(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】コンクリートカッター
(51)【国際特許分類】
B28D 1/04 20060101AFI20220808BHJP
E01C 23/09 20060101ALI20220808BHJP
B28D 1/24 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B28D1/04 B
E01C23/09 A
B28D1/24
(21)【出願番号】P 2019213147
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000175386
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】村本 健一
(72)【発明者】
【氏名】堀口 数馬
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0168054(US,A1)
【文献】実開昭57-140959(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/04
E01C 23/09
B28D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードを支持するブレードシャフトが、機体のフロント側下部において機体を横断するように、かつ、先端部が機体の側方へ突出するように左右一対の軸受けによって保持され、その突出した先端部にブレードが装着されるように構成されたコンクリートカッターにおいて、
ブレードシャフトをロックするための係合部が、ブレードシャフトに形成され、
係合部の上方において機体のベースに、又は、係合部の前方において機体のフロントカバーに、レンチを通過させることができる大きさの開口部が形成され
、
ブレードカバーを機体の適正な位置に装着した際に、ベースに形成されている開口部を上方側から覆い、又は、フロントカバーに形成されている開口部を前方側から覆い、ブレードカバーを機体から取り外した際に、開口部を露出させる開閉手段が、ブレードカバーに取り付けられていることを特徴とするコンクリートカッター。
【請求項2】
係合部が、ブレードシャフトを支持する左右の軸受けのうちのブレード側の軸受けと、ブレードを挟持するブレードフランジとの間の位置に形成されていることを特徴とする
、請求項1に記載のコンクリートカッター。
【請求項3】
ブレードシャフトを支持する左右の軸受けと、その間の領域の全体を下方側から覆うように、カバープレートが取り付けられていることを特徴とする、請求項2に記載のコンクリートカッター。
【請求項4】
係合部に対してレンチを係合させた状態において、レンチの把持部が開口部の周縁によってホールドされて、係合部との係合状態が維持されるとともに、ブレードシャフトを中心とするレンチの回動が、開口部の周縁によって規制されるように構成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のコンクリートカッター。
【請求項5】
係合部が、ブレードシャフトの軸心を挟んで対向する位置に形成された平行な二つの平面を有しており、その二面幅に対応するレンチを係合させて保持することにより、ブレードシャフトをロックできるように構成されていることを特徴とする、請求項1~
4のいずれかに記載のコンクリートカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路のアスファルト舗装面やコンクリート表面を切断又は切削するコンクリートカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
道路のアスファルト舗装面やコンクリート表面を切断又は切削するコンクリートカッターは、一般的に、ブレード(ダイヤモンドブレード、カッターブレード)を支持するブレードシャフトが、機体のフロント側下部において機体を横断するように、かつ、先端部が機体の側方へ突出するように保持され、その突出した先端部にブレードが装着されるように構成されている。
【0003】
ブレードは、ブレードシャフトの突出部(機体の側方へ突出する部分)に固定されたブレードフランジと、ブレードシャフトの先端部に装着されるブレード固定用のナットによって挟持されて、ブレードシャフト上に固定されるように構成されていることが多い。このような構成が採用される場合、ブレードシャフトに対してブレードを装着する(或いは、取り外す)際には、ナットの締め付け操作(或いは、緩める操作)を行う間、ブレードシャフトが共回りしないようにロックしておく必要がある。
【0004】
ブレードシャフトをロックするための方法としては、ブレードシャフトの外周面の一部を取り除いて、レンチ(スパナ)を係合できる部分(例えば、軸心を挟んで対向する位置に形成された平行な二つの平面からなる係合部)を形成しておき、ここにレンチを係合させて回転しないように保持するという方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-201047号公報
【文献】特開2012-162939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコンクリートカッターにおいては、ブレードシャフトをロックするための要素(係合部)へのアクセスが、機体の底面側からのみ可能であり、この場合、ブレードの交換の際に、極めて煩雑な作業が必要であった。例えば、作業者はまず、機体のフロント側近傍において、屈んだ状態で機体の底面側を覗き込み、係合部を目視しながら一本のレンチを係合部に係合させ、レンチの把持部を地面上で踏みつけて固定しながら、もう一本のレンチを操作してブレード固定用のナットを緩め、或いは、締め付けるという作業が必要であり、相応の技術が必要となるほか、不安定な姿勢で行わざるをえないため、安全面でも問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、ブレードの交換作業を極めて簡単に、かつ、安全に行うことができるコンクリートカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンクリートカッターは、ブレードを支持するブレードシャフトが、機体のフロント側下部において機体を横断するように、かつ、先端部が機体の側方へ突出するように左右一対の軸受けによって保持され、その突出した先端部にブレードが装着されるように構成され、ブレードシャフトをロックするための係合部が、ブレードシャフトを支持する左右の軸受けのうちのブレード側の軸受けと、ブレードを挟持するブレードフランジとの間の位置に形成され、係合部の上方において機体のベースに、又は、係合部の前方において機体のフロントカバーに、レンチを通過させることができる大きさの開口部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
尚、このコンクリートカッターにおいては、係合部に対してレンチを係合させた状態において、レンチの把持部が開口部の周縁によってホールドされて、係合部との係合状態が維持されるとともに、ブレードシャフトを中心とするレンチの回動が、開口部の周縁によって規制されるように構成されていることが好ましく、また、ブレードシャフトを支持する左右の軸受けと、その間の領域の全体を下方側から覆うように、カバープレートが取り付けられていることが好ましい。
【0010】
更に、ブレードカバーを機体の適正な位置に装着した際に、ベースに形成されている開口部を上方側又は前方側から覆い、ブレードカバーを機体から取り外した際に、ベースの開口部を露出させる開閉手段が、ブレードカバーに取り付けられていることが好ましく、また、係合部が、ブレードシャフトの軸心を挟んで対向する位置に形成された平行な二つの平面を有し、その二面幅に対応するレンチを係合させて保持することにより、ブレードシャフトをロックできるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明にコンクリートカッターは、ブレードシャフトをロックするための係合部の上方において、機体のベースに、又は、係合部の前方において、機体のフロントカバーに開口部が形成されており、この開口部を介して、機体の上方側又は前方側から係合部にアクセスすることができ、ブレードの交換作業を極めて簡単に、かつ、安全に行うことができる。また、ブレードシャフトを支持する左右の軸受けと、その間の領域の全体を下方側から覆うように、カバープレートを取り付けた場合には、ブレードシャフトと軸受けを好適に保護することができる。
【0012】
更に、開口部の開閉手段をブレードカバーに取り付けた場合には、切削作業時において開口部を覆うことにより、切削ノロ等の異物の通過を好適に回避することができ、ブレードの交換時等においてブレードカバーを機体から取り外した際には開口部が露出して、交換作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係るコンクリートカッター1の機体3の底面側の構造を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すブレードシャフト2の係合部21の断面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すブレード4の装着部近傍における機体3(ベース31)の上面側の構造を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すコンクリートカッター1の機体3に装着されるブレードカバー8の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すブレードカバー8の接合部9、及び、
図3に示すベース31等の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に沿って本発明「コンクリートカッター」の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るコンクリートカッター1の機体3の底面側の構造を示す図である。図示されているように、このコンクリートカッター1においては、ブレードシャフト2が、機体3の底面側において、機体3を横断するように、かつ、その先端部2aが、機体3の側方(
図1において左側)へ突出するように、左右一対の軸受け7A,7Bによって保持されている。
【0015】
ブレード4は、ブレードシャフト2の突出部(
図1において、機体3の左側へ突出している部分)に固定されたブレードフランジ5(フランジ)と、ブレードシャフト2の先端部2aに装着されたブレード固定用のナット6とによって挟持されることにより、ブレードシャフト2上に固定されている。
【0016】
ブレードシャフト2には、ブレード4の交換時等においてブレードシャフト2をロックするために用いられる係合部21が形成されている。この係合部21は、
図2に示すように、ブレードシャフト2の軸心Cを挟んで対向する位置に形成された平行な二つの平面を有しており、その二面幅に対応するレンチを係合させて保持することにより、ブレードシャフト2をロックすることができる。
【0017】
従来のコンクリートカッターにおいては、ブレードシャフトをロックする係合部は、ブレードシャフトを支持する左右の軸受けの間の領域(例えば、
図1に示す符号Fの位置)に配置されていたため、アクセスが困難で、ブレード4の交換時において煩雑な作業が強いられていたが、本実施形態のコンクリートカッター1においては、
図1に示すように係合部21が、ブレード側の軸受け7Aとブレードフランジ5の間の位置に形成されているほか、係合部21の上方位置において、機体3のベース31に開口部32が形成されており、この開口部32を介して、機体3(ベース31)の上方側から係合部21にアクセスできるようになっており、ブレード4の交換作業を極めて簡単に、かつ、安全に行うことができる。
【0018】
より具体的には、例えば
図1に示す符号Fの位置に係合部が配置されている場合には、係合部へのアクセスは機体の底面側から行うほかはなく、上述の通り、作業者は、機体のフロント側近傍において、屈んだ状態で機体の底面側を覗き込み、係合部を目視しながら一本のレンチを係合部に係合させ、レンチの把持部を足で踏みつけて固定しながら、もう一本のレンチを操作してブレード固定用のナットを緩め、或いは、締め付けるという作業が必要であり、相応の技術が必要となるほか、不安定な姿勢で行わざるをえないため、安全面でも問題があった。
【0019】
これに対し本実施形態のコンクリートカッターにおいては、
図1及び
図3に示すように、係合部21の上方(鉛直上方、又は、斜め上方)において、ベース31に開口部32が形成されているため、作業者は、屈むことなく楽な姿勢で、係合部21を上方から視認することができ、また、この開口部32は、レンチを通過させることができる大きさを有しているため、上方から開口部32内にレンチを差し込むことにより、極めて簡単にレンチを係合部21に係合させることができる。
【0020】
そして、本実施形態においては、係合部21から開口部32までの寸法が、係合部21の二面幅に対応するレンチの一般的な全長寸法よりも小さく設定されているため、係合部21に対してレンチを一旦係合させた後は、レンチから手を離しても、レンチの把持部が開口部32の周縁によってホールドされて、係合部21との係合状態が維持されるとともに、ブレードシャフト2を中心とするレンチの回動が、開口部32の周縁によって規制されることになり、その結果、レンチを把持することなく、ブレードシャフト2のロック状態を実現し、維持することができる。
【0021】
このため作業者は、ブレード固定用のナット6の操作に際し、必要に応じて両手を使用することができ、従って、ブレード4の交換作業を、従来のコンクリートカッターと比べて極めて簡単に、かつ、安全に行うことができる。
【0022】
また、本実施形態のコンクリートカッター1においては、ブレードシャフト2を支持する左右の軸受け7A,7Bと、その間の領域(
図1において一点鎖線で示す領域G)の全体を下方側から覆うように、カバープレートを取り付ける構成を採用することができ、この場合、軸受け7A,7Bとブレードシャフト2(軸受け7A,7B間の部位)、及び、その周辺領域への異物(切削ノロ等)の進入を防止することができるほか、コンクリートカッター1の稼働時又は移動時において、ブレードシャフト2、及び、軸受け7A,7Bを障害物等から好適に保護することができる。
【0023】
従来のコンクリートカッターのように、係合部が左右の軸受けの間の位置(例えば、
図1に示す符号Fの位置)に形成されている場合には、カバープレートによって領域G(
図1参照)を塞いでしまうと、ブレードの交換作業に際して、係合部を露出させるためにカバープレートをいちいち取り外す必要が生じ、交換作業がより煩雑となってしまうが、本実施形態のコンクリートカッター1においては、係合部21が、
図1に示す領域G(左右の軸受け7A,7Bとその間の領域)の外側に形成されているほか、上述の通り、ベース31の上方側から係合部21へのアクセスが可能となっているため、カバープレートを取り付けたままの状態で、問題なくブレード4の交換作業を行うことができる。
【0024】
尚、ベース31の上部には、ブレードシャフト2に駆動力を供給するエンジン又はモーター(図示せず)、及び、その他の重要な周辺要素が載置されるところ、
図3に示すような開口部32がベース31において開口していると、切削作業に伴って生じた切削ノロ等の異物が、下方側から開口部32を通ってベース31の上方側のスペースまで跳ね上がって、エンジン等に悪影響を及ぼしてしまうことが懸念されるが、本実施形態のコンクリートカッターにおいては、切削作業時には開口部32が閉じられて、下方側からの異物の通過を好適に回避できるようになっている。
【0025】
この点について具体的に説明すると、従来の一般的なコンクリートカッターと同様に、本実施形態のコンクリートカッター1においても、切削作業時に発生する切削ノロ或いは粉塵等の飛散を防止できるように、ブレード4の外周側を取り囲むブレードカバー8(
図4参照)が機体に装着される。
【0026】
このブレードカバー8には、機体3に装着するための接合部9が取り付けられている。接合部9には、嵌合部9a(
図5参照)が形成されており、ベース31のブレード側(
図3及び
図5において左側)の上縁部に立設されている突起33を、嵌合部9a内に嵌合させることにより、ブレードカバー8を機体3の側方に固定できるようになっている。
【0027】
そして、この接合部9には、外側水平方向へ突出するフラップ10(
図4及び
図5参照)が取り付けられている。このフラップ10は、ベース31の突起33を嵌合部9a内に進入させて接合部9を適正位置(
図5において破線で示す位置)に装着すると、ベース31に形成されている開口部32を上方側から全面的に覆うことができるように構成されている。つまり、フラップ10は、開口部32の開閉手段として機能する。
【0028】
コンクリートカッター1の切削作業時においては、必ずブレードカバー8が機体3に装着されるため、ベース31の開口部32は、フラップ10によって必然的に閉塞される。従って、切削作業に伴って生じた切削ノロ等の異物が、下方側から開口部32を通過することを好適に回避することができる。一方、ブレード4の交換時等において、ブレードカバー8を機体3から取り外すと、
図3に示すように、ベース31の上面において開口部32が自ずから露出することになり、ここにレンチを差し込んで、係合部21と係合させることにより、ブレードシャフト2を簡単にロックすることができる。
【0029】
尚、上記実施形態においては、係合部21にアクセスするための開口部32が、機体3のベース31に形成されているが、この開口部32の代わりに、機体3のフロント部を覆うフロントカバーに同様の開口部(図示せず)を形成し、機体3の前方側から係合部21にアクセスできるように構成してもよい。この場合も、ブレードカバー8にフラップ(開閉手段)を取り付けておき、ブレードカバー8を機体3の適正な位置に装着した際に、当該開口部が前方側から覆われ、ブレードカバー8を機体3から取り外した際に、当該開口部が露出するように構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1:コンクリートカッター、
2:ブレードシャフト、
2a:先端部、
3:機体、
4:ブレード、
5:ブレードフランジ、
6:ナット、
7A,7B:軸受け、
8:ブレードカバー、
9:接合部、
9a:嵌合部、
10:フラップ、
21:係合部、
31:ベース、
32:開口部、
33:突起