(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】画像解析システム、画像解析方法及び画像解析プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/78 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
G01N21/78 A
(21)【出願番号】P 2018229181
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-09-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成29年度岩手県立大学ソフトウェア情報学部卒業研究論文要旨(ウェブサイト),http://sotsuron.sd.soft.iwate-pu.ac.jp/outside/summary2.jsp,平成30年1月11日掲載 (2)平成29年度岩手県立大学ソフトウェア情報学部卒業研究論文要旨集,公立大学法人岩手県立大学ソフトウェア情報学部,平成30年2月7日発行 (3)平成29年度岩手県立大学ソフトウェア情報学部卒業研究成果発表会,公立大学法人岩手県立大学 滝沢キャンパス,平成30年2月9日発表 (4)平成29年度岩手県立大学ソフトウェア情報学部卒業研究論文,公立大学法人岩手県立大学,平成30年2月22日発行 (5)情報処理学会第80回全国大会講演論文集,一般社団法人情報処理学会,平成30年3月13日発行 (6)情報処理学会第80回全国大会,早稲田大学 西早稲田キャンパス,平成30年3月14日発表 (7)日本経済新聞(東北版),平成30年6月28日第41面,平成30年6月28日発行
(73)【特許権者】
【識別番号】507234427
【氏名又は名称】公立大学法人岩手県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】プリマ オキ ディッキ アルディアンシャー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 久祥
(72)【発明者】
【氏名】白田 光
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-038735(JP,A)
【文献】特開平09-236495(JP,A)
【文献】特開昭59-183471(JP,A)
【文献】特表2017-503167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0188937(US,A1)
【文献】特開2008-097310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有し、前記長手方向と直交する方向に延びる試験ラインが形成された試験紙の撮影画像を解析する画像解析システムであって、
前記撮影画像から前記試験紙の領域を特定し、矩形の試験紙画像を生成する試験紙画像生成手段と、
前記試験紙画像の長辺方向と直交する方向の画素列ごとに前記試験紙画像の画素値の統計量を算出し、前記長辺方向の位置をx軸、前記統計量をy軸とする直交座標系において前記統計量の波形グラフを生成する波形グラフ生成手段と、
前記波形グラフの谷を埋める埋谷線を生成する埋谷線生成手段と、
前記埋谷線と前記波形グラフによって囲まれる閉領域ごとに、前記閉領域の面積を算出することによって、前記試験ラインの発色の度合を定量化する発色度合定量化手段と、
を備えることを特徴とする画像解析システム。
【請求項2】
前記埋谷線生成手段は、前記波形グラフ上の探索基準点から前記x軸と平行な方向の所定の探索範囲内に前記統計量が前記探索基準点以上の超過点が存在する場合、前記探索基準点から前記超過点までの線分、又は前記探索基準点から前記x軸と平行な方向に延びる前記波形グラフとの交点までの線分を前記埋谷線とする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像解析システム。
【請求項3】
前記波形グラフ生成手段は、前記試験紙画像から解析対象の画素群を抽出し、前記解析対象の画素群について、前記長辺方向と直交する方向の画素列ごとに画素値の平均値及び中央値を算出し、前記平均値及び前記中央値の残差平方和が閾値以上の場合、エラー処理を行う
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像解析システム。
【請求項4】
前記試験紙の色と反対色の第1領域及び前記試験紙の色と同系色の第2領域を有する背景部材、
を更に備え、
前記撮影画像は、前記試験紙が前記第1領域に戴置された状態で、前記第1領域及び前記第2領域が含まれるように撮影されたものである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像解析システム。
【請求項5】
長手方向を有し、前記長手方向と直交する方向に延びる試験ラインが形成された試験紙の撮影画像を解析する画像解析方法であって、
コンピュータが、
前記撮影画像から前記試験紙の領域を特定し、矩形の試験紙画像を生成する試験紙画像生成ステップと、
前記試験紙画像の長辺方向と直交する方向の画素列ごとに前記試験紙画像の画素値の統計量を算出し、前記長辺方向の位置をx軸、前記統計量をy軸とする直交座標系において前記統計量の波形グラフを生成する波形グラフ生成ステップと、
前記波形グラフの谷を埋める埋谷線を生成する埋谷線生成ステップと、
前記埋谷線と前記波形グラフによって囲まれる閉領域ごとに、前記閉領域の面積を算出することによって、前記試験ラインの発色の度合を定量化する発色度合定量化ステップと、
を実行することを特徴とする画像解析方法。
【請求項6】
長手方向を有し、前記長手方向と直交する方向に延びる試験ラインが形成された試験紙の撮影画像を解析する方法をコンピュータに実行させるための画像解析プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記撮影画像から前記試験紙の領域を特定し、矩形の試験紙画像を生成する試験紙画像生成ステップと、
前記試験紙画像の長辺方向と直交する方向の画素列ごとに前記試験紙画像の画素値の統計量を算出し、前記長辺方向の位置をx軸、前記統計量をy軸とする直交座標系において前記統計量の波形グラフを生成する波形グラフ生成ステップと、
前記波形グラフの谷を埋める埋谷線を生成する埋谷線生成ステップと、
前記埋谷線と前記波形グラフによって囲まれる閉領域ごとに、前記閉領域の面積を算出することによって、前記試験ラインの発色の度合を定量化する発色度合定量化ステップと、
を実行させるための画像解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験紙の撮影画像を解析する画像解析システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や食品の分野における各種遺伝子検査を簡易、迅速、安価に行うためのSTH(「Single-strand Tag Hybridization」の略)法が開発されている(特許文献1、非特許文献1参照)。本検査手法では、試験紙として試薬を印字した60mm×2mmのPAS(「Printed Array-Strip」の略)(株式会社TBA製)を用い、PASに検査対象物の成分を付着させ、成分ごとに反応した色の濃淡とその位置から遺伝子を特定する。非特許文献1によれば、色の濃淡とその位置は目視によって判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】株式会社TBA、“技術紹介 STH法とは”、[online]、[2018年10月31日検索]、インターネット(https://www.t-bioarray.com/contents/technology.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、正確に判定するためには検査者に一定の経験が必要であり、検査者によって検査結果にばらつきが出てしまうという課題がある。この課題を解決するために、目視判定の代わりに、検査後のPASをスキャナで読み取り、市販の画像解析ソフトで解析する方法がある。例えば、ATTO社の「Image Analysis Software CS Analyzer」を用いると、PASの画像の断面図からPASの濃淡の変動を可視化できる。
【0006】
しかしながら、成分ごとに反応した色の濃淡を定量化するためには、手動による作業を要している。具体的には、まずPASの画像の断面図上で極大値の地点を結び、地点間の断面図が占める面積を求める。次に、一定以上の面積を抽出した後、成分ごとに反応した色の濃淡を定量化する。これらの手動で行われる作業は最終的な検査結果に大きく影響するため、検査者ごとの検査結果のばらつきを十分に抑制できていない。更に、手動の作業に時間を要し、実用的な時間内に検査を終えることができない。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、検査者による検査結果のばらつきを抑制し、検査結果の信頼性を向上させるとともに、検査に要する時間を短縮可能な画像解析システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための第1の発明は、長手方向を有し、前記長手方向と直交する方向に延びる試験ラインが形成された試験紙の撮影画像を解析する画像解析システムであって、前記撮影画像から前記試験紙の領域を特定し、矩形の試験紙画像を生成する試験紙画像生成手段と、前記試験紙画像の長辺方向と直交する方向の画素列ごとに前記試験紙画像の画素値の統計量を算出し、前記長辺方向の位置をx軸、前記統計量をy軸とする直交座標系において前記統計量の波形グラフを生成する波形グラフ生成手段と、前記波形グラフの谷を埋める埋谷線を生成する埋谷線生成手段と、前記埋谷線と前記波形グラフによって囲まれる閉領域ごとに、前記閉領域の面積を算出することによって、前記試験ラインの発色の度合を定量化する発色度合定量化手段と、を備えることを特徴とする画像解析システムである。第1の発明によって、検査者による検査結果のばらつきを抑制し、検査結果の信頼性を向上させるとともに、検査に要する時間を短縮できる。
【0009】
第1の発明における前記埋谷線生成手段は、前記波形グラフ上の探索基準点から前記x軸と平行な方向の所定の探索範囲内に前記統計量が前記探索基準点以上の超過点が存在する場合、前記探索基準点から前記超過点までの線分、又は前記探索基準点から前記x軸と平行な方向に延びる前記波形グラフとの交点までの線分を前記埋谷線とするようにしても良い。これによって、検査者による手動の作業を行わなくても、試験紙の発色の度合を定量化できる。
【0010】
また、第1の発明における前記波形グラフ生成手段は、前記試験紙画像から解析対象の画素群を抽出し、前記解析対象の画素群について、前記長辺方向と直交する方向の画素列ごとに画素値の平均値及び中央値を算出し、前記平均値及び前記中央値の残差平方和が閾値以上の場合、エラー処理を行うようにしても良い。これによって、画像解析装置が自動的にエラー判定を行うので、検査者による精度のばらつきは生じず、最終的に出力される画像解析の結果の精度を確保できる。
【0011】
また、第1の発明は、前記試験紙の色と反対色の第1領域及び前記試験紙の色と同系色の第2領域を有する背景部材、を更に備え、前記撮影画像は、前記試験紙が前記第1領域に戴置された状態で、前記第1領域及び前記第2領域が含まれるように撮影されたものとしても良い。これによって、試験紙と背景部材との境界となる線分を精度良く検出できるとともに、カメラの自動露光調整を適切に動作させ、試験紙の白飛びを抑制できる。
【0012】
第2の発明は、長手方向を有し、前記長手方向と直交する方向に延びる試験ラインが形成された試験紙の撮影画像を解析する画像解析方法であって、コンピュータが、前記撮影画像から前記試験紙の領域を特定し、矩形の試験紙画像を生成する試験紙画像生成ステップと、前記試験紙画像の長辺方向と直交する方向の画素列ごとに前記試験紙画像の画素値の統計量を算出し、前記長辺方向の位置をx軸、前記統計量をy軸とする直交座標系において前記統計量の波形グラフを生成する波形グラフ生成ステップと、前記波形グラフの谷を埋める埋谷線を生成する埋谷線生成ステップと、前記埋谷線と前記波形グラフによって囲まれる閉領域ごとに、前記閉領域の面積を算出することによって、前記試験ラインの発色の度合を定量化する発色度合定量化ステップと、を実行することを特徴とする画像解析方法である。第2の発明によって、検査者による検査結果のばらつきを抑制し、検査結果の信頼性を向上させるとともに、検査に要する時間を短縮できる。
【0013】
第3の発明は、長手方向を有し、前記長手方向と直交する方向に延びる試験ラインが形成された試験紙の撮影画像を解析する方法をコンピュータに実行させるための画像解析プログラムであって、前記コンピュータに、前記撮影画像から前記試験紙の領域を特定し、矩形の試験紙画像を生成する試験紙画像生成ステップと、前記試験紙画像の長辺方向と直交する方向の画素列ごとに前記試験紙画像の画素値の統計量を算出し、前記長辺方向の位置をx軸、前記統計量をy軸とする直交座標系において前記統計量の波形グラフを生成する波形グラフ生成ステップと、前記波形グラフの谷を埋める埋谷線を生成する埋谷線生成ステップと、前記埋谷線と前記波形グラフによって囲まれる閉領域ごとに、前記閉領域の面積を算出することによって、前記試験ラインの発色の度合を定量化する発色度合定量化ステップと、を実行させるための画像解析プログラムである。第3の発明をコンピュータにインストールすることによって、第1の発明の画像解析システムを構築し、第2の発明の画像解析方法を実行することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、検査者による検査結果のばらつきを抑制し、検査結果の信頼性を向上させるとともに、検査に要する時間を短縮可能な画像解析システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】試験紙画像の生成処理の流れを示すフローチャート
【
図7】波形グラフの生成処理の流れを示すフローチャート
【
図10】埋谷線の生成処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態では、STH(「Single-strand Tag Hybridization」の略)法による遺伝子検査を例に説明する。STH法とは、(1)ビオチンプライマーとシングルタグDNA付プライマーにより標的DNAをPCR増幅し、(2)その増幅液をアビジンコートラテックス(青)と混合して試験紙(「テストストリップ」とも言う。)に展開し、(3)ライン状に固相化された相補タグDNAとタグDNAの強いハイブリダイゼーション反応によりPCR増幅産物をトラップし、(4)トラップされたラテックス標識PCR増幅産物でラインが青色になることにより、(5)検体中の標的DNAの有無を判別するものである。但し、本発明の実施形態における画像解析方法の適用可能範囲は、検査内容が遺伝子検査に限定されるものではないし、検査方法がSTH法に限定されるものでもなく、試験ラインの発色の度合によって検査結果を判定するものであれば、どのようなものであっても適用可能である。
【0017】
また、本発明の実施形態では、試験紙として株式会社TBA製のPAS(「Printed Array-Strip」の略)を例に説明する。PASとは、数種類の相補タグDNAがライン状に固相化されているものである。但し、本発明の実施形態における画像解析方法を適用可能な試験紙は、PASに限定されるものではなく、長手方向を有し、長手方向と直交する方向に延びる試験ラインが形成されたものであれば、どのようなものであっても良い。
【0018】
図1は、画像解析システムの概要を示す図である。
図1に示すように、画像解析システム1は、画像解析を行う画像解析装置2と、遺伝子検査に用いられる試験紙3と、試験紙3を撮影する際、試験紙3が戴置される背景部材4と、によって構成される。
【0019】
画像解析装置2は、制御部としてのCPU(「Central Processing Unit」の略)、主記憶部としてのメモリ、補助記憶部としてのHDD(「Hard Disk Drive」の略)やフラッシュメモリ、表示部としての液晶ディスプレイ、入力部としてのキーボードやマウス、タッチパネルディスプレイ、有線通信部としてのLAN(Local Area Network)又は無線通信部としての無線モジュール等を有する。
【0020】
補助記憶部としてのHDDやフラッシュメモリには、OS(「Operating System」の略)、アプリケーションプログラム、処理に必要なデータ等が記憶されている。画像解析装置2のCPUは、補助記憶部からOSやアプリケーションプログラムを読み出して主記憶部に格納し、主記憶部にアクセスしながら、その他の機器を制御し、後述する処理を実行する。
【0021】
画像解析装置2は、例えば、試験紙3の画像を撮影可能なカメラを有するスマートフォンやタブレット端末等である。また、デジタルカメラ等で試験紙3の画像を撮影する場合、画像解析装置2は、カメラ機能がないデスクトップPC(「Personal Computer」の略)やノートPCでも良い。更に、画像解析装置2は、サーバと端末によって構成されるウエブシステムとして構築されても良い。この場合、端末が試験紙3の画像をサーバに送信し、サーバが画像解析を行う。以下では、画像解析装置2がスマートフォンの場合を例にして説明する。
【0022】
図2は、試験紙の一例を示す図である。
図2(a)に示すように、試験紙3は長手方向L1を有し、その両端に第1端部3a及び第2端部3bを有する矩形の紙材である。
図2(b)は、
図2(a)における領域Aの拡大図である。
図2(b)に示すように、試験紙3には、長手方向L1と直交する方向に延びる8本の試験ライン6、1本のコントロールライン7及び4本の位置マーカー8が形成されている。8本の試験ライン6によって、同時に8種類の遺伝子検査が可能となる。8本の試験ライン6は、コントロールライン7よりも第1端部3a側に形成されている。本発明の実施形態における試験紙3の大きさは、長手方向L1の長さが60mm、長手方向L1と直交する方向の長さが2mmである。また、試験ライン6やコントロールライン7の幅、すなわち長手方向L1の長さは0.5mmである。
【0023】
検査者は、検査対象物の成分を試験紙3に付着させる際、第2端部3b側を把持し、第1端部3a側を検査対象物が含まれる液体の試薬に挿入する。毛細管現象によって試薬が吸い上げられ、試薬が第1端部3a側から第2端部3b側に移動していくと、検査対象物が捕捉された試験ライン6やコントロールライン7が発色する。本発明の実施形態では、試験ライン6やコントロールライン7は青色に発色する。尚、
図2(b)に示す例では、試験ライン6やコントロールライン7と位置マーカー8を判別し易いように、位置マーカー8のみを黒く塗りつぶしているが、色彩の有無を示すものではない。
【0024】
図1の説明に戻る。背景部材4は、試験紙3の色と反対色の第1領域4a及び試験紙3の色と同系色の第2領域4bを有する。本発明の実施形態では、試験紙3が白色、第1領域4aが黒色、第2領域4bが白色であるが、特に限定されるものではない。第1領域4a及び第2領域4bは、ともに矩形であって、同程度の面積を有し、境界が線分である。本発明の実施形態では、背景部材4の材質は紙であるが、プラスチック、木材、金属等でも良く、特に限定されるものではない。
【0025】
本発明の実施形態では、検査者は、試薬をクロマト展開させた後の試験紙3を背景部材4に戴置し、画像解析装置2によって試験紙3の画像を撮影し、画像解析装置2に画像解析処理を実行させる。画像解析装置2は、画像解析処理の結果として、検査の判定に資する情報を検査者に提供する。検査者は、画像解析装置2によって提供される情報に基づいて検査の判定を行う。
【0026】
図3は、画像解析処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示すように、画像解析処理の前段階として、検査者が試験紙3の撮影作業を行う(ステップS1)。
【0027】
図4は、撮影作業を説明する図である。
図4に示すように、検査者は、試験紙3が第1領域4aに戴置された状態で、第1領域4a及び第2領域4bが含まれるように撮影範囲9を調整し、画像解析装置2のカメラによって撮影を行う。このように調整された撮影範囲9の撮影画像を得ることによって、後述する画像解析装置2による画像解析処理において精度良く解析できる。
【0028】
具体的には、白色の試験紙3が反対色である黒色の第1領域4aに戴置されているので、試験紙3と背景部材4との境界となる線分を精度良く検出できる。また、スマートフォン等に標準搭載されているカメラの自動露光調整をONにしている場合、暗所を撮影した際は、画像全体の露光値を適切に保とうとするので、光源や輝度が高い被写体、すなわち、白色の試験紙3が白飛びして映ってしまう。黒色の第1領域4aと白色の第2領域4bの両方が撮影範囲9に含まれることによって、カメラの自動露光調整を適切に動作させ、試験紙3の白飛びを抑制できる。
【0029】
図3の説明に戻る。次に、画像解析装置2の制御部は、撮影画像から試験紙3の領域を特定し、矩形の試験紙画像を生成する(ステップS2)。
【0030】
図5は、試験紙画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。画像解析装置2は、撮影画像を入力すると(ステップS21)、撮影画像の画像サイズを縮小するとともに(ステップS22)、ノイズ抑制のためにガウシアンフィルタによって撮影画像の平滑化を行い(ステップS23)、後述の処理に適した画像に補正する。
【0031】
次に、画像解析装置2は、ステップS22及びS23の補正処理後の撮影画像において、線分を検出する(ステップS24)。線分検出のアルゴリズムは、特に限定されるものではないが、例えば、公知のLSD(「a Line Segment Detector」の略)を用いることができる。LSDの詳細は、「Rafael Grompone von Gioi, Jeremie Jakubowicz, Jean- Michel Morel, Gregory Randall LSD: a Line Segment Detector, Image Processing On Line, http://www.ipol.im/pub/art/2012/gjmr-lsd/article.pdf」に開示されている。
【0032】
図6は、試験紙画像の生成処理を説明する図である。
図6(a)は、撮影画像10において検出された線分を示している。撮影画像10は、
図4に示す撮影範囲9で撮影されている。検出線分11aは、第1領域4aと第2領域4bとの境界である。検出線分11b~11eは、試験紙3と背景部材4との境界である。
【0033】
次に、画像解析装置2は、試験紙3が含まれる第1領域4aを抽出する(ステップS25)。
図6(b)は、
図6(a)の撮影画像10から第1領域4aが抽出された第1領域抽出画像20を示している。画像解析装置2は、ステップS24において検出された線分の中から最も長い線分を第1領域4a及び第2領域4bの境界と判定し、その線分の右側の領域を第1領域4aとして抽出する。
図6(a)に示す例であれば、検出線分11aが最も長い線分であることから、画像解析装置2は、検出線分11a右側の領域を第1領域4aとして抽出する。
【0034】
次に、画像解析装置2は、試験紙3の領域を特定し、透視変換を行うことによって試験紙画像を生成する(ステップS26)。画像解析装置2は、ステップS25において抽出された第1領域4aに含まれる検出線分の中から、最も長い検出線分と2番目に長い検出線分を特定する。次に、画像解析装置2は、特定される2つの検出線分の両端点である4つの座標を頂点とする四角形を試験紙3の領域として特定する。そして、試験紙3の領域の歪みを補正するために、画像解析装置2は、特定された4つの座標を、予め定められる矩形の4つの頂点に対応させ、試験紙3の領域に対して透視変換(「ホモグラフィ変換」とも言う。)を行い、矩形の試験紙画像を生成する。
【0035】
図6(b)に示す例であれば、最も長い検出線分と2番目に長い検出線分は、検出線分11bと検出線分11cである。また、試験紙3の領域の4つの頂点は、検出線分11bと検出線分11cの両端点である第1頂点21a、第2頂点21b、第3頂点21c、第4頂点21である。画像解析装置2は、第1頂点21a、第2頂点21b、第3頂点21c、第4頂点21を、それぞれ、予め定められる矩形の4つの頂点(0,0)、(Xd,0)、(0,Yd)、(Xd、Yd)に対応させ、試験紙3の領域に対して透視変換を行う。
【0036】
図6(c)は、透視変換の結果を示している。
図6(c)に示すように、試験紙画像30は、長辺方向L2を有する矩形である。本発明の実施形態では、試験紙3の大きさは、長手方向L1の長さが60mm、長手方向L1と直交する方向の長さが2mmであるから、縦横比は30:1である。そこで、予め定められる矩形も30:1となるように、例えば、Xd=60、Yd=1800とし、試験紙画像30を縦1800ピクセル×横60ピクセルの画像とする。
【0037】
図3の説明に戻る。次に、画像解析装置2は、試験紙画像30の長辺方向L2と直交する方向の画素列ごとに試験紙画像30の画素値の統計量を算出し、長辺方向L2の位置をx軸、統計量をy軸とする直交座標系において統計量の波形グラフを生成する(ステップS3)。
【0038】
波形グラフの生成に用いられる統計量としては、平均値、中央値、最頻値等の代表値が考えられる。また、最大値、最小値、又は特定の画素値等でも良い。本発明の実施形態では、中央値を用いて波形グラフを生成する。
【0039】
図7は、波形グラフの生成処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示すように、画像解析装置2は、試験紙画像30から解析対象の画素群を抽出する(ステップS31)。
【0040】
図8は、波形グラフの生成処理を説明する図である。試験紙画像30の輪郭周辺は、背景部材4や影等のノイズが含まれる可能性があるため、長辺方向L2に延び、試験紙画像30を二等分する中心線31の周辺の画素群を解析対象とする。すなわち、
図8に示すように、長辺方向L2と直交する方向をx軸、長辺方向L2をy軸とすると、x座標がX1~Xn(0<X1<Xn<Xd)、y座標が0~Ydの画素群を解析対象とする。例えば、本発明の実施形態では、n=15とし、中心線31を中心とした15列分の画素群を解析対象としている。
【0041】
次に、画像解析装置2は、ステップS31において抽出される解析対象の画素群について、特定の色成分の輝度値を算出し、後続の処理に用いる画素値とする(ステップS32)。本発明の実施形態では、検査対象物が捕捉された試験ライン6は、青色に発色する。そこで、画像解析装置2は、試験紙画像30に含まれる画素をCMYKに色分解し、C(=シアン)成分の輝度値を算出し、後続の処理に用いる画素値とする。また、画像解析装置2は、試験紙画像30に含まれる画素をRGBに色分解し、B(青色)成分の輝度値を算出し、後続の処理に用いる画素値としても良い。本発明の実施形態では、後者のB(青色)成分の輝度値よりも、前者のC(=シアン)成分の輝度値を画素値とする方が、より良好な結果が得られている。
【0042】
次に、画像解析装置2は、ステップS31において抽出される解析対象の画素群について、長辺方向L2と直交する方向の画素列ごとに画素値の平均値を算出する(ステップS33)。同様に、画像解析装置2は、ステップS32において抽出される解析対象の画素群について、長辺方向L2と直交する方向の画素列ごとに画素値の中央値を算出する(ステップS33)。そして、画像解析装置2は、ステップS32において算出される平均値と、ステップS33において算出される中央値の残差平方和(RSS:Residual Sum of Squares)を算出する(ステップS34)。
【0043】
ここで、i列目の平均値をμ(i)(i=1~n)、i列目の中央値をm(i)とすると、平均値と中央値の残差平方和RSSは、RSS=(μ(1)-m(1))^2+・・・+(μ(n)-m(n))^2(但し、a^bはaのb乗を表す。)の式によって計算される。
【0044】
ステップS31において抽出される解析対象の画素群にノイズが多く含まれている場合、平均値と中央値の値が大きくかけ離れる。従って、平均値と中央値の残差平方和RSSによって、解析対象の画素群に含まれるノイズ量を判別できる。
【0045】
次に、画像解析装置2は、残差平方和RSSが閾値未満か否か判定する(ステップS35)。残差平方和RSSが閾値未満の場合(ステップS35のYes)、画像解析装置2は、ステップS33において算出される中央値を用いて波形グラフを生成する(ステップS36)。残差平方和RSSが閾値以上の場合(ステップS35のNo)、画像解析装置2は、エラー処理を実行する(ステップS37)。画像解析装置2は、エラー処理として、例えば、検査者に対して再撮影を促すメッセージを表示部に表示する。このように、画像解析装置2が自動的にエラー判定を行うので、検査者による精度のばらつきは生じず、最終的に出力される画像解析の結果の精度を確保できる。
【0046】
図9は、波形グラフの一例を示す図である。
図9では、
図6(c)に示す試験紙画像30に基づいて生成される波形グラフ40の一部を示している。ステップS32において説明した通り、本発明の実施形態では、波形グラフ40の生成に用いられる画素値は、CMYKに色分解されたC(=シアン)成分の輝度値なので、y軸はC(=シアン)成分の濃淡値を示している。y座標の値が小さい程、C(=シアン)成分が濃いことを示している。
図9では、8本の試験ライン6と1本のコントロールライン7が全て青色に発色した場合の例を示している。
図9に示すように、波形グラフ40は、8本の試験ライン6と1本のコントロールライン7の各々に対応する位置で極小値を取り、下向きに凸となっている。ここで、下向きに凸になっている部分を波形グラフ40の谷41と呼ぶ。尚、
図9において符号を付した深い谷41以外にも、浅い谷41が存在する。
【0047】
図3の説明に戻る。次に、画像解析装置2は、波形グラフ40の谷を埋める埋谷線を生成する(ステップS4)。ここで、埋谷線とは、両端が波形グラフ40上の点であって、波形グラフ40の谷41を閉領域とする線分を意味する。
【0048】
図10は、埋谷線の生成処理の流れを示すフローチャートである。以下、x座標が最も小さい波形グラフ40上の点を最初の点とし、x座標が最も大きい波形グラフ40上の点を最後の点とする。また、波形グラフ40上のある点の次の点とは、x座標がある点よりも1つ大きい波形グラフ40上の点を意味する。
【0049】
図10に示すように、画像解析装置2は、最初の点を探索基準点に設定し(ステップS41)、探索基準点の次の点の統計量が探索基準点の統計量以上か否かを判定する(ステップS42)。探索基準点の次の点の統計量が探索基準点の統計量以上ということは、この間の微分係数が0以上であるから、谷41ではないことを意味する。一方、探索基準点の次の点の統計量が探索基準点の統計量未満ということは、この間の微分係数がマイナスであるから、谷41であることを意味する。谷41のみが埋谷線の生成対象となる。
【0050】
ステップS42の判定がYesの場合、画像解析装置2は、現在の探索基準点の次の点を新たな探索基準点に設定し(ステップS43)、ステップS47に進む。ステップS42の判定がNoの場合、画像解析装置2は、予め定められる探索範囲内に統計量が探索基準点以上の点(以下、「超過点」と呼ぶ。)が存在するか否か判定する(ステップS44)。
【0051】
予め定められる探索範囲のピクセル数Rは、例えば、試験ライン6の幅に相当するピクセル数とする。本発明の実施形態では、試験紙3の長手方向L1の長さが60mm、試験ライン6の幅が0.5mm、試験紙画像30の長辺方向L2のピクセル数が1800ピクセルであるから、R=(0.5mm×1800ピクセル)/60mm=15ピクセルとなる。
【0052】
ステップS44の判定がYesの場合、画像解析装置2は、埋谷線を生成する(ステップS45)。例えば、画像解析装置2は、探索基準点から超過点までの線分を埋谷線とする。探索範囲内に超過点が複数存在する場合、最も探索基準点に近い超過点を採用する。また、例えば、画像解析装置2は、探索基準点からx軸と平行な方向に延びる波形グラフ40との交点までの線分を埋谷線としても良い。次に、画像解析装置2は、超過点(複数存在する場合、最も探索基準点に近い超過点)を新たな探索基準点に設定し(ステップS46)、ステップS47に進む。
【0053】
ステップS44の判定がNoの場合、画像解析装置2は、現在の探索基準点の次の点を新たな探索基準点に設定し(ステップS43)、ステップS47に進む。
【0054】
ステップS47において、画像解析装置2は、探索基準点が最後の点か否か判定する。探索基準点が最後の点ではない場合(ステップS47のNo)、画像解析装置2は、ステップS42から処理を繰り返す。探索基準点が最後の点の場合(ステップS47のYes)、画像解析装置2は、処理を終了する。
【0055】
図11は、埋谷線の生成処理を説明する図である。以下、
図11に示す例について埋谷線の生成処理を説明する。
図11(a)に示すように、最初の点はP1なので、画像解析装置2は、ステップS41においてP1を探索基準点に設定する。P1が探索基準点の場合、探索基準点P1の次の点はP2である。P2の統計量はP1の統計量以上であるから、画像解析装置2は、ステップS42の判定をYesとし、ステップS43においてP2を新たな探索基準点に設定する。
【0056】
P2が探索基準点の場合、探索基準点P2の次の点はP3である。P3の統計量はP2の統計量より小さいから、画像解析装置2は、ステップS42の判定をNoとし、ステップS44に進む。探索基準点P2から探索範囲42内には、統計量が探索基準点P2以上の超過点は存在しないので、画像解析装置2は、ステップS44の判定をNoとし、ステップS43においてP3を新たな探索基準点に設定する。
【0057】
P3が探索基準点の場合、探索基準点P3の次の点はP4である。P4の統計量はP3の統計量より小さいから、画像解析装置2は、ステップS42の判定をNoとし、ステップS44に進む。探索基準点P3から探索範囲42内には、統計量が探索基準点P3以上の超過点は存在しないので、画像解析装置2は、ステップS44の判定をNoとし、ステップS43においてP4を新たな探索基準点に設定する。
【0058】
P4が探索基準点の場合、探索基準点P4の次の点はP5である。P5の統計量はP4の統計量より小さいから、画像解析装置2は、ステップS42の判定をNoとし、ステップS44に進む。探索基準点P4から探索範囲42内のP18は、統計量が探索基準点P4以上なので超過点である。従って、画像解析装置2は、ステップS44の判定をYesとし、
図11(b)に示すように、ステップS45において埋谷線43a又は43bを生成し、ステップS46においてP18を新たな探索基準点に設定し、同様の処理を継続する。
【0059】
図11(b)に示す埋谷線43aは探索基準点P4から超過点P18までの線分、埋谷線43bは探索基準点P4からx軸と平行な方向に延びる波形グラフ40との交点までの線分である。また、閉領域44aは埋谷線43aと波形グラフ40によって囲まれる領域、閉領域44bは埋谷線43bと波形グラフ40によって囲まれる領域である。
【0060】
このようにして、画像解析装置2は、波形グラフ40の全ての谷41に対して埋谷線43を生成することができる。
【0061】
ステップS44において用いられる探索範囲42のピクセル数Rは、波形グラフ40の谷41の深さに応じて変更しても良い。例えば、画像解析装置2は、波形グラフ40の極小値に基づいて探索範囲42のピクセル数Rを動的に変更する。これは、探索範囲42のピクセル数Rを試験ライン6の幅に相当するピクセル数とすると、埋谷線43が理想的な高さよりも低くなる場合があるためである。波形グラフ40の谷41が深い程、予め定められる探索範囲42のピクセル数Rを大きくすることで、埋谷線43を理想的な高さに近づけることができる。
【0062】
図3の説明に戻る。次に、画像解析装置2は、埋谷線43と波形グラフ40によって囲まれる閉領域44ごとに、閉領域44の面積を算出することによって、試験ライン6の発色の度合を定量化する(ステップS5)。
【0063】
ステップS5において、算出される閉領域44の面積がどの試験ライン6の発色の度合に相当するのかを決定するために、波形グラフ40上の試験ライン6の位置を特定する必要がある。前述のステップS24の線分検出処理における計算の丸め込み誤差に起因し、試験紙画像30の端部からの絶対距離によって試験ライン6の位置を特定することができない。そこで、画像解析装置2は、試験紙3に形成されている位置マーカー8に基づいて、波形グラフ40上の試験ライン6の位置を特定する。具体的には、画像解析装置2は、試験紙画像30に含まれる画素の色空間をHSVに変換し、色相成分(=Hue)を画素値とし、ステップS37と同様に、画素値の統計量(例えば中央値)の波形グラフを生成する。そして、画像解析装置2は、波形グラフに基づいて位置マーカー8の色相に対応する位置を特定し、特定される位置マーカー8の位置からの絶対距離によって試験ライン6の位置を特定する。
【0064】
図12は、発色度合の定量化処理を説明する図である。横軸は試験紙画像30の長辺方向L2の位置、縦軸は色相成分の値である。本発明の実施形態では、位置マーカー8の色相が250~270の範囲である。
図12に示すように、色相の波形グラフによって4本の位置マーカー8の位置を特定できる。画像解析装置2は、例えば、試験紙3の第2端部3bに最も近い位置マーカー8、すなわち
図12に示す最も左にある位置マーカー8の位置からの絶対距離によって試験ライン6の位置を特定する。
【0065】
図3の説明に戻る。次に、画像解析装置2は、解析結果を表示部に表示する(ステップS6)。解析結果として、例えば、画像解析装置2は、各試験ライン6の名称と対応付けて、ステップS5において算出される閉領域44の面積に基づく値を表示部に表示する。また、例えば、画像解析装置2は、閉領域44の面積に基づく値とともに、ステップS3において生成される試験紙画像30の画素値の統計量の波形グラフ40を表示部に表示しても良い。
【0066】
以上の通り、本発明の実施形態における画像解析システム1によれば、試験紙3の撮影画像10を画像解析装置2に入力すると、検査者による手動の作業を行うことなく、画像解析装置2が自動的に撮影画像10を解析し、検査の判定に資する情報を検査者に提供する。従って、検査者による検査結果のばらつきを抑制し、検査結果の信頼性を向上させるとともに、検査に要する時間を短縮することができる。
【0067】
特に、コンピュータを画像解析装置2として機能させるためのプログラムをスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末にインストール可能なアプリケーションプログラムとし、携帯端末にアプリケーションプログラムをインストールすることによって、誰でも、場所を問わず、簡易、迅速、安価に画像解析システム1を利用することができる。
【0068】
ここで、本実施の形態における変形例を説明する。
図10を参照して説明した埋谷線43の生成処理では、試験ライン6の位置が予め特定できない場合を想定していた。一方、試験ライン6の位置が予め特定できる場合、他の方法によっても閉領域44の面積を算出することが可能である。例えば、画像解析装置2は、試験ライン6の区間の両端の周辺部分(但し、試験ライン6及び位置マーカー8の区間を除く。)の統計量の平均値を基準値とし、基準値と試験ライン6の区間における統計値との差の絶対値の和を閉領域44の面積としても良い。また、例えば、画像解析装置2は、予め特定される試験ライン6の区間の両端の位置を埋谷線43の開始点及び終了点として埋谷線43を生成し、閉領域44の面積を算出しても良い。尚、試験ライン6の位置の特定方法は、前述のステップS5における方法を用いることができる。
【0069】
また、
図10を参照して説明した前述の埋谷線43の生成処理を実行する場合であっても、試験ライン6の位置が予め特定できれば、より処理の高速化を図ることができる。前述の説明では、波形グラフ40全体を埋谷線43の生成処理の対象としたが、試験ライン6の位置が予め特定できれば、処理の対象を限定することができる。すなわち、画像解析装置2は、予め特定される試験ライン6の区間の両端の位置に基づいて、埋谷線の生成処理における最初の点及び最後の点を設定する。例えば、試験ライン6の位置の特定における誤差を考慮し、画像解析装置2は、予め特定される試験ライン6の区間の両端よりも所定の画素数だけ外側の点を、埋谷線の生成処理における最初の点及び最後の点として設定しても良い。これによって、埋谷線43の生成処理の対象を試験ライン6の付近に限定することができ、処理の高速化を図ることができる。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る画像解析システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0071】
1………画像解析システム
2………画像解析装置
3………試験紙
3a………第1端部
3b………第2端部
4………背景部材
4a………第1領域
4b………第2領域
6………試験ライン
7………コントロールライン
8………位置マーカー
9………撮影範囲
10………撮影画像
11a~11e………検出線分
20………第1領域抽出画像
21a~21d………第1頂点~第4頂点
30………試験紙画像
31………中心線
32………解析対象範囲
40………波形グラフ
41………谷
42………探索範囲
43、43a、43b………埋谷線
44、44a、44b………閉領域
L1………長手方向
L2………長辺方向
R………探索範囲のピクセル数