(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液、濃縮液及び封孔処理方法
(51)【国際特許分類】
C25D 11/18 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
C25D11/18 301G
C25D11/18 A
(21)【出願番号】P 2018085372
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保田 徳
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 駿
(72)【発明者】
【氏名】森口 朋
(72)【発明者】
【氏名】原 健二
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102817059(CN,A)
【文献】特表2008-530362(JP,A)
【文献】特表2008-537975(JP,A)
【文献】特表2009-536692(JP,A)
【文献】特表2016-513755(JP,A)
【文献】特表2013-528707(JP,A)
【文献】特開2008-261282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液であって、
3価クロム塩、及び
界面活性剤を含有
し、
ニッケル塩を含まず、
フッ素化合物を含まない、
ことを特徴とする封孔処理液。
【請求項2】
前記3価クロム塩は、酢酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、リン酸塩及び硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の封孔処理液。
【請求項3】
前記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤である、請求項1又は2に記載の封孔処理液。
【請求項4】
前記アニオン系界面活性剤は、スルホン酸塩系界面活性剤である、請求項3に記載の封孔処理液。
【請求項5】
pHは、3~4である、請求項1~4のいずれかに記載の封孔処理液。
【請求項6】
前記封孔処理液中の前記3価クロム塩の含有量は、0.01 g/L~1 g/Lである、請求項1~
5のいずれかに記載の封孔処理液。
【請求項7】
前記封孔処理液中の前記界面活性剤の含有量は、0.05 g/L~5 g/Lである、請求項1~
6のいずれかに記載の封孔処理液。
【請求項8】
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液であって、
3価クロム塩と界面活性剤とを、
3価クロム塩:界面活性剤=1:5の重量比で、
含有する、請求項1~
7のいずれかに記載の封孔処理液。
【請求項9】
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液であって、
前記3価クロム塩は、酢酸クロム(III)であり、
前記界面活性剤は、スルホン酸塩系界面活性剤である、
請求項
8に記載の封孔処理液。
【請求項10】
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液であって、
酢酸クロム(III)を0.1 g/L~0.25 g/L含有し、及び
スルホン酸塩系界面活性剤を0.5 g/L~1.25 g/L含有し、
pHは、3~4であ
り、
ニッケル塩を含まず、
フッ素化合物を含まない、
ことを特徴とする封孔処理液。
【請求項11】
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔処理方法であって、
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液中に、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品を浸漬する工程を有し、
前記封孔処理液は、3価クロム塩、及び界面活性剤を含有
し、
ニッケル塩を含まず、フッ素化合物を含まない、
ことを特徴とする封孔処理方法。
【請求項12】
前記封孔処理液の液温は、80℃~98℃である、請求項
11に記載の封孔処理方法。
【請求項13】
前記封孔処理液のpHは、3~4である、請求項
11又は
12に記載の封孔処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液、濃縮液及び封孔処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜には、汚れ防止、耐食性の向上等を達成する為、封孔処理を施すのが一般的である。封孔処理方法として、沸騰水封孔、水蒸気封孔、常温封孔、酢酸ニッケル水溶液を用いて封孔処理を行う酢酸ニッケル封孔等が知られている。
【0003】
中でも、沸騰水封孔に比べて皮膜の耐食性が得られ易く、水蒸気封孔に比べて作業効率に優れており、常温封孔に比べて液管理がし易い等の理由により、酢酸ニッケル封孔が特に用いられている。
【0004】
特許文献1は、陽極酸化したアルミニウム系金属を、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸クロム、ホウ酸を主成分とするpH5~7の水溶液中で加熱するアルミニウム系金属陽極酸化皮膜の封孔処理方法の技術である。その水溶液は、必ず酢酸ニッケルを含み、その水溶液のpHは5~7である。また、その水溶液は、界面活性剤を含まない。
【0005】
近年、ニッケルアレルギーや微粉末性のニッケル塩の有毒性が問題になっている。特許文献1の技術とは違って、ニッケル塩を用いない封孔処理方法によって、酢酸ニッケル封孔と同程度の耐食性、封孔度等の封孔性能を有する陽極酸化皮膜を製造することが望まれている。
【0006】
特許文献2は、アルミニウム基材の表面に、陽極酸化皮膜と、コバルト、クロム等が存在するアルマイト部材、そのアルマイト部材を得る為に、アルミニウム基材の表面に陽極酸化皮膜を形成した後の陽極酸化後処理において用いられる処理剤であり、コバルトイオン、クロムイオン等と、フッ素イオンとを含有する処理剤、そのアルマイト部材を得る為に、アルミニウム基材の表面に陽極酸化皮膜を形成する前の陽極酸化前処理において用いられる処理剤であり、苛性アルカリ、シリカ、硝酸、鉱酸、有機酸、フッ素化合物及び界面活性剤を含有する処理剤の技術である。
【0007】
その陽極酸化後処理は、5~70℃の処理条件で行われる。その処理剤は、必ずフッ素イオン、フッ素化合物が含まれる。また、その処理剤は、界面活性剤を含まない。
【0008】
特許文献3は、本出願人の技術であり、アルカリ金属塩等、pH緩衝剤及び界面活性剤を含有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液、これの濃縮液、これを用いた封孔処理方法の技術である。この封孔処理液によれば、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、ニッケル塩を含有する封孔処理液を用いた場合と同程度の封孔性能を付与することができ、且つ、優れた耐汚染性を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特公昭48-037898(特許0733652)
【文献】特開2015-232155
【文献】国際公開番号WO2017/170370A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、新規なアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、3価クロム塩及び界面活性剤を含有し、封孔性能を付与することができ、且つ、封孔処理された陽極酸化皮膜が優れた耐汚染性、染料定着性及び優れた染色外観を示すことができるアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、3価クロム塩及び界面活性剤を含有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液を用いると、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の封孔処理液を用いると、ニッケル塩を含有せずとも、ニッケル塩を含有する封孔処理液を用いた場合と同程度の封孔性能を付与することができ、且つ、封孔処理された陽極酸化皮膜が優れた耐汚染性、染料定着性及び優れた染色外観を示すことができる。即ち、本発明は、下記のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液、及び封孔処理方法に関する。
【0014】
項1.
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液であって、
3価クロム塩、及び
界面活性剤を含有する、
ことを特徴とする封孔処理液。
【0015】
項2.
前記3価クロム塩は、酢酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、リン酸塩及び硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である、前記項1に記載の封孔処理液。
【0016】
項3.
前記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤である、前記項1又は2に記載の封孔処理液。
【0017】
項4.
前記アニオン系界面活性剤は、スルホン酸塩系界面活性剤である、前記項3に記載の封孔処理液。
【0018】
項5.
pHは、3~4である、前記項1~4のいずれかに記載の封孔処理液。
【0019】
項6.
ニッケル系金属塩を含まない、前記項1~5のいずれかに記載の封孔処理液。
【0020】
項7.
フッ素化合物を含まない、前記項1~6のいずれかに記載の封孔処理液。
【0021】
項8.
前記封孔処理液中の前記3価クロム塩の含有量は、0.01 g/L~1 g/Lである、前記項1~7のいずれかに記載の封孔処理液。
【0022】
項9.
前記封孔処理液中の前記界面活性剤の含有量は、0.05 g/L~5 g/Lである、前記項1~8のいずれかに記載の封孔処理液。
【0023】
項10.
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液であって、
3価クロム塩と界面活性剤とを、
3価クロム塩:界面活性剤=1:5の重量比で、
含有する、前記項1~9のいずれかに記載の封孔処理液。
【0024】
項11.
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液であって、
前記3価クロム塩は、酢酸クロム(III)であり、
前記界面活性剤は、スルホン酸塩系界面活性剤である、
前記項10に記載の封孔処理液。
【0025】
項12.
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液であって、
酢酸クロム(III)を0.1 g/L~0.25 g/L含有し、及び
スルホン酸塩系界面活性剤を0.5 g/L~1.25 g/L含有し、
pHは、3~4である、
ことを特徴とする封孔処理液。
【0026】
項13.
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔処理方法であって、
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液中に、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品を浸漬する工程を有し、
前記封孔処理液は、3価クロム塩、及び界面活性剤を含有する、
ことを特徴とする封孔処理方法。
【0027】
項14.
前記封孔処理液の液温は、80℃~98℃である、前記項13に記載の封孔処理方法。
【0028】
項15.
前記封孔処理液のpHは、3~4である、前記項13又は14に記載の封孔処理方法。
【0029】
項16.
前記項13~15のいずれかに記載の封孔処理方法により封孔処理された物品。
【発明の効果】
【0030】
本発明の封孔処理液によれば、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、ニッケル塩を含有する封孔処理液を用いた場合と同程度の封孔性能を付与することができ、優れた耐汚染性、染料定着性及び優れた染色外観を付与することができる。
【0031】
また、本発明のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔処理方法によれば、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、ニッケル塩を含有する封孔処理液を用いた場合と同程度の封孔性能を付与することができ、且つ、優れた耐汚染性、染料定着性及び優れた染色外観を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0033】
1.封孔処理液
本発明は、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液(以下「封孔処理液」とも記す)であって、3価クロム塩、及び界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0034】
本発明の封孔処理液を用いると、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、ニッケル塩を含有する封孔処理液を用いた場合と同程度の封孔性能を付与することができ、優れた耐汚染性、染料定着性及び優れた染色外観を付与することができる
【0035】
(1)3価クロム塩
3価クロム塩は、封孔処理液において、クロムイオンのイオン源となる。
【0036】
3価クロム塩は、酢酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、リン酸塩及び硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
封孔処理液中の3価クロム塩の含有量は、0.01 g/L~1 g/Lであることが好ましい。
【0038】
3価クロム塩は、酢酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、リン酸塩及び硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。3価クロム塩として、硝酸クロム、硫酸クロム、塩化クロム、リン酸クロム、酢酸クロム、水酸化クロム等を用いることが好ましく、酢酸クロム(III)を用いることがより好ましい。
【0039】
3価クロム塩は、クロム酸や重クロム酸等の6価クロムを還元剤により3価に還元した3価クロム等のクロム化合物を用いることもできる。
【0040】
3価クロム塩は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0041】
封孔処理液中の3価クロム塩の含有量は、0.01 g/L~1 g/L程度であることが好ましい。封孔処理液中の3価クロム塩の含有量は、0.05 g/L~0.5 g/L程度であることがより好ましく、0.1 g/L~0.25 g/L程度であることが更に好ましい。
【0042】
本発明の封孔処理液は、3価クロム塩(酢酸クロム(III)等)を含むことで、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、優れた封孔性能、耐汚染性を付与することができる。また、封孔処理液が3価クロム塩を含むことで、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、優れた染料定着性を付与することができる。
【0043】
(2)界面活性剤
界面活性剤は、アニオン系界面活性剤であることが好ましい。
【0044】
アニオン系界面活性剤は、スルホン酸塩系界面活性剤であることが好ましい。
【0045】
封孔処理液中の界面活性剤の含有量は、0.05 g/L~5 g/Lであることが好ましい。
【0046】
界面活性剤は特に限定されず、従来公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤として、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることが好ましい。
【0047】
アニオン系界面活性剤として、硫酸塩系界面活性剤、スルホン酸塩系界面活性剤、リン系界面活性剤等を用いることが好ましい。
【0048】
硫酸塩系界面活性剤として、芳香族硫酸塩系界面活性剤、脂肪族硫酸塩系界面活性剤等を用いることが好ましい。
【0049】
芳香族硫酸塩系界面活性剤として、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩が挙げられる。また、脂肪族硫酸塩系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。スルホン酸塩系界面活性剤としては、芳香族スルホン酸塩系界面活性剤等が挙げられる。
【0050】
芳香族スルホン酸塩系界面活性剤として、ベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸塩化合物等を用いることが好ましい。芳香族スルホン酸塩系界面活性剤として、ベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸塩骨格に、アルキル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、アルコール基、ビニル基やアリル基等のアルキレン基や多重結合を持つ基、更なるスルホン酸基が置換した化合物等を用いることが好ましい。芳香族スルホン酸塩系界面活性剤として、それら化合物のホルマリン等での重縮合物、並びに共重合物等を用いることが好ましい。
【0051】
芳香族スルホン酸塩系界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、並びにそれらのホルマリン等重縮合物等を用いることが好ましい。芳香族スルホン酸塩系界面活性剤として、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン重縮合物等を用いることが好ましい。芳香族スルホン酸塩系界面活性剤として、アルキレンベンゼンスルホン酸塩やアルキレンナフタレンスルホン酸塩等からの共重合物等を用いることが好ましい。芳香族スルホン酸塩系界面活性剤として、ジフェニルエーテルジスルホン酸塩等の、複数個のフェニルスルホン酸塩がエーテル結合した化合物等を用いることが好ましい。
【0052】
芳香族スルホン酸塩系界面活性剤として、それら化合物に、アルキル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基等が置換した化合物等を用いることが好ましい。このような芳香族スルホン酸塩系界面活性剤として、例えば、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホコハク酸塩等を用いることが好ましい。
【0053】
リン系界面活性剤として、リン酸エステル系界面活性剤、リン酸エステル塩系界面活性剤等を用いることが好ましい。リン系界面活性剤として、具体的に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキレン化フェニルエーテルリン酸エステル、アルキルリン酸エステル等、それらの塩等を用いることが好ましい。
【0054】
ノニオン性界面活性剤として、封孔処理液中の濃度の調整や、他の界面活性剤との組み合わせにより封孔処理液中で曇点を85℃以上とすることができるノニオン性界面活性剤を好適に用いることができる。ノニオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリンエステルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステル、脂肪酸アルカノールアミド等を用いることが好ましい。
【0055】
両性界面活性剤としてはアルキルベタイン、脂肪酸アミドベタイン、アルキルアミンオキサイド等を用いることが好ましい。
【0056】
界面活性剤として、アニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。アニオン系界面活性剤の中でも、硫酸塩系界面活性剤、スルホン酸塩系界面活性剤、リン系界面活性剤等を用いることがより好ましく、スルホン酸塩系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
【0057】
界面活性剤は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0058】
ノニオン系界面活性剤は、封孔処理液の曇点が低くならないように選択することが良い。ノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤とを混合して用いる場合は、界面活性剤の曇点を高くすることができる。アニオン系界面活性剤を用いる場合は、含有金属や両性界面活性剤と反応して濁りを生じないものを選択することが良い。
【0059】
封孔処理液中の界面活性剤の含有量は、0.05 g/L~5 g/L程度であることが好ましい。封孔処理液中の界面活性剤の含有量は、0.25 g/L~2.5 g/L程度であることがより好ましく、0.5 g/L~1.25 g/L程度であることが更に好ましい。
【0060】
本発明の封孔処理液は、界面活性剤(ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物等)を含むことで、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、優れた封孔性能及び耐汚染性を付与することができる。また、封孔処理液が界面活性剤を含むことで、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、優れた染料定着性及び染色外観を付与することができる。封孔処理液が界面活性剤を含むことで、封孔処理液が十分な封孔性能を示すことができ、封孔処理された陽極酸化皮膜の表面の粉吹きやカブリ外観不良を抑制することができる。
【0061】
(3)pH緩衝剤
本発明の封孔処理液は、封孔性能及び耐汚染性を向上させる為に、また液の使用実用性を向上させる為に、必要に応じてpH緩衝剤を含んでも良い。
【0062】
pH緩衝剤は特に限定されず、従来公知のpH緩衝剤を用いることができる。pH緩衝剤として、有機酸塩、アンモニウム塩、アミノ酸、ホウ酸塩、アミン化合物、含窒素複素環式化合物等を用いることが好ましい。pH緩衝剤として、封孔処理液により封孔処理されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜に優れた耐汚染性を付与することができる点で、含窒素複素環式化合物等を用いることが好ましい。
【0063】
有機酸塩として、カルボン酸、オキシカルボン酸の塩等を用いることが好ましい。カルボン酸及びオキシカルボン酸の炭素数は4以下であることが好ましい。前記塩として、ナトリウム塩、カリウム塩等であることが好ましい。
【0064】
アンモニウム塩として、有機酸のアンモニウム塩、無機酸のアンモニウム塩等を用いることが好ましい。有機酸のアンモニウム塩として、カルボン酸やオキシカルボン酸のアンモニウム塩等を用いることが好ましい。前記カルボン酸及びオキシカルボン酸の炭素数は4以下であることが好ましい。無機酸のアンモニウム塩として、硫酸アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩、スルファミン酸アンモニウム塩等であることが好ましい。
【0065】
アミノ酸として、グリシン、アラニン、アスパラギン等、それらの塩等を用いることが好ましい。
【0066】
ホウ酸塩として、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等を用いることが好ましい。
【0067】
アミン化合物として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン、アルキルアミン、芳香族アミンや、尿素等の水溶性カルボニルアミン等を用いることが好ましい。
【0068】
含窒素複素環式化合物として、ヘテロ原子として少なくとも1つの窒素原子を含む複素環式化合物、ヘテロ原子として少なくとも1つの窒素原子及び少なくとも1つの酸素原子を含む複素環式化合物等を用いることが好ましい。前記含窒素複素環式化合物として、エチレンイミン環、アジリン環、アゼチジン環、アゼト環、ピロリジン環、ピロール環、ピペリジン環、ピリジン環、ヘキサメチレンイミン環、アザトロピリデン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、モルホリン環、プテリジン環、プリン環等を含む含窒素複素環式化合物を用いることが好ましい。含窒素複素環式化合物の中でも、ピロリジン環、ピロール環、ピペリジン環、ピリジン環、ヘキサメチレンイミン環、アザトロピリデン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、モルホリン環、プテリジン環、プリン環等を含む含窒素複素環式化合物を用いることが好ましい。
【0069】
含窒素複素環式化合物として、エチレンイミン、アジリン、アゼチジン、アゼト、ピロリジン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、ヘキサメチレンイミン、アザトロピリデン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イミダゾリン、ピラジン、モルホリン、プテリジン、プリン等を用いることが好ましい。含窒素複素環式化合物として、それら化合物の骨格にアミノ基やメチル基が付加した化合物を用いることができる。
【0070】
含窒素複素環式化合物の中でも、環状構成原子に一つ又は二つの窒素原子をヘテロ原子として持ち、炭素又は一つのヘテロ原子酸素と炭素からなる環状5員環~7員環の複素環式化合物を用いることが好ましい。含窒素複素環式化合物として、具体的には、ピロリジン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、ヘキサメチレンイミン、アザトロピリデン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イミダゾリン、ピラジン、モルホリン等の化合物とその環状骨格を基本構造とした化合物群を用いることが好ましい。
【0071】
含窒素複素環式化合物として、重多環構造を持ち、ヘテロ原子窒素を4つ以上持つもの、例えばプリン、プテリジン等の化合物とその多重環状骨格を基本構造とした化合物群を用いることが好ましい。含窒素複素環式化合物の中でも、5員環~6員環のものが更に好ましく、ピロリジン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イミダゾリン、ピラジン、モルホリン等の化合物、それら環状骨格を基本構造とした化合物群を用いることが好ましい。含窒素複素環式化合物の中でも、環内に二重結合を持つピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イミダゾリン、ピラジン等の化合物とその環状骨格を基本構造とした化合物群を用いることが好ましい。これらの化合物群を構成する置換基として、アミノ基やメチル基等が挙げられ、これらの置換基が付加した化合物群を用いても良い。
【0072】
含窒素複素環式化合物として、2-アミノピリジン、4-アミノピリジン等のアミノピリジン等、2-メチルイミダゾール等のメチルイミダゾール等を用いることが好ましい。含窒素複素環式化合物の中でも、ピリジン、イミダゾール、アミノピリジン、メチルイミダゾール等が最も好ましい。
【0073】
含窒素複素環式化合物として、ピリジン;2-アミノピリジン、4-アミノピリジン等のアミノピリジン;イミダゾール;2-メチルイミダゾール等のメチルイミダゾール;ピラゾール;プテリジン;オキサゾール等を用いることが特に好ましい。
【0074】
pH緩衝剤は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0075】
封孔処理液中のpH緩衝剤の濃度は、液のpHの緩衝性を付与できれば良く、0.1g/L~100g/L程度が好ましく、0.2g/L~20g/L程度がより好ましい。
【0076】
本発明の封孔処理液は、pH緩衝剤を含むことで、優れたpHの緩衝性を示すことができ、処理品表面の外観が良く、乾きジミが無く、染色品の色ヌケが抑制される。
【0077】
(4)pH調整剤
本発明の封孔処理液は、封孔性能及び耐汚染性を向上させる為に、また液の使用実用性を向上させる為に、必要に応じてpH調整剤を含んでも良い。
【0078】
pH調整剤は特に限定されず、従来公知のpH調整剤を用いることができる。
【0079】
封孔処理液を酸性側に調整する為のpH調整剤として、例えば、酢酸、スルファミン酸、硫酸、硝酸、有機スルホン酸等、これらの希釈水溶液を用いることが好ましい。これらの中でも、封孔性能に優れる点で、酢酸又はこのこれらの希釈水溶液を用いることが好ましい。
【0080】
封孔処理液をアルカリ性側に調整する為のpH調整剤として、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を用いることが好ましい。これらの中でも、封孔性能に優れる点で、水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
【0081】
pH調整剤は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0082】
封孔処理液中のpH調整剤の濃度は、液のpHを調整できれば良く、0.1g/L~20g/L程度が好ましく、0.2g/L~10g/L程度がより好ましく、0.3g/L~5g/L程度が更に好ましい。
【0083】
本発明の封孔処理液は、pH調整剤を含むことで、封孔処理液が十分な封孔性能を示すことができ、封孔処理液により封孔処理された陽極酸化皮膜の封孔度の低下を抑制することができる。
【0084】
(5)金属塩
本発明の封孔処理液は、封孔性能及び耐汚染性を向上させる為に、また液の使用実用性を向上させる為に、必要に応じて金属塩を含んでも良い。
【0085】
金属塩は、第1族から第16族元素の金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0086】
金属塩として、特に限定されず、水溶性の金属塩を用いることが好ましい。金属塩の中でも、封孔処理されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜が耐汚染性に優れる点で、カルボン酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機スルホン酸塩等を用いることが好ましく、カルボン酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、硝酸塩がより好ましく、酢酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、硝酸塩が更に好ましく、酢酸塩、硝酸塩が特に好ましく、酢酸塩が最も好ましい。
【0087】
金属塩に含まれる金属として、第1族から第16族元素の金属塩であれば、特に限定されずに用いることができる。封孔処理されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜が耐食性に優れる点で、具体的には、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Zn、Zr、Mo、Ag、Sn、W等を好ましく用いることができ、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Zn、Zr 等の金属塩をより好ましく用いることができ、Mg、Al、Cr、Mn、Zn、Zr等の金属塩を更に好ましく用いることができ、Crの金属塩を特に好ましく用いることができる。
【0088】
金属塩に含まれる金属は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0089】
金属塩は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0090】
封孔処理液中の金属塩の濃度は、特に限定されず、0.001 g/L~10 g/L程度が好ましく、0.01 g/L~1 g/Lがより好ましい。
【0091】
本発明の封孔処理液は、金属塩を含むことで、封孔処理液が十分な封孔性能を示すことができ、封孔処理液により封孔処理されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜が耐食性を十分に示すことができる。
【0092】
(6)その他の成分
本発明の封孔処理液は、封孔性能及び耐汚染性を向上させる為に、また液の使用実用性を向上させる為に、必要に応じて防カビ剤、錯化剤等の添加剤成分を含んでも良い。
【0093】
添加剤として、例えば、安息香酸、安息香酸塩等の防カビ剤;クエン酸、クエン酸塩等の錯化剤等が挙げられる。防カビ剤としては市販の防カビ剤、例えば「TACカビコロン」(奥野製薬工業株式会社製)を添加しても良い。
【0094】
(7)封孔処理液
封孔処理液のpHは、3~4であることが好ましい。
【0095】
封孔処理液は、ニッケル系金属塩を含まないことが好ましい。
【0096】
封孔処理液は、フッ素化合物又はフッ素イオンを含まないことが好ましい。
【0097】
本発明の好ましい態様は、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液であって、酢酸クロム(III)を0.1 g/L~0.25 g/L含有し、及びスルホン酸塩系界面活性剤を0.5 g/L~1.25 g/L含有し、pHは、3~4である封孔処理液である。アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液として、酢酸クロム(III)を0.15 g/L含有し、及びスルホン酸塩系界面活性剤を0.75 g/L含有することが好ましい。
【0098】
本発明の封孔処理液は、3価クロム塩及び界面活性剤を含有していれば、その他の成分は特に限定されず、水溶液であることが好ましい。
【0099】
3価クロム塩及び界面活性剤の含有量、含有比
本発明の封孔処理液中の3価クロム塩及び界面活性剤の含有量の合計は、0.06 g/L~6 g/L程度であることが好ましく、0.3 g/L~3.0 g/L程度であることがより好ましく、0.6 g/L~1.5 g/L程度であることが更に好ましい。
【0100】
本発明の封孔処理液中、3価クロム塩と界面活性剤との含有比(重量比)は、[3価クロム塩の重量]:[界面活性剤の重量]として、1:3~1:7程度であることが好ましく、1:4~1:6程度であることがより好ましく、1:5程度であることが更に好ましい。より好ましくは、酢酸クロム(III)とスルホン酸塩系界面活性剤とを、酢酸クロム(III):スルホン酸塩系界面活性剤=1:5の重量比で、含有する封孔処理液である。
【0101】
本発明の封孔処理液は、3価クロム塩及び界面活性剤を含有することで、封孔処理液が十分な封孔性能を示すことができ、封孔処理液により封孔処理されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜が耐汚染性、染料定着性及び優れた染色外観を十分に示すことができ、封孔処理された陽極酸化皮膜の表面の粉吹きやカブリ外観不良を抑制することができる。
【0102】
封孔処理液のpH
封孔処理液のpHは、3~4程度であることが好ましく、3.3~3.7程度であることがより好ましく、3.5程度であることが更に好ましい。
【0103】
本発明の封孔処理液は、pHが3~4であることで、含まれる3価クロム塩及び界面活性剤との関係で、封孔処理液が十分な封孔性能を示すことができ、封孔処理液により封孔処理されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜が耐汚染性、染料定着性及び優れた染色外観を十分に示すことができ、且つ、被処理物の表面に粉状付着物が付着する外観不良(粉吹き、カブリ)が抑制される。
【0104】
含まないことが好ましい成分
本発明の封孔処理液は、ニッケル系金属塩等の金属塩を含まないこと、或いは実質的に含まないことが好ましい。ニッケル系金属塩等の金属塩として、Ni、Co等の金属塩が挙げられる。
【0105】
近年、ニッケルアレルギーや微粉末性のニッケル塩の有毒性が問題になっているので、封孔処理液には、ニッケル系金属塩を用いない封孔処理方法によって、酢酸ニッケル封孔と同程度の耐食性、封孔度等の封孔性能を有する陽極酸化皮膜を製造することが望まれている。
【0106】
本発明の封孔処理液は、フッ素化合物又はフッ素イオンを含まないこと、或いは実質的に含まないことが好ましいが好ましい。フッ素イオンのイオン源として、フッ化水素、フッ化アンモニウム、酸性フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、酸性フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、酸性フッ化ナトリウム、フッ化コバルト、ジルコンフッ化アンモニウム、ホウフッ化物等のフッ素化合物が挙げられる。
【0107】
フッ素によるアルミニウム合金及び陽極酸化皮膜の過剰溶解によって、染料定着性や染色外観が低下するという理由が有るので、フッ素化合物又はフッ素イオンを用いない封孔処理方法によって、耐食性、封孔度等の封孔性能を有する陽極酸化皮膜を製造することが望まれている。
【0108】
2.濃縮液
本発明は、3価クロム塩及び界面活性剤を含有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液(封孔処理液)を、濃縮液として調製することも可能である。
【0109】
本発明の封孔処理液の一つの態様として、その封孔処理液に含まれる成分の濃度が高い濃縮液とすることで、運搬、保存が容易になり、水等の希釈液で希釈することにより、前記封孔処理液を容易に調製することができる。前記希釈液として、水を用いることが好ましい。
【0110】
濃縮液に含まれる成分は、前記本発明の封孔処理液に含まれる3価クロム塩、界面活性剤等、その封孔処理液と同一のものを用いることができ、前述した通りである。濃縮液は、前記本発明の封孔処理液を元に調製することも可能である。
【0111】
濃縮液は、前記封孔処理液と同一の成分を含有しても良く、それら成分の含有量は異なって良い。濃縮液を用いて本発明の封孔処理液を調製することできる様に、濃縮液中のそれら成分の含有量を調整すれば良い。濃縮液を用いることで、運搬、保存が容易である。濃縮液を水等で希釈することで、本発明の封孔処理液を容易に調製することができる。
【0112】
3.封孔処理方法
本発明は、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔処理方法であって、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液中に、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品を浸漬する工程を有し、前記封孔処理液は、3価クロム塩、及び界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0113】
本発明のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔処理方法によれば、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、ニッケル塩を含有する封孔処理液を用いた場合と同程度の封孔性能を付与することができ、且つ、優れた耐汚染性、染料定着性及び優れた染色外観を付与することができる。
【0114】
封孔処理方法において、封孔処理液の液温(浴温)は80℃~98℃であることが好ましい。
【0115】
封孔処理方法において、使用する封孔処理液のpHは3~4であることが好ましい。
【0116】
封孔処理液としては、上記説明した本発明の封孔処理液を用いることができる。封孔処理方法では、その封孔処理液中に、アルミニウムの合金の陽極酸化皮膜を有する物品を浸漬する工程を有する。
【0117】
浸漬方法として、特に限定されず、従来公知の方法により浸漬すればよい。
【0118】
(1)封孔処理液の液温
浸漬する工程では、封孔処理液の液温(浴温)は、80℃~98℃程度であることが好ましく、92℃~98℃程度であることがより好ましく、95℃~98℃程度であることが更に好ましい。封孔処理方法において、封孔処理液の温度を調整することで、十分な封孔性能を示すことができる。
【0119】
(2)封孔処理液のpH
封孔処理方法において、使用する封孔処理液のpHは3~4程度であることが好ましく、3.3~3.7程度であることがより好ましく、3.5程度であることが更に好ましい。封孔処理方法において、封孔処理液のpHを調整することで、封孔処理液が十分な封孔性能を示すことができ、被処理物の表面に粉状付着物が付着する外観不良(粉吹き、カブリ)が抑制される。
【0120】
(3)封孔処理の時間
封孔処理時間は、通常、処理対象とする陽極酸化皮膜の膜厚により決定することができる。封孔処理時間は、通常、3分~1時間程度の時間で調整することが好ましい。
【0121】
例えば、処理対象とする陽極酸化皮膜の膜厚を示す数(μm)に、0.1~10を乗じて得られる数を封孔処理時間(分)とすることが好ましい。更に、膜厚を示す数(μm)に、0.2~5を乗じて得られる数を封孔処理時間(分)とすることがより好ましく、膜厚を示す数(μm)に、0.5~4を乗じて得られる数を封孔処理時間(分)とすることが更に好ましい。
【0122】
例えば、陽極酸化皮膜の膜厚が10μmであるならば、浸漬時間は、10に0.2~5を乗じて、2~50分程度とすることが好ましい。
【0123】
封孔処理方法において、封孔処理時間を調整することで、封孔処理液が十分な封孔性能を示すことができ、封孔処理液により封孔処理されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜が耐汚染性を十分に示すことができ、粉吹き、カブリ等の外観不良による、被処理物の外観の低下を抑制することができる。
【0124】
(4)封孔処理の方法
本発明の封孔処理方法では、上記したアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品を被処理物として用い、封孔処理液中に被処理物を浸漬すればよい。必要に応じて、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品に電解着色、染色等を施した後、十分に水洗を行い、封孔処理液中に被処理物を浸漬してもよい。これにより、被処理物のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔性能を大きく向上させることができる。
【0125】
封孔処理方法において、浸漬する工程では、封孔処理液を撹拌しながらアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品を浸漬してもよい。撹拌方法として、循環攪拌、空気攪拌、ガス撹拌、揺動撹拌等を好適に採用することができる。撹拌方法の中でも、循環攪拌、ガス撹拌が好ましく、循環攪拌がより好ましい。そのガス撹拌としては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを用いたガス撹拌を好適に採用することができる。
【0126】
撹拌方法として、循環攪拌が好ましい。設備上空気攪拌を行うことが必要な場合、不活性ガスを用いたガス撹拌を行うことが、封孔処理液の濁りを抑制することができる点で好ましい。
【0127】
本発明の封孔処理方法は、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液中にアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品を浸漬する工程中に、その封孔処理液中の濁りを除去する濁り除去処理を行ってもよい。また、濁り除去処理は、上記工程中以外の、例えば、物品を陽極酸化皮膜用封孔処理液中に浸漬するまでの待機中や、ラインの休止中に行ってもよい。濁り除去処理を行うことで、濁りに起因する粉吹き、カブリ等の外観不良による、陽極酸化皮膜の外観の低下を抑制することができる。
【0128】
濁りの除去方法として、特に限定されず、従来公知の除去方法を用いることができる。除去方法として、濾過除去を好適に採用することができる。具体的には、封孔処理を行う槽から薬品補給添加溶解槽であるクッションタンク等の予備タンクに、封孔処理液の一部を流し、封孔処理液の温度を好ましくは50℃以下に冷却し、濾過器を通して濾過を行い、上記封孔処理を行う槽に戻して循環させる濾過除去である。設備にクッションタンクが無い場合、単純濾過循環により濾過除去を行ってもよい。
【0129】
4.封孔処理された物品
本発明の封孔処理方法により、封孔処理された物品を作製することができる。封孔処理する対象は、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜、又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品である。
【0130】
本発明の封孔処理方法では、処理対象物はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜である。アルミニウム合金の陽極酸化皮膜として、特に限定されず、一般的なアルミニウム合金に硫酸、シュウ酸、リン酸等を用いた公知の陽極酸化法を適用して、その陽極酸化法により得られたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を好ましく用いることができる。
【0131】
アルミニウム合金として、特に限定的ではなく、各種のアルミニウム主体の合金を陽極酸化の対象とすることができる。アルミニウム合金として、JISに規定されている
JIS-A 1千番台~7千番台で示される展伸材系合金、AC、ADCの各番程で示される鋳物材、ダイカスト材等を代表とするアルミニウム主体の各種合金群等を好ましく用いることができる。
【0132】
アルミニウム合金に施される陽極酸化法として、例えば、硫酸濃度が100g/L~400g/L程度の水溶液を用い、液温を-10℃~30℃程度として、0.5~4A/dm2程度の陽極電流密度で電解を行う方法を好ましく用いることができる。
【0133】
本発明の封孔処理方法では、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に電解着色を施したものを処理対象としてもよい。
【0134】
電解着色方法として、公知の着色技術の方法を採用できる。例えば、陽極酸化処理を施した後、電解着色浴に浸漬し、二次電解を行うことにより陽極酸化皮膜に着色を施すことができる。電解着色浴として、ニッケル塩-ホウ酸浴、ニッケル塩-スズ塩-硫酸浴等を好ましく用いることができる。
【0135】
5.染料定着方法
本発明の封孔処理方法では、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に染料を用いて染色を施したもの(染色処理を施したもの)を処理対象としてもよい。染料を用いた染色方法として、従来公知の染料水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法を好ましく採用することができる。
【0136】
この場合、本発明の封孔処理方法は染料定着処理方法としても有用である。
【0137】
本発明の染料定着処理方法は、アルミニウム合金(又はこれを含む物品)に対して、(1)陽極酸化処理(陽極酸化皮膜の形成)、(2)染色処理、(3)染料定着処理及び(4)封孔処理を、順次行うものである。本発明の染料定着処理方法により、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜やアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品に対して、優れた染料の定着性を付与することが可能である。
【0138】
アルミニウム合金の染料定着処理方法であって、
(1)アルミニウム合金に陽極酸化皮膜を形成する工程、
(2)前記陽極酸化皮膜に染色処理を行う工程、
(3)前記染色処理した染料定着処理を行う工程、及び
(4)アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液中に、前記染料定着処理した処理したアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を浸漬する工程、
を有し、前記染料定着処理液は、3価クロム塩、及び界面活性剤を含有する、
ことを特徴とする染料定着処理方法。
【0139】
前記染色処理は、10℃~70℃で行うことが好ましい。
【0140】
染料として、アルミニウム合金陽極酸化皮膜用染料として市販されているものを好ましく用いることができ、例えば、アニオン系染料等を好ましく用いることができる。
【0141】
染料水溶液の温度は、10℃~70℃程度であることが好ましく、20~60℃であることがより好ましい。また、上記染料水溶液中の染料の濃度及び浸漬時間は、要望される染色の色調、色の濃さに応じて適宜設定すればよい。
【0142】
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に染料を用いた染色を施したものを処理対象とする場合、封孔処理液により染料定着性を付与する為に、染色後、封孔処理前に、染料定着処理を施すことが好ましい。
【0143】
その染料定着処理に用いられる染料定着処理剤として、アルミニウム合金陽極酸化皮膜染色工程用に市販されているもの(例えば奥野製薬工業(株)製TAC固着剤-2、TACサンブロック77-5C等)を好ましく用いることができる。
【0144】
封孔処理液中のpH緩衝剤及び界面活性剤の種類と配合を調整することで、封孔処理液により染料定着性を付与することも可能である。
【0145】
前記工程(3)は染料定着処理を行う工程であり、前記工程(4)は封孔処理を行う工程であり、それら染料定着処理と封孔処理とは、一つの処理であっても良い、つまり一回の処理として行っても良い。或は、それら染料定着処理と封孔処理とを、別々の処理であっても良い。
【0146】
本発明では、本発明のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液を用いて封孔処理を行う時、染料定着処理は一般に入手できる染料定着液を用いることができる。
【0147】
本発明では、本発明のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液を染料定着処理液として用い染料定着処理を行う時、封孔処理は一般に入手できる封孔処理液を用いることができる。
【0148】
本発明では、本発明のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液を染料定着処理液として用い染料定着処理を行い、次いで、本発明のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液を用いて封孔処理を行っても良い。この場合、それら染料定着処理と封孔処理とを、同じ処理液に調製して、一つの処理で行っても良い。或は、染料定着処理に用いる本発明の染料定着処理液と封孔処理に用いる本発明のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液とを、異なる調製(組成)にして、別々の処理として行っても良い。
【0149】
前記染料定着処理液の液温は、80℃~98℃であることが好ましい。
【0150】
前記染料定着処理液のpHは、3~4であることがこのましい。
【0151】
染料定着処理する対象は、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜、又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を有する物品である。染料定着処理方法に用いるアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理液は、前述の通り、前記本発明の封孔処理液に含まれる3価クロム塩、界面活性剤等、その封孔処理液と同一のものを用いることができる。
【0152】
本発明の封孔処理方法により、必要に応じて本発明の染料定着処理を組み合わせることで、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、優れた封孔性能及び耐汚染性を付与することができる。また、この封孔処理方法により、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に対して、優れた染料の定着性及び染色外観を付与することができ、封孔処理された陽極酸化皮膜の表面の粉吹きやカブリ外観不良を抑制することができる。
【実施例】
【0153】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0154】
以下の製造条件に従って、下記の実施例及び比較例に用いる陽極酸化を施したアルミニウム合金試験片を調製した。
【0155】
1.陽極酸化済試験片の調製
陽極酸化済試験片Aの調製
(染色処理有り)
(1)脱脂処理
アルミニウムの試験片を弱アルカリ性脱脂液に3分間浸漬して脱脂した。アルミニウムの試験片はJIS A1050P板材である。弱アルカリ性脱脂液は、奥野製薬工業(株)製トップアルクリーン101(商品名)の30g/L水溶液である。その脱脂の浴温を60℃に設定した。
【0156】
(2)陽極酸化処理
次いで、水洗し、硫酸を主成分とする陽極酸化浴で陽極酸化を行った。陽極酸化浴は、遊離硫酸180g/L及び溶存アルミ8g/Lを含む。陽極酸化の条件は、浴温:20±1℃、陽極電流密度:1A/dm2、電解時間:30分間とした。陽極酸化皮膜を、膜厚:約10μmで作製した。得られた陽極酸化皮膜を水洗した。
【0157】
(3)染色処理
次いで、染色処理液に50℃で1分浸漬し、水洗して染色処理を行った。染色処理液は、奥野製薬工業(株)製TAC染料TACイエロー203の1g/L液である。これを「陽極酸化済試験片A」という。
【0158】
陽極酸化済試験片Bの調製
(染色処理なし)
(1)脱脂処理
アルミニウムの試験片を弱アルカリ性脱脂液に3分間浸漬して脱脂した。アルミニウムの試験片はJIS A1050P板材である。弱アルカリ性脱脂液は、奥野製薬工業(株)製トップアルクリーン101(商品名)の30g/L水溶液である。その脱脂の浴温を60℃に設定した。
【0159】
(2)陽極酸化処理
次いで、水洗し、硫酸を主成分とする陽極酸化浴で陽極酸化を行った。陽極酸化浴は、遊離硫酸180g/L及び溶存アルミ8g/Lを含む。陽極酸化の条件は、浴温:20±1℃、陽極電流密度:1A/dm2、電解時間:30分間とした。陽極酸化皮膜を、膜厚:約10μmで作製した。得られた陽極酸化皮膜を水洗し、陽極酸化を施したアルミニウム合金試験片を得た。
【0160】
これを「陽極酸化済試験片B」という。
【0161】
2.封孔処理(染料定着処理)
実施例1
封孔処理液として、3価クロム塩として酢酸クロム(III)を0.15 g/L含有し、界面活性剤としてナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン重縮合物を0.75g/L含有し、pHを3.5に調整した水溶液を作製した。この封孔処理液に、陽極酸化済試験片Aを、30分間の浸漬時間で浸漬して封孔処理を行った。
【0162】
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン重縮合物は、アニオン系界面活性剤であり、スルホン酸塩系界面活性剤である。
【0163】
封孔処理液の浴温は、95℃である。
【0164】
ここで、その陽極酸化済試験片Aは染色処理を施しているので、使用した封孔処理液を染料定着処理液と考えて良く、その封孔処理を染料定着処理と考えて良い。
【0165】
実施例2
封孔処理液において、酢酸クロム濃度を0.01 g/L含有し、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン重縮合物濃度を0.05 g/L含有すること以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0166】
実施例3
封孔処理液において、酢酸クロム濃度を1 g/L含有し、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン重縮合物濃度を5 g/L含有すること以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0167】
実施例4
封孔処理液のpHを3.0としたこと以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0168】
実施例5
封孔処理液のpHを4.0としたこと以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0169】
実施例6
封孔処理液の浴温を90℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0170】
実施例7
封孔処理液の浴温を85℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0171】
実施例8
封孔処理液の浴温を80℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0172】
実施例9
封孔処理液において、3価クロム塩として硫酸クロム(III)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0173】
実施例10
封孔処理液において、3価クロム塩として硝酸クロム(III)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0174】
実施例11
封孔処理液において、3価クロム塩としてリン酸クロム(III)を使用したこと以、外は実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0175】
実施例12
封孔処理液に、陽極酸化済試験片B(染色処理無し)を浸漬して封孔処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0176】
比較例1
陽極酸化済試験片Aを、沸騰水封孔(イオン交換水)に95℃で30分浸漬して、封孔処理を行った。
【0177】
比較例2
陽極酸化済試験片Aを、酢酸ニッケル系封孔剤(奥野製薬工業(株)製トップシールH-298(商品名))を40 ml/L含むpH 5.5の水溶液からなる封孔処理液(浴温95℃)に浸漬して封孔処理を行った。
【0178】
比較例3
封孔処理液のpHを3.5としたこと以外は比較例2と同様にして、封孔処理を行った。
【0179】
比較例4
酢酸クロムを使用しないこと以外は実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0180】
比較例5
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン重縮合物を使用しないこと以外は実施例1と同様にして、封孔処理を行った。
【0181】
実施例において陽極酸化済試験片に封孔処理を行った直後、水道水で1分間流水水洗を行った。次いで、陽極酸化済試験片をドライヤーで乾燥した後、一夜室温環境下で放置して、封孔処理後の陽極酸化済試験片を調製した。実施例で調製した封孔処理後の陽極酸化済試験片について、次の試験方法により評価を行った。
【0182】
3.評価試験
封孔度
JIS H 8683-2:1999(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔度試験方法 第2部:リン酸-クロム酸水溶液浸漬試験)に準拠して、封孔処理後の各試験片をリン酸-クロム酸水溶液に浸漬し、単位面積あたりの試験片の質量減少を測定した。
【0183】
下記評価基準に従って評価した。
◎:減少重量が10.0 mg/dm2以下である。
○:減少重量が15.0 mg/dm2以下である。
△:減少重量が20.0 mg/dm2以下である。
×:減少重量が20.0 mg/dm2以上である。
【0184】
評価では、○評価であれば実使用において問題無いと評価できる。
【0185】
耐汚染性
(マジックテスト:付着汚れ除去性試験)
封孔処理後の各試験片を室温にて1日放置し、表面に油性黒マジックインクにてマークを記入し、30秒静置した。次いで、水を染み込ませたボックスティシュにより拭き取りを行った。
【0186】
下記評価基準に従って評価した。
◎:完全にマークを除去できる。
○:マークを除去できるが、若干跡が残る。
△:部分的にしかマークが除去できない。
×:マークの黒色が取れない。
【0187】
評価では、○評価であれば実使用において問題無いと評価できる。
【0188】
染料定着性
染色処理後と封孔処理後の陽極酸化済試験片の色調(L*、a*、b*)を測定し、それらの値から色差(ΔE*ab)を算出した。L*、a*、b*値の測定は、分光測定計CA-3700A(コニカミノルタ株式会社製)を用いて行った。
【0189】
基準色を染色処理後の色調(L*1,a*1,b*1)、比較色を封孔処理後の色調(L*2,a*2,b*2)とすると、色差の計算式は以下の通りである。
【0190】
【0191】
下記評価基準に従って評価した。
◎:ΔE*abが1.0以下である。
○:ΔE*abが3.0以下である。
△:ΔE*abが5.0以下である。
×:ΔE*abが5.0以上である。
【0192】
評価では、○評価であれば実使用において問題無いと評価できる。
【0193】
外観評価
封孔処理を行った陽極酸化済試験片の表面の粉吹き、カブリ、又はそれらによる干渉膜虹の発生状態を目視で観察した。
【0194】
下記評価基準に従って評価した。
◎:粉吹き、カブリ、又はそれらによる干渉膜虹が全く発生しておらず、外観が良好である。
○:粉吹き、カブリ、又はそれらによる干渉膜虹が若干発生しているが、外観に問題がない程度である。
△:粉吹き、カブリ、又はそれらによる干渉膜虹が発生しており、軽度の外観不良が生じている。
×:粉吹き、カブリ、又はそれらによる干渉膜虹が強く発生しており、重度の外観不良が生じている。
【0195】
結果を表1に示す。
【0196】
【0197】
表1から、本発明の封孔処理液(実施例)を用いると、ニッケル塩を含有しない封孔処理液であっても、ニッケル塩を含有する封孔処理液を用いた場合と同程度の封孔性能を付与することができることが分かった。また、実施例の封孔処理液を用いると、封孔処理された陽極酸化皮膜が優れた耐汚染性を示すことができることが分かった。