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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】カードリーダ
(51)【国際特許分類】
   G06K 13/06 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
G06K13/06 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018016098
(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公開番号】P2019133481
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】武田 浩重
(72)【発明者】
【氏名】平林 昌彦
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-159376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0000965(US,A1)
【文献】特開平09-208077(JP,A)
【文献】特開2009-230746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを搬送するためのローラを備えるカードリーダであって、
前記ローラは、筒状の外周部材と、前記外周部材の内周面と固着した外周面を有し前記外周面により前記外周部材を支持する、前記外周部材よりも剛性の高い支持部材と、を備え、
前記支持部材の前記外周面は、前記外周面における前記ローラの軸方向の両端部の間において当該両端部の外径よりも大きい外径を持つ大径部を有し、
前記外周部材よりも剛性が高く且つ前記ローラに対向して配置された対向ローラを更に備え、
前記ローラと前記対向ローラは、回転軸の位置が固定となっており、且つ、前記カードを挟持可能に構成されている、カードリーダ。
【請求項2】
請求項1記載のカードリーダであって、
前記外周面は、前記両端部の間に、前記軸方向に平行な平行部を備えるカードリーダ。
【請求項3】
請求項2記載のカードリーダであって、
前記大径部が前記平行部の少なくとも一部を含むカードリーダ。
【請求項4】
請求項2又は3記載のカードリーダであって、
前記大径部は、前記両端部から前記軸方向に向かって外径が大きくなる一対のテーパー部を含み、
前記平行部の前記軸方向の長さは、前記テーパー部の前記軸方向の長さよりも大きいカードリーダ。
【請求項5】
請求項4記載のカードリーダであって、
前記大径部は、前記一対のテーパー部と、前記一対のテーパー部の間の前記平行部とからなるカードリーダ。
【請求項6】
請求項1記載のカードリーダであって、
前記大径部は、前記両端部から前記軸方向に向かって外径が大きくなる一対のテーパー部を含むカードリーダ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載のカードリーダであって、
前記カードの搬送方向に見た前記外周面の形状は、前記外周部材の前記軸方向の中心を通り且つ前記ローラの径方向に延びる直線に対して線対称となっているカードリーダ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載のカードリーダであって、
前記外周部材は弾性体により構成されているカードリーダ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載のカードリーダであって、
前記ローラと前記対向ローラは、前記カードの挿入口に最も近い位置に配置されているカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを搬送するためのローラを備えるカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
カードに記録された情報の読み取り又はカードへの情報の記録を行う装置を備えたカードリーダが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、カードリーダ内でカードを搬送するためのローラとして、平滑な内周面を有する円筒状のゴム輪と、ゴム輪の内周面が当接する平滑な外周面を有し且つゴム輪が固定される芯部材とを備えるローラが開示されている。このような構成のローラでは、ゴム輪と芯部材の間に滑りが生じないように、ゴム輪が芯部材に対して接着剤等により固着されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-230746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような剛性の異なる2つの部材を有する構成のローラを用いてカードを搬送する際に、このローラの外周部を構成する部材が強く圧縮された状態になると、この圧縮時の応力が2つの部材の境界面に作用する。そして、この境界面に作用する応力により、2つの部材の固着状態が解消されてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、剛性の異なる2つの部材を組み合わせた構成のローラを有するカードリーダにおいて、ローラの2つの部材の固着状態を維持して、カードの安定搬送を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカードリーダは、カードを搬送するためのローラを備えるカードリーダであって、前記ローラは、筒状の外周部材と、前記外周部材の内周面と固着した外周面を有し前記外周面により前記外周部材を支持する、前記外周部材よりも剛性の高い支持部材と、を備え、前記支持部材の前記外周面は、前記外周面における前記ローラの軸方向の両端部の間において当該両端部の外径よりも大きい外径を持つ大径部を有し、前記外周部材よりも剛性が高く且つ前記ローラに対向して配置された対向ローラを更に備え、前記ローラと前記対向ローラは、回転軸の位置が固定となっており、且つ、前記カードを挟持可能に構成されている、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカードリーダによれば、ローラの2つの部材の固着状態を維持して、カードの安定搬送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のカードリーダの一実施形態であるカードリーダ1の概略構成を示す模式図である。
図2図1に示すカードリーダ1におけるローラ5aの斜視図である。
図3図2に示すローラ5aの分解斜視図である。
図4図2に示すローラ5aの分解斜視図である。
図5図2に示すローラ5aの支持部材30をカード2の搬送方向からみた側面図である。
図6図5に示したローラ5aにおいて、テーパー部42,43と平行部44とのなす角度θを40度とした場合のシミュレーション結果を示す図である。
図7図8に示す参考構成のローラ5xのシミュレーション結果を示す図である。
図8】ローラ5xの構成を示す搬送方向から見た側面図である。
図9図5に示すローラ5aの第一の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
図10図5に示すローラ5aの第二の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
図11図5に示すローラ5aの第三の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
図12図5に示すローラ5aの第四の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
図13図5に示すローラ5aの第五の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
図14図5に示すローラ5aの第六の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
図15図5に示すローラ5aの第七の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
図16図5に示すローラ5aの第八の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明のカードリーダの一実施形態であるカードリーダ1の概略構成を示す模式図である。
【0011】
カードリーダ1は、カード2に記録された情報の読み取り又はカード2への情報の記録の少なくとも一方を行うための装置である。
【0012】
カードリーダ1は、磁気情報の読み取り又は記録を行うための磁気ヘッド3と、カードリーダ1内でカード2を搬送するためのカード搬送用の3つの上側搬送ローラ4と、3つの上側搬送ローラ4の各々に対向する下側搬送ローラ5a,5b,5c(以下、単にローラ5a,5b,5cともいう)と、上側搬送ローラ4及びローラ5a,5b,5cを駆動するためのローラ駆動機構6と、カード2が挿入及び排出されるカード挿入排出部7と、を備える。カードリーダ1の内部には、カード2が搬送される搬送路8が形成されている。カード挿入排出部7はカード2の挿入口を構成する。ローラ5aに対向する上側搬送ローラ4は対向ローラを構成する。
【0013】
ローラ5aとこれに対向する上側搬送ローラ4は、カード挿入排出部7に最も近い位置に配置されており、それぞれの回転軸の位置は固定されている。
【0014】
カード2は、例えば、厚さが0.7~0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。このカード2の表面には、例えば、磁気情報が記録される磁気ストライプ(図示省略)が形成されている。なお、カード2の表面には、IC(integrated circuit)チップが固定されても良い。また、カード2には、通信用のアンテナが内蔵されても良いし、カード2の表面に、感熱方式によって印字が行われる印字部が形成されても良い。さらに、カード2は、厚さが0.18~0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カード、又は所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0015】
上側搬送ローラ4は、搬送路8の上側に配置されている。ローラ5a,5b,5cは、搬送路8の下側に配置されており、共通の支持部材(図示省略)によって支持されている。この支持部材は、ローラ5aの回転軸を中心として上下に揺動するように構成されている。ローラ5a,5b,5cは、それぞれ、上側搬送ローラ4に圧接されるように、図示を省略する付勢手段によって、上方向へ付勢されている。
【0016】
ローラ駆動機構6は、3個の上側搬送ローラ4の回転軸にそれぞれ固定された従動プーリ10と、中央に配置された上側搬送ローラ4の回転軸に従動プーリ10と平行に固定された従動大プーリ11と、上側搬送ローラ4を回転駆動するための駆動源としての駆動モータ12と、駆動モータ12の出力軸に固定された駆動プーリ13と、を備える。
【0017】
更に、ローラ駆動機構6は、駆動プーリ13と従動大プーリ11との間に掛け渡されたタイミングベルト14と、従動プーリ10に掛け渡されたタイミングベルト15と、タイミングベルト15の張力を調整するための3つのテンションプーリ(図示省略)とを備えている。
【0018】
さらに、ローラ駆動機構6は、ローラ5aに対向する上側搬送ローラ4に接続する従動プーリ10に一体で構成されたギア17と、ギア17と噛合うように構成されてローラ5aを駆動するギア18と、ローラ5a、5b、5cに掛け渡されたタイミングベルト19と、タイミングベルト19の張力を調整するための3つのテンションプーリ(図示省略)と、を備えている。
【0019】
カードリーダ1では、カード挿入排出部7にカード2が挿入されると、カード2が、ローラ5aとこれに対向する上側搬送ローラ4との間に圧入された状態となる。この状態から、ローラ駆動機構6の動作によって上側搬送ローラ4及びローラ5a,5b,5cが同期して回転駆動されることで、カード2は搬送路8の奥側へと引き込まれて搬送されていく。このように、カード2がローラ5aと上側搬送ローラ4の間に圧入されることにより、カード2の引き込みを確実なものとすることができる。
【0020】
(搬送ローラの構成)
図2は、図1に示すカードリーダ1におけるローラ5aの斜視図である。図3及び図4は、図2に示すローラ5aの分解斜視図である。図5は、図2に示すローラ5aの支持部材30をカード2の搬送方向(図5における紙面手前から奥に向かう方向)からみた側面図である。本明細書において、ローラ5aの回転軸の延びる方向を軸方向Zと呼び、ローラ5aの軸方向Zに直交する方向を径方向Yと呼ぶ。
【0021】
ローラ5aは、円筒状の外周部材20と、外周部材20の内周面(第一の内周面21,第二の内周面22,第三の内周面23)と固着した外周面40(図3図5参照)を有し、且つ外周面40により外周部材20を支持する支持部材30と、を備える。
【0022】
外周部材20は、理想的には完全な円筒状であるが、カード2の搬送用のローラとして許容される程度の公差を含む円筒状であってもよい。
【0023】
外周部材20は、これと対向する上側搬送ローラ4の剛性よりも低く、且つ支持部材30よりも剛性の低い材料によって構成されている。外周部材20は、例えばゴム又は樹脂等の弾性体によって構成されている。
【0024】
外周部材20は、上側搬送ローラ4及び支持部材30よりも剛性の低い材料であれば、弾性体以外を用いてもよい。外周部材20として最も好ましく用いられるのはゴムである。
【0025】
外周部材20の剛性は、JISK6253で規定されるデュロメータのタイプAにより測定したときの硬度によって示され、その硬度は例えば37度~43度である。
【0026】
ローラ5aに対向する上側搬送ローラ4の剛性は、JISK6253で規定されるデュロメータのタイプAにより測定したときの硬度によって示され、その硬度は例えば75度~81度である。上側搬送ローラ4は、例えばゴム又は樹脂等によって構成される。
【0027】
このように、外周部材20の剛性は上側搬送ローラ4の剛性よりも低く、また、ローラ5aと上側搬送ローラ4の回転軸の位置は固定である。このため、カード2がカード挿入排出部7から挿入された場合には、相対的に剛性の低い外周部材20が圧縮されることで、ローラ5aと上側搬送ローラ4の間にカード2が圧入されてカード2の引き込みが行われるようになっている。
【0028】
支持部材30は、図3図5に示すように、段付きの円筒状の部材である。具体的には、支持部材30は、外周部材20の内周面(第一の内周面21,第二の内周面22,第三の内周面23)と固着した外周面40を有する筒状の固着部31と、固着部31の軸方向Zの一方側(図5中の左側)の端面52から軸方向Zに突出した、固着部31よりも外径の小さい筒状の小径部32と、を備える。
【0029】
図5に示すように、固着部31の軸方向Zの他方側(図5中の右側)の端面51と外周部材20の軸方向Zの他方側(図5中の右側)の端面の位置は一致しているが、外周部材20のこの端面よりも端面51が右側にある構成でもよい。
【0030】
また、固着部31の端面52と外周部材20の軸方向Zの一方側(図5中の左側)の端面の位置は一致しているが、外周部材20のこの端面よりも端面52が左側にある構成でもよい。
【0031】
図5に示すように、固着部31の外周面40の形状と、外周部材20の内周面(図3及び図4に示す第一の内周面21,第二の内周面22,第三の内周面23)の形状とは略同じである。
【0032】
ローラ5aは、例えば、外周部材20を成型するための金型内に、外周面40に接着剤を塗布した支持部材30の固着部31を配置した状態にて、外周部材20を構成する材料をこの金型に流し込み、この材料を硬化させることで製造されている。
【0033】
つまり、固着部31の外周面40は、外周部材20の内周面(第一の内周面21,第二の内周面22,第三の内周面23)に対して接着剤を介した状態にて固着されている。上記の製造方法によれば、外周部材20と支持部材30との固着力を高めることができる。なお、外周部材20と支持部材30との界面に接着剤を介さない構成としてもよいが、接着剤を使用した方がより固着力を高められるので好ましい。
【0034】
なお、ローラ5aは、次のように製造されてもよい。外周部材20と支持部材30が個別に作成された後、外周部材20の内周面と支持部材30の外周面40の少なくとも一方に、紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂等で構成される接着剤が塗布される。その後、外周部材20の中空部に支持部材30の固着部31が圧入され、紫外線又は熱が加えられることで、接着剤が硬化される。
【0035】
支持部材30は、外周部材20よりも剛性の高い部材であり、例えば樹脂又は金属等によって構成されている。
【0036】
次に、支持部材30の固着部31の外周面40の形状について、図5を参照して詳細に説明する。
【0037】
図5に示すように、固着部31の外周面40の側面形状は、外周部材20における軸方向Zの中心を通り且つ径方向Yに延びる直線Lを境に線対称となっている。
【0038】
外周面40は、軸方向Zの一方側(図5中の左側)の端部40Lと、軸方向Zの他方側(図5中の右側)の端部40Rとの間に、平行部41と、テーパー部42と、テーパー部43と、を備える構成である。
【0039】
平行部41は、軸方向Zに平行な部分である。平行部41は、外周部材20の軸方向Zの中央において外周面40の端部40L及び端部40Rよりも径方向Yの外側に位置しており、端部40L及び端部40Rの各々の外径よりも外径が大きくなっている。
【0040】
テーパー部42は、平行部41の軸方向Zの一方側(図5中の左側)の端部と、外周面40の端部40Lとを繋ぐ軸方向Zに対し傾斜した部分である。テーパー部42は、端部40Lから軸方向Zの他方側(図5中の右側)に向かって外径が徐々に大きくなっている部分である。
【0041】
テーパー部43は、平行部41の軸方向Zの他方側(図5中の右側)の端部と、外周面40の端部40Rとを繋ぐ軸方向Zに対し傾斜した部分である。テーパー部43は、端部40Rから軸方向Zの一方側(図5中の左側)に向かって外径が徐々に大きくなっている部分である。
【0042】
このように、平行部41、テーパー部42、及びテーパー部43は、それぞれ、外周面40の端部40L及び端部40Rの各々の外径よりも外径が大きくなっている。これら平行部41、テーパー部42、及びテーパー部43により大径部40LDが構成されている。つまり、外周面40は、端部40Lと端部40Rの間に、大径部40LDを有する構成である。大径部LDは、例えば、端部40Lから端部40Rまで軸方向Zに平行な面を有する部材の両端部近傍を面取り加工すること等により形成することができる。
【0043】
図5に示したローラ5aにおいて、テーパー部42,43と平行部44とのなす角度θは、任意の値を選ぶことができるが、シミュレーションによって検討した結果、30度~60度とすることが好ましく、35度~50度とすることがさらに好ましい。応力の分散と加工性とのバランスを考慮すると、角度θを40度程度とすることが最も好ましい。
【0044】
(応力解析結果)
次に、図5に示したローラ5aにおける固着部31の外周面40に作用する応力の分布を検証したシミュレーション結果について説明する。
【0045】
図6は、図5に示したローラ5aにおいて角度θを40度とした場合のシミュレーション結果を示す図である。
【0046】
図7は、図8に示す参考構成のローラ5xのシミュレーション結果を示す図である。図8に示すローラ5xは、図5においてテーパー部42,43が削除され、平行部41が端面51,52の位置まで延びている構成のローラであり、外周面40に大径部が存在しない構成である。図6には、図5に示すローラ5aの端部40R,40L及び外周面40と対応する部分に同じ符号を付してある。図7には、図8に示すローラ5xの端部40R,40L及び外周面40と対応する部分に同じ符号を付してある。
【0047】
図6に示すように、図5に示すローラ5aによれば、図7に示す結果と比較すると、外周面40の全体に応力が分散していることが分かる。この結果から、端部40Rと端部40Lの間に大径部40LDがあることで、端部40Rと端部40Lに応力が集中するのを防いで、外周部材20と支持部材30との固着状態が解消されるのを防げることが分かる。
【0048】
(本形態の主な効果)
以上のように構成されたローラ5aにおける外周部材20は、ローラ5aとこれに対向する上側搬送ローラ4の間にカード2が挿入されると、圧縮された状態となる。この外周部材20の圧縮によって、固着部31の外周面40と固着されている外周部材20の内周面(第一の内周面21,第二の内周面22,第三の内周面23)には応力が作用する。
【0049】
固着部31の外周面40の大径部を構成する平行部41、テーパー部42、及びテーパー部43は、端部40R,40Lよりも径方向Yの外側にある。このため、外周部材20の内周面に作用する応力がこれら平行部41、テーパー部42、及びテーパー部43と固着された部分に分散されることになり、外周面40の端部40R,40Lと固着されている外周部材20の内周面の部分に応力が集中するのを防ぐことができる。この結果、カード2の搬送を繰り返しても、固着部31と外周部材20の固着状態を維持することができ、すなわち、固着部31から外周部材20が剥がれる(剥離する)ことを抑制することができ、カード2の安定した搬送が可能となる。
【0050】
また、ローラ5aは、外周面40がカード2の搬送位置に近い平行部41を含む構成とすることで、外周部材20の厚みが厚くなるのを抑制することができる。このため、カード2の搬送力を高めることができ、カード2の安定した搬送が可能となる。
【0051】
平行部41の軸方向Zの長さは、カード2の搬送に必要とされる搬送力に応じて適宜設定すればよい。図5に示すように、平行部41の軸方向Zの長さを、テーパー部42の軸方向Zの長さとテーパー部43の軸方向Zの長さの合計長さよりも大きくすることで、カード2の搬送力を高めやすい。
【0052】
また、ローラ5aの固着部31は、外周面40がテーパー部42,43と平行部41のみで構成されているため、例えば、従来構成の芯部材に対して面取り加工を施すだけで製造が可能である。このため、ローラ5aの製造コストの増大を防ぐことができる。
【0053】
なお、ローラ5aは、対向する上側搬送ローラ4と共に回転軸の位置が固定であるものとしている。しかし、ローラ5aの構成は、カード2を搬送する際に外周部に強い力がかかり得るローラであれば同様に適用可能である。例えば、ローラ5aの構成を、図1に示すローラ5b、ローラ5c、又は上側搬送ローラ4等に適用してもよい。
【0054】
(変形例)
次に、ローラ5aにおける固着部31の外周面40の形状の変形例について説明する。
【0055】
(第一の変形例)
図9は、図5に示すローラ5aの第一の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
【0056】
図9に示すローラ5aは、固着部31の外周面40が外周面40Aに変更された点を除いては図5に示すローラ5aと同じ構成である。
【0057】
外周面40Aは、図5に示す外周面40において、平行部41の軸方向Zの長さを、テーパー部42の軸方向Zの長さとテーパー部43の軸方向Zの長さの合計長さよりも短くした構成である。
【0058】
このような外周面40Aの構成であっても、外周部材20の内周面において、端部40Lと端部40Rに固着された部分に応力が集中するのを防ぐことができる。
【0059】
(第二の変形例)
図10は、図5に示すローラ5aの第二の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
【0060】
図10に示すローラ5aは、固着部31の外周面40が外周面40Bに変更された点を除いては図5に示すローラ5aと同じ構成である。
【0061】
外周面40Bは、図5に示す外周面40において、平行部41の軸方向Zの両端の側面形状が僅かに湾曲したものに変更され、テーパー部42及びテーパー部43の側面形状が直線状ではなく径方向Yの外側に向かって僅かに湾曲したものに変更された構成である。
【0062】
このような外周面40Bの構成であっても、外周部材20の内周面において、端部40Lと端部40Rに固着された部分に応力が集中するのを防ぐことができる。
【0063】
(第三の変形例)
図11は、図5に示すローラ5aの第三の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
【0064】
図11に示すローラ5aは、固着部31の外周面40が外周面40Cに変更された点を除いては図5に示すローラ5aと同じ構成である。
【0065】
外周面40Cは、図5に示す外周面40において、平行部41の軸方向Zの中央部分に凹部31Aが追加された構成である。
【0066】
凹部31Aの底面31bは、軸方向Zに平行となっており、その外径は、端部40R,40Lの外径と同じである。なお、凹部31Aの底面31bの外径は、端部40R,40Lの外径より小さくてもよい。
【0067】
このように、外周面40Cは、端部40Lと端部40Rの間に、テーパー部42、テーパー部42に繋がる平行部41、及び凹部31Aの側面31aからなる第一の大径部(端部40Lと端部40Rよりも外径の大きい部分)と、テーパー部43、テーパー部43に繋がる平行部41、及び凹部31Aの側面31cからなる第二の大径部(端部40Lと端部40Rよりも外径の大きい部分)と、凹部31Aの底面31bからなる軸方向Zに平行な平行部と、を備える構成である。
【0068】
このような外周面40Cの構成であっても、端部40Lと端部40Rの間に第一の大径部と第二の大径部が存在することで、外周部材20の内周面において、端部40Lと端部40Rに固着された部分に応力が集中するのを防ぐことができる。
【0069】
また、図11に示すローラ5aによれば、凹部31Aがあることで、図5の構成と比べると、外周部材20と固着部31との固着面積を増やすことができる。このため、固着部31と外周部材20の固着力を高めることができる。
【0070】
(第四の変形例)
図12は、図5に示すローラ5aの第四の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
【0071】
図12に示すローラ5aは、固着部31の外周面40が外周面40Dに変更された点を除いては図5に示すローラ5aと同じ構成である。
【0072】
外周面40Dは、端部40Lと端部40Rの間に、軸方向Zに平行な平行部44と、軸方向Zに垂直な垂直部45と、軸方向Zに平行な平行部46と、軸方向Zに垂直な垂直部47と、軸方向Zに平行な平行部48と、を備える構成である。
【0073】
平行部44は、外周部材20の軸方向Zの中央において、外周面40Dの端部40L及び端部40Rよりも径方向Yの外側に位置しており、端部40L及び端部40Rの各々の外径よりも外径が大きくなっている。
【0074】
平行部46は、軸方向Zにおいて端部40Lと平行部44との間に位置しており、端部40L及び端部40Rの各々と外径が同じ部分である。
【0075】
平行部48は、軸方向Zにおいて端部40Rと平行部44との間に位置しており、端部40L及び端部40Rの各々と外径が同じ部分である。
【0076】
垂直部45は、平行部44と平行部46とを繋ぐ部分である。
【0077】
垂直部47は、平行部44と平行部48とを繋ぐ部分である。
【0078】
図12に示すローラ5aにおいては、平行部44、垂直部45、及び垂直部47によって大径部が構成されている。
【0079】
このような外周面40Dの構成であっても、端部40Lと端部40Rの間に、平行部44、垂直部45、及び垂直部47からなる大径部が存在することで、外周部材20の内周面において、端部40Lと端部40Rに固着された部分に応力が集中するのを防ぐことができる。
【0080】
(第五の変形例)
図13は、図5に示すローラ5aの第五の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
【0081】
図13に示すローラ5aは、固着部31の外周面40が外周面40Eに変更された点を除いては図5に示すローラ5aと同じ構成である。
【0082】
外周面40Eは、図12に示す外周面40Dにおいて、垂直部45がテーパー部45aに変更され、垂直部47がテーパー部47aに変更され、平行部44の軸方向Zの長さが短くされた構成である。
【0083】
テーパー部45aは、平行部44と平行部46を繋ぐ部分であり、端部40L及び端部40Rの各々の外径よりも外径が大きくなっている。
【0084】
テーパー部47aは、平行部44と平行部48を繋ぐ部分であり、端部40L及び端部40Rの各々の外径よりも外径が大きくなっている。
【0085】
図13に示すローラ5aにおいては、平行部44、テーパー部45a、及びテーパー部47aによって大径部が構成されている。
【0086】
このような外周面40Eの構成であっても、端部40Lと端部40Rの間に、平行部44、テーパー部45a、及びテーパー部47aからなる大径部が存在することで、外周部材20の内周面において、端部40Lと端部40Rに固着された部分に応力が集中するのを防ぐことができる。
【0087】
(第六の変形例)
図14は、図5に示すローラ5aの第六の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
【0088】
図14に示すローラ5aは、固着部31の外周面40が外周面40Fに変更された点を除いては図5に示すローラ5aと同じ構成である。
【0089】
外周面40Fは、図13に示す外周面40Eにおいて、平行部44が削除されてテーパー部45aとテーパー部47aが直接つなげられた構成である。
【0090】
図14に示すローラ5aにおいては、テーパー部45a及びテーパー部47aによって大径部が構成されている。
【0091】
このような外周面40Fの構成であっても、端部40Lと端部40Rの間に、テーパー部45a及びテーパー部47aからなる大径部が存在することで、外周部材20の内周面において、端部40Lと端部40Rに固着された部分に応力が集中するのを防ぐことができる。
【0092】
(第七の変形例)
図15は、図5に示すローラ5aの第七の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
【0093】
図15に示すローラ5aは、固着部31の外周面40が外周面40Gに変更された点を除いては図5に示すローラ5aと同じ構成である。
【0094】
外周面40Gは、図9に示す外周面40Aにおいて、平行部41が削除されてテーパー部42とテーパー部43が直接つなげられた構成である。
【0095】
図15に示すローラ5aにおいては、テーパー部42及びテーパー部43によって大径部が構成されている。
【0096】
このような外周面40Gの構成であっても、端部40Lと端部40Rの間に、テーパー部42及びテーパー部43からなる大径部が存在することで、外周部材20の内周面において、端部40Lと端部40Rに固着された部分に応力が集中するのを防ぐことができる。また、図15に示すローラ5aは、円筒状の部材の外周面に面取り加工を施すだけで固着部31を作成することができる。このため、製造コストを低減することができる。
【0097】
(第八の変形例)
図16は、図5に示すローラ5aの第八の変形例を示す図であり、支持部材30をカード2の搬送方向から見た側面図である。
【0098】
図16に示すローラ5aは、固着部31の外周面40が外周面40Hに変更された点を除いては図5に示すローラ5aと同じ構成である。
【0099】
外周面40Hは、端部40Lと端部40Rの間に、径方向Yの外側に向かって湾曲する湾曲部を備える構成である。
【0100】
図16に示すローラ5aにおいては、湾曲部49によって大径部が構成されている。
【0101】
このような外周面40Gの構成であっても、端部40Lと端部40Rの間に湾曲部49からなる大径部が存在することで、外周部材20の内周面において、端部40Lと端部40Rに固着された部分に応力が集中するのを防ぐことができる。
【0102】
ここまで説明してきたローラ5aの外周面(40,40A~40G)の側面形状は、図5にて説明した直線Lに対し線対称であるものとしたが、これは必須ではない。しかし、この側面形状が線対称となっていることで、外周面にかかる応力を均一に分散させることができるため、外周部材20と固着部31との固着状態の維持には特に有効である。
【0103】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0104】
(1)
カードを搬送するためのローラを備えるカードリーダであって、
前記ローラは、筒状の外周部材と、前記外周部材の内周面と固着した外周面を有し前記外周面により前記外周部材を支持する、前記外周部材よりも剛性の高い支持部材と、を備え、
前記支持部材の前記外周面は、前記外周面における前記ローラの軸方向の両端部の間において当該両端部の外径よりも大きい外径を持つ大径部を備えるカードリーダ。
【0105】
(1)の構成によれば、外周面にかかる応力が大径部に分散されるため、外周面の両端部に応力が集中するのを防ぐことができる。この結果、外周部材と支持部材の固着状態を長期間に渡って維持することができる。
【0106】
(2)
(1)記載のカードリーダであって、
前記外周面は、前記両端部の間に、前記軸方向に平行な平行部を備えるカードリーダ。
【0107】
(2)の構成によれば、カードの搬送力を十分に確保することができるため、カードの安定搬送が可能となる。
【0108】
(3)
(2)記載のカードリーダであって、
前記大径部が前記平行部の少なくとも一部を含むカードリーダ。
【0109】
(3)の構成によれば、カードの搬送力を十分に確保することができるため、カードの安定搬送が可能となる。
【0110】
(4)
(2)又は(3)記載のカードリーダであって、
前記大径部は、前記両端部から前記軸方向に向かって外径が大きくなる一対のテーパー部を含み、
前記平行部の前記軸方向の長さは、前記テーパー部の前記軸方向の長さよりも大きいカードリーダ。
【0111】
(4)の構成によれば、カードの搬送力を十分に確保できると共に、支持部材の加工が容易となるため、製造コストの低減とカードの安定搬送とを両立させることができる。
【0112】
(5)
(4)記載のカードリーダであって、
前記外周面の前記大径部は、前記一対のテーパー部と、前記一対のテーパー部の間の前記平行部とからなるカードリーダ。
【0113】
(5)の構成によれば、カードの搬送力を十分に確保できると共に、支持部材の加工が容易となるため、製造コストの低減とカードの安定搬送とを両立させることができる。
【0114】
(6)
(1)記載のカードリーダであって、
前記大径部は、前記両端部から前記軸方向に向かって外径が大きくなる一対のテーパー部を含むカードリーダ。
【0115】
(6)の構成によれば、支持部材の加工が容易となるため、製造コストの低減が可能となる。
【0116】
(7)
(1)から(6)のいずれか1つに記載のカードリーダであって、
前記カードの搬送方向に見た前記外周面の形状は、前記外周部材の前記軸方向の中心を通り且つ前記ローラの径方向に延びる直線に対して線対称となっているカードリーダ。
【0117】
(7)の構成によれば、外周面においてより均一に応力を分散させることができるため、外周部材と支持部材の固着状態の解消を強固に防ぐことができる。
【0118】
(8)
(1)から(7)のいずれか1つに記載のカードリーダであって、
前記外周部材は弾性体により構成されているカードリーダ。
【0119】
(8)の構成によれば、外周部材が変形しやすく、外周面に大きな応力がかかり得るため、特に有効となる。
【0120】
(9)
(1)から(8)のいずれか1つに記載のカードリーダであって、
前記外周部材よりも剛性が高く且つ前記ローラに対向して配置された対向ローラを更に備え、
前記ローラと前記対向ローラは、回転軸の位置が固定となっているものであるカードリーダ。
【0121】
(9)の構成によれば、ローラと対向ローラの間にカードが挿入されたときにローラに強い力がかかるため、応力分散による効果が特に有効となる。
【0122】
(10)
(9)記載のカードリーダであって、
前記ローラと前記対向ローラは、前記カードの挿入口に最も近い位置に配置されているカードリーダ。
【0123】
(10)の構成によれば、カードを引き込みやすくなるため、安定搬送を実現できると共に、使用感を高めることができる。
【符号の説明】
【0124】
1 カードリーダ
2 カード
3 磁気ヘッド
4 上側搬送ローラ
5a、5b、5c、5x ローラ
6 ローラ駆動機構
7 カード挿入排出部
8 搬送路
10 従動プーリ
11 従動大プーリ
12 駆動モータ
13 駆動プーリ
14、15、19 タイミングベルト
17、18 ギア
20 外周部材
21 第一の内周面
22 第二の内周面
23 第三の内周面
30 支持部材
31 固着部
31A 凹部
31a、31c 側面
31b 底面
32 小径部
40、40A~40G 外周面
40LD 大径部
40R、40L 端部
41、44、46、48 平行部
42、43、45a、47a テーパー部
45,47 垂直部
49 湾曲部
51、52 端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16