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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】堰堤および捕捉体
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018074698
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019183485
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-211069(JP,A)
【文献】特開2004-316081(JP,A)
【文献】特開2007-191936(JP,A)
【文献】特開2008-202291(JP,A)
【文献】特開2008-266981(JP,A)
【文献】特開2001-303538(JP,A)
【文献】特開2015-098735(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0794922(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側に面する上流壁部および下流側に面する下流壁部を有し、河川の両岸からそれぞれ延出する一対の袖部と、
前記一対の袖部の間で流水を通す透過部と、
前記袖部の前記上流壁部に着脱自在に設けられて、前記透過部の上流側の開口を覆って、土砂を堰き止める不透過壁部と、
を備え
前記不透過壁部は、
高さ方向において所定の間隔をおいて前記一対の袖部に前記上流壁部側で架け渡された複数の横梁材と、
所定の間隔をおいて前記横梁材に交差して設けられた複数の縦梁材と、
前記縦梁材間に取り付けられた壁面材と、
を有することを特徴とする堰堤。
【請求項2】
前記透過部に上流から流れてくる物体を捕捉して流水を流す捕捉体を備えることを特徴とする請求項1に記載の堰堤。
【請求項3】
一端が前記不透過壁部に固定されていて、他端が前記捕捉体に固定されている支持材を備え、
前記支持材は、前記不透過壁部側から前記捕捉体に向かうにつれて下方に傾斜している
ことを特徴とする請求項に記載の堰堤。
【請求項4】
前記一対の袖部は、前記上流壁部と前記下流壁部との間を延在する側壁部を有し、
前記捕捉体は、
一端が前記透過部に固定され、上方に向かうにつれて下流側に傾斜した第1の脚部、および、一端が前記透過部に固定され、他端が前記第1の脚部に固定され、上方に向かうにつれて上流側に傾斜した第2の脚部、を有する複数の柱部と、
各柱部同士を連結する複数の梁部と、
一端が前記柱部に固定されており、他端が前記側壁部に固定されて前記一対の袖部と前記捕捉体とを連結する連結部と、
を備える
ことを特徴とする請求項またはに記載の堰堤。
【請求項5】
前記柱部は、前記連結部の一端を固定する固定部を有し、
前記側壁部は、前記連結部の他端を収容する収容部を有する
ことを特徴とする請求項に記載の堰堤。
【請求項6】
上流側に面する上流壁部と、下流側に面する下流壁部と、前記上流壁部と前記下流壁部との間を延在する側壁部と、を有する、河川の両岸からそれぞれ延出する一対の非越流部、および、前記一対の非越流部の間で流水を通す透過部、を有する堰堤において、前記透過部に設けられて上流から流れてくる物体を捕捉して流水を流す捕捉体であって、
一端が前記透過部に固定され、上方に向かうにつれて下流側に傾斜した第1の脚部、および、一端が前記透過部に固定され、他端が前記第1の脚部に固定され、上方に向かうにつれて上流側に傾斜した第2の脚部、を有する複数の柱部と、
各柱部同士を連結する複数の梁部と、
一端が前記柱部に固定されており、他端が前記側壁部に固定されて前記一対の袖部と前記柱部とを連結する連結部と、
を備え、
前記柱部の前記第1の脚部は、前記連結部の一端が着脱自在に取り付けられる固定部を有することを特徴とする捕捉体。
【請求項7】
前記第1の脚部と、前記一対の非越流部の前記上流壁部に着脱自在に設けられて前記透過部の上流側の開口を覆って土砂を堰き止める不透過壁部との間に設けられ、前記不透過壁部側から前記第1の脚部に向かうにつれて下方に傾斜する支持材が前記第1の脚部に着脱自在に固定されることを特徴とする請求項6に記載の捕捉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等に設置される堰堤および堰堤に設けられる捕捉体に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳地の渓流などにおいて、土砂災害を防止する砂防堰堤が知られている。従来の砂防堰堤100は、図6に示すように、上流側から流れ込む土石流等の越流を阻止する一対の非越流部(袖部)110と、一対の袖部110の間に、土石流等を捕捉させる透過部120と、鋼管により形成されて透過部120に設けられた捕捉体130と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-173232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、土石流等の災害が発生した河川においては、災害発生後、所定の期間、例えば、数日から数年にわたって、上流から下流に向かって土砂等が流れ続けることがある。流れてきた土砂は、堰堤の透過部における捕捉体では捕捉できず、河川の下流側に堆積することがあった。そのため、堰堤において災害発生後に上流からの土砂等を堰き止めたいという要望がった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、土砂を堰き止め、土砂が透過部を通過することを抑制することができる堰堤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、上流側に面する上流壁部および下流側に面する下流壁部を有し、河川の両岸からそれぞれ延出する一対の袖部と、前記一対の袖部の間で流水を通す透過部と、前記袖部の前記上流壁部に着脱自在に設けられて、前記透過部の上流側の開口を覆って、土砂を堰き止める不透過壁部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記不透過壁部は、高さ方向において所定の間隔をおいて前記一対の袖部に前記上流壁部側で架け渡された複数の横梁材と、所定の間隔をおいて前記横梁材に交差して設けられた複数の縦梁材と、前記縦梁材間に取り付けられた壁面材と、を備えることが好ましい。
【0008】
また、前記透過部に上流から流れてくる物体を捕捉して流水を流す捕捉体を備えることが好ましい。また、一端が前記不透過壁部に固定されていて、他端が前記捕捉体に固定されている支持材を備え、前記支持材は、前記不透過壁部側から前記捕捉体に向かうにつれて下方に傾斜していることが好ましい。
【0009】
前記一対の非越流部は、前記上流壁部と前記下流壁部との間を延在する側壁部を有し、前記捕捉体は、一端が前記透過部に固定され、上方に向かうにつれて下流側に傾斜した第1の脚部、および、一端が前記透過部に固定され、他端が前記第1の脚部に固定され、上方に向かうにつれて上流側に傾斜した第2の脚部、を有する複数の柱部と、各柱部同士を連結する複数の梁部と、一端が前記柱部に固定されており、他端が前記側壁部に固定されて前記一対の袖部と前記捕捉体とを連結する連結部と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記柱部は、前記連結部の一端を固定する固定部を有し、前記側壁部は、前記連結部の他端を収容する収容部を有することが好ましい。
【0011】
さらに、上記課題を解決するために本発明は、上流側に面する上流壁部と、下流側に面する下流壁部と、前記上流壁部と前記下流壁部との間を延在する側壁部と、を有する、河川の両岸からそれぞれ延出する一対の非越流部、および、前記一対の非越流部の間で流水を通す透過部、を有する堰堤において、前記透過部に設けられて上流から流れてくる物体を捕捉して流水を流す捕捉体であって、一端が前記透過部に固定され、上方に向かうにつれて下流側に傾斜した第1の脚部、および、一端が前記透過部に固定され、他端が前記第1の脚部に固定され、上方に向かうにつれて上流側に傾斜した第2の脚部、を有する複数の柱部と、各柱部同士を連結する複数の梁部と、一端が前記柱部に固定されており、他端が前記側壁部に固定されて前記一対の袖部と前記捕捉体とを連結する連結部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、土砂を堰き止め、土砂が透過部を通過することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施の形態に係る砂防堰堤を上流側から見た斜視図である。
図2】砂防堰堤における透過部を上方から見た平面図である。
図3】捕捉体を説明するための捕捉体の正面図である。
図4】砂防堰堤における透過部を側方から見た図である。
図5】他の実施の形態に係る砂防堰堤における透過部を側方から見た図である。
図6】従来の砂防堰堤を上流側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[砂防堰堤の構造]
図1乃至図4に基づいて、砂防堰堤の一実施の形態について説明する。図1は、砂防堰堤を上流側から見た斜視図である。図2は、砂防堰堤における透過部を上方から見た平面図であり、天端保護材を一部除去して示した。図3は、捕捉体を説明するための捕捉体の正面図であり、不透過壁部は示されていない。図4は、砂防堰堤における透過部を側方から見た図である。
砂防堰堤(堰堤)1は、河川の両岸から河川中央に張り出して設けられている一対の非越流部(袖部)10と、非越流部10の間に形成された透過部20と、透過部20に設けられた捕捉体30と、透過部20の上流側の開口を覆う不透過壁部40と、を備える。
【0015】
<非越流部>
一対の非越流部10は、河川の上流側から流れ込む土石流の越流を阻止するものであり、基礎コンクリート11上に設置されている。非越流部10は、上流壁部12と、下流壁部13と、側壁部14と、天端保護材15とを有する。
なお、上流壁部12、下流壁部13、側壁部14および天端保護材15によって囲まれた空間内は、基礎コンクリート11を設置する際に発生した現地発生土砂と、セメント・セメントミルクとを撹拌・混練して製造したソイルセメントである中詰材16によって打設される。中詰材16の固化により、中詰材16の重量で土石流の衝撃を受け止めることになる。
【0016】
(上流壁部)
上流壁部12は、河川の上流に面しており、上流からの流水、土石流の衝撃を受け止める壁部であり、河川の岸に隣接している。
上流壁部12は、断面が波形状に形成された矩形板状の鋼板パネルを複数枚連結することによって構築されている。鋼板パネル同士は、ボルトおよびナットで連結されており、その繋ぎ目にはシールテープ等が貼り付けられて止水されていてもよい。上流壁部12を構成する鋼板パネルは、それぞれが波形状に形成されているものの、壁部全体として見た際に略平面状に形成されている。上流壁部12は、上端から下端に向かうにつれて上流側に向けて下方に傾斜する法面が形成されるように構築されている。
両方の上流壁部12には、後述する不透過壁部40の横梁材41が取り付けられる位置に、所定の取付部(図示せず)が複数箇所に形成されている。取付部は、例えば、鋼板パネルに取り付けられたボルト等であってよい。
【0017】
(下流壁部)
下流壁部13は、河川の下流に面しており、上流壁部12から所定の間隔をあけて配置されていて、河川の岸に隣接している。
下流壁部13は、断面が波形状に形成された矩形板状の鋼板パネルを複数枚連結することによって構築されている。鋼板パネル同士は、ボルトおよびナットで連結されており、その繋ぎ目にはシールテープ等が貼り付けられて止水されていてもよい。下流壁部13を構成する鋼板パネルは、それぞれが波形状に形成されているものの、壁部全体として見た際に略平面状に形成されている。
下流壁部13は、上端から下端に向かうにつれて下流側に向けて下方に傾斜するように構築されている。なお、下流壁部13は、鋼板パネルに代えてコンクリートパネルを用いてもよい。
【0018】
(側壁部)
側壁部14は、透過部20に面しており、河川の流れ方向において上流壁部12と下流壁部13との間に延在している。側壁部14は、断面が波形状に形成された矩形板状の鋼板パネルを複数枚連結することによって構築されている。鋼板パネル同士は、ボルトおよびナットで連結されており、その繋ぎ目にはシールテープ等が貼り付けられて止水されていてもよい。側壁部14を構成する鋼板パネルは、それぞれが波形状に形成されているものの、壁部全体として見た際に略平面状に形成されている。側壁部14は、基礎コンクリート11の上面に直立するように構築されている。
上流壁部12に連続する側壁部14の接続部は、湾曲部14aとして形成されている。湾曲部14aは、その表面が湾曲面を有しているので、例えば、不透過壁部40が構築されていない場合に巨大な岩石や流木等が衝突した際、損傷しにくくなっており、流下する土石流等が透過部20に流入する際、渦状の流れが発生しにくくなっている。
側壁部14の、後述する捕捉体30の連結部33を収容する部分には、例えば、凹部(収容部)14bが形成されている。凹部14bは、側壁部14の鋼板パネルを切断して除去するとともに、中詰材16を取り除くことにより形成されている。
【0019】
(天端保護材)
天端保護材15は、打設された中詰材16の上面を覆うものであって、コンクリートで形成されている。天端保護材15は、中詰材16の保護層(水の遮断層)として機能している。
【0020】
<透過部>
透過部20は、一対の非越流部10間に設けられ、流水を透過させるものである。透過部20は、河川の底部に設けられた基礎コンクリート21を有する。
【0021】
<捕捉体>
捕捉体30は、透過部20の基礎コンクリート21上に設置されており、鋼管または鋼製もしくはコンクリート製の柱体を組み立てた柵体として形成されている。捕捉体30は、河川の流水や小さな土砂を通過させ、土石流の発生時に巨大な岩石や流木を捕捉する。
捕捉体30は、複数の柱部31と、柱部31間に架け渡された梁部32と、捕捉体30を非越流部10の側壁部14に連結する連結部33と、を有する。
柱部31は、一端が基礎コンクリート21に埋設されて、他端(上方)に向かって下流側に傾斜した第1の脚部31aと、一端が基礎コンクリート21に埋設されていて、他端(上方)に向かって上流側に傾斜した2本の第2の脚部31bとを有する。2本の第2の脚部31bは、互いに河川の流れ方向において所定の間隔をおいて設けられており、各第2の脚部31bの他端は、第1の脚部31aに連結されている。2本の第2の脚部31bは、互いに鋼管により連結されている。
第1の脚部31aは、その上方の端部近傍に後述する連結部33が固定される固定部(図示せず。)を有する。固定部は、非越流部10の側壁部14を臨む第1の脚部31aの位置に設けられている。
梁部32は、捕捉体30の高さ方向において所定の間隔をおいて複数設けられている。
【0022】
連結部33は、複数の柱部31のうち幅方向における両端に設けられた柱部31と、各非越流部10の側壁部14との間に設けられ、捕捉体30を非越流部10に連結している。連結部33は、例えば、鋼管により形成されており、一端が第1の脚部31aの固定部に、例えば、ボルトおよびナットにより着脱自在に取り付けられており、他端が側壁部14の凹部14bに収容されて、例えば、ソイルセメント等により非越流部10に固定されている。連結部33は、捕捉体30の高さ方向において最上段にある梁部32と同じ高さ位置にある。
【0023】
<不透過壁部>
不透過壁部40は、透過部20の上流側の開口を覆って設けられており、不透過の状態では正面からの流水および土砂を堰き止める。
不透過壁部40は、横梁材41と、縦梁材42と、壁面部43と、支持材44と、を有する。横梁材41は、H形鋼により形成されており、堰堤1の透過部20に架け渡されている。具体的には、横梁材41は、透過部20を横切るようにして一方の上流壁部12から他方の上流壁部12に架け渡されている。
横梁材41は、堰堤1の高さ方向に所定の間隔をおいて複数設けられており、H鋼の一対のフランジ部のうち一方の側で上流壁部12の所定の取付部に着脱自在に取り付けられている。具体的には、一方のフランジ部には上流壁部12の取付部である、例えば、ボルトが挿通される孔が形成されており、当該ボルトにナットを嵌めることにより、横梁材41は上流壁部12に取り付けられる。したがって、横梁材41は、上流壁部12に対して着脱自在に取り付けられている。
さらに、横梁材41の一方のフランジ部には、後述する支持材44の一端が取り付けられる複数の孔が形成されている。横梁材41の他方のフランジ部には、後述する縦梁材42と重なる位置に孔(図示せず。)が形成されている。
【0024】
縦梁材42は、堰堤1の幅方向に所定の間隔をおいて複数設けられており、H形鋼により形成されている。縦梁材42は、架け渡された複数の横梁材41に対して交差して縦方向に延在して設けられている。縦梁材42は、一対のフランジ部のうち一方のフランジ部には、横梁材41の他方のフランジ部に形成された孔と重なる位置に孔が形成されている。縦梁材42の一方のフランジ部に形成された孔を、横梁材41の他方のフランジ部に形成された孔に整合させてボルトを挿通し、当該ボルトにナットを嵌めることにより、縦梁材42は横梁材41に取り付けられる。したがって、縦梁材42は、横梁材41に対して着脱自在に取り付けられている。
縦梁材42の他方のフランジ部には、長手方向に沿って、後述する壁面材43aを縦梁材42に取り付けるための、例えば、ボルト等が挿通される複数の孔が形成されている。
【0025】
壁面部43は、断面が波形状に形成された矩形板状の複数の壁面材(壁面板)43aにより形成されている。壁面材43aは、隣り合う縦梁材42の間に複数挿入されて、幅方向における両端部において縦梁材42の他方のフランジ部に着脱自在に取り付けられている。図1においては、一対の縦梁材42の間に1枚の壁面材43aのみ示されているが、一対の縦梁材42の間には、複数の壁面材43aが取り付けられている。
壁面材43aは、その幅方向における両端部に長手方向に沿って、当該壁面材43aを縦梁材42に取り付けるための、例えば、ボルト等が挿通される複数の孔が形成されている。壁面材43aの幅方向の両端部における複数の孔と、縦梁材42の他方のフランジ部に形成された孔とを整合させてボルトを挿通し、当該ボルトにナットを嵌めることにより、壁面材43aは縦梁材42に取り付けられる。したがって、壁面材43aは、縦梁材42に対して着脱自在に取り付けられている。
複数の壁面材43aが縦梁材42の間に取り付けられており、壁面材43aは、堰堤1を正面から見た場合に透過部20が完全に隠れるように壁面部43を形成している。
なお、壁面部43は、少なくとも横梁材41の分だけ透過部20に対して離間しており、不透過壁部40が設けられた堰堤1においては、上流から下流へと流れる土砂の大部分を堰き止めつつ、不透過壁部40の側方および下方から透過部20へ水は流される。
例えば、壁面材43aと同様の板材を設けることにより(図示せず。)、透過部20への側方および下方からの流水および土砂の侵入を防ぐようにしてもよい。
【0026】
支持材44は、鋼管により形成されている。支持材44は、不透過壁部40と捕捉体30との間に設けられており、一端が不透過壁部40の横梁材41に固定されており、他端が捕捉体30の各柱部31に固定されている。
支持材44の一端は、複数の孔が形成されたフランジ部を有し、当該フランジ部の孔を横梁材41の一方のフランジ部に形成された孔に整合させてボルトを挿通し、当該ボルトにナットを嵌めることにより、支持材44は着脱自在に横梁材41に取り付けられる。また、支持材44の他端は、各柱部31の第1の脚部31aに着脱自在に固定されている。
不透過壁部40と捕捉体30との間には、高さ方向および幅方向において複数の支持材44が設けられている。支持材44は、不透過壁部40から捕捉体30に向かって下方に斜めに延在しており、1つの柱部31に高さ方向に並んで複数の支持材44が固定されている。
【0027】
<不透過壁部の設置>
次に、不透過壁部の構築工程について説明する。例えば、土石流等の災害が発生した場合、透過型の堰堤1においては、捕捉体30において上流から流れてきた土石等を捕捉する。災害後には、捕捉体30から土石等を除去する。土石流等の災害が発生した河川においては、災害発生後、土砂が上流から下流に流れることがある。流されてきた土砂は、下流側で堆積することがあり、この土砂が下流側に流れて堆積することを抑制したい。
【0028】
堰堤1の上流壁部12には、横梁材41が取り付けられる取付部(例えば、ボルト)が設けられている。まず、一対の非越流部10の各上流壁部12に透過部20を横切るようにして横梁材41を、上流壁部12に取り付けることができる。具体的には、横梁材41は、透過部20を横切るようにして両上流壁部12に架け渡され、横梁材41の一方のフランジ部の孔に、上流壁部12のボルトを挿通させてナットを取り付ける。
横梁材41を高さ方向にわたって複数架け渡した後、縦梁材42を横梁材41に、当該横梁材41に交差するように取り付ける。具体的には、縦梁材42の一方のフランジ部の孔と、横梁材41の他方のフランジ部の孔とを整合させてボルトを挿通し、ナットを取り付ける。
次いで、壁面材43aを隣り合う縦梁材42の間に挿入し、縦梁材42に取り付けていく。壁面材43aは、幅方向の両端部に長手方向に沿って形成された複数の孔と、縦梁材42の他方のフランジ部に形成された所定の孔とを整合させて、ボルトおよびナットにより取り付けられる。複数の壁面材43aを、高さ方向および幅方向に取り付けることにより壁面部43が形成される。
不透過壁部40の形成後、不透過壁部40と捕捉体30との間に支持材44を取り付ける。支持材44の一端のフランジ部が横梁材41の一方のフランジ部にボルトおよびナットにより取り付けられ、他端が所定の方法により着脱自在に取り付けられている。
これにより、図1に示すような不透過壁部40を備えた堰堤1が完成する。
【0029】
以上のような堰堤1により、河川の状況に応じて不透過壁部40を簡単に設置することができる。不透過壁部40は、壁面材43aによって透過部20の上流側の開口を覆って、土砂を堰き止めて、土砂が透過部20を抜けて下流側へ流れていくことを効果的に抑制することができる。
【0030】
不透過壁部40を構成する横梁材41は、非越流部10の上流壁部12に、縦梁材42は、横梁材41に、壁面材43aは、縦梁材42に、そして支持材44は、捕捉体30および不透過壁部40に対してそれぞれ着脱自在に取り付けられているので、不透過壁部40が不要になった場合には当該不透過壁部40を解体して、再び透過型の堰堤とすることができる。
【0031】
また、不透過壁部40は、捕捉体30に対して支持材44を介して支持されているので構造上の強度が増し、壁面部43に対して超過外力が加わった場合であっても十分に耐えることができる。支持材44は、不透過壁部40から捕捉体30に向かって下方に傾斜しているので、不透過壁部40に加わる荷重は、捕捉体30を基礎コンクリート21に押し付ける方向に働く。かくして、不透過壁部40に加わる荷重を堰堤1全体で受けることができる。
【0032】
また、堰堤1において、捕捉体30は、第1の脚部31aに連結部33の一端が取り付けられる固定部を有し、非越流部10が連結部33の他端を収容する凹部14bを有しているので、捕捉体30は、非越流部10に容易に一体的に連結することができる上に、既存の捕捉体30を、非越流部10に対して連結部33を介して後付けすることができる。
非越流部10に一体に捕捉体30が連結されることにより、捕捉体30の構造上の強度が上がるとともに、堰堤1の構造上の強度も上がる。堰堤1は、不透過壁部40に加わって支持材44を介して伝達される超過外力の成分を、捕捉体30においてのみ受けるのではなく、堰堤1全体において受けることができる。
【0033】
<その他>
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の範囲を超えない範囲で適宜変更が可能である。例えば、図4に示すように、上記の実施の形態においては、不透過壁部40は、透過部20を完全に覆い隠すように設けられていたが、図5に示すように、透過部20全体を覆う必要がない場合、最上段の横梁材41を透過部20の高さの中間に設置して、透過部20を部分的に覆うようにして部分透過型の堰堤1を形成してもよい。
【0034】
また、上記の実施の形態においては、不透過壁部40を備えた堰堤1であったが、不透過壁部40を備えていない堰堤としてもよい。この場合、堰堤は、透過型の堰堤となるが、捕捉体30は、連結部33を介して非越流部10に一体に連結されているので、流木や土石等の捕捉時の耐衝撃性が向上している。
【0035】
また、上記の実施の形態においては、連結部33は、捕捉体30の高さ方向において最上段にある梁部32と同じ高さ位置にあった。しかし、連結部33は、捕捉体30と非越流部10とを連結していれば最上段以外の梁部32と同じ高さ位置に設けられていても、捕捉体30の柱部31のいずれの位置に設けられていてもよい。さらに、連結部33は、捕捉体30の高さ方向に沿って複数設けられていてもよい。
【0036】
また、上記の実施の形態においては、支持材44の一端は、横梁材41に取り付けられていたが、縦梁材42に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 堰堤
10 非越流部(袖部)
12 上流壁部
13 下流壁部
14 側壁部
14b 凹部(収容部)
20 透過部
30 捕捉体
31 柱部
32 梁部
33 連結部
40 不透過壁部
41 横梁材
42 縦梁材
43 壁面部
43a 壁面材
44 支持材
図1
図2
図3
図4
図5
図6