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  • 特許-内燃機関の吸気ダクトの遮水構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気ダクトの遮水構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20220808BHJP
   F02M 35/08 20060101ALI20220808BHJP
   F02M 35/04 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
F02M35/10 301V
F02M35/08 J
F02M35/04 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020059268
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156246
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】木下 登士哉
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雄士
(72)【発明者】
【氏名】山崎 壮介
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】実公昭58-052366(JP,Y2)
【文献】特開2008-286140(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013006245(DE,A1)
【文献】特開2017-036679(JP,A)
【文献】特開2016-148296(JP,A)
【文献】特開平07-329871(JP,A)
【文献】中国実用新案第208687926(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/00 - 35/16
B60K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に接続し当該内燃機関に供給するべき空気を取り入れる吸気ダクトの入口の下方に、その入口の開口端よりも迫り出しておりその入口に下方から水が入ることを抑制するための遮水壁を、吸気ダクトを支持するステーに一体的に設けているものであり、
前記ステーが、前記吸気ダクトの入口近傍の部位をくわえ込むようにしてこれを支持するコ字形をなす形状を有し、
前記遮水壁が、前記ステーに一体化しつつ前記吸気ダクトの入口の下方まで伸びている吸気ダクトの遮水構造。
【請求項2】
前記遮水壁の外周の少なくとも一部に弾性変形可能なクッション体を付設した請求項1記載の吸気ダクトの遮水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に接続し当該内燃機関に供給するべき空気を取り入れる吸気ダクト(インレットダクト)に水が入ることを抑制するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源として車両に搭載される内燃機関の吸気通路には、吸気ダクト及びエアクリーナを接続している。内燃機関の気筒に供給するべき空気は、吸気ダクトの入口から吸気ダクト内に流入し、当該吸気ダクトを流通してエアクリーナに至る。そして、エアクリーナが内蔵しているフィルタを通過することにより、空気に混入した異物が濾過され除去される。しかる後、その清浄化された空気が、内燃機関の吸気通路及びスロットルバルブを通じて気筒に吸入される。
【0003】
車両のエンジンルーム(または、エンジンコンパートメント)内は、内燃機関が放つ熱によって昇温する。吸気ダクトの空気入口を車両の横方向に向けると、高温の空気を吸気ダクトに取り込むことになり、内燃機関における吸気の充填効率が低下することが懸念される。
【0004】
そこで、吸気ダクトの空気入口を車両の前方に向けて開口させ、フロントグリルから吹き込む昇温していない走行風を吸気ダクトに取り入れる工夫がなされている(例えば、下記特許文献を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-168712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸気ダクトの入口を車両の前方に向けることにより、吸気の充填効率が向上する反面、吸気ダクトの入口の下方から吸気ダクト内に雨水や溜水が侵入しやすくなるという背反が生じる。そして、吸気ダクトに入り込んだ水がエアクリーナを通過して内燃機関の吸気通路に到達すると、内燃機関の適正な運転に支障を来すおそれがある。この問題は、車両が冠水した道路を走行するとき等に顕在化し得る。
【0007】
以上に着目してなされた本発明は、吸気ダクトの入口の下方から吸気ダクト内に雨水や溜水が侵入することを簡便に抑止しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、内燃機関に接続し当該内燃機関に供給するべき空気を取り入れる吸気ダクトの入口の下方に、その入口の開口端よりも迫り出しておりその入口に下方から水が入ることを抑制するための遮水壁を、吸気ダクトを支持するステーに一体的に設けているものであり、前記ステーが、前記吸気ダクトの入口近傍の部位をくわえ込むようにしてこれを支持するコ字形をなす形状を有し、前記遮水壁が、前記ステーに一体化しつつ前記吸気ダクトの入口の下方まで伸びている吸気ダクトの遮水構造を構成した。
【0009】
並びに、本発明では、内燃機関に接続し当該内燃機関に供給するべき空気を取り入れる吸気ダクトの入口の下方に、その入口の開口端よりも迫り出しておりその入口に下方から水が入ることを抑制するための遮水壁を設け、その遮水壁の外周の少なくとも一部に弾性変形可能なクッション体を付設した吸気ダクトの遮水構造を構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内燃機関に接続している吸気ダクトの入口の下方から吸気ダクト内に雨水や溜水が侵入することを簡便に抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における吸気ダクト、ステー、遮水壁及びクッション体を示す斜視図。
図2】同実施形態における吸気ダクト、ステー、遮水壁及びクッション体を示す正面図。
図3】同実施形態における吸気ダクト、遮水壁及びクッション体を示す平面図。
図4】同実施形態における吸気ダクト、前照灯及びラジエータの位置関係を示す背面図。
図5】本発明に関連する参考例における吸気ダクト遮水壁及びクッション体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1ないし図3に、本実施形態の吸気ダクト1の空気入口11の近傍の部位を拡大して示している。図1は、吸気ダクト1の入口11近傍の部位の斜視図である。図2は、吸気ダクト1の入口11近傍の部位の正面図である。図3は、吸気ダクト1の入口11近傍の部位の平面図である。図3では、遮水壁3及びクッション体4を明示するべく、吸気ダクト1を破断して示している。
【0013】
吸気ダクト1は、車両に搭載される内燃機関に接続し、内燃機関の気筒に供給するべき空気をその入口11から当該吸気ダクト1内に流入させ、エアクリーナ及び内燃機関の吸気通路へと導く配管である。吸気ダクト1の入口11は、車両のエンジンルーム内にあって、車両の前方を向いて開口している。この吸気ダクト1は、その入口11から若干後方に延出した後、下方に湾曲して垂下し、さらにそこから後方に湾曲して、内燃機関の吸気通路に連なるエアクリーナまで後方に伸長している。吸気ダクト1の入口11近傍の部位は、当該部位をくわえ込むように正面視略コ字形をなすステー2により支持する。
【0014】
図4は、車両のエンジンルーム内における、吸気ダクト1、前照灯5(ヘッドライト、ヘッドランプ)及びラジエータ6等の位置関係を示す、車両の後方側から前方側を見た背面図である。車両のエンジンルーム内における、吸気ダクト1の入口11近傍の部位の左側方(図4に示しているように、車両の運転席に着いた運転者にとっては右手側)には、前照灯(ヘッドライト、ヘッドランプ)5が存在する。吸気ダクト1の入口11近傍の部位の右側方(車両の運転席に着いた運転者にとっては左手側)には、内燃機関の冷却水を空冷する熱交換器であるラジエータ6が存在する。並びに、吸気ダクト1の入口11近傍の部位の右前方に、ラジエータ6を囲繞してこれを支持する枠状のラジエータサポート7が存在する。これら前照灯5、ラジエータ6等の存在により、吸気ダクト1の入口11の側方ないし真正面から吸気ダクト1内に水が侵入することは防がれる。
【0015】
しかしながら、吸気ダクト1の入口11の下方ないし後下方から跳ね上がった水が、吸気ダクト1内に入り込む可能性は依然として残る。例えば、ラジエータサポート7を伝って勢いよく上った水や、車両のバンパー下からサスペンションに当たって上った水が、吸気ダクト1の入口11に流入するようなことが想定される。
【0016】
そのような水の侵入を抑制するべく、本実施形態では、吸気ダクト1の入口11の下方に、下方から水が入り込むことを抑制するための遮水壁3を設けている。遮水壁3は、吸気ダクト1の入口11が開口している方向、即ち車両の前方に向けて、その入口11の開口端よりも迫り出している。遮水壁3は、吸気ダクト1を支持するステー2に一体化している。それにより、図2に示しているように、ステー2及び遮水壁3は、正面視略ヨ字形をなしている。
【0017】
加えて、本実施形態では、遮水壁3の外周の少なくとも一部に、弾性変形可能なクッション体4を付設している。クッション体4は、例えば合成樹脂(ウレタン等)やエラストマ(ゴム等)を発泡成形してスポンジ状としたウレタンフォーム、ゴムスポンジ等であり、弾性及び吸水性を有している。クッション体4は、遮水壁3の少なくとも前縁及び側縁をくるんで被覆している。クッション体4は、遮水壁3とこれに隣接または近接する他の部材との間の空隙を埋める。そして、遮水壁3とともに、吸気ダクト1の入口11の下方から吸気ダクト1の入口11に向かって上ってくる水を遮蔽し、かつその水を吸水して、吸気ダクト1内に水が侵入することを防止する。
【0018】
本実施形態では、内燃機関に接続し当該内燃機関に供給するべき空気を取り入れる吸気ダクト1の入口11の下方に、その入口11の開口端よりも迫り出しておりその入口11に下方から水が入ることを抑制するための遮水壁3を、吸気ダクト1を支持するステー2に一体的に設けている吸気ダクト1の遮水構造を構成した。
【0019】
本実施形態によれば、吸気ダクト1の入口11の下方から吸気ダクト1内に雨水や溜水が侵入することを簡便に抑止できる。また、遮水壁3とステー2とを一体化したことで、部品点数の削減、及びこれらを車体のエンジンルーム内に組み付けるための作業工数の削減が実現される。
【0020】
並びに、本実施形態では、遮水壁3の外周の少なくとも一部に弾性変形可能なクッション体4を付設している。クッション体4は、遮水壁3とこれに隣接または近接する既存の他の部材との間の空隙を塞ぎ、既存の他の部材とともに、吸気ダクト1の入口11の下方から上ってくる水が吸気ダクト1の入口11に至ることを確実に抑止する。加えて、吸気ダクト1、ステー2及び遮水壁3をエンジンルーム内に組み付ける際、他の部材に接触したクッション体4が弾性変形し、それらの組み付け作業をより容易化する。クッション体4は、スポンジのような多孔質体であり、必要十分な吸水性を有している。
【0021】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。因みに、図5に示すように、ステーとは別個独立して、遮水壁3及びクッション体4を設けることも考えられる。図示例の遮水壁3は、吸気ダクト1を支持するステー2に一体化していない。
【0022】
その他、各部の具体的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0023】
1…吸気ダクト
11…入口
2…ステー
3…遮水壁
4…クッション体
図1
図2
図3
図4
図5