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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】光照射触媒基準エッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20220808BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20220808BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H01L21/306 M
H01L21/306 J
B01J23/42 M
H01L21/304 621B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018163885
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020035989
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】521310990
【氏名又は名称】株式会社東邦鋼機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英資
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 辰俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-146695(JP,A)
【文献】特開2013-059831(JP,A)
【文献】特開2011-200944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0110386(US,A1)
【文献】特開2001-179598(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159973(WO,A1)
【文献】特開2017-163144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
B01J 23/42
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射触媒基準エッチングに用いられ、被加工物の加工に有効な波長の光を出射する光照射部と、
前記光照射部の上方に配置され、 前記光照射部から出射された光が通過する1又は複数の定盤側貫通開口を有し、前記光照射部により出射された光を透過させることに適さない材料により形成される定盤と、
前記定盤の上方側に配置され前記光照射部により出射された光が通過する1又は複数の底板側貫通開口を有する底板と、前記底板の周縁に設けられる周壁部と、を備える桶部と、
前記1又は複数の底板側貫通開口を塞ぐように前記桶部に配置される光透過部材と、
前記桶部における前記底板の上方側に配置されるパッド部と、を備える光照射触媒基準エッチング装置。
【請求項2】
前記光透過部材は、前記底板の下面に取り付けられる請求項1に記載の光照射触媒基準エッチング装置。
【請求項3】
前記定盤は、金属材料、紫外線に耐性を有する材料又は紫外線に耐性を有する表面処理が施されている材料で形成される請求項1又は2に記載の光照射触媒基準エッチング装置。
【請求項4】
前記桶部は、前記定盤に対して着脱可能である請求項1から3のいずれか1項に記載の光照射触媒基準エッチング装置。
【請求項5】
被加工物の加工に有効な波長の光を透過する前記光透過部材は、止水処理部において前記底板に止水処理が施された状態で取り付けられており、
前記1又は複数の定盤側貫通開口は、前記光透過部材における前記止水処理部に対応しない部分に設けられる請求項1からのいずれか1項に記載の光照射触媒基準エッチング装置。
【請求項6】
前記定盤、前記桶部及び前記パッド部のうちの少なくともいずれかは、90以下の水成分又は酸素成分の少なくともいずれかに耐性を有する請求項1からのいずれか1項に記載の光照射触媒基準エッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紫外線(UV)を利用(援用)した研磨装置(定盤や研磨用のパッド含む)に関する。特に触媒基準エッチング法を利用した平坦加工に好適に使用できるものであり、被加工物の表面を加工するために使用される光照射触媒基準エッチングの装置(定盤や研磨用のパッド含む)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、触媒基準エッチング法のメリットを延ばし、触媒基準エッチング法のデメリットを補完するために、被加工物の表面にダメージを残すことなく平坦度を高めるように、被加工物の表面に光を照射させながら被加工物の平坦加工を行う光照射触媒基準エッチング法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の段落[0032]などに記載の光照射触媒基準エッチング法を用いた光照射触媒基準エッチング装置は、処理液で内部が満たされた容器と、定盤回転軸の上端に連結されて容器内に回転自在に配置され容器の底面を兼ねる定盤と、ホルダ回転軸の下端に連結されて被加工面の表面を下向きにした状態で被加工物を着脱自在に保持するホルダと、定盤の下方に配置される光源と、を有している。定盤は、光透過性に優れた固体酸性触媒、例えば石英によって構成されている。被加工物の下側の表面には、光源により、定盤を通じて、光、例えば紫外線光が照射される。なお、定盤は、光透過性に優れたサファイアやジルコニアなどで構成されていてもよい。触媒基準エッチング法では、被加工物のステップ端から除去反応が進行する。これに加えて、紫外線を照射する光源を備えることで、紫外線光を受けた被加工物のステップ端以外からも触媒基準エッチング法の反応による加工が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-64972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光照射触媒基準エッチング法に用いられる定盤は、紫外線照射部の光源から照射される紫外線光の透過性に優れた材料、例えば石英などを材料として形成されている。近年、被加工物の大型化のニーズが発生し、今後は、より大型化していく可能性も高い。被加工物のサイズが大型化することで、被加工物の単位面積当たりの荷重を保とうとすると、光透過可能な定盤に高荷重がかかる必要性が生じ、定盤へのモーメント加重も増加する。定盤は、厚みが従来のものと同じままで、サイズが大型化すると、例えば石英などを材料として形成されているため、強度が弱く、破損しやすい。一方、定盤の厚みを破損しないように厚くすると、コスト増につながる。そのため、光照射触媒基準エッチング装置において、紫外線照射部からの光を被加工物の被加工面まで透過しつつ、強度も確保されたコスト増につながらない光透過可能な定盤が必要であった。
【0006】
本発明は、強度を確保できると共に紫外線照射部からの光を被加工物の被加工面まで透過可能な定盤を備える例えば紫外線(UV)を利用(援用)した研磨装置を提供することを目的とする。特に光照射触媒基準エッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光照射研磨(触媒基準エッチング)装置は、特に光照射触媒基準エッチングに用いられ、被加工物の加工に有効な波長の光を出射する光照射部と、前記光照射部から出射された光が通過する1又は複数の定盤側貫通開口を有し、被加工物の加工に有効な波長の光を透過させることに適さない材料により形成される定盤と、前記定盤の上方側に配置され、被加工物の加工に有効な波長の光が通過する1又は複数の底板側貫通開口を有する底板を備える桶部と、前記1又は複数の底板側貫通開口を塞ぐように前記桶部に配置される光透過部材と、前記桶部における前記底板の上方側に配置されるパッド部と、を備える。
【0008】
また、前記定盤は、金属材料、紫外線に耐性を有すると共に強度を有する材料又は紫外線に耐性を有する表面処理が施されている材料で形成されることが好ましい。
【0009】
また、前記桶部は、前記定盤に対して着脱可能であることが好ましい。
【0010】
また、被加工物の加工に有効な前記光透過部材は、止水処理部において前記底板に止水処理が施された状態で取り付けられており、前記1又は複数の定盤側貫通開口は、前記光透過部材における前記止水処理部に対応しない部分に設けられることが好ましい。
【0011】
また、前記定盤、前記桶部及び前記パッド部のうちの少なくともいずれかは、90度以下の水又は酸素の少なくともいずれかに耐性を有することが好ましい。
【0012】
また、前記光照射触媒基準エッチング装置で使用する定盤、桶部、光透過部材、触媒パッドの少なくともいずれかの物質に関する。
【0013】
また、本発明は、光照射触媒基準エッチングに用いられ、被加工物の加工に有効な波長の光を出射する光照射部と、前記光照射部から出射された光が通過する1又は複数の定盤側貫通開口を有し、前記光照射部により出射された光を透過させることに適さない材料により形成される定盤と、前記定盤の周縁から立ち上がる周壁部と、前記1又は複数の定盤側貫通開口を塞ぐように前記定盤に配置される光透過部材と、前記定盤の上方側に配置されるパッド部と、を備える光照射触媒基準エッチング装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強度を確保できると共に紫外線照射部からの光を透過可能な定盤を備える光照射触媒基準エッチング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の被加工物加工処理システムの全体構成を示す図である。
図2】光照射触媒基準エッチング装置の第1装置例を示す全体側面図である。
図3】光照射触媒基準エッチング装置の第1装置例の詳細を示す縦断面図である。
図4】光照射触媒基準エッチング装置の第1装置例の支持定盤及び容器の構成を主に示した平面図である。
図5】光照射触媒基準エッチング装置の第1装置例の主駆動部の構成を示す図である。
図6】光照射触媒基準エッチング装置の第1装置例において、各電極部を示す図である。
図7】光照射触媒基準エッチング装置の第2装置例を示す斜視図である。
図8】光照射触媒基準エッチング装置の第2装置例を下方側から見た斜視図である。
図9】光照射触媒基準エッチング装置の第2装置例の支持定盤及び容器の構成を主に示した部分断面図である。
図10】研磨ヘッドに保持された被加工物が触媒パッドの表面に当接又は近接された後に、光照射触媒基準エッチングの動作が開始される制御について説明する図である。
図11】従来の接触パッドの接触部分が、剥がれ部分において剥がれた状態を示す写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の被加工物加工処理システム10の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の被加工物加工処理システム10の全体構成につき、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の被加工物加工処理システム10の全体構成を示す図である。
【0017】
本実施形態の被加工物加工処理システム10は、図1に示すように、被加工物の表面を研磨する機械的又は物理的表面加工手段11と、潜傷除去手段12と、第1クリーニング手段13と、第1乾燥手段14と、潜傷除去検査手段15と、表面仕上げ手段16と、第2クリーニング手段17と、第2乾燥手段18と、検査手段19と、を備える。また、機械的又は物理的表面加工手段11、潜傷除去手段12、第1クリーニング手段13、第1乾燥手段14、潜傷除去検査手段15、表面仕上げ手段16、第2クリーニング手段17、第2乾燥手段18及び検査手段19の各間の移動には、ロボットなどにより構成される搬送手段20が用いられる。
【0018】
機械的又は物理的表面加工手段11は、被加工物の表面を機械的又は物理的な加工により、切削や切断やダイシングや研磨する表面処理を行う。被加工物としては、例えば、SiC基板(ウェハ)などが挙げられる。なお、被加工物は、SiC基板などの基板に限定されない。機械的又は物理的表面加工手段11としては、例えば、研磨剤(砥粒)を用いて被加工物の表面を研磨するCMP(Chemical Mechanical Polishing)の技術を用いたCMP装置が用いられる。CMPは、研磨剤(砥粒)自体が有する表面化学作用又は研磨液に含まれる化学成分の作用によって、研磨剤と研磨対象物の相対運動による機械的研磨(表面除去)効果を増大させ、高速かつ平滑な研磨面を得る技術である。CMPでは、研磨剤(砥粒)に、例えば硬いダイヤモンド砥粒を使用する。CMPなどの機械的研磨により被加工物の表面を研磨すると、見かけ上は平坦な表面であっても、潜傷と呼ばれる傷のダメージが内在する可能性が残り、この潜傷が被加工物の電気特性に悪影響を与えたり、潜傷が原因で被加工物の強度が弱くなるという問題がある。
【0019】
潜傷除去手段12は、機械的又は物理的表面加工手段11により被加工物に形成された潜傷を除去する表面処理を行う。潜傷除去手段12では、砥粒を利用した機械的な加工処理ではなく、砥粒を使用しない化学反応を利用した表面処理が行われる。そのため、潜傷除去手段12は、被加工物に潜傷などのダメージを形成することなく、機械的又は物理的表面加工手段11において被加工物に形成された潜傷を除去することができる。なお、潜傷除去手段12における砥粒を使用しない化学反応を利用した表面処理は、電気的な作用による処理又は紫外線光を照射する処理を行いながら行われてもよい。砥粒を使用しない化学反応を利用した表面処理を、電気的な作用による処理又は紫外線光を照射する処理を行いながら行うことで、触媒等の化学反応を高速化させることができるため、被加工物の表面処理の速度を向上できる。
【0020】
砥粒を使用しない化学反応を利用した加工処理としては、例えば、ケミカルポリッシングや、ケミカルエッチングや、触媒基準エッチングなどが用いられる。
ケミカルポリッシングは、砥粒を使用しないポリッシング液が導入された状態で行われる化学反応を利用した表面処理加工技術である。
ケミカルエッチングは、砥粒を使用しないエッチング液が導入された状態で行われる化学反応を利用した表面処理加工技術である。
【0021】
触媒基準エッチングは、研磨剤や砥粒を全く使用しない化学反応を利用した加工技術である。触媒基準エッチングは、加工によって被加工面にスクラッチや加工変質層や潜傷を全く導入しない加工方法である。
【0022】
具体的には、触媒基準エッチングは、加工溶液及び気体のいずれか一方又は両方の中に被加工物を配置して、触媒を被加工物の加工面に接触若しくは近接させて、加工溶液及び気体のいずれか一方又は両方の中に浸漬させた触媒に被加工物を接触又は近接させながら相対運動させることで、被加工物の加工面の加工を進行させる。
【0023】
被加工物は、例えば、SiCやGaNやサファイアや酸化ガリュウムやダイヤモンドやアルミニウムガリウムナイトライドやシリコンなどの基板、酸化物の基板、セラミックの基板、エピタキシャル成長膜や成膜面、3元素混晶、4元素混晶、SiかCかGaかNかAlかOかInの少なくともいずれかの成分を有する物などである。なお、触媒基準エッチングに用いられる被加工物は、基板に限定されない。被加工物は、任意の形状でよい。
触媒には、金属、例えば、白金、ニッケル又はセラミックス系固体触媒などを用いることができる。
加工溶液には、例えば、被加工物の加工面で加水分解を起こす液体や、触媒の表面でハロゲンラジカルを生成する液体などを用いることができる。
【0024】
被加工物の性質上、化学的に触媒基準エッチングの原理を用いて表面処理加工を行う場合において、加工液よりも気体の方が合理的に加工可能な場合には、気体を使用する。気体を使用する触媒基準エッチングの例としては、酸化反応を利用したものがある。
触媒基準エッチング反応の合理化、被加工物の加工表面付近の気体や液体の流動性向上、加工溶液の酸化防止や被加工物表面の加工促進、又は、触媒表面の再活性や触媒毒除去のいずれかを目的として、ミストやマイクロバブル水溶液やナノバブル水溶液の少なくともいずれかを利用することで、液体と気体との両方を使用してもよい。また、液体と気体の少なくともいずれかを加温していてもよい。または、紫外線(UV)を援用(使用)してもよい。または、電気を援用してもよい。
【0025】
例えば、被加工物の加工面で加水分解を起こす加工溶液として、硫酸ニッケル水溶液や、水(純水、超純水)などを用いることができる。なお、加工溶液として硫酸ニッケル水溶液を使用することで、被加工物の加工面で加水分解を起こすと共に、電圧を印加することで、触媒パッド155(後述)にメッキも形成できる。加水分解を起こして触媒基準エッチングを行う場合には、被加工物の加工面と触媒との間に加工溶液を介在させた状態で、加工溶液に浸漬させた触媒に被加工物を接触させながら相対運動させることで、被加工物の加工面で加水分解反応により分解生成物を生成する。そして、分解生成物を加工溶液中に溶出させることで、被加工物の加工面を加工する。
【0026】
また、ハロゲンラジカルを生成する加工溶液として、フッ化水素酸水溶液などを用いることができる。ハロゲンラジカルを生成して触媒基準エッチングを行う場合には、被加工物に対して常態では溶解性を示さないハロゲンを含む分子が溶けた処理液中に被加工物を配置して、白金やルテニュウムなどの耐性のある金属触媒又はセラミックス系固体触媒からなる触媒を被加工物の加工面に接触若しくは近接させて配し、触媒の表面で生成したハロゲンラジカルと被加工物の表面原子との化学反応で生成したハロゲン化合物を、溶出させることによって被加工物を加工する。例えば、SiC基板の被加工物を触媒基準エッチングする場合には、接触触媒として白金を用い、加工溶液としてフッ化水素酸水溶液を用いて、加工溶液に浸漬させた触媒に被加工物を接触させながら相対運動させることで加工を進行させる。
なお、触媒基準エッチングを行う触媒基準エッチング装置の構成の詳細については後述する。
【0027】
また、触媒基準エッチング装置においては、触媒基準エッチング法のメリットを延ばし、触媒基準エッチング法のデメリットを補完するために、被加工物の表面にダメージを残すことなく平坦度を高めるように、被加工物の表面に光を照射させながら被加工物の平坦加工を行うこともできる。これにより、被加工物のステップ端から除去反応が進行する媒基準エッチング法において、例えば、紫外線光を照射する光源を備えることで、紫外線光を受けた被加工物のステップ端以外からも、触媒基準エッチング法の反応による加工が可能になる。これにより、触媒基準エッチングだけでなく、光照射を更に加えた光照射触媒基準エッチングが可能となる。
なお、光照射触媒基準エッチングを行う光照射触媒基準エッチング装置の構成の詳細については後述する。
【0028】
潜傷除去手段12は、表面処理により被加工物に形成された潜傷を、被加工物の仕上げ加工前に、砥粒を使用しない化学反応を利用した表面処理により、少なくとも30%以下に低減するように予め除去する(潜傷除去工程)。潜傷除去手段12は、被加工物から、潜傷を、少なくとも30%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは0%に低減するように予め除去する。
【0029】
具体的には、CMPなどの機械的又は物理的表面加工手段11により研磨した被加工物の表面は、見かけ上は平坦な表面である。しかし、CMPなどの機械的研磨により研磨した被加工物には、潜傷と呼ばれる傷のダメージが内在している。潜傷は、機械的又は物理的表面加工手段11によって研磨中に被加工物表面すぐ下に形成されるリスクがあり、被加工物の表面から、例えば100nm程度の厚さを除去することで、潜傷のほぼ全部を除去できる。なお、潜傷を除去する厚さは、潜傷が形成される深さが機械的研磨の方法や条件によって異なるため、100nmに限定されない。
【0030】
機械的又は物理的表面加工手段11により被加工物に形成された潜傷は、CMPなどの機械的研磨で研磨した被加工物を、砥粒を使用しない化学反応を利用した表面処理により、厚さ数nm~数十nm(例えば、20nm)取り除くことで、被加工物の表面に顕在化させることができる。この状態から、潜傷除去手段12は、砥粒を使用しない化学反応を利用した表面処理により、被加工物から、潜傷を、少なくとも30%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは0%に低減するように予め除去する。潜傷除去工程により潜傷除去処理を行った被加工物が形成される。
【0031】
ここで、本実施形態の潜傷除去手段12においては、例えば、触媒基準エッチングによる加工方法で加工処理が行われている。触媒基準エッチングによる潜傷除去の処理を行った後においては、被加工物の表面には、金属、例えば、白金、金、クロム又はセラミックス系固体触媒からなる成分が、品質を損なう有害成分の付着物として付着している。
【0032】
そのため、本実施形態においては、被加物の表面に付着した有害成分を除去するクリーニング(洗浄)を行う。被加工物の表面に付着した有害成分を除去するクリーニングは、第1クリーニング手段13により行われる。
【0033】
第1クリーニング手段13は、潜傷除去手段12において、例えば、触媒基準エッチングにより潜傷除去の処理が行われた被加工物の表面をクリーニングする。第1クリーニング手段13は、第1メインクリーニング手段13aと、仕上げクリーニング手段13bと、備える。
【0034】
第1メインクリーニング手段13aは、品質を損なう有害成分が付着した被加工物を、有害成分及び被加工物との関係で触媒反応を生じさせる洗浄用物質に当接または近接させることで、洗浄用物質による触媒反応によって、被加工物の表面に付着した有害成分の全部又は一部を、被加工物の表面の一部とともに除去する(クリーニング工程)。
【0035】
第1メインクリーニング手段13aは、例えば、被加工物の表面が潜傷除去手段12において触媒基準エッチングで加工処理された場合には、被加工物の表面には、触媒基準エッチングにおいて触媒として用いられた、例えば、Pt(白金)などの有害物質が金属汚染などとして付着している。第1メインクリーニング手段13aは、例えば、触媒基準エッチングにおいて触媒として用いられ、かつ、被加工物の表面に付着した有害物質をクリーニングする。第1メインクリーニング手段13aにおいては、例えば、前述の触媒基準エッチングの技術を応用し、被加工物に当接又は近接した部分のみを原子レベルで化学反応を用いて除去可能である。特に、被加工物であるクリーニング対象物の表面がワンバイレーヤのステップテラス構造になっている場合等、第1メインクリーニング手段13aは、表面の原子レベルの平坦性を維持したい場合の洗浄で、ステップテラス端から原子レベルでクリーニング可能である。洗浄用物質としての触媒を用いて、被加工物の表面に付着した有害物質のクリーニングの処理を行うことが可能である。また、第1メインクリーニング手段13aは、潜傷を発生させること無く、クリーニングを行うことが可能である。
【0036】
洗浄用物質として使用される触媒としては、貴金属、遷移金属、セラミックス系固体触媒、塩基性固体触媒、酸性固体触媒などの触媒がある。被加工物の表面に付着した有害物質(成分)や被加工物のクリーニングで除去される表面成分は、触媒基準のクリーニングで洗浄用物質と流体により液中に混ざる必要がある。洗浄用物質の選定は、被加工物と被加工物に付着する洗浄用物質の成分を考慮する必要がある。第1メインクリーニング手段13aで使用する洗浄用物質は、可能な限り被加工物へ悪影響を及ぼすこと無く、第1仕上げクリーニング手段13bにより除去可能である必要がある。被加工物と洗浄用物質と洗浄手段との相性を考慮して、第1メインクリーニング手段13aに使用する触媒と第1仕上げクリーニング手段13bとを選択する必要がある。
【0037】
例えば、従来は、被加工物の表面に付着したPt(白金)などの有害物質を除去するためには、煮沸王水などを使用しないと除去できないとされていたが、被加工物の表面は、被加工物の成分によっては王水や熱に対する耐性が低かった。また、従来、被加工物に付着している除去したい成分と、除去したい成分を除去可能な洗浄方法で被加工物を洗浄しようとしても、洗浄液や洗浄方法や被加工物の耐性により、被加工物に付着している除去したい成分の除去ができないこともあった。これに対して、第1メインクリーニング手段13aにおいて、液や気体中においてNiやFeの成分からなる触媒を洗浄物質として使用すれば、被加工物の表面に付着したPt(白金)などの品質に悪影響を及ぼす有害物質を、煮沸王水を使用せずに、低減又は除去することができる。しかも、第1メインクリーニング手段13aは、一般的な化学薬品を用いたクリーニングのように表面に薬品をかけるだけで表面全体を溶かす洗浄ではないため、被加工物の表面粗さを維持しやすい。
【0038】
通常の洗浄は、新たなパーティクル(ゴミ)や金属汚染の付着を避ける。しかし、本発明の洗浄(第1メインクリーニング手段13a)では、被加工物に新しい金属汚染源になる成分などをあえて洗浄用物質として使用する。被加工物に付着する洗浄用物質(金属汚染等)の成分は、第1仕上げクリーニング手段13bの洗浄手段において、第1仕上げクリーニング手段13bの洗浄手段及び被加工物との相性が良い。そのため、洗浄用物質(金属汚染等)の成分除去が可能な洗浄液などを第1仕上げクリーニング手段13bの洗浄手段を考慮して選ぶことで、潜傷やピットを洗浄工程で発生させることなく被加工物の表面から有害成分を低減又は除去可能になる。
【0039】
なお、被加工物には、基板を用いることができ、基板以外にも、厚みや形状が異なる物も対応可能である。被加工物としては、例えば、円柱形状や角柱形状、円筒形状や角筒形状、凹凸や孔のある形状、又は立体形状も対応可能である。被加工物の材質は、エピタキシャル成長膜や成膜面、3元素混晶、4元素混晶、酸化物やセラミックやInやSiやCやGaやNやOやAlやZnの原子のいずれかを少なくとも含むものがある。紫外線(UV)を援用(使用)した研磨ができる方がよい。
【0040】
本実施形態においては、第1メインクリーニング手段13aは、例えば、洗浄用物質としての触媒にNiを用いて、被加工物の表面に付着したPt(白金)などの付着成分を除去するクリーニングを行う。この場合、第1メインクリーニング手段13aのクリーニング動作は、前述の触媒基準エッチングを行う装置を用いて、触媒をPtとしてエッチングを行うのに代えて、触媒をNiとしてクリーニングを行うことで、被加工物に付着したPtを除去することができる。この場合、被加工物の表面からはPtが除去され、Ptが除去された被加工物の表面には、Niが付着する。
【0041】
なお、第1メインクリーニング手段13aは、品質を損なう有害成分が付着した被加工物を洗浄用物質に当接または近接させる少なくとも前に、触媒の反応を阻害する触媒反応阻害成分を除去するために用いることが可能な液体、気体または紫外線(UV)の少なくともいずれかを洗浄用物質に作用させる処理(触媒反応阻害成分除去工程)を実行してもよい。これにより、被加工物をクリーニングする際に、被加工物に付着した有害成分を効果的に除去できる。また、被加工物を洗浄用物質に当接または近接させる少なくとも前に、被加工物の表面に、紫外線(UV)を照射してもよい。紫外線(UV)を作用させることで、被加工物の表面において、例えば原子の層において数層だけステップテラス端以外からも、有害成分を除去可能になる。紫外線(UV)を照射することにより、被加工物の表面から、有害成分を除去できる可能性を向上させることができる。
【0042】
また、第1メインクリーニング手段13aは、品質を損なう有害成分が付着した被加工物を洗浄用物質に当接または近接させる前後の少なくともいずれかにおいて、気体または液体の少なくともいずれかからなる触媒反応を不活性にする触媒毒などの成分を、被加工物に付着した触媒成分に作用させる処理(触媒成分作用工程)を実行してもよい。これにより、被加工物をクリーニングする際に、被加工物に付着した触媒成分などの有害成分に対して、触媒毒を作用させることで、被加工物の表面に付着した有害触媒成分による触媒反応を低減可能である。
【0043】
第1仕上げクリーニング手段13bは、第1メインクリーニング手段13aにより被加工物の表面に付着した有害物質を除去するクリーニング処理を実行する。第1仕上げクリーニング手段13bは、洗浄用物質の成分の全部又は一部を、ウエット洗浄、ドライ洗浄、スクラブ洗浄、又は超音波洗浄の少なくともいずれかの一般的なクリーニング手段(洗浄)により、洗浄用物質の成分が付着した被加工物から除去する(洗浄工程)。本実施形態においては、第1メインクリーニング手段13aで使用される洗浄用物質について、一般的な洗浄で除去可能な洗浄用物質を用いている。一般的な洗浄としては、洗浄用物質により付着した成分を、除去または低減できる洗浄であれば良く、被加工物の使用用途の条件を満たす洗浄である必要がある。
【0044】
一般的なクリーニング(洗浄)としてのウエット洗浄、スクラブ洗浄について説明する。
ウエット洗浄は、水を媒体とする洗浄である。ウエット洗浄の代表的なものとして、例えば、RCA洗浄がある。被加工物との相性で被加工物に潜傷やピットが発生しないRCA洗浄などの洗浄が好ましい。
スクラブ洗浄は、被加工物(基板など)の表面に付着した汚染物質に物理的衝撃を与えて、被加工物(基板など)の表面から汚染物質を除去する洗浄である。
【0045】
本実施形態においては、第1仕上げクリーニング手段13bは、例えば、第1メインクリーニング手段13aにより被加工物の表面に付着した、例えば、洗浄用物質であるNi成分を、被加工物(基板など)の洗浄に用いられる一般的なクリーニングを行うことで除去する。
【0046】
従来、被加工物に付着した、例えば、Pt(白金)などの有害物質を被加工物の表面から除去する場合に、被加工物を王水に浸漬させることで、被加工物の表面に付着した白金を除去していた。被加工物に付着した白金を王水でクリーニングするには、王水が人体への危険性が高く、かつ、王水を高温にするなどの別の設備が必要となり、困難である。
【0047】
これに対して、本発明は、第1メインクリーニング手段13aにより、洗浄用物質による触媒反応によって、被加工物の表面に付着した有害成分の全部又は一部を、被加工物の表面の一部とともに除去する。これにより、被加工物のクリーニングにおいて、管理や使用するために別の設備が必要な王水などを使用しなくてよいため、被加工物に付着した有害成分を容易に除去できる。これは、被加工物と除去したい有害物質と洗浄液との関係で、洗浄することができない組み合わせの場合には、特に有効である。一例としては、被加工物に付着して除去したい有害物質が、Pt(白金)であり、被加工物が、材質的又は温度条件的に煮沸王水が耐えられない被加工物である場合などがある。
また、第1仕上げクリーニング手段13bにより一般的なクリーニングを行うことで、第1メインクリーニング手段13aのクリーニングの際に付着した洗浄用物質を容易に除去できる。
【0048】
第1乾燥手段14は、第1クリーニング手段13においてクリーニングされた被加工物を乾燥させる。
【0049】
潜傷除去検査手段15は、第1クリーニング手段13により洗浄されて第1乾燥手段14により乾燥された後に、被加工物に形成された潜傷が除去されたか否かを検査する。被加工物に形成された潜傷の有無を確認する方法としては、例えば、潜傷が形成された被加工物の表面を所定の厚み除去した後に被加工物の表面を観察する方法がある。
【0050】
潜傷除去検査手段15における被加工物に形成された潜傷の有無を確認する具体的な手順について説明する。
まず、潜傷が形成された被加工物において、被加工物の表面を、研磨剤や砥粒を全く使用しない化学反応を利用した加工により、潜傷が表面に現れる程度の厚さ、例えば、数nm~数十nm除去する。この場合に、例えば、被加工物の表面に現れた潜傷を、被加工物から潜傷を除去する前の基準とする。なお、潜傷が表面に現れる程度の被加工物の厚さは、潜傷の残存率を算出する際の基準となる程度に潜傷を顕在化させた厚さであればよく、被加工物の表面を除去する厚さは、適宜設定される。
【0051】
潜傷の有無を確認する検査工程においては、被加工物の表面を、潜傷を除去する前の基準から、更に、所定の厚さ、例えば、数nm~数十nmずつ除去していく。そして、数nm~数十nm除去したごとに、潜傷を除去する前の基準からの差を見ることで、潜傷の有無を確認する検査工程を行う。これにより、潜傷の有無を確認する検査工程においては、被加工物の潜傷の残存率が、少なくとも30%以下であるか、好ましくは10%以下であるか、より好ましくは0%に低減されているかの検査を行う。
【0052】
潜傷の残存率は、例えば、表面を正面から見た場合において、潜傷の数や、潜傷の総長さや、潜傷が形成されている範囲の総面積などを算出して、これらに基づいて判断する。被加工物の表面の潜傷は、例えば、SiCウェハ欠陥検査装置(レーザーテック株式会社製 SICA)などにより測定することができる。
【0053】
潜傷除去検査手段15により検査された被加工物について、所定の潜傷の残存率を満たさない場合には、例えば、潜傷除去手段12に戻されて、被加工物における潜傷の除去の再処理を行う。潜傷除去検査手段15により検査された被加工物について、所定の潜傷の残存率を満たす場合には、被加工物は、表面仕上げ手段16に向けて搬送される。ここで、被加工物が量産品である場合には、例えば、同じロットにおいて、潜傷を取り除ける条件を見つけた場合には、残りの被加工物について、その条件で潜傷を除去することで、被加工物を検査する工程を省けるため、加工時間を短縮できる。
【0054】
なお、潜傷除去手段12において被加工物の表面から除去する厚さについては、例えば、複数の潜傷除去条件において潜傷除去処理を行った被加工物をデバイス化して、デバイスの性能結果に基づいた潜傷残存率の実験データを収集して、収集された実験データ等に基づいて、被加工物から潜傷がなくなる(例えば、30%以下、10%以下、0%)までの被加工物の表面から除去する厚さを予め設定してもよい。
【0055】
従来、被加工物の表面加工処理において、CMPなどの機械的研磨処理を行う場合には、被加工物の表面を平坦にしつつ、傷ができやすい粗い研磨を行う加工処理から、徐々に細かい研磨を行う加工処理になるように、傷が少なくなる加工処理を行っていた。つまり、研磨剤の粒子等を細かくしていくことで、被加工物の表面を平坦にしつつ、潜傷ができにくいように、被加工物の表面を研磨する加工を行うものであった。この従来の加工方法は、被加工物の表面を平坦にしつつ潜傷ができにくいように加工する加工方法であって、被加工物の潜傷を見ながら行っているものではなかった。
【0056】
これに対して、本発明は、被加工物の潜傷を除去した後に、被加工物の表面を平坦化するものである。つまり、本発明における被加工物の加工方法においては、表面処理により被加工物に形成された潜傷を、被加工物の仕上げ加工前に、砥粒を使用しない化学反応を利用した表面処理により、被加工物から、一旦、少なくとも30%以下に低減するように予め除去する。これにより、被加工物から、潜傷をなくす処理を実行した後に、仕上げ処理を行う。よって、被加工物の研磨加工の全部を、例えばステップ端からの触媒基準エッチングのような加工時間を要する原子レベルでの加工方法で行わなくてもよいため、被加工物の平坦化時間を短縮しつつ、低コストで被加工物の表面加工を行うことができる。
【0057】
これにより、砥粒を使用しない化学反応を使用した表面処理により、被加工物から仕上加工前に予め潜傷を除法するため、新たな潜傷を形成することなく、仕上加工では、被加工物の表面を仕上るだけで良くなる。従来は、潜傷がある状態から、潜傷を除去しながら表面の仕上加工を行っていた。
また、CMPなどの機械的研磨で加工時間を短縮して被加工物である基板の表面の研磨を行った後に、潜傷除去工程では機械的研磨により形成された潜傷を、被加工物の表面から除去できる。よって、被加工物である基板に潜傷を存在させずに、被加工物である基板表面の平坦化品質を仕上げ加工で触媒基準エッチングを行う場合は担保できる。CMPで仕上加工を行う場合においても、既存の潜傷を除去しなくてよい分、新たに潜傷が発生するリスクを仕上加工時間が短くなることで最小に抑えることが可能になる。
したがって、仕上加工前に潜傷を少なくとも30%以下にしてから、表面を仕上げるので、仕上加工で潜傷が発生するリスクを下げ、被加工物に潜傷を存在させずに、仕上加工時間を短縮可能であると共に、潜傷を限りなくゼロにし、被加工物の表面をデバイスで求められる程度に平坦に仕上げることができる。スラリーを用いなければ、取り扱いが容易で、かつ、低コストに被加工物の表面加工を行うことも可能である。
【0058】
例えば、本発明であれば、仕上加工前に本発明の潜傷除去工程で潜傷を0個にした場合、仕上加工では潜傷除去を行う必要が無くなるので、表面の形成という最小限の表面加工で足りる。触媒基準エッチングで仕上加工を行う場合は、前加工で潜傷が0個であれば、仕上加工でも潜傷は発生しないため、表面を形成するだけで、潜傷が0個のままで加工を終えることが可能である。仕上加工がCMPの場合は、潜傷の状態で見れば、潜傷が0個から何個増えるのかの加工になる。本発明は、仕上加工がCMPの場合は、仕上CMPを表面が形成されるまでの短い時間だけ行うだけで足りる。よって、新規の潜傷が仕上加工で発生するリスクを、従来よりも減らすことができる。
【0059】
従来のように、例えば被加工物の表面に数百個の潜傷が存在する状態から表面を形成しつつ、潜傷を少しでも0に向けて行う加工では、従来は約100nmの厚み分だけ、潜傷を除去しようとした場合、加工レートの低くなりがちな仕上加工で、表面全面を均等に除去する必要があった。この時、仕上げを仮に砥粒を使用したCMPで行う場合、従来は約100nmの厚み分だけ、仕上加工で除去しなければならない。仕上げを仮に砥粒を使用したCMPで行う場合は、加工前の表面から約100nmの厚み分が除去できるまで、常に新規の潜傷が発生するリスクが存在していた。本発明によれば、その問題を改善できる。なお、補足として、従来の技術説明において、潜傷の存在する深さが約100nmと記載したが、潜傷が残っている深さは、仕上げ工程前の工程までにおいて実施した加工の仕方や条件に依存する。よって、潜傷の存在する深さは、一律に約100nmとは限らない。
【0060】
表面仕上げ手段16は、潜傷除去手段12により潜傷が除去された被加工物の表面の仕上げ加工を行う(表面仕上げ工程)。表面仕上げ手段16は、例えば、仕上げCMPや、触媒基準エッチングなどにより実行される。表面仕上げ手段16は、主に、被加工物の仕上げ処理において、被加工物の表面を平坦化する処理を行う。表面仕上げ手段16は、潜傷除去手段12により行われる潜傷除去工程により潜傷除去処理を行った被加工物について、被加工物の表面を平坦化する処理を行う。つまり、潜傷除去手段12における潜傷除去工程は、被加工物の表面から潜傷を除去する処理が主な処理であり、表面仕上げ手段16における仕上げ処理は、被加工物の表面を平坦化する処理が主な処理である。
【0061】
仕上げCMPは、前述の機械的又は物理的表面加工手段11で用いられるCMPよりも仕上げ向けのスラリー(例えばスラリーに含まれる砥粒の粒径が細かいスラリー)を用いて研磨処理が実行され、被加工物に潜傷を生じさせない範囲で行われる。そのため、仕上げCMPは、被加工物に潜傷を生じさせるリスクを従来法よりも確率的に減らせる。
【0062】
触媒基準エッチングは、前述の潜傷除去手段12において用いられる処理と同様の処理であって、表面仕上げ処理にも用いることができる。触媒基準エッチングは、仕上げ処理において用いられる場合においても、研磨剤や砥粒を全く使用しない化学反応を利用しているため、被加工物の表面に潜傷を生じさせずに、被加工物の表面を平坦化加工するための仕上げ処理に用いることができる。
【0063】
第2クリーニング手段17は、表面仕上げ処理が行われた被加工物の表面をクリーニングする。第2クリーニング手段17は、メインクリーニング手段17aと、仕上げクリーニング手段17bと、備える。第2クリーニング手段17の構成及び動作は、第1クリーニング手段13の構成及び動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0064】
第2乾燥手段18は、第2クリーニング手段17においてクリーニングされた被加工物を乾燥させる。
【0065】
検査手段19は、表面加工処理がされた後の被加工物の検査を行う。検査手段19は、例えば、表面加工処理がされた後の被加工物の厚みや重さを測定し、所定の基準を満たすか否かを検査する。所定の基準を満たさない場合には、例えば、欠陥品として除去され、又は、被加工物の再処理を行うように制御される。
検査手段19により検査された被加工物は、次の工程に向けて搬送される。
【0066】
[光照射触媒基準エッチング装置]
次に、図1における潜傷除去手段12及び表面仕上げ手段16において行われる触媒基準エッチングを実行可能な光照射触媒基準エッチング装置(加工装置)について説明する。例えば、触媒基準エッチング装置の第1装置例及び第2装置例について説明する。光照射触媒基準エッチング装置の第1装置例及び第2装置例は、前述の潜傷除去手段12において実行される潜傷除去工程、及び表面仕上げ手段16において実行される表面仕上げ工程を行う加工装置の一例である。
【0067】
(光照射触媒基準エッチング装置の第1装置例)
光照射触媒基準エッチングを行う光照射触媒基準エッチング装置の第1装置例について説明する。図2は、光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例を示す全体側面図である。図3は、光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例の詳細を示す縦断面図である。図4は、光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例の支持定盤140及び桶容器150の構成を主に示した平面図である。図5は、光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例の主駆動部PDの構成を示す図である。
【0068】
第1装置例における光照射触媒基準エッチング装置100は、図2図4に示すように、基台110の左右位置に、一対の平坦加工部SP1、SP2を備えている。左右の平坦加工部SP1、SP2は、同等構造で、加工精度誤差分を除外すればほぼ同じ重量である。平坦加工部SP1について、その詳細を、図3を参照しつつ、以下に説明する。
【0069】
図3に示すように、基台110上に、対称形のL字断面とした架台121,122が平行に配設されて、図3の前後方向(図2の左右方向)へ延びている。なお、各架台121,122は、左右の平坦加工部SP1、SP2が連続して一体に設けられて同一直線上に位置させられている。左右の各架台121,122上には、これらに沿って、それぞれ、案内部材であるリニアガイド130を構成するレール131が固定されている。レール131には、長手方向の2箇所に、これに沿って、摺動移動可能なスライダ132が設けられており、左右前後のスライダ132上には、第2保持手段としての四角形の支持定盤140(定盤)が載設されている。
【0070】
支持定盤140は、被加工物の加工に有効な波長の光を透過させることに適さない材料により形成される。具体的には、支持定盤140は、紫外線光を透過しない材料により形成される。支持定盤140は、例えば、金属材料、紫外線に耐性を有すると共に強度を有する材料、又は、紫外線に耐性を有する表面処理が施されている材料により形成される。例えば、支持定盤140は、紫外線光を透過しないSUS(ステンレス鋼)などの金属や、紫外線光を透過しないセラミックス、紫外線光を透過しない樹脂、又は、これらの複合材料などにより形成される。表面を、紫外線光、液体又は気体に対して耐性をより持たせるために、表面は、白金族や金などの成膜やメッキ、もしくは、テフロン(登録商標)コートなど耐性のある膜によって表面処理されていても良い。そのため、支持定盤140は、紫外線光を透過するために石英などで全部が形成されるよりも、強度が高く確保されている。支持定盤140は、クリーンルームでの使用が良好でかつ紫外線に耐性のある、SUS304やSUS316などで形成されることが更により好ましい。また、支持定盤140は、90度以下の水成分又は酸素成分に耐性を有することが好ましい。水成分の温度は、被加工物によっては75度以下でもよい。例えば、被加工物がSiCである場合に、水成分の温度が60度を超えたあたりから70度ぐらいになると、加工レートが臨界的に向上する。被加工物がSiCである場合は、少なくとも73度以上の水成分に耐性があればよい。
【0071】
支持定盤140は、UVランプ125から出射された紫外線光が通過する複数のスリット溝141(定盤側貫通開口)を有する。複数のスリット溝141は、後述する駆動モータ182により移動される支持定盤140の移動方向(レール131が延びる方向)に直交する幅方向に延び、かつ、支持定盤140の移動方向(レール131が延びる方向)に並んで配置される。複数のスリット溝141は、支持定盤140の下方に配置されるUVランプ125(後述)からの紫外線光が透過する位置に形成され、触媒基準エッチングの加工動作の際にUVランプ125(後述)からの紫外線光が透過する位置に形成される。
【0072】
支持定盤140は、レール131に沿って往復直線移動が可能である。なお、架台121,122は、L字断面以外に、フラットバーなど、レールを載せる面が出ているものであればよい。基台110と架台121,122とは一体でもよい。基台110と架台121,122とが一体である場合のメリットは、基台110と架台121,122との面精度を出す切削加工の際などに、基台110と架台121,122とが別体である場合よりも、歪みにくい点である。また、支持定盤140を案内する案内部材は、上記構造に限られるものではなく、例えば、ガイド軸を包持して、これに沿って摺動するようなものでも良い。支持定盤140は、特に四角形である必要は無い。
【0073】
支持定盤140の下方には、光照射触媒基準エッチングに用いられると共に紫外線光を出射するUVランプ125(紫外線照射部)が配置されている。UVランプ125は、被加工物の加工に有効な波長の紫外線光を出射する。例えば、UVランプ125は、紫外光波長の光を照射する低圧水銀UVランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、LEDランプ少なくとものいずれかにより構成されていても良い。
支持定盤140の上面中心部には、気体や液貯留用の桶容器150(桶部)が載設されている。桶容器150は、支持定盤140に対して着脱可能である。本実施形態においては、桶容器150は、上方が開放されて形成される。なお、桶容器150は、上方が開放されていることに限定されず、上方が開放されていなくてもよい。
【0074】
桶容器150は、上方が開放されている本実施形態においては、支持定盤140の上方側に配置される底板151と、底板151の周縁から立ち上がる周壁部152と、を備えている。桶容器150は、加工溶液や気体を保持できる桶状に形成される。桶容器150は、例えば、樹脂や、金属や、セラミックスや、紫外線光の透過率の低いガラス系金属酸化物などの材料により形成されている。桶容器150は、90度以下の水成分又は酸素成分に耐性を有することが好ましい。水成分の温度は、被加工物によっては75度以下でもよい。例えば、被加工物がSiCである場合に、水成分の温度が60度を超えたあたりから70度ぐらいになると、加工レートが臨界的に向上する。被加工物がSiCである場合は、少なくとも73度以上の水成分に耐性があればよい。
【0075】
桶容器150には、加工溶液が貯留される。本実施形態の光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例においては、加工溶液として、例えば硫酸ニッケル水溶液を用いることで、被加工物の加工面で加水分解を起こすと共に、電圧を印加することで、触媒パッド155(後述)にメッキを形成できる。加水分解を起こして触媒基準エッチングを行う場合には、被加工物の加工面と触媒との間に加工溶液を介在させた状態で、加工溶液に浸漬させた触媒に被加工物を接触させながら相対運動させることで、被加工物の加工面で加水分解反応により分解生成物を生成する。そして、分解生成物を加工溶液中に溶出させることで、被加工物の加工面を加工する。
【0076】
ここで、仮に、加工溶液としてフッ化水素酸水溶液を用いた場合には、後述する紫外線透過部材157を例えば石英により構成すると、フッ化水素酸水溶液が、石英を溶かしてしまう。そのため、紫外線光を照射する光照射触媒基準エッチング装置100において、石英により構成された紫外線透過部材157を使用する場合には、加工溶液として、フッ化水素酸水溶液を用いることができない。そのため、本実施形態においては、加工溶液として、水成分を少なくとも含む液体、例えば超純水や純水、過酸化水素水、ニッケルなどの触媒として利用できる電解メッキが可能な成分を含む水溶液などの薬品耐性を満たす液体を用いている。また、気体として、酸素成分、窒素成分又はオゾン成分の少なくともいずれかを含む薬品耐性を満たす気体を使用することもできる。
【0077】
なお、フッ化水素酸水溶液はサファイアガラスを溶かさないため、紫外線透過部材157を、例えば、サファイアガラスで構成することで、加工溶液として、フッ化水素酸水溶液を用いてもよい。ただし、紫外線透過部材157をサファイアガラスにより構成した場合には、光源として、サファイアガラスを透過可能で且つ被加工物の加工に有効な波長の光を出射可能な光源を選択する必要がある。特にフッ化水素を使用する場合は、人体に有毒なガスが発生するため、スクラバーなどでガスを除去して無毒化する必要がある。
【0078】
桶容器150は、支持定盤140上部に配置される。そのため、桶容器150は、支持定盤140が移動方向M(レール131が延びる方向)に移動することで、移動方向Mに移動可能である。桶容器150は、図4に示すように、桶容器150の下端部における移動方向(レール131が延びる方向)Mに直交する幅方向Wの両側において、一対の位置決め部材153,153により位置決めされた状態で、支持定盤140に取り付けられている。一対の位置決め部材153,153は、桶容器150の幅方向Wの長さに対応して幅方向Wに離間して配置される。一対の位置決め部材153,153は、平坦加工部SP1,SP2の移動方向(レール131が延びる方向)Mに所定長さ延びる位置決め本体部153aと、平坦加工部SP1,SP2の移動方向(レール131が延びる方向)Mの両端部において内側に延びる位置決め延在部153bと、を有する。一対の位置決め部材153,153は、位置決め本体部153aにより桶容器150の幅方向Wの移動を規制し、かつ、位置決め延在部153bにより桶容器150における平坦加工部SP1,SP2の移動方向(レール131が延びる方向)Mへの移動を規制した状態で、支持定盤140の上面に固定されている。また、位置決め部材153は、一般的なクランプ機構でも良い。
【0079】
底板151には、図4に示すように、紫外線光が通過する複数のスリット溝151a(底板側貫通開口)が形成される。桶容器150に形成される複数のスリット溝151aは、支持定盤140に形成される複数のスリット溝141に対応した位置に設けられる。また、支持定盤140は、UVランプ125からの紫外線光が透過させない部分を有し、紫外線光を透過させたくない部分への紫外線光照射を防いで、桶容器150などの劣化を最小限に抑制する。
【0080】
桶容器150にある底板151の下方側には、図3に示すように、紫外線透過部材157が取り付けられている。紫外線透過部材157は、支持定盤140の下方に配置されるUVランプ125からの紫外線光を透過可能な透過部材である。本実施形態では、紫外線透過部材157は、例えば、石英により構成される。
【0081】
紫外線透過部材157は、桶容器150にある底板151に形成される複数のスリット溝151a(底板側貫通開口)を塞ぐように桶容器150にある底板151の下面に取り付けられる。紫外線透過部材157は、桶容器150にある底板151の下方側に配置された状態で、紫外線透過部材157の周縁部が、止水処理部157aにおいて止水処理が施されている。つまり、紫外線透過部材157は、止水処理部157aにおいて底板151に止水処理が施された状態で取り付けられている。
【0082】
ここで、止水処理部157aの配置に関して、支持定盤140に形成される複数のスリット溝141は、紫外線透過部材157における止水処理部157aに対応しない部分に設けられる。これにより、止水処理部157aは、UVランプ125からの紫外線光が届かない位置に配置される。よって、止水処理部157aにおいて、UVランプ125から照射される紫外線光による劣化を生じさせることを抑制できる。
【0083】
桶容器150の底板151には、図3に示すように、表面全面に、触媒層がスパッタリング等によって所定厚さで形成されたパッド部の一例として触媒パッド155が設けられている。触媒パッド155は、被加工物Wの表面を触媒基準エッチングによって平坦化するための触媒層を有する。触媒パッド155は、桶容器150における底板151の上方側に配置される。触媒パッド155には、複数のスリット溝155aが形成されている。触媒パッド155に形成される複数のスリット溝155aは、桶容器150に形成される複数のスリット溝151a及び支持定盤140に形成される複数のスリット溝141に対応した位置に設けられる。つまり、桶容器150に形成される複数のスリット溝151a、支持定盤140に形成される複数のスリット溝141及び触媒パッド155に形成される複数のスリット溝155aは、上下方向に連続して貫通しており、UVランプ125からの紫外線光を透過可能に構成されている。触媒パッド155は、90度以下の水成分又は酸素成分に耐性を有することが好ましい。スリット溝155aは、寸法やピッチなど全てが同一で貫通している必要はなく、また、連続に設けられていなくてよい。また、スリット溝155aは、孔などでもよい。例えば、支持定盤140の取り外しが困難な場合などには、被加工物の形状により、加工動作に応じて、触媒パッド155に形成される複数のスリット溝155aを、貫通穴寸法や貫通穴間のピッチなどを最適化して、寸法やピッチなどを調整した複数のスリット溝141を設けた支持定盤140に取り付けて使用してもよい。例えば、一部だけ紫外線(UV)を透過させたい場合は、触媒パッド155に形成されるスリット溝155aの貫通穴を最適化して構成してもよい。また、桶容器150に形成される複数のスリット溝151aも同様である。
【0084】
触媒パッド155の材料としては、加工溶液や気体に対する耐性のあるゴムや樹脂、セラミックス、ガラス、金属等を使用する。触媒としてはPt等の遷移金属を使用できる。触媒に金属を積層させる場合は、金属結合が望ましい。金属の一例として、クロム、金、白金などを挙げることができる。
【0085】
桶容器150の上方には、図3に示すように、円形断面の主軸160が垂設されており、主軸160は、スリーブ161に垂直姿勢で回転可能に保持されている。主軸160は、第1駆動手段としての駆動モータ171によって回転させられる。スリーブ161は、第2駆動手段としての駆動シリンダやボールねじなどの駆動パーツ172によって昇降させられ、これに応じて主軸160は、触媒パッド155に対して遠近前後動させられる。主軸160の下端には、研磨ヘッド163が設けられている。研磨ヘッド163の下面には、被加工物Wが保持されている。研磨ヘッド163は、被加工物Wを保持可能に構成され、第1保持手段としてのホルダとしても機能する。なお、主軸160、駆動モータ171、駆動シリンダ等の駆動パーツ172は、基台110上やそれより上方に設けられている。
【0086】
図2に示すように、左右の平坦加工部SP1、SP2の中間には、主駆動部PDが設けられている。主駆動部PDの詳細を図5に示す。主駆動部PDは、図5に示すように、基台110に垂直姿勢で設けられたブラケット板181を備えており、当該ブラケット板181上で、上下方向にのびる軸体190が軸受け部材191,192によって、回転可能に保持されている。軸体190の下端中心には、ブラケット板181に沿って、上下方向に設けられた駆動モータ182の出力軸182aが進入結合されている。
【0087】
上記軸体190の中間部外周には、図5に示すように、それぞれ、左右方向へ水平に延びる一対のリンク板183,184の一端部が相対回転可能に連結されている。軸体190の下側に連結されたリンク板183は、途中で上方へ屈曲して、その他端部は、連結軸183aを介して相対回転可能に平坦加工部SP1の支持定盤140に連結されている(図2参照)。一方、軸体190の上側に連結されたリンク板184は、途中で下方へ屈曲して、その他端部は、連結軸184aを介して、相対回転可能に平坦加工部SP2の支持定盤140に連結されている。ここで、平坦加工部SP1,SP2の支持定盤140の上面は、同一水平面上に位置している。
【0088】
軸体190の上記中間部は、図5の拡大図に示すように、各リンク板183,184が連結された軸部193,194の軸芯C1,C2が軸体190の軸芯C(駆動モータ182の出力軸182aの軸芯)から偏心させられている。すなわち、リンク板183が連結された軸部193とリンク板184が連結された軸部194の各軸芯C1,C2は、軸体190の軸芯Cから径方向へ同量dだけ離れて互いに180度の対称位置に位置している。
【0089】
したがって、駆動モータ182によって軸体190がその軸芯Cを中心に回転させられると、軸部193,194の各軸芯C1,C2は、軸体190の軸芯C回りに旋回移動させられる。これに伴い、リンク板183,184を介して各支持定盤140は、同一直線上で互いに逆位相で距離(振幅)2dの間を往復移動させられる。この際、往復移動の一例は、2d=3mm、軸体190の回転数(支持定盤140の往復振動数)は500rpmである。なお、距離2dの値は、3mmに限定されず、例えば10mmなど任意の値であってもよい。
【0090】
このような構造の平坦加工装置で被加工物Wの下面(被加工面)の平坦加工を行う場合には、左右の支持定盤140上の桶容器150内に、触媒反応に必要な気体や液体、例えば、液体の場合には、フッ化水素(HF)や水成分や過酸化水素成分や硫酸成分の少なくともいずれかを含む液体を満たし、駆動パーツ172(図3参照)によって、被加工物Wを触媒パッド155に近接ないし当接させる。この状態で、駆動モータ182によって支持定盤140およびその上に設けた桶容器150をレール131に沿う水平方向で直線往復動させる。また、駆動モータ171(図3参照)で主軸160を回転することにより、被加工物Wを回転させてもよい。
【0091】
すなわち、被加工物Wの被加工面と、これが当接する触媒層を形成した触媒パッド155とを、互いを当接させ又は近接させた後に、相対往復動させる。この時、この往復移動は揺動のような平均化という副加工ではなく主な加工レートを担当する主加工の役割として用いる。これにより、被加工物Wの被加工面が触媒基準エッチング加工によって、原子レベル程度の高い精度で平坦加工される。この際、左右の平坦加工部SP1,SP2の支持定盤140は同一直線上で互いに逆位相で往復移動(振動)させられるから、互いの振動が相殺されて、基台110に対する起振力は十分に小さくなり、その振動が防止される。
【0092】
以上のように構成される本発明に係る光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例は、従来の光照射触媒基準エッチング装置と比べて以下の利点がある。
従来、光照射触媒基準エッチング法に用いられる定盤は、紫外線照射部の光源から照射される紫外線光の透過性に優れた材料、例えば石英などを材料として形成されている。しかし、近年、より高速に光照射触媒基準エッチングの加工が進むように、出力主波長が180nm付近や250nm付近の短波長のUVランプを使用するようになった。出力主波長の変更に伴って、光透過可能な定盤部の素材も180nm付近などの短波長の光を透過可能な素材を選ぶ必要が発生し、コストが増加する傾向にある。また、短波長のUVランプを使用することで、180nm付近のUVランプの紫外線光を透過可能な石英を準備しても、光透過可能な定盤がUVランプの光によりダメージを受けることになる。そのため、定盤を交換する必要が生じて、定盤は消耗品になる可能性がある。
【0093】
更に、近年、被加工物の大型化のニーズが発生している。一例として、被加工物のサイズが2インチから8インチへの変更に伴い、加工に使用する光透過可能な定盤を4倍に大型化する必要も生じた。今後、被加工物はより大型化していく可能性も高く、短波長の光透過可能な大面積の石英材料が必要になる。石英などの素材は短波長に対応する素材であるほど又は大面積なほど素材の価格は上昇する。また、大面積の石英などで短波長な光を透過可能な定盤とした場合には、高度な表面研磨などの加工技術や、定盤を製作する特別な治具や装置などが必要となり、コストが高くなりがちである。光透過可能な定盤は、被加工物の加工したい表面の全面に均一になるように光を透過させなければ、被加工物の平坦化加工に悪影響を及ぼすことになる。更に、被加工物の大型化に伴って、一度に触媒表面に接触する被加工物の面積も、サイズが2インチのような小さい被加工物を用いる場合に比べて、増大傾向にある。被加工物における触媒表面への接触面積の増大に伴い、被加工物の加工時の単位面積当たりの荷重を最適条件にするためには、定盤には、高荷重をかける必要も出てきた。
【0094】
背景技術で説明した特開2012-64972号公報に記載の技術のように、被加工物を保持するヘッド部と、ヘッド部に比べて大きい定盤と、を備えて構成され、定盤を回転させるように構成される従来の光照射触媒基準エッチング法の場合、光透過可能な定盤を支え動力を伝える軸は、光透過可能な定盤が回転する際に光を出力するUVランプなどに接触しないように、少なくとも中央部に配置するか最外周に配置する必要があった。ところが、定盤の大型化に伴い単位面積当たりの荷重を保とうとすると、被加工物のサイズが2インチなどの小さい場合よりも、光透過可能な定盤に高荷重をかける必要が出てくる。しかも、従来よりも被加工物のサイズが大型化しているので、モーメント加重もかかりやすくなる。定盤は、厚みが従来のものと同じままで、サイズが大型化すると、例えば石英やサファイアなどを材料として形成されているため、強度が弱く、破損しやすい。そのため、定盤の厚みを破損しないように厚くする必要があり、コスト増につながっていた。また、定盤には、厚みと大きさと形状、透過させたい光の波長によっては技術的に作成できないものもある。さらに、短波長の光はパワーが減衰しやすいので、UVランプから被加工物までの距離に制限が発生する。よって、光照射触媒基準エッチング装置において、紫外線照射部からの光を被加工物の加工面まで透過しつつ、強度も確保された消耗品になりうるコストの大型化にも対応可能な光透過可能な定盤が必要であった。
【0095】
これに対して、本発明に係る光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例においては、特に大型化と荷重と短波長光に対応するために、従来の石英で形成された定盤を見直し、支持定盤140を、SUS304やSUS316などで形成することで、強度を確保すると共に厚みを維持した。また、消耗部品の削減対策として、支持定盤140を消耗部品にならない部材で構成し、支持定盤140のスリット溝141を塞ぐように、紫外線透過部材157を配置して、紫外線光を透過させるように構成した。これにより、支持定盤140を消耗部品とせずに、紫外線透過部材157を消耗部品として交換できるように構成した。このように構成される光照射触媒基準エッチング装置100は、UVランプ125により照射される紫外線光により触媒基準エッチングを促進させつつ、支持定盤140の強度を確保できる。従って、支持定盤140の上方側に配置される部材の総荷重が増大しても、支持定盤140の破損を抑制できる。
【0096】
また、本発明に係る光照射触媒基準エッチング装置100は、上記の支持定盤140、桶容器150、紫外線透過部材157、触媒パッド155を備える。紫外線光を被加工物に透過させるために、平均化や平坦化の加工動作に合わせた光透過用の穴や開口を支持定盤140、桶容器150、触媒パッド155に加工することで、被加工物に光が当たるために必要な透過スペースを確保した。透過スペースに光透過に最適な石英などの紫外線透過部材157をはめ込むことで、加工に必要な桶容器150に貯める液体やガスが、加工エリアからUVランプなどのエリアに流れ込まないように構成できる。
【0097】
また、本発明に係る光照射触媒基準エッチング装置100においては、紫外線透過部材157は、コストや、加工で使用する薬液や気体と透過したい波長光などを考慮して、最適なものを選定した。例えば、量産工程で流れている石英基板を使用して構成した。光透過が保障された半導体グレードの石英基板であれば、クリーンルームでも使用でき、光透過の品質も安定している。専用の紫外線透過部材を作成するよりも安価に手に入る。平坦度なども安定している。更に石英基板は300mmなど大口径にも対応している。紫外線透過部材157で使用される石英は短波長のUV光の使用により劣化するが、石英基板は安価であるため、安価に交換可能である。透過部は透過する波長光と薬液やガスの相性によってはサファイアで形成された基板なども使用可能である。石英などの基板を紫外線透過部材157に使用することは基板自体が1mmなど薄いため破損しやすいが、本発明は支持定盤140で荷重を受け止めることで、紫外線透過部材157が破損しないようにしている。また、桶容器150を、加工で使用する液体や気体に耐性のある材質で構成している。
【0098】
また、本発明に係る光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例においては、電気を援用した触媒基準エッチングも併せて行う。光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例において、電気的作用により加工を行う場合に用いられる各電極に係る構成について説明する。光照射触媒基準エッチング装置100には、メッキ形成用の電極や、電解研磨用の電極や、UV電気用の電極などが配置されている。図6は、光照射触媒基準エッチング装置の第1装置例において、各電極部を示す図である。
【0099】
図6に示すように、研磨ヘッド163には、紫外線(UV)を照射する際に用いるヘッド側直流電圧電源通電部165と、メッキや電解研磨の際に用いるヘッド側補助電極164aと、が設けられる。桶容器150には、参照電極103と、通電部101と、が設けられる。
【0100】
桶容器150の内部において、触媒パッド155は、通電部101を構成するワッシャが触媒パッド155の表面に当接した状態で、絶縁性のポリカねじ102により、桶容器150の底板151に固定されている。触媒パッド155の表面は、通電部101からの電気により、作用電極155bとなる。桶容器150側においては、桶容器150に加工溶液が貯留されているため、触媒パッド155の表面である作用電極155bとヘッド側補助電極164aと参照電極103との間に電力が供給されることで、作用電極155bへメッキを形成することと電解研磨を抑制することとが可能となる。これにより、触媒表面の触媒活性状態を維持することが可能となる。よって、触媒パッド155の表面には、例えば、電解メッキからなるニッケル触媒層を形成しやすくなる。
【0101】
研磨ヘッド163において、研磨ヘッド163を桶容器150に貯留された加工溶液に入れた状態で、ヘッド側補助電極164aと触媒パッド155の表面である作用電極155bとの間に電流が流れることで、触媒面に電解研磨やメッキをすることができる。その結果、触媒表面の触媒活性状態が維持されて再生可能となることで、触媒と被加工物Wとの接触面における触媒基準エッチングの加工の持続性が向上する。
【0102】
例えば、紫外線(UV)の場合は、研磨ヘッド163の被加工物保持部166に直流電圧電源(+)を通電するヘッド側直流電圧電源通電部165を設け、ヘッド側直流電圧電源通電部165の下方に光照射触媒基準エッチング法で加工可能な被加工物W(一例として、基板、エピタキシャル成長膜や成膜面、3元素混晶、4元素混晶、InやAlやSiやCやGaやNやOやZnの成分のいずれかを少なくとも含む被加工物、SiCやGaNや酸化ガリュウムやダイヤモンドやアルミニウムガリウムナイトライドなどの被加工物)を取り付ける。そして、被加工物Wの下方に光照射触媒基準エッチング法で使用する通電可能な液体や気体を配置し、液体や気体の下に被加工物Wが当接する触媒パッド155を配置する。触媒パッド155の下方から紫外線透過部材157の間に陰極を設ける。陰極は、例えば、被加工物の加工に必要な紫外線(UV)などの光に耐性のある白金などを使用し、もしくは、白金や金などがメッキされたものを使用する。陰極の線のサイズは、径の大きさが例えばφ1~φ0.3mm等で線が断線せずに且つ加工に必要な紫外線(UV)などの光も透過できるサイズであれば、特に制限されない。陰極は、配線パターンのように数μmの薄い膜などで作られていてもよい。触媒パッド155の1又は複数のスリット溝155aの大きさに合わせて、陰極の線や膜を適宜選定できる。陰極には直流電圧電源(-)が電気的に接続されれば良い。ヘッド側直流電圧電源通電部165は、加工で使用する光や液体や気体に耐性があり電気の抵抗値が低ければ、特にパーツに制約はない。使用する具体的なバイアス電圧は、被加工物WがSiCの場合、2V~十数ボルトである。被加工物W自体にも抵抗がある場合、理想的には、被加工物Wの裏面の全面に電極を接触させるようにする。被加工物W自体に抵抗がある場合、電極から離れた加工表面で、正味のバイアス電圧が低下し、加工速度が遅くなるためである。
【0103】
また、本発明では、被加工物Wの表面の酸化の速度が律速である。「加工したい表面の平坦加工速度≧電気的作用又は光照射による加工したい表面の酸化の速度」という関係を満たすような条件下で光照射触媒基準エッチング法の加工を行うのが好ましい。仕上げは、光照射触媒基準エッチング法で使用する紫外線などの被加工物の加工に有効な光を遮断、退避もしくはオフ後、被加工物Wの表面において、光で焼けた表層を触媒基準エッチング法などの仕上げ加工で除去することが好ましい。
【0104】
ここで、光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例のように、小さな振幅で往復移動させる構成の場合には、可動範囲が狭いため、随時加工しながらメッキや電解研磨をするには、図6に示すように、研磨ヘッド163にヘッド側補助電極164aを取り付けた構造にしないと、支持定盤140側が大揺動で移動している間に、加工溶液中の研磨ヘッド163を避けるようにして、補助電極(図示せず)を液に出し入れして、メッキや電解研磨をしなければならず、装置構成として難しい。これに対して、図6に示すように、研磨ヘッド163のヘッド側補助電極164aに補助電極を備えることで、支持定盤140の大揺動による進行とともに、被加工物の加工部を中心にメッキや電解研磨を行える。メッキや電解研磨のいずれかをする際は、被加工物と触媒パッドを接触させながらする方式と、触媒パッドの触媒面からの高さを調節してメッキや電解研磨をする方式とが考えられる。研磨ヘッド163にあるヘッド側補助電極164aを用いたメッキや電解研磨時には、平均化動作を行いながらメッキをすることで、均一なメッキを得ることができる。ヘッド側補助電極164a(メッキや電解研磨用)の形状を、外周部においてテーパ形状に形成したり、反応を阻害する気体を逃がしたり、反応に必要な流体を攪拌する溝をつけたり、研磨ヘッドの回転速度を上げたりすることで、触媒パッドの触媒面へのメッキや電解研磨時に発生する酸素や水素を補助電極部の外周方向へ飛ばしながらメッキや電解研磨を行える。尚、被加工物Wの表面よりも触媒層表面の面積を小さくすれば、小さな触媒パッド155の被加工物W表面に対する位置と滞在時間を制御して、被加工物W表面の局所加工量を制御することができる。つまり、数値制御による局所加工を行うことができる。
【0105】
(光照射触媒基準エッチング装置の第2装置例)
光照射触媒基準エッチング装置の第2装置例について説明する。図7は、光照射触媒基準エッチング装置200の第2装置例を示す斜視図である。図8は、光照射触媒基準エッチング装置200の第2装置例を下方側から見た斜視図である。図9は、光照射触媒基準エッチング装置200の第2装置例の支持定盤210及び桶容器220の構成を主に示した部分断面図である。
【0106】
第2装置例の光照射触媒基準エッチング装置200は、図7図9に示すように、被加工物である被加工物Wと触媒パッド240の触媒層230を気体雰囲気や液体に浸漬した状態で被加工物の加工を行う構造である。光照射触媒基準エッチング装置200は、支持定盤210(定盤)と、気体や液体一例としての水201を保持する桶容器220と、少なくとも表面に触媒物質を有する触媒層230が設けられ水201に浸漬させて桶容器220内に配置される触媒パッド240と、被加工物Wを保持して水201に浸漬させ、触媒層230と接触若しくは接近させた状態で桶容器220内に配置される研磨ヘッド260と、触媒パッド240と研磨ヘッド260とを接触若しくは接近させながら相対運動させる駆動機構270と、UVランプ225(紫外線照射部)と、を備える。
【0107】
被加工物の種類(例えばSiC等)によっては、紫外線光が通過する桶容器220の複数の貫通孔221a(図9参照)と触媒パッド240の複数の貫通孔241(図9参照)との間に陰極を設け、研磨ヘッド260の直流電圧電源(+)と、被加工物の裏面に配置される研磨ヘッド260を保持する被加工物保持部と、被加工物Wと、加工で用いる溶液と、紫外線光が通過する桶容器220の複数の貫通孔221aと触媒パッド240の複数の貫通孔241との間に設ける陰極と、陰極につながる直流電圧電源(-)と、を電気的に接続できる状態としてもよい。
【0108】
支持定盤210は、被加工物の加工に有効な波長の光を透過させることに適さない材料により形成される。具体的には、支持定盤210は、図7及び図8に示すように、円板状に形成され、紫外線光を透過しない材料により形成される。支持定盤210は、金属材料、紫外線に耐性を有すると共に強度を有する材料、又は、紫外線に耐性を有する表面処理が施されている材料により形成される。例えば、支持定盤210は、紫外線光を透過しないSUS(ステンレス鋼)などの金属や、紫外線光を透過しないセラミックス、紫外線光を透過しない樹脂、又は、これらの複合材料などにより形成される。表面を、紫外線光、液体又は気体に対して耐性をより持たせるために、表面は、白金族や金などの成膜やメッキ、もしくは、テフロン(登録商標)コートなど耐性のある膜によって表面処理されていても良い。そのため、支持定盤210は、紫外線光を透過するために石英などで全部が形成されるよりも、強度が高く確保されている。支持定盤210は、クリーンルームでの使用が良好でかつ紫外線の耐性のある、SUS304やSUS316などで形成されることが更により好ましい。
【0109】
支持定盤210は、図8に示すように、UVランプ225から出射された紫外線光が通過する複数の貫通孔群211を有する。複数の貫通孔群211は、複数の貫通孔211a(定盤側貫通開口)により構成された外形が円形状の集合体により形成される。複数の貫通孔211aは、支持定盤210の下方に配置されるUVランプ225(後述)からの紫外線光が透過する位置に形成され、触媒基準エッチング加工動作の際にUVランプ225(後述)からの紫外線光が透過する位置に形成される。複数の貫通孔群211は、支持定盤210の中心から径方向の外方所定位置において、周方向に離間して配置される。複数の貫通孔211aは、隣接する3つの貫通孔211aを見た場合に、隣接する3つの貫通孔211aが、正三角形の頂点に位置するように配置される。貫通孔群211を構成する複数の貫通孔211aは、直径Rが例えば5mmであり、隣接する貫通孔211aの間隔Lが10mmである。
【0110】
支持定盤210の下方には、触媒基準エッチングに用いられると共に紫外線光を出射するUVランプ225(紫外線照射部)が配置されている。
支持定盤210下面の中心には、駆動機構270における下方側回転軸271の上端部が接続されている。支持定盤210は、下方側回転軸271が回転することで、回転移動可能である。
支持定盤210の上面には、上方へ開放する円形液貯留用の桶容器220(桶部)が載設されている。桶容器220は、支持定盤210に対して着脱可能である。
【0111】
桶容器220は、上方が開放されており、支持定盤210の上方側に配置される。桶容器220は、紫外線光が通過する複数の貫通孔221a(底板側貫通開口)を有する円板状の底板221と、底板221の周縁から立ち上がる円筒状の周壁部222と、を備えている。桶容器220は、加工溶液や気体を保持できる桶状に形成される。桶容器220は、例えば、樹脂や、金属や、セラミックスや、紫外線光の透過率の低いガラス系金属酸化物などの材料により形成されている。桶容器220の複数の貫通孔221aは、支持定盤210に形成される複数の貫通孔211aに対応した位置に設けられる。また、支持定盤210は、UVランプ225からの紫外線光が透過させない部分を有し、紫外線光を透過させたくない部分に対する紫外線光の照射を防いで、桶容器220などの劣化を最小限に抑制する。
【0112】
桶容器220における底板221の下方側には、紫外線透過部材212が取り付けられている。紫外線透過部材212は、支持定盤210の下方に配置されるUVランプ225からの紫外線光を透過可能な透過部材である。本実施形態では、紫外線透過部材212は、例えば、石英により構成される。
【0113】
桶容器220には、加工溶液が貯留される。本実施形態の光照射触媒基準エッチング装置200の第2装置例においては、加工溶液として、例えば水を用いることで、被加工物の加工面で加水分解を起こすように構成される。加水分解を起こして触媒基準エッチングを行う場合には、被加工物の加工面と触媒との間に加工溶液を介在させた状態で、加工溶液に浸漬させた触媒に被加工物を接触させながら相対運動させることで、被加工物の加工面で加水分解反応により分解生成物を生成する。そして、分解生成物を加工溶液中に溶出させることで、被加工物の加工面を加工する。
【0114】
ここで、仮に、加工溶液としてフッ化水素酸水溶液を用いた場合には、後述する紫外線透過部材212を例えば石英により構成すると、フッ化水素酸水溶液が、石英を溶かしてしまう。そのため、紫外線光を照射する光照射触媒基準エッチング装置200において、石英により構成された紫外線透過部材212を使用する場合には、加工溶液として、フッ化水素酸水溶液を用いることができない。そのため、本実施形態においては、加工溶液として水を用いている。
【0115】
なお、フッ化水素酸水溶液はサファイアガラスを溶かさないため、紫外線透過部材212を、例えば、サファイアガラスで構成することで、加工溶液として、フッ化水素酸水溶液を用いてもよい。ただし、紫外線透過部材212をサファイアガラスにより構成した場合には、サファイアガラスが石英に比べて特定の短波長の紫外線を透過しないため、短波長すぎると紫外線光には対応できない可能性が有る。そのため、透過可能な波長の光を照射するUVランプ225を使用する必要がある。
【0116】
紫外線透過部材212は、桶容器220の底板221の複数の貫通孔221a(底板側貫通開口)を塞ぐように桶容器220の底板221の下面に取り付けられる。紫外線透過部材212は、桶容器220の底板221の下方側に配置された状態で、紫外線透過部材212の周縁部は、止水処理部212aにおいて止水処理が施されている。これにより、紫外線透過部材212は、止水処理部212aにおいて底板221に止水処理が施された状態で取り付けられている。
【0117】
ここで、止水処理部212aの配置に関して、支持定盤210の複数の貫通孔221aは、紫外線透過部材212における止水処理部212aに対応しない部分に設けられる。つまり、止水処理部212aは、UVランプ225からの紫外線光が届かない位置に配置される。よって、止水処理部212aにおいて、UVランプ225から照射される紫外線光による劣化を生じさせることを抑制できる。
【0118】
桶容器220の底板221の上方側には、図9に示すように、表面全面に、触媒層230がスパッタリング等によって所定厚さで形成されたパッド部の一例としての触媒パッド240が設けられている。触媒パッド240は、被加工物Wの表面を触媒基準エッチングによって平坦化するための触媒層230を有する。触媒パッド240は、桶容器220における底板221の上方側に配置される。触媒パッド240には、複数の貫通孔241が形成されている。
【0119】
触媒パッド240に形成される複数の貫通孔241は、桶容器220に形成される複数の貫通孔221a及び支持定盤210に形成される複数の貫通孔211aに対応した位置に設けられる。つまり、桶容器220に形成される複数の貫通孔221a、支持定盤210に形成される複数の貫通孔211a及び触媒パッド240に形成される複数の貫通孔241は、上下方向に連続して貫通しており、UVランプ225からの紫外線光を透過可能に構成されている。触媒パッド240は、90度以下の水成分又は酸素成分に耐性を有することが好ましい。貫通孔241は、寸法やピッチなど全てが同一で貫通している必要はなく、また、連続に設けられていなくてよい。例えば、支持定盤210の取り外しが困難な場合などには、被加工物の形状により、加工動作に応じて、触媒パッド240に形成される複数の貫通孔241を、穴の寸法やピッチなどを最適化して、寸法やピッチなどを調整した複数の貫通孔211aを設けた支持定盤210に取り付けて使用してもよい。例えば、一部だけ紫外線(UV)を透過させしたい場合は、触媒パッド240の貫通孔241を最適化して構成してもよい。また、桶容器220に形成される複数の貫通孔221aも同様である。
【0120】
触媒パッド240の材料としては、加工溶液や、気体に対する耐性のあるゴムや樹脂、セラミックス、ガラス、金属等を使用する。触媒としてはPt等の遷移金属が使用できる。触媒に金属を積層させる場合は、金属結合が望ましい。金属の一例として、クロム、金、白金などを挙げることができる。ここで、桶容器220は、気体を貯留するものであっても良い。
【0121】
桶容器220の上方には、図7に示すように、駆動機構270の上方側回転軸272が垂設されている。上方側回転軸272は、桶容器220の上方側において、桶容器220における底板221の中心から径方向にずれた位置に配置されている。上方側回転軸272は、図10に示すように、スリーブ261に対して垂直姿勢で回転可能に保持されている。上方側回転軸272は、第1駆動手段としての駆動モータ273によって回転させられる。スリーブ261は、第2駆動手段としての駆動シリンダやボールねじなどの駆動パーツ274によって昇降させられ、これに応じて上方側回転軸272は、触媒パッド240に対して近づけたり遠ざけたりするように前後方向に移動させられる。上方側回転軸272の下端には、研磨ヘッド260が設けられている。研磨ヘッド260の下面には、被加工物Wが保持されている。研磨ヘッド260は、被加工物Wを保持可能に構成され、第1保持手段としてのホルダとしても機能する。
【0122】
次に、研磨ヘッド260の動作制御について説明する。図10は、研磨ヘッド260に保持された被加工物Wが触媒パッド240の表面に当接又は近接された後に、触媒基準エッチングの動作が開始される制御について説明する図である。
【0123】
上方側回転軸272と研磨ヘッド260とは、図10に示すように、傾き可動機構部262により接続される。傾き可動機構部262は、触媒パッド240の表面と被加工物Wの表面とが平行な状態と、触媒パッド240の表面と被加工物Wの表面とが平行ではない状態とを含む範囲において可動するように、触媒パッド240及び被加工物Wの少なくともいずれかを傾かせることが可能である。本実施形態においては、傾き可動機構部262は、研磨ヘッド260を360°の範囲において水平方向に対して傾かせることが可能であるため、被加工物Wを360°の範囲において水平方向に対して傾かせることが可能である。
【0124】
傾き可動機構部262は、触媒パッド240の表面又は被加工物W表面の表面方向において、例えば、触媒パッド240の表面又は被加工物W表面における両端部高さの差Hが0.01mm以上となる範囲まで、触媒パッド240及び被加工物Wの少なくともいずれかを傾かせることが可能である。傾き可動機構部262は、例えば、触媒パッド240の表面に対する被加工物W表面の傾斜角度αが相対的に0.03度以上になるように、触媒パッド240及び被加工物Wの少なくともいずれかを傾かせることが可能である。これにより、傾き可動機構部262により、被加工物Wの表面と、触媒パッド240の表面とを追従させることができる。よって、被加工物Wの表面を触媒パッド240の表面に当接又は近接させる際の、被加工物Wの表面追従性を高めることができる。触媒パッド240は、触媒基準エッチング(触媒基準の反応)によって、被加工物Wの表面を当接又は近接した部分のみ除去するための触媒層を備えている。
【0125】
触媒基準エッチングに必要な平坦化の処理を実行する場合には、図10に示すように、上方側回転軸272の回転を停止すると共に下方側回転軸271(図7参照)を停止して支持定盤210を止めた状態で、第2駆動手段としての駆動パーツ274によってスリーブ261を降下させることで上方側回転軸272を降下させて、被加工物Wの表面を触媒パッド240の表面に触媒膜が剥がれないように当接又は近接させる。その後、第1駆動手段としての駆動モータ273によって上方側回転軸272を回転すると共に下方側回転軸271を回転させて支持定盤210を回転させることで、触媒基準エッチング(触媒基準の反応)に必要な平坦化の処理を、平坦化処理実行部(図示せず)により実行する。これにより、触媒パッド240が停止した状態で、被加工物Wの表面を触媒パッド240の表面に触媒膜が剥がれないように当接又は近接させることができるため、触媒パッド240の表面に形成される触媒層が剥がれることが抑制される。よって、触媒パッド240の表面の触媒層の剥がれが抑制できるため、被加工物Wの加工品質を向上できる。
【0126】
従来、例えば、被加工物Wの表面を主加工の加工動作で加工を行いながら、被加工物Wの表面を触媒パッド240の表面に当接又は近接させると、被加工物Wと触媒パッド240との傾き角度の影響で、被加工物Wの端部が触媒パッド240に接触してしまい、被加工物Wの端部が当たった触媒パッド240の触媒部分が、被加工物W端部の面取り状態によっては、図11に示すように、剥がれ部分Xにおいて、剥がれてしまうという問題が発生していた。
この対策として、加工に必要な被加工物Wの表面を触媒パッド240の表面に当接又は近接した状態にしてから、第1駆動手段としての駆動モータ273によって上方側回転軸272を回転させると共に、下方側回転軸271を回転させることによって支持定盤210を回転させる主加工の加工動作を行うことで、従来に比べて、触媒パッド240の触媒が剥がれることがない加工を実施できる。
【0127】
また、量産時において触媒層230が膜剥がれするリスクを、物理的に抑えることができる。触媒基準エッチングの加工中に、触媒層230が剥がれた触媒パッド240の表面に水貼り現象で被加工物Wがくっついた場合に、触媒パッド240の材質が例えばゴムである場合には、被加工物Wと触媒パッド240との間の水貼り現象と、被加工物Wと触媒パッド240がゴムとの間に発生するグリップ力とで、被加工物Wを保持する研磨ヘッド260から被加工物Wが外れて、触媒基準エッチング装置200の加工動作により、被加工物Wが外周部へ飛んでいき破損するリスクがある。しかし、触媒層230が剥がれなければ、そのリスクを減らすことができる。
【0128】
通常、被加工物Wの表面を主加工の加工動作で加工を行いながら触媒パッド240に被加工物Wの表面を当接又は近接した方が、被加工物Wの表面を触媒パッド240に当接させてから加工動作するよりも、理論上、水貼り現象により被加工物Wが触媒パッド240に貼り付く可能性が低い。触媒パッド240に貼り付いた被加工物Wが研磨ヘッド260のリテーナ(保持部分)から抜けて破損するリスクは、主加工の加工動作で加工を行いながら触媒パッド240に被加工物Wの表面を当接又は近接した方が、動摩擦抵力が被加工物とパッドの間に発生するので、静止摩擦力に比べて低くなるため好ましい。しかし、本発明では、被加工物Wの表面を触媒パッド240に当接させてから加工動作することで、触媒パッド240の触媒が剥がれるのを予防している。触媒パッドの触媒が剥がれるのは、触媒基準エッチングにおける特有の課題である。
【0129】
なお、被加工物Wの表面において行われる主加工の加工動作とは、研磨加工の成立に必要な最低限度の動作のことである。
本実施形態においては、例えば、主加工の加工動作とは、主に加工レートを出す動作であり、図7の触媒基準エッチング装置の場合、主加工の加工動作は、加工に必要な液や気体雰囲気中で、被加工物Wと触媒パッド240とが当接又は近接している状態において、第1駆動手段としての駆動モータ273によって上方側回転軸272を回転させると共に、下方側回転軸271を回転させることによって支持定盤210を回転させる動作である。これに対して、副加工の加工動作とは、揺動動作におる加工動作である。副加工の加工動作とは、平均化を主加工の加工動作と共に行うことで、被加工物Wの加工表面のPV値(Peak to Valley:最大誤差)とRMS値(Root Mean Square:2乗平均平方根)とをより向上させられる動作である。主加工の加工動作は、副加工の加工動作は無くても、主加工の加工動作のみで触媒基準エッチングにおける必要最低限の加工が成立する加工動作である。
【0130】
以上のように構成される光照射触媒基準エッチング装置200は、触媒パッド240が、円盤状の回転定盤であり、該定盤よりも小さな面積の被加工物Wを保持した研磨ヘッド260と触媒パッド240を、互いに平行で偏心した回転軸で、所定速度で回転させるようにしている。また、研磨ヘッド260は、荷重を調節して、触媒パッド240の触媒層230に対する被加工物Wの接触圧力を調節できるようになっている。また、触媒パッド240や定盤や桶や流体部や研磨ヘッド260の少なくともいずれかに温度制御機能を備えれば、加工温度を所定温度で一定に維持することができるので望ましい。例えば被加工物WがSiCの場合には、水を用いた触媒基準エッチング(水CAREともいう)において70度の温度で加工することで、常温の水を用いて加工する場合よりも、加工レートが向上する。尚、被加工物Wの表面よりも触媒層230の表面の面積を狭くすれば、小さな触媒パッド240の被加工物Wの表面に対する位置と滞在時間を制御して、被加工物Wの表面の局所加工量を制御し、つまり数値制御による局所加工を行うことができる。
【0131】
第2装置例の光照射触媒基準エッチング装置200は、水分子が解離して固体酸化膜を構成する酸素元素と他の元素のバックボンドを切って吸着し、加水分解による分解生成物を水中に溶出させ、被加工物Wの表面を加工するものである。また、桶容器220の水201を浄化し、水位を一定に保つために水循環系290を備えている。この水循環系290は、供給管291、排水管292、図示しない処理液精製器、バッファタンク、ポンプ、廃液部等で構成される。
【0132】
[クリーニング装置]
次に、図1における第1クリーニング手段13及び第2クリーニング手段17において行われるクリーニングを実行可能なクリーニング装置について説明する。
クリーニング装置は、光照射触媒基準エッチング装置100,200の基本構成において、触媒を変更することで、実現できる。例えば、光照射触媒基準エッチング装置100,200において触媒をPtとしてエッチングを行うのに代えて、触媒をNiとしてエッチングを行うことで、被加工物に付着したPtを除去するクリーニング装置を実現できる。この場合、被加工物の表面からは、Ptが除去される。Ptが除去された被加工物の表面には、Niが付着する。
【0133】
なお、前述の潜傷除去手段12において実行される処理を行う装置と第1クリーニング手段13において実行される処理を行う装置とを、同じ装置で構成してもよいし、異なる装置で構成してもよい。また、同様に、前述の表面仕上げ手段16において実行される処理を行う装置と第2クリーニング手段17において実行される処理を行う装置とを、同じ装置で構成してもよいし、異なる装置で構成してもよい。この場合には、光照射触媒基準エッチング装置100,200において、触媒基準エッチングの処理を実行した後に、クリーニング液を桶容器150,220に導入して、触媒を変更することで、実現してもよい。
【0134】
(光照射触媒基準エッチング装置及び被加工物加工処理システムの変形形態)
なお、上述した光照射触媒基準エッチング装置は、上記光照射触媒基準エッチング装置100,200の構成に加えて、以下の構成を備えていてもよい。また、被加工物加工処理システム10も、以下の構成を備えていてもよい。なお、以下に記載した内容には、上記に説明した内容と重複した内容も一部含まれている。
【0135】
例えば、光照射触媒基準エッチング装置は、付着する汚染物質を洗浄する際に薬品耐性のある被加工物収納カセットとケース(好ましくは、洗浄方法が確立しやすいのでカセットとケースは1材質、水没させて搬送する場合は、ケース天井にエア抜き穴付き)や、触媒基準エッチング法の工程で使用するカセット取り付け部や、被加工物を洗浄前に乾燥させないための吸引方式のハンドリング部や、UVランプの紫外線光が直接目に入らないようにするための監視カメラや、UVランプの紫外線光が直接目に入らないようにするためのモニタや、被加工物保持部、触媒パッド保持部、ヘッド部にあるメッキや電解研磨用補助電極や、メッキや電解研磨用補助電極のついた研磨ヘッドや、UVランプ用の通電が可能な研磨ヘッドなどを備えていてもよい。
【0136】
また、光照射触媒基準エッチング装置は、被加工物(基板など)を保持するように構成された被加工物保持部と、触媒パッドを保持するように構成された触媒パッド保持部と、被加工物の被処理領域と触媒とが接触した状態で、被加工物保持部と触媒パッド保持部とを相対的に移動させるように構成された駆動部と、を備えていてもよい。触媒パッド保持部は、触媒パッドを保持するための弾性部材を備えていてもよい。触媒パッド保持部は、触媒パッドと被加工物とが接触した状態において、触媒パッド保持部と被加工物との間において、処理液が移動できるように構成される複数の溝や穴を有していてもよい。
【0137】
また、光照射触媒基準エッチング装置は、処理液の温度を、10度以上かつ90度以下の範囲内で所定温度に調整する処理液温度調整部を備えていてもよい。処理液の温度を調整することで、酸化物やSiCなどの被加工物では加工レートが向上したり、Si成分などの触媒毒除去が可能になる。また、触媒基準エッチング装置は、処理液を被加工物の被処理領域上に供給するための供給口を有する処理液供給部を備えていてもよい。処理液供給部は、供給口が触媒保持部とともに移動するように構成されていてもよい。
【0138】
また、光照射触媒基準エッチング装置は、電解作用を利用して触媒表面のエッチング生成物を除去するように構成された電解再生部を備えていてもよい。電解再生部は、触媒と電気的に接続可能に構成された電極を有しており、触媒と電極との間に電圧を印加することによって、触媒の表面に付着したエッチング生成物を電解作用により除去するように構成されていてもよい。
【0139】
また、光照射触媒基準エッチング装置は、触媒を再生するように構成されたメッキ再生部を備えていてもよい。メッキ再生部は、触媒と電気的に接続可能に構成された電極を有しており、硫酸ニッケル(水和物)などのニッケル塩液中に触媒を浸漬した状態で、触媒と電極との間に電圧を印加することによって、触媒の表面をメッキ再生するように構成されていてもよい。または、触媒の表面を化学的に溶かしながら使用してもよい。触媒を加工液に対して正電位状態にして、該加工面の遷移金属膜を溶解させてもよい。
【0140】
また、光照射触媒基準エッチング装置は、被加工物の被処理領域のエッチング処理状態をモニタリングするモニタリング部や、モニタリング部によって得られるエッチング処理状態に基づいて処理中の被加工物の処理条件における少なくとも1つのパラメータを制御するように構成された制御部や、参照電極を有する電位調整部であって触媒と参照電極とを処理液を介して電気化学的に接続して、触媒の表面の電位を制御するように構成された電位調整部を備えていてもよい。また、モニタリング部は、触媒保持部と被加工物保持部とが相対的に移動する際の駆動部のトルク電流に基づいてエッチング処理状態をモニタリングするトルク電流モニタリング部や、被加工物の被処理領域に向けて光を照射し、被加工物の被処理領域の表面で反射するか、該被加工物を透過した後に反射する反射光を受光し、該受光した光に基づいてエッチング処理状態をモニタリングする光学式モニタリング部を備えていてもよい。
【0141】
また、光照射触媒基準エッチング装置は、触媒の表面に、触媒の表面を洗浄するための水および/または薬液を供給するように構成された触媒洗浄ノズルや、触媒保持部内を通って処理液を被加工物の前記被処理領域上に供給するための供給口を有する処理液供給部を有していてもよい。
【0142】
また、被加工物加工処理システムは、被加工物を洗浄するように構成された被加工物洗浄部と、被加工物を搬送する被加工物搬送部と、を備えていてもよい。
また、被加工物加工処理システムは、被加工物処理装置によって処理された後の被加工物の被処理領域の表面状態、厚み又は重さを測定するように構成された被加工物測定部や、被加工物測定部の測定結果が所定の基準を満たさない場合に、被加工物処理装置によって処理された後の被加工物を再処理するように構成された再処理制御部を備えていてもよい。また、被加工物搬送部は、ウエット状態の被加工物とドライ状態の被加工物を別々に搬送できるように構成されていてもよい。
【0143】
また、被加工物加工処理システムは、被加工物に成膜処理を行うように構成される成膜装置を備えていてもよい。成膜装置は、化学気相成長(CVD)装置、スパッタ装置、メッキ装置、およびコーター装置の少なくとも1つを有していてもよい。
【0144】
以上のような本実施形態の光照射触媒基準エッチング装置によれば、以下の効果を得ることができる。
【0145】
(1)光照射触媒基準エッチング装置100、200は、触媒基準エッチングに用いられ、紫外線光を出射するUVランプ125、225と、UVランプ125、225から出射された紫外線光が通過する複数のスリット溝141又は複数の貫通孔211aを有し、紫外線光を透過しない材料により形成される支持定盤140、210と、支持定盤140、210の上方側に配置され、紫外線光が通過する複数のスリット溝151a又は複数の貫通孔221aを有する底板151、221を備えた桶容器150、220と、複数のスリット溝151a又は複数の貫通孔221aを塞ぐように桶容器150、220に配置される紫外線透過部材157、212と、桶容器150、220における底板151、221の上方側に配置される触媒パッド155、240と、を備える。これにより、UVランプ125、225により照射される紫外線光により触媒基準エッチングを促進させつつ、支持定盤140、210の強度を確保できる。
【0146】
(2)また、支持定盤140、210は、金属材料、紫外線に耐性を有すると共に強度を有する材料又は紫外線に耐性を有する表面処理が施されている材料で形成される。これにより、支持定盤140、210の強度を確保できる。よって、支持定盤140、210の上方側に配置される部材の総荷重が増大しても、支持定盤140、210の破損を抑制できる。被加工物Wの大口径化に伴う触媒基準エッチング加工時の接触面積の増大により、単位面積当たりの荷重を維持して増加する目的で、加工時に加える加重が増大しても、支持定盤140、210の破損を抑制できる。これにより、被加工物の大型化による定盤部分の大型化の影響で荷重が増加するが、モーメント方向からの荷重による支持定盤140、210の破損を抑制できる。
【0147】
(3)また、桶容器150、220は、支持定盤140、210に対して着脱可能である。そのため、桶容器150、220の取り扱いが容易である。また、CMPの研磨装置に桶容器150、220を取り付けるスペースがある場合には、研磨装置に桶容器150、220を取り付けることで、水を用いた触媒基準エッチングにおいて、触媒パッド155、240を使用することが可能になる。支持定盤140、210に光を下から照射する穴が無い場合などには、触媒パッド155、240には、貫通した溝が形成されていなくてよい。
【0148】
(4)また、紫外線透過部材157、212は、止水処理部157a、212aにおいて底板151、221に止水処理が施された状態で取り付けられており、支持定盤140、210における複数のスリット溝141又は複数の貫通孔211aは、紫外線透過部材157、212における止水処理部157a、212aに対応しない部分に設けられる。そのため、止水処理部157a、212aにおいて、UVランプ125、225から照射される紫外線光による劣化を生じさせることを抑制できる。
【0149】
なお、本発明に係る光照射触媒基準エッチング装置100は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
例えば、前記実施形態では、被加工物のクリーニング方法について、触媒基準エッチングの処理を行った後において被加工物の表面に付着した有害物質を除去するようにしたが、これに限定されない。表面に付着した有害物質は、触媒基準エッチングの処理で付着したものでなくてもよい。つまり、被加工物のクリーニング方法を、触媒基準エッチングの処理を行った後ではない場合における被加工物の表面に付着した有害物質を除去する場合にも適用できる。例えば、被加工物のクリーニング方法を用いることにより、全反射蛍光X線分析装置(例えば、株式会社リガク社製)を用いた測定で観察可能な被加工物の表面に付着した成分を低減することが可能である。表面粗さRaなどを維持させたり向上させたままでのクリーニングが可能である。
【0150】
また、前記実施形態においては、図2に示す光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例において、一対の支持定盤140を同一直線上で互いに逆位相で往復移動させるように構成したが、これに限定されない。例えば、一対の支持定盤140を、平面視で長円形の範囲で互いに逆位相で往復移動するように構成してもよい。これにより、一対の支持定盤140を同一直線上で互いに逆位相で往復移動させる場合よりも、移動範囲を広げることが可能であるため、被加工物の表面を処理する範囲を拡大することができる。
【0151】
また、前記実施形態においては、桶容器150、220(桶部)を設けて、桶容器150、220(桶部)を、底板151、221及び底板151、221の周縁から立ち上がる周壁部152、222を有するように構成したが、これに限定されない。桶容器150、220(桶部)を設けずに、支持定盤140、210(定盤)に周壁を設けてもよい。この場合、支持定盤140、210(定盤)に紫外線透過部材157、212(光透過部材)が配置されていても良い。
【0152】
また、桶部の形状は、液体や気体の少なくともいずれかを貯められるような桶の形状をしていてもよい。桶部の形状としては、前記実施形態の桶容器150,220のように上方が開放する形状でもよいし、又は、密閉形状でもよい。上方が開放する形状の場合には、加工に使用する液体や気体によっては横方向や逆さ方向で使用する場合があり、この場合には、桶部が開放する上方は、横向きや下向きでもよい。
【0153】
また、前記実施形態の第1装置例及び第2装置例について、以下の他の実施形態に変更してもよい。
例えば、図2図6に示す前記実施形態の光照射触媒基準エッチング装置100の第1装置例において、光照射触媒基準エッチング装置100の支持定盤140は、前記第1装置例のスリット溝141に代えて、紫外線を照射したい被加工物Wの加工したい表面全体や大部分の大きさに対応した紫外線用の紫外線照射用開口を有していても良い。そして、紫外線照射用開口の下にUVランプ125を設けて、UVランプ125により紫外線を照射する。UVランプ125により紫外線を照射した後に、研磨ヘッド163による研磨加工を行う。
【0154】
そして、研磨加工を行う場合には、図2において、基台110を平行レール(図示せず)に沿って図2おける紙面の前後方向(図2を貫く方向)に移動させ、紫外線照射用開口が無い部分で、前記実施形態と同様に、主軸160を下降させて、研磨ヘッド163に支持又は保持させた被加工物Wを、触媒パッド155に当接または近接させる。その後、支持定盤140を駆動モータ182により図2の紙面の左右へ振動させ、この状態で、基台110を一定範囲で揺動させる。主軸160の回転は、この状態で、させてもさせなくても任意で良い。加工後、再び紫外線照射用開口へ被加工物Wを戻して紫外線を照射した後に、研磨加工する動作を繰り返しても良い。なお、UVランプ125に被加工物Wを対向させた状態で、主軸160(研磨ヘッド163)を回転させれば、被加工物Wの研磨面に、より均一に、紫外線を照射可能である。
この手法のメリットは、被加工物Wの加工したい表面の全面に一度紫外線を照射できるため、表面をあと数nm加工したい場合などに、往復回数を設定することで、数nmにおおよそ近い量で被加工物Wの表面を加工する制御が可能である。
【0155】
また、例えば、図7図10に示す前記実施形態の光照射触媒基準エッチング装置200の第2装置例の場合は、支持定盤210が加工時に回転する方式のため、第1装置例の他の実施形態に類する動作をさせるために、支持定盤210は、外径部に、前記第2装置例の底板側貫通開口221aに代えて、紫外線を照射したい被加工物Wの加工したい表面全体や大部分の大きさ分に対応した紫外線照射用開口を有していても良い。そして、紫外線照射用開口の下に光照射部225を設けて、研磨ヘッド260を上げた状態で、外径部において、光照射部225により紫外線を照射する。光照射部225により紫外線を照射した後に、光照射部225を支持定盤210の内径部へ移動させる。
【0156】
そして、研磨ヘッド260に支持又は保持された被加工物Wを下げて、触媒パッド240に当接又は近接させる。続けて、触媒基準エッチング加工を行い、加工後、再び、研磨ヘッド260を上げた状態で、光照射部225を外径部へ移動し、被加工物Wへの紫外線照射を行う。この動作を繰り返す。なお、内径部や中央部に光照射部225を設けることで、研磨ヘッド260を上げた状態で、光照射後に外径部で触媒基準エッチング加工の加工動作を繰り返しても良い。内径部や中央部に光照射部225が存在する場合は、その周辺に中空の駆動機構270の下方側回転軸271が存在する構造になる。外径部をベアリングで保持しても良い。
この手法のメリットは、被加工物Wの加工したい表面の全面に一度紫外線を照射できるため、表面をあと数nm加工したい場合などに、往復回数を設定することで、数nmにおおよそ近い量で被加工物Wの表面を加工する制御が可能である。
【符号の説明】
【0157】
100、200 光照射触媒基準エッチング装置
140、210 支持定盤(定盤)
150、220 桶容器(桶部)
151、221 底板
155、240 触媒パッド(パッド部)
157、212 紫外線透過部材(光透過部材)
157a、212a 止水処理部
125、225 UVランプ(光照射部)
141 スリット溝(定盤側貫通開口)
151a スリット溝(底板側貫通開口)
211a 貫通孔(定盤側貫通開口)
221a 貫通孔(底板側貫通開口)
W 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11