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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】柱脚補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220808BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20220808BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04B1/24 R
E04H9/02 351
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018050426
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019163592
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 章
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵介
(72)【発明者】
【氏名】林 篤
(72)【発明者】
【氏名】原口 圭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 ちひろ
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025288(JP,A)
【文献】特開平10-331437(JP,A)
【文献】特開2006-029017(JP,A)
【文献】特開2006-233445(JP,A)
【文献】特開平10-205161(JP,A)
【文献】特開2002-004632(JP,A)
【文献】特開2006-214120(JP,A)
【文献】特開昭61-277734(JP,A)
【文献】特開2015-205738(JP,A)
【文献】特開2015-197018(JP,A)
【文献】特開2001-193029(JP,A)
【文献】特開平05-339992(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0107338(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0086963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04B 1/24
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状のベースプレートと、前記ベースプレートの上面に立設された柱本体とを備え、前記ベースプレートが所定の躯体上に固設されている柱の柱脚部を補強する柱脚補強構造であって、
前記ベースプレートの一の辺の端面と、前記一の辺の両側の辺の端面の一部に亘る範囲に当接するとともに、前記躯体に固定されている増設ベースプレート部材と、
前記ベースプレートの前記一の辺に当接している前記増設ベースプレート部材の縁に沿う位置に、その一方の面を前記柱本体に向けて前記柱本体との間に間隙を有してその柱本体から離間した配置に立設されている板状部材と、
前記板状部材を前記柱本体に締結しているボルト部材と、
を備えたことを特徴とする柱脚補強構造。
【請求項2】
前記板状部材の両側にはそれぞれ、前記増設ベースプレート部材に立設されているリブ状部材が一体的に設けられており、
前記一対のリブ状部材は、前記柱の一部を挟む向きに対向していることを特徴とする請求項1に記載の柱脚補強構造。
【請求項3】
前記ボルト部材は、前記板状部材に形成されている上下方向に沿う長穴に挿通されて前記柱本体に締着されているとともに、前記ボルト部材の頭部と前記板状部材の間には、前記ボルト部材の端部が上下に移動する姿勢の切り替えを可能にする姿勢切替部材が介装されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の柱脚補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱の柱脚部を補強する柱脚補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存の構造物の耐震補強を図るため、水平板と垂直板と斜板とを有して側面視略直角三角形状を呈している補強金具を構造物の柱の柱脚部に設置し、その補強金具を用いてアンカーを打ち増すようにした耐震補強構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-331437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の補強構造の場合、打ち増したアンカーによる補強によって柱脚部の移動を規制し、コンクリート躯体などに固定されている柱脚部が水平方向にずれることを防ぐことはできるが、比較的大きな地震の揺れで柱が大きく撓むと、アンカー部分がその変形に追従できずに損傷してしまい、その補強構造の機能が損なわれてしまうことがあった。
【0005】
本発明の目的は、好適に柱の柱脚部を補強することができる柱脚補強構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
矩形板状のベースプレートと、前記ベースプレートの上面に立設された柱本体とを備え、前記ベースプレートが所定の躯体上に固設されている柱の柱脚部を補強する柱脚補強構造であって、
前記ベースプレートの一の辺の端面と、前記一の辺の両側の辺の端面の一部に亘る範囲に当接するとともに、前記躯体に固定されている増設ベースプレート部材と、
前記ベースプレートの前記一の辺に当接している前記増設ベースプレート部材の縁に沿う位置に、その一方の面を前記柱本体に向けて前記柱本体との間に間隙を有してその柱本体から離間した配置に立設されている板状部材と、
前記板状部材を前記柱本体に締結しているボルト部材と、
を備えるようにした。
【0007】
かかる構成の柱脚補強構造は、柱のベースプレートの一の辺と、その一の辺の両側の辺の一部に亘る範囲の端面に、増設ベースプレート部材が当接し、柱の柱本体にボルト部材を介して板状部材が締結された状態になっている。このとき、柱のベースプレートは、増設ベースプレート部材の両端片に挟まれた配置にある。
【0008】
そして、例えば、ベースプレートの一の辺に沿う方向の地震の揺れが柱に作用した場合、柱のベースプレートに当接している増設ベースプレート部材によってベースプレート部分がその揺れに伴い移動するのを規制するようにして、柱の柱脚部が水平方向にずれるのを防止し、柱の柱脚部が損傷することを防ぐことができる。
また、例えば、ベースプレートの一の辺と交差する方向の地震の揺れが柱に作用した場合、柱のベースプレートが増設ベースプレート部材に向かう方向への揺れ(柱の柱本体が板状部材に近接する方向への揺れ)に対しては、柱のベースプレートに当接している増設ベースプレート部材によってベースプレート部分がその揺れに伴い移動するのを規制するようにして、柱の柱脚部が水平方向にずれるのを防止し、柱の柱脚部が損傷することを防ぐことができる。
また、例えば、ベースプレートの一の辺と交差する方向の地震の揺れが柱に作用した場合、柱の柱本体が板状部材から離間する方向への揺れに対しては、ボルト部材を介して結合されている板状部材が変形することで振動のエネルギーを吸収するようにして、柱の柱脚部が損傷することを防ぐことができる。
【0009】
このように、この柱脚補強構造であれば、単にアンカーを打ち増すよりも、好適に柱の柱脚部を補強することができ、比較的大きな地震の揺れが柱に作用しても、柱の柱脚部が損傷することを防ぐことができる。
特に、この柱脚補強構造は、補強対象の柱の一面側に取り付ける仕様であるので、柱が既存の壁体に埋め込まれていても、柱の一面側と、その一面の両側の柱の一部が壁体の前面側に露出していれば、柱脚補強構造をその柱に設置して、柱の柱脚部を補強することができる。
【0010】
また、望ましくは、
前記板状部材の両側にはそれぞれ、前記増設ベースプレート部材に立設されているリブ状部材が一体的に設けられており、
前記一対のリブ状部材は、前記柱の一部を挟む向きに対向しているようにする。
【0011】
板状部材の両側にリブ状部材が設けられて、板状部材の剛性が向上しているので、この柱脚補強構造によって柱の柱脚部が損傷しないように好適に補強することができる。
【0012】
また、望ましくは、
前記ボルト部材は、前記板状部材に形成されている上下方向に沿う長穴に挿通されて前記柱本体に締着されているとともに、前記ボルト部材の頭部と前記板状部材の間には、前記ボルト部材の端部が上下に移動する姿勢の切り替えを可能にする姿勢切替部材が介装されているようにする。
【0013】
板状部材を柱本体に締結しているボルト部材が、介装された姿勢切替部材によって、その端部を上下に移動させる姿勢の切り替えが可能になっていれば、例えば、ベースプレートの一の辺と交差する方向の地震の揺れが柱に作用して、柱の柱本体が板状部材から離間する方向に傾くような場合、ボルト部材の先端が上方に移動するように、ボルト部材の姿勢が切り替わるようになっている。
このようにボルト部材の姿勢が切り替わることで、ボルト部材に曲げモーメントが作用し難くなっており、ボルト部材が破断し難くなっている。
なお、ボルト部材は、板状部材に形成されているルーズホールに挿通されて柱本体に締着されていてもよい。この場合でもボルト部材の姿勢が同様に切り替わって、ボルト部材に曲げモーメントが作用し難くなっており、ボルト部材が破断し難くなっている。
【0014】
これに対し、例えば、板状部材を柱本体に締結しているボルト部材が、その姿勢が切り替わる遊びがないように強固に締結されていると、地震の揺れによって柱が傾くような場合、そのボルト部材に曲げモーメントが作用してしまい、剪断力に弱いボルト部材が破断してしまうことがあるので好ましくない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、好適に柱の柱脚部を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1の柱脚補強構造を示す斜視図(a)と、上面図(b)である。
図2】実施形態1の柱脚補強構造に用いる補強金具を示す斜視図である。
図3】実施形態2の柱脚補強構造を示す斜視図(a)と、上面図(b)である。
図4】実施形態2の柱脚補強構造に用いる補強金具を示す斜視図である。
図5】実施形態3の柱脚補強構造を示す斜視図(a)と、その柱脚補強構造に用いる姿勢切替部材を示す斜視図(b)と、この柱脚補強構造の機能に関する説明図(c)である。
図6】実施形態3の柱脚補強構造の変形例を示す斜視図(a)と、その柱脚補強構造に用いる姿勢切替部材を示す斜視図(b)と、この柱脚補強構造の機能に関する説明図(c)である。
図7】実施形態3の柱脚補強構造の変形例を示す斜視図(a)と、その柱脚補強構造に用いる姿勢切替部材を示す斜視図(b)と、この柱脚補強構造の機能に関する説明図(c)である。
図8】実施形態3の柱脚補強構造の変形例を示す斜視図(a)と、その柱脚補強構造に用いる姿勢切替部材を示す斜視図(b)と、この柱脚補強構造の機能に関する説明図(c)である。
図9】プラットホームの上家を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る柱脚補強構造の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0018】
本実施形態では、例えば、図9に示すような、高架駅のプラットホームPの上家Rの柱1を補強対象とした柱脚補強構造を例に説明する。
図9に示すように、上家Rの柱1は、プラットホームPを構成するホーム桁5上に立設されている。
ホーム桁5は、鉄筋コンクリート造の躯体である。ホーム桁5にはコンクリート製のホームスラブ(図示省略)が設けられており、プラットホームP上を歩行可能にしている。
柱1は、図1(a)(b)に示すように、矩形板状のベースプレート3と、ベースプレート3の上面に立設された柱本体2と、を備えている。
柱本体2の下端部はベースプレート3の上面に溶接されており、そのベースプレート3が柱固定用のアンカーボルト4でホーム桁5に固定されて、柱1がホーム桁5上に固設されている。
なお、本実施形態での柱本体2はベースプレート3の外縁よりも内側にあって、上面視した際、ベースプレート3よりも小さな外形サイズ(輪郭)を有している。
本実施形態では、柱本体2としてH形鋼を用いている。
【0019】
本実施形態の柱脚補強構造100は、柱1のベースプレート3部分が所定の躯体(ここではホーム桁5)上に固設されている柱の柱脚部を補強するためのものである。
【0020】
(実施形態1)
実施形態1の柱脚補強構造100は、例えば、図1(a)(b)、図2に示すように、柱1のベースプレート3の周囲の一部を囲うように、ベースプレート3の一の辺の端面と、その一の辺の両側の辺の端面の一部に亘る範囲に当接するとともに、ホーム桁5に固定されている増設ベースプレート部材10と、ベースプレート3の一の辺側に当接している増設ベースプレート部材10の縁に沿う位置に、その一方の面を柱本体2に向けて立設されている板状部材20と、板状部材20を柱本体2に締結しているボルト部材30等を備えている。
【0021】
つまり、この柱脚補強構造100は、増設ベースプレート部材10と板状部材20とで構成されている補強金具50を有しており、その補強金具50の増設ベースプレート部材10をホーム桁5に固定し、補強金具50の板状部材20を柱本体2に固定するようにして、柱1の柱脚部を補強するようになっている。
【0022】
増設ベースプレート部材10は、例えば、鋼板からなる部材であり、柱1のベースプレート3の平面形状に対応した略コ字状の切欠10aが設けられている。
この略コ字状の切欠10a部分をベースプレート3の一の辺側に嵌め合わせるようにして、ベースプレート3に増設ベースプレート部材10を当接させている。
換言すれば、略コ字状の切欠10aの両側のプレート端片10bがベースプレート3の一部を挟むように、増設ベースプレート部材10をベースプレート3に当接させている。
こうして、増設ベースプレート部材10の略コ字状の切欠10a部分の端面を、ベースプレート3の一の辺と、その一の辺の両側の辺の一部に亘る範囲の端面に当接させて、ベースプレート3に補強金具50を組み付けている。
なお、プレート端片10bとベースプレート3の間に隙間がある場合には、その隙間にくさび部材を打ち込むなどしてゆるみを無くすことが好ましい。
【0023】
また、この増設ベースプレート部材10には、ボルト孔10cが設けられており、そのボルト孔10cを通じてアンカーボルト11をホーム桁5に埋め込み、増設ベースプレート部材10(補強金具50)をホーム桁5に固定している。
【0024】
板状部材20は、例えば、鋼板からなる曲げ延性(塑性変形能)を有する部材であり、増設ベースプレート部材10の上面に溶接されている。
具体的には、板状部材20は、増設ベースプレート部材10の上面であって、略コ字状の切欠10aの中央側の縁に沿う位置に溶接されており、その一方の面を柱本体2に向けた姿勢で立設されている。
この板状部材20には、ボルト孔20aが設けられており、そのボルト孔20aを通じてボルト部材30を柱本体2(ここでは、H形鋼のフランジ)に締着して、板状部材20(補強金具50)を柱本体2に固定している。
【0025】
なお、板状部材20のボルト孔20aはルーズホールであることが好ましい。板状部材20のボルト孔20aが、やや大きめの孔(ルーズホール)に形成されていれば、板状部材20を柱本体2に締結しているボルト部材30に遊びがあるので、そのボルト部材30に曲げモーメントが作用し難くなる。
例えば、板状部材20を柱本体2に締結しているボルト部材30が、その姿勢が切り替わる遊びがないように強固に締結されていると、地震の揺れによって柱1が傾くような場合、そのボルト部材30に曲げモーメントが作用してしまい、剪断力に弱いボルト部材30が破断してしまうことがあるので好ましくない。
【0026】
ボルト部材30は、板状部材20のボルト孔20aを通じて柱本体2に締着される部材であり、ボルト部材30の柱本体2側の先端にはナット部材31が螺着されている。
なお、柱本体2側からボルト部材30を取り付け、板状部材20側にナット部材31を取り付けるようにしてもよい。
【0027】
このような構成を有する柱脚補強構造100が、補強対象の柱1の柱脚部に組み付けられて、その柱1の柱脚部を補強するようになっている。
【0028】
次に、本実施形態の柱脚補強構造100の機能について説明する。
【0029】
ホーム桁5に立設されている柱1を本実施形態の柱脚補強構造100で補強した場合、柱1のベースプレート3の一の辺と、その一の辺の両側の辺の一部に亘る範囲の端面に、増設ベースプレート部材10が当接し、柱1の柱本体2にボルト部材30を介して板状部材20が締結された状態になっている。
【0030】
そして、例えば図1(b)中、左右方向の地震の揺れが柱1に作用した場合、柱1のベースプレート3に当接している増設ベースプレート部材10のプレート端片10bによってベースプレート3部分が左右に移動するのを規制するようにして、柱1の柱脚部が左右にずれるのを防止し、柱1の柱脚部が損傷することを防ぐことができる。
このとき、ベースプレート3の上方で、柱本体2と板状部材20とを締結しているボルト部材30によっても、柱1の柱脚部が左右にずれるのを防止している。
【0031】
また、例えば図1(b)中、上下方向の地震の揺れが柱1に作用した場合、図中下方向への揺れに対しては、柱1のベースプレート3に当接している増設ベースプレート部材10によってベースプレート3部分が図中下方に移動するのを規制するようにして、柱1の柱脚部が図中下方にずれるのを防止し、柱1の柱脚部が損傷することを防ぐことができる。
このとき、ベースプレート3の上方で、柱本体2と板状部材20とを締結しているボルト部材30によっても、柱1の柱脚部がずれるのを防止している。
【0032】
また例えば、図1(b)中、上下方向の地震の揺れが柱1に作用した場合、図中上方向への揺れに対しては、ボルト部材30を介して結合されている板状部材20が変形することで振動のエネルギーを吸収するようにして、柱1の柱脚部が損傷することを防ぐことができる。
なお、ボルト部材30は、その軸方向に沿う力(ここでは引張力)に対しては高強度を有しているので、図中上下方向の地震の揺れに対して強く抵抗することができる。
【0033】
このように、本実施形態の柱脚補強構造100であれば、比較的大きな地震の揺れが柱1に作用しても、柱1の柱脚部が損傷することを防ぐことができる。
例えば、この柱脚補強構造100であれば、従来技術のように単にアンカーを打ち増すよりも、好適に柱1の柱脚部を補強することができる。
つまり、この柱脚補強構造100によって、より好適に柱1の柱脚部を補強することができる。
【0034】
特に、この柱脚補強構造100は、補強対象の柱1の一面側に取り付ける仕様であるので、柱1が既存の壁体に埋め込まれていても、柱1の一面側と、その一面の両側の柱1の一部が壁体の前面側に露出していれば、柱脚補強構造100をその柱1に設置して、柱1の柱脚部を補強することができる。
【0035】
(実施形態2)
次に、本発明に係る柱脚補強構造の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0036】
実施形態2の柱脚補強構造100は、例えば、図3(a)(b)、図4に示すように、板状部材20の両側にリブ状部材21が設けられた態様を有している。
具体的には、この柱脚補強構造100の板状部材20の両側にはそれぞれ、増設ベースプレート部材10に立設されているリブ状部材21が一体的に設けられている。この一対のリブ状部材21は、柱1の一部を挟む向きに対向する配置に設けられている。
【0037】
リブ状部材21は、例えば、鋼板からなる部材であり、増設ベースプレート部材10の上面に溶接されているとともに、板状部材20の側部に溶接されている。
このリブ状部材21が板状部材20の両側の側部に溶接されてなる立上がりプレート22は、上面視略コ字形状を呈しており、増設ベースプレート部材10の略コ字状の切欠10aの縁に沿って配設された態様を有している。
【0038】
このような実施形態2の柱脚補強構造100であっても、好適に柱1の柱脚部を補強することができる。
特に、板状部材20の両側にリブ状部材21が設けられて、板状部材20の剛性が向上しているので、この柱脚補強構造100によって柱1の柱脚部が損傷しないように好適に保持することができる。
また、リブ状部材21は、水平動に加えて上下動が発生した場合のずれ防止の機能も有しており、これによっても柱1の柱脚部が損傷しないようにすることができる。
【0039】
(実施形態3)
次に、本発明に係る柱脚補強構造の実施形態3について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0040】
実施形態3の柱脚補強構造100は、板状部材20を柱本体2に締結しているボルト部材30の端部を上下に移動可能とする構成を有している。
具体的には、実施形態3の柱脚補強構造100は、例えば、図5(a)(b)(c)に示すように、上下方向に沿う長穴であるボルト孔20aが形成された板状部材20と、その板状部材20の長穴(ボルト孔20a)に挿通されて柱本体2に締着されているボルト部材30と、ボルト部材30と板状部材20の間に介装された姿勢切替部材40等を備えている。
【0041】
姿勢切替部材40は、小孔41aが形成された平板部材41と、平板部材41の一方の面に設けられた回動支点部材42を有している。
【0042】
平板部材41は、例えば、鋼板からなる部材であり、ボルト部材30が挿通される2つの小孔41aが形成されている。
回動支点部材42は、例えば、丸鋼からなる棒状部材であり、2つの小孔41aを結ぶ仮想線にその軸を沿わせて溶接されており、平板部材41の一方の面に固定されている。
【0043】
この姿勢切替部材40は、回動支点部材42の周面(曲面)を板状部材20に当接させる向きで板状部材20とボルト部材30の間に介装されている。
そして、姿勢切替部材40は回動支点部材42を支点に揺動することで、姿勢切替部材40を介して板状部材20に取り付けられているボルト部材30の端部が上下に移動する姿勢の切り替えを可能にしている。
【0044】
このような構成を有する柱脚補強構造100であれば、例えば、図5(c)に示すように、比較的大きな地震の揺れが柱1に作用し、柱1が図中左側に傾くような場合、ボルト部材30の先端が上方に移動するように、ボルト部材30の姿勢が切り替わるようになっている。
具体的には、回動支点部材42を支点に揺動可能な姿勢切替部材40を介して板状部材20に取り付けられているボルト部材30は、図中左側に傾いた柱1に追従させて、ボルト部材30の先端を上方に移動させるように、その姿勢が切り替わるようになっている。
【0045】
このように、板状部材20を柱本体2に締結しているボルト部材30が、その端部を上下に移動させる姿勢の切り替えを可能にしていることで、ボルト部材30に曲げモーメントが作用し難くなっており、ボルト部材30が破断し難くなっている。
【0046】
これに対し、例えば、板状部材20を柱本体2に締結しているボルト部材30が、その姿勢が切り替わる遊びがないように強固に締結されていると、地震の揺れによって柱1が傾くような場合、そのボルト部材30に曲げモーメントが作用してしまい、剪断力に弱いボルト部材30が破断してしまうことがある。
板状部材20を柱本体2に締結しているボルト部材30が破断してしまうと、柱本体2にボルト部材30を介して結合されている板状部材20が変形することによって振動のエネルギーを吸収することができなくなったり、そのボルト部材30によって柱1の柱脚部がずれるのを防止することができなくなったりするので、柱1の柱脚部が損傷し易くなるおそれがある。
【0047】
このような実施形態3の柱脚補強構造100であれば、図5(c)に示したように、比較的大きな地震の揺れが柱1に作用して、柱1が図中左側に傾くようなことがあっても、ボルト部材30の先端が上方に移動するように、ボルト部材30の姿勢が切り替わるようになって、ボルト部材30に曲げモーメントが作用し難くなっているので、ボルト部材30が破断して柱脚補強構造100の機能が損なわれてしまわないようになっている。
なお、図5(c)に示した状態とは逆に、柱1が図中右側に傾くような場合には、ボルト部材30の先端が下方に移動するように、ボルト部材30の姿勢が切り替わり、ボルト部材30に曲げモーメントが作用し難くなっている。
以上のように、実施形態3の柱脚補強構造100であっても、好適に柱1の柱脚部を補強することができる。
【0048】
なお、実施形態3は上記実施例に限られるものではない。
例えば、図6(a)(b)(c)に示すように、姿勢切替部材40の回動支点部材42は、棒状の鋼材である山形アングル(L形アングル)であってもよい。
回動支点部材42に山形アングルを用いた姿勢切替部材40は、その回動支点部材42の折曲部(角部)を板状部材20に当接させる向きで板状部材20とボルト部材30の間に介装されている。
このような構成を有する柱脚補強構造100であれば、例えば、図6(c)に示すように、比較的大きな地震の揺れが柱1に作用し、柱1が図中左側に傾くような場合、ボルト部材30の先端が上方に移動するように、ボルト部材30の姿勢が切り替わるようになっている。
このような柱脚補強構造100であっても、好適に柱1の柱脚部を補強することができる。
【0049】
また、図7(a)(b)(c)に示すように、姿勢切替部材40として、断面が半円形状を呈する棒状の鋼材を用いてもよい。この姿勢切替部材40には、ボルト部材30が挿通される2つの小孔40cが形成されている。
断面が半円形状を呈している姿勢切替部材40は、その曲面を板状部材20に当接させる向きで板状部材20とボルト部材30の間に介装されている。
このような構成を有する柱脚補強構造100であれば、例えば、図7(c)に示すように、比較的大きな地震の揺れが柱1に作用し、柱1が図中左側に傾くような場合、ボルト部材30の先端が上方に移動するように、ボルト部材30の姿勢が切り替わるようになっている。
このような柱脚補強構造100であっても、好適に柱1の柱脚部を補強することができる。
【0050】
また、図8(a)(b)(c)に示すように、姿勢切替部材40として凹面座金40aと凸面座金40bとからなる球面座金を用いてもよい。
球面座金を用いた姿勢切替部材40は、凹面座金40aを板状部材20側に、凸面座金40bをボルト部材30側にして、板状部材20とボルト部材30の間に介装されている。
このような構成を有する柱脚補強構造100であれば、例えば、図8(c)に示すように、比較的大きな地震の揺れが柱1に作用し、柱1が図中左側に傾くような場合、ボルト部材30の先端が上方に移動するように、ボルト部材30の姿勢が切り替わるようになっている。
このような柱脚補強構造100であっても、好適に柱1の柱脚部を補強することができる。
【0051】
以上のように、本実施形態の柱脚補強構造100であれば、好適に柱1の柱脚部を補強することができるので、比較的大きな地震の揺れが柱1に作用しても、柱1の柱脚部が損傷することを防ぐことができる。
【0052】
なお、以上の実施の形態においては、柱本体2としてH形鋼を用いた場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、柱本体2として角形鋼管などを用いていてもよい。
【0053】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1 柱
2 柱本体
3 ベースプレート
4 アンカーボルト
5 ホーム桁(躯体)
10 増設ベースプレート
10a 切欠
10b プレート端片
10c ボルト孔
11 アンカーボルト
20 板状部材
20a ボルト孔
21 リブ状部材
22 立上がりプレート
30 ボルト部材
31 ナット部材
40 姿勢切替部材
41 平板部材
42 回動支点部材
50 補強金具
100 柱脚補強構造
P プラットホーム
R 上屋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9