(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】プラグコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 24/58 20110101AFI20220808BHJP
【FI】
H01R24/58
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017240110
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】10 2017 122 241.3
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500244263
【氏名又は名称】ハンス-ペーター・ヴィルファー
【氏名又は名称原語表記】Hans-Peter Wilfer
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ペーター・ヴィルファー
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-082583(JP,U)
【文献】実開平01-121274(JP,U)
【文献】実開平05-065072(JP,U)
【文献】中国実用新案第206349550(CN,U)
【文献】特表2013-532005(JP,A)
【文献】特開2003-132991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのデバイスを接続するためのプラグコネクタであって、
ケース(1)と、
前記ケースに対して固定的に配置され、前記ケースの外側に突出する第1のプラグ(21)と、
前記ケース上に配置された第2のプラグ(22)と、
を具備し、
前記第2のプラグ(22)は、前記第1のプラグ(21)と前記第2のプラグ(22)との間の相対的な位置を変えることができるように、
前記ケース(1)の変位面(12)に沿って変位可能であることを特徴とするプラグコネクタ。
【請求項2】
前記変位面(12)は、前記第2のプラグ(22)を案内するためのガイドスロット(13)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のプラグコネクタ。
【請求項3】
前記第1のプラグ(21)の電気接点(23)に導通する導体トラック(3)が前記ケース(1)内に設けられ、前記第2のプラグ(22)がどの位置でも前記導体トラック(3)と接触するように前記第2のプラグ(22)の電気接点(24)が配置されている、ことを特徴とする
請求項2に記載のプラグコネクタ。
【請求項4】
前記導体トラック(3)は、前記ガイドスロット(13)のほうを向いた
絶縁板(4)の前面側に配置される、ことを特徴とする
請求項3に記載のプラグコネクタ。
【請求項5】
前記絶縁板(4)は回路基板によって形成され、前記導体トラック(3)は前記絶縁板(4)上に印刷されている、ことを特徴とする請求項4に記載のプラグコネクタ。
【請求項6】
前記第2のプラグ(22)は、前記ケース(1)内に配置された端部に絶縁ディスク(5)を有する、ことを特徴とする
請求項5に記載のプラグコネクタ。
【請求項7】
前記第2のプラグ(22)、特に前記絶縁ディスク(5)は、前記第2のプラグ(22)がそのプラグ軸に沿って前記導体トラック(3)のほうに向けて付勢するようにばね要素(6)と係合する、ことを特徴とする
請求項6に記載のプラグコネクタ。
【請求項8】
前記第2のプラグ(22)のどの位置にあっても前記ケースの外側に当接するディスク(9)が前記第2のプラグ(22)に形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプラグコネクタ。
【請求項9】
前記第1のプラグ(21)は、前記ケース(1)の第1のケース側面(11a)に配置され、
前記第2のプラグ(22)は、前記第1のケース側面(11a)の反対側の前記ケース(1)の第2のケース側面(11b)に配置される、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のプラグコネクタ。
【請求項10】
前記第1のケース側面(11a)と前記変位面(12)とは互いに実質的に平行であることを特徴とする請求項9に記載のプラグコネクタ。
【請求項11】
前記第1のケース側面(11a)と前記変位面(12)とは互いに鋭角(β)を成すことを特徴とする請求項9に記載のプラグコネクタ。
【請求項12】
前記第1のプラグ(21)によって規定される第1の差し込み方向(A)と前記第2のプラグ(22)によって規定される第2の差し込み方向(B)との間に挟まれた角度(α)は90°である、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のプラグコネクタ。
【請求項13】
前記第1のプラグ(21)によって規定される
前記第1の差し込み方向(A)と前記第2のプラグ(22)によって規定される
前記第2の差し込み方向(B)との間に挟まれた角度(α)は0°より大きく、好ましくは180°である、ことを特徴とする
請求項12に記載のプラグコネクタ。
【請求項14】
前記第1のプラグ(21)および前記第2のプラグ(22)は、フォーンプラグとして、2極フォーンプラグとして形成される、ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のプラグコネクタ。
【請求項15】
楽器の電子的な音響を変更するための少なくとも2つのエフェクタ(91,92)を有する配置であって、
前記エフェクタは、それぞれが少なくとも1つのソケット(91a、92a)を有し、前記ソケット(91a、92a)を介して請求項1乃至13のいずれか1項に記載の1つ以上の
前記プラグコネクタによって互いに接続されていることを特徴とする配置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのソケット(差し込み口)を接続するためのプラグコネクタ、およびプラグコネクタを含む配置に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽分野では、エレクトリックギターまたはエレクトリックベースギターのような電子楽器の電気的な音響の改変に使用されるフット操作可能なエフェクタを接続するために接続用配線が必要となる。
【0003】
通常、シグナル・チェーンを形成するためには多数のエフェクタが直列に接続され、これらのエフェクタを互いに独立してオン・オフ切り替え操作をすることにより広範囲の音響改変を可能にする。このようなシグナル・チェーンは、特にギタリストやベーシストによるライブコンサートに利用されている。
【0004】
ケーブル配線されたエフェクタを容易に持ち運びできるようにするために、それら複数のエフェクタは、しばしばケーブル配線された状態でプレートのような搬送エレメント上にしっかりと固定される。
【0005】
接続すべきエフェクタは、接続される側のソケットの形状と配置の点で大きく異なる。したがって、コンパクトで場所をとらないエフェクタの省スペース配置を可能とするために、通常、接続には短いパッチケーブルが使用される。
【0006】
しかしながら、パッチケーブルを用いた接続には欠点がある。まず、パッチケーブルは、通常、橋渡しをされる接続区間よりも長いため、エフェクタをコンパクトに配置する場合に、ケーブルが余ってしまい、この余分なケーブルがエフェクタ間に存在するスペースに押込まれる。
【0007】
これにより、パッチケーブルに対する機械的負荷が増加し、その結果、パッチケーブルが頻繁に破損する。これに加えてさらに、余分なケーブルを収納するために追加のスペースが必要となるので、コンパクトであるとは言い難いエフェクタの配置となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、様々な外的条件のために短い距離におかれた2つのソケットを、堅牢で信頼性があり、かつ省スペースの接続を可能とする解決策を提供することにより解決される。この課題は、請求項1の特徴を有するプラグコネクタによって解決される。この課題は、請求項14の特徴を有する配置構成によっても解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特に、本課題は、ケースを有するプラグコネクタであって、前記ケースに対して固定配置された第1のプラグが前記ケースの外側に突出し、前記ケース上に第2のプラグが配置され、前記第2のプラグは、前記第1のプラグと前記第2のプラグとの間の相対位置を変更するために、前記ケースの変位面に沿って変位可能であるプラグコネクタによって解決される。
【0010】
本発明の本質的な思想は、接続のために用意されたプラグが固定したケースに配置されており、従来のようにケーブル線によって接続されるのではないことである。これにより、機械的負荷に対して議論の余地なく堅牢な接続の解決策が実現される。この場合、プラグの1つは、接続されるソケットの変化する配置を考慮に入れて、プラグの相対位置を変更できるようにするために、プラグの一方がケースに対して変位可能に取り付けられる。従って、本発明のプラグコネクタは、プラグの位置決めにおける柔軟性に関して、欠点なしに従来の接続に対して決定的な利点を有する。
【0011】
好ましい実施形態では、変位面は、第2のプラグを案内するためのガイドスロットを有する。ガイドスロットは、第2のプラグが摺動可能な距離を規定する。好ましくは、ガイドスロットの幅は、第2のプラグの外径に対応する。これにより、ガイドスロット内における第2のプラグの揺れ動き(ガタツキ)を防ぐことができる。
【0012】
更に好ましくは、ケース内には第1のプラグの電気接点に導通する導体トラックが配置されており、該導体トラックは前記第2のプラグがどの位置にあっても第2のプラグの電気接点が該導体トラックと接触して導通するように配置される。これにより、2つのプラグ間の電気的接続のための構造的にシンプルで機械的に堅牢な解決策が実現される。好ましくは、導体トラックは、第2のプラグがガイドスロットに沿って変位したときに変位面(スライド面)の平面に対してその向きを変えないように、ケース内部でガイドスロットに対して平行に延び出ている。
【0013】
好ましい実施形態では、導体トラックは、ガイドスロットのほうを向く絶縁板の前面側に配置される。これにより、ケース内部に導体トラックを取り付けるための有利な方策が提供される。回路基板は、ケース内に貼り付けるか、差し込むか、またはネジ止めすることができる。回路基板をケースに繋ぎ合わせるために、回路基板の輪郭をケースの形状に適合させることができる。絶縁板は、導体トラックのほうを向かない反対側に穴を有することができる。この穴は、導体トラックの前方側の方向に延び出している。これにより、第1のプラグの電気接点を絶縁体の裏側から導体トラックに接続することが可能になる。
【0014】
更に好ましくは、絶縁板はプリント回路基板によって形成され、導体トラックは絶縁板上に印刷されることがさらに好ましい。これにより導体トラックの簡易かつ安価な製造が可能になる。
【0015】
更に好ましい実施形態では、第2のプラグは、その端部にケース内に配置された絶縁ディスクを有する。これにより、プラグのカバーを、第2のプラグの電気接点と導体トラックとの接触領域から確実に隔離することが可能になる。絶縁ディスクは、好ましくは、第2のプラグから半径方向の外方に突出して形成される。
【0016】
更に好ましくは、第2のプラグ、特に絶縁ディスクは、その軸に沿って導体トラックの方向に付勢されるように、ばね要素と係合されている。これにより、第2のプラグと導体トラックとの電気的接触が確実に維持される。
【0017】
好ましい実施形態では、ディスクが、第2のプラグがどの位置にあってもケースの外側に当接するように、第2のプラグ上に形成されている。ディスクは、ケースに対して第2のプラグを支えており、それによって、プラグコネクタの安定性を高めている。同時に、ガイドスロットに沿った第2のプラグの案内が改善される。
【0018】
好ましい実施形態では、第1のプラグはケースの第1のケース側面に配置され、第2のプラグは第1のケース側面とは反対側に配置される第2のケース側面に配置される。これにより、互いに向かい合う(ケース)面上に位置する2つのソケットを接続できるプラグコネクタが実現される。第2のプラグは変位可能であるので、ソケットがそれぞれの面上で互いに位置をずらして配置されていた場合であっても、それらのソケットを互いに接続することができる。
【0019】
更に好ましくは、ケース側面と変位面とは実質的に互いに平行である。第1のプラグの軸と第2のプラグの軸とが実質的に互いに平行である場合に、平行に整列された2つのソケットを1つのコネクタプラグによって接続することができる。
【0020】
他の好ましい実施形態では、ケース側面と変位面とは互いに鋭角を成す。このようにして形成されたプラグコネクタでは、互いに平行に整列されていないソケット間を互いに接続することが可能になる。
【0021】
他の好ましい実施形態では、第1のプラグによって画定される第1の差し込み方向と第2のプラグによって画定される第2の差し込み方向との間の角度が90°である。このプラグコネクタでは、差し込み方向が互いに直交する2つのソケットを接続することができる。
【0022】
更に好ましい実施形態では、第1のプラグによって画定される第1の差し込み方向と、第2のプラグによって画定される第2の差し込み方向との間の角度は、0°より大きく、特に180°である。この実施形態では、第1のプラグと第2のプラグとが互いに平行に配置され、かつ、同じ方向を向くプラグコネクタを除外する。
【0023】
更に好ましくは、第1のプラグおよび第2のプラグは、フォーンプラグとして、好ましくは2極フォーンプラグとして、より好ましくは2極6.3mmフォーンプラグとして形成される。ここで好ましくは、プラグのスリーブが接地される一方で、2つのプラグの電気接点がプラグの先端部にそれぞれ接続されていることが好ましい。これによって6.3mmフォーンプラグを持つあらゆる慣用のエフェクタとともに使用することができるプラグコネクタが実現される。
【0024】
本発明の目的は、それぞれがソケットを有し、ソケットを介して請求項1乃至13のいずれか1項に記載の互いに接続されたコネクタが設けられ、楽器の電子音を変更するための少なくとも2つのエフェクタを備えた装置によってさらに達成される。本発明のプラグコネクタを使用することにより、省スペースで堅牢な接続を有し、かつ、エフェクタ上のソケットが種々異なる位置にある場合において複数のエフェクタの配置を実現することができる。
【0025】
以下、本発明は、図面を参照してより詳細に説明される例示的な実施形態に基づく更なる特徴と利点に関して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態のプラグコネクタを示す側面図である。
【
図2b】
図2bは、第2のプラグの位置が変更された
図2aのプラグコネクタを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るプラグコネクタを示す側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施形態に係るプラグコネクタを示す側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第4の実施形態に係るプラグコネクタを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の2つのエフェクタと1つのプラグコネクタの配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態に係るプラグコネクタの側面図である。プラグコネクタは、第1のプラグ21と第2のプラグ22とが配置されたケース1を有する。本実施形態では、第1のプラグ21および第2のプラグ22は、2極のフォーンプラグとして形成されている。フォーンプラグコネクタは、特に電気ギターや電気ベースギターなどの電気楽器からの音響信号を伝送するために通常用いられている。
図1aに示すように、プラグ21と22のポールは、それぞれ絶縁リング21c,22cにより互いに電気的に絶縁されたプラグ21,22の先端部21a,21bおよび後部円筒部21b,22b(いわゆるスリーブ)によって形成されている。スリーブ21b,22bは接地されている。プラグ21,22の内部には、(図示しない)電気的な接続がプラグ21,22の先端部21a,22aからそれぞれ対向するプラグ端部までの間に設けられている。このプラグ端部は電気接点となり終わっている。これは、
図3に示す第2のプラグ22において見ることができる。第2のプラグ22の先端部22aの電気接点は、ここでは参照符号24で示される。第1のプラグ21は、同様に構成されており、先端部21aと向き合う端部に電気接点23を有する。電気接点23は、第1のプラグ21の内部の電気的接続により先端部21aに接続されている。
【0028】
第1のプラグ21は、差し込み方向Aを規定する。本実施形態では、第1のプラグ21は、第1のケース側面11aに配置されている。第2のプラグ22は、差し込み方向Bを規定する。第2のプラグ22は、第1のプラグ21と第2のプラグ22との間の相対位置を変更可能とするために、第2のケース側面11bに沿って変位可能である。これにより、差し込み方向Aと差し込み方向Bとの相対的な位置関係を変えることができる。例えば、
図1に示したプラグコネクタは、2つの対向する実質的に平行な面を有するように横並びに隣接して配置された2つの装置を接続するために利用することができる。これらの面にそれぞれソケットが設けられている場合であって、それらのソケットが互いに位置がずらされて配置されている場合に、2つの装置を接続するためにプラグコネクタを利用することもできる。これは、第2のプラグ22を第2のケース側面11bに沿って変位させることによって可能になる。
【0029】
ケースの高さ、すなわち第1のケース側11aと第2のケース側11bとの間の距離は、好ましい実施形態では10mmである。したがって、プラグコネクタはほとんどスペースを必要とせず、接続されるデバイス装置は互いに近接した非常に小さい距離に配置することができる。
【0030】
第2のプラグ22の変位性能は、
図2aと
図2bに示されている。
図2aおよび
図2bは、それぞれ
図1のプラグコネクタを下方から見た斜視図を示している。
図2aでは、第2のプラグ22は、差し込み方向Aと差し込み方向Bとの間に最大の位置ずれを示す位置にある。
図2bでは、第2のプラグ22は、差し込み方向Aと差し込み方向Bとが一直線上にある位置にある。この配置構成では、第2のプラグ22が、2つの整列されたソケットを互いに接続することができる。
【0031】
図2aと
図2bに見られるように、ケース1のほうを向く第2のプラグ22の基端部は、第2のケース側面11bにおいて変位可能な第2のプラグ22が案内されるガイドスロット13内に取り付けられている。ガイドスロット13は、第2のプラグ22の外径に対応する幅を有する。これにより、第2のプラグ22がガイドスロット13に沿ってのみ変位可能であること、および、ガイドスロット13の横方向に遊びがないことが確実になる。
【0032】
図3は、
図1のプラグコネクタの分解図である。ケース1は、互いに繋ぎ合わされるか、互いに接着されるか、ねじ止めされるか、または他の方法で接続される第1の半体シェル14と第2の半体シェル15とによって形成されている。第1の半体シェル14と第2の半体シェル15は、金属のような導電性材料でつくられている。第1のプラグ21は、スリーブ21bで第1の半体シェル14に堅固に接続されている。第1のプラグ21の電気接点23(
図3には図示せず)は、第1の半体シェル14の内側のほうを向いている。第2の半体シェル15は、第2のプラグ22が位置を変えることができる変位面12を内側に有する。
【0033】
図3に示す実施形態では、第2のプラグ22は、ケース1の端部に配置されたキャップ8、リング7およびばね要素6によって案内される。絶縁ディスク5は、ケース1内に配置された第2のプラグ22の端部と堅固に接続されている。絶縁ディスク5は、第2のプラグ22の電気接点24が組み立てられた状態でそこを通って突出する穴51を中央に有する。キャップ8は、ガイドスロット13に対して直交するケース1の幅に対応する外径をもつ中空の円筒形状を有している。
【0034】
キャップ8は、半径方向の内方に突出する突出部をガイドスロット13の側に有する。リング7は、同様に、中空の円筒状に形成され、半径方向に突出する突出部におけるキャップ8の内径に対応する外径を有する。リング7の内径は、第2のプラグ22の外径に対応している。絶縁板4のほうを向いた端部において、リング7は半径方向の外方に突出する突出部を有する。
【0035】
絶縁ディスク5の第2のプラグ22と向き合わない反対側の面には絶縁板4がケース内に配置されている。絶縁板4は、例えば回路基板などの電気絶縁材料で形成されている。絶縁板4の第2のプラグ22のほうを向く側には、導電性材料からなる導体トラック3が形成されている。導体トラック3は、図示された実施形態において、対応して形成された絶縁板4の凹部に埋め込まれており、その結果、絶縁板4の表面と同一面になる。しかし、導体トラック3は、絶縁板4上に印刷してもよいし、あるいはエッチングしてもよい。
【0036】
導体トラック3は、組み立てられた状態でガイドスロット13と平行に延びるように絶縁板4上に配置される。この配置構成は、ガイドスロット13に沿ってプラグ22が変位されて位置が変わったときに、第2のプラグ22の電気接点24が導体トラック3と常に接触することを確実にする。
【0037】
電気的な接触をさらに改善するために、第2のプラグ22は、差し込み方向Bに沿って導体トラック3の方向に付勢される。この付勢力は、ばね要素6によって生成される。2つの半体シェル14と15が組み立てられた状態では、絶縁板4の導体トラック3のほうを向いていない側(上面側)は、第1の半体シェル14の内側に位置する。第2のプラグ22のケース側端側の端部には、絶縁板4に絶縁ディスク5が固定され、第2のプラグ22の電気接点24は、絶縁ディスク5の穴51を通って突き出し、導体トラック3に接触している。
【0038】
ばね要素6は、第2のプラグ22のプラグ軸上に配置され、絶縁ディスク5と係合している。ばね要素6と第2のケースシェル15との間には、同様に、第2のプラグ22のプラグ軸上に配置されたリング7とキャップ8が設けられている。ばね要素6は、リング7の突出部に係合し、該突出部をガイドスロット13の方向に押す。その際に、リング7の突出部はキャップ8の突出部と係合する。キャップ8はガイドスロット13の幅よりも大きい外径を有するため、リング7とキャップ8との係合配置構成は、ばね要素6によって第2の半体シェル15の内壁に押し付けられる。ばね要素6は、同時に、第2のプラグ22を絶縁板4の方向に付勢する。
【0039】
キャップ8とリング7は導電材料でつくられている。リング7の内径は、第2のプラグ22の外径に対応している。第2のプラグ22のスリーブ22bは、リング7およびキャップ8を介して第2の半体シェル15に導電接触する。第1のプラグ21のスリーブ21bは、第1の半体シェル21に導電接触しているので、2つのコネクタのスリーブ21b,22bは、組み立てられた状態で互いに導電接続される。第2のプラグ22の先端部22aは、電気接点24を介して導体トラック3に導通接触している。絶縁板4は、導体トラック3のほうを向いていない反対側において、第1のプラグ21の電気接点23の位置に対応する位置に穴41を有する。導体トラック3は、穴41を覆うように穴41と重なって延びているので、第1のプラグ21の側からアクセス可能である。第1のプラグ21の電気接点23は、穴41の寸法に合わせて形成することができる。電気接点23を穴41に挿入して配線3に接触させることができる。これに代えて、電気接点23は、導体トラック3にはんだ付けされてもよいし、あるいは他の方法で導体トラック3に導通接続されてもよい。
【0040】
このように構成されたプラグコネクタによれば、ケーブルを介することなくプラグ21とプラグ22との間を接続することができる。この接続は、構造が簡単で機械的に堅牢であり、プラグAとプラグBの配置を種々変更することができる。記載した個々の部品の寸法を適切に選択することにより、ねじ等の締結具をさらに使用することなくプラグコネクタを製造することができる。
【0041】
上述した実施形態では、第2の半体シェル15の内側の変位面12は、第2のプラグ22が配置されたケース11bの第2の面と平行である。しかし、原理的には、ケースの第2の面を変位面12に対して平行でないように形成することも可能である。同様に、プラグ22が摺動可能に取り付けられた変位面12がケースの外側に配置される構成も考えられる。第2のプラグ22が変位面に沿って位置を変更できるように取り付けられることが重要である。
【0042】
さらに、第2のプラグ22を他の方法でケース内に収納することを実現することも可能である。第2のプラグ22の各位置において、導体トラック3と第2のプラグ22の電気接点24との間の接触を確保することが重要である。例えば、絶縁ディスク5を第2のプラグ22に固く動かないように接続するのではなく、その代わりに、第2のプラグ22を導体トラックのほうに向けて付勢しながら、第2のプラグ22と半径方向に係合するように、リング要素6を形成することが考えられる。同様に、第2のプラグ22が変位面12に沿って変位可能であることが保証されている限りにおいて、リング7とキャップ8との組み合わせは必ずしも必要ではない。これは、例えば、リング7を省略し、第2のプラグ22を導体トラック3に向けて付勢するために、キャップ8の半径方向の内方に延び出す突出部と直接係合するようにばね要素6を形成することにより実現することができる。
【0043】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るプラグコネクタの側面図である。第1の実施形態では第1のケース側面11aと第2のケース側面11bとを互いに平行に配置したが、第2の実施形態では第1のケース側面11aと第2のケース側面11bとは互いに角度βを成す。この角度βは鋭角とすることが適する。それゆえに、プラグ21の差し込み方向Aとプラグ22の差し込み方向Bとは鈍角αを成す。本実施形態のプラグコネクタは、互いに接続される2つの装置が、例えばアーチ形状のペダルボード上に互いに平行ではない位置関係に配置される場合に適する。
【0044】
図4のプラグコネクタの構造は、実質的に第1の実施形態のそれに対応する。導体トラック3は、図中に破線で示すように、第2のプラグ22の電気接点をガイドスロット13の内側のどの位置においても確保するために、ガイドスロット13に対して平行に延びるようにケースの内部に配置されている。この目的のために、絶縁板4は、ケース1の内側の適当な箇所に例えばネジで固定されている。あるいは、ケース1は、絶縁板4が固定される対応する形状を内側に有していてもよい。第1のプラグ21の電気接点23は、第2の実施形態の導体トラック3に対して適当な方法で、例えば適当な長さの導体ピースによって接続される。
【0045】
図5は、本発明の第3の実施形態に係るプラグコネクタの側面図である。本実施形態では、第1の実施形態とは異なり、第1のプラグ21はケース側面11に配置されず、ケース1の長手方向の端部に配置されている。これにより、互いに直交する差し込み方向AとBを設けることができるプラグコネクタを実現することができる。
【0046】
図5のプラグコネクタの構成は、第1の実施形態に対応する。第1のプラグ21は、ケース1上の異なる位置に取り付けられているので、電気接点23は、対応する導体ピースを設けることにより導体トラック3に接続される。絶縁板4およびその他の部品の配置は、第1の実施形態と同様である。
【0047】
図6は、本発明の第4の実施形態に係るプラグコネクタの斜視図である。本実施形態のプラグコネクタは、構造に関して第1の実施形態のプラグコネクタに対応する。
図6のプラグコネクタでは、第2のプラグ22にディスク9が取り付けられる。好ましくは、ディスク9は第2のプラグ22にモールド成形される。ディスク9は、第2のプラグ22から半径方向の外側に延び出し、第2のケース側面11bに当接するように位置決めされている。ディスク9は、好ましくは、第2のプラグのスリーブ22bと同じ材料で作製される。このディスク9によって、ガイドスロット13内における第2のプラグ22の安定性と操作性を向上させることができる。
【0048】
図7は、本発明の2つのエフェクタ91,92と1つのプラグコネクタの配置を示す平面図である。エフェクタ91,92は、プラグ21,22に対応するフォーンプラグを受け入れるソケット91a,92b上のそれぞれの左側面および右側面に設けられている。エフェクタ91,92の側面でのソケット91a,92bの相対的な位置は種々異なる。それにもかかわらず、本発明のプラグコネクタを用いることにより、プラグコネクタの第1のプラグ21をエフェクタ91のソケット91aに挿入することにより、2つのエフェクタを並置してスペースを節約することができ、かつ、2つのエフェクタ91,92が平行に方向づける際に、第2のエフェクタ92のソケット92aに差し込むことができるように変位可能な第2のプラグ22を変位させることができる。
【0049】
エフェクタ91,92は、
図6のそれらの外側に向いた側面に更にソケットを有する。これらのソケットを介して、更なるプラグコネクタで更なるエフェクタを接続することができる。この方法で、任意の数のエフェクタからなるシグナル・チェーンを、場所をとらずに形成することができる。2つのエフェクタの斜めの配置が必要な場合は、本発明の第2の実施形態のプラグコネクタを使用することができる。エフェクタがその端面の一方にソケットをさらに有する場合は、第3の実施形態のプラグコネクタによって、エフェクタの長手方向の一方の側にソケットを有するエフェクタへの接続を実現することができる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] ケース(1)を有するプラグコネクタであって、
前記ケースに対して固定的に配置され、前記ケースから抜け出す第1のプラグ(21)と、前記ケース上に配置された第2のプラグ(22)と、を具備し、
前記第2のプラグ(22)は、前記第1のプラグ(21)と前記第2のプラグ(22)との間の相対的な位置を変えることができるように、前記ケースの変位面に沿って変位可能であることを特徴とするプラグコネクタ。
[2] 前記変位面(12)は、前記第2のプラグ(22)を案内するためのガイドスロット(13)を有する、ことを特徴とする[1]に記載のプラグコネクタ。
[3] 前記第1のプラグ(21)の電気接点(23)に導通する導体トラック(3)が前記ケース(1)内に設けられ、前記第2のプラグ(22)がどの位置でも前記導体トラック(3)と接触するように前記第2のプラグ(22)の電気接点(24)が配置されている、ことを特徴とする[1]又は[2]のいずれか1に記載のプラグコネクタ。
[4] 前記導体トラック(3)は、前記ガイドスロット(13)のほうを向いた絶縁板(4)の前面側に配置される、ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1に記載のプラグコネクタ。
[5] 前記絶縁板(4)は回路基板によって形成され、前記導体トラック(3)は前記絶縁板(4)上に印刷されている、ことを特徴とする[4]に記載のプラグコネクタ。
[6] 前記第2のプラグ(22)は、前記ケース(1)内に配置された端部に絶縁ディスク(5)を有する、ことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1に記載のプラグコネクタ。
[7] 前記第2のプラグ(22)、特に前記絶縁ディスク(5)は、前記第2のプラグ(22)がそのプラグ軸に沿って前記導体トラック(3)のほうに向けて付勢するようにばね要素(6)と係合する、ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1に記載のプラグコネクタ。
[8] 前記第2のプラグ(22)のどの位置にあっても前記ケースの外側に当接するディスク(9)が前記第2のプラグ(22)に形成されている、ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1に記載のプラグコネクタ。
[9] 前記第1のプラグ(21)は、前記ケース(1)の第1のケース側面(11a)に配置され、
前記第2のプラグ(22)は、前記第1のケース側面(11a)と向き合う前記ケース(1)の第2のケース側面(11b)に配置される、ことを特徴とする[1]乃至[8]のいずれか1に記載のプラグコネクタ。
[10] 前記第1のケース側面(11a)と前記変位面(12)とは互いに実質的に平行であることを特徴とする[9]に記載のプラグコネクタ。
[11] 前記第1のケース側面(11a)と前記変位面(12)とは互いに鋭角(β)を成すことを特徴とする[1]乃至[10]のいずれか1、特に[9]に記載のプラグコネクタ。
[12] 前記第1のプラグ(21)によって規定される第1の差し込み方向(A)と前記第2のプラグ(22)によって規定される第2の差し込み方向(B)との間に挟まれた角度(α)は90°である、ことを特徴とする[1]乃至[11]のいずれか1に記載のプラグコネクタ。
[13] 前記第1のプラグ(21)によって規定される第1の差し込み方向(A)と前記第2のプラグ(22)によって規定される第2の差し込み方向(B)との間に挟まれた角度(α)は0°より大きく、好ましくは180°である、ことを特徴とする[1]乃至[12]のいずれか1に記載のプラグコネクタ。
[14] 前記第1のプラグ(21)および前記第2のプラグ(22)は、フォーンプラグとして、好ましくは2極フォーンプラグとして、より好ましくは2極6.3mmフォーンプラグとして形成される、ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のプラグコネクタ。
[15] 楽器の電子的な音響を変更するための少なくとも2つのエフェクタ(91,92)を有する配置であって、
前記エフェクタは、それぞれが少なくとも1つのソケット(91a、92a)を有し、前記ソケット(91a、92a)を介して[1]乃至[13]のいずれか1に記載の1つ以上のプラグコネクタによって互いに接続されていることを特徴とする配置。
【符号の説明】
【0050】
1…ケース、11a…第1のケース側面、11b…第2のケース側面、
12…変位面、13…ガイドスロット、14…第1の半体シェル、15…第2の半体シェル、
21…第1のプラグ、22…第2のプラグ、
21a,22a…先端部、21b,22b…スリーブ、23,24…電気接点、
3…導体トラック、4…絶縁板、41…穴、5…絶縁ディスク、51…穴、
6…ばね要素、7…リング、8…キャップ、
9…ディスク、91,92…エフェクタ、91a,92a…ソケット、
A,B…差し込み方向。