(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】駆動システム、および駆動システムを備えた車両
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20220808BHJP
B62M 6/50 20100101ALI20220808BHJP
B62M 6/55 20100101ALI20220808BHJP
【FI】
B62M6/45
B62M6/50
B62M6/55
(21)【出願番号】P 2018067254
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 裕
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222083(JP,A)
【文献】特開2012-086683(JP,A)
【文献】特開2015-202554(JP,A)
【文献】特開2016-182268(JP,A)
【文献】特開2011-193715(JP,A)
【文献】特開2009-090948(JP,A)
【文献】特開平08-182708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
B62M 6/50
B62M 6/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる駆動システムであって、
前記車両を移動させる動力を発生させる動力源と、
乗員の操作に応じてオン状態とオフ状態とが切り替わる第1電気接点および第2電気接点と、
前記第1電気接点に関する第1信号および前記第2電気接点に関する第2信号を受け取り、前記第1信号および前記第2信号に応じて前記動力源の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記駆動システムの電源がオフからオンになったときに、前記第1信号および前記第2信号の両方がオフを示す第1状態の検出の有無を判定し、
前記第1状態を検出したと判定した後に、前記第1信号および前記第2信号の両方がオンを示す第2状態を検出したか判定し、
前記第1状態を検出したと判定した後に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行い、
前記第1状態を検出していない間は、前記第1電気接点および前記第2電気接点の両方がオン状態になったとしても、前記動力源に動力を発生させる制御は行わない、駆動システム。
【請求項2】
車両に用いられる駆動システムであって、
前記車両を移動させる動力を発生させる動力源と、
乗員の操作に応じてオン状態とオフ状態とが切り替わる第1電気接点および第2電気接点と、
前記第1電気接点に関する第1信号および前記第2電気接点に関する第2信号を受け取り、前記第1信号および前記第2信号に応じて前記動力源の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記第1信号および前記第2信号の両方がオフを示す第1状態の検出の有無を判定し、
前記第1状態を検出したと判定した後に、前記第1信号および前記第2信号の両方がオンを示す第2状態を検出したか判定し、
前記第1状態を検出したと判定した後に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行い、
前記第1状態を検出していない間は、前記第1電気接点および前記第2電気接点の両方がオン状態になったとしても、前記動力源に動力を発生させる制御は行わず、
前記制御回路は、
前記第1状態を検出したと判定した後、前記第1信号および前記第2信号の一方はオンを示すが他方がオフを示す第3状態が第1所定時間継続するか判定し、
前記第3状態が前記第1所定時間継続したと判定した場合は、前記第1状態の検出の有無を再度判定し、
前記第1状態を検出したと再度判定した後、前記第3状態が前記第1所定時間継続するか再度判定し、
前記第3状態の前記第1所定時間の継続が第1所定回数以上発生したか判定し、
前記第3状態の前記第1所定時間の継続が前記第1所定回数以上発生したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御は行わない
、駆動システム。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第3状態が検出されてから前記第1所定時間が経過する前に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行う、請求項2に記載の駆動システム。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第3状態の前記第1所定時間の継続が前記第1所定回数発生する前に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行う、請求項2または3に記載の駆動システム。
【請求項5】
車両に用いられる駆動システムであって、
前記車両を移動させる動力を発生させる動力源と、
乗員の操作に応じてオン状態とオフ状態とが切り替わる第1電気接点および第2電気接点と、
前記第1電気接点に関する第1信号および前記第2電気接点に関する第2信号を受け取り、前記第1信号および前記第2信号に応じて前記動力源の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記第1信号および前記第2信号の両方がオフを示す第1状態の検出の有無を判定し、
前記第1状態を検出したと判定した後に、前記第1信号および前記第2信号の両方がオンを示す第2状態を検出したか判定し、
前記第1状態を検出したと判定した後に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行い、
前記第1状態を検出していない間は、前記第1電気接点および前記第2電気接点の両方がオン状態になったとしても、前記動力源に動力を発生させる制御は行わず、
前記制御回路は、
前記第1状態および前記第2状態を検出したと判定した後、前記第1信号および前記第2信号の少なくとも一方がオフを示す第4状態を検出したか判定し、
前記第4状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を停止し、
前記第4状態を検出したと判定した後、第2所定時間内に前記第2状態を再び検出したか判定し、
前記第2状態を再び検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を再開する
、駆動システム。
【請求項6】
前記制御回路は、前記第4状態を検出したと判定した後、前記第2所定時間内に前記第2状態を再び検出していないと判定した場合は、前記第1状態の検出の有無を再度判定する、請求項5に記載の駆動システム。
【請求項7】
前記第1電気接点および前記第2電気接点の正常時の動作では、前記乗員に操作されたときに前記第1電気接点と前記第2電気接点とでオンになる時間に差が発生し、
前記制御回路は、前記第1状態を検出したと判定した後、
前記第1信号および前記第2信号が同時にオンを示した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御は行わない、請求項1から6のいずれかに記載の駆動システム。
【請求項8】
前記第1電気接点および前記第2電気接点の正常時の動作では、前記乗員に操作されたときに前記第1電気接点と前記第2電気接点とでオンになる時間に差が発生し、
前記制御回路は、前記第1状態を検出したと判定した後、
前記第1信号および前記第2信号が同時にオンを示した場合は、前記第1状態の検出の有無の判定を再度行う、請求項1から7のいずれかに記載の駆動システム。
【請求項9】
前記制御回路は、
前記第1信号および前記第2信号が同時にオンを示す状態を検出していないと判定し、且つ前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行う、請求項7または8に記載の駆動システム。
【請求項10】
前記制御回路は、
前記第1信号および前記第2信号の少なくとも一方が常時オンを示す場合は、前記第1電気接点および前記第2電気接点の少なくとも一方が故障していると判定する、請求項1から9のいずれかに記載の駆動システム。
【請求項11】
前記動力源は、電動モータである、請求項1から10のいずれかに記載の駆動システム。
【請求項12】
前記第1電気接点および前記第2電気接点を含む2極双投スイッチをさらに備えた、請求項1から11のいずれかに記載の駆動システム。
【請求項13】
前記第1電気接点を含む第1スイッチと、前記第2電気接点を含む第2スイッチとをさらに備えた、請求項1から11のいずれかに記載の駆動システム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の駆動システムを備えた電動補助自転車。
【請求項15】
前記制御回路は、前記第1状態を検出したと判定した後に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記乗員が前記電動補助自転車を押し歩きするときに前記動力源に補助力を発生させる押し歩きモードを前記電動補助自転車に実行させる制御を行う、請求項14に記載の電動補助自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動システム、および駆動システムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源が発生させた動力に応じて移動する車両の例として、乗員がペダルを漕ぐ力を電動モータにより補助する電動補助自転車がある(例えば特許文献1参照)。電動補助自転車では、乗員がペダルに加えた人力に応じた駆動力を電動モータに発生させ、例えば坂道の走行時や荷物を積んでいるときの乗員の負担を減らすことができる。
【0003】
電動補助自転車のハンドルのグリップ近傍には、乗員からの指示を受け付ける複数のスイッチが配置された操作装置が設けられる。乗員は、操作装置のスイッチを操作することで、電動補助自転車の電源のオンとオフとを切り替えたり、電動モータに発生させる補助力の大きさを設定したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電動補助自転車は、世界の様々な国で広く手軽に使用できる交通手段とされ、普及が進んでいる。このような電動補助自転車には多くの機能を搭載することが求められている。例えば、欧州市場では、押し歩き機能等の自走可能な機能をはじめ、IOT(Internet of Things)を駆使したスマートフォンやクラウドとのデータ通信機能等、多種多様な機能を電動補助自転車に搭載することが求められている。
【0006】
ここで、押し歩きについて説明する。押し歩きとは、乗員が自転車のペダルを漕ぐことなく、自転車を押しながら前へ進めることを指す。押し歩きの例としては、乗員が自転車から降車して、足で歩きながらハンドルを手で押して自転車を前へ進める動作がある。
【0007】
電動補助自転車の中には、乗員が自転車を押し歩きするときに、電動モータに補助力を発生させる押し歩きモードを実行することができるモデルがある。そのような電動補助自転車の操作装置には、押し歩きモードを実行する指示を乗員から受け付ける押し歩きスイッチが設けられている。
【0008】
押し歩き時に乗員が押し歩きスイッチを指で押し続けると、電動モータは補助力を発生させる。押し歩き時に電動モータに補助力を発生させることにより、乗員の負担を減らすことができる。例えば乗員が足で歩きながら電動補助自転車を手で押して坂道を上がるときの乗員の負担を減らすことができる。
【0009】
乗員が押し歩きスイッチを押し続けるのをやめると、押し歩きモードは終了する。
【0010】
このような押し歩きの動作においては、乗員による押し歩きスイッチの操作なしでは電動モータに補助力を発生させないことが求められる。
【0011】
本発明は、車両を移動させる動力を発生させる電動モータ等の動力源の制御の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態に係る駆動システムは、車両に用いられる駆動システムであって、前記車両を移動させる動力を発生させる動力源と、乗員の操作に応じてオン状態とオフ状態とが切り替わる第1電気接点および第2電気接点と、前記第1電気接点に関する第1信号および前記第2電気接点に関する第2信号を受け取り、前記第1信号および前記第2信号に応じて前記動力源の動作を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記第1信号および前記第2信号の両方がオフを示す第1状態の検出の有無を判定し、前記第1状態を検出したと判定した後に、前記第1信号および前記第2信号の両方がオンを示す第2状態を検出したか判定し、前記第1状態を検出したと判定した後に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行い、前記第1状態を検出していない間は、前記第1電気接点および前記第2電気接点の両方がオン状態になったとしても、前記動力源に動力を発生させる制御は行わない。
【0013】
車両の一例である電動補助自転車の押し歩きの動作においては、乗員による押し歩きスイッチの操作なしでは電動モータに補助力を発生させないことが求められる。
【0014】
誤作動等により電動モータが補助力を発生させることを抑制するために、乗員から電動モータに補助力を発生させる指示を受け付ける電気接点を二種類設けることが考えられる。乗員の操作に応じて二種類の電気接点の両方がオン状態になったことを検出した場合にのみ、電動モータに補助力を発生させる。二種類の電気接点の少なくとも一方がオフ状態である場合は、電動モータに補助力を発生させない。このように電気接点を二種類設けることにより、動力源である電動モータの制御の信頼性向上を図ることができる。
【0015】
しかし、二種類の電気接点の一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、他方の電気接点に対する乗員の操作のみで二種類の電気接点の両方がオン状態になることが発生し得る。
【0016】
本発明の実施形態に係る駆動システムは、第1電気接点および第2電気接点を備える。制御回路は、第1電気接点に関する第1信号および第2電気接点に関する第2信号の両方がオフを示す第1状態の検出の有無を判定する。制御回路は、第1状態を検出したと判定した後に、第1信号および第2信号の両方がオンを示す第2状態を検出したか判定する。第1状態を検出したと判定した後に第2状態を検出したと判定した場合は、動力源に動力を発生させる制御を行う。制御回路は、第1状態を検出しない間は、第1電気接点および第2電気接点の両方がオン状態になったとしても、動力源に動力を発生させる制御は行わない。
【0017】
第1電気接点および第2電気接点の少なくとも一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、第1状態は検出されないため、動力源に動力を発生させる制御は行わない。第1電気接点および第2電気接点の両方がオフになる状態があることを確認した後に、それら両方がオンになる状態を検出した場合にのみ、動力源に動力を発生させる。これにより、動力源の制御の信頼性を向上させることができる。
【0018】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第1状態を検出したと判定した後、前記第1信号および前記第2信号の一方はオンを示すが他方がオフを示す第3状態が第1所定時間継続するか判定し、前記第3状態が前記第1所定時間継続したと判定した場合は、前記第1状態の検出の有無を再度判定し、前記第1状態を検出したと再度判定した後、前記第3状態が前記第1所定時間継続するか再度判定し、前記第3状態の前記第1所定時間の継続が第1所定回数以上発生したか判定し、前記第3状態の前記第1所定時間の継続が前記第1所定回数以上発生したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御は行わなくてもよい。
【0019】
第1および第2電気接点が正常である場合、第1電気接点と第2電気接点とでオン状態になる時間に若干の差は発生し得るが、乗員の操作に応じて所定時間内には両方がオン状態になる。
【0020】
一方、第1および第2電気接点の一方がオン状態にならない故障が発生していた場合、乗員が操作しても第1および第2電気接点の一方はオフ状態のままである。この場合、第2状態は検出されず、動力源は動力を発生させない。動力が発生しないことを認識した乗員は、第1および第2電気接点に対する操作をやり直すことが考えられる。操作をやり直す過程で、第1状態が再度検出される。上記故障が発生していた場合は、第1状態が再度検出された後、第3状態の所定時間の継続が再度検出される。
【0021】
第3状態の第1所定時間の継続が第1所定回数以上発生した場合は、動力源に動力を発生させる制御は行わない。これにより、動力源の制御の信頼性を向上させることができる。
【0022】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第3状態が検出されてから前記第1所定時間が経過する前に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行ってもよい。
【0023】
乗員が第1および第2電気接点に対する操作を行った場合でも、乗員の操作の仕方によっては、第1および第2電気接点の一方がなかなかオン状態にならないことが発生し得る。第1および第2電気接点の一方がオン状態になってから所定時間内に他方がオン状態になった場合は、動力源に動力を発生させる制御を行うことで、車両の使い勝手を向上させることができる。
【0024】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第3状態の前記第1所定時間の継続が前記第1所定回数発生する前に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行ってもよい。
【0025】
乗員が第1および第2電気接点に対する操作を行った場合でも、乗員の操作の仕方によっては、第1および第2電気接点の一方がなかなかオン状態にならないことが発生し得る。第3状態が第1所定回数以上繰り返されなかった場合は、動力源に動力を発生させる制御を行うことで、車両の使い勝手を向上させることができる。
【0026】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第1状態および前記第2状態を検出したと判定した後、前記第1信号および前記第2信号の少なくとも一方がオフを示す第4状態を検出したか判定し、前記第4状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を停止し、前記第4状態を検出したと判定した後、第2所定時間内に前記第2状態を再び検出したか判定し、前記第2状態を再び検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を再開してもよい。
【0027】
乗員が第1および第2電気接点に対する操作を継続していても、乗員の操作具合および車両の振動等に起因して、第1および第2電気接点の少なくとも一方が一時的にオフ状態になることが発生し得る。このような場合は、第1状態の検出の有無の判定を再度行わなくても、動力源に動力を発生させる制御を再開することで、車両の使い勝手を向上させることができる。
【0028】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第4状態を検出したと判定した後、前記第2所定時間内に前記第2状態を再び検出していないと判定した場合は、前記第1状態の検出の有無を再度判定してもよい。
【0029】
乗員の操作が適切でない場合、あるいは第1および第2電気接点の少なくとも一方がオン状態にならない故障が発生した場合は、第2所定時間内に第2状態は再び検出されない。このような場合は、第1状態の検出の有無の判定動作に戻る。乗員の操作が適切でなかった場合は、乗員が適切な操作をやり直すことにより、動力源に動力を発生させることができる。第1および第2電気接点の少なくとも一方がオン状態にならない故障が発生していた場合は、動力源に動力を発生させない。これにより、動力源の制御の信頼性を向上させることができる。
【0030】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第1状態を検出したと判定した後、前記第1信号がオンを示してから第3所定時間内に前記第2信号がオンを示す第5状態の検出の有無を判定し、前記第5状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御は行わなくてもよい。
【0031】
正常時の動作では第1電気接点と第2電気接点とでオンになる時間に差が発生する形態において、第1電気接点と第2電気接点とが互いに短絡していた場合は、乗員の操作時に第1信号と第2信号とは同時にオンを示し得る。
【0032】
第1信号がオンを示してから第3所定時間内に第2信号がオンを示した場合は、第1電気接点と第2電気接点とが互いに短絡している可能性があるため、動力源に動力を発生させない。これにより、動力源の制御の信頼性を向上させることができる。
【0033】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第1状態を検出したと判定した後、前記第1信号がオンを示してから第3所定時間内に前記第2信号がオンを示す第5状態の検出の有無を判定し、前記第5状態を検出したと判定した場合は、前記第1状態の検出の有無の判定を再度行ってもよい。
【0034】
正常時の動作では第1電気接点と第2電気接点とでオンになる時間に差が発生する形態において、第1電気接点と第2電気接点とが互いに短絡していた場合は、乗員の操作時に第1信号と第2信号とは同時にオンを示し得る。
【0035】
第1信号がオンを示してから第3所定時間内に第2信号がオンを示した場合は、第1電気接点と第2電気接点とが互いに短絡している可能性があるため、動力源に動力を発生させない。動力が発生しないことを認識した乗員は、第1および第2電気接点に対する操作をやり直すことが考えられる。操作をやり直す過程で、第1状態が再度検出される。上記短絡が発生していた場合は、第1状態が再度検出された後、第5状態が再度検出されるため、動力源に動力を発生させる制御は行わない。これにより、動力源の制御の信頼性を向上させることができる。
【0036】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第5状態を検出していないと判定し、且つ前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記動力源に動力を発生させる制御を行ってもよい。
【0037】
第1電気接点と第2電気接点とが互いに短絡していない場合は、動力源に動力を発生させる正常時の制御を行うことができる。
【0038】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第1状態を連続して検出しない第6状態が第4所定時間継続するか判定し、前記第6状態が第4所定時間継続したと判定した場合は、前記第1電気接点および前記第2電気接点の少なくとも一方が故障していると判定してもよい。
【0039】
第1および第2電気接点の少なくとも一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、第1状態は検出されない。第1状態を連続して検出しない第6状態が第4所定時間継続した場合は、故障が発生したと判定する。これにより、動力源の制御の信頼性を向上させることができる。
【0040】
ある実施形態において、前記動力源は、電動モータであってもよい。これにより、車両を移動させる動力を発生させる電動モータの制御の信頼性を向上させることができる。
【0041】
ある実施形態において、前記駆動システムは、前記第1電気接点および前記第2電気接点を含む2極双投スイッチをさらに備えてもよい。乗員は、2極双投スイッチを押すことで、第1電気接点および前記第2電気接点を操作することができる。
【0042】
ある実施形態において、前記駆動システムは、前記第1電気接点を含む第1スイッチと、前記第2電気接点を含む第2スイッチとをさらに備えてもよい。乗員は、第1スイッチおよび第2スイッチを押すことで、第1電気接点および前記第2電気接点を操作することができる。
【0043】
本発明の実施形態に係る電動補助自転車は、上記の駆動システムを備える。これにより、動力源の制御の信頼性を向上させた電動補助自転車を提供することができる。
【0044】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記第1状態を検出したと判定した後に前記第2状態を検出したと判定した場合は、前記乗員が前記電動補助自転車を押し歩きするときに前記動力源に補助力を発生させる押し歩きモードを前記電動補助自転車に実行させる制御を行ってもよい。これにより、押し歩きモードの制御の信頼性を向上させた電動補助自転車を提供することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の実施形態に係る駆動システムは、乗員の操作に応じてオン状態とオフ状態とが切り替わる第1電気接点および第2電気接点を備える。制御回路は、第1電気接点に関する第1信号および第2電気接点に関する第2信号の両方がオフを示す第1状態の検出の有無を判定する。制御回路は、第1状態を検出したと判定した後に、第1信号および第2信号の両方がオンを示す第2状態を検出したか判定する。第1状態を検出したと判定した後に第2状態を検出したと判定した場合は、動力源に動力を発生させる制御を行う。制御回路は、第1状態を検出しなかった場合は、第1電気接点および第2電気接点がオン状態になったとしても、動力源に動力を発生させる制御は行わない。
【0046】
第1電気接点および第2電気接点の少なくとも一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、第1状態は検出されないため、動力源に動力を発生させる制御は行わない。第1電気接点および第2電気接点の両方がオフになる状態があることを確認した後に、それら両方がオンになる状態を検出した場合にのみ、動力源に動力を発生させる。これにより、動力源の制御の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動補助自転車を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電動補助自転車の前方部を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る電動補助自転車の機械的および電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る表示装置および操作装置の上面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る表示装置および操作装置のハードウェア図である。
【
図6】(a)から(c)は、本発明の実施形態に係る押し歩きスイッチの構造の一例を示す断面図である。
【
図7】(a)は本発明の実施形態に係る第1電気接点から出力される第1信号を示す図であり、(b)は本発明の実施形態に係る第2電気接点から出力される第2信号を示す図である。
【
図8】(a)は本発明の実施形態に係る第1電気接点から出力される第1信号を示す図であり、(b)は本発明の実施形態に係る第2電気接点から出力される第2信号を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る押し歩きモードの処理を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に係る押し歩きモードの処理の別の例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態に係る押し歩きモードの処理のさらに別の例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態に係る押し歩きモードの処理のさらに別の例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態に係る押し歩きモードの処理のさらに別の例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施形態に係る押し歩きモードの処理のさらに別の例を示すフローチャートである。
【
図15】本発明の実施形態に係る押し歩きスイッチの故障の発生を報知する動作を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る押し歩きスイッチの故障の発生を報知する動作を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る報知装置を示す図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る2つの押し歩きスイッチを備えた電動補助自転車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る駆動システム、および駆動システムを備えた車両を説明する。以下の説明では、車両の例として電動補助自転車を挙げて説明する。実施形態の説明においては、同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。本発明の実施形態における前後、左右、上下とは、電動補助自転車のサドル(シート)に乗員がハンドルに向かって着座した状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。図面に付した符号F、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0049】
図1は、本発明の実施形態に係る電動補助自転車1を示す側面図である。
【0050】
電動補助自転車1は、車体フレーム11を有する。車体フレーム11は、ヘッドパイプ12、トップチューブ4、ダウンチューブ5、ブラケット6、チェーンステイ7、シートチューブ16、シートステイ19を含む。ヘッドパイプ12は車体フレーム11の前端に配置される。ハンドルステム13は、ヘッドパイプ12に回転可能に挿入される。ハンドル14は、ハンドルステム13の上部に固定される。ハンドルステム13の下部にはフロントフォーク15が固定される。フロントフォーク15の下端部は、操舵輪である前輪21を回転可能に支持している。フロントフォーク15には、前輪21を制動するブレーキ8が設けられている。ハンドル14には、電動補助自転車1に関する各種情報を表示する表示装置70が設けられている。ハンドルステム13の前方部にはヘッドランプ2が設けられている。
【0051】
ダウンチューブ5は、ヘッドパイプ12から後方斜め下方に向かって延びている。シートチューブ16は、ダウンチューブ5の後端部から上方に向かって延びている。チェーンステイ7は、シートチューブ16の下端部から後方に向かって延びている。ブラケット6は、ダウンチューブ5の後端部、シートチューブ16の下端部、チェーンステイ7の前端部を接続する。トップチューブ4は、ヘッドパイプ12とシートチューブ16の上部を繋ぐように設けられる。
【0052】
シートチューブ16にはシートポスト17が挿入され、シートポスト17の上端部には乗員が座るサドル23が設けられる。チェーンステイ7の後端部は、駆動輪である後輪22を回転可能に支持している。シートステイ19は、シートチューブ16の上部から後方斜め下方に向かって延びている。シートステイ19の下端部は、チェーンステイ7の後部に接続される。シートステイ19には、後輪22を制動するブレーキ9が設けられている。チェーンステイ7の後端部には、後輪22の回転を検出するスピードセンサ49が設けられている。
【0053】
車体フレーム11の車両中央部付近に配置されたブラケット6には駆動ユニット51が設けられる。駆動ユニット51は、電動モータ53、クランク軸57、制御装置60を含む。電動モータ53等に電力を供給するバッテリ56はダウンチューブ5に搭載される。バッテリ56はブラケット6またはシートチューブ16に搭載されてもよい。バッテリ56は、電動補助自転車1に対して着脱可能である。バッテリ56の充電は、例えば、電動補助自転車1からバッテリ56を取り外した状態で、バッテリ56を外部の充電器(図示せず)に接続して行う。
【0054】
クランク軸57は駆動ユニット51に左右方向に貫通して支持されている。クランク軸57の両端部にはクランクアーム54が設けられる。クランクアーム54の先端には、ペダル55が回転可能に設けられる。
【0055】
制御装置60は、電動補助自転車1の動作を制御する。典型的には、制御装置60はデジタル信号処理を行うことが可能なマイクロコントローラ、信号処理プロセッサ等の半導体集積回路を有する。乗員がペダル55を足で踏んで回転させたときに発生するクランク軸57の回転出力は、チェーン24を介して、後輪22に伝達される。制御装置60は、クランク軸57の回転出力に応じた駆動補助出力を発生するように電動モータ53を制御する。電動モータ53が発生した補助力は、チェーン24を介して、後輪22に伝達される。なお、チェーン24の代わりにベルト、シャフト等が用いられてもよい。電動補助自転車1では、電動モータ53が乗員の人力を補助する補助力を発生することにより、乗員の負担を減らすことができる。
【0056】
図2は、電動補助自転車1の前方部を示す上面図である。ハンドル14は、右ハンドルバー31および左ハンドルバー32を有する。右ハンドルバー31の右端部には、右グリップ33が設けられている。左ハンドルバー32の左端部には、左グリップ34が設けられている。乗員は、これらの右グリップ33および左グリップ34を手で握って操舵を行う。
【0057】
右グリップ33の近傍には、前輪ブレーキレバー35および変速操作器37が設けられている。左グリップ34の近傍には、後輪ブレーキレバー36および変速操作器38が設けられている。右手によって右グリップ33とともに前輪ブレーキレバー35が握られると、前輪21に制動力が付与される。左手によって左グリップ34とともに後輪ブレーキレバー36が握られると、後輪22に制動力が付与される。変速操作器37および38はシフターとも称される。乗員が変速操作器37および38を操作することで変速比を切り替えることができる。
【0058】
ハンドル14には、電動補助自転車1に関する各種情報を表示する表示装置70が設けられている。この例では、表示装置70は、クランプ97を用いて左ハンドルバー32に取り付けられている。左ハンドルバー32における左グリップ34の近傍には、操作装置80が設けられている。乗員は、操作装置80を指で操作することで、電動モータ53の補助力の大きさの設定などの各種の操作を行うことができる。乗員の操作に応じた信号が配線93を介して操作装置80から表示装置70に送られる。表示装置70と駆動ユニット51(
図1)の制御装置60とは、配線94(
図1)を介して信号の送受信を行うことができる。
【0059】
図3は、電動補助自転車1の機械的および電気的構成を示すブロック図である。駆動ユニット51は、制御装置60、電動モータ53、モータ回転センサ46、減速機45、ワンウェイクラッチ44、クランク軸57、ワンウェイクラッチ43、トルクセンサ41、クランク回転センサ42、合成機構58、駆動スプロケット59、変速機構28を備える。駆動ユニット51は、ペダル55(
図1)に加えられた乗員の人力に応じた駆動補助出力を電動モータ53に発生させる駆動システムである。本実施形態では、表示装置70および操作装置80は、駆動システムである駆動ユニット51に含まれるとする。
【0060】
まず、動力の伝達経路を説明する。乗員がペダル55(
図1)を踏み込んでクランク軸57を回転させると、そのクランク軸57の回転は、ワンウェイクラッチ43を介して合成機構58に伝達される。電動モータ53の回転は、減速機45、ワンウェイクラッチ44を介して合成機構58に伝達される。
【0061】
合成機構58は、例えば筒状部材を有し、その筒状部材の内部にクランク軸57が配置される。合成機構58には、駆動スプロケット59が取り付けられている。合成機構58は、クランク軸57および駆動スプロケット59と同じ回転軸を中心にして回転する。
【0062】
ワンウェイクラッチ43は、クランク軸57の順回転を合成機構58に伝達し、クランク軸57の逆回転は合成機構58に伝達させない。ワンウェイクラッチ44は、電動モータ53が発生した、合成機構58を順回転させる方向の回転を合成機構58に伝達し、合成機構58を逆回転させる方向の回転は合成機構58に伝達させない。また、電動モータ53が停止している状態で、乗員がペダル55を漕いで合成機構58が回転した場合、ワンウェイクラッチ44は、その回転を電動モータ53に伝達しない。乗員がペダル55に加えた踏力と電動モータ53が発生した補助力は、合成機構58に伝達されて合成される。合成機構58で合成された合力は、駆動スプロケット59を介してチェーン24へ伝達される。
【0063】
チェーン24の回転は、従動スプロケット25を介して駆動軸26に伝達される。駆動軸26の回転は、ワンウェイクラッチ27を介して後輪22に伝達される。
【0064】
この例では、駆動スプロケット59は多段スプロケットである。変速機構28は、乗員による変速操作器38(
図2)の操作に応じて変速比を変更する機構である。また、変速機構29は、乗員による変速操作器37(
図2)の操作に応じて変速比を変更する機構である。例えば変速機構29は外装変速機であり、この場合、従動スプロケット25は多段スプロケットである。なお、電動補助自転車1が備える変速機構は外装変速機に限定されず、内装変速機であってもよい。ワンウェイクラッチ27は、駆動軸26の回転速度が後輪22の回転速度よりも速い場合にのみ、駆動軸26の回転を後輪22に伝達する。駆動軸26の回転速度が後輪22の回転速度よりも遅い場合には、ワンウェイクラッチ27は駆動軸26の回転を後輪22に伝達しない。
【0065】
このような動力伝達経路により、乗員がペダル55に加えた踏力および電動モータ53が発生する補助力は、後輪22に伝達される。
【0066】
なお、乗員の踏力と電動モータ53が発生した補助力とを合成する機構は、上記のようなクランク軸57と同じ回転軸を中心にして回転する合成機構58に限定されない。踏力と補助力とはチェーン24において合成されてもよい。
【0067】
次に、制御装置60による電動モータ53の駆動制御を説明する。制御装置60は、例えばMCU(Motor Control Unit)である。制御装置60は、演算回路61、メモリ62、モータ駆動回路63を備える。演算回路61は、電動モータ53の動作を制御するとともに、電動補助自転車1の各部の動作を制御する。メモリ62は、電動モータ53および電動補助自転車1の各部の動作を制御するための手順を規定したコンピュータプログラムを格納している。演算回路61は、メモリ62からコンピュータプログラムを読み出して各種制御を行う。
【0068】
トルクセンサ41は、乗員がペダル55に加えた人力(踏力)を、クランク軸57に発生するトルクとして検出する。トルクセンサ41は、例えば磁歪式トルクセンサである。トルクセンサ41は、検出したトルクの大きさに応じた振幅の電圧信号を出力する。トルクセンサ41は、電圧信号をトルク値に換算するトルク演算回路(図示せず)を有していてもよい。トルク演算回路は、例えば出力されたアナログ電圧信号をAD変換によってデジタル値に変換する。検出されたトルクの大きさは、デジタル信号として外部に出力される。トルクセンサ41は、アナログ信号を出力してもよいし、デジタル信号を出力してもよい。演算回路61は、トルクセンサ41の出力信号からトルクを算出する。
【0069】
クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転角を検出する。クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転角に応じた信号を演算回路61に出力する。例えば、クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。演算回路61は、クランク回転センサ42の出力信号からクランク軸57の回転速度を算出する。演算回路61は、クランク軸57のトルクと回転速度とを乗じて、クランク回転出力を算出する。
【0070】
電動モータ53には、モータ回転センサ46が設けられている。モータ回転センサ46は例えばエンコーダである。モータ回転センサ46は、電動モータ53のロータの回転角を検出し、回転角に応じた信号を演算回路61およびモータ駆動回路63へ出力する。例えば、モータ回転センサ46は、ロータの回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。演算回路61およびモータ駆動回路63は、モータ回転センサ46の出力信号から電動モータ53の回転速度を算出する。
【0071】
スピードセンサ49は、後輪22の回転角を検出し、回転角に応じた信号を演算回路61へ出力する。例えば、スピードセンサ49は、後輪22の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。演算回路61は、スピードセンサ49の出力信号から後輪22の回転速度を算出する。
【0072】
演算回路61は、例えば、電動モータ53の回転速度と後輪22の回転速度とから変速比を演算する。なお、電動補助自転車1が変速機構28および29の変速段を検出する変速段センサを備える場合は、変速段センサの出力信号から変速比を演算してもよい。
【0073】
演算回路61は、クランク軸57のトルクおよび回転速度、車両の走行速度、変速比、乗員による操作装置80のスイッチ操作、およびメモリ62に格納されている情報などから、適切な駆動補助出力を発生させるための指令値を算出し、モータ駆動回路63へ送信する。演算回路61は、例えば、ペダル55に加えられた乗員の人力により発生するクランク回転出力と、電動モータ53が発生する駆動補助出力の関係等に基づいて作成されたマップを参照することにより指令値を算出する。メモリ62には複数種類のマップが格納されている。演算回路61は、メモリ62から条件に合ったマップを読み出し、読み出したマップを参照することにより指令値を算出する。 モータ駆動回路63は、例えばインバータであり、演算回路61からの指令値に応じた電力をバッテリ56から電動モータ53に供給する。電力が供給された電動モータ53は回転し、所定の駆動補助出力を発生させる。このように、演算回路61は、走行時の乗員のペダル55を漕ぐ動作をアシストするように、電動モータ53に駆動補助出力を発生させる。
【0074】
次に、表示装置70および操作装置80を詳細に説明する。
【0075】
図4は、表示装置70および操作装置80の上面図である。表示装置70は、表示パネル72、電源スイッチ73、ランプ点灯スイッチ74を備える。表示パネル72は例えば液晶パネルであり、乗員の操作装置80に対する操作に応じて様々な情報を表示する。例えば、乗員の操作に応じて、表示パネル72の表示モードは、標準モード、設定モードと順次切り替わる。
図15は、表示パネル72が表示する情報の例を示している。
図15に示す標準モードでは、表示パネル72には時刻、走行速度、アシストモード、オドメータ、バッテリ残量等が表示される。設定モードでは、表示パネル72には設定可能な各種項目が表示される。表示パネル72は、液晶パネルに限定されず、例えば有機EL(Electro Luminescence)パネルまたは電子ペーパーパネルであってもよい。
【0076】
電源スイッチ73は、電動補助自転車1の電源のオンおよびオフを行うためのスイッチである。電動補助自転車1の電源がオン状態のとき駆動ユニット51は動作し、電源がオフ状態のとき駆動ユニット51は動作しない。
【0077】
操作装置80は、クランプ(図示せず)を用いて左ハンドルバー32に取り付けられている。操作装置80は、切替スイッチ81と、押し歩きスイッチ82と、補助力設定スイッチ83および84とを備える。この例では、スイッチ81、82、83、84は、乗員が指で押下して操作する押しボタンスイッチである。
【0078】
切替スイッチ81は、押し歩きスイッチ82、補助力設定スイッチ83および84に割り当てる機能を変更する操作を乗員から受け付ける。
【0079】
押し歩きスイッチ(Pushing assist switch)82は、乗員が電動補助自転車1を押し歩きするときに電動モータ53に補助力を発生させる押し歩きモードを実行する指示を、乗員から受け付けるスイッチである。上述したように、押し歩きとは、乗員がペダル55を漕ぐことなく、電動補助自転車1を押しながら前へ進めることを指す。本明細書では、電動補助自転車1から降車して、足で歩きながらハンドル14を手で押す押し歩き動作中の人間も「乗員」と称する。
【0080】
この例では、押し歩きスイッチ82は、左ハンドルバー32の軸心92よりも後方に配置されている。押し歩きスイッチ82を軸心92よりも後方に配置することで、乗員の親指による押し歩きスイッチ82の操作を容易にすることができる。
【0081】
補助力設定スイッチ83および84は、電動モータ53の補助力を設定するためのスイッチである。補助力設定スイッチ83および84は、電動モータ53の補助力、または、補助力の大きさに対応するアシストモードを設定するために用いられる。電動モータ53の「補助力」とは、人力を補助する力である。この例では、電動補助自転車1に複数のアシストモードが設けられている。複数のアシストモードは、例えば、人力に対する補助力の強さが小さい方から順に、アシスト無しモード、エコモード、標準モードおよび強モードである。アシスト無しモードでは、電動モータ53は補助力を発生しない。
【0082】
上記の例ではアシストモードの種類は4種類であったが、3種類以下であってもよいし、5種類以上であってもよい。例えば、強モードよりも大きい補助力を発生させるモードがあってもよいし、エコモードが複数種類あってもよい。
【0083】
図5は、表示装置70および操作装置80のハードウェア図である。表示装置70は、マイクロコントローラ(以下「マイコン」と記述する。)71、表示パネル72、電源スイッチ73、ランプ点灯スイッチ74、内蔵バッテリ75、RAM76、ROM77を備える。
【0084】
マイコン71は、表示装置70および操作装置80の各種スイッチが押下されたことを検出したり、表示装置70の動作を制御したりする制御回路である。マイコン71は、例えば半導体集積回路である。マイコン71は、電動補助自転車1にバッテリ56が装着されて電源がオンの状態では、バッテリ56から供給される電力を用いて動作してもよい。電源がオン状態におけるマイコン71の動作では、内蔵バッテリ75の電力を併用してもよい。内蔵バッテリ75は、例えばボタン電池等の一次電池である。内蔵バッテリ75は、充電可能な二次電池であってもよい。
【0085】
マイコン71は、ROM77に格納されているコンピュータプログラムを読み出してRAM76に展開し、各種処理を実行する。RAM76およびROM77はマイコン71に組み込まれていてもよい。
【0086】
マイコン71は、各種スイッチが押下されたことを検出する。例えば乗員のスイッチの押下開始により、マイコン71は、所定以上の大きさの電圧値および/または電流値を検出する。そしてスイッチの押下終了に伴い、マイコン71は、それまで検出していた電圧値および/または電流値が、例えば0になったことを検出する。マイコン71は、同時に複数のスイッチの押下を並列的に検出することができる。
【0087】
マイコン71は、表示装置70および操作装置80の各種スイッチの押下に応じた信号を制御装置60に送信する。例えば、押し歩きスイッチ82が押下されたときは、マイコン71は、押し歩きスイッチ82が押下されたことを示す信号を制御装置60に送信する。信号を受け取った制御装置60は、押し歩きモードを実行し、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行う。なお、表示装置70を介さずに操作装置80と制御装置60とが配線で接続されていてもよく、この場合は、制御装置60は操作装置80に対する乗員のスイッチ操作を直接的に検出する。
【0088】
本実施形態では、表示装置70と操作装置80とは別体として設けられているが、表示装置70と操作装置80とは一体に構成されていてもよい。例えば、同じ1つの筐体内に表示装置70および操作装置80の両方の構成要素が設けられていてもよい。
【0089】
次に、押し歩きモードを説明する。
図4の白矢印112は、乗員が指でスイッチを押す操作を示している。乗員が押し歩きスイッチ82を押し続けた場合は、電動補助自転車1は押し歩きモードを実行する。
【0090】
乗員がペダル55を足で漕ぐことなく電動補助自転車1を手で押して徐行させながら、押し歩きスイッチ82を指で押し続けると、マイコン71は、例えば、押し歩きスイッチ82が正常に押し続けられていることを示す信号を制御装置60へ送信する。信号を受け取った制御装置60は、押し歩きモードを実行し、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行う。例えば、乗員は左手でハンドル14の左グリップ34(
図4)を押しながら、左手の親指で押し歩きスイッチ82を押し続けることができる。徐行とは、ゆっくりとした速度で電動補助自転車1を進めることであり、例えば0km/hより大きく6km/hより小さい速度で電動補助自転車1を進めることである。押し歩き時に電動モータ53に補助力を発生させることにより、乗員の負担を減らすことができる。例えば乗員が足で歩きながら電動補助自転車1を手で押して坂道を上がるときの乗員の負担を減らすことができる。
【0091】
乗員が押し歩きスイッチ82を押し続けるのをやめると、押し歩きモードは終了する。
【0092】
図6は、押し歩きスイッチ82の構造の一例を示す断面図である。
図6に示す例では、押し歩きスイッチ82は、2極双投形(Double Pole Double Throw:DPDT)の構造を有している。
図6に示すスイッチ構造は、ダブルアクションスイッチとも称される。
【0093】
図6(a)は、乗員が操作していないときの押し歩きスイッチ82を示している。回路基板180には、固定接点181および184が互いに離れて配置されている。固定接点181および184の間には、固定接点182および183が互いに離れて配置されている。本実施形態では、固定接点181を第1電気接点、固定接点182を第2電気接点とも称する。
【0094】
回路基板180における固定接点181および184よりも外側の位置には、環形状のベース196が設けられている。ここで、環形状は真円の環形状に限定されず、楕円形や矩形の環形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。ベース196と可動部材191とが、スカート形状の弾性部材193を介して接続されている。可動部材191と可動部材192とが、スカート形状の弾性部材194を介して接続されている。弾性部材193、194は、例えばゴムなどの弾性材料から構成される。可動部材192には、乗員の指が触れるボタン195が設けられている。
【0095】
可動部材191における固定接点181および184と対向する位置には、環形状の可動接点185が設けられている。可動部材192における固定接点182および183と対向する位置には、可動接点186が設けられている。この例では、マイコン71から固定接点183、184に電圧が印加されているとする。
【0096】
図6(b)に示すように、乗員がボタン195を押すと、まず弾性部材193が弾性変形して、可動接点185が固定接点181、184に接触する。この接触により、固定接点181と固定接点184とは導通する。可動接点185を介して固定接点184から電圧が供給された固定接点181(第1電気接点)は、オン状態になる。固定接点181がオン状態になることで、オン状態を示す電圧の信号が固定接点181からマイコン71に出力される。信号を受け取ったマイコン71は、固定接点181がオン状態になったことを検出する。
【0097】
図6(c)に示すように、乗員がボタン195をさらに押すと、弾性部材194が弾性変形して、可動接点186が固定接点182、183に接触する。この接触により、固定接点182と固定接点183とは導通する。可動接点186を介して固定接点183から電圧が供給された固定接点182(第2電気接点)は、オン状態になる。固定接点182がオン状態になることで、オン状態を示す電圧の信号が固定接点182からマイコン71に出力される。信号を受け取ったマイコン71は、固定接点182がオン状態になったことを検出する。
【0098】
電動補助自転車1の押し歩きの動作においては、乗員による押し歩きスイッチ82の操作なしでは電動モータ53に補助力を発生させないことが求められる。
【0099】
誤作動等により電動モータ53が補助力を発生させることを抑制するために、上記のように乗員から電動モータ53に補助力を発生させる指示を受け付ける電気接点を二種類設ける。乗員の操作に応じて二種類の電気接点181、182の両方がオン状態になったことを検出した場合にのみ、電動モータ53に補助力を発生させる。電気接点181、182の少なくとも一方がオフ状態である場合は、電動モータ53に補助力を発生させない。このように電気接点を二種類設けることにより、動力源である電動モータ53の制御の信頼性向上を図ることができる。
【0100】
しかし、電気接点181、182の一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、他方の電気接点に対する乗員の操作のみで電気接点181、182の両方がオン状態と検出されることが発生し得る。
【0101】
そこで、本実施形態では、マイコン71は、第1電気接点181から出力される第1信号および第2電気接点182から出力される第2信号の両方がオフを示す状態(以下、第1状態と称する)の検出の有無を判定する。マイコン71は、第1状態を検出したと判定した後に、第1信号および第2信号の両方がオンを示す状態(以下、第2状態と称する)を検出したか判定する。第1状態を検出したと判定した後に第2状態を検出したと判定した場合は、モータ53に動力を発生させる制御を行う。この場合、マイコン71は、例えば、押し歩きスイッチ82が正常に押し続けられていることを示す信号を制御装置60へ送信する。信号を受け取った制御装置60は、押し歩きモードを実行し、電動モータ53は補助力を発生させる。マイコン71は、第1状態を検出しなかった場合は、第1電気接点181および第2電気接点182の両方がオン状態になったとしても、モータ53に動力を発生させる制御は行わない。例えば、マイコン71は、第1状態を検出しなかった場合は、第2状態を検出したとしても、モータ53に動力を発生させる制御は行わない。例えば、マイコン71は、押し歩きスイッチ82が正常に押し続けられていることを示す信号を制御装置60へ送信しない。制御装置60は、信号を受け取っていないので、押し歩きモードを実行しない。
【0102】
第1電気接点181および第2電気接点182の少なくとも一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、上記の第1状態は検出されないため、モータ53に動力を発生させる制御は行わない。第1電気接点181および第2電気接点182の両方がオフになる状態があることを確認した後に、それら両方がオンになる状態を検出した場合にのみ、モータ53に動力を発生させる。これにより、モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0103】
図7(a)は、第1電気接点181から出力される第1信号201を示す図である。
図7(b)は、第2電気接点182から出力される第2信号202を示す図である。
図7(a)および
図7(b)の横軸は時間、縦軸は電圧を示している。
【0104】
図7に示す例では、時間t1までは、第1信号201および第2信号202の両方がオフを示しており、第1状態が検出される。時間t1において第1信号201がオンを示し、時間t2において第2信号202がオンを示すことで、第2状態が検出される。第1状態を検出した後に、第2状態を検出したため、モータ53に動力を発生させる制御を行う。
【0105】
図8(a)は、第1電気接点181から出力される第1信号201を示す図である。
図8(b)は、第2電気接点182から出力される第2信号202を示す図である。
図8(a)および
図8(b)の横軸は時間、縦軸は電圧を示している。
【0106】
図8に示す例では、電気接点182が常時オン状態になる故障が発生している。このため、時間t1より前の時間において、第1信号201はオフを示しているが、第2信号202はオンを示しており、第1状態は検出されない。時間t1において第1信号201がオンを示すことで、第2状態が検出される。しかし、第1状態を検出していないため、第2状態を検出したとしても、モータ53に動力を発生させる制御を行わない。
【0107】
また、第1電気接点181および電気接点182の少なくとも一方が常時オフ状態になる故障が発生している場合は、第2状態を検出しないため、モータ53に動力を発生させる制御を行わない。
【0108】
図6に例示する押し歩きスイッチ82は、ノーマリーオープンのスイッチであり、導通状態をオン状態、非導通状態をオフ状態としている。本実施形態の押し歩きスイッチ82として、ノーマリークローズのスイッチが用いられてもよい。本実施形態では、ノーマリークローズのスイッチを用いる場合は、導通状態をオフ状態、非導通状態をオン状態とする。
【0109】
次に、押し歩きモードの処理の詳細を説明する。同様の処理には同じ参照符号を付し、説明の繰り返しは省略する。以下の説明では、マイコン71が各処理を実行するとして説明するが、マイコン71と制御装置60とが協働して各処理を実行してもよいし、制御装置60が各処理を実行してもよい。また、以下に説明する
図9から
図14に示す処理を適宜組み合わせた処理も可能である。
【0110】
図9は、押し歩きモードの処理を示すフローチャートである。
【0111】
ステップS101において、乗員が電源スイッチ73を押すと、電動補助自転車1の電源はオンになり、駆動ユニット51は動作を開始する。
【0112】
ステップS102において、マイコン71は、第1信号201および第2信号202の両方がオフを示しているか判定する。第1信号201および第2信号202の少なくとも一方がオフを示していない場合は、第1信号201および第2信号202の両方がオフを示す第1状態を検出するまで先の処理には進まない。
【0113】
マイコン71は、第1状態を検出したと判定すると、ステップS103の処理に進む。ステップS103において、マイコン71は、第1信号201および第2信号202の両方がオンを示すか判定する。マイコン71は、第1信号201および第2信号202の両方がオンを示す第2状態を検出すると判定するまで待機する。マイコン71は、第2状態を検出したと判定すると、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行う(ステップS104)。マイコン71は、押し歩きスイッチ82が正常に押し続けられていることを示す信号を制御装置60へ送信する。信号を受け取った制御装置60は、押し歩きモードを実行し、電動モータ53は補助力を発生させる。
【0114】
ステップS105において、第1信号201および第2信号202の少なくとも一方がオフを示すことを検出すると、電動モータ53に補助力を発生させる制御を停止する(ステップS106)。電動モータ53に補助力を発生させる制御を停止させると、ステップS102の処理を再度実行する。
【0115】
図9に示す処理において、第1信号201および第2信号202の両方がオフを示す第1状態を検出しない場合は、ステップS102の処理に留まり、電動モータ53に補助力を発生させる制御は行わない。第1状態を検出していなくても、乗員のスイッチ操作により第1電気接点181および第2電気接点182の両方がオン状態になることは起こり得る。しかし、第1状態を検出していないため、モータ53に動力を発生させる制御は行わない。これにより、電動補助自転車1を移動させる補助力を発生させる電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0116】
図9に示す例では、ステップS105において、第1信号201および第2信号202の少なくとも一方がオフを示すことを検出すると、電動モータ53に補助力を発生させる制御を停止させた後、ステップS102の処理を再度実行していた。しかし、ステップS102の処理は、電源がオンになったときのみ行ってもよい。
【0117】
図10は、押し歩きモードの処理の別の例を示すフローチャートである。
【0118】
図10に示す例では、ステップS105において、第1信号201および第2信号202の少なくとも一方がオフを示すことを検出すると、電動モータ53に補助力を発生させる制御を停止させた後、ステップS103の処理を再度実行する。それ以外の処理は
図9に示す処理と共通であるため、説明は省略する。
【0119】
図10に示す例では、ステップS102の処理は、電源がオンになったときのみ行う。電動補助自転車1の電源のオンとオフを切り替える頻度が、押し歩きスイッチ82の想定される故障間隔よりも十分に短い場合などでは、電源がオンになったときのみにステップS102の処理を行うことも考えられる。
【0120】
乗員が押し歩きスイッチ82を押す操作を継続していても、乗員の操作具合および電動補助自転車1の振動等に起因して、第1および第2電気接点181、182の少なくとも一方が一時的にオフ状態になることが発生し得る。このような場合は、第1状態の検出の有無の判定を再度行わなくても、第2状態を再び検出することで電動モータ53に補助力を発生させる制御を再開する。これにより、電動補助自転車1の使い勝手を向上させることができる。
【0121】
図11は、押し歩きモードの処理のさらに別の例を示すフローチャートである。
【0122】
図11に示す例では、ステップS102において第1状態を検出すると、ステップ111の処理に進む。ステップS111では、第1信号201および第2信号202の一方はオンを示すが他方がオフを示す状態(以下、第3状態と称する)が第1所定時間継続するか判定する。第1所定時間は例えば2秒であるが、それに限定されず、別の時間であってもよい。
【0123】
第1および第2電気接点181、182が共に正常である場合、第1電気接点181と第2電気接点182とでオン状態になる時間に若干の差は発生し得るが、乗員の操作に応じて第1所定時間内には両方がオン状態になる。
【0124】
一方、第1および第2電気接点181、182の一方がオン状態にならない故障が発生していた場合、乗員が操作しても第1および第2電気接点181、182の一方はオフ状態のままである。
【0125】
第3状態が第1所定時間継続したと判定した場合は、ステップS112の処理に進む。ステップS112では、マイコン71は、第3状態の第1所定時間の継続が第1所定回数以上発生したか判定する。第1所定回数は例えば5回であるが、それに限定されず、別の回数であってもよい。
【0126】
第3状態の第1所定時間の継続が第1所定回数以上発生していないと判定した場合は、ステップS102の処理に戻る。
【0127】
電動モータ53に補助力が発生しないことを認識した乗員は、押し歩きスイッチ82を押す操作をやり直すことが考えられる。操作をやり直す過程で、第1状態が再度検出される。上記故障が発生していた場合は、第1状態が再度検出された後、第3状態の所定時間の継続が再度検出される。ステップS112において、マイコン71は、第3状態の第1所定時間の継続が第1所定回数以上発生したと判定した場合は、故障と判定し(ステップS113)、押し歩きモードの実行を禁止する。電動モータ53に補助力を発生させる制御は行わない。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。また、故障と判定した場合は、後述するように、乗員に故障したことを報知してもよい。
【0128】
ステップS111、S103において、マイコン71は、第3状態が検出されてから第1所定時間が経過する前に第2状態を検出した場合は、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行う(ステップS104)。乗員が押し歩きスイッチ82を押す操作を行った場合でも、乗員の操作の仕方によっては、第1および第2電気接点181、182の一方がなかなかオン状態にならないことが発生し得る。第1および第2電気接点181、182の一方がオン状態になってから第1所定時間内に他方がオン状態になった場合は、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行う。これにより、電動補助自転車1の使い勝手を向上させることができる。
【0129】
また、マイコン71は、第3状態の第1所定時間の継続が第1所定回数発生する前に第2状態を検出した場合は、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行う(ステップS104)。第3状態が第1所定回数以上繰り返されず、且つ第2状態を検出した場合は、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行うことで、電動補助自転車1の使い勝手を向上させることができる。
【0130】
図12は、押し歩きモードの処理のさらに別の例を示すフローチャートである。
【0131】
図12に示す例では、ステップS105において、マイコン71は、第1信号201および第2信号202の少なくとも一方がオフを示す状態(以下、第4状態と称する)を検出するか判定する。第4状態を検出したと判定した場合、マイコン71は、電動モータ53に補助力を発生させる制御を停止させる(ステップS106)。ステップS106の処理の後、ステップS121の処理に進む。ステップS121において、マイコン71は、第4状態を検出した後、第2所定時間内に第2状態を再び検出したか判定する。第2所定時間は例えば500ミリ秒であるが、それに限定されず、別の時間であってもよい。第2所定時間内に第2状態を再び検出したと判定した場合は、ステップS104の処理に戻り、電動モータ53に補助力を発生させる制御を再開する。
【0132】
乗員が押し歩きスイッチ82を押す操作を継続していても、乗員の操作具合および電動補助自転車1の振動等に起因して、第1および第2電気接点181、182の少なくとも一方が一時的にオフ状態になることが発生し得る。このような場合は、第1状態の検出の有無の判定を再度行わなくても、電動モータ53に補助力を発生させる制御を再開することで、電動補助自転車1の使い勝手を向上させることができる。
【0133】
ステップS121において、第2所定時間内に第2状態を再び検出しなかった場合は、ステップS102の処理に戻り、第1状態の検出の有無を再度判定する。
【0134】
乗員の操作が適切でない場合、あるいは第1および第2電気接点181、182の少なくとも一方がオン状態にならない故障が発生した場合は、第2所定時間内に第2状態は再び検出されない。このような場合は、第1状態の検出の有無の判定動作に戻る。乗員の操作が適切でなかった場合は、乗員が適切な操作をやり直すことにより、電動モータ53に補助力を発生させることができる。第1および第2電気接点181、182の少なくとも一方がオン状態にならない故障が発生していた場合は、電動モータ53に補助力を発生させない。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0135】
図13は、押し歩きモードの処理のさらに別の例を示すフローチャートである。
【0136】
図13に示す例では、ステップS102において第1状態を検出すると、ステップS131の処理に進む。ステップS131では、マイコン71は、第1信号201がオンを示してから第3所定時間内に第2信号202がオンを示す状態(以下、第5状態と称する)の検出の有無を判定する。第3所定時間は例えば4ミリ秒であるが、それに限定されず、別の時間であってもよい。第3所定時間は、例えば、乗員が押し歩きスイッチ82を速く押したときに発生する、第1電気接点181と第2電気接点182とでオンになる時間の差よりも小さい時間であればよい。
【0137】
マイコン71は、第5状態を検出したと判定した場合は、ステップS102の処理に戻る。電動モータ53に補助力を発生させる制御は行わない。
【0138】
正常時の動作では、第1電気接点181と第2電気接点182とでオンになる時間に差が発生する。しかし、第1電気接点181と第2電気接点182とが互いに短絡していた場合は、乗員の操作時に第1信号201と第2信号202とは同時にオンを示し得る。
【0139】
第1信号201がオンを示してから第3所定時間内に第2信号202がオンを示した場合は、第1電気接点181と第2電気接点182とが互いに短絡している可能性がある。このため、電動モータ53に補助力を発生させない。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0140】
また、第5状態を検出したと判定した場合は、第1状態の検出の有無の判定を再度行う。補助力が発生しないことを認識した乗員は、押し歩きスイッチ82を押す操作をやり直すことが考えられる。操作をやり直す過程で、第1状態が再度検出される。上記短絡が発生していた場合は、第1状態が再度検出された後、第5状態が再度検出されるため、電動モータ53に補助力を発生させる制御は行わない。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0141】
第1電気接点181と第2電気接点182とが互いに短絡していない場合は、電動モータ53に補助力を発生させる正常時の制御を行うことができる。マイコン71は、第5状態を検出しないと判定し、且つ第2状態を検出した場合は、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行う(ステップS131、S111、S103、S104)。
【0142】
図14は、押し歩きモードの処理のさらに別の例を示すフローチャートである。
【0143】
図14に示す例では、ステップS102において第1状態を検出しない場合は、ステップS141の処理に進む。ステップS141では、マイコン71は、第1状態を連続して検出しない状態(以下、第6状態と称する)が第4所定時間継続するか判定する。第4所定時間は例えば60秒であるが、それに限定されず、別の時間であってもよい。
【0144】
第6状態が第4所定時間継続していないと判定した場合は、ステップS102の処理に戻る。第6状態が第4所定時間継続したと判定した場合は、マイコン71は、第1電気接点181および第2電気接点182の少なくとも一方が故障していると判定する(ステップS142)。
【0145】
第1電気接点181および第2電気接点182の少なくとも一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、第1状態は検出されない。第1状態を連続して検出しない第6状態が第4所定時間継続した場合は、故障が発生したと判定する。電動モータ53に補助力を発生させる制御は行わない。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。また、故障と判定した場合は、乗員に故障したことを報知してもよい。
【0146】
図15および
図16は、押し歩きスイッチ82の故障の発生を報知する動作の例を示す図である。故障が発生した場合は、マイコン71は、例えば、表示パネル72の一部または全体の色を変化させる。
図15に示す例では、表示エリア131の色を変化させている。また、
図16に示すように、文字表示により故障の発生を報知してもよい。乗員は、表示装置70の表示内容を見ることで、押し歩きスイッチ82の故障の発生を認識することができる。
【0147】
また、電動補助自転車1は、押し歩きスイッチ82の故障の発生を報知する報知装置を備えていてもよい。
図17は、報知装置の例として、スピーカ132およびランプ133を備える表示装置70を示している。例えば、スピーカ132が音声を発生させて、故障の発生を乗員に報知する。また、例えば、ランプ133が点灯または点滅して、故障の発生を乗員に報知する。乗員は、音声および光により、故障の発生を認識することができる。なお、表示装置70は、スピーカ132およびランプ133の両方を備えていなくてもよく、いずれか一方のみを備えていてもよい。
【0148】
上記の例では、第1電気接点181および第2電気接点182は、同じ押し歩きスイッチ82の筐体内に設けられていたが、別々のスイッチ内に設けられていてもよい。
【0149】
図18は、2つの押し歩きスイッチ82および282を備えた電動補助自転車1を示す図である。
図18に示す例では、押し歩きスイッチ82内に第1電気接点が設けられ、押し歩きスイッチ282内に第2電気接点が設けられる。この例では、押し歩きスイッチ82および282は、1極単投形のスイッチである。押し歩きスイッチ282は、右ハンドルバー31に設けられる。乗員が左手で押し歩きスイッチ82を押すことで、第1電気接点がオン状態になる。乗員が右手で押し歩きスイッチ282を押すことで、第2電気接点がオン状態になる。マイコン71は、上述した第1状態を検出したと判定した後に第2状態を検出したと判定した場合は、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行う。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0150】
上記の説明では、電動補助自転車として二輪の電動補助自転車を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電動補助自転車は三輪以上の電動補助自転車であってもよい。
【0151】
また、上記の説明では、乗員がペダルを踏んで発生させる人力および電動モータが発生させる補助力が伝達される駆動輪は後輪であったが、本発明はこれに限定されない。電動補助自転車の形態に応じて、それら人力および補助力は前輪に伝達されてもよいし、前輪および後輪の両方に伝達されてもよい。
【0152】
また、上述の例では、車両は電動補助自転車であったが、電動補助自転車以外の車両であってもよい。例えば、車両は四輪の車両であってもよい。また、例えば、車両はシニアカー(Mobility Scooter)であってもよい。また、本発明は、内燃機関を動力源とする車両にも適用可能であるとともに、電動モータと内燃機関を併用するハイブリッドシステムにも適用可能である。
【0153】
上述の例では、第1電気接点181および電気接点182のオン状態とオフ状態に応じた制御は、押し歩きモードに適用していたが、押し歩き以外の動作に適用してもよい。本発明は、例えば、車両の通常の進行のための動力を発生させる動力源の制御に適用することも可能である。
【0154】
上述の例では、第1電気接点181および電気接点182のオン状態とオフ状態を切り替えるスイッチは、押しボタンスイッチであったが、別のタイプのスイッチであってもよい。例えば、スライドスイッチであってもよいし、レバー形スイッチであってもよい。また、スイッチは、スロットル構造を有してもよく、乗員がスロットルを回すことで第1電気接点181および電気接点182のオン状態とオフ状態を切り替えてもよい。また、スイッチは、ペダル構造を有してもよく、乗員が足でペダルを操作することで第1電気接点181および電気接点182のオン状態とオフ状態を切り替えてもよい。また、これら種類の異なるスイッチを2つ設けて、一方のスイッチで第1電気接点181のオン状態とオフ状態を切り替え、他方のスイッチで第2電気接点182のオン状態とオフ状態を切り替えてもよい。
【0155】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0156】
本発明の実施形態に係る駆動システム51は、電動補助自転車1を移動させる動力を発生させる電動モータ53と、乗員の操作に応じてオン状態とオフ状態とが切り替わる第1電気接点181および第2電気接点182と、第1電気接点181に関する第1信号201および第2電気接点182に関する第2信号202を受け取り、第1信号201および第2信号202に応じて電動モータ53の動作を制御するマイコン71と、を備える。マイコン71は、第1信号201および第2信号202の両方がオフを示す第1状態の検出の有無を判定する。マイコン71は、第1状態を検出したと判定した後に、第1信号201および第2信号202の両方がオンを示す第2状態を検出したか判定する。第1状態を検出したと判定した後に第2状態を検出したと判定した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御を行う。マイコン71は、第1状態を検出していない間は、第1電気接点181および第2電気接点182がオン状態になったとしても、電動モータ53に動力を発生させる制御は行わない。
【0157】
電動補助自転車1の押し歩きの動作においては、乗員による押し歩きスイッチ82の操作なしでは電動モータ53に補助力を発生させないことが求められる。
【0158】
誤作動等により電動モータ53が補助力を発生させることを抑制するために、乗員から電動モータ53に補助力を発生させる指示を受け付ける電気接点を二種類設けることが考えられる。乗員の操作に応じて二種類の電気接点の両方がオン状態になったことを検出した場合にのみ、電動モータ53に補助力を発生させる。二種類の電気接点の少なくとも一方がオフ状態である場合は、電動モータ53に補助力を発生させない。このように電気接点を二種類設けることにより、電動モータ53の制御の信頼性向上を図ることができる。
【0159】
しかし、二種類の電気接点の一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、他方の電気接点に対する乗員の操作のみで二種類の電気接点の両方がオン状態になることが発生し得る。
【0160】
本発明の実施形態に係る駆動システム51は、第1電気接点181および第2電気接点182を備える。マイコン71は、第1電気接点181に関する第1信号201および第2電気接点182に関する第2信号202の両方がオフを示す第1状態の検出の有無を判定する。マイコン71は、第1状態を検出したと判定した後に、第1信号201および第2信号202の両方がオンを示す第2状態を検出したか判定する。第1状態を検出したと判定した後に第2状態を検出したと判定した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御を行う。マイコン71は、第1状態を検出しない間は、第1電気接点181および第2電気接点182がオン状態になったとしても、電動モータ53に動力を発生させる制御は行わない。
【0161】
第1電気接点181および第2電気接点182の少なくとも一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、第1状態は検出されないため、電動モータ53に動力を発生させる制御は行わない。第1電気接点181および第2電気接点182の両方がオフになる状態があることを確認した後に、それら両方がオンになる状態を検出した場合にのみ、電動モータ53に動力を発生させる。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0162】
ある実施形態において、マイコン71は、第1状態を検出したと判定した後、第1信号201および第2信号202の一方はオンを示すが他方がオフを示す第3状態が第1所定時間継続するか判定する。マイコン71は、第3状態が第1所定時間継続したと判定した場合は、第1状態の検出の有無を再度判定し、第1状態を検出したと再度判定した後、第3状態が第1所定時間継続するか再度判定する。マイコン71は、第3状態の第1所定時間の継続が第1所定回数以上発生したか判定し、第3状態の第1所定時間の継続が第1所定回数以上発生したと判定した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御は行わなくてもよい。
【0163】
第1および第2電気接点181、182が正常である場合、第1電気接点181と第2電気接点182とでオン状態になる時間に若干の差は発生し得るが、乗員の操作に応じて所定時間内には両方がオン状態になる。
【0164】
一方、第1および第2電気接点181、182の一方がオン状態にならない故障が発生していた場合、乗員が操作しても第1および第2電気接点181、182の一方はオフ状態のままである。この場合、第2状態は検出されず、電動モータ53は動力を発生させない。動力が発生しないことを認識した乗員は、第1および第2電気接点181、182に対する操作をやり直すことが考えられる。操作をやり直す過程で、第1状態が再度検出される。上記故障が発生していた場合は、第1状態が再度検出された後、第3状態の所定時間の継続が再度検出される。
【0165】
第3状態の第1所定時間の継続が第1所定回数以上発生した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御は行わない。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0166】
ある実施形態において、マイコン71は、第3状態が検出されてから第1所定時間が経過する前に第2状態を検出したと判定した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御を行ってもよい。
【0167】
乗員が第1および第2電気接点181、182に対する操作を行った場合でも、乗員の操作の仕方によっては、第1および第2電気接点181、182の一方がなかなかオン状態にならないことが発生し得る。第1および第2電気接点181、182の一方がオン状態になってから所定時間内に他方がオン状態になった場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御を行うことで、電動補助自転車1の使い勝手を向上させることができる。
【0168】
ある実施形態において、マイコン71は、第3状態の第1所定時間の継続が第1所定回数発生する前に第2状態を検出したと判定した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御を行ってもよい。
【0169】
乗員が第1および第2電気接点181、182に対する操作を行った場合でも、乗員の操作の仕方によっては、第1および第2電気接点181、182の一方がなかなかオン状態にならないことが発生し得る。第3状態が第1所定回数以上繰り返されなかった場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御を行うことで、電動補助自転車1の使い勝手を向上させることができる。
【0170】
ある実施形態において、マイコン71は、第1状態および第2状態を検出したと判定した後、第1信号201および第2信号202の少なくとも一方がオフを示す第4状態を検出したか判定する。第4状態を検出したと判定した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御を停止する。第4状態を検出した後、第2所定時間内に第2状態を再び検出したか判定する。第2状態を再び検出したと判定した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御を再開してもよい。
【0171】
乗員が第1および第2電気接点181、182に対する操作を継続していても、乗員の操作具合および電動補助自転車1の振動等に起因して、第1および第2電気接点181、182の少なくとも一方が一時的にオフ状態になることが発生し得る。このような場合は、第1状態の検出の有無の判定を再度行わなくても、電動モータ53に動力を発生させる制御を再開することで、電動補助自転車1の使い勝手を向上させることができる。
【0172】
ある実施形態において、マイコン71は、第4状態を検出したと判定した後、第2所定時間内に第2状態を再び検出していないと判定した場合は、第1状態の検出の有無を再度判定してもよい。
【0173】
乗員の操作が適切でない場合、あるいは第1および第2電気接点181、182の少なくとも一方がオン状態にならない故障が発生した場合は、第2所定時間内に第2状態は再び検出されない。このような場合は、第1状態の検出の有無の判定動作に戻る。乗員の操作が適切でなかった場合は、乗員が適切な操作をやり直すことにより、電動モータ53に動力を発生させることができる。第1および第2電気接点181、182の少なくとも一方がオン状態にならない故障が発生していた場合は、電動モータ53に動力を発生させない。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0174】
ある実施形態において、マイコン71は、第1状態を検出したと判定した後、第1信号201がオンを示してから第3所定時間内に第2信号202がオンを示す第5状態の検出の有無を判定する。マイコン71は、第5状態を検出したと判定した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御は行わなくてもよい。
【0175】
正常時の動作では第1電気接点181と第2電気接点182とでオンになる時間に差が発生する形態において、第1電気接点181と第2電気接点182とが互いに短絡していた場合は、乗員の操作時に第1信号201と第2信号202とは同時にオンを示し得る。
【0176】
第1信号201がオンを示してから第3所定時間内に第2信号202がオンを示した場合は、第1電気接点181と第2電気接点182とが互いに短絡している可能性があるため、電動モータ53に動力を発生させない。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0177】
ある実施形態において、マイコン71は、第1状態を検出したと判定した後、第1信号201がオンを示してから第3所定時間内に第2信号202がオンを示す第5状態の検出の有無を判定する。マイコン71は、第5状態を検出したと判定した場合は、第1状態の検出の有無の判定を再度行ってもよい。
【0178】
正常時の動作では第1電気接点181と第2電気接点182とでオンになる時間に差が発生する形態において、第1電気接点181と第2電気接点182とが互いに短絡していた場合は、乗員の操作時に第1信号201と第2信号202とは同時にオンを示し得る。
【0179】
第1信号201がオンを示してから第3所定時間内に第2信号202がオンを示した場合は、第1電気接点181と第2電気接点182とが互いに短絡している可能性があるため、電動モータ53に動力を発生させない。動力が発生しないことを認識した乗員は、第1および第2電気接点181、182に対する操作をやり直すことが考えられる。操作をやり直す過程で、第1状態が再度検出される。上記短絡が発生していた場合は、第1状態が再度検出された後、第5状態が再度検出されるため、電動モータ53に動力を発生させる制御は行わない。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0180】
ある実施形態において、マイコン71は、第5状態を検出していないと判定し、且つ第2状態を検出したと判定した場合は、電動モータ53に動力を発生させる制御を行ってもよい。第1電気接点181と第2電気接点182とが互いに短絡していない場合は、電動モータ53に動力を発生させる正常時の制御を行うことができる。
【0181】
ある実施形態において、マイコン71は、第1状態を連続して検出しない第6状態が第4所定時間継続するか判定し、第6状態が第4所定時間継続したと判定した場合は、第1電気接点181および第2電気接点182の少なくとも一方が故障していると判定してもよい。
【0182】
第1および第2電気接点181、182の少なくとも一方が常時オン状態になる故障が発生した場合、第1状態は検出されない。第1状態を連続して検出しない第6状態が第4所定時間継続した場合は、故障が発生したと判定する。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させることができる。
【0183】
ある実施形態において、駆動システム51は、第1電気接点181および第2電気接点182を含む2極双投スイッチを押し歩きスイッチ82として備えてもよい。乗員は、2極双投スイッチを押すことで、第1電気接点181および第2電気接点182を操作することができる。
【0184】
ある実施形態において、駆動システム51は、第1電気接点181を含む第1スイッチと、第2電気接点182を含む第2スイッチとを押し歩きスイッチ82として備えてもよい。乗員は、第1スイッチおよび第2スイッチを押すことで、第1電気接点181および第2電気接点182を操作することができる。
【0185】
本発明の実施形態に係る電動補助自転車1は、上記の駆動システム51を備える。これにより、電動モータ53の制御の信頼性を向上させた電動補助自転車1を提供することができる。
【0186】
ある実施形態において、マイコン71は、第1状態を検出したと判定した後に第2状態を検出したと判定した場合は、乗員が電動補助自転車1を押し歩きするときに電動モータ53に補助力を発生させる押し歩きモードを電動補助自転車1に実行させる制御を行ってもよい。これにより、押し歩きモードの制御の信頼性を向上させた電動補助自転車1を提供することができる。
【0187】
以上、本発明の実施形態を説明した。上述の実施形態の説明は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。また、上述の実施形態で説明した各構成要素を適宜組み合わせた実施形態も可能である。本発明は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、改変、置き換え、付加および省略などが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明は、乗員の操作に応じて動力源に動力を発生させる車両の分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0189】
1:電動補助自転車、 2:ヘッドランプ、 4:トップチューブ、 5:ダウンチューブ、 6:ブラケット、 7:チェーンステイ、 8:ブレーキ、 9:ブレーキ、 11:車体フレーム、 12:ヘッドパイプ、 13:ステム、 14:ハンドル、 15:フロントフォーク、 16:シートチューブ、 17:サドルパイプ、 18:フェンダー、 19:シートステイ、 21:前輪、 22:後輪、 23:サドル、 24:チェーン、 25:従動スプロケット、 26:駆動軸、 27:ワンウェイクラッチ、 28:変速機構、 29:変速機構、 31:右ハンドルバー、 32:左ハンドルバー、 33:右グリップ、 34:左グリップ、 35:前輪ブレーキレバー、 36:後輪ブレーキレバー、 37:変速操作器、 38:変速操作器、 41:トルクセンサ、 42:クランク回転センサ、 43:ワンウェイクラッチ、 44:ワンウェイクラッチ、 45:減速機、 46:モータ回転センサ、 49:スピードセンサ、 51:駆動ユニット(駆動システム)、 53:電動モータ、 54:クランクアーム、 55:ペダル、 56:バッテリ、 57:クランク軸、 58:合成機構、 59:駆動スプロケット、 60:制御装置、 61:演算回路、 62:メモリ、 63:モータ駆動回路、 70:表示装置、 71:マイクロコントローラ、 72:表示パネル、 73:電源スイッチ、 74:ランプ点灯スイッチ、 75:内蔵バッテリ、 76:RAM、 77:ROM、 80:操作装置、 81:切替スイッチ、 82:押し歩きスイッチ、 83:補助力設定スイッチ、 84:補助力設定スイッチ、 85:ヒンジ、 92:軸心、 93:配線、 94:配線、 97:クランプ、 112:押す操作、 131:表示エリア、 132:スピーカ、 133:ランプ、 180:回路基板、 181:固定接点(第1電気接点)、 182:固定接点(第2電気接点)、 183:固定接点、 184:固定接点、 185:可動接点、 186:可動接点、 191:可動部材、 192:可動部材、 193:弾性部材、 194:弾性部材、 195:ボタン、 196:ベース、 201:第1信号、 202:第2信号、 282:スイッチ