(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】スクリーンマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41C 1/14 20060101AFI20220808BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20220808BHJP
B41N 1/24 20060101ALI20220808BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20220808BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B41C1/14 101
B41F15/08 303E
B41N1/24
B41M1/12
H05K3/12 610P
(21)【出願番号】P 2018015135
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000176534
【氏名又は名称】ミタニマイクロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】松本 華奈
(72)【発明者】
【氏名】青木 希仁
(72)【発明者】
【氏名】坪井 恵
(72)【発明者】
【氏名】旭 晃一
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-022194(JP,A)
【文献】特開2007-090838(JP,A)
【文献】特開2008-070506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0047445(US,A1)
【文献】特開2006-220799(JP,A)
【文献】特開2017-013330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/14
B41F 15/08
B41N 1/24
B41M 1/12
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ部に配されたマスク材の対象領域を、所定幅の複数のスキャンエリアに分け、
2方向に複数の照射素子を配列してマトリクス状に備え前記スキャンエリアにレーザ光を照射する照射ヘッドにより前記スキャンエリア毎に
マスクレス露光するとともに、
隣接する前記スキャンエリア同士を一部オーバーラップさせて、前記照射ヘッドを前記対象領域に対して相対的に移動さ
せ、
所定の露光パターンで前記マスクレス露光を行うことにより、前記マスク材に所定の開口パターンを形成するとともに、
前記メッシュ部の前記開口パターンにおける前記マスク材の厚みが前記メッシュ部の厚みの50%以上90%以下であり、
前記照射ヘッドの、前記照射素子の配列方向は、前記移動の方向に対して1度~15度の範囲で傾斜する、スクリーンマスクの製造方法。
【請求項2】
前記照射ヘッドは、複数の
前記照射素子の照度の差が±5%以下である、請求項1に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スクリーンマスク、スクリーンマスクの製造方法、スクリーン印刷装置、及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷手法の一つであるスクリーン印刷法はメッシュ上に樹脂組成物で形成された所定の開口パターンが形成されたスクリーンマスクを用い、被印刷物に任意の印刷体を形成する方法である。このスクリーン印刷法は、例えば配線、電極、蛍光材料の印刷等、種々の印刷に用いられ、電子部品等を含む様々な分野で利用されている。
【0003】
近年、電子部品の小型化、高品質化により、スクリーンマスクの高精度化が求められている。
【0004】
例えば、スクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するメッシュと、メッシュに設けられ開口パターンを有するマスク膜と、を備える。例えばマスク膜を形成する乳剤をメッシュに塗布した後に、フォトマスクを重ねた露光処理によって開口パターンを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は高精度の印刷が可能なスクリーンマスク、スクリーンマスクの製造方法、スクリーン印刷装置、及び露光装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るスクリーンマスクの製造方法は、メッシュ部に配されたマスク材の対象領域を、所定幅の複数のスキャンエリアに分け、2方向に複数の照射素子を配列してマトリクス状に備え前記スキャンエリアにレーザ光を照射する照射ヘッドにより前記スキャンエリア毎にマスクレス露光するとともに、隣接する前記スキャンエリア同士を一部オーバーラップさせて、前記照射ヘッドを前記対象領域に対して相対的に移動させ、所定の露光パターンで前記マスクレス露光を行うことにより、前記マスク材に所定の開口パターンを形成するとともに、前記メッシュ部の前記開口パターンにおけるマスク材の厚みが前記メッシュ部の厚みの50%以上90%以下であり、前記照射ヘッドの、前記照射素子の配列方向は、前記移動の方向に対して1度~15度の範囲で傾斜する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、高精度の印刷が可能なスクリーンマスク、スクリーンマスクの製造方法、スクリーン印刷装置、及び露光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置の構成を示す平面図。
【
図3】同実施形態にかかるスクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
【
図4】同実施形態にかかるスクリーンマスクの測定点を示す説明図。
【
図5】同実施形態にかかる露光装置の構成を示す説明図。
【
図6】同実施形態及び比較例に係る露光装置のヘッドの向き及び配置と照度エネルギー及び外観の対応を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク20について
図1乃至
図3を参照して説明する。
図1は本実施形態に係るスクリーン印刷装置10をZ方向から見た平面図であり、
図2はX方向から見た側面図である。
図3はスクリーンマスク20の製造方法を示す説明図であり、スクリーンマスク20の断面の構成を示している。なお、各図では説明のため、適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示しており、第1方向はY方向、第2方向はX方向である。
【0011】
図1に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク20と、スクリーンマスク20の印刷面側である一方の面(表面)に対向して印刷媒体30を保持する保持部材12と、スクリーンマスク20の印刷面側とは反対の他方の面(裏面)に当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動手段と、スクリーンマスク20を印刷媒体30に対向して支持する支持手段と、を備える。
【0012】
スクリーン印刷装置10は、印刷媒体30の表面に、各種印刷材料を所定のパターンで形成する。スクリーン印刷装置10は、例えば、チップ部品(コンデンサー、チップ抵抗、インダクター、サーミスター等)、タッチパネル、液晶基板(Liquid crystal display, LCD)シール、LTCC(Low Temperature Co-fired ceramics)基板、太陽電池用電極、その他の電子部品等の製造に用いられる。
【0013】
スクリーンマスク20は、フレーム21と、フレーム21に張設されたメッシュ部22と、メッシュ部22に形成されたマスク膜23と、を備える。スクリーンマスク20において、印刷を行う際に印刷媒体30の表面に対向する側を表面とし、その反対側であって塗布材が供給される側を裏面とする。
【0014】
フレーム21は、互いに平行な2対の辺を有し、例えば所望のサイズの方形の開口を備える枠状に構成される。フレーム21はメッシュ部22の外周縁を支持し、開口にメッシュ部22を張設する。本実施形態では一例として、フレーム21の開口部のY方向の寸法Fy=275mm、X方向の寸法Fx=275mm、とした。
【0015】
またフレーム21は、所定量の塗布材をマスク膜23の裏面側に保持する枠としても機能する。フレーム21とメッシュ部22は、例えば合成ゴム系やシアノアクリレート系の接着剤により接合部で接合されている。
【0016】
メッシュ部22は、伸び率の異なる内側のメインメッシュ26と外側のサポートメッシュ27とがUV硬化性の接着剤で固定されて接続されたいわゆるコンビネーション型である。メッシュ部22は、フレーム21の開口部分にマスク膜23を保持する。
【0017】
メインメッシュ26は、経糸26aと緯糸26bとが編まれて形成された織物であり、塗布材を透過可能に開口した透過部である孔部26cを多数有している。メインメッシュ26の経糸26aと緯糸26bは、例えばステンレス,タングステン等の金属のワイヤで構成される.経糸26aの径d1と緯糸の径d2はそれぞれ10~150μmであり、一例として本実施形態においてはd1=d2=φ13μmとした。経糸26aと緯糸26bは、それぞれ例えば矢印に沿うスキージ13の移動方向に対して、斜めに延びている。
【0018】
メインメッシュ26は、正方形状又は長方形状に構成されている。本実施形態においては一例としてY方向の寸法My=220mm、X方向の寸法Mx=200mmの長方形とした。
【0019】
サポートメッシュ27は、メインメッシュ26の外周に接着剤によって接合されている。サポートメッシュ27は、経糸27aと緯糸27bとが編まれて形成された織物である。サポートメッシュ27は、メインメッシュ26よりも伸び率が低く構成されている。サポートメッシュ27の、経糸27aと緯糸27bとは、例えば、ステンレス等の金属のワイヤで構成されている。
【0020】
例えば本実施形態において、メインメッシュ26の伸び率は、サポートメッシュ27の伸び率よりも大きい。例えば、引張り試験機にて引張った場合、メインメッシュ26の伸び率がサポートメッシュ27の伸び率の1倍~5倍である。
【0021】
サポートメッシュ27の外形はフレーム21の開口部分21aの形状に対応する形状であって、X方向の寸法とY方向の寸法が同等の正方形状に構成されている。サポートメッシュ27の外周が接着剤等によってフレーム21に接合され、支持されている。
【0022】
マスク膜23は、光硬化性の樹脂組成物、例えばPVA、PVAc、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる層である。マスク膜23は、メッシュ部22に形成され、フレーム21の開口部分に配されている。マスク膜23には、マスクレス露光によって、印刷用の所定の開口パターン23aが形成されている。開口パターン23aはメインメッシュ26部分に形成されている。開口パターン23aは、複数のモジュールパターン23bを有する。すなわち、マスク膜23の有効エリアA3において、同じモジュールパターン23bが縦方向及び横方向にそれぞれ複数、例えば30列及び40列で、マトリクス状に、配列されている。例えば各モジュールパターン23bはラインパターンである。本実施形態において、メインメッシュ26の外縁よりも内側にパターンが形成される有効エリアA3が規定され、その有効エリアA3の内側に、開口パターン23aが形成される。
【0023】
マスク膜23は、開口パターン23aにおいて感光性樹脂が存在せず、メッシュ部22の孔部を通過して塗布材が裏面から表面へと透過可能な印刷部を構成する。マスク膜23の開口パターン23a以外であってメッシュ部22の孔部が感光性樹脂で塞がれた部位は、塗布材としてのインクを透過しない非印刷部を構成する。
【0024】
ここで、
図3に示すように、スクリーンマスク20は、マスク膜23の厚み、すなわちマスク膜23を構成する乳剤(マスク材)の厚さ方向(Z方向)の寸法をT1とし、メッシュ部22の厚みをT2とすると、マスク膜23の厚みT1のばらつきが10%以内に構成されている。T1max-T1min≦T1×0.1を満たす。T1maxは複数の測定点において測定したマスク膜23の厚みT1の最大値であり、T1minは複数の測定点で測定したマスク膜23の厚みT1の最小値である。
【0025】
また、スクリーンマスク20は、透過部22aの中央の測定ポイントP1で測定されたメッシュ部22内の乳剤の厚みT3が、メッシュ部22の厚みT2の50%以上90%以下に構成されている。
【0026】
ここでメッシュ部22部内の乳剤の厚みT3は、マスク膜23のうちメッシュ部22に重なる部分の乳剤の厚みであり、透過部22aの中央の測定ポイントP1におけるマスク膜23の厚みT1から、透過部22aの中央の測定ポイントP1においてメッシュ部22から突出する乳剤の厚み、すなわちいわゆる乳厚を、差し引いた長さである。このメッシュ部22内の乳剤の厚みT3の測定ポイントP1は、メッシュ部22における各透過部22aの中央とする。一方、メッシュ部22の厚み寸法T2は、メッシュ部22の経糸26aと緯糸26bが重なる重合部における厚さ方向の寸法である。
【0027】
一例として、本実施形態においては開口パターン23aの径d3=20μm、メッシュ部22の厚みT2=22μm、経糸26aのZ方向の径d1=緯糸26bのZ方向の径d2=φ13μm、メッシュ部22内の乳剤の厚みT3=10μmに構成されている。
【0028】
マスク膜23が形成されたメッシュ部22は、例えばスキージ13による押圧力によって撓み変形し、押圧力が解除されることで復元するように、弾性変形可能に構成されている。マスク膜23の開口パターン23aに塗布材が保持された状態で、メッシュ部22の弾性変形によりマスク膜23が印刷媒体30に接離することで、塗布材が開口パターン23aから印刷媒体30に転写される。
【0029】
スキージ13は例えばウレタンゴム・シリコンゴム・合成ゴム・金属・プラスチック等の材料から、例えば薄い板状に構成される。例えば、スキージ13は先端の厚みが低減するように面取りされている。スキージ13はフレーム21に対して往復移動可能に構成されている。例えばスキージ13は移動方向と直交する方向においてマスク膜23の領域の全長にわたる長さを有して構成される。スキージ13の先端部分13aがスクリーンマスク20の裏面に当接し、表側に押しつけられた状態で、Y方向に沿う移動方向に移動することで、マスク膜23の全面を押圧し、塗布材が予め充填された開口パターン23aから塗布材を表側に押し出す。
【0030】
支持手段は、印刷媒体30に対して所定の間隔を開けて平行に、フレーム21を支持する。移動手段は、スキージ13を所定の速度で第1方向に沿って移動させる。
【0031】
次に、本実施形態にかかるスクリーン印刷装置10を用いたスクリーン印刷方法により印刷物31を製造する印刷物の製造方法について、
図1乃至
図3を参照して説明する。まず、スクリーンマスク20の表面側を保持部材12で保持された印刷媒体30の表面に対向させて配置する。
【0032】
そして、高粘度のペースト状の塗布材をスクリーンマスク20の裏面側、すなわち、印刷媒体30とは反対側の面から供給し、塗布材を開口パターン23a内に充填させる。
【0033】
次に、スクリーンマスク20の裏面、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体30の表側の面に対して所定の角度θで配置する。そして、スキージ13をメッシュ部22及びマスク膜23の裏面において、所定の印圧で印刷媒体30側に向けて押しつけながら、Y方向に沿って、所定の速度で移動させる。
【0034】
スキージ13は、例えばマスク膜23の裏面全面にわたる領域でマスク膜23を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜23は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体30に当接する。スキージ13が通過した塗布材が開口パターン23aから印刷媒体30側に押し出される。
【0035】
スキージ13が通過した後、マスク膜23及びメッシュ部22が復元するように変形して印刷媒体30から離れるとともに、一部の塗布材が印刷媒体30上に転写されて残ることで、印刷媒体30上にパターン印刷がなされ、印刷物31が完成する。ここでは、開口パターン23aとして複数の同じモジュールパターン23bを同時に描画し、印刷後に印刷物を切断して分割することで、同じモジュールパターン23bを有する複数の印刷物が製造される。なお塗布材は、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。
【0036】
印刷時にはX方向に長いスキージ13を、Z方向に押し付けながら、Y方向に所定量移動させる。この移動と押しつけによってメッシュ部22が変形して伸びる。
【0037】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク20の製造方法について
図1乃至
図6を参照して説明する。
図3は、スクリーンマスク20の製造方法を示す説明図である。
図4はメッシュ部22の一部の構成を示す平面図である。スクリーンマスク20の製造方法は、乳剤Pmの塗布処理、露光処理、を備える。
図5は露光装置を示す説明図である。
図6はヘッドの配置と照度エネルギーと外観の対応を示す説明図である。
図6において、本実施形態にかかる露光装置50と、比較例にかかる露光装置100A,100Bを対比して示す。
【0038】
マスク材となる乳剤Pmは、光硬化性の樹脂であり、たとえばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を包含する液体である。
【0039】
まず、フレーム21の枠内にメッシュ部22を略平面となるように取り付ける。この状態で、乳剤Pmをメッシュ部22上に塗布する塗布処理を行う。塗布処理の際には、メッシュ部22を略鉛直方向となるように設置した状態で、乳剤Pmが収容された供給用のバケットを用いて、メッシュ部22の表面に塗布する(ST1)。
【0040】
このとき、所定位置に配置されたバケットを下方から上方に向けて移動させ、バケットの縁で乳剤Pmを平らにならしながら塗布することで、メッシュ部22上に、乳剤Pmが平板状に形成される。このとき、塗布する回数に応じて厚さが変わるため、必要に応じて複数回塗布を繰り返す。また、乾燥後に膜厚を測定し場合によっては追加で塗布することもある。本実施形態では乾燥後に乳厚tmが10μm程度となるように乳剤Pmの厚さを設定する。
【0041】
次に、ST2に示すように、フォトマスクを用いないマスクレス露光装置50(マスクレス露光機)にて、マスクレス露光処理を行う。印刷面側から光を照射する露光処理である。露光処理は、幅広の領域を対象とするパターンで、露光量1000mJ/cm2の条件で露光することにより、所定範囲H1を硬化させる。具体的には、所定の露光パターン領域に、乳剤Pmの表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照射ヘッドに向けて配置し、照射ヘッドにより光を照射させ、乳剤Pmの表面を照らす露光処理を行う。
【0042】
露光処理において、レーザ光を照射する照射ヘッド52を所定方向に移動させながら、露光エリアA5(対象領域)を、複数の所定幅のスキャンエリアAs1に分けて、露光を行う。露光処理における複数のスキャンエリアAs1は、一回のスキャン処理で露光される幅の一部が互いにオーバーラップするように、その一部を重ねて平行に並んでいる。言い換えると、スキャンエリアAs1は、複数の経路での露光処理が重ねて行われるオーバーラップ部B1を有している。スキャンの経路の間隔であるスキャンピッチPs1よりも、一回のスキャンで露光するエリアの幅であるスキャンエリアAs1の幅の方が、大きくなるように設定されている。照射ヘッド52を相対移動させながら、並列する複数のスキャンエリアAs1の数だけ、露光処理を繰り返すことで、露光エリアA5の露光処理が完了する。
【0043】
露光処理によって、露光パターン領域の部位に対応して、乳剤Pmの紫外線が照射された部分が紫外線によって硬化する。
【0044】
図5及び
図6に示すように、露光装置50は、支持装置51と、DMD素子を備える照射ヘッド52と、各部の動作を制御する制御装置57と、を備える。
【0045】
露光装置50は、フォトマスクを介在させず、予め設定された対象のCADデータに基づく描画パターンで、照射ヘッド52で直接スクリーンマスク20に描画する露光装置である。
【0046】
支持装置51は、フレーム21及びメッシュ部22を有するメッシュ部材を移動可能なステージ51aを備える。支持装置51は、例えば制御装置57の制御により駆動され、ステージ51aを例えばX軸、及びY軸の2方向に移動させる移動機構を備える。ステージ51aは例えば吸着機構を備える。
【0047】
照射ヘッド52は、複数の波長のレーザを照射可能に構成される。例えば制御装置57の制御により駆動され、例えば2波長(375、405nm)のレーザを、単独、もしくは複合で照射する。
【0048】
照射ヘッド52は、レーザ光を発光するレーザ光源52aと、レーザ光源52aからの光を反射して照射する照射素子としての複数のDMD素子52bと、マイクロレンズアレイ52cと、を備える。本実施形態において、例えば照射ヘッド52は、縦横にそれぞれ768×1024画素のDMD素子52bが配列されている。各DMD素子52bは制御部の制御により、所定の露光パターンに応じて、ON/OFF制御され、ON状態にて当該素子からレーザ光がマスク膜23に対して照射される。レーザ光はマイクロレンズアレイ52cにより集光される。例えばDMD素子52bは、1秒間に数万回ON/OFF状態が切替えられる。
【0049】
照射ヘッド52の照度分布、すなわち、複数の素子における照射量の強度の差は、±5%以内である。
【0050】
照射ヘッド52のDMD素子52bの配列方向であるD2は、スキャン方向となる移動方向D1に対して、1度~15度の範囲で傾斜した姿勢に設置される。なお、本実施形態においてスキャン方向である移動方向D1はY軸方向に沿っている。
【0051】
制御装置57は、所定のプログラムを実行する制御部57aと、各種プログラムや設定値を記憶する記憶部57bと、を備える。例えば記憶部57bには、描画パターンや、露光処理の出力条件などが、記憶されている。
【0052】
制御部57aは、例えば予め設定されたプログラムに基づいて、照射ヘッド52や支持装置51を駆動することにより、メッシュ部22を保持するフレーム21を位置決めし、予め制御部57aにて算出した露光パターンにて露光し、メッシュ部22に開口パターン23aを形成する。
【0053】
例えば露光装置50は、制御部57aの制御により、開口パターン23aの座標データであるベースデータに、補正処理(調整処理)をして、実際の露光処理のパターンの座標データである露光パターンを決定する。
【0054】
また、制御部57aは、補正処理として、ラインパターンの線幅の大きさを、データ上で、一律に、拡大または縮小する補正処理を行う。言い換えると、制御部57aは、露光パターンの線幅を調整することが可能に構成されている。
【0055】
露光処理後、エッチング処理として、水や溶剤により、乳剤Pmの表面側を洗い流す。この処理によって、ST3に示すように、乳剤Pmの未硬化部分が洗い流される。すなわち、乳剤Pmの層において、未硬化領域は全て洗い流され、厚み方向において表面側から裏面側まで貫通する開口パターン23aが形成される。以上により乳剤Pmから、所定の形状の開口パターン23aを有するマスク膜23が形成される。
【0056】
以上のように構成されたスクリーンマスク20、スクリーン印刷装置10、及びスクリーンマスクの製造方法によれば、露光時のスキャンエリアAs1がオーバーラップすることにより、露光のムラが低減し、露光によるマスク膜23の厚みが均一化できる。
図6は、本実施形態にかかる露光装置50と、比較例1及び比較例2にかかる露光装置100A,100Bについて、照射ヘッドの配置及び向きと、照度分布と、露光後の露光エリアの外観の状態とを、比較して示す説明図である。露光装置50はオーバーラップ部B1が有り、かつ、照射ヘッド52のDMD素子52bの配列の方向D2が移動方向D1に対して傾斜している場合を示す。露光装置100Aはオーバーラップ部が無く、照射ヘッド152のDMD素子152bの配列の方向D2が移動方向D1に対して傾斜している場合を示す。露光装置100Bはオーバーラップ部が無く、照射ヘッド152のDMD素子152bの配列の方向D2が移動方向D1と同じ方向である場合を示す。
【0057】
例えば
図5及び
図6に示すようにスキャンエリアAs1内に照度の差がある場合、スキャンエリアAs1にオーバーラップ部B1がある場合には、オーバーラップ部B1がない場合に比べて、照射量の差が少なくなるため、露光ムラが低減できる。したがって、スクリーンマスクのパターン精度が良く、高精度の印刷が可能となる。
【0058】
さらに、上記のスクリーンマスクの製造方法は、露光装置のDMD素子の配列方向と、スキャン方向が傾斜する。このため、スキャンエリアAs1の境界における照射量のムラをより低減できる。
図6によれば、露光装置50における照度エネルギー分布は7%以内であるのに対し、露光装置100A,100Bでは10%以上となっている。すなわち、
図5及び
図6に示すように、例えばスキャンエリアAs1に照度の差がある場合、スキャン方向である移動方向D1と配列方向D2が同じ向きである場合は、特定のDMD素子52bが特定の領域を移動方向D1(スキャン方向)に沿って通ることになり、照度分布がライン状に現れやすいのに対し、移動方向D1と配列方向D2とが傾斜する場合には、同じルート上を複数のDMD素子52bが通ることになるため、照度分布の差が均一化され、露光ムラが低減できる。
【0059】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0060】
例えば上記実施形態においては、DMD素子52bの配列方向D2が移動方向D1(スキャン方向)に対して傾斜した構成を示したが、これに限られるものではない。例えば移動方向D1が配列方向D2に沿うように構成してもよい。この場合にも、スキャンエリアがオーバーラップすることで、オーバーラップしない場合と比べ、ムラを少なくすることが可能である。
【0061】
さらに上記実施形態においてはレーザ光源によりレーザ光を照射した例を示したが、これに限られるものではなく、紫外線光を照射する紫外線光源を備える構成としてもよい。
【0062】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(1)
メッシュ部に配されたマスク材の対象領域を、所定幅の複数のスキャンエリアに分け、前記スキャンエリアにレーザ光を照射する照射ヘッドにより前記スキャンエリア毎に露光するとともに、
隣接する前記スキャンエリア同士を一部オーバーラップさせて、前記照射ヘッドを前記対象領域に対して相対的に移動させる、スクリーンマスクの製造方法。
(2)
所定の露光パターンで前記露光を行うことにより、前記マスク材に所定の開口パターンを形成するとともに、
前記照射ヘッドは、複数の照射素子を備え、複数の照射素子の照度の差が±5%以下である、(1)に記載のスクリーンマスクの製造方法。
(3)
前記照射ヘッドは、2方向に複数の照射素子を配列してマトリクス状に備え、
前記照射素子の配列方向は、前記移動の方向に対して傾斜する、(1)または(2)に記載のスクリーンマスクの製造方法。
(4)
塗布材を透過する透過部を有するメッシュ部と、
前記メッシュ部に設けられ、所定のパターンを有するマスク材を有するマスク膜と、を備え、
前記マスク材の厚みのばらつきが10%以内であるスクリーンマスク。
(5)
前記メッシュ部の前記透過部におけるマスク材の厚みが、前記メッシュ部の厚みの50%以上90%以下である、(4)に記載のスクリーンマスク。
(6)
(4)または(5)に記載のスクリーンマスクと、
印刷媒体に対向して前記メッシュ部を支持するフレームと、
前記スクリーンマスクの印刷面側とは反対側の面に当接して移動可能に構成されたスキージと、を備え、
前記メッシュ部は、弾性変形可能であり、前記マスク膜の前記パターンに塗布材が保持された状態で、前記マスク膜が印刷媒体に接離することにより、前記塗布材が前記パターンから前記印刷媒体に転写されることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【符号の説明】
【0063】
10…スクリーン印刷装置、12…保持部材、13…スキージ、13a…先端部分、20…スクリーンマスク、21…フレーム、21a…開口部分、22…メッシュ部、22a…透過部、23…マスク膜、23a…開口パターン、23b…モジュールパターン、26…メインメッシュ、26a…経糸、26b…緯糸、26c…孔部、27…サポートメッシュ、27a…経糸、27b…緯糸、30…印刷媒体、31…印刷物、50…マスクレス露光装置、51…支持装置、51a…ステージ、52…照射ヘッド、52a…レーザ光源、52b…DMD素子(照射素子)、52c…マイクロレンズアレイ、57…制御装置、57a…制御部、57a…予め制御部、57b…記憶部、100A…露光装置、100B…露光装置、152…ヘッド、152b…DMD素子、A3…有効エリア、A5…露光エリア、As1…スキャンエリア、B1…オーバーラップ部、D1…移動方向(スキャン方向)、D2…配列方向。