献】実開昭56-117871(JP,U)
【文献】特開2000-139656(JP,A)
【文献】特開平01-155806(JP,A)
【文献】特開2011-104319(JP,A)
【文献】登録実用新案第3001252(JP,U)
【文献】特開2010-088548(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194651(JP,U)
【文献】特開2010-063674(JP,A)
【文献】特開2019-041961(JP,A)
【文献】特開2005-021646(JP,A)
【文献】特開2006-068137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の枕部材と、前記第1の枕部材と組み合わせて用いられる第2の枕部材と
、前記第1、第2の枕部材を収容する枕カバーと、からなり、
前記第1の枕部材は、
平面視において略L字型であり、少なくとも人の頭部が載る頭支持部と、前記頭支持部と一体形成さ
れ前記頭支持部の中心線に対して線対称をなす一対の張出部と
、凹部とを備え、
平面視において、前記第1の枕部材の前記頭支持部側を上側とし、前記一対の張出部側を下側とした場合に、前記一対の張出部は前記頭支持部に対して斜め下方へ張り出し、前記凹部は前記頭支持部の下端部と2つの前記張出部の内縁とで囲まれ、
前記第2の枕部材は、
前記第1の枕部材と平面形状が略同一であり、前記第1の枕部材の前記頭支持部を支持するベース部
と、前記ベース部と一体形成され、前記ベース部に対して斜め上方へ張り出し、前記ベース部の中心線に対して線対称をなす一対の張出部と、前記ベース部の上端部と2つの前記張出部の内縁とで囲まれる凹部とを備え、
前記第2の枕部材の前記ベース部上に前記第1の枕部材の前記頭支持部が載せられた形態で、前記第1の枕部材の前記一対の張出部が載置面に向けて垂れ下が
り、前記第1の枕部材の前記一対の張出部の前記頭支持部側の根本付近において、前記載置面との間に空間が生じており、
前記枕カバーは、前記第2の枕部材の前記ベース部上に前記第1の枕部材の前記頭支持部が載せられた形態のままであって、前記第1の枕部材の前記一対の張出部が下側に位置し、前記第2の枕部材の前記一対の張出部が上側に位置する形態で、前記第1、第2の枕部材を収容する、枕。
【請求項2】
前記第1の枕部材は、前記頭支持部の縦長さが前記凹部の深さの少なくとも3倍であり、前記頭支持部の中心と前記各張出部の先端とを結ぶ直線の長さは、前記頭支持部の縦長さより長い、請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記第1の枕部材は、前記頭支持部の
上端部および前記各張出部の先端部が湾曲しており、前記頭支持部の
上端部の湾曲は前記各張出部の先端部の湾曲より曲率半径が大きい、請求項1または2に記載の枕。
【請求項4】
前記第1、第2の各枕部材は、布袋の内部にクッション性を有する充填材が充填されてなり、前記第1の枕部材の布袋に充填される充填材は、前記第2の枕部材の布袋に充填される充填材より柔軟な素材である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は枕に関し、より詳細には、複数の枕部材が組み合わされて構成される枕に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な睡眠を得ることは人の健康にとって重要であり、これまでに様々な寝具が提案されている。掛布団、敷布団、および枕等の種々の寝具のうち、人の頭部をサポートする枕は、睡眠時の快適性を向上させるうえで大きな役割を果たしており、様々な工夫が凝らされている。
【0003】
例えば特許文献1に記載の枕によると、睡眠中に好適な姿勢を保つことができる。枕の平面視は略L字型となっており、枕を構成する袋状部材は、中心部と長手部と短手部とを有している。特許文献1の枕は、後頭部を短手部に当接させ、片側の肩および背中を長手部に当接させた状態で、横臥して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
睡眠時に仰向けの姿勢を好む人がいれば、横臥姿勢(または側臥姿勢とも呼ぶ)を好む人もいる。また例えば、長時間の労働で全身に疲労が蓄積している人の中には、うつ伏せの姿勢をとり、ベッドに崩れ落ちるように眠る人もいる。このように、睡眠時の人の寝相は様々であり、様々な寝相に対応することができる枕が求められている。
【0006】
本発明は、様々な寝相に対応することができる枕を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る枕は、第1の枕部材と、第1の枕部材と組み合わせて用いられる第2の枕部材とからなる。第1の枕部材は、少なくとも人の頭部が載る頭支持部と、頭支持部と一体形成され頭支持部に対して斜め下方へ張り出し頭支持部の中心線に対して線対称をなす一対の張出部と、頭支持部の下端部と2つの張出部の内縁とで囲まれる凹部とを備える。凹部は、横臥した状態での人の肩部が嵌まる開口幅を有している。第2の枕部材は、第1の枕部材の頭支持部が載置可能なベース部を備えている。
【0008】
本発明に係る枕によると、様々な寝相に対応することができる。仰向けの姿勢では、第1の枕部材の一対の張出部が人の頭部から首周辺の側方に位置しているので、頭部はしっかりと支えられて優しく包み込まれ、安定して載置される。頭支持部は第2の枕部材のベース部上に載せられているので、頭支持部の領域に頭部の重みが加わっても、頭支持部の領域だけが不自然に下方に落ち込むことはない。これにより、自然な仰向けの姿勢が保たれる。
【0009】
横臥姿勢では、張出部の下方に生じている空間に腕を通すことができる。これにより、腕の上方に張出部が重なることとなり、横臥姿勢中の寝相の変化により腕枕の状態になった場合であっても、腕に加わる頭部の重みを適度に吸収または分散することができる。また、横臥姿勢では、通常の横臥姿勢に加えてさらに、腕を肩部の水平位置よりも頭部側に伸ばした状態で、睡眠姿勢を取ることができる。腕を頭部よりも上方に伸ばす動作は、肩まわりの筋肉をほぐすストレッチ動作にもなる。また、横臥姿勢と仰向けの姿勢との間で、寝相をスムーズに変化させることもできる。
【0010】
第1の枕部材の一実施形態は、頭支持部の縦長さが凹部の深さの少なくとも3倍であり、頭支持部の中心と各張出部の先端とを結ぶ直線の長さは、頭支持部の縦長さより長い。これにより、第1の枕部材が人の頭部を載せるのにより適した寸法となる。
【0011】
第1の枕部材の他の実施形態は、頭支持部の上端部および各張出部の先端部が湾曲しており、頭支持部の上端部の湾曲は各張出部の先端部の湾曲より曲率半径が大きい。これにより、第1の枕部材が丸みを帯びた形状となり、フィット感や安心感も向上する。
【0012】
第1、第2の各枕部材の好ましい実施形態では、第1、第2の各枕部材は、平面形状が略同一であり、第2の枕部材は、第1の枕部材の頭支持部を支持するベース部と、ベース部と一体形成されベース部に対して斜め上方へ張り出しベース部の中心線に対して線対称をなす一対の張出部と、ベース部の上端部と2つの張出部の内縁とで囲まれる凹部とを備えている。
【0013】
これにより、本発明に係る枕は、さらに様々な寝相に対応することができる。すなわち、うつ伏せの姿勢において、左右それぞれの空間に右腕および左腕をそれぞれ通して、第2の枕部材の張出部を抱き抱えることができるので、自然なうつ伏せ寝の姿勢を保つことができる。第2の枕部材の凹部の窪みに頭部を嵌めることができるので、フィット感や安心感も得られ、呼吸も容易である。さらに、第2の枕部材の張出部上に腕を載せることで、なだらかな傾斜で両腕を頭部側に伸ばした状態で、うつ伏せの姿勢を取ることができるので、肩まわりの筋肉をほぐすストレッチ動作にもなる。
【0014】
第1、第2の各枕部材の他の好ましい実施形態では、第1、第2の各枕部材は、布袋の内部にクッション性を有する充填材が充填されてなり、第1の枕部材の布袋に充填される充填材は第2の枕部材の布袋に充填される充填材より柔軟な素材である。これにより、各枕部材のクッション性がより適したものとなり、睡眠時の快適性が向上する。
【0015】
枕の好ましい実施形態は、第2の枕部材のベース部上に第1の枕部材の頭支持部が載せられた形態のまま第1、第2の枕部材を収容することが可能な枕カバーをさらに備える。これにより、第1の枕部材および第2の枕部材の位置関係すなわち重ね具合が適切に保持される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、様々な寝相に対応することができる枕を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る枕を模式的に表した斜視図である。
【
図2】(1)は第1の枕部材の一実施形態を模式的に表した平面図であり、(2)は第2の枕部材の一実施形態を模式的に表した平面図である。
【
図3】枕を構成する第1および第2の枕部材が第1の重ね方により組み合わされている状態を模式的に表した図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のS
1-S
1線に沿う断面図である。
【
図4】枕を構成する第1および第2の枕部材が第2の重ね方により組み合わされている状態を模式的に表した図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のS
2-S
2線に沿う断面図である。
【
図5】枕の第1の使用態様を模式的に表した平面図である。
【
図6】枕の第2の使用態様を模式的に表した平面図である。
【
図7】枕の第3の使用態様を模式的に表した平面図である。
【
図8】枕の第4の使用態様を模式的に表した平面図である。
【
図9】枕カバーを構成する第1の袋体の一実施形態を模式的に表した図であり、(a)が開口部の内側から見た第1の袋体の平面図、(b)が(a)のA
1-A
1線に沿う端面図である。
【
図10】枕カバーを構成する第2の袋体の一実施形態を模式的に表した図であり、(a)が開口部の内側から見た第2の袋体の平面図、(b)が(a)のA
2-A
2線に沿う端面図である。
【
図11】枕カバーの一実施形態を模式的に表した図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のB-B線に沿う端面図である。
【
図12】
図11に示す枕カバーが裏返された状態を模式的に表した図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のC-C線に沿う端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、一実施形態に係る枕を模式的に表した斜視図である。
【0020】
一実施形態に係る枕1は、第1の枕部材10と、第1の枕部材10と組み合わせて用いられる第2の枕部材20とを備える。
【0021】
第1の枕部材10および第2の枕部材20は、一実施形態では、例えば布袋等の袋体の内部に、クッション性を有する充填材が充填されて構成されている。第1の枕部材10の袋体に充填される充填材は、第2の枕部材20の袋体に充填される充填材よりも柔軟な素材であることが好ましい。例示的な充填材としては、例えば、そば殻、発泡ビーズ、樹脂材料のチップ等の粒状の物体が挙げられる。
【0022】
第1の枕部材10は、
図2(1)に示すように、頭支持部11と、一対の張出部12,13と、凹部14とを備え、第2の枕部材20は、
図2(2)に示すように、ベース部21と、一対の張出部22,23と、凹部24とを備える。
図1に示すように、第1の枕部材10および第2の枕部材20は、第2の枕部材20のベース部21上に第1の枕部材10の頭支持部11が載せられた形態で組み合わされる。好ましくは、第1の枕部材10および第2の枕部材20は、組み合わされた状態で枕カバー50に収容されている。一実施形態では、枕カバー50の側面には開口部51が設けられている。枕カバー50の詳細については後述する。
【0023】
第1の枕部材10の頭支持部11は、主に人の頭部を支持する。一対の張出部12,13は、頭支持部11と一体形成されており、頭支持部11に対して斜め下方へ張り出し頭支持部11の中心線11aに対して略線対称をなしている。凹部14は、頭支持部11の下端部と2つの張出部12,13の内縁とで囲まれる空間により構成されている。
【0024】
一実施形態では、頭支持部11は、少なくとも人の頭部が載る縦長さL1(例示的には、L1=33cm)を有し、横臥した状態での人の頭部が載る横幅W1(例示的には、W1=40cm)を有する。凹部14は、横臥した状態での人の肩部が嵌る開口幅を有している。
【0025】
一実施形態では、
図2(1)に示すように、頭支持部11の上端部および各張出部12,13の先端部は湾曲している。好ましくは、頭支持部11の上端部の湾曲は、各張出部12,13の先端部の湾曲よりも曲率半径が大きくされている。
【0026】
一実施形態では、頭支持部11の縦長さL1は、凹部14の深さd1(例示的には、d1=11cm)の少なくとも3倍程度である。また、一実施形態では、頭支持部11の中心C1と各張出部12,13の先端とを結ぶ直線12c、13cの長さは、頭支持部11の縦長さL1よりも長い。好ましくは、張出部12の直線12cの長さと、張出部13の直線13cの長さとは略同一である。一実施形態では、第1の枕部材10の厚みは約11cmである。
【0027】
第2の枕部材20のベース部21は、第1の枕部材10の頭支持部11を支持する。一対の張出部22,23は、ベース部21と一体形成されており、ベース部21に対して斜め上方へ張り出しベース部21の中心線21aに対して略線対称をなしている。凹部24は、ベース部21の上端部と2つの張出部22,23の内縁とで囲まれる空間により構成されている。なお、
図2(2)に示す第2の枕部材20は、
図1に示す態様で第1の枕部材10に組み合わせて用いるのを常態とするものであり、
図2(2)の上下が反転した状態では第1の枕部材10と平面形状が略同一である。
【0028】
一実施形態では、ベース部21は、第1の枕部材10の頭支持部11が載置可能な縦長さL2(例示的には、L2=33cm)および横幅W2(例示的には、W2=40cm)を有している。
【0029】
一実施形態では、
図2(2)に示すように、ベース部21の下端部および各張出部22,23の先端部は湾曲している。好ましくは、ベース部21の下端部の湾曲は、各張出部22,23の先端部の湾曲よりも曲率半径が大きくされている。
【0030】
一実施形態では、ベース部21の縦長さL2は、凹部24の深さd2(例示的には、d2=11cm)の少なくとも3倍程度である。また、一実施形態では、ベース部21の中心C2と各張出部22,23の先端とを結ぶ直線22c、23cの長さは、ベース部21の縦長さL2よりも長い。好ましくは、張出部22の直線22cの長さと、張出部23の直線23cの長さとは略同一である。一実施形態では、第2の枕部材20の厚みは約7cmである。
【0031】
図3は、枕を構成する第1および第2の枕部材10,20が第1の重ね方により組み合わされている状態を模式的に表した図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のS
1-S
1線に沿う断面図である。説明のために、枕カバー50は取り外した状態で図示している。
【0032】
第1の重ね方では、第2の枕部材20が第1の枕部材10の土台となり、第1の枕部材10の頭支持部11と第2の枕部材20のベース部21とが重なり合うように、頭支持部11がベース部21上に載せられている。好ましくは、第1の枕部材10において、一対の張出部12,13の頭支持部11側の根本付近には、枕1を載置する面(例えば、床面)との間に空間15が生じている。なお、空間15が生じている限り、張出部12,13の先端は、垂れ下がって枕1を載置する面に接触していてもよい。頭支持部11およびベース部21が重なる部分における枕1の例示的な厚さHは、約18cmである。頭支持部11に人の頭部の重みが加わると、厚さHは、例示的には約12cmとなる。
【0033】
図4は、枕を構成する第1および第2の枕部材10,20が第2の重ね方により組み合わされている状態を模式的に表した図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のS
2-S
2線に沿う断面図である。説明のために、枕カバー50は取り外した状態で図示している。
【0034】
第2の重ね方では、第1の枕部材10が第2の枕部材20の土台となり、第2の枕部材20のベース部21と第1の枕部材10の頭支持部11とが重なり合うように、ベース部21が頭支持部11上に載せられている。好ましくは、第2の枕部材20において、一対の張出部22,23のベース部21側の根本付近には、枕1を載置する面(例えば、床面)との間に空間25が生じている。なお、空間25が生じている限り、張出部22,23の先端は、垂れ下がって枕1を載置する面に接触していてもよい。
【0035】
図5は、枕の第1の使用態様を模式的に表した平面図である。
【0036】
第1の使用態様は、仰向けの姿勢に対応した態様であり、枕1は、
図3に示す第1の重ね方で用いられる。仰向けの姿勢では、第1の枕部材10の頭支持部11の上に人の頭部90が載せられる。
【0037】
第1の使用態様では、第1の枕部材10の頭支持部11および一対の張出部12,13は略L字型を構成しており、一対の張出部12,13が人の頭部90から首周辺の側方に位置している。これにより、頭部90はしっかりと支えられて優しく包み込まれ、安定して載置される。頭支持部11は第2の枕部材20のベース部21上に載せられているので、頭支持部11の領域に頭部90の重みが加わっても、一対の張出部12,13と比較して頭支持部11の領域だけが不自然に下方に落ち込むことはない。これにより、自然な仰向けの姿勢が保たれる。
【0038】
図6は、枕の第2の使用態様を模式的に表した平面図であり、人から見て右側に横臥姿勢をとった状態が示されている。通常の横臥姿勢における右腕91が二点鎖線で示されている。
【0039】
第2の使用態様は、横臥姿勢に対応した態様であり、第1の使用態様と同様に、枕1は、
図3に示す第1の重ね方で用いられる。また、第1の使用態様と同様に、横臥姿勢においても、第1の枕部材10の頭支持部11の上に人の頭部90が載せられる。
【0040】
第2の使用態様では、通常の横臥姿勢に加えてさらに、張出部12の下方に生じている空間15に右腕91を通した状態でも、横臥姿勢を取ることができる。これにより、腕91の上方に張出部12が重なることとなり、横臥姿勢中の寝相の変化により腕枕の状態になった場合であっても、腕91に加わる頭部90の重みを適度に吸収または分散することができる。さらに、従来の矩形状またはL字型の枕を使用する横臥姿勢では、右腕91を肩部の水平位置よりも頭部90側に振り上げることは容易ではなかったところ、一実施形態に係る枕1によると、右腕91を肩部の水平位置よりも頭部90側にスムーズに振り上げることができる。これにより、横臥姿勢において、右腕91を肩部の水平位置よりも頭部90側に伸ばした状態で、睡眠姿勢を取ることができる。腕91,92を頭部90よりも上方に伸ばす動作は、肩まわりの筋肉をほぐすストレッチ動作にもなる。
【0041】
なお、
図6に示す例では、右側に横臥姿勢をとった状態が図示されているが、左側に横臥姿勢をとった場合もこれと同様である。すなわち、第2の使用態様では、通常の横臥姿勢に加えてさらに、張出部13の下方に生じている空間15に左腕92を通した状態で、横臥姿勢を取ることができる。
【0042】
また、第2の使用態様と第1の使用態様との間では、枕1の重ね方および頭部90を載せる位置が共通している。これにより、第2の使用態様と第1の使用態様との間では、人は寝相をスムーズに変化させることができる。
【0043】
図7は、枕の第3の使用態様を模式的に表した平面図である。
【0044】
第3の使用態様は、うつ伏せの姿勢に対応した態様であり、枕1は
図4に示す第2の重ね方で用いられる。うつ伏せの姿勢では、第2の枕部材20のベース部21上に人の胸部から頭部90の顎周辺が載せられる。
【0045】
第3の使用態様では、第2の枕部材20のベース部21および一対の張出部22,23は略L字型を構成しており、一対の張出部22,23が人の頭部90から首周辺の側方に位置している。また、ベース部21は第1の枕部材10の頭支持部11上に載せられているので、張出部22,23の下方には空間25が生じている。これにより、左右それぞれの空間25に右腕91および左腕92をそれぞれ通して、張出部22,23を抱き抱えることができ、自然なうつ伏せ寝の姿勢を保つことができる。凹部24の窪みに頭部90を嵌めることができるので、フィット感や安心感も得られ、呼吸も容易である。
【0046】
図8は、枕の第4の使用態様を模式的に表した平面図である。
【0047】
第4の使用態様も、うつ伏せの姿勢に対応した態様であり、第3の使用態様と同様に、枕1は
図4に示す第2の重ね方で用いられる。第3の使用態様と同様に、第2の枕部材20のベース部21上に人の胸部から頭部90の顎周辺が載せられる。
【0048】
第4の使用態様では、両腕91,92を頭部90側に伸ばした状態で、うつ伏せの姿勢を取ることができる。伸ばした左右それぞれの腕91,92は、左右それぞれの張出部22,23に支持される。この際、ベース部21は第1の枕部材10の頭支持部11上に載せられているので、ベース部21と一体形成されている張出部22,23の傾斜はなだらかとなり、両腕91,92の傾斜もなだらかとなる。これにより、自然なうつ伏せ寝の姿勢が保たれる。凹部24の窪みに頭部90を嵌めることができるので、フィット感や安心感も得られ、呼吸も容易である。腕91,92を頭部90よりも上方に伸ばす動作は、肩まわりの筋肉をほぐすストレッチ動作にもなる。
【0049】
ここで
図1に戻って、一実施形態に係る枕カバー50を説明する。一実施形態では、枕カバー50は、第1の枕部材10を収容する第1の袋体30(
図9に示す)の周縁部と、第2の枕部材20を収容する第2の袋体40(
図10に示す)の周縁部とが縫い合わされて構成されている。枕カバー50の側面に設けられた開口部51は、第1および第2の各袋体30,40内へ第1および第2の各枕部材10,20を挿入する部分であり、第1および第2の袋体30,40の周縁部の縫い合わせが行われていない区間である。
【0050】
図9は、枕カバー50を構成する第1の袋体30の一実施形態を模式的に表した図であり、(a)が開口部51の内側から見た第1の袋体30の平面図、(b)が(a)のA
1-A
1線に沿う端面図である。
【0051】
図9に示す第1の袋体30において、破線で示す第1の枕部材10の輪郭に沿った領域の内側が袋状に構成されている。この袋状の空間に第1の枕部材10が収容される。一実施形態では、袋状の空間は、上側折り重ね部31と、下側折り重ね部32と、基布部33との、例えば3枚の伸縮性の布地を縫い合わせることにより形成されている。
【0052】
上側折り重ね部31および下側折り重ね部32の一部が互いに重なり合うことにより、第1の袋体30には、開閉自在な挿入口34が設けられている。袋状の空間へ第1の枕部材10を挿入する際には、上側折り重ね部31の下端31aが、図中上方の二点鎖線31bの位置に引っ張り上げられ、下側折り重ね部32の上端32aが、図中下方の二点鎖線32bの位置に引っ張り下げられることにより、挿入口34が開かれる。
【0053】
袋状の空間から斜め上方へ張り出す布地35,36の領域は、第2の袋体40との縫い合わせに用いる領域である。布地35,36の領域は、一枚の布で構成されていてもよいし、複数枚の布地により袋状に構成されていてもよい。または、布地35,36および基布部33の領域が、一枚の布で構成されていてもよい。
【0054】
図10は、枕カバー50を構成する第2の袋体40の一実施形態を模式的に表した図であり、(a)が開口部51の内側から見た第2の袋体40の平面図、(b)が(a)のA
2-A
2線に沿う端面図である。
【0055】
一実施形態では、第2の袋体40は、第1の袋体30の上下が反転した構成を有している。
【0056】
図10に示す第2の袋体40において、破線で示す第2の枕部材20の輪郭に沿った領域の内側が袋状に構成されている。この袋状の空間に第2の枕部材20が収容される。一実施形態では、袋状の空間は、上側折り重ね部41と、下側折り重ね部42と、基布部43との、例えば3枚の伸縮性の布地を縫い合わせることにより形成されている。
【0057】
上側折り重ね部41および下側折り重ね部42の一部が互いに重なり合うことにより、第2の袋体40には、開閉自在な挿入口44が設けられている。袋状の空間へ第2の枕部材20を挿入する際には、上側折り重ね部41の上端41aが、図中下方の二点鎖線41bの位置に引っ張り下げられ、下側折り重ね部42の下端42aが、図中上方の二点鎖線42bの位置に引っ張り上げられることにより、挿入口44が開かれる。
【0058】
袋状の空間から斜め下方へ張り出す布地45,46の領域は、第1の袋体30との縫い合わせに用いる領域である。布地45,46の領域は、一枚の布で構成されていてもよいし、複数枚の布地により袋状に構成されていてもよい。または、布地45,46および基布部43の領域が、一枚の布で構成されていてもよい。
【0059】
図11は、枕カバー50の一実施形態を模式的に表した図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のB-B線に沿う端面図である。
【0060】
一実施形態では、枕カバー50は、第1の枕部材10を収容する第1の袋体30の周縁部と、第2の枕部材20を収容する第2の袋体40の周縁部とが縫い合わされて構成されている。第1の袋体30と第2の袋体40との縫い合わせを図中に一点鎖線で示し、第1の枕部材10および第2の枕部材20の輪郭を破線で示す。一実施形態では、挿入口34が設けられている第1の袋体30の面と、挿入口44が設けられている第2の袋体40の面とが向かい合うように縫い合わされている。
【0061】
枕カバー50の側面には、周縁部の縫い合わせが行われていない区間である開口部51が設けられている。
図9を参照して説明したように、この開口部51を通じて、第1の袋体30の上側折り重ね部31の下端31aと下側折り重ね部32の上端32aとが引っ張り広げられて、第1の袋体30に設けられた袋状の空間へ、第1の枕部材10が挿入される。
【0062】
同様に、
図10を参照して説明したように、開口部51を通じて、第2の袋体40の上側折り重ね部41の上端41aと下側折り重ね部42の下端42aとが引っ張り広げられて、第2の袋体40に設けられた袋状の空間へ、第2の枕部材20が挿入される。
【0063】
図12は、
図11に示す枕カバー50が裏返された状態を模式的に表した図であり、(a)が平面図、(b)が(a)のC-C線に沿う端面図である。
【0064】
枕カバー50の側面には開口部51が設けられており、この開口部51を通じて枕カバー50の表裏を裏返すことができる。
図12に示すように、枕カバー50を裏返した状態では、第1の袋体30に設けられている挿入口34および第2の袋体40に設けられている挿入口44はいずれも外側に露出している。したがって、挿入口34、44を開ける際に開口部51を通じてアクセスする必要はなく、外側に露出しているそれぞれの挿入口34、44を通じて、第1の枕部材10および第2の枕部材20をそれぞれ、袋状の空間へ挿入することができる。
【0065】
枕カバー50を裏返す際には、第1の枕部材10および第2の枕部材20を枕カバー50から抜き出しておくことが好ましい。
【0066】
以上、一実施形態に係る枕によると、以下に例示する様々な寝相に対応することができる。
【0067】
仰向けの姿勢では、第1の枕部材10の一対の張出部12,13が人の頭部90から首周辺の側方に位置しているので、頭部90はしっかりと支えられて優しく包み込まれ、安定して載置される。頭支持部11は第2の枕部材20のベース部21上に載せられているので、頭支持部11の領域に頭部90の重みが加わっても、頭支持部11の領域だけが不自然に下方に落ち込むことはない。これにより、自然な仰向けの姿勢が保たれる。
【0068】
横臥姿勢では、通常の横臥姿勢に加えてさらに、腕91,92を肩部の水平位置よりも頭部90側に伸ばした状態で、睡眠姿勢を取ることができる。腕91,92を頭部90よりも上方に伸ばす動作は、肩まわりの筋肉をほぐすストレッチ動作にもなる。また、横臥姿勢と仰向けの姿勢との間で、寝相をスムーズに変化させることもできる。
【0069】
うつ伏せの姿勢では、左右それぞれの空間25に右腕91および左腕92をそれぞれ通して、張出部22,23を抱き抱えることができるので、自然なうつ伏せ寝の姿勢を保つことができる。凹部24の窪みに頭部90を嵌めることができるので、フィット感や安心感も得られ、呼吸も容易である。さらに、張出部22,23上に腕91,92を載せることで、なだらかな傾斜で両腕91,92を頭部90側に伸ばした状態で、うつ伏せの姿勢を取ることができるので、肩まわりの筋肉をほぐすストレッチ動作にもなる。
【0070】
[その他の形態]
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0071】
上記実施形態では、第2の枕部材20は、ベース部21と一対の張出部22,23と凹部24とを備えているが、仰向けの姿勢および横臥姿勢では、第1の枕部材10は、第2の枕部材20のベース部21上に頭支持部11が載せられていればよく、第2の枕部材20は、少なくともベース部21を備えていればよい。
【0072】
上記実施形態では、第1の枕部材10の袋体に充填される充填材は、第2の枕部材20の袋体に充填される充填材よりも柔軟な素材であるが、これに代えて、第2の枕部材20の袋体に充填される充填材が、第1の枕部材10の袋体に充填される充填材よりも柔軟な素材であってもよい。または、第1の枕部材10の袋体に充填される充填材と第2の枕部材20の袋体に充填される充填材とが同じであってもよい。
【0073】
上記実施形態では、枕部材10,20の充填材として、そば殻等の粒状の物体が例示されているが、充填材はこれに限定されない。充填材としては、例えば綿等の繊維材料や羽毛等であってもよいし、綿状または繊維状の樹脂素材であってもよい。また、綿等の繊維材料や繊維状の樹脂素材は、例えば粒綿のように粒状に加工されていてもよい。または、気体や液体を密閉して充填可能な中空の袋として枕部材10,20を構成し、この袋に空気や水等を充填することにより、枕部材10,20を構成してもよい。
【0074】
上記実施形態では、枕カバー50は2つの袋体30,40が縫い合わされて構成されているが、枕カバー50の構成はこれに限定されない。例えば、周縁部の縫い合わせに代えて、ファスナを用いて第1の袋体30および第2の袋体40を貼り合わせて、枕カバー50を構成してもよい。この場合、側面の開口部51を省略することができる。
【0075】
また、第1の袋体30について、挿入口34に代えて、ファスナを用いて第1の袋体30を構成してもよい。この場合、挿入口34の位置にファスナを設けてもよいし、第1の袋体30の周縁部がファスナで開閉自在となるように構成してもよい。第2の袋体40についても第1の袋体30と同様の構成とすることができる。また、このように構成された第1の袋体30および第2の袋体40を、例えば面ファスナ等の手段により、例えば
図3に示す第1の重ね方で組み合わせて、枕カバー50を構成してもよい。
【0076】
上記実施形態では、第1の袋体30において、袋状の空間は、上側折り重ね部31と、下側折り重ね部32と、基布部33とにより形成されているが、袋状の空間はこのような構成に限定されない。袋状の空間は、第1の枕部材10の位置を保持することができればよい。例えば第1の袋体30は、上側折り重ね部31および下側折り重ね部32の少なくともどちらかと、基布部33とを備えていればよい。同様に、例えば第2の袋体40は、上側折り重ね部41および下側折り重ね部42の少なくともどちらかと、基布部43とを備えていればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 枕
10 第1の枕部材
11 頭支持部
12,13 張出部
14 凹部
20 第2の枕部材
21 ベース部
22,23 張出部
24 凹部
30 第1の袋体
31、32 折り重ね部
33 基布部
34 挿入口
35,36 布地
40 第2の袋体
41,42 折り重ね部
43 基布部
44 挿入口
45,46 布地
50 枕カバー
51 開口部
90 頭部
91,92 腕