(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】硬化性オルガノポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20220808BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20220808BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220808BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220808BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20220808BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220808BHJP
C08K 5/5435 20060101ALI20220808BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/05
C09J11/04
C09J11/06
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/5435
C08K5/11
(21)【出願番号】P 2018148670
(22)【出願日】2018-08-07
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000227342
【氏名又は名称】日東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】吉山 春香
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-222871(JP,A)
【文献】特開平04-178461(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053412(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104726058(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分A~Eを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、
前記成分Aは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンであり、
前記成分Bは、ヒドロシリル基を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンであり、
前記成分Cは、ヒドロシリル化反応触媒であり、
前記成分Dは、接着付与剤であり、
前記成分Eは、
常温常圧で液状であり、かつ一般式(1)で表される構造を有する接着助剤である、硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
R
1
n
-M-A
4-n
(1)
(式中、R
1
はネオデカン酸残基であり、Aはアルコキシ基又は-O-M(R
1
m
)-A
3-m
(mは2~3の整数である)であり、MはTiであり、nは2~4の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体に対して十分な接着力を発現させる硬化性オルガノポリシロキサン組成物と、これに用いられる接着助剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、硬化性シリコーン組成物中にシランカップリング剤等の接着付与剤を添加することにより被着体との接着性を高める提案がされてきた。十分な接着性を得るためには高温で長時間加熱する必要があるが、これはシリコーン硬化物の着色の原因ともなっていた。そこで、より低温下で、短時間で被着体との接着性を高めようと種々の接着助剤の添加が提案されてきた。
【0003】
例えば、先行特許文献1~3では、アセチルアセトンアルミニウム化合物やアセチルアセトンジルコニウム化合物などの接着助剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭63-48902号公報
【文献】特公平4-78658号公報
【文献】特開平4-246466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~3に開示されている接着助剤を添加しても、被着体との十分な接着性を得ることができなかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、種々の被着体に対する接着性を高めることが可能な接着助剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、常温常圧で液状であり、かつ一般式(1)で表される構造を有する、硬化性オルガノポリシロキサン組成物用接着助剤が提供される。
R1
n-M-A4-n (1)
(式中、R1は有機モノカルボン酸残基であり、Aはアルコキシ基又は-O-M(R1
m)-A3-m(mは2~3の整数である)であり、MはTi又はZrであり、nは2~4の整数である。)
【0008】
後述する実施例・比較例で示すように、本発明の接着助剤を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、種々の被着体に対する優れた接着性を示すことを見出し、本発明の完成に到った。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、成分A~成分Eを含有する。
【0010】
<(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン>
成分Aは、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンであり、より詳しくは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである。各アルケニル基の結合位置は分子鎖末端でも分子鎖側鎖でもよい。
【0011】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などの炭素数2~8のものが挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。
【0012】
アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0013】
オルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等が挙げられるが、基本的に主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0014】
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8-ペンタメチルペンタシクロシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0015】
<(B)ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン>
成分Bは、ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサンであり、より詳しくは、ヒドロシリル基(ケイ素原子に水素原子に結合した基)を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである。ヒドロシリル基の位置は分子鎖末端でも分子鎖側鎖でもよい。
【0016】
オルガノポリシロキサンの説明は、成分Aと同様である。
【0017】
本組成物においては、成分Aのアルケニル基1モル当たり、成分Bのヒドロシリル基が、0.1~5.0モルとなるように添加することが好ましく、更に好ましくは0.5~2.5モル、特に好ましくは1.0~2.0である。前記範囲内にあるとき、硬化が十分で、強度のあるゴム硬化物が得られる。
【0018】
<(C)ヒドロシリル化反応触媒>
成分Cは、ヒドロシリル化反応触媒である。この触媒は、成分Aのアルケニル基と成分Bのヒドロシリル基との付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応を促進する任意の触媒が利用可能である。成分Aと成分Bの反応によって、シリコーン硬化物が生成される。
【0019】
成分Cとしては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体、塩化白金、塩化白金酸、塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとの配位化合物、ロジウムとオレフィンとの配位化合物、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウムなどが挙げられる。
【0020】
本組成物における成分Cは、成分Cが触媒として機能するのに十分な量を使用すればよく、その使用量は、通常、成分A及び成分Bの合計量に対する白金族金属の質量換算で、0.1~500ppm、好ましくは0.5~200ppmである。
【0021】
<(D)接着付与剤>
成分Dは、接着付与剤であり、被着体に対するシリコーン硬化物の接着性を高める機能を有する。成分Dとしては、例えば、シランカップリング剤やその加水分解縮合物などが挙げられる。
【0022】
シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、イソシアヌレート基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤等、公知のものが例示される。
【0023】
本組成物における成分Dの添加量としては、成分A100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部である。前記範囲未満であると十分な接着性向上効果が得られない場合があり、前記範囲を超えると硬化物のゴム物性が低下する場合がある。
【0024】
<(E)接着助剤>
成分Eは、接着助剤であり、常温常圧で液状であり、かつ一般式(1)で表される構造を有する化合物で構成される。成分Eは、成分Dとの併用において、成分Dの接着性付与効果をより促進向上させる。
【0025】
R1
n-M-A4-n (1)
【0026】
一般式(1)中、R1は有機モノカルボン酸残基であり、Aはアルコキシ基又は-O-M(R1
m)-A3-m(mは2~3の整数である)であり、MはTi又はZrであり、nは2~4(2,3,又は4)の整数である。
【0027】
R1の有機モノカルボン酸残基としては、例えば、酢酸残基、オクタン酸残基、オクチル酸残基、デカン残基、ネオデカン酸残基、ラウリン酸残基、テトラデカン酸残基、ステアリン酸残基であり、入手の容易さの観点から、オクチル酸残基、ネオデカン酸残基が好ましく、より好ましくはネオデカン酸残基である。R1の炭素数は、例えば、2~20であり、6から20が好ましい。この炭素数は、具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
Aのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、イソブトキシ基、ネオブトキシ基、ターシャルブトキシ基であり、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。Aのアルコキシ基の炭素数は、例えば、1~10であり、2から5が好ましい。この炭素数は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
一般式(1)の化合物中のTiとZrの原子数の合計は、例えば1~5であり、1~3が好ましく、1~2がさらに好ましく、1がさらに好ましい。一般式(1)の化合物は、TiとZrの何れか一方のみを含むことが好ましい。
【0030】
成分Eとして好ましいのは、ジ2-エチルヘキサン酸チタンジイソプロポキシド、トリ2-エチルヘキサン酸チタンイソプロポキシド、ジネオデカン酸チタンジイソプロポキシド、トリネオデカン酸チタンイソプロポキシド、ジ2-エチルヘキサン酸ジルコニウムジイソプロポキシド、トリ2-エチルヘキサン酸ジルコニウムイソプロポキシド、ジネオデカン酸ジルコニウムジノルマルプロポキシド、トリネオデカン酸ジルコニウムノルマルプロポキシドであり、より好ましくはジネオデカン酸チタンジイソプロポキシド、トリネオデカン酸チタンイソプロポキシド、ジネオデカン酸ジルコニウムジノルマルプロポキシド、トリネオデカン酸ジルコニウムノルマルプロポキシドである。
【0031】
本組成物における成分Eの添加量としては、成分A100質量部に対して0.0001~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.001~4質量部、更に好ましくは0.01~2質量部、とりわけ好ましくは0.1~1質量部である。前記範囲未満であると十分な接着性向上効果が得られない場合があり、前記範囲を超えるとゴムの硬化が不十分になる場合がある。
【0032】
本発明の組成物には、さらに充填剤、着色剤、可塑剤などの添加剤を加えてもよい。
【0033】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、クレー、焼成クレー、ガラス、ベントナイト、有機ベントナイト、シラスバーン、ガラス繊維、石綿、ガラスフィラメント、粉砕石英、珪藻土、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化チタン等があげられる。充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。充填剤を加えることにより、組成物のハンドリングが良くなる。また、硬化物のゴム補強剤としても働く。最大のメリットは、増量剤として添加することで使用する樹脂の量を減らす事が出来るためコストダウンが出来ることである。
【0034】
可塑剤としては、具体的には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、オレイン酸ブチル等の脂肪酸カルボン酸エステル類;ペンタエリスリトールエステル類等のグリコールエステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;塩素化パラフィン等が使用される。
【実施例】
【0035】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
【0036】
<製造例1(ジ2-エチルヘキサン酸チタンジイソプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた100ml四つ口ナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン19.00g(0.06685mol)、2-エチルヘキサン酸19.28g(0.1337mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温110℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することでイソプロピルアルコールを留去し、黄色液体のジ2-エチルヘキサン酸チタンジイソプロポキシドを29.03g(96%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、2-エチルヘキサン酸のカルボニル基の吸収(1700cm-1)が低波数側(1520cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0037】
<製造例2(トリ2-エチルヘキサン酸チタンイソプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた100ml四つ口ナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン16.00g(0.056294mol)、2-エチルヘキサン酸24.35g(0.16888mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温110℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することでイソプロピルアルコールを留去し、黄色液体のトリ2-エチルヘキサン酸チタンイソプロポキシドを29.16g(97%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、2-エチルヘキサン酸のカルボニル基の吸収(1700cm-1)が低波数側(1520cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0038】
<製造例3(ジネオデカン酸チタンジイソプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた1000ml四つ口ナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン250.00g(0.8796mol)、ネオデカン酸303.06g(1.7592mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温110℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することでイソプロピルアルコールを留去し、黄色液体のジネオデカン酸チタンジイソプロポキシドを439.27g(98%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、ネオデカン酸のカルボニル基の吸収(1690cm-1)が低波数側(1540cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0039】
<製造例4(トリネオデカン酸チタンイソプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた1000ml四つ口ナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン200.00g(0.70368mol)、ネオデカン酸363.66g(2.111mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温110℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することでイソプロピルアルコールを留去し、黄色液体のトリネオデカン酸チタンイソプロポキシドを429.93g(98%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、ネオデカン酸のカルボニル基の吸収(1690cm-1)が低波数側(1550cm-1、1510cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0040】
<製造例5(ジネオデカン酸ジルコニウムジノルマルプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた1000ml四つ口ナス型フラスコに、テトラノルマルプロポキシジルコニウム250.00g(0.8796mol)、ネオデカン酸303.06g(1.7592mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温110℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することでプロピルアルコールを留去し、黄色液体のジネオデカン酸チタンジノルマルプロポキシドを439.27g(98%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、ネオデカン酸のカルボニル基の吸収(1690cm-1)が低波数側(1540cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0041】
<製造例6(トリネオデカン酸ジルコニウムノルマルプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた1000ml四つ口ナス型フラスコに、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド(約70%1-プロパノール溶液)305.85g(0.65358mol)、ネオデカン酸337.78g(1.9607mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温120℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することでプロピルアルコールを留去し、淡黄色液体のトリネオデカン酸ジルコニウムノルマルプロポキシドを434.00g(100%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、ネオデカン酸のカルボニル基の吸収(1690cm-1)が低波数側(1580cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0042】
<比較製造例1(トリ酢酸チタンイソプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた100ml四つ口ナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン24.00g(0.084442mol)、無水酢酸25.86g(0.25333mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温110℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することで酢酸イソプロピルを留去し、淡黄色固体のトリ酢酸チタンイソプロポキシドを19.67g(82%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、無水酢酸のカルボニル基の吸収(1820cm-1)が低波数側(1680cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0043】
<比較製造例2(トリピバル酸チタンイソプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた100ml四つ口ナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン24.00g(0.084442mol)、ピバル酸25.87g(0.25333mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温110℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することでイソプロピルアルコールを留去し、褐色固体のトリピバル酸チタンイソプロポキシドを29.80g(86%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、ピバル酸のカルボニル基の吸収(1690cm-1)が低波数側(1520cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0044】
<比較製造例3(2-エチルヘキサン酸チタントリイソプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた100ml四つ口ナス型フラスコに、テトライソプロポキシチタン24.00g(0.084442mol)、2-エチルヘキサン酸12.18g(0.084442mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温110℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することでイソプロピルアルコールを留去し、黄色液体の2-エチルヘキサン酸チタントリイソプロポキシドを23.69g(76%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、2-エチルヘキサン酸のカルボニル基の吸収(1700cm-1)が低波数側(1520cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0045】
<比較製造例4(ネオデカン酸ジルコニウムトリノルマルプロポキシド)>
窒素導入管を取り付けた100ml四つ口ナス型フラスコに、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド (約70%1-プロパノール溶液)30.00g(0.064106mol)、ネオデカン酸11.04g(0.064106mol)を量り込み、攪拌機にて充分に混合した。内温120℃付近になるまで撹拌を続けたのち、減圧することでプロピルアルコールを留去し、淡黄色液体のネオデカン酸ジルコニウムトリノルマルプロポキシドを26.85g(95%)を得た。この化合物のFT-IR分析にて、ネオデカン酸のカルボニル基の吸収(1690cm-1)が低波数側(1580cm-1)にシフトしたことを確認した。
【0046】
(試験1:実施例1~7および比較例1~8)
成分Aであるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(東レ・ダウコーニング株式会社製SE1811 A液)50重量部に対して、成分Eである接着助剤を、表1に示される配合割合で予め混合させたものに、成分B・Cであるヒドロシリル化反応触媒を含有するヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(東レ・ダウコーニング株式会社製SE1811 B液)50重量部に対して、成分Dである接着付与剤を、表1に示される配合割合で予め混合させたものを添加し、十分に撹拌をおこなってから脱泡工程を加えて硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。なお、材料の配合、混練、硬化までの操作は25±1℃、50~60%RHの雰囲気下で行った。
【0047】
得られた硬化性オルガノポリシロキサン組成物について、以下の方法で接着試験を実施した。あらかじめIPAで表面を拭いた被着体の上に載せ、120℃オーブンに30分間入れ硬化させてシリコーン硬化物を生成した後、シリコーン硬化物が十分に室温に戻るまで待ってから、シリコーン硬化物をヘラでひっかいた際に抵抗なく剥がれるか確認した。接着界面にシリコーン硬化物が残らずきれいにはがれる場合を「×」、一部が付着し残る場合を「△」、全体が付着し残る場合を「○」として評価した。結果を表1に示す。
【0048】
表1における材料の配合量は質量部である。
【0049】
【0050】
表1に示す材料の詳細は次のとおりである。
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:接着付与剤(東京化成工業(株)製)
トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム:東京化成工業(株)製
テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)ジルコニウム:東京化成工業(株)製
ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン:サニーキャットT-100、日東化成(株)製
テトラ2-エチルヘキサン酸チタン:Alfa Aesar製
【0051】
表1に示すように、全ての実施例では、全ての被着体に対して接着性が良好であった。一方、全ての比較例では、少なくとも3種の被着体において接着性が悪かった。全ての実施例では、常温常圧で液状であり且つ一般式(1)で表される構造を有する成分Eを接着助剤として配合している一方、全ての比較例で添加した成分Eは、常温常圧で固定であるか、又は一般式(1)で表されない。この結果は、常温常圧で液状であり且つ一般式(1)で表される構造を有する成分Eを接着助剤として配合することによって、接着性が向上することを示している。