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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】粉体塗料用ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/04 20060101AFI20220808BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B05B1/04
B05B5/025 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018129738
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020006316
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-04-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品川 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 孝男
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-247930(JP,A)
【文献】実開昭53-161316(JP,U)
【文献】実開昭60-140676(JP,U)
【文献】特開2004-105312(JP,A)
【文献】特開平07-080032(JP,A)
【文献】特許第5160273(JP,B2)
【文献】特開2012-120963(JP,A)
【文献】特開平07-059819(JP,A)
【文献】特開昭59-046156(JP,A)
【文献】実開昭56-133351(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-17/08
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの凹部又は隙間が表面に形成された被塗装物に静電粉体塗装を行う静電粉体塗装ガンのガン本体のガン先に装着される粉体塗料用ノズルであって、
粉体塗料を噴射するための噴射口が設けられたノズル本体を備え、
上記ガン本 体は、
コロナ放電により粉体塗料を帯電させる針電極と、
筒状部材と、
上記筒状部材の筒内に筒軸に沿って延びるように形成されかつ粉体塗料を圧縮空気とともに搬送する搬送通路と、
を有し、
上記筒状部材の上記筒軸上に、上記搬送通路と上記針電極の先端とが位置しており、
上記噴射口は、スリット形状をなしかつ該スリット形状の長手方向の一部に他の部分よりも上記粉体塗料の噴射量が多くなるように開口が拡大された拡大部を有することを特徴とする粉体塗料用ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の粉体塗料用ノズルにおいて、
上記ノズル本体は、先端側から見て、円形状をなしており、
上記噴射口は、上記ノズル本体の先端側から見て、上記円形状の中心を通るように形成されており、
上記拡大部は、上記円形状の中心部分に設けられていることを特徴とする粉体塗料用ノズル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉体塗料用ノズルにおいて、
上記ノズル本体は、上記ガン先から離れるに連れて先細りするような円錐筒を有しており、
上記噴射口は、上記円錐筒の先端を通るように形成されており、
上記拡大部は、上記円錐筒の先端の位置に形成されていることを特徴とする粉体塗料用ノズル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の粉体塗料用ノズルにおいて、
上記拡大部は、上記ノズル本体の先端側から見て、上記針電極の先端と重複する位置に設けられていることを特徴とする粉体塗料用ノズル。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の粉体塗料用ノズルにおいて、
記拡大部は、上記筒状部材の上記筒軸上に位置するように設けられていることを特徴とする粉体塗料用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、粉体塗料用ノズルに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、静電粉体塗装ガンのガン先に装着される粉体塗料用ノズルが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、粉体塗料が吐出する吐出口を先端に有する外側ノズル本体と、該外側ノズル本体の内側に装着されかつ先端に吐出口を有する内側ノズル本体とを有し、外側ノズル本体の吐出口と内側ノズル本体の吐出口とを、空間を空けて重なるように配置し、外側ノズル本体の吐出口と内側ノズル本体の吐出口とをスリット形状とした粉体塗料用ノズルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5160273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、静電粉体塗装では、粉体塗料に静電気を帯びさせて、該静電引力により粉体塗料を被塗装物に付着させる。このとき、粉体塗料は、基本的には、静電粉体塗装ガン(以下、塗装ガンという)と被塗装物との間に形成される電気力線に沿って、塗装ガンから被塗装物に向かって進む。
【0006】
図7は、被塗装物としての燃料パイプFと該燃料パイプFに取り付けられた被塗装物としてのブラケットBとの接続部分を拡大して示している。塗装ガンと被塗装物との間に延びる電気力線Eは、ファラデーケージ効果により、エッジの部分には延びやすい一方で、凹部の部分には延びにくい。このため、図7に示すように、燃料パイプFとブラケットBとの接続部分近傍に形成される隙間には、電気力線Eが延びにくく、該隙間の部分には、粉体塗料Tが付着しにくくなる。
【0007】
被塗装物に粉体塗料が付着せず、塗膜が形成されないと(塗装性が低いと)、意匠性が低下するばかりでなく、防錆性が低下してしまうおそれがある。
【0008】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、静電粉体塗装において、被塗装物に形成された凹部や隙間にも粉体塗料を適切に付着させることができる粉体塗料用ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様は、少なくとも1つの凹部又は隙間が表面に形成された被塗装物に静電粉体塗装を行う静電粉体塗装ガンのガン本体のガン先に装着される粉体塗料用ノズルを対象として、粉体塗料を噴射するための噴射口が設けられたノズル本体を備え、上記ガン本体は、コロナ放電により粉体塗料を帯電させる針電極と、筒状部材と、上記筒状部材の筒内に筒軸に沿って延びるように形成されかつ粉体塗料を圧縮空気とともに搬送する搬送通路と、を有し、上記筒状部材の上記筒軸上に、上記搬送通路と上記針電極の先端とが位置しており、コロナ放電により前記粉体塗料を帯電させる針電極が設けられており、上記噴射口は、スリット形状をなしかつ該スリット形状の長手方向の一部に他の部分よりも上記粉体塗料の噴射量が多くなるように開口が拡大された拡大部を有することを特徴とする。
【0010】
ここに開示された技術の第2の態様は、上記第1の態様において、上記ノズル本体は、先端側から見て、円形状をなしており、上記噴射口は、上記ノズル本体の先端側から見て、上記円形状の中心を通るように形成されており、上記拡大部は、上記円形状の中心部分に設けられていることを特徴とする。
【0011】
ここに開示された技術の第3の態様は、上記第1又は第2の態様において、上記ノズル本体は、上記ガン先から離れるに連れて先細りするような円錐筒を有しており、上記噴射口は、上記円錐筒の先端を通るように形成されており、上記拡大部は、上記円錐筒の先端の位置に形成されていることを特徴とする。
【0012】
ここに開示された技術の第4の態様は、上記第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、上記ガン本体には、コロナ放電により粉体塗料を帯電させる針電極が設けられており、上記拡大部は、上記ノズル本体の先端側から見て、上記針電極の先端と重複する位置に設けられていることを特徴とする。
【0013】
ここに開示された技術の第5の態様は、上記第4の態様において、上記拡大部は、上記筒状部材の上記筒軸上に位置するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
ここに開示された技術の第1の態様によると、拡大部からは、噴射口の他の部分よりも多い噴射量で粉体塗料が噴射される。このため、拡大部からの噴射先を、被塗装物に形成された凹部や隙間に向けることにより、該凹部等に向かって、多くの粉体塗料が噴射される。これにより、電気力線が延びにくい凹部等にも粉体塗料を行き渡らせることができる。この結果、被塗装物に形成された凹部や隙間にも粉体塗料を適切に付着させることができる。
【0015】
第2の態様によると、一般に、粉末塗料は圧縮空気によってノズル本体の噴射口から噴射されるが、該圧縮空気の流量は、ノズル本体をその先端側から見たときの周縁部分よりも中央部分の方が多くなる傾向がある。このため、拡大部が、ノズル本体を先端側から見たときの円形状の中心部分に設けられていれば、被塗装物の凹部等に向かって粉体塗料を噴射する際に、拡大部から噴射される粉体塗料に勢いを付けやすくなる。これにより、凹部等にも粉体塗料を行き渡らせやすくなり、被塗装物に形成された凹部や隙間に粉体塗料をより効果的に付着させることができる。
【0016】
第3の態様によると、拡大部からの粉体塗料の噴射量を多くしやすくなる。また、拡大部からの粉体塗料の噴射先を、被塗装物に形成された凹部や隙間に向けやすくなる。これにより、被塗装物に形成された凹部や隙間に粉体塗料をより一層効果的に付着させることができる。
【0017】
第4の態様によると、針電極の先端に異物が付着することによる塗装異常を抑制することができる。すなわち、針電極の先端への異物の付着は、主に、粉体塗料内に混入したほこり等が原因となって発生する。そして、塗装異常は、針電極の先端に付着したほこり等に粉体塗料が付着することで異物が成長して噴射口に到達し、該噴射口から噴射される粉体塗料を成長した異物がブロックすることで発生する。拡大部が形成されている部分は圧縮空気が通りやすく、圧縮空気の流量が多くなりやすい。このため、拡大部がノズル本体の先端側から見て、針電極の先端と重複する位置に設けられていれば、ほこり等が圧縮空気の勢いに流されやすくなって、ほこり等の付着自体が抑えられる。また、塗装異常が発生する程度に異物が成長する前に、圧縮空気の勢いによって異物を針電極から除去することもできる。これにより、塗装異常を抑制することができ、結果的に、被塗装物に形成された凹部や隙間に粉体塗料を一層効果的に付着させることができるようになる。
【0018】
第5の態様によると、筒状部材の筒軸上に、搬送通路と、針電極の先端と、拡大部とが並ぶため、拡大部から噴射される粉体塗料に勢いを付けやすくなるとともに、針電極の先端への異物の付着をより効果的に抑制することができる。この結果、被塗装物に形成された凹部や隙間に粉体塗料を一層効果的に付着させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る粉体塗料用ノズルが適用された塗装装置の概略図である。
図2】静電塗装ガンの先端部分の断面図である。
図3】粉体塗料用ノズルの斜視図である。
図4】静電塗装ガンに取り付けられた粉体塗料用ノズルを先端側から見た図である。
図5】粉体塗料用ノズルの噴射パターンを示す図である。
図6】本発明の粉体塗料用ノズルの変形例を示す図である。
図7】従来の粉体塗料用ノズルを用いて塗装を行ったときの被塗装物に形成される塗装パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
〈塗装装置の構成〉
図1は、本実施形態に係る粉体塗料用ノズルのノズル本体20が適用された塗装装置1を概略的に示す。この塗装装置1は、車両用の燃料給油管100に静電粉体塗装を行う塗装装置であり、詳しくは、コロナ式静電塗装を行う塗装装置である。
【0022】
塗装装置1は、粉体塗料が充填された塗料タンク2を備える。塗装装置1は、塗料タンク2に充填された粉体塗料を取り出して分散させる分散装置3を備える。塗装装置1は、分散装置3と第1塗料通路4を介して接続されたインジェクタ5を備える。塗装装置1は、インジェクタ5と第2塗料通路6を介して接続された静電粉体塗装ガン10(以下、塗装ガン10という)を備える。また、塗装装置1は、燃料給油管100を塗装可能な状態で支持するための支持装置(図示省略)を備える。この支持装置は、設置された台のようなものでもよく、上方から燃料給油管100を吊すハンガーでもよい。
【0023】
分散装置3は、筒状のケース内に複数の羽を有するスクリュー(図示省略)が配設された構成をなしている。該スクリューは、モータ軸7aを介してモータ7と接続されている。モータ7が駆動して上記スクリューが回転することで、塗料タンク2内の粉体塗料が取り出されて、上記ケース内で分散されながら第1塗料通路4まで送られる。
【0024】
インジェクタ5は、エア通路8aを介してエアポンプ8と接続されている。第1塗料通路4を通過してインジェクタ5内に送られた粉体塗料は、エアポンプ8から送られる圧縮空気により、該圧縮空気と共に第2塗料通路6に送られる。
【0025】
塗装ガン10は、ガン本体11と、該ガン本体11のガン先に装着されるノズル本体20とを有する。ガン本体11は、高電圧発生装置16と電気的に接続されている。第2塗料通路6を介してインジェクタ5から塗装ガン10に送られた粉体塗料は、ノズル本体20の噴射口30(図2等参照)から燃料給油管100に向かって噴射される。詳しくは後述するが、粉体塗料はガン本体11内でマイナスに帯電されており、この帯電された粉体塗料が上記支持装置を介して接地された燃料給油管100に噴射される。そして、粉体塗料と燃料給油管100との間の静電引力により、粉体塗料が燃料給油管100に付着するようになっている。
【0026】
〈ガン本体の構成〉
塗装ガン10のガン本体11は、図2及び図4に示すように、円筒状の筒状部材12と、筒状部材12の筒軸方向の先端側に設けられかつ針電極14を保持するための電極保持部13と、粉体塗料を帯電させるための針電極14とを有する。また、ガン本体11は、ノズル本体20を先端に装着するためのノズル装着部15を有する。
【0027】
筒状部材12の筒内には、図2に示すように、粉体塗料及び圧縮空気が通る搬送通路12aが筒軸Xに沿って延びている。該搬送通路12aは、筒状部材12における電極保持部13の位置で拡大する形状となっている。このように、粉体塗料を噴射する直前の位置まで搬送通路12aを狭くすることにより、搬送される粉体塗料に勢いを付けやすくなり、搬送効率を向上させることができる。
【0028】
電極保持部13は、図2に示すように、筒状部材12の径方向の外側に突出した突起13aを有する。詳細には示していないが、該突起13aは、電極保持部13の周方向全体に等間隔に複数形成されている。電極保持部13は、各突起13aが、筒状部材12の筒内に形成された係合凹部12bと係合することで、筒状部材12の先端に取り付けられる。
【0029】
針電極14は、電極保持部13の内側に一体的に取り付けられている。針電極14は、図2に示すように、筒状部材12の内壁から径方向の内側に向かって延びた後、上記筒軸方向に沿って延びている。より具体的には、針電極14は、図4に示すように、筒状部材12の内壁から上記径方向の中心まで延びた後、図2に示すように、筒状部材12の筒軸Xに沿ってノズル本体20の噴射口30まで延びている。針電極14は、高電圧発生装置16に電気的に接続されており、該高電圧発生装置16から印加される電圧によって、先端でコロナ放電を発生させる。搬送通路12aを通過した粉体塗料は、針電極14のコロナ放電によりマイナスに帯電される。
【0030】
ノズル装着部15は、その先端部分が筒状部材12の先端から突出するように、筒状部材12の先端部分に嵌め込まれている。ノズル装着部15の先端部分には、内側の部分に雌ねじが切られている。ノズル本体20は、該ノズル本体20の基端部21に形成された雄ねじがノズル装着部15の雌ねじと螺合することで、ガン本体11の先端に装着される。
【0031】
〈粉体塗料用ノズル〉
ノズル本体20は、図2及び図3に示すように、円筒状の基端部21と、該基端部21と同軸の円錐筒状の先端部22とを有する。このため、ノズル本体20は、図4に示すように、先端側から見て円形をなしている。
【0032】
基端部21は、内側の部分に電極保持部13の先端部分が係合する溝部21aが形成されている。溝部21aと電極保持部13とを係合させた状態で、ノズル本体20を上記筒軸方向に沿って移動させれば、基端部21がノズル装着部15に案内される。また、図2に示すように、溝部21aと電極保持部13とが係合したときには、筒状部材12とノズル本体20とが同軸になるようになっている。ここから、電極保持部13の先端部分は、ノズル本体20を筒状部材12と同軸になるように配置するとともに、該ノズル本体20をノズル装着部15に案内するガイド部を構成するようになっている。
【0033】
ノズル本体20の先端部22は、ガン先から離れるに連れて先細りするような円錐筒状をなしている。先端部22には、粉体塗料を噴射するための噴射口30が形成されている。図3及び図4に示すように、噴射口30はスリット状をなしている。噴射口30は、ノズル本体20の先端側から見て、該ノズル本体20の円形状の中心を通って直径全体に延びるように形成されている。より詳しくは、噴射口30は、先端部22を構成する円錐筒の先端を通るように形成されている。
【0034】
噴射口30には、図3及び図4に示すように、長手方向の一部に他の部分よりも開口が拡大された拡大部31が形成されている。具体的には、拡大部31は、ノズル本体20の円形状の中心部分に形成されている。より詳しくは、拡大部31は、先端部22を構成する円錐筒の先端部分に形成されている。上述したように、筒状部材12とノズル本体20とは同軸であるため、拡大部31が、ノズル本体20の円形状の中心部分に形成されていると、図4に示すように、ノズル本体20の先端側から見て、拡大部31と針電極14の先端と重複する。すなわち、拡大部31は、ノズル本体20の先端側から見て(筒状部材12の筒軸方向から見て)、針電極14の先端と重複する位置に設けられている。
【0035】
また、図2に示すように、拡大部31は、筒状部材12の筒軸X上に位置するように設けられている。つまり、拡大部31は、図4に示すように、ノズル本体20の先端側から見て(筒状部材12の筒軸方向から見て)、筒状部材12内の搬送通路12aと重複する位置に設けられている。これにより、図2に示すように、筒状部材12の筒軸X上に、搬送通路12aと、針電極14の先端と、該拡大部31とが並ぶようになっている。
【0036】
〈粉体塗料の噴射〉
次に、本実施形態に係る粉体塗料用ノズルを用いて、粉体塗料を噴射したときの噴射状態について説明する。
【0037】
図5に示すように、本実施形態のノズル本体20が装着された塗装ガン10により粉体塗料を噴射した場合、先端部22が円錐状をなしかつ噴射口30がスリット状をなしていることにより、噴射口30から噴射された粉体塗料は扇状に広がる。一方で、噴射口30には拡大部31が設けられているため、拡大部31からは、粉体塗料が噴射されやすくなっており、他の部分よりも多くの粉体塗料が噴射される。特に、本実施形態では、拡大部31は、筒状部材12の筒軸方向から見て、搬送通路12aと重複する位置、すなわち、圧縮空気の勢いが低下しにくい位置に設けられているため、多くの粉体塗料が噴射されるようになる。つまり、この拡大部31は、他の部分よりも噴射量が多くなるように開口が拡大された拡大部である。
【0038】
ここで、被塗装物としての、車両の燃料給油管100には、一般に、該燃料給油管100を車体に取り付けるためのブラケット101(図1参照)が接合されている。このとき、燃料給油管100とブラケット101との接合部分の近傍には、僅かな隙間が形成される。この隙間には、ファラデーケージ効果により電気力線が延びにくい。このため、静電粉体塗装では、上記隙間に粉体塗料が付着しにくく、塗膜が形成されにくいという問題がある。
【0039】
これに対して、本実施形態のノズル本体20によると、拡大部31からは、噴射口30の他の部分よりも多い噴射量で粉体塗料が噴射される。このため、拡大部31からの噴射先を、燃料給油管100とブラケット101との間の隙間に向けることにより、該隙間に向かって、多くの粉体塗料が噴射される。これにより、電気力線が延びにくい上記隙間にも粉体塗料を行き渡らせることができる。この結果、上記隙間にも粉体塗料を適切に付着させることができる。
【0040】
また、本実施形態のノズル本体20では、拡大部31が、ノズル本体20の円形状の中心部分に形成されている。本実施形態のように、圧縮空気によってノズル本体20の噴射口30から粉体塗料を噴射する場合、該圧縮空気の流量は、ノズル本体20をその先端側から見たときの周縁部分よりも中央部分の方が多くなる傾向がある。本実施形態のように、ノズル本体20が、径方向の中央に搬送通路12aを有する筒状部材12と同軸に配置いる場合には、特に、上記の傾向が顕著になる。このため、拡大部31が、ノズル本体20を先端側から見たときの円形状の中心部分に設けられていれば、拡大部31から噴射される粉体塗料に勢いを付けやすくなる。これにより、燃料給油管100とブラケット101との間の隙間にも粉体塗料を行き渡らせやすくなり、当該隙間にも粉体塗料を適切に付着させることができる。
【0041】
さらに、本実施形態のノズル本体20では、噴射口30が設けられた先端部22が円錐筒状をなしており、拡大部31は該円錐筒の先端部分に形成されている。これにより、ノズル本体20内で、粉体塗料が拡大部31に向かって進むような流れが形成され、拡大部31からの粉体塗料の噴射量を多くしやすくなる。また、拡大部31からの粉体塗料の噴射先を、燃料給油管100とブラケット101との間の隙間に向けやすくなる。当該隙間にも粉体塗料を効果的に付着させることができる。
【0042】
ここで、本実施形態のように、針電極14を用いるタイプの塗装ガン10では、針電極14の先端に異物が付着することによる塗装異常、特に、塗装パターンの割れが生じる可能性がある。針電極14の先端への異物の付着は、主に、粉体塗料内に混入したほこり等が原因となって発生する。そして、塗装異常は、針電極14の先端に付着したほこり等に粉体塗料が付着することで異物が成長して噴射口30に到達し、該噴射口30から噴射される粉体塗料を成長した異物がブロックすることで発生する。
【0043】
本実施形態では、拡大部31を、ノズル本体20の先端側から見て、針電極14の先端と重複する位置に設けることで、上記の塗装異常を抑制している。すなわち、拡大部31が形成されている部分は圧縮空気が通りやすく、圧縮空気の流量が多くなりやすい。このため、拡大部31がノズル本体20の先端側から見て、針電極14の先端と重複する位置に設けられていれば、ほこり等が圧縮空気の勢いに流されやすくなって、ほこり等の付着自体が抑えられる。また、塗装異常が発生する程度に異物が成長する前に、圧縮空気の勢いによって異物を針電極14から除去することもできる。これにより、塗装異常を抑制することができる。
【0044】
特に、本実施形態のように、拡大部31が、ノズル本体20の先端側から見て、筒状部材12内の搬送通路12aとも重複する位置に設けられていれば、圧縮空気が特に通りやすくなって、圧縮空気の流量が多くなる。このため、塗装異常をより効果的に抑制することができる。
【0045】
〈変形例〉
図6は、本実施形態の変形例を示し、この変形例では、上述の実施形態に対して、先端部22の形状を変更したものである。すなわち、この変形例では、先端部22の形状を中空の半球状にしている。この変形例でも、噴射口30の拡大部31は、ノズル本体20を先端側から見たときの円形状における中心部分に形成されている。より詳しくは、先端部22を形成する半球における先端側の頂部に拡大部31が形成されている。また、詳細な図示は省略しているが、この変形例でも、拡大部31は、筒状部材12の筒軸上に位置するように設けられている。
【0046】
この変形例でも、拡大部31からは、噴射口30の他の部分よりも多い噴射量で粉体塗料が噴射されるため、拡大部31からの噴射先を、燃料給油管100とブラケット101との間の隙間に向けることにより、該隙間に向かって、多くの粉体塗料が噴射される。これにより、電気力線が延びにくい上記隙間にも粉体塗料を行き渡らせることができる。この結果、上記隙間にも粉体塗料を適切に付着させることができる。
【0047】
ここに開示された技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0048】
例えば、上述の実施形態では、噴射口30の拡大部31は、ノズル本体20を先端側から見たときの円形状における中心部分に形成されていたが、これに限らず、噴射口30の長手方向の一部に拡大部31が形成されてさえいれば、拡大部31は、必ずしも上記中心部分に形成されている必要はない。ただし、拡大部31から噴射される粉体塗料に勢いを付けやすくする観点からは、拡大部31は、上記中心部分又は該中心部分に近い位置に位置していることが好ましい。
【0049】
また、上述の実施形態では、被塗装物として燃料給油管100を対象したが、燃料給油管100以外の被塗装物を対象にしてもよい。
【0050】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
ここに開示された技術は、静電粉体塗装ガンのガン本体のガン先に装着される粉体塗料用ノズルとして有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 静電粉体塗装ガン
11 ガン本体
12 筒状部材
12a 搬送通路
14 針電極
20 ノズル本体
30 噴射口
31 拡大部
X ケースの筒軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7