(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20220808BHJP
H02H 3/093 20060101ALI20220808BHJP
H02H 6/00 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
G01R19/00 M
G01R19/00 B
H02H3/093 D
H02H6/00 150
(21)【出願番号】P 2018085610
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 充晃
(72)【発明者】
【氏名】大石 英一郎
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-253682(JP,A)
【文献】特開2010-263772(JP,A)
【文献】特開2010-124688(JP,A)
【文献】特開2007-024824(JP,A)
【文献】特開2010-181351(JP,A)
【文献】特開2018-007030(JP,A)
【文献】特開2009-142146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00-19/32
G01R 31/36-31/396
H02H 3/093
H02H 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を負荷部に供給する第1及び第2電力供給部と、
前記第1電力供給部から電力が供給され電流が正方向に通電可能であり且つ前記第2電力供給部から電力が供給され電流が前記正方向とは反対方向である負方向に通電可能である双方向回路に流れる通電電流を通電又は遮断するスイッチと、
前記通電電流に応じた検出電圧を出力する電流センサと、
前記電流センサから出力された前記検出電圧に基づいて前記通電電流を求め前記スイッチを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記双方向回路に電流が流れない非通電状態の場合に出力される前記検出電圧である基準電圧と、前記双方向回路に電流が流れる通電状態の場合に出力される前記検出電圧との差の絶対値に基づいて求めた前記通電電流に応じて前記スイッチを制御
するものであり、
前記通電電流が前記正方向に流れる場合、前記通電電流に応じて定まる前記双方向回路の熱量と予め定められた正方向遮断閾値とに基づいて前記スイッチをオフし、
前記通電電流が前記負方向に流れる場合、前記通電電流に応じて定まる前記双方向回路の熱量と予め定められた負方向遮断閾値とに基づいて前記スイッチをオフし、
前記正方向遮断閾値及び前記負方向遮断閾値は、前記双方向回路の状態に応じて熱抵抗及び熱容量が前記正方向と前記負方向とで異なる場合、それぞれ前記熱抵抗及び前記熱容量に応じた異なる値であることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源装置として、例えば、特許文献1には、電線及び半導体スイッチを含んで構成される負荷回路を保護する負荷回路の保護装置が開示されている。負荷回路の保護装置は、負荷電流に応じた温度演算式により求めた負荷回路の温度に基づいて半導体スイッチをオフする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の負荷回路の保護装置は、例えば、負荷電流が正方向及び負方向に流れる双方向回路に適用された場合、負方向に流れる電流を適正に検出できないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、双方向に流れる電流を適正に検出することができる電流検出装置及び電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電源装置は、電力を負荷部に供給する第1及び第2電力供給部と、前記第1電力供給部から電力が供給され電流が正方向に通電可能であり且つ前記第2電力供給部から電力が供給され電流が前記正方向とは反対方向である負方向に通電可能である双方向回路に流れる通電電流を通電又は遮断するスイッチと、前記通電電流に応じた検出電圧を出力する電流センサと、前記電流センサから出力された前記検出電圧に基づいて前記通電電流を求め前記スイッチを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記双方向回路に電流が流れない非通電状態の場合に出力される前記検出電圧である基準電圧と、前記双方向回路に電流が流れる通電状態の場合に出力される前記検出電圧との差の絶対値に基づいて求めた前記通電電流に応じて前記スイッチを制御するものであり、前記通電電流が前記正方向に流れる場合、前記通電電流に応じて定まる前記双方向回路の熱量と予め定められた正方向遮断閾値とに基づいて前記スイッチをオフし、前記通電電流が前記負方向に流れる場合、前記通電電流に応じて定まる前記双方向回路の熱量と予め定められた負方向遮断閾値とに基づいて前記スイッチをオフし、前記正方向遮断閾値及び前記負方向遮断閾値は、前記双方向回路の状態に応じて熱抵抗及び熱容量が前記正方向と前記負方向とで異なる場合、それぞれ前記熱抵抗及び前記熱容量に応じた異なる値である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電流検出装置及び電源装置は、基準電圧と検出電圧との差の絶対値に基づいて通電電流を求めるので、双方向に流れる電流を適正に検出することができる。本発明に係る電源装置は、第1電流センサから出力された第1検出電圧に基づいて正方向に流れる電流を求め、第2電流センサから出力された第2検出電圧に基づいて負方向に流れる電流を求めるので、双方向に流れる電流を適正に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電源装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る通電電流と電流センサの出力との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る制御部の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例に係る制御部の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る電源装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る電流検出装置30及び電源装置1について説明する。電源装置1は、バッテリからモータ等の負荷部に電力を供給するものである。電流検出装置30は、電源装置1に設けられ、バッテリからモータ等の負荷部に流れる電流を検出するものである。電源装置1は、第1電力供給部としての第1バッテリ10Aと、第2電力供給部としての第2バッテリ10Bと、スイッチとしてのFETQ1(Field-Effect TransiSor)と、スイッチとしてのFETQ2と、第1駆動部20Aと、第2駆動部20Bと、電流検出装置30とを備えている。電源装置1は、第1バッテリ10A及び第2バッテリ10Bを備えた所謂ツーバッテリの装置である。電源装置1は、それぞれが並列に接続された第1負荷部2A及び第2負荷部2Bに電力を供給する。
【0015】
第1バッテリ10Aは、第1負荷部2Aに並列接続され、第1及び第2負荷部2A、2Bに電力を供給する。第2バッテリ10Bは、第2負荷部2Bに並列接続され、第1及び第2負荷部2A、2Bに電力を供給する。ここで、第1バッテリ10A側から第2負荷部2B側に流れる電流を正方向P1の電流と称する。また、第2バッテリ10B側から第1負荷部2A側に流れる電流を負方向P2の電流と称する。正方向P1と負方向P2とは、それぞれ反対方向である。つまり、正方向P1は、電流がFETQ1、Q2を一方側から流れる方向であり、負方向P2は、電流がFETQ1、Q2を他方側から流れる方向である。電源装置1は、電流が正方向P1及び負方向P2に通電可能な双方向回路Eを形成している。なお、以下の説明では、双方向回路Eに流れる電流を通電電流Iとも称する。
【0016】
FETQ1は、電流を通電又は遮断するものである。FETQ1は、例えば、Nチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect TransiSor)であるが、これに限定されない。FETQ1は、第1バッテリ10Aと第2負荷部2Bとの間に設けられ、第1バッテリ10Aから第2負荷部2Bに流れる電流を通電又は遮断する。FETQ1は、入力端子としてのドレイン端子と、出力端子としてのソース端子と、制御端子としてのゲート端子とを含んで構成される。ドレイン端子は、第1バッテリ10Aの正極側に接続される。ソース端子は、FETQ2のソース端子に接続される。ゲート端子は、第1駆動部20Aの接続端子に接続される。ゲート端子は、第1駆動部20Aにより印加される電圧に基づいてドレイン端子からソース端子に流れる電流を通電又は遮断する。FETQ1は、ゲート端子をONすることによりドレイン端子とソース端子との間で流れる電流を通電する。また、FETQ1は、ゲート端子をOFFすることによりドレイン端子からソース端子に流れる電流を遮断する。
【0017】
FETQ2は、電流を通電又は遮断するものである。FETQ2は、例えば、Nチャネル型のMOSFETであるが、これに限定されない。FETQ2は、第2バッテリ10Bと第1負荷部2Aとの間に設けられ、第2バッテリ10Bから第1負荷部2Aに流れる電流を通電又は遮断する。FETQ2は、入力端子としてのドレイン端子と、出力端子としてのソース端子と、制御端子としてのゲート端子とを含んで構成される。ドレイン端子は、第2バッテリ10Bの正極側に接続される。ソース端子は、FETQ1のソース端子に接続される。ゲート端子は、第2駆動部20Bの接続端子に接続される。ゲート端子は、第2駆動部20Bにより印加される電圧に基づいてドレイン端子からソース端子に流れる電流を通電又は遮断する。FETQ2は、ゲート端子をONすることによりドレイン端子とソース端子との間で流れる電流を通電する。また、FETQ2は、ゲート端子をOFFすることによりドレイン端子からソース端子に流れる電流を遮断する。
【0018】
第1駆動部20Aは、FETQ1を駆動する回路である。第1駆動部20Aは、制御部32及びFETQ1のゲート端子に接続され、制御部32から出力される駆動信号に基づいてFETQ1をオン又はオフする。
【0019】
第2駆動部20Bは、FETQ2を駆動する回路である。第2駆動部20Bは、制御部32及びFETQ2のゲート端子に接続され、制御部32から出力される駆動信号に基づいてFETQ1をオン又はオフする。
【0020】
電流検出装置30は、電流を検出するものである。電流検出装置30は、電流センサ31と、制御部32とを含んで構成される。電流センサ31は、電流を検出するものである。電流センサ31は、例えば、ホール式の電流センサを用いることができるが、これに限定されない。電流センサ31は、FETQ1のソース端子とFETQ2のソース端子との間に設けられている。電流センサ31は、双方向回路Eに流れる通電電流Iに応じた検出電圧V1を出力する(
図2参照)。電流センサ31は、双方向回路Eに電流が流れない非通電状態の場合に出力する検出電圧V1を基準電圧Vthとした場合、基準電圧Vthよりも大きい又は基準電圧Vthよりも小さい検出電圧V1を出力する。つまり、電流センサ31は、通電電流Iが0Aの場合に出力する検出電圧V1を基準電圧Vthとした場合、当該基準電圧Vthよりも大きい検出電圧V1又は基準電圧Vthよりも小さい検出電圧V1を出力する。電流センサ31は、例えば、通電電流Iが正方向P1に流れる場合、基準電圧Vthよりも大きい検出電圧V1を出力し、通電電流Iが負方向P2に流れる場合、基準電圧Vthよりも小さい検出電圧V1を出力する。
【0021】
第1実施形態では、例えば、電流センサ31のフルスケールが±100Aであり、制御部32のA/D変換部32aの入力値が0V~5Vである場合を想定する。この場合、電流センサ31は、例えば、
図2に示すように、0Aの場合に出力される検出電圧V1として2.5Vを出力し、100Aの場合に出力される検出電圧V1として5Vを出力し、-100Aの場合に出力される検出電圧V1として0Vを出力する。この場合、通電電流Iが0Aの場合に出力される検出電圧V1、すなわち基準電圧Vthは、2.5Vとなる。
【0022】
制御部32は、第1及び第2駆動部20A、20Bを介してFETQ1、Q2を制御するものである。制御部32は、CPU、記憶部を構成するROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。また、制御部32は、A/D変換部32aを含んで構成される。
【0023】
A/D変換部32aは、電流センサ31に接続され、当該電流センサ31からアナログ信号の検出電圧V1が出力される。A/D変換部32aは、アナログ信号の検出電圧V1をA/D変換したデジタル信号の検出電圧V1を制御部32に出力する。制御部32は、出力されたデジタル信号の検出電圧V1に基づいて双方向回路Eに流れる通電電流Iを求める。制御部32は、例えば、基準電圧Vthと検出電圧V1との差の絶対値に基づいて通電電流Iを求める。制御部32は、例えば、通電電流Iが正方向P1に流れる場合、検出電圧V1から基準電圧Vthを減算した電圧に基づいて通電電流Iを求める。制御部32は、例えば、検出電圧V1が5Vの場合、当該検出電圧V1(5V)が基準電圧Vth(2.5V)よりも大きいので通電電流Iが正方向P1であると判定する。そして、制御部32は、検出電圧V1(5V)から基準電圧Vth(2.5V)を減算した2.5Vに基づいて通電電流I(100A)を求める。
【0024】
制御部32は、通電電流Iが負方向P2に流れる場合、基準電圧Vthから検出電圧V1を減算した電圧に基づいて通電電流Iを求める。制御部32は、例えば、検出電圧V1が0Vの場合、検出電圧V1(0V)が基準電圧Vth(2.5V)よりも小さいので通電電流Iが負方向P2であると判定する。そして、制御部32は、基準電圧Vth(2.5V)から検出電圧V1(0V)を減算した2.5Vに基づいて通電電流I(100A)を求める。これにより、制御部32は、通電電流Iが負方向P2の場合でも、正方向P1と同様に通電電流Iを適正に求めることができる。
【0025】
制御部32は、求めた通電電流Iに基づいて双方向回路Eの熱量計算を行う。制御部32は、例えば、以下の式(1)に基づいて双方向回路Eの熱量計算を行う。式(1)において、T1は周囲温度、「I」は通電電流、「Ron」は双方向回路Eの電線の単位長さ当たりの電気抵抗、「Rth」は電線の単位長さ当たりの熱抵抗、「Cth」は電線の単位長さ当たりの熱容量、「t」は経過時間である。
【0026】
T2=T1+I2×Ron×Rth{1-exp(-t/Cth・Rth)} ・・・(1)
【0027】
制御部32は、式(1)により求めた双方向回路Eの熱量及び予め定められた遮断閾値に基づいてFETQ1、Q2をオフにする。制御部32は、例えば、双方向回路Eの熱量と遮断閾値とを比較し、双方向回路Eの熱量が遮断閾値以上の場合、FETQ1、Q2をオフにして双方向回路Eを遮断する。制御部32は、双方向回路Eの熱量が遮断閾値未満の場合、FETQ1、Q2のオンを継続し双方向回路Eを遮断しない。
【0028】
次に、
図3を参照して、制御部32の動作例について説明する。制御部32は、電流センサ31から出力された検出電圧V1を取得する(ステップS1)。次に、制御部32は、通電電流Iが正方向P1であるか否かを判定する(ステップS2)。制御部32は、検出電圧V1と基準電圧Vthとを比較し、比較結果に基づいて通電電流Iが正方向P1であるか否かを判定する。制御部32は、検出電圧V1が基準電圧Vthよりも大きい場合、通電電流Iが正方向P1であると判定し(ステップS2;Yes)、正方向P1における熱量計算用の電流値(通電電流I)を求める(ステップS3)。制御部32は、例えば、検出電圧V1から基準電圧Vthを減算した電圧に基づいて通電電流Iを求める。制御部32は、検出電圧V1が5Vの場合、検出電圧V1(5V)から基準電圧Vth(2.5V)を減算した2.5Vに基づいて通電電流I(100A)を求める。一方、制御部32は、検出電圧V1が基準電圧Vthよりも小さい場合、通電電流Iが負方向P2であると判定し(ステップS2;No)、負方向P2における熱量計算用の電流値(通電電流I)を求める(ステップS4)。制御部32は、例えば、基準電圧Vthから検出電圧V1を減算した電圧に基づいて通電電流Iを求める。制御部32は、検出電圧V1が0Vの場合、基準電圧Vth(2.5V)から検出電圧V1(0V)からを減算した2.5Vに基づいて通電電流I(100A)を求める。
【0029】
次に、制御部32は、求めた通電電流Iに基づいて双方向回路Eの熱量を計算する(ステップS5)。制御部32は、例えば、上述の式(1)に通電電流Iの値を代入して双方向回路Eの熱量を計算する。制御部32は、計算した双方向回路Eの熱量に基づいて双方向回路Eを遮断するか否かを判定する(ステップS6)。制御部32は、例えば、双方向回路Eの熱量と遮断閾値とを比較し、双方向回路Eの熱量が遮断閾値以上の場合(ステップS6;Yes)、FETQ1、Q2をオフにして双方向回路Eを遮断し(ステップS7)、処理を終了する。また、制御部32は、双方向回路Eの熱量が遮断閾値未満の場合(ステップS6;No)、FETQ1、Q2のオンを継続し双方向回路Eを遮断しないで処理を終了する。
【0030】
以上のように、第1実施形態に係る電流検出装置30は、電流センサ31と、制御部32とを備える。電流センサ31は、電流が正方向P1及び正方向P1とは反対方向である負方向P2に通電可能な双方向回路Eに流れる通電電流Iに応じた検出電圧V1を出力する。制御部32は、電流センサ31から出力された検出電圧V1に基づいて通電電流Iを求める。制御部32は、例えば、双方向回路Eに電流が流れない非通電状態の場合に出力される検出電圧V1である基準電圧Vthと、双方向回路Eに電流が流れる通電状態の場合に出力される検出電圧V1との差の絶対値に基づいて通電電流Iを求める。
【0031】
この構成により、電流検出装置30は、基準電圧Vthと検出電圧V1との差の絶対値に基づいて通電電流Iを検出するので、正方向P1に流れる通電電流I及び負方向P2に流れる通電電流Iをそれぞれ適正に検出することができる。この構成により、電流検出装置30は、双方向に流れる通電電流Iを適正に検出することができる。
【0032】
上記電流検出装置30において、電流センサ31は、通電電流Iが正方向P1に流れる場合、基準電圧Vthよりも大きい検出電圧V1を出力し、通電電流Iが負方向P2に流れる場合、基準電圧Vthよりも小さい検出電圧V1を出力する。制御部32は、通電電流Iが正方向P1に流れる場合、検出電圧V1から基準電圧Vthを減算した電圧に基づいて通電電流Iを求める。また、制御部32は、通電電流Iが負方向P2に流れる場合、基準電圧Vthから検出電圧V1を減算した電圧に基づいて通電電流Iを求める。この構成により、電流検出装置30は、双方向に流れる通電電流Iを適正に検出することができる。
【0033】
第1実施形態に係る電源装置1は、第1及び第2バッテリ10A、10Bと、FETQ1、Q2と、電流センサ31と、制御部32とを備える。第1及び第2バッテリ10A、10Bは、電力を第1及び第2負荷部2A、2Bに供給する。FETQ1、Q2は、双方向回路Eに流れる通電電流Iを通電又は遮断する。双方向回路Eは、第1バッテリ10Aから電力が供給され、電流が正方向P1に通電可能であり、且つ、第2バッテリ10Bから電力が供給され、電流が正方向P1とは反対方向である負方向P2に通電可能な回路である。電流センサ31は、通電電流Iに応じた検出電圧V1を出力する。制御部32は、電流センサ31から出力された検出電圧V1に基づいて通電電流Iを求め、FETQ1、Q2を制御する。制御部32は、例えば、双方向回路Eに電流が流れない非通電状態の場合に出力される検出電圧V1である基準電圧Vthと、双方向回路Eに電流が流れる通電状態の場合に出力される検出電圧V1との差の絶対値に基づいて求めた通電電流Iに応じてFETQ1、Q2を制御する。
【0034】
この構成により、電源装置1は、上述した電流検出装置30と同等の効果を奏することができる。また、電源装置1は、正方向P1及び負方向P2において、それぞれ適正な双方向回路Eの熱量を計算することができる。そして、電源装置1は、双方向回路Eの熱量に基づいて当該双方向回路Eを遮断し当該双方向回路Eを保護することができる。電源装置1は、双方向回路Eにおいて熱量計算を行う場合、通電電流Iが100Aの場合でも-100Aの場合でも同じ発熱量となる。しかしながら、従来のように、電流センサ31から出力される検出電圧V1をそのまま用いて熱量計算を行うと、通電電流Iが100Aの場合と-100Aの場合とで異なる熱量になる。第1実施形態に係る電源装置1は、基準電圧Vthと検出電圧V1との差の絶対値に基づいて求めた通電電流Iに応じて熱量を求めるので、通電電流Iが100Aの場合と-100Aの場合とで同じ熱量とすることができ、適正な双方向回路Eの熱量を計算することができる。
【0035】
〔第1実施形態の変形例〕
次に、第1実施形態の変形例について説明する。変形例に係る電源装置1は、双方向回路Eにおいて電流が流れる方向によって異なる遮断閾値を設けている点で第1実施形態の電源装置1と異なる。なお、変形例では、第1実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0036】
図4を参照して、変形例に係る電源装置1の制御部32の動作例について説明する。制御部32は、電流センサ31から出力された検出電圧V1を取得する(ステップU1)。次に、制御部32は、通電電流Iが正方向P1であるか否かを判定する(ステップU2)。制御部32は、通電電流Iが正方向P1である場合(ステップU2;Yes)、正方向P1における熱量計算用の電流値(通電電流I)を求める(ステップU3)。制御部32は、例えば、検出電圧V1から基準電圧Vthを減算した電圧に基づいて通電電流Iを求める。次に、制御部32は、求めた通電電流Iに基づいて双方向回路Eの正方向P1における熱量を計算する(ステップU4)。制御部32は、例えば、上述の式(1)に通電電流Iの値を代入して双方向回路Eの正方向P1における熱量を計算する。制御部32は、さらに、通電電流Iに基づいて双方向回路Eの負方向P2における熱量を計算する。制御部32は、負方向P2における熱量も求めておくことで、次回、負方向P2における熱量を計算する際に負方向P2の熱量を正確に計算することができる。制御部32は、例えば、上述の式(1)に通電電流Iの値を代入して双方向回路Eの負方向P2における熱量を計算する。ここで、上述の式(1)は、負方向P2における熱量を計算する場合、例えば、熱抵抗「Rth」及び熱容量「Cth」が正方向P1における熱量を計算する場合と異なる。
【0037】
次に、制御部32は、計算した双方向回路Eの正方向P1における熱量に基づいて双方向回路Eを遮断するか否かを判定する(ステップU5)。制御部32は、通電電流Iが正方向P1に流れる場合に当該通電電流Iを遮断するための閾値である正方向遮断閾値を有している。制御部32は、例えば、双方向回路Eの正方向P1における熱量と予め定められた正方向遮断閾値とを比較し、双方向回路Eの正方向P1における熱量が正方向遮断閾値以上の場合(ステップU5;Yes)、FETQ1、Q2をオフにして双方向回路Eを遮断し(ステップU6)、処理を終了する。また、制御部32は、双方向回路Eの正方向P1における熱量が正方向遮断閾値未満の場合(ステップU5;No)、FETQ1、Q2のオンを継続し双方向回路Eを遮断しないで処理を終了する。
【0038】
また、上述のステップU2において、制御部32は、通電電流Iが負方向P2である場合(ステップU2;No)、負方向P2における熱量計算用の電流値(通電電流I)を求める(ステップU7)。制御部32は、例えば、基準電圧Vthから検出電圧V1を減算した電圧に基づいて通電電流Iを求める。次に、制御部32は、求めた通電電流Iに基づいて双方向回路Eの熱量を計算する(ステップU8)。制御部32は、例えば、通電電流Iに基づいて双方向回路Eの負方向P2における熱量を計算する。制御部32は、例えば、上述の式(1)に通電電流Iの値を代入して双方向回路Eの負方向P2における熱量を計算する。制御部32は、さらに、通電電流Iに基づいて双方向回路Eの正方向P1における熱量を計算する。制御部32は、正方向P1における熱量も求めておくことで、次回、正方向P1における熱量を計算する際に正方向P1の熱量を正確に計算することができる。制御部32は、例えば、上述の式(1)に通電電流Iの値を代入して双方向回路Eの正方向P1における熱量を計算する。なお、上述したように、式(1)は、正方向P1における熱量を計算する場合、例えば、熱抵抗「Rth」及び熱容量「Cth」が負方向P2における熱量を計算する場合と異なる。
【0039】
次に、制御部32は、計算した双方向回路Eの負方向P2における熱量に基づいて双方向回路Eを遮断するか否かを判定する(ステップU9)。制御部32は、通電電流Iが負方向P2に流れる場合に当該通電電流Iを遮断するための閾値である負方向遮断閾値を有している。負方向遮断閾値は、正方向遮断閾値とは異なる値の閾値である。制御部32は、双方向回路Eの負方向P2における熱量と予め定められた負方向遮断閾値とを比較し、双方向回路Eの負方向P2における熱量が負方向遮断閾値以上の場合(ステップU9;Yes)、FETQ1、Q2をオフにして双方向回路Eを遮断し(ステップU6)、処理を終了する。また、制御部32は、双方向回路Eの負方向P2における熱量が負方向遮断閾値未満の場合(ステップU9;No)、FETQ1、Q2のオンを継続し双方向回路Eを遮断しないで処理を終了する。
【0040】
以上のように、第1実施形態の変形例に係る電源装置1において、制御部32は、通電電流Iが正方向P1に流れる場合、通電電流Iに応じて定まる双方向回路Eの熱量と予め定められた正方向遮断閾値とに基づいてFETQ1、Q2をオフする。また、制御部32は、通電電流Iが負方向P2に流れる場合、通電電流Iに応じて定まる双方向回路Eの熱量と予め定められた負方向遮断閾値とに基づいてFETQ1、Q2をオフする。この構成により、電源装置1は、通電方向に応じて適正な遮断閾値を設定するので、双方向回路Eの正方向P1及び負方向P2において通電電流Iを適正に遮断することができる。電源装置1は、例えば、第1及び第2負荷部2A、2Bの駆動時や第1及び第2バッテリ10A、10Bの充電時等の双方向回路Eの状態に応じて適正な遮断閾値を設定することができる。電源装置1は、例えば、双方向回路Eの状態に応じて熱抵抗や熱容量が正方向P1と負方向P2とで異なる場合、正方向遮断閾値及び負方向遮断閾値をそれぞれ熱抵抗や熱容量に応じた値にすることで、より適正に遮断することができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る電源装置1Aについて説明する。第2実施形態に係る電源装置1Aは、正方向P1の通電電流Iを検出する第1電流センサ31a、及び、負方向P2の通電電流Iを検出する第2電流センサ31bを備える点で第1実施形態に係る電源装置1と異なる。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
電源装置1Aは、バッテリからモータ等の負荷部に電力を供給するものである。電源装置1Aは、例えば、第1バッテリ10Aと、第2バッテリ10Bと、第1スイッチユニット80Aと、第2スイッチユニット80Bと、第1駆動部20Aと、第2駆動部20Bと、制御部32とを備えている。電源装置1Aは、第1バッテリ10A及び第2バッテリ10Bを備えた所謂ツーバッテリの装置である。
【0043】
第1スイッチユニット80Aは、電流センサ付きのFETであり、例えば、IPD(Intelligent Power Device)が用いられる。第1スイッチユニット80Aは、第1スイッチとしてのFETQ1と、第1電流センサ31aとを含んで構成される。FETQ1は、第1バッテリ10Aと第2負荷部2Bとの間に設けられ、第1バッテリ10Aから第2負荷部2Bに正方向P1に流れる電流を通電又は遮断する。第1電流センサ31aは、正方向P1に流れる電流に応じた第1検出電圧を検出する。第1電流センサ31aは、制御部32に接続され、検出した第1検出電圧を制御部32に出力する。
【0044】
第2スイッチユニット80Bは、電流センサ付きのFETであり、例えば、IPDが用いられる。第2スイッチユニット80Bは、第2スイッチとしてのFETQ2と、第2電流センサ31bとを含んで構成される。FETQ2は、第2バッテリ10Bと第1負荷部2Aとの間に設けられ、第2バッテリ10Bから第1負荷部2Aに負方向P2に流れる電流を通電又は遮断する。第2電流センサ31bは、負方向P2に流れる電流に応じた第2検出電圧を検出する。第2電流センサ31bは、制御部32に接続され、検出した第2検出電圧を制御部32に出力する。制御部32は、第1電流センサ31aから出力された第1検出電圧に基づいて正方向P1に流れる通電電流Iを求め、第2電流センサ31bから出力された第2検出電圧に基づいて負方向P2に流れる通電電流Iを求める。この構成により、第2実施形態に係る電源装置1Aは、第1及び第2電流センサ31bにより通電電流Iを検出するので、正方向P1に流れる通電電流I及び負方向P2に流れる通電電流Iをそれぞれ適正に検出することができる。この構成により、電源装置1Aは、双方向に流れる通電電流Iを適正に検出することができ、通電電流Iに基づいて算出される双方向回路Eの熱量に応じて当該双方向回路Eを適正に遮断することができる。
【0045】
なお、FETQ1、Q2は、Nチャネル型のMOSFETに限定されず、例えば、Pチャネル型のMOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar TransiSor)、バイポーラトランジスタ等の半導体スイッチを用いてもよい。
【0046】
また、電源装置1、1Aは、第1バッテリ10A及び第2バッテリ10Bを備える双方向回路Eについて説明したが、これに限定されない。電源装置1、1Aは、例えば、2つ以上のバッテリを備えてもよい。また、電源装置1、1Aは、双方向に電流が流れる回路であればよく、例えば、第1バッテリ10A及び発電機等を備える双方向回路Eであってもよい。
【0047】
また、正方向遮断閾値及び負方向遮断閾値は、それぞれ異なる閾値である例について説明したが、これに限定されない。正方向遮断閾値及び負方向遮断閾値は、例えば、熱抵抗「Rth」及び熱容量「Cth」が正方向P1及び負方向P2で同じ場合、同じ閾値であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1、1A 電源装置
10A 第1バッテリ(第1電力供給部)
10B 第2バッテリ(第2電力供給部)
30 電流検出装置
31 電流センサ
31a 第1電流センサ
31b 第2電流センサ
32 制御部
80A 第1スイッチユニット
80B 第2スイッチユニット
E 双方向回路
I 通電電流
P1 正方向
P2 負方向
Q1 FET(スイッチ、第1スイッチ)
Q2 FET(スイッチ、第2スイッチ)
V1 検出電圧
Vth 基準電圧