(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】転写シート、転写シートの製造方法、中間シートの製造方法、及び、複合材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/22 20060101AFI20220808BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20220808BHJP
【FI】
B32B3/22
C09J7/26
(21)【出願番号】P 2021552636
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005898
(87)【国際公開番号】W WO2021166951
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2020024756
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594162582
【氏名又は名称】米島フエルト産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【氏名又は名称】大池 聞平
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】米島 智哉
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-206536(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0194917(US,A1)
【文献】特開平11-078874(JP,A)
【文献】特開平11-151772(JP,A)
【文献】実開平05-052080(JP,U)
【文献】特開平08-112873(JP,A)
【文献】登録実用新案第3017047(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00-7/50
E04B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、前記基材シートに積層された芯材層とを備えた転写シートであって、
前記芯材層は、前記基材シートの表面に沿って並べられた多数の板状片を有し、
前記多数の板状片では、外周に形成される切断痕から判別される厚さ方向の切断の向きが、互いに同じであり、
前記芯材層において、隣り合う板状片は、隙間を隔てて又は切れ込みにより別体となっており、
前記多数の板状片は、前記基材シートに対し剥離可能に貼り付けられ、
前記基材シートから他の構造材へ前記多数の板状片を転写可能となっている転写シート。
【請求項2】
前記多数の板状片の各々は、硬質発泡体により構成されている、請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記多数の板状片の各々は、木材により構成されている、請求項1に記載の転写シート。
【請求項4】
前記多数の板状片は、感温性粘着剤により前記基材シートに貼り付けられている、請求項1乃至3の何れか1つに記載の転写シート。
【請求項5】
前記基材シートと前記板状片との間には、前記板状片の位置を保持するための粘着層又は接着層が設けられている、請求項1乃至3の何れか1つに記載の転写シート。
【請求項6】
前記芯材層における表面と裏面のうち少なくとも一方に、多数のドット部により構成された粘着層又は接着層が積層されている、請求項1乃至5の何れか1つに記載の転写シート。
【請求項7】
前記板状片には、貫通孔により構成された区画空間が形成されている、請求項1乃至6の何れか1つに記載の転写シート。
【請求項8】
複合材の芯材に用いる多数の板状片が貼り付けられた
転写シートの製造方法であって、
基材シートに剥離可能に貼り付けられた状態の材料シートに対し切断加工を行うことにより、前記材料シートを前記多数の板状片に分割する切断ステップを行い、
前記基材シートから他の構造材へ前記多数の板状片を転写可能な転写シートを製造する、転写シートの製造方法。
【請求項9】
複合材を製造するための中間シートを製造する方法であって、
請求項8に記載の製造方法により得られた転写シートにおける板状片側に、前記中間シートの表皮材として、シート状接着剤又はプリプレグを貼り付ける貼付けステップと、
前記貼付けステップ後に、前記多数の板状片から前記基材シートを剥がすことにより、前記中間シートの表皮材に前記多数の板状片を転写する転写ステップとを行う、中間シートの製造方法。
【請求項10】
複合材の製造方法であって、
請求項8に記載の製造方法により得られた前記転写シートにおける板状片側に、複合材の表皮材となる表皮材用シートを貼り付ける貼付けステップと、
前記貼付けステップ後に、前記多数の板状片から前記基材シートを剥がすことにより、前記表皮材用シートに前記多数の板状片を転写する転写ステップとを行う、複合材の製造方法。
【請求項11】
前記基材シートには、伸縮性を有するシートが用いられ、
前記転写ステップにおいて、前記基材シートを引っ張りながら、前記基材シートの裏面から転写対象の板状片を押すことにより該板状片の転写を行う、請求項10に記載の複合材の製造方法。
【請求項12】
前記表皮材用シートと第2表皮材用シートとにより前記多数の板状片を挟む積層ステップと、
前記多数の板状片により構成された芯材層の隙間に樹脂を流入させた後に、該樹脂を硬化させることにより、前記芯材層に樹脂のハニカム構造を形成するハニカム形成ステップとを、前記転写ステップ後に行う、請求項10又は11に記載の複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材層を有する複合材等に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるサンドイッチ構造を成す構造材(たとえば特許文献1~特許文献2参照)の一般的特徴は、軽量かつ高剛性である。この特徴の本質は、密度あたりの剛性が高いということである。複合材に曲げ応力が発生したとき、表皮材の応力負担は大きくなり、芯材の応力負担は比較的小さくなる。そのため、芯材層の芯材には、低密度且つある程度高い剛性の材料が用いられる。
【0003】
単一の材料で軽量な構造材として、I型ビームと称される型材が提供されている。このI型ビームは、例えば、建築構造物の梁として用いられる。I型ビームは、上下に対向配置された幅広のフランジ(板材)と、これらをつなぎ合わせる細幅のウェブ(板材)で構成され、単一の材料で軽量かつ高剛性を実現できる構造として広く用いられている。サンドイッチ構造及びI型ビーム構造のいずれも、板材の肉厚が増すことで、指数関数的に剛性を高めることができる。
【0004】
サンドイッチ構造の複合材は、典型的にはプレハブ住宅の壁材として用いられる。この場合、例えば、表皮材としてアルミニウム板、芯材として発泡ポリスチレンが用いられる。サンドイッチ構造の複合材は、航空機や鉄道車両などにも用いられる。この場合、例えば、表皮材として繊維強化プラスチック材料(FRP)が用いられ、芯材としてアルミニウム又は樹脂が含浸されたアラミド紙によるハニカム構造材が用いられる。サンドイッチ構造の複合材は、梱包箱としても用いられる。この場合、例えば、表皮材が紙からなり、芯材も同じ紙からなる。芯材には、波型に成型されたトラス構造が用いられる。
【0005】
サンドイッチ構造の芯材は、表皮材に比べて密度が小さい。そのため、芯材の軽量化分だけ芯材の肉厚が増加されることにより、結果として、サンドイッチ構造として比剛性(比重(密度)あたりの剛性)を増すことができ、軽量かつ高剛性が達成される。構造材の曲げ剛性は、その断面の曲げ方向の厚みが増すことで指数関数的に高まることが知られており、四角形断面の場合は、厚みの3乗に比例して曲げ剛性が高まる。サンドイッチ構造では、芯材が表皮材よりも低密度であれば、芯材として樹脂発泡体が採用されなくとも、比剛性が増す。このことは、芯材として金属材料や木質材料など、どのような材料が採用されても同様である。なぜなら、一般に構造材の曲げ剛性を考察する場合、曲げ方向に対して厚みの中心部分ほど曲げ歪みが少なく、構造材の剛性への寄与が少ないためである。したがって、この中心部分の密度を下げることが剛性を確保した状態での軽量化にとって有益となる。
【0006】
ここで、特許文献1の
図9は、芯材と、芯材の両面に配置された繊維強化材からなるサンドイッチ構造体と、芯材の島状構造とを開示している。この芯材は、ポリプロピレン樹脂をプレス成形したフィルムを打抜き加工して、円板状プレートを作成した後に、円板状プレートを所定の間隔となるように配置したものである。
【0007】
また、特許文献2は、シート状のベースマテリアルで作られた補強構造を開示している。この補強構造では、ベースマテリアルを多数のマテリアル島に分割する材料減衰部を有している。マテリアル島は、材料減衰部により区切られているが、相互に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5151535号公報
【文献】米国特許出願公開第2019/0099964A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載のサンドイッチ構造体では、芯材の島状構造を繊維強化材上に設けるために、打抜き加工により作成される多数の円板状プレートを個々に、繊維強化材上に配置している。しかし、円板状プレートを個々に配置することは容易ではない。
【0010】
他方、特許文献2に記載の補強構造では、多数のマテリアル島が相互に接続されて一体化されている。そのため、補強構造をカバー層に積層することは比較的容易である。しかし、三次元形状に複合材を成形する場合、マテリアル島同士の接続部があるために、補強構造を曲げる範囲が制約される。また、複雑な三次元形状に複合材を成形する場合、各マテリアル島の歪みの逃げ場がなく、接続部周辺が破損する虞もある。特許文献2に記載の補強構造では、複合材のニーズが高まる中で、三次元形状への成形性に優れた複合材を提供することは困難である。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、三次元形状への成形性に優れ、且つ、製造が容易な複合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するべく、本願発明者は、多数の板状片の元になる材料シートを基材シートに貼り付けた状態で、材料シートを切断加工して、多数の板状片が基材シートに貼り付けられた中間シートを作製し、後述する転写シート、接着用芯材シート又は複合材製造用シートなどとして、その中間シートを利用して複合材を製造する方法を思いついた。この製造方法より得られる複合材、又は、中間シートとして、第1の発明は、芯材層と、芯材層に積層された表皮材とを備えた積層材であって、芯材層は、表皮材の表面に沿って並べられた多数の板状片を有し、芯材層において、隣り合う板状片は、隙間を隔てて又は切れ込みにより別体となっており、多数の板状片では、外周に形成される切断痕から判別される厚さ方向の切断の向きが、互いに同じである。なお、本明細書で、「中間シート(中間材)」は、複合材の製造過程における中間工程で作成されるシートのことをいう。また、「芯材層」とは、サンドイッチ構造の中心層を形成する部材である。但し、複合材の成形前の積層材では、カナッペ構造である場合も成形後の複合材で中心層に対応する部材を「芯材層」という。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、芯材層では、平面視において、全面積に対する板状片の合計面積の割合が、50%以上である。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、板状片の主面のうち、厚さ方向の切断の向きとして切断の進行側に位置する主面に積層された表皮材では、芯材層側の面に、仮に表皮材上で切断加工により多数の板状片を成形していたならば形成される切断傷が存在しない。
【0015】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、多数の板状片の各々は、硬質発泡体により構成されている。
【0016】
第5の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、多数の板状片の各々は、木材により構成されている。
【0017】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明において、表皮材を第1表皮材として、芯材層における第1表皮材とは反対側に配置され、第1表皮材と共に芯材層を挟む第2表皮材をさらに備えている。
【0018】
第7の発明は、第6の発明において、芯材層を第1芯材層として、第2表皮材の表面に沿って並べられた多数の板状片を有する第2芯材層と、第1芯材層と第2芯材層の間に配置され、第1芯材層と第2芯材層を接着する中間接着層とをさらに備え、第1表皮材、第1芯材層、中間接着層、第2芯材層、第2表皮材が、この順番で積層されている。
【0019】
第8の発明は、第7の発明において、中間接着層は、シート状接着剤により形成されている。
【0020】
第9の発明は、第1乃至第8の何れか1つの発明において、中間接着層は、シート状接着剤により形成されている。
【0021】
第10の発明は、第6乃至第9の何れか1つの発明において、隣り合う板状片の間の隙間に、硬化した樹脂が埋められている。
【0022】
第11の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明において、表皮材は、シート状接着剤である。
【0023】
第12の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明において、表皮材は、半硬化状態のプリプレグである。
【0024】
第13の発明は、第1、第2、第4又は第5の発明において、多数の板状片は、表皮材に対し剥離可能に貼り付けられ、表皮材から他の構造材へ多数の板状片を転写可能な転写シートとして用いられる。
【0025】
第14の発明は、第13の発明において、多数の板状片は、感温性粘着剤により表皮材に貼り付けられている。
【0026】
第15の発明は、第1乃至第13の何れか1つの発明において、表皮材と板状片との間には、板状片の位置を保持するための粘着層又は接着層が設けられている。
【0027】
第16の発明は、第1乃至第15の何れか1つの発明において、板状片には、貫通孔により構成された区画空間が形成されている。
【0028】
第17の発明は、複合材の芯材に用いる多数の板状片が貼り付けられた中間シートの製造方法であって、基材シートに貼り付けられた状態の材料シートに対し切断加工を行うことにより、材料シートを多数の板状片に分割し、基材シートに多数の板状片が貼り付けられた中間シートを得る切断ステップを行い、中間シートは、基材シートから他の構造材へ多数の板状片を転写可能な転写シート、又は、基材シートを接着剤として用いるために複合材の表皮材となる表皮材用シートに積層した状態で基材シートが溶解される接着用芯材シートとして用いられる。
【0029】
第18の発明は、第17の発明において、転写シートにおける板状片側に、中間シートの表皮材として、シート状接着剤又はプリプレグを貼り付ける貼付けステップと、貼付けステップ後に、多数の板状片から基材シートを剥がすことにより、中間シートの表皮材に多数の板状片を転写する転写ステップとを行う。
【0030】
第19の発明は、第17の発明の製造方法により得られた転写シートにおける板状片側に、複合材の表皮材となる表皮材用シートを貼り付ける貼付けステップと、貼付けステップ後に、多数の板状片から基材シートを剥がすことにより、表皮材用シートに多数の板状片を転写する転写ステップとを行う、複合材の製造方法である。
【0031】
第20の発明は、第19の発明において、表皮材には、伸縮性を有するシートが用いられ、転写ステップにおいて、基材シートを引っ張りながら、基材シート10の裏面から転写対象の板状片を押すことにより該板状片の転写を行う。
【0032】
第21の発明は、第20の発明において、表皮材用シートと第2表皮材用シートとにより多数の板状片を挟む積層ステップと、多数の板状片により構成された芯材層の隙間に樹脂を流入させた後に、該樹脂を硬化させることにより、芯材層に樹脂のハニカム構造を形成するハニカム形成ステップとを、転写ステップ後に行う。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、積層材が中間シートの場合、表皮材(例えば、基材シート)上で切断加工を行うことにより多数の板状片を成形した痕跡として、多数の板状片において、外周に形成される切断痕から判別される厚さ方向の切断の向きが、互いに同じである。中間シートの表皮材上には、切断加工での平面視の切断形状に応じて、多数の板状片が成形される。
【0034】
また、積層材が複合材の場合、上述の中間シートを用いて製造された痕跡として、多数の板状片において、外周に形成される切断痕から判別される厚さ方向の切断の向きが、互いに同じである。複合材の表皮材上には、中間シートにおける板状片の配列に応じて、多数の板状片が配置される。そのため、表皮材の材料(例えば、表皮材用シート)上に多数の板状片を個々に配置する必要がなく、多数の板状片が並べられた芯材層を容易に形成することができる。
【0035】
また、隣り合う板状片は、隙間を隔てて又は切れ込みにより別体となっている。そのため、三次元形状に複合材を成形する際に、多数のマテリアル島が互いに接続された複合材に比べて、芯材層を曲げる範囲の制約が小さく、三次元形状への成形性に優れる。本発明によれば、三次元形状への成形性に優れ、且つ、製造が容易な複合材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、実施形態に係る複合材の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る複合材の断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る複合材の芯材層について、面取り部が形成されている側の平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る転写シートの断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る第1製造工程(転写シートの製造方法)を説明するための断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る第1製造工程で用いる製造ラインの概略構成図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る第1製造工程のプレスカットの際に、板状片に面取り部が形成される様子を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る第2製造工程の転写ステップを説明するための断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る第2製造工程の積層ステップを説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る第2製造工程において、キャビティ表面が湾曲した成形型を用いる場合の断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る複合材において、硬化した樹脂を隙間に充填した場合の断面図である。
【
図13】
図13は、第2変形例に係る複合材の製造過程の積層材の断面図である。
【
図14】
図14は、第3変形例に係る接着用芯材シートの断面図である。
【
図15】
図15は、第3変形例に係る接着用芯材シートの製造過程における転写ステップを説明するための断面図である。
【
図16】
図16は、第4変形例に係る接着用芯材シートの断面図である。
【
図17】
図17は、第5変形例において、多数の板状片が貼り付けられた基材シート(プリプレグ)を成形型上に設置した状態を示す断面図である。
【
図18】
図18は、第6変形例に係る複合材の製造過程の積層材の断面図である。
【
図20】
図20は、第7変形例に係る複合材を用いた円筒体の断面図である。
【
図21】
図21(a)は、第8変形例に係る複合材の芯材層の平面図であり、
図21(b)は、第8変形例に係る複合材の断面図である。
【
図22】
図22は、第9変形例に係る複合材の芯材層の平面図である。
【
図23】
図23(a)は、第10変形例に係る転写シーの断面図であり、
図23(b)は、第10変形例に係る複合材の断面図であり、
図23(c)は、第10変形例に係る転写シートの製造過程において、板状片に対し、粘着層形成用の転写シートのドット部側を重ねた状態の平面図である。
【
図24】
図24は、第10変形例に係る別の複合材の断面図である。
【
図25】
図24は、第11変形例に係る転写シートを用いて、板状片の転写を行う様子の断面図である。
【
図26】
図26(a)は、その他の変形例に係る転写シートの断面図であり、
図26(b)は、その他の変形例に係る複合材の断面図である。
【
図27】
図27は、その他の変形例に係る複合材において、第1製造工程のプレスカットの際に、隣り合う板状片の間に切れ込みが形成される様子を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例の複合材等であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0038】
[複合材の構成]
本実施形態に係る複合材(積層材)30について説明を行う。複合材30は、
図1及び
図2に示すように、サンドイッチ構造のパネルである。複合材30は、芯材層(「中間層」とも言う。)20と、芯材層20に積層された第1表皮材31と、芯材層20における第1表皮材31とは反対側に積層されて第1表皮材31と共に芯材層20を挟む第2表皮材32とを備えている。複合材30は、例えば、強度に比べて軽量かつ剛性が重視されるパネル材に用いることができる。具体的に、複合材30は、構造材料として、航空機、自動車又は自転車(スポーツ用自転車など)などの移動体、電気機器、電子機器、オフィス機器、家電機器、医療機器、又は、建材のパネル材などに用いることができる。移動体の場合、複合材30は、外装を構成する空力部品として用いることができる。
【0039】
各表皮材31,32は、芯材層20とは異種の材料で構成された、例えば皮材又はパネル材である。各表皮材31,32の材料としては、金属系、プラスチック系、又は無機系の何れを用いてもよい。本実施形態では、各表皮材31,32の材料に、繊維強化プラスチックを用いている。繊維強化プラスチックとしては、炭素繊維により強化された繊維強化プラスチックを用いることができる。この繊維強化樹脂としては、炭素繊維に樹脂(マトリクス)を含浸させたプリプレグ(例えば、三菱ケミカル株式会社製の「パイロフィルプリプレグ(登録商標)」)を用いることができる。このプリプレグのマトリクスには、熱硬化性エポキシ樹脂を用いることができる。
【0040】
なお、繊維強化プラスチックの繊維としては、無機系繊維、有機系繊維、又は、金属系繊維の何れを用いてもよく、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、タングステン繊維、スチール繊維、ボロン繊維などを用いることができる。また、繊維強化プラスチックのマトリックスとしては、熱硬化性樹脂、又は、熱可塑性樹脂の何れを用いてもよく、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、又は、ビスマレイミド樹脂などを用いることができる。
【0041】
芯材層20は、各表皮材31,32に積層されている。芯材層20では、互いに同じ厚みの多数の板状片13が、芯材として二次元平面上に配列されている。多数の板状片13は、各表皮材31,32の表面に沿って並べられている。各板状片13は、薄い平板の小片である。各板状片13は、同じ材質であると共に、同じ形状で同じ大きさである。なお、本明細書において「多数の板状片」における「多数」とは、10以上を意味する。積層材30における板状片13の枚数は、少なくとも10枚以上である。なお、この枚数は、50枚以上の場合もある。
【0042】
板状片13は、例えば、シート材、フィルム材、又は、樹脂発泡体からなる。板状片13には、表皮材31,32より密度が軽い材料を用いることができる。板状片13には、例えば、密度が30kg/m3以上2000kg/m3以下の範囲の材料を用いることができる。なお、板状片13の密度は、複合材30の物性又は使用目的に応じて、適宜設計され、上述の範囲外の値としてもよい。
【0043】
板状片13の材料としては、樹脂(樹脂発泡体など)、木質材料(バルサ、ベニヤなどの合板など)、又は、金属系発泡体(アルミニウム合金など)を用いることができる。本実施形態では、板状片13が、硬質樹脂発泡体からなる。板状片13は、例えば、ポリメタクリルイミド(PMI)独立気泡発泡体(例えば、「ROHACELL(登録商標)」(EVONIC Industries AG))からなる。板状片13の密度は、複合材30の軽量化の観点から、30kg/m3以上500kg/m3以下の範囲の値(例えば、110kg/m3)にしている。
【0044】
なお、板状片13の材料に用いる硬質樹脂発泡体としては、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、酢酸セルロースフォーム発泡体、ポリウレタン発泡体、フェノール発泡体、エポキシ発泡体、アクリル発泡体、ポリメタクリルイミド発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリエチレンテレフタレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリアミドイミド発泡体、又は、ポリフェニレンサルファイド発泡体などを用いてもよい。
【0045】
芯材層20では、
図3に示すように、板状片13の平面形状(外周形状)が、正多角形(本実施形態では正六角形)である。なお、板状片13の平面形状は、多数の板状片13を均一に敷き詰める場合、三角形、四角形、六角形、又は、等辺五角形を選択することができる。また、板状片13の平面形状は、これらの形状以外でもよく、他の多角形、円形、又は、楕円形などを選択することもできる。板状片13の平面形状は、多角形を基本形状とする場合、各角に平面視で面取り又は丸みが形成されていてもよい。
【0046】
板状片13の厚みは、例えば、0.05mm以上10mm以下の範囲(例えば、0.05mm以上2mm以下)にすることができる。また、板状片13の平面寸法について、重心から外周までの距離の平均値(360度の平均値。円形の場合は半径)は3mm以上50mm以下の範囲の値(例えば、5mm)にすることができ、板状片13が正六角形の場合、一辺の長さは3mm以上10mm以下の範囲の値(例えば、5mm)にすることができる。但し、板状片13の寸法は、この段落に記載した範囲外の値にしてもよい。
【0047】
芯材層20では、全ての板状片13が、互いに分離されて別体となっている。各板状片13の全周囲は、隣り合う全ての板状片13に対し隙間16を隔てて分離されている。各板状片13は、互いに独立した島状構造となっている。隣り合う板状片13は、上述の特許文献2の補強構造とは異なり、板状片13と同じ材料の接続部により互いに接続されていない。複合材30は、各表皮材31,32がI型ビーム構造におけるフランジ、各板状片13がウェブとして機能するマルチウェブパネルであり、各板状片13が芯材として機能するサンドイッチ構造のパネルである。
【0048】
隣り合う板状片13は、一辺同士が隙間16を存して互いに向かい合っている。隙間16の幅Wは、後述する上型23において隣り合う刃24の隙間の大きさ等に応じて変わる。隙間16の幅Wは、互いに向かい合う辺に沿って一定である。また、各板状片13では、全ての辺が臨む隙間16の幅Wが互いに等しい。隙間16の幅Wの寸法は、複合材30のサイズなどに応じて適宜設計され、例えば0mm以上、10mm以下の範囲にすることができる。
【0049】
芯材層20では、隣り合う板状片13間の隙間16の寸法により、積層材30の平面視における全面積に対する板状片13の合計面積の割合R1を調整することができる。割合R1(%)は、式1で表すことができる。
式1:R1=(S2/S1)×100
【0050】
ここで、S1は芯材層20の全面積(板状片13と隙間16の合計面積)、S2は全ての板状片13の合計面積(厚さ方向に見た場合の面積)を表す。隙間16に何も充填されていない状態では、100(%)からR1を引いた値が、芯材層20の空隙率R2(%)に略等しくなる。割合R1は、100%未満で、50%以上(場合によっては、70%以上)にすることができる。なお、各板状片13の平面形状が三角形、四角形、六角形又は等辺五角形の場合は、効率よく芯材層20の空間を埋めることができる。一辺が5mmの正六角形の板状片13を隙間1mmで均一に敷き詰めた場合、割合R1は80%となる。また、一辺が5mmの正六角形の板状片13を隙間3mmで均一に敷き詰めた場合、割合R1は55%となる。
【0051】
芯材層20では、多数の板状片13が規則的に配置されている。多数の板状片13は、均一に敷き詰められている。本実施形態では、板状片13の配置として、隣り合う板状片列13Lの間で、板状片13の位置が半ピッチずれた千鳥配置を採用している。本実施形態では、各板状片13の平面形状が正六角形であり、板状片13の配置は、隣り合う板状片13の間に隙間が形成されたハニカム配置ということもできる。
【0052】
各板状片13の一方の主面(各板状片13の配列面に平行な両面の一方の面であり、
図2では下面)13aの外周には、全周に亘って、面取り部13cが形成されている。面取り部13cは、板状片13が打抜き加工により成形されたことを示す痕跡(切断痕)であり、円弧状の曲面(例えば、0.05mm程度のR面)、又は、円弧のように外側に膨出した曲面である。面取り部13cの形状は、打抜き加工で用いる刃24の鋒形状などによって変わる。各板状片13において、面取り部13cの寸法は全周に亘って略均一である。なお、本明細書において板状片13の「主面」とは、表側又は裏側の面である。
【0053】
また、多数の板状片13(例えば、芯材層20の全ての板状片13)では、後述する転写シート10を用いて製造された痕跡として、外周に形成される切断痕から判別される厚さ方向の切断の向きが、互いに同じである。具体的に、多数の板状片13では、厚さ方向において同じ側の主面13aの外周に面取り部13cが形成されている。また、転写シート10を用いた別の痕跡として、板状片13の主面13a、13bのうち、厚さ方向の切断の向きとして切断の進行側に位置する主面13bに積層された表皮材32では、内面(芯材層20側の面)に、仮に表皮材32上で切断加工により多数の板状片13を成形していたならば形成される切断傷43が存在しない。具体的に、板状片13の主面13a、13bのうち、外周に面取り部13cが形成されている側と反対側の主面13bに積層された第2表皮材32では、内面に切断傷43が存在しない。切断傷43は、後述する上型23の刃24による切断の場合、V型の窪みとなる。なお、この切断傷43が存在しない点は、板状片13の外周面にバリ13dが形成される変形例(
図25(b)参照)も同じである。
【0054】
[転写シートの構成]
次に、複合材30の製造に用いる転写シート10について説明を行う。転写シート10は、基材シート11から他の構造材(表面に粘着性又は接着性がある構造体)へ多数の板状片13を転写可能なシートである。
【0055】
転写シート10は、
図4に示すように、芯材層20と、芯材層20に積層された基材シート11とを備えている。基材シート11の芯材層20側の面には、多数の板状片13を切断した際の切断傷(打痕)43が残っている。芯材層20では、隣り合う板状片13が、隙間16を隔てて分離されている。また、多数の板状片13では、厚さ方向において各板状片13における同じ側の主面13aの外周に面取り部13cが形成されている。なお、転写シート10は「積層材」に相当し、基材シート11は「表皮材」に相当する。
【0056】
基材シート11には、例えば、樹脂製のシート又はフィルム(熱可塑性樹脂シートなど)が用いられている。基材シート11に用いる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)又は、ポリカーボネートなど様々なものを用いることができる。本実施形態では、基材シート11の材料として、ポリエチレンテレフタレート(例えば、日栄化工株式会社製「加工工程用微粘着シートPET75シリーズ」)を用いている。基材シート11の厚さは、0.01mm~0.5mmの範囲の値(例えば、0.075mm)にすることができる。なお、基材シート11は、樹脂製以外に、ゴム製又は紙製のシート(又はフィルム)を用いることもできる。
【0057】
基材シート11の片面(
図4における上面)には、粘着剤(感圧接着剤。常温で硬化しないもの)を塗布することにより粘着剤層18が形成されている。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、又は、シリコーン系など様々な種類のものを用いることができる。上述の加工工程用微粘着シートPET75シリーズの基材シート11の場合、片面に、アクリル系粘着剤の塗布により粘着剤層18が予め形成されている。しかし、粘着剤層18が予め形成されていない基材シート11を用いる場合、スプレーのりなどの粘着剤により粘着剤層18を形成する。この場合、アクリル系粘着剤などのスプレーのり(例えば、スリーエムジャパン株式会社製「スプレーのりシリーズ」)を用いることができる。なお、基材シート11は、樹脂フィルムに対し両面粘着フィルムを貼り合わせたものを用いてもよい。
【0058】
多数の板状片13は、基材シート11の表面に剥離可能に貼り付けられている。各板状片13は、粘着剤層18により、基材シート11に一定の粘着力で保持されている。各板状片13は、外周に面取り部13cが形成されている側とは反対側が、基材シート11に貼り付けられている。なお、基材シート11の表面に粘着性がある場合、粘着剤層18を省略してもよい。
【0059】
基材シート11上における板状片13の配列は、複合材30の芯材層20における板状片13の配列の元になっている。転写シート10の芯材層20の平面図は、
図3と同じになる。
【0060】
具体的に、芯材層20では、
図3に示すように、板状片13の平面形状(外周形状)が、正多角形(本実施形態では正六角形)である。芯材層20では、全ての板状片13が、互いに分離されて別体となっている。各板状片13は、互いに独立した島状構造となっている。
【0061】
隣り合う板状片13は、一辺同士が隙間16を存して互いに向かい合っている。隙間16の幅Wは、互いに向かい合う辺に沿って一定である。また、各板状片13では、全ての辺が臨む隙間16の幅Wが互いに等しい。また、芯材層20では、積層材30の平面視における全面積に対する板状片13の合計面積の割合R1が、100%未満で、50%以上(場合によっては、70%以上)である。なお、隙間16の幅Wは、互いに向かい合う辺に沿って一定でなくてもよいし、各板状片13において、全ての辺が臨む隙間16の幅Wが、互いに等しくなくてもよい。
【0062】
各板状片13の一方の主面13a(
図4では上面)の外周に、全周に亘って、面取り部13cが形成されている。各板状片13において、面取り部13cの寸法は全周に亘って略均一である。
【0063】
[複合材の製造方法]
複合材30の製造方法は、転写シート10を製造する第1製造工程と、第1製造工程で得られた転写シート10を用いて、複合材30を製造する第2製造工程とを、この順番で行う。なお、転写シート10は、中間シートに相当する。
【0064】
第1製造工程では、基材シート11に材料シート14を貼り付ける貼付けステップと、基材シート11に貼り付けられた状態の材料シート14に対し打抜き加工(プレスカット)を行うことにより、材料シート14を多数の板状片13に分割する切断ステップとが、この順番で行われる。材料シート14は、板状片13の材料となるシートであり、例えば、0.05mm以上10mm以下の所定の厚さにスライス加工したポリメタクリルイミド(PMI)独立気泡発泡体のシートを用いることができる。
【0065】
貼付けステップでは、長尺の基材シート11に対し、長尺の材料シート14を粘着剤層18により貼り合わせた積層シート19(
図5(a)参照)を作成する。積層シート19は、ロール状に巻回されて、製造ライン50のリール51(
図6参照)に設置される。そして、積層シート19は、長手方向に巻き出され、プレス装置15に通される。なお、基材シート11及び材料シート14の貼り付けは、加圧又は加熱加圧が可能なプレス、ローラー、又は超音波ホーンなどにより行ってもよい。
【0066】
切断ステップでは、プレス装置15の下型22上の積層シート19が、上型23の刃24によって垂直に切り込まれることで、材料シート14がプレスカットされる。その際、
図5(b)に示すように、基材シート11は、切断されることなく、いわゆるハーフカットされる(つまり、貫通しない程度に切断される)。本実施形態では、基材シート11上で多数の板状片13が成形され、転写シート10(
図5(c)参照)が製造される。なお、刃24の平面形状は、板状片13の外周形状に対応したものを用いる。例えば、正六角形の板状片13を成形する場合、平面視で正六角形の刃24を用いる。上型23では、多数の刃24が隙間を隔てて2次元平面上に配列されている。
【0067】
ここで、打抜き加工では、
図7(a)に示すように、材料シート14の表面のうち、刃24の先端が最初に接触する部位29が押し込まれる。そして、その部位29の周辺が塑性変形する。そのため、刃24により材料シート14が切断された後は、塑性変形の痕跡として、
図7(b)に示すように、板状片13の外周には面取り部13cが形成される。面取り部13cは、上述したように、円弧状の曲面、又は、円弧のように外側に膨出した曲面である。また、刃24の間には切り屑39が形成される。なお、打抜き加工において、切断条件によっては、各板状片13の主面13aの外周に、面取り部13cではなくバリ13d(
図25(b)参照)が形成される場合もある。但し、何れが形成される場合であっても、板状片13の主面13aの外周には、厚さ方向の切断の向きを判別可能な切断痕が残る。
【0068】
なお、本実施形態では、プレスカットの際に上型23が下型22に対して上下動するが、輪転金型(ダイカットロール)による輪転の加圧によってプレスカットを行ってもよい。
【0069】
プレス装置15によりカットされた材料シート14の切り屑39は、互いに繋がった網状シート38になっている。切り屑39により構成された網状シート38は、巻取リール25により巻き取られて除去される(
図6参照)。また、転写シート10の板状片13側には、別のリール26に設けたロールから巻き出された保護フィルム27が積層される。多数の板状片13は、保護フィルム27により被覆される。また、本実施形態では、カッター28により長尺の転写シート10を所定の長さで切断して、複数の転写シート10に分割している。なお、巻取リール25による巻き取り、保護フィルム27による被覆、カッター28による切断は省略してもよい。
【0070】
第2製造工程では、転写シート10上の多数の板状片13を第1表皮材用シート31Aに転写する転写ステップと、第2表皮材用シート32Aを多数の板状片13に積層する積層ステップとが、この順番で行われる。各表皮材用シート31A,32Aは、上述の表皮材31、32(
図2参照)の材料であり、例えば半硬化状態のプリプレグ(プリプレグシート)を用いることができる。
【0071】
転写ステップでは、まず成形型(例えば金型)33上に第1表皮材用シート31Aが配置される。次に、
図8(a)に示すように、成形型33上の第1表皮材用シート31Aに対し、第1製造工程で得られた転写シート10が、板状片13側を向けて配置される。次に、
図8(b)に示すように、第1表皮材用シート31Aに対し、転写シート10の多数の板状片13が押し付けられる。第1表皮材用シート31Aは、表面が粘着性を有する。そのため、多数の板状片13は、第1表皮材用シート31Aに貼り付けられる。そして、
図8(c)に示すように、多数の板状片13から基材シート11を剥がす。そうすると、多数の板状片13に対する第1表皮材用シート31Aの粘着力は、多数の板状片13に対する粘着剤層18の粘着力よりも大きいため、基材シート11から第1表皮材用シート31Aに多数の板状片13が転写される。
【0072】
なお、粘着剤層18の粘着剤として、感温性粘着剤を用いてもよい。例えば、所定のスイッチング温度以上で粘着力が低下するウォームオフタイプの粘着剤(例えば、ニッタ株式会社製「感温性粘着シート インテリマーテープ ウォームオフタイプ」例えばスイッチング温度50度)を粘着剤層18に用いる場合、
図8(b)に示す状態で基材シート11を裏側(
図8において上側)から加熱し、粘着剤層18がスイッチング温度以上の時に、基材シート11を剥がす。一方、所定のスイッチング温度以下で粘着力が低下するクールオフタイプの粘着剤(例えば、ニッタ株式会社製「感温性粘着シート インテリマーテープ クールオフタイプ」例えばスイッチング温度25度)を粘着剤層18に用いる場合、
図8(b)に示す状態で基材シート11を裏側から冷却し、粘着剤層18がスイッチング温度以下の時に、基材シート11を剥がす。感温性粘着剤を用いる場合、板状片13から基材シート11を容易に剥がすことができる。また、基材シート11を剥がす際に、各板状片13と第1表皮材用シート31Aとの粘着状態に与える影響も小さい。
【0073】
次に、積層ステップでは、
図9(a)に示すように、まず転写ステップで得られた積層材30Aの板状片13側に対向するように、第2表皮材用シート32Aが離間して配置される。そして、
図9(b)に示すように、第2表皮材用シート32Aが、積層材30Aの板状片13側に積層される。第2表皮材用シート32Aは、表面が粘着性を有する。そのため、多数の板状片13は、第2表皮材用シート32Aに貼り付けられる。以上により、一対の表皮材用シート31A,32Aにより多数の板状片13が挟み込まれた積層材30Bが得られる。
【0074】
そして、各表皮材用シート31A,32Aに用いるプリプレグのマトリクスが熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)の場合、成形ステップが行われる。成形ステップでは、バギングフィルムを用いて、積層ステップで得られた積層材30Bが密閉される。そして、バギングフィルムにより密閉された積層材30Bが、オートクレープ内において所定の温度及び圧力(例えば、0.2MPa、130℃)で、所定時間(例えば、2時間)に亘って加熱される。この加熱の過程で、半硬化状態の表皮材用シート31A,32Aは、完全硬化状態の表皮材31,32となる。その結果、所定形状(
図9(b)の場合、平板状)に成形されて硬化した複合材30が完成する。
【0075】
なお、各表皮材用シート31A,32Aに用いるプリプレグのマトリクスが熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂)の場合は、加圧加熱プレス成形などの成形ステップ後に、マトリクスの硬化温度より低い温度(例えば、室温)の雰囲気で、積層材30Bを冷却することにより硬化ステップが行われて、複合材30が完成する。
【0076】
[本実施形態の効果等]
本実施形態の転写シート10では、基材シート11上で打抜き加工を行うことにより多数の板状片13を成形した痕跡として、多数の板状片13において、外周に形成される切断痕から判別される厚さ方向の切断の向きが、互いに同じである。具体的には、多数の板状片13において、厚さ方向における同じ側に面取り部13c(又はバリ13d)が形成される。転写シート10の基材シート11上には、打抜き加工での平面視の切断形状(打抜き形状)に応じて、多数の板状片13が成形される。
【0077】
また、本実施形態の複合材30では、転写シート10を用いて製造された痕跡として、多数の板状片13において、厚さ方向における同じ側に面取り部13cが形成される。複合材30の第1表皮材31上では、転写シート10における板状片13の配列に応じて、多数の板状片13が配置される。そのため、表皮材用シート31A上に多数の板状片13を個々に配置する必要がなく、多数の板状片13が並べられた芯材層20を容易に形成することができる。また、特許文献1の
図9の場合、円板状プレートを緻密に配置することは困難であるが、本実施形態によれば、表皮材用シート31A上に多数の板状片13を緻密に配置することも容易である。
【0078】
また、本実施形態の複合材30では、隣り合う板状片13が、隙間16を隔てて分離されて別体となっている。ここで、板状片13に硬質発泡体を用いる場合、従来のサンドイッチ構造の複合材は、発泡体、ハニカム構造、又は、互いに接続された多数のマテリアル島からなる芯材層を備えることで、軽量かつ高剛性を実現している。しかし、従来の複合材は、芯材層が連続構造であるために、靭性が乏しい硬質発泡体を曲げると破損が生じやすく、複雑な三次元形状に成形することが困難である。複合材の形状を湾曲させる場合は、曲げの範囲が制約される。
【0079】
それに対し、本実施形態では、
図10のように、キャビティ表面が湾曲した成形型33を用いる場合であっても、隣り合う板状片13が隙間16により分離され、さらに隣り合う板状片13同士の干渉が隙間16により抑制される。そのため、従来の複合材に比べて、芯材層20を曲げても破損が生じにくく、三次元形状に成形する際に曲げる範囲の制約が小さい。本実施形態によれば、三次元形状への成形性に優れ、且つ、製造が容易な複合材30を提供することができる。そして、複雑な三次元形状の複合材30や、曲がりの大きな複合材30を実現することができる。
【0080】
なお、
図10に示す成形型33を用いる場合、成形型33のキャビティ表面に沿って湾曲した三次元的形状の複合材30が得られる。成形型33のキャビティ表面は、
図10に示すように凸面の場合だけでなく、凹面の場合であっても、隣り合う板状片13同士の干渉が抑制される。また、キャビティ表面が湾曲した成形型33を用いる場合、隙間16の幅Wに応じて、成形型33への追従性が変化する。そのため、成形型33の曲率に応じて、隙間16の幅Wを適宜設計することができる。
【0081】
また、本実施形態の複合材30では、各表皮材31,32の材料にプリプレグを用いている。そのため、加熱処理を行う際に、プリプレグの硬化性樹脂(マトリクス)が、板状片13間の隙間16に流れ込み、芯材層20の隙間16が埋められる。流れ込んだ硬化性樹脂は隙間16で硬化する。隙間16で硬化した樹脂には、プリプレグから樹脂と共に流れ込んだ短繊維が含まれる。したがって、複合材30の局所的な強度低下を抑制することができる。なお、プリプレグの樹脂により芯材層20の隙間16が埋められる場合もあるが、板状片13の側面と表皮材31,32の内面との角部にフィレットが形成される場合や、気泡を含んだ状態で隙間16が埋められる場合もある。また、各表皮材31,32の材料として用いるプリプレグは、隙間16が大きい場合、単位面積当たりの樹脂量が多いものを用いることができる。
【0082】
また、板状片13の隙間16に、プリプレグのマトリクスとは別に硬化性樹脂(例えば、熱硬化タイプ、2液反応タイプ、湿気で反応タイプの接着剤など)を、圧力差を利用して注入してもよい。注入した硬化性樹脂は隙間16で硬化させる。また、2枚の表皮材31,32の間にフィルム状接着剤を追加してもよい。この場合、加熱処理を行う際にフィルム状接着剤が溶解し、溶解した接着剤(硬化性樹脂)が隙間16に流れ込み、最終的に硬化する。これらの場合、
図11に示すように、隣り合う板状片13の間の隙間16が、硬化した樹脂6により埋められ、複合材30の局所的な強度低下を抑制することができ、剛性も向上させることができる。なお、これらの工程は、多数の板状片13により構成された芯材層20の隙間16に硬化性樹脂を流入させた後に、その樹脂を硬化させることにより、芯材層20に樹脂6のハニカム構造を形成するハニカム形成ステップに相当する。また、硬化性樹脂の充填は、表皮材31,32の材料にプリプレグを用いない場合でも行うことができる。
【0083】
また、本実施形態では、板状片13の密度が低いため、軽量で比剛性に優れた複合材30を実現することができる。なお、本実施形態では、板状片13の密度に加え、板状片13の厚み、及び、隙間16の調整により、芯材層20の密度を調整することができる。
【0084】
<第1変形例>
本変形例では、
図12に示すように、複合材130が、第2表皮材32の表面に沿って並べられた多数の板状片13を有する第2芯材層21と、第1芯材層20と第2芯材層21の間に配置された中間接着層17とをさらに備えている。中間接着層17は、加熱により溶融してそのまま熱硬化するシート状接着剤(フィルム状接着剤又は接着シートともいう)により形成され、第1芯材層20と第2芯材層21を接着する。複合材130では、第1表皮材31、第1芯材層20、中間接着層17、第2芯材層21、及び第2表皮材32が、この順番で積層されている。なお、中間接着層17は、シート状接着剤が溶解した接着剤層により構成されていてもよい。また、各芯材層20,21の隙間16に、硬化した樹脂6が埋められていてもよい。
【0085】
本変形例では、平面視において、第1芯材層20の各板状片13の位置と、第2芯材層21の各板状片13の位置とを一致させているが、第1芯材層20の各板状片13の位置と、第2芯材層21の各板状片13の位置とを互いにずらしてもよい。
【0086】
また、本変形例では、芯材層20,21を2層にしているが、芯材層20,21を3層以上としてもよい。この場合も、厚さ方向に隣り合う芯材層20,21の間には、中間接着層17を設けてもよい。
【0087】
また、中間接着層17に、シート状接着剤を用いずに、プリプレグ、又は、熱硬化性樹脂シート(エポキシ樹脂など)を用いてもよい。この場合に、基材シート(プリプレグ)11と、基材シート11に貼り付けられた多数の板状片13とを有するカナッペ構造の積層材10を複数枚積層することにより、複合材130を製造してもよい。この場合、加熱ステップの際に樹脂が流動して各板状片13の隙間16に流れ込むため、複合材30の局所的な強度低下を抑制することができる。なお、基材シート11の表面は粘着性を有するため、板状片13を保持するための粘着剤を省略することができる。
【0088】
本変形例では、芯材層20において板状片13が2層構造になっている。ここで、曲がった複合材30を成形する場合、板状片13の厚みが大きいほど、板状片13の片面における引張歪みが大きくなり、板状片13の厚さや曲げの大きさによっては、板状片13の片面が引張歪みにより破損する虞がある。それに対し、本変形例は、同じ厚みの複合材で比較した場合、板状片13が一層構造の複合材30に比べ、各板状片13が薄くなる。そのため、各板状片13の片面に生じる引張歪みが小さくなり、低靭性の硬質樹脂発砲体を板状片13に用いる場合であって破損は生じにくい。本変形例によれば、三次元形状への成形性にさらに優れた複合材30を提供することができる。
【0089】
<第2変形例>
本変形例では、上述の第1製造工程により製造される中間シートが、転写シート10ではなく、基材シート111を接着剤として用いるために表皮材用シート31Aに積層した状態で、基材シート111が溶解される接着用芯材シート60(
図13参照)として用いられる。なお、接着用芯材シート60は、上述の転写シート10と同じ構成のものを用いることができる。但し、転写シート10の場合は、基材シート11から各板状片13が剥離可能となる粘着剤を粘着剤層18に用いるが、接着用芯材シート60の場合は、各板状片13を剥離可能とする必要がなく、粘着剤又は接着剤により基材シート111に材料シート14を貼り付けることができる。
【0090】
例えば板状片13が1層の場合、複合材30を製造する第2製造工程では、成形型33上の第1表皮材用シート31Aに対し、接着用芯材シート60、及び第2表皮材用シート32Aが、この順番で積層される。ここで、接着用芯材シート60の積層については、
図13に示すように、板状片13側を第1表皮材用シート31Aに貼り付けてもよい。また、基材シート111側を第1表皮材用シート31Aに貼り付けてもよい(図示省略)。そして、第2表皮材用シート32Aの積層の結果、積層材30Bが得られる。積層材30Bから複合材30を製造する方法は、上述の実施形態と同じであるため、説明は省略する。なお、隙間16に埋める樹脂量が不足する場合は、芯材層20の片面または両面に樹脂シート(中間接着層17と同じ性質のシート。例えば、シート状接着剤、プリプレグなど)を積層させてもよい。
【0091】
なお、1枚の複合材30の製造に、複数枚の接着用芯材シート60を使用してもよい。この場合に、板状片13が厚さ方向において同じ側を向くように複数枚の接着用芯材シート60を積層してもよい。また、厚さ方向に隣り合う接着用芯材シート60について、基材シート111同士を貼り合わせてもよいし、芯材層20同士を貼り合わせてもよい。
【0092】
<第3変形例>
本変形例では、上述の転写シート(第1中間シート)10を用いて、
図14に示す接着用芯材シート(第2中間シート)60が製造される。接着用芯材シート60は、表皮材111が、シート状接着剤である。
【0093】
接着用芯材シート60の製造方法では、上述の第1製造工程後に、貼付けステップと転写ステップとが、この順番で行われる。貼付けステップでは、
図15(a)及び
図15(b)に示すように、転写シート10における板状片13側に、表皮材111が貼り付けられる。なお、表皮材111のシート状接着剤には、裏面にセパレートシート141が積層されたもの用いることができる。
【0094】
転写ステップでは、
図15(c)に示すように、多数の板状片13から基材シート11を剥がすことにより、表皮材111に多数の板状片13を転写する。これにより、接着用芯材シート60が得られる。なお、接着用芯材シート60における板状片13側に、保護フィルム27を積層する工程を行ってもよい。
【0095】
<第4変形例>
本変形例では、上述の転写シート(第1中間シート)10を用いて、
図16に示す複合材製造用シート(第2中間シート)70が製造される。複合材製造用シート70は、表皮材61がプリプレグ(半硬化状態)である点を除き、
図14に示す接着用芯材シート60と同じである。表皮材61のプリプレグには、裏面にセパレートシート41が積層されたもの用いることができる。なお、複合材製造用シート160の製造方法は、表皮材が異なる以外は第3変形例と同じであるため、説明は省略する。
【0096】
<第5変形例>
本変形例では、上述の第1製造工程により製造される中間シートが、基材シート61にプリプレグを用いた複合材製造用シート70である。この場合に、複合材30の製造方法において、
図17に示すように、成形型33上に、多数の板状片13が貼り付けられた基材シート61が設置される。そして、基材シート61の多数の板状片13に対し、第2表皮材用シート32Aを積層することで、積層材30Bが作製される(図示省略)。
【0097】
積層材30Bは、上述の実施形態と同様に、オートクレープ内において所定の温度及び圧力で、所定時間に亘って加熱される。その結果、積層材30Bが焼成されて、基材シート61及び第2表皮材用シート32Aが完全硬化成形された所定形状の複合材30が完成する。
【0098】
本変形例によれば、基材シート61の剥離作業を行う必要がなく、上述の実施形態に比べて少ない工程数で複合材30を製造することができる。
【0099】
<第6変形例>
本変形例では、
図18に示すように、転写シート10において、基材シート11の裏面にセパレートシート41が積層されている。セパレートシート41は、基材シート11の裏面を被覆している。
【0100】
セパレートシート41には、例えば、ポリプレピレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ウレタン、テトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、紙などのシート材又はフィルム材を用いることができる。
【0101】
基材シート11にプリプレグを用いる場合、セパレートシート41は、プリプレグの粘着性により、基材シート11に剥離可能に設けられる。また、基材シート11に熱可塑性樹脂シートを用いる場合も同様に、セパレートシート41は、基材シート11に剥離可能に設けられる。
【0102】
本変形例では、セパレートシート41を設けることにより、転写ステップの際に転写シート10の取り扱いが容易になる。そのため、基材シート11及び板状片13の位置決めが容易となり、複合材30の成形作業を容易化することができる。
【0103】
<第7変形例>
本変形例では、
図19に示すように、複合材131が、カナッペ構造である。また、表皮材31上の芯材層20では、短冊状の板状片13が一定方向に並べられている。隣り合う板状片13の間には隙間16が形成されている。なお、
図19では、板状片13がその長さ方向に分割されていないが、板状片13をその長さ方向に分割してもよい。また、面取り部13cは、各板状片13における表皮材31側の主面13aの外周に形成されるが、
図19及び
図20では記載を省略している。
【0104】
複合材131は、円筒状に巻くことで円筒体100を製造することができる。複合材131のうち表皮材31側を内側として巻いた場合、
図20に示す円筒体100が得られる。この場合、表皮材31の両端部31aは、芯材層20が積層されておらず、一方の端部31aが内周面での貼り代(1つ外側の表皮材31への貼付箇所)となり、他方の端部13aが最も外側の板状片13を覆うように積層される。また、複合材131のうち表皮材31側を外側として巻いた場合でも、円筒体100が得られる。この場合は、一方の端部31aが最も内側の板状片13を覆うように積層され、他方の端部13aが外周面での貼り代(1つ内側の表皮材31への貼付箇所)となる。最も内側に、表皮材31の端部31aが、複数の板状片13を覆うように積層される。
【0105】
<第8変形例>
本変形例では、芯材層20の各板状片13に、貫通孔により構成された区画空間53が形成されている。区画空間53は、平面視において周囲が区画された空間である。なお、1つの板状片13における区画空間53の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、複合材30における全ての板状片13に区画空間53を形成してもよいし、一部の板状片13だけに区画空間53を形成してもよい。
【0106】
板状片13の外周形状は、上述の実施形態と同様に、正多角形(
図21(a)では正六角形)である。但し、板状片13の平面形状は、正多角形以外の形状(例えば、正多角形以外の多角形、円形、楕円形など)であってもよい。また、区画空間53の平面形状は、板状片13の外周形状と同じである。但し、区画空間53の平面形状は、板状片13の外周形状と異なっていてもよい。
【0107】
区画空間53は、第1製造工程の切断ステップにおいて、材料シート14を多数の板状片13に分割するプレスカットの際に形成することができる。この場合、プレスカットに用いる上型23では、板状片13の平面形状に対応した刃24の内側に、区画空間53の平面形状に対応した刃(図示省略)が設けられる。複合材30では、
図21(b)に示すように、厚さ方向において面取り部13c(又はバリ13d)と同じ側に、打抜き加工により区画空間53が形成されたことを示す痕跡(切断痕)として、内側面取り部13e(又は内側バリ)が形成される。
図21(a)では、面取り部13c及び内側面取り部13eの記載を省略している。なお、材料シート14に区画空間53を形成した後に、基材シート11に材料シート14を貼り付けて、区画空間53の位置に合わせたプレスカットにより、材料シート14を多数の板状片13に分割してもよい。
【0108】
複合材30では、
図21(b)に示すように、芯材層20の隙間16が、硬化した樹脂6により埋められている。樹脂6は、圧力差を利用して隙間16に、硬化性樹脂(例えば、熱硬化タイプ、2液反応タイプ、湿気で反応タイプの接着剤など)を注入して硬化させたものである。硬化性樹脂は、例えばRTM(Resin Transfer Molding)成形法を用いて注入することができる。この場合、例えば芯材層20を挟む表皮材用シート31A,32Aには、樹脂を含有しない繊維織物(炭素繊維或いはガラス繊維の織物、又は、炭素繊維或いはガラス繊維不織布など)、樹脂板、又は金属板などを用いることができ、各表皮材用シート31A,32Aと芯材層20との間には、硬化性樹脂を通さない素材を用いた樹脂シート54を積層することができる。
【0109】
樹脂シート54には、複数の貫通孔54aが形成された孔あきシート54A、又は、貫通孔54aがない孔なしシート54Bを用いることができる。
図21(b)に示すように、一方は孔あきシート54A、他方は孔なしシート54Bにしてもよいし、両方とも孔あきシート54Aにしてもよいし、両方とも孔なしシート54Bにしてもよい。孔あきシート54Aを用いる場合、樹脂シート54の貫通孔54aの少なくとも一部が隙間16に重なるようにすることで、低流動性の硬化性樹脂を隙間16に充填しやすくなる。また、樹脂シート54の少なくとも一部の貫通孔54aが区画空間53に重なるようにしてもよく、その場合は、貫通孔54aに重なる区画空間53には硬化性樹脂が注入され、それ以外の区画空間53には硬化性樹脂は注入されない。また、樹脂シート54の何れの貫通孔54aも区画空間53に重ならない場合、又は、両方とも孔なしシート54Bを用いる場合、何れの区画空間53にも、硬化性樹脂は注入されない。何れの場合においても、区画空間53に硬化性樹脂に流入するか否かを制御することができる。そのため、区画部材53の大きさにより、芯材層20における空隙率の調節を行うことができる。なお、隙間16に上述の硬化性樹脂の注入を行わなくてもよい。この場合でも、各板状片13に区画空間53が設けられることで、各板状片13が三次元形状に追従しやすくなる。
【0110】
<第9変形例>
本変形例は、板状片13に区画空間53が形成されている点では第8変形例と同じであるが、板状片13には、
図22に示すように、ハニカム構造による区画空間53が形成されている。1つの板状片13における区画空間53の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。なお、
図22では、破線が切断箇所(後述するプレスカットの位置)を表す。1つの板状片13に対する切断箇所の平面形状は、多角形(六角形)である。但し、この切断箇所の平面形状は、多角形以外であってもよい。
【0111】
芯材層20の製造では、上述の第1製造工程において、ハニカム構造の材料シート14を基材シート11に貼り付けた後に、基材シート11に貼り付けられた状態の材料シート14に対し打抜き加工(プレスカット)を行うことにより、材料シート14が多数の板状片13に分割される。そして、必要に応じて切り屑の除去を行うことで、芯材層20が得られる。なお、材料シート14として、ハニカム構造の各貫通孔を塞ぐように、ハニカム構造の層の両面にフィルムが一体化されたものを用いることができるし、ハニカム構造の層のみにより構成されたものを用いることもできる。
【0112】
第8変形例及び第9変形例の芯材層20は、
図2などの複合材30、
図4などの転写シート10、
図13などの接着用芯材シート60、及び、
図16などの複合材製造用シート70等、上述したすべての実施形態及び変形例の積層材において、区画空間53がない芯材層20の代わりに用いることができる。各板状片13を三次元形状に追従しやすくするという課題に対し、積層材が転写シート10等の中間シートの場合、積層材10は、芯材層20と、芯材層20に積層された表皮材11とを備え、芯材層20は、表皮材11の表面に沿って並べられた多数の板状片13を有し、芯材層20において、隣り合う板状片13は、隙間を隔てて又は切れ込みにより別体となっており、板状片13には、区画空間53が形成されている。また、積層材がサンドイッチ構造のパネルなどの複合材30の場合、積層材30は、表皮材11を第1表皮材として、芯材層20における第1表皮材11とは反対側に配置され、第1表皮材11と共に芯材層20を挟む第2表皮材12をさらに備えている。また、芯材層20における空隙率の調節を行うことができる積層材を実現するという課題に対し、積層材10,30では、各表皮材用シート31A,32Aと芯材層20との間に、硬化性樹脂を通さない樹脂シート54が積層されている。
【0113】
<第10変形例>
本変形例では、芯材層20の板状片13の主面13a,13bに、板状片13の平面位置を保持するための保持部80が積層されている。保持部80は、部分的に隙間が形成された粘着層又は接着層である。
【0114】
図23では、粘着層80が、それぞれが粘着剤の薄膜により構成された多数のドット部80aにより構成されている。粘着層80では、例えば多数のドット部80aが規則的に配列される。粘着層80は、板状片13の主面13a及び主面13bの少なくとも一方に積層される。
図23(a)の転写シート10、及び、
図23(b)の複合材30では、粘着層80が、板状片13の主面13a及び主面13bの両方に積層されている。但し、粘着層80は、板状片13の主面13aだけに積層されていてもよいし、板状片13の主面13bだけに積層されていてもよい。本変形例によれば、圧力差を利用して隙間16に硬化性樹脂を注入する際に、板状片13の位置ずれを抑制することができるし、複合材30の完成品においても板状片13の位置ずれを抑制することができる。
【0115】
板状片13に粘着層80を設ける方法は、例えば、第1製造工程の前に行う準備工程において、芯材層20の材料となる材料シート14の片面又は両面に、多数のドット部80aを印刷することが考えられる。この場合、第1製造工程では、多数のドット部80aが印刷された材料シート14が基材シート11に貼り付けられ、その後、打抜き加工により材料シート14が多数の板状片13に分割される。
【0116】
また、別の方法として、多数のドット部80aが印刷された、粘着層形成用の転写シート85を用いることができる(
図23(c)参照)。この場合、転写シート85のうち、多数のドット部80aが印刷される基材シート86には、例えば、PETフィルムにシリコーン処理がなされた樹脂シートなどの易剥離性のシートを用いることができる。板状片13に対するドット部80aの粘着力は、基材シート86に対するドット部80aの粘着力よりも大きい。この方法では、第1製造工程において切断ステップ後に、板状片13の主面13aに対し、転写シート85のドット部80a側を重ねた状態(
図23(c)に示す状態)にする。そして、基材シート86を剥がすことで、板状片13の主面13aに多数のドット部80aを転写することができる。なお、上述の準備工程において、材料シート14に対して多数のドット部80aを印刷する代わりに、転写シート85を用いて、板状片13の主面13a,13bに多数のドット部80aを転写してもよい。
【0117】
なお、ドット部80aは、粘着剤ではなく、接着剤の薄膜により構成されていてもよい。この場合は、各板状片13に固着したドット部80aが、アンカーとしての役割を果たすことで、板状片13の位置ずれを抑制することができる。
【0118】
また、多数のドット部80aの代わりに、
図24に示すように、板状片13の主面13a,13bに対し、厚さ方向に多数の隙間が形成された粘着シート(又は接着シート)87を積層してもよい。粘着シート87には、粘着剤を材料に用いたメッシュシート、又は、粘着剤の繊維を絡み合わせた不織布などを用いることができる。接着シート87には、接着剤を材料に用いたメッシュシート、又は、接着剤の繊維を絡み合わせた不織布などを用いることができる。これらの場合も、板状片13の位置ずれを抑制することができる。
【0119】
本変形例の保持部80は、
図2などの複合材30、
図4などの転写シート10、
図13などの接着用芯材シート60、及び、
図16などの複合材製造用シート70等、上述したすべての実施形態及び変形例の積層材に適用することができる。板状片13の位置ずれを抑制できる積層材を実現するという課題に対し、積層材が転写シート10等の中間シートの場合、積層材10は、芯材層20と、芯材層20に積層された表皮材11とを備え、芯材層20は、表皮材11の表面に沿って並べられた多数の板状片13を有し、芯材層20において、隣り合う板状片13は、隙間を隔てて又は切れ込みにより別体となっており、表皮材11と板状片13との間に、板状片13の平面位置を保持するための保持部80が積層されている。また、積層材がサンドイッチ構造のパネルなどの複合材30の場合、積層材30は、表皮材11を第1表皮材として、芯材層20における第1表皮材11とは反対側に配置され、第1表皮材11と共に芯材層20を挟む第2表皮材12をさらに備え、表皮材11,12と板状片13との間に、保持部80が積層されている。
【0120】
<第11変形例>
本変形例では、転写シート10の基材シート11に、伸縮性を有するシート材が用いられている。基材シート11には、例えばCPPフィルム(無延伸ポリプロピレン)などの樹脂シートを用いることができる。基材シート11の物性値の一例としては、例えば、引張強さが100MPa(JIS K 7127)以下で、引張伸びが200%(JIS K 7127)以上である。
【0121】
本変形例では、板状片13の転写を行う転写ステップにおいて、
図25に示す矢印の方向に、作業者又は機械によって基材シート11を引っ張りながら、棒状などの部材又は作業者の指などの押付物55により、基材シート11の裏面から転写対象の板状片13を押すことにより、表皮材用シート31Aへの板状片13の転写が行われる。本変形例によれば、基材シート11を引っ張ることにより、転写対象の板状片13と基材シート11との間の粘着力が低下するため、板状片13の転写が容易となる。例えば、凸状の曲面上に載置された表皮材用シート31Aへの転写時は、表皮材用シート31Aに対する板状片13の密着面積が少なくなるため、板状片13の転写が容易となる。
【0122】
<その他の変形例>
上述の実施形態において、プレスカットではなく、レーザーカットによって材料シート14を切断して多数の板状片13に分割してもよい。この場合、
図26(a)に示すように、中間シート10では、厚さ方向の切断の向きを判別可能な切断痕として、各板状片13の主面13aの外周にバリ13dが形成される。また、
図26(b)に示すように、複合材30でも各板状片13の主面13aの外周にバリ13dが残る。なお、レーザーカットの場合においても、各板状片13の主面13aの外周に、上述の切断痕として、面取り部13cが形成される場合がある。また、レーザーカットの際にレーザーの焦点、出力、又は送りスピードなどを調整することにより、切断面の状態をコントロールすることができる。
【0123】
上述の実施形態において、プレスカット又はレーザーカットではなく、切断する形状に沿って刃を動かす切断装置(カッティングプロッター)を用いて、材料シート14を切断して多数の板状片13に分割してもよい。この場合も、厚さ方向の切断の向きを判別可能な切断痕として、各板状片13の主面13aの外周に面取り部13c又はバリ13dが形成される。
【0124】
上述の実施形態では、芯材層20において隣り合う板状片13は、隙間16を隔てて別体となっているが、隣り合う板状片13は、切れ込み40により別体となっていてもよい。この場合、
図27(a)及び
図27(b)に示すように、隣り合う板状片13が同じ刃24により切断される。例えば、正六角形の板状片13を成形する場合、正六角形の配列パターンの刃24を用いる。そして、
図27(c)に示すように、刃24を引き抜いた際に、
図27(b)の状態では弾性変形していた板状片13が復元して、隣り合う板状片13の間に切れ込み40が残る。
【0125】
上述の実施形態において、表皮材31,32の材料として、金属系のものを用いてもよい。この場合、各板状片13は、接着剤により表皮材31,32に接合される。この接着剤としては、例えば、ビニルアセタール・フェノール樹脂系接着剤、ニトリルゴム・フェノール樹脂系接着剤、クロロプレンゴム・フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、再生ゴム系接着剤、ポリベンツイミタゾール系(PBI)接着剤、ポリイミド系(PI)接着剤などを用いることができる。なお、接着作業の効率化(接着剤の塗布量の安定性と作業性)の観点から、シート状接着剤(フィルム状接着剤)を用いてもよい。このシート状接着剤のベースとなる樹脂は、例えば、エポキシ、ナイロン/エポキシ、ニトリル/エポキシ、アクリル/エポキシ、ビニル/エポキシ、変性エポキシ、エポキシ/フェノリック、ポリイミド、ナイロン、又は、変性ポリプロピレンなどである。
【0126】
上述の実施形態において、複合材30が、例えば、船体パネルのような巨大構造物に用いられる場合、各板状片13のサイズが大きくなり、隣り合う板状片13の隙間16の幅Wも大きくなる。例えば、板状片13の外形形状が長軸寸法100mmの変形円である場合、隙間16の幅Wは10mm以上にしてもよい。
【0127】
上述の実施形態において、芯材層20における全ての板状片13の形状は同一でなくてもよい。例えば、複合材30における部位の曲率に応じて、その部位の板状片13の平面形状を決定してもよい。
【0128】
上述の実施形態において、
図2に示す複合材30は、第2表皮材32を省略して、カナッペ構造としてもよい。この場合、補強対象の構造材に対し、複合材30の板状片13側が貼り付けられる。芯材層20は、第1表皮材31と補強対象の構造材とに挟まれる。
【0129】
上述の実施形態では、芯材層20が、表皮材11,12の表面に沿って並べられた多数の板状片13により構成されているが、転写シート10、接着用芯材シート60、及び、複合材製造用シート70などの中間シートにおいては、芯材層20が、多数の貫通孔が形成されたシート材(例えば、ハニカム構造のシート材)により構成されていてもよい。
【実施例】
【0130】
図1及び
図2に示す構造の複合材30の実施例について説明を行う。なお、本発明は、その主旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。また、特に記載しない限り、本実施例に記載の単位や測定方法はJIS規格による。
【0131】
板状片13の材料には、ポリメタクリルイミド(PMI)独立気泡発泡体として、商品名「ROHACELL(登録商標)」(EVONIC Industries AG)を用いた。板状片13の密度は、密度が110kg/m3であった。また、板状片13の平面形状は、正六角形を基本形状とし、6つ角の各々が面取りされた形状であった。板状片13の寸法については、厚さが1.0mm、正六角形の一辺の長さが5mm、上述の各角の面取りの半径が0.5mmであった。また、隣り合う板状片13間の隙間16の幅Wは1mmであった。複数の板状片13は、上述のハニカム配列で均一に配置した。なお、打抜き加工の切断痕として、板状片13の主面(片面)13aの外周には半径0.05mm程度の面取り部13cが形成されていた。平面視において全面積に対する板状片13の面積割合R1は、80.3%(各角の面取りによる面積減少を反映した計算値)であった。
【0132】
表皮材31,32の材料には、プリプレグとして商品名「パイロフィルプリプレグ(登録商標)TR3110 381GMX」(三菱ケミカル株式会社製)を用いた。このプリプレグの諸元は、総目付333g/m2、引張弾性率240GPaの炭素繊維の平織クロス材であり、マトリクスは熱硬化エポキシ樹脂であった。
【0133】
加熱ステップでは、0.2MPa、130℃で、積層材30Bを2時間に亘って加熱した。その結果、厚み1.49mm、密度503kg/m3の複合材30が成形された。
【0134】
この複合材30の物性評価のため、JIS規格K7074(炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法)に基づいて曲げ試験を行った。その結果、曲げ弾性率は18.9GPaで、密度は503kg/m3であり、密度あたりの弾性率が非常に高い値となった。実施例によれば、軽量かつ高剛性な複合材30が得られることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、芯材層を有する複合材等に適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
10 転写シート(積層材、中間シート)
11 基材シート(表皮材)
13 板状片
13a,13b 主面
13c 面取り部
13d バリ
16 隙間
18 粘着剤層
20 芯材層
30 複合材(積層材)
31,32 表皮材
40 切れ込み
60 接着用芯材シート(積層材、中間シート)
70 複合材製造用シート(積層材、中間シート)