(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20220808BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220808BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
G09F9/30 308Z
G09F9/30 365
H01L27/32
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2017201236
(22)【出願日】2017-10-17
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】徳田 尚紀
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106448587(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0329350(US,A1)
【文献】特開2010-054871(JP,A)
【文献】特開2007-304390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0183481(US,A1)
【文献】国際公開第2017/172375(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0249896(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0057484(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
F21S 2/00
H04N 5/64-5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1行乃至第n行、および第1列乃至第m列に配置された複数の画素と、
それぞれ対応する前記第1行乃至第n行の画素と電気的に接続される第1乃至第nの走査線と、
前記第1乃至第nの走査線から選択される第1乃至第kの走査線の少なくとも一つと重なる第1の半導体膜と、
前記複数の画素によって定義される表示領域に隣接するとともに、前記表示領域に外接する矩形領域よりも内側に位置する切欠きを有し、
前記第1の半導体膜は前記切欠き内に位置し、
前記複数の画素の各々は、
発光素子と、
前記発光素子と電気的に接続され、第2の半導体膜を有するトランジスタを有し、
前記第1の半導体膜と前記第2の半導体膜は同一層内に存在し、
nとmは1よりも大きい自然数であり、kはnよりも小さい自然数であり、
前記第1の半導体膜は、前記第1乃至第kの走査線の前記少なくとも一つと交差する2辺が互いに非平行である台形の形状を有する、表示装置。
【請求項2】
前記複数の画素と電気的に接続される複数の電流供給線をさらに有し、
前記第1の半導体膜は、前記複数の電流供給線の少なくとも一つと電気的に接続される、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1乃至第kの走査線は、前記切欠きの端部に沿うように屈曲する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1乃至第kの走査線の少なくとも一つと重なる前記第1の半導体膜を複数有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
それぞれ対応する前記第1列乃至第m列の画素と電気的に接続される複数の信号線をさらに有し、
前記切欠きと交差する列の前記信号線は、隣接する前記第1の半導体膜に挟まれる、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記切欠きと交差する前記列の前記信号線は、前記切欠きと交差しない列の前記信号線よりも幅が広い、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
第1行乃至第n行、および第1列乃至第m列に配置された複数の画素と、
それぞれ対応する前記第1行乃至第n行の画素と電気的に接続される第1乃至第nの走査線と、
前記第1乃至第nの走査線を制御する走査線側駆動回路と、
前記走査線側駆動回路と、前記第1乃至第nの走査線から選択される第1乃至第kの走査線との間にそれぞれ設けられる第1乃至第kの補償トランジスタと、
前記複数の画素によって定義される表示領域に隣接するとともに、前記表示領域に外接する矩形領域よりも内側に位置する切欠きを有し、
前記第1乃至第kの補償トランジスタは前記表示領域外に位置し、
前記複数の画素の各々は、
第1の半導体膜と、
前記第1の半導体膜と重なる第1のゲート電極と、
前記第1の半導体膜と電気的に接続されるソース/ドレイン電極を有し、
前記第1乃至第kの補償トランジスタは、
第2の半導体膜と、
前記第2の半導体膜と重なる第2のゲート電極と、
前記第2の半導体膜と電気的に接続される第1の端子と第2の端子を有し、
前記第1乃至第kの補償トランジスタの前記第1の端子は、それぞれ対応する前記第1乃至第kの走査線の一部であり、
nとmは1よりも大きい自然数であり、kはnよりも小さい自然数であり、
前記第1乃至第kの補償トランジスタは、前記第1乃至
第kの走査線に付与される可変抵抗として機能し、ソース・ドレイン間抵抗が異なるように構成される表示装置。
【請求項8】
前記第1の半導体膜と前記第2の半導体膜は同一層内に存在する、請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記ソース/ドレイン電極と前記第2のゲート電極は同一層内に存在する、請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1乃至第kの補償トランジスタから選択される第jの補償トランジスタの前記第2の端子が延伸する方向と
、前記
第1乃至第kの走査線から選択される第(j+1)の走査線が延伸する方向は、同一直線上に存在し、
jはkよりも小さい自然数である、請求項7に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1乃至第kの補償トランジスタから選択される第jの補償トランジスタのチャネル幅は、前記
第1乃至第kの補償トランジスタから選択される第(j+1)の補償トランジスタのチャネル幅よりも小さく、
jはkよりも小さい自然数である、請求項7に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、表示装置、例えば有機発光素子を表示素子として有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一例として、有機EL(Electroluminescence)表示装置が挙げられる。有機EL表示装置は、基板上に形成された複数の画素を有し、各画素に有機発光素子(以下、発光素子)が備えられる。高精細な、あるいは大型の表示装置を提供する場合、各画素には複数のトランジスタや容量素子などを含む画素回路が形成される。画素回路は基板上に設けられる駆動回路、あるいは外部回路によって駆動され、これにより各画素の発光が制御される。
【0003】
表示装置の大型化や高精細化に伴い、駆動回路に電気信号を供給する配線(信号線や走査線など)には、配線の寄生容量や抵抗に起因して大きな負荷(駆動負荷)がかかる。この負荷の値は、画面の端部と中央部とでは異なるため、信号の遅延量やなまり量に差を生じ、表示された映像にむらが生じるなど、表示品質の低下が起こる。このような信号の遅延や信号形状のなまりに基づく表示の不均一を防止するため、例えば特許文献1や2では、走査線や信号線の末端に抵抗、あるいは可変容量などの付加容量を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-125895号公報
【文献】特開平10-268348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、表示むらが抑制され、高品質な表示が可能な表示装置を提供することを課題とする。例えば表示領域が長方形や正方形以外の形状を持つことに起因して走査線や信号線などの配線に接続される画素の数が配線によって異なる場合でも、画素間での輝度のばらつきが抑制され、高品質な表示が可能な表示装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一つは表示装置である。この表示装置は、複数の画素、第1乃至第nの走査線、および第1の半導体膜を有する。複数の画素は第1行乃至第n行、および第1列乃至第m列に配置される。第1乃至第nの走査線は、それぞれ対応する第1行乃至第n行の画素と電気的に接続される。第1の半導体膜は、第1乃至第nの走査線から選択される第1乃至第kの走査線の少なくとも一つと重なる。複数の画素によって定義される表示領域は、第1行乃至第k行と交差する切欠きを有し、第1の半導体膜は切欠き内に位置する。複数の画素の各々は、発光素子と、発光素子と電気的に接続され、第2の半導体膜を有するトランジスタを有する。第1の半導体膜と第2の半導体膜は同一層内に存在する。nとmは1よりも大きい自然数であり、kはnよりも小さい自然数である。
【0007】
本発明の実施形態の一つは表示装置である。この表示装置は、複数の画素、第1乃至第nの走査線、および金属膜を有する。複数の画素は第1行乃至第n行、および第1列乃至第m列に配置される。第1乃至第nの走査線は、それぞれ対応する第1行乃至第n行の画素と電気的に接続される。金属膜は、第1乃至第nの走査線から選択される第1乃至第kの走査線の少なくとも一つと重なる。複数の画素によって定義される表示領域は、第1行乃至第k行と交差する切欠きを有し、金属膜は切欠き内に位置する。複数の画素の各々は、発光素子と、発光素子と電気的に接続され、半導体膜、および半導体膜と電気的に接続されるソース/ドレイン電極を備えるトランジスタを有する。金属膜と半導体膜は同一層内に存在する。nとmは1よりも大きい自然数であり、kはnよりも小さい自然数である。
【0008】
本発明の実施形態の一つは表示装置である。この表示装置は、複数の画素、第1乃至第nの走査線、第1乃至第kの補償トランジスタを有する。複数の画素は、第1行乃至第n行、および第1列乃至第m列に配置される。第1乃至第nの走査線は、それぞれ対応する第1行乃至第n行の画素と電気的に接続される。第1乃至第kの補償トランジスタは、第1乃至第kの走査線とそれぞれ電気的に接続される。複数の画素によって定義される表示領域は、第1行乃至第n行から選択される第1行乃至第k行と交差する切欠きを有し、第1乃至第kの補償トランジスタは表示領域外に位置する。複数の画素の各々は、第1の半導体膜と、第1の半導体膜と重なる第1のゲート電極と、第1の半導体膜と電気的に接続されるソース/ドレイン電極を有する。第1乃至第kの補償トランジスタは、第2の半導体膜と、第2の半導体膜と重なる第2のゲート電極と、第2の半導体膜と電気的に接続される第1の端子と第2の端子を有する。第1乃至第kの補償トランジスタの第1の端子は、それぞれ対応する第1乃至第kの走査線の一部である。nとmは1よりも大きい自然数であり、kはnよりも小さい自然数である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図2】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図3】本発明の実施形態の表示装置の画素回路の等価回路。
【
図4】本発明の実施形態の表示装置の模式的断面図。
【
図5】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図6】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図7】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図8】本発明の実施形態の表示装置の模式的断面図。
【
図9】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図10】本発明の実施形態の表示装置の模式的断面図。
【
図11】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図12】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図13】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図14】本発明の実施形態の表示装置の作製方法を示す模式的断面図。
【
図15】本発明の実施形態の表示装置の作製方法を示す模式的断面図。
【
図16】本発明の実施形態の表示装置の作製方法を示す模式的断面図。
【
図17】本発明の実施形態の表示装置の作製方法を示す模式的断面図。
【
図18】本発明の実施形態の表示装置の作製方法を示す模式的断面図。
【
図19】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図20】本発明の実施形態の表示装置の模式的断面図。
【
図21】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図22】本発明の実施形態の表示装置の模式的断面図。
【
図23】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図24】本発明の実施形態の表示装置の模式的断面図。
【
図25】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図26】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図27】本発明の実施形態の表示装置の模式的断面図。
【
図28】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【
図29】本発明の実施形態の表示装置の模式的断面図。
【
図30】本発明の実施形態の表示装置の模式的上面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0012】
本発明において、ある一つの膜に対してエッチングや光照射を行って複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来し、同一の層構造、同一の材料を有する。したがって、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0014】
(第1実施形態)
[1.全体構成]
本発明の実施形態の一つである表示装置100の構造を説明する。
図1に表示装置100の上面模式図を示す。表示装置100は基板102を有し、その上にパターニングされた種々の絶縁膜、半導体膜、導電膜を有する。これらの膜を適宜組み合わせることにより、複数の画素104や画素104を駆動するための駆動回路(走査線側駆動回路108、信号線側駆動回路110)が形成される。各画素104は色情報を与える最小単位であり、後述するように発光素子OLEDやそれを駆動するための駆動回路を含む領域である。複数の画素104は複数の行(第1から第nの行。nは1よりも大きい自然数。)と複数の列(第1から第mの列。mは1よりも大きい自然数)に配置され、表示領域106を定義する。ここで、本明細書と請求項においては、表示領域106とは、基板102上に設けられる全ての画素104、および隣接する画素104の間の領域と重なる単一の領域のうち、後述する切欠き114を除いた領域である。表示領域106を取り囲む基板102上の領域が額縁領域である。
【0015】
走査線側駆動回路108や信号線側駆動回路110は、表示領域106外(額縁領域)に配置される。表示領域106や走査線側駆動回路108、信号線側駆動回路110からは種々の配線(図示せず)が基板102の一辺へ延び、配線は基板102の端部付近で露出されて端子112を形成する。これらの端子112はフレキシブル印刷回路基板(FPC)などのコネクタ(図示せず)と電気的に接続される。コネクタを介して外部回路(図示せず)から電源や映像信号が供給され、映像信号は走査線側駆動回路108、信号線側駆動回路110へ与えられる。これらの映像信号に基づく信号が各画素104に供給され、これによって画素104が制御、駆動され、表示領域106上に映像が表示される。
【0016】
図1に示すように、画素104は完全なn×m行のマトリクス状には配置されず、一部の領域には画素104は形成されない。具体的には、端子112から最も遠い行(第1行)、および第1行から連続する複数の行(第1行から第k行。kはnよりも小さい自然数)においては、複数の列に画素104が存在しない。より具体的には、第1行から第k行においては、第h列から第i列(hとiはmより小さい自然数であり、iはhよりも大きい)には画素104が配置されない。例えば
図1に示した例では、第1(k=1)行から第3(k=3)行では、第7(h=7)列から第17(i=17)列にわたって画素が存在しない。画素104が設けられないこの領域は表示領域106の切欠き114であり、第1(k=1)行から第k行、および第h列から第i列は切欠き114と交差する。切欠き114は表示領域106の端部に達するよう、開いた形状となるように形成される。切欠き114には画素104が設けられないため、表示が行われない。
【0017】
基板102も、切欠き114と重なる切欠き116を有することができる。切欠き114と同様、切欠き116も基板102の端部に達するよう、開いた形状となるように形成される。図示しないが、表示装置100は切欠き114や116と重なるように、電荷結合素子(CCD)イメージセンサや相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサなどの撮像装置、音声出力装置などを配置することができる。なお、基板102には必ずしも切欠き116を設ける必要は無い。
【0018】
切欠き114の位置や数は
図1に示す位置や数に限られない。例えば
図2(A)に示すように複数の切欠き114が表示領域106に設けられていてもよい。あるいは
図2(B)に示すように、切欠き114は、表示領域106の直交する二つの辺に達するように設けられていてもよい。また、
図2(C)に示すように、切欠き114が、表示領域106の内部で閉じた領域として設けられていてもよい。この場合、画素104が切り欠き114の周囲を囲むように設けられる。
【0019】
[2.画素の構造]
2-1.画素回路
上述したように、各画素104には、パターニングされた種々の絶縁膜や半導体膜、導電膜によって発光素子OLEDを含む画素回路が形成される。画素回路の構成は任意に選択することができ、その一例を等価回路として
図3に示す。
【0020】
図3に示した画素回路は、発光素子OLEDに加え、駆動トランジスタDRT、発光制御トランジスタBCT、補正トランジスタCCT、初期化トランジスタIST、書込トランジスタSST、保持容量Cs、付加容量Cadを有している。容量Celは独立した容量素子ではなく、発光素子OLEDの寄生容量である。高電位電源線120には高電位PVDDが与えられ、この電位が電流供給線121を介して各列に接続される画素104に与えられる。発光素子OLED、駆動トランジスタDRT、発光制御トランジスタBCT、補正トランジスタCCTは、高電位電源線120と低電位電源線122との間で直列に接続される。低電位電源線122には低電位PVSSが与えられる。
【0021】
本実施形態では、これらのトランジスタはいずれもnチャネル型トランジスタとして形成してもよく、pチャネル型トランジスタとして形成していもよい。以下の説明ではこれらのトランジスタはnチャネル型であり、駆動トランジスタDRTの高電位電源線120側の入出力端子をドレイン、発光素子OLED側の入出力端子をソースとする。駆動トランジスタDRTのドレインは発光制御トランジスタBCTと補正トランジスタCCTを介して高電位電源線120と電気的に接続され、ソースが発光素子OLEDと電気的に接続される。
【0022】
駆動トランジスタDRTのゲートは、初期化トランジスタISTを介して第1の信号線124と電気的に接続されるとともに、書込トランジスタSSTを介して第2の信号線126と電気的に接続される。第1の信号線124には初期化信号Viniが与えられ、第2の信号線126には映像信号Vsigが与えられる。初期化信号Viniは一定レベルの初期化電位を与える信号である。書込トランジスタSSTは、そのゲートに接続される書込制御走査線128に与えられる走査信号SGによって動作(オン/オフ)が制御される。初期化トランジスタISTのゲートは、初期化制御信号IGが与えられる初期化制御走査線130と接続され、初期化制御信号IGにより動作が制御される。書込トランジスタSSTがオン、初期化トランジスタISTがオフのとき、映像信号Vsigの電位が駆動トランジスタDRTのゲートに与えられる。一方、書込トランジスタSSTがオフ、初期化トランジスタISTがオンのとき、初期化信号Viniの電位が駆動トランジスタDRTのゲートに与えられる。
【0023】
補正トランジスタCCTと発光制御トランジスタBCTのゲートにはそれぞれ、補正制御信号CGが印加される補正制御走査線132、発光制御信号BGが印加される発光制御走査線134が接続される。駆動トランジスタDRTのドレインには、補正トランジスタCCTを介し、リセット制御線136が接続される。リセット制御線136は、走査線側駆動回路108に設けられるリセットトランジスタRSTと接続される。リセットトランジスタRSTはリセット制御信号RGによって制御され、これによりリセット信号線138に与えられるリセット電位Vrstを補正トランジスタCCTを介して駆動トランジスタDRTのドレインに印加することができる。
【0024】
駆動トランジスタDRTのソースとゲートとの間には、保持容量Csが設けられる。付加容量Cadの一方の端子は駆動トランジスタDRTのソースに接続され、他方の端子が高電位電源線120に接続される。付加容量Cadは、他方の端子が低電位電源線122に接続されるように設けてもよい。保持容量Csと付加容量Cadは、映像信号Vsigを駆動トランジスタDRTのゲートに与えるとき、映像信号Vsigに応じたゲート-ソース間電圧Vgsを保持するために設けられる。
【0025】
信号線側駆動回路110は、第1の信号線124と第2の信号線126に初期化信号Viniと映像信号Vsigをそれぞれ出力する。一方、走査線側駆動回路108は書込制御走査線128に走査信号SGを出力し、初期化制御走査線130に初期化制御信号IGを出力し、補正制御走査線132に補正制御信号CGを出力し、発光制御走査線134に発光制御信号BGを出力し、リセットトランジスタRSTのゲートにリセット制御信号RGを出力する。
【0026】
図1に示すように、表示装置100は表示領域106を挟むように二つの走査線側駆動回路108を設けることができる。この場合、一つの行に配置されるすべての画素104に対し、双方の走査線側駆動回路108からすべての信号(走査信号SG、初期化制御信号IG、補正制御信号CG、発光制御信号BG)を並行して供給してもよく、これらの信号の一部を一方の走査線側駆動回路108から供給し、他の信号を他方の走査線側駆動回路108から供給してもよい。また、切欠き114と交差する行に位置する画素104においては、一方の走査線側駆動回路108と切欠き114の間の画素104に対し、この一方の走査線側駆動回路108から各種信号を供給し、他方の走査線側駆動回路108と切欠き114の間の画素に対し、他方の走査線側駆動回路108から各種信号を供給してもよい。ただし、切欠き114と交差する行の各行では、上記信号のうち少なくとも一つは、二つの走査線側駆動回路108のいずれか一つからすべての画素104に供給される。例えば走査信号SGは、切欠き114と交差する行から選択される一つの行に配置されるすべての画素104に対し、二つの走査線側駆動回路108のいずれか一つから供給される。
【0027】
2-2.断面構造
図4に表示装置100の模式的断面図を示す。
図4では、基板102上に形成された隣接する三つの画素104の画素回路のうち、駆動トランジスタDRT、保持容量Cs、付加容量Cad、発光素子OLEDの断面構造が示されている。
【0028】
画素回路に含まれる各素子はアンダーコート150を介し、基板102上に設けられる。基板102はガラスや石英、あるいはプラスチックを含むことができる。基板102に可撓性を有する基板を用いることにより、表示装置100に可撓性を付与することができ、いわゆるフレキシブルディスプレイを製造することができる。
【0029】
アンダーコート150は単層構造を有していてもよく、
図4に示すように、複数の膜から構成されていてもよい。複数の膜を用いる場合、例えばアンダーコート150は、酸化シリコンを含む膜150a、窒化シリコンを含む膜150b、および酸化シリコンを含む膜150cを含む膜を順次基板102上に形成すればよい。最下層の酸化シリコンを含む膜150aは基板102との密着性向上のため、中層の窒化シリコンを含む膜150bは、水などの不純物の外部からの侵入を防ぐブロック膜として、最上層の酸化シリコンを含む膜150c膜は、窒化シリコンを含む膜150b中に含有する水素原子が半導体膜160(後述)側に拡散することを防ぐブロック膜としてそれぞれ設けられる。
【0030】
任意の構成として、後に設けられる駆動トランジスタDRTなどのトランジスタと重なるように遮光膜152を配置してもよい。遮光膜152は、光によるトランジスタ特性の変化を抑制したり、あるいは遮光膜152を導電材料で形成することにより、トランジスタのバックゲートとして機能することができる。ここでは、駆動トランジスタDRTが形成される領域に酸化シリコンを含む膜150aの一部を覆うように遮光膜152が島状に設けられ、その上に窒化シリコンを含む膜150b、および酸化シリコンを含む膜150cが積層された例が示されているが、基板102と接するように遮光膜152を設け、その上に三層構造を有するアンダーコート150を配置してもよい。
【0031】
駆動トランジスタDRTは、半導体膜160、ゲート絶縁膜162、ゲート電極164、ソース/ドレイン電極166、168を含む。ゲート電極164は、ゲート絶縁膜162を介して半導体膜160の少なくとも一部と交差するように配置され、半導体膜160のゲート電極164が重なる領域にチャネル領域160aが形成される。半導体膜160はさらに、チャネル領域160aを挟持し、不純物がドープされた低濃度不純物領域160c、およびこれらを挟持し、不純物がドープされたソース/ドレイン領域160bを有する。低濃度不純物領域160cの不純物の濃度は、ソース/ドレイン領域160bのそれよりも低い。
【0032】
ゲート絶縁膜162を介し、ゲート電極164と同一の層に存在する容量電極170が一方のソース/ドレイン領域160bと重なるように設けられる。ゲート電極164、容量電極170の上には層間絶縁膜172が設けられる。層間絶縁膜172とゲート絶縁膜162には、半導体膜160に達する開口が形成され、この開口を覆うようにソース/ドレイン電極166、168が配置される。ソース/ドレイン電極168の一部は、層間絶縁膜172を介してソース/ドレイン領域160bの一部と容量電極170と重なり、ソース/ドレイン領域160bの一部、ゲート絶縁膜162の一部、容量電極170、層間絶縁膜172、およびソース/ドレイン電極168の一部によって保持容量Csが形成される。
【0033】
駆動トランジスタDRTや保持容量Csの上にはさらに平坦化膜174が設けられる。平坦化膜174は、ソース/ドレイン電極168に達する開口を有し、この開口と平坦化膜174の上面の一部を覆う接続電極176がソース/ドレイン電極168と接するように設けられる。平坦化膜174上にはさらに付加容量電極180が設けられる。接続電極176や付加容量電極180は同時に形成することができ、同一の層に存在することができる。接続電極176と付加容量電極180を覆うように付加容量絶縁膜182が形成される。付加容量絶縁膜182は、平坦化膜174の開口では接続電極176の一部を覆わず、接続電極176の底面を露出する。これにより、接続電極176を介し、その上に設けられる画素電極190とソース/ドレイン電極168間の電気的接続が可能となる。付加容量絶縁膜182には、その上に設けられる隔壁184と平坦化膜174の接触を許容するための開口186を設けてもよい。なお、接続電極176や開口186の形成は任意である。接続電極176を設けることにより、その後のプロセスにおいてソース/ドレイン電極168の表面の腐食を防止することができ、ソース/ドレイン電極168のコンタクト抵抗の増大を防止することができる。開口186を通して平坦化膜174中の不純物を除去することができ、これによって画素回路や発光素子OLEDの信頼性を向上させることができる。
【0034】
付加容量絶縁膜182上には、接続電極176と付加容量電極180を覆うように、画素電極190が設けられる。付加容量絶縁膜182は付加容量電極180と画素電極190によって挟持され、この構造によって付加容量Cadが構築される。画素電極190は、付加容量Cadと発光素子OLEDによって共有される。
【0035】
画素電極190の上には、画素電極190の端部を覆う隔壁184が設けられる。隔壁184により、画素電極190に起因する凹凸が緩和され、この上に設けられる電界発光層(以下、EL層)192や対向電極194の切断を防止することができる。隔壁184と画素電極190を覆うようにEL層192、およびEL層192を覆う対向電極194が設けられる。画素電極190は、EL層192にホールを注入するために設けられる電極であり、その表面が比較的高い仕事関数を有することが好ましい。発光素子OLEDからの発光を画素電極190を通して取り出す場合には、画素電極190は可視光を透過するように構成される。この場合、具体的な材料としてはインジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)などの可視光を透過可能な導電性酸化物が用いられる。一方、発光素子OLEDからの発光を対向電極194を通して取り出す場合には、画素電極190は可視光を反射するように構成される。この場合、画素電極190は銀やアルミニウムなどの可視光の反射率が高い金属を含む。あるいは画素電極190は、導電性酸化物を含む膜と反射率が高い金属を含む膜の積層構造を有してもよい。例えば、導電性酸化物を含む第1の導電膜、銀、アルミニウムなどの金属を含む第2の導電膜、導電性酸化物を含む第3の導電膜の積層構造を採用することができる。
【0036】
EL層192の構造は任意であり、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層、励起子ブロッキング層などの機能層を適宜組み合わせて形成することができる。EL層192の構造はすべての画素104間で同一でもよく、隣接する画素104間で一部の構造が異なってもよい。例えば隣接する画素104間で発光層の構造、あるいは材料が異なり、他の層は同一の構造を有するよう、画素104を構成してもよい。
図4では、見やすさを考慮し、代表的な機能層としてホール輸送層192a、発光層192b、電子輸送層192cが示されている。
【0037】
発光素子OLEDからの発光を画素電極190を通して取り出す場合には、対向電極194は可視光を反射するように構成される。具体的には、アルミニウム、銀、マグネシウムなどの反射率の高い金属やこれらの合金(例えばマグネシウムと銀の合金)を用いて形成される。一方、発光素子OLEDからの発光を対向電極194を通して取り出す場合には、可視光を透過可能な導電性酸化物を含むように画素電極190が構成される。あるいは、上述した金属や合金を可視光が透過可能な厚さで形成してもよい。この場合、可視光に対して透光性を示す導電性酸化物の膜をさらに形成してもよい。
【0038】
任意の構成として、対向電極194上にはパッシベーション膜196が配置される。パッシベーション膜196の構造も任意に決定することができ、単層構造、積層構造のいずれを採用してもよい。積層構造を有する場合、例えばケイ素含有無機化合物を含む第1の層196a、樹脂を含む第2の層196b、ケイ素含有無機化合物を含む第1の層196aが順次積層した構造を採用することができる。ケイ素含有無機化合物としては窒化ケイ素や酸化ケイ素が挙げられる。樹脂としてはエポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリエステル、ポリカルボナートなどが挙げられる。
【0039】
[3.駆動負荷の制御]
上述したように、表示領域106には開いた形状を有する切欠き114が設けられ、
図5に示すように、切欠き114は、複数の画素104がそれぞれ設けられる第1(k=1)行から第k行と交差する。また、これらの行の各々には、画素104と電気的に接続される各種走査線(書込制御走査線128、初期化制御走査線130、補正制御走査線132、発光制御走査線134、リセット制御線136など)が設けられる。以下の説明では、これらの走査線を総じて走査線140と記し、
図5では、見やすさを考慮し、各行に対し一本の走査線140のみを示している。したがって、走査線140は上述した各種走査線の一部、あるいは全てであり、例えば走査線140は書込制御走査線128のみによって構成されていてもよい。
【0040】
このため、第(k+1)行から第n行に位置する複数の画素104に接続される第(k+1)から第nの走査線140は実質的に直線的に配置することができるが、第1(k=1)行から第k行に位置する画素104と接続される第1から第kの走査線140のすべて、あるいは一部は、切欠き114を回避するように屈曲する。また、第1から第kの走査線140は、複数の列(第h列から第i列)において画素104と接続されず、一部が切欠き114、すなわち額縁領域を通過する。このため、第1から第kの走査線140は、第h列から第i列において、切欠き114の行方向に平行な辺と第(k+1)行の間を延伸する。
【0041】
図5に示した例では、高電位電源線120の一部は、第h列から第i列の少なくとも一部において第kの走査線140と第(k+1)の走査線140との間に位置し、一部は切欠き114において第1から第kの走査線140と交差する。ただし、高電位電源線120の配置はこれに限られず、
図6に示すように、切欠き114において第1から第kの走査線140と重ならないように高電位電源線120を配置してもよい。この場合、高電位電源線120は、第h列から第i列の一部において第1の走査線140と切欠き114の辺の間を延伸する。
【0042】
上述した構造に起因し、第1から第kの走査線140に接続される画素104の数は、第(k+1)から第nの走査線140に接続される画素104の数と比較して少ない。具体的には、切欠き114に重畳する領域に配置されない画素104の分だけ少ない。このため、前者にかかる駆動負荷は、後者にかかる駆動負荷と比較して小さく、例えばすべての行の走査線140に対して同一の形状や強度のパルス信号を与えても、その信号の遅延や形状のなまりの程度は、第1から第kの走査線140と第(k+1)から第nの走査線140の間で同一とはならない。より具体的には、第1から第kの走査線140では信号の遅延やなまりの程度がより小さく、このため、第1(k=1)行から第k行の画素104においては、入力される映像信号Vsigに対応する輝度、あるいはこれに近い輝度で発光素子OLEDを発光させることができるが、第(k+1)行から第n行の画素104においては、映像信号Vsigに対応する輝度が得られにくい。その結果、第1(k=1)行から第k行の画素104の輝度が第(k+1)行から第n行の画素のそれと比較して大きくなり、これは表示領域106内における輝度むらとして観察される。
【0043】
このような輝度むらに起因する表示品質の低下を防ぐため、本実施形態では、第1から第kの走査線140に対して調整容量を付加し、第(k+1)から第nの走査線140と同程度の駆動負荷が印加されるよう調整を行う。具体的には、
図7に示すように、第1から第kの走査線140のすべて、あるいは少なくとも一部と重なる半導体膜、もしくは導体膜(以下、総じて調整膜と記す)144を切欠き114に形成する。調整膜144は開口146において高電位電源線120と電気的に接続される。したがって、調整膜144には高電位PVDDが印加される。調整膜144は画素回路内のトランジスタの半導体膜(例えば駆動トランジスタDRTの半導体膜160)と同一の層内に存在してもよい。この場合、調整膜144は例えばシリコンを含み、その結晶性も半導体膜160と同一でも良い。例えば半導体膜160と調整膜144はいずれも、アモルファスシリコン膜、あるいはポリシリコン膜である。また、調整膜144には不純物がドープされる。ここでは調整膜144には高電位PVDDが印加されるため、調整膜144にはホウ素やアルミニウムなどのp型の導電性を付与する不純物がドープされることが好ましい。その濃度は低濃度不純物領域160cより高く、ソース/ドレイン領域160bと同程度、あるいはそれ以上であってもよい。
【0044】
図7の鎖線A-A´に沿った断面の模式図を
図8に示す。
図8に示すように、ゲート絶縁膜162と層間絶縁膜172に開口146が形成され、これにより調整膜144と高電位電源線120が電気的に接続される。高電位電源線120は電流供給線121と電気的に接続されるので(
図7参照)、調整膜144も列方向に延伸する電流供給線121と電気的に接続される。また、調整膜144と走査線140はゲート絶縁膜162を介して重なり、走査線140には寄生容量Cが形成され、走査線140の抵抗Rとの積CRが調整負荷として第1から第kの走査線140のすべて、あるいは一部に与えられる。これにより、第1から第kの走査線140にかかる駆動負荷と、第(k+1)から第nの走査線140にかかる駆動負荷が同程度となるよう調整することができる。その結果、表示領域106全体にわたり、映像信号Vsigに対応する輝度、あるいはそれに近い輝度で発光素子OLEDを駆動することができ、表示品質の低下を防止することができる。
【0045】
図9に示すように、調整膜144は複数設けてもよい。この場合、複数の調整膜144の面積は同一でも良く、異なってもよい。これにより、寄生容量Cの大きさを調整することができ、駆動負荷の調整をより精密に行うことができる。このような構造では、鎖線B-B´に沿った断面模式図(
図10)に示すように、調整膜144が設けられない領域ではゲート絶縁膜162がアンダーコート150と接する。
【0046】
図11や
図12に示すように、調整膜144の形状は長方形や正方形に限られず、調整膜144が走査線140と重なる辺は走査線140に対して傾いてもよい。例えば調整膜144は台形の形状を有していてもよい。これにより、調整膜144と重なる面積を、第1から第kの走査線140の間で相違させることができる。
【0047】
図5に示すように、第1から第kの走査線の全て、あるいは一部は、切欠き114を迂回するように屈曲する。このため、例えば第1の走査線140は、切欠き114の行方向に平行な辺に最も遠く、第2から第kの走査線140と比較して長い。一般化すると、第(j+1)の走査線140は第jの走査線140と比較すると長い(jはkよりも小さい自然数)。したがって、第1から第kの走査線140の抵抗はこの順に小さくなり、これらにかかる駆動負荷もこの順に小さくなる。この場合、調整膜144と重なる面積が第1から第kの走査線の順で小さくなるようにすることで、これらの走査線にかかる駆動負荷を同程度に調整することができる。例えば
図11に示すように、台形の底辺と上辺のうち、短い方がより表示領域106に近くなるよう、複数の台形の調整膜144を設けることで、第1から第kの走査線140の順で徐々に調整負荷を小さくすることができる。同様に、
図13に示すように、第1から第kの走査線140が調整膜144と重なる面積が段階的に変化するよう、調整膜144を形成してもよい。なお、他の要因によって第1から第kの走査線140の抵抗や寄生容量がこの順に大きくなる場合には、
図12のように、調整膜144と重なる面積が第1から第kの走査線の順で増大するように調整膜144を成形してもよい。
【0048】
上述したように、切欠き114を有する表示領域106では、切欠き114と交差する行に位置する画素104の走査線140にかかる駆動負荷は、切欠き114と交差しない行に位置する画素104の走査線140のそれと比較して小さく、これに起因して表示むらが発生しやすい。しかしながら、走査線140の容量を調整するための調整膜144を設けることにより、表示領域106全体にわたり、走査線140にかかる駆動負荷を同程度に調整することができる。その結果、表示むらが抑制され、高品質な映像を表示可能な表示装置を提供することが可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
本実施形態では、表示装置100の作製方法について、
図14(A)から
図18(B)を用いて説明する。これらの図のそれぞれにおいて、左側の図は画素を示し、
図4の断面図の一部に対応する。一方、右側の図は切欠き114の断面図であり、
図8に相当する。第1実施形態と同一、あるいは類似する構成については説明を割愛することがある。
【0050】
基板102上に、アンダーコート150、および遮光膜152を形成する。ここではアンダーコート150は第1実施形態で述べた三層構造を有する例が示されている。具体的には、まず基板102上に酸化シリコンを含む膜150aを形成した後、遮光膜152を形成する。その後、窒化シリコンを含む膜150b、および酸化シリコンを含む膜150cを含む膜を順次形成する。酸化シリコンを含む膜150a、窒化シリコンを含む膜150b、および酸化シリコンを含む膜150cは化学気相堆積(CVD)法やスパッタリング法を用いて形成することができる。遮光膜152はモリブデン、クロミウム、タングステンなどを含むことができ、CVD法、あるいはスパッタリング法で形成される。
【0051】
次に、半導体膜160と調整膜144をアンダーコート150上に形成する(
図14(B))。これらはシランガスなどを原料として用い、CVD法によって形成すればよい。得られるアモルファスシリコンに対して加熱処理、あるいはレーザなどの光を照射することで結晶化を行ってもよい。半導体膜160、調整膜144は同時に形成され、したがって、これらは同一の層内に存在する。
【0052】
次に、図示しないレジストマスクを半導体膜160を覆うように形成し、その後調整膜144に対してドーピング(第1のドーピング)を行う。ここでは、調整膜144に対し、アルミニウムやホウ素などのp型の導電性を付与するドーパントを用いてドーピングを行う。これにより、調整膜144に対して導電性が与えられる。
【0053】
その後、半導体膜160のチャネル領域160aと低濃度不純物領域160cを形成する領域、および調整膜144に図示しないレジストマスクを形成し、半導体膜160に対してドーピング(第2のドーピング)を行い、ソース/ドレイン領域160bを形成する(
図14(C))。この時、ドーパントとしてはリンや窒素などのn型の導電性を付与するドーパントを用いることにより、駆動トランジスタDRTをn型チャネルトランジスタとして形成することができる。
【0054】
次に半導体膜160、調整膜144を覆うようにゲート絶縁膜162を形成する(
図15(A))。アンダーコート150と同様、ゲート絶縁膜162も窒化ケイ素や酸化ケイ素を含む膜を一つ、あるいは複数含み、CVD法やスパッタリング法を適用して形成される。引き続き、ゲート絶縁膜162上にゲート電極164、および容量電極170をスパッタリング法やCVD法を用いて形成する(
図15(A))。この時、各種走査線(書込制御走査線128、初期化制御走査線130、補正制御走査線132、発光制御走査線134、リセット制御線136など)140が形成され、そのうち、第1から第kの走査線140がゲート絶縁膜162を介して調整膜144と重なるように形成される(
図15(A))。したがって、ゲート電極164と走査線140は同一の層内に存在する。ゲート電極164や容量電極170、走査線140に含まれる金属としては、チタンやアルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、タンタル、あるいはこれらの合金などが挙げらる。これらの電極や配線は単層構造を有していて良く、積層構造を有していても良い。例えば導電性の高い銅やアルミニウムなど金属が融点の高いモリブデンやチタンなどの金属で挟まれた構造を採用することができる。
【0055】
この後、調整膜144を覆うレジストマスクを形成し、ゲート電極164をさらにマスクとして用い、半導体膜160に対してドーピング(第3のドーピング)を行う。この時、半導体膜160に対する第2のドーピングと同じドーパントを用い、第2のドーピングよりも低濃度で半導体膜160がドーピングされる。これにより、低濃度不純物領域160cが形成されるとともに、ゲート電極164と重なるチャネル領域160aが形成される(
図15(B))。なお、この第3のドーピングは、調整膜144上にレジストマスクを形成せずに行ってもよい。
【0056】
次にゲート電極164や容量電極170、走査線140上に層間絶縁膜172を形成する(
図16(A))。層間絶縁膜172もアンダーコート150やゲート絶縁膜162で使用可能な材料を含み、CVD法やスパッタリング法を適用して単層構造、あるいは積層構造を有するように形成することができる。引き続き層間絶縁膜172とゲート絶縁膜162に対してエッチングを行い、ソース/ドレイン領域160bに達する開口147、および調整膜144に達する開口146を形成する(
図16(A))。開口は、例えばフッ素含有炭化水素を含むガス中でプラズマエッチングを行うことで形成することができる。
【0057】
次にこれらの開口146、147を覆うように金属膜を形成し、エッチングを行って成形することで、ソース/ドレイン電極166、168を形成する(
図16(B)。この時、同時に第1の信号線124と第2の信号線126とともに、高電位電源線120や低電位電源線122、電流供給線121が形成され、高電位電源線120が開口146(
図16(A)参照)を介して調整膜144と電気的に接続される(
図16(B))。
【0058】
次に平坦化膜174を、駆動トランジスタDRTや保持容量Cs、高電位電源線120などを覆うように形成する(
図17(A))。平坦化膜174はエポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリイミド、ポリエステル、ポリカルボナートなどの高分子材料を含み、スピンコーティング法、インクジェット法、印刷法、ディップコーティング法などを適用して形成することができる。その後、平坦化膜174に対してエッチングを行い、ソース/ドレイン電極168に達する開口を形成する。
【0059】
引き続き、ソース/ドレイン電極168を露出する開口を覆うように接続電極176を形成するとともに、付加容量電極180を平坦化膜174上に形成する(
図17(A))。接続電極176や付加容量電極180は、例えば導電性酸化物をスパッタリングすることで形成することができる。その後、接続電極176や付加容量電極180を覆うように付加容量絶縁膜182を形成する(
図17(B))。付加容量絶縁膜182も窒化ケイ素や酸化ケイ素などの無機化合物を含むことができ、CVD法やスパッタリング法を適用して形成することができる。付加容量絶縁膜182は、接続電極176の底面の一部を露出する開口を有する。この開口において、表示素子OLEDの画素電極190と接続電極176の電気的接続が行われる。付加容量絶縁膜182は第1から第kの走査線140が設けられる領域にも形成してもよい(
図17(B))。
【0060】
次に、接続電極176と接するように、かつ、付加容量電極180と重なるように、画素電極190をスパッタリング法やCVD法を利用して形成する。(
図17(B))。その後、画素電極190の端部を覆うように、隔壁184を形成する(
図18(A))。隔壁184はエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの高分子材料を用い、スピンコート法やインクジェット法などを利用して形成することができる。隔壁184により、画素電極190などに起因する段差を吸収し、かつ、隣接する画素104の画素電極190同士を互いに電気的に絶縁することができる。
【0061】
次に表示素子OLEDのEL層192、および対向電極194を、画素電極190と隔壁184を覆うように形成する(
図18(A))。EL層192はインクジェット法や印刷法、あるいは蒸着法などの乾式成膜法を適用して形成される。対向電極194もスパッタリング法、あるいは蒸着法を利用して形成することができる。
図18(A)では、EL層192や対向電極194は第1から第kの走査線140や高電位電源線120と重ならないように形成されているが、これらの両方、あるいは一方が走査線140や高電位電源線120の一部と重なるよう、EL層192や対向電極194を形成してもよい。
【0062】
次にパッシベーション膜196を形成する。パッシベーション膜196は表示領域106だけでなく、切欠き114の一部にも形成することができる。したがって、パッシベーション膜196は、第1から第kの走査線140のすべて、あるいは一部と重なってもよい。
【0063】
図18(B)に示すように、パッシベーション膜196が三層の構造を有している場合、まず第1の層196aを第2の電極240を覆うように形成する。第1の層196aは、画素電極190と接するように設けることができる。第1の層196aは、例えば窒化ケイ素や酸化ケイ素などの無機材料を含み、CVD法やスパッタリング法を適用して形成される。
【0064】
引き続き第2の層196bを形成する。第2の層196bは、
図18(B)に示すように、隔壁184に起因する凹凸を吸収するよう、また、平坦な面を与えるような厚さで形成してもよい。第2の層196bは、印刷法やインクジェット法、スピンコート法などによって形成することができる。あるいは、第1実施形態で述べた樹脂の原料となるオリゴマーを減圧下で霧状あるいはガス状にし、これを第1の層196aに吹き付けて、その後オリゴマーを重合することによって第2の層196bを形成してもよい。
【0065】
その後、第3の層196cを形成する。第3の層196cは、第1の層196aで使用可能な材料を含むことができ、第1の層196aの形成に適用可能な方法で形成することができる。
【0066】
以上の工程により、表示装置100が作製される。上述したように、走査線140にかかる駆動負荷を調整するための調整膜144は、画素回路中のトランジスタの半導体膜160と同時に形成することができる。したがって、プロセスに大きな負担をかけることなく、表示装置100を提供することが可能である。
【0067】
(第3実施形態)
本実施形態では、表示装置100とは構造が異なる表示装置200について説明する。第1、第2実施形態で述べた内容と同一、あるいは類似する内容に関しては説明を割愛することがある。
【0068】
表示装置100では、第1から第kの走査線140にかかる駆動負荷を調整するため、切欠き114に調整膜144をが設けられる。この調整膜144は画素回路中のトランジスタの半導体膜と同一の層内に存在する。これに対して表示装置200は、
図19に示すように、調整膜144に替わり、高電位電源線120の一部が第1から第kの走査線140のすべて、あるいは一部と重なる点において、表示装置100と異なる。換言すると、高電位電源線120の一部である金属膜が第1から第kの走査線140のすべて、あるいは一部の上で重なり、これによって調整負荷が与えられて駆動負荷の調整が行われる。
【0069】
図19の鎖線C-C´に沿った断面模式図を
図20に示す。
図20に示すように、第1から第kの走査線の全て、あるいは一部の上に、層間絶縁膜172を介して高電位電源線120が設けられる。したがって、第1から第kの走査線に付与される調整容量は高電位電源線120の一部、層間絶縁膜172によって形成される。これにより、表示領域106全体にわたってすべての走査線140に対してほぼ同一の駆動負荷がかかり、表示むらの発生が防止され、高品質な表示が可能な表示装置が提供される。
【0070】
表示装置200においても、この調整容量の生成のために設けられる高電位電源線120は、画素回路中のトランジスタのソース/ドレイン電極(例えばソース/ドレイン電極166、168など)の形成時に形成することができる。したがって、製造プロセスを複雑化することなく表示装置200を提供することができる。
(第4実施形態)
本実施形態では、表示装置100、200とは構造が異なる表示装置210について説明する。第1から第3実施形態で述べた内容と同一、あるいは類似する内容に関しては説明を割愛することがある。
【0071】
表示装置210は、表示装置100と同様、複数の調整膜144を有するが、第1の信号線124と第2の信号線126の一方、あるいは両者(以下、これらを総じて信号線142と記す)の一部が隣接する調整膜144の間に位置する点で表示装置100と異なる。
【0072】
具体的には
図21に示すように、切欠き114と交差する列(すなわち、第h列から第i列)に設けられる信号線142(第hから第iの信号線142)は、その一部(第1延伸部142a)が高電位電源線120に覆われ、さらに隣接する二つの調整膜144に挟まれた領域に位置する。二つの調整膜144に挟まれる信号線142の数に制約はない。
図21に示すように、連続する三つの列内の画素104に接続される第1延伸部142aが二つの調整膜144に挟まれた領域に位置するよう表示装置100を構成してもよく、一つ、二つ、あるいは四つ以上の列に存在する画素104に接続される第1延伸部142aが隣接する二つの調整膜144に挟まれた領域に位置するよう、表示装置100を構成してもよい。
【0073】
図21の鎖線D-D´に沿った断面模式図を
図22に示す。
図22に示すように、ゲート絶縁膜162と層間絶縁膜172に開口212が設けられ、表示領域106から延伸する信号線142は開口212において、異なる層に存在し、かつ、信号線142の一部として機能する第1延伸部142aへ接続される。第1延伸部142aはゲート絶縁膜162と層間絶縁膜172を介して高電位電源線120によって一部が覆われ、さらにゲート絶縁膜162を介して走査線140と重なる。第1延伸部142aは調整膜144と同一工程で形成され、同一層内に存在する。このため、第1延伸部142aは、シリコンを含み、調整膜144と同程度の導電性を有する。信号線142に印加される信号は第1延伸部142aにも印加される。このため、ゲート絶縁膜162、層間絶縁膜172、高電位電源線120、および走査線140によって信号線142に寄生容量が生じる。また、切欠き114と交差する列と交差しない列に配置される画素104はいずれも同じ数の走査線140と交差する。このため、表示領域106にわたってすべての信号線142に同程度の駆動負荷をかけることができ、表示むらの発生を抑制することが可能となる。
【0074】
第3実施形態の表示装置200と同様、
図23に示すように、表示装置210においても調整膜144を設けず、高電位電源線120の一部が第1から第kの走査線140のすべて、あるいは一部の上で重なる構成を採用してもよい。この場合、高電位電源線120には切欠き214が形成され、隣接する切欠き214の間において走査線140が高電位電源線120に覆われる。
【0075】
図23の鎖線E-E´に沿った断面模式図を
図24に示す。層間絶縁膜172に開口216、220が設けられ、表示領域106から延伸する信号線142は開口216において、異なる層に存在し、かつ、信号線142の一部として機能する第1延伸部142aへ接続され、さらに第1延伸部142aは開口220において信号線142の一部として機能する第2延伸部142bに接続される。第1延伸部142aは画素回路中のトランジスタのゲート電極(例えば駆動トランジスタDRTのゲート電極164)と同一の層内に存在し、高電位電源線120の一部と重なる。信号線142と第2延伸部142bはいずれも画素回路中のトランジスタのソース/ドレイン電極(例えば駆動トランジスタDRTのソース/ドレイン電極166、168など)と同一の層に存在する。このため、信号線142には、層間絶縁膜172、高電位電源線120、および走査線140によって寄生容量が生じる。この寄生容量を調整容量として利用することで、切欠き114と交差する列の信号線142と交差しない列の信号線142には同程度の駆動負荷をかけることができ、表示むらの発生を抑制することが可能となる。
【0076】
図21に示したように、信号線142に第1延伸部142aを設け、第1延伸部142aが高電位電源線120と重なる場合、切欠き114と交差しない列における信号線142の第1延伸部142aと、切欠き114と交差する列の信号線142の第1延伸部142aの幅は異なってもよい。例えば、
図1における領域118の拡大図(
図25(A))、および切欠き部114とその近傍の表示領域106の拡大図(
図25(B))に示すように、切欠き114と交差する信号線142の第1延伸部142aの幅は、領域118に位置する信号線142(すなわち、切欠き114と交差しない列の画素104と接続される信号線142)の第1延伸部142aの幅よりも大きくてもよい。これにより、切欠き114と交差する列の画素104に接続される信号線142に対し、より大きな調整容量を付与することができる。
【0077】
(第5実施形態)
本実施形態では、表示装置100、200、210とは構造が異なる表示装置230について説明する。第1から第4実施形態で述べた内容と同一、あるいは類似する内容に関しては説明を割愛することがある。
【0078】
表示装置100、200、210では、第1から第kの走査線140に調整容量を付与するため、層間絶縁膜172、あるいはゲート絶縁膜162を介して高電位PVDDが印加された調整膜144、あるいは高電位電源線120の一部である金属膜が第1から第kの走査線140のすべて、あるいは一部と重なるように設けられる。これに対して表示装置230では、対向電極194に低電位PVSSを与えるための補助配線232を調整膜として用いる。
【0079】
表示装置230の切欠き114とその近傍の表示領域106の上面模式図を
図26に示す。
図6に示すように、表示装置230には、対向電極194に接続される補助配線232が設けられる。補助配線232は切欠き114に設けられ、高電位電源線120は表示領域106と補助配線232の間に位置する。対向電極194は表示領域106から切欠き114へ延び、高電位電源線120と重なる。さらに対向電極194は、開口234において補助配線232と電気的に接続される。
【0080】
図26の鎖線G-G´に沿った断面模式図を
図27に示す。補助配線232は第1から第kの走査線140のすべて、あるいは一部の上に、層間絶縁膜172を介して重なるように設けられる。補助配線232は信号線142と同一の層内に存在する。開口234は、補助配線232と信号線142の上に形成される平坦化膜174に設けられ、この開口234を覆い、補助配線232と電気的に接続されるように下部接続電極236が配置される。下部接続電極236は、画素104内に設けられる接続電極176と同一の層内に存在してもよい。接続電極176の上には付加容量絶縁膜182が形成される。付加容量絶縁膜182の一部は開口234内で除去され、これにより下部接続電極236の表面の一部が露出される。下部接続電極236上には画素電極190と同一の層内に存在する上部接続電極238が設けられ、上部接続電極238と下部接続電極236は開口234内で電気的に接続される。対向電極194は上部接続電極238を覆うように形成され、これにより対向電極194は、上部接続電極238、下部接続電極236を介して補助配線232と電気的に接続される。なお、この構成を採用する場合には、画素回路中のトランジスタ(例えば駆動トランジスタDRT)はpチャネル型トランジスタであることが好ましい。
【0081】
上述したように、補助配線232は層間絶縁膜172を介して第1から第kの走査線140のすべて、あるいは一部と重なる。このため、これらの構成により、切欠き114と交差する行の走査線140に調整容量が形成される。その結果、表示領域106全体にわたり、全ての走査線140に対して同程度の駆動負荷がかかり、表示むらの発生を抑制することが可能となる。
【0082】
上述したように、調整容量を作り出すために用いられる補助配線232は、画素回路中のトランジスタの信号線142やソース/ドレイン電極(例えば駆動トランジスタDRTのソース/ドレイン電極166、168)を形成する際に同時に形成することができる。したがって、本実施形態を適用することで、製造工程の複雑化を招くことなく、高品質な表示が可能な表示装置を提供することができる。
【0083】
(第6実施形態)
本実施形態では、表示装置100、200、210、230とは構造が異なる表示装置250について説明する。第1から第5実施形態で述べた内容と同一、あるいは類似する内容に関しては説明を割愛することがある。
【0084】
表示装置250では、表示装置100、200、210、230とは異なり、切欠き114と交差する行や列に位置する画素の走査線140、信号線142に対して調整膜を用いて調整容量を付与するのではなく、走査線140の端部にそれぞれ補償トランジスタ252が設けられる。補償トランジスタ252は可変抵抗として機能し、上記走査線140の各々の抵抗が外部回路などを用いて調整される。
【0085】
図28に、走査線側駆動回路108、および、切欠き114と交差する第1行から第3行の画素104と接続される第1から第3の走査線140を示す。第1実施形態同様、各走査線140は書込制御走査線128、初期化制御走査線130、補正制御走査線132、発光制御走査線134、リセット制御線136から適宜選択される一つ、あるいは複数から構成される。
【0086】
図28に示されるように、各走査線140の端部では、補償トランジスタ252(252aから252c)が形成される。
図28の鎖線F-F´に沿った断面模式図を
図29に示す。各補償トランジスタ252は、アンダーコート150と接する半導体膜256(
図28において半導体膜256a)、半導体膜256上の第1の端子260、第2の端子258(
図28において第2の端子258a)、第1の端子260と第2の端子258を覆う層間絶縁膜172、および層間絶縁膜172上に位置し、半導体膜256と重なるゲート電極254(
図28においてゲート電極254a)を有する。これらの半導体膜256、第1の端子260、第2の端子258、層間絶縁膜172、およびゲート電極254によって補償トランジスタ252が構成される。ここで、第1の端子260は走査線140の一部である。各走査線140に与えられる信号は、第2の端子258に印加され、ゲート電極254に電位が印加されて補償トランジスタ252がオン状態となることで、信号は第1の端子260へ伝達される。
図29に示す例では、対向電極194は補償トランジスタ252と重なるように設けられているが、対向電極194のみならず、EL層192も補償トランジスタ252と重なるように形成してもよい。あるいはEL層192と対向電極194の両者が補償トランジスタ252と重ならなくてもよい。
【0087】
補償トランジスタ252の半導体膜256は、画素回路中のトランジスタの半導体膜と同一の層に存在する。第1の端子260や第2の端子258は画素回路中のトランジスタのゲート電極と同一の層に存在する。また、ゲート電極254は画素回路中のトランジスタのソース/ドレイン電極と同一の層に存在する。したがって、したがって、プロセスに大きな負担をかけることなく、表示装置250を提供することが可能である。
【0088】
ゲート電極254には、走査線側駆動回路108から電位が与えられ、この電位によって補償トランジスタ252中のチャネルの移動度やキャリア濃度が制御される。すなわち、ゲート電極254に与えられる電位によって第1の端子260と第2の端子258間の抵抗を制御することができるため、補償トランジスタ252は可変抵抗として機能する。補償トランジスタ252の抵抗をそれぞれ独立に制御することにより、各走査線140の抵抗を独立して制御することができる。なお、ゲート電極254に与えられる電位は、走査線側駆動回路108ではなく、信号線側駆動回路110、あるいは図示しない外部回路などから供給されてもよい。これにより、切欠き114と交差する行に配置される画素104と接続される走査線140のそれぞれに対し、独立して駆動負荷を付与することがでる。その結果、表示領域106全体にわたって走査線140に均一な負荷をかけることができ、表示むらの発生が抑制された表示装置を提供することが可能となる。
【0089】
また、
図28に示すように、補償トランジスタ252は、列方向に重ならないように配置することができる。この場合、第jの補償トランジスタ252の第2の端子258が延伸する方向と、第(j+1)の走査線140(あるいは、第(j+1)の補償トランジスタ252の第1の端子)が延伸する方向が同一直線上に存在するよう、各補償トランジスタ252を配置してもよい(jはkよりも小さい自然数)。これにより、走査線140の間隔を変更することなく補償トランジスタ252を設置することができ、額縁領域の拡大を防ぐことができる。
【0090】
補償トランジスタ252を用いる場合、行ごとに補償トランジスタ252のチャネル幅やチャネル長を変化させてもよい。例えば
図30に示すように、第1の走査線140の補償トランジスタ252のチャネル幅が最大となり、第kの走査線140の補償トランジスタ252のチャネル幅が最小となるよう、補償トランジスタ252を構成してもよい。すなわち、第jの走査線140の補償トランジスタ252のチャネル幅よりも第(j+1)の走査線140の補償トランジスタ252のチャネル幅が大きくなるよう、補償トランジスタ252を構成してもよい。図示しないが、第jの走査線140の補償トランジスタ252のチャネル幅よりも第(j+1)の走査線140の補償トランジスタ252のチャネル幅が小さくなるよう、補償トランジスタ252を構成してもよい。このような構成を採用することにより、ゲート電極254に与える電位を固定しつつ、第1から第kの走査線140の間で調整負荷を変化させることができる。
【0091】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0092】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0093】
100:表示装置、102:基板、104:画素、106:表示領域、108:走査線側駆動回路、110:信号線側駆動回路、112:端子、114:切欠き部、118:領域、120:高電位電源線、121:電流供給線、122:低電位電源線、124:第1の信号線、126:第2の信号線、128:書込制御走査線、130:初期化制御走査線、132:補正制御走査線、134:発光制御走査線、136:リセット制御線、138:リセット信号線、140:走査線、142:信号線、142a:第1延伸部、142b:第2延伸部、144:調整膜、146:開口、147:開口、150:アンダーコート、150a:酸化シリコンを含む膜、150b:窒化シリコンを含む膜、150c:酸化シリコンを含む膜、152:遮光膜、160:半導体膜、160a:チャネル領域、160b:ソース/ドレイン領域、160c:低濃度不純物領域、162:ゲート絶縁膜、164:ゲート電極、166:ソース/ドレイン電極、168:ソース/ドレイン電極、170:容量電極、172:層間絶縁膜、174:平坦化膜、176:接続電極、180:付加容量電極、182:付加容量絶縁膜、184:隔壁、186:開口、190:画素電極、192:EL層、192a:ホール輸送層、192b:発光層、192c:電子輸送層、194:対向電極、196:パッシベーション膜、196a:第1の層、196b:第2の層、196c:第3の層、200:表示装置、210:表示装置、212:開口、216:開口、220:開口、230:表示装置、232:補助配線、234:開口、236:下部接続電極、238:上部接続電極、240:第2の電極、250:表示装置、252:補償トランジスタ、254:ゲート電極、256:半導体膜、258:第2の端子、260:第1の端子