(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】温度制御装置、コンピュータプログラム及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/04 20060101AFI20220808BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20220808BHJP
G05D 23/32 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B29C33/04
B29C45/76
G05D23/32
(21)【出願番号】P 2018175292
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000146054
【氏名又は名称】株式会社松井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】永田 勝史
(72)【発明者】
【氏名】久田松 潤
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126121(JP,A)
【文献】特開平05-177685(JP,A)
【文献】特開平10-109343(JP,A)
【文献】特開2012-081595(JP,A)
【文献】特開2012-206261(JP,A)
【文献】特開平06-210636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/04
B29C 45/76
G05D 23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御する温度制御装置であって、
第1管路を介して第1媒体を循環させる第1媒体循環部と、
第2管路を介して第1媒体よりも高温の第2媒体を循環させる第2媒体循環部と、
第3管路を介して第1媒体よりも低温の第3媒体を循環させる第3媒体循環部と、
前記第1管路、前記第2管路及び前記第3管路のいずれか一つを選択して前記対象物に循環させる媒体を切り替える切替部と、
前記対象物の温度を検出する対象物温度検出部と、
第1媒体の温度を検出する第1媒体温度検出部と、
前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出する媒体目標温度算出部と、
第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する媒体温度制御部と
、
を備え、
前記対象物の温度を第2媒体の温度から第1媒体の温度に戻す場合、前記対象物に循環させる媒体を第2媒体から第3媒体に一時的に切り替えて循環させる媒体の温度を制御し、
第3媒体から第1媒体に切り替えた後、前記対象物温度検出部で検出した前記対象物の温度が前記対象物の第1目標温度を含む所定範囲内になった場合、前記第1媒体温度検出部で検出した第1媒体の温度を第1媒体維持温度として記憶する記憶部をさらに備え、
前記媒体温度制御部は、
第1媒体の温度を前記第1媒体維持温度に維持すべく制御する温度制御装置。
【請求項2】
管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御する温度制御装置であって、
第1管路を介して第1媒体を循環させる第1媒体循環部と、
第2管路を介して第1媒体よりも高温の第2媒体を循環させる第2媒体循環部と、
第3管路を介して第1媒体よりも低温の第3媒体を循環させる第3媒体循環部と、
前記第1管路、前記第2管路及び前記第3管路のいずれか一つを選択して前記対象物に循環させる媒体を切り替える切替部と、
前記対象物の温度を検出する対象物温度検出部と、
第1媒体の温度を検出する第1媒体温度検出部と、
前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出する媒体目標温度算出部と、
第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する媒体温度制御部と
を備え、
前記媒体目標温度算出部は、
前記対象物の温度及び前記第2媒体循環部で第2媒体を循環させた場合の前記対象物の第2目標温度に基づいて第2媒体の第2目標温度を算出し、
前記媒体温度制御部は、
前記切替部が第1媒体から第2媒体に切り替えた場合、第2媒体の第2目標温度及び第2媒体の温度に基づいて第2媒体の温度を制御する温度制御装置。
【請求項3】
前記媒体目標温度算出部は、
前記対象物の温度が前記対象物の第1目標温度より高い場合、前記対象物の温度と前記対象物の第1目標温度との温度差が大きいほど、低い第1目標温度を算出し、
前記対象物の温度が前記対象物の第1目標温度より低い場合、前記対象物の第1目標温度と前記対象物の温度との温度差が大きいほど、高い第1目標温度を算出する請求項1
又は請求項2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記対象物温度検出部で検出した前記対象物の温度が前記対象物の第1目標温度を含む所定範囲内になった場合、前記第1媒体温度検出部で検出した第1媒体の温度を第1媒体維持温度として記憶する記憶部を備え、
前記媒体温度制御部は、
第1媒体の温度を前記第1媒体維持温度に維持すべく制御する請求項
2又は請求項
3に記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記媒体温度制御部は、
所定温度の前記対象物に前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させる場合、第1媒体の温度を前記第1媒体維持温度に制御する請求項
1又は請求項4に記載の温度制御装置。
【請求項6】
前記切替部は、
第2媒体から第3媒体に切り替える切替時点から所要時間が経過した時点で第3媒体から第1媒体に切り替えるようにしてあり、
前記所要時間を調整する調整部を備える請求項
1から請求項5のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項7】
前記切替部は、
第2媒体から第3媒体への切り替え、及び第3媒体から第1媒体への切り替えを繰り返すようにしてあり、
前記切替部が第3媒体から第1媒体に切り替える時点に前記対象物温度検出部で検出した対象物の第1温度を記憶する記憶部と、
第1媒体に切り替えた後、前記対象物温度検出部で検出した対象物の極大温度又は極小温度を記憶する記憶部と
を備え、
前記調整部は、
前記第1温度及び前記第1温度と前記極大温度又は極小温度との温度差に基づいて前記所要時間を調整する請求項6に記載の温度制御装置。
【請求項8】
前記第1管路、前記第2管路及び前記第3管路それぞれと連通する圧力管を介して所要の圧力を供給する圧力供給部を備える請求項
1から請求項7のいずれか一項に記載の温度制御装置。
【請求項9】
コンピュータに、管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
第1媒体が循環する第1管路、第1媒体よりも高温の第2媒体が循環する第2管路及び第1媒体よりも低温の第3媒体が循環する第3管路のいずれか一つを選択して前記対象物に循環させる媒体を切り替える処理と、
前記対象物の温度を検出する処理と、
第1媒体循環部が第1管路を介して循環させる第1媒体の温度を検出する処理と、
前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出する処理と、
第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する処理と
、
前記対象物の温度を第2媒体の温度から第1媒体の温度に戻す場合、前記対象物に循環させる媒体を第2媒体から第3媒体に一時的に切り替えて循環させる媒体の温度を制御する処理と、
第3媒体から第1媒体に切り替えた後、検出した前記対象物の温度が前記対象物の第1目標温度を含む所定範囲内になった場合、検出した第1媒体の温度を第1媒体維持温度として記憶する処理と、
第1媒体の温度を前記第1媒体維持温度に維持すべく制御する処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
第1媒体が循環する第1管路、第1媒体よりも高温の第2媒体が循環する第2管路及び第1媒体よりも低温の第3媒体が循環する第3管路のいずれか一つを選択して前記対象物に循環させる媒体を切り替える処理と、
前記対象物の温度を検出する処理と、
第1媒体循環部が第1管路を介して循環させる第1媒体の温度を検出する処理と、
前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出する処理と、
第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する処理と、
前記対象物の温度及び第2媒体を循環させた場合の前記対象物の第2目標温度に基づいて第2媒体の第2目標温度を算出する処理と、
第1媒体から第2媒体に切り替えた場合、第2媒体の第2目標温度及び第2媒体の温度に基づいて第2媒体の温度を制御する処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項11】
管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御する温度制御方法であって、
第1媒体が循環する第1管路、第1媒体よりも高温の第2媒体が循環する第2管路及び第1媒体よりも低温の第3媒体が循環する第3管路のいずれか一つを選択して前記対象物に循環させる媒体を切り替え、
前記対象物の温度を検出し、
第1媒体循環部が第1管路を介して循環させる第1媒体の温度を検出し、
前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出し、
第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御
し、
前記対象物の温度を第2媒体の温度から第1媒体の温度に戻す場合、前記対象物に循環させる媒体を第2媒体から第3媒体に一時的に切り替えて循環させる媒体の温度を制御し、
第3媒体から第1媒体に切り替えた後、検出した前記対象物の温度が前記対象物の第1目標温度を含む所定範囲内になった場合、検出した第1媒体の温度を第1媒体維持温度として記憶し、
第1媒体の温度を前記第1媒体維持温度に維持すべく制御する温度制御方法。
【請求項12】
管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御する温度制御方法であって、
第1媒体が循環する第1管路、第1媒体よりも高温の第2媒体が循環する第2管路及び第1媒体よりも低温の第3媒体が循環する第3管路のいずれか一つを選択して前記対象物に循環させる媒体を切り替え、
前記対象物の温度を検出し、
第1媒体循環部が第1管路を介して循環させる第1媒体の温度を検出し、
前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出し、
第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御し、
前記対象物の温度及び第2媒体を循環させた場合の前記対象物の第2目標温度に基づいて第2媒体の第2目標温度を算出し、
第1媒体から第2媒体に切り替えた場合、第2媒体の第2目標温度及び第2媒体の温度に基づいて第2媒体の温度を制御する温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御装置、コンピュータプログラム及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック等の合成樹脂を用いて成型品を射出成形する射出成形機には金型が使用されている。射出成形の金型は、溶融したプラスチックが充填される空間部分であるキャビティ、溶融したプラスチックを固化するための金型温度を制御する媒体を流す流路を有する。成型品の精度を高めるため、媒体を介して金型の温度を正確に所要の温度に調節する金型温度調整装置が用いられている。
【0003】
特許文献1には、金型に設けられた媒体流路にバルブの切り替えによって冷水と熱水とを流させるようにして射出工程時には熱水を流し、金型を高温にし、スキン層を形成しかつ発泡させ、熱水から冷水に切り替えることにより、固化状態にする成形サイクルの短縮化を図る加熱冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置では、熱水と冷水との切り替えの際に、一時貯水タンクに熱水及び冷水が交互に送り込まれるので、切替時には熱水の急激な温度低下や冷却水の温度上昇は抑えられ、スムースに切り替えることができるが、金型の温度を目標値に設定することができず、媒体の温度の制御に甘んじていた。このため、金型の温度が設定温度(目標温度)に速やかに到達することが望まれる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、金型の温度を速やかに目標温度に到達させることができる温度制御装置、コンピュータプログラム及び温度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る温度制御装置は、管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御する温度制御装置であって、第1管路を介して第1媒体を循環させる第1媒体循環部と、前記対象物の温度を検出する対象物温度検出部と、第1媒体の温度を検出する第1媒体温度検出部と、前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出する媒体目標温度算出部と、第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する媒体温度制御部とを備える。
【0008】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、前記対象物の温度を検出する処理と、第1媒体循環部が第1管路を介して循環させる第1媒体の温度を検出する処理と、前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出する処理と、第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する処理とを実行させる。
【0009】
本発明に係る温度制御方法は、管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御する温度制御方法であって、前記対象物の温度を検出し、第1媒体循環部が第1管路を介して循環させる第1媒体の温度を検出し、前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出し、第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金型の温度を速やかに目標温度に到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態の温度制御装置の構成の一例を示す説明図である。
【
図2】制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】金型の温度と電磁弁の開閉制御の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】媒体の飽和蒸気圧の変化の一例を示す模式図である。
【
図5】圧力制御部による圧力制御の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】本実施の形態の制御部による金型の温度制御の一例を示すブロック図である。
【
図7】目標温度算出部による媒体目標温度の算出の一例を示す模式図である。
【
図8】金型の温度を維持温度まで昇温させる場合の温度制御の様子の一例を示す模式図である。
【
図9】金型の温度を高温側温度まで昇温させる場合の温度制御の様子の一例を示す模式図である。
【
図10】金型の温度を維持温度まで下げる場合の温度制御の様子の一例を示す模式図である。
【
図11】本実施の形態の温度制御装置による温度制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本実施の形態の温度制御装置による温度制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】本実施の形態の温度制御装置による温度制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は本実施の形態の温度制御装置の構成の一例を示す説明図である。温度制御装置は、温調ユニット100、バルブユニット110、バルブコントローラ40及び制御部50を備える。温度制御装置は、対象物としての金型60を急加熱及び急冷却するとともに金型60の温度を調節する装置である。
【0013】
温調ユニット100は、第1媒体循環部としての維持用温調機10、第2媒体循環部としての高温用温調機20、第3媒体循環部としての冷却用温調機30を備える。維持用温調機10は、第1管路としての管路11を介して金型60に第1媒体を循環させる。第1媒体の温度(第1目標温度)は、例えば、60℃とすることができるが、これに限定されるものではない。高温用温調機20は、第2管路としての管路21を介して金型60に第2媒体を循環させる。第2媒体の温度(第2目標温度)は、第1媒体の温度よりも高く、例えば、160℃とすることができるが、これに限定されるものではない。冷却用温調機30は、第3管路としての管路31を介して金型60に第3媒体を循環させる。第3媒体の温度は、第1媒体の温度よりも低く、例えば、40℃とすることができるが、これに限定されるものではない。第1媒体、第2媒体及び第3媒体は、媒体自体の種類が異なるのではなく、媒体の温度が異なることを便宜上表すものである。媒体は、例えば、水であるが、水に限定されるものではなく、油系、アルコール系等の他の媒体でもよい。
【0014】
維持用温調機10は、ヒータ14、ポンプ16、管路11の圧力を検出する圧力センサ12、第1媒体の温度を検出する第1媒体温度検出部としての温度センサ13、及び給水・冷却電磁弁15などを備える。管路11は、給水・冷却電磁弁15を通じて排水・冷却水出口に連通している。維持用温調機10は、射出工程において金型60の温度を維持するための媒体を循環させることができる。
【0015】
高温用温調機20は、ヒータ24、ポンプ26、管路21の圧力を検出する圧力センサ22、第2媒体の温度を検出する第2媒体温度検出部としての温度センサ23、及び給水・冷却電磁弁25などを備える。管路21は、給水・冷却電磁弁25を通じて排水・冷却水出口に連通している。高温用温調機20は、金型60に射出した樹脂(例えば、熱硬化樹脂)を固化するために金型60の温度を高温にするための媒体を循環させることができる。
【0016】
冷却用温調機30は、熱交換器34、ポンプ36、管路31の圧力を検出する圧力センサ32、第3媒体の温度を検出する第3媒体温度検出部としての温度センサ33、及び給水電磁弁35などを備える。管路31は、給水電磁弁35を通じて排水・冷却水出口に連通している。冷却用温調機30は、高温の金型60を速やかに冷却するための媒体を循環させることができる。熱交換器34の一次側には、管路39が接続され、給水・冷却水入口及び排水・冷却水出口に連通している。管路39の中途には、冷却電磁弁37が設けられている。
【0017】
バルブコントローラ40及びバルブユニット110は、切替部としての機能を有する。バルブユニット110は、電磁弁41~49を備える。電磁弁41は、管路11の送媒側(金型60の入口側)の中途に設けられている。電磁弁42は、管路11の返媒側(金型60の出口側)の中途に設けられている。電磁弁43は、管路11の送媒側と返媒側とに連通する管路18の中途に設けられている。電磁弁41、42を開き、電磁弁43を閉じることにより、維持用温調機10は、第1媒体を金型60に循環させる。また、電磁弁41、42を閉じ、電磁弁43を開くことにより、維持用温調機10による金型60への第1媒体の供給を停止することができる。
【0018】
電磁弁44は、管路21の送媒側の中途に設けられている。電磁弁45は、管路21の返媒側の中途に設けられている。電磁弁46は、管路21の送媒側と返媒側とに連通する管路28の中途に設けられている。電磁弁44、45を開き、電磁弁46を閉じることにより、高温用温調機20は、第2媒体を金型60に循環させる。また、電磁弁44、45を閉じ、電磁弁46を開くことにより、高温用温調機20による金型60への第2媒体の供給を停止することができる。
【0019】
電磁弁47は、管路31の送媒側の中途に設けられている。電磁弁48は、管路31の返媒側の中途に設けられている。電磁弁49は、管路31の送媒側と返媒側とに連通する管路38の中途に設けられている。電磁弁47、48を開き、電磁弁49を閉じることにより、冷却用温調機30は、第3媒体を金型60に循環させる。また、電磁弁47、48を閉じ、電磁弁49を開くことにより、冷却用温調機30による金型60への第3媒体の供給を停止することができる。
【0020】
管路11、21、31の送媒側は、途中で4系統に分岐してあり、分岐した管路62それぞれが金型60の入口側に接続されている。分岐した管路62それぞれには、送媒バルブ(不図示)が設けられ、媒体の流量を調整することができる。同様に、管路11、21、31の返媒側も、金型60の出口側で4系統の管路63に分岐してあり、管路63それぞれには、返媒バルブ(不図示)設けられ、媒体の流量を調整することができる。また、管路11、21、31の送媒側には、温度センサ65及び圧力センサ67が設けられ、管路11、21、31の返媒側には、温度センサ66及び圧力センサ68が設けられている。金型60には、対象物温度検出部としての温度センサ61、61が設けられている。
【0021】
バルブコントローラ40は、制御部50の制御に基づいて、電磁弁41~49の開閉を制御することができる。
【0022】
バルブコントローラ40は、管路11、管路21及び管路31のいずれか一つを選択して金型60に循環させる媒体を切り替えることができる。例えば、維持用温調機10によって第1媒体を循環させる状態(金型温度維持状態)、高温用温調機20によって第2媒体を循環させる状態(金型温度高温状態)、冷却用温調機30によって第3媒体を循環させる状態(金型温度冷却状態)、及び維持用温調機10によって第1媒体を循環させる状態(金型温度維持状態)の順に繰り返すことができる。
【0023】
これにより、金型60の温度を高温(例えば、160℃)から維持温度(60℃)に戻す場合に、高温用温調機20から冷却用温調機30に一時的に切り替えることにより、金型60の温度を速やかに冷却することができるので、金型60の温度を速やかに目標温度(維持温度)に到達させることができる。
【0024】
温調ユニット100は、圧力供給部としての加圧ポンプ70を備える。なお、加圧ポンプ70は、インバータ制御のものでもよく、インバータ制御でないものでもよい。インバータ制御のものを用いることにより、吐出圧をフィードバック制御するので省エネに寄与する。
【0025】
加圧ポンプ70の入口側は、給水・冷却水入口に連通し、加圧ポンプ70の入口側には、温度センサ74及び圧力センサ76が設けられている。加圧ポンプ70の出口側は、逆止弁73を介して排水・冷却水出口と連通するバイパス管71に接続されている。バイパス管71の中途には、開閉弁72を設けてある。なお、バイパス管71は、管路11、21、31の排水・冷却水出口側で連通している。
【0026】
加圧ポンプ70の出口側は、逆止弁73を介して圧力管77に連通している。圧力管77には圧力センサ75が設けられている。圧力管77は、3つに分岐し、分岐した圧力管77は、それぞれ管路11(ヒータ14とポンプ16との間の管路11)、管路21(ヒータ24とポンプ26との間の管路21)、管路31(熱交換器34とポンプ36との間の管路31)に連通している。すなわち、一つの加圧ポンプ70から、3つの圧力管77を介して管路11、管路21及び管路31それぞれに所要の圧力を加えることができる。
【0027】
これにより、例えば、管路11、管路21及び管路31のいずれかを循環する媒体(例えば、水)の温度が高くなり、媒体の飽和水蒸気圧以上の圧力に加圧しないと媒体が沸騰するような場合でも、加圧ポンプ70によって、圧力管77を通じて管路11、管路21及び管路31に所要の圧力(飽和水蒸気圧以上の圧力)を加えることができるので、媒体が沸騰することを防止できる。
【0028】
また、仮に、管路11、管路21及び管路31のそれぞれに加圧ポンプを設けた場合には、それぞれの加圧ポンプの圧力設定の違いや個体差によって、管路11、管路21及び管路31に加えられる圧力が異なり、媒体を切り替えたときに管路内に圧力差や圧力変動が生じる。このため、媒体の切替時に瞬間的に媒体が沸騰するおそれや、ヒータにスケールの付着、あるいはポンプの破損の可能性がある。本実施の形態では、一つの加圧ポンプ70から3つの圧力管77を介して管路11、管路21及び管路31それぞれに所要の圧力を加えるので、媒体の切替時に管路内に圧力差や圧力変動が生ずることなく、圧力を安定化させることができる。また、媒体の切替時に瞬間的に媒体が沸騰するおそれはなく、ヒータ14、24へのスケールの付着もなく、ポンプ16、26、36の破損も生じない。
【0029】
図2は制御部50の構成の一例を示すブロック図である。制御部50は、媒体温度取得部51、金型温度取得部52、圧力制御部53、飽和蒸気圧算出部54、記憶部55、目標温度算出部56、媒体温度制御部57及び切替時間調整部58を備える。媒体温度制御部57は、電磁弁制御部571及びヒータ制御部572を備える。制御部50は、本実施の形態の温度制御装置の動作を制御する。具体的には、金型60の温度を所望の温度に設定するため、かつ金型60を急加熱及び急冷却すべくバルブコントローラ40を介して電磁弁41~49の開閉を制御する。
【0030】
図3は金型60の温度と電磁弁41~49の開閉制御の一例を示すタイムチャートである。
図3の上段に示すように、金型60の温度は、低温(例えば、室温)、中温(維持温度)、高温の3つの温度を推移する。低温から昇温された中温(維持温度、例えば、60℃)では、溶融樹脂(例えば、液状の樹脂)を射出する工程が行われ、高温(例えば、160℃)では、溶融樹脂の固化(熱硬化)する固定が行われ、その後、金型60は、再び維持温度で維持され、成形品の取り出し、再度の射出などが繰り返される。なお、
図3では、便宜上、中温から低温に推移した状態を図示している。
【0031】
時点t1より前の時点では、電磁弁41、42、44、45、47、48は閉じられ、電磁弁43、46、49は開いている。この状態では、例えば、維持用温調機10、高温用温調機20及び冷却用温調機30それぞれの媒体は金型60に循環されず、所望の温度に維持されている。
【0032】
時点t1において、電磁弁41、42が開かれ、電磁弁43が閉じられる。これにより、維持用温調機10は、第1媒体を金型60に循環させる。金型60の温度が所望の温度に維持されると、射出工程が行われる。
【0033】
時点t2において、射出が終了すると、電磁弁41、42が閉じられ、電磁弁43が開かれる。同時に、電磁弁44、45が開かれ、電磁弁46が閉じられる。これにより、維持用温調機10から高温用温調機20に切り替えられ、高温用温調機20は、第2媒体を金型60に循環させる。これにより、金型60は急加熱され、樹脂の固化が行われる。
【0034】
時点t3において、樹脂が固化すると、電磁弁44、45が閉じられ、電磁弁46が開かれる。同時に、電磁弁47、48が開かれ、電磁弁49が閉じられる。これにより、高温用温調機20から冷却用温調機30に切り替えられ、冷却用温調機30は、第3媒体を金型60に循環させる。これにより、金型60は急冷却される。
【0035】
すなわち、金型60の温度を高温(第2温度)から維持温度(第1温度)に戻す場合に、冷却用温調機30に一時的に切り替えることにより、金型60の温度を速やかに冷却することができるので、金型60の温度を速やかに目標温度(維持温度)に到達させることができる。
【0036】
時点t4において、金型60の温度が維持温度付近になると、電磁弁47、48が閉じられ、電磁弁49が開かれる。同時に、電磁弁41、42が開かれ、電磁弁43が閉じられる。これにより、冷却用温調機30から維持用温調機10に切り替えられ、維持用温調機10は、第1媒体を金型60に循環させる。これにより、金型60の温度を維持温度で維持することができる。射出成形を繰り返す場合には、以降、同様の動作を繰り返す。
【0037】
時点t5において、電磁弁41、42が閉じられ、電磁弁43が開かれる。これにより、金型60の温度は室温に向かって下がる。
【0038】
次に、媒体が沸騰しないように加圧する例について説明する。
【0039】
図4は媒体の飽和蒸気圧の変化の一例を示す模式図である。図中、縦軸は圧力(Pa)を示し、横軸は温度(℃)を示す。
図4に示すように、媒体の飽和蒸気圧は、温度の上昇とともに増加する。例えば、媒体の温度が100℃から160℃に上昇した場合、飽和蒸気圧も増加するので、媒体(液体)が蒸気になろうとして沸騰することになる。
【0040】
図5は圧力制御部53による圧力制御の一例を示すタイムチャートである。
図5の上段は、温度センサ13、23、33で検出した温度の推移を示す。媒体温度取得部51は、温度センサ13、23、33、65、66で検出した温度情報を取得する。金型温度取得部52は、温度センサ61、61で検出した温度情報を取得する。
図5に示すように、温度センサ13の検出温度はT1で一定であるとし、温度センサ33の検出温度もT3で一定であるとする。温度センサ23の検出温度は、時点t11以前でT21であり、時点t12でT22となり、時点t12からt13の間はT22であり、時点t14でT23となり、時点t14からt15の間はT23であり、時点t16でT21のように推移したとする。また、媒体の最高温度をTmaxとする。
【0041】
圧力制御部53は、加圧ポンプ70が供給する圧力を制御する。圧力制御部53は、管路11、管路21及び管路31を循環する各媒体が沸騰する温度のうち最も高い温度に対応する飽和蒸気圧以上の圧力となるように制御する。例えば、媒体の最高温度Tmaxに対応する飽和蒸気圧をPmaxとすると、圧力制御部53は、Pmax以上の圧力となるように制御することができる。これにより、維持用温調機10、高温用温調機20及び冷却用温調機30が循環させる各媒体の温度がどのような温度であっても、媒体が沸騰することを防止できる。
【0042】
また、圧力制御部53は、温度センサ13、23、33で検出した各媒体の温度のうち最も高い温度に対応する飽和蒸気圧以上の圧力となるように制御することができる。例えば、各温度センサで検出した温度のうち最高の温度をT22とすると、圧力制御部53は、温度T22に対応する飽和蒸気圧P22以上の圧力となるように制御することができる。これにより、維持用温調機10、高温用温調機20及び冷却用温調機30が循環させる媒体の温度がどのような温度であっても、媒体が沸騰することを防止できる。
【0043】
飽和蒸気圧算出部54は、算出部としての機能を有し、温度センサ13、23、33で繰り返し検出した各媒体の温度に基づいて各媒体の飽和蒸気圧のうちの最大飽和蒸気圧を繰り返し算出する。この場合、温度センサ13、23、33で検出した温度のうち最高温度に対応する飽和蒸気圧を算出してもよく、温度センサ13、23、33で検出した各温度に対応する飽和蒸気圧のうち最大の飽和蒸気圧を算出してもよい。
【0044】
圧力制御部53は、飽和蒸気圧算出部54で算出した最大飽和蒸気圧の推移に応じて最大飽和蒸気圧以上の圧力となるように制御することができる。
図5に示すように、温度センサ23の温度の推移に応じて、算出した飽和蒸気圧がP21、P22、P23、P21のように推移したとする、圧力制御部53は、推移する最大飽和蒸気圧以上の圧力となるように制御することができる。媒体の温度に応じて最大飽和蒸気圧を変更することにより、例えば、予め設定した一定の最大飽和蒸気圧以上の圧力を常に加える必要がなく、最大飽和蒸気圧に応じて加える圧力を変更できるので、必要以上の不要な圧力を加える必要がなく、装置の安全性を高めることができる。
【0045】
また、管路11、管路21及び管路31の圧力を下げる場合に、加圧ポンプ70を停止させることなく、開閉弁72を開くことにより、バイパス管71を通じて圧力を下げることができる。また、水の循環もできるので、圧力管77の温度上昇を防止できる。
【0046】
次に、本実施の形態の温度制御装置による金型60の温度制御方法について説明する。
【0047】
一般的には、金型の温度調整は、金型温度自体を制御するのではなく、媒体温度が設定温度になるように制御し、その結果において、温度制御された金型の温度を所望温度に近づける方法で行われている。しかし、金型の温度に対する応答特性(例えば、温度の時定数が大きい)のために、金型の温度を変更する場合、媒体温度を変更しても、金型の温度応答特性によって温度変化に遅れが生じ、媒体温度と金型温度との間に大きな温度差が生じ、金型の温度を所望温度にすることが難しく、また時間を要していた。また、金型の温度応答特性を補完すべく媒体温度のフィードバック制御を強くすると、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートが発生するおそれがある。以下、本実施の形態について説明する。
【0048】
目標温度算出部56は、媒体目標温度算出部としての機能を有し、温度センサ61で検出した金型の温度(検出温度)及び維持用温調機10で第1媒体を循環させた場合の金型60の第1金型目標温度に基づいて第1媒体の第1媒体目標温度を算出する。
【0049】
媒体温度制御部57は、温度センサ66で検出した第1媒体の温度(返媒温度)及び第1媒体目標温度に基づいて維持用温調機10で循環させる第1媒体の温度を制御する。
【0050】
図6は本実施の形態の制御部50による金型60の温度制御の一例を示すブロック図である。制御部50による温度制御は、
図6に示すように、多重ループ構成の制御方式(カスケード制御ともいう)を用いる。
図6に示すように、目標温度算出部56は、金型温度(温度センサ61で検出した温度)と金型目標温度とに基づいて媒体目標温度を算出する。媒体温度制御部57は、目標温度算出部56が算出した媒体目標温度と媒体温度(温度センサ66で検出した返媒温度)とに基づいて、ヒータ14、24による媒体の加熱、あるいは給水・冷却電磁弁15、25を開くことによる媒体の冷却を行う。具体的には、電磁弁制御部571は、給水・冷却電磁弁15、25の開閉制御を行い、ヒータ制御部572は、ヒータ14、24のオンオフを制御する。これにより、媒体温度は、媒体の応答特性に応じて変化し、媒体温度が変化すると、金型60の温度は、金型60の応答特性に応じて変化する。
【0051】
本実施の形態では、上述の構成のように、金型60の検出温度及び金型60の第1金型目標温度に基づいて第1媒体の第1媒体目標温度を算出し、第1媒体の温度を、算出した第1媒体目標温度に近づけるようにしたので、例えば、金型60の温度応答特性を加味して第1媒体の第1媒体目標温度を逐次変更することができる。これにより、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートを発生させることなく、金型60の温度を第1金型目標温度に速やかに近づけて、当該第1金型目標温度に維持することができる。
【0052】
図7は目標温度算出部56による媒体目標温度の算出の一例を示す模式図である。
図7において、上段の図は金型温度と金型目標温度との温度差を示し、実線は金型温度が金型目標温度よりも高い場合を示し、破線は金型温度が金型目標温度よりも低い場合を示す。下段の図は媒体目標温度の算出例を示し、実線は金型温度が金型目標温度よりも高い場合における媒体目標温度を示し、破線は金型温度が金型目標温度よりも低い場合における媒体目標温度を示す。
【0053】
目標温度算出部56は、実線で示す金型温度と金型目標温度との温度差が大きいほど、低い媒体目標温度を算出し、金型目標温度と破線で示す金型温度との温度差が大きいほど、高い媒体目標温度を算出する。すなわち、目標温度算出部56は、金型の温度が金型目標温度より高い場合、金型の温度と金型目標温度との温度差が大きいほど、低い媒体目標温度を算出し、金型の温度が金型目標温度より低い場合、金型目標温度と金型の温度との温度差が大きいほど、高い媒体目標温度を算出する。
【0054】
図7に示すように、金型温度が金型目標温度よりも高い場合には、金型温度と金型目標温度との温度差の絶対値が大きいほど媒体目標温度をより低い温度にする。例えば、金型温度と金型目標温度との温度差がΔT1である場合、媒体目標温度はT11であり、金型温度と金型目標温度との温度差がΔT2(<ΔT1)である場合、媒体目標温度はT12(>T11)である。これにより、金型60の温度が金型目標温度まで速やかに下がるように媒体の温度を素早く下げることができる。
【0055】
また、金型温度が金型目標温度よりも低い場合には、金型温度と金型目標温度との温度差の絶対値が大きいほど媒体目標温度をより高い温度にする。例えば、金型温度と金型目標温度との温度差がΔT3である場合、媒体目標温度はT13であり、金型温度と金型目標温度との温度差がΔT4(<ΔT3)である場合、媒体目標温度はT14(<T13)である。これにより、金型60の温度が金型目標温度まで速やかに上がるように媒体の温度を素早く上げることができる。これにより、金型60の温度を速やかに目標温度に到達させることができる。
【0056】
次に、金型60に供給する媒体を切り替える場合の温度制御について説明する。
【0057】
図8は金型60の温度を維持温度まで昇温させる場合の温度制御の様子の一例を示す模式図である。図中、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示す。
図8は金型60を室温から維持温度(例えば、60℃)に昇温させる場合を示す。実線は媒体温度の推移を示し、破線は金型温度の推移を表す。時点t21で、維持用温調機10をオフからオンにする。高温用温調機20及び冷却用温調機30はオフである。ここで、オンとは媒体を金型60に循環させて供給する状態であり、オフは媒体を金型60に循環させない状態である。具体的には、時点t21において、電磁弁41、42を開き、電磁弁43を閉じる。
【0058】
図8の比較例の場合、媒体温度が設定温度になるように制御し、その結果において、温度制御された金型の温度を所望温度に近づける方法で行われている。このため、
図8に示すように、媒体温度は金型目標温度(維持温度)に近づくが、金型温度は金型目標温度に到達せず、金型温度と金型目標温度との間には比較的大きな温度差が生じた状態が続く。すなわち、媒体温度と金型温度の関係が不明確であり、媒体温度が一定の値に安定しているように見えても、金型温度は未だ目標温度に到達していない。
【0059】
一方、本実施の形態の場合には、媒体温度をカスケード制御しているので、金型温度が比較例の場合に比べて速やかに金型目標温度に到達し、金型温度は金型目標温度を維持して安定している。すなわち、本実施の形態では、媒体温度と金型温度の関係が明確であり、媒体温度が一定の値に安定している場合、金型温度もほぼ同じ温度で安定している。
【0060】
媒体温度制御部57は、金型60の温度が金型目標温度を含む所定範囲内になった場合、温度センサ66で検出した第1媒体(媒体)の温度を第1媒体維持温度(媒体維持温度)として記憶部55に記憶することができる。媒体温度制御部57は、第1媒体の温度を第1媒体維持温度に維持すべく制御することができる。従来は、媒体温度をどの値に設定すれば金型の温度が何度になるかが分かるだけであったが、第1媒体維持温度を記憶することにより、媒体の温度を制御する際に、金型60の温度を目標温度にするのに必要な媒体の温度を確認して記録することができる。
【0061】
また、媒体温度制御部57は、所定温度(例えば、室温)の金型に維持用温調機10で第1媒体を循環させる場合、第1媒体の温度を第1媒体維持温度に制御することができる。すなわち、金型60の温度を室温から第1金型目標温度まで昇温させる昇温工程において、媒体の目標温度を何度にすればよいかが分かり、最適な昇温工程を実現することができる。また、射出成形において、溶融樹脂(液体状)を金型60に射出する場合、金型60の温度が変動すると溶融樹脂の粘度が変動し、成型品の品質低下の可能性があるが、本実施の形態では、金型60を所望の温度で維持することができるので、溶融樹脂の粘度が変動せず、成型品の品質低下を防止できる。
【0062】
図9は金型60の温度を高温側温度まで昇温させる場合の温度制御の様子の一例を示す模式図である。
図9は金型60を維持温度から高温側温度(例えば、160℃)に昇温させる場合を示す。実線は媒体温度の推移を示し、破線は金型温度の推移を表す。時点t22で、維持用温調機10をオンからオフにし、高温用温調機20をオフからオンにする。具体的には、時点t21において、電磁弁41、42を閉じ、電磁弁43を開き、電磁弁44、45を開き、電磁弁46を閉じる。なお、金型60の温度を高温側温度まで昇温させる場合においても、制御部50は、例えば、
図6及び
図7で例示した制御方法を用いることができる。
【0063】
すなわち、目標温度算出部56は、温度センサ61で検出した金型の温度(検出温度)及び高温用温調機20で第2媒体を循環させた場合の金型60の第2金型目標温度に基づいて第2媒体の第2媒体目標温度を算出する。
【0064】
媒体温度制御部57は、温度センサ66で検出した第2媒体の温度(返媒温度)及び第2媒体目標温度に基づいて高温用温調機20で循環させる第2媒体の温度を制御する。
【0065】
上述の構成のように、金型60の検出温度及び金型60の第2金型目標温度に基づいて第2媒体の第2媒体目標温度を算出し、第2媒体の温度を、算出した第2媒体目標温度に近づけるようにしたので、例えば、金型60の温度応答特性を加味して第2媒体の第2媒体目標温度を逐次変更することができる。これにより、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートを発生させることなく、金型60の温度を第2金型目標温度に速やかに近づけて、当該第2金型目標温度に維持することができる。
【0066】
図9に示すように、媒体温度をカスケード制御しているので、金型温度が速やかに金型目標温度に到達し、金型温度は金型目標温度を維持して安定している。また、本実施の形態では、媒体温度と金型温度の関係が明確であり、媒体温度が一定の値に安定している場合、金型温度もほぼ同じ温度で安定している。
【0067】
なお、維持用温調機10は、第1媒体の温度を記憶部55に記憶した第1媒体維持温度で維持しつつ、第1媒体を管路18でバイパスさせて待機することができる。
【0068】
図10は金型60の温度を維持温度まで下げる場合の温度制御の様子の一例を示す模式図である。
図10は金型60を高温側温度から維持温度まで下げる場合に、冷却用温調機30を用いて急冷却する場合を示す。実線は媒体温度の推移を示し、破線は金型温度の推移を表す。時点t23で、高温用温調機20をオンからオフにし、冷却用温調機30をオフからオンにする。具体的には、時点t23において、電磁弁44、45を閉じ、電磁弁46を開き、電磁弁47、48を開き、電磁弁49を閉じる。
【0069】
バルブコントローラ40は、第2媒体から第3媒体に切り替える切替時点(
図10の例では、時点t23)から所要時間が経過した時点で第3媒体から第1媒体に切り替える。
【0070】
切替時間調整部58は、調整部としての機能を有し、当該所要時間を調整する。すなわち、金型60を循環する高温(例えば、160℃)の第2媒体を、冷却用の第3媒体(例えば、温度は40℃)に切り替えることにより、高温状態の金型60を急激に冷却することができる。
【0071】
バルブコントローラ40は、切替時間調整部58によって調整された所要時間が経過した時点で、金型60を循環する冷却用の第3媒体を、維持温度用の第1媒体に切り替えて、金型60の温度を第1金型目標温度に維持することができる。これにより、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートを発生させることなく、金型60の温度を第1金型目標温度に速やかに近づけて、当該第1金型目標温度に維持することができる。
【0072】
次に、所要時間の調整方法について説明する。
【0073】
図10において、時点t31において、温度センサ61で検出した温度が第1金型目標温度に到達、あるいは第1金型目標温度に近づいたとして、冷却用温調機30から維持用温調機10に切り替えたとする。切替時間調整部58は、時点t31での金型60の温度(第1温度、例えば、Tで表す)を記憶部55に記憶する。この場合、時点t31以降において、温度センサ61で検出した温度のピーク(極大温度)が符号Aに示すように現れたとする。符号Aで示す温度のピークを(T+ΔT)で表す。切替時間調整部58は、金型60の温度のピーク(T+ΔT)を記憶部55に記憶する。
【0074】
射出成形の次のサイクルで、再度、金型60を循環する高温(例えば、160℃)の第2媒体を、冷却用の第3媒体(例えば、温度は40℃)に切り替えることにより、高温状態の金型60を急激に冷却するとする。この場合、切替時間調整部58は、記憶部55に記憶した温度T、及びピーク(T+ΔT)に基づいて、所要時間を調整する。
【0075】
例えば、冷却用の第3媒体が循環する冷却状態の金型60の温度がT(例えば、60℃)になった時点t31で、バルブコントローラ40が第3媒体から維持温度用の第1媒体に切り替えたとする。その後、金型60の温度が極大温度(T+ΔT)(例えば、65℃)になったとする。この場合、切替時間調整部58は、次回の第3媒体から第1媒体への切替時点を金型の温度が(T-ΔT)(すなわち、55℃)になった時点t33となるように所要時間を調整する。これにより、符号Cで示すように、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートを発生させることなく、金型60の温度を第1金型目標温度に速やかに近づけて、当該第1金型目標温度に維持することができる。
【0076】
同様に、冷却用の第3媒体が循環する冷却状態の金型60の温度がT(例えば、60℃)になった時点t32で、バルブコントローラ40が第3媒体から維持温度用の第1媒体に切り替えたとする。その後、金型60の温度が、符号Bで示すように、極小温度(T-ΔT)(例えば、55℃)になったとする。この場合、切替時間調整部58は、次回の第3媒体から第1媒体への切替時点を金型の温度が(T+ΔT)(すなわち、65℃)になった時点t33となるように所要時間を調整する。これにより、符号Cで示すように、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートを発生させることなく、金型60の温度を第1金型目標温度に速やかに近づけて、当該第1金型目標温度に維持することができる。
【0077】
図11、
図12及び
図13は本実施の形態の温度制御装置による温度制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下では、便宜上、処理の主体を制御部50として説明する。制御部50は、維持用温調機10をオンし(S11)、金型60の温度を取得し(S12)、媒体の温度を取得する(S13)。制御部50は、媒体目標温度を算出し(S14)、媒体温度制御を行う(S15)。
【0078】
制御部50は、金型60の温度が目標温度に到達したか否かを判定し(S16)、金型60の温度が目標温度に到達していない場合(S16でNO)、ステップS12以降の処理を続ける。金型60の温度が目標温度に到達した場合(S16でYES)、制御部50は、媒体の温度を記憶する(S17)。
【0079】
制御部50は、バルブ切替タイミングであるか否かを判定し(S18)、バルブ切替タイミングでない場合(S18でNO)、ステップS18の処理を続ける。バルブ切替タイミングである場合(S18でYES)、制御部50は、維持用温調機10をオフし、高温用温調機20をオンする(S19)。
【0080】
制御部50は、金型60の温度を取得し(S20)、媒体の温度を取得する(S21)。制御部50は、媒体目標温度を算出し(S22)、媒体温度制御を行う(S23)。
【0081】
制御部50は、金型60の温度が目標温度に到達したか否かを判定し(S24)、金型60の温度が目標温度に到達していない場合(S24でNO)、ステップS20以降の処理を続ける。金型60の温度が目標温度に到達した場合(S24でYES)、制御部50は、媒体の温度を記憶する(S25)。
【0082】
制御部50は、バルブ切替タイミングであるか否かを判定し(S26)、バルブ切替タイミングでない場合(S26でNO)、ステップS26の処理を続ける。バルブ切替タイミングである場合(S26でYES)、制御部50は、高温用温調機20をオフし、冷却用温調機30をオンする(S27)。
【0083】
制御部50は、所要時間が経過したか否かを判定し(S28)、所要時間が経過していない場合(S28でNO)、ステップS28の処理を続ける。所要時間が経過した場合(S28でYES)、制御部50は、冷却用温調機30をオフし、維持用温調機10をオンする(S29)。
【0084】
制御部50は、処理を終了するか否かを判定し(S30)、処理を終了しない場合(S30でNO)、ステップS18以降の処理を続ける。処理を終了する場合(S30でYES)、制御部50は、維持用温調機10をオフし(S31)、処理を終了する。
【0085】
本実施の形態の制御部50は、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM(メモリ)などを備えたコンピュータを用いて実現することもできる。例えば、記録媒体(例えば、CD-ROM等の光学可読ディスク記憶媒体)に記録されたコンピュータプログラムを記録媒体読取部(不図示)で読み取ってRAMに格納することができる。ハードディスク(図示しない)に格納しコンピュータプログラム実行時にRAMに格納してもよい。
図11から
図13に示すような、各処理の手順を定めたコンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAM(メモリ)にロードし、コンピュータプログラムをCPU(プロセッサ)で実行することにより、コンピュータ上で制御部50を実現することができる。
【0086】
上述の実施の形態では、冷却用温調機30は熱交換器34を備える構成であったが、これに限定されるものではなく、維持用温調機10や高温用温調機20のようにヒータを備える構成でもよい。また、本実施の形態では、3台の温調機を用いる構成であったが、4台の温調機を備える構成でもよい。これにより、さらに金型の急加熱及び急冷却を可能にすることができる。
【0087】
本発明に係る温度制御装置は、管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御する温度制御装置であって、第1管路を介して第1媒体を循環させる第1媒体循環部と、前記対象物の温度を検出する対象物温度検出部と、第1媒体の温度を検出する第1媒体温度検出部と、前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出する媒体目標温度算出部と、第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する媒体温度制御部とを備える。
【0088】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、前記対象物の温度を検出する処理と、第1媒体循環部が第1管路を介して循環させる第1媒体の温度を検出する処理と、前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出する処理と、第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する処理とを実行させる。
【0089】
本発明に係る温度制御方法は、管路を介して対象物に循環させる媒体の温度を制御する温度制御方法であって、前記対象物の温度を検出し、第1媒体循環部が第1管路を介して循環させる第1媒体の温度を検出し、前記対象物の温度及び前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の前記対象物の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出し、第1媒体の温度及び第1媒体の第1目標温度に基づいて前記第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する。
【0090】
第1媒体循環部は、第1管路を介して対象物に第1媒体を循環させる。対象物は、例えば、金型を含む。対象物温度検出部は、例えば、温度センサであり、対象物の温度を検出する。第1媒体温度検出部は、例えば、温度センサであり、第1媒体の温度を検出する。
【0091】
媒体目標温度算出部は、金型(対象物)の検出温度(検出した温度)及び第1媒体循環部で第1媒体を循環させた場合の金型の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出する。媒体温度制御部は、第1媒体の検出温度(検出した温度)及び第1媒体の第1目標温度に基づいて第1媒体循環部で循環させる第1媒体の温度を制御する。
【0092】
一般的には、金型の温度調整は、金型温度自体を制御するのではなく、媒体温度が設定温度になるように制御し、その結果において、温度制御された金型の温度を所望温度に近づける方法で行われている。しかし、金型の温度に対する応答特性(例えば、温度の時定数が大きい)のために、金型の温度を変更する場合、媒体温度を変更しても、金型の温度応答特性によって温度変化に遅れが生じ、媒体温度と金型温度との間に大きな温度差が生じ、金型の温度を所望温度にすることが難しく、また時間を要していた。また、金型の温度応答特性を補完すべく媒体温度のフィードバック制御を強くすると、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートが発生するおそれがある。
【0093】
本実施の形態では、上述の構成のように、金型の検出温度及び金型の第1目標温度に基づいて第1媒体の第1目標温度を算出し、第1媒体の温度を、算出した第1媒体の第1目標温度に近づけるようにしたので、例えば、金型の温度応答特性を加味して第1媒体の第1目標温度を逐次変更することができる。これにより、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートを発生させることなく、金型の温度を金型の第1目標温度に速やかに近づけて、当該第1目標温度に維持することができる。
【0094】
本発明に係る温度制御装置において、前記媒体目標温度算出部は、前記対象物の温度が前記対象物の第1目標温度より高い場合、前記対象物の温度と前記対象物の第1目標温度との温度差が大きいほど、低い第1目標温度を算出し、前記対象物の温度が前記対象物の第1目標温度より低い場合、前記対象物の第1目標温度と前記対象物の温度との温度差が大きいほど、高い第1目標温度を算出する。
【0095】
媒体目標温度算出部は、金型の温度と金型の第1目標温度との温度差が大きいほど、低い第1目標温度を算出し、金型の第1目標温度と金型の温度との温度差が大きいほど、高い第1目標温度を算出する。すなわち、金型の温度が金型の第1目標温度よりも高い場合には、金型の温度と金型の第1目標温度との温度差の絶対値が大きいほど媒体の第1目標温度をより低い温度にすることにより、金型の温度が目標温度まで速やかに下がるように媒体の温度を素早く下げる。また、金型の温度が金型の第1目標温度よりも低い場合には、金型の温度と金型の第1目標温度との温度差の絶対値が大きいほど媒体の第1目標温度をより高い温度にすることにより、金型の温度が目標温度まで速やかに上がるように媒体の温度を素早く上げる。これにより、金型の温度を速やかに目標温度に到達させることができる。
【0096】
本発明に係る温度制御装置は、前記対象物温度検出部で検出した前記対象物の温度が前記対象物の第1目標温度を含む所定範囲内になった場合、前記第1媒体温度検出部で検出した第1媒体の温度を第1媒体維持温度として記憶する記憶部を備え、前記媒体温度制御部は、第1媒体の温度を前記第1媒体維持温度に維持すべく制御する。
【0097】
対象物温度検出部で検出した金型の温度が金型の第1目標温度を含む所定範囲内になった場合、第1媒体温度検出部で検出した第1媒体の温度を第1媒体維持温度として記憶部に記憶する。媒体温度制御部は、第1媒体の温度を第1媒体維持温度に維持すべく制御する。従来は、媒体温度をどの値に設定すれば金型の温度が何度になるかが分かるだけであったが、第1媒体維持温度を記憶することにより、媒体の温度を制御する際に、金型の温度を目標温度にするのに必要な媒体の温度を確認して記録することができる。
【0098】
本発明に係る温度制御装置において、前記媒体温度制御部は、所定温度の前記対象物に前記第1媒体循環部で第1媒体を循環させる場合、第1媒体の温度を前記第1媒体維持温度に制御する。
【0099】
媒体温度制御部は、所定温度の金型に第1媒体循環部で第1媒体を循環させる場合、第1媒体の温度を第1媒体維持温度に制御する。所定温度は、例えば、室温である。すなわち、金型の温度を室温から第1目標温度まで昇温させる昇温工程において、媒体の目標温度を何度にすればよいかが分かり、最適な昇温工程を実現することができる。
【0100】
本発明に係る温度制御装置は、第2管路を介して第1媒体よりも高温の第2媒体を循環させる第2媒体循環部と、第3管路を介して第1媒体よりも低温の第3媒体を循環させる第3媒体循環部と、前記第1管路、前記第2管路及び前記第3管路のいずれか一つを選択して前記対象物に循環させる媒体を切り替える切替部とを備え、前記媒体目標温度算出部は、前記対象物の温度及び前記第2媒体循環部で第2媒体を循環させた場合の前記対象物の第2目標温度に基づいて第2媒体の第2目標温度を算出し、前記媒体温度制御部は、前記切替部が第1媒体から第2媒体に切り替えた場合、第2媒体の第2目標温度及び第2媒体の温度に基づいて第2媒体の温度を制御する。
【0101】
第2媒体循環部は、第2管路を介して第1媒体よりも高温の第2媒体を循環させる。第3媒体循環部は、第3管路を介して第1媒体よりも低温の第3媒体を循環させる。例えば、第1媒体循環部は、射出工程において金型の温度を維持するための媒体を循環させ、第2媒体循環部は、射出した樹脂(例えば、熱硬化樹脂)を固化するために金型の温度を高温にするための媒体を循環させ、第3媒体循環部は、高温の金型を速やかに冷却するための媒体を循環させることができる。
【0102】
切替部は、第1管路、第2管路及び第3管路のいずれか一つを選択して金型に循環させる媒体を切り替える。例えば、第1媒体循環部によって媒体を循環させる状態(金型温度維持状態)、第2媒体循環部によって媒体を循環させる状態(金型温度高温状態)、第3媒体循環部によって媒体を循環させる状態(金型温度冷却状態)、及び第1媒体循環部によって媒体を循環させる状態(金型温度維持状態)の順に繰り返すことができる。
【0103】
媒体目標温度算出部は、金型の温度及び第2媒体循環部で第2媒体を循環させた場合の金型の第2目標温度に基づいて第2媒体の第2目標温度を算出する。媒体温度制御部は、切替部が第1媒体から第2媒体に切り替えた場合、第2媒体の第2目標温度及び第2媒体の温度に基づいて第2媒体の温度を制御する。
【0104】
上述の構成のように、金型の検出温度及び金型の第2目標温度に基づいて第2媒体の第2目標温度を算出し、第2媒体の温度を、算出した第2媒体の第2目標温度に近づけるようにしたので、例えば、金型の温度応答特性を加味して第2媒体の第2目標温度を逐次変更することができる。これにより、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートを発生させることなく、金型の温度を金型の第2目標温度に速やかに近づけて、当該第2目標温度に維持することができる。
【0105】
本発明に係る温度制御装置において、前記切替部は、第2媒体から第3媒体に切り替える切替時点から所要時間が経過した時点で第3媒体から第1媒体に切り替えるようにしてあり、前記所要時間を調整する調整部を備える。
【0106】
切替部は、第2媒体から第3媒体に切り替える切替時点から所要時間が経過した時点で第3媒体から第1媒体に切り替える。調整部は、当該所要時間を調整する。すなわち、高温の第2媒体が循環する高温状態(金型温度高温状態)の金型に循環する媒体を、第2媒体から冷却用の第3媒体に切り替えて、金型を急激に冷却することができる。調整部によって調整された所要時間が経過した時点で、冷却用の第3媒体が循環する冷却状態の金型に循環する媒体を、第3媒体から維持温度用の第1媒体に切り替えて、金型を維持温度(金型温度維持状態)に維持することができる。これにより、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートを発生させることなく、金型の温度を金型の第1目標温度に速やかに近づけて、当該第1目標温度に維持することができる。
【0107】
本発明に係る温度制御装置は、前記切替部は、第2媒体から第3媒体への切り替え、及び第3媒体から第1媒体への切り替えを繰り返すようにしてあり、前記切替部が第3媒体から第1媒体に切り替える時点に前記対象物温度検出部で検出した対象物の第1温度を記憶する記憶部と、第1媒体に切り替えた後、前記対象物温度検出部で検出した対象物の極大温度又は極小温度を記憶する記憶部とを備え、前記調整部は、前記第1温度及び前記第1温度と前記極大温度又は極小温度との温度差に基づいて前記所要時間を調整する。
【0108】
切替部は、第2媒体から第3媒体への切り替え、及び第3媒体から第1媒体への切り替えを繰り返す。切替部が第3媒体から第1媒体に切り替える時点に対象物温度検出部で検出した金型の第1温度を記憶部に記憶する。第1媒体に切り替えた後、対象物温度検出部で検出した金型の極大温度又は極小温度を記憶部に記憶する。調整部は、第1温度及び第1温度と極大温度又は極小温度との温度差に基づいて所要時間を調整する。
【0109】
例えば、冷却用の第3媒体が循環する冷却状態の金型の温度がT(例えば、60℃)になった時点で、切替部が第3媒体から維持温度用の第1媒体に切り替えたとする。その後、金型の温度が極大温度(T+ΔT)(例えば、65℃)になったとする。この場合、調整部は、次回の第3媒体から第1媒体への切替時点を金型の温度が(T-ΔT)(すなわち、55℃)になった時点となるように所要時間を調整する。極小温度についても同様である。これにより、過渡的なオーバーシュートやアンダーシュートを発生させることなく、金型の温度を金型の第1目標温度に速やかに近づけて、当該第1目標温度に維持することができる。
【0110】
本発明に係る温度制御装置は、前記第1管路、前記第2管路及び前記第3管路それぞれと連通する圧力管を介して所要の圧力を供給する圧力供給部を備える。
【0111】
圧力供給部は、第1管路、第2管路及び第3管路それぞれと連通する圧力管を介して所要の圧力を供給する。すなわち、一つの圧力供給部から、3つの圧力管を介して第1管路、第2管路及び第3管路それぞれに所要の圧力を加えることができる。圧力供給部は、例えば、加圧ポンプである。
【0112】
これにより、例えば、第1管路、第2管路及び第3管路のいずれかを循環する媒体(例えば、水)の温度が高くなり、媒体の飽和水蒸気圧以上の圧力に加圧しないと媒体が沸騰するような場合でも、圧力供給部によって所要の圧力(飽和水蒸気圧以上の圧力)を加えることができるので、媒体が沸騰することを防止できる。
【0113】
なお、前述の実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0114】
10 維持用温調機
20 高温用温調機
30 冷却用温調機
34 熱交換器
35 給水電磁弁
11、21、31 管路
12、22、32 圧力センサ
13、23、33 温度センサ
14、24 ヒータ
15、25 給水・冷却電磁弁
16、26、36 ポンプ
18、28、38 管路
40 バルブコントローラ
41、42、43、44、45、46、47、48、49 電磁弁
50 制御部
51 媒体温度取得部
52 金型温度取得部
53 圧力制御部
54 飽和蒸気圧算出部
55 記憶部
56 目標温度算出部
57 媒体温度制御部
571 電磁弁制御部
572 ヒータ制御部
58 切替時間調整部
60 金型
61、65、66 温度センサ
62、63 管路
67、68 圧力センサ
70 加圧ポンプ
71 バイパス管
72 開閉弁
73 逆止弁
74 温度センサ
75、76 圧力センサ
77 圧力管
100 温調ユニット
110 バルブユニット