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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】ミキサ車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/16 20060101AFI20220808BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20220808BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20220808BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20220808BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20220808BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B60P3/16 A
B28C5/42
B60P3/16 C
F02D29/00 B
F02D29/04 C
F15B11/00 F
F15B11/02 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018199112
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020066292
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】土田 幸右
(72)【発明者】
【氏名】遠山 祥敬
(72)【発明者】
【氏名】池上 慎也
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-220884(JP,A)
【文献】特開2010-228152(JP,A)
【文献】特開2013-022960(JP,A)
【文献】特開2006-239942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16
B28C 5/42
F02D 29/00
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを積載するドラムと、
前記ドラムを駆動する可変容量式の油圧モータと、
前記油圧モータを駆動する作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、
前記油圧モータのモータ容量、前記油圧ポンプのポンプ容量及び前記エンジンのエンジン回転数を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、
前記エンジン回転数をアイドル回転数に設定した上で、前記ドラムのドラム回転数が操作装置の操作に応じた目標ドラム回転数となり、かつ前記油圧モータの駆動圧が所定駆動圧より高ければ前記駆動圧が下がり、前記駆動圧が前記所定駆動圧より低ければ前記駆動圧が上がるように、前記モータ容量及び前記ポンプ容量の少なくとも一方を制御するポンプ制御域の制御機能と、
前記ポンプ容量を所定容量に設定した上で、前記ドラム回転数が前記目標ドラム回転数となり、かつ前記駆動圧が前記所定駆動圧よりも高ければ前記駆動圧が下がり、前記駆動圧が前記所定駆動圧よりも低ければ前記駆動圧が上がるように、前記モータ容量及び前記エンジン回転数の少なくとも一方を制御するエンジン制御域の制御機能と
を備えるミキサ車。
【請求項2】
コンクリートを積載するドラムと、
前記ドラムを駆動する可変容量式の油圧モータと、
前記油圧モータを駆動する作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、
前記油圧モータのモータ容量、前記油圧ポンプのポンプ容量及び前記エンジンのエンジン回転数を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、
前記エンジン回転数をアイドル回転数に設定した上で、前記油圧モータの駆動圧が所定駆動圧でかつ前記ドラムのドラム回転数が操作装置の操作に応じた目標ドラム回転数となるように、前記モータ容量及び前記ポンプ容量の少なくとも一方を制御するポンプ制御域の制御機能と、
前記ポンプ容量を所定容量に設定した上で、前記駆動圧が前記所定駆動圧でかつ前記ドラム回転数が前記目標ドラム回転数となるように、前記モータ容量及び前記エンジン回転数の少なくとも一方を制御するエンジン制御域の制御機能とを備え、
前記制御装置は、操作に応じた前記ドラム回転数の変化率が制限値を超える場合、前記ドラム回転数の変化率を制限値で制限するミキサ車。
【請求項3】
コンクリートを積載するドラムと、
前記ドラムを駆動する可変容量式の油圧モータと、
前記油圧モータを駆動する作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、
前記油圧モータのモータ容量、前記油圧ポンプのポンプ容量及び前記エンジンのエンジン回転数を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、
前記エンジン回転数をアイドル回転数に設定した上で、前記油圧モータの駆動圧が所定駆動圧でかつ前記ドラムのドラム回転数が操作装置の操作に応じた目標ドラム回転数となるように、前記モータ容量及び前記ポンプ容量の少なくとも一方を制御するポンプ制御域の制御機能と、
前記ポンプ容量を所定容量に設定した上で、前記駆動圧が前記所定駆動圧でかつ前記ドラム回転数が前記目標ドラム回転数となるように、前記モータ容量及び前記エンジン回転数の少なくとも一方を制御するエンジン制御域の制御機能とを備え、
前記制御装置は、前記油圧モータのモータ容量を最大にして前記ドラムを停止させるミキサ車。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか1つのミキサ車において、前記制御装置は、前記操作装置が操作されると前記モータ容量を最大に設定した上で前記ポンプ制御域の制御を実行し、前記ポンプ制御域の制御では前記目標ドラム回転数で前記ドラムを駆動できない場合に前記エンジン制御域の制御に切り換えるミキサ車。
【請求項5】
請求項1-4のいずれか1つのミキサ車において、前記所定容量が前記油圧ポンプの最大容量であるミキサ車。
【請求項6】
請求項1-5のいずれかのミキサ車において、前記制御装置は、撹拌運転中においては設定された解除操作が行われた場合にのみ、前記モータ容量、前記ポンプ容量及び前記エンジン回転数を前記操作装置からの操作に応じて制御するミキサ車。
【請求項7】
請求項6のミキサ車において、前記制御装置は、前記操作装置により混練運転の開始操作が行われた場合、前記駆動圧を基に混練時間及び前記ドラム回転数を含む混練条件を決定し前記混練運転を実行するミキサ車。
【請求項8】
請求項6又は7のミキサ車において、前記制御装置は、前記操作装置により洗浄運転の開始操作が行われた場合、前記駆動圧を基に投入方向回転量、排出方向回転量を含む洗浄条件を決定し前記洗浄運転を実行するミキサ車。
【請求項9】
請求項8のミキサ車において、前記制御装置は、前記駆動圧の波形を基に前記ドラムを予め設定されたスタート位置まで回転させてから前記洗浄運転を実行するミキサ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミキサ車に関する。
【背景技術】
【0002】
ミキサ車には生コンクリートを積載して回転するドラムが搭載されている。この種のミキサ車には、ドラム駆動用の可変容量型の油圧モータ、油圧モータを駆動する作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプを備えたものがある(特許文献1等参照)。このような構成の場合、油圧モータの容量、油圧ポンプの容量や回転数によってドラム回転数を調整することができる。油圧ポンプは一般に車両用のエンジンで駆動されるため、油圧ポンプの回転数はエンジン回転数により制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3753663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ドラム回転数を低速域で調整する場合には、エンジンをアイドル回転数で駆動すると同時に油圧モータの容量を大容量で固定し、油圧ポンプの容量を制御する。ドラム回転数を中速域で調整する場合には、エンジンをアイドル回転数で駆動すると同時に油圧モータの容量を小容量で固定し、油圧ポンプの容量を制御する。ドラム回転数を高速域で調整する場合には、油圧ポンプの容量を最大にすると同時に油圧モータの容量を小容量で固定し、エンジン回転数を制御する。このように同文献の装置では、低速域及び中速域においてエンジンがアイドル回転数で駆動されるため騒音が抑えられるメリットがある。しかし、単純にエンジンをできる限りアイドル回転数で駆動してドラム回転数を調整するというだけで、エネルギー効率や作業効率について改善の余地を残している。
【0005】
本発明の目的は、ドラム動作時の騒音を抑制できると共に、消費エネルギーの抑制と作業効率の向上の観点でバランスのとれた条件でドラムを駆動できるミキサ車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、コンクリートを積載するドラムと、前記ドラムを駆動する可変容量式の油圧モータと、前記油圧モータを駆動する作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記油圧モータのモータ容量、前記油圧ポンプのポンプ容量及び前記エンジンのエンジン回転数を制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記エンジン回転数をアイドル回転数に設定した上で、前記ドラムのドラム回転数が操作装置の操作に応じた目標ドラム回転数となり、かつ前記油圧モータの駆動圧が所定駆動圧より高ければ前記駆動圧が下がり、前記駆動圧が前記所定駆動圧より低ければ前記駆動圧が上がるように、前記モータ容量及び前記ポンプ容量の少なくとも一方を制御するポンプ制御域の制御機能と、前記ポンプ容量を所定容量に設定した上で、前記ドラム回転数が前記目標ドラム回転数となり、かつ前記駆動圧が前記所定駆動圧よりも高ければ前記駆動圧が下がり、前記駆動圧が前記所定駆動圧よりも低ければ前記駆動圧が上がるように、前記モータ容量及び前記エンジン回転数の少なくとも一方を制御するエンジン制御域の制御機能とを備える。
また、本発明は、コンクリートを積載するドラムと、前記ドラムを駆動する可変容量式の油圧モータと、前記油圧モータを駆動する作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記油圧モータのモータ容量、前記油圧ポンプのポンプ容量及び前記エンジンのエンジン回転数を制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記エンジン回転数をアイドル回転数に設定した上で、前記油圧モータの駆動圧が所定駆動圧でかつ前記ドラムのドラム回転数が操作装置の操作に応じた目標ドラム回転数となるように、前記モータ容量及び前記ポンプ容量の少なくとも一方を制御するポンプ制御域の制御機能と、前記ポンプ容量を所定容量に設定した上で、前記駆動圧が前記所定駆動圧でかつ前記ドラム回転数が前記目標ドラム回転数となるように、前記モータ容量及び前記エンジン回転数の少なくとも一方を制御するエンジン制御域の制御機能とを備え、前記制御装置は、操作に応じた前記ドラム回転数の変化率が制限値を超える場合、前記ドラム回転数の変化率を制限値で制限する。
また、本発明は、コンクリートを積載するドラムと、前記ドラムを駆動する可変容量式の油圧モータと、前記油圧モータを駆動する作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記油圧モータのモータ容量、前記油圧ポンプのポンプ容量及び前記エンジンのエンジン回転数を制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記エンジン回転数をアイドル回転数に設定した上で、前記油圧モータの駆動圧が所定駆動圧でかつ前記ドラムのドラム回転数が操作装置の操作に応じた目標ドラム回転数となるように、前記モータ容量及び前記ポンプ容量の少なくとも一方を制御するポンプ制御域の制御機能と、前記ポンプ容量を所定容量に設定した上で、前記駆動圧が前記所定駆動圧でかつ前記ドラム回転数が前記目標ドラム回転数となるように、前記モータ容量及び前記エンジン回転数の少なくとも一方を制御するエンジン制御域の制御機能とを備え、前記制御装置は、前記油圧モータのモータ容量を最大にして前記ドラムを停止させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドラム動作時の騒音を抑制できると共に、消費エネルギーの抑制と作業効率の向上の観点でバランスのとれた条件でドラムを駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るミキサ車の外観を表す側面図
図2】本発明の一実施形態に係るミキサ車のドラム駆動系を模式的に表した図
図3】本発明の一実施形態に係るミキサ車に備えられた制御装置によるドラムの運転切換の制御手順を表したフローチャート
図4】自動混練動作(図3のステップS200)の手順の詳細を表したフローチャート
図5】自動混練運転時のドラム回転数のタイムチャート
図6】自動洗浄運転(図3のステップS300)の手順の詳細を表したフローチャート
図7】自動洗浄運転時のドラム回転量の説明図
図8】手動運転に応じたドラム制御(図3のステップS400)の手順の詳細を表したフローチャート
図9】ドラム回転数の増速率の制限の説明図
図10】ドラム回転数の減速率の制限の説明図
図11】ドラムの駆動圧に対する閾値とモータ容量の関係の説明図
図12】手動運転に用いる動作条件マップの概念図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
-ミキサ車-
図1は本発明の一実施形態に係るミキサ車の外観を表す側面図、図2はドラム駆動系を模式的に表した図である。本願明細書においては図1における左右を前後として扱う。図1及び図2に示したミキサ車は、車体10、ドラム20、ホッパ30、シュート35、油圧モータ40、油圧ポンプ50、エンジン60、圧力センサ71,72、回転センサ73,74、制御装置80及び操作装置90を備えている。なお、本願明細書に記載する「変化率」とは単位時間当たりの変化の大きさをいい、「回転数」とは単位時間当たりの回転数(例えばrpm)をいう。
【0011】
車体10は、運転室11及びシャシフレーム12を備えている。運転室11は車体10の前部を構成している。シャシフレーム12は運転室11から後方に延びている。運転室11の下側には上記のエンジン60が配置されている。エンジン60は、車体10を走行させると共に油圧ポンプ50を駆動する。運転室11の内部にはパーキングブレーキ13(図2)が設けられている。また運転室11の内外にはブザーやランプ等といった警告装置14(図2)が設けられている。
【0012】
ドラム20はコンクリート等を積載して撹拌したり混練したりする装置であり、ドラム本体21及び2条のブレード22,23(図7)を有している。ドラム本体21は円筒状に形成されており、その中心軸方向の一方側(前方)にドラム本体21に対して固定関係にある回転軸24が突出し、他方側(後方)の端部が開口している。回転軸24は油圧モータ40の出力軸に連結されている。油圧モータ40は架台25を介してシャシフレーム12の前部に支持されている。ドラム本体21の後部は架台26を介してシャシフレーム12の後部に支持されている。架台26には複数の支持ローラ(不図示)が備わっており、これら支持ローラにドラム本体21の外周面が支持されている。ドラム本体21の中心軸は後方に向かって上向きに傾斜しており、ドラム本体21の開口は後向き斜め上を向いている。油圧モータ40が駆動されるとドラム本体21は中心軸周りに回転する。2枚のブレード22,23(図7)は螺旋状に形成されており、180度位相をずらしてドラム本体21の内壁面に固定されている。
【0013】
ホッパ30はコンクリートの原料等を受け入れてドラム本体21の内部に導く部材であり、上向きに広く開口した投入口からドラム本体21の開口に臨む排出口に向かって窄まっている。
【0014】
シュート35はドラム本体21から排出されたコンクリート等をガイドする樋状の部材であり、ドラム本体21の開口の下方に基端部が位置している。シュート35は基端部を中心に水平方向及び上下方向に回動自在に支持されており、先端部を移動させることでコンクリート等を排出する場所を移動させることができる。
【0015】
油圧モータ40はドラム20を回転駆動するものであり、上記の通りシャシフレーム12に搭載され、出力軸が減速機(不図示)を介してドラム20の回転軸24に連結されている。油圧モータ40は可変容量型でレギュレータ41を備えており、レギュレータ41により傾転(モータ容量Vm)を変化させることで作動油の供給流量に対する回転数が無段階に切り換えられる。
【0016】
油圧ポンプ50は油圧モータ40を駆動する作動油を吐出するものであり、シャシフレーム12に搭載されている。油圧ポンプ50も油圧モータ40と同じく可変容量型でレギュレータ51を備えており、レギュレータ51により傾転(ポンプ容量Vp)を変化させることで作動油の吐出流量が無段階に切り換えられる。油圧モータ40及び油圧ポンプ50は、作動油の入出力ポートを2個ずつ備え、2本の流路52によりループ状に接続されて閉回路を構成している。油圧ポンプ50の回転方向を例えばギアで切り換えることで流路52を流れる作動油の流通方向が切り換わり、油圧モータ40の回転方向ひいてはドラム20の回転方向が切り換わる。
【0017】
エンジン60は油圧ポンプ50を駆動する原動機であり、油圧ポンプ50はエンジン60の動力取り出し軸61に連結されている。このエンジン60には、出力を調整するスロットル調整器62が備わっている。エンジン60の代わりに電動モータを原動機として用いる場合もある。
【0018】
圧力センサ71,72は油圧モータ40ひいてはドラム20の駆動圧Pを検出する計器であり、圧力センサ71は一方の流路52に、圧力センサ72は他方の流路52に設置されている。圧力センサ71,72により検出された駆動圧Pは制御装置80に入力され、制御装置80においては値の大きな方が油圧モータ40の駆動圧Pとして選択される。例えば油圧ポンプ50の図2中の下側の入出力ポートから作動油が吐出されるとドラム20が正転(混練等)し、上側の入出力ポートから作動油が吐出されるとドラム20が逆転(排出等)する。ドラム20の正転時の油圧モータ40の駆動圧Pは圧力センサ71により、逆転時の駆動圧Pは圧力センサ72により検出される。
【0019】
回転センサ73はエンジン回転数Neを検出する計器であり、本実施形態ではエンジン60に備わっているが、油圧ポンプ50や動力取り出し軸61に設けても良い。回転センサ74はドラム回転数Ndを検出する計器であり、本実施形態ではドラム本体21の回転軸24の回転を検出する。
【0020】
制御装置80は、油圧モータ40のモータ容量Vm、油圧ポンプ50のポンプ容量Vp及びエンジン60のエンジン回転数Ne等を制御してドラム20を駆動する機能を備えている。この制御装置80は、CPUやRAM、ROM、メモリ等を備えたコンピュータであり、例えばROMに予め格納されたプログラムに従って、操作装置90や圧力センサ71,72、回転センサ73,74等のセンサからの信号に応じてドラム20等を駆動する。制御装置80はパーキングブレーキ13や警告装置14とも電気的に接続されている。制御装置80により実行される各種の制御については後述する。
【0021】
操作装置90はドラム20等の動作を指令する入力装置であり、ダイヤル91、停止スイッチ92、自動混練スイッチ93、自動洗浄スイッチ94、自動撹拌スイッチ95等を備えている。操作装置90は図2では代表して1つのみ図示してあるが、運転室11の内部、車体10の後部等の複数個所に設けられている。操作装置90は制御装置80に有線又は無線で接続しており、操作装置90から出力された操作信号は制御装置80に入力される。
【0022】
-ドラム制御(運転切換)-
図3は制御装置80によるドラム20の運転切換の制御手順を表したフローチャートである。同図の手順はエンジン60が始動されて制御装置80に通電されると開始される。
【0023】
制御装置80はまず、操作装置90のいずれかのスイッチが操作されているかを判定する。本実施形態ではまず、制御装置80は停止スイッチ92が操作されているかを判定し(ステップS5)、操作されていれば警告装置14に警告動作を出力すると共に(ステップS501)、ドラム20を停止状態とする(ステップS502)。ステップS502においては、制御装置80はエンジン60が停止する(電源がオフになる)まで油圧モータ40のモータ容量Vmを最大にした状態でドラム20を停止させ、以降の全ての操作を無効にして図3のフローを終了する。なお、停止スイッチ92が操作された場合に以降の全ての操作を無効にするのではなく、ドラム20の動作が停止するまで全ての操作を無効にし(ドラム停止を待って)ステップS1に手順を戻すフローにしても良い。また、図3のフローチャートには表していないが、停止スイッチ92によるドラム停止操作はドラム20の運転中の常時有効である。後で説明する撹拌運転(ステップS100)、混練運転(ステップS200)、洗浄運転(ステップS300)、手動運転(ステップS400)の各実行中を含め、ドラム20の動作中に停止スイッチ92が操作された場合、ドラム20の動作は停止する。
【0024】
停止スイッチ92が操作されていない場合(ステップS5)、制御装置80は例えば自動撹拌スイッチ95が操作されているかを判定する(ステップS1)。自動撹拌スイッチ95が操作されていれば、制御装置80は撹拌運転を実行し(ステップS100)、ステップS101-S105(後述)を経てステップS600に手順を移す。自動撹拌スイッチ95が操作されていない場合、制御装置80は例えば自動混練スイッチ93が操作されているかを判定し(ステップS2)、操作されていれば混練運転を実行し(ステップS200)、ステップS600に手順を移す。自動混練スイッチ93も操作されていない場合、制御装置80は例えば自動洗浄スイッチ94が操作されているかを判定し(ステップS3)、操作されていれば洗浄運転を実行し(ステップS300)、ステップS600に手順を移す。自動洗浄スイッチ94も操作されていない場合、制御装置80は例えばダイヤル91が操作されているかを判定し(ステップS4)、操作されていればダイヤル91の操作に応じてドラム20を駆動し(ステップS400)、ステップS600に手順を移す。ダイヤル91も操作されていない場合、制御装置80は何もせずステップS600に手順を移す。
【0025】
ここで、撹拌運転はミキサ車の走行中にドラム20に積載したコンクリートが固まらないようにドラム20を低速で回転(正転)させて内部のコンクリートを撹拌する動作である。撹拌運転は例えば運転室11に搭載した操作装置90で自動撹拌スイッチ95を操作することにより開始されるが(S100)、これによりインターロックが機能して各操作装置90の停止スイッチ92の操作を除く操作が原則無効となる。例えば誤操作によりドラム20が逆転駆動され、積載したコンクリートが路上に飛散するようなことを避けるためである。
【0026】
そこで、本実施形態では撹拌運転開始後のインターロックを解除するのに一定の条件を設けている。撹拌運転の実行中、制御装置80は、操作信号を基にいずれかの操作装置90で解除操作(優先操作)が行われたか否かを判定する(ステップS101)。解除操作とは、例えばダイヤル91を中立位置から正転方向(例えば右回り)に一定以上回転操作してから一定時間内に逆転方向(例えば左回り)に回転操作して中立位置まで戻すといったような所定の手続きであり、事前に設定されてメモリに登録されている。解除操作が行われない場合、制御装置80はステップS101からステップS104に手順を移し、原則通り各々の操作装置90について停止操作のみを有効とする設定とする(ステップS104)。この設定下では、仮にいずれかの操作装置90により停止スイッチ92以外のスイッチ(例えばダイヤル91)が操作されても、制御装置80で操作無効と判定されて対応する作動装置に指令が出力されることはない。
【0027】
他方、いずれかの解除操作が行われた場合は、その操作した操作装置90の操作についてインターロックが解除される。また、解除操作が行われると操作装置90の自動撹拌スイッチ95はオフになる。その際、制御装置80は運転室11でパーキングブレーキ13が操作されているか(ブレーキオンであるか)を判定し(ステップS102)、操作されていればそのまま(ステップS103を経由することなく)インターロックを解除する(ステップS105)。インターロックが解除された操作装置90については全ての操作が有効となり、次回(リターン直後)のサイクルでその操作装置90により何らかの操作が行われれば、制御装置80は対応する作動装置に操作に応じた指令を出力する。
【0028】
解除操作が行われてもパーキングブレーキ13が操作されていなければ、制御装置80は警告装置14に指令して警告動作を実行した上で(ステップS103)インターロックを解除する(ステップS105)。ドラム20の動作指示はパーキングブレーキ13が機能している状態で行われるのが原則であるが、例えば走行しながらコンクリートをドラム20から排出する作業が稀にある。そのため、警告動作と共に行うことを条件として、パーキングブレーキ13が機能していない状態でもドラム20の動作指示を許容することとしている。いずれにしても、撹拌運転中においては所定の解除操作が行われた操作装置90でしか、モータ容量Vm、ポンプ容量Vp及びエンジン回転数Neを操作することができない。なお、警告動作については、本実施形態ではステップS501,S103の他、排出動作中や各種エラー発生時にも実行されるようになっている。
【0029】
ステップS104,S105,S200,S300,S400,S5のいずれかの処理の実行後、制御装置80は回転センサ73の信号を基に、エンスト等の動作異常によりエンジン回転数Neが0(ゼロ)になっていないかを判定する(ステップS600)。制御装置80は、エンジン回転数Neが0であればポンプ容量Vp及びモータ容量Vmの設定をリセットして(ステップS601)ステップS1に手順を戻し、エンジン回転数Neが0でなければ設定を保ってステップS1に手順を戻す。
【0030】
-自動混練運転-
図4は自動混練運転(図3のステップS200)の手順の詳細を表したフローチャート、図5は自動混練運転時のドラム回転数のタイムチャートである。
【0031】
図4の手順は図3のステップS2で自動混練スイッチ93が操作された場合に実行され、制御装置80はまず自動混練スイッチ93の操作が有効であるかを判定する(ステップS201)。図3のステップS104,S600,S1,S2に連続してステップS201の判定を実行する場合、自動混練スイッチ93の操作は無効である。そのため、制御装置80は図4の残りの手順を実行することなくステップS200の手順を終えて図3のステップS600に手順を移す。自動混練スイッチ93の操作が有効である場合、制御装置80は圧力センサ71,72の信号(駆動圧P)を入力する(ステップS202)。駆動圧Pの安定値を取得するため、予め設定された判定用の回転数Nd1(ポンプ容量Vp、モータ容量Vm、エンジン回転数Neとも設定値)で予め設定された判定時間T1(例えば数秒)だけドラム20を駆動する。制御装置80は、その間の圧力センサ71,72の信号に基づいて駆動圧Pを取得する(図5)。一例としては、判定時間T1の間の検出値の平均値を駆動圧Pとして算出することができる。回転数Nd1は例えば7-8rpm程度である。
【0032】
次に、制御装置80は、駆動圧Pに基づき、駆動圧Pに対する混練時間T2、ドラム回転数Ndを決定する(ステップS203)。制御装置80の例えばROMには、駆動圧Pに対する混練時間T2、ドラム回転数Nd及びモータ容量Vmの関係を規定した混練条件マップ(リファレンステーブル)が格納されている。ステップS203では、操作装置90により混練運転の開始操作が行われた場合、この混練条件マップに従って駆動圧Pを基に混練時間T2、ドラム回転数Nd及びモータ容量Vmが決定される。混練条件マップに従えば、例えば駆動圧Pが高い程(例えばコンクリートの粘度が高い程)、混練時間T2は長くドラム回転数Ndは速く設定されるようになっている。ドラム回転数Ndはモータ容量Vm、ポンプ容量Vp、エンジン回転数Neにより決まるため、混練条件マップによりドラム回転数Ndとモータ容量Vmが決まれば、後はポンプ容量Vpとエンジン回転数Neを決定すれば動作条件が揃う。混練条件マップでポンプ容量Vpやエンジン回転数Neを含めて動作条件が一義的に決定されるようにしても良いが、本実施形態ではモータ容量Vmを最大値に固定し、可能な限り低いエンジン回転数Neを選択する条件下でポンプ容量Vpを決定することとする。ポンプ容量Vpの制御範囲では混練条件マップで駆動圧Pに対応付けられたドラム回転数Ndを出せない場合にのみ、ポンプ容量Vpを最大にしてアイドル回転数Nminよりも高いエンジン回転数Neを決定する。なお、本実施形態では混練条件を混練条件マップで決定する場合を例に挙げたが、リファレンステーブルに代えて所定の計算式を用いて駆動圧Pから混練条件を決定する構成とすることもできる。
【0033】
上記の通り、混練時間T2、モータ容量Vm、ポンプ容量Vp、エンジン回転数Neを決定したら、制御装置80はレギュレータ41,51(図2)及びスロットル調整器62(同)に指令信号を出力する(ステップS204)。これによりドラム20が駆動圧Pに応じたドラム回転数Ndで駆動され、混練運転が実行される。混練運転の実行中、制御装置80は混練運転の継続時間Tを混練時間T2と比較し(ステップS205)、混練時間T2の経過前であればステップS204に手順を戻してドラム20の回転数を維持する。継続時間Tが混練時間T2に到達したら、制御装置80は、ドラム20の駆動速度を減速させて(図5)自動混練運転実行前の元の回転数Nd0(例えば撹拌運転の回転数や停止状態)に復帰させる(ステップS206)。同時に、制御装置80は操作装置90の自動混練スイッチ93をオフにする。ステップS206におけるドラム回転数Ndの減速率には例えば後述する制限値ΔNlimを適用することができる。ドラム回転数Ndが元の回転数Nd0に復帰したら、制御装置80は図4の自動混練運転の手順を終えて図3のステップS600に手順を移す。
【0034】
-自動洗浄運転-
図6は自動洗浄運転(図3のステップS300)の手順の詳細を表したフローチャート、図7は自動洗浄運転時のドラム回転量の説明図である。以下に説明する自動洗浄運転に先行して、ドラム20の中には適当量(ドラム20の大きさによるが、例えば0.25-1.0kL)の洗浄水が注入されていることとする。
【0035】
図6の手順は図3のステップS3で自動洗浄スイッチ94が操作された場合に実行され、制御装置80はまず自動洗浄スイッチ94の操作が有効であるかを判定する(ステップS301)。図3のステップS104,S600,S1-S3に連続してステップS301の判定を実行する場合、自動洗浄スイッチ94の操作は無効である。そのため、制御装置80は図6の残りの手順を実行することなくステップS300の手順を終えて図3のステップS600に手順を移す。自動洗浄スイッチ94の操作が有効である場合、制御装置80は圧力センサ71,72の信号(駆動圧P)を入力する(ステップS302)。駆動圧Pの安定値を取得するため、自動混練運転時と同様に判定用の回転数Nd1で判定時間T1だけドラム20を駆動する。回転数Nd1及び判定時間T1には自動混練運転用の値と同じ値を設定しても良いが、異なる値を設定しても良い。制御装置80は、その間の圧力センサ71,72の信号に基づいて駆動圧Pを取得する。一例としては、判定時間T1の間の検出値の平均値を駆動圧Pとして算出することができる。このとき、制御装置80により駆動圧Pの波形もメモリやRAM等に記憶されるように構成しておく。
【0036】
次に、制御装置80は、駆動圧Pに基づき、駆動圧Pに対するドラム回転量を決定する(ステップS303)。制御装置80の例えばROMには、駆動圧Pに対するドラム回転量(投入方向回転量及び排出方向回転量)の関係を規定した洗浄条件マップ(リファレンステーブル)が格納されている。ステップS303では、操作装置90により洗浄運転の開始操作が行われた場合、この洗浄条件マップに従って駆動圧Pを基にドラム回転量が決定される。洗浄条件マップに従えば、駆動圧Pが高い程(例えばドラム20に投入された洗浄水の水位が高い程)、ドラム回転量は少なく設定されるようになっている。このとき、例えば排出方向回転量は2回転(720度)、投入方向回転量は2.5回転(900度)といったように、排出方向回転量に比べて投入方向回転量が大きく(例えば0.5回転だけ多く大きく)設定されるようになっている。また、ドラム20を駆動するためには、モータ容量Vm、ポンプ容量Vp、エンジン回転数Neを決める必要があるが、ドラム20の積載物が水であれば負荷はさほど上がらない。そこで、モータ容量Vmは最小、エンジン回転数Neはアイドル回転数Nminに固定し、洗浄運転用の設定回転数(例えば15rpm)でドラム20が駆動するようにポンプ容量Vpを決定することとしてある。なお、本実施形態では洗浄条件を混練条件マップで決定する場合を例に挙げたが、リファレンステーブルに代えて所定の計算式を用いて駆動圧Pから洗浄条件を決定する構成とすることもできる。
【0037】
ドラム回転量、モータ容量Vm、ポンプ容量Vp、エンジン回転数Neを決定したら、制御装置80はレギュレータ41,51及びスロットル調整器62に指令信号を出力し、ドラム20を回転させて所定のスタート位置で停止させる(ステップS304)。所定のスタート位置はドラム20の予め設定された回転角度であり、例えば一方のブレード23の重心がドラム本体21の回転中心の真下に来るような角度が例示できる(図7(b))。スタート位置はステップS302で取得した駆動圧Pの波形から特定できる。例えばステップS303の実行後のドラム本体21が図7(a)のようにスタート位置と位相のずれた状態にあっても、ステップS304でドラム20をスタート位置(図7(b))まで回転させる。
【0038】
その後、制御装置80はステップS303で決定した動作条件に従ってレギュレータ41,51(図2)及びスロットル調整器(同)に指令信号を出力し、ドラム20の洗浄を実行する(ステップS305)。先の例で説明すれば、ドラム20はスタート位置(所定の回転角度)から例えば排出方向に回転(上記の例では2回転)し、続けて投入方向に回転(上記の例では2.5回転)する。この正転・逆転を1回実行した時点では、投入方向への回転量が半回転多いためドラム20がスタート位置から180度回転した状態となる(図7(c))。この正転・逆転を予め設定された回数(数回、例えば4回)繰り返し実行したら、制御装置80は、図6の自動洗浄運転の手順を終えて図3のステップS600に手順を移す。その際、自動洗浄運転の手順を終えると同時に、制御装置80は操作装置90の自動洗浄スイッチ94をオフにする。図6の手順を終える際、制御装置80はドラム20の駆動速度を自動洗浄運転実行前の元の回転数Nd0(例えば撹拌運転の回転数や停止状態)に復帰させる。
【0039】
-手動運転-
図8は手動運転に応じたドラム制御(図3のステップS400)の手順の詳細を表したフローチャート、図9はドラム回転数の増速率の制限、図10はドラム回転数の減速率の制限の説明図である。また図11はドラム20の駆動圧Pに対する閾値とモータ容量Vmの関係の説明図、図12は手動運転に用いる動作条件マップの概念図である。手動運転とはオペレータがドラム回転数Ndをダイヤル91で任意に調整してドラム20を駆動することを指し、コンクリート等の混練作業やドラム20の洗浄作業もダイヤル91を用いて手動で実施することができる。
【0040】
図8の手順は図3のステップS4でダイヤル91が操作された場合に実行され、制御装置80はまずダイヤル91の操作が有効であるかを判定する(ステップS401)。図3のステップS104,S600,S1-S4に連続してステップS401の判定を実行する場合、ダイヤル91の操作は無効である。そのため、制御装置80は図8の残りの手順を実行することなくステップS400の手順を終えて図3のステップS600に手順を移す。ダイヤル91の操作が有効である場合、制御装置80はダイヤル91の操作(操作の方向と大きさ)に応じた目標ドラム回転数Ntを演算する(ステップS402)。本例の場合、例えばダイヤル91を中立位置から右回りに操作すると操作の大きさに応じて正転方向の目標ドラム回転数Ntが演算され、ダイヤル91を中立位置から左回りに操作すると操作の大きさに応じて逆転方向の目標ドラム回転数Ntが演算される。
【0041】
目標ドラム回転数Ntを演算したら、制御装置80は目標ドラム回転数Ntが0(ゼロ)以外であるか、つまりダイヤル91による指令がドラム停止を指示するものであるかを判定する(ステップS403)。目標ドラム回転数Ntが0の場合、ステップS502(図3)と同様、制御装置80は油圧モータ40のモータ容量Vmを最大にした状態でドラム20を停止させ、ステップS400の手順を終えて図3のステップS600に手順を移す(ステップS404)。目標ドラム回転数Ntが0以外である場合、制御装置80はモータ容量Vmを最大モータ容量に設定し、目標ドラム回転数Ntでドラム20を駆動するためのポンプ容量Vp及びエンジン回転数Neを演算する(ステップS405)。このとき、エンジン回転数Neを極力小さく設定する条件でポンプ容量Vpが設定される。
【0042】
次に制御装置80は、回転センサ74(図1)から入力した現在のドラム回転数Ndと目標ドラム回転数Ntとを基にドラム回転数の変化率ΔNdを演算する(ステップS406)。変化率ΔNdは、ダイヤル91の操作が増速を指示するものである場合には増速率であり、減速を指示するものである場合には減速率である。制御装置80は、演算した変化率ΔNd(例えば絶対値)を制限値ΔNlim(>0)と比較する(ステップS407)。変化率ΔNdが制限値ΔNlim以下であれば、制御装置80は現在のドラム回転数Ndに変化率ΔNdを加えた値(Nd=Nd+ΔNd)を指令ドラム回転数に設定する(ステップS408)。他方、変化率ΔNdが制限値ΔNlimより大きい場合、制御装置80は現在のドラム回転数Ndに制限値ΔNlimを加えた値(Nd=Nd+ΔNlim)を指令ドラム回転数に設定する(ステップS409)。ステップS408,S409の時点ではモータ容量Vmが最大であるため、ステップS405で設定されたエンジン回転数Neがアイドル回転数Nminであれば、アイドル回転数Nminの条件下で指令ドラム回転数に応じてポンプ容量Vpが設定される。ステップS405で設定されたポンプ容量Vpが最大であれば、最大ポンプ容量の条件下でドラム回転数の指令値に応じてエンジン回転数Neが設定される。
【0043】
その後、制御装置80はステップS408又はS409で設定した指令値をレギュレータ41,51及びスロットル調整器62に出力しドラム20を駆動する(ステップS410)。ドラム20を駆動したら、制御装置80は回転センサ74からドラム回転数Ndを入力し、これが目標ドラム回転数Ntに到達したかを判定する(ステップS411)。ドラム回転数Ndが目標ドラム回転数Ntに到達していない場合、制御装置80はステップS410,S411の手順を繰り返し、ドラム回転数Ndを目標ドラム回転数Ntに近付けていく。このドラム回転数Ndを目標ドラム回転数Ntに近付ける際の動作条件は、モータ容量Vmを最大値に固定した条件で後述するリファレンステーブルである動作条件マップ(図12)に従って設定される。ポンプ制御域(後述)ではエンジン回転数Neをアイドル回転数Nminに固定してポンプ容量Vpを上げることでドラム回転数Ndが上昇する。エンジン制御域(後述)ではポンプ容量Vpを最大値に固定してエンジン回転数Neを上げることでドラム回転数Ndが上昇する。従って、撹拌運転或いは停止状態から大きくダイヤル91を操作すると、ドラム20の動作条件はポンプ制御域からエンジン制御域に移行し、ポンプ容量Vpが最大値まで増加した後、エンジン回転数Neがアイドル回転数Nminから増加していくことになる。
【0044】
なお、ステップS411の判定は必ずしも必要なく、省略することができる。例えばドラム回転数Ndを目標ドラム回転数Ntで回転させるための指令値の目標値を算出した場合には、ステップS411の判定がなくても、レギュレータ41,51及びスロットル調整器62に出力する指令値をそれぞれ目標値まで変化させれば良い。
【0045】
ステップS406-S411の手順により、ダイヤル91の操作に応じたドラム回転数の変化率ΔNdが制限値ΔNlimを超える場合、ドラム回転数の変化率ΔNdが制限値ΔNlimで制限されるようになっている。例えば、ダイヤル91の操作に応じたドラム回転数の増速率ΔNd1(絶対値)が制限値ΔNlim以下である場合は、増速率ΔNd1でドラム回転数Ndが上昇する(図9)。減速時も同じく、ダイヤル91の操作に応じたドラム回転数の減速率ΔNd3(絶対値)が制限値ΔNlim以下である場合は、減速率ΔNd3でドラム回転数Ndが低下する(図10)。しかし、ダイヤル91の操作に応じたドラム回転数の増速率ΔNd2(絶対値)が制限値ΔNlimより大きい場合は、ドラム回転数Ndの増速率は制限値ΔNlimで制限される(図9)。減速時も同じく、ダイヤル91の操作に応じたドラム回転数の減速率ΔNd4(絶対値)が制限値ΔNlimより大きい場合は、ドラム回転数Ndの減速率は制限値ΔNlimで制限される(図10)。
【0046】
ステップS406-S411の処理を経てドラム回転数Ndが目標ドラム回転数Ntに到達したら、制御装置80は、圧力センサ71,72で検出された駆動圧Pを入力する(ステップS412)。続いて制御装置80は、駆動圧Pと閾値とを比較し(ステップS413,S414)、比較結果に応じてエンジン回転数Ne又はポンプ容量Vpを判定する(ステップS415,S416)。ステップS413,S414の処理に基いる閾値は駆動圧Pについて予め設定された値(適正値)であり、例えばROMに予め格納されている。この閾値は幅のない値でも良いが、本実施形態では図11に示した通り下限値P1及び上限値P2を持つ範囲として設定してある。本実施形態においては、同図に示したようにモータ容量Vmが大きいほど閾値(下限値P1及び上限値P2)が小さくなるように設定されている。
【0047】
ここで、制御装置80には、例えばROMにドラム回転数Ndの動作条件マップ(リファレンステーブル)が格納されている。この動作条件マップは、図12に示したように、モータ容量Vm、ポンプ容量Vp、エンジン回転数Ne及びドラム回転数Ndの関係を規定したものである。同図では模式化してあるが、動作条件マップは、横軸にモータ容量Vm、縦軸にドラム回転数Ndをとり、モータ容量Vmとドラム回転数Ndで定まるマップ上の各動作点(Vm,Nd)について他の条件(ポンプ容量Vp、エンジン回転数Ne)が設定してある。ポンプ容量Vpとエンジン回転数Neについては、各動作点においてエンジン回転数Neが最小となる(極力小さくなる)ように設定してある。結果として、動作条件マップは、エンジン回転数Neが一定のポンプ制御域と、ポンプ容量Vpが一定のエンジン制御域に区画される(図12)。ポンプ制御域ではエンジン回転数Neがアイドル回転数Nminに固定され、動作点毎にポンプ容量Vpの値が異なっている(同一のドラム回転数Ndであれば同図中の左側の動作点程ポンプ容量Vpが小さくなる)。エンジン制御域ではポンプ容量Vpが最大ポンプ容量で固定され、動作点毎にエンジン回転数Neの値が異なっている(同一のドラム回転数Ndであれば同図中の左側の動作点程エンジン回転数Neが小さくなる)。横軸のモータ容量Vmと縦軸のドラム回転数Ndが定まれば、制御装置80は、この動作条件マップを参照することでポンプ容量Vp及びエンジン回転数Neを一義的に決定できる。動作点がポンプ制御域に属する場合、ポンプ容量Vpを減少(増加)させることで、モータ容量Vmを減少(増加)させてもドラム回転数Ndを維持することができる。動作点がエンジン制御域に属する場合、エンジン回転数Neを低下(上昇)させることで、モータ容量Vmを減少(増加)させてもドラム回転数Ndを維持することができる。例えばモータ容量Vmを最大に設定し所定のドラム回転数Ndでドラム20を駆動する場合、エンジン制御域に属する動作点X(図12)ではポンプ容量Vpが最大でエンジン回転数Neがアイドル回転数Nminよりも大きい動作条件となる。この動作点Xを始点として、エンジン回転数Neと共にモータ容量Vmを減少させることで、ドラム回転数Ndを一定に保って動作点をマップ上の左側に移動させてポンプ制御域に近付けられる(同図の範囲A)。エンジン回転数Neがアイドル回転数Nminまで下がって動作点Xがポンプ制御域に移った後は、ポンプ容量Vpと共にモータ容量Vmを減少させることで、ドラム回転数Ndを一定に保って動作点を更にマップ上の左へ移動させることができる(同図の範囲B)。いずれの制御域であっても、モータ容量Vmを最小値(例えば15cc)から最大値(例えば60cc)の間で滑らかに変化させることでドラム回転数Neの変化率が図9図10で説明したように制限される。
【0048】
なお、本実施形態では動作に応じた動作条件マップに基づいてドラム回転数Ndに関連する作動装置を制御する場合を例に挙げたが、リファレンステーブルに代えて所定の計算式を用いる構成とすることもできる。ダイヤル操作量に応じた油圧モータ40の所要回転数と現在のモータ容量Vmとの積から所要のエンジン回転数Neとポンプ容量Vpを計算することができ、ダイヤル操作量に応じたドラム回転数Ndは計算式で表すことができる。
【0049】
ステップS413,S414の判定の結果、駆動圧Pが閾値に一致している場合(P1≦P≦P2)、制御装置80は図8の手順を終えて図3のステップS600に手順を移す。ステップS413-S416の判定の結果、駆動圧Pが下限値P1より小さくエンジン回転数Neがアイドル回転数Nminである場合(Ne=Nmin)、制御装置80はドラム回転数Ndを維持しつつモータ容量Vm及びポンプ容量Vpを減少補正する(ステップS417)。駆動圧Pが下限値P1より小さくエンジン回転数Neがアイドル回転数Nminより大きい場合(Ne>Nmin)、制御装置80はドラム回転数Ndを維持しつつモータ容量Vm及びエンジン回転数Neを減少補正する(ステップS418)。駆動圧Pが上限値P2より大きくポンプ容量Vpが最大である場合(Vp=max)、制御装置80はドラム回転数Ndを維持しつつモータ容量Vm及びエンジン回転数Neを増加補正する(ステップS419)。駆動圧Pが上限値P2より大きくポンプ容量Vpが最大よりも小さい場合(Vp<max)、制御装置80はドラム回転数Ndを維持しつつモータ容量Vm及びポンプ容量Vpを増加補正する(ステップS420)。ステップS417-S420のいずれかの補正処理を実行したら、制御装置80は圧力センサ71,72から駆動圧Pを入力し、補正後の駆動圧Pが閾値に一致しているか(P1≦P≦P2であるか)を判定する(ステップS421)。駆動圧Pが閾値に一致していなければ(P<P1,P>P2)、制御装置80はステップS412に手順を戻し、エンジン回転数Neがアイドル回転数Nmin以上であることを前提にドラム回転数Ndを保ちつつ更に動作条件を補正する。駆動圧Pが閾値に一致していれば(P1≦P≦P2)、制御装置80は図8の手順を終えて図3のステップS600に手順を移す。ステップS412-S421のフィードバック制御の結果、ダイヤル91で指定されたドラム回転数Ndをできるだけ低いエンジン回転数Neで保ちしつつ、かつ適正な駆動圧力Pでドラム20が駆動される。
【0050】
但し、ステップS421の判定は必ずしも必要なく、省略することができる。例えば駆動圧Pを閾値に一致させるためのモータ容量Vm、ポンプ容量Vp及びエンジン回転数Neを算出した場合には、ステップS421の判定がなくても、モータ容量Vm、ポンプ容量Vp及びエンジン回転数Neをそれぞれ目標値まで変化させれば良い。
【0051】
なお、本実施形態では、ポンプ制御域(ステップS417,S420)でモータ容量Vmとポンプ容量Vpの双方を制御する場合を例示したが、いずれか一方を制御するようにしても良い。つまりアイドル回転数Nminに設定した上で駆動圧Pが所定駆動圧(P1-P2)でかつ目標ドラム回転数Ntとなるように、モータ容量Vm及びポンプ容量Vpの少なくとも一方を制御するポンプ制御域の制御機能が制御装置80に備わっていれば良い。同じく、エンジン制御域(ステップS418,S419)でモータ容量Vmとエンジン回転数Neの双方を制御する場合を例示したが、いずれか一方を制御するようにしても良い。つまりポンプ容量Vpを最大に設定した上で駆動圧Pが所定駆動圧(P1-P2)かつ目標ドラム回転数Ntとなるように、モータ容量Vm及びエンジン回転数Neの少なくとも一方を制御するエンジン制御域の制御機能が制御装置80に備わっていれば良い。また、本実施形態では、エンジン制御域ではポンプ容量Vpを最大に設定することとしたが、例えば最大値を避けたい事情がある場合には予め定められた比較的大きな所定容量に設定するようにしても良い。また本実施形態では、操作装置90のダイヤル91が操作されるとモータ容量Vpを最大に設定した上でポンプ制御域の制御を実行し、ポンプ制御域の制御では目標ドラム回転数Ntでドラム20を駆動できない場合にエンジン制御域の制御に切り換える場合を例示した。但し、モータ容量Vpをまず最大に設定してポンプ制御域で制御値を演算するのではなく、予め設定した比較的大きめの所定値にモータ容量Vpを設定してポンプ制御域で制御値を演算するようにしても良い。
【0052】
-効果-
(1)本実施形態においては、ダイヤル91の操作に応じた目標ドラム回転数Ntでドラム20を駆動するに当たり、例えばモータ容量Vmを最大に設定してドラム20を駆動する。この場合、モータ容量Vmが最大であるため油圧モータ40を駆動するための所要動力は最小であり、エンジン回転数Ne、ポンプ容量Vpとも低い条件でドラム20を駆動することができる。その後、駆動圧Pを閾値と比較しながら、駆動圧Pが過大にならない範囲でドラム回転数Ndを保ちながらモータ容量Vmを減らしていく。その際、エンジン回転数Neとポンプ容量Vpについては、エンジン回転数Neがアイドル回転数Nminより高く下げ代があるようならエンジン回転数Neを優先して下げる。エンジン回転数Neがアイドル回転数Nminであって下げ代がないようなら、ポンプ容量Vpを下げる。このようにすることで、ドラム20を目標ドラム回転数Ntで駆動する上でエンジン回転数Neを最小限にすることができ、ドラム動作時の騒音を抑制できる。また、駆動圧Pが適正範囲(P1≦P≦P2)となるようにモータ容量Vmが自動的に調整されるので、消費エネルギーの抑制と作業効率の向上の観点でバランスのとれた条件でドラム20を駆動できる。
【0053】
(2)駆動圧Pの入力から補正処理によってエンジン回転数Neやモータ容量Vm、ポンプ容量Vpが現実に変化するまでの応答遅れによっては、駆動圧Pが閾値を超え得る(ドラム20の所要動力が過大となり得る)。1サイクル当たりの動作条件の補正幅が大きい場合、ドラム20の積載物が重い場合等も同様である。このような場合、本実施形態においては、駆動圧Pが適正値まで下がるようにドラム回転数Ndを一定に保ちつつモータ容量Vmを増加させるので、ドラム20の駆動に伴う必要以上のエネルギー消費を抑えることができる。モータ容量Vmを増加させる際、エンジン回転数Neがアイドル回転数Nminでポンプ容量Vpが最大に満たない場合はポンプ容量Vpにより、ポンプ容量Vpが最大の場合はエンジン回転数Neにより補正する。従ってエンジン回転数Neを抑えて騒音を抑制できる。但し、補正制御の応答遅れが小さい場合、或いは1サイクル当たりの動作条件の補正幅が小さい場合等、モータ容量Vmを下げる過程で駆動圧Pが閾値を超えることが想定されない場合には、モータ容量Vmを増加補正する処理は省略できる。
【0054】
(3)ドラム回転数Ndは、モータ容量Vm、ポンプ容量Vp及びエンジン回転数Neで決まり、同じドラム回転数Ndでドラム20を駆動するためのモータ容量Vm、ポンプ容量Vp及びエンジン回転数Neの組み合わせは多数存在する。それに対し、本実施形態では動作条件マップ(図12)を作成し、モータ容量Vmとドラム回転数Ndで定義されるマップ上の動作点についてエンジン回転数Neが最小となるようにエンジン回転数Ne及びポンプ容量Vpが設定してある。初動時にモータ容量Vmを最大に設定する条件下でこの動作条件マップを用いることで、目標ドラム回転数Ntが定まればドラム20の動作条件を一義的に定めることができる。マップ上で最初の動作点が定まれば、上記のフィードバック制御により、適正駆動圧でかつ低騒音の条件下でドラム20を操作に応じたドラム回転数Ndで駆動することができる。
【0055】
(4)上記の通りダイヤル91の操作(操作の方向及び大きさ)に応じてドラム20の回転方向と回転数が指示されるが、例えばドラム20からコンクリートを排出する場合やドラム20を停止させる場合等にダイヤル91を大きく急操作する場合がある。上記の通りドラム20の動作条件マップはエンジン制御域とポンプ制御域に分かれており、ドラム回転数Ndを目標ドラム回転数Ntに近付ける過程で動作点がエンジン制御域からポンプ制御域に、又はポンプ制御域からエンジン制御域に移行する場合がある。その際のダイヤル91の操作が操作量の大きな急操作である場合、仮に操作にそのまま応じてドラム回転数Ndが変化する構成であると、動作点がエンジン制御域からポンプ制御域に移行する際にドラム回転数Ndが離散的に変化する。エンジン回転数Neとポンプ容量Vpとの間に応答性の差があるためである。ドラム回転数Ndが離散的に変化した場合、積載物が重いと急激な速度変化により大きな慣性重量がドラム20に発生し、ミキサ車が瞬間的に大きく揺れる場合がある。このような揺れはオペレータの心理的負担となり得る。また、エンジン制御域の制御からポンプ制御域の制御に切り換わる場合(逆の場合も同様)に限らず、各々の制御域内で目標ドラム回転数Ntに近付ける場合でも、ポンプ容量Vpの変化率、エンジン回転数Neの急変に伴う車両の挙動はオペレータの不安を煽り得る。
【0056】
それに対し、本実施形態ではダイヤル91の操作に応じたドラム回転数Ndの変化率ΔNdが制限値ΔNlimを超える場合、ドラム回転数Ndの変化率ΔNdを制限値ΔNlimで制限することとした。これにより、ミキサ車の揺れ等のダイヤル91の急操作に伴うミキサ車の挙動変化を抑制することができ、オペレータの心理的負担を軽減できる。但し、上記の本質的な効果(1)を得る限りにおいては、ドラム回転数の変化率ΔNdを制限する構成は必ずしも必要ない。
【0057】
(5)ドラムの駆動装置に可変容量型の油圧モータを用いたミキサ車においては、例えばドラム駆動中にダイヤルを中立位置に戻した場合や停止スイッチを押した場合、一般的に油圧モータは操作時点の容量のままで停止する。例えば比較的小さな容量のまま油圧モータが停止した場合、ドラム内に多くのコンクリートが入った状態ではドラム内部に偏って分布したコンクリートの重みで停止を指示したにも関わらずドラムが回転(自走)する現象が生じ得る。油圧モータが小容量状態であると保持圧が低い上に少量の作動油の漏洩で多く回転してしまい、理由を知らないオペレータには故障しているように見えてしまう。
【0058】
そこで、本実施形態においては、前述した通りドラム20の駆動停止が指示された場合には、油圧モータ40のモータ容量Vmを強制的に最大にしてドラム20を停止させるようにしてある。モータ容量Vmが最大の状態であるため、油圧モータ40を停止状態に保つ保持圧が最大となり、また作動油の漏洩量が同一であってもドラム20の回転(自走)の量や速度が抑えられる。よって事情を知らないオペレータが故障と誤解し難くすることができる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、ドラム停止時にモータ容量Vmを最大にする構成は必ずしも必要ない。
【0059】
(6)撹拌運転は例えば運転室11に搭載した操作装置90で自動撹拌スイッチ95の操作により開始されるが、前述した通り、その後は運転室11に搭載した操作装置90の停止スイッチ92の操作を除く操作は原則無効となる。これは撹拌運転をしながら移動走行している最中に、例えば誤操作によりドラム内のコンクリートが路上に排出されるようなことがないようにするためのインターロックである。このインターロックを解除するためには、一般的に運転室内に設置した操作装置の解除スイッチ(不図示)を操作する必要がある。しかし、例えば停車時にオペレータが車外でドラムの運転を撹拌運転から他の運転(自動混練運転や手動運転等)に切り換える場合、撹拌運転を解除するために一々運転室に戻らなければならず煩わしい。
【0060】
そこで、本実施形態では、運転室11の外に設置した操作装置90であっても撹拌運転中に解除操作として予め定められた所定の手続きが行われた場合にはインターロックが解除されるように構成した。これにより例えば停車時にオペレータが車外でドラム20の運転を撹拌運転から自動混練運転等に切り換える場合、一々運転室11に戻らなくて済み、作業効率が向上する。運転室11の外に設置した操作装置90でインターロックが解除できるものの、予め定められた所定の手順通りの操作が要求されるため、偶発的にインターロックが解除されるようなこともない。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、このようなインターロックの解除機能は必ずしも必要ない。
【0061】
(7)撹拌運転をしながら移動走行するミキサ車は、建設現場等に到着したらドラム回転数を上げてドラム内部のコンクリートを練り混ぜて混ざり具合を均一にした上で排出するのが一般的である。しかし、このコンクリートを練り混ぜる際のドラム回転数や時間はオペレータの感覚による場合が多く、自動混練運転機能を搭載しているとしてもドラム内のコンクリートの性状によらず動作条件は一律であり、品質にムラが生じ易い。
【0062】
そこで、本実施形態では予め用意された混練条件マップに従ってドラム20の駆動圧Pを基に混練運転の動作条件が設定されるように構成した。例えばドラム内のコンクリートが硬く高い駆動圧Pが検出された場合には、混練時間T2は長くドラム回転数Ndは速く設定される。反対に水分が多くコンクリートが軟らかい場合には、混練時間T2は短くドラム回転数Ndは遅く設定される。このようにすることで性状に応じて必要十分にコンクリートを練り混ぜることができ、混練具合を均一化して品質のムラを抑えることができる。
【0063】
(8)コンクリートの混練運転と同じく、ドラムの洗浄運転についてもドラム回転数や時間はオペレータの感覚による場合が多く、自動洗浄運転機能を搭載しているとしてもドラム内の洗浄水の水位によらず動作条件は一律であり、ドラムに洗浄ムラが生じ易い。
【0064】
そこで、本実施形態では予め用意された洗浄条件マップに従ってドラム20の駆動圧Pを基に洗浄運転の動作条件が設定されるように構成した。例えばドラム内が高水位で比較的高い駆動圧Pが検出された場合にはドラム回転量は少なく、低水位で比較的低い駆動圧Pが検出された場合にはドラム回転量は多く設定される。このようにすることで洗浄水の水位等に応じてドラム20の内部を均一に洗浄することができる。加えて、投入方向(コンクリートを前方に移送する方向)にドラム20を回転させる場合は、排出方向(後方に移送する方向)にドラム20を回転させる場合に比べ、ドラム本体21が前傾している関係でドラム20の内容物とブレード22,23の接触圧力が低い。そのため両回転方向について回転量を同一に設定するとブレード22,23の表裏の面の間の洗浄状態に差が生じ得る。そこで、本実施形態では投入方向への回転量を排出方向への回転量よりも多く設定することで、ブレード22,23の表裏両面の洗浄状態を均一化することができる。
【0065】
(9)また、自動洗浄運転の過程で、駆動圧Pの波形を検知してドラム20を所定のスタート位置にしてから洗浄運転を実行することとした。これによりブレード22,23が洗浄液に触れる回数を毎回揃えることができ、回転量を少なめに設定しても洗浄運転毎の洗浄効果のバラつきが抑えられ、常時洗浄液の水位に応じた一定の洗浄効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
20…ドラム、40…油圧モータ、50…油圧ポンプ、60…エンジン、80…制御装置、90…操作装置、Nd…ドラム回転数、Ne…エンジン回転数、Nmin…アイドル回転数、Nt…目標ドラム回転数、ΔNd…変化率、ΔNlim…制限値、P…駆動圧、P1…下限値(閾値),P2…上限値(閾値)、T1…混練時間、Vm…モータ容量、Vp…ポンプ容量、X…動作点
図1
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