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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】過圧逃し弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20220808BHJP
   F16K 27/02 20060101ALN20220808BHJP
【FI】
F16K17/04 C
F16K17/04 D
F16K27/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018153345
(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2020026872
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000108557
【氏名又は名称】タイム技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 義之
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-064017(JP,A)
【文献】特開2016-183599(JP,A)
【文献】特開2016-109178(JP,A)
【文献】特開2005-214396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/00-17/168
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力逃し配管内の圧力逃し通路に設けられた弁座と、
前記弁座に着座する弁体と、
前記弁体が前記弁座に着座させる方向に付勢する付勢部材と、
前記弁体と対向して配置され、前記付勢部材を支持する付勢部材押えと、
前記弁体の側面に形成された逃し路とからなる過圧逃し弁であって、
前記付勢部材押えの後部側面に設けられた凸部と、前記圧力逃し配管の後端部の内側面に設けられ、前記凸部と嵌合する凹部とを備え、
前記凹部は、案内溝と該案内溝と連結するロック溝とからなり、
前記付勢部材押えの前記凸部が前記圧力逃し配管の前記凹部の前記ロック溝に嵌合させて前記付勢部材押えを保持することを特徴とする過圧逃し弁。
【請求項2】
前記弁体は、弾性部材で形成される前記弁座に着座する弁部と、硬質部材で形成される前記弁部を支持する弁部押えとから構成されることを特徴とする請求項1に記載の過圧逃し弁。
【請求項3】
前記付勢部材は、円柱状のコイルバネであり、前記弁部押えの後部および前記付勢部材押えの前部はその外径が前記コイルバネの内径よりやや小さい円柱状に形成され、前記弁部押えの前記後部と前記付勢部材押えの前記前部とが対向して前記コイルバネに挿入させた状態で前記付勢部材押えを保持することを特徴とする請求項2に記載の過圧逃し弁。
【請求項4】
前記付勢部材押えの後端面には、六角レンチやマイナスドライバー、プラスドライバーに嵌合する陥没部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の過圧逃し弁。
【請求項5】
前記付勢部材押えには、軸方向に貫通する連通孔が設けられ、過圧逃し弁が作動した場合は、前記弁体の側面に形成された逃し路から逃した圧力を前記連通孔から大気に逃すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の過圧逃し弁。
【請求項6】
前記凹部の前記ロック溝の一方の端部は前記案内溝と連結し、他方の端部には前記付勢部材押えの前記凸部を係止する壁を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の過圧逃し弁。
【請求項7】
前記圧力逃し配管の内側面に設けられる前記凹部の前記ロック溝は、前記圧力逃し配管の側面を貫通する開口部であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の過圧逃し弁。
【請求項8】
前記圧力逃し配管の内側面に設けられる前記凹部の前記ロック溝は、前記圧力逃し配管に沿って複数設けられ、前記付勢部材押えの前記凸部と嵌合する連結溝で各ロック溝が連結されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の過圧逃し弁。
【請求項9】
前記弁体の側面の外周面には、前記圧力逃し配管内面に当接する、少なくとも3つの外周が円弧状に形成された蒲鉾形状の凸部が略等間隔に設けられ、
前記逃し路は、前記蒲鉾形状の前記凸部により生じる前記圧力逃し配管内面と前記弁体の前記外周面との隙間により形成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の過圧逃し弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、給湯器などに設けられる過圧逃し弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水ポンプや給湯器などの本体部または配管部の内部圧力が所定の圧力を超えることによる本体部または配管部の破壊を未然に防止するために、本体部または配管部の内部圧力が所定の圧力を超えた場合に、内部圧力を大気や他の経路に逃がす過圧逃し弁が、例えば、特許文献1などに開示されている。
【0003】
特許文献1には、安全弁一式の内部に設けられた穴の小径部と大径部との間にある斜めの座にスプリングによってボールを付勢し、安全弁のキャップが安全弁一式側に設けられたメスネジとかみあって、スプリングを圧縮する方向に働き、キャップを完全に締めた時にスプリングのボールを付勢する力(荷重)が所望の安全弁を働かせる圧力とする事が出来る安全弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平03-30598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された安全弁は、安全弁のキャップを安全弁一式側に設けられたメスネジとかみあわせて完全に締めて安全弁を組み付けるため、安全弁をメンテナンスする毎にキャップを緩めたり、締めたりする必要があり、組み付けやメンテナンスの際、作業が煩雑になりやすい。また、完全に締まっているかを確実に確認することができず、ネジの嵌合不良などで完全に締めることができない場合には、ボールを付勢するスプリングの力(荷重)が所望の圧力とはならず、意図しない圧力で安全弁が働いてしまう恐れがある。また、安全弁一式側には施すメスネジは後加工にて加工する必要性が高く、部品コストが高くなりやすいことやキャップを完全に締める作業は煩雑になりやすいことから、製造コストが高くなってしまう恐れもある。
【0006】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、簡易に組み付けが可能であり、かつ、安定して所定の圧力にて作動させることが可能な過圧逃し弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため請求項1に係る過圧逃し弁は、圧力逃し配管内の圧力逃し通路に設けられた弁座と、弁座に着座する弁体と、弁体が弁座に着座させる方向に付勢する付勢部材と、弁体と対向して配置され、付勢部材を支持する付勢部材押えと、弁体の側面に形成された逃し路とからなる過圧逃し弁であって、付勢部材押えの後部側面に設けられた凸部と、圧力逃し配管の後端部の内側面に設けられ、凸部と嵌合する凹部とを備え、凹部は、案内溝と該案内溝と連結するロック溝とからなり、付勢部材押えの凸部が圧力逃し配管の凹部のロック溝に嵌合させて付勢部材押えを保持することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る過圧逃し弁は、請求項1に記載の過圧逃し弁において、弁体は、弾性部材で形成される弁座に着座する弁部と、硬質部材で形成される弁部を支持する弁部押えとから構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る過圧逃し弁は、請求項2に記載の過圧逃し弁において、付勢部材は、円柱状のコイルバネであり、弁部押えの後部および付勢部材押えの前部はその外径がコイルバネの内径よりやや小さい円柱状に形成され、弁部押えの後部と付勢部材押えの前部とが対向してコイルバネに挿入させた状態で付勢部材押えを保持することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る過圧逃し弁は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の過圧逃し弁において、付勢部材押えの後端面には、六角レンチやマイナスドライバー、プラスドライバーに嵌合する陥没部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る過圧逃し弁は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の過圧逃し弁において、付勢部材押えには、軸方向に貫通する連通孔が設けられ、過圧逃し弁が作動した場合は、弁体の側面に形成された逃し路から逃した圧力を連通孔から大気に逃すことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る過圧逃し弁は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の過圧逃し弁において、凹部のロック溝の一方の端部は案内溝と連結し、他方の端部には付勢部材押えの凸部を係止する壁を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る過圧逃し弁は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の過圧逃し弁において、圧力逃し配管の内側面に設けられる凹部のロック溝は、圧力逃し配管の側面を貫通する開口部であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る過圧逃し弁は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の過圧逃し弁において、圧力逃し配管の内側面に設けられる凹部の前記ロック溝は、圧力逃し配管に沿って複数設けられ、付勢部材押えの凸部と嵌合する連結溝で各ロック溝が連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る過圧逃し弁は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の過圧逃し弁において、弁体の側面の外周面には、圧力逃し配管内面に当接する、少なくとも3つの外周が円弧状に形成された蒲鉾形状の凸部が略等間隔に設けられ、逃し路は、蒲鉾形状の凸部により生じる圧力逃し配管内面と弁体の外周面との隙間により形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る過圧逃し弁では、付勢部材押えの凸部が圧力逃し配管の凹部の案内溝を介して凹部のロック溝に嵌合させることにより、付勢部材の付勢力により弁体が弁座に着座させて過圧逃し弁が組み付けられることから、簡易な作業で過圧逃し弁を組み付けることができる。また、付勢部材押えの凸部と、圧力逃し配管の凹部は金型成形で容易に成形できることから、部品コストを低減することができる。また、圧力逃し配管の凹部のロック溝の位置により、弁体を付勢する圧力が決まるため、安定して所望の圧力で弁体を付勢することができることから、意図しない圧力で過圧逃し弁が働くことを抑止することができる。また、容易に分解および組み付けができることから、メンテナンス性も向上させることができる。
【0017】
請求項2に係る過圧逃し弁では、弁座に着座する弁部に弾性部材を採用し、弁部を金属や樹脂などの硬質部材で形成される弁部押えで支持することにより、付勢部材の付勢力を安定して弁体に加えることができるとともに、弁部を弁座に対して隙間なく着座させることができる。
【0018】
請求項3に係る過圧逃し弁では、付勢部材であるコイルバネの前後方向で弁部押えの後部と付勢部材押えの前部とが挿入されることから、コイルバネの位置が安定するため、コイルバネの付勢力を安定して弁体に加えることができる。
【0019】
請求項4に係る過圧逃し弁では、付勢部材押えの後端面に、例えば、六角レンチやマイナスドライバー、プラスドライバーなどに嵌合する陥没部を設けることにより、過圧逃し弁を組み付ける際、特別な冶具を用意する必要がない。また、過圧逃し弁を組み付ける際、付勢部材押えが圧力逃し配管の中に入り込んでも、六角レンチやマイナスドライバー、プラスドライバーなどを用いて容易に過圧逃し弁の分解および組み付けができる。
【0020】
請求項5に係る過圧逃し弁では、過圧逃し弁が作動した場合に弁体の側面に形成された逃し路から逃した圧力が付勢部材押えに設けた連通孔から大気に逃すことができるため、圧力逃し配管に逃し路から逃した圧力を大気に逃す開口部を設ける必要がない。
【0021】
請求項6に係る過圧逃し弁では、圧力逃し配管の凹部のロック溝に付勢部材押えの凸部を係止する壁を設けたことにより、付勢部材押えの凸部が適切な位置で凹部のロック溝により保持することができることから、付勢部材押えの凸部が安定して保持できるとともに容易に付勢部材押えの凸部を凹部のロック溝の適切な位置に案内することができる。これにより、過圧逃し弁の組み付け作業が簡易になるとともに品質も安定させることができる。
【0022】
請求項7に係る過圧逃し弁では、弁体の側面に形成された逃し路と比較的近い位置に圧力逃し配管の側面に設けたロック溝の開口部を設けることにより、過圧逃し弁が作動した場合に、圧力が圧力逃し配管の側面に設けたロック溝である開口部から大気にスムーズ逃すことができる。
【0023】
請求項8に係る過圧逃し弁では、付勢部材押えの凸部と嵌合して付勢部材を保持するする凹部のロック溝を圧力逃し配管に沿って複数設けることにより、付勢部材押えの前後方向の位置を変更することができる。これにより、付勢部材の付勢力を変更しなくても、弁体を付勢する圧力を調整することができる。
【0024】
請求項9に係る過圧逃し弁では、弁体の側面と圧力逃し配管内面とが円弧面で当接することから、逃し路を確保しつつ、過圧逃がし弁が設置された装置本体または配管の内圧が所定の圧力を超えた場合、圧力逃し配管内で弁体がスムーズに摺動し、圧力を逃すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】主配管に配置された、本発明にかかるの一実施形態である過圧逃し弁の側面透視図である。
図2】主配管に配置された、本発明にかかる一実施形態である過圧逃し弁の正面透視図である。
図3】主配管に配置された過圧逃し弁の図2で指示されたA-A断面図である。
図4】主配管に配置された過圧逃し弁の図2で指示されたB-B断面図である。
図5】過圧逃し弁の配管部の(A)正面図、(B)側面図、(C)上面図である。
図6】過圧逃し弁の配管部の図5で指示された(A)C-C断面図、(B)D-D断面図、(C)E-E断面図、(D)F-F断面図である。
図7】過圧逃し弁を構成する(A)弁体、(B)スプリング押えの正面図、側面図および後面図、(C)スプリングの正面図および側面図である。
図8図7で示した弁体、スプリング押えおよびスプリングを過圧逃し弁の配管部に組み付ける手順を説明する図(その1)である。
図9図7で示した弁体、スプリング押えおよびスプリングを過圧逃し弁の配管部に組み付ける手順を説明する図(その2)である。
図10図7で示した弁体、スプリング押えおよびスプリングを過圧逃し弁の配管部に組み付ける手順を説明する図(その3)である。
図11】過圧逃し弁の動作を説明する図である。
図12】本発明にかかる他の実施形態である過圧逃し弁の正面図、側面図および上面図と各位置における断面図である。
図13】本発明にかかる他の実施形態である過圧逃し弁の調圧方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明にかかる一実施形態である過圧逃し弁10について図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、主配管1に配置された過圧逃し弁10の側面透視図であり、図2は、主配管1に配置された過圧逃し弁10の正面透視図である。また、図3は、主配管1に配置された過圧逃し弁10の図2で指示されたA-A断面図であり、図4は、主配管1に配置された過圧逃し弁10の図2で指示されたB-B断面図である。尚、実施形態では、主配管1は図示しない給湯器や貯水タンクなどに接続されているものとする。
【0028】
図1から図4に示すように、過圧逃し弁10は、主配管1に接続された過圧逃し配管11と、主配管1の流路口2と過圧逃し配管11の逃し流路口12とを連通する開口部13と、開口部13に設けられた弁座14と、弁座14に着座する弁体17と、弁体17を弁座14に着座する方向に付勢するスプリング19と、スプリング19を支持するスプリング押え18と、弁体17を付勢した状態でスプリング押え18を保持するためのロック溝20とから構成される。このように本実施形態にかかる過圧逃し弁10は、過圧逃し配管11の内部にて構成されることから、例えば、過圧逃し配管11の外周面に、他の配管などが接続するためのリブ23を円周状に設けることができる。尚、リブ23は、必ずしも設けられるものではなく、必要に応じて設ければよい。
【0029】
図5の(A)は、過圧逃し弁10の過圧逃し配管11を(スプリング押え18が配置される)流出口側から見た正面図であり、図5の(B)は、横から見た側面図であり、図5の(C)は、上から見た上面図である。
【0030】
詳細は後述するが、図5の(A)に示すように、過圧逃し配管11の流出口側には、スプリング押え18を開口部13に向かって挿入可能にする案内溝21設けられている。そして、図5の(B)および(C)に示すように、過圧逃し配管11の左右の側面にはスプリング押え18を保持するためのロック溝20、20が案内溝21と連結して設けられている。
【0031】
図6の(A)は、図5の(A)で指示された過圧逃し弁の配管部のC-C断面図であり、図6の(B)は、図5の(A)で指示された過圧逃し弁の配管部のD-D断面図であり、図6の(C)は図5の(B)で指示された過圧逃し弁の配管部のE-E断面図であり、図6の(D)は図5の(B)で指示された過圧逃し弁の配管部のF-F断面図である。
【0032】
図6に示すように、案内溝21は上下方向に伸長し、かつ、上下の端面は円弧状となっており、開口部13に向かって前後方向に開口して設けられている。ロック溝20、20は、案内溝21に対して垂直方向に伸長し、案内溝21と連結して設けられている。すなわち、過圧逃し配管11の長手方向に対して垂直に設けられ、ロック溝20、20の端部は過圧逃し配管11を貫通し、開口部となっている。また、ロック溝20は、図5および図6に示すように、E-E断面の位置でスプリング押え18を回転自在にするロック溝回転部20aとF-F断面の位置でスプリング押え18の回転を抑止するロック溝回転抑止部20bとから構成されている。詳細は後述するが、スプリング押え18は、案内溝21に沿って開口部13に向かって挿入され、ロック溝回転部20aにおいて回転自在となり、ロック溝回転抑止部20bにおいて保持される。規制壁21aは、スプリング押え18の回転を規制するために設けられている。
【0033】
図7は、過圧逃し弁を構成する弁体17、スプリング押え18およびスプリング19を示した図である。図7(A)は、左から、弁体17の正面図、側面図および後面図を示したものであり、図7の(B)は、左から、スプリング押え18の正面図、側面図および後面図を示したものであり、図7の(C)は、左から、スプリング19の正面図および側面図を示したものである。
【0034】
図7の(A)に示すように、本実施形態では、弁体17は、フッ素ゴムなど弾性部材で円柱形状に形成される弁部材15と、ポリフェニレンサルファイド(PPS)など硬質樹脂部材で形成される弁部材押え16とから構成されている。弁部材15は、弁部材押え16の後面に形成された凹状の弁部材収納部16fに収納し取り付けられ、弁部材押え16と一体として弁体17を構成する。そして、過圧逃し弁10の閉弁時には、開口部13に設けられた弁座14に対して、弁部材15が着座するになっている。このように、弁座14に着座する部分に弁部材15のような弾性部材を用い、弁部材15を硬質部材である弁部材押え16で支持ことにより、弁体17は、弁座14に対して隙間なく着座させることができるとともに、スプリング19の付勢力を安定して受けることができる。
【0035】
弁部材押え16は、側面図において、右方に伸びる円柱状の弁部材押え本体16aと、左方に伸びる円柱状のスプリング支持部16bとからなり、スプリング支持部16bの径は、図7の(C)に示すスプリング19の内径Mより小さく、スプリング19が貫通可能となっている。さらに、弁部材押え本体16aの側面の外周には、外面が円弧状で側面図において左右に伸長する蒲鉾形状の4つのリブ16e、16e、16e、16eが略等間隔に設けられている。リブ16eの円弧状の外面は、過圧逃し配管11の逃し流路口12の内面と当接するように設計されており、リブ16eにより形成された、逃し流路口12の内面と弁部材押え本体16aとの隙間により、過圧逃し路22が設けられる。このように、弁体17の側面と圧力逃し配管11の逃し流路口12の内面とが円弧面で当接させることから、逃し流路口12を確保するとともに、過圧逃し弁10が接続する主配管1の内圧が所定の圧力を超えた場合、弁体17がスムーズに摺動し、圧力を逃すことができるのである。ここで、本実施形態では、弁部材押え本体16aの側面の外周にリブ16eを4つ等間隔に設けたが、これに限定するものではなく、3つ以上であればよいし、弁体17がスムーズに摺動可能であれば、必ずしも等間隔で設ける必要はない。また、リブ16eを用いて過圧逃し路22を形成したが、過圧逃し路22の形成はこれに限定するものでななく、例えば、弁部材押え本体16aの側面に凹状の逃し溝を設けてもよい。
【0036】
スプリング押え18は、図7の(B)に示すように、側面図において、左方に伸びる円柱状のスプリング押え本体18aと、右方に伸びる円柱状のスプリング支持部18bと、スプリング押え本体18aの外周から上下方向に伸びる板状のガイド部18c、18cとからなり、スプリング支持部18bの径は、図7の(C)に示すスプリング19の内径Mより小さく、スプリング19が貫通可能となっている。また、中心部には、側面図において、左右方向に貫通する貫通孔18dが設けられている。そして、スプリング押え本体18aの正面側には略正六角柱状に陥没した陥没部18eが設けられている。本実施形態では、陥没部18eは所定の六角レンチと嵌合するように設けられている。そのため、過圧逃し弁10を組み付ける際、特別な冶具を用意する必要がない。また、過圧逃し弁を組み付ける際、付勢部材押えが圧力逃し配管の中に必要以上に入り込んでしまっても、六角レンチを用いて容易に過圧逃し弁10の分解および組み付けができる。陥没部18eは、本実施形態にように、六角レンチと嵌合する略正六角柱状に限定するもものではなく、例えば、プラスドライバーやマイナスドライバーなどと嵌合するような形状で設けてもよい。
【0037】
スプリング19は、図7の(C)に示すように、本実施形態では、円柱状のコイルバネを用いている。スプリング19の外径Lは圧力逃し配管11の逃し流路口12の内径より小さく、また、内径Mは、上述のように、弁部材押え16のスプリング支持部16bやスプリング押え18のスプリング支持部18bが貫通可能な径になるように設定されている。
【0038】
次に、過圧逃し弁10の組み付け方法について、図面を参照して説明する。
【0039】
図8図9および図10は、過圧逃し弁10の組み付け手順を説明する図である。まず、図8の(A)および(B)に示すように、図面に対して、左方向からスプリング押え18のスプリング支持部18bを、また、右方向から弁体17(弁部材押え16)のスプリング支持部16bを、スプリング19に挿入する。そして、図8の(C)のように、弁体17とスプリング押え18とがスプリング19に挿入された状態で、圧力逃し配管11の逃し流路口12内に挿入される。このように、スプリング押え18のスプリング支持部18bと、弁体17のスプリング支持部16bとをスプリング19に挿入して過圧逃し弁10が組み付けられることから、スプリング19が弁体17およびスプリング押え18を安定して付勢することができる。
【0040】
図9および図10の(A)は、弁体17とスプリング押え18とがスプリング19に挿入された状態で、圧力逃し配管11の逃し流路口12内に挿入して、過圧逃し弁10を組み付ける様子を上方から見た図である。また、図10の(B)は、過圧逃し弁10を組み付ける様子を側面から見た図である。図10の(A)を弁体17およびスプリング19、スプリング押え18のうち、弁体17とスプリング19とが挿入された後、スプリング押え18のガイド部18c、18cが案内溝21に嵌合しながら、圧力逃し配管11に挿入される。すると、図9(A)に示すように、弁体17が開口部13に設けられた弁座14に着座する。そして、図9の(A)の矢印(1)に示すように、スプリング19の付勢力に抗してさらにスプリング押え18を押し込んで、図9の(B)に示すように、スプリング押え18のガイド部18c、18cがE-E断面の位置まで押し込むと、上述したように、スプリング押え18はロック溝20のロック溝回転部20aにより回転自在になる。
【0041】
ここで、図9の(B)の矢印(2)のようにスプリング押え18を回転させて、スプリング押え18のガイド部18c、18cをロック溝20のロック溝回転抑止部20bまで回転移動させる。そして、スプリング19の付勢力を用いて、図10の(A)の矢印(1)のようにスプリング押え18をやや前方(図面に対して左方)に移動してF-F断面の位置にするロック溝20のロック溝回転抑止部20bにスプリング押え18のガイド部18c、18cを配置させることにより、図10の(B)に示す側面図ように、スプリング押え18のガイド部18c、18cが回転抑止されるとともに、スプリング19の付勢力により保持される。このようにして、過圧逃し弁10を組み付けることができる。尚、上述したように、案内溝21には規制壁21aが設けられている。規制壁21aにより、スプリング押え18を回転させてスプリング押え18のガイド部18c、18cをロック溝20の位置に移動する際に、ロック溝20のロック溝回転抑止部20bの位置においてスプリング押え18の回転を係止することができる。これにより、過度に回転させることなく組み付けることができるため、圧力逃し配管11に対して、容易に弁体17およびスプリング19、スプリング押え18を組み付けることができるのである。
【0042】
次に、上述のように組み付けた過圧逃し弁10の作動について図11を参照して説明する。
【0043】
図11の(A)は、過圧逃し弁10を接続した主配管1の内圧が正常な場合の過圧逃し弁10の状態を示した図であり、図11の(B)は、主配管1の内圧が所定の圧力を超えた場合(異常圧力の場合)の過圧逃し弁10の状態を示した図である。
【0044】
図11の(A)の矢印(1)のように主配管1の内圧が正常な場合(所定の圧力より小さい場合)は、過圧逃し弁10は、弁体17がスプリング19の付勢力により開口部13に設けられた弁座14に着座して閉止状態になる。そして、図11の(B)の矢印(2)のように主配管1の内圧が所定の圧力を超えると、矢印(3)に示すように、弁体17はスプリング19の付勢力に抗してスプリング押え18の方向へ移動する。すると、弁体17は、弁座14から離れて、矢印(4)に示すように、主配管1の内圧が開口部13から過圧逃し路22を介して圧力逃し配管11のロック溝20やスプリング押え18の中心部を貫通する貫通孔18dから大気に逃して、主配管1や主配管1に接続する図示しない給湯器などの損壊を防止することができるのである。
【0045】
さらに、本実施形態の過圧逃し弁10によれば、スプリング押え18の位置がロック溝20の位置で安定して保持することができるため、スプリング19による弁体17への付勢力が所望の圧力で安定して弁体17を付勢することができる。そのため、意図しない圧力で過圧逃し弁10が働くことを抑止することができる。
【0046】
また、本実施形態の過圧逃し弁10によれば、上記にように、容易に組み付けおよび分解ができることから、メンテナンス性においても優れた過圧逃し弁を提供することができるのである。
【0047】
ここで、過圧逃し弁10は過圧逃し弁の一例であり、弁座14は弁座の一例であり、弁体17は弁体の一例であり、弁部材15は弁部の一例であり、弁部材押え16は弁部押えの一例であり、スプリング押え18は付勢部材押えの一例であり、ガイド部18cは凸部の一例であり、スプリング19は付勢部材またはコイルバネの一例であり、陥没部18eは陥没部の一例であり、ロック溝20はロック溝の一例であり、案内溝21は案内溝の一例であり、過圧逃し路22は逃し路の一例である。
【0048】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0049】
例えば、上記実施形態では、ロック溝20のように、圧力逃し配管11に沿って1つの位置にロック溝を設けたが、ロック溝はこれに限定するものではなく、図12に示す他の実施形態のように、圧力逃し配管11に沿って、異なる2つの位置にそれぞれロック溝34およびロック溝35を設けてもよい。この場合、ロック溝34およびロック溝35は、図12の(C)から(G)に示すように、案内溝33により連結されている。
【0050】
このように、他の実施形態にかかる過圧逃し弁30によれば、図12の(A)のb-b断面の位置で図13の矢印(1)の方にスプリング押え36を回転させると、スプリング押え36のガイド部36aはロック溝34で保持され、さらに、スプリング押え36を押し込んで図12の(A)のd-d断面の位置で図13の矢印(2)の方にスプリング押え36を回転させると、スプリング押え36のガイド部36aはロック溝35で保持される。このように、圧力逃し配管11に沿って複数のロック溝を案内溝と連結して設けることにより、弁体17に加えるスプリング19の付勢力を調圧することも可能となり、異なる圧力で過圧逃し弁30を作動させることもできる。尚、ロック溝の位置は、3つ以上設けることも可能であることは言うまでもない。
【0051】
また、上記実施形態では、ロック溝20または34、35は圧力逃し配管11を貫通する開口部となっている。しかしながら、上記実施形態のように、スプリング押え18の中心部を貫通する貫通孔18dのように大気に逃がす開口部を設ければ、ロック溝は必ずしも開口部とする必要はない。逆に、上記実施形態のようにロック溝20または34、35を開口部とすることにより、スプリング押え18または36の中心部を貫通する貫通孔(16b)は必ずしも必要としない。
【0052】
また、上記実施形態では、ロック溝20は、スプリング押え18を回転自在にするロック溝回転部20aとスプリング押え18の回転を抑止するロック溝回転抑止部20bとから構成したが、スプリング押え18はスプリング19により付勢されるため、ロック溝回転抑止部20bは必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0053】
1・・主配管
2・・流路口
10・・過圧逃し弁
11・・圧力逃し配管
12・・逃し流路口
13・・開口部
14・・弁座
17・・弁体
18・・スプリング押え
19・・スプリング
20・・ロック溝
21・・案内溝
22・・過圧逃し路
図1
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