(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】固体ドーパント材料のための挿入可能なターゲットホルダ
(51)【国際特許分類】
H01J 37/08 20060101AFI20220808BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H01J37/08
H01J37/305 Z
(21)【出願番号】P 2021514568
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 US2019045052
(87)【国際公開番号】W WO2020060681
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パテル, シュレイヤンシュ
(72)【発明者】
【氏名】ライト, グラハム
(72)【発明者】
【氏名】アルバラド, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー, クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ティーガー, ダニエル アール.
(72)【発明者】
【氏名】クラウス, ステファン
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-001764(JP,A)
【文献】特開2018-059134(JP,A)
【文献】特開平05-174762(JP,A)
【文献】特表2013-536561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27
H01J 37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端と第2の端を接続する複数の壁を備えるアークチャンバと、
前記アークチャンバの前記第1の端に配置された間接的に加熱されるカソードと、
ドーパント材料が前記アークチャンバ内で生成されるプラズマに曝露しないように前記ドーパント材料を保持するための
囲まれたポケットを有するターゲットホルダと
を備え、前記ターゲットホルダは、重力が前記ターゲットホルダ内に前記ドーパント材料を保持するように、前記アークチャンバ内に配向され、前記複数の壁のうちの1つを通って前記アークチャンバに進入し、
且つ前記ターゲットホルダは、前記
囲まれたポケットが前記アークチャンバの外側にある第1の位置と、
前記プラズマにより前記囲まれたポケット内の前記ドーパント材料を加熱するために、前記
囲まれたポケットの少なくとも一部が前記アークチャンバ内に配置される第2の位置とを有する、
間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項2】
前記ターゲットホルダを前記第1の位置から前記第2の位置まで移動させるために、前記ターゲットホルダと連絡するアクチュエータを更に備える、請求項1に記載の間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項3】
前記ターゲットホルダが、前記囲まれたポケットから前記ターゲットホルダの外部への導管を更に備
え、前記第2の位置では、前記導管は前記囲まれたポケットから前記アークチャンバの内部に通じている、請求項1に記載の間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項4】
前記ターゲットホルダが、多孔質材料で作ら
れ、気化または昇華した前記ドーパント材料は前記多孔質材料を介して前記アークチャンバ内に流れる、請求項
1に記載の間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項5】
前記ターゲットホルダは、前記囲まれたポケットへのアクセスを可能にするために、取り外し可能なシールを備える、請求項1に記載の間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項6】
前記ターゲットホルダは、加熱部品を備える、請求項1に記載の間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項7】
前記ターゲットホルダが、前記アークチャンバに対して電気的にバイアスされる、請求項1に記載の間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項8】
第1の端と第2の端を接続する複数の壁を備えるアークチャンバと、
前記アークチャンバの前記第1の端に配置された間接的に加熱されるカソードと、
上面、およびドーパント材料を保持するためのポケットを有するターゲットホルダと
を備え、前記ターゲットホルダは、前記第2の端に配置され、前記ポケットの少なくとも一部が前記アークチャンバ内に配置される第1の位置と、前記ポケットが前記アークチャンバの外側に配置される第2の位置とを有
し、
前記第2の位置では、前記ターゲットホルダの前記上面が、前記アークチャンバの前記第2の端として機能する、
間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項9】
前記ターゲットホルダを前記第1の位置から前記第2の位置まで移動させるために、前記ターゲットホルダと連絡するアクチュエータを更に備える、請求項
8に記載の間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項10】
前記ポケットは、底面と、複数の側壁と、開放された上部とを備える、請求項8に記載の間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項11】
前記囲まれたポケットが前記アークチャンバの外側に配置される第3の位置を更に備え、前記ターゲットホルダが前記第3の位置にある間に前記ドーパント材料が気化するように、前記ターゲットホルダは前記アークチャンバと熱的に連通している、請求項1に記載の間接的に加熱されるカソードイオン源。
【請求項12】
請求項2に記載の前記間接的に加熱されるカソードイオン源を使用して、異なるドーパントをイオン化する方法であって、
固体形態のドーパントを前記ターゲットホルダの前記
囲まれたポケット内に配置することと、
ガスを導入しイオン化して、プラズマを生成することと、
前記
囲まれたポケットが前記アークチャンバ内に配置されるように前記アクチュエータを作動させることと、
前記ドーパントを含むイオンを前記間接的に加熱されるカソードイオン源から抽出することと、
前記
囲まれたポケットが前記アークチャンバの外側に配置されるように前記アクチュエータを後退させることと、
前記アークチャンバ内に第2のドーパントを含む第2のガスを導入しイオン化することと、
前記第2のドーパントを含むイオンを前記間接的に加熱されるカソードイオン源から抽出することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月19日に出願された米国仮特許出願第62/733,353号に対する優先権を主張し、その開示は、その全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、イオン源に関し、より詳細には、固体ドーパント材料を保持するための挿入可能なターゲットホルダを有するイオン源に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体処理装置で使用されるイオンを生成するために、様々なタイプのイオン源が使用されうる。例えば、間接的に加熱されるカソード(IHC)イオン源は、カソードの背後に配置されたフィラメントに電流を供給することによって動作する。フィラメントは熱イオン電子を放出し、それらの電子がカソードに向かって加速してカソードを加熱し、次にカソードにイオン源のアークチャンバ内に電子を放出させる。カソードは、アークチャンバの一端に配置される。リペラは、カソードの反対側のアークチャンバの端に配置されうる。カソード及びリペラは、電子を反発させ、それらをアークチャンバの中心に向かって戻すようにバイアスされうる。いくつかの実施形態では、電子をアークチャンバ内に更に閉じ込めるために、磁場が使用される。アークチャンバの2つの端を接続するために、複数の側面が使用される。
【0004】
アークチャンバの中心に近接し、これらの側面のうちの1つに沿って、抽出開孔が配置され、その抽出開孔を通して、アークチャンバ内に生成されたイオンが抽出されうる。
【0005】
特定の実施形態では、固体形態の材料をドーパント種として利用することが望ましい場合がある。しかしながら、IHCイオン源と共に固体ドーパント材料を使用することに関連した問題がある。例えば、IHCイオン源の高温環境では、金属スパッタターゲットは、溶融し、滴下し、液体金属が流れてアークチャンバに溜まると、概してアークチャンバを劣化させ、破壊する傾向がある。結果として、対象となるドーパントを含有するセラミックは、概して、固体ドーパント材料として使用されるが、これは、これらのセラミックがより高い溶融温度を有しているためである。しかしながら、これらのセラミック材料が生成する、対象となるドーパントのビーム電流は、通常、より少なくなる。金属スパッタターゲットが溶融時に滴下又は変形することなくその形状を維持できれば、ドーパントビーム電流の著しい増加を実現することができるだろう。
【0006】
したがって、特定の金属などの、溶融温度が低い固体ドーパント材料と共に使用することができるイオン源が有益だろう。更に、イオン源が固体ドーパント材料によって汚染されていなければ、有利だろう。加えて、アークチャンバが他のプロセスのための固体材料なしで利用できれば、有利だろう。
【発明の概要】
【0007】
固体ドーパント材料を保持するための挿入可能なターゲットホルダを有するイオン源が開示される。この挿入可能なターゲットホルダは、固体ドーパント材料が配置されるポケット又は空洞を含む。固体ドーパント材料が溶融するとき、固体ドーパント材料はポケット内に含まれたままであるため、アークチャンバを損傷又は劣化させることはない。加えて、ターゲットホルダは、ポケットが少なくとも部分的にアークチャンバ内にある1つ又は複数の位置から、ポケットが完全にアークチャンバの外側にある1つ又は複数の位置まで移動させることができる。特定の実施形態では、ポケットの開放された上部の少なくとも一部を覆うために、スリーブが使用されうる。
【0008】
1つの実施形態によれば、間接的に加熱されるカソードイオン源が開示される。この間接的に加熱されたカソードイオン源は、第1の端と第2の端を接続する複数の壁を備えるアークチャンバと、アークチャンバの第1の端に配置された間接的に加熱されるカソードと、ドーパント材料を保持するためのポケットを有するターゲットホルダとを備え、ターゲットホルダは、重力がターゲットホルダ内にドーパント材料を保持するように、アークチャンバ内に配向され、複数の壁のうちの1つを通ってアークチャンバに進入し、ポケットがアークチャンバの外側にある第1の位置と、ポケットの少なくとも一部がアークチャンバ内に配置される第2の位置とを有する。特定の実施形態では、イオン源は、ターゲットホルダを第1の位置から第2の位置まで移動させるために、ターゲットホルダと連絡するアクチュエータを備える。いくつかの実施形態では、ポケットは、底面、複数の側壁、及び開放された上部を備える。特定の更なる実施形態では、ターゲットホルダの上に配置され、開放された上部の少なくとも一部を覆うスリーブが配置される。特定の更なる実施形態では、スリーブが、ターゲットホルダの一部を取り囲み、開放された上部の少なくとも一部を覆う。いくつかの実施形態では、ターゲットホルダは、囲まれたポケットを備える。いくつかの更なる実施形態では、ターゲットホルダは、囲まれたポケットからターゲットホルダの外部への導管を備える。特定の更なる実施形態では、ターゲットホルダは、多孔質材料で作られる。特定の更なる実施形態では、ターゲットホルダは、囲まれたポケットへのアクセスを可能にするために、取り外し可能なシールを備える。いくつかの実施形態では、ターゲットホルダは、加熱要素を含む。特定の実施形態では、ターゲットホルダは、アークチャンバに対して電気的にバイアスされる。
【0009】
別の実施形態によれば、間接的に加熱されるカソードイオン源が開示される。この間接的に加熱されるカソードイオン源は、第1の端と第2の端を接続する複数の壁を備えるアークチャンバと、アークチャンバの第1の端に配置された間接的に加熱されるカソードと、ドーパント材料を保持するためのポケットを有するターゲットホルダとを備え、ターゲットホルダは、第2の端に配置され、ポケットの少なくとも一部がアークチャンバ内に配置される第1の位置と、ポケットがアークチャンバの外側に配置される第2の位置とを有する。特定の実施形態では、ターゲットホルダが第2の位置にあるとき、ターゲットホルダの上面は、アークチャンバの第2の端として機能する。いくつかの実施形態では、イオン源は、ターゲットホルダを第1の位置から第2の位置まで移動させるために、ターゲットホルダと連絡しているアクチュエータを備える。特定の実施形態では、ポケットは、底面、複数の側壁、及び開放された上部を備える。
【0010】
別の実施形態によれば、間接的に加熱されるカソードイオン源が開示される。この間接的に加熱されたカソードイオン源は、ハウジングと、第1の端と第2の端を接続する複数の壁を備えるアークチャンバと、アークチャンバの第1の端に配置された間接的に加熱されるカソードと、ドーパント材料を保持するためのポケットを有するターゲットホルダであって、アークチャンバに進入するターゲットホルダと、ハウジング及びターゲットホルダと連絡するアクチュエータとを備え、ターゲットホルダは、ポケットの少なくとも一部がアークチャンバ内に配置される第1の位置と、ポケットがアークチャンバの外側に配置される第2の位置とを有する。特定の実施形態では、ターゲットホルダは、複数の壁のうちの1つを通ってアークチャンバに進入する。特定の実施形態では、ターゲットホルダは、第2の端に配置される。いくつかの実施形態では、イオン源は、第3の位置を備え、ここで、ポケットは、アークチャンバの外側に配置され、ターゲットホルダは、ターゲットホルダが第3の位置にある間にドーパント材料が気化するように、アークチャンバと熱連絡している。
【0011】
別の実施形態によれば、上記の間接的に加熱されるカソードイオン源を使用して異なるドーパントをイオン化する方法が開示される。この方法は、固体形態のドーパントをターゲットホルダのポケット内に配置することと、ガスを導入しイオン化して、プラズマを生成することと、ポケットがアークチャンバ内に配置されるようにアクチュエータを作動させることと、ドーパントを含むイオンを間接的に加熱されるカソードイオン源から抽出することと、ポケットがアークチャンバの外側に配置されるようにアクチュエータを後退させることと、アークチャンバ内に第2のドーパントを含む第2のガスを導入しイオン化することと、第2のドーパントを含むイオンを間接的に加熱されるカソードイオン源から抽出することとを含む。
【0012】
本開示をより良く理解するために、添付図面を参照する。これらの図面は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】1つの実施形態による挿入可能なターゲットホルダを有する間接的に加熱されるカソード(IHC)イオン源である。
【
図1B】1つの実施形態による挿入可能なターゲットホルダを有する間接的に加熱されるカソード(IHC)イオン源である。
【
図2】挿入可能なターゲットホルダが後退した、
図1AのIHCイオン源である。
【
図3】A-Cは、
図1A-1Bの挿入可能なターゲットホルダの3つの図を示す。
【
図4】別の実施形態による挿入可能なターゲットホルダを有する間接的に加熱されるカソード(IHC)イオン源である。
【
図5】挿入可能なターゲットホルダが後退した、
図4のIHCイオン源である。
【
図6】A-Dは、実施形態のいずれかと共に使用されうる様々なターゲットホルダを示す。
【
図7】本明細書に記載のIHCイオン源の操作方法を示す。
【
図8】A-Bは、スリーブを有する挿入可能なターゲットホルダの別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述のように、溶融点が低い固体ドーパント材料は、液体が流れアークチャンバ内に溜まると、液体に変わり、滴下し、アークチャンバを劣化させる傾向がある。
【0015】
図1Aは、これらの問題を克服するターゲットホルダを有するIHCイオン源10を示す。IHCイオン源10は、2つの反対側の端と、これらの端に接続する壁101とを備えるアークチャンバ100を含む。アークチャンバ100の壁101は、導電性材料で構成され、互いに電気的に連絡しうる。いくつかの実施形態では、壁101のうちの1つ又は複数に近接して、ライナが配置されてもよい。カソード110は、アークチャンバ100の第1の端104においてアークチャンバ100内に配置される。フィラメント160は、カソード110の背後に配置される。フィラメント160は、フィラメント電源165と連絡している。フィラメント電源165は、電流をフィラメント160に流し、フィラメント160が熱イオン電子を放出するように構成される。カソードバイアス電源115は、フィラメント160をカソード110に対して負にバイアスするため、これらの熱イオン電子は、フィラメント160からカソード110に向かって加速され、これらの熱イオン電子がカソード110の裏面に当たると、カソード110を加熱する。カソードバイアス電源115は、例えば、カソード110の電圧よりも負に200Vから1500Vの間にある電圧を有するように、フィラメント160をバイアスしうる。次いで、カソード110は、その前面の熱イオン電子をアークチャンバ100内に放出する。
【0016】
これにより、フィラメント電源165は、フィラメント160に電流を供給する。カソードバイアス電源115は、フィラメント160をバイアスしてカソード110よりも負になるようにし、その結果、電子がフィラメント160からカソード110に向かって引き寄せられる。特定の実施形態では、カソード110は、バイアス電源111などによって、アークチャンバ100に対してバイアスされうる。他の実施形態では、カソード110は、アークチャンバ100の壁101と同じ電圧になるように、アークチャンバ100に電気的に接続されうる。これらの実施形態では、バイアス電源111が用いられなくてもよく、カソード110は、アークチャンバ100の壁101に電気的に接続されうる。特定の実施形態では、アークチャンバ100は、電気接地に接続される。
【0017】
第1の端104の反対側の第2の端105には、リペラ120が配置されうる。リペラ120は、リペラバイアス電源123によって、アークチャンバ100に対してバイアスされうる。他の実施形態では、リペラ120は、アークチャンバ100の壁101と同じ電圧になるように、アークチャンバ100に電気的に接続されうる。これらの実施形態では、リペラバイアス電源123が用いられなくてもよく、リペラ120は、アークチャンバ100の壁101に電気的に接続されうる。更に他の実施形態では、リペラ120が用いられない。
【0018】
カソード110及びリペラ120は各々、金属又はグラファイトなどの導電性材料から作られる。
【0019】
特定の実施形態では、アークチャンバ100内に磁場が生成される。この磁場は、電子を1つの方向に沿って閉じ込めることを目的とする。磁場は、通常、第1の端104から第2の端105まで、壁101に平行に通っている。例えば、電子は、カソード110からリペラ120への方向(即ち、y方向)に平行なカラム内に閉じ込められうる。したがって、電子は、y方向に動く電磁力をまったく受けない。しかし、他の方向への電子の移動は、電磁力を受けうる。
【0020】
抽出プレート103と呼ばれるアークチャンバ100の一方の側に、抽出開孔140が配置される。
図1Aにおいて、抽出開孔140は、Y-Z平面に対して平行な(ページに対して垂直な)側に配置される。更に、IHCイオン源10はまた、イオン化されるガスがアークチャンバ100に導入されうるガス入口106を備える。
【0021】
特定の実施形態において、第1の電極及び第2の電極が抽出プレート103に隣接する壁のアークチャンバ100内にあるように、第1の電極及び第2の電極は、アークチャンバ100のそれぞれの反対の壁101上に配置されうる。第1の電極及び第2の電極は各々、それぞれの電源によってバイアスされうる。特定の実施形態では、第1の電極及び第2の電極は、共通の電源と連絡されうる。しかしながら、他の実施形態では、最大限の柔軟性とIHCイオン源10の出力を調整する能力を可能にするために、第1の電極は、第1の電極電源と連絡し、第2の電極は、第2の電極電源と連絡しうる。
【0022】
コントローラ180は、これらの電源によって供給される電圧又は電流が修正されうるように、電源の1つ又は複数と連絡しうる。コントローラ180は、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、専用コントローラ、又は別の適切な処理ユニットといった処理ユニットを含みうる。コントローラ180はまた、半導体メモリ、磁気メモリ、又は別の適切なメモリといった非一時的ストレージ要素を含みうる。この非一時的ストレージ要素は、コントローラ180が本明細書に記載の機能を実行できるようにする命令及び他のデータを含みうる。
【0023】
IHCイオン源10はまた、アークチャンバ100内に挿入され、そこから後退させることができるターゲットホルダ190を含む。
図1Aの実施形態では、ターゲットホルダ190は、アークチャンバ100の壁101のうちの1つに沿ってアークチャンバに進入する。特定の実施形態では、ターゲットホルダ190は、第1の端104と第2の端105との間の中央平面でアークチャンバ100に進入しうる。別の実施形態では、ターゲットホルダ190は、中央平面とは異なる位置でアークチャンバ100に進入してもよい。
図1Aに示す実施形態では、ターゲットホルダ190は、抽出開孔140とは反対側を通ってアークチャンバ100に進入する。しかしながら、他の実施形態では、ターゲットホルダ190は、抽出プレート103に隣接する側を通って進入してもよい。
【0024】
ターゲットホルダ190は、ドーパント材料195が配置されうる空洞又はポケット191を有する。ポケット191は、底面と、底面から上に向かって延びる側壁とを有しうる。特定の実施形態では、側壁は垂直でありうる。他の実施形態では、側壁は、底面から外に向かって傾斜しうる。いくつかの実施形態では、側壁及び底面は、丸みを帯びたエッジで合流する。底面及び側壁は、底部で閉じられる空洞を形成する。言い換えれば、従来のカップと同様に、ドーパント材料195は、開放された上部を介して挿入又は取り外され、一方で、側壁及び底面は、ドーパント材料195が出られない密閉された構造を形成する。別の実施形態では、ポケット191は、底面を含まなくてもよい。むしろ、側壁は、まとまって先細り、底部の一点で合流しうる。更に別の実施形態では、ポケット191は半球形でありうる。
【0025】
インジウム、アルミニウム、アンチモン又はガリウムのようなドーパント材料195は、ターゲットホルダ190のポケット191内に配置されうる。ドーパント材料195は、ポケット191内に配置されるとき、固体の形態でありうる。これは、材料のブロック、やすり粉、削り屑、ボール、又は他の形状の形態でありうる。特定の実施形態では、ドーパント材料195は、溶融し、液体になりうる。したがって、ある実施形態では、ターゲットホルダ190は、開放端が上を向き、密閉された底部が下を向くように、アークチャンバ100に進入するよう構成され、その結果、溶融されたドーパント材料195は、ターゲットホルダ190からアークチャンバ100内に流入できず、むしろターゲットホルダ190内に留まる。換言すれば、IHCイオン源10及びターゲットホルダ190は、ドーパント材料195が重力によってポケット191内に保持されるように、配向される。
【0026】
動作中、フィラメント電源165は、電流をフィラメント160に流し、これによりフィラメント160に熱イオン電子を放出させる。これらの電子は、フィラメント160よりも正でありうるカソード110の裏面に当たって、カソード110を加熱させ、それによって次に、カソード110は、電子をアークチャンバ100内に放出する。これらの電子は、ガス入口106を通ってアークチャンバ100内に供給されるガスの分子と衝突する。アルゴンなどのキャリアガス、又はフッ素などのエッチングガスが、適切に配置されたガス入口106を通してアークチャンバ100に導入されうる。カソード110からの電子と、ガスと、正電位との組み合わせが、プラズマを生成する。特定の実施形態では、電子及び陽イオンは、磁場によっていくらか閉じ込められうる。特定の実施形態では、プラズマは、抽出開孔140に近接して、アークチャンバ100の中心付近に閉じ込められる。プラズマによる化学エッチング又はスパッタリングは、ドーパント材料195を気相に変換し、イオン化を引き起こす。イオン化された供給材料は、次いで、抽出開孔140を通して抽出され、イオンビームを準備するために使用することができる。
【0027】
ドーパント材料195からスパッタされるか又は他の方法で放出される負イオン及び中性原子は、プラズマに向かって引き付けられるが、これは、プラズマがターゲットホルダ190よりも正の電圧に維持されるからである。
【0028】
特定の実施形態では、ドーパント材料195は、プラズマによって生成された熱によって加熱され、気化される。しかしながら、他の実施形態では、ドーパント材料195は、追加の手段によっても加熱されうる。例えば、ドーパント材料195を更に加熱するために、加熱要素がターゲットホルダ190内に配置されうる。加熱要素は、抵抗加熱要素、又は何らかの他のタイプのヒータでありうる。
【0029】
特定の実施形態では、ターゲットホルダ190は、導電性材料で作られ、接地されうる。別の実施形態では、ターゲットホルダ190は、導電性材料から作られ、電気的に浮遊されうる。別の実施形態では、ターゲットホルダ190は、導電性材料から作られ、壁101と同じ電圧で維持されうる。他の実施形態では、ターゲットホルダ190は、絶縁材料から作られうる。
【0030】
更に別の実施形態では、ターゲットホルダ190は、アークチャンバ100に対して電気的にバイアスされうる。例えば、ターゲットホルダ190は、導電性材料から作られ、壁101とは異なる電圧になるように、独立した電源(図示せず)によってバイアスされうる。この電圧は、壁101に印加される電圧よりも、より正又はより負でありうる。このようにして、ドーパント材料195をスパッタするために、電気バイアスが使用されうる。
【0031】
ターゲットホルダ190は、アクチュエータ200の一端と連絡している。アクチュエータ200の反対側の端は、支持体210と連絡しうる。特定の実施形態では、この支持体210は、IHCイオン源10のハウジングでありうる。特定の実施形態では、アクチュエータ200は、その全変位を変更可能でありうる。例えば、アクチュエータ200は、伸縮設計でありうる。
【0032】
図1Aは、カソード110がポケット191の開放端に面するアークチャンバ100の第1の端104に配置されているIHCイオン源10を示す。しかし、他の態様も可能である。
【0033】
図1Bは、カソード110がアークチャンバ901の第2の端105に配置されているイオン源900を示す。
図1Aに示したものと同じ機能を有する構成要素には、同一の参照記号表示が付与されている。この第2の端105は、ポケット191の密閉された底部に面する端である。
【0034】
図1Bの実施形態は、ポケット191内のドーパント材料195の動作温度を低下させうる。いくつかの実施形態では、カソード110に直接露出されるポケット191の部分は、リペラ120に露出されるポケット191の部分よりも高い温度でありうる。ポケット191に対するカソード110及びリペラ120の位置を交換することにより、ポケット191の開放端は、ここで、カソード110よりも低い温度でありうるリペラ120に面する。特定の実施形態では、ドーパント材料195の動作温度を低下させることにより、アークチャンバ内へのドーパント材料195の気化速度を低下させ、その結果、ドーパント材料195の消費速度を低下させうる。これにより、ポケット191内のドーパント材料195のその後の再充填の間の時間が増加しうる。
【0035】
図2は、アクチュエータ200が後退位置にある、
図1AのIHCイオン源10を示す。この位置では、ポケット191は、アークチャンバ100の完全に外側にある。特定の実施形態では、ポケット191がアークチャンバ100の外側にあるときに、ドーパント材料195が冷却する。このようにして、アクチュエータ200が後退位置にあるときには、アークチャンバに進入するドーパント材料195はない。
【0036】
図1A及び
図1Bは、完全にアークチャンバ100内にあるポケット191を示し、
図2は、完全にアークチャンバ100の外側にあるポケット191を示すが、他の位置付けも可能でありうる。ターゲットホルダ190がアークチャンバ100内に挿入される距離を制御することによって、ターゲットホルダ190及びドーパント材料195の温度が制御されうる。更に、ターゲットホルダ190がアークチャンバ100内に挿入される距離を制御することによって、アークチャンバ100に露出されてエッチングされるドーパント材料195の表面積も決定される。
【0037】
これらの要因は、ドーパント材料195から達成されるドーパントビーム電流の量を決定しうる。更に、ターゲットホルダ190が完全に後退される場合、ドーパントビーム電流は、ゼロになりうる。これにより、相互汚染の危険なしに、他のドーパント種をIHCイオン源10で使用することができる。言い換えれば、アクチュエータ200を後退させると、ポケット191内に配置されたドーパント材料195からの汚染なしに、異なるドーパント種がガス入口106を通して導入され、イオン化されうる。
【0038】
特定の実施形態では、ターゲットホルダ190をアークチャンバ100に挿入せず、ドーパント材料195が加熱され、蒸気がアークチャンバ100に進入するように十分に近接して配置することが可能になりうる。例えば、ターゲットホルダ190は、熱伝導率の高い材料で作られうる。このようにして、ターゲットホルダ190がアークチャンバ100に接近している場合、
図2に示すように、ターゲットホルダ190が後退している場合であっても、プラズマからの熱がドーパント材料195に伝達され、気化したドーパント材料がアークチャンバ100に進入しうる。
【0039】
この実施形態では、ターゲットホルダ190が依然としてアークチャンバ100と熱連絡しており、ドーパント材料195が気化される第1の後退位置が存在しうる。また、ターゲットホルダ190がアークチャンバ100から更に離れて移動され、ドーパント材料195が気化されない第2の後退位置も存在しうる。この第2の後退位置では、交互汚染の危険なしに、異なるドーパントがアークチャンバ内に導入されうる。
【0040】
言い換えると、特定の実施形態では、ターゲットホルダ190は、少なくとも3つの異なる位置、即ち、ポケット191の少なくとも一部がアークチャンバ100内に配置される第1の位置、ポケット191がアークチャンバ100の外側に配置される第2の位置、及びポケット191がアークチャンバ100の外側に配置されるが、ドーパント材料195が気化するようにアークチャンバ100となおも熱的に連絡している第3の位置に配置されうる。
【0041】
図3A-3Cは、ターゲットホルダ190をより詳細に示す。
図3Aは、ターゲットホルダ190の斜視図を示す。
図3Bは、X-Y平面に平行な平面に沿って切り取られた断面図を示す。
図3Cは、Y-Z平面に平行な平面に沿って切り取られた断面図を示す。
【0042】
ターゲットホルダ190のための材料は、アークチャンバ100内の高温に耐えることができるように選択される。更に、材料は、液体と適合性がありうる。また、材料は、少なくとも、ドーパント材料195と同等のエッチング及びスパッタリングに対する耐性がありうる。これらの特性を有する材料には、タングステン、タンタル及びモリブデンなどの高融点金属、並びにアルミナ及びグラファイトなどのセラミックを含むものがある。
【0043】
更に、特定の実施形態では、ドーパント材料195は、ターゲットホルダ190よりも大きい熱膨張係数を有しうる。したがって、ドーパント材料195が溶融する前に、体積が膨張し、ポケット191の側壁に機械的応力を加え、場合によってはターゲットホルダ190の亀裂又は破損を引き起こしうる。したがって、特定の実施形態では、ターゲットホルダ190の側壁は、熱膨張からの応力を最小限に抑え、鋭角のコーナー又はエッジといった任意の高応力変曲点を除去するように設計される。側壁の抜き勾配(draft angle)はまた、膨張を通して誘導される熱応力を導くように修正され最適化されうる。
図3Cには、抜き勾配が最もよく示されている。
【0044】
図4は、ターゲットホルダがアークチャンバ100の第2の端として機能する別の実施形態を示す。
図1Aに示したものと同じ機能を有する構成要素には、同一の参照記号表示が付与されている。
【0045】
この実施形態では、ターゲットホルダ300は、ドーパント材料195が配置されうる空洞又はポケット310を有する。この実施形態では、ターゲットホルダ300は、アクチュエータ200の一端と連絡している。アクチュエータ200の反対側の端は、IHCイオン源10のハウジングなどの支持体210と連絡しうる。
【0046】
図5は、アクチュエータ200が後退した場合の
図4の実施形態を示す。この構成では、ターゲットホルダ300の上面301が、アークチャンバ100の第2の端となる。ポケット310は、後退位置でアークチャンバ100の外側にある。これにより、固体ドーパント材料195を露出させることなく、他の種の動作が可能になる。
【0047】
また
図4-5の実施形態により、ターゲットホルダ300自体のサイズ及び構造に対して、より大きな柔軟性が可能になりうる。またこの実施形態により、アークチャンバ100の構成に対して、より多くの柔軟性が可能になりうる。この実施形態はまた、ドーパント材料195とプラズマとの間により直接的な相互作用を提供しうる。
【0048】
図1-2及び
図4-5は、特に成形されたポケット191を有するターゲットホルダ190を示す。しかしながら、本開示は、この構成に限定されない。
図6Aは、
図1-2及び4-5で使用されたターゲットホルダ190を示す。
【0049】
図6Bは、囲まれたポケット401を有するターゲットホルダ400を示す。ターゲットホルダ400は、その上面に、外部環境を囲まれたポケット401に接続する導管403を有している。取り外し可能なシール402は、囲まれたポケット401の1つの表面を形成する。囲まれたポケット401内にドーパント材料を導入するために、取り外し可能なシール402が取り外される。次に、ドーパント材料が、囲まれたポケット401内に導入される。次に、取り外し可能なシール402が交換される。ターゲットホルダ400は、導管403が上面又はその近傍にあるように、アークチャンバ100内に導入される。この実施形態では、ドーパント材料は、囲まれたポケット401の内側で溶融する。温度が上昇するにつれて、ドーパント材料は気化又は昇華しうる。これにより、これらの固体ターゲット材料をエッチングするために典型的に使用されるフッ素化ガスよりむしろ、アルゴンなどの不活性ガスが使用可能となりうる。フッ素化プラズマでよりむしろアルゴンプラズマを実行できると、はるかに大きいソース寿命及び安定性がもたらされうる。
【0050】
図6Cは、囲まれたポケット411を有するターゲットホルダ410を示す。
図6Bの実施形態とは異なり、このターゲットホルダ410は導管を有していない。むしろ、ターゲットホルダ410は、多孔質タングステンなどの多孔質材料から構成されうる。
図6Bの実施形態と同様に、ターゲットホルダ410は、ドーパント材料が導入されうる取り外し可能なシール412を有する。
【0051】
図6Dは、ターゲットホルダ420の別の実施形態を示す。この実施形態では、ポケット421は、より円錐形でありうる。例えば、ポケット421は、円錐台形状でありうる。この形状は、ドーパント材料及びターゲットホルダ420の熱膨張係数の差に適応するのに役立ちうる。
【0052】
ターゲットホルダ190がアクチュエータ200と連絡しているので、固体ドーパントからイオンを抽出するためにIHCイオン源10を利用し、かつ供給ガスからイオンを抽出するためにIHCイオン源10を利用することも可能である。
【0053】
図7は、IHCイオン源10の動作を示すフローチャートを示す。この方法は、
図1-2に示すIHC源又は
図4-5に示すIHC源に使用することができる。まず、プロセス700に示すように、固体ドーパント材料がターゲットホルダ190のポケット191内に配置される。ガスは、プロセス710に示されるように、ガス入口106を通ってアークチャンバ100内に導入され、プラズマを生成するためにイオン化される。使用されるガスは、アルゴンなどの不活性ガスであってもよく、又はハロゲンガスであってもよい。次に、プロセス720に示すように、ポケット191の少なくとも一部がアークチャンバ100内に配置されるように、ターゲットホルダ190が移動される。これら2つの処理は、逆の順序で実行されてもよい。プラズマは、固体ドーパントを昇華又はスパッタさせ、ドーパントのイオンを生成する。次に、プロセス730に示すように、ドーパントを含むこれらのイオンをアークチャンバ100から抽出する。
【0054】
その後、プロセス740に示すように、ターゲットホルダ190をアークチャンバから後退させ、ポケットがアークチャンバ100の外側に配置されるようになる。次に、プロセス750に示すように、第2のドーパントを含む新しいガスがアークチャンバ100に導入され、プラズマにイオン化される。ポケット191はここではアークチャンバの外側にあるので、固体ドーパントによる汚染はない。次に、プロセス760に示すように、第2のドーパントを含むイオンがアークチャンバ100から抽出される。
【0055】
加えて、ターゲットホルダは、スリーブを有するように構成されうる。
図8A-8Bは、スリーブ830を有するターゲットホルダ800の別の実施形態を示す。他の実施形態と同様に、ターゲットホルダ800は、アクチュエータ200と連絡しうる。ターゲットホルダ800はまた、ポケット810を有しうる。上述のように、ポケット810は、底面と、底面から上に向かって延びる側壁とを有しうる。特定の実施形態では、側壁は垂直でありうる。他の実施形態では、側壁は、底面から外に向かって傾斜しうる。いくつかの実施形態では、側壁及び底面は、丸みを帯びたエッジで合流する。底面及び側壁は、底部で閉じられる空洞又はポケット810を形成する。言い換えれば、従来のカップと同様に、ドーパント材料195は、開放された上部を介して挿入又は取り外され、一方で、側壁及び底面は、ドーパント材料195が出られない密閉された構造を形成する。別の実施形態では、ポケット810は、底面を含まなくてもよい。むしろ、側壁は、まとまって先細り、底部の一点で合流しうる。更に別の実施形態では、ポケット810は半球形でありうる。
【0056】
スリーブ830は、ポケット810の一部を覆うために使用されうる。スリーブ830の材料は、アークチャンバ内の高温に耐えることができるように選択されうる。更に、材料は、液体と適合性がありうる。また、材料は、少なくとも、ドーパント材料195と同等のエッチング及びスパッタリングに対する耐性がありうる。これらの特性を有する材料には、タングステン、タンタル及びモリブデンなどの高融点金属、並びにアルミナ及びグラファイトなどのセラミックを含むものがある。
【0057】
スリーブ830は、ターゲットホルダ800の全体を取り囲んでもよく、又はターゲットホルダ800の一部のみを覆ってもよい。例えば、
図8A-8Bに示すように、スリーブ830は、ターゲットホルダ800の上をスライドするように寸法が決定されうる。スリーブ830は、ポケット810の一部を覆う。特定の実施形態では、スリーブ830は、ポケット810の異なる部分を覆うようにスライドするよう構成されうる。他の実施形態では、各スリーブ830は、ポケット810の特定の分画を覆うように設計される。例えば、
図8Aでは、スリーブ830は、ポケット810のおよそ90%を覆うように設計されている。
図8Bでは、スリーブ830は、ポケット810の約80%を覆うように設計されている。したがって、特定の実施形態では、スリーブ830の長さは、ポケット810の所定の部分を覆うように変更される。
【0058】
図8A-8Bに示される1つの実施形態では、ターゲットホルダ800の断面は、スリーブ830がターゲットホルダ800の上をスライドする中空リングであるように、ほぼ円形でありうる。もちろん、ターゲットホルダ800及びスリーブ830は、他の形状を有してもよい。
【0059】
別の実施形態では、スリーブ830は、C字型状の部品であってもよく、スリーブ830が、ターゲットホルダ800の一部のみを囲む。このスリーブは、ポケット810の様々な量を覆うように構成されうる。例えば、C字型スリーブは、軸方向にスライドされてもよく、又はターゲットホルダ800を中心に回転させてもよい。別の実施形態では、スリーブのサイズは、調整されてもよい。例えば、C字型スリーブは、ポケット810よりも短く作られてもよい。あるいは、C字型スリーブの幅が調整されてもよい。ターゲットホルダ800の断面が円形の場合には、C字型のスリーブが用いられることに留意されたい。ターゲットホルダ800の断面が異なる形状を有する場合、スリーブの形状は、ターゲットホルダ800に一致するように適合されうる。
【0060】
更に、特定の実施形態では、スリーブ830は、クランプ840によって適所に保持されうる。
【0061】
スリーブ830は、ドーパント材料195からの蒸気がポケット810からアークチャンバ内に逃げることができる開口部の面積を減少させる。蒸気がポケット810から逃げる面積を減少させることによって、アークチャンバの壁及びアークチャンバ内の他の構成要素への堆積を介して浪費されるドーパント材料の量を減少させる。この面積の減少は、ドーパント材料195の消費を減少させるのに役立ち、ドーパント材料195のその後の再充填間の時間を増加させうる。
【0062】
スリーブ830はまた、熱反射材料を使用するか、又は熱反射性となるように外に向かう表面を修正することによって、熱シールドとして作用するように構成することができる。この実施形態では、スリーブ830は、カソード及びアークチャンバからの熱放射を反射し、ターゲットホルダ190及びドーパント材料195の温度を下げるだろう。
【0063】
このターゲットホルダ800は、
図1A-1BのIHCイオン源と共に使用されうる。
【0064】
図は、ポケット810の開放された上部が上に向かうように示しているが、他の実施形態も可能である。例えば、ポケット810の開放された上部は、アークチャンバの側部に向かうか又は底部に向かうターゲットホルダ800の表面上に配置されうる。このポケット810はまた、ポケット810の内部をターゲットホルダ800の外部と接続する導管を有しうる。例えば、そのような導管は、ターゲットホルダ800の端又はターゲットホルダ800の異なる側に配置されうる。この実施形態では、スリーブ830は、ターゲットホルダ800内にドーパント材料を保持するように、ポケット810の開放された上部を覆うために使用されうる。ドーパント材料からの蒸気は、導管を介してポケット810を出る。開放された上部が上に向かっていなくても、ターゲットホルダ800は依然として、重力がターゲットホルダ内にドーパント材料を保持するように配向されていることに留意されたい。
【0065】
本出願において上述した実施形態は、多くの利点を有しうる。挿入可能なターゲットホルダを使用することにより、純金属ドーパントが、それらの溶融温度を超える環境でスパッタターゲットとして使用可能となる。従来、1200℃を超える溶融温度を有するドーパントを含有する酸化物/セラミック又は他の固体化合物が使用される。純粋な材料ではなくドーパント含有化合物の使用は、利用可能なドーパント材料を著しく希釈する。例えば、純アルミニウムの代わりにAl2O3を使用する場合、セラミック組成物の化学量論により、不純物がプラズマに導入されるだけでなく、対象となるドーパントとの望ましくない質量の一致がもたらされる可能性があり、純粋な元素ターゲットよりも低いビーム電流にもつながる。1つの実験では、純Alスパッタターゲットを使用して最大4.7mAのビーム電流が達成されたが、Al2O3ターゲットを使用すれば、2mA未満の最大ビーム電流が達成できるだろう。純金属の使用はまた、同じ金属種の酸化物/セラミックから得られるビーム電流と比較して、多重電荷ビーム電流を50%-75%増加させるだろう。挿入可能な容器では、必要なときに大量の純金属へのアクセスが可能であり、他の種を利用するために、固体ターゲットをアークチャンバから安全に取り出すことができる。
【0066】
固体ターゲットドーパントの別の利点は、それが気化器種よりも優れた同調時間であることである。同調時間は、コールドスタートからの気化器よりも速い。加えて、固体ターゲットドーパントは、単一電荷種から多電荷種に同調する場合に、はるかに速い同調時間を実現する。
【0067】
更に、別の利点は、固体材料をアークチャンバから容易に除去できることである。これにより、アークチャンバは、相互汚染の危険を伴わずに、他のドーパント及び化学物質のために使用可能となる。
【0068】
更に、ランタン、インジウム、アルミニウム及びガリウムといった種々の金属ドーパントに対してより高いビーム電流を実現することができる。加えて、気化器種よりむしろ、固体スパッタターゲットを使用することの電荷寿命という利点がある。加えて、液体金属によっては、蒸気圧が十分に低い場合、ドーパント材料を直接昇華させて、ドーパントをエッチングする必要性を排除することができる。その代わりに、アークチャンバ内のプラズマを初期化及び安定化させるために、少量のアルゴンが使用されてもよい。
【0069】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態による範囲内に限定されるものではない。実際、本明細書に記載のものに加えて、本開示の他の様々な実施形態及び修正例が、前記載及び添付図面から当業者には明らかだろう。このため、そのような他の実施形態及び修正例は、本開示の範囲内に含まれると意図される。更に、本開示は、特定の目的のための特定の環境の特定の実施態様の文脈で本明細書に記載されているが、当業者は、その有用性がそれに限定されず、かつ本開示が、有利には、任意の数の目的のために任意の数の環境で実施されうることを認識するだろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の全幅及び主旨を考慮して解釈すべきである。