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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20220808BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20220808BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20220808BHJP
   B60K 5/02 20060101ALI20220808BHJP
   B60K 6/28 20071001ALI20220808BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20220808BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20220808BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20220808BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20220808BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220808BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20220808BHJP
   B60K 17/22 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B60K1/04 Z ZHV
B60K1/02
B60K7/00
B60K5/02 E
B60K6/28
B60K6/40
B60K6/442
B60K6/54
B60K6/36
B60L50/16
B60L9/18 J
B60K17/22 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018228133
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020090172
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】任田 功
(72)【発明者】
【氏名】平野 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】米盛 敬
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-1330(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105047(WO,A1)
【文献】特開2005-306056(JP,A)
【文献】特開2017-200314(JP,A)
【文献】特開2010-187423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0129481(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0061961(US,A1)
【文献】特開2009-248811(JP,A)
【文献】特開2004-127747(JP,A)
【文献】特開2011-31744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12
B60K 6/20- 6/547
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
B60K 17/22
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00- 13/00
B60L 15/00- 58/40
B60W 10/00- 10/28
B60W 10/30- 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動装置であって、
上記車両に搭載された動力源によって生成された動力を駆動輪に伝達するように、上記車両の下部に、上記車両の前後方向に延びるように設けられた動力伝達軸と、
電気エネルギーを蓄積するためのバッテリと、
このバッテリと電気的に接続された回転電気機械と、
上記バッテリと電気的に接続された電力処理装置と、を有し、
上記動力伝達軸は、筒状のトルクチューブの内部に収容されると共に、上記車両の下部に設けられたトンネル部の内部に収容され、
上記電力処理装置は、直流を交流に変換するインバータ、直流電圧を変換するDC/DCコンバータ、及び上記バッテリに充電を行うプラグイン充電器のうちの少なくとも1つを含み、
上記電力処理装置は、上記トンネル部内に、上記トルクチューブに隣接して、上記トルクチューブの上方に配置されていることを特徴とする車両駆動装置。
【請求項2】
上記電力処理装置は、インバータ及びDC/DCコンバータを含み、これらのインバータ及びDC/DCコンバータは、上記トルクチューブが延びる方向に沿って、隣接して並べて配置されている請求項記載の車両駆動装置。
【請求項3】
上記バッテリは、上記トンネル部内において、上記トルクチューブの下方に配置されている請求項1又は2に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
さらに、上記車両の後部に配置され、電気エネルギーを蓄積するキャパシタを有し、上記回転電気機械は、上記車両の前輪に設けられたインホイールモータであり、上記電力処理装置は、インバータ、及びDC/DCコンバータを含み、上記車両には、上記車両の前側から、上記インホイールモータ、上記インバータ、上記DC/DCコンバータ、上記キャパシタの順に配置されている請求項1乃至の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項5】
さらに、上記車両の後部に配置され、電気エネルギーを蓄積するキャパシタを有し、上記回転電気機械は、上記車両の前輪に設けられたインホイールモータであり、上記電力処理装置は、インバータ、及びDC/DCコンバータを含み、上記車両には、上記車両の前側から、上記インホイールモータ、上記バッテリ、上記キャパシタの順に配置されており、上記トルクチューブの上方には上記インバータ及び上記DC/DCコンバータが配置され、上記トルクチューブの下方には上記バッテリが配置されている請求項1乃至の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項6】
上記動力源は内燃機関及び/又はモータであり、上記動力伝達軸は、上記内燃機関及び/又は上記モータによって駆動される請求項1乃至の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項7】
車両の駆動装置であって、
上記車両に搭載された動力源によって生成された動力を駆動輪に伝達するように、上記車両の下部に、上記車両の前後方向に延びるように設けられた動力伝達軸と、
電気エネルギーを蓄積するためのバッテリと、
このバッテリと電気的に接続された回転電気機械と、
上記バッテリと電気的に接続された電力処理装置と、を有し、
上記動力伝達軸は、筒状のトルクチューブの内部に収容されると共に、上記車両の下部に設けられたトンネル部の内部に収容され、
上記電力処理装置は、直流を交流に変換するインバータ、及び直流電圧を変換するDC/DCコンバータを含み、これらのインバータ及びDC/DCコンバータは、上記トルクチューブが延びる方向に沿って、隣接して並べて配置され、
さらに、上記電力処理装置は、上記トンネル部内に、上記トルクチューブに隣接して配置されていることを特徴とする車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5280961号公報(特許文献1)には、車両の駆動制御装置が記載されている。この駆動制御装置においては、車両の後輪側に駆動装置が設けられており、この駆動装置に備えられた2つのモータが、車両の後輪を夫々駆動している。このように、モータを使用して車両を駆動する場合の他、電気エネルギーによる駆動が行われない車両でさえも、車両に搭載される電気機器は益々増加する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5280961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている内燃機関及びモータを搭載した所謂ハイブリッド車や、モータのみによって車両を駆動する電気自動車以外の場合であっても、車両には多くの電気機器が搭載されている。このように、多くの電気機器が搭載された車両においては、搭載されている電気機器に合わせて供給する電力を処理する必要がある。例えば、所定の直流電圧で作動する電気機器が車両に搭載されている場合には、バッテリの電圧を、その電気機器に適合した直流電圧に変換して供給する必要がある。このような場合には、入力された直流電圧を所定の直流電圧に変換して出力するDC/DCコンバータを車両に搭載する必要がある。また、所定の交流電力で作動する電気機器が車両に搭載されている場合には、バッテリの電圧を、その電気機器に適合した交流電力に変換して供給する必要がある。このような場合には、入力された直流電圧を所定の交流電力に変換して出力するインバータを車両に搭載する必要がある。さらに、車両に搭載されたバッテリに所定の外部電源から充電を行うためには、外部電源から供給された交流電力を直流に整流したり、外部電源の電圧を所定の電圧に変換したりすることができるプラグイン充電器を車両に搭載する必要がある。
【0005】
このように、車両には、DC/DCコンバータ、インバータ、プラグイン充電器等の多くの電力処理装置を搭載しておく必要がある。しかしながら、多くの電力処理装置を車両に搭載すると、乗員が乗車する車室スペースが狭くなったり、荷物を積載するスペースが狭くなったりするという問題が発生する。さらに、電力処理装置には、車両の衝突時等における過度な損傷を避ける必要がある。このため、損傷を防止するための保護部材を電力処理装置の周囲に設けると、電力処理装置の搭載に必要なスペースは益々大きくなり、車室や荷物の積載スペースが狭くなるという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、車両の衝突時等における電力処理装置の過度の損傷を防止しながら、車室や荷物の積載スペースを過剰に狭くすることなく、電力処理装置を搭載することができる車両駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両の駆動装置であって、車両に搭載された動力源によって生成された動力を駆動輪に伝達するように、車両の下部に、車両の前後方向に延びるように設けられた動力伝達軸と、電気エネルギーを蓄積するためのバッテリと、このバッテリと電気的に接続された回転電気機械と、このバッテリと電気的に接続された電力処理装置と、を有し、動力伝達軸は、筒状のトルクチューブの内部に収容されると共に、車両の下部に設けられたトンネル部の内部に収容され、電力処理装置は、直流を交流に変換するインバータ、直流電圧を変換するDC/DCコンバータ、及びバッテリに充電を行うプラグイン充電器のうちの少なくとも1つを含み、電力処理装置は、トンネル部内に、トルクチューブに隣接して、トルクチューブの上方に配置されていることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、電力処理装置は、車両下部のトンネル部の中に配置されている。ここで、トンネル部は、車両が前方、側方、及び後方の何れの方向から衝突した場合においても比較的変形されにくい。このため、トンネル部の中に電力処理装置を配置することにより、車両が衝突した場合においても、電力処理装置の損傷を効果的に回避することができる。また、電力処理装置をトンネル部の中に配置することにより、電力処理装置の損傷を防止するための特別な保護部材を設けることなく、トンネル部の外部からの衝撃により電力処理装置が損傷されるリスクを効果的に抑制することができる。これにより、大型化を抑制しながら電力処理装置を保護することができる。
【0009】
一方、トンネル部の中には、動力源によって生成された動力を車両の駆動輪に伝達する動力伝達軸が延びている。この動力伝達軸は、車両の走行中において回転しているため、走行中の車両が衝突して動力伝達軸が変形した場合には、回転中の動力伝達軸がトンネル部内に配置された電力処理装置と干渉して、電力処理装置を損傷することが考えられる。しかしながら、本発明の車両駆動装置においては、動力伝達軸は、筒状のトルクチューブの内部に収容されているため、回転中の動力伝達軸が変形された場合でも、これが電力処理装置と直接干渉して、電力処理装置が損傷されるのを防止することができる。加えて、動力伝達軸がトルクチューブに収容されているので、十分な安全性を確保しながら、電力処理装置をトルクチューブに隣接して配置することができ、トンネル部内部のスペースを電力処理装置の収容に有効に活用することができる。
【0010】
また、一般に、トンネル部内においてトルクチューブの上方の空間は、トルクチューブと干渉してしまうため、車両の下方からアクセスしてメンテナンスを行うことが比較的困難である。しかしながら、一般に、電力処理装置はメンテナンスが必要となる頻度が比較的低く、アクセスが必要となることが少ない。上記のように構成された本発明によれば、メンテナンスの頻度が比較的低い電力処理装置をトルクチューブの上方に配置することにより、メンテナンス性を大きく損なうことなく、トンネル部内のスペースを有効に活用することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、電力処理装置は、インバータ及びDC/DCコンバータを含み、これらのインバータ及びDC/DCコンバータは、トルクチューブが延びる方向に沿って、隣接して並べて配置されている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、インバータ及びDC/DCコンバータが、トルクチューブが延びる方向に沿って、隣接して並べて配置されているので、電力処理装置を集約して配置することができ、それらを接続する導電線を短縮することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、バッテリは、トンネル部内において、トルクチューブの下方に配置されている。
一般に、トンネル部内においてトルクチューブの下方の空間は、トルクチューブが邪魔にならず、車両の下方からアクセスしてメンテナンスを行うことが比較的容易である。一方、一般にバッテリは耐用年数が電力処理装置よりも短く、交換するためにアクセスが必要となる場合がある。上記のように構成された本発明によれば、バッテリがトルクチューブの下方に配置されているので、バッテリの交換作業を容易に行うことができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、さらに、車両の後部に配置され、電気エネルギーを蓄積するキャパシタを有し、回転電気機械は、車両の前輪に設けられたインホイールモータであり、電力処理装置は、インバータ、及びDC/DCコンバータを含み、車両には、車両の前側から、インホイールモータ、インバータ、DC/DCコンバータ、キャパシタの順に配置されている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、車両の前側から順に、前輪に設けられたインホイールモータ、インバータ、DC/DCコンバータ、キャパシタが配置されているので、インバータにおいて交流に変換された電力を前輪のインホイールモータに短距離で供給することができる。また、DC/DCコンバータとキャパシタが並べて配置されているので、キャパシタの電圧を短距離でDC/DCコンバータに入力して、電圧を変換することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、さらに、車両の後部に配置され、電気エネルギーを蓄積するキャパシタを有し、回転電気機械は、車両の前輪に設けられたインホイールモータであり、電力処理装置は、インバータ、及びDC/DCコンバータを含み、車両には、車両の前側から、インホイールモータ、バッテリ、キャパシタの順に配置されており、トルクチューブの上方にはインバータ及びDC/DCコンバータが配置され、トルクチューブの下方にはバッテリが配置されている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、インバータにおいて交流に変換された電力を前輪のインホイールモータに短距離で供給することができると共に、キャパシタの電圧を短距離でDC/DCコンバータに入力して、電圧を変換することができる。また、トルクチューブの下方にバッテリが配置されているので、容易にバッテリを交換することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、動力源は内燃機関及び/又はモータであり、動力伝達軸は、内燃機関及び/又はモータによって駆動される。
このように構成された本発明によれば、内燃機関及び/又はモータによって生成された動力を、動力伝達軸によって車両の前部から後部へ、又は車両の後部から前部に伝達することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両駆動装置によれば、車両の衝突時等における電力処理装置の過度の損傷を防止しながら、車室や荷物の積載スペースを過剰に狭くすることなく、電力処理装置を搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態による車両駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。
図2】本発明の実施形態による車両駆動装置を搭載した車両の前部を上方から見た透視図である。
図3】本発明の実施形態による車両駆動装置の電源構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態による車両駆動装置において、キャパシタに電力が回生された場合における電圧の変化の一例を模式的に示す図である。
図5】本発明の実施形態による車両駆動装置において使用されている各モータの出力と車速の関係を示す図である。
図6】本発明の実施形態による車両駆動装置における副駆動モータの構造を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の実施形態による車両駆動装置における動力の伝達系統を取り出して示した側面図である。
図8】本発明の実施形態による車両駆動装置における動力伝達機構の一部及びそれを収容したトンネル部を取り出して示す斜視図である。
図9】本発明の実施形態による車両駆動装置において、図7におけるIX-IX線に沿って切断した断面図である。
図10】本発明の実施形態による車両駆動装置における動力伝達機構の一部を示す斜視図である。
図11】本発明の変形実施形態による車両駆動装置における動力伝達機構の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。図2は本実施形態の車両駆動装置を搭載した車両の前部を上方から見た透視図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態による車両駆動装置を搭載した車両1は、運転席よりも前方の、車両の前部に内燃機関であるエンジン12が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪2aを駆動する所謂FR(Front engine, Rear drive)車である。また、後述するように、後輪2aは回転電気機械である主駆動モータによっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪2bは、回転電気機械である副駆動モータによって駆動される。
【0023】
車両1に搭載された本発明の実施形態による車両駆動装置10は、後輪2aを駆動するエンジン12と、後輪2aに駆動力を伝達する動力伝達機構14と、後輪2aを駆動する主駆動モータ16と、バッテリ18と、プラグイン充電器19と、前輪2bを駆動する副駆動モータ20と、キャパシタ22と、制御器である制御装置24と、を有する。
【0024】
エンジン12は、車両1の主駆動輪である後輪2aに対する駆動力を発生するための内燃機関である。図2に示すように、本実施形態においては、エンジン12として直列4気筒エンジンが採用されており、車両1の前部に配置されたエンジン12が動力伝達機構14を介して後輪2aを駆動するようになっている。
【0025】
動力伝達機構14は、エンジン12及び主駆動モータ16が発生した駆動力を主駆動輪である後輪2aに伝達するように構成されている。図1に示すように、動力伝達機構14は、エンジン12及び主駆動モータ16に接続された動力伝達軸であるプロペラシャフト14a、及び変速機であるトランスミッション14bを備えている。動力伝達機構14の詳細な構成については後述する。
【0026】
主駆動モータ16は、主駆動輪に対する駆動力を発生するための電動機であって、車両1の車体上に設けられ、エンジン12の後ろ側に、エンジン12に隣接して配置されており、車体側モータとして機能する。また、主駆動モータ16に隣接して電力処理装置であるインバータ16aが配置されており、このインバータ16aにより、バッテリ18の直流電圧が交流電圧に変換されて主駆動モータ16に供給される。さらに、図1に示すように、主駆動モータ16はエンジン12と直列に接続されており、主駆動モータ16が発生した駆動力も動力伝達機構14を介して後輪2aに伝達される。或いは、主駆動モータ16を動力伝達機構14の途中に接続し、動力伝達機構14の一部を介して駆動力が後輪2aに伝達されるように本発明を構成することもできる。また、本実施形態においては、主駆動モータ16として、48Vで駆動される25kWの永久磁石電動機(永久磁石同期電動機)が採用されている。
【0027】
バッテリ18は、主として主駆動モータ16を作動させる電気エネルギーを蓄積するための蓄電器である。さらに、本実施形態においては、バッテリ18として、48V、3.5kWhのリチウムイオンバッテリ(LIB)が使用されている。
【0028】
プラグイン充電器19は、充電スタンド等の外部電源17から給電口(図示せず)を介して供給された電力を変換して充電するようにバッテリ18に電気的に接続された電力処理装置である。本実施形態においては、車両駆動装置10は、交流電力を供給する外部電源、及び直流電力を供給する外部電源の双方に対応している。このため、外部電源17から交流電力が供給された場合には、プラグイン充電器19は、供給された電力を整流して直流に変換すると共に、搭載しているバッテリ18の基準電圧に応じて、所定の電圧に降圧してバッテリ18に充電を行う。また、外部電源17から直流電力が供給された場合には、プラグイン充電器19は、所定の電圧に降圧してバッテリ18に充電を行う。
【0029】
次に、図2に示すように、副駆動モータ20は、副駆動輪である前輪2bに対する駆動力を発生するように、車両1のバネ下に、前輪2b各輪に設けられている。また、副駆動モータ20はインホイールモータであり、前輪2b各輪のホイール内に夫々収容されている。また、キャパシタ22の直流電圧は、トンネル部15内に配置された電力処理装置であるインバータ20a(図1)により交流電圧に変換されて、各副駆動モータ20に供給される。さらに、本実施形態においては、副駆動モータ20には減速機構である減速機が設けられておらず、副駆動モータ20の駆動力は前輪2bに直接伝えられ、車輪が直接駆動される。また、本実施形態においては、各副駆動モータ20として、17kWの誘導電動機が夫々採用されている。
【0030】
キャパシタ22は、副駆動モータ20によって回生された電気エネルギーを蓄積するように設けられている。図1に示すように、キャパシタ22は運転席よりも後方の車両の後部に配置されると共に、車両1の前輪2b各輪に設けられた副駆動モータ20に電力を供給する。さらに、キャパシタ22は、バッテリ18よりも高い電圧で電荷を蓄積するように構成されている。主としてキャパシタ22に蓄積された電力により駆動される副駆動モータ20は、主駆動モータ16よりも高い電圧で駆動される。
【0031】
図1に示すように、制御装置24は、エンジン12、主駆動モータ16、及び副駆動モータ20を制御して、電動機走行モード及び内燃機関走行モードを実行するように構成されている。具体的には、制御装置24は、マイクロプロセッサ、メモリ、インタフェイス回路、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)等によって構成することができる。
【0032】
次に、図3乃至図6を参照して、本発明の実施形態による車両駆動装置10の電源構成、及び各モータによる車両1の駆動を説明する。
図3は、本発明の実施形態による車両駆動装置10の電源構成を示すブロック図である。図4は、本実施形態の車両駆動装置10において、キャパシタ22に電力が回生された場合における電圧の変化の一例を模式的に示す図である。図5は、本実施形態の車両駆動装置10において使用されている各モータの出力と車速の関係を示す図である。
【0033】
図3に示すように、車両駆動装置10に備えられているバッテリ18とキャパシタ22は直列に接続されている。主駆動モータ16にはバッテリ18の電力が供給され、副駆動モータ20には直列に接続されたバッテリ18とキャパシタ22から電力が供給される。即ち、主駆動モータ16はバッテリ18の基準出力電圧である約48Vで駆動され、副駆動モータ20はバッテリ18の出力電圧とキャパシタ22の端子間電圧を合算した電圧で駆動されるので、48Vよりも高い最大120Vの電圧で駆動される。このように、キャパシタ22には副駆動モータ20に供給する電気エネルギーが蓄積され、副駆動モータ20は、常にキャパシタ22を介して供給された電力によって駆動される。このように、キャパシタ22の最大の端子間電圧はバッテリ18の端子間電圧よりも高く設定されている。
【0034】
また、主駆動モータ16にはインバータ16aが取り付けられており、バッテリ18の直流電圧を交流に変換した上で永久磁石電動機である主駆動モータ16が駆動される。同様に、各副駆動モータ20にはインバータ20aが夫々接続されており、バッテリ18及びキャパシタ22の直流電圧を交流に変換した上で誘導電動機である副駆動モータ20が駆動される。
【0035】
さらに、車両1の減速時等には、主駆動モータ16及び各副駆動モータ20は発電機として機能し、車両1の運動エネルギーを回生して電力を生成する。主駆動モータ16によって回生された電力はバッテリ18に蓄積され、各副駆動モータ20によって回生された電力は主としてキャパシタ22に蓄積される。
また、バッテリ18のプラス側端子には、プラグイン充電器19が接続されている。外部電源17による充電時においては、外部電源17から供給された交流電力がプラグイン充電器19において直流に変換されると共に、所定の直流電圧に降圧され、バッテリ18に充電される。
【0036】
さらに、バッテリ18とキャパシタ22の間には、直流電圧を変換する電力処理装置である高圧DC/DCコンバータ26aが接続されており、この高圧DC/DCコンバータ26aはキャパシタ22に蓄積された電荷が不足しているとき(キャパシタ22の端子間電圧が低下したとき)、バッテリ18の電圧を昇圧してキャパシタ22に充電する。一方、各副駆動モータ20によるエネルギーの回生により、キャパシタ22の端子間電圧が所定電圧以上に上昇した場合には、キャパシタ22に蓄積された電荷を降圧してバッテリ18に印加し、バッテリ18の充電を行う。即ち、副駆動モータ20によって回生された電力はキャパシタ22に蓄積された後、蓄積された電荷の一部が、高圧DC/DCコンバータ26aを介してバッテリ18に充電される
【0037】
また、バッテリ18と車両1の12V電装品25の間には、電力処理装置である低圧DC/DCコンバータ26bが接続されている。車両駆動装置10の制御装置24や、車両1の電装品25の多くは12Vの電圧で作動するので、バッテリ18に蓄積された電荷を低圧DC/DCコンバータ26bにより12Vに降圧して、これらの機器に供給する。
【0038】
次に、図4を参照して、キャパシタ22に対する充電及び放電を説明する。
図4に示すように、キャパシタ22の電圧は、バッテリ18によるベース電圧と、キャパシタ22自体の端子間電圧の合計となる。車両1の減速時等には、各副駆動モータ20により電力の回生が行われ、回生された電力はキャパシタ22に充電される。キャパシタ22への充電が行われると比較的急激に端子間電圧が上昇する。充電によりキャパシタ22の電圧が所定電圧以上に上昇すると、高圧DC/DCコンバータ26aによりキャパシタ22の電圧が降圧され、バッテリ18への充電が行われる。図4に示すように、このキャパシタ22からバッテリ18への充電は、キャパシタ22への充電よりも比較的緩やかに行われ、キャパシタ22の電圧は適正電圧まで比較的緩やかに低下される。
【0039】
即ち、各副駆動モータ20により回生された電力は一時的にキャパシタ22に蓄積され、その後、バッテリ18へ緩やかに充電される。なお、回生が行われる期間によっては、各副駆動モータ20による電力の回生と、キャパシタ22からバッテリ18への充電がオーバーラップして行われる場合もある。
一方、主駆動モータ16によって回生された電力は、バッテリ18に直接充電される。
【0040】
次に、図5を参照して、本発明の実施形態による車両駆動装置10における車速と各モータの出力の関係を説明する。図5は、本実施形態の車両駆動装置10において、車両1の速度と、各速度における各モータの出力の関係を示すグラフである。図5において、主駆動モータ16の出力を破線で示し、1つの副駆動モータ20の出力を一点鎖線で、2つの副駆動モータ20の出力の合計を二点鎖線で、全てのモータの出力の合計を実線で示している。なお、図5は、車両1の速度を横軸とし、各モータの出力を縦軸として示しているが、車両1の速度とモータの回転数には一定の関係が存在するので、横軸をモータ回転数とした場合でも、各モータの出力は図5と同様の曲線を描く。
【0041】
本実施形態においては主駆動モータ16には永久磁石電動機が採用されているため、図5に破線で示すように、モータ回転数が低い低車速域で主駆動モータ16の出力が大きく、車速が速くなるにつれて出力可能なモータ出力が減少する。即ち、本実施形態において、主駆動モータ16は、約48Vで駆動され、1000rpm程度まで最大トルクである約200Nmのトルクを出力し、約1000rpm以上で回転数の増加と共にトルクが低下する。また、本実施形態において、主駆動モータ16は、最低速域において約20kW程度の連続出力が得られ、最大出力約25kWが得られるように構成されている。
【0042】
これに対して、副駆動モータ20には誘導電動機が採用されているため、図5に一点鎖線及び二点鎖線で示すように、低車速域では副駆動モータ20の出力は極めて小さく、車速が速くなるにつれて出力が増大し、車速約130km/h付近で最大出力が得られた後、モータ出力は減少する。本実施形態において、副駆動モータ20は、約120Vで駆動され、車速約130km/h付近で1台当たり約17kW、2台合計で約34kWの出力が得られるように構成されている。即ち、本実施形態において、副駆動モータ20は、約600乃至800rpmでトルクカーブがピークをもち、最大トルク約200Nmが得られる。
【0043】
図5の実線には、これら主駆動モータ16及び2台の副駆動モータ20の出力の合計が示されている。このグラフから明らかなように、本実施形態においては、車速約130km/h付近で最大出力約53kWが得られており、この車速における、この最大出力でWLTP試験において要求される走行条件を満足することができる。なお、図5の実線では、低車速域においても2台の副駆動モータ20の出力値が合算されているが、実際には低車速域では各副駆動モータ20が駆動されることはない。即ち、発進時及び低車速域においては主駆動モータ16のみで車両が駆動され、高車速域で大出力が必要とされたとき(高車速域で車両1を加速させるとき等)のみ2台の副駆動モータ20が出力を発生する。このように、高回転領域で大きな出力を発生することができる誘導電動機(副駆動モータ20)を、高速域のみで使用することにより、車両重量の増加を低く抑えながら必要なとき(所定速度以上での加速時等)に十分な出力を得ることができる。
【0044】
次に、図6を参照して、本発明の実施形態の車両駆動装置10に採用されている副駆動モータ20の構成を説明する。図6は、副駆動モータ20の構造を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、副駆動モータ20は、ステータ28と、このステータの周囲で回転するロータ30から構成されたアウターロータタイプの誘導電動機である。
【0045】
ステータ28は、概ね円板状のステータベース28aと、このステータベース28aの中心から延びるステータシャフト28bと、このステータシャフト28bの周囲に取り付けられたステータコイル28cと、を有する。また、ステータコイル28cは電気絶縁液室32に収納されており、この中に満たされた電気絶縁液32aに浸漬され、これにより沸騰冷却される。
【0046】
ロータ30は、ステータ28の周囲を取り囲むように概ね円筒状に構成されており、一端が閉塞された概ね円筒形に構成されたロータ本体30aと、ロータ本体30aの内周壁面に配置されたロータコイル30bと、を有する。ロータコイル30bは、ステータコイル28cが生成する回転磁界により誘導電流が発生するように、ステータコイル28cに対向するように配置されている。また、ロータ30は、ステータ28の周囲で円滑に回転するように、ステータシャフト28bの先端に取り付けられたベアリング34によって支持されている。
【0047】
ステータベース28aは、車両1の前輪を懸架する懸架機構(図示せず)によって支持されている。一方、ロータ本体30aは、前輪2bのホイール(図示せず)に直接固定されている。ステータコイル28cには、インバータ20aによって交流に変換された交流電流が流され、回転磁界が生成される。この回転磁界によりロータコイル30bに誘導電流が流れ、ロータ本体30aを回転させる駆動力が発生する。このように、各副駆動モータ20により生成された駆動力は、直接、各前輪2bのホイール(図示せず)を回転駆動する。
【0048】
次に、図7乃至図10を参照して、本発明の実施形態による車両駆動装置に備えられた動力伝達機構の構成を詳細に説明する。
図7は、車両駆動装置における動力の伝達系統を取り出して示した側面図である。図8は、動力伝達機構の一部及びそれを収容したトンネル部を取り出して示す斜視図である。図9は、図7におけるIX-IX線に沿って切断した断面図である。図10は、動力伝達機構の一部を示す斜視図である。
【0049】
図7に示すように、動力伝達機構14は、車両1の前部に配置された動力源であるエンジン12及び主駆動モータ16によって生成された動力を、後輪2aに伝達するように構成されている。エンジン12及び主駆動モータ16の出力軸は直結され、この出力軸40が動力伝達軸であるプロペラシャフト14aに連結されている。このプロペラシャフト14aは車両1の下部に、前後方向に向けて延びるように設けられ、その後端は、トランスミッション14bの入力軸42に接続されている。なお、本実施形態においては、トランスミッション14bのハウジング44内には、クラッチ及びディファレンシャルギヤ(図示せず)も収容されている。このため、トランスミッション14bの入力軸42に入力された動力は、クラッチ、変速ギヤ、ディファレンシャルギヤ(以上、図示せず)を介して出力される。さらに、本実施形態においては、トランスミッション14bは、左右の後輪2aの間に配置され、その出力軸46は後輪2aの車軸に接続され、後輪2aを駆動する。
【0050】
また、エンジン12及び主駆動モータ16の出力軸40と、トランスミッション14bの入力軸42を接続しているプロペラシャフト14aは、円形断面の筒状に形成されたトルクチューブ14cの中に収容されている。このトルクチューブ14cの車両前方側の端部は、エンジン12及び主駆動モータ16からなる動力源のハウジング48に取り付けられている。また、トルクチューブ14cの車両後方側の端部は、トランスミッション14bのハウジング44に取り付けられている。このように、トルクチューブ14cの両端を各ハウジングに夫々固定することにより、車両駆動系全体の剛性を高くしている。
【0051】
さらに、図8及び図9に示すように、プロペラシャフト14a及びそれを収容したトルクチューブ14cは、車両1の下部に設けられたトンネル部15(フロアトンネル)の中に配置されている。このトンネル部15は、車両1の底面の上に、車両1の幅方向中央を前後方向に延びるように設けられている。また、図9に示すように、トンネル部15は、金属板を概ね逆U字形断面に折り曲げ、その両側の下端を車体のフレーム50に固定することにより形成されている。さらに、トンネル部15の底面には、平板状のカバー部材52が、フレーム50に着脱可能に固定されている。このカバー部材52を取り外すことにより、車両1の下側からトンネル部15の内部にアクセスすることが可能になる。
【0052】
次に、図10を新たに参照して、トンネル部内における配置構造を説明する。図10は、動力伝達機構の一部を示す斜視図であり、トンネル部15を構成する部材を取り外した状態を示している。
【0053】
図9に示すように、トンネル部15内には、プロペラシャフト14a及びこれをカバーするトルクチューブ14cが通っており、その下方にはトルクチューブ14cに隣接して、バッテリ18が配置されている。このため、トンネル部15の底面に取り付けられたカバー部材52を取り外すだけで、トンネル部15内に収容されたバッテリ18が露出される。これにより、トルクチューブ14cやプロペラシャフト14aを取り外すことなく、トンネル部15内のバッテリ18にアクセスすることができ、バッテリ18の交換作業を容易に実施することができる。
【0054】
さらに、図10に示すように、主駆動モータ16のハウジング48の上方には、主駆動モータ16用のインバータ16aが配置され、トンネル部15内に収容されている。さらに、トンネル部15内において、トルクチューブ14cの上方に隣接して、車両1の前側から順に、副駆動モータ20用のインバータ20a、高圧DC/DCコンバータ26a、及び低圧DC/DCコンバータ26bが夫々配置されている。即ち、インバータ20a、高圧DC/DCコンバータ26a、及び低圧DC/DCコンバータ26bは、トルクチューブ14cが延びる方向に沿って隣接して並べて配置されている。
【0055】
この結果、図1に示すように、車両1においては、前側から順に、前輪2bに設けられたインホイールモータである副駆動モータ20、インバータ16a、インバータ20a、高圧DC/DCコンバータ26a、低圧DC/DCコンバータ26b、及びキャパシタ22が配置される。また、車両1において、前側から順に、副駆動モータ20、バッテリ18、及びキャパシタ22が配置される。
【0056】
これら電力処理装置であるインバータ16a、インバータ20a、高圧DC/DCコンバータ26a、及び低圧DC/DCコンバータ26bは、トルクチューブ14cの上側に配置されているため、トンネル部15底面のカバー部材52を取り外しただけではアクセスしにくい。しかしながら、各インバータ、及び各DC/DCコンバータは耐用年数が比較的長く、交換や修理が必要になることは少ない。このため、メンテンナス性を大きく損なうことなく、トンネル部15内の上方のスペースも有効に活用することができる。
【0057】
ここで、トンネル部15は、車両1の幅方向のほぼ中央、前後方向においても中間部に位置するので、車両1が前方又は後方から衝突した場合や、側方から衝突した場合にも、損傷を受けにくい。さらに、トンネル部15は、折り曲げた金属板を車両1のフレーム50に固定することにより形成されているため、その内部に配置されたインバータ20aや、各DC/DCコンバータ、バッテリ18はトンネル部15の壁面によって保護され、損傷を受けにくい。また、トンネル部15内のインバータ20a、及び各DC/DCコンバータの下方であり、且つバッテリ18の上方には、走行中に回転するプロペラシャフト14aが通っているが、このプロペラシャフト14aはトルクチューブ14c内に収容されている。このため、走行中の車両が衝突した場合には、回転中のプロペラシャフト14aが変形して湾曲する可能性があるものの、インバータ20aや、各DC/DCコンバータ、バッテリ18が損傷されるリスクは小さい。即ち、プロペラシャフト14aはトルクチューブ14cの中に収容されているため、回転中のプロペラシャフト14aが湾曲した場合にも、近傍に収容されている器材に直接当たって損傷するリスクは極めて小さい。
【0058】
なお、本実施形態において、トランスミッション14bは、所謂トランスアクスル配置である。これにより、エンジン12(及び主駆動モータ16)の直後の位置に外径の大きな変速機の本体が存在しなくなるので、トンネル部15の幅を小さくすることができ、乗員の中央側足元空間を確保して乗員に真正面に正対した左右対称な下半身姿勢をとらせることが可能となる。更に、この乗員の姿勢を確保しつつ主駆動モータ16の外径や、長さを出力に応じた十分な大きさにすることが容易になる。また、本実施形態においてはトランスアクスル配置が採用されているため、これにより生じたトンネル部15前方の空間に向けてインバータ20aや、各DC/DCコンバータ、バッテリ18を収容する容積を拡大することができる。これにより、フロアトンネルの幅を大きくして乗員の中央側空間を狭めることなく、バッテリ18容量の確保、拡大が可能になる。
【0059】
本発明の実施形態の車両駆動装置10によれば、電力処理装置であるインバータや、DC/DCコンバータが、車両1下部のトンネル部15の中に配置されている。ここで、トンネル部15は、車両が前方、側方、及び後方の何れの方向から衝突した場合においても比較的変形されにくい。このため、トンネル部15の中にインバータや、DC/DCコンバータを配置することにより、車両が衝突した場合においても、これらの装置の損傷を効果的に回避することができる。また、インバータや、DC/DCコンバータをトンネル部15の中に配置することにより、これらの装置の損傷を防止するための特別な保護部材を設けることなく、トンネル部15の外部からの衝撃により損傷されるリスクを効果的に抑制することができる。これにより、大型化を抑制しながらインバータや、DC/DCコンバータを保護することができる。
【0060】
一方、トンネル部15の中には、動力源であるエンジン12及び主駆動モータ16によって生成された動力を車両1の駆動輪である後輪2aに伝達するプロペラシャフト14aが延びている。このプロペラシャフト14aは、車両1の走行中において回転しているため、走行中の車両1が衝突してプロペラシャフト14aが変形した場合には、回転中のプロペラシャフト14aがトンネル部15内に配置されたインバータや、DC/DCコンバータと干渉して、損傷することが考えられる。しかしながら、本実施形態の車両駆動装置10においては、プロペラシャフト14aは、筒状のトルクチューブ14cの内部に収容されているため、回転中のプロペラシャフト14aが変形された場合でも、これがインバータや、DC/DCコンバータと直接干渉して、損傷されるのを防止することができる。加えて、プロペラシャフト14aがトルクチューブ14cに収容されているので、十分な安全性を確保しながら、インバータや、DC/DCコンバータをトルクチューブ14cに隣接して配置することができ、トンネル部15内部のスペースをこれらの装置の収容に有効に活用することができる。
【0061】
また、本実施形態の車両駆動装置10によれば、メンテナンスの頻度が比較的低いインバータや、DC/DCコンバータをトルクチューブ14cの上方に配置することにより、メンテナンス性を大きく損なうことなく、トンネル部15内のスペースを有効に活用することができる。
【0062】
さらに、本実施形態の車両駆動装置10によれば、インバータ及びDC/DCコンバータが、トルクチューブ14cが延びる方向に沿って、隣接して並べて配置されているので、インバータ及びDC/DCコンバータを集約して配置することができ、それらを接続する導電線を短縮することができる。
【0063】
また、本実施形態の車両駆動装置10によれば、バッテリ18がトルクチューブ14cの下方に配置されているので、バッテリ18の交換作業を容易に行うことができる。
【0064】
さらに、本実施形態の車両駆動装置10によれば、車両1の前側から順に、前輪に設けられた副駆動モータ20、インバータ20a、高圧DC/DCコンバータ26a、キャパシタ22が配置されているので、インバータ20aにおいて交流に変換された電力を前輪2bの副駆動モータ20に短距離で供給することができる。また、高圧DC/DCコンバータ26aとキャパシタ22が並べて配置されているので、キャパシタ22の電圧を短距離で高圧DC/DCコンバータ26aに入力して、電圧を変換することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、車両を駆動するための動力源として、エンジン及びモータを備えた所謂ハイブリッド式の車両駆動装置に本発明を適用していたが、プロペラシャフトによって動力が伝達される動力源がモータのみ、又はエンジンのみである車両駆動装置に本発明を適用することもできる。また、上述した実施形態においては、動力源であるエンジン及び主駆動モータが車両の前部に配置され、その動力が動力伝達軸であるプロペラシャフトによって車両の後部に伝達されていた。しかしながら、動力源であるエンジン及び/又はモータが車両の後部に配置され、その動力が動力伝達軸によって車両の前部に伝達される車両駆動装置に本発明を適用することもできる。
【0066】
さらに、上述した実施形態においては、回転電気機械として主駆動モータ及び副駆動モータが備えられ、これらにより車両の駆動及び運動エネルギーの回生が行われていたが、回転電気機械は、種々の駆動力の発生又は運動エネルギーの回生の何れか一方のみを行うものであっても良い。
【0067】
また、上述した実施形態においては、トルクチューブの上方に、電力処理装置として、インバータ及びDC/DCコンバータが配置されていた。しかしながら、変形例として図11に示すように、トルクチューブの上方には電力処理装置としてプラグイン充電器を配置することもできる。即ち、図11に示す本発明の変形実施形態においては、トルクチューブ14cの上方に、車両の前側から順に、インバータ20a、DC/DCコンバータ(高圧用26a、低圧用26b)、及びプラグイン充電器54が配置されている。図11に示す変形例においては、外部電源から供給された電力がプラグイン充電器54において整流され、所定の直流電圧に降圧された上で、バッテリ18に充電される。この変形例によれば、バッテリ18がプラグイン充電器54の直下に配置されているため、短距離の導電線でバッテリに充電を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 車両
2a 後輪(主駆動輪)
2b 前輪(副駆動輪)
10 車両駆動装置
12 エンジン(動力源、内燃機関)
14 動力伝達機構
14a プロペラシャフト(動力伝達軸)
14b トランスミッション(変速機)
14c トルクチューブ
15 トンネル部
16 主駆動モータ(動力源、回転電気機械)
16a インバータ(電力処理装置)
18 バッテリ(蓄電器)
17 外部電源
19 プラグイン充電器(電力処理装置)
20 副駆動モータ(インホイールモータ、回転電気機械)
20a インバータ(電力処理装置)
22 キャパシタ
24 制御装置(制御器)
25 電装品
26a 高圧DC/DCコンバータ(電力処理装置)
26b 低圧DC/DCコンバータ(電力処理装置)
28 ステータ
28a ステータベース
28b ステータシャフト
28c ステータコイル
30 ロータ
30a ロータ本体
30b ロータコイル
32 電気絶縁液室
32a 電気絶縁液
34 ベアリング
40 出力軸
42 入力軸
44 ハウジング
46 出力軸
48 ハウジング
50 フレーム
52 カバー部材
54 プラグイン充電器(電力処理装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11