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7118478ポリマー射出成形用金型、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】ポリマー射出成形用金型、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/73 20060101AFI20220808BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20220808BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20220808BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B29C45/73
B29C33/04
B29C33/38
B29C45/26
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021524002
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019058079
(87)【国際公開番号】W WO2020092158
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】16/176,847
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521186454
【氏名又は名称】ピーク スリー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】PEAK 3, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ディー ソレンバーガー
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ アール ヒル
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター ウィルスフォード
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/034815(WO,A1)
【文献】特開2011-178149(JP,A)
【文献】特開2001-225348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアインサートとキャビティインサートとを有する、ポリマー射出成形用金型であって、
少なくとも2つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板であって、前記後壁断熱板の1つが前記コアインサートの後外壁に挿入され、前記後壁断熱板の1つが前記キャビティインサートの後外壁に挿入された、少なくとも2つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板と、
少なくとも2つの側壁ガラス充填ポリイミド断熱板であって、前記側壁断熱板の1つが前記コアインサートの側外壁に挿入され、前記側壁断熱板の1つが前記キャビティインサートの側外壁に挿入された、少なくとも2つの側壁ガラス充填ポリイミド断熱板と、
を含み、
前記少なくとも2つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板および前記少なくとも2つの側壁ガラス充填ポリイミド断熱板は、各々の断熱板の実質的に平面状の表面が、前記断熱板が挿入された各壁の外部の平面状の表面と実質的に平らになるように、それらのそれぞれの壁の各々に挿入され、
前記後壁および側壁ガラス充填ポリイミド断熱板が、以下の物理的特性:
)0.30W/mの熱伝導率;
ii)11×10-6 1/Kの膨張係数(長さおよび幅);
iii)23℃で750N/mmの圧縮強度;
iv)200℃で500N/mmの圧縮強度;
v)23℃で720N/mmの曲げ強度;および
vi)2g/cmの密度;
を有し、
前記後壁および側壁ガラス充填断熱板が、3~5ミリメートルの範囲の厚さを有し、
前記キャビティインサートおよびコアインサートが複数の冷却孔を有し、前記冷却孔が3~6ミリメートルの範囲の直径を有し、
キャビティインサート成形表面またはコアインサート成形表面から相対的な距離で前記キャビティインサートおよびコアインサート内にそれぞれ配置された、複数の実質的に円筒形の流体冷却チャンネルであって、各々の流体冷却チャンネルの前記相対的な距離が、前記流体冷却チャンネルの断面直径に実質的に等しく、前記相対的な距離が、流体冷却チャンネルの壁と、キャビティインサート成形表面またはコアインサート成形表面との最短距離とも等しい、複数の実質的に円筒形の流体冷却チャンネルと、
前記キャビティインサートまたはコアインサート内の、ポリマー金型フローによって充填されることになる空間の推定される最後のボリュームに実質的に隣接する位置に設置さされた、温度検出用熱電対と、
を含む、ポリマー射出成形用金型。
【請求項2】
前記ポリマー金型フローによって充填されることになる空間の推定される最後のボリュームが、ポリマー金型フローを受け取る最後のウェルドラインにより定義される、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項3】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートの後外壁に挿入され、コアインサート後外壁の表面積のうち、少なくとも合計20%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項4】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートの後外壁に挿入され、コアインサート後外壁の表面積のうち、少なくとも合計30%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項5】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートの後外壁に挿入され、コアインサート後外壁の表面積のうち、合計40%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項6】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートの後外壁に挿入され、コアインサート後外壁の表面積のうち、最大で合計40%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項7】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートの後外壁に挿入され、コアインサート後外壁の表面積のうち、最大で合計30%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項8】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートの後外壁に挿入され、コアインサート後外壁の表面積のうち、最大で合計20%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項9】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記キャビティインサートの後外壁に挿入され、キャビティインサート後外壁の表面積のうち、少なくとも合計20%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項10】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記キャビティインサートの後外壁に挿入され、キャビティインサート後外壁の表面積のうち、少なくとも合計30%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項11】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記キャビティインサートの後外壁に挿入され、キャビティインサート後外壁の表面積のうち、合計40%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項12】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記キャビティインサートの後外壁に挿入され、キャビティインサート後外壁の表面積のうち、最大で合計40%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項13】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記キャビティインサートの後外壁に挿入され、キャビティインサート後外壁の表面積のうち、最大で合計30%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項14】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記キャビティインサートの後外壁に挿入され、キャビティインサート後外壁の表面積のうち、最大で合計20%を覆っている、請求項1に記載のポリマー成形用金型。
【請求項15】
コアインサートとキャビティインサートとを有する、ポリマー射出成形用金型であって、
少なくとも1つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板であって、前記断熱板の実質的に平面状の表面が、前記断熱板が挿入された壁の外部の平面状の表面と実質的に平らになるように、前記コアインサートまたは前記キャビティインサートのいずれかの後外壁に挿入された、少なくとも1つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板を含み、
前記少なくとも1つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板が、以下の物理的特性:
i)少なくとも0.30W/mの熱伝導率;
ii)少なくとも11×10-6 1/Kの膨張係数(長さおよび幅);
iii)23℃で少なくとも750N/mmの圧縮強度;
iv)200℃で少なくとも500N/mmの圧縮強度;
v)23℃で少なくとも720N/mmの曲げ強度;および
vi)2g/cmの密度;
を有し、
前記少なくとも1つの後壁ガラス充填断熱板が、3~5ミリメートルの範囲の厚さを有し、
前記キャビティインサートおよびコアインサートが複数の冷却孔を有し、前記冷却孔が3~6ミリメートルの範囲の直径を有し、
キャビティインサート成形表面またはコアインサート成形表面から相対的な距離で前記キャビティインサートおよびコアインサート内にそれぞれ配置された、複数の実質的に円筒形の流体冷却チャンネルであって、各々の流体冷却チャンネルの前記相対的な距離が、前記流体冷却チャンネルの断面直径に実質的に等しく、前記相対的な距離が、流体冷却チャンネルの壁と、キャビティインサート成形表面またはコアインサート成形表面との最短距離とも等しい、複数の実質的に円筒形の流体冷却チャンネルと、
前記キャビティインサートまたはコアインサート内の、ポリマー金型フローによって充填されることになる空間の推定される最後のボリュームに実質的に隣接する位置に設置された、温度検出用熱電対と、
を含む、ポリマー射出成形用金型。
【請求項16】
前記ポリマー金型フローによって充填されることになる空間の推定される最後のボリュームが、溶融ポリマー金型フローを受け取る金型キャビティ内の最後のウェルドラインにより定義される、請求項15に記載のポリマー成形用金型。
【請求項17】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートまたは前記キャビティインサートのいずれかの後外壁に挿入され、前記後外壁の表面積のうち、少なくとも合計20%を覆っている、請求項15に記載のポリマー成形用金型。
【請求項18】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートまたは前記キャビティインサートのいずれかの後外壁に挿入され、前記後外壁の表面積のうち、少なくとも合計30%を覆っている、請求項15に記載のポリマー成形用金型。
【請求項19】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートまたは前記キャビティインサートのいずれかの後外壁に挿入され、前記後外壁の表面積のうち、少なくとも合計40%を覆っている、請求項15に記載のポリマー成形用金型。
【請求項20】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートまたは前記キャビティインサートのいずれかの後外壁に挿入され、前記後外壁の表面積のうち、最大で合計40%を覆っている、請求項15に記載のポリマー成形用金型。
【請求項21】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートまたは前記キャビティインサートのいずれかの後外壁に挿入され、前記後外壁の表面積のうち、最大で合計30%を覆っている、請求項15に記載のポリマー成形用金型。
【請求項22】
少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板が、前記コアインサートまたは前記キャビティインサートのいずれかの後外壁に挿入され、前記後外壁の表面積のうち、最大で合計20%を覆っている、請求項15に記載のポリマー成形用金型。
【請求項23】
ポリマー射出成形プロセスで請求項15に記載のポリマー成形用金型を使用する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本特許出願は、出願シリアル番号16/176,847であり、且つ、2018年10月31に出願された「Polymer injection-molding mold and related methods」と題された米国非仮特許出願の優先権を主張する。米国非仮設特許出願16/176,847の主題は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリマーの射出成形法が知られているが、その改良が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
ポリマー射出成形用金型は、コアインサートとキャビティインサートとを有し、ポリマー射出成形用金型は、少なくとも2つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板であって、後壁断熱板の1つがコアインサートの後外壁に挿入され、後壁断熱板の1つがキャビティインサートの後外壁に挿入された、少なくとも2つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板と、少なくとも2つの側壁ガラス充填ポリイミド断熱板であって、側壁断熱板の1つがコアインサートの側外壁に挿入され、側壁断熱板の1つがキャビティインサートの側外壁に挿入された、少なくとも2つの側壁ガラス充填ポリイミド断熱板と、を有し、少なくとも2つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板および少なくとも2つの側壁ガラス充填ポリイミド断熱板は、各々の断熱板の実質的に平面状の表面が、断熱板が挿入された各壁の外部の平面状の表面と実質的に平らになるように、それらのそれぞれの壁の各々に挿入され、後壁および側壁ガラス充填ポリイミド断熱板が、次の物理的特性:i)約0.30W/mkの熱伝導率;ii)約11×10-6 1/Kの膨張係数(長さおよび幅);iii)23℃で約750N/mmの圧縮強度;iv)200℃で約500N/mmの圧縮強度;v)23℃で約720N/mmの曲げ強度;およびvi)約2g/cmの密度;を有し、後壁および側壁ガラス充填断熱板が、3~5ミリメートルの範囲の厚さを有し、キャビティインサートおよびコアインサートは複数の冷却孔を有し、冷却孔が3~6ミリメートルの範囲の直径を有し、ポリマー射出成形用金型は、キャビティインサート成形表面またはコアインサート成形表面から相対的な距離でキャビティインサートおよびコアインサート内にそれぞれ配置された、複数の実質的に円筒形の流体冷却チャンネルであって、各々の流体冷却チャンネルの相対的な距離が、流体冷却チャンネルの断面直径に実質的に等しく、相対的な距離が、流体冷却チャンネルの壁と、キャビティインサート成形表面またはコアインサート成形表面との最短距離とも等しい、複数の実質的に円筒形の流体冷却チャンネルと、キャビティインサートまたはコアインサート内の、ポリマー金型フローによって充填されることになる空間の推定される最後のボリューム(volume)に実質的に隣接する位置に設置された、温度検出用熱電対と、を有する。
【0004】
ポリマー射出成形用金型は、コアインサートとキャビティインサートとを有し、ポリマー射出成形用金型は、少なくとも1つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板であって、断熱板の実質的に平面状の表面が、断熱板が挿入された壁の外部の平面状の表面と実質的に平らになるように、コアインサートまたはキャビティインサートのいずれかの後外壁に挿入された、少なくとも1つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板を有し、少なくとも1つの後壁ガラス充填ポリイミド断熱板が、次の物理的特性:i)少なくとも約0.30W/mkの熱伝導率;ii)少なくとも約11×10-6 1/Kの膨張係数(長さおよび幅);iii)23℃で少なくとも約750N/mmの圧縮強度;iv)200℃で少なくとも約500N/mmの圧縮強度;v)23℃で少なくとも約720N/mmの曲げ強度;およびvi)約2g/cmの密度;を有し、少なくとも1つの後壁ガラス充填断熱板が、3~5ミリメートルの範囲の厚さを有し、キャビティインサートおよびコアインサートは複数の冷却孔を有し、冷却孔が3~6ミリメートルの範囲の直径を有し、ポリマー射出成形用金型は、キャビティインサート成形表面またはコアインサート成形表面から相対的な距離でキャビティインサートおよびコアインサート内にそれぞれ配置された、複数の実質的に円筒形の流体冷却チャンネルであって、各々の流体冷却チャンネルの相対的な距離が、流体冷却チャンネルの断面直径に実質的に等しく、相対的な距離が、流体冷却チャンネルの壁と、キャビティインサート成形表面またはコアインサート成形表面との最短距離とも等しい、複数の実質的に円筒形の流体冷却チャンネルと、キャビティインサートまたはコアインサート内の、ポリマー金型フローによって充填されることになる空間の推定される最後のボリュームに実質的に隣接する位置に設置された、温度検出用熱電対温度検出用熱電対と、を有する。
【0005】
方法は、溶融ポリマーを金型に射出するときに、断熱され、且つ、実質的に均一な温度を有する金型を使用してポリマー射出成形を行う工程と、金型に溶融ポリマーを射出する工程であって、層状でない流体フローパターンで溶融ポリマーを金型内に移動する、工程と、ポリマーが金型に射出された後に、流体状の冷却システムを使用して金型を冷却する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、金型インサートの実施形態の背面斜視図である。
図2図2は、金型インサートの実施形態の背面図である。
図3A図3Aは、ガラス充填断熱板の上面図である。
図3B図3Bは、ガラス充填断熱板の側面図である。
図3C図3Cは、ガラス充填断熱板の斜視図である。
図4図4は、熱電対の分解側面図である。
図5図5は、射出成形用機械の実施形態の2次元概略図である。
図6図6は、インサート内の流体冷却チャンネルの配置の側面断面図である。
図7図7は、コアインサートを含む実施形態の側面図である。
図8図8は、帯状冷却の概略斜視図である。
図9図9は、断熱板を含む実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態は、ポリマー射出成形用金型に関する。ごく一般的に、ポリマー射出成形用金型は、A側とB側とで構成され、各側は、金型ベースとインサートとで構成される。金型ベースは、それに隣接するインサートを支持し、2つのインサートは、通常、コアインサートと、キャビティインサートと呼ばれる。成形プロセス時に一緒に取り付けられると、コアインサートとキャビティインサートとの内部は、溶融ポリマーで充填されることになる空間の所望の形状またはボリュームを表す。
【0008】
図に示すように、ポリマー射出成形用金型2の各実施形態は、少なくとも部分的に、コアインサート38と、キャビティインサート40とから構成される。ごく一般的に、コアインサート38は、後外壁6と、4つの側外壁26とを有し、同様に、キャビティインサート40も、後外壁6と、4つの側外壁26とを有する。本明細書では、キャビティまたはコアであるかどうかにかかわらず、インサート後外壁を後外壁6と称し、キャビティまたはコアであるかどうかにかかわらず、インサート側外壁を側外壁26と称する。
【0009】
図1は、実施形態を示し、キャビティインサート40の透視背面図である。キャビティインサート40は、後外壁6に挿入された複数の第1のガラス充填ポリイミド断熱板4を有するものとして示され、また、2つの視認可能な側外壁26を有し、且つ、そこにそれぞれ挿入された第2のガラス充填ポリイミド断熱板24を有するキャビティインサート40が示されている。実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4および第2のガラス充填ポリイミド断熱板24は、各それぞれの断熱板が露出した外部の平面状の表面となり、断熱板が挿入される壁6または壁26と実質的に平らになるような深さで、それらのそれぞれの後壁6および側壁26に挿入され得る。代替の実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4および第2のガラス充填ポリイミド断熱板24は、各断熱板が露出した外部の平面状の表面となり、断熱板が挿入されるそれぞれの壁の外部表面と比較して上下のいずれかで平らな位置になるような深さで、それらのそれぞれの後壁6および側壁26に挿入され得る。
【0010】
実施形態では、少なくとも1つの第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は、断熱板4の外部の平面状の表面が、断熱板が挿入される後壁6の外部の平面状の表面と実質的に平らになるように、後壁6に挿入され、および、少なくとも1つの第2のガラス充填ポリイミド断熱板24は、少なくとも1つの第2のガラス充填ポリイミド断熱板24の平面状の表面が、断熱板が挿入される側外壁26の外部の平面状の表面と実質的に平らになるように、側外壁26に挿入される。
【0011】
実施形態では、有用なガラス充填ポリイミド断熱板4および24は、3~5ミリメートルの範囲の厚さを有する。他の実施形態では、有用なガラス充填ポリイミド断熱板4および24は、2~6ミリメートルの範囲の厚さを有する。更に他の実施形態では、有用なガラス充填ポリイミド断熱板4および24は、1、2、3、4、5、または6ミリメートルの厚さを有する。
【0012】
ポリマー射出成形用金型2の特徴的な寸法に基づいて、有用なガラス充填ポリイミド断熱板4および24の長さ、幅、および厚さの寸法は、当業者であれば、過度の実験を行うことなく決定できる。
【0013】
実施形態では、任意の数のガラス充填ポリイミド断熱板4および24を使用して、ポリマー射出成形用金型2を断熱できる。他の実施形態では、以下の物理的特性:
i)約0.30W/mkの熱伝導率;
ii)約11×10-6 1/Kの膨張係数(長さおよび幅の);
iii)23℃で少なくとも約750N/mmの圧縮強度;
iv)200℃で少なくとも約500N/mmの圧縮強度;
v)23℃で少なくとも約720N/mmの曲げ強度;および
vi)約2g/cmの密度;
を有するガラス充填ポリイミド断熱板4および24のみを使用できる。
【0014】
更に他の実施形態では、以下の物理的特性:
i)少なくとも約0.30W/mkの熱伝導率;
ii)少なくとも約11×10-6 1/Kの膨張係数(長さおよび幅);
iii)23℃で少なくとも約750N/mmの圧縮強度;
iv)200℃で少なくとも約500N/mmの圧縮強度;
v)23℃で少なくとも約720N/mmの曲げ強度;および
vi)約2g/cmの密度;
を有するガラス充填ポリイミド断熱板4および24のみを使用できる。
【0015】
コアインサート38およびキャビティインサート40の両方に関する実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は後外壁6に挿入され、それによって後外壁6の表面積の一部を覆っている。別の言い方をすれば、後外壁6の表面積の一部は、後外壁6に挿入された断熱板によって覆われていると理解できる。実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は、後外壁6の表面積のうち、最大で合計40%を覆っている。他の実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は、後外壁6の表面積のうち、最大で合計35%を覆っている。更に他の実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は、後外壁6の表面積のうち、最大で合計30%を覆っている。更に他の実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は、後外壁6の表面積のうち、最大で合計20%を覆っている。
【0016】
実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は、後外壁6の表面積のうち、少なくとも合計10%を覆っている。他の実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は、後外壁6の表面積のうち、少なくとも合計20%を覆っている。更に他の実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は、後外壁6の表面積のうち、少なくとも合計30%を覆っている。更に他の実施形態では、第1のガラス充填ポリイミド断熱板4は、後外壁6の表面積のうち、合計約40%を覆っている。
【0017】
図2は、 i)コアインサート外後壁の実施形態、およびii)キャビティインサート外後壁の実施形態の両方について、有用な外後壁の実施形態の背面図である。示される実施形態では、後外壁6は、その中に平らに挿入された複数の第1のガラス充填ポリイミド断熱板4を有する。
【0018】
有用なガラス充填ポリイミド断熱板は市販され、図3A図3Bおよび図3Cは、それぞれ、有用な第1のガラス充填ポリイミド断熱板4の上面図、側面図および斜視図を示している。有用なガラス充填ポリイミド断熱板は、Isocosというドイツの製造および販売業者から入手できる。
【0019】
図4は、ポリマー射出成形用金型2内の温度検出用部品として使用できる温度検出用熱電対18の側面図を示している。実施形態では、温度検出用熱電対18は、ポリマー射出成形用金型2の中で、ポリマー金型フローによって充填されることになる空間のおおよその最後のボリュームを推定して配置される。実施形態では、より具体的には、温度検出用熱電対18は、キャビティインサート40またはコアインサート38のいずれかの内部に配置される。充填されることになる空間の推定される最後のボリュームは、成形プロセス時に溶融ポリマーのショットから溶融ポリマー金型フローを受け取るための金型キャビティ内の最後の部分またはボリュームとして理解することができ、金型キャビティ内で充填されることになる空間の推定される最後のボリュームは、当業者であれば、過度の実験を行うことなく決定できる。実施形態では、ポリマー金型フローによって充填されることになる空間の推定される最後のボリュームは、射出成形プロセス時に、ポリマー金型フローで充填される最後の予測ウェルドライン、またはポリマー金型フローと接触することになる最後の予測ウェルドラインにほぼ等しい。充填される最後の予測ウェルドラインとは、射出成形プロセス時に溶融ポリマーのショットから溶融ポリマー金型フローを受け取る金型キャビティ内の最後のウェルドラインと理解できる。射出成形のウェルドラインはよく知られ、ポリマー射出成形用金型2内で最後に充填されることになるウェルドラインは、当業者であれば、過度の実験をすることなく決定できる。
【0020】
図5は、射出成形用装置内にセットされたポリマー射出成形用金型2を有する実施形態の2次元図を示している。コアインサート38およびキャビティインサート40の両方の各後壁6に平らに挿入された複数の第1のガラス充填ポリイミド断熱板4が示されている。また、コアインサート38およびキャビティインサート40の両方の側外壁26に配置された複数の第2のガラス充填ポリイミド断熱板24も示されている。また、コアインサート38およびキャビティインサート40の両方の側外壁26には、複数の冷却孔8も示されている。図5では、冷却孔8の直径は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。
【0021】
冷却孔8はよく知られ、当業者であれば、過度の実験を行うことなく決定して、冷却孔8をポリマー射出成形用金型2の外部表面に配置できる。実施形態では、冷却孔8は、キャビティインサート40およびコアインサート38の外部表面に配置される。冷却孔は、冷水等の冷却流体がポリマー射出成形用金型2に出入りすることを可能にするオリフィスである。実施形態では、図5に示すように、冷却孔8は、コアインサート38およびキャビティインサート40の両方の側外壁26に配置される。冷却孔8の直径は、3~6ミリメートルの範囲とすることができ、実施形態では、冷却孔8の直径は、4~5ミリメートルの範囲とすることができる。冷却孔8の直径は、冷却流体がポリマー射出成形用金型2に出入りするために通過するオリフィスの直径として理解できる。
【0022】
図6は、ポリマー射出成形用金型2内に存在し得るキャビティ冷却部品の概略的な実施形態を示している。冷却孔8は、内部冷却流体マニホールド36の端部に設置される。実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12は、内部冷却流体マニホールド36から出ており、実施形態では、約8ミリメートルの距離で、隣接する流体冷却チャンネル12から相対的に離れて間隔を空けている。実施形態では、実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12は、約6~10ミリメートルの距離で、隣接するチャンネル12から相対的に離れて間隔を空けている。更に他の実施形態では、実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12は、約6、約7、約8、約9、または約10ミリメートルの距離で、隣接するチャンネル12から相対的に離れて間隔を空けている。更に他の実施形態では、実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12は、隣接するチャンネル12の異なる対の間で変更可能な距離で隣接するチャンネル12から相対的に離れて間隔を空け、実施形態では、隣接するチャンネル12の第1の対の間の距離は、隣接するチャンネル12の第2の対の間の距離とは異なる距離とすることができ、任意の実施形態では、隣接するチャンネル12の任意の対の間の距離は、約6、7、8、9、または10ミリメートルである。
【0023】
図6に示される実施形態では、実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12は、内部キャビティ金型壁16から約6ミリメートルの位置にある。他の実施形態では、実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12は、内部キャビティ金型壁16から、5~7ミリメートルの位置にある。更に他の実施形態では、実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12は、内部キャビティ金型壁16から距離を置いて配置され、各それぞれの流体冷却チャンネル12の距離は、流体冷却チャンネルの断面直径±20%に等しい。更に他の実施形態では、実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12は、内部キャビティ金型16から距離を置いて配置され、各それぞれの流体冷却チャンネル12の距離は、流体冷却チャンネルの断面直径±10%に等しい。更に他の実施形態では、実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12は、内部キャビティ金型16から距離を置いて配置され、各それぞれの流体冷却チャンネル12の距離は、流体冷却チャンネルの直径断面と実質的に等しい。実質的に円筒形の流体冷却チャンネル12と内部キャビティ金型壁16との間の上記距離は、流体冷却チャンネルの壁と内部キャビティの表面との間の最短距離に等しく、別の言い方をすれば、上記距離は、内部キャビティ金型壁16に最も近い流体冷却チャンネル12の壁の1つ以上の点間の距離に等しい。
【0024】
図7は、外側壁26に複数の冷却孔8がそれぞれ配置されたコアインサート38の側面図である。
【0025】
図8は、コアインサート38またはキャビティインサート40内に配置され得る有用な構成に配置された流体冷却チャンネル12の実施形態を示す帯状冷却の概略斜視図である。それぞれの流体冷却チャンネル12の各々について、各流体冷却チャンネル12の管状外壁が示されている。
【0026】
図9は、断熱板4および24と、熱電対18とを有するキャビティインサート40一実施形態の上面後方斜視図である。
【0027】
追加の構成の実施形態は、少なくとも1つのガラス充填断熱板と、少なくとも1つの非ガラス充填断熱板とを有するポリマー射出成形用金型を対象とし、言い換えれば、両者の組み合わせである。これらの実施形態では、断熱板は、上記のいずれかの構成の実施形態に記載されているように、或いは、図に示す断熱板の位置のように、いずれかのインサートに配置できる。有用な断熱板の位置の非限定的な例として、任意に組み合わせたガラス充填断熱板と非ガラス充填断熱板は、インサートの後外壁6および側外壁26に平らに配置される。
【0028】
更に他の構成の実施形態は、非ガラス充填の断熱板のみを有する、即ち、ガラス充填断熱板を用いるポリマー射出成形用金型を対象とする。非ガラス充填断熱板のみを用いるこれらの実施形態では、断熱板は、上記のいずれかの構成の実施形態に記載されているように、或いは、図に示す断熱板の位置のように、いずれかのインサートに配置できる。非限定的な例として、任意に組み合わせた断熱板は、インサートの後外壁6および側外壁26に平らに配置される。
【0029】
有用な非ガラス充填断熱板は市販され、ポリマー射出成形法または構成物に使用される既知の断熱板のいずれかを用いることができる。
【0030】
更に他の実施形態では、射出成形用金型の構成物は、追加の断熱要素が含まれている。これらの追加の断熱要素は、上述の断熱体の実施形態と組み合わせて使用できる。これらの断熱要素は既知であり、通常、ポリマー射出成形用金型、ポリマー射出成形の用途、およびポリマー射出成形法で使用される。これらの断熱要素の非限定的な例としては、a)射出金型の全ての外側に断熱板(ガラス充填、非ガラス充填、またはこれらの組み合わせ)、b)成形機のフロントプラテンおよびリアプラテンから固定板を断熱するための、射出金型の固定板への追加の断熱板(例えば、ガラス充填、非ガラス充填、またはこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0031】
上記ポリマー射出成形用金型の実施形態のいずれも、当業者であれば、過度の実験を行うことなく、既知のポリマー射出成形法に用いることができる。多くの場合、ポリマー射出成形用金型の実施形態、特に断熱されたインサートの実施形態は、既知のポリマー射出成形用金型のドロップイン代替品(drop-in replacement)である。更に、上記ポリマー射出成形用金型の実施形態は、既知の方法を用いて既知のポリマー射出成形用機械に用いることができる。
【0032】
追加の実施形態は、ポリマー射出の工程時に溶融ポリマーが非層状流体フローパターンで移動するような方法で、金型内に溶融ポリマーを射出するポリマー射出成形法を対象としている。言い換えれば、射出時に溶融ポリマーのショットが層状ではない流体フローパターン(それが非層状流体フローパターンである)で金型内に移動する。非層状流体フローパターンは、少なくとも、ガラス充填断熱板のみを使用する上記のポリマー射出成形の構成物の実施形態のいずれかを用いてポリマー射出成形を行うことによっても達成でき、非層状流体フローパターンは、ガラス充填断熱板と非ガラス充填断熱板との組み合わせを使用する実施形態においても達成できる。更に他の実施形態では、非層状流体フローパターンは、ガラス充填断熱板、非ガラス充填断熱板、および断熱要素を組み合わせて使用する実施形態で達成できる。ポリマー射出時に非層流パターンが達成される少なくとも1つの理由は、溶融ポリマー射出工程時にポリマーが接触する金型およびそのインサート(金型インサート表面を含む)が全体にわたって実質的に均一な温度になるためである。上記のポリマー射出成形用金型の実施形態は、インサートが実質的に均一な温度を有することを可能にする断熱物の配置を有し、その結果、溶融ポリマーが非層状流体フローパターンでインサートおよび金型キャビティ内に移動する。
【0033】
実施形態では、金型(そのインサートを含む)全体にわたって実質的に均一な温度は、金型内に既に射出されたポリマーの冷却を加速する冷却システムと組み合わせることで、作業的および効率的に生産する製造方法が可能になる。有用な冷却システムは、一般的に上記および図に記載されている。実施形態では、冷却システムは、冷水または冷やされていない水で使用できる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9