(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】振動絶縁のための受動的な可変剛性デバイス
(51)【国際特許分類】
F16F 15/06 20060101AFI20220808BHJP
F16H 37/12 20060101ALI20220808BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
F16F15/06 D
F16H37/12 Z
E04H9/02 351
(21)【出願番号】P 2021559426
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 US2020027841
(87)【国際公開番号】W WO2020210755
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-12-03
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506241994
【氏名又は名称】オハイオ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ,ケネス・ケイ
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-130365(JP,A)
【文献】特表2019-510947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118098(US,A1)
【文献】特表2016-522366(JP,A)
【文献】特表2011-530047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/06
F16H 37/12
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動的な可変剛性デバイスであって、
ベースプレートと、
第1の端部および第2の端部を有する一対の平行な可変直径円筒であって、各可変直径円筒が、線形運動しないように拘束されるように、およびその長手方向軸のみを中心とした回転を可能にするように拘束されるように、前記ベースプレートに設置される、一対の平行な可変直径円筒と、
前記可変直径円筒の間の空間内に位置する一対の定荷重ばねを備える、線形変位可能であるが回転方向において拘束されるばね組立体と、
前記可変直径円筒の前記長手方向軸に平行に延在する主ねじであって、前記主ねじが前記ばね組立体に結合され、その結果、前記主ねじが回転することにより前記主ねじの長さに沿って前記ばね組立体が線形変位する、主ねじと、
前記可変直径円筒の前記第1の端部の近くに位置する主ねじ歯車列であって、前記主ねじ歯車列の回転時に前記主ねじを回転させるように構成される、主ねじ歯車列と、
前記主ねじ歯車列の上方に存在し、前記主ねじ歯車列の歯に係合した主ねじ歯車ラックと、
前記可変直径円筒の前記第2の端部の近くに位置する円筒歯車列であって、前記円筒歯車列の回転時に前記可変直径円筒のうちの第1の可変直径円筒を回転させるように構成される、円筒歯車列と、
前記円筒歯車列の上方に存在し、
前記円筒歯車列のピニオンの歯に係合した円筒歯車ラックと、
各可変直径円筒の前記第1の端部に取り付けられたプーリ、および一方のプーリをもう一方のプーリに結合するベルトと、
前記主ねじ歯車ラックおよび前記円筒歯車ラックの上方に存在し、前記主ねじ歯車ラックおよび前記円筒歯車ラックの両方に接続されたトッププレートであって、前記トッププレートが、前記可変直径円筒の前記長手方向軸に対して実質的に垂直である方向における線形運動に拘束される、トッププレートと、
前記可変直径円筒のうちの第1の可変直径円筒まで延在してその周りで部分的に螺旋状に巻いており、前記定荷重ばねのうちの第1の定荷重ばねに結合されたケーブル、および前記可変直径円筒のうちの第2の可変直径円筒まで延在してその周りで部分的に螺旋状に巻いている、前記定荷重ばねのうちの第2の定荷重ばねに結合されたケーブルと
を備え、
前記トッププレートに十分な力が加えられたときの前記トッププレートの線形運動が、前記トッププレートの変位と共に最適に変化する復元力によって抵抗されることになる、
受動的な可変剛性デバイス。
【請求項2】
各可変直径円筒が、その長さに沿って、固定直径部分および可変直径部分を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記可変直径円筒が、一方の可変直径円筒の前記固定直径部分をもう一方の可変直径円筒の前記可変直径部分に対向させるように、および両方の円筒の固定直径と可変直径との間の移行位置同士を位置合わせするように、構成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
各可変直径円筒の外側表面が、前記可変直径円筒の実質的に全長にわたって延びる螺旋溝を有し、前記円筒の周りに巻き付けられている前記ケーブルの部分が前記螺旋溝内に存在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ケーブルが前記可変直径円筒の位置合わせされた端部から始まって前記可変直径円筒の周りに巻き付けられている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記プーリが同じ直径を有し、その結果、前記トッププレートの線形変位により前記可変直径円筒が回転させられるとき、前記可変直径円筒の間の角変位の比が1:1となる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記主ねじ、前記主ねじ歯車列、および前記定荷重ばね組立体は、前記ケーブルが巻き付けられている前記可変直径円筒の前記長手方向軸に対して実質的に垂直の角度で各ケーブルの長手方向軸を維持するように集合的に構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記トッププレートの線形運動により、
前記可変直径円筒のうちの一方の前記可変直径円筒が時計回り方向に回転し、もう一方の前記可変直径円筒が反時計回り方向に回転し、
前記可変直径円筒のうちの一方の前記可変直径円筒の前記可変直径部分に巻き付き/巻きを解かれ、対応してその抵抗トルクが増大し、もう一方の前記可変直径円筒の固定直径部分に沿って巻き付き/巻きを解かれ、その抵抗トルクを変化させない、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ケーブルのうちの一方のケーブルが、その関連する可変直径円筒に時計回り方向に巻き付けられ、もう一方の前記ケーブルが、その対応する可変直径円筒に反時計回り方向に巻き付けられる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記主ねじ歯車列および前記円筒歯車列が、協働的に、前記主ねじの回転に対する前記可変直径円筒の回転を制御し、それによりさらに、前記可変直径円筒から延在して前記可変直径円筒に巻き付けられている前記ケーブルの位置に対する前記定荷重ばねの位置を制御する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記主ねじ歯車列および前記円筒歯車列が、協働的に、前記トッププレートに加えられる抵抗復元力を増幅する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記トッププレートの変位の関数として前記デバイスにより前記トッププレートに及ぼされる前記抵抗力が、等式
【数1】
によって表さ
れ、
ここで、
fは前記円筒歯車列の合計の歯車比であり、
F
s
は前記定荷重ばねのばね力であり、
r
pin
は前記円筒歯車ラックに接続されている前記円筒歯車列の前記ピニオンの半径であり、
r
1
は第1の円筒の第1のセクションの開始位置の半径であり、
r
2
は第2の円筒の第1のセクションの開始位置の半径であり、
【数2】
は、前記第1の円筒のi番目のセクションの傾きであり、
【数3】
は、前記第2の円筒のi番目のセクションの傾きであり、
【数4】
は、前記第1の円筒及び前記第2の円筒のそれぞれのi番目のセクションの長さであり、
lは、前記第1の円筒及び前記第2の円筒のそれぞれの円周周りの前記螺旋溝によって示されるリードであり、
x
plate
は、前記トッププレートの変位である、
請求項4に記載のデバイス。
【請求項13】
関連する前記可変直径円筒内の
前記螺旋溝の中の前記ケーブルの位置、および前記可変直径円筒の長さに沿う前記螺旋溝の位置を関連付けるのに以下の変換
【数5】
が使用され、
ここで、前記螺旋溝の中の前記ケーブルの位置が、等式
【数6】
により前記トッププレートの位置に関連付けられ、
ここで、
zは、所与の円筒の長さに沿う前記螺旋溝の位置であり、
u
cable
は、当該円筒の前記螺旋溝内の前記ケーブルの位置である、
請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
受動的な可変剛性デバイスであって、
ベースプレートと、
2つの円筒ペアであって、各々の円筒ペアが、その円周を囲む螺旋溝を有する可変直径円筒、およびその円周を囲む可変リードの螺旋溝を有する固定直径円筒を含み、前記可変直径円筒および前記固定直径円筒が平行に配置され、前記ベースプレートに設置され、前記可変直径円筒は前記固定直径円筒同士の間に位置し、各々の前記円筒は線形運動しないように拘束され、その長手方向軸のみを中心とした回転を可能にするように拘束される、2つの円筒ペアと、
前記円筒ペアの前記長手方向軸に対して実質的に垂直な方向における線形運動に拘束される、前記円筒ペアの上方に存在するトッププレートと、
各可変直径円筒を前記トッププレートに接続するラック・ピニオン組立体と、
各固定直径円筒の同じ側の端部に取り付けられた定荷重ばねと、
前記定荷重ばねのうちの第1の定荷重ばねに結合されたケーブルであって、前記ケーブルが、前記ばねが取り付けられている前記固定直径円筒の半分に巻き付けられており、前記固定直径円筒の前記螺旋溝内に存在し、さらに、前記ばねが取り付けられている前記固定直径円筒と対になっている前記可変直径円筒の半分に巻き付けられており、前記可変直径円筒の前記螺旋溝内に存在し、前記円筒の反対側の端部から始まっている、ケーブルと、
前記第2の定荷重ばねに結合されたケーブルであって、前記ケーブルが、前記第2のばねが取り付けられている前記固定直径円筒の半分に巻き付けられており、前記固定直径円筒の前記螺旋溝内に存在し、さらに、前記第2のばねが取り付けられている前記固定直径円筒と対になっている前記可変直径円筒の半分に巻き付けられており、前記可変直径円筒の前記螺旋溝内に存在し、前記円筒の反対側の端部から始まっている、ケーブルと、
を備え、
前記トッププレートに十分な力が加えられたときの前記トッププレートの線形運動が、前記トッププレートの変位と共に最適に変化する復元力によって抵抗されることになる、
受動的な可変剛性デバイス。
【請求項15】
各可変直径円筒が、その長さに沿って、固定直径部分および可変直径部分を有し、
前記可変直径円筒が、一方の可変直径円筒の前記固定直径部分をもう一方の可変直径円筒の前記可変直径部分に対向させるように、および両方の円筒の固定直径と可変直径との間の移行位置同士を位置合わせするように、構成される、
請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ケーブルのうちの一方のケーブルが、その関連する可変直径円筒に時計回り方向に巻き付けられており、もう一方の前記ケーブルが、その対応する可変直径円筒に反時計回り方向に巻き付けられている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記トッププレートの線形運動により、
前記可変直径円筒のうちの一方の前記可変直径円筒が時計回り方向に回転し、もう一方の前記可変直径円筒が反時計回り方向に回転し、
前記可変直径円筒のうちの一方の前記可変直径円筒の前記可変直径部分に巻き付き/巻きを解かれ、対応してその抵抗トルクが増大し、もう一方の前記可変直径円筒の固定直径部分に沿って巻き付き/巻きを解かれ、その抵抗トルクを変化させない、
請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
前記可変直径円筒および前記固定直径円筒が、前記トッププレートの線形変位によって回転させられる場合、等しい円周方向の変位および速度を有するように前記ケーブルによって拘束される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項19】
所与の円筒ペアの前記固定直径円筒の直径が前記対応する可変直径円筒の直径より小さい箇所では、前記固定直径円筒上の前記螺旋溝が、前記対応する可変直径円筒内の前記螺旋溝より短いリードを有し、
所与の円筒ペアの前記固定直径円筒の直径が前記対応する可変直径円筒の直径より大きい箇所では、前記固定直径円筒上の前記螺旋溝が、前記対応する可変直径円筒内の前記螺旋溝より大きいリードを有する、
請求項14に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]一般的な本発明の概念の例示の実施形態は、対象の物体の効果的な振動絶縁を提供することができる受動的な可変剛性デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
[0002]所望の有効荷重の反応を達成するために多様な範囲の絶縁装置の変位に合うように最適化され得る復元力特性を有する受動的な可変剛性デバイスを使用して、効果的な振動絶縁が達成され得る。例えば、小さい変位および大きい変位において正の接線剛性を有し、その中間ではゼロの接線剛性を有する受動的な可変剛性デバイスを使用して、建物内の加速度感応装置の効果的な水平方向免震が達成され得る。これにより、使用荷重下でのシステムの安定性を保証し、極端な地震荷重下での過度な変位を制限し、設計レベルの地震でゼロ剛性の絶縁を可能にする、可変の復元力が得られる。ゼロ剛性の絶縁により、有効荷重の加速度が低減され、建物のフロアに伝達される力が低減され、固定剛性の絶縁装置を使用する類似の絶縁システムと比較して、広範囲の励振振動数に対する効果的な絶縁を提供する。
【0003】
[0003]ゼロ剛性の絶縁は多くの利点を有するが、それには絶縁装置の変位が増大するという犠牲が払われ、このような絶縁装置の変位の増大は、絶縁システム内で、さらにはシステムを据え付ける建物のフロア上で、対応されなければならない。さらに、自由空間を通常より容易に確保することができる建物のより高いフロアにこのような絶縁システムを据え付けることもしばしば所望されるが、これを行うことにより絶縁装置の変位がさらに増大する可能性がある。その理由は、建物のより高いフロアに対する水平地動の増幅により、地面レベルの加速度の数倍の大きさであるフロア加速度が発生する可能性があるためである。大きい絶縁装置の変位に対応するための受動的な可変剛性デバイスを設計すると、デバイスの構成によっては、有意なフロア空間を占有する大型のデバイスとなる可能性がある。したがって、コンパクトではあるが絶縁装置の大きい変位に対応することができる可変剛性デバイスが所望される。
【0004】
[0004]上記の例は地震により作動する装置の水平方向の振動絶縁に固有のものであるが、大抵の受動的な振動絶縁の用途において、絶縁装置の変位と共に最適に変化する復元力をコンパクトな設計で発生させるように設計され得る受動的な可変剛性デバイスが一般に所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]一般的な本発明の概念の例示の実施形態は、上で言及した所望の特性を有する受動的な可変剛性デバイスを提示する。改善された例示の受動的な可変剛性デバイスの設計が、このデバイスの変位を用いての復元力の可変性を実証する数学的モデリングに基づく関連の数値シミュレーションの結果と共に、後でより詳細に提示される。当業者には理解されるであろうが、例示の受動的な可変剛性デバイスは、従来の、受動的な、準能動的な、および能動的な可変剛性減衰システムに付随する制限を解消する。
【0006】
[0006]添付図面の図と併せて例示の実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、当業者には、一般的な本発明の概念の他の態様および特徴が明らかとなろう。
【0007】
[0007]図面および例示の実施形態の以下の説明では、複数の図にわたって同様の参照符号が等しいまたは等価の特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】[0008]受動的な可変剛性デバイスの例示の一実施形態を示す平面図である。
【
図2】[0009]
図1の例示のデバイスを示す斜視図である。
【
図3A】[0010]分かり易いように特定の構成要素を省略している、受動的な可変剛性デバイスの例示の実施形態を示す概略平面図である。
【
図3B】[0011]
図3Aの例示の受動的な可変剛性デバイスを示す概略立面図である。
【
図3C】
図3Aの例示の受動的な可変剛性デバイスを示す概略立面図である。
【
図4】[0012]受動的な可変剛性デバイスの例示の実施形態で使用されるための可変直径円筒を示す概略平面図である。
【
図5】[0013]受動的な可変剛性デバイスの例示の実施形態のトッププレートの力対変位を示すグラフである。
【
図6A】[0014]1つの例示の受動的な可変剛性デバイスのプロトタイプを示す図である。この図を介することにより本デバイスの種々の構成要素の動きがより良好に理解され得る。
【
図6B】1つの例示の受動的な可変剛性デバイスのプロトタイプを示す図である。この図を介することにより本デバイスの種々の構成要素の動きがより良好に理解され得る。
【
図6C】1つの例示の受動的な可変剛性デバイスのプロトタイプを示す図である。この図を介することにより本デバイスの種々の構成要素の動きがより良好に理解され得る。
【
図7】[0015]受動的な可変剛性デバイスの例示の実施形態の実験によるトッププレートの力対理論によるトッププレートの力を示すグラフである。
【
図8】[0016]分かり易いようにこの場合も特定の構成要素を省略している、受動的な可変剛性デバイスの代替の例示の実施形態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0017]受動的な可変剛性デバイス5(以降、簡潔さのために単に「デバイス」とも称される)の1つの例示の実施形態が
図1~2に示される。例示のデバイスは、複数の他のデバイス構成要素を直接にまたは間接的に設置することができるベースプレート10;互いに同一の一対の離間された可変直径円筒15、20;可変直径円筒15、20の間の空間内に存在する2つの定荷重ばねの組立体;主ねじ35、および定荷重ばね組立体に線形モーションを加える付随の主ねじ歯車列40;トッププレート50(
図2を参照)、および付随の一対の離間されるトッププレート線形誘導組立体55a、55b;トッププレート50に結合される対応する円筒歯車ラック65によって駆動される円筒歯車列60;同様にトッププレート50に結合されて主ねじ歯車列40を駆動する主ねじ歯車ラック45;ならびに、可変直径円筒15、20の各々に結合されさらに駆動ベルト75(
図2を参照)によって互いに結合される一対のプーリ70a、70bなどの、複数の構成要素を有する。
【0010】
[0018]限定しないが、デバイス5内で、回転モーションと並進モーションとの間で、およびトルクと力との間で、変換を行うのに使用される他の構成要素などの、1つまたは複数の他の構成要素が存在し得る。後で説明される任意の構成要素の向きおよび/または動きの理解を容易にするためのX-Y基準座標系が
図1に示される。
【0011】
[0019]各々の可変直径円筒15、20(以降、簡潔さのために個別に単に「円筒」とも称されるかまたは総称的に「円筒」とも称される)の直径は、その長さの一部分にわたって固定であり、その長さの残りの部分にわたって可変である。本例示の実施形態の可変直径円筒15、20の事例では、各円筒の長さの半分が固定の直径を有し、各円筒の長さの残りの半分の直径が可変である。
【0012】
[0020]可変直径円筒15、20は、その長手方向軸がY軸と平行であるように、さらにはばね25、30の線形運動の方向と実質的に平行であるように、さらにはトッププレート50の運動方向に対して実質的に垂直であるように、位置合わせされる。可変直径円筒15、20はさらに反転関係となるように配置され、一方の第1の円筒15の可変直径端部を主ねじ歯車列40の方に向け、対してもう一方の第2の円筒20の可変直径端部を円筒歯車列60の方に向ける。
【0013】
[0021]可変直径円筒15、20のこの構成により、さらに、一方の第1の円筒15の固定直径部分がもう一方の第2の円筒20の可変直径部分に実質的に対向するように配置されることになり、逆も同様である。さらにこの構成により、各円筒の直径移行位置(つまり、この実施例では、中点)がデバイス5のY軸に沿って同じ位置に存在することになる。
【0014】
[0022]可変直径円筒15、20の各々は、線形運動しないように拘束されるように、およびその長手方向軸のみを中心とした回転に拘束されるように、ベースプレート10に設置される。可変直径円筒15、20の各々は、好適には円筒の長さ全体に及ぶ円周方向の螺旋溝80、85をさらに有する。
【0015】
[0023]このデバイスの実施形態では、可変直径円筒15、20の間に位置する定荷重ばね25、30が、一方がもう一方の上に置かれる形で、積み重ねられる。ばね25、30はさらに、第1のばね25の前側を第1の可変直径の第1の円筒15の方に向けるように、対して第2のばね30の前側を第2の可変直径の第2の円筒20の方に向けるように、配置される。
【0016】
[0024]格納可能ケーブル90、95(
図2を参照)が各定荷重ばね25、30の前方部分に付随し、各定荷重ばね25、30の前方部分から延伸させられ得る。ケーブル90は第1のばね25から延在し、第1の可変直径の第1の円筒15の長さの約半分にわたって巻き付けられている。ケーブル95は第2のばね30から延在し、第2の可変直径の第2の円筒20の長さの約半分にわたって巻き付けられている。ケーブル90、95の巻き付け部分がそれぞれの可変直径円筒15、20の螺旋溝80、85の中に存在する。
【0017】
[0025]ケーブル90、95は、各円筒の同じ端部(等しいy軸位置)からそれぞれの可変直径円筒15、20の周りに巻き付けられており、その中央に向かって巻いている。しかし、ケーブル90、95はそれぞれの円筒15、20に反対方向に巻き付けられており、つまり、一方の円筒では時計回りで、もう一方の円筒では反時計回りで、巻き付けられている。ケーブルの巻き部分を超えたばねの終端位置が、実質的に円筒の長さの中点のところでケーブルを円筒に交差させる位置であり、これが円筒の直径が等しくなる位置でもある。
【0018】
[0026]定荷重ばね25、30の組立体が主ねじ35に設置され、主ねじ35がばね組立体をデバイスのY軸に沿わせて前後に移動させるように動作可能であり、デバイスのY軸が可変直径円筒15、20の長手方向軸にも実質的に平行である。主ねじ35を中心としたばね組立体の回転を防止するための、およびY軸方向のばね組立体の運動をさらに抑制するための、示される線形シャフト100などの抑制要素が提供され得る。
【0019】
[0027]上で言及したように、プーリ70a、70bが、それぞれ、可変直径円筒15、20の実質的に位置合わせされた端部に結合され、ベルト75により互いに結合される。プーリ70a、70bは好適には同じ直径を有し、その結果、円筒に回転力が伝達されること(後でより詳細に説明される)により円筒が回転させられるとき、円筒15、20の間の角変位の比が1:1となる。
【0020】
[0028]ベルト75およびプーリ70a、70bが近くに存在するデバイス5の同じ端部に、上で言及した主ねじ歯車列40がある。主ねじ歯車列40の歯が、すぐ上にある主ねじ歯車ラック45の相補的な歯に係合され、主ねじ歯車ラック45自体が上にあるトッププレート50に接続される。主ねじ歯車列40がさらに主ねじ35に結合され、主ねじ35を回転させ、主ねじ35が定荷重ばね20、25の組立体を移動させる。
【0021】
[0029]上で言及した円筒歯車列60がデバイス5の反対側の近くに存在する。円筒歯車列60の歯が、すぐ上にある円筒歯車ラック65の相補的な歯に係合され、さらに円筒歯車ラック65が上にあるトッププレート50に接続される。円筒歯車列60は、第1の可変直径円筒15に結合される円筒歯車60aを有する。結果として、円筒歯車列60の動作により第1の可変直径の第1の円筒15が回転する。
【0022】
[0030]トッププレート50は好適には剛体の構成要素であり、線形誘導組立体55a、55b上に設置され、線形誘導組立体55a、55bがトップレートの線形運動を促進する。主ねじ歯車ラック45および円筒歯車ラック60の向きにより、さらには線形誘導組立体55a、55bの向きにより、トップレートの移動がデバイス5のX軸に沿う線形運動のみに拘束される。当業者には理解されるように、トッププレート50は、デバイス5と、振動絶縁を適用することが所望される装置または何らかの他の物体などとの間の接続部として機能する。それにより、トッププレート50に接続される物体の受ける加速の力がデバイス5に伝達され、ここで加速の力が抵抗を受け、それに対応して、デバイス5の復元力特性により物体の運動が低減される。当業者には理解されるように、他の実施形態では、トッププレート50の形状、サイズ、構成などが異なってもよく、これが、トッププレート50を接続することになる物体によって決定されるかまたは他の形で決定される。
【0023】
[0031]
図1~2に示される上述の例示のデバイス5では、歯車列40、60が、トッププレート50の変位に対する可変直径円筒15、20の回転を制御するように動作する。歯車列40、60はさらに、主ねじ35の回転に対する可変直径円筒15、20の回転を制御するように動作し、それにより、円筒に巻き付いているケーブル90、95の位置を基準とした定荷重ばね25、30の位置を制御する。歯車列40、60はさらに、定荷重ばね25、30によりトッププレート50に加えられる力を増幅するように機能する。
【0024】
[0032]トッププレート50に接続される円筒歯車ラック65の得られる線形運動により、歯車ラックが係合されている円筒歯車列60が回転させられるとき、線形運動のみに拘束されるトッププレートの変位が第1の可変直径の第1の円筒15の回転へと変換される。ベルト75およびプーリ70a、70bを介して、第1の可変直径円筒15の回転が第2の可変直径の第2の円筒20に伝達される。
【0025】
[0033]この回転の結果として第2の可変直径円筒20を中心として発生するトルクが、ベルト75およびプーリ70a、70bの組み合わせを介して、第1の可変直径円筒に再び伝達される。次いで、第1の可変直径の第1の円筒15に対する全トルクまたは第1の可変直径円筒15および第2の可変直径円筒20に対するトルクの合計が、円筒歯車ラック65および付随の円筒歯車列60を介して、トッププレート50にかかる力へと変換される。
【0026】
[0034]上述したように、定荷重ばね25、30の組立体が主ねじ35に設置され、主ねじの回転がデバイスのY軸方向に沿って可変直径円筒15、20の長手方向軸に平行に定荷重ばねを線形運動させ、このとき、定荷重ばねから延在するケーブル90、95が円筒の周りで巻く/巻きを解かれる。主ねじ35は、デバイス5の動作の全体を通して、ケーブル90、95の長手方向軸を、可変直径円筒15、20の長手方向軸に対して実質的に垂直な状態で維持するように機能する。
【0027】
[0035]デバイス5が開始位置と称され得るような位置にあるとき、定荷重ばね25、30は、可変直径円筒15、20にかかる抵抗トルクを発生させ、これらの抵抗トルクは大きさが等しいが反対方向であり、それによりデバイスが静的釣り合い状態となる。しかし、所与の用途のためにデバイスを据え付けている場合の地震活動による運動などの±X方向のトッププレートの線形運動により、円筒のうちの一方の円筒が時計回り方向に回転し、もう一方の円筒が反時計回りに回転し、さらにはケーブルのうちの一方のケーブルが巻くことになり、もう一方のケーブルの巻きが解かれることになる。つまり、可変直径円筒15、20の構成に基づいて、一方の円筒上のケーブルが可変直径の上に巻くことになり/巻きを解かれることになり、それによりその抵抗トルクが増大し、対してもう一方の円筒上のケーブルが固定直径に沿って巻くことになり/巻きを解かれることになり、その抵抗トルクは一定のままになる。
【0028】
[0036]ケーブル90、95が巻くとき/巻きを解かれるとき、定荷重ばね25、30が主ねじ35により巻き方向/巻きを解く方向(±Y方向)に駆動され、それによりケーブルが可変直径円筒15、20内の螺旋溝80、85内に留まることが保証される。デバイス5の各々の端部のところの歯車列40、60は、定荷重ばね25、30を等しい速度で駆動するのを保証するように設計され、ケーブル90、95が巻くとき/巻きを解かれるときに円筒の長さに沿ってこの等しい速度で移動する。
【0029】
[0037]可変直径円筒15、20の両方からのトルクが、デバイス5を通してトッププレート50に伝達され、それによりトッププレートの作用する±X方向の正味の抵抗力が得られる。トッププレート50の変位が増大するにつれてこの正味の抵抗力も増大し、増加速度が可変直径円筒15、20の直径の変化によって決定される。結果として、この可変直径円筒の設計を介する広範囲の力-変位特性を有する例示の可変剛性デバイスが提供され得る。さらに、例示のデバイスは、デバイスのサイズを有意に増大させるのを一切必要とすることなく、定荷重ばねに付随のケーブルの長さを増大させることにより、および円筒に対するケーブルの巻数を増大させることにより(例えば、螺旋溝の間の間隔を縮小することにより)、絶縁装置の広範囲の変位に対応することができる。
【0030】
[0038]
図3A~5および以下の連携の記述を参照することにより、例示の可変剛性デバイスの数学的モデリングがより良好に理解され得る。
【0031】
[0039]
図3Aは、
図1~2の例示の受動的な可変剛性デバイス5の概略平面図であり、ここでは、デバイスの力-変位特性をモデリングするのに必須ではない種々の構成要素(例えば、トッププレート、線形ガイドなど)が分かり易さのために省略されている。
図3Aのデバイスの両側の概略立面図が
図3Bおよび
図3Cにそれぞれ提示されており、ここでも、デバイスの力-変位特性をモデリングするのに必須ではない種々の構成要素が分かり易さのために省略されている。
【0032】
[0040]デバイスのトッププレート(50)に作用する合計の力が、トッププレートの底部に共に接続される円筒歯車ラック(60)および主ねじラック(45)によって作用する力の合計であり、つまり以下の通りである:
Fplate=Fcyl+Fscr (1)
【0033】
[0041]数式1では、円筒歯車ラックによって作用する地からF
cylがトッププレートの変位と共に変化するように設計され、したがってデバイス内での対象の1次の力である。対して、主ねじ歯車ラックによって作用する力F
scrが主ねじ35に沿わせて定荷重ばね25、35を駆動することにより発生する2次の力である。力F
scrはF
cylを基準として小さくなるように設計されなければならず、したがってデバイスの動作に対してほぼ意味を有さない。したがって、以降、力F
cylのみを考察する。円筒歯車ラックによりトッププレートに作用する力F
cylは、円筒歯車ラックに接続されるピニオンを中心として発生するトルクT
pinをピニオンの半径r
pinで割った値に等しい。つまり:
【数1】
【0034】
[0042]トルクTpinは、円筒歯車列の合計の歯車比fと、第1の可変直径円筒15上に発生する合計のトルクTtotalとの積であり、つまり:
Tpin=f・Ttotal (3)
となり、ここでは、円筒歯車列の合計の歯車比fが、歯車列を含む個別の歯車対の歯車比の積である。第1の円筒上に発生する合計のトルクTtotalが、第1の円筒を中心として発生するトルクT1と第2の円筒を中心として発生するトルクT2との合計であり、ベルト-プーリ・システム(70a、70b、75)を通して第1の円筒に伝達される。
【0035】
[0043]第1の円筒を中心として発生するトルクT1は、第1の円筒に接続される定荷重ばねからの力Fs1と半径rc1(z1)との積に等しい。半径rc1(z1)は、付随の定荷重ばねからのケーブルが第1の円筒の周りに巻き付けられているときに中に存在するところである第1の円筒の円周周りの螺旋溝の半径である。螺旋溝の半径は、第1の円筒の長手方向軸に沿う螺旋溝の位置z1と関数として、円筒の半径と共に変化する。トルクは以下のように与えられる:
T1=Fs1・rc1(z1) (4)
【0036】
[0044]同様に、第2の円筒を中心として発生するトルクT2が、付随のケーブルにより第2の円筒に接続される定荷重ばねからの力Fs2と、付随の定荷重ばねからのケーブルが第2の円筒の周りに巻き付けられているときに中に存在するところである第2の円筒の円周周りの螺旋溝の半径rc2(z2)との積に等しい。つまり:
T2=Fs2・rc2(z2) (5)
【0037】
[0045]2つの可変直径円筒がベルト-プーリ・システムによって接続され、その結果、トルクT2が第1の円筒に伝達される。つまり:
【数2】
ここでは、r
p1が第1の円筒に取り付けられるプーリの半径であり、r
p2が第2の円筒に取り付けられるプールの半径であり、T
12がベルト-プーリ・システムを通して第1の円筒から第2の円筒に伝達されるトルクである。したがって、第1の円筒を中心とする合計のトルクが以下に等しくなる:
【数3】
【0038】
[0046]等式1~7を組み合わせることにより、トッププレートにかかる力を決定するための以下の数式が得られる:
【数4】
【0039】
[0047]等式8は、トッププレートにかかる力が、対応する定荷重ばねからのケーブルがその周りに巻き付けられているところである可変直径円筒の円周周りの螺旋溝の半径r
c1(z
1)およびr
c2(z
2)によって決定されることを示している。したがって、円筒の長さに沿うケーブルの任意の位置zにおいてトッププレートにかかる力を表すためには、円筒の長さに沿う螺旋溝の半径の変化を定義することが必要となる。この目的のため、可変直径円筒15、20の概略図が
図4に示される。さらに、定荷重ばね25、30の組立体が、円筒15、20の間に存在する形で、および主ねじ35に結合される形で、示されている。
【0040】
[0048]円筒15、20がn個のセクションに分割されており、第1の円筒および第2の円筒のi番目のセクションが
【数5】
および
【数6】
としてそれぞれ示されることが、
図4から分かるであろう。さらに、円筒の各セクションnが、セクションの長さにわたっての円筒の半径の変化を画定する一定の傾きを有する。第1の円筒および第2の円筒のi番目のセクションの傾きがそれぞれ
【数7】
および
【数8】
として示され、これらの傾きはY軸に沿う位置が増大するにつれて増大する場合に正となる。最後に、第1の円筒および第2の円筒の第1のセクションの開始位置の半径r
1およびr
2がさらに図に含まれる。ここでは、セクションの長さ、傾き、および開始位置の半径が、第1の円筒および第2の円筒のi番目のセクションの円周に沿う螺旋溝の半径を画定するのに使用され得る。これは以下の通りである:
【数9】
および
【数10】
【0041】
[0049]等式(9)および(10)はより一般的には以下のように表され得る:
【数11】
ここでは、下付き文字1および2が第1の円筒および第2の円筒を示す。等式11が、第1の円筒および第2の円筒内の螺旋溝の半径を、それぞれの円筒の長手方向軸に沿う螺旋溝の位置z
1およびz
2の関数として画定する。
【0042】
[0050]さらに、位置z
1、2が螺旋溝のリードl
1、2および円筒の回転数θ1、2に関連する。つまり:
【数12】
【0043】
[0051]等式12では、第2の円筒の回転θ
2がベルト-プーリ・システムによる第1の円筒の回転θ
1に関連付けられる。つまり、
【数13】
【0044】
[0052]さらに、第1の円筒の回転θ
1が、円筒歯車列を円筒ラックに接続するピニオンの回転θ
pinに関連付けられる。つまり:
θ
1=f・θ
pin (14)
さらに、回転θ
pinが以下のようにトッププレートの変位に関連付けられる:
【数14】
【0045】
[0053]定荷重ばねに等しいばね力を有させるように(F
s1=F
s2=F
s)、トルクT
1およびT
2を常に互いに反対にするように、定荷重ばねから延在するケーブルに円筒の軸に沿う等しい位置(z
1=z
2=z)を有させるように拘束するように、円筒の円周周りの螺旋溝のリードを等しくするように(l
1=l
2=l)、円筒の複数のセクションの長さを等しくするように(
【数15】
)、およびベルト-プーリ・システム内のプーリの半径を等しくするように(r
p1=r
p2)、デバイスが設計されること考慮して、等式8~15が、トッププレートの変位x
plateの関数としてトッププレートF
plateにかかる力を与えるために組み合わされ得る。つまり:
【数16】
【0046】
[0054]等式16では、螺旋溝内のケーブルの位置u
cableおよび円筒の長さに沿う螺旋溝の位置zを関連付けるのに以下の変換が使用される:
【数17】
さらに、位置u
cableが以下のようにトッププレートの位置x
plateに関連付けられる:
【数18】
【0047】
[0055]例示の受動的な可変剛性デバイスのためのトッププレートの力対変位のプロットが
図5に示される。ここで、デバイスの可変の力-変位特性を見ることができる。
図5に示されるデバイスの力-変位プロフィールは、小さいおよび大きい正の変位および負の変位において正の接線剛性と、その中間におけるゼロ接線剛性とを特徴とする。デバイスの力-変位プロフィールが、可変直径円筒のために選択される多様なセクションの傾きに直接に関連付けられる。結果として、適切な形状の可変直径円筒を製造することにより多様な力-変位プロフィールを達成することができる。
【0048】
[0056]一般的な本発明の概念の正当性を立証するために、プロトタイプのデバイスを製作して試験した。試験セットアップが
図6A~6Cに示される。ここでは、分かり易いように、可変直径円筒、定荷重ばね、円筒歯車列、主ねじ歯車列、およびベルト-プーリ・システムなどの、受動的な可変剛性デバイスの構成要素にラベルが付されている。プロトタイプの受動的な可変剛性デバイスの試験は、デバイスのベースプレートを固定のテーブル面に堅固に取り付けることからなる。デバイスのトッププレートは、張力および圧縮力を測定することができるロードセルに取付けられるアダプタを具備する。ロードセルの反対側が、正弦波モーションでトッププレートを駆動するのに使用される線形の電気機械アクチュエータに接続される。
図6Bおよび
図6Cは、トッププレートのモーションと定荷重ばねのモーションとの間の関係を示す。
【0049】
[0057]20HzのサンプリングレートでDAQシステムを使用して、ロードセルからの力およびアクチュエータからの位置を収集した。これらの力および位置のデータを、プロトタイプのデバイスの可変の力-変位特性を評価するのに使用した。実験によるトッププレートの力対変位のプロット7が、等式16から予測される理論による力対変位と共に、
図7に示される。理論予測が、実験に固有の摩擦を考慮するための追加のクーロン摩擦項を含むことに留意されたい。
【0050】
[0058]実験によるおよび理論による力-変位のプロットを比較すると、概して良好な一致が示される。さらに、実験による力-変位のプロフィールは、プロトタイプのデバイスが意図される通りに機能したことを実証している。つまり、本デバイスは、可変の力-変位特性を示しており、小さいおよび大きい正の変位および負の変位において正の接線剛性を有し、その中間においてはゼロの接線剛性を有する。負荷時の曲線と除荷時の曲線との間の差により力-変位プロフィールに「帯」のような外観が与えられる。これはデバイスの構成要素の摩擦が原因である。
【0051】
[0059]受動的な可変剛性デバイスの1つの代替的実施形態が
図8に示される。ここでは、上で説明した例示の実施形態の主ねじが除外されており、定荷重ばねから延在するケーブルの長手方向軸を可変直径円筒の長手方向軸に対して垂直な状態で維持するための別の機構に置き換えられている。この例示の実施形態では、より具体的には、主ねじが、その円周を囲む可変リードの螺旋溝を有する2つの固定直径円筒に置き換えられている。
【0052】
[0060]このような実施形態では、示されるように、各可変リード円筒が可変直径円筒のうちの1つと対になっている。可変直径円筒および可変リード円筒の各ペアは、それらの長手方向軸を平行にするように配置される。この場合、各可変直径円筒が、トッププレートの水平方向の線形変位を円筒の回転へと変換するために、歯車列(
図8に示される歯車列)を用いるかまたは用いない形で、ラック・ピニオン(または、バックドライブ可能なボールねじ)を使用してトッププレートに接続される。
【0053】
[0061]
図8の例示の受動的な可変剛性デバイスの実施形態では、ベルト-プーリ・システムがさらに省略されており、各円筒に歯車ラックに直接に接続される。しかし、上で説明した例示の実施形態に関連して示して説明したように、ベルト-プーリ・システムが使用されてもよい。
【0054】
[0062]
図8の代替のデバイスの実施形態では、各可変リード円筒がその一方の端部に取り付けられる定荷重ばねを有する。定荷重ばねに付随するケーブルは、最初可変リード円筒の半分と可変直径円筒の半分とに巻き付けられていて、円筒の反対側の端部から始まっている。この巻き付けテクニックは、円筒の円周周りにある螺旋溝を表す細線を使用することにより、および螺旋溝の一部の中に存在する、円筒の周りに巻き付けられているケーブルを表すのに太線を使用することにより、
図8に表される。
【0055】
[0063]ケーブルが再び円筒の周りに反対方向に巻き付けられており、それにより可変直径円筒に反対方向のトルクがかかる。可変直径円筒の移行位置に到達するまで、つまり固定直径から可変直径への変化が生じるが可変直径円筒の直径が等しい位置に到達するまで、ケーブルが円筒の周りに巻き付けられる。その結果、可変直径円筒にかかる初期のトルクは、大きさが等しいが方向が反対であり、それにより開始位置において受動的な可変剛性デバイスが静的釣り合い状態となる。
【0056】
[0064]可変直径円筒がトッププレートによって駆動される場合、定荷重ばねから延在するケーブルが円筒ペアに沿って巻く/巻きを解かれる。上で説明した例示の実施形態の手法と同様の手法で、1つの円筒ペアからのケーブルが増大する直径を有する可変直径円筒の長さに沿って巻き/巻きを解かれ、この可変直径円筒にかかる抵抗トルクが増大する。対して、もう一方の円筒ペアからのケーブルが固定直径を有する可変直径円筒の長さに沿って巻き/巻きを解かれ、この可変直径円筒にかかる抵抗トルクが一定となる。可変直径円筒にかかるトルクが力としてトッププレートに伝達され、それにより、トッププレートの増大する変位と共に増大する正味の抵抗力がトッププレートにかかる。
【0057】
[0065]
図8の代替の受動的な可変剛性デバイスの実施形態では、定荷重ばねを取り付けられた状態の可変リード円筒が各々の可変直径円筒と対となり、それにより、トッププレートの変位と共に変化するトッププレートにかかる正味の抵抗力が発生する。上で説明したように、定荷重ばねから延在するケーブルは最初、可変直径円筒の移行位置に到達するまで、各々の円筒ペアの両方の円筒の長さの半分に巻き付けられている。トッププレートが可変直径円筒を駆動するとき、可変直径円筒が回転すると、定荷重ばねのケーブルにかかる張力を介して、可変直径円筒が回転する。つまり、定荷重ばねからのケーブルが可変直径円筒および可変リード円筒を拘束しており、等しい円周方向の変位および速度を有するようにしている。
【0058】
[0066]ケーブルが等しい直径を有する各々のペアの円筒の長さにわたって巻き付けられている/巻きを解かれている場合、可変直径円筒および可変リード円筒の回転が等しくなる。しかし、ケーブルが異なる直径を有する各々のペアの円筒の長さにわたって巻き付けられている/巻きを解かれている場合、可変直径円筒および可変リード円筒の回転が異なるようになる。具体的には、より小さい直径を有するペアの円筒は、より大きい直径を有する円筒と比較して、より大きい角変位および速度を有するようになる(つまり、より回転する)。円筒が等しいリードを有する螺旋溝を有する場合、2つの円筒の角変位の差により、さらに、ケーブルが、より大きい直径を有する円筒を基準として、より小さい直径を有する円筒の長手方向軸に沿って移動することになる。
【0059】
[0067]これが起こると、定荷重ばねから延在するケーブルの長手方向軸と、各々の円筒ペアの円筒の長手方向軸との間の角度が垂直ではなくなり、ケーブルが螺旋溝から滑り出る可能性がある。したがって、定荷重ばねからのケーブルの長手方向軸が各々のペアの円筒の長手方向軸に対して垂直であることを保証するために、可変リード円筒がその長さに沿って異なるリードを有する螺旋溝を有することが必要となる。具体的には、可変リード円筒の直径が可変直径円筒の直径より小さい場合、可変リード円筒上の螺旋溝がより短いリードを有さなければならない。可変リード円筒の直径が可変直径円筒の直径より大きい場合、可変リード円筒上の螺旋溝がより長いリードを有さなければならない。
【0060】
[0068]上で説明され、図面の図に示される例示の受動的な可変剛性デバイスの少なくとも一部のデバイスは、ラック・ピニオン組立体、歯車列、ベルト-プーリ・システム、および主ねじなどの、複数の共通の機械的構成要素/組立体を有する。しかし、例示の受動的な可変剛性デバイスが、同様の可変の力変位特性をやはり達成しながら異なる形で構成されてもよいことが理解されよう。例えば、限定しないが、デバイスの同様の機能性を維持しながら、上で言及したラック・ピニオン機構がバックドライブ可能なボールねじに置き換えられてもよい。別法として、使用される、可変直径円筒、主ねじ、および定荷重ばねの設計に応じて、代替の受動的な可変剛性デバイスの実施形態の一方または両方の歯車列を排除することが可能となり得る。別の実施例として、既に説明した例示のデバイスの実施形態に関連して説明して示した、ベルト-プーリ・システムを介する第1の可変直径円筒を駆動するのにトッププレートを使用することの代わりに、トッププレートが、代替的実施形態では、歯車列を用いるかまたは用いない形で、別個のラック・ピニオン(または、バックドライブ可能なボールねじ)を独立して使用して各々の可変直径円筒を駆動することができる。
【0061】
[0069]別の代替的設計によると、定荷重ばねに付随するケーブルが可変直径円筒の周りに反対方向に巻き付けられており、その結果、得られるトルクはトッププレートの動きに抵抗するのではなく支援する。この事例では、デバイスが負の傾きを有する力-変位特性を有することになり、つまり受動的な可変の負剛性を生み出すことになる。さらに、所望の可変の力-変位特性を生み出すために、他の形で直径を変化させる一定の傾きの複数のセクションを有する可変直径円筒が設計されてもよい。