(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/20 20060101AFI20220808BHJP
H01T 13/32 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H01T13/20 B
H01T13/32
(21)【出願番号】P 2017253620
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】青木 文明
(72)【発明者】
【氏名】林 真人
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 大祐
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-005581(JP,A)
【文献】特開平09-129356(JP,A)
【文献】特開2008-108479(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013615(WO,A1)
【文献】特表2013-513928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジング(2)と、
前記ハウジングの内側に保持された筒状の絶縁碍子(3)と、
前記絶縁碍子の内側に保持された中心電極(4)と、
前記中心電極の先端面との間に火花放電を生じさせる放電ギャップ(G)を形成するギャップ形成面(521)を有する接地電極(5)と、を有し、
前記絶縁碍子の内側面と前記中心電極の外側面とは、互いに直接対向しており、
前記絶縁碍子は、前記ハウジングの先端側に突出した碍子突出部(31)を有し、
前記碍子突出部の外周面は、プラグ中心軸を通るとともにプラグ軸方向(Z)に平行な断面のうち少なくとも1つの断面である軸平行断面において、プラグ軸方向の先端側に向かうにつれて内周側に向かう、直線
状となる碍子傾斜面(311)を有し、
前記軸平行断面において、前記碍子傾斜面の両端を通る仮想直線(L1)は、前記ギャップ形成面を通
り、
前記接地電極は、前記碍子傾斜面とは反対側を向く接地傾斜面(522)を有し、
前記接地傾斜面522は、前記軸平行断面において前記碍子傾斜面311と平行であり、
前記ハウジングは、燃焼室(16)に露出するハウジング露出部(221)を有し、前記ハウジング露出部の外周面は、プラグ軸方向の先端側に向かうにつれて内周側に向かうよう傾斜したハウジング傾斜面(221a)を有し、前記軸平行断面において、前記ハウジング傾斜面の両端を通るハウジング側仮想直線(L2)は、前記ギャップ形成面を通り、
前記ハウジング傾斜面、前記碍子傾斜面及び前記接地傾斜面が同一直線上に配されている、
内燃機関の燃焼室内に設けられて放電火花により前記燃焼室内の混合気への着火を行う内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
前記碍子突出部の外周面は、その全周に前記碍子傾斜面を有する、請求項
1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
スパークプラグは、自動車のエンジン等の内燃機関における着火手段として用いられる。スパークプラグとして、中心電極と接地電極とを対向させて放電ギャップを形成したものがある。かかるスパークプラグは、放電ギャップに放電を生じさせ、この放電により、燃焼室内の混合気に着火している。
【0003】
燃焼室内においては、例えばタンブル流といった混合気の気流が形成されており、この気流が放電ギャップにおいても適度に流れることにより、放電火花を気流で引き伸ばすことができる。放電火花が引き伸ばされることにより、放電火花と燃焼室内の混合気との接触面積を稼ぎ、混合気への着火性を確保することができる。
【0004】
ここで、特許文献1に記載のスパークプラグは、気流を放電ギャップへ導きやすくすべく、燃焼室内に露出するハウジングの先端部の外周面を、プラグ軸方向の先端側へ向かうほど縮径するよう傾斜した傾斜面としている。これにより、燃焼室内の気流は、ハウジングの前記傾斜面にガイドされ、放電ギャップに向かいやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグにおいては、絶縁碍子の先端部がハウジングの先端側に露出しないよう構成されている。それゆえ、絶縁碍子の先端部とハウジングとの間の空間に、燃焼室内の不完全燃焼により発生した導電性を有するカーボンが流入しやすい。そのため、絶縁碍子の先端部の表面にカーボンが堆積しやすい。そうなると、絶縁碍子の先端部の表面に堆積したカーボンを介して、中心電極とハウジングとの間に放電が生じてしまう、いわゆる横飛び火の問題が生じる。
【0007】
また、特許文献1に記載のスパークプラグにおいては、燃焼室内の混合気への着火性向上の観点からも改善の余地がある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、横飛び火が生じにくく、かつ、燃焼室内の混合気への着火性を向上させやすい内燃機関用のスパークプラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、筒状のハウジング(2)と、
前記ハウジングの内側に保持された筒状の絶縁碍子(3)と、
前記絶縁碍子の内側に保持された中心電極(4)と、
前記中心電極の先端面との間に火花放電を生じさせる放電ギャップ(G)を形成するギャップ形成面(521)を有する接地電極(5)と、を有し、
前記絶縁碍子の内側面と前記中心電極の外側面とは、互いに直接対向しており、
前記絶縁碍子は、前記ハウジングの先端側に突出した碍子突出部(31)を有し、
前記碍子突出部の外周面は、プラグ中心軸を通るとともにプラグ軸方向(Z)に平行な断面のうち少なくとも1つの断面である軸平行断面において、プラグ軸方向の先端側に向かうにつれて内周側に向かう、直線状となる碍子傾斜面(311)を有し、
前記軸平行断面において、前記碍子傾斜面の両端を通る仮想直線(L1)は、前記ギャップ形成面を通り、
前記接地電極は、前記碍子傾斜面とは反対側を向く接地傾斜面(522)を有し、
前記接地傾斜面は、前記軸平行断面において前記碍子傾斜面と平行であり、
前記ハウジングは、燃焼室(16)に露出するハウジング露出部(221)を有し、前記ハウジング露出部の外周面は、プラグ軸方向の先端側に向かうにつれて内周側に向かうよう傾斜したハウジング傾斜面(221a)を有し、前記軸平行断面において、前記ハウジング傾斜面の両端を通るハウジング側仮想直線(L2)は、前記ギャップ形成面を通り、
前記ハウジング傾斜面、前記碍子傾斜面及び前記接地傾斜面が同一直線上に配されている、
内燃機関の燃焼室内に設けられて放電火花により前記燃焼室内の混合気への着火を行う内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【発明の効果】
【0010】
前記内燃機関用のスパークプラグにおいて、絶縁碍子の碍子突出部は、ハウジングの先端側に突出している。それゆえ、絶縁碍子の碍子突出部の表面にカーボンが堆積しにくい。それゆえ、横飛び火が発生することを抑制することができる。
【0011】
また、碍子突出部の外周面は、前記軸平行断面において、プラグ軸方向の先端側に向かうにつれて内周側に向かう、直線状或いは内周側に凸の曲線状となる碍子傾斜面を有する。さらに、軸平行断面において、碍子傾斜面の両端を通る仮想直線は、接地電極のギャップ形成面を通るよう形成されている。それゆえ、燃焼室内の気流は、碍子傾斜面を沿うように流れて、放電ギャップを吹き抜けるよう導かれる。それゆえ、放電ギャップに気流が適度に流れるようにすることができる。それゆえ、放電火花を引き伸ばしやすく、燃焼室内の混合気への着火性を向上させやすい。
【0012】
また、燃焼室内の気流は放電ギャップを斜め先端側に向って流れるよう、碍子傾斜面によって導かれる。それゆえ、放電火花は、気流によって斜め先端側、すなわち燃焼室の中央側に向かって引き伸ばされる。換言すると、放電火花は、エンジンヘッドから遠ざかるように引き伸ばされる。それゆえ、放電火花から混合気へ着火されることにより生じた火炎の熱がエンジンヘッドに奪われることを抑制しやすく、火炎を成長させやすい。
【0013】
さらに、前記内燃機関用のスパークプラグにおいては、ハウジングよりも放電ギャップに近い位置にある絶縁碍子に形成された碍子傾斜面によって、気流の進行方向をガイドする。それゆえ、放電ギャップに向かって気流をプラグ軸方向に近い角度で流入させることが可能となる。そのため、放電火花を一層先端側に向かって引き伸ばしやすく、一層着火性を向上させやすい。
【0014】
以上のごとく、前記態様によれば、横飛び火が生じにくく、かつ、燃焼室内の混合気への着火性を向上させやすい内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの断面図。
【
図2】実施形態1における、内燃機関に取り付けたスパークプラグの先端部周辺の断面図。
【
図3】実施形態1における、スパークプラグの先端部周辺の側面図。
【
図4】実施形態1における、スパークプラグにおける内燃機関に露出する部位を先端側から見た平面図。
【
図5】実施形態1における、スパークプラグに流入する気流の流れを説明するための、スパークプラグの先端部周辺の説明断面図。
【
図6】実施形態1における、放電火花が引き伸ばされた様子を説明するための、スパークプラグの先端部周辺の説明断面図。
【
図7】実施形態2における、内燃機関に取り付けたスパークプラグの先端部周辺の断面図。
【
図8】実施形態2における、スパークプラグの先端部周辺の側面図。
【
図9】実施形態3における、内燃機関に取り付けたスパークプラグの先端部周辺の断面図。
【
図10】実施形態3における、スパークプラグの先端部周辺の側面図。
【
図11】実施形態3における、放電ギャップ周辺の気流の流れを説明するための、スパークプラグの先端部周辺の説明断面図。
【
図12】実施形態3における、初期の放電火花を示す、スパークプラグの先端部周辺の説明断面図。
【
図13】実施形態3における、放電火花の接地側起点が接地傾斜面上を移動する様子を示す、スパークプラグの先端部周辺の説明断面図。
【
図14】実施形態3における、放電火花の接地側起点が接地傾斜面の先端部まで移動したときの様子を示す、スパークプラグの先端部周辺の説明断面図。
【
図15】実施形態4における、内燃機関に取り付けたスパークプラグの先端部周辺の断面図。
【
図16】実施形態5における、内燃機関に取り付けたスパークプラグの先端部周辺の断面図。
【
図17】実施形態5における、スパークプラグにおける内燃機関に露出する部位を先端側から見た平面図。
【
図18】実施形態6における、内燃機関に取り付けたスパークプラグの先端部周辺の断面図。
【
図19】変形形態を示す、内燃機関に取り付けたスパークプラグの先端部周辺の断面図。
【
図20】他の変形形態を示す、内燃機関に取り付けたスパークプラグの先端部周辺の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグの実施形態につき、
図1~
図6を用いて説明する。
本実施形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、
図1に示すごとく、ハウジング2と絶縁碍子3と中心電極4と接地電極5とを有する。ハウジング2は筒状を呈している。絶縁碍子3は、ハウジング2の内側に保持されている。また、絶縁碍子3は、筒状を呈している。中心電極4は、絶縁碍子3の内側に保持されている。
図1~
図3に示すごとく、接地電極5は、中心電極4の先端面421との間に放電ギャップGを形成するギャップ形成面521を有する。
【0017】
図2、
図3に示すごとく、絶縁碍子3は、ハウジング2の先端側に突出した碍子突出部31を有する。ここで、プラグ中心軸を通るとともにプラグ軸方向Zに平行な断面のうち少なくとも1つの断面を軸平行断面という。このとき、
図2に示すごとく、碍子突出部31の外周面は、軸平行断面において、プラグ軸方向Zの先端側に向かうにつれて内周側に向かう、直線状或いは内周側に凸の曲線状となる碍子傾斜面311を有する。軸平行断面において、碍子傾斜面311の両端を通る仮想直線L1は、ギャップ形成面521を通る。なお、
図2は軸平行断面の一例である。以後、本実施形態につき詳説する。
【0018】
なお、本明細書において、プラグ中心軸は、スパークプラグ1の中心軸を意味するものとする。また、プラグ軸方向Zは、スパークプラグ1の軸方向を意味するものとする。また、プラグ径方向といったときは、スパークプラグ1の径方向を意味しているものとする。また、単に内周側といったときは、プラグ径方向の内周側を意味し、単に外周側といったときは、プラグ径方向の外周側を意味するものとする。
【0019】
スパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション等の内燃機関における着火手段として用いることができる。プラグ軸方向Zにおいて、スパークプラグ1の一端は、図示しない点火コイルと接続され、他端は、
図2に示すごとく、内燃機関の燃焼室16内に配される。本明細書においては、プラグ軸方向Zにおける点火コイルと接続される側を基端側とし、燃焼室16内に配される側を先端側という。
【0020】
図2に示すごとく、ハウジング2は、その先端部に、エンジンヘッド15に設けられた雌ネジ孔11に取り付けるための取付ネジ部21を有する。また、ハウジング2は、取付ネジ部21よりも先端側に突出する円環状のハウジング先端部22を有する。ハウジング先端部22の先端は、燃焼室16内に露出したハウジング露出部221を構成している。ハウジング露出部221の先端面は、プラグ軸方向Zに直交する面である。
【0021】
絶縁碍子3は、例えばアルミナを略円筒形状に形成してなる。
図1に示すごとく、絶縁碍子3は、プラグ軸方向Zに貫通するよう形成された軸孔30を有する。絶縁碍子3は、先端部(すなわち碍子突出部31)をハウジング2のプラグ軸方向Zの先端側に突出させている。また、絶縁碍子3は、基端部をハウジング2の基端に突出させている。
【0022】
図2に示すごとく、碍子突出部31の外周面は、軸平行断面において、先端側に向かうにつれて内周側に向かうよう直線状に形成された碍子傾斜面311を有する。碍子突出部31の外周面は、少なくともプラグ軸方向Zと横方向Yとの双方に平行な軸平行断面において、碍子傾斜面311を有する。
図4に示すごとく、本実施形態において、碍子突出部31の外周面は、その全周に碍子傾斜面311を有する。すなわち、碍子突出部31の外周面は、プラグ中心軸を通るとともにプラグ軸方向Zに平行なあらゆる断面において、碍子傾斜面311を有する。本実施形態においては、碍子突出部31の露出面のすべてが碍子傾斜面311を構成している。
【0023】
図2に示すごとく、碍子傾斜面311は、軸平行断面において、プラグ軸方向Zの寸法がプラグ径方向の寸法よりも大きくなるよう形成されている。本実施形態において、碍子傾斜面311は、絶縁碍子3の軸孔30に連なるよう形成されている。
【0024】
絶縁碍子3の軸孔30の先端部に、中心電極4が挿通保持されている。中心電極4は、その中心軸をプラグ中心軸と略一致させるよう配されている。
【0025】
図2、
図3に示すごとく、中心電極4は、中心電極母材41と中心電極チップ42とを有する。中心電極母材41の先端部は、碍子突出部31よりも先端側に突出した中心電極突出部411を構成している。中心電極突出部411は、先端側へ向かうほど縮径する円錐台形状を呈している。そして、中心電極突出部411の先端面に、中心電極チップ42が接合されている。
【0026】
図2、
図3に示すごとく、中心電極チップ42は、中心電極突出部411の先端面と略同径の円柱状である。中心電極チップ42は、その中心軸をスパークプラグ1の中心軸と一致させている。中心電極チップ42の先端面421が、接地電極5のギャップ形成面521とプラグ軸方向Zに対向して、放電ギャップGを形成している。
【0027】
図3に示すごとく、接地電極5は、立設部51及び内向部52を有する。立設部51は、基端側の端部に、ハウジング2の先端面に接続された接地接続部511を有する。本実施形態において、接地接続部511はプラグ軸方向Zに直交する。立設部51は、ハウジング2の先端面から先端側へプラグ軸方向Zに立設している。
【0028】
内向部52は、立設部51の先端側の端部から、プラグ径方向の内周側に延設されている。以後、内向部52の延設方向を縦方向Xといい、縦方向X及びプラグ軸方向Zの双方に直交する方向を横方向Yという。
図2、
図4に示すごとく、内向部52は、その一部が中心電極チップ42の先端面421とプラグ軸方向Zに重なる位置に配されている。内向部52の基端側の面が、前述のギャップ形成面521である。
【0029】
図2に示すごとく、軸平行断面において、碍子傾斜面311の両端を通る仮想直線L1は、接地電極5のギャップ形成面521を通る。具体的には、軸平行断面において、碍子傾斜面311の両端を通る仮想直線L1は、ギャップ形成面521における横方向Yの当該碍子傾斜面311側と反対側の領域を通る。
【0030】
なお、接地電極5は、例えば、長尺な金属板材をその厚み方向に曲げ加工してなる。接地電極5を形成する際は、このような金属板材を、長手方向の一箇所において直角に屈曲させる。これにより、この屈曲部を挟む両側の部位が、それぞれ、立設部51及び内向部52となる。
【0031】
図1に示すごとく、絶縁碍子3の軸孔30内において、中心電極4の基端側には、導電性を有するガラスシール12を介して抵抗体13が配置されている。抵抗体13は、カーボン又はセラミック粉末等の抵抗材及びガラス粉末を含むレジスタ組成物を加熱封着することにより形成する、或いはカートリッジ型抵抗体を挿入することによって構成することができる。ガラスシール12は、ガラスに銅粉を混入させてなる銅ガラスからなる。また、抵抗体13の基端側には、銅ガラスからなるガラスシール12を介して端子金具14が配されている。端子金具14は、例えば鉄合金からなる。
【0032】
次に、
図2を用いて、本実施形態のスパークプラグ1を内燃機関に取り付けてなる点火装置について説明する。
【0033】
スパークプラグ1は、取付ネジ部21において、エンジンヘッド15に設けられた雌ネジ孔11に螺合されている。これにより、スパークプラグ1がエンジンヘッド15に締結固定されている。さらに、スパークプラグ1の先端部分が燃焼室16内に配される。このとき、スパークプラグ1は、先端部分に対して燃焼室内の気流が横方向Yに流入するような姿勢で配される。
【0034】
次に、
図5を用いて、放電ギャップG周辺の混合気の気流Fの流れの様子について説明する。
【0035】
スパークプラグ1の先端部分の上流側付近においては、エンジンヘッド15の表面に沿って気流Fが流れる。具体的には、スパークプラグ1の先端部分よりも上流側付近においては、スパークプラグ1の先端部分に向かって、略横方向Yに気流Fが流れる。
【0036】
そして、スパークプラグ1の先端部分に対して略横方向Yに流入してきた気流Fは、絶縁碍子3の碍子傾斜面311に沿ってその方向が斜め先端側に変えられ、碍子傾斜面311の延長線上にある接地電極5のギャップ形成面521に向かう。その後、気流Fは、放電ギャップGを斜め先端側に向かって吹き抜ける。このように、気流Fは、放電ギャップGに近い絶縁碍子3の碍子傾斜面311によってその方向が変えられる。それゆえ、放電ギャップGを流れる気流Fは、プラグ軸方向Zに近い角度で流れる。
【0037】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
【0038】
本実施形態の内燃機関用のスパークプラグ1において、絶縁碍子3の碍子突出部31は、ハウジング2の先端側に突出している。それゆえ、絶縁碍子3の碍子突出部31の表面にカーボンが堆積しにくい。それゆえ、横飛び火が発生することを抑制することができる。
【0039】
また、碍子突出部31の外周面は、軸平行断面において、プラグ軸方向Zの先端側に向かうにつれて内周側に向かう、直線状或いは内周側に凸の曲線状となる碍子傾斜面311を有する。さらに、軸平行断面において、碍子傾斜面311の両端を通る仮想直線L1は、接地電極5のギャップ形成面521を通るよう形成されている。それゆえ、
図5に示すごとく、燃焼室16内の気流Fは、碍子傾斜面311を沿うように流れて、放電ギャップGを吹き抜けるよう導かれる。それゆえ、放電ギャップGに気流Fが適度に流れるようにすることができる。それゆえ、
図6に示すごとく、放電火花Sを引き伸ばしやすく、燃焼室16内の混合気への着火性を向上させやすい。
【0040】
また、
図5に示すごとく、燃焼室16内の気流Fは放電ギャップGを斜め先端側に向って流れるよう、碍子傾斜面311によって導かれる。それゆえ、
図6に示すごとく、放電火花Sは、気流によって斜め先端側、すなわち燃焼室16の中央側に向かって引き伸ばされる。換言すると、放電火花Sは、エンジンヘッド15から遠ざかるように引き伸ばされる。それゆえ、放電火花Sから混合気へ着火されることにより生じた火炎の熱がエンジンヘッド15に奪われることを抑制しやすく、火炎を成長させやすい。
【0041】
さらに、
図5に示すごとく、本実施形態の内燃機関用のスパークプラグ1においては、ハウジング2よりも放電ギャップGに近い位置にある絶縁碍子3に形成された碍子傾斜面311によって、気流Fの進行方向をガイドする。それゆえ、放電ギャップGに向かって気流Fをプラグ軸方向Zに近い角度で流入させることが可能となる。そのため、
図6に示すごとく、放電火花Sを一層先端側に向かって引き伸ばしやすく、一層着火性を向上させやすい。
【0042】
また、碍子突出部31の外周面は、その全周に碍子傾斜面311を有する。それゆえ、スパークプラグ1の先端部分に横方向Yのいずれから気流Fが流入しても、碍子傾斜面311によって気流Fを放電ギャップGに導くことができる。また、碍子突出部31の形状を簡易にしやすい。
【0043】
以上のごとく、本実施形態によれば、横飛び火が生じにくく、かつ、燃焼室内の混合気への着火性を向上させやすい内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
【0044】
(実施形態2)
本実施形態は、
図7、
図8に示すごとく、実施形態1に対してハウジング2の形状を変更した実施形態である。
【0045】
実施形態1と同様、
図7に示すごとく、ハウジング2は、燃焼室16に露出するハウジング露出部221を有する。
図7、
図8に示すごとく、本実施形態において、ハウジング露出部221の外周面は、プラグ軸方向Zの先端側に向かうにつれて内周側に向かうよう傾斜したハウジング傾斜面221aを有する。
図7に示すごとく、軸平行断面において、ハウジング傾斜面221aの両端を通るハウジング側仮想直線L2は、ギャップ形成面521を通る。
【0046】
図7に示すごとく、ハウジング傾斜面221aは、軸平行断面において、先端側に向かうにつれて内周側に向かうよう直線状に形成されている。ハウジング露出部221の外周面は、少なくともプラグ軸方向Zと横方向Yとの双方に直交な軸平行断面において、ハウジング傾斜面221aを有する。本実施形態において、ハウジング露出部221の外周面は、その全周にハウジング傾斜面221aを有する。すなわち、ハウジング露出部221の外周面は、プラグ中心軸を通るとともにプラグ軸方向Zに平行なあらゆる断面において、ハウジング傾斜面221aを有する。
【0047】
ハウジング傾斜面221aは、軸平行断面において、プラグ軸方向Zの寸法がプラグ径方向の寸法よりも大きくなるよう形成されている。本実施形態において、ハウジング傾斜面221aは、ハウジング2の内周面に連なるよう形成されている。
【0048】
図7に示すごとく、軸平行断面において、ハウジング傾斜面221aの両端を通るハウジング側仮想直線L2は、接地電極5のギャップ形成面521を通る。具体的には、軸平行断面において、ハウジング側仮想直線L2は、ギャップ形成面521における横方向Yの当該ハウジング傾斜面221a側と反対側の領域を通る。
【0049】
図8に示すごとく、接地電極5は、ハウジング傾斜面221aに接合されている。接地電極5の接地接続部511は、ハウジング傾斜面221aと平行に形成されている。
【0050】
その他は、実施形態1と同様である。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0051】
本実施形態においては、碍子突出部31の碍子傾斜面311に加え、ハウジング2のハウジング傾斜面221aによっても、気流を放電ギャップGに導くことができる。それゆえ、一層放電火花を引き伸ばしやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0052】
(実施形態3)
本実施形態は、
図9~
図14に示すごとく、実施形態2に対して、接地電極5の形状を変更した実施形態である。
【0053】
図9に示すごとく、内向部52の基端側の面であるギャップ形成面521は、プラグ軸方向Zに直交する平坦面523と、平坦面523の横方向Yの両側に形成された一対の接地傾斜面522と、を有する。接地傾斜面522は、碍子傾斜面311とは反対側を向く面である。本実施形態においては、プラグ軸方向Z及び横方向Yの双方に平行な軸平行断面において、接地傾斜面522は、仮想直線L1上に位置している。接地傾斜面522は、軸平行断面において、碍子傾斜面311と平行である。
図10に示すごとく、接地傾斜面522は、縦方向Xにおける内向部52の略全体に形成されている。
【0054】
次に、
図11を用いて、本実施形態において、放電ギャップGを通過した気流Fの流れの様子について説明する。
【0055】
本実施形態においては、放電ギャップGを通過した気流Fは、接地傾斜面522に沿うように流れる。これにより、放電ギャップGを通過した気流Fは、接地傾斜面522と平行に、すなわち斜め先端側に向かって流れるようになる。
【0056】
次に、
図12~
図14を用いて、本実施形態において、放電火花Sが混合気の気流によって引き伸ばされる様子について説明する。
【0057】
まず、
図12に示すごとく、中心電極4と接地電極5との間に所定の電圧を印加することにより、放電ギャップGに火花放電が生じる。ここで、初期の放電火花Sは、接地電極5におけるギャップ形成面521の平坦面523の端縁において生じやすい。平坦面523は中心電極チップ42の先端面421との距離が近く、かつ平坦面523の端縁は周囲の電界が集中しやすいからである。
【0058】
そして、初期の放電火花Sは、混合気の気流によって、
図13、
図14に示すように下流側に引き伸ばされる。ここで、前述のごとく、放電ギャップGを通過した混合気の気流は、接地傾斜面522に沿って、斜め先端側に向かって流れる。そのため、放電火花Sは、横方向Yだけではなく、先端側に向っても引き伸ばされる。
【0059】
そして、放電火花Sが下流側に引き伸ばされている間、放電火花Sの接地電極5側の起点(以後、接地側起点S1という。)は、気流に押され、平坦面523の端縁から、接地傾斜面522を這うように斜め先端側に移動する。そして、接地側起点S1の移動に伴い、放電火花Sは、両起点間の直線距離を拡大するとともに、両起点間の部位が下流側、すなわち斜め先端側に大きく引き伸ばされる。そして、引き伸ばされている間に、放電火花Sによって混合気が着火される。
その他は、実施形態2と同様である。
【0060】
本実施形態において、接地電極5は、碍子傾斜面311とは反対側を向く接地傾斜面522を有する。それゆえ、放電ギャップGを通過した気流Fは、接地傾斜面522によって、斜め先端側へ向かうよう導かれる。これにより、一層放電火花Sを先端側に引き伸ばしやすい。
【0061】
さらに、本実施形態においては、前述のごとく、放電火花Sの接地側起点S1が移動し、放電火花Sの両起点間の直線距離が拡大される。このように、放電火花Sの両起点間の直線距離を大きくすることで、引き伸ばされた放電火花Sの一部と他の一部とが短絡することを防ぎやすく、放電火花Sを大きく引き伸ばしやすい。
【0062】
また、碍子傾斜面311は、軸平行断面において直線状となるよう形成されており、接地傾斜面522は、軸平行断面において碍子傾斜面311と平行である。それゆえ、碍子傾斜面311と接地傾斜面522との双方によって、放電ギャップGを斜め先端側に吹き抜ける気流Fを、滑らかにしやすい。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0063】
(実施形態4)
本実施形態は、
図15に示すごとく、プラグ軸方向Z及び横方向Yに平行な軸平行断面において、ハウジング傾斜面221a、碍子傾斜面311、及び接地傾斜面522が同一直線上に配されている実施形態である。
【0064】
碍子突出部31の表面は、後述の碍子突出側面312、碍子傾斜面311、及び後述の碍子先端面313を有する。碍子突出側面312は、先端側に向かうほど内周側に向かうよう、若干傾斜している。軸平行断面において、碍子突出側面312の両端を通る直線は、接地電極5のギャップ形成面521を通らない。
【0065】
そして、碍子突出側面312の先端から、碍子突出側面312よりも傾斜した碍子傾斜面311が形成されている。前述のごとく、碍子傾斜面311の両端を通る仮想直線L1は、接地電極5のギャップ形成面521を通る。そして、碍子傾斜面311の先端から内周側に、プラグ軸方向Zに平行に碍子先端面313が形成されている。
【0066】
本実施形態においては、軸平行断面において、碍子傾斜面311の両端を通る仮想直線L1と、ハウジング側仮想直線L2とは同一直線である。
その他は、実施形態3と同様である。
【0067】
本実施形態においては、プラグ軸方向Z及び横方向Yに平行な軸平行断面において、ハウジング傾斜面221a、碍子傾斜面311、及び接地傾斜面522が同一直線上に配されているため、一層、放電ギャップGに気流Fを向かわせやすい。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0068】
(実施形態5)
本実施形態は、
図16、
図17に示すごとく、実施形態4に対して碍子傾斜面311、ハウジング傾斜面221a、及び接地傾斜面522の形成位置を変更した実施形態である。
【0069】
碍子傾斜面311及びハウジング傾斜面221aは、放電ギャップGよりも、横方向Yにおける気流Fの上流側にのみ、形成されている。
図17に示すごとく、碍子傾斜面311は、碍子突出部31の略120°の範囲に形成されている。同様に、ハウジング傾斜面221aは、ハウジング露出面221の略120°の範囲に形成されている。碍子傾斜面311とハウジング傾斜面221aとは、プラグ径方向に重なる位置に形成されている。そして、接地傾斜面522は、放電ギャップGよりも、横方向Yにおける気流Fの下流側にのみ、形成されている。
その他は、実施形態4と同様である。
【0070】
本実施形態においても、実施形態4と同様の作用効果を有する。
【0071】
(実施形態6)
本実施形態は、
図18に示すごとく、実施形態4に対して中心電極4の形状を変更した実施形態である。
【0072】
本実施形態において、中心電極4は、中心電極チップ(実施形態1~実施形態5の符号42参照)を有さない。中心電極4における碍子突出部31よりも先端側に突出した中心電極突出部411の外周面411aは、軸平行断面において、先端側へ向かうほど内周側へ向かうよう傾斜した直線状に形成されている。そして、プラグ軸方向Z及び横方向Yの双方に直交する軸平行断面において、ハウジング傾斜面221aと碍子傾斜面311と中心電極突出部411の外周面411aと接地傾斜面522とは、同一直線上に配されている。なお、碍子傾斜面311の形状については、実施形態3と同様である。
その他は、実施形態4と同様である。
【0073】
本実施形態においては、プラグ軸方向Z及び横方向Yに平行な軸平行断面において、ハウジング傾斜面221a、碍子傾斜面311、中心電極突出部411の外周面411a及び接地傾斜面522が同一直線上に配されているため、放電ギャップGに気流を一層向かわせやすい。
その他、実施形態4と同様の作用効果を有する。
【0074】
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、
図19に示すごとく、碍子傾斜面311は、軸平行断面において、内周側に凸の曲線状に形成することもできる。同様に、
図20に示すごとく、ハウジング傾斜面221aを、内周側に凸の曲線状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1 内燃機関用のスパークプラグ
2 ハウジング
3 絶縁碍子
31 碍子突出部
311 碍子傾斜面
4 中心電極
421 中心電極の先端面(中心チップの先端面)
5 接地電極
521 ギャップ形成面
L1 仮想直線