(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 127
B41J2/01 129
(21)【出願番号】P 2018091294
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】593129342
【氏名又は名称】株式会社タカゾノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】北口 博一
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-136791(JP,A)
【文献】特開2007-245388(JP,A)
【文献】特開2006-315289(JP,A)
【文献】特開2008-230066(JP,A)
【文献】特開平06-040141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送径路に沿って搬送されているシート状の印刷対象物に対してインクジェット印刷するインクジェット印刷装置であって、
前記搬送径路の途中位置において、前記印刷対象物の第1面上にインクを吐出する印刷ヘッドと、
前記印刷対象物の前記第1面とは反対側の第2面を支持する支持面を有し、前記支持面が前記印刷ヘッドに対向するように配置される支持台と、
前記印刷対象物の前記第2面と前記支持台の前記支持面との間に負圧を発生させる負圧発生手段と、を備
え、
前記支持面には、前記負圧発生手段に連通する複数の開口が形成され、
前記負圧発生手段は、前記複数の開口に連通する負圧室を前記支持台と協働して形成する負圧容器を備え、
前記負圧室内には、紫外線を発生する光源が配置される、
インクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記複数の開口は、前記印刷ヘッドに対して前記搬送径路の上流または下流に位置ずれするように配置される、
請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記光源からの紫外線を、前記複数の開口を通して前記印刷対象物の前記第2面に照射することで、前記印刷対象物から静電気を除去する、
請求項
1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記複数の開口は、前記印刷ヘッドよりも前記搬送径路の下流に位置する開口群を含み、
前記光源からの紫外線を、前記開口群を通して前記印刷対象物の前記第2面に照射する、
請求項
3に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記支持台は、紫外線が透過可能な透過部を備え、
前記光源からの紫外線を、前記透過部を通して前記印刷対象物の前記第2面に照射することで、前記印刷対象物の前記第2面を殺菌する、
請求項
1~4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
インクは、紫外線によって硬化する紫外線硬化インクであり、
前記印刷対象物は、紫外線が透過可能であり、
前記透過部は、前記印刷ヘッドよりも前記搬送径路の下流に位置し、
前記印刷ヘッドから吐出されて前記印刷対象物の前記第1面上に着弾したインクに対して、前記光源からの紫外線を、前記透過部および前記印刷対象物を通して照射することで、前記印刷対象物の前記第1面に着弾したインクを硬化させる、
請求項
5に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
前記光源としての第1光源とは別に設けられ、紫外線を発生する第2光源をさらに備え、
前記印刷ヘッドから吐出されて前記印刷対象物の前記第1面上に着弾したインクに対して、前記第2光源からの紫外線を、前記第1光源とは反対側から照射することで、前記印刷対象物の前記第1面上に着弾したインクを硬化させる、
請求項
6に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷対象物に文字や記号などを印刷する印刷装置として、インクジェット印刷装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェット印刷装置は、印刷対象物(具体的には、軟包装材料)に対してインクを吐出する印刷ヘッドを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインクジェット印刷装置は、巻出部及び巻取部を備えた搬送装置によって搬送される(巻出部から巻取部に搬送される)前記印刷対象物に前記印刷ヘッドからインクを吐出して、前記印刷対象物に文字や記号などを印刷する。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット印刷装置においては、前記印刷対象物が前記搬送装置によって搬送されているときに、前記印刷対象物が搬送方向に垂直な方向(前記印刷対象物の厚み方向)に振動して、該垂直な方向に前記印刷対象物がバタつくことがあった。前記印刷対象物が前記垂直な方向にバタつくと、前記印刷ヘッドのインクの吐出口と、該吐出口と向かい合う前記印刷対象物の面との距離は一定の距離に保たれなくなるので、前記印刷対象物に印字された文字や記号などの印刷品質が安定しなくなって、前記印刷対象物に印刷された文字や記号などの解像度が低下することがあった。このように文字や記号などの解像度が低下すると、前記印刷対象物に印刷された文字を肉眼で読み取ることや、前記印刷対象物に印刷されたバーコードなどの記号をバーコードリーダーなどの読み取り装置で読み取ることが困難になるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、印刷ヘッドの吐出口と、該吐出口と向かい合う印刷対象物の面との距離を一定の距離に維持することができるインクジェット印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェット印刷装置は、搬送径路に沿って搬送されているシート状の印刷対象物に対してインクジェット印刷する。このインクジェット装置は、印刷ヘッドと、支持台と、負圧発生手段とを備える。印刷ヘッドは、搬送径路の途中位置において、印刷対象物の第1面上にインクを吐出する。支持台は、印刷対象物の第1面とは反対側の第2面を支持する支持面を有し、支持面が印刷ヘッドに対向するように配置される。負圧発生手段は、印刷対象物の第2面と支持台の支持面との間に負圧を発生させる。
この構成によれば、負圧発生手段が、印刷対象物の第2面と支持台の支持面との間に負圧を発生させる。したがって、印刷対象物が搬送径路に沿って搬送されているときに、印刷対象物が搬送径路に垂直な方向に振動することを防止することができる。これによって、印刷ヘッドと印刷対象物の第2面との距離を一定に維持することができ、印刷品質を向上させることができる。
【0009】
前記インクジェット印刷装置においては、以下の構成とすることが好ましい。支持面には、負圧発生手段に連通する複数の開口が形成される。複数の開口は、印刷ヘッドに対して搬送径路の上流または下流に位置ずれするように配置される。
この構成によれば、支持面には、負圧発生手段に連通する複数の開口が形成される。これによって、印刷対象物の第2面と支持台の支持面との間に負圧を発生させることができる。
ところで、前述のような構成では、印刷対象物において、複数の開口の各々に重なる各部分が、負圧によって凹んで歪むことがある。この歪んだ部分に印刷ヘッドからのインクが吐出される場合、印刷品質が低下してしまう。
この点を考慮して、複数の開口が、印刷ヘッドに対して搬送径路の上流または下流に位置ずれするように配置される。したがって、印刷対象物の歪んでいない部分に印刷ヘッドからのインクを吐出することができ、印刷品質を向上させることができる。
【0010】
前記インクジェット印刷装置においては、以下の構成とすることが好ましい。インクジェット印刷装置は、除電手段をさらに備える。除電手段は、印刷ヘッドよりも搬送径路の下流において、印刷対象物から静電気を除去する。
この構成によれば、印刷対象物と支持台との摩擦によって静電気が発生しても、その静電気を印刷対象物から除去することができる。したがって、印刷対象物が、包材として用いられる場合、その包材に被包装物が付着することを防止することができる。
【0011】
前記インクジェット印刷装置においては、以下の構成とすることが好ましい。インクジェット印刷装置は、紫外線を発生する光源をさらに備える。負圧発生手段は、複数の開口に連通する負圧室を支持台と協働して形成する負圧容器を備える。光源は、負圧室内に配置される。光源からの紫外線を、複数の開口を通して印刷対象物の第2面に照射することで、印刷対象物から静電気を除去する。
この構成によれば、負圧環境で、印刷対象物の第2面に紫外線を照射することができる。したがって、印刷対象物から静電気を効果的に除去することができる。
【0012】
前記インクジェット印刷装置においては、以下の構成とすることが好ましい。複数の開口は、印刷ヘッドよりも搬送径路の下流に位置する開口群を含む。光源からの紫外線を、開口群を通して印刷対象物の第2面に照射する。
この構成によれば、印刷ヘッドよりも搬送径路の下流において、印刷対象物から静電気を除去することができる。したがって、印刷対象物と支持台との摩擦によって静電気が発生しても、その静電気を印刷対象物から除去することができる。その結果、印刷対象物が、包材として用いられる場合、その包材に被包装物が付着することを防止することができる。
【0013】
前記インクジェット印刷装置においては、以下の構成とすることが好ましい。支持台は、紫外線が透過可能な透過部を備える。光源からの紫外線を、透過部を通して印刷対象物の第2面に照射することで、印刷対象物の第2面を殺菌する。
この構成によれば、印刷対象物の第2面を殺菌することができる。したがって、印刷対象物が、包材として用いられる場合、その包材の殺菌された第2面が、被包装物に接触される面とされることで、被包装物が雑菌によって汚染されることを防止することができる。また、光源を、印刷対象物から静電気を除去するという用途だけでなく、印刷対象物の第2面を殺菌するという用途にも用いることができる。したがって、用途ごとに光源を備える場合に比べて、部品点数を減らすことができる。
【0014】
前記インクジェット印刷装置においては、以下の構成とすることが好ましい。インクは、紫外線によって硬化する紫外線硬化インクである。印刷対象物は、紫外線が透過可能である。透過部は、印刷ヘッドよりも搬送径路の下流に位置する。印刷ヘッドから吐出されて印刷対象物の第1面上に着弾したインクに対して、光源からの紫外線を、透過部および印刷対象物を通して照射することで、印刷対象物の第1面上に着弾したインクを硬化させる。
この構成によれば、光源を、印刷対象物から静電気を除去するという用途および印刷対象物の第2面を殺菌するという用途に加えて、印刷対象物の第1面上に着弾したインクを硬化させるという用途にも用いることができる。したがって、用途ごとに光源を備える場合に比べて、部品点数を減らすことができる。
【0015】
前記インクジェット印刷装置においては、以下の構成とすることが好ましい。インクジェット印刷装置は、第2光源をさらに備える。第2光源は、光源としての第1光源とは別に設けられ、紫外線を発生する。印刷ヘッドから吐出されて印刷対象物の第1面上に着弾したインクに対して、第2光源からの紫外線を、第1光源とは反対側から照射することで、印刷対象物の第1面上に着弾したインクを硬化させる。
この構成によれば、印刷対象物の第1面上に着弾したインクに対して、印刷対象物側からだけではなく、その反対側からも、紫外線を照射することができる。したがって、印刷対象物の第1面上に着弾したインクを迅速に硬化させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、印刷ヘッドの吐出口と、該吐出口と向かい合う印刷対象物の面との距離を一定の距離に維持することができるインクジェット印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置を示す概略構成図である。
【
図3】支持台の一部(透過部の近傍)を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置10を示す概略構成図である。
本実施形態に係るインクジェット装置10は、搬送径路(
図1中の矢印方向の径路)に沿って搬送されているシート状の印刷対象物20に対してインクジェット印刷する。印刷対象物20は、長尺である。印刷対象物20は、ウェブ材である。印刷対象物20は、厚み方向に紫外線が透過可能である。
【0020】
印刷対象物20は、例えば、包材として用いられる。包材としての印刷対象物20がヒートシールされることで、包装袋が形成される。包装袋には、被包装物が収容される。被包装物としては、薬剤や食品などが挙げられる。
【0021】
印刷対象物20は、基材と熱溶着層とを備える。熱溶着層は基材上に配される。基材は、基材自体がインクを弾かない材料から構成されているか、あるいは、表面(後述の第1面20a)が加工されることでインクが付着されるものとされている。基材の材料としては、グラシン、セロファンおよびポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。熱溶着層の材料としては、ポリエチレンなどが挙げられる。
【0022】
印刷対象物20は、第1面20aと、第1面20aとは反対側の第2面20bと、を有する。第1面20aは、基材側の面である。第1面20aは、印刷対象物20が包材として用いられたときに外側に臨む面である。第2面20bは、熱溶着層側の表面である。第2面20bは、印刷対象物20が包材として用いられたときに内側に臨む面であり、したがって、そのときに被包装物が接触する面である。これらの第1面20aおよび第2面20bのうち、第1面20aがインクジェット印刷される面である。
【0023】
印刷対象物20は、搬送装置30によって搬送される。搬送装置30は、巻出部31と巻取部32とを備える。搬送装置30は、搬送径路に沿って、巻出部31から巻取部32に印刷対象物20を搬送する。巻出部31は、印刷前の印刷対象物20が巻き回されているロールから、印刷対象物20を巻き出す。巻取部32は、印刷後の印刷対象物20を巻き取る。
【0024】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置10は、印刷ヘッド11と、支持台12と、負圧発生手段13と、を備える。印刷ヘッド11は、搬送径路の途中位置において、印刷対象物20の第1面20a上にインクを吐出する。支持台12は、印刷対象物20の第2面20bを支持する支持面12aを有し、支持面12aが印刷ヘッド11に対向するように配置される。負圧発生手段13は、印刷対象物20の第2面20bと支持台12の支持面12aとの間に負圧を発生させる。この構成によれば、負圧発生手段13が、印刷対象物20の第2面20bと支持台12の支持面12aとの間に負圧を発生させる。このため、第1面20aは、支持面12aに対して吸引される。したがって、印刷対象物20が搬送径路に沿って搬送されているときに、印刷対象物20が搬送径路に垂直な方向(印刷対象物20の厚み方向)に振動することを防止することができる。これによって、印刷ヘッド11と印刷対象物20の第1面20aとの距離を一定に維持することができ、印刷品質を向上させることができる。
【0025】
印刷ヘッド11は、インクジェットヘッドである。印刷ヘッド11はピエゾ式のものが用いられてもよく、あるいは、サーマル式のものが用いられてもよい。
【0026】
印刷ヘッド11から吐出されるインクとしては、紫外線によって硬化する紫外線硬化インクが用いられる。インクの色は、特に限定されない。印刷ヘッドから吐出されるインクとしては、例えば、互いに異なる色(シアン、マゼンダ、イエローおよびブラック)を有する複数種のインクが用いられる。
【0027】
印刷ヘッド11は、多数のノズルを有する。多数のノズルは、搬送径路に沿って搬送されている印刷対象物20の幅方向に並ぶように配置される。多数のノズルは、印刷対象物20の幅方向の全体に亘って配置されていてもよい。この場合、印刷ヘッド11を印刷対象物20の幅方向に移動させなくても、印刷対象物20に対して、その幅方向の任意の位置においてインクジェット印刷することができる。多数のノズルは、印刷対象物20の幅方向の一部に配置されていてもよい。この場合、印刷ヘッド11を印刷対象物20の幅方向に適宜移動させることで、印刷対象物20に対して、その幅方向の任意の位置においてインクジェット印刷することができる。
【0028】
図2は、支持台12を示す正面図である。
図3は、支持台12の一部を拡大して示す断面図である。支持台12は、平板状に形成される。支持台12の厚み方向の一方の面は、支持面12aである。
【0029】
支持台12には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔12bが形成される。したがって、支持台12の支持面12aには、複数の開口12cが形成される。複数の開口12cは、搬送径路に沿う方向および搬送径路を横断する方向に間隔を空けて形成される。各々の開口12cは、各々の貫通孔12bを介して、負圧発生手段13に連通する。これによって、印刷対象物20の第2面20bと支持台12の支持面12aとの間に負圧を発生させることができる。
【0030】
複数の開口12cは、印刷対象物20の搬送が阻害されないように、大きさ、個数および配置などが設定される。複数の開口12cの大きさは、均一であってもよく、あるいは、不均一であってもよい。複数の開口12cの密度(単位面積当たりの開口の個数)は、支持面12aの全体に亘って均一であってもよく、あるいは、不均一であってもよい。
【0031】
ところで、前述のような構成では、印刷対象物20において、複数の開口12cの各々に重なる部分が、負圧によって凹んで歪むことがある。この歪んだ部分に印刷ヘッド11からのインクが吐出される場合、印刷品質が低下してしまう。
【0032】
この点を考慮して、複数の開口12cが、印刷ヘッド11に対して搬送径路の上流または下流に位置ずれするように配置される。詳しくは、複数の開口12cが、印刷ヘッド11から吐出されたインクが印刷対象物20の第1面20aに着弾する着弾位置Aに対して、搬送径路の上流または下流に位置ずれするように配置される。したがって、印刷対象物20の歪んでいない部分に印刷ヘッド11からのインクを吐出することができ、印刷品質を向上させることができる。着弾とは、印刷ヘッド11から吐出されたインクを印刷対象物20の第1面20aに付着させることを意味する。
【0033】
複数の開口12cは、第1開口群12c1と、第2開口群12c2とを含む。第1開口群12c1は、印刷ヘッド11よりも搬送径路(
図2中の矢印方向)の上流に位置する。詳しくは、第1開口群12c1は、印刷ヘッド11から吐出されるインクの着弾位置Aよりも搬送径路の上流に位置する。第2開口群12c2は、印刷ヘッド11よりも搬送径路の下流に位置する。詳しくは、第2開口群12c2は、印刷ヘッド11から吐出されるインクの着弾位置Aよりも搬送径路の下流に位置する。
【0034】
支持台12は、紫外線が透過可能な透過部12dを備える。透過部12dは、印刷ヘッド11よりも搬送径路の下流に位置する。詳しくは、透過部12dは、印刷ヘッド11から吐出されるインクの着弾位置Aよりも下流に位置する。透過部12dは、搬送径路を横断する方向(搬送径路に沿って搬送されている印刷対象物20の幅方向)に延びる。透過部12dは、印刷対象物20の幅方向の全体に亘って延びる。
【0035】
透過部12dは、紫外線が透過可能な透過部材12d1によって構成される。透過部材12d1は、例えば、アクリル樹脂で形成される。透過部材12d1は、アクリル板を加工したものである。
【0036】
透過部材12d1は、支持台12の本体部分に取り付けられる。支持台12の本体部分には、長孔12eが形成される、長孔12eは、支持台12の本体部分を厚み方向に貫通し、かつ、搬送径路を横断する方向に延びる。透過部材12d1は、板状部12d1bと、板状部12d1bの一方面(
図3における上面)から突出する凸条部12d1aとを備える。凸条部12d1aは、支持台12の本体部分の長孔12eを埋める。透過部材12d1は、例えば、接着剤によって、支持台12の本体部分に固定される。
【0037】
透過部材12d1は、支持面12aと反対側から、支持台12の本体部分に取り付けられる。このとき、透過部材12d1の凸条部12d1aが支持台12の本体部分の長孔12eに挿入され、透過部材12d1の板状部12d1bの一方面が支持台12の本体部分の下面(
図3における下面)に当接する。透過部材12d1の凸条部12d1aの先端面12d1a1は、支持面12aと面一である。そのため、透過部材12d1の凸条部12d1aが印刷対象物20の搬送を阻害することはない。
【0038】
再び
図1を参照すると、負圧発生手段13は、負圧容器13aと、真空ポンプ13bとを備える。負圧容器13aは、支持台12と協働して負圧室13a1を形成する。負圧容器13aと支持台12とは、別体に形成されてもよく、あるいは、一体に形成されていてもよい。負圧室13a1は、複数の貫通孔12bを介して、複数の開口12cに連通する。真空ポンプ13bは、負圧容器13aに接続される。真空ポンプ13bは、負圧室13a1を負圧にする。
【0039】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置10は、第1光源40と、第1光源40とは別に設けられる第2光源50と、を備える。第1光源40は、負圧室13a1内に配置される。第1光源40は、印刷ヘッド11よりも搬送径路の下流に配置される。第2光源50は、印刷対象物20に対して、第1光源40とは反対側に配置される。第2光源50は、印刷ヘッド11よりも搬送径路の下流に配置される。
【0040】
第1光源40と第2光源50とは、搬送径路に沿う方向おいて、互いに同一位置に配置されてもよく、あるいは、互いに異なる位置に配置されてもよい。第1光源40と第2光源50とが互いに異なる位置に配置される場合、第2光源50は、第1光源40よりも、搬送径路の上流に配置されてもよく、あるいは、搬送径路の下流に配置されてもよい。
【0041】
第1光源40および第2光源50は、紫外線を発生する。第1光源40および第2光源50としては、発光ダイオード、レーザーダイオード、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプおよび重水素ランプなどが挙げられる。第1光源40および第2光源50の種類は、互いに同一のものであってもよいし、あるいは、互いに異なるものであってもよい。
【0042】
第1光源40からの紫外線は、複数の開口12cを通して印刷対象物20の第2面20bに照射される。この構成によれば、負圧環境下で、印刷対象物20の第2面20bに紫外線を照射することができる。したがって、印刷対象物20から静電気を効果的に除去することができる。
詳しくは、第1光源40からの紫外線は、第2開口群12c2を通して印刷対象物20の第2面20bに照射される。この構成によれば、印刷ヘッド11よりも搬送径路の下流において、印刷対象物20から静電気を除去することができる。したがって、印刷対象物20と支持台12との摩擦によって静電気が発生しても、その静電気を印刷対象物20から除去することができる。その結果、印刷対象物20が、包材として用いられる場合、その包材に被包装物が付着することを防止することができる。
【0043】
このように、第1光源40は、除電手段として機能する。詳しくは、第1光源40は、支持台12および負圧発生手段13とも協働して、除電手段として機能する。ここで、第1光源40としては、負圧下における除電効果に優れた重水素ランプが用いられることが好ましい。負圧環境下で、重水素ランプからの紫外線を印刷対象物20に照射することで、印刷対象物20から静電気を効果的に除去することができる。
【0044】
また、第1光源40からの紫外線は、透過部12dを通して印刷対象物20の第2面20bに照射される。この構成によれば、印刷対象物20の第2面20bを殺菌することができる。したがって、印刷対象物20が、包材として用いられる場合、その包材の殺菌された第2面20bが、被包装物に接触される面とされることで、被包装物が雑菌によって汚染されることを防止することができる。
特に、透過部12dは、搬送径路を横断する方向に延びており、詳しくは、印刷対象物20の幅方向の全体に亘って延びている。このような透過部12dを通して、第1光源40からの紫外線が、印刷対象物20の第2面20bに照射される。したがって、印刷対象物20の第2面20bを、幅方向に広い範囲に亘って、詳しくは、幅方向の全体に亘って殺菌することができる。そのため、被包装物が雑菌によって汚染されることをより十分に防止することができる。
【0045】
さらに、第1光源40を、印刷対象物20から静電気を除去するという用途だけでなく、印刷対象物20の第2面20bを殺菌するという用途にも用いることができる。したがって、用途ごとに光源を備える場合に比べて、部品点数を減らすことができる。
【0046】
また、第1光源40からの紫外線は、透過部12dおよび印刷対象物20を通して、印刷ヘッド11から吐出されて印刷対象物20の第1面20a上に着弾したインクに対して照射される。この構成によれば、第1光源40を、印刷対象物20から静電気を除去するという用途および印刷対象物20の第2面20bを殺菌するという用途に加えて、印刷対象物20の第1面20a上に着弾したインクを硬化させるという用途にも用いることができる。したがって、用途ごとに光源を備える場合に比べて、部品点数を減らすことができる。
【0047】
第2光源50からの紫外線は、印刷ヘッド11から吐出されて印刷対象物20の第1面20a上に着弾したインクに対して、第1光源40とは反対側から照射される。この構成によれば、印刷対象物20の第1面20a上に着弾したインクに対して、印刷対象物20側からだけではなく、その反対側からも紫外線を照射することができる。したがって、印刷対象物20の第1面20a上に着弾したインクを迅速に硬化させることができる。
【0048】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置10は、コロナ処理装置をさらに備えてもよい。コロナ処理装置は、印刷ヘッド11よりも搬送径路の上流側に配置される。コロナ処理装置は、コロナ放電によって、印刷対象物20の第1面20aの濡れ性を向上させ、ひいては、印刷品質を向上させることができる。
【0049】
前述の実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0050】
印刷対象物20が搬送径路に垂直な方向に振動することを防止するという点では、負圧発生手段13は、負圧容器13aと真空ポンプ13bとを備える構成に限らない。負圧発生手段13は、印刷対象物20の第2面20bと支持台12の支持面12aとの間に負圧を発生させることができればよい。例えば、負圧発生手段13は、ベンチュリ効果を利用して、印刷対象物20の第2面20bと支持台12の支持面12aとの間に負圧を発生させるような構成であってもよい。この場合、支持台12には気体の流路が形成され、負圧発生手段は、その流路に気体を供給する供給源を備える。
【0051】
印刷対象物20から静電気を除去するという点では、除電手段は、第1光源40と支持台12と負圧発生手段13とを備える構成に限られない。除電手段は、印刷ヘッド11よりも搬送径路の下流側において、印刷対象物20から静電気を除去することができればよい。除電手段は、例えば、コロナ放電式の除電装置であってもよい。
【0052】
インクジェット印刷装置10は、前述の実施形態では搬送装置30の搬送径路上に設けられていた。しかし、これに限らず、シート状の印刷対象物20を搬送径路に沿って搬送する種々の装置に設けられてもよい。
【0053】
インクジェット印刷装置10は、包装装置に設けられてもよい。この包装装置は、印刷対象物20を包材として用いて、被包装物を包装する。この場合、被包装物を包装する前に、インクジェット印刷する。なお、被包装物としては、薬剤や食品などが挙げられる。
【0054】
インクジェット印刷装置10は、スリッターに用いられてもよい。このスリッターは、印刷対象物20を一定の幅ごとに断裁して分割し、その分割片を巻き取る。この場合、印刷対象物20を断裁した後にインクジェット印刷してもよい。
【0055】
印刷対象物20はウェブ材ではなく、予め一定の寸法に断裁されている枚葉紙であってもよい。この場合でも、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0056】
10:インクジェット印刷装置、11:印刷ヘッド、12:支持台、12a:支持面、12b:貫通孔、12c:開口、12c1:第1開口群、12c2:第2開口群、12d:透過部、12d1:透過部材、12d1a:凸条部、12d1a1:先端面、12d1b:板状部、12e:長孔、13:負圧発生手段、13a:負圧容器、13a1:負圧室、13b:真空ポンプ、20:印刷対象物、20a:第1面、20b:第2面、30:搬送装置、31:巻出部、32:巻取部、40:第1光源、50:第2光源、A:着弾位置。