(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】電子部品の寿命予測装置及び電子部品の寿命予測方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20220808BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20220808BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20220808BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220808BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R31/26 F
H01G13/00 361Z
H01L33/00 K
(21)【出願番号】P 2017001178
(22)【出願日】2017-01-06
【審査請求日】2020-01-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】村上 和也
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】中塚 直樹
【審判官】濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-282272(JP,A)
【文献】特開2002-246391(JP,A)
【文献】特開2015-002242(JP,A)
【文献】特開2016-217942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 31/24-31/25
H01G 4/00-4/10
H01G 4/14-4/22
H01G 4/224
H01G 4/255-4/30
H01G 4/32-4/40
H01G 13/00-13/36
H01L 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の負荷因子を同時に与える複合負荷試験を実施した後の複数の第1の電子部品における特性の変動量のばらつきと前記複数の第1の電子部品の寿命との相関関係を記憶する記憶部と、
前記複合負荷試験を実施した後の複数の第2の電子部品における特性の変動量のばらつきを取得するばらつき取得部と、
前記記憶部に記憶された相関関係と前記取得された特性の変動量のばらつきとに基づいて、前記複数の第2の電子部品の寿命を算出する寿命算出部と、
を備え、
前記複数の第1及び第2の電子部品における特性の変動量のばらつきは、品質工学における静特性のうちの望小特性として算出可能な機能余裕度SN比であ
り、
前記複数の第1及び第2の電子部品のそれぞれは、製品の仕様が互いに共通する電子部品である、
電子部品の寿命予測装置。
【請求項2】
前記複合負荷試験で適用する負荷因子は、一つの負荷因子を与える単一負荷試験を実施した後の複数の第1の電子部品における特性の変動量のばらつきを基に選定される、
請求項
1に記載の電子部品の寿命予測装置。
【請求項3】
前記複合負荷試験は、前記第1及び第2の電子部品における構成材料の物性を維持し得る条件範囲内での負荷因子が適用されている、
請求項1
又は2に記載の電子部品の寿命予測装置。
【請求項4】
前記複合負荷試験は、温度の要素を単一の負荷因子として適用した加速劣化試験よりも短い試験時間で完了する、
請求項1から
3までのいずれか1項に記載の電子部品の寿命予測装置。
【請求項5】
複数の負荷因子を同時に与える複合負荷試験を実施した後の複数の第1の電子部品における特性の変動量のばらつきと前記複数の第1の電子部品の寿命との相関関係を記憶部が記憶するステップと、
前記複合負荷試験を実施した後の複数の第2の電子部品における特性の変動量のばらつきを取得するステップと、
前記記憶部に記憶された相関関係と前記取得された特性の変動量のばらつきとに基づいて、前記複数の第2の電子部品の寿命を算出するステップと、
を有し、
前記複数の第1及び第2の電子部品における特性の変動量のばらつきは、品質工学における静特性のうちの望小特性として算出可能な機能余裕度SN比であ
り、
前記複数の第1及び第2の電子部品のそれぞれは、製品の仕様が互いに共通する電子部品である、
電子部品の寿命予測方法。
【請求項6】
前記複合負荷試験で適用する負荷因子を、一つの負荷因子を与える単一負荷試験を実施した後の複数の第1の電子部品における特性の変動量のばらつきを基に選定するステップ、
をさらに有する請求項
5に記載の電子部品の寿命予測方法。
【請求項7】
前記複合負荷試験は、前記第1及び第2の電子部品における構成材料の物性を維持し得る条件範囲内での負荷因子が適用されている、
請求項
5又は6に記載の電子部品の寿命予測方法。
【請求項8】
前記複合負荷試験は、温度の要素を単一の負荷因子として適用した加速劣化試験よりも短い試験時間で完了する、
請求項
5から
7までのいずれか1項に記載の電子部品の寿命予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子部品の寿命予測装置及び電子部品の寿命予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサやLEDなどの電子部品は、静電容量などの諸特性が経時的に劣化することが知られている。そこで、電子部品の寿命(耐用期間)を短時間で予測する技術が提案されている。
【0003】
電子部品の寿命を予測する場合、例えば加速劣化試験を電子部品に対して実施することにより、耐用年数などが検証される。一般に、電子部品の保障期間や規格を考慮したうえで加速劣化試験を行う際には、電子部品の実使用環境下における耐用期間を予測することが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-44714号公報
【文献】特開2012-132882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、電子部品の長寿命化(耐用期間の長期化)に伴い、数千時間から数万時間にも及ぶ加速劣化試験を行う必要性がある。このため、近年の電子部品は、耐用期間の予測に多くの時間を要する。つまり、電子部品を搭載する電子機器類の開発期間を短縮するためにも、電子部品の寿命の予測に要する時間を削減することが求められている。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、電子部品の寿命を短時間で予測できる電子部品の寿命予測装置及び電子部品の寿命予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態に係る電子部品の寿命予測装置は、記憶部、ばらつき取得部及び寿命算出部を備えている。記憶部は、複数の負荷因子を同時に与える複合負荷試験を実施した後の複数の第1の電子部品における特性の変動量のばらつきと前記複数の第1の電子部品の寿命との相関関係を記憶する。ばらつき取得部は、複合負荷試験を実施した後の複数の第2の電子部品における特性の変動量のばらつきを取得する。寿命算出部は、記憶部に記憶された相関関係と前記取得された特性の変動量のばらつきとに基づいて、複数の第2の電子部品の寿命を算出する。複数の第1及び第2の電子部品における特性の変動量のばらつきは、品質工学における静特性のうちの望小特性として算出可能な機能余裕度SN比である。前記複数の第1及び第2の電子部品のそれぞれは、製品の仕様が互いに共通する電子部品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子部品の寿命を短時間で予測することが可能な電子部品の寿命予測装置及び電子部品の寿命予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る電子部品の寿命予測装置の構成を機能的に示すブロック図。
【
図2】
図1の寿命予測装置が寿命予測の対象とする電解コンデンサの断面図。
【
図3】比較例として温度加速劣化試験の結果を例示した図。
【
図4】
図1の寿命予測装置が適用する相関近似線を得るためのフローチャート。
【
図6】
図1の寿命予測装置が用いる複合負荷試験の負荷因子を選定するためのフローチャート。
【
図7】
図2の電解コンデンサへ適用可能な負荷因子毎の試験条件の一例を示す図。
【
図8】
図2の電解コンデンサへ適用可能な負荷因子毎における静電容量の低下に対する影響度、及び他の負荷因子と組み合せた場合の有用性を例示した図。
【
図9】
図2の電解コンデンサへ適用可能な単一負荷因子の静電容量の低下に対する影響度の一例を示すグラフ。
【
図10】
図2の電解コンデンサへ適用可能な複合負荷因子の静電容量の低下に対する影響度の一例を示すグラフ。
【
図11】LEDへ適用可能な負荷因子毎の試験条件の一例を示す図。
【
図12】
図1の寿命予測装置による電子部品の寿命を予測するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る電子部品の寿命予測装置10は、相関関係記憶部11、ばらつき取得部12、寿命算出部13、データベース14、影響度判定部15などを備えている。
【0011】
相関関係記憶部11は、複合負荷試験を実施した後の複数の第1の電子部品における特性の変動量のばらつき(機能余裕度SN比)と、前記複数の第1の電子部品の寿命との相関関係(相関近似線)を記憶する。複合負荷試験は、試験対象の電子部品に対して複数の負荷因子を同時に与える。一方、ばらつき取得部12は、前記複合負荷試験を実施した後の複数の第2の電子部品における特性の変動量のばらつきを取得する。ここで、上記した複数の第1及び第2の電子部品のそれぞれは、製品の仕様が互いに共通する電子部品であって、より具体的には、製造メーカや製造場所などが異なるものの、製品のスペック(製品規格)が同じ電子部品である。
【0012】
寿命算出部13は、相関関係記憶部11に記憶された相関関係と、ばらつき取得部12によって取得された特性の変動量のばらつきと、に基づいて、前記複数の第2の電子部品の寿命を算出する。データベース14は、電子部品の寿命の予測に必要な各種のデータを記憶している。影響度判定部15は、複合負荷試験に適用する負荷因子を選定するために、前記第1、第2の電子部品の経時的劣化に対する単一の負荷因子(負荷因子毎)の影響度を判定する。なお、相関関係記憶部11、ばらつき取得部12、寿命算出部13などの
図1に示す各部の構成については後に詳述する。
【0013】
図2に示すように、本実施形態では、寿命の予測に適用される第1、第2の電子部品としてリードタイプの電解コンデンサ20を例示する。電解コンデンサ20は、電源回路の平滑用として、産業機器に多用されている有限寿命部品である。電解コンデンサ20は、スリーブ21、アルミニウムケース22、素子部23、封口ゴム24、アルミニウムリード25、リード線26を有する。なお、電解コンデンサが表面実装型の場合、リード線が
図2に示すものとは異なる形状となる。
【0014】
図2に示すように、素子部23は、アルミ箔の表面をエッチング処理することによって表面積を拡大し、耐電圧が高くて薄い酸化被膜を化成処理で形成した陽極箔と、エッチング処理のみの陰極箔との間に電解紙を挿入して、円筒形の素子に巻き取ることによって製造される。さらに、素子部23に電解液を含浸させ、素子部23をアルミニウムケース22に入れた後、封口ゴム24でパッキングし、アルミニウムケース22に絞り加工を施すことで封止を行う。この後、定格値など必要な表示を施したスリーブ21をアルミニウムケース22の外側に被覆する。
【0015】
このような構造の電解コンデンサ20は、経時的な劣化によって、内部に含浸された電解液が封口ゴム24の周辺から外部へ流れ出し、静電容量、誘電体内での電気エネルギ損失の度合いを表す誘電正接(tanδ)、漏れ電流、といった各種の特性が低下する。ここで、
図3は、品種の異なる2種類の電解コンデンサに対し、温度の要素を単一の負荷因子として適用した加速劣化試験(温度加速劣化試験)の結果を例示している。静電容量の変化率が例えば-7%~-10%になった場合を製品寿命に達したものとして想定すると、
図3では、数千時間から数万時間にも及ぶ評価時間(寿命予測時間)が必要であることが表されている。
【0016】
そこで、本実施形態に係る電子部品の寿命予測装置10は、上記したように、経時的に劣化する電解コンデンサなどの電子部品の寿命を、短時間で予測することの可能な機能を有している。まず、
図4~
図6を参照して、寿命の予測に必要な相関近似線を得る手順について説明する。
【0017】
図4に示すように、複数の種類の電解コンデンサ(上記した第1の電子部品)を複数個ずつ準備する(S[ステップ]1)。準備する電解コンデンサは、例えば型式や寸法などを特に限定する必要はないものの、製品のスペックが共通のものを用意する。例えば3種類以上の品種の電解コンデンサをそれぞれ3個~5個ほど準備する。
【0018】
次に、電解コンデンサ毎に初期の諸特性として例えば静電容量を計測する(S2)。初期の特性は、複合負荷試験を行う前の特性である。なお、電解コンデンサの特性として、例えば静電容量を例示しているが、計測する特性を静電容量に限定する必要はない。劣化する対象の特性が複数ある場合には、少なくとも一つを限定して、指定された特性の初期特性を計測すればよい。また、計測環境は、例えば常温及び常湿の環境である。
【0019】
続いて、初期の特性が計測された各電解コンデンサに対して複合負荷試験を実施する(S3)。複合負荷試験は、電解コンデンサに対し、複数の種類の負荷因子(劣化をひき起こす要素)を同時に適用する。この複合負荷試験は、温度の要素を単一の負荷因子として適用した加速劣化試験(数千時間以上もの試験時間を要していた上記の温度加速劣化試験)よりも短い、数十時間程度の試験時間で完了する。
【0020】
次いで、複合負荷試験が完了した後、各電解コンデンサの諸特性として静電容量を計測する(S4)。この場合の計測環境も、S2(ステップ2)と同様に例えば常温、常湿の環境である。次に、電解コンデンサ毎の、複合負荷試験前に計測した特性と複合負荷試験後に計測した特性とに基づいて、機能余裕度SN比を算出する(S5)。つまり、複合負荷試験前後における各電解コンデンサの特性の変動量(静電容量)のばらつきを示す機能余裕度SN比を求める。
【0021】
機能余裕度SN比は、例えば品質工学における静特性のうちの望小特性として算出可能であり、当該SN比が大きいほど、上述した特性の変動量(静電容量)のばらつきが小さくなる。このような静特性のSN比は、下記の式1を用いて計算されることが知られている。ここで、式1中の「yi0」は初期の特性、「yi」は負荷試験後の特性、「n」はサンプル数である。
【0022】
【0023】
最後に、
図4、
図5に示すように、算出された機能余裕度SN比(電解コンデンサ毎の特性の変動量のばらつき)と、電解コンデンサ(第1の電子部品)の寿命と、の相関関係を表す相関近似線を、データベース14の内容を参照しつつ生成する(S6)。相関関係記憶部11は、生成された相関近似線を記憶する。
【0024】
データベース14には、例えばS1(ステップ1)で準備した電解コンデンサとは、型式が異なる他の電解コンデンサ(耐用期間を検証済みの他の電子部品)に関する情報が記憶されている。ただし、当該型式が異なる他の電解コンデンサ(この他の電子部品)は、準備した電解コンデンサに対して、例えばスペックが共通若しくはスペックが近似する電子部品である。データベース14には、例えば当該品種の異なる電解コンデンサの寿命と機能余裕度SN比との関係が予め記憶されている。したがって、S1(ステップ5)で算出された機能余裕度SN比とこのようなデータベース14の記憶内容とに基づいて、
図5に示す相関近似線を得ることが可能となる。
【0025】
次に、
図6~
図8を参照しつつ、
図4に示したS3(ステップ3)の複合負荷試験に適用される負荷因子を選定する処理手順を説明する。
図4に示したステップSlと同様に、まず、
図6に示すように、複数の種類の電解コンデンサ(上記した第1の電子部品)を複数個ずつ準備する(S11)。次に、
図4に示したステップS2と同様に、複数の電解コンデンサの初期の特性を計測する(S12)。
【0026】
さらに、
図7に示すように、計測対象の特性に対して影響する負荷因子を列挙する。この列挙された負荷因子の各々に関して、限界点や規格値に基づき単一負荷試験条件を策定する。複合負荷試験では、電解コンデンサ(前述した第1及び第2の電子部品)における構成材料の物性を維持し得る条件範囲内(上記の限界点以下)での負荷因子が適用される。上記の策定された単一負荷試験条件において、例えば数十時間、各負荷因子に対応する負荷を電解コンデンサに対して与える単一負荷試験を行う(S13)。なお、単一負荷試験は、複数の電解コンデンサに対して行ってもよいし、1つの電解コンデンサに対して行ってもよい。
【0027】
次に、単一負荷試験が完了した後、各電解コンデンサの諸特性として静電容量を計測する(S14)。なお、計測環境は、S2(ステップ2)と同様に、例えば常温及び常湿の環境である。次に、電解コンデンサ毎の、単一負荷試験前に計測した特性と単一負荷試験後に計測した特性とに基づいて、機能余裕度SN比を算出する(S15)。つまり、単一負荷試験前後における各電解コンデンサの特性の変動量(静電容量)のばらつきを示す機能余裕度SN比を求める。この場合の機能余裕度SN比も、上記した式1を用いて、例えば品質工学における静特性のSN比(望小特性のSN比)を算出するものとなる。
【0028】
最後に、S15(ステップl5)で算出された機能余裕度SN比に基づき、影響度判定部15は、各負荷因子の電解コンデンサに対する影響度を判定する(S16)。つまり、影響度判定部15は、複合負荷試験で適用する負荷因子を、一つの負荷因子を与える単一負荷試験を実施した後の複数の電解コンデンサ(第1の電子部品)における特性の変動量のばらつきを基に選定する。このような影響度の判定によって、
図4に示したS3(ステップ3)における複合負荷試験において同時に組み合わせて適用する妥当な負荷因子が選定される。
【0029】
図7は、電解コンデンサの例えば構成材料の限界点や、規格値を参考に試験条件案を策定した一例である。電解コンデンサの静電容量が低下する故障のメカニズムとしては、電解液のドライアップや誘電体酸化被膜の化成及び水和などが考えられる。このため、例えば温度、湿度(例えば湿度80%を50時間継続)、ヒートサイクル、逆電圧(例えば-1.5V~-2Vを印加)、過電圧(例えば定格の1.5倍の電圧を印加)などが負荷指標(抽出要因)として挙げられる。
【0030】
また、複合負荷試験において、負荷因子を適用するための条件は、環境的負荷因子及び電気的負荷因子から電子部品毎に適宜選定されるものである。
図8は、電解コンデンサの特性(静電容量)に対する負荷因子毎の影響度、及び負荷因子毎の他の負荷因子との組み合わせの有用性を示している。ここで、
図8中における項目(影響度、組み合わせの有用性)毎の、「◎」は大きい、「○」は、やや大きい、「△」は、やや小さい、「×」は小さい、をそれぞれ示している。
【0031】
また、
図9は、単一負荷試験を実施した際の(負荷因子毎の)機能余裕度SN比の算出結果を例示している。この
図9は、2品種の電解コンデンサ(部品A、B)に対して、温度、湿度及び逆電圧のそれぞれの負荷因子を与えて算出された機能余裕度SN比を示している。
図9に示すこの結果に基づき、影響度判定部15は、複合負荷試験で適用する複数の負荷因子を選定する。例えば、選定される複数の負荷因子は、環境負荷因子又は電気的負荷因子のうちから選定される。
図9において、負荷因子が逆電圧の場合は、負荷因子が湿度の場合よりも、機能余裕度SN比が小さいことから、電解コンデンサの静電容量の低下に対して影響度が大きいことがわかる。また、例えば、逆電圧は温度との組み合わせに適しており、同時に適用することが可能である。このため、複合負荷試験において同時に適用する負荷因子として温度と逆電圧とを選定することが好ましい。
【0032】
図10は、複合負荷試験を実施した結果の一例である。
図10に示すように、負荷因子として温度及び逆電圧を与える複合負荷試験は、定格電圧及び定格温度を試験条件とする信頼性試験よりも、機能余裕度SN比(利得)が小さくなっていることから、電解コンデンの静電容量の低下に対して大きく影響し、これにより、
図5に示した相関近似線を得るのに適していると判断することができる。
【0033】
図11は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)に対しての各負荷因子に関する試験条件の一例である。上記した電解コンデンサに対して選定される負荷因子と、発光ダイオードに対して選定される負荷因子とは異なることが想定される。発光ダイオードに対して選定される負荷因子は、電解コンデンサに対して選定される負荷因子の他、
図11に示すように、振動、腐食性ガス、光などがさらに挙げられる。
【0034】
次に、
図12を参照して、電解コンデンサ(第2の電子部品)の寿命を予測する手順を説明する。
図12に示すように、寿命予測の対象となる複数の種類の電解コンデンサ(上記した第2の電子部品)を複数個ずつ準備する(S21)。準備する電解コンデンサは、例えば型式や寸法を限定する必要はないものの、製品の仕様(スペック)が互いに共通するものを用意する。例えば3種類以上の品種の電解コンデンサをそれぞれ3個~5個ほど準備する。
【0035】
次に、S2(ステップ2)を行った常温及び常湿の計測環境において、電解コンデンサ毎に初期の特性として静電容量を計測する(S22)。この場合の計測環境も、S2(ステップ2)と同様に例えば常温、常湿の環境である。初期の特性は、複合負荷試験を行う前の特性である。次いで、初期の特性が計測された各電解コンデンサに対して複合負荷試験を実施する(S23)。この際の複合負荷試験は、
図4に示したS3(ステップ3)と同様の試験条件とする。
【0036】
続いて、複合負荷試験が完了した後、各電解コンデンサの特性(静電容量)を計測する(S24)。この場合の計測環境も、S2(ステップ2)と同様に例えば常温、常湿の環境である。次に、電解コンデンサ毎の、複合負荷試験前に計測した特性と複合負荷試験後に計測した特性とに基づいて、機能余裕度SN比を算出する(S25)。つまり、ばらつき取得部12は、複合負荷試験前後における各電解コンデンサ(第2の電子部品)の特性の変動量(静電容量)のばらつきを表す機能余裕度SN比を取得する。
【0037】
最後に、寿命算出部13は、相関関係記憶部11に記憶された
図5に示す相関近似線(相関関係)と、ばらつき取得部12によって取得された機能余裕度SN比と、に基づいて、複数の電解コンデンサ(第2の電子部品)の寿命を算出する。
【0038】
既述したように、本実施形態に係る電子部品の寿命予測装置10及び電子部品の寿命予測方法では、複数の負荷因子を同時に与える複合負荷試験及び品質工学における機能余裕度SN比を効果的に適用することによって、電子部品の寿命を短時間で高精度に予測することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10…電子部品の寿命予測装置、11…相関関係記憶部、12…ばらつき取得部、13…寿命算出部、20…電解コンデンサ。