(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】化合物のエネルギー材料としての使用
(51)【国際特許分類】
C06B 29/00 20060101AFI20220808BHJP
C06B 25/00 20060101ALI20220808BHJP
C06B 31/00 20060101ALI20220808BHJP
C06D 5/00 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C06B29/00
C06B25/00
C06B31/00
C06D5/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020177516
(22)【出願日】2020-10-22
(62)【分割の表示】P 2018546038の分割
【原出願日】2017-08-11
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】201610665880.3
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520230237
【氏名又は名称】シーアン クリステン マテリアルズ テクノロジー コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウェイション
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シャオリー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シャオミン
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06B
C06D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト型化合物ABX
3であって、
前記ペロブスカイト型化合物ABX
3のAは、少なくとも1種の有機陽イオンであり、
前記ペロブスカイト型化合物ABX
3のBは、NH
4
+であり、
前記ペロブスカイト型化合物ABX
3のXは、ClO
4
-、BrO
4
-、IO
4
-、NO
3
-、ONC
-及びN(NO
2)
2
-から選択されるものであるペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項2】
前記Xは、ClO
4
-、BrO
4
-、IO
4
-及びNO
3
-から選択されるものである請求項1に記載のペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項3】
前記Xは、ClO
4
-、NO
3
-から選択されるものである請求項1又は請求項2に記載のペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項4】
前記Xは、ClO
4
-である請求項1から3のいずれか1項に記載のペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項5】
前記Aは、少なくとも1種の還元性有機陽イオンである請求項1から4のいずれか1項に記載のペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項6】
前記Aは、少なくとも1種の二価の窒素含有有機陽イオンである請求項1から5のいずれか1項に記載のペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項7】
前記Aは、少なくとも1種の二価の窒素含有複素環有機陽イオンである請求項1から6のいずれか1項に記載のペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項8】
前記Aは、以下の有機陽イオン及びそれらの誘導体のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
前記誘導体は、有機陽イオンにおける水素原子が同時又は非同時に置換基によって置換されたものであり、
前記置換基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ペルオキシ基、アゾ基及びニトロ基から選択されるものである請求項1から7のいずれか1項に記載のペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項9】
ペロブスカイト型化合物ABX
3であって、
前記ペロブスカイト型化合物ABX
3において、
Aは、有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピラジンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピペラジンアンモニウムイオン、1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン及びそれらの誘導体のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
Bは、NH
4
+であり、
Xは、ClO
4
-、BrO
4
-、IO
4
-、NO
3
-のうちの1種又は2種以上から選択されるものであるペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項10】
前記ペロブスカイト型化合物ABX
3に過塩素酸根を含む場合に、その過塩素酸根の赤外線吸収スペクトルの特徴的なピークは1070~1100cm
-1及び617~637cm
-1にあり、
硝酸根を含む場合に、その硝酸根の赤外線吸収スペクトルの特徴的なピークは1375~1390cm
-1及び845~860cm
-1にあり、
立方晶系にある場合に、粉末X線回折線の位置2θは、12.1±0.70°、21.1±1.00°及び24.4±1.20°にあり、さらに、粉末X線回折線の位置2θは、12.1±0.70°、21.1±1.00°、24.4±1.20°、27.4±1.30°及び36.57±0.88°にあり、或いは、
六方晶系にある場合に、粉末X線回折線の位置2θは、17.7±0.5°、20.4±0.5°、23.9±0.5°、24.8±0.5°、29.7±0.5°及び30.5±0.5°にあり、さらに、粉末X線回折線の位置2θは、10.3±0.5°、17.7±0.5°、20.4±0.5°、23.9±0.5°、24.8±0.5°、27.0±0.5°、29.7±0.5°、30.5±0.5°、32.2±0.5°、37.0±0.5°にある請求項1から9のいずれか1項に記載のペロブスカイト型化合物ABX
3。
【請求項11】
ペロブスカイト型化合物
の調製方法であって、
該調製方法は、
A成分、B成分及びX成分を任意の順序で液体反応系に加え、反応さ
せ、前記ペロブスカイト型化合物を得ることを含み、
前記A成分に有機陽イオンを含み、
前記B成分にNH
4
+を含み、
前記X成分は、ClO
4
-、BrO
4
-、IO
4
-、NO
3
-、ONC
-及びN(NO
2)
2
-の酸、ClO
4
-、BrO
4
-、IO
4
-、NO
3
-、ONC
-及びN(NO
2)
2
-の塩のうちの少なくとも1種から選択され
る、ペロブスカイト型化合物
の調製方法。
【請求項12】
前記液体反応系は、A成分、B成分及びX成分を溶解できる極性溶剤であり、
前記極性溶剤は、水、エタノール、メタノールのうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
以下のステップ1)から3)、即ち、
A成分を極性溶剤に加えた後、さらにX成分を加え、均一に撹拌するステップ1)と
B成分を極性溶剤に溶解するステップ2)と
ステップ1)及びステップ2)の溶液を混合し、反応させて得られるステップ3)と、により合成される請求項11に記載のペロブスカイト型化合物
の調製方法。
【請求項13】
前記A成分は、窒素含有複素環、又は窒素含有複素環有機陽イオン又はその誘導体を含む有機塩であり、
前記X成分は、一価の陰イオンエネルギー基を含む請求項11又は請求項12に記載のペロブスカイト型化合物
の調製方法。
【請求項14】
ペロブスカイト型化合物
の調製方法であって、
該調製方法は、
A成分、B成分及びX成分を任意の順序で液体反応系に加え、反応さ
せ、前記ペロブスカイト型化合物を得ることを含み、前記液体反応系は、A成分、B成分及びX成分を溶解できる極性溶剤であり、
前記ペロブスカイト型化合物は、
以下のステップ1)から3)、即ち、
A成分を極性溶剤に加えた後、さらにX成分を加え、均一に撹拌するステップ1)と
B成分を極性溶剤に溶解するステップ2)と
ステップ1)及びステップ2)の溶液を混合し、反応させて得られるステップ3)と、により合成され、
前記A成分は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン又はその誘導体、ピラジン又はその誘導体、ピペラジン又はその誘導体、1-酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン又はその誘導体、1,4-二酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン又はその誘導体、1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩、1,4-ジヒドロ-ピラジンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩、1,4-ジヒドロ-ピペラジンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩、1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
前記B成分は、アンモニウムイオン含有塩、アンモニウムイオン含有塩基のうちの少なくとも1種であり、
前記X成分は、ClO
4
-、BrO
4
-、IO
4
-、NO
3
-、ONC
-及びN(NO
2)
2
-のうちの1種又は2種以上から選択される陰イオンの酸、又はClO
4
-、BrO
4
-、IO
4
-、NO
3
-、ONC
-及びN(NO
2)
2
-のうちの1種又は2種以上から選択される陰イオンの塩のうちの少なくとも1種であり、
前記極性溶剤は、水、エタノール、メタノールのうちの1種又は2種以上から選択されるペロブスカイト型化合物
の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー材料分野に関し、具体的には、ペロブスカイト型化合物のエネルギー材料としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー化合物は、高エネルギー密度を有する爆発性物質である。最初のエネルギー材料は、紀元9世紀に発明された中国の黒色火薬である。黒色火薬は、硫黄、硝酸カリウム及び木炭粉末を混合して製造されたものであり、効果が悪く性能が不安定である。到了近代では、ニトログリセリンは、最初医療製品として開発されたが、後続の生産において、強力な爆薬として使用できることが発見された。ニトログリセリンの性能は黒色火薬よりも遥かに優れているが、高感度であるため、生産や輸送が非常に危険である。アルフレッド・ベルンハルト・ノーベルは、絶え間ない研究開発したところ、珪藻土がニトログリセリンを吸着でき、ある程度に爆発性能に影響を与えるが、製品の安全性を効果的に向上できることを発見した。これをきっかけに、ニトログリセリンの工業規模の使用は始まった。現代社会に入って以来、性能がニトログリセリンを超えた爆薬は絶えず発見され使用されている。有名なトリニトロトルエン(TNT)、TNTよりも爆発性能が強い有機エネルギー材料であるヘキソーゲン(RDX)及びオクトーゲン(HMX)は、世界中で幅広く武器弾薬に使用されている。近年、性能がより優れたが高価で複雑な有機爆薬であるヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン(CL-20)の工業プロセスは、中国の科学者によって開発され、我が国の軍事弾薬の発展を推進した。近年、いくつかの帯有エネルギー基を有する金属有機骨格化合物(例えば、Angew.Chem.Int.Ed.2013,52,14031;Chem.Eur.J.2013,19,1706)は注目されており、このような化合物は、高い基制御性及び理論計算による高爆発熱性能を有するため、次世代の爆薬開発の重要方向として見なされている。
【0003】
現代の爆薬開発の発展中、多種の爆薬は、諸性能上に進展を取得したが、必然的に欠陥が存在する。例えば、爆発性を有する過塩素酸カリウムは、閃光弾の共酸化剤として使用されたが、衝撃感度が高いため、輸送途中で爆発しやすいことで最終にその使用が放棄されることになった(《High Energy Materials:Propellants,Explosives and Pyrotechnics》第347頁;Jai Prakash Agrawal編著;Wiley-VCH出版社 2010)。従来の有機エネルギー材料及び基礎研究段階にある金属有機骨格エネルギー材料には、爆発性能が優れた材料が少なくないが、殆どは合成プロセスが複雑で、手順が多く、高価で、安定性が悪く、衝突や摩擦等に非常に敏感などの欠点が存在するので実用にならない。そのため、低コスト、高エネルギー密度、低感度(高安全性)等の利点を有する低感度高エネルギー材料を如何に設計し合成するかは、エネルギー材料分野において課題となっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、新規エネルギー材料を提供することである。
本発明の別の目的は、良好な安全性を有するエネルギー材料を提供することである。
本発明の別の目的は、爆発性が良好なエネルギー材料を提供することである。
本発明の別の目的は、エネルギー密度が高いエネルギー材料を提供することである。
【0005】
エネルギー材料分野において、本発明は、初めてペロブスカイト型化合物をエネルギー材料として使用したところ、それがエネルギー材料として特に適していることを画期的に発見した。
【0006】
上記ペロブスカイト型化合物は、エネルギー基、例えばClO4
-エネルギー基を有する。このようなエネルギー材料は、爆薬として使用され得るが、この限りではない。例えば、推進薬、ロケット燃料又はエアバッグのガス発生剤として使用されてもよい。
【0007】
ペロブスカイト型化合物は、チタン酸カルシウム(CaTiO3)に類似する結晶構造を有する固体化合物であり、化学式がABX3である。ここで、AとBはサイズの異なる陽イオンであり、Xは陰イオンである。その理想的な構造は、高対称性の立方晶系に属し、その構造的特徴は、以下のように記述することができる。即ち、各Bサイト陽イオンは、隣接する6つのX陰イオンに結合し、各X陰イオンは、隣接する2つのBサイト陽イオンに結合することで、立方体の籠状単位からなる三次元陰イオン骨格が形成され、Aサイト陽イオンは、これらの立方体の籠状単位の空洞に充填される。Aは少なくとも1種の陽イオンであり、Bは少なくとも1種の陽イオンであり、Xは少なくとも1種の陰イオンである。ペロブスカイトに1種以上のA陽イオンを含む場合に、異なるA陽イオンは、Aサイトに規則的又はランダムに分布することができる。ペロブスカイトに1種以上のB陽イオンを含む場合に、異なるB陽イオンは、Bサイトに規則的又はランダムに分布することができる。ペロブスカイトに1種以上のX陰イオンを含む場合に、異なるX陰イオンは、Xサイドに規則的又はランダムに分布することができる。
【0008】
現在、ペロブスカイト型化合物は、強誘電性材料、光電材料、電磁気材料等として幅広く研究、応用されている。
【0009】
本発明の一発見として、A陽イオンがB陽イオンよりも大きいペロブスカイト型化合物において、Xはエネルギー陰イオン基である。このようにして形成された立体構造を有する化合物は、エネルギー材料の作用を発揮すると共に、従来のエネルギー材料の欠陥を克服することができる。例えば、本発明者は、ペロブスカイト型の構造特徴により、このような化合物は比較的高い安定性を有し、従来技術における爆薬の安定性の悪さによる不安全を克服することができると共に、その構造には大量のエネルギー基を含み、且つこれらの酸化性エネルギー陰イオンと還元性有機陽イオンとが空間に交互に並んでいることにより、このような化合物は爆発時に優れた瞬時エネルギーを有することを推測した。ペロブスカイト型の空間的な立体構造により、保存時の低感度及び爆発時の瞬時エネルギーの2つの矛盾する特性を両立することができ、それによって、このような化合物は、特にエネルギー材料、例えば、低感度、高エネルギーの爆薬として適用される。
【0010】
エネルギー基は爆発性を有する基であるが、爆発性基を含む化合物は全て爆発性を有するわけではない。化合物が爆発性を有するかどうか、単一の基ではなく、分子全体の構造に依存する(《爆薬学》第3頁、張華祝ら著、北京:兵器工業出版社、2004)。一般的な爆発性を有する基は、ClO3
-、ClO4
-、 NO3
-、ONC-、N(NO2)2
-、アゾ基、アジドイオン、ニトロ基等の基がある。
【0011】
本発明のXは、少なくとも1種の陰イオンエネルギー基であり、上記Xは、酸化性陰イオンエネルギー基、好ましくは一価の陰イオンエネルギー基、より好ましくは一価のハロゲン成分含有エネルギー基であることができる。
【0012】
いくつかの実施例では、陰イオンエネルギー基(X)は、ClO4
-、BrO4
-、IO4
-、ONC-、NO3
-、N(NO2)2
-のうちの1種又は2種以上であり得る。
【0013】
いくつかの好ましい実施例では、陰イオンエネルギー基(X)は、ClO4
-、BrO4
-、IO4
-のうちの1種又は2種以上であり得る。
【0014】
本発明のAは、少なくとも1種の有機陽イオンであり、特にAは、還元性有機陽イオンである。
【0015】
好ましくは、Aは少なくとも1種の窒素含有有機陽イオンである。
【0016】
好ましくは、Aは少なくとも1種の窒素含有複素環有機陽イオンである。
【0017】
より好ましくは、Aは少なくとも1種の6員環を含む窒素含有複素環有機陽イオンである。
【0018】
代替的な実施例として、上記Aは、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピラジン、ピペラジン、3-アミノピロリジン、イミダゾリン、アミノトリアゾール、アミノテトラゾリウム、エチレンジアミン、ジシアンジアミド、フェニレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、シクロヘキサンジアミン等の有機物をプロトン化した有機陽イオン及びそれらの誘導体のうちの1種又は2種以上である。
【0019】
代替的な実施形態として、Aは以下の有機陽イオン及びそれらの誘導体のうちの1種又は2種以上から選択されるものである。
【0020】
【0021】
より好ましくは、Aは、以下の有機陽イオン及びそれらの誘導体のうちの1種又は2種以上から選択されるものである。
【0022】
【0023】
A成分の有機陽イオンの誘導体とは、有機陽イオンにおける水素原子が同時又は非同時に置換基によって置換されたものであり、一般的な置換基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ペルオキシ基、アゾ基及びニトロ基等がある。
【0024】
本発明のBは少なくとも1種の一価の陽イオンである。
【0025】
代替的な実施形態として、Bはアルカリ金属イオン、NH4
+の陽イオンのうちの1種又は2種以上から選択されるものである。
【0026】
上記アルカリ金属イオンは、好ましくはNa+、K+、Rb+、Cs+のうちの1種又は2種以上から選択されるものである。
【0027】
好ましくは、Aは1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン及びそれらの誘導体のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、より好ましくは、Aは有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンのうちの1種又は2種からなる群より選択されるものである。
【0028】
好ましくは、BはNa+、K+、NH4
+のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、より好ましくは、BはNa+、NH4
+のうちの1種又は2種からなる群より選択されるものであり、より好ましくは、BはNH4
+である。
【0029】
より好ましくは、XはClO4
-、NO3
-、IO4
-のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、より好ましくは、XはClO4
-、NO3
-のうちの1種又は2種から選択されるものであり、又はClO4
-、IO4
-のうちの1種又は2種から洗濯物であり、より好ましくは、XはClO4
-である。
【0030】
さらに好ましい実施例として、本発明のABX3において、
Aは有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピラジンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピペラジンアンモニウムイオン、1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンのうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
BはNa+、K+、Rb+、NH4
+のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
XはClO4
-、NO3
-、IO4
-のうちの1種、2種又は3種から選択されるものであり、より好ましくは、XはClO4
-、IO4
-のうちの1種又は2種から選択されるものであり、又はClO4
-、NO3
-のうちの1種又は2種から選択されるものである。
【0031】
さらに好ましい実施例として、本発明のABX3において、
Aは有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンのうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
BはNa+、K+、Rb+、NH4
+のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
XはClO4
-、NO3
-のうちの1種又は2種から選択されるものであ理、又はClO4
-、IO4
-のうちの1種又は2種から選択されるものであり、より好ましくは、XはClO4
-である。
【0032】
さらに好ましい実施例として、本発明のABX3において、
Aは、有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンのうちの1種又は2種から選択されるものであり、
BはNa+、K+、Rb+、NH4
+のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
XはClO4
-、NO3
-のうちの1種又は2種から選択されるものであり、又はClO4
-、IO4
-のうちの1種又は2種から選択されるものであり、より好ましくは、XはClO4
-である。
【0033】
特に好ましい実施例として、本発明のABX3において、
Aは有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンのうちの1種又は2種から選択されるものであり、
BはNa+、K+、NH4
+のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
XはClO4
-、NO3
-のうちの1種又は2種から選択されるものであり、又はClO4
-、IO4
-のうちの1種又は2種から選択されるものであり、より好ましくは、XはClO4
-である。
最も好ましい実施例として、本発明のABX3において、
Aは有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンから選択されるものであり、
BはNa+、NH4
+のうちの1種又は2種から選択されるものであり、
XはClO4
-、NO3
-のうちの1種又は2種から選択されるものであり、又はClO4
-、IO4
-のうちの1種又は2種から選択されるものであり、より好ましくは、XはClO4
-である。
【0034】
特定の実施例として、本発明のABX3において、A、Xは上記の任意の可能な選択肢から選択され、BはNH4
+である。
【0035】
より具体的な特定の実施例として、
Aは有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピラジンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピペラジンアンモニウムイオン、1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン及びそれらの誘導体のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
XはClO4
-、BrO4
-、IO4
-のうちの1種、2種以上から選択されるものであり、
BはNH4
+である。
【0036】
BがNH4
+である場合、化合物が完全に爆発した後に金属塩の固体物質の残留がなく、単位モルあたりの発生ガス量は15.25モルと高い。この特性により、爆薬、ロケット燃料、推進薬及びエアバッグのガス発生剤等としての使用により有利である。ガス発生量に対する要求が高い応用分野、例えばロケット燃料には特に適している。
【0037】
別の特定の実施例として、本発明のABX3において、A、Xは上述した任意の可能な選択肢から選択され、BはNa+である。
【0038】
より具体的な特定の実施例として、
Aは有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピラジンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピペラジンアンモニウムイオン、1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン及びそれらの誘導体のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
XはClO4
-、BrO4
-、IO4
-のうちの1種、2種以上から選択されるものであり、
BはNa+である。
【0039】
より好ましくは、Aは1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンから選択されるものであり、XはClO4
-であり、BはNa+である。
【0040】
BがNa+である場合に、BがK+である場合に比べて、理論的には、特別な優位性はその密度が低くなることである。通常、低くなった密度ρはエネルギー材料の性能を低下させると考えられている(エネルギー材料の爆速D及び爆圧Pを計算するKamlet-Jacob方程式はそれぞれD=1.01Φ1/2(1+1.30ρ)、P=1.558Φρ2である。ここで、Φ=31.68N(MQ)1/2であり、Nは単位質量あたりの材料の発生ガスのモル数であり、Mは発生ガスの平均モル質量であり、Qは単位質量あたりの材料の放熱量である。したがって、密度の爆速及び爆圧に対する影響には正の相関があり、そのうち、爆圧に対する影響には二乗指数の関係がある)。しかし、本発明 (実施例1) では、エネルギー材料として使用されるときに、軽いナトリウムイオンを用いると材料密度が低下することを予測し、材料の爆速、爆圧に悪影響を与えることを推測したが、実験及び理論計算から明らかになるように、ナトリウムイオンを使用した結果、逆に多くの性能上より良い効果が得られた。例えば、DAP-1(実施例1;このペロブスカイト型化合物のBはNa+)は、DAP-2(実施例2;このペロブスカイト型化合物のBはK+)に比べて、単位質量当たりの放熱量が向上し、単位質量当たりのガス発生モル量も向上した。DAP-1の爆速、爆圧の理論的予測値は共にDAP-2よりも高い。また、DAP-1の原料である過塩素酸ナトリウムは、DAP-2の原料である過塩素酸カリウムに比べて極性溶剤に溶解しやすく、DAP-1の合成に必要な溶剤がDAP-2の合成よりも遥かに少ないため、実験上も生産上も、DAP-1の合成はより便利である。DAP-1は、DAP-2よりも高エネルギー爆薬及び推進薬分野における応用にはより適している。
【0041】
別の特定の実施例として、本発明のABX3において、A、Bは上述した任意の可能な選択肢から選択され、XはNO3
-である。
【0042】
より具体的な特定の実施例として、
Aは有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピラジンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロ-ピペラジンアンモニウムイオン、1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン及びそれらの誘導体のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
BはNa+、K+、Rb+、NH4
+のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、
XはNO3
-である。
【0043】
XがNO3
-である場合、化合物にはハロゲン元素が含まれないため、爆発後にハロゲン化水素ガスが発生しないため、特徴信号を低減させ、環境汚染を減少させる。この特性により、該化合物は、低特徴信号が要求される応用分野、例えば低特徴信号推進薬又はロケット燃料に特に適用される。
【0044】
ABX3は、A成分、B成分及びX成分を任意の順序で液体反応系に加え、反応させることで得ることができる。液体反応系は、好ましくはA成分、B成分及びX成分を溶解できる極性溶剤である。ABX3は既知の合成方法により合成してもよい。反応温度は特に限定されず、極めて広い範囲内、例えば0~100℃で調整することができる。
【0045】
一実施形態では、本発明は、ABX3の製造方法を提供する。該方法は、
A成分を極性溶剤に加えた後、さらにX成分を加え、均一に撹拌するステップ1)と、
B成分を極性溶剤に溶解するステップ2)と、
ステップ1)及びステップ2)の溶液を混合し、十分に撹拌し、ろ過し、エタノールで濾過残渣を洗浄し、真空乾燥させることにより、白色粉末状のエネルギー化合物を得るステップ3)と、を含む。
【0046】
上記A成分は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン又はその誘導体、ピラジン又はその誘導体、ピペラジン又はその誘導体、1-酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン又はその誘導体、1,4-二酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン又はその誘導体、1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩、1,4-ジヒドロ-ピラジンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩、1,4-ジヒドロ-ピペラジンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩、1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩、1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン又はその誘導体を含む有機塩のうちの少なくとも1種である。
【0047】
好ましくは、上記B成分の陽イオンは、アルカリ金属イオン、NH4
+のうちの1種又は2種以上から選択されるものであり、B成分は、アンモニウムイオン含有塩、ナトリウムイオン含有塩、カリウムイオン含有塩、ルビジウムイオン含有塩、セシウムイオンイオン含有塩、アンモニウムイオン含有塩基、ナトリウムイオン含有塩基、カリウムイオン含有塩基、ルビジウムイオン含有塩基、セシウムイオン含有塩基のうちの少なくとも1種である。
【0048】
上記X成分はハロゲン含有エネルギー基の酸、ハロゲン含有エネルギー基の塩基のうちの少なくとも1種である。
【0049】
上記極性溶剤は、水、エタノール、メタノールのうちの1種又は2種以上から選択されるものである。
【0050】
非限定的な例として、上記1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンを含む有機塩は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩である。
【0051】
上記1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン誘導体を含む有機塩は、2-ヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩、2-カルボニル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩、2-メチル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩のうちの少なくとも1種である。
【0052】
上記1,4-ジヒドロ-ピラジンアンモニウムイオンを含む有機塩は、ピラジンの塩酸塩である。
【0053】
上記1,4-ジヒドロ-ピラジンアンモニウムイオン誘導体を含む有機塩は、2-ヒドロキシ-ピラジンの塩酸塩、2-メチル-ピラジンの塩酸塩のうちの少なくとも1種である。
【0054】
上記1,4-ジヒドロ-ピペラジンアンモニウムイオンを含む有機塩は、ピペラジンの塩酸塩である。
【0055】
上記1,4-ジヒドロ-ピペラジンアンモニウムイオン誘導体を含む有機塩は、2-ヒドロキシ-ピペラジンの塩酸塩、2-メチル-ピペラジンの塩酸塩のうちの少なくとも1種である。
【0056】
上記1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンを含む有機塩は、1-酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩である。
【0057】
上記1-ヒドロキシ-4-ヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン誘導体を含む有機塩は、2-ヒドロキシ-1-酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩、2-カルボニル-1-酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩のうちの少なくとも1種である。
【0058】
上記1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオンを含む有機塩は、1,4-二酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩である。
【0059】
上記1,4-ジヒドロキシ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン誘導体を含む有機塩は、2-ヒドロキシ-1,4-二酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩、2-カルボニル-1,4-二酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの塩酸塩のうちの少なくとも1種である。
【0060】
上記アンモニウムイオン塩は、過塩素酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、過ヨウ素酸アンモニウム、過レニウム酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウムのうちの少なくとも1種である。
【0061】
上記ナトリウム塩は、過塩素酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過レニウム酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウムのうちの少なくとも1種である。
【0062】
上記カリウム塩は、過塩素酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、過レニウム酸カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウムのうちの少なくとも1種である。
【0063】
上記ルビジウム塩は、過塩素酸ルビジウム、テトラフルオロホウ酸ルビジウム、過ヨウ素酸ルビジウム、過レニウム酸ルビジウム、炭酸ルビジウム、硝酸ルビジウム、リン酸ルビジウム、塩化ルビジウム、フッ化ルビジウムのうちの少なくとも1種である。
【0064】
上記セシウム塩は、過塩素酸セシウム、テトラフルオロホウ酸セシウム、過ヨウ素酸セシウム、過レニウム酸セシウム、炭酸セシウム、硝酸セシウム、リン酸セシウム、塩化セシウム、フッ化セシウムのうちの少なくとも1種である。
【0065】
上記アンモニウムイオン含有塩基はアンモニア水である。
【0066】
上記ナトリウムイオン含有塩基は水酸化ナトリウムである。
【0067】
上記カリウムイオン含有塩基は水酸化カリウムである。
【0068】
上記ルビジウムイオン含有塩基は水酸化ルビジウムである。
【0069】
上記セシウムイオン含有塩基は水酸化セシウムである。
【0070】
好ましくは、上記X成分は過塩素酸根を含む物質である。例えば、過塩素酸であることが好ましい。
【0071】
上記極性溶剤は、水、エタノール、メタノールのうちの少なくとも1種である。
【0072】
いくつかの実施例では、ペロブスカイト型化合物ABX3に過塩素酸根を含む場合に、その過塩素酸根の赤外線吸収スペクトルの特徴的なピークは、1070~1100cm-1及び617~637cm-1にある。
【0073】
硝酸根を含む場合に、その硝酸根の赤外線吸収スペクトルの特徴的なピークは、1375~1390cm-1及び845~860cm-1にある。
【0074】
立方晶系にある場合に、粉末X線回折線の位置2θは、約12.1±0.70°、21.1±1.00°及び24.4±1.20°にある。さらに、粉末X線回折線の位置2θは、約12.1±0.70°、21.1±1.00°、24.4±1.20°、27.4±1.30°及び36.57±0.88°にある。
【0075】
単斜晶系にある場合に、粉末X線回折線の位置2θは、約12.6±0.5°、21.7±0.5°、22.4±0.5°、22.7±0.5°、25.4±0.5°及び26.8±0.5°にある。さらに、粉末X線回折線の位置2θは、約12.6±0.5°、21.7±0.5°、22.4±0.5°、22.7±0.5°、25.4±0.5°、26.8±0.5°、27.2±0.5°、37.7±0.5°、38.4±0.5°にある。
【0076】
六方晶系にある場合に、粉末X線回折線の位置2θは、約17.7±0.5°、20.4±0.5°、23.9±0.5°、24.8±0.5°、29.7±0.5°及び30.5±0.5°にある。さらに、粉末X線回折線の位置2θは、約10.3±0.5°、17.7±0.5°、20.4±0.5°、23.9±0.5°、24.8±0.5°、27.0±0.5°、29.7±0.5°、30.5±0.5°、32.2±0.5°、37.0±0.5°にある。
【0077】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
(1)本発明のエネルギー化合物は、爆発熱が高く、エネルギー密度が高く、理論爆発熱が1.53kcal/gと高く、結晶密度が1.8~2.3g/cm3であり、対応するエネルギー密度が3.11kcal/cm3と高い。
(2)本発明のエネルギー化合物は、爆速が高く、Kamlet-Jacob算式により算出した理論爆速が8.85km/sと高い。
(3)本発明のエネルギー化合物は、爆圧が高く、Kamlet-Jacob算式により算出した理論爆圧が37.3GPaと高い。
(4)本発明のエネルギー化合物は、安全性が良好であり、衝撃感度、摩擦感度及び静電気感度が極めて低く、熱感度爆発温度が340℃に達することができる。
(5)本発明のエネルギー化合物は、揮発性がないため、長期間保存しても分解や吸湿することがない。
(6)本発明のエネルギー化合物は、室温での結晶性が単一で、原料コストが低く、生産プロセスが簡単であるため、安全且つ大量に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】
図1は、エネルギー化合物DAP-1の構造模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1~7のエネルギー化合物の粉末X線回折スペクトルである。
【
図3】
図3は、実施例1のエネルギー化合物DAP-1の赤外線スペクトルである。
【
図4】
図4は、実施例1のエネルギー化合物DAP-1の熱重量分析スペクトルである。
【
図5】
図5は、実施例1のエネルギー化合物DAP-1の示差走査熱量スペクトルである。
【
図6】
図6は、実施例2のエネルギー化合物DAP-2の熱重量分析スペクトルである。
【
図7】
図7は、実施例2のエネルギー化合物DAP-2の示差走査熱量スペクトルである。
【
図8】
図8は、実施例3のエネルギー化合物DAP-3の熱重量分析スペクトルである。
【
図9】
図9は、実施例3のエネルギー化合物DAP-3の示差走査熱量スペクトルである。
【
図10】
図10は、実施例4のエネルギー化合物DAP-4の熱重量分析スペクトルである。
【
図11】
図11は、実施例4のエネルギー化合物DAP-4の示差走査熱量スペクトルである。
【
図12】
図12は、実施例5のエネルギー化合物DAP-O22の熱重量分析スペクトルである。
【
図13】
図13は、実施例5のエネルギー化合物DAP-O22の示差走査熱量スペクトルである。
【
図14】
図14は、実施例7のエネルギー化合物DAP-O24の示差走査熱量スペクトルである。
【
図15】
図15は、実施例8のエネルギー化合物PAP-1の粉末X線回折スペクトルである。
【
図16】
図16は、実施例8のエネルギー化合物PAP-1の熱重量分析スペクトルである。
【
図17】
図17は、実施例8のエネルギー化合物PAP-1の示差走査熱量スペクトルである。
【
図18】
図18は、実施例9のエネルギー化合物PAP-4の示差走査熱量スペクトルである。
【
図19】
図19は、実施例10のエネルギー化合物DAN-2の粉末X線回折スペクトルである。
【
図20】
図20は、実施例10のエネルギー化合物DAN-2の赤外線スペクトルである。
【
図21】
図21は、実施例10のエネルギー化合物DAN-2の熱重量分析スペクトルである。
【
図22】
図22は、実施例10のエネルギー化合物DAN-2の示差走査熱量スペクトルである。
【
図23】
図23は、実施例11のエネルギー化合物DAN-4の粉末X線回折スペクトルである。
【
図24】
図24は、実施例11のエネルギー化合物DAN-4の熱重量分析スペクトルである。
【
図25】
図25は、実施例11のエネルギー化合物DAN-4の示差走査熱量スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明者は、エネルギー基を有する一連のペロブスカイト型化合物を設計し、それらを新規な高性能爆発物としてエネルギー分野に応用される将来性に対して関連する実験研究を始めて行った。本発明において、エネルギー基を含むペロブスカイト型エネルギー化合物(ABX3;以下の実施例において「DAP」と略称され、それぞれ番号を付けられる)を提案する。実験及び計算により明らかになるように、このようなエネルギー化合物は、そのエネルギー密度及び爆発性が従来の高性能軍用爆薬RDX、HMXと同等であり、安全性がそれ以上であり、揮発性を有せず、吸湿することがなく、原料が低価で入手しやすく、合成プロセスが簡単で、エネルギー分野で実用的価値を有する新規なエネルギー化合物である。
【0080】
ABX3の合成は本発明の合成方法により行うことができる。Z.M.Jinらによって開示されているペロブスカイト化合物(C6H14N2)[K(ClO4)3]の合成方法により行ってもよい(Z.M.Jin,Y.J.Pan,X.F.Li,M.L.Hu,L.Shen,Journal of Molecular Structure,2003,660,67)。
【0081】
ABX3のXは少なくとも1種の陰イオンエネルギー基である。エネルギー基とは爆発性を有する基をいう。一般的な爆発性基にはClO3
-、ClO4
-、IO4
-、NO3
-、ONC-、アゾ基、アジドイオン、ニトロ基等の基が含まれるが、これらに限られない。
【0082】
ABX3において、例えばXは、1種又は2種以上のイオンを含んでもよい。例えば、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種…のXイオンが混在することができる。A、Bも同様である。ペロブスカイトに2種以上のA陽イオンを含む場合に、異なるA陽イオンは、Aサイトに規則的又はランダムに分布することができる。ペロブスカイトに2種以上のB陽イオンを含む場合に、異なるB陽イオンは、Bサイトに規則的又はランダムに分布することができる。ペロブスカイトに2種以上のX陰イオンを含む場合に、異なるX陰イオンは、Xサイトに規則的又はランダムに分布することができる。
【0083】
このように、本明細書に記載の「Xは少なくとも1種の…基/イオン」、「Aは少なくとも1種の…基/イオン」、「Bは少なくとも1種の…基/イオン」、「Xは…から選択される」、「Aは…から選択される」、「Bは…から選択される」等の表現は、例えばXの場合、ABX3の三次元骨格において、多くのXサイトがあり、各Xサイトが1種のイオンからなり、三次元骨格においてこれらのXサイトが同じイオンからなってもよいが、異なる多種のイオンからなってもよく、異なるイオンからなるときに、少なくともいつかのサイト(又は大部分のサイド)が…基/イオンであると理解されるべきである。この場合に、ABX3の三次元骨格には上記…基/イオン又は他の不純物イオンではない少数のサイトが存在してもよく、これらのサイトの数が全体の性能に大きい影響を与えなければよい。上記少数のサイトは、例えばモル数が50%以下であり、例えば40%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%以下である。A、Bも同様である。
【0084】
本発明において、粉末X線回折同定、単結晶構造特徴付け試験、赤外分光特徴付け、熱安定性特徴付け、示差走査熱量分析(DSC)、感度特徴付け、爆発熱/爆圧/爆速値計算を含む多種の同定及び特徴付け方法を行う。
【0085】
室温条件下の粉末X線回折データは、Bruker D8 Advance回折計で収集される(Cu-Kα線;θ:2θ連動、ステップ走査、2θインクリメント:0.02°)。単結晶X線回折データは、 Oxford Gemini S Ultra CCD回折計で収集される(グラファイトモノクロメーター;Mo-Kα線、ω走査方式;吸収補正:SADABSプログラム)。直接法により解析し、さらに、フーリエ変換差分法及び最小二乗法により全ての非水素原子の座標を求め、最後に最小二乗法により構造を補正する。化合物の有機水素原子は、理論水素化法により得られる。計算は、PCでOlex2及びSHELXプログラムパッケージにより完成する。赤外線スペクトルデータは、IR Tensor27装置で収集され、具体的には、乾燥試料とKBrを透明シートにプレスして試料を測定する。熱重量分析データは、TA Q50装置で収集される(窒素ガス雰囲気、走査速度:5℃/min)。DSC曲線はTA DSC Q2000装置で収集される(窒素ガス雰囲気、走査速度:5℃/min)。
【0086】
感度特徴付けは、中国国家軍事基準GJB772A-97に準じて衝撃、摩擦、熱感度試験を行う。衝撃感度は、601.1爆発確率法により測定する。摩擦感は、602.1爆発確率法により測定する。熱感度試験の方法は、606.1爆発温度5秒遅延法である。静電気感度試験の方法はWJ/T 9038.3-2004工業火工薬剤試験方法第3部分:静電気スパーク感度試験による。
【0087】
室温下、過塩素酸根の赤外線吸収スペクトルにおける特徴的なピークは1070~1100cm-1(非対称伸縮振動)及び617~637cm-1(非対称曲げ振動)にある。硝酸根の赤外線吸収スペクトルにおける特徴的なピークは1375~1390cm-1(非対称伸縮振動)及び845~860cm-1(非対称曲げ振動)にある。
【0088】
好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C6H14N2)[Na(ClO4)3](「DAP-1」と記する)であり、223Kで立方晶系のPa-3空間群に結晶化し、単位格子の長さが14.1537(1)Aであり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約12.3±0.5°、21.5±0.5°、24.9±0.5°、27.9±0.5°、35.6±0.5°、37.2±0.5°に発生する。熱安定性分析結果は、その爆発温度が360℃と高いことを示す。示差走査熱量分析結果は、360℃で分解して放出した熱量が4398J/gに達することを示す。安全性特徴付け結果は、国家軍事基準に準じる場合に、DAP-1が衝撃感度、摩擦感度及び静電気スパーク感度試験においていずれも低感度であり、ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の基準に準じる場合に、DAP-1の衝撃感度が約17Jであり、摩擦感度が約36Nであることを示す。DAP-1の爆発温度は340℃(5s遅延期間法)と高い。密度汎関数DFT理論により得られたエネルギー化合物の爆発熱、爆速及び爆圧値は、それぞれ1.53kcal/g、8.85km/s及び37.31GPaである。
【0089】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C6H14N2)[K(ClO4)3] (「DAP-2」と記する)であり、223Kで立方晶系のPa-3空間群に結晶化し、単位格子の長さが14.2910(1)Aであり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約12.15±0.5°、21.27±0.5°、24.63±0.5°、27.64±0.5°、35.20±0.5°、36.89±0.5°に発生する。熱安定性分析結果は、その爆発温度が362℃と高いことを示す。示差走査熱量分析結果は、377℃で分解して放出した熱量が4076J/gに達することを示す。安全性特徴付けは、ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の基準に準じる場合に、DAP-2の衝撃感度が約16Jであり、摩擦感度が約42Nであることを示す。密度汎関数DFT理論により得られたエネルギー化合物の爆発熱、爆速及び爆圧値は、それぞれ1.46kcal/g、8.64km/s 及び35.73GPaである。
【0090】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C6H14N2)[Rb(ClO4)3](「DAP-3」と記する)であり、223Kで立方晶系のPa-3空間群に結晶化し、単位格子の長さが14.453(2)Aであり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約12.0±0.5°、21.0±0.5°、24.3±0.5°、27.3±0.5°、34.7±0.5°、36.4±0.5°に発生する。熱安定性分析結果は、その爆発温度が343℃と高いことを示す。示差走査熱量分析結果は、369℃で分解して放出した熱量が3797J/gに達することを示す。安全性特徴付け結果は、ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の基準に準じる場合に、DAP-3の衝撃感度が約22Jであり、摩擦感度が約28Nであることを示す。密度汎関数DFT理論により得られたエネルギー化合物の爆発熱、爆速及び爆圧値は、それぞれ1.33kcal/g、8.43km/s及び35.14GPaである。
【0091】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C6H14N2)[NH4(ClO4)3](「DAP-4」と記する)であり、223Kで立方晶系のPa-3空間群に結晶化し、単位格子の長さが14.4264 Aであり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約12.0±0.5°、21.0±0.5°、24.4±0.5°、27.3±0.5°、34.8±0.5°、36.5±0.5°に発生する。熱安定性分析結果は、爆発温度が370℃と高いことを示す。示差走査熱量分析結果は、364℃で分解して放出した熱量が5177J/gに達することを示す。安全性特徴付け結果は、ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の基準に準じる場合に、DAP-4の衝撃感度が約23Jであり、摩擦感度が約36Nであることを示す。
【0092】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C6H14N2O2)[K(ClO4)3](「DAP-O22」と記する)であり、298Kで立方晶系のFm-3c空間群に結晶化し、単位格子の長さが14.745(3)Aであり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約11.9±0.5°、20.8±0.5°,24.1±0.5°、27.0±0.5°、34.4±0.5°、36.1±0.5°に発生する。熱安定性分析結果は、爆発温度が354℃と高いことを示す。示差走査熱量分析結果は、358℃で分解して放出した熱量が5424J/gに達することを示す。安全性特徴付け結果は、ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の基準に準じる場合に、DAP-1の衝撃感度が約11Jであり、摩擦感度が約14Nであることを示す。
【0093】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C6H14N2O)[K(ClO4)3](「DAP-O12」と記する)であり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約12.1±0.5°、21.1±0.5°、24.4±0.5°、27.3±0.5°、34.8±0.5°、36.5±0.5°に発生する。
【0094】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C6H14N2O2)[NH4(ClO4)3](「DAP-O24」と記する)であり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約11.9±0.5°、20.8±0.5°、24.0±0.5°、27.0±0.5°、34.4±0.5°、36.0±0.5°に発生する。示差走査熱量分析結果は357℃で分解して放出して熱量が4632J/gと高い。安全性特徴付け結果は、ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の基準に準じる場合に、DAP-1の衝撃感度が約4Jであり、摩擦感度が約32Nであることを示す。
【0095】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C4H12N2)[Na(ClO4)3](「PAP-1」と記する)であり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約12.6±0.5°、21.7±0.5°、22.4±0.5°、22.7±0.5°、25.4±0.5°、26.8±0.5°、27.2±0.5°、37.7±0.5°、38.4±0.5°に発生する。示差走査熱量分析結果は、375℃で分解して放出した熱量が4685J/gに達することを示す。
【0096】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C4H12N2)[NH4(ClO4)3](「PAP-4」と記する)である。示差走査熱量分析結果は、356℃で分解して放出した熱量が3780J/gに達することを示す。
【0097】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C6H14N2)[K(NO3)3](「DAN-2」に記する)であり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約12.6±0.5°、17.9±0.5°、22.0±0.5°、25.5±0.5°、28.6±0.5°、31.3±0.5°、36.4±0.5°、38.7±0.5°、40.9±0.5°、43.0±0.5°に発生する。示差走査熱量分析結果は、177℃で分解して放出した熱量が1222J/gに達することを示す。安全性特徴付け結果は、ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の基準に準じる場合に、DAN-2の衝撃感度が約29Jであり、摩擦感度が360Nより大きいことを示す。
【0098】
別の好ましい実施例において、エネルギー材料として用いられる化合物は、(C6H14N2)[NH4(NO3)3](「DAN-4」と記する)であり、室温での粉末X線回折(Cu-Kα線)は回折角2θ約10.3±0.5°、17.7±0.5°、20.4±0.5°、23.9±0.5°、24.8±0.5°、27.0±0.5°、29.7±0.5°、30.5±0.5°、32.2±0.5°、37.0±0.5°に発生する。示差走査熱量分析結果は、170℃で分解して放出した熱量が1098J/gに達することを示す。
【0099】
実施例1
(C6H14N2)[Na(ClO4)3]の合成及び試験
合成方法:
1)112.88gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを100mL水に加え、さらに質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液360.00gを加え、常温で5分間撹拌した。
2)140.52gの過塩素酸ナトリウム一水和物を50mL水に加え、常温で撹拌して溶解させた。
3)ステップ1)及びステップ2)の溶液を混合し、30分間撹拌し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させることにより、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C6H14N2)[Na(ClO4)3](番号:DAP-1)であり、収量が約80%であった。
【0100】
粉末X線回折同定スペクトル
室温での粉末X線回折スペクトルを
図2に示し、その特徴的なピーク値を表1に示す。
【0101】
【0102】
単結晶構造の特徴付け試験:
詳細な結晶測定データを表2に示す。三次元結晶構造の模式図を
図1に示す。
図1に示すように、BサイトにあるNa
+イオンが6つの隣接するXサイトにあるClO
4
-陰イオンに結合し、各ClO
4
-陰イオンが隣接する2つのNa
+イオンに結合することにより、立方体の籠状単位からなる三次元陰イオン骨格を形成する。Aサイトにある有機陽イオンである1,4-ジヒドロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンアンモニウムイオン(C
6H
14N
2
2+)は各立方体の籠状単位の空洞に充填している。
【0103】
表2 DAP-1の単結晶構造の測定データ
[a]R
1=Σ||F
o|-|F
c||/Σ|F
o|,
[b]wR
2={Σw[(F
o)
2-(F
c)
2]
2/Σw[(F
o)
2]
2}
1/2
【0104】
DAP-1の赤外線スペクトルの特徴付け:
DAP-1の赤外線スペクトルを
図3に示す。
図3に示すように、有機成分の有する特徴的なピークは、-CH
2-基の伸縮振動ピーク3452、3188、3055、3013、2924、2795、2706cm
-1であり、NH
+の伸縮振動ピークは2606cm
-1であり、過塩素酸根の有する特徴的なピークは、その非対称伸縮振動ピーク1078cm
-1及び非対称曲げ振動ピーク627cm
-1である。
【0105】
DAP-1の熱安定性の特徴付け:
DAP-1の熱重量曲線を
図4に示す。
図4に示すように、試料量が3.291mg、升温速度が5℃/minである場合に、実施例1のエネルギー化合物DAP-1は360℃で爆発した。
【0106】
DAP-1の示差走査熱量分析:
DAP-1のDSC曲線を
図5に示す。
図5に示すように、実施例1の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物DAP-1は360℃で分解して大量の熱(約4398J/g)を放出した。
【0107】
DAP-1の衝撃、摩擦、熱感度、静電気感度の特徴付け:
GJB772A-97基準に準じて衝撃、摩擦、熱感度を測定する。衝撃感度については、601.1爆発確率によりハンマー重量10kg、高さ500mmで測定した結果、TNTの爆発確率は9/25であり、DAP-1の爆発確率は0%であった。摩擦感度については、602.1爆発確率法により2.45MPa、80°スイング角度で測定した結果、ペンスリット(PETN)の爆発確率は2/25であり、DAP-1の爆発確率は0%であった。熱感度については、606.1-爆発温度5秒遅延期間法により測定した結果、DAP-1は340℃で激烈な爆発が発生し、DAP-1の爆発温度が340℃であることを示している。静電気感度については、WJ/T 9038.3-2004工業火工薬剤試験方法第3部分:静電気スパーク感度試験により測定した結果、25mg試料の半発火電圧V50は 4.77kV(標準偏差0.21kV)、半発火エネルギーE50が0.53Jであり、即ち、DAP-1の静電気スパーク感度は21.2Jであった。
【0108】
ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の試験方法により測定したDAP-1の衝撃感度は約17Jであり、摩擦感度は約36Nであった。
【0109】
密度汎関数(DFT)理論により得られたエネルギー化合物DAP-1の爆発熱、爆圧、爆速値:
密度汎関数(DFT)理論(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422)により算出したDAP-1の分解熱値(分解エンタルピー値ΔHdet)は、約1.53kcal/gであり、従来のエネルギー材料HMX(1.26kcal/g)、RDX(1.27kcal/g)よりも高い。223Kでの結晶密度で換算したエネルギー密度は3.11kcal/cm3であり、従来のエネルギー材料HMX(2.38kcal/cm3)、RDX(2.29kcal/cm3)よりも高い。Kamlet-Jacob算式で算出したDAP系化合物の爆速は約8.85km/sであり、爆圧は約37.31GPaであった。従来のエネルギー材料に対応する値(HMX:爆速9.10km/s、爆圧39.50GPa;RDX:爆速8.80km/s、爆圧33.80GPa)に相当する。
【0110】
単位モルあたりのDAP-1のガス発生量
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141)に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス、ハロゲン化水素、水及び二酸化炭素等の気体物質;並びに金属の塩化物塩及び単体の炭素(全ての炭素原子を二酸化炭素に完全に変換するために十分な酸素原子がない場合)等の固体物質であった。従って、1モルのDAP-1は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、12モルの気体物質を生成し、3モルの単体の炭素及び1モルの塩化ナトリウム固体が残った。十分な酸化剤(例えば、NH4ClO4)が存在する場合に、1モルのDAP-1が完全に爆発した後に1モルの塩化ナトリウムの固体残留物が存在した。
【0111】
実施例2
(C6H14N2)[K(ClO4)3]の合成及び試験
合成方法:
1)将2.24gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを100mL水に加え、さらに質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液5.74gを加え、常温で5分間撹拌した。
2)2.77gの過塩素酸カリウムを100mL水に加え、加熱しながら撹拌して溶解させた。
3)ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、30分間撹拌し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させることで、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C6H14N2)[K(ClO4)3](番号:DAP-2)であり、収量は約90%であった。
【0112】
粉末X線回折同定スペクトル:
室温での粉末X線回折スペクトルを
図2に示し、その特徴的なピーク値を表3に示す。
【0113】
【0114】
単結晶構造特徴付け試験:
詳細な結晶測定データを表4に示す。
【0115】
表4 DAP-2の単結晶構造の測定データ
[a]R
1=Σ||F
o|-|F
c||/Σ|F
o|,
[b]wR
2={Σw[(F
o)
2-(F
c)
2]
2/Σw[(F
o)
2]
2}
1/2
【0116】
DAP-2の熱安定性の特徴付け:
DAP-2の熱重量曲線を
図6に示す。
図6に示すように、試料量が6.65mg、升温速度が5℃/minである場合に、実施例2のエネルギー化合物DAP-2は362℃で爆発した。
【0117】
DAP-2の示差走査熱量分析:
DAP-2のDSC曲線を
図7に示す。
図7に示すように、実施例2の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物DAP-2は377℃で分解して大量の熱(約4076J/g)を放出した。
【0118】
DAP-2の衝撃、摩擦感度の特徴付け:
ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の試験方法により測定したDAP-2の衝撃感度は約16Jであり、摩擦感度は約42Nであった。
【0119】
密度汎関数(DFT)理論により得られたエネルギー化合物DAP-2の爆発熱、爆圧、爆速値:
密度汎関数(DFT)理論(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422)により算出したDAP-2の分解熱値(分解エンタルピー値ΔHdet)は、約1.46kcal/gであり、従来のエネルギー材料HMX(1.26kcal/g)、RDX(1.27kcal/g)よりも高い。 223Kでの結晶密度で換算したエネルギー密度は3.01kcal/cm3であり、従来のエネルギー材料HMX(2.38kcal/cm3)、RDX(2.29kcal/cm3)よりも高い。Kamlet-Jacob算式で算出したDAP系化合物の爆速は約8.64km/sであり、爆圧は約35.73GPaであった。
【0120】
単位モルあたりのDAP-2のガス発生量
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141) に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス、ハロゲン化水素、水及び二酸化炭素等の気体物質;並びに金属の塩化物塩及び単体の炭素(全ての炭素原子を二酸化炭素に完全に変換するために十分な酸素原子がない場合)等の固体物質であった。従って、1モルのDAP-2は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、12モルの気体物質を生成し、3モルの単体の炭素及び1モルの塩化カリウム固体が残った。十分な酸化剤(例えば、NH4ClO4)が存在する場合に、1モルのDAP-2が完全に爆発した後に1モルの塩化カリウムの固体残留物が存在した。
【0121】
実施例3
(C6H14N2)[Rb(ClO4)3]の合成及び試験
合成方法:
1)2.24gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを100mL水に加え、さらに質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液5.74gを加え、常温で5分間撹拌した。
2)3.70gの過塩素酸ルビジウムを100mL水に加え、加熱しながら撹拌して溶解させた。
3)ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、30分間撹拌し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させ、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C6H14N2)[Rb(ClO4)3](番号:DAP-3)であり、収量は約85%であった。
【0122】
粉末X線回折同定スペクトル:
室温での粉末X線回折スペクトルを
図2に示し、その特徴的なピーク値を表5に示す。
【0123】
【0124】
単結晶構造の特徴付け試験:
詳細な結晶測定データを表6に示す。
【0125】
表6 DAP-3の単結晶構造の測定データ
[a]R
1=Σ||F
o|-|F
c||/Σ|F
o|,
[b]wR
2={Σw[(F
o)
2-(F
c)
2]
2/Σw[(F
o)
2]
2}
1/2
【0126】
DAP-3の熱安定性の特徴付け:
DAP-3の熱重量曲線を
図8に示す。
図8に示すように、試料量が4.45mg、升温速度が5℃/minである場合に、実施例3のエネルギー化合物DAP-3は343℃で爆発した。
【0127】
DAP-3の示差走査熱量分析:
DAP-3のDSC曲線を
図9に示す。
図9に示すように、実施例3の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物DAP-3は369℃で分解して大量の熱(約3797J/g)を放出した。
【0128】
DAP-3の衝撃、摩擦感度の特徴付け:
ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM)の試験方法により測定したDAP-3の衝撃感度は約22Jであり、摩擦感度は約28Nであった。
【0129】
密度汎関数(DFT)理論により得られたエネルギー化合物DAP-3の爆発熱、爆圧、爆速値:
密度汎関数(DFT)理論(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422)により算出したDAP-3の分解熱値(分解エンタルピー値ΔHdet)は、約1.33kcal/gであり、従来のエネルギー材料HMX(1.26kcal/g)、RDX(1.27kcal/g)よりも高い。223Kでの結晶密度で換算したエネルギー密度は2.92kcal/cm3であり、従来のエネルギー材料HMX(2.38kcal/cm3)、RDX(2.29kcal/cm3)よりも高い。Kamlet-Jacob算式で算出したDAP系化合物の爆速は約8.43km/sであり、爆圧は約35.14GPaであった。
【0130】
単位モルあたりのDAP-3ガス発生量
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141) に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス、ハロゲン化水素、水及び二酸化炭素等の気体物質;並びに金属の塩化物塩及び単体の炭素(全ての炭素原子を二酸化炭素に完全に変換するために十分な酸素原子がない場合)等の固体物質であった。従って、1モルのDAP-3は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、12モルの気体物質を生成し、3モルの単体の炭素及び1モルの塩化ルビジウム固体が残った。十分な酸化剤(例えば、NH4ClO4)が存在する場合に、1モルのDAP-3が完全に爆発した後に1モルの塩化ルビジウムの固体残留物が存在した。
【0131】
実施例4:
(C6H14N2)[NH4(ClO4)3]の合成及び試験
合成方法:
1)2.24gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを5mL水に加え、さらに質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液5.74gを加え、常温で5分間撹拌した。
2)2.35gの過塩素酸アンモニウムを10mL水に加え、常温で撹拌して溶解させた。
3)ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、10分間撹拌し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させ、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C6H14N2)[NH4(ClO4)3](DAP-4)であり、収量は約90%であった。
【0132】
粉末X線回折同定スペクトル:
室温での粉末X線回折スペクトルを
図2に示し、その特徴的なピーク値を表7に示す。
【0133】
【0134】
単結晶構造の特徴付け試験:
詳細な結晶測定データを表8に示す。
【0135】
表8 DAP-4の結晶測定データ
[a]R
1=Σ||F
o|-|F
c||/Σ|F
o|,
[b]wR
2={Σw[(F
o)
2-(F
c)
2]
2/Σw[(F
o)
2]
2}
1/2
【0136】
DAP-4の熱安定性の特徴付け:
DAP-4の熱重量曲線を
図10に示す。
図10に示すように、試料量が4.825mg、升温速度が5℃/minである場合に、実施例4のエネルギー化合物DAP-4は在370℃で爆発した。
【0137】
DAP-4の示差走査熱量分析:
DAP-4のDSC曲線を
図11に示す。
図11に示すように、実施例4の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物DAP-4は364℃で分解して大量の熱(約5177J/g)を放出した。
【0138】
DAP-4の衝撃、摩擦感度の特徴付け:
ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM) の試験方法により測定したDAP-4の衝撃感度は約23Jであり、摩擦感度は約36Nであった。
【0139】
単位モルあたりのDAP-4のガス発生量
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141) に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス、ハロゲン化水素、水及び二酸化炭素等の気体物質;並びに単体の炭素(全ての炭素原子を二酸化炭素に完全に変換するために十分な酸素原子がない場合)等の固体物質であった。従って、1モルのDAP-4は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、14.25モルの気体物質を生成し、3.75モルの単体の炭素が存在した。十分な酸化剤(例えば、NH4ClO4)が存在する場合に、DAP-4が完全に爆発した後に固体残留物がなかった。
【0140】
実施例5
(C6H14N2O2)[K(ClO4)3]の合成及び試験
合成方法:
1)1.01gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンをビーカーに入れ、質量百分率30%の過酸化水素水6.0gを徐々に加え、十分に反応させ、1,4-二酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの水溶液を得、さらに質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液2.64gを加え、20分間撹拌した。
2)0.42gの過塩素酸カリウムを20mL水に加え、沸騰するまで加熱し、撹拌して溶解させた。
3)ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、10分間撹拌し、静置して徐々に結晶が生成し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させることで、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C6H14N2O2)[K(ClO4)3](DAP-O22)であり、収量は約55%であった。
【0141】
粉末X線回折同定スペクトル:
室温での粉末X線回折スペクトルを
図2に示し、その特徴的なピーク値を表9に示す。
【0142】
表9 DAP-O22の粉末X線回折の特徴的なピーク値
【0143】
単結晶構造の特徴付け試験:
詳細な結晶測定データを表10に示す。
【0144】
表10 DAP-O22の結晶測定データ
[a]R
1=Σ||F
o|-|F
c||/Σ|F
o|,
[b]wR
2={Σw[(F
o)
2-(F
c)
2]
2/Σw[(F
o)
2]
2}
1/2
【0145】
DAP-O22の熱安定性の特徴付け:
DAP-O22の熱重量曲線を
図12に示す。
図12に示すように、試料量が4.175mg、升温速度が5℃/minである場合に、実施例5のエネルギー化合物DAP-O22の分解温度は354℃であった。
【0146】
DAP-O22の示差走査熱量分析:
DAP-O22のDSC曲線を
図13に示す。
図13に示すように、実施例5の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物DAP-O22は358℃で分解して大量の熱(約5424J/g)を放出した。
【0147】
DAP-O22の衝撃、摩擦感度の特徴付け:
根据ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM) の試験方法により測定したDAP-O22の衝撃感度は約11Jであり、摩擦感度は約14Nであった。
【0148】
単位モルあたりのDAP-O22のガス発生量
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141) に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス、ハロゲン化水素、水及び二酸化炭素等の気体物質;並びに金属の塩化物塩及び単体の炭素(全ての炭素原子を二酸化炭素に完全に変換するために十分な酸素原子がない場合)等の固体物質であった。従って、1モルのDAP-O22は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、13モルの気体物質を生成し、2モルの単体の炭素及び1モルの塩化カリウム固体が残った。十分な酸化剤(例えば、NH4ClO4)が存在する場合に、1モルのDAP-O22が完全に爆発した後に1モルの塩化カリウムの固体残留物が存在した。
【0149】
実施例6:
(C6H14N2O)[K(ClO4)3]の合成及び試験
合成方法:
1) 1.01gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンをビーカーに置き、氷浴に保持しながら質量百分率が30%の過酸化水素水2.0gを徐々に加え、1-酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの水溶液を得、さらに質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液2.64gを加え、20分間撹拌した。
2)0.42gの過塩素酸カリウムを20mL水に加え、沸騰するまで加熱し、撹拌して溶解させた。
3)ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、10分間撹拌し、静置して徐々に結晶が生成し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させ、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C6H14N2O)[K(ClO4)3](DAP-O12)であり、収量は約30%であった。
【0150】
粉末X線回折同定スペクトル:
室温での粉末X線回折スペクトルを
図2に示し、その特徴的なピーク値を表11に示す。
【0151】
表11 DAP-O12の粉末X線回折の特徴的なピーク値
【0152】
単位モルあたりのDAP-O12ガス発生量
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141) に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス、ハロゲン化水素、水及び二酸化炭素等の気体物質;並びに金属の塩化物塩及び単体の炭素(全ての炭素原子を二酸化炭素に完全に変換するために十分な酸素原子がない場合)等の固体物質であった。従って、1モルのDAP-O12は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、12.5モルの気体物質を生成し、2.5モルの単体の炭素及び1モルの塩化カリウム固体が残った。十分な酸化剤(例えば、NH4ClO4)が存在する場合に、1モルのDAP-O12が完全に爆発した後に1モルの塩化カリウムの固体残留物が存在した。
【0153】
実施例7:
(C6H14N2O2)[NH4(ClO4)3]の合成及び試験
合成方法:
1)0.34gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンをビーカーに入れ、常温で質量百分率が30%の過酸化水素水0.69gを徐々に加え、1,4-二酸化-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの水溶液を得、さらに質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液0.86gを加え、20分間撹拌した。
2)0.41gの過塩素酸アンモニウムを20mL水に加え、撹拌して溶解させた。
3)ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、10分間撹拌し、静置して徐々に結晶が生成し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させることで、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C6H14N2O2)[NH4(ClO4)3](DAP-O24)であり、収量は約30%であった。
【0154】
粉末X線回折同定スペクトル:
室温での粉末X線回折スペクトルを
図2に示し、その特徴的なピーク値を表12に示す。
【0155】
表12 DAP-O24の粉末X線回折特徴的なピーク値
【0156】
DAP-O24の示差走査熱量分析:
DAP-O24のDSC曲線を
図14に示す。
図14に示すように、実施例7の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物DAP-O24は357℃で分解して大量の熱(約4632J/g)を放出した。
【0157】
DAP-O24の衝撃、摩擦感度の特徴付け:
根据ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM) の試験方法により測定したDAP-O24の衝撃感度は約4Jであり、摩擦感度は約32Nであった。
【0158】
単位モルあたりのDAP-O24のガス発生量
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141) に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス、ハロゲン化水素、水及び二酸化炭素等の気体物質;並びに単体の炭素(全ての炭素原子を二酸化炭素に完全に変換するために十分な酸素原子がない場合)の固体物質であった。従って、1モルのDAP-O24は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、15.25モルの気体物質を生成し、2.75モルの単体の炭素が残った。十分な酸化剤(例えば、NH4ClO4) が存在する場合に、DAP-O24が完全に爆発した後に固体残留物がなかった。
【0159】
実施例8
(C4H12N2)[Na(ClO4)3]の合成及び試験
合成方法:
1)0.87gのピペラジンを6mL水に加え、さらに質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液1.7mLを加え、常温で5分間撹拌した。
2)1.24gの過塩素酸ナトリウムを7mL水に加え、常温で撹拌して溶解させた。
3) ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、加熱して濃縮させ、30分間撹拌し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させることで、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C4H12N2)[Na(ClO4)3](番号:PAP-1)であり、収量は約50%であった。
【0160】
粉末X線回折同定スペクトル:
室温での粉末X線回折スペクトルを
図15に示し、その特徴的なピーク値を表13に示す。
表13 PAP-1の粉末X線回折の特徴的なピーク値
【0161】
【0162】
単結晶構造の特徴付け試験:
詳細な結晶測定データを表14に示す。
【0163】
表14 PAP-1の結晶測定データ
[a]R
1=Σ||F
o|-|F
c||/Σ|F
o|,
[b]wR
2={Σw[(F
o)
2-(F
c)
2]
2/Σw[(F
o)
2]
2}
1/2
【0164】
PAP-1の熱安定性の特徴付け:
PAP-1の熱重量曲線を
図16に示す。
図16に示すように、試料量が2.23mg、升温速度が5℃/minである場合に、実施例8のエネルギー化合物PAP-1は367℃で爆発した。
【0165】
PAP-1の示差走査熱量分析:
PAP-1のDSC曲線を
図17に示す。
図17に示すように、実施例8の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物PAP-1は375℃で分解して大量の熱(約4685J/g)を放出した。
【0166】
単位モルあたりのPAP-1のガス発生量
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141) に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス、ハロゲン化水素、水及び二酸化炭素等の気体物質;並びに金属の塩化物塩及び単体の炭素(全ての炭素原子を二酸化炭素に完全に変換するために十分な酸素原子がない場合)等の固体物質であった。従って、1モルのPAP-1は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、11.5モルの気体物質を生成し、0.5モルの単体の炭素及び1モル塩化ナトリウム固体が残った。十分な酸化剤(例えば、NH4ClO4)が存在する場合に、1モルのPAP-1が完全に爆発した後に1モル塩化ナトリウムの固体残留物が残った。
【0167】
実施例9
(C4H12N2)[NH4(ClO4)3]の合成及び試験
合成方法:
1)0.8mLのアンモニア水を質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液0.9mLに加え、常温で5分間撹拌、さらに質量百分率が70%~72%の過塩素酸溶液1.6mLを加えた。
2)0.87gのピペラジンに適量な水を加え、常温で撹拌して溶解させた。
3) ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、加熱して濃縮させ、30分間撹拌し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させ、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C4H12N2)[NH4(ClO4)3](番号:PAP-4)であり、収量は約40%であった。
【0168】
PAP-4の示差走査熱量分析:
PAP-4のDSC曲線を
図18に示す。
図18に示すように、実施例9の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物PAP-4は356℃で分解して約3780J/gの熱量を放出した。
【0169】
単位モルあたりのPAP-4のガス発生量
【0170】
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141) に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス、ハロゲン化水素、水及び二酸化炭素等の気体物質;並びに金属の塩化物塩及び単体の炭素(全ての炭素原子を二酸化炭素に完全に変換するために十分な酸素原子がない場合)等の固体物質であった。従って、1モルのPAP-4は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、13.75モルの気体物質を生成し、1.25モル単体の炭素が残った。十分な酸化剤(例えば、NH4ClO4)が存在する場合に、1モルのPAP-4が完全に爆発した後に固体残留物がなかった。
【0171】
実施例10
(C6H14N2)[K(NO3)3]の合成及び試験
合成方法:
1)1.12gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを適量な水に加え、さらに質量百分率が65%の硝酸溶液1.4mLを加え、常温で5分間撹拌した。
2)1.01gの硝酸カリウムを適量な水に加え、常温で撹拌して溶解させた。
3)ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、撹拌した後、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させることで、白色粉末状の固体を得た。同定したところ、ペロブスカイト型化合物(C6H14N2)[K(NO3)3](番号:DAN-2)であり、収量は約50%であった。
【0172】
粉末X線回折同定スペクトル:
室温での粉末X線回折スペクトルを
図19に示し、その特徴的なピーク値を表15に示す。
【0173】
表15 DAN-2の粉末X線回折の特徴的なピーク値
【0174】
単結晶構造の特徴付け試験:
詳細な結晶測定データを表16に示す。
【0175】
表16 DAN-2の単結晶構造の測定データ
[a]R
1=Σ||F
o|-|F
c||/Σ|F
o|,
[b]wR
2={Σw[(F
o)
2-(F
c)
2]
2/Σw[(F
o)
2]
2}
1/2
【0176】
DAN-2の赤外線スペクトルの特徴付け:
DAN-2の赤外線スペクトルを
図20に示す。
図20に示すように、硝酸根の有する特徴的なピークはその非対称伸縮振動ピーク1385cm
-1及び非対称曲げ振動852cm
-1ピークであった。
【0177】
DAN-2の熱安定性の特徴付け:
DAN-2の熱重量曲線を
図21に示す。
図21に示すように、試料量が3.33mg、升温速度が5℃/minである場合に、実施例10のエネルギー化合物DAN-2が分解し始める温度は177℃であった。
【0178】
DAN-2の示差走査熱量分析:
DAN-2のDSC曲線を
図22に示す。
図22に示すように、実施例10の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物DAN-2は177℃から段階的に分解し始めた(放熱量:約1222J/g)。
【0179】
DAN-2の衝撃、摩擦感度の特徴付け:
【0180】
ドイツ連邦材料研究試験機関(BAM) により測定したDAN-2の衝撃感度は約29Jであり、摩擦感度は360Nよりも高かった。
【0181】
実施例11
(C6H14N2)[NH4(NO3)3]の合成及び試験
合成方法:
1)質量百分率が28%のアンモニア水0.78mLに質量百分率が65%の硝酸溶液2.0mLを加え、常温で撹拌して溶解させた。
2)1.14gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを適量な水に加え、常温で撹拌して溶解させた。
3)ステップ1)とステップ2)の溶液を混合し、撹拌し、濾過し、エタノールで濾過残渣を3回洗浄し、真空乾燥させることで白色粉末状の固体を得た。同定したところ六方晶ペロブスカイト型化合物(C6H14N2)[NH4(NO3)3](番号:DAN-4)であり、収量は約60%であった。
【0182】
粉末X線回折同定スペクトル:
室温での粉末X線回折スペクトルを
図23に示し、その特徴的なピーク値を表17に示す。
【0183】
表17 DAN-4の粉末X線回折の特徴的なピーク値
【0184】
単結晶構造の特徴付け試験:
詳細な結晶測定データを表18に示す。
【0185】
表18 DAN-4の単結晶構造の測定データ
[a]R
1=Σ||F
o|-|F
c||/Σ|F
o|,
[b]wR
2={Σw[(F
o)
2-(F
c)
2]
2/Σw[(F
o)
2]
2}
1/2
【0186】
DAN-4の熱安定性の特徴付け:
DAN-4の熱重量曲線を
図24に示す。
図24に示すように、試料量が6.42mg、升温速度が5℃/minである場合に、実施例11のエネルギー化合物DAN-4が分解し始める温度は167℃であった。
【0187】
DAN-4の示差走査熱量分析:
DAN-4のDSC曲線を
図25に示す。
図25に示すように、実施例11の非装填状態の粉末状のエネルギー化合物DAN-4は170℃に分解し始めた(放熱量:約1098J/g)。
【0188】
単位モルあたりのDAN-4のガス発生量
無酸素雰囲気でエネルギー材料が完全に爆発した生成物について、文献(J.Am.Chem.Soc.2012,134,1422;J.Phys.Chem.A.2014,118,4575;Chem.Eur.J.2016,22,1141) に従って判断した結果、最終の分解生成物は、窒素ガス及び水等の気体物質;並びに単体の炭素(酸素原子が優先して水素原子と結合して水を生成すると考え)等の固体物質であった。従って、1モルのDAN-4は、無酸素雰囲気で完全に爆発した後に、12モルの気体物質を生成し、6モルの単体の炭素が残った。十分な酸化剤(例えば、NH4NO3)が存在する場合に、1モルのDAN-4が完全に爆発した後に固体残留物がなかった。特に、DAN-4にはハロゲン元素が含まれないため、爆発した後ハロゲン化水素ガスを生成しないので、実際の使用において、特徴信号を低減させ、環境汚染を減少させることができる。
【0189】
本発明のペロブスカイト型エネルギー化合物は、爆発熱が高く、エネルギー密度が高く、爆速が高く、爆圧が高く、安全性が良好で、衝撃、摩擦及び静電気等に対する感度が極めて低く、揮発性がないため、長期間保存しても分解や吸湿することがなく、原料コストが低く入手しやすく、合成プロセスが簡単で、生成物がなく、大量に製造することができる。
【0190】
本発明のペロブスカイト型エネルギー化合物を爆薬のようなエネルギー材料として使用する効果は、従来技術から予測できないものである。過塩素酸根はエネルギー基であるが、現在ほとんどの過塩素酸根を含む化合物は、様々な欠陥により実用なエネルギー材料として使用できない(《High Energy Materials:Propellants,Explosives and Pyrotechnics》第28頁,Jai Prakash Agrawal編著,Wiley-VCH出版社,2010)。例えば、過塩素酸ナトリウム及び過塩素酸リチウム等の過塩素酸塩は、それ自体の吸湿性が極めて強く、また、過塩素酸カリウムが閃光弾酸化剤として使用されていたが、その衝撃感度が高すぎて輸送途中に爆発が発生しやすことが発見された。現在爆発物として考えられている過塩素酸アンモニウムの理論爆発熱は1972J/gであり、本発明のエネルギー化合物の爆発熱のレベルよりもはるかに低い。しかし、本発明のペロブスカイト型化合物は、このような爆発性基を有しながら良好な熱安定性及び吸湿しない利点を保持することができ、安全性が極めて高く、保存しやすいエネルギー材料となっている。また、大量のエネルギー基を含み、且つこれらの酸化性エネルギー陰イオンと還元性有機陽イオンが空間に交互に並んでいるため、結晶密度が大きく、瞬時エネルギーの爆発力が強く、エネルギー密度が高く、爆発熱、爆圧、爆速レベルのいずれも高いので、爆薬としての性能の優位性は従来技術に比べて飛躍的に向上した。
【0191】
上記実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態はこれらの実施例に制限されず、本発明の趣旨と原理の範囲内でのすべての変化、修飾、代替、組合せ、簡単化は、いずれも同等の置換であり、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。